(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜、及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20241106BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08G73/10
(21)【出願番号】P 2022515216
(86)(22)【出願日】2021-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2021005019
(87)【国際公開番号】W WO2021210252
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2020072740
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【氏名又は名称】小森 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】杉山 崇明
(72)【発明者】
【氏名】原田 佳和
(72)【発明者】
【氏名】石川 和典
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-185064(JP,A)
【文献】国際公開第2019/139115(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0142614(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08G 73/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸誘導体成分と下記式(1)で表されるジアミンを含むジアミン成分とを用いて得られるポリイミド前駆体、及び該ポリイミド前駆体のイミド化合物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(A)を含有することを特徴とする、液晶配向剤。
【化1】
(式中、X
1は下記式(g)で表される4価の有機基を表し、Arは、縮合環を分子主鎖中に有する炭素数7~40の2価の有機基を表
し、前記式(1)におけるイミド環の窒素原子に前記Arにおける縮合環が結合している。)
【化2】
(R
1からR
4はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、フッ素原子を含有する炭素数1~6の1価の有機基、又はフェニル基を表し、R
1からR
4が全て水素原子であるか又はR
1からR
4の少なくとも1つは上記規定した基のうち水素原子以外のいずれかの基を表す。)
【請求項2】
前記式(1)におけるArが、下記式(Rn)で表される基を有する炭素数7~40の2価の有機基である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【化3】
(*1、*2は結合手を
表し、前記式(Rn)における結合手「*1」が、前記式(1)におけるイミド環の窒素原子と結合する。)
【請求項3】
前記(g)で表される4価の有機基が下記式(X1-1)~(X1-6)のいずれかである、
請求項1又は2に記載の液晶配向剤。
【化4】
(*は結合手を表す。)
【請求項4】
式(1)で表されるジアミンが、下記式(1-1)~(1-5)のいずれかで表されるジアミンである、請求項1~
3のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【化5】
【請求項5】
前記ジアミン成分中の10~100モル%が、式(1)で表されるジアミンである、請求項1~
4のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
前記ジアミン成分が、更に下記式(2)又は(2i)で表されるジアミンを含有する請求項1~
5のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【化6】
(Y
2は下記式(O)で表される2価の有機基を表す。Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。Y
2iは、下記式(O’)で表される2価の有機基を表す。)
【化7】
(Arは、2価のベンゼン環、ビフェニル構造、又はナフタレン環を表す。2つのArは同一でも異なってもよく、前記環の任意の水素原子は1価の置換基で置換されていてもよい。pは0又は1の整数である。Q
2は-(CH
2)
n-(nは2~18の整数である。)、又は前記-(CH
2)
n-の-CH
2-の少なくとも一部を-O-、-C(=O)-又は-O-C(=O)-のいずれかで置き換えた基を表す。*は結合手を表す。)
【化8】
(Ar’は、2価のベンゼン環、又はビフェニル構造を表す。2つのAr’は同一でも異なってもよく、前記環の任意の水素原子は1価の置換基で置換されていてもよい。p’は0又は1の整数である。Q
2’は-(CH
2)
n-(nは2~18の整数である。)、又は前記-(CH
2)
n-の-CH
2-の少なくとも一部を-O-、-C(=O)-又は-O-C(=O)-のいずれかで置き換えた基を表す。*は結合手を表す。)
【請求項7】
前記式(O)で表される2価の有機基が、下記式(o-1)~(o-16)のいずれかの構造である、請求項
6に記載の液晶配向剤。
【化9】
【化10】
【化11】
【請求項8】
前記テトラカルボン酸誘導体成分が、下記式(3)で表される化合物又はその誘導体を含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【化12】
(Xは、下記(x-1)~(x-13)からなる群から選ばれる構造を表す。)
【化13】
(R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、塩素原子、フッ素原子、フッ素原子を含有する炭素数1~6の1価の有機基、又はベンゼン環を表す。R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。j及びkは、0又は1の整数であり、A
1及びA
2は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-CO-、-COO-、フェニレン、スルホニル、又はアミド結合を表す。*1は一方の酸無水物基に結合する結合手であり、*2は他方の酸無水物基に結合する結合手である。)
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の液晶配向剤から得られる液晶配向膜。
【請求項10】
請求項
9に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
【請求項11】
下記の工程(1)~(3)を含む、液晶配向膜の製造方法。
工程(1):請求項1~
8のいずれか一項に記載の液晶配向剤を基板上に塗布する工程
工程(2):塗布した液晶配向剤を加熱して膜を得る工程
工程(3):工程(2)で得られた膜に偏光された紫外線を照射する工程
【請求項12】
下記の工程(4)をさらに含む、請求項
11に記載の液晶配向膜の製造方法。
工程(4):工程(3)で得られた膜を、100℃以上、且つ、工程(2)よりも高い温度で焼成する工程
【請求項13】
前記工程(2)は、40~180℃の温度範囲で加熱して膜を得る工程である、請求項
11または
12に記載の液晶配向膜の製造方法。
【請求項14】
請求項
11~
13のいずれか一項に記載の液晶配向膜の製造方法を含む、液晶表示素子の製造方法。
【請求項15】
下記式(1-1)~(1-5)のいずれかで表されるジアミン。
【化14】
【請求項16】
請求項
15に記載の前記式(1-1)~(1-5)のいずれかのジアミンを含むジアミン成分から得られる重合体。
【請求項17】
請求項
15に記載の前記式(1-1)~(1-5)のいずれかのジアミンを含むジアミン成分とテトラカルボン酸誘導体成分とを用いて得られるポリイミド前駆体、及び該ポリイミド前駆体のイミド化合物であるポリイミド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜、及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から液晶表示装置は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、携帯電話、テレビジョン受像機等の表示部として幅広く用いられている。液晶表示装置は、例えば、素子基板とカラーフィルタ基板との間に挟持された液晶層、液晶層に電界を印加する画素電極及び共通電極、液晶層の液晶分子の配向性を制御する配向膜、画素電極に供給される電気信号をスイッチングする薄膜トランジスタ(TFT)等を備えている。液晶分子の駆動方式としては、TN方式、VA方式等の縦電界方式や、IPS方式、FFS(フリンジフィールドスイッチング)方式等の横電界方式が知られている。
【0003】
現在、工業的に最も普及している液晶配向膜は、電極基板上に形成された、ポリアミック酸及び/又はこれをイミド化したポリイミドからなる膜の表面を、綿、ナイロン、ポリエステル等の布で一方向に擦る、いわゆるラビング処理を行うことで作製されている。ラビング処理は、簡便で生産性に優れた工業的に有用な方法である。しかし、液晶表示素子の高性能化、高精細化、大型化に伴い、ラビング処理で発生する配向膜の表面の傷、発塵、機械的な力や静電気による影響、更には、配向処理面内の不均一性等の種々の問題が明らかとなっている。ラビング処理に代わる配向処理方法としては、偏光された放射線を照射することにより、液晶配向能を付与する光配向法が知られている。光配向法は、光異性化反応を利用したもの、光架橋反応を利用したもの、光分解反応を利用したもの等が提案されている(例えば、非特許文献1、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-297313号公報
【文献】特表2018-526675号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】「液晶光配向膜」木戸脇、市村 機能材料 1997年11月号 Vol.17、 No.11 13~22ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリイミド系液晶配向剤を基板上に塗布・乾燥した後、偏光紫外線を照射してから焼成する工程によって製造した液晶配向膜は、必ずしも液晶配向の安定性が十分ではないという問題があった。
特に製造時における焼成温度や偏光紫外線の照射量の変動幅が大きくなると、液晶配向膜面内での液晶配向性にバラツキ(不均一性)が生じやすくなり、液晶表示素子面内における液晶のツイスト角度のバラツキも大きくなっていた。すると、液晶表示素子で黒表示を行った際、面内の明るさにバラツキが生じ、表示品位を低下させることが懸念される。
【0007】
以上のようなことから、光を照射してから焼成する工程によって製造した液晶配向膜であっても、液晶配向性が良好で、且つ、液晶配向膜面内での液晶配向性のバラツキ(不均一性)が抑制された液晶配向膜が求められていた。
【0008】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、光を照射してから焼成する工程によって製造できる液晶配向膜であって、液晶配向性が良好で、且つ、液晶配向膜面内での液晶配向性のバラツキ(不均一性)が抑制された液晶配向膜、並びに該液晶配向膜を得るための液晶配向剤、及び該液晶配向膜を用いた液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を達成するために鋭意研究を行った結果、特定のジアミンを用いて得られる重合体を含む液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜が上記の目的を達成するために極めて有効であることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明は、以下の態様を包含するものである。
[1]テトラカルボン酸誘導体成分と下記式(1)で表されるジアミンを含むジアミン成分とを用いて得られるポリイミド前駆体、及び該ポリイミド前駆体のイミド化合物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(A)を含有することを特徴とする、液晶配向剤。
【化1】
(式中、X
1は下記式(g)で表される4価の有機基を表し、Arは、縮合環を分子主鎖中に有する炭素数7~40の2価の有機基を表す。)
【化2】
(R
1からR
4はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、フッ素原子を含有する炭素数1~6の1価の有機基、又はフェニル基を表し、R
1からR
4が全て水素原子であるか又はR
1からR
4の少なくとも1つは上記規定した基のうち水素原子以外のいずれかの基を表す。)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光を照射してから焼成する工程によって製造できる液晶配向膜であって、液晶配向性が良好で、且つ、液晶配向膜面内での液晶配向性のバラツキ(不均一性)が抑制された液晶配向膜、並びに該液晶配向膜を得るための液晶配向剤、及び該液晶配向膜を用いた液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、特定のジアミンを用いて得られる重合体を含有する液晶配向剤、該液晶配向剤を用いて形成される液晶配向膜、及び該液晶配向膜を有する液晶表示素子について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の一実施態様としての一例であり、これらの内容に特定されるものではない。
【0013】
(液晶配向剤)
本発明の液晶配向剤は、重合体(A)を含有する。
本発明の液晶配向剤の好ましい実施態様としては、重合体(A)、及び有機溶媒を含有する液晶配向剤が挙げられる。
また、本発明の液晶配向剤は、重合体(A)以外の重合体(例えば、後述する重合体(B))も含有することができる。
【0014】
<重合体(A)>
重合体(A)は、上記式(1)で表されるジアミン(特定ジアミンともいう)を含むジアミン成分とテトラカルボン酸誘導体成分とを用いて得られるポリイミド前駆体、及び該ポリイミド前駆体のイミド化合物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体である。
このような重合体の具体例としては、例えば、アミック酸及びアミック酸エステルなどのイミド前駆体構造を有するポリイミド前駆体、該ポリイミド前駆体のイミド化合物であるポリイミド、イミド構造を有するポリウレア、イミド構造を有するポリアミドなどが挙げられる。該重合体は、液晶配向剤としての使用の観点から、ポリイミド前駆体、及びポリイミドから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
重合体(A)は、一種を単独で使用してもよく、また二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
<<特定ジアミン>>
本発明に使用される特定ジアミンは、下記式(1)で表されるジアミンである。
【0016】
【化3】
(式中、X
1は下記式(g)で表される4価の有機基を表し、Arは、縮合環を分子主鎖中に有する炭素数7~40の2価の有機基を表す。)
【0017】
【化4】
(R
1からR
4はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、フッ素原子を含有する炭素数1~6の1価の有機基、又はフェニル基を表し、R
1からR
4が全て水素原子であるか又はR
1からR
4の少なくとも1つは上記規定した基のうち水素原子以外のいずれかの基を表す。)
【0018】
上記式(1)におけるArにおける縮合環としては、例えば、ナフタレン環、テトラリン環、インデン環、フルオレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環等の縮合多環芳香族炭化水素;ベンゾフラン環、チオナフテン環、インドール環、カルバゾール環、クマリン環、ベンゾ-ピロン環、キノリン環、イソキノリン環、アクリジン環、フタラジン環、キナゾリン環、キノキサリン環等の縮合多環式複素環が挙げられる。縮合環は、液晶配向性を高める観点から、好ましくは、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環、インドール環、カルバゾール環、クマリン環、ベンゾ-ピロン環、キノリン環、又はイソキノリン環であり、更に好ましくはナフタレン環である。上記縮合環は、更に置換基を有していてもよい。縮合環が有していてもよい置換基としては、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0019】
上記縮合環は液晶配向性を高める観点から、好ましくは、下記式(Rn)で表される基である。
【0020】
【0021】
上記(Rn)において、結合手「*1」は、液晶配向性を高める観点から、上記式(1)におけるイミド環の窒素原子と結合することが好ましい。
【0022】
上記式(1)におけるArは好ましくは、下記式(f)で表される炭素数7~40の2価の有機基が好ましい。
【0023】
【化6】
(A
1及びA
2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい単環又は縮合環であり、A
1及びA
2は、同時に単環であることはない。X
1及びX
2は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は硫黄原子である。Qは、炭素数1~8のアルキレン基、或いはアルキレン基の炭素-炭素結合間に酸素原子又は硫黄原子を含む2価の有機基である。m及びnは、それぞれ独立して、1~3の整数である。*1、*2は結合手を表す。)
【0024】
式(f)における単環としては、例えば、ベンゼン環;フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環等の5員複素環;ピラン環、ピロン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環等の6員複素環が挙げられる。単環は、好ましくは、ベンゼン環又はピリジン環である。
【0025】
式(f)のA1及びA2における縮合環としては、好ましい態様を含めて上記式(1)のArの縮合環として説明したとおりである。
【0026】
上記単環及び縮合環は、更に置換基を有していてもよい。単環及び縮合環が有していてもよい置換基としては、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0027】
X1及びX2は、好ましくは、酸素原子である。Qは、液晶配向規制力の観点から、好ましくは、炭素数2のアルキレンである。m及びnは、好ましくは、1である。
【0028】
上記式(1)におけるArは好ましくは、下記式(f-1)~(f-23)で表される2価の有機基が挙げられるが、これらに限定されない。*1、*2は結合手を表す。
【0029】
【0030】
【0031】
上記(f-1)~(f-23)において、結合手「*1」は、液晶配向性を高める観点から、上記式(1)におけるイミド環の窒素原子と結合することが好ましい。
【0032】
上記(g)で表される4価の有機基は、液晶配向性を高める観点から、下記式(X1-1)~(X1-6)のいずれかの構造が好ましい。
【0033】
【0034】
特定ジアミンの好ましい具体例を挙げると、下記式(1-1)~(1-5)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
【0036】
<<ジアミン成分>>
重合体(A)を得る為のジアミン成分は、上記式(1)で表されるジアミンの少なくとも1種を含む物であり、1種類のジアミンからなるものであってもよく、2種類以上のジアミンからなるものであってもよい。ジアミン成分が2種類以上のジアミンからなる場合には、式(1)で表されるジアミンと共に式(1)で表されるジアミン以外のジアミンを含んでいてもよい。重合体(A)を得る為のジアミン成分における式(1)で表されるジアミンの割合は、使用されるジアミン成分1モルに対して、5~100モル%であることが好ましく、より好ましくは10~100モル%である。
【0037】
重合体(A)を得る為のジアミン成分として、式(1)で表されるジアミンと共に用いるジアミンは特に限定されないが、例えば下記式(2)又は式(2i)で表され、且つ上記式(1)で表されるジアミンを除いた化合物を挙げることができる。
【0038】
【化11】
(Y
2は下記式(O)で表される2価の有機基を表す。Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。Y
2iは、下記式(O’)で表される2価の有機基を表す。)
【0039】
【化12】
(Arは、2価のベンゼン環、ビフェニル構造、又はナフタレン環を表す。2つのArは同一でも異なってもよく、該環の任意の水素原子は1価の置換基で置換されていてもよい。pは0又は1の整数である。Q
2は-(CH
2)
n-(nは2~18の整数である。)、又は該-(CH
2)
n-の-CH
2-の少なくとも一部を-O-、-C(=O)-又は-O-C(=O)-のいずれかで置き換えた基を表す。*は結合手を表す。)
【0040】
【化13】
(Ar’は、2価のベンゼン環、又はビフェニル構造を表す。2つのAr’は同一でも異なってもよく、該環の任意の水素原子は1価の置換基で置換されていてもよい。p’は0又は1の整数である。Q
2’は-(CH
2)
n-(nは2~18の整数である。)、又は該-(CH
2)
n-の-CH
2-の少なくとも一部を-O-、-C(=O)-又は-O-C(=O)-のいずれかで置き換えた基を表す。*は結合手を表す。)
【0041】
上記ベンゼン環、ビフェニル構造、又はナフタレン環の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のフルオロアルキル基、炭素数2~10のフルオロアルケニル基、炭素数1~10のフルオロアルコキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、炭素数1~10のアルキルオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0042】
上記式(O)で表される2価の有機基は、液晶配向性を高める観点から、下記式(o-1)~(o-16)のいずれかの構造で表される2価の有機基が好ましい。
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
上記式(O’)で表される2価の有機基は、液晶配向性を高める観点から、上記式(o-7)~(o-16)のいずれかで表される2価の有機基が好ましい。
【0047】
上記式(2i)で表されるジアミンの好ましい具体例としては、下記式(2i-1)~(2i-5)で表される化合物が挙げられる。
【0048】
【0049】
本発明の効果を得る観点から、重合体(A)は、式(2)で表されるジアミン又は式(2i)で表されるジアミンを、重合体(A)の合成に使用されるジアミン成分1モルに対して1~95モル%含むことが好ましく、1~90モル%含むことがより好ましく、5~90モル%含むことがより好ましい。この場合において、式(1)で表されるジアミンの含有量の上限は、99モル%以下であることが好ましく、95モル%以下であることがより好ましい。
【0050】
重合体(A)を得る為のジアミン成分として、上記式(1)で表されるジアミン、上記式(2)又は式(2i)で表されるジアミン以外の、その他のジアミンを用いてもよい。その他のジアミンとしては、基「-N(D)-(Dはカルバメート系保護基を表す。)」を分子内に有する炭素数6~30のジアミン、4,4’-ジアミノアゾベンゼン又は下記式(dT-1)~(dT-3)で表されるジアミンなどの光配向性基を有するジアミン、下記式(h-1)~(h-6)で表されるジアミン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,4’-ジアミノアゾベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノベンジル)ベンゼン等の芳香族ジアミンの他、後述する重合体(B)で用いられるジアミンが挙げられる。上記カルバメート系保護基としては、tert-ブトキシカルボニル基、9-フルオレニルメトキシカルボニル基が挙げられる。
【0051】
上記基「-N(D)-(Dはカルバメート系保護基を表す。)」を分子内に有する炭素数6~30のジアミンとしては、下記式(5-1)~(5-10)で表される化合物が挙げられる。
【0052】
【化18】
(Bocは、tert-ブトキシカルボニル基を表す。)
【0053】
【0054】
【0055】
本発明の効果を得る観点から、重合体(A)はその他のジアミンを、重合体(A)の合成に使用されるジアミン成分1モルに対して1~40モル%含むことが好ましく、1~30モル%含むことがより好ましく、1~25モル%含むことがさらに好ましい。
【0056】
<<テトラカルボン酸誘導体成分>>
上記重合体(A)を製造する場合、ジアミン成分と反応させるテトラカルボン酸誘導体成分は、テトラカルボン酸二無水物だけでなく、テトラカルボン酸ジハライド、テトラカルボン酸ジアルキルエステル、又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライドなどのテトラカルボン酸二無水物の誘導体を用いることもできる。テトラカルボン酸誘導体成分は、一種のテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
上記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体は、芳香族、非環式脂肪族若しくは脂環式テトラカルボン酸二無水物、又はこれらの誘導体が挙げられる。ここで、芳香族テトラカルボン酸二無水物は、芳香環に結合する少なくとも1つのカルボキシル基を含めて4つのカルボキシル基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物である。非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物は、鎖状炭化水素構造に結合する4つのカルボキシル基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物である。但し、鎖状炭化水素構造のみで構成されている必要はなく、その一部に脂環式構造や芳香環構造を有していてもよい。
【0058】
脂環式テトラカルボン酸二無水物は、脂環式構造に結合する少なくとも1つのカルボキシル基を含めて4つのカルボキシル基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物である。但し、これら4つのカルボキシル基はいずれも芳香環には結合していない。また、脂環式構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状炭化水素構造や芳香環構造を有していてもよい。
【0059】
なかでも、上記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体は、下記式(3)で表される化合物又はその誘導体が好ましい。下記式(3)で表される化合物又はその誘導体は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
【化21】
(Xは、下記(x-1)~(x-13)からなる群から選ばれる構造を表す。)
【0061】
【化22】
(R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、塩素原子、フッ素原子、フッ素原子を含有する炭素数1~6の1価の有機基、又はフェニル基を表す。R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。j及びkは、0又は1の整数であり、A
1及びA
2は、それぞれ独立して、単結合、-O-、-CO-、-COO-、フェニレン、スルホニル、又はアミド結合を表す。*1は一方の酸無水物基に結合する結合手であり、*2は他方の酸無水物基に結合する結合手である。)
【0062】
上記式(x-1)のより好ましい具体例として、下記式(X1-1)~(X1-6)が挙げられる。式中、*は結合手を表す。
【0063】
【0064】
上記式(x-12)、(x-13)の好ましい具体例としては、下記式(x-14)~(x-29)が挙げられる。
【0065】
【0066】
【0067】
上記式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体の好ましい具体例としては、Xが、上記式(x-1)~(x-8)、(x-10)~(x-13)から選ばれるものであり、より好ましくは(x-1)~(x-5)から選ばれるものであり、さらに好ましくは(x-1)から選ばれるものが挙げられる。
【0068】
上記式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体の使用割合は、重合体(A)の合成に使用される全テトラカルボン酸誘導体成分1モルに対して、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上がさらに好ましい。
重合体(A)の製造に用いられるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体は、上記式(3)以外のテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体(以下、その他のテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体)を含有していてもよい。その他のテトラカルボン酸二無水物またはその誘導体の例として、下記式(3T)で表されるテトラカルボン酸二無水物またはその誘導体が挙げられる。重合体(A)の製造に用いられるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体として、上記その他のテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体を含有する場合、上記式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体の使用割合は、重合体(A)の合成に使用される全テトラカルボン酸誘導体成分1モルに対して、95モル%以下であることが好ましく、90モル%以下であることがより好ましい。下記式(3T)で表されるテトラカルボン酸二無水物またはその誘導体は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
【化26】
(X
Tは、下記式(t-1)~(t-26)からなる群から選ばれる構造を表す。)
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【化30】
R
8は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、フッ素原子を含有する炭素数1~6の1価の有機基、又はフェニル基である。液晶配向性の点から、R
8は、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、又はエチル基が好ましく、水素原子、又はメチル基がより好ましい。*は結合手を表す。
【0074】
<重合体(B)>
本発明の液晶配向剤は、残留DC由来の残像を少なくする観点から、重合体(A)以外の重合体(B)を含有してもよい。このような重合体の具体例を挙げると、テトラカルボン酸誘導体成分と、上記特定ジアミンを含まないジアミン成分とを用いて得られるポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる重合体が挙げられる。
上記ポリイミド前駆体の具体例としては、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステルなどが挙げられる。
重合体(B)は、一種を単独で使用してもよく、また二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0075】
重合体(B)を得るためのテトラカルボン酸誘導体成分としては、非環式脂肪族テトカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物又はこれらの誘導体が挙げられる。非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトカルボン酸二無水物の具体例としては、重合体(A)で例示したテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。中でも好ましいテトカルボン酸誘導体成分としては、上記式(3)で表される化合物又はその誘導体が好ましい。上記テトラカルボン酸誘導体成分は、一種のテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
重合体(B)において、上記式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体のさらに好ましい具体例としては、Xが、上記式(x-1)~(x-8)、(x-10)~(x-13)から選ばれる式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体が挙げられる。
【0077】
重合体(B)を得るためのジアミン成分としては、上記重合体(A)で例示したジアミン(但し、上記特定ジアミンは除く)、窒素含有複素環、第二級アミノ基及び第三級アミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも一種の窒素含有構造(以下、窒素含有構造ともいう。)を有するジアミン(但し、上記特定ジアミンは除く)、2,4-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノベンジルアルコール、2,4-ジアミノベンジルアルコール、4,6-ジアミノレゾルシノール、2,4-ジアミノ安息香酸、2,5-ジアミノ安息香酸、3,5-ジアミノ安息香酸、下記式(3b-1)~式(3b-4)で示されるジアミン化合物などのカルボキシル基を有するジアミン、4-(2-(メチルアミノ)エチル)アニリン、4-(2-アミノエチル)アニリン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,4’-ジアミノアゾベンゼン、1-(4-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチル-1H-インダン-5-アミン、1-(4-アミノフェニル)-2,3-ジヒドロ-1,3,3-トリメチル-1H-インデン-6-アミン、上記式(h-1)~(h-3)で表されるジアミン等のウレア結合を有するジアミン、メタクリル酸2-(2,4-ジアミノフェノキシ)エチル、2,4-ジアミノ-N,N-ジアリルアニリン等の光重合性基を末端に有するジアミン、コレスタニルオキシ-3,5-ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ-3,5-ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ-2,4-ジアミノベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5-ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5-ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6-ビス(4-アミノベンゾイルオキシ)コレスタン等のステロイド骨格を有するジアミン、下記式(V-1)~(V-6)で表されるジアミン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-テトラメチルジシロキサン等のシロキサン結合を有するジアミン、下記式(Ox-1)~(Ox-2)等のオキサゾリン構造を有するジアミン等のジアミン、国際公開第2018/117239号に記載の式(Y-1)~(Y-167)のいずれかで表される基に2つのアミノ基が結合したジアミンが挙げられる。上記ジアミン成分は、一種のジアミンを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
【化31】
(式(3b-1)中、A
1は単結合、-CH
2-、-C
2H
4-、-C(CH
3)
2-、-CF
2-、-C(CF
3)
2-、-O-、-CO-、-NH-、-N(CH
3)-、-CONH-、-NHCO-、-CH
2O-、-OCH
2-、-COO-、-OCO-、-CON(CH
3)-又は-N(CH
3)CO-を示し、m1及びm2はそれぞれ独立して、0~4の整数を示し、かつm1+m2は1~4の整数を示す。式(3b-2)中、m
3及びm
4はそれぞれ独立して、1~5の整数を示す。式(3b-3)中、A
2は炭素数1~5の直鎖又は分岐アルキル基を示し、m5は1~5の整数を示す。式(3b-4)中、A
3及びA
4はそれぞれ独立して、単結合、-CH
2-、-C
2H
4-、-C(CH
3)
2-、-CF
2-、-C(CF
3)
2-、-O-、-CO-、-NH-、-N(CH
3)-、-CONH-、-NHCO-、-CH
2O-、-OCH
2-、-COO-、-OCO-、-CON(CH
3)-又は-N(CH
3)CO-を示し、m6は1~4の整数を示す。)
【0079】
【化32】
(X
v1~X
v4、X
p1~X
p2は、それぞれ独立に、-(CH
2)
a-(aは1~15の整数である。)、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH
3)-、-NH-、-O-、-CH
2O-、-CH
2OCO-、-COO-、又は-OCO-を表し、X
v5は-O-、-CH
2O-、-CH
2OCO-、-COO-、又は-OCO-を表す。Xaは、単結合、-O-、-NH-、-O-(CH
2)
m-O-(mは1~6の整数を表す。)を表し、R
v1~R
v4、R
1a~R
1bは、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基又は炭素数2~20のアルコキシアルキル基を表す。)
【0080】
【0081】
上記窒素含有構造を有するジアミンが有していてもよい窒素含有複素環としては、例えば、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、インドール、ベンゾイミダゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、キノキサリン、フタラジン、トリアジン、カルバゾール、アクリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン等が挙げられる。なかでも、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、キノリン、カルバゾール又はアクリジンが好ましい。
【0082】
上記窒素含有構造を有するジアミンが有していてもよい第二級アミノ基及び第三級アミノ基は、例えば、下記式(n)で表される。
【0083】
【化34】
上記式(n)において、Rは,水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基を表す。「*」は、炭化水素基に結合する結合手を表す。
【0084】
上記式(n)中のRの1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、メチルフェニル基等のアリール基等が挙げられる。Rは、好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0085】
上記窒素含有構造を有するジアミンの具体例としては、例えば、2,6-ジアミノピリジン、3,4-ジアミノピリジン、2,4-ジアミノピリミジン、3,6-ジアミノカルバゾール、N-メチル-3,6-ジアミノカルバゾール、1,4-ビス-(4-アミノフェニル)-ピペラジン、3,6-ジアミノアクリジン、N-エチル-3,6-ジアミノカルバゾール、N-フェニル-3,6-ジアミノカルバゾール、下記式(Dp-1)~(Dp-9)で表される化合物、下記式(z-1)~式(z-18)で表される化合物が挙げられる。
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
残留DC由来の残像が少ない観点において、重合体(B)は窒素含有構造を有するジアミン、2,4-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノベンジルアルコール、2,4-ジアミノベンジルアルコール、4,6-ジアミノレゾルシノール、2,4-ジアミノ安息香酸、2,5-ジアミノ安息香酸、3,5-ジアミノ安息香酸、上記式(3b-1)~式(3b-4)で示されるジアミン化合物などのカルボキシル基を有するジアミン又は上記ウレア結合を有するジアミンからなる群から選ばれるジアミン(これらを総称してジアミン(b)ともいう。)を使用して得られる重合体であることが好ましい。
【0090】
重合体(B)は、残留DC由来の残像が少ない観点において、ジアミン(b)を重合体(B)の合成に使用するジアミン成分1モルに対して、1モル%以上含んでもよく、5モル%以上含んでもよい。
【0091】
残留DC由来の残像が少ない観点において、重合体(A)と重合体(B)の含有割合が、[重合体(A)]/[重合体(B)]の質量比で10/90~90/10であってもよく、20/80~90/10であってもよく、20/80~80/20であってもよい。
【0092】
上記式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体の使用割合は、重合体(B)の合成に使用される全テトラカルボン酸誘導体成分1モルに対して、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上がさらに好ましい。
【0093】
<重合体(A)、重合体(B)の製造方法>
重合体(A)又は(B)の製造は、上記ジアミン成分と、テトラカルボン酸誘導体成分と、を溶媒中で(縮重合)反応させることにより行われる。重合体(A)又は(B)の一部にアミック酸構造を含む場合、例えば、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを反応させることにより、アミック酸構造を有する重合体が得られる。溶媒としては、生成した重合体が溶解するものであれば特に限定されない。
上記溶媒の具体例としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンが挙げられる。また、重合体の溶媒溶解性が高い場合は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、又は下記の式[D-1]~式[D-3]で示される溶媒を用いることができる。
【0094】
【化38】
(式[D-1]中、D
1は炭素数1~3のアルキル基を示し、式[D-2]中、D
2は炭素数1~3のアルキル基を示し、式[D-3]中、D
3は炭素数1~4のアルキル基を表す。)。
【0095】
これら溶媒は単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、重合体を溶解させない溶媒であっても、生成した重合体が析出しない範囲で、上記溶媒に混合して使用してもよい。
ジアミン成分とテトラカルボン酸誘導体成分とを溶媒中で反応させる際には、反応は任意の濃度で行うことができるが、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~30質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、溶媒を追加することもできる。
反応においては、ジアミン成分の合計モル数とテトラカルボン酸誘導体成分の合計モル数の比は0.8~1.2であることが好ましい。通常の重縮合反応同様、このモル比が1.0に近いほど生成する重合体(A)、重合体(B)の分子量は大きくなる。
【0096】
アミック酸エステル構造を含む重合体は、例えば、[I]上記の方法で得られたアミック酸構造を有する重合体とエステル化剤とを反応させる方法、[II]テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとを反応させる方法、[III]テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物とジアミンとを反応させる方法、などの既知の方法によって得ることができる。
【0097】
本発明の液晶配向剤に含有される重合体(A)又は(B)におけるイミド化物は上記で得られた重合体を閉環させて得られる。該イミド化物は、アミック酸基又はその誘導体が有する官能基の閉環率(イミド化率ともいう)は必ずしも100%である必要はなく、用途や目的に応じて任意に調整することができる。
【0098】
イミド化合物を得る方法としては、上記反応で得られた重合体の溶液をそのまま加熱する熱イミド化、又は重合体の溶液に触媒を添加する触媒イミド化が挙げられる。溶液中で熱イミド化させる場合の温度は、100~400℃、好ましくは120~250℃であり、イミド化反応により生成する水を系外に除きながら行う方が好ましい。
【0099】
上記触媒イミド化は、反応で得られた重合体の溶液に、塩基性触媒と酸無水物とを添加し、-20~250℃、好ましくは0~180℃で撹拌することにより行うことができる。塩基性触媒の量はアミド酸基の0.5~30モル倍、好ましくは2~20モル倍であり、酸無水物の量はアミド酸基の1~50モル倍、好ましくは3~30モル倍である。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミンなどを挙げることができ、なかでも、ピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などを挙げることができ、なかでも、無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。触媒イミド化によるイミド化率は、触媒量と反応温度、反応時間を調節することにより制御することができる。
【0100】
上記イミド化の反応溶液から、生成したイミド化物を回収する場合には、反応溶液を溶媒に投入して沈殿させればよい。沈殿に用いる溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、ベンゼン、水などを挙げることができる。溶媒に投入して沈殿させたポリマーは濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥することができる。また、沈殿回収した重合体を、溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2~10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類炭化水素などが挙げられ、これらの内から選ばれる3種類以上の溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0101】
<重合体の溶液粘度・分子量>
本発明に用いられる重合体(A)又は(B)は、これを濃度10~15重量%の溶液としたときに、例えば10~1000mPa・sの溶液粘度を持つものが作業性の観点から好ましいが、特に限定されない。なお、上記重合体の溶液粘度(mPa・s)は、当該重合体の良溶媒(例えばγ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10~15質量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
【0102】
上記重合体(A)又は(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~500,000であり、より好ましくは2,000~500,000である。また、Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下である。このような分子量範囲にあることで、液晶表示素子の良好な配向性及び安定性を確保することができる。
【0103】
<式(1-1)~(1-5)で表されるジアミンを含むジアミン成分から得られる重合体>
上記式(1-1)~(1-5)で表されるジアミンを含むジアミン成分から得られる重合体としては、例えば、アミック酸及びアミック酸エステルなどのイミド前駆体構造を有するポリイミド前駆体、該ポリイミド前駆体のイミド化合物であるポリイミド、イミド構造を有するポリウレア、イミド構造を有するポリアミドなどが挙げられる。
上記重合体は、好ましくは、上記式(1-1)~(1-5)で表されるジアミンを含むジアミン成分とテトラカルボン酸誘導体成分との重縮合反応により得られるポリイミド前駆体、又は該ポリイミド前駆体のイミド化合物であるポリイミドであり、より好ましくは、上記式(1-1)又は(1-2)で表されるジアミンを含むジアミン成分とテトラカルボン酸誘導体成分との重縮合反応により得られるポリイミド前駆体、又は該ポリイミド前駆体のイミド化合物であるポリイミドである。なお、ジアミン成分とテトラカルボン酸誘導体成分との縮重合反応等については、上記の<重合体(A)、重合体(B)の製造方法>で述べた通りである。
【0104】
<液晶配向剤における他の成分>
本発明の液晶配向剤は、重合体(A)及び必要に応じて重合体(B)を含有する。本発明の液晶配向剤は、重合体(A)、重合体(B)に加えて、その他の重合体を含有していてもよい。その他の重合体の種類としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレア、ポリオルガノシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン又はその誘導体、ポリ(スチレン-フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0105】
液晶配向剤は、液晶配向膜を作製するために用いられるものであり、均一な薄膜を形成させるという観点から、塗布液の形態をとる。本発明の液晶配向剤においても上記した重合体成分と、有機溶媒とを含有する塗布液であることが好ましい。その際、液晶配向剤中の重合体の濃度は、形成させようとする塗膜の厚みの設定によって適宜変更することができる。均一で欠陥のない塗膜を形成させるという点から、1質量%以上が好ましく、溶液の保存安定性の点からは、10質量%以下が好ましい。特に好ましい重合体の濃度は、2~8質量%である。
【0106】
液晶配向剤に含有される有機溶媒は、重合体成分が均一に溶解するものであれば特に限定されない。その具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルラクトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N-(n-プロピル)-2-ピロリドン、N-イソプロピル-2-ピロリドン、N-(n-ブチル)-2-ピロリドン、N-(t-ブチル)-2-ピロリドン、N-(n-ペンチル)-2-ピロリドン、N-メトキシプロピル-2-ピロリドン、N-エトキシエチル-2-ピロリドン、N-メトキシブチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン(これらを総称して「良溶媒」ともいう)などを挙げられる。なかでも、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド又はγ-ブチロラクトンが好ましい。良溶媒の含有量は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の20~99質量%であることが好ましく、20~90質量%がより好ましく、特に好ましいのは、30~80質量%である。
【0107】
また、液晶配向剤に含有される有機溶媒は、上記溶媒に加えて液晶配向剤を塗布する際の塗布性や塗膜の表面平滑性を向上させる溶媒(貧溶媒ともいう。)を併用した混合溶媒の使用が好ましい。併用する有機溶媒の具体例を下記するが、これらに限定されない。
【0108】
例えば、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソブチルカルビノール(2,6-ジメチル-4-ヘプタノール)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2-ブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、3-エトキシブチルアセタート、1-メチルペンチルアセタート、2-エチルブチルアセタート、2-エチルヘキシルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、1-(2-ブトキシエトキシ)-2-プロパノール、2-(2-ブトキシエトキシ)-1-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアセタート、ジエチレングリコールアセタート、プロピレングリコールジアセテート、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、乳酸n-ブチル、乳酸イソアミル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジイソブチルケトン(2,6-ジメチル-4-ヘプタノン)などを挙げることができる。
【0109】
なかでも、ジイソブチルカルビノール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、又はジイソブチルケトンが好ましい。
【0110】
良溶媒と貧溶媒との好ましい溶媒の組み合わせとしては、N-メチル-2-ピロリドンとエチレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとエチレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテル、N-エチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールモノブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンと4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンとジエチレングリコールジエチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジイソブチルケトン、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジイソプロピルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジイソブチルカルビノール、N-メチル-2-ピロリドンとγ-ブチロラクトンとジプロピレングリコールジメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンとプロピレングリコールモノブチルエーテルとジプロピレングリコールジメチルエーテルなどを挙げることができる。貧溶媒の含有量は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の1~80質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましく、20~70質量%が特に好ましい。貧溶媒の種類及び含有量は、液晶配向剤の塗布装置、塗布条件、塗布環境などに応じて適宜選択される。
【0111】
本発明の液晶配向剤は、重合体成分及び有機溶媒以外の成分(以下、添加剤成分ともいう。)を追加的に含有してもよい。このような添加剤成分としては、液晶配向膜と基板との密着性や液晶配向膜とシール材との密着性を高めるための密着助剤、液晶配向膜の強度を高めるための化合物(以下、架橋性化合物ともいう。)、液晶配向膜の誘電率や電気抵抗を調整するための誘電体や導電物質などが挙げられる。
【0112】
上記架橋性化合物として、AC残像に対して良好な耐性を発現し、膜強度の改善が高い観点から、オキシラニル基、オキセタニル基、保護イソシアネート基、保護イソチオシアネート基、オキサゾリン環構造を含む基、メルドラム酸構造を含む基、シクロカーボネート基、下記式(d)で表される基及び下記式(d1)で表される基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有する化合物、又は下記式(e)で表される化合物から選ばれる化合物(以下、これらを総称して化合物(C)ともいう。)であってもよい。
【0113】
【化39】
(R
2及びR
3は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~3のアルキル基又は「*-CH
2-OH」である。*は結合手であることを示す。Rは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、又は炭素数2~6のアルキニル基を表す。Zは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、又は炭素数2~6のアルキニル基を表す。Aは芳香環を有する(m+n)価の有機基を表す。mは1~6の整数を表し、nは0~4の整数を表す。R
e、R
fは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、又は炭素数2~6のアルキニル基を表す。)
【0114】
オキシラニル基を有する化合物の具体例としては、特開平10-338880号公報の段落[0037]に記載の化合物や、国際公開第2017/170483号に記載のトリアジン環を骨格にもつ化合物などの、2個以上のオキシラニル基を有する化合物が挙げられる。これらのうち、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4、4’-ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-p-フェニレンジアミン、下記式(r-1)~(r-3)で表される化合物などの窒素原子を含有する化合物であってもよい。
【0115】
【0116】
オキセタニル基を有する化合物の具体例としては、国際公開第2011/132751号の段落[0170]~[0175]に記載の2個以上のオキセタニル基を有する化合物等が挙げられる。
【0117】
保護イソシアネート基を有する化合物の具体例としては、日本特開2014-224978号公報の段落[0046]~[0047]に記載の2個以上の保護イソシアネート基を有する化合物、国際公開第2015/141598号の段落[0119]~[0120]に記載の3個以上の保護イソシアネート基を有する化合物等が挙げられ、下記式(bi-1)~(bi-3)で表される化合物であってもよい。
【0118】
【0119】
保護イソチオシアネート基を有する化合物の具体例としては、日本特開2016-200798号公報に記載の、2個以上の保護イソチオシアネート基を有する化合物が挙げられる。
【0120】
オキサゾリン環構造を含む基を有する化合物の具体例としては、日本特開2007-286597号公報の段落[0115]に記載の、2個以上のオキサゾリン構造を含む化合物が挙げられる。
【0121】
メルドラム酸構造を含む基を有する化合物の具体例としては、国際公開第2012/091088号に記載の、メルドラム酸構造を2個以上有する化合物が挙げられる。
【0122】
シクロカーボネート基を有する化合物の具体例としては、国際公開第2011/155577号に記載の化合物が挙げられる。
【0123】
上記式(d)で表される基のR2、R3の炭素数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
【0124】
上記式(d)で表される基を有する化合物の具体例としては、国際公開第2015/072554号や、日本特開2016-118753号公報の段落[0058]に記載の、上記式(d)で表される基を2個以上有する化合物、日本特開2016-200798号公報に記載の化合物等が挙げられ、下記式(hd-1)~(hd-8)で表される化合物であってもよい。
【0125】
【0126】
上記(d1)で表される基を有する化合物の具体例としては、国際公開第2019/142927号に記載の化合物が挙げられ、より好ましくは下記式(hd1-1)~(hd1-4)で表される化合物であってもよい。
【0127】
【0128】
上記式(e)のAにおける芳香環を有する(m+n)価の有機基としては、炭素数6~30の(m+n)価の芳香族炭化水素基、炭素数6~30の芳香族炭化水素基が直接又は連結基を介して結合した(m+n)価の有機基、芳香族複素環を有する(m+n)価の基が挙げられる。上記芳香族炭化水素としては、例えばベンゼン、ナフタレンなどが挙げられる。芳香族複素環としては、例えばピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、ピリダジン環、ピラジン環、ベンゾイミダゾール環、インドール環、キノキサリン環、アクリジン環などが挙げられる。上記連結基としては、炭素数1~10のアルキレン基、-NR-(Rは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基)、フッ素原子を有する炭素数1~10のアルキレン基、又は該アルキレン基から水素原子を一つ除いた基、2価又は3価のシクロヘキサン環等が挙げられる。尚、該アルキレン基の任意の水素原子は、フッ素原子又はトリフルオロメチル基などの有機基で置換されてもよい。具体例を挙げるならば、国際公開第2010/074269号に記載の化合物、下記式(e-1)~(e-10)で表される化合物が挙げられる。
【0129】
【0130】
上記化合物は架橋性化合物の一例であり、これらに限定されるものではない。例えば、国際公開第2015/060357号の53頁[0105]~55頁[0116]に開示されている上記以外の成分などが挙げられる。また、架橋性化合物は、2種類以上組み合わせてもよい。
【0131】
本発明の液晶配向剤における、架橋性化合物の含有量は、液晶配向剤に含まれる重合体成分100質量部に対して、0.5~20質量部であることが好ましく、架橋反応が進行し、かつAC残像に対して良好な耐性を発現する観点から、より好ましくは1~15質量部である。
【0132】
上記密着助剤としては、例えば3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、2-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N-トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10-トリメトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、10-トリエトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、9-トリメトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、9-トリエトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤を使用する場合は、AC残像に対して良好な耐性を発現する観点から、液晶配向剤に含まれる重合体成分100質量部に対して0.1~30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~20質量部である。
【0133】
(液晶配向膜)
本発明の液晶配向膜は、上記本発明の液晶配向剤を用いて形成される。
本発明の液晶配向膜の製造方法の好ましい態様として、下記の工程(1)~(3)を含む液晶配向膜の製造方法が挙げられる。
【0134】
<液晶配向膜の製造方法>
本発明の液晶配向剤を用いた液晶配向膜の製造方法は、本発明の液晶配向剤を基板上に塗布する工程(工程(1))、塗布した液晶配向剤を加熱して膜を得る工程(工程(2))、工程(2)で得られた膜に偏光された紫外線を照射する工程(工程(3))を含む。
また、本発明の液晶配向膜の製造方法は、さらに、工程(3)で得られた膜を、100℃以上、且つ、工程(2)よりも高い温度で焼成する工程(工程(4))を含んでもよい。
【0135】
<<工程(1)>>
本発明に用いられる液晶配向剤を塗布する基板としては透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、窒化珪素基板、アクリル基板やポリカーボネート基板などのプラスチック基板等を用いることもできる。その際、液晶を駆動させるためのITO電極などが形成された基板を用いると、プロセスの簡素化の点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならばシリコンウエハーなどの不透明な物でも使用でき、この場合の電極にはアルミニウムなどの光を反射する材料も使用できる。
【0136】
液晶配向剤の塗布方法は、特に限定されないが、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷又はインクジェット印刷などで行う方法が一般的である。その他の塗布方法としては、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナー法又はスプレー法などがあり、目的に応じてこれらを用いてもよい。
【0137】
<<工程(2)>>
工程(2)は、基板上に塗布した液晶配向剤を焼成し、膜を形成する工程である。液晶配向剤を基板上に塗布した後は、ホットプレート、熱循環型オーブン又はIR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段により、溶媒を蒸発させたり、重合体中のアミック酸又はアミック酸エステルの熱イミド化を行ったりすることができる。本発明の液晶配向剤を塗布した後の乾燥、焼成工程は、任意の温度と時間を選択することができ、複数回行ってもよい。液晶配向剤の有機溶媒を蒸発させる温度としては、例えば40~150℃で行うことができる。プロセスを短縮する観点で、40~120℃で行ってもよい。焼成時間としては特に限定されないが、1~10分又は、1~5分が挙げられる。重合体中のアミック酸又はアミック酸エステルの熱イミド化を行う場合には、上記有機溶媒を蒸発させる工程の後、例えば190~250℃、又は200~240℃の温度範囲で焼成する工程ができる。焼成時間としては特に限定されないが、5~40分、又は、5~30分の焼成時間が挙げられる。
【0138】
<<工程(3)>>
工程(3)は、工程(2)で得られた膜に偏光された紫外線を照射する工程である。紫外線の波長としては、200~400nmが好ましく、なかでも、200~300nmの波長を有する紫外線がより好ましい。液晶配向性を改善するために、液晶配向膜が塗膜された基板を50~250℃で加熱しながら、紫外線を照射してもよい。また、上記放射線の照射量は、1~10,000mJ/cm2が好ましく、100~5,000mJ/cm2がより好ましい。このようにして作製した液晶配向膜は、液晶分子を一定の方向に安定して配向させることができる。
【0139】
偏光された紫外線の消光比が高いほど、より高い異方性が付与できるため、好ましい。具体的には、直線に偏光された紫外線の消光比は、10:1以上が好ましく、20:1以上がより好ましい。
【0140】
<<工程(4)>>
工程(4)は、工程(3)で得られた膜を、100℃以上で、且つ、工程(2)よりも高い温度で焼成する工程である。焼成温度は、100℃以上で、且つ、工程(2)での焼成温度よりも高ければ、特に限定されないが、150~300℃が好ましく、150~250℃がより好ましく、200~250℃が更に好ましい。焼成時間は、5~120分が好ましく、より好ましくは5~60分、更に好ましくは、5~30分である。
【0141】
焼成後の液晶配向膜の厚みは、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、5~300nmが好ましく、10~200nmがより好ましい。
【0142】
更に、上記工程(3)又は(4)のいずれかの工程を行った後、得られた液晶配向膜を、水や溶媒を用いて、接触処理をすることもできる。
【0143】
上記接触処理に使用する溶媒としては、紫外線の照射によって液晶配向膜から生成した分解物を溶解する溶媒であれば、特に限定されるものではない。具体例としては、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、1-メトキシ-2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、ブチルセロソルブ、乳酸エチル、乳酸メチル、ジアセトンアルコール、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル又は酢酸シクロヘキシルなどが挙げられる。なかでも、汎用性や溶媒の安全性の点から、水、2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール又は乳酸エチルが好ましい。より好ましいのは、水、1-メトキシ-2-プロパノール又は乳酸エチルである。溶媒は、1種類でも、2種類以上組み合わせてもよい。
【0144】
上記の接触処理、すなわち、偏光された紫外線を照射した液晶配向膜に水や溶媒を用いて処理する方法としては、浸漬処理や噴霧処理(スプレー処理ともいう)が挙げられる。これらの処理における処理時間は、紫外線によって液晶配向膜から生成した分解物を効率的に溶解させる点から、10秒~1時間が好ましい。なかでも、1~30分間浸漬処理をすることが好ましい。また、上記接触処理時の溶媒は、常温でも加温しても良いが、好ましくは、10~80℃であり、20~50℃がより好ましい。加えて、分解物の溶解性の点から、必要に応じて、超音波処理などを行っても良い。
【0145】
上記接触処理の後に、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン又はメチルエチルケトンなどの低沸点溶媒によるすすぎ(リンスともいう)や液晶配向膜の焼成を行うことが好ましい。その際、リンスと焼成のどちらか一方を行っても、又は、両方を行っても良い。焼成の温度は、150~300℃であることが好ましい。なかでも、180~250℃が好ましい。より好ましいのは、200~230℃である。また、焼成の時間は、10秒~30分が好ましい。なかでも、1~10分が好ましい。
【0146】
(液晶表示素子)
本発明の液晶表示素子は、本発明の液晶配向膜を有する。即ち、本発明の液晶表示素子は、上記した液晶配向膜の製造方法を含む。より好ましい形態は、本発明の液晶表示素子は、上記した本発明の液晶配向剤を基板上に塗布する工程(工程(1))、塗布した液晶配向剤を加熱して膜を得る工程(工程(2))、工程(2)で得られた膜に偏光された紫外線を照射する工程(工程(3))を含む方法により、得られる。
また、本発明の液晶表示素子は、さらに、上記工程(3)で得られた膜を、100℃以上、且つ、上記工程(2)よりも高い温度で焼成する工程(工程(4))を含む方法により得ることが好ましい。
本発明の液晶配向膜は、IPS方式やFFS方式などの横電界方式の液晶表示素子の液晶配向膜として好適であり、特に、FFS方式の液晶表示素子の液晶配向膜として有用である。
液晶表示素子は、本発明の液晶配向剤から得られる液晶配向膜付きの基板を得た後、既知の方法で液晶セルを作製し、該液晶セル内に液晶を配することにより、製造することができる。
【0147】
<液晶表示素子の製造方法>
液晶セルの作製方法の一例として、パッシブマトリクス構造の液晶表示素子を例にとり説明する。なお、画像表示を構成する各画素部分にTFT(Thin Film Transistor)などのスイッチング素子が設けられたアクティブマトリクス構造の液晶表示素子であってもよい。
【0148】
具体的には、透明なガラス製の基板を準備し、一方の基板の上にコモン電極を、他方の基板の上にセグメント電極を設ける。これらの電極は、例えばITO電極とすることができ、所望の画像表示ができるようパターニングされている。次いで、各基板の上に、コモン電極とセグメント電極を被覆するようにして絶縁膜を設ける。絶縁膜は、例えば、ゾル-ゲル法によって形成されたSiO2-TiO2の膜とすることができる。
【0149】
次に、各基板の上に上記した方法で液晶配向膜を形成し、一方の基板に他方の基板を互いの液晶配向膜面が対向するようにして重ね合わせ、周辺をシール剤で接着する。シール剤には、基板間隙を制御するために、通常、スペーサーを混入しておき、また、シール剤を設けない面内部分にも、基板間隙制御用のスペーサーを散布しておくことが好ましい。シール剤の一部には、外部から液晶を充填可能な開口部を設けておく。次いで、シール剤に設けた開口部を通じて、2枚の基板とシール剤で包囲された空間内に液晶材料を注入し、その後、この開口部を接着剤で封止する。注入には、真空注入法を用いてもよいし、大気中で毛細管現象を利用した方法を用いてもよい。液晶材料は、ポジ型液晶材料やネガ型液晶材料のいずれを用いてもよい。次に、偏光板の設置を行う。具体的には、2枚の基板の液晶層とは反対側の面に一対の偏光板を貼り付ける。
【0150】
<液晶表示素子の特性>
上記液晶配向膜の製造方法、及び上記液晶表示素子の製造方法を用いて製造された液晶表示素子は、IPS駆動方式やFFS駆動方式の液晶表示素子において発生する長期交流駆動による残像が抑制出来る液晶表示素子となる。また、工程(2)において、40~150℃の温度範囲で有機溶媒を除去した後、工程(3)を実施することで、従来よりも少ない工程数で液晶配向膜を得ることができる。本発明の液晶配向剤は、工程(2)において、40~150℃の温度範囲で有機溶媒を除去した後、工程(3)を実施する工程を含む液晶配向膜の製造方法において特に好ましく用いることができる。
【実施例】
【0151】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下における化合物の略号及び各特性の測定方法は、次の通りである。実施例中、Bocは、tert-ブトキシカルボニル基を表す。
【0152】
(ジアミン)
DA-1~DA-5:それぞれ、下記式(DA-1)~(DA-5)で表される化合物
【0153】
【0154】
(テトラカルボン酸二無水物)
CA-1:下記式(CA-1)で表される化合物
【0155】
【0156】
(有機溶媒)
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
GBL:γ-ブチロラクトン
BCS:ブチルセロソルブ
THF:テトラヒドロフラン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
【0157】
(反応試剤)
Boc2O:二炭酸ジ-tert-ブチル
【0158】
(1H-NMRの測定)
装置:フーリエ変換型超伝導核磁気共鳴装置(FT-NMR)「AVANCE III」(BRUKER製)500MHz。
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド([D6]-DMSO)。標準物質:テトラメチルシラン(TMS)。
【0159】
(粘度の測定)
E型粘度計TVE-22H(東機産業社製)を用い、サンプル量1.1mL、コーンロータTE-1(1°34’、R24)、温度25℃で測定した。
【0160】
(化合物(DA-1)の合成)
<合成例(DA-1)>
下記に示す経路に従って化合物DA-1を合成した。
【0161】
<<1番体の合成>>
【0162】
【化47】
化合物C-1(58.9g、200mmol)に対し、THF(1320g)を加えて45℃に加温後、Boc
2O(26.2g、120mmol)とTHF(70g)の混合液を2時間かけて滴下した。20時間撹拌後、酢酸20%水溶液(2800g)を加えて結晶を析出させた後、結晶を酢酸20%水溶液(200g)で1回、水(200g)で1回、ヘキサン(130g)で1回洗浄し、結晶を乾燥させ1番体を得た(36.7g、93.0mmol、収率77.5%)。
【0163】
<<2番体の合成>>
【0164】
【化48】
CA-1(7.39g、33.0mmol)に対し、1番体(34.6g、87.7mmol)、NMP(346g)を加えて室温で24時間反応を行った後に60℃に加温し、ピリジン(20.9g、264mmol)、無水酢酸(13.5g、132mmol)を加えて16時間反応させた。その後、メタノール(632g)を加えて結晶を析出させてから、ろ過を実施した。結晶をNMP:メタノール=(15g):(35g)の混合溶液で2回洗浄後、アセトニトリル(120g)で1回洗浄し、乾燥させて2番体の粗物を37g得た。次に2番体の粗物(37g)とDMF(740g)を加え100℃に加温後、室温まで冷却して得られた結晶をろ過し、アセトニトリル120gで1回洗浄し、乾燥させて2番体(24.5g、25.1mmol、収率76.1%)を得た。
【0165】
<<DA-1の合成>>
【0166】
【化49】
2番体(24.5g、25.1mmol)に対し、酢酸エチル(195g)、35%塩酸(9.92g)を加え、60℃で28時間加熱した。反応終了後、室温に冷却後にトリエチルアミン(15.2g、150mmol)を加えて中和し、さらに、水(100g)を加え、析出している結晶をろ過し、水(50g)で1回、メタノール(40g)で2回ケーキ洗浄し、乾燥させてDA-1を得た(18.9g、24.3mmol、収率96.8%)。
以下に示す
1H-NMRの結果から、この固体がDA-1であることを確認した。
1H-NMR(500MHz,[D
6]-DMSO):δ7.97-7.94(m,6H),7.50-7.48(m,4H),7.30(dd,2H,J=8.9,2.3Hz),6.73(d,4H,J=8.8Hz),6.53(d,4H,J=8.8Hz),4.64(br,4H),4.42(t,4H,J=3.9Hz,),4.25(t,4H,J=4.5Hz),3.64(s,2H),1.50(s,6H)
【0167】
(重合体の合成)
<合成例1>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの50mL四つ口フラスコに、DA-1を4.29g(5.52mmol)、及びDA-2を0.23g(0.97mmol)量り取り、NMPを濃度が10質量%となるように加えて、窒素を送りながら撹拌しジアミン懸濁液を得た。このジアミン懸濁液を撹拌しながらCA-1を1.24g(5.52mmol)添加し、NMPを濃度が12質量%となるように加えて、40℃で24時間撹拌してポリアミック酸の溶液(PAA-1)を得た。このポリアミック酸の溶液に、濁りや析出等の異常は見られず、均一な溶液であることを確認した。
【0168】
<合成例2~5>
使用するモノマーの種類及び量を下記の表1に記載の通り変更した点以外は合成例1と同様の手法でポリアミック酸溶液(PAA-2)~(PAA-5)を得た。尚、表1で括弧内の数値は、テトラカルボン酸成分については、合成に使用したテトラカルボン酸誘導体の合計量100モル部に対する各化合物の配合割合(モル部)を表し、ジアミン成分については、合成に使用したジアミンの合計量100モル部に対する各化合物の配合割合(モル部)を表す。有機溶媒については、ポリイミド溶液の調製に使用した有機溶媒の合計量100質量部に対する各有機溶媒の配合割合(質量部)を表す。
【0169】
【0170】
(実施例1)
撹拌子を入れたサンプル管に、合成例1で得られたポリアミック溶液(PAA-1)を加え、さらに固形分濃度が4質量%、溶媒組成が質量比でNMP:GBL:BCS=50:30:20になるようにNMP、GBL、BCSを加え希釈した。この溶液を室温で3時間撹拌し、液晶配向剤(1)を得た。
液晶配向剤(1)の構成成分は下記表2に示すとおりである。
表2中、有機溶媒についての括弧内の数値は、液晶配向剤中に含まれる有機溶媒の合計量100質量部に対する各有機溶媒の配合割合(質量部)を表す。
液晶配向剤(1)を用いて以下に示す手順でFFS駆動液晶セルを作製し、特性評価を行った。
【0171】
<液晶表示素子の作製>
フリンジフィールドスィッチング(Fringe Field Switching:FFS)モード用の液晶セルは、面形状の共通電極-絶縁層-櫛歯形状の画素電極からなるFOP(Finger on Plate)電極層が表面に形成されている第1のガラス基板と、表面に高さ3.5μmの柱状スペーサーを有し裏面に帯電防止の為のITO膜が形成されている第2のガラス基板とを、一組とした。上記の画素電極は、中央部分が内角160°で屈曲した幅3μmの電極要素が6μmの間隔を開けて平行になるように複数配列された櫛歯形状を有しており、1つの画素は、複数の電極要素の屈曲部を結ぶ線を境に第1領域と第2領域を有している。
【0172】
なお、第1のガラス基板に形成する液晶配向膜は、画素屈曲部の内角を等分する方向と液晶の配向方向とが直交するように配向処理し、第2のガラス基板に形成する液晶配向膜は、液晶セルを作製した時に第1の基板上の液晶の配向方向と第2の基板上の液晶の配向方向とが一致するように配向処理する。
【0173】
液晶配向剤を孔径1.0μmのフィルターで濾過した後、上記の電極付き基板と対向基板のそれぞれにスピンコートした。次いで、80℃のホットプレート上で2分間乾燥後、塗膜面に偏光板を介して消光比26:1の直線偏光した波長254nmの紫外線を150mJ/cm2照射した。更に、この基板を230℃で30分間焼成して、膜厚100nmの液晶配向膜付き基板を得た。
【0174】
次に、上記一組の液晶配向膜付き基板の一方にシール剤を印刷し、もう一方の基板を液晶配向膜面が向き合うように貼り合わせ、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶(メルク社製、MLC-3019)を常温で真空注入し、注入口を封止した。FFS駆動液晶セルを得た。
【0175】
<液晶配向の面内均一性評価>
シンテック社製OPTIPRO-microを用いて液晶表示素子のツイスト角の評価を行った。作製した液晶セルを測定ステージに設置し、電圧無印加の状態で、第1画素面内を20点測定して標準偏差を算出した。評価は、ツイスト角標準偏差が1.6以上の場合に「×」とし、1.6未満の場合に「○」と定義して評価を行った。
液晶配向剤(1)を使用した液晶表示素子に対して行った評価結果を下記表3に示す。
【0176】
(実施例2)
実施例1において、使用する重合体成分を下記の表2に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、液晶配向剤(2)を得た。
液晶配向剤(2)を用いて、実施例1と同様の方法により、液晶表示素子を作製し、特性評価を行った。
液晶配向剤(2)を使用した液晶表示素子に対して行った評価結果を下記表3に示す。
【0177】
(比較例1~3)
実施例1において、使用する重合体成分を下記の表2に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、液晶配向剤(R1)~(R3)を得た。
液晶配向剤(R1)~(R3)をそれぞれ用いて、実施例1と同様の方法により、液晶表示素子を作製し、特性評価を行った。
液晶配向剤(R1)~(R3)をそれぞれ使用した液晶表示素子に対して行った評価結果を下記表3に示す。
【0178】
【0179】
【表3】
表3に示すように、ジアミンDA-1を含む実際例1~2は、ジアミンDA-1を含まない比較例1~3と比べて液晶配向の面内均一性が向上していることが確認された。