(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ビスマレイミド系接着剤組成物、硬化物、接着シート及びフレキシブルプリント配線板
(51)【国際特許分類】
C09J 179/08 20060101AFI20241106BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20241106BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20241106BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20241106BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20241106BHJP
C08G 73/12 20060101ALI20241106BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20241106BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20241106BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241106BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C09J179/08 Z
C09J11/04
C09J11/06
C09J7/35
C08G73/10
C08G73/12
B32B27/34
B32B27/20 Z
B32B27/00 M
H05K1/03 610N
(21)【出願番号】P 2022514304
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(86)【国際出願番号】 JP2020027886
(87)【国際公開番号】W WO2021205675
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2020068399
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 来
(72)【発明者】
【氏名】亀井 淳一
(72)【発明者】
【氏名】小宮 聡一郎
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/016489(WO,A1)
【文献】特開2019-082598(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188189(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0237311(US,A1)
【文献】特開2015-032639(JP,A)
【文献】特表2018-538377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 179/08
C08G 73/12
B32B 15/08
B32B 27/00
H05K 1/03
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族テトラカルボン酸類(a1)、ダイマージアミン(a2)、及び無水マレイン酸(a3)を反応させてなるビスマレイミド樹脂(A)と、無機充填材(B)とを含み、
前記ビスマレイミド樹脂(A)の重量平均分子量が
17000~25000であり、
前記無機充填材(B)の含有量が、接着剤組成物の固形分全量を基準として5~55質量%である、ビスマレイミド系接着剤組成物。
【請求項2】
前記芳香族テトラカルボン酸類(a1)が、無水ピロメリット酸又は下記一般式(1)で表される化合物である、請求項1に記載のビスマレイミド系接着剤組成物。
【化1】
[式(1)中、Xは単結合又は下記群より選ばれる少なくとも一種の基を表す。]
【化2】
【請求項3】
前記ダイマージアミン(a2)が、下記一般式(2)及び/又は一般式(2’)で表される化合物である、請求項1又は2に記載のビスマレイミド系接着剤組成物。
【化3】
【化4】
[式(2)及び(2’)中、m、n、p及びqはそれぞれ、m+n=6~17、p+q=8~19となるように選ばれる1以上の整数を表し、破線で示した結合は、炭素-炭素単結合又は炭素-炭素二重結合を意味する。但し、破線で示した結合が炭素-炭素二重結合である場合、式(2)及び(2’)は、炭素-炭素二重結合を構成する各炭素原子に結合する水素原子の数を、式(2)及び(2’)に示した数から1つ減じた構造となる。]
【請求項4】
前記無機充填材がシリカである、請求項1~
3のいずれか一項に記載のビスマレイミド系接着剤組成物。
【請求項5】
更に重合開始剤(D)を含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載のビスマレイミド系接着剤組成物。
【請求項6】
前記重合開始剤(D)が、有機過酸化物、イミダゾール化合物、ホスフィン化合物、ホスホニウム塩化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項
5に記載のビスマレイミド系接着剤組成物。
【請求項7】
前記無機充填材(B)の平均粒径が100nm~10μmである、請求項1~
6のいずれか一項に記載のビスマレイミド系接着剤組成物。
【請求項8】
前記無機充填材(B)の平均粒径が200nm~1.0μmである、請求項1~
7のいずれか一項に記載のビスマレイミド系接着剤組成物。
【請求項9】
前記無機充填材(B)の含有量が、接着剤組成物の固形分全量を基準として5~25質量%である、請求項1~
8のいずれか一項に記載のビスマレイミド系接着剤組成物。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか一項に記載のビスマレイミド系接着剤組成物を硬化させることにより得られる硬化物。
【請求項11】
請求項1~
9のいずれか一項に記載のビスマレイミド系接着剤組成物をシート基材に塗布し、乾燥させることによって得られる接着シート。
【請求項12】
請求項
11に記載の接着シートの接着面に更にシート基材を熱圧着させることにより得られる積層体。
【請求項13】
請求項
12に記載の積層体を更に加熱することによって得られる積層体。
【請求項14】
請求項
13に記載の積層体を用いてなるフレキシブルプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスマレイミド系接着剤組成物、硬化物、接着シート及びフレキシブルプリント配線板に関する。より詳しくは、本発明は、優れた低誘電特性を有し、更に銅箔及びポリイミドシート等の基材に対し、高い接着性を有する新規なビスマレイミド系接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板(以下、「FPC」と略す)及びFPCを用いた多層配線板は、携帯電話及びスマートフォン等のモバイル型通信機器ならびにその基地局装置、サーバー・ルーター等のネットワーク関連電子機器、大型コンピュータ等の製品で使用されている。
【0003】
近年、それらの製品においては、大容量の情報を高速で伝送・処理するために高周波の電気信号が使用されているが、高周波信号は非常に減衰しやすいため、上記FPC及び多層配線板等にも伝送損失を抑える工夫が求められる。
【0004】
伝送損失は、誘電体、即ち導体(銅回路)周囲の絶縁材料に由来する“誘電体損失”と、銅回路自体に由来する“導体損失”とに区別でき、双方を抑制する必要がある。
【0005】
誘電体損失は、周波数と、銅回路周囲の絶縁材料の誘電率及び誘電正接とに依存する。そして、周波数が高いほど、該絶縁材料としては、低誘電率且つ低誘電正接の材料を用いる必要がある。
【0006】
一方、導体損失は、表皮効果、即ち、銅回路表面の交流電流密度が高くなりその抵抗が大きくなる現象に起因しており、周波数が1GHzを超えた場合に顕著となる。導体損失を抑制するための主な対策は、銅回路表面の平滑化である。
【0007】
誘電体損失を抑制するには、上記したように、絶縁材料として低誘電率且つ低誘電損失の材料を用いるのがよく、そのような材料としては、従来、特定のポリイミドが使用されてきた(特許文献1及び2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2009-299040号公報
【文献】特開2014-045076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した絶縁材料は、極性基、即ち水酸基、カルボキシル基及びニトリル基等の官能基を有しないか、有していても少量であるため、平滑な銅回路には密着し難いという問題がある。逆に、そうした官能基を多く有する材料は、平滑な銅回路に対する密着性は高くても、誘電率及び誘電正接が共に高くなる傾向にある。
【0010】
そこで、本発明は、誘電率及び誘電正接(以下、両者を「誘電特性」と総称することがある。)が共に低く、かつ、銅及びポリイミドフィルム、特に平滑表面を備える銅に対する密着性が良好である、新規なビスマレイミド系接着剤を提供することを主たる課題とする。
【0011】
すなわち、本発明は、低誘電特性を有し、且つ銅箔及びポリイミドシート等の基材に対し、優れた接着性を有するビスマレイミド系接着剤組成物を提供することを目的とする。本発明はまた、上記ビスマレイミド系接着剤組成物を用いた硬化物、接着シート及びフレキシブルプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、芳香族テトラカルボン酸類(a1)、ダイマージアミン(a2)、及び無水マレイン酸(a3)を反応させてなるビスマレイミド樹脂(A)と、無機充填材(B)とを含み、且つ、無機充填材(B)の含有量が所定の範囲内であるビスマレイミド系接着剤組成物が、優れた低誘電特性を有し、更に銅箔及びポリイミドシート等の基材に対し、高い接着性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の発明を提供する。
[1]芳香族テトラカルボン酸類(a1)、ダイマージアミン(a2)、及び無水マレイン酸(a3)を反応させてなるビスマレイミド樹脂(A)と、無機充填材(B)とを含み、上記無機充填材(B)の含有量が、接着剤組成物の固形分全量を基準として5~55質量%である、ビスマレイミド系接着剤組成物。
[2]上記芳香族テトラカルボン酸類(a1)が、無水ピロメリット酸又は下記一般式(1)で表される化合物である、上記[1]に記載のビスマレイミド系接着剤組成物。
【化1】
[式(1)中、Xは単結合又は下記群より選ばれる少なくとも一種の基を表す。]
【化2】
[3]上記ダイマージアミン(a2)が、下記一般式(2)及び/又は一般式(2’)で表される化合物である、上記[1]又は[2]に記載のビスマレイミド系接着剤組成物。
【化3】
【化4】
[式(2)及び(2’)中、m、n、p及びqはそれぞれ、m+n=6~17、p+q=8~19となるように選ばれる1以上の整数を表し、破線で示した結合は、炭素-炭素単結合又は炭素-炭素二重結合を意味する。但し、破線で示した結合が炭素-炭素二重結合である場合、式(2)及び(2’)は、炭素-炭素二重結合を構成する各炭素原子に結合する水素原子の数を、式(2)及び(2’)に示した数から1つ減じた構造となる。]
[4]上記ビスマレイミド樹脂(A)の重量平均分子量が3000~25000である、上記[1]~[3]のいずれかに記載のビスマレイミド系接着剤組成物。
[5]上記無機充填材がシリカである、上記[1]~[4]のいずれかに記載のビスマレイミド系接着剤組成物。
[6]更に重合開始剤(D)を含む、上記[1]~[5]のいずれかに記載のビスマレイミド系接着剤組成物。
[7]上記重合開始剤(D)が、有機過酸化物、イミダゾール化合物、ホスフィン化合物、ホスホニウム塩化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記[6]に記載のビスマレイミド系接着剤組成物。
[8]上記無機充填材(B)の平均粒径が100nm~10μmである、上記[1]~[7]のいずれかに記載のビスマレイミド系接着剤組成物。
[9]上記無機充填材(B)の平均粒径が200nm~1.0μmである、上記[1]~[8]のいずれかに記載のビスマレイミド系接着剤組成物。
[10]上記無機充填材(B)の含有量が、接着剤組成物の固形分全量を基準として5~25質量%である、上記[1]~[9]のいずれかに記載のビスマレイミド系接着剤組成物。
[11]上記[1]~[10]のいずれかに記載のビスマレイミド系接着剤組成物を硬化させることにより得られる硬化物。
[12]上記[1]~[10]のいずれかに記載のビスマレイミド系接着剤組成物をシート基材に塗布し、乾燥させることによって得られる接着シート。
[13]上記[12]に記載の接着シートの接着面に更にシート基材を熱圧着させることにより得られる積層体。
[14]上記[13]に記載の積層体を更に加熱することによって得られる積層体。
[15]上記[14]に記載の積層体を用いてなるフレキシブルプリント配線板。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低誘電特性を有し、且つ銅箔及びポリイミドシート等の基材に対し、優れた接着性を有するビスマレイミド系接着剤組成物、それを用いた硬化物、接着シート及びフレキシブルプリント配線板を提供することができる。
【0015】
本発明の接着剤組成物は、高周波帯の低誘電特性に優れるだけなく、銅箔及びポリイミドシート等の基材に対する接着性に優れる。また、当該接着剤組成物より得られる硬化物(接着剤層)は低タックであり、かつ5%重量減少温度が高くアウトガスが少なく、更に、線膨張係数(CTE)が低いため、プリント回路基板(ビルドアップ基板、フレキシブルプリント配線板等)及びフレキシブルプリント配線板用銅張り板の製造に用いる接着剤としてのみならず、半導体層間材料、コーティング剤、レジストインキ、導電ペースト等の電気絶縁材料等としても有用である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
<ビスマレイミド系接着剤組成物>
本実施形態のビスマレイミド系接着剤組成物は、芳香族テトラカルボン酸類(a1)(以下、「(a1)成分」ともいう。)、ダイマージアミン(a2)(以下、「(a2)成分」ともいう。)、及び無水マレイン酸(a3)(以下、「(a3)成分」ともいう。)を反応させてなるビスマレイミド樹脂(A)(以下、「(A)成分」ともいう。)と、無機充填材(B)(以下、「(B)成分」ともいう。)とを含む。本実施形態のビスマレイミド系接着剤組成物は、更に有機溶剤(C)(以下、「(C)成分」ともいう。)を含んでもよい。また、本実施形態のビスマレイミド系接着剤組成物は、更に重合開始剤(D)(以下、「(D)成分」ともいう。)を含んでもよい。
【0018】
((A)成分:ビスマレイミド樹脂)
(A)成分は、(a1)成分、(a2)成分、及び(a3)成分を反応させて得ることができる。
【0019】
(a1)成分としては、ポリイミドの原料として公知のものを使用できる。具体的には、無水ピロメリット酸及び下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【化5】
[式(1)中、Xは単結合又は下記群より選ばれる少なくとも一種の基を表す。]
【化6】
【0020】
式(1)で表される化合物としては、例えば、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,3’,4,4’-テトラカルボキシフェニル)テトラフルオロプロパン二無水物、2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)スルホン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸無水物、4,4’-[プロパン-2,2-ジイルビス(1,4-フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
(a2)成分は、例えば、特開平9-12712号公報に記載されているように、オレイン酸等の不飽和脂肪酸の二量体であるダイマー酸から誘導される化合物である。本実施形態では、公知のダイマージアミンを特に制限なく使用できるが、例えば下記一般式(2)及び/又は一般式(2’)で表されるものが好ましい。
【0022】
【化7】
【化8】
[式(2)及び(2’)中、m、n、p及びqはそれぞれ、m+n=6~17、p+q=8~19となるように選ばれる1以上の整数を表し、破線で示した結合は、炭素-炭素単結合又は炭素-炭素二重結合を意味する。但し、破線で示した結合が炭素-炭素二重結合である場合、式(2)及び(2’)は、炭素-炭素二重結合を構成する各炭素原子に結合する水素原子の数を、式(2)及び(2’)に示した数から1つ減じた構造となる。]
【0023】
ダイマージアミンとしては、有機溶剤への溶解性、耐熱性、耐熱接着性、低粘度等の観点より、上記一般式(2’)で表されるものが好ましく、特に下記式(3)で表される化合物が好ましい。
【化9】
【0024】
ダイマージアミンの市販品としては、例えば、PRIAMINE1075、PRIAMINE1074(いずれもクローダジャパン(株)製)等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
(A)成分は、各種公知の方法により製造できる。例えば、先ず、(a1)成分と(a2)成分とを60~120℃程度、好ましくは70~90℃の温度において、通常0.1~2時間程度、好ましくは0.1~1.0時間重付加反応させる。次いで、得られた重付加物を更に80~250℃程度、好ましくは100~200℃の温度において、0.5~30時間程度、好ましくは0.5~10時間イミド化反応、即ち脱水閉環反応させる。続いて、脱水閉環反応させた物と(a3)成分とを60~250℃程度、好ましくは80~200℃の温度において、0.5~30時間程度、好ましくは0.5~10時間マレイミド化反応、即ち脱水閉環反応させることにより、目的とする(A)成分が得られる。
【0026】
なお、イミド化反応又はマレイミド化反応において、各種公知の反応触媒、脱水剤、及び後述する有機溶剤を使用できる。反応触媒としては、トリエチルアミン等の脂肪族第3級アミン類、ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン類、ピリジン、ピコリン、イソキノリン等の複素環式第3級アミン類、又はメタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸一水和物等の有機酸などが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。脱水剤としては、例えば無水酢酸等の脂肪族酸無水物、及び、無水安息香酸等の芳香族酸無水物などが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
また、(A)成分は各種公知の方法により精製でき、純度を上げることができる。例えば、先ず、有機溶剤に溶かした(A)成分と純水とを分液ロートに入れる。次いで、分液ロートを振り、静置させる。続いて、水層と有機層とが分離した後、有機層のみを回収することで、(A)成分を精製できる。
【0028】
(A)成分の分子量は、(a1)成分と(a2)成分のモル数で制御することができ、(a1)成分のモル数が(a2)成分のモル数より小さいほど、分子量を小さくすることができる。本発明の効果を達成し易くする目的において、通常、〔(a1)成分のモル数〕/〔(a2)成分のモル数〕が0.30~0.85程度、好ましくは0.50~0.80の範囲が良い。
【0029】
(A)成分の分子量としては、溶剤への溶解性及び耐熱性の観点から、重量平均分子量で3000~25000が好ましく、7000~20000がより好ましい。重量平均分子量が25000以下であると有機溶剤への溶解性が良好となり、3000以上であると、耐熱性を向上させる効果が十分に得られる傾向がある。
【0030】
本実施形態の(A)成分は、市販の化合物を用いることもでき、具体的には例えば、DESIGNER MOLECURES Inc.製のBMI-3000CG(ダイマージアミン、ピロメリット酸二無水物及びマレイン酸無水物より合成)、BMI-1500、BMI-1700、BMI-5000等を好適に用いることができる。(A)成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
((B)成分:無機充填材)
(B)成分は、ビスマレイミド系接着剤組成物に使用可能な無機充填材であれば各種公知のものを特に限定なく使用できる。(B)成分としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウイスカ、窒化ほう素、シリカ、黒鉛粉、ベーマイト等が挙げられる。これらのなかで、特にシリカが低誘電正接に優れるため好ましい。(B)成分は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
(B)成分の平均粒径は、50nm以上、100nm以上、又は、200nm以上であってよく、10μm以下、5.0μm以下、3.0μm以下、又は、1.0μm以下であってよい。(B)成分の平均粒径は、100nm~10μm、又は、50nm~5.0μmが好ましく、100nm~3.0μmがより好ましく、200nm~1.0μmが更に好ましい。(B)成分の平均粒径が上記範囲であると、接着シートの表面粗度を小さくし、ポリイミドフィルム及び銅箔等の基材との接着性を高めることができる。
【0033】
上記(B)成分の平均粒径として、体積積算粒度分布における積算粒度で50%となるメディアン径(d50)の値が採用される。上記平均粒径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定可能である。
【0034】
(B)成分は、表面処理されていることが好ましく、カップリング剤による表面処理物であることが好ましく、シランカップリング剤による表面処理物であることが更に好ましい。上記(B)成分が表面処理されていることにより、有機溶剤への(B)成分の分散性を高めることができるだけでなく、更に接着シートの表面の表面粗さがより一層小さくなり、ポリイミドフィルム及び銅箔等の基材との接着性を高めることができる。
【0035】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、メタクリルシラン、アクリルシラン、アミノシラン、フェニルアミノシラン、イミダゾールシラン、フェニルシラン、ビニルシラン、及びエポキシシラン等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
(B)成分の含有量は、接着剤組成物の固形分(不揮発分)全量を基準(100質量%)として、5~55質量%であり、5~50質量%であることが好ましく、5~25質量%、又は、10~35質量%であることがより好ましい。(B)成分の含有量が55質量%以下であると、接着性の低下を抑制できる傾向があり、5質量%以上であると、誘電正接を低減する効果、及び、耐熱性を向上させる効果が十分に得られる傾向がある。
【0037】
((C)成分:有機溶剤)
(C)成分としては、(A)成分を溶解させるものであれば、特に限定されない。(C)成分としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、プロパンジオール、フェノール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、ヘキサノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン等のケトン系溶剤、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のセルソルブ類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、ギ酸ブチル等のエステル系溶剤、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-iso-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-iso-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテ等のグリコールエーテル系溶剤などを使用することができる。これらは1種又は2種以上を併用することができる。好ましい態様としては、(A)成分の溶解性が高い芳香族炭化水素のトルエン又はメシチレンと、(B)成分の分散性が高いケトン系溶剤のメチルエチルケトン又はメチルイソブチルケトンとを組み合わせて用いることが好ましい。
【0038】
(C)成分の使用量は特に限定されないが、通常、本実施形態の接着剤組成物の不揮発分が20~65質量%程度となる範囲で用いればよい。
【0039】
((D)成分:重合開始剤)
(D)成分として具体的には、例えば、有機過酸化物、イミダゾール化合物、ホスフィン化合物、ホスホニウム塩化合物等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも特にイミダゾール化合物が重合開始剤として優れた機能を有し、また低誘電特性の点でも優れるため好ましい。
【0040】
有機過酸化物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n-ブチル4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、t-ブチルハイドロパーオキサイド、P-メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、桂皮酸パーオキサイド、m-トルオイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、α,α’-ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3,-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルへキサノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシマレイックアシッド、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ-m-トルオイルベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレート、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの有機過酸化物のなかでも、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等が好ましい。
【0041】
イミダゾール化合物としては、例えば、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1-ビニル-2-メチルイミダゾール、1-プロピル-2-メチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、1-シアノメチル-2-メチル-イミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール等が挙げられる。なかでも、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール及び2-エチル-4-メチルイミダゾールが本実施形態の接着剤組成物との溶解性が高く好ましい。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
ホスフィン化合物としては、例えば、1級ホスフィン、2級ホスフィン、3級ホスフィンなどが挙げられる。上記1級ホスフィンとしては、具体的には、エチルホスフィン、プロピルホスフィン等のアルキルホスフィン、フェニルホスフィンなどが挙げられる。上記2級ホスフィンとしては、具体的には、ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン等のジアルキルホスフィン、ジフェニルホスフィン、メチルフェニルホスフィン、エチルフェニルホスフィン等の2級ホスフィンなどが挙げられる。上記3級ホスフィンとしては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、アルキルジフェニルホスフィン、ジアルキルフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリ-p-スチリルホスフィン、トリス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリ-4-メチルフェニルホスフィン、トリ-4-メトキシフェニルホスフィン、トリ-2-シアノエチルホスフィンなどが挙げられる。なかでも、3級ホスフィンが好ましく使用される。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
ホスホニウム塩化合物としては、テトラフェニルホスホニウム塩、アルキルトリフェニルホスホニウム塩、テトラアルキルホスホニウム等を有する化合物が挙げられ、具体的には、テトラフェニルホスホニウム-チオシアネート、テトラフェニルホスホニウム-テトラ-p-メチルフェニルボレート、ブチルトリフェニルホスホニウム-チオシアネート、テトラフェニルホスホニウム-フタル酸、テトラブチルホスホニウム-1,2-シクロへキシルジカルボン酸、テトラブチルホスホニウム-1,2-シクロへキシルジカルボン酸、テトラブチルホスホニウム-ラウリン酸等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
(D)成分の含有量は、特に限定されないが、(A)成分100質量部に対して、0.1~10.0質量部が好ましく、1.0~5.0質量部がより好ましい。
【0045】
本実施形態の接着剤組成物の調製は、一般的に採用されている方法に準じて実施される。調製方法としては、例えば、溶融混合、粉体混合、溶液混合等の方法が挙げられる。また、この際には、本実施形態の必須成分以外の、例えば、離型剤、難燃剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、接着付与剤、低応力剤、着色剤、カップリング剤等を、本発明の効果を損なわない範囲において配合してもよい。また、本実施形態の接着剤組成物は、エポキシ樹脂やアクリレート化合物、ビニル化合物、ベンゾオキサジン化合物、ビスマレイミド化合物等の上記(A)成分以外の樹脂を含んでいてもよい。
【0046】
(離型剤)
離型剤は、金型からの離型性を向上させるために添加される。離型剤としては、例えば、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、ポリプロピレン、モンタン酸、モンタン酸と飽和アルコール、2-(2-ヒドロキシエチルアミノ)エタノール、エチレングリコール、グリセリン等とのエステル化合物であるモンタンワックス、ステアリン酸、ステアリン酸エステル、ステアリン酸アミド等公知のものを全て使用することができる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
(難燃剤)
難燃剤は、難燃性を付与するために添加され、公知のものを全て使用することができ、特に制限されない。難燃剤としては、例えば、ホスファゼン化合物、シリコン化合物、モリブデン酸亜鉛担持タルク、モリブデン酸亜鉛担持酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化モリブデン等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
(イオントラップ剤)
イオントラップ剤は、液状の樹脂組成物中に含まれるイオン不純物を捕捉し、熱劣化及び吸湿劣化を防ぐために添加される。イオントラップ剤は公知のものを全て使用することができ、特に制限されない。イオントラップ剤としては、例えば、ハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス化合物、希土類酸化物等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
<硬化物>
本実施形態の硬化物は、本実施形態の接着剤組成物を硬化させたものである。具体的には、当該接着剤組成物を150~250℃程度で5分~3時間程度加熱処理することで得ることができる。
【0050】
本実施形態の硬化物の形状は特に限定されないが、基材シートの接着用途に供する場合には、膜厚が通常1~100μm程度、好ましくは3~50μm程度のシート状とすることができ、膜厚は用途に応じて適宜調整できる。
【0051】
<接着シート>
本実施形態の接着シートは、本実施形態の接着剤組成物をシート基材に塗布し、乾燥させることによって得られる。当該シート基材としては、例えば、ポリイミド、ポリイミド-シリカハイブリッド、ポリアミド、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリスチレン樹脂(PSt)、ポリカーボネート樹脂(PC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)、エチレンテレフタレート、フェノール、フタル酸、ヒドロキシナフトエ酸等とパラヒドロキシ安息香酸とから得られる芳香族系ポリエステル樹脂(所謂液晶ポリマー;(株)クラレ製、「ベクスター」等)などの有機基材が挙げられ、これらの中でも耐熱性及び寸法安定性等の点より、ポリイミドフィルム、特にポリイミド-シリカハイブリッドフィルムが好ましい。また、当該シート基材の厚みは用途に応じて適宜設定できる。
【0052】
<積層体>
本実施形態の積層体は、上記接着シートの接着面に更にシート基材を熱圧着させることにより得られる。当該シート基材としては、ガラス、鉄、アルミ、42アロイ、銅等の金属、ITO、シリコン及びシリコンカーバイド等の無機基材が好適であり、その厚みは用途に応じて適宜設定できる。また、当該積層体は、更に加熱処理したものであってよい。
【0053】
<フレキシブルプリント基板及びフレキシブルプリント配線板>
本実施形態のフレキシブルプリント基板は、上記積層体を用いたものであり、当該積層体の無機基材面に更に上記接着シートの接着面を貼りあわせることにより得られる。当該フレキシブルプリント基板としては、有機基材としてポリイミドフィルムを、無機基材として金属箔(特に銅箔)を用いたものが好ましい。そして、かかるフレキシブルプリント基板の金属表面をソフトエッチング処理して回路を形成し、そのうえに更に上記接着シートを貼りあわせて熱プレスすることにより、フレキシブルプリント配線板が得られる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各例中、部及び%は特記しない限り質量基準である。
【0055】
<製造例1>
冷却器、窒素導入管、熱伝対、攪拌機を備えた1Lのフラスコ容器に、無水ピロメリット酸((株)ダイセル製)52.8質量部、メシチレン(東洋合成工業(株)製)432.5質量部、及びエタノール(和光純薬工業(株)製)94.0質量部を投入した。投入後、80℃に昇温し、0.5時間保温し、ダイマージアミン(商品名「PRIAMINE1075」、クローダジャパン(株)製)176.7質量部を滴下した。滴下後、メタンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)3.7質量部を加えた。その後165℃に昇温し、165℃で1時間脱水閉環反応を行い、反応液中の水とエタノールを除去し、中間体のポリイミド樹脂を得た。続いて、得られたポリイミド樹脂を130℃に冷却し、無水マレイン酸(扶桑化学工業(株)製)23.4質量部を加え、165℃に昇温し、165℃で4時間脱水閉環反応を行い、反応液中の水を除去し、ビスマレイミド樹脂を得た。
【0056】
得られたビスマレイミド樹脂を分液ロートに入れ、純水1000質量部を投入し、分液ロートを振り、静置させた。静置後、水層と有機層が分離した後、有機層のみを回収した。回収した有機層を冷却器、窒素導入管、熱伝対、攪拌機、真空ポンプを備えた1Lのガラス製容器に投入し、88~93℃に昇温し、水を除去した後、130℃に昇温し、-0.1MPaの減圧下で1時間溶剤を除去した。溶剤を除去したあと、100℃まで冷却し、常圧にした後、トルエン(山一化学工業(株)製)135.9質量部を加え、ビスマレイミド樹脂(A-1)の溶液(不揮発分が59.8質量%)を得た。
【0057】
<製造例2>
製造例1と同様の反応容器に、4,4’-オキシジフタル酸無水物(和光純薬工業(株)製)66.7質量部、メシチレン(東洋合成工業(株)製)426.0質量部、及びエタノール(和光純薬工業(株)製)91.2質量部を投入した。投入後、80℃に昇温し、0.5時間保温し、ダイマージアミン(商品名「PRIAMINE1075」、クローダジャパン(株)製)159.0質量部を滴下した。滴下後、メタンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)3.3質量部を加えた。その後165℃に昇温し、165℃で1時間脱水閉環反応を行い、反応液中の水とエタノールを除去し、中間体のポリイミド樹脂を得た。続いて、得られたポリイミド樹脂を130℃に冷却し、無水マレイン酸(扶桑化学工業(株)製)21.1質量部を加え、165℃に昇温し、165℃で4時間脱水閉環反応を行い、反応液中の水を除去し、ビスマレイミド樹脂を得た。
【0058】
得られたビスマレイミド樹脂を分液ロートに入れ、純水1000質量部を投入し、分液ロートを振り、静置させた。静置後、水層と有機層が分離した後、有機層のみを回収した。回収した有機層を冷却器、窒素導入管、熱伝対、攪拌機、真空ポンプを備えた1Lのガラス製容器に投入し、88~93℃に昇温し、水を除去した後、150℃に昇温し、-0.1MPaの減圧下で1時間溶剤を除去した。溶剤を除去したあと、100℃まで冷却し、常圧にした後、トルエン(山一化学工業(株)製)122.3質量部を加え、ビスマレイミド樹脂(A-2)の溶液(不揮発分が59.9質量%)を得た。
【0059】
<製造例3>
製造例1と同様の反応容器に、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(和光純薬工業(株)製)63.2質量部、メシチレン(東洋合成工業(株)製)419.6質量部、及びエタノール(和光純薬工業(株)製)90.1質量部を投入した。投入後、80℃に昇温し、0.5時間保温し、ダイマージアミン(商品名「PRIAMINE1075」、クローダジャパン(株)製)159.0質量部を滴下した。滴下後、メタンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)3.3質量部を加えた。その後165℃に昇温し、165℃で1時間脱水閉環反応を行い、反応液中の水とエタノールを除去し、中間体のポリイミド樹脂を得た。続いて、得られたポリイミド樹脂を130℃に冷却し、無水マレイン酸(扶桑化学工業(株)製)21.1質量部を加え、165℃に昇温し、165℃で4時間脱水閉環反応を行い、反応液中の水を除去し、ビスマレイミド樹脂を得た。
【0060】
得られたビスマレイミド樹脂を分液ロートに入れ、純水1000質量部を投入し、分液ロートを振り、静置させた。静置後、水層と有機層が分離した後、有機層のみを回収した。回収した有機層を冷却器、窒素導入管、熱伝対、攪拌機、真空ポンプを備えた1Lのガラス製容器に投入し、88~93℃に昇温し、水を除去した後、150℃に昇温し、-0.1MPaの減圧下で1時間溶剤を除去した。溶剤を除去したあと、100℃まで冷却し、常圧にした後、トルエン(山一化学工業(株)製)120.5質量部を加え、ビスマレイミド樹脂(A-3)の溶液(不揮発分が59.3質量%)を得た。
【0061】
<製造例4>
製造例1と同様の反応容器に、4,4’-[プロパン-2,2-ジイルビス(1,4-フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物(商品名「BISDA1000」、SABICイノベーティブプラスチックスジャパン合同会社製)91.0質量部、メシチレン(東洋合成工業(株)製)415.3質量部、及びエタノール(和光純薬工業(株)製)86.7質量部を投入した。投入後、80℃に昇温し、0.5時間保温し、ダイマージアミン(商品名「PRIAMINE1075」、クローダジャパン(株)製)129.6質量部を滴下した。滴下後、メタンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)2.7質量部を加えた。その後165℃に昇温し、165℃で1時間脱水閉環反応を行い、反応液中の水とエタノールを除去し、中間体のポリイミド樹脂を得た。続いて、得られたポリイミド樹脂を130℃に冷却し、無水マレイン酸(扶桑化学工業(株)製)17.2質量部を加え、165℃に昇温し、165℃で4時間脱水閉環反応を行い、反応液中の水を除去し、ビスマレイミド樹脂を得た。
【0062】
得られたビスマレイミド樹脂を分液ロートに入れ、純水1000質量部を投入し、分液ロートを振り、静置させた。静置後、水層と有機層が分離した後、有機層のみを回収した。回収した有機層を冷却器、窒素導入管、熱伝対、攪拌機、真空ポンプを備えた1Lのガラス製容器に投入し、88~93℃に昇温し、水を除去した後、150℃に昇温し、-0.1MPaの減圧下で1時間溶剤を除去した。溶剤を除去したあと、100℃まで冷却し、常圧にした後、トルエン(山一化学工業(株)製)119.3質量部を加え、ビスマレイミド樹脂(A-4)の溶液(不揮発分が59.5質量%)を得た。
【0063】
<比較製造例1>
製造例1と同様の反応容器に、無水ピロメリット酸((株)ダイセル製)36.5質量部、メシチレン(東洋合成工業(株)製)429.0質量部、及びエタノール(和光純薬工業(株)製)88.7質量部を投入した。投入後、80℃に昇温し、0.5時間保温し、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(商品名「KF-8010」、信越化学工業(株)製)191.6質量部を滴下した。滴下後、メタンスルホン酸(和光純薬工業(株)製)2.6質量部を加えた。その後165℃に昇温し、165℃で1時間脱水閉環反応を行い、反応液中の水とエタノールを除去し、中間体のポリイミド樹脂を得た。続いて、得られたポリイミド樹脂を130℃に冷却し、無水マレイン酸(扶桑化学工業(株)製)16.4質量部を加え、165℃に昇温し、165℃で4時間脱水閉環反応を行い、反応液中の水を除去し、ビスマレイミド樹脂を得た。
【0064】
得られたビスマレイミド樹脂を分液ロートに入れ、純水1000質量部を投入し、分液ロートを振り、静置させた。静置後、水層と有機層が分離した後、有機層のみを回収した。回収した有機層を冷却器、窒素導入管、熱伝対、攪拌機、真空ポンプを備えた1Lのガラス製容器に投入し、88~93℃に昇温し、水を除去した後、150℃に昇温し、-0.1MPaの減圧下で1時間溶剤を除去した。溶剤を除去したあと、100℃まで冷却し、常圧にした後、トルエン(山一化学工業(株)製)123.2質量部を加え、ビスマレイミド樹脂(X)の溶液(不揮発分が59.7質量%)を得た。
【0065】
【0066】
PMDA:無水ピロメリット酸
ODPA:4,4’-オキシジフタル酸無水物
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
BISDA:4,4’-[プロパン-2,2-ジイルビス(1,4-フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物
PRIAMINE:ダイマージアミン
KF8010:α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン
【0067】
<物性評価方法>
(重量平均分子量(Mw))
重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。テトラヒドロフラン(THF)にビスマレイミド樹脂を濃度3質量%となるように溶解させたサンプルを、30℃に加温されたカラム(GL-R420(株式会社日立ハイテクフィールディング製)×1本、GL-R430(株式会社日立ハイテクフィールディング製)×1本、GL-R440(株式会社日立ハイテクフィールディング製)×1本)に50μL注入し、展開溶媒としてTHFを用い、流速1.6mL/minの条件で測定を行った。なお、検出器には、L-3350 RI検出器(株式会社日立製作所製)を用い、溶出時間から標準ポリスチレン(東ソー株式会社製)を用いて作製した分子量/溶出時間曲線により重量平均分子量(Mw)を換算した。
【0068】
[実施例1]
225mlの円筒形状の容器に、製造例1で得られたビスマレイミド樹脂(A-1)の溶液100質量部、(B)成分としてシリカ含有スラリー((株)アドマテックス製、商品名「SC2050-KNK」、シリカ70質量%)21.4質量部、(C)成分としてメチルイソブチルケトン(和光純薬(株)製)20.0質量部を仕込んだ。続いて、容器に蓋をし、容器内の混合物を、バリアブルミックスローター(アズワン(株)製、品番「VMR-5R」)を用いて70rpmで4時間以上撹拌することによって、不揮発分52.9質量%の接着剤組成物を得た。
【0069】
[実施例2~8]
(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分として、表2で示す種類のものをそれぞれ同表に示す使用量で使用した他は実施例1と同様にして、各接着剤組成物を得た。
【0070】
[比較例1]
実施例1において、(A-1)成分の溶液に代えて、上記(X)成分の溶液を表2で示す量で用い、かつ(B)成分及び(C)成分として、表2に示す種類のものをそれぞれ同表に示す使用量で使用した他は実施例1と同様にして、接着剤組成物を得た。
【0071】
[比較例2]
(B)成分の使用量を表2に示す量に変更した他は実施例1と同様にして、接着剤組成物を得た。
【0072】
【0073】
SC2050-KNK:シリカ含有スラリー((株)アドマテックス製、シリカ70質量%、フェニルアミノシランで表面処理されたシリカ粒子、平均粒径0.4μm)
MIBK:メチルイソブチルケトン(和光純薬(株)製)
2E4MZ:2-エチル-4-メチルイミダゾール(和光純薬(株)製)
【0074】
(実施例9)
225mlの円筒形状の容器に、製造例1で得られたビスマレイミド樹脂(A-1)の溶液100質量部、(B)成分としてシリカ含有スラリー((株)アドマテックス製、商品名「SC2050-KNK」、シリカ70質量%)42.7質量部、(C)成分としてメチルイソブチルケトン(和光純薬(株)製)25.0質量部を仕込み、ホモミキサー(プライミクス(株)製、「T.K.ホモミクサー MARKII」)を用いて9000rpmで20分間撹拌した。その後(D)成分としてジクミルパーオキサイド(日油(株)製、商品名「パークミルD」)0.60質量部を加え、バリアブルミックスローター(アズワン(株)製、品番「VMR-5R」)を用いて70rpmで1時間以上撹拌することによって、不揮発分53.6質量%の接着剤組成物を得た。
【0075】
[実施例10~19]
(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分として、表3で示す種類のものをそれぞれ同表に示す使用量で使用した他は実施例9と同様にして、各接着剤組成物を得た。
【0076】
【0077】
3SX-CX1:シリカ含有スラリー((株)アドマテックス製、シリカ60.5質量%、フェニルアミノシランで表面処理されたシリカ粒子、平均粒径0.3μm)
YA050C-KJK:シリカ含有スラリー((株)アドマテックス製、シリカ51.0質量%、フェニルアミノシランで表面処理されたシリカ粒子、平均粒径50nm)
DCP:ジクミルパーオキサイド(日油(株)製)
【0078】
<接着シート(1)の作製>
実施例1の接着剤組成物を、アプリケータを用いてフィルムバイナ(登録商標)(PETフィルム、藤森工業(株)製、商品名「NS14」、膜厚75μm)の上に、乾燥後に30μmの厚みになるように塗布し、オーブンを用いて130℃、20分間の乾燥処理を行い、接着シート(1)を作製した。他の実施例及び比較例の接着剤組成物についても同様にして接着シート(1)を得た。
【0079】
<硬化シート(1)の作製>
実施例1の接着シート(1)の接着面にポリイミドフィルム(商品名「100EN」、東レ・デュポン(株)製、膜厚25μm)を重ね合わせ、真空ラミネータにて75℃、0.5MPa、30秒の条件で熱圧着した。熱圧着後にPETフィルムを剥離し、熱風乾燥機で200℃、2時間の加熱処理を行うことで硬化シート(1)を得た。他の実施例及び比較例の接着剤組成物についても同様にして硬化シート(1)を得た。
【0080】
<硬化シート(2)の作製>
実施例1の接着剤組成物を、アプリケータを用いてセパニウム(東洋アルミニウム(株)製、商品名「50B2-EA(A)4G/M2」、膜厚50μm)の上に、乾燥後に100μmの厚みになるように塗布し、オーブンを用いて130℃、20分間の乾燥処理を行った。その後、オーブンを用いて200℃、1時間の加熱処理を行った。加熱処理後、室温まで冷却し、セパニウムから剥離して硬化シート(2)を得た。
【0081】
<積層体(1)の作製>
PETフィルムを剥離した実施例1の接着シート(1)と、2枚の銅箔(商品名「F2WS-18」、古河電工株式会社製、厚み18μm)とを、銅箔の粗化面が接着シートと対面するように積層し、熱プレスにて200℃、2MPa、2時間の条件で熱圧着し、銅箔、接着シートの硬化物、銅箔がこの順に積層されてなる積層体(1)を得た。他の実施例及び比較例の接着剤組成物についても同様にして積層体(1)を得た。
【0082】
<積層体(2)の作製>
PETフィルムを剥離した実施例1の接着シート(1)と、2枚のポリイミドフィルム(商品名「100EN」、東レ・デュポン(株)製、厚み25μm)とを接着シートが真ん中になるように積層し、熱プレスにて200℃、2MPa、2時間の条件で熱圧着し、ポリイミドフィルム、接着シートの硬化物、ポリイミドフィルムがこの順に積層されてなる積層体(2)を得た。他の実施例及び比較例の接着剤組成物についても同様にして積層体(2)を得た。
【0083】
<タック性の評価>
硬化シート(1)の接着面に、銅箔(商品名「F2WS-18」、古河電工株式会社製、厚み18μm)の光沢面を重ね、銅箔を水平方向に動かした。その際に粘着性があり、銅箔を動かせなかった場合をタック性有りとし、水平方向に動かせた場合をタック性無しとした。
【0084】
<接着強度>
積層体(1)及び積層体(2)を用いてポリイミドフィルム及び銅箔との接着強度を測定した。接着強度は、90°剥離測定機(株式会社山電製、RHEONERII CREEP METER RE2-3305B)を使用し、常温で引張速度5mm/sで測定した。結果を表4及び表5に示す。
【0085】
<接着強度の判定基準>
A:接着強度が1.0kN/m以上
B:接着強度が0.5kN/m以上、1.0kN/m未満
C:接着強度が0.5kN/m未満
【0086】
<誘電率及び誘電正接>
積層体(1)の両面の銅箔をエッチングにより除去し、130℃で30分乾燥させた後、10cm×5cmの試験片を作製し、SPDR誘電体共振器(Agilent Technologies社製)にて10GHzの比誘電率及び誘電正接を測定した。結果を表4及び表5に示す。なお、比較例1については、エッチングでの試験片の作製が困難であったため、測定が出来なかった。
【0087】
<5%重量減少温度>
積層体(1)の両面の銅箔をエッチングにより除去し、130℃で30分乾燥させた後、接着シートの硬化物をオープン型試料容器(セイコー電子社製「P/N SSC000E030」)に6.0~10.0mg計りとり、窒素流量300mL/min、昇温速度10℃/minの条件で測定し、5%重量減少温度(Td5)を測定した。測定装置は、TG/DTA7200(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を使用した。結果を表4及び表5に示す。
【0088】
<線膨張係数(CTE)α1、α2>
硬化シート(2)から30mm×4mmのサイズを有する試験片を作製した。この試験片を用いて、熱機械分析装置(商品名「TMA/SS7100」、(株)日立ハイテクサイエンス製)を用いて線膨張係数(CTE)を測定した。測定モードは引張りモード、測定荷重は20~49mN、測定雰囲気は大気雰囲気、昇温速度は1stランが10℃/min、2ndランが5℃/minとし、2ndランの40~55℃における測定結果をα1、110~160℃における測定結果をα2とした。結果を表4及び表5に示す。
【0089】
【0090】
【0091】
表4及び表5から明らかなように、本実施形態のビスマレイミド樹脂(A)と無機充填材(B)とを含有し、且つ、無機充填材(B)の含有量が5~55質量%(接着剤組成物の固形分全量基準)の範囲内である接着剤組成物(実施例)は、低誘電特性に優れるだけでなく、銅箔及びポリイミドフィルムと高い接着強度を示すことが確認された。更に、実施例の接着剤組成物を用いて得られる硬化物は、低タックであり、5%重量減少温度も高く、アウトガスも少ないことが確認された。また更に、実施例の接着剤組成物を用いて得られる硬化物は、線膨張係数(CTE)が低減されていることが確認された。なお、実施例14~19において、誘電特性は他の実施例と同程度の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の接着剤組成物は、高周波帯の低誘電特性に優れるだけなく、銅箔及びポリイミドシート等の基材に対する接着性に優れる。また、当該接着剤組成物より得られる硬化物(接着剤層)は低タックであり、かつ5%重量減少温度が高くアウトガスが少なく、更に、線膨張係数(CTE)が低いため、プリント回路基板(ビルドアップ基板、フレキシブルプリント配線板等)及びフレキシブルプリント配線板用銅張り板の製造に用いる接着剤としてのみならず、半導体層間材料、コーティング剤、レジストインキ、導電ペースト等の電気絶縁材料等としても有用である。