IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立化成株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-半導体パッケージの製造方法 図1
  • 特許-半導体パッケージの製造方法 図2
  • 特許-半導体パッケージの製造方法 図3
  • 特許-半導体パッケージの製造方法 図4
  • 特許-半導体パッケージの製造方法 図5
  • 特許-半導体パッケージの製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】半導体パッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/00 20060101AFI20241106BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01L23/00 C
H01L21/56 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022509221
(86)(22)【出願日】2020-07-28
(86)【国際出願番号】 JP2020028926
(87)【国際公開番号】W WO2021192341
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2020058786
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】福住 志津
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 直也
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-009371(JP,A)
【文献】国際公開第2018/216621(WO,A1)
【文献】特開2000-164682(JP,A)
【文献】特開2015-195398(JP,A)
【文献】米国特許第08084300(US,B1)
【文献】特開2017-208529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/00
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)複数の半導体パッケージを備えるパネル部材の第一の表面であって前記複数の半導体パッケージの回路面又は再配線層が露出している前記第一の表面に仮固定材層を形成する工程と、
(B)前記パネル部材の第二の表面に対して第一の粘着フィルムを貼る工程と、
(C)前記第一の粘着フィルム上の前記パネル部材及び前記仮固定材層を、複数の仮固定材片付き半導体パッケージに個片化する工程と、
(D)支持キャリアに対して前記仮固定材片付き半導体パッケージの仮固定材片が接し且つ隣接する前記仮固定材片付き半導体パッケージの間隔が0.1mm以上となるように、前記支持キャリアに複数の前記仮固定材片付き半導体パッケージを配置する工程と、
(E)前記支持キャリア及び複数の前記仮固定材片付き半導体パッケージから、前記第一の粘着フィルムを剥離する工程と、
(F)前記第一の粘着フィルムの剥離によって露出した、複数の前記仮固定材片付き半導体パッケージの表面上に機能層を形成する工程と、
(G)複数の前記仮固定材片付き半導体パッケージの表面に形成された前記機能層を覆うように第二の粘着フィルムを貼る工程と、
(H)前記第二の粘着フィルム上の複数の前記半導体パッケージから仮固定材片を前記支持キャリアとともに剥離する工程と、
を含む、半導体パッケージの製造方法。
【請求項2】
前記第一の粘着フィルムが延伸性を有し、
(D)工程が(d1)前記第一の粘着フィルムに張力を付与することにより、隣接する二つの前記仮固定材片付き半導体パッケージの間隔を拡大すること、(d2)前記第一の粘着フィルムに張力を付与した状態で、前記第一の粘着フィルム上の複数の前記仮固定材片付き半導体パッケージを前記支持キャリアに転写することを含む、請求項1に記載の半導体パッケージの製造方法。
【請求項3】
前記機能層がスパッタリング又は蒸着によって形成される金属層である、請求項1又は2に記載の半導体パッケージの製造方法。
【請求項4】
前記回路面又は前記再配線層は、前記回路面又は前記再配線層の表面に設けられた複数のバンプを有し、
(A)工程において前記仮固定材層に前記複数のバンプを埋め込む、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体パッケージの製造方法。
【請求項5】
前記機能層が電磁波シールド層である、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体パッケージの製造方法。
【請求項6】
前記半導体パッケージが50μm未満の再配線層と、前記再配線層の側面に設けられたグランド接触点とを有する、請求項5に記載の半導体パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は半導体パッケージの製造方法に関し、より詳しくは、表面の少なくとも一部に機能層(例えば、電磁波シールド層)を有する半導体パッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体パッケージの小型化、高機能化、高集積化に伴い、半導体チップの多ピン化、高密度化、配線の狭ピッチ化が進展している。その結果、インピーダンスの増加又は信号ライン間の信号干渉に起因して半導体パッケージの本来の性能が阻害される傾向にある。特許文献1は、接着剤層と、電磁波シールド層とを有する半導体装置用接着フィルムを開示している。この半導体装置用接着フィルムは、接着剤層の表面上に、スパッタ法又は蒸着法によって電磁波シールド層を形成する工程を経て作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-124466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、半導体パッケージの表面に電磁波シールド層のような機能層を直接的に形成することによって、かかる機能を半導体パッケージに付与することを検討した。本開示は、表面の少なくとも一部が機能層で覆われている半導体パッケージを効率的に製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る半導体パッケージの製造方法は以下の工程を含む。
(A)複数の半導体パッケージを備えるパネル部材の第一の表面であって複数の半導体パッケージの回路面又は再配線層が露出している第一の表面に仮固定材層を形成する工程。
(B)パネル部材の第二の表面に対して第一の粘着フィルムを貼る工程。
(C)第一の粘着フィルム上のパネル部材及び仮固定材層を、複数の仮固定材片付き半導体パッケージに個片化する工程。
(D)支持キャリアに対して仮固定材片付き半導体パッケージの仮固定材片が接し且つ隣接する仮固定材片付き半導体パッケージの間隔が0.1mm以上となるように、支持キャリアに複数の仮固定材片付き半導体パッケージを配置する工程。
(E)支持キャリア及び複数の仮固定材片付き半導体パッケージから、第一の粘着フィルムを剥離する工程。
(F)第一の粘着フィルムの剥離によって露出した、複数の仮固定材片付き半導体パッケージの表面上に機能層を形成する工程。
なお、(A)工程後、紫外線照射又は熱処理によって仮固定材層を硬化する工程を実施してもよい。
【0006】
上記製造方法によれば、(D)工程において、隣接する二つの仮固定材片付き半導体パッケージの間隔が0.1mm以上となるように、支持キャリアに複数の仮固定材片付き半導体パッケージが配置されるため、(F)工程において、例えば、スパッタリング又は蒸着によって、半導体パッケージの側面にも所望の厚さの機能層を形成することができる。これに加え、(F)工程において、回路面が仮固定材片で覆われている半導体パッケージに対して機能層が形成されるため、機能層を構成する材料が半導体パッケージの回路面に回り込むことを抑制できる。機能層は、例えば、電磁波シールド層(金属層)である。
【0007】
上記第一の粘着フィルムとして延伸性を有するフィルム(以下「延伸性フィルム」という。)を使用してもよい。この場合、(D)工程は以下のステップを含んでもよい。
(d1)第一の粘着フィルムに張力を付与することにより、隣接する二つの仮固定材片付き半導体パッケージの間隔を拡大すること。
(d2)第一の粘着フィルムに張力を付与した状態で、第一の粘着フィルム上の複数の仮固定材片付き半導体パッケージを支持キャリアに転写すること。
(D)工程において、これらのステップを実施することで、第一の粘着フィルム上の複数の仮固定材片付き半導体パッケージを一括して支持キャリア上に配置することが可能である。
【0008】
(F)工程後、半導体パッケージを効率的にピックアップできるように、以下の工程を適宜実施してもよい。
(G)複数の仮固定材片付き半導体パッケージの表面に形成された機能層を覆うように第二の粘着フィルムを貼る工程。
(H)第二の粘着フィルム上の複数の半導体パッケージから仮固定材片を支持キャリアとともに剥離する工程。
【0009】
上記機能層が電磁波シールド層である場合、半導体パッケージは、50μm未満の再配線層と、再配線層の側面に設けられたグランド接触点とを有してもよい。半導体パッケージの再配線層が50μm未満と薄くても、(F)工程において再配線層の側面にも電磁波シールド層を安定的に形成することができる。このため、再配線層の側面のグランド接触点と電磁波シールド層とを電気的に接続することができる(図1参照)。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、表面の少なくとも一部が機能層で覆われている半導体パッケージを効率的に製造する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は本開示の製造方法によって製造される半導体パッケージの一例(ファンアウト・ウエハレベルパッケージ)を模式的に示す断面図である。
図2図2はファンアウト・ウエハレベルパッケージ用パネル部材の一例を模式的に示す平面図である。
図3図3(a)は、パネル部材の第一の表面上に仮固定材層を形成した状態を模式的に示す断面図であり、図3(b)はパネル部材の第二の表面に第一の粘着フィルムを貼り付けた状態を模式的に示す断面図であり、図3(c)はパネル部材及び仮固定材層が複数の仮固定材片付き半導体パッケージに個片化された状態を模式的に示す断面図である。
図4図4(a)は第一の粘着フィルムに張力を付与することによって隣接する二つの仮固定材片付き半導体パッケージの間隔を拡大した状態を模式的に示す断面図であり、図4(b)は第一の粘着フィルムに張力を付与した状態で、第一の粘着フィルム上の複数の仮固定材片付き半導体パッケージに支持キャリアを貼り付けた状態を模式的に示す断面図であり、図4(c)は図4(b)に示す状態から第一の粘着フィルムを剥離した状態を模式的に示す断面図である。
図5図5は、複数の仮固定材片付き半導体パッケージの表面に電磁波シールド層(機能層)が形成された状態を模式的に示す断面図である。
図6図6(a)~図6(c)は半導体パッケージをピックアップするまでの過程を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態について詳細に説明する。以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0013】
本明細書の記載及び請求項において「左」、「右」、「正面」、「裏面」、「上」、「下」、「上方」、「下方」等の用語が利用されている場合、これらは、説明を意図したものであり、必ずしも永久にこの相対位置である、という意味ではない。また、「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。
【0014】
(半導体パッケージ)
図1は本実施形態に係る製造方法によって製造される半導体パッケージを模式的に示す断面図である。この図に示す半導体パッケージ10は、ファンアウト・ウエハレベルパッケージ(Fan-out WLP、FO-WLP)と称されるものである。半導体パッケージ10は、半導体チップ1と、封止層3と、再配線層4と、電磁波シールド層5(機能層)とを備える。なお、パッケージ形態は、FO-WLPに限られるものではなく、ウェハレベルパッケージ(WLP)、フリップチップ・チップスケールパッケージ(FC-CSP)、フリップチップ・ボールグリッドアレイ(FC-BGA)、メモリーパッケージ等でもよい。
【0015】
平面視における半導体パッケージ10の形状は、例えば正方形又は長方形である。平面視における半導体パッケージ10の面積は、例えば、1~900mmであり、9~625mm又は25~400mmであってもよい。平面視における半導体パッケージ10の一辺の長さは、例えば、1~30mmであり、3~25mm又5~20mmであってもよい。半導体パッケージ10の厚さ(バンプ4cの高さを除く。)は、例えば、100~1500μmであり、200~1000μmであってもよい。
【0016】
半導体チップ1は、回路面1aと、回路面1aに形成された複数のバンプ1b(突起電極)とを有する。回路面1aは、Ni/Auめっきパッド等の比較的平坦な金属パッドを有するものであってもよい。バンプ1bは、例えば、銅バンプ及びはんだバンプである。平面視における半導体チップ1の形状は、例えば正方形又は長方形である。平面視における半導体チップ1の面積は、例えば、1~400mmであり、9~225mm又は25~100mmであってもよい。平面視における半導体チップ1の一辺の長さは、例えば、1~20mmであり、3~15mm又5~10mmであってもよい。半導体チップ1の厚さ(バンプ1bの高さを除く。)は、例えば、50~775μmであり、100~500μmであってもよい。
【0017】
封止層3は、熱硬化性樹脂組成物によって構成されている。封止層3は、光、熱、湿気、ほこり及び物理的衝撃等から半導体チップ1を保護している。封止層3は、例えば、コンプレッションモールド、トランスファーモールド、フィルム状の封止材のラミネートによって形成される。封止層3の厚さは、例えば、50μm以上であり、100μm以上であってもよい。
【0018】
再配線層4は半導体チップ1のバンプ1bと電気的に接続されている。再配線層4は、導体部4aと、絶縁部4bと、バンプ4c,4dとによって構成されている。導体部4aは半導体チップ1のバンプ1bとバンプ4cとを電気的に接続している。図1の左端に示すバンプ4dは電磁波シールド層5と電気的に接続されている。再配線層4の側面4fはグランド接触点4gを有する。グランド接触点4gは電磁波シールド層5と接している。これにより、電磁波シールド層5はグランド接続を取ることができる。なお、図1には一点のグランド接触点4gを図示したが、半導体パッケージ10は再配線層4の側面4fに複数のグランド接触点を有してもよい。
【0019】
電磁波シールド層5は、封止層3の面3a及び側面3bを覆うとともに、再配線層4の側面4fの少なくも一部を覆っている。電磁波シールド層5は、例えば、スパッタリング又は蒸着によって形成された金属層である。電磁波シールド層5は、例えば、銅、クロム、ニッケル等の金属元素を含む。電磁波シールド層5を構成する金属元素は一種であってもよいし、二種以上であってもよい。電磁波シールド層5の厚さは、例えば、0.01~100μmであり、0.05~50μmであってもよい。なお、電磁波シールド層5の形成方法は、スパッタリング又は蒸着に限定されず、スクリーン印刷法、スプレー印刷法、無電解めっき法又は電解めっき法等でもよい。
【0020】
(半導体パッケージの製造方法)
次に、半導体パッケージ10の製造方法について説明する。半導体パッケージ10は、例えば、以下の工程を経て製造することができる。
(a)複数の半導体パッケージ10Aを備えるパネル部材30の第一の表面30aに仮固定材層15を形成する工程(図3(a)参照)。
(b)パネル部材30の第二の表面30bに対して粘着フィルム21(第一の粘着フィルム)を貼る工程(図3(b)参照)。
(c)粘着フィルム21上のパネル部材30及び仮固定材層15を、複数の仮固定材片付き半導体パッケージ25Pに個片化する工程(図3(c)参照)。
(d)支持キャリア35に対して仮固定材片付き半導体パッケージ25Pの仮固定材片15Pが接し且つ隣接する仮固定材片付き半導体パッケージ25Pの間隔が0.1mm以上となるように、支持キャリア35に複数の仮固定材片付き半導体パッケージ25Pを配置する工程(図4(b)参照)。
(e)支持キャリア35及び複数の仮固定材片付き半導体パッケージ25Pから、粘着フィルム21を剥離する工程(図4(c)参照)。
(f)粘着フィルム21の剥離によって露出した、複数の仮固定材片付き半導体パッケージ25Pの表面上にスパッタリング又は蒸着によって電磁波シールド層5を形成する工程(図5参照)。
【0021】
上記製造方法によれば、以下の効果が奏される。
・(d)工程において、隣接する二つの仮固定材片付き半導体パッケージ25Pの間隔が拡大された状態で、支持キャリア35に複数の仮固定材片付き半導体パッケージ25Pが配置されるため、(f)工程において、スパッタリング又は蒸着によって、半導体パッケージ10Pの側面にも所望の厚さの電磁波シールド層5を形成することができる。なお、仮固定材片付き半導体パッケージ25Pは、半導体パッケージ10P(電磁波シールド層5形成前)と、仮固定材片15Pとによって構成されている。
・(f)工程において、再配線層4が仮固定材片15Pで覆われている半導体パッケージ10Pに対して電磁波シールド層5が形成されるため、電磁波シールド層5を構成する材料が半導体パッケージ10の再配線層4側の面に回り込むことを抑制できる。
なお、パネル部材30の第一の表面30aは再配線層4が露出している面である。再配線層4は半導体パッケージ10A又はパネル部材30のものであると言えるし、半導体パッケージ10P又は半導体パッケージ10が形成された後においてはこれらのものと言うこともできる。なお、パネル部材30の第一の表面30aに半導体チップ1の回路面1aの一部が露出していてもよい。
【0022】
[(a)工程]
(a)工程は、複数の半導体チップ1と、複数の半導体チップ1を封止している封止材13とを備えるパネル部材30の第一の表面30aに仮固定材層15を形成する工程である。本実施形態においては、パネル部材30として、ファンアウト・ウエハレベルパッケージ(Fan-out WLP、FO-WLP)を使用する場合を例に挙げる。図2は、FO-WLPであるパネル部材30を模式的に示す平面図である。パネル部材30は平面視で略円形であり、その直径は、例えば、100~300mmである。パネル部材30は、複数の半導体チップ1と、これらの半導体チップ1を封止する封止材13とによって構成されている。なお、図2には、便宜上、21個の半導体チップ1を図示したが、FO-WLPが備える半導体チップ1の数は、例えば、100個以上であり、400~6000個又は1600~24000個であってもよい。
【0023】
図3(a)は、パネル部材30の第一の表面30a上に仮固定材層15を形成した状態を模式的に示す断面図である。仮固定材層15は、パネル部材30に対する密着性を有する樹脂組成物からなる。なお、かかる樹脂組成物のペーストと使用して仮固定材層15を形成してもよいし、当該樹脂組成物を予めフィルム状に形成したものを第一の表面30aに貼り付けてもよい。図3(a)に示されたように、パネル部材30の回路面1aに仮固定材層15が接し且つバンプ1bが仮固定材層15に埋め込まれた状態とすることが好ましい。仮固定材層15が回路面1aに密着していることで、(F)工程の電磁波シールド層5の形成を経ても電磁波シールド層5を構成する材料が回路面1aに回り込むことを高度に抑制できる。
【0024】
[(b)工程]
(b)工程は、パネル部材30の第二の表面30bに対して粘着フィルム21(第一の粘着フィルム)を貼る工程である(図3(b)参照)。粘着フィルム21は、基材フィルム21aと、粘着層21bとを備える。粘着フィルム21は、延伸性フィルムであることが好ましい。延伸性フィルムとして、例えば、ステルスダイシング等に使用されるエキスパンドフィルムを使用することができる。粘着フィルム21は、(c)工程におけるパネル部材30の個片化と、(d)工程における隣接する仮固定材片付き半導体パッケージ25Pの間隔の拡大に使用される。拡大後の間隔は(f)工程において半導体パッケージ10Pの側面に電磁波シールド層5が適切に形成できればよく、間隔が全体にわたって必ずしも均一でなくてもよい。したがって、粘着フィルム21として、エキスパンドフィルムの代わりに、ある程度の延伸性を有する粘着フィルム(例えば、ダイシングフィルム)を使用してもよい。
【0025】
[(c)工程]
(c)工程は、粘着フィルム21上のパネル部材30及び仮固定材層15を、複数の仮固定材片付き半導体パッケージ25Pに個片化する工程である(図3(c)参照)。隣接する二つの仮固定材片付き半導体パッケージ25Pの離間距離は、切断に使用したブレード幅とほぼ同じであり、例えば、50μm程度である。
【0026】
[(d)工程]
(d)工程は、支持キャリア35に対して仮固定材片付き半導体パッケージ25Pの仮固定材片15Pが接し且つ隣接する仮固定材片付き半導体パッケージ25Pの間隔が0.1mm以上となるように、支持キャリア35に複数の仮固定材片付き半導体パッケージ25Pを配置する工程である。(d)工程において、例えば、以下のステップを実施することで、粘着フィルム21上の複数の仮固定材片付き半導体パッケージ25Pを一括して支持キャリア35上に配置することが可能である。
(d1)粘着フィルム21に張力を付与することにより、隣接する二つの仮固定材片付き半導体パッケージ25Pの間隔を拡大すること(図4(a)参照)。
(d2)粘着フィルム21に張力を付与した状態で、粘着フィルム21上の複数の仮固定材片付き半導体パッケージ25Pを支持キャリア35に転写すること。
【0027】
支持キャリア35は、(f)工程におけるスパッタリング又は蒸着に曝されるため、十分な耐熱性を有する材質からなる。支持キャリア35は、例えば、耐熱性を有する基材フィルム35aと、仮固定材片15Pに対する高い粘着性を有する粘着層35bとを含む積層構造を有する。基材フィルム35aは、上述のとおり、耐熱性を有するものであればよく、例えば、ポリイミドフィルム、PETフィルム(延伸)、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。基材フィルム35aは、単層のフィルムであってもよいし、上記プラスチックフィルムを二種以上又は同種のプラスチックフィルムを二つ以上組み合わせて得られる多層のフィルムであってもよい。粘着層35bは、例えば、粘着性組成物からなり、加熱されることによって仮固定材片15Pに対して強い密着性が発現するものであってもよい。
【0028】
隣接する二つの仮固定材片付き半導体パッケージ25Pの拡大後の離間距離は、好ましくは100~2000μmであり、より好ましくは200~800μmである。この距離が2000μm以下であることで、仮固定材層15の破断を抑制できる傾向にある。この距離Dと半導体パッケージの厚さTの比(D/T)は1以上であることが好ましい。比D/Tが1以上であることで、(E)工程におけるスパッタリング又は蒸着によって半導体パッケージ10Pの側面に、所望の厚さの電磁波シールド層5を安定的に形成することができる。
【0029】
[(e)工程]
(e)工程は、支持キャリア35及び複数の仮固定材片付き半導体パッケージ25Pから、粘着フィルム21を剥離する工程である。図4(c)は、図4(b)に示す状態から粘着フィルム21を剥離した状態を模式的に示す断面図である。なお、図4(c)は図4(b)の状態から上下を反転させた状態を示している。(e)工程を実施するに先立ち、例えば、粘着フィルム21に紫外線を照射することによって、粘着フィルム21の粘着力を低下させてもよい。
【0030】
[(f)工程]
(f)工程は、粘着フィルム21の剥離によって露出した、複数の仮固定材片付き半導体パッケージ25Pの表面上にスパッタリング又は蒸着によって電磁波シールド層5を形成する工程である。スパッタリングは、例えば芝浦メカトロニクス株式会社製のCCS-2110(商品名)を使用して実施できる。蒸着は、例えば、株式会社神戸製鋼所(KOBELCO)製のAIP-Gシリーズ(商品名、「AIP」は登録商標)を使用して実施できる。図5は、複数の仮固定材片付き半導体パッケージ25Pの表面に電磁波シールド層5が形成された状態を模式的に示す断面図である。
【0031】
(f)工程後、半導体パッケージ10を効率的にピックアップできるように、複数の仮固定材片付き半導体パッケージ25Pを支持キャリア35から粘着フィルム22(第二の粘着フィルム)に転写し、粘着フィルム22から半導体パッケージ10をピックアップしてもよい。すなわち、(f)工程後、以下の工程を適宜実施してもよい。なお、粘着フィルム22として、例えば、紫外線照射又は加熱によって粘着力が低下するものを使用すればよい。
(g)(f)工程後の複数の仮固定材片付き半導体パッケージ25Pの電磁波シールド層5を覆うように粘着フィルム22を貼る工程(図6(a)参照)。
(h)粘着フィルム22上の複数の半導体パッケージ10から仮固定材片15Pを支持キャリア35とともに剥離する工程(図6(b)参照)。
(i)粘着フィルム22の半導体パッケージ10に対する粘着力を低下させる工程。(j)粘着フィルム22から半導体パッケージ10をピックアップする工程。
【0032】
図6(c)は、粘着フィルム22から半導体パッケージ10をピックアップしている様子を模式的に示す断面図である。図6(c)に示されたように、突き上げ冶具51で半導体パッケージ10を粘着フィルム22の下面側から突き上げるとともに、半導体パッケージ10をコレット52で吸引してピックアップする。
【0033】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、機能層として電磁波シールド層5を形成する場合を例示したが、電磁波シールド層5の代わりに、放熱層及び/又は保護層を半導体パッケージ10Pの表面に形成してもよい。また、上記実施形態においては、(c)工程において延伸性を有する粘着フィルム21を使用し且つ(d)工程において複数の仮固定材片付き半導体パッケージ25Pを一括して支持キャリア35に転写する場合を例示したが、(c)工程において延伸性のない又は延伸性の低いダイシングフィルムを使用し且つダイシング後の仮固定材片付き半導体パッケージ25Pを一つずつピックアップして支持キャリア35上に配置してもよい。
【0034】
本実施形態によれば、半導体パッケージ10の再配線層4が50μm未満と薄くても、電磁波シールド層5のグランド接続を安定的に取ることができるという効果が奏される。すなわち、(f)工程において再配線層41の側面にも電磁波シールド層5を安定的に形成され、再配線層41の側面41fにグランド接触点42を設けることができる。再配線層41の厚さは50μm未満であってよいし、30μm未満であってもよい。再配線層41の厚さの下限は、例えば、10μm程度である。
【実施例
【0035】
本開示について以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0036】
WLP用パネル部材(直径:24mm、厚さ:0.3mm、半導体チップ数:16個、回路面のバンプ:はんだ)を準備した。WLP用パネル部材の第一の表面(回路面)に粘着層を有する仮固定フィルムを貼り付けた((A)工程)。WLP用パネル部材の第二の表面(回路面と反対側の面)に延伸性フィルム(延伸性を有するダイシングフィルム、第一の粘着フィルム)を貼り付けた((B)工程)。以下の条件でブレードダイシングを実施することにより、延伸性フィルム上に複数の仮固定材片つき半導体パッケージ(平面視でのサイズ6mm×6mm)を形成した((C)工程)。
・ダイサー:DFD3361(株式会社ディスコ製)
・ブレード:ZH05-SD3000-N1-70(株式会社ディスコ製)
・ブレード幅:28μm
・ブレード回転数:30000rpm
・ダイシング速度:10mm/秒
【0037】
WLP用パネル部材の直径よりも大きい内径を有するリングを延伸性フィルムの下方から押し当てることによって、延伸性フィルムに張力を付与した((d1)ステップ)。これにより、隣接する二つの仮固定材片付き半導体パッケージの間隔を約320μmに拡大させた。延伸性フィルムに張力を付与した状態で、複数の仮固定材片を覆うように真空ラミネーターで支持キャリアを貼り付け、複数の仮固定材片つき半導体パッケージを支持キャリアに転写した((d1)ステップ)。支持キャリアとして紫外線硬化型の粘着層を表面に有するポリイミドフィルムを使用した。その後、複数の仮固定材片付き半導体パッケージから延伸性フィルムを剥離した((E)工程)。
【0038】
ポリイミドフィルム上の複数の仮固定材片付き半導体パッケージの表面にスパッタリングによって電磁波シールド層(厚さ:4380nm)を形成した((F)工程)。ターゲットとして、クロム及び銅を使用した。
【0039】
半導体パッケージの回路面を拡大して観察したところ、電磁波シールド層を構成する材料の回路面への回り込みは認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本開示によれば、表面の少なくとも一部が機能層で覆われている半導体パッケージを効率的に製造する方法が提供される。
【符号の説明】
【0041】
1…半導体チップ、1a…回路面、1b…バンプ、3…封止層、3a…面、3b…側面、4…再配線層、4a…導体部、4b…絶縁部、4c,4d…バンプ、4f…側面、4g…グランド接触点、5…電磁波シールド層(機能層)、10…半導体パッケージ、10A…半導体パッケージ(個片化前)、10P…半導体パッケージ(機能層形成前)、13…封止材、15…仮固定材層、15P…仮固定材片、21…粘着フィルム(第一の粘着フィルム)、21a…基材フィルム、21b…粘着層、22…粘着フィルム(第二の粘着フィルム)、25P…半導体パッケージ、30…パネル部材、30a…第一の表面、30b…第二の表面、35…支持キャリア、35a…基材フィルム、35b…粘着層、51…冶具、52…コレット
図1
図2
図3
図4
図5
図6