(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】半導体封止用マーキングフィルム、半導体封止用離型フィルム、半導体パッケージ及び半導体パッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20241106BHJP
H01L 23/00 20060101ALI20241106BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20241106BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241106BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01L21/56 R
H01L23/00 A
B32B27/20 A
B32B27/00 L
B32B27/38
(21)【出願番号】P 2022510288
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2020013790
(87)【国際公開番号】W WO2021192177
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-01-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 知世
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】市川 順一
(72)【発明者】
【氏名】森 修一
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-124535(JP,A)
【文献】特開2005-146191(JP,A)
【文献】国際公開第2019/235556(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
H01L 23/00
B32B 27/20
B32B 27/00
B32B 27/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非芳香族性環状構造を有する樹脂と白色顔料とを含む着色層を備え
、
前記非芳香族性環状構造を有する樹脂と白色顔料とを含む着色層が、着色剤と熱硬化性樹脂と硬化剤とを含有し、前記着色剤が前記白色顔料であり、前記非芳香族性環状構造を有する樹脂が、前記熱硬化性樹脂であり、
前記硬化剤が、分子中に芳香環を含まない硬化剤を含む半導体封止用マーキングフィルム。
【請求項2】
互いに色の異なる2種類の着色層を備え、前記着色層の少なくとも1つが、前記非芳香族性環状構造を有する樹脂と白色顔料とを含む着色層である請求項1に記載の半導体封止用マーキングフィルム。
【請求項3】
基材と、離型層と、非芳香族性環状構造を有する樹脂と白色顔料とを含む着色層と、をこの順に有
し、
前記非芳香族性環状構造を有する樹脂と白色顔料とを含む着色層が、着色剤と熱硬化性樹脂と硬化剤とを含有し、前記着色剤が前記白色顔料であり、前記非芳香族性環状構造を有する樹脂が、前記熱硬化性樹脂であり、
前記硬化剤が、分子中に芳香環を含まない硬化剤を含む半導体封止用離型フィルム。
【請求項4】
前記離型層上に、互いに色の異なる2種類の着色層を備え、前記着色層の少なくとも1つが、前記非芳香族性環状構造を有する樹脂と白色顔料とを含む着色層である請求項
3に記載の半導体封止用離型フィルム。
【請求項5】
半導体素子と、前記半導体素子を封止する封止樹脂層と、前記封止樹脂層の表面に設けられた着色層とを有し、前記着色層が、請求項
3又は請求項4に記載の半導体封止用離型フィルムが有する着色層由来の層である半導体パッケージ。
【請求項6】
半導体素子と請求項
3又は請求項4に記載の半導体封止用離型フィルムにおける着色層とが対向するように、金型内に前記半導体素子と前記半導体封止用離型フィルムとを配置した状態で、前記半導体素子を封止する工程を有する半導体パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体封止用マーキングフィルム、半導体封止用離型フィルム、半導体パッケージ及び半導体パッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の軽薄短小化に伴って、半導体パッケージの小型化及び薄型化が進んでいる。半導体素子を熱硬化性樹脂封止材で封止することで、上述した半導体パッケージを得ているが、半導体パッケージの薄型化に伴い半導体素子を封止する封止樹脂層も薄型化が進んでいる。
【0003】
樹脂封止された半導体パッケージでは、製造ロット番号、ロゴマーク等の各種識別情報が封止樹脂層表面に印字されている。封止樹脂層表面への印字方法の一つとして、熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂を主成分とするインクを用いて印字する印刷法が行われている。しかし、インクによる印字には、インクの付与、硬化及び洗浄を経ることが必要になる場合があり、半導体パッケージの製造工程が煩雑化したり、インクの耐久性が確保できない場合があった。
【0004】
これらの課題を解決する印字法として、封止樹脂層表面をレーザーで彫ることで印字するレーザーマーキング法が用いられる場合がある。レーザーマーキング法とは、レーザー光により封止樹脂層表面を削り取り印字を行う技術である。レーザーマーキング法によれば、封止樹脂層を直接彫り込むため洗浄等の追加工程が不要で印刷法より生産効率が高く、印字部の耐久性が向上する。
【0005】
また、良好なレーザーマーキング性を示す封止用シートが提案されている(例えば、特許文献1又は2参照)。特許文献1又は2に記載の封止用シートでは、レーザーマーキング性に優れる樹脂層と半導体素子を封止する封止樹脂層とが積層されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4682796号公報
【文献】特開2015-043378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半導体素子を封止する封止樹脂層は半導体パッケージの最外層に位置するため、優れた外観が求められる。一方で、封止樹脂層はフィラーを多く含有しているため、着色剤の添加量が少ないことがある。また、着色剤として広く用いられるカーボンブラックは導電性を示すため、信頼性の観点から封止樹脂層中に高濃度に添加することができないことがある。これらの理由により、封止樹脂層の黒さが不足して半導体パッケージの外観が悪い場合がある。
また、特許文献1又は2に開示の封止用シートは、上述のようにレーザーマーキング性に優れる樹脂層と半導体素子を封止する封止樹脂層とが積層した構成であるため、封止材の種類が封止樹脂層を構成する材料に限られてしまう。そのため、封止材の選択の自由度に劣る。
さらに、半導体パッケージの外観を向上させるために封止樹脂層の表面にレーザーマーキング性に優れる着色層を配置した場合、着色層のレーザーマーキングされた印字部が、レーザー照射時の熱により変色することがある。印字部が変色することで、非印字部とのコントラストが低下し、視認性及び意匠性が低下する場合がある。
【0008】
本開示の一態様は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであり、印字部の変色が抑制される半導体封止用マーキングフィルムを提供することを目的とする。また、本開示の一態様は、印字部の変色が抑制される半導体封止用離型フィルム並びにこの半導体封止用離型フィルムを用いた半導体パッケージ及び半導体パッケージの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 非芳香族性環状構造を有する樹脂を含む着色層を備える半導体封止用マーキングフィルム。
<2> 互いに色の異なる2種類の着色層を備え、前記着色層の少なくとも1つが、前記非芳香族性環状構造を有する樹脂を含む着色層である<1>に記載の半導体封止用マーキングフィルム。
<3> 前記非芳香族性環状構造を有する樹脂を含む着色層が、着色剤と熱硬化性樹脂と硬化剤とを含有し、前記非芳香族性環状構造を有する樹脂が、前記熱硬化性樹脂である<1>又は<2>に記載の半導体封止用マーキングフィルム。
<4> 前記硬化剤が、分子中に芳香環を含まない硬化剤を含む<3>に記載の半導体封止用マーキングフィルム。
<5> 基材と、離型層と、非芳香族性環状構造を有する樹脂を含む着色層と、をこの順に有する半導体封止用離型フィルム。
<6> 前記離型層上に、互いに色の異なる2種類の着色層を備え、前記着色層の少なくとも1つが、前記非芳香族性環状構造を有する樹脂を含む着色層である<5>に記載の半導体封止用離型フィルム。
<7> 前記非芳香族性環状構造を有する樹脂を含む着色層が、着色剤と熱硬化性樹脂と硬化剤とを含有し、前記非芳香族性環状構造を有する樹脂が、前記熱硬化性樹脂である<5>又は<6>に記載の半導体封止用離型フィルム。
<8> 前記硬化剤が、分子中に芳香環を含まない硬化剤を含む<7>に記載の半導体封止用離型フィルム。
<9> 半導体素子と、前記半導体素子を封止する封止樹脂層と、前記封止樹脂層の表面に設けられた着色層とを有し、前記着色層が、<5>~<8>のいずれか1項に記載の半導体封止用離型フィルムが有する着色層由来の層である半導体パッケージ。
<10> 半導体素子と<5>~<8>のいずれか1項に記載の半導体封止用離型フィルムにおける着色層とが対向するように、金型内に前記半導体素子と前記半導体封止用離型フィルムとを配置した状態で、前記半導体素子を封止する工程を有する半導体パッケージの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様によれば、印字部の変色が抑制される半導体封止用マーキングフィルムを提供することができる。また、本開示の一態様によれば、印字部の変色が抑制される半導体封止用離型フィルム並びにこの半導体封止用離型フィルムを用いた半導体パッケージ及び半導体パッケージの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、各成分には、該当する物質が複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において、各成分に該当する粒子には、複数種の粒子が含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本開示において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
本開示において「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味する。
【0012】
本開示において、層又は膜の平均厚みは、対象となる層又は膜の5点の厚みを測定し、その算術平均値として与えられる値とする。
層又は膜の厚みは、マイクロメーター等を用いて測定することができる。本開示において、層又は膜の厚みを直接測定可能な場合には、マイクロメーターを用いて測定する。一方、複数の層が積層した状態における当該複数の層のうちの1つの層の厚み又は複数の層の総厚みを測定する場合には、電子顕微鏡を用いて、測定対象の断面を観察することで測定してもよい。
【0013】
本開示において「平均粒子径」は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積累積の粒度分布曲線において、小粒子径側からの累積が50%となる粒子径(50%D)として求められる。例えば、レーザー光散乱法を利用した粒子径分布測定装置(例えば、株式会社島津製作所製、「SALD-3000」)を用いて測定することができる。
【0014】
<半導体封止用マーキングフィルム>
本開示の半導体封止用マーキングフィルム(以下、「マーキングフィルム」と称することがある。)は、非芳香族性環状構造を有する樹脂を含む着色層を備えるものである。着色層のレーザーマーキング法等によって除去された部分(印字部)が、識別情報として認識される。
本開示のマーキングフィルムは、印字部の変色が抑制される。その理由は明確ではないが、非芳香族性環状構造を有する樹脂は、レーザーマーキング法の際の熱による酸化及びそれに伴う黄変が生じにくいため、印字部の変色が抑制されやすくなると推察される。
【0015】
本開示のマーキングフィルムが備える着色層を構成する成分は、着色層の少なくとも1つに非芳香族性環状構造を有する樹脂が含有されていれば特に限定されるものではなく、当該技術分野で使用されている各種材料を組み合わせて着色層を構成することができる。本開示のマーキングフィルムが2以上の着色層を備える場合、着色層の少なくとも1つが非芳香族性環状構造を有する樹脂を含むものであればよく、全ての着色層が非芳香族性環状構造を有する樹脂を含むものでもよい。
【0016】
本開示において「非芳香族性環状構造」とは、芳香性を示さない環状構造をいう。非芳香族性環状構造としては、脂環構造、芳香性を示さない複素環構造等が挙げられる。
脂環構造の具体例としては、シクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造、キュバン構造、ノルボルナン構造、テトラヒドロジシクロペンタジエン構造、アダマンタン構造、ジアダマンタン構造、ビシクロ[2.2.2]オクタン構造、デカヒドロナフタレン構造、スピロ[5.5]ウンデカン構造等のスピロ環構造などが挙げられる。
芳香性を示さない複素環構造の具体例としては、ピロリジン構造、ピペリジン構造、ピペラジン構造、モルホリン構造、テトラヒドロフラン構造、テトラヒドロピラン構造、イソシアヌル酸構造等が挙げられる。
【0017】
着色層は、例えば、着色剤と熱硬化性樹脂と硬化剤とを含有するものであってもよい。着色層は、硬化促進剤、熱可塑性樹脂、無機充填材等のその他の成分を含有してもよい。着色層が非芳香族性環状構造を有する樹脂を含む場合、非芳香族性環状構造を有する樹脂が熱硬化性樹脂であってもよい。
着色層が2層以上である場合には、各着色層に含まれる着色剤は、同じであっても異なっていてもよく、異なっていることが好ましい。マーキングフィルムが互いに色の異なる2種類の着色層を備える場合、着色層の少なくとも1つが、非芳香族性環状構造を有する樹脂を含む着色層であればよい。
【0018】
着色層の平均厚みは、3μm~100μmであることが好ましく、5μm~60μmであることがより好ましい。
着色層が2層以上である場合には、着色層全体の平均厚みが上記範囲にあることがよい。
【0019】
-着色剤-
着色層は、着色剤を含んでもよい。着色剤としては、各種の有機顔料、無機顔料等を用いることができる。着色剤としては、黒色顔料、白色顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料等が挙げられる。これらの中でも、封止樹脂表面に印字された各種情報の視認性の観点から、黒色顔料及び白色顔料が好ましい。
黒色顔料としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラックなどが挙げられる。
白色顔料としては、塩基性炭酸鉛(2PbCO3・Pb(OH)2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)等が挙げられる。
【0020】
着色層における着色剤の含有率は、着色剤の種類に応じて、適宜設定することができる。
着色層における着色剤の含有率は、例えば、着色剤として黒色顔料が用いられた場合、0.5質量%~12質量%であることが好ましく、1質量%~10質量%であることがより好ましい。
着色層における着色剤の含有率は、例えば、着色剤として白色顔料が用いられた場合、15質量%~60質量%であることが好ましく、20質量%~50質量%であることがより好ましい。
マーキングフィルムは、着色層として互いに色の異なる2種類の着色層を備えるものであってもよい。マーキングフィルムが互いに色の異なる2種類の着色層を備える場合、白色顔料を含む着色層と黒色顔料を含む着色層との組み合わせであることが好ましい。
半導体パッケージの表面に白色顔料を含む着色層と黒色顔料を含む着色層とがこの順に転写されると、着色層が転写された半導体パッケージの表面にレーザー光を照射することにより、黒色顔料を含む着色層中の樹脂を昇華させて、着色層表面を削り取ることが可能となる。このときに、黒色顔料を含む着色層が削り取られた箇所からは白色顔料を含む着色層が現れるため、コントラストが高く、視認性のよい印字が可能となる。
この場合、白色顔料を含む着色層が非芳香族性環状構造を有する樹脂を含むことが好ましい。樹脂の変色による影響は、白色顔料を含む着色層でより大きくなる傾向にある。白色顔料を含む着色層が非芳香族性環状構造を有する樹脂を含むことで、白色顔料を含む着色層での変色(特に、着色層の黄変)が抑制される傾向にある。
【0021】
レーザーマーキング法に使用されるレーザーとしては、主に炭酸ガスレーザーとYAGレーザーとがある。レーザーマーキング法に使用されるレーザーは、YAGレーザーであることが多いため、着色層に含まれる黒色顔料としては、YAGレーザーにより揮発し易いカーボンブラックを使用することが好ましい。また、レーザーマーキング法に使用されるレーザーとしてYVO4レーザーを用いることもできる。
【0022】
-熱硬化性樹脂-
着色層は、熱硬化性樹脂を含んでもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、トリアジン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シアネートエステル樹脂、及びこれら樹脂の変性物を挙げることができる。これらの樹脂は1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
熱硬化性樹脂は、耐熱性の観点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、及びトリアジン樹脂からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましく、エポキシ樹脂であることがより好ましい。
【0023】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等の二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂などを使用することができる。また、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等、一般に知られているものを適用することができる。これらエポキシ樹脂は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0024】
エポキシ樹脂のエポキシ当量としては、80g/eq~220g/eqであることが好ましく、90g/eq~210g/eqであることがより好ましく、100g/eq~200g/eqであることがさらに好ましい。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、JIS K7236:2009に準拠して過塩素酸滴定法により測定する。
【0025】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、三菱ケミカル株式会社製の商品名:エピコート807、815、825、827、828、834、1001、1004、1007、1009等、ダウケミカル社製の商品名:DER-330、301、361等、新日化エポキシ製造株式会社製の商品名:YD8125、YDF8170等が挙げられる。
【0026】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、三菱ケミカル株式会社製、商品名:エピコート152、154等、日本化薬株式会社製、商品名:EPPN-201等、ダウケミカル社製、商品名:DEN-438等が挙げられる。また、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、日本化薬株式会社製、商品名:EOCN-102S、103S、104S、1012、1025、1027等、新日化エポキシ製造株式会社製、商品名:YDCN701、702、703、704等が挙げられる。
【0027】
多官能エポキシ樹脂としては、三菱ケミカル株式会社製、商品名:Epon 1031S等、チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名:アラルダイト0163等、ナガセ化成株式会社製、商品名:デナコールEX-611、614、614B、622、512、521、421、411、321等が挙げられる。アミン型エポキシ樹脂としては、三菱ケミカル株式会社製、商品名:エピコート604等、新日化エポキシ製造株式会社製、商品名:YH-434等、三菱ガス化学株式会社製、商品名:TETRAD-X、TETRAD-C等、住友化学工業株式会社製、商品名:ELM-120等が挙げられる。
【0028】
複素環含有エポキシ樹脂としては、チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名:アラルダイトPT810等、UCC社製、商品名:ERL4234、4299、4221、4206等、日産化学工業株式会社製、商品名:TEPIC-PAS等が挙げられる。
【0029】
脂環式エポキシ樹脂としては、株式会社ダイセル製、商品名:EHPE-3150、CEL2021P、CEL2000等が挙げられる。
【0030】
非芳香族性環状構造を有する樹脂がエポキシ樹脂である場合、エポキシ樹脂としては、複素環含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等が好ましく、溶剤に対する溶解性の観点から、脂環式エポキシ樹脂がより好ましい。
【0031】
着色層における熱硬化性樹脂の含有率は、0.1質量%~80質量%であることが好ましく、1質量%~60質量%であることがより好ましく、5質量%~50質量%であることがさらに好ましい。
着色層が2層以上である場合には、各着色層における熱硬化性樹脂の含有率が上記範囲にあることがよい。
【0032】
-硬化剤-
着色層は、硬化剤を含んでもよい。硬化剤は、通常用いられている公知の硬化剤を使用することができる。熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、硬化剤としては、アミン類、ポリアミド、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化ホウ素、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有するビスフェノール類、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂などが挙げられる。
これらの中でも、エポキシ樹脂の硬化性の観点から、フェノール樹脂、酸無水物、アミン類等が好ましい。
【0033】
硬化剤として用いられるフェノール樹脂としては、DIC株式会社製、商品名:フェノライトLF-2882、フェノライトLF-2822、フェノライトTD-2090、フェノライトTD-2149、フェノライトVH-4150、フェノライトVH-4170等、三井化学株式会社製、商品名:XLC-LL、XLC-4L等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0034】
硬化剤として用いられる酸無水物としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3-メチルテトラヒドロ無水フタル酸、4-メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ハイミック酸、無水メチルハイミック酸、無水クロレンド酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸マレイン酸付加物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、水素化メチルナジック酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0035】
硬化剤として用いられるアミン類としては、鎖状脂肪族アミン、環状脂肪族アミン、脂肪芳香族アミン、芳香族アミン等が挙げられる。
硬化剤として用いられるアミン類としては、具体的には、m-フェニレンジアミン、1,3-ジアミノトルエン、1,4-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノトルエン、3,5-ジエチル-2,4-ジアミノトルエン、3,5-ジエチル-2,6-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノアニソール等の芳香環が1個の芳香族アミン硬化剤;4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-メチレンビス(2-エチルアニリン)、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン等の芳香環が2個の芳香族アミン硬化剤;芳香族アミン硬化剤の加水分解縮合物;ポリテトラメチレンオキシドジ-p-アミノ安息香酸エステル、ポリテトラメチレンオキシドジパラアミノベンゾエート等のポリエーテル構造を有する芳香族アミン硬化剤;芳香族ジアミンとエピクロロヒドリンとの縮合物;芳香族ジアミンとスチレンとの反応生成物などが挙げられる。
【0036】
硬化剤としては、印字部の変色をさらに抑制する観点から、分子中に芳香環を含まない硬化剤であることが好ましく、芳香環を含まない酸無水物であることがより好ましく、ヘキサヒドロ無水フタル酸であることがさらに好ましい。
【0037】
熱硬化性樹脂と硬化剤との配合比率としては、それぞれの未反応分を少なく抑え、かつ硬化反応を十分に進行させる観点から、熱硬化性樹脂に含まれる熱硬化性官能基の当量数と硬化剤に含まれる官能基の当量数との比(熱硬化性樹脂の当量数/硬化剤の当量数)は、0.6~1.4の範囲に設定することが好ましく、0.7~1.3の範囲に設定することがより好ましく、0.8~1.2の範囲に設定することがさらに好ましい。
着色層が2層以上である場合には、各着色層における比(熱硬化性樹脂の当量数/硬化剤の当量数)が上記範囲にあることがよい。
【0038】
-硬化促進剤-
着色層は、硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤としては、各種イミダゾール類を用いることが好ましい。イミダゾールとしては、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。イミダゾール類は、四国化成工業株式会社から、2E4MZ、2PZ-CN、2PZ-CNS、2P4MHZ-PW等という商品名で市販されている。
また、硬化促進剤として、有機ホスフィン化合物を用いることもできる。有機ホスフィン化合物としては、具体的には、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p-トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等が挙げられる。
着色層に硬化促進剤が含有される場合、着色層における硬化促進剤の含有率は、0.01質量%~10質量%であることが好ましく、0.1質量%~8質量%であることがより好ましく、0.2質量%~6質量%であることがさらに好ましい。
【0039】
-熱可塑性樹脂-
着色層は、熱可塑性樹脂を含んでもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブタジエンゴム、アクリルゴム、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、及びこれらの混合物が挙げられるが、熱可塑性樹脂はこれら具体例に限定されるものではない。
熱可塑性樹脂としては、芳香環を有さない樹脂であることが好ましい。
着色層に熱可塑性樹脂が含有される場合、着色層における熱可塑性樹脂の含有率は、0.1質量%~30質量%であることが好ましく、0.5質量%~25質量%であることがより好ましく、1質量%~20質量%であることがさらに好ましい。
【0040】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1万~300万であることが好ましく、5万~250万であることがより好ましく、10万~200万であることがさらに好ましい。
本開示において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて、下記の装置及び測定条件により、標準ポリスチレンの検量線を使用して換算することによって決定した値である。検量線の作成にあたっては、標準ポリスチレンとして5サンプルセット(PStQuick MP-H、PStQuick B[東ソー株式会社製、商品名])を用いた。
装置:高速GPC装置 HLC-8320GPC(検出器:示差屈折計)(東ソー株式会社製、商品名)
使用溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
カラム:カラムTSKGEL SuperMultipore HZ-H(東ソー株式会社製、商品名)
カラムサイズ:カラム長15cm、カラム内径4.6mm
測定温度:40℃
流量:0.35mL/分
試料濃度:10mg/THF5mL
注入量:20μL
【0041】
-無機充填材-
着色層は、無機充填材を含んでもよい。無機充填材としては、結晶性シリカ、非晶性シリカ、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素等が挙げられる。これらの無機充填材は、1種類を単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。中でも汎用性の観点から結晶性シリカ、非晶性シリカ等のシリカフィラーが好ましい。シリカフィラーとしては日本アエロジル株式会社からR972、R972V、R972CF等、株式会社アドマテックスからSO-E1、SO-E2、SO-E5、SO-C1、SO-C2、SO-C3、SO-C5等、株式会社龍森からPLV-6、PLV-4、TFC-12、TFC-24、USV-5、USV-10等の製品名で市販されている。
無機充填材の平均粒子径は0.01μm~20μmであることが好ましく、0.1μm~10μmであることがより好ましく、0.2μm~2μmであることがさらに好ましい。
着色層に無機充填材が含有される場合、着色層における無機充填材の含有率は、1質量%~90質量%であることが好ましく、3質量%~80質量%であることがより好ましく、5質量%~70質量%であることがさらに好ましい。
【0042】
着色層に含まれる樹脂全体に占める、芳香環を有する樹脂の比率は、80質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
本開示において、芳香環を有する樹脂の比率は、着色層が1層の場合には、当該着色層に含まれる樹脂全体に占める、芳香環を有する樹脂の比率をいう。着色層が2層以上の場合には、全ての着色層に含まれる樹脂全体に占める、芳香環を有する樹脂の比率をいう。
【0043】
マーキングフィルムが備える着色層は、基材上に設けられていてもよい。マーキングフィルムに用いられる基材は、後述の半導体封止用離型フィルムに用いられる基材と同様のものを用いることができる。
【0044】
(半導体封止用マーキングフィルムの製造方法)
マーキングフィルムは、公知の方法により製造することができる。例えば、着色層を構成する成分を含有する着色層形成用組成物を基材の片面に付与して乾燥することでマーキングフィルムを製造することができる。着色層形成用組成物の詳細及び着色層形成用組成物を基材に付与する場合の詳細は、半導体封止用離型フィルムの製造方法の場合と同様である。
【0045】
<半導体封止用離型フィルム>
本開示の半導体封止用離型フィルム(以下、「離型フィルム」と称することがある。)は、基材と、離型層と、非芳香族性環状構造を有する樹脂を含む着色層と、をこの順に有するものである。着色層のレーザーマーキング法等によって除去された部分(印字部)が、識別情報として認識される。
【0046】
本開示の離型フィルムは、印字部の変色が抑制される。その理由は明確ではないが、以下のように推察される。
半導体素子と半導体封止用離型フィルムにおける着色層とが対向するように、金型内に半導体素子と離型フィルムとを配置した状態で、封止材を用いて半導体素子を封止することにより、半導体パッケージが製造される。封止材を用いて半導体素子を封止する際には、所定の温度条件で加圧処理が実施される。加圧処理後、半導体素子を封止する封止樹脂層の表面(つまり、半導体パッケージの表面)には、着色層が転写される。着色層に含まれる非芳香族性環状構造を有する樹脂は、レーザーマーキング法の際の熱による酸化及びそれに伴う黄変が生じにくい。そのため、半導体パッケージの表面の転写層にレーザーマーキング法により印字部を形成した場合に、印字部の変色が抑制されやすくなると推察される。
【0047】
本開示の離型フィルムは、基材と離型層と着色層とを有し、必要に応じてその他の層を有していてもよい。
以下、本開示の半導体封止用離型フィルムを構成する各種材料について説明する。
【0048】
(基材)
離型フィルムは基材を有する。基材としては特に限定されず、当該技術分野で使用されている樹脂含有基材から適宜選択することができる。金型の形状に対する追従性を向上する観点からは、延伸性に優れる樹脂含有基材を使用することが好ましい。
封止材による半導体素子の封止が高温(100℃~200℃程度)で行われることを考慮すると、基材は、この温度以上の耐熱性を有することが望ましい。また、離型フィルムを金型に装着する際及び成型中の樹脂が流動する際に封止樹脂のシワ、離型フィルムの破れ等の発生を抑制するためには、高温時の弾性率、伸び等を考慮して選択することが望ましい。
【0049】
基材は、耐熱性及び高温時の弾性率の観点から、ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂及びポリブチレンテレフタレート樹脂並びにこれらの共重合体及び変性樹脂が挙げられる。
基材としては、ポリエステル樹脂をシート状に成型したものが好ましく、基材がポリエステルフィルムであることがより好ましく、金型への追従性の観点からは、2軸延伸ポリエステルフィルムであることがさらに好ましく、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであることが特に好ましい。
基材の平均厚みは特に限定されず、5μm~100μmであることが好ましく、10μm~70μmであることがより好ましい。基材の平均厚みが5μm以上であると、取扱い性に優れ、シワが生じ難い傾向にある。基材の平均厚みが100μm以下であると、成型時の金型への追従性に優れるため、成型された半導体パッケージのシワ等の発生が抑制される傾向にある。
【0050】
(離型層)
離型フィルムは離型層を有する。離型層を構成する成分は特に限定されるものではなく、当該技術分野で使用されている各種材料を組み合わせて用いることができる。
離型層は、例えば、樹脂粒子及びバインダーを含有してもよく、必要に応じてその他の成分を含有してもよい。
【0051】
-樹脂粒子-
樹脂粒子を構成する樹脂の種類は特に限定されるものではない。樹脂粒子は、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂及びシリコーン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。半導体パッケージに対する離型性の観点からは、樹脂粒子は、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂及びポリアクリロニトリル樹脂から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
半導体パッケージ表面外観の均一性の観点から、樹脂粒子は、離型層形成用組成物の調製に使用され得る有機溶媒(例えば、トルエン、メチルエチルケトン及び酢酸エチル)に不溶性又は難溶性であることが好ましい。ここで、有機溶媒に不溶性又は難溶性とは、JIS K6769:2013に準拠するゲル分率試験において、トルエン等の有機溶媒中に樹脂粒子を分散して50℃で24時間保持した後のゲル分率が97%以上であることをいう。
【0052】
樹脂粒子の平均粒子径は、1μm~55μmであることが好ましい。樹脂粒子の平均粒子径が1μm以上であると、離型層の表面に充分に凹凸を形成することが可能であり、成型した半導体パッケージ表面外観の均一性が向上し封止材のフロー跡が抑制される傾向にある。また、樹脂粒子の平均粒子径が55μm以下であると、離型層中に樹脂粒子を固定するために離型層の平均厚みを過度に大きくする必要がなくコストの観点で好ましい。
樹脂粒子の平均粒子径の上限は、半導体パッケージ表面外観の観点から、55μmであることが好ましく、50μmであることがより好ましい。樹脂粒子の平均粒子径の下限は、コストの観点から、2μmであることがより好ましく、3μmであることがさらに好ましい。
【0053】
離型層に含まれる樹脂粒子の形状は、特に限定はされず、球形、楕円形、不定形等のいずれであってもよい。
【0054】
離型層に含まれる樹脂粒子の含有率は、5体積%~65体積%であることが好ましい。
含有率が5体積%以上であると、離型層表面に充分に凹凸を形成することが可能であり、成型した半導体パッケージ表面外観の均一性が向上して封止材のフロー跡を抑制する効果が充分得られる傾向にある。この観点から、樹脂粒子の含有率の下限は10体積%であることが好ましく、20体積%であることがより好ましい。
また、含有率が65体積%以下であると、離型層中の後述するバインダーにより樹脂粒子が固定されやすくなり、樹脂粒子の脱落の可能性が低下し、成型した半導体パッケージ表面への汚染を抑制でき、且つ経済的にも好ましい傾向にある。この観点から、樹脂粒子の含有率の上限は60体積%であることが好ましく、50体積%であることがより好ましい。
【0055】
-バインダー-
離型層に含まれていてもよいバインダーの種類は特に限定されるものではない。離型層がバインダーを含むことにより、樹脂粒子が離型層内に固定される。
バインダーは、半導体パッケージとの離型性、耐熱性等の観点から、アクリル樹脂又はシリコーン樹脂であることが好ましく、架橋型アクリル樹脂(以下、「架橋型アクリル共重合体」とも称する)であることがより好ましい。
【0056】
アクリル樹脂は、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、2-エチルヘキシルアクリレート等の低ガラス転移温度(Tg)モノマーを主モノマーとし、必要に応じてアクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル等の官能基モノマーと共重合することで得られるアクリル共重合体であってもよい。また、架橋型アクリル共重合体は、上記アクリル樹脂を架橋剤を使用して架橋することにより製造することができる。
架橋型アクリル共重合体の製造に使用される架橋剤としては、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物等の公知の架橋剤が挙げられる。また、アクリル樹脂中に緩やかに広がった網目状構造を形成するために、架橋剤は3官能、4官能等の多官能架橋剤であることがより好ましい。
【0057】
上記のような架橋剤を使用して製造される架橋型アクリル共重合体は緩やかに広がった網目状構造を有するので、この架橋型アクリル重合体を離型層のバインダーとして使用すると、離型層の延伸性が向上し、基材の延伸性を阻害することが抑制されるため、コンプレッション成型時の離型フィルムの金型に対する追従性を向上することができる。
この観点から、架橋型アクリル共重合体の製造において使用される架橋剤の量は、アクリル共重合体100質量部に対して、3質量部~100質量部であることが好ましく、5質量部~70質量部であることがより好ましい。架橋剤の量が3質量部以上であるとバインダーの強度が確保されるため汚染を防ぐことができる傾向にある。架橋剤の量が100質量部以下であると、架橋型アクリル共重合体の柔軟性が向上し、離型層の延伸性が向上する傾向にある。
【0058】
-その他の成分-
離型層は、必要に応じて、溶媒、アンカリング向上剤、架橋促進剤、帯電防止剤、着色剤等をさらに含んでいてもよい。
【0059】
-離型層の平均厚み-
離型層の平均厚みは特に限定されず、使用する樹脂粒子の平均粒子径との関係を考慮して適宜設定される。離型層の平均厚みは、0.1μm~100μmであることが好ましく、1μm~50μmであることがより好ましい。
離型層の平均厚みが使用する樹脂粒子の平均粒子径より極端に薄い状態でなければ、離型層中に樹脂粒子を固定することが困難になりにくく、樹脂粒子が脱落しにくい。そのため、成型した半導体パッケージ表面への離型層による汚染が生じにくい傾向にある。また、離型層の平均厚みが使用する樹脂粒子の平均粒子径より極端に厚い状態でなければ、成型した半導体パッケージ表面外観の均一性を向上する効果、封止材のフロー跡を抑制する効果等が得られやすい傾向にある。また、経済的にも不利益となりにくい傾向にある。
尚、本開示における離型層の平均厚みとは乾燥状態での平均厚みを意味し、離型フィルムの離型層を上記の層の平均厚みの測定方法で測定することができる。
【0060】
(着色層)
離型フィルムは、1又は2以上の着色層を有する。着色層を構成する成分等の詳細は、上述のマーキングフィルムの場合と同様である。
離型フィルムは、離型層上に、互いに色の異なる2種類の着色層を備えてもよい。この場合、着色層の少なくとも1つが、非芳香族性環状構造を有する樹脂を含む着色層とされる。
本開示の半導体封止用離型フィルムは、基材と、離型層と、黒色顔料を含む着色層と、白色顔料を含む着色層と、をこの順に有するものであることが好ましい。このような構成の半導体封止用離型フィルムを用いて半導体パッケージを成型すると、半導体パッケージの表面に、白色顔料を含む着色層と黒色顔料を含む着色層とがこの順に転写される。着色層が転写された半導体パッケージの表面にレーザー光を照射することにより、黒色顔料を含む着色層中の樹脂を昇華させて、着色層表面を削り取ることが可能となる。このときに、黒色顔料を含む着色層が削り取られた箇所からは白色顔料を含む着色層が現れるため、コントラストが高く、視認性のよい印字が可能となる。
【0061】
(その他の構成)
基材は金型表面に接触する層であり、用いる材料によっては離型フィルムを金型から剥離するためにより大きな剥離力が必要となることがある。この様に金型から剥離しにくい材料を基材に使用する場合には、金型から離型フィルムを剥離しやすくするように調整することが好ましい。例えば、基材の離型層の設けられる面とは反対の面、つまり基材の金型側の面に、金型からの離型性を向上させるために梨地加工等の表面加工をしたり、新たに別の離型層(第2離型層)を設けたりしてもよい。第2離型層の材料としては、耐熱性、金型からの剥離性等を満たす材料であれば特に限定せず、離型層と同じ材料を使用してもよい。第2離型層の平均厚みは、特に限定されず、0.1μm~100μmであることが好ましい。
【0062】
さらに、必要に応じて、離型層と基材との間、基材と第2離型層との間等に、アンカリング向上層(プライマ層)、帯電防止層等を設けてもよい。
【0063】
半導体封止用離型フィルムの着色層上には、保護フィルムを設けてもよい。保護フィルムとしては、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムなどが挙げられる。
【0064】
(半導体封止用離型フィルムの製造方法)
半導体封止用離型フィルムは、公知の方法により製造することができる。例えば、離型層を構成する成分を含有する離型層形成用組成物を基材の片面に付与し乾燥して基材上に離型層を形成した後、着色層を構成する成分を含有する着色層形成用組成物を離型層上に付与し乾燥して離型層上に着色層を形成することで、半導体封止用離型フィルムを製造してもよい。
その他の方法としては、離型層を構成する成分を含有する離型層形成用組成物を一の基材の片面に付与して乾燥することで一の基材上に離型層を形成する。一方、着色層を構成する成分を含有する着色層形成用組成物を他の基材の片面に付与して乾燥することで、他の基材上に着色層を形成する。そして、一の基材上の離型層と他の基材上の着色層とが接触するように両者を貼り合わせて、半導体封止用離型フィルムを製造してもよい。
離型層形成用組成物又は着色層形成用組成物の調製に使用する溶媒は特に限定されず、離型層又は着色層を構成する各成分を分散又は溶解可能である有機溶媒であることが好ましい。有機溶媒としては、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等が挙げられる。
また、他の基材としては、必要に応じて着色層上に設けられる保護フィルムとなりうるフィルムであってもよく、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムなどが挙げられる。また、必要に応じて他の基材の表面に離型処理等の表面処理を行ってもよい。
【0065】
離型層形成用組成物又は着色層形成用組成物を付与する方法は特に限定されず、ロールコート法、バーコート法、キスコート法、コンマコート法等の公知の塗布方法を使用することができる。
付与された離型層形成用組成物又は着色層形成用組成物を乾燥する方法は特に限定されず、公知の乾燥方法を使用することができる。例えば、50℃~150℃で0.1分~60分乾燥させる方法でもよい。
【0066】
<半導体パッケージ及びその製造方法>
本開示の半導体パッケージは、半導体素子と、前記半導体素子を封止する封止樹脂層と、前記封止樹脂層の表面に設けられた着色層とを有し、前記着色層が、本開示の半導体封止用離型フィルムが有する着色層由来の層である。
【0067】
本開示の半導体パッケージは、いかなる方法により製造されたものであってもよい。本開示の半導体パッケージは、例えば、半導体素子と本開示の半導体封止用離型フィルムにおける着色層とが対向するように、金型内に前記半導体素子と前記離型フィルムとを配置した状態で、前記半導体素子を封止する工程を経て製造されたものであってもよい。
半導体素子を封止する工程を経た後、着色層へのレーザーマーキングが施されてもよい。
半導体素子を封止する工程では、コンプレッション成型又はトランスファー成型により半導体素子を封止してもよく、コンプレッション成型であることが好ましい。
【0068】
通常、半導体パッケージのコンプレッション成型では、コンプレッション成型装置の金型に半導体封止用離型フィルムを配置し、真空吸着等により半導体封止用離型フィルムを金型の形状に追従させる。その後、半導体パッケージの封止材(例えば、エポキシ樹脂等)を金型に入れ、半導体素子をその上に配置し、加熱しながら金型を圧縮することにより封止材を硬化させて、半導体パッケージを成型する。その後、金型を開けて、成型された半導体パッケージを取り出す。このようにして、半導体パッケージを製造することができる。
このときに、半導体封止用離型フィルムの着色層が、半導体パッケージの封止樹脂層の表面に転写される。
着色層に含まれる熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂であることが好ましい。半導体パッケージの封止材はエポキシ樹脂を含有することが多いことから、着色層に熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂が含まれることで、封止樹脂層と着色層との密着性が向上しやすい。そのため、着色層へのシワ等の発生がより抑制されやすくなり、半導体パッケージ表面の外観がより優れたものとなる。
【実施例】
【0069】
以下に、本開示を実施例に基づいて説明するが、本開示は下記実施例に限定されるものではない。なお、下記実施例において、部及び%は特に断りのない限り、質量部及び質量%を示す。
【0070】
[実施例1]
(離型フィルムの作製)
アクリル樹脂(モノマー成分:アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル及びアクリロニトリル):65部と、スズ触媒(ジノルマルオクチルスズジラウレート):35部とトルエとを混合して固形分濃度が1%のプライマ層用溶液を調製した。
次に、アクリル樹脂(モノマー成分:アクリル酸アルキルエステル):100部と、架橋剤としてポリイソシアネート:17部と、フィラー(アクリル樹脂粒子、平均粒子径:10μm):10部と、トルエンとを混合して固形分濃度が15%の離型層用溶液を調製した。基材として、平均厚みが25μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、ロールコータを用いて、プライマ層用溶液を塗布後、離型層用溶液を乾燥後の平均厚みが10μmになるように重ねて塗布及び乾燥して離型層を形成し、離型フィルムを得た。乾燥温度は100℃とし、乾燥時間は2分とした。
【0071】
(第一着色層の作製)
熱可塑性樹脂(アクリル酸エステル系ポリマー、モノマー成分:アクリル酸ブチル及びアクリロニトリル、重量平均分子量90万)と、熱硬化性樹脂A(脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン構造含有、エポキシ当量:175g/eq)と、硬化剤A(ヘキサヒドロ無水フタル酸)と、黒色顔料(カーボンブラック、平均粒子径:0.5μm)と、硬化促進剤(2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール)と、シリカフィラー(平均粒子径:0.5μm)と、メチルエチルケトンとを混合し、固形分濃度が35.0%となる第一着色層形成用組成物の溶液を調製した。組成物の質量基準の組成比を表1に示す。単位は「質量部」である。
【0072】
第一着色層形成用組成物の溶液を、平均厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上にコンマコータで塗布した後、85℃で2分乾燥させることにより平均厚みが10μmの黒色の第一着色樹脂フィルムを作製した。
【0073】
(第二着色層の作製)
熱可塑性樹脂(アクリル酸エステル系ポリマー、モノマー成分:アクリル酸ブチル及びアクリロニトリル、重量平均分子量90万)と、熱硬化性樹脂A(脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン構造含有、エポキシ当量:175g/eq)と、硬化剤A(ヘキサヒドロ無水フタル酸)と、白色顔料(酸化チタン、平均粒子径:0.4μm)と、硬化促進剤(2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール)と、シリカフィラー(平均粒子径:0.5μm)と、メチルエチルケトンとを混合し、固形分濃度が38.0%となる第二着色層形成用組成物の溶液を調製した。
【0074】
第二着色層形成用組成物の溶液を、平均厚みが38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上にコンマコータで塗布した後、85℃で2分乾燥させることにより平均厚みが10μmの白色の第二着色樹脂フィルムを作製した。
【0075】
上記第一着色樹脂フィルムと第二着色樹脂フィルムとを黒色の第一着色層と白色の第二着色層とが接触した状態でロールラミネーターを用いて80℃、0.4MPaの条件で貼り合せ、黒色着色層と白色着色層とが積層されたマーキングフィルムを作製した。
【0076】
[着色層一体型離型フィルムの作製]
上記離型フィルムとマーキングフィルムとを、離型層と黒色の着色層とが接触した状態でロールラミネーターを用いて80℃、0.4MPaの条件で貼り合せ、着色層一体型離型フィルムを作製した。
【0077】
(コンプレッションモールド工程)
コンプレッション成型金型の上型に半導体ベアチップをセットし、下型に着色層一体型離型フィルムを装着し、半導体ベアチップと着色層一体型離型フィルムの着色層とが対向するように両者を配置した。着色層一体型離型フィルム上に封止材(日立化成株式会社製:商品名「CEL-9750ZHF10」)を供給した。着色層一体型離型フィルムを真空でコンプレッション成型金型の下型に固定した後、型締めし、封止材を成型(コンプレッション成型)して半導体パッケージを得た。金型温度は165℃、成形圧力は6.86MPa(70kgf/cm2)、成型時間は180秒とした。
【0078】
(硬化)
次に、半導体パッケージを熱硬化した。硬化温度は175℃、大気圧下、硬化時間は300分とした。
【0079】
(レーザーマーキング)
半導体パッケージに、以下の条件により印字を行った。なお、レーザーマーキングの条件は下記の通りである。
レーザーマーキング装置:商品名「MD-H9800」、株式会社キーエンス製
波長:1064nm
強度:2W
スキャンスピード:700mm/sec
Qスイッチ周波数:50kHz
文字(10mm×11mmのセルに120字、文字は特に限定されない)と矩形(15mm×15mm)をマーキングした。
【0080】
[実施例2~4及び比較例]
熱硬化性樹脂B(複素環含有エポキシ樹脂、イソシアヌル酸構造含有、エポキシ当量:135g/eq)、熱硬化性樹脂C(複素環含有エポキシ樹脂、イソシアヌル酸構造含有、エポキシ当量:105g/eq)、熱硬化性樹脂D(ノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量:200g/eq)、熱硬化性樹脂E(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量:160g/eq)、硬化剤A(ヘキサヒドロ無水フタル酸)、及び硬化剤B(ノボラック型フェノール樹脂)を用い、表1に示す組成比で着色層一体型離型フィルムを作製した。その他実施例1と同様の方法で半導体パッケージを作製し、評価した。結果を表2に示す。表1における「第一層」は第一着色層を意味し、「第二層」は第二着色層を意味する。
【0081】
【0082】
(評価方法)
-視認性-
レーザーマーキングにより形成された文字が目視(目視距離:約60cm)にて視認可能なものをAとし、視認不可能なものをBとした。
【0083】
-色相-
レーザーマーキングにより形成された矩形の色相を分光色彩計(日本電色工業株式会社製、ハンディ型色彩計NR3000)を用いて、JIS Z 8781-4:2013で規定される、CIE L*a*b*表色系で黄色みの指標のb*を評価した。
A:b*≦5
B:5<b*≦9
C:9<b*
【0084】
-耐熱性-
熱硬化後の半導体パッケージの着色層の剥離の有無を目視及び顕微鏡で観察し評価した。
A:剥離なし
B:剥離あり
【0085】
【0086】
表2から、非芳香族性環状構造を有する樹脂を含む着色層を有する本開示の半導体封止用離型フィルムは、レーザーマーキングによる印字部の黄変を抑制し、優れた視認性を半導体パッケージに付与することがわかる。
【0087】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。