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特許7582339無線通信システム、無線通信方法、送信側システム、及び受信側システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】無線通信システム、無線通信方法、送信側システム、及び受信側システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
H04L27/26 114
H04L27/26 420
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022577905
(86)(22)【出願日】2021-01-28
(86)【国際出願番号】 JP2021002973
(87)【国際公開番号】W WO2022162818
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 史洋
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-191377(JP,A)
【文献】特開平09-018532(JP,A)
【文献】国際公開第2005/101711(WO,A1)
【文献】特開平10-285150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/00-27/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信側システムと受信側システムとの間で無線通信を行う無線通信システムであって、
前記送信側システムは、
バースト信号のプリアンブル信号の前段にランダムビットを含む位相同期信号を付加することによって送信信号を生成する送信信号生成回路と、
前記送信信号を周波数軸上で複数のサブスペクトラムに分解し、前記複数のサブスペクトラムを有する分解送信信号を生成するスペクトラム分解回路と
を備え、
前記受信側システムは、前記送信側システムから送信される前記分解送信信号を分解受信信号として受信し、
前記受信側システムは、
前記位相同期信号に対応する前記分解受信信号の前記複数のサブスペクトラムに基づいて、前記複数のサブスペクトル間の位相差を推定する位相差推定回路と、
前記推定された位相差を補償しながら前記分解受信信号の前記複数のサブスペクトラムを合成することによって合成受信信号を生成するスペクトラム合成処理を行うスペクトラム合成回路と
前記合成受信信号を復調する復調回路と
を備える
無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムであって、
前記位相差推定回路は、前記推定された位相差を保持する保持回路を含み、
前記スペクトラム合成回路は、前記保持回路に保持されている前記位相差に基づいて、前記プリアンブル信号に対応する前記分解受信信号に関する前記スペクトラム合成処理を行う
無線通信システム。
【請求項3】
請求項2に記載の無線通信システムであって、
前記復調回路は、前記プリアンブル信号に対応する前記合成受信信号に基づいて、前記バースト信号の受信タイミングを検出し、
前記保持回路は、前記バースト信号の受信区間が終了するまで、前記推定された位相差を保持し、
前記スペクトラム合成回路は、前記保持回路に保持されている前記位相差に基づいて、前記バースト信号に対応する前記分解受信信号に関する前記スペクトラム合成処理を行う
無線通信システム。
【請求項4】
送信側システムと受信側システムとの間で無線通信を行う無線通信方法であって、
前記送信側システムにおいて、バースト信号のプリアンブル信号の前段にランダムビットを含む位相同期信号を付加することによって送信信号を生成するステップと、
前記送信側システムにおいて、前記送信信号を周波数軸上で複数のサブスペクトラムに分解し、前記複数のサブスペクトラムを有する分解送信信号を生成するステップと、
前記受信側システムにおいて、前記送信側システムから送信される前記分解送信信号を分解受信信号として受信するステップと、
前記受信側システムにおいて、前記位相同期信号に対応する前記分解受信信号の前記複数のサブスペクトラムに基づいて、前記複数のサブスペクトル間の位相差を推定するステップと、
前記受信側システムにおいて、前記推定された位相差を補償しながら前記分解受信信号の前記複数のサブスペクトラムを合成することによって合成受信信号を生成するスペクトラム合成処理を行うステップと、
前記受信側システムにおいて、前記合成受信信号を復調するステップと
を含む
無線通信方法。
【請求項5】
請求項4に記載の無線通信方法であって、
更に、前記推定された位相差を保持するステップを含み、
前記スペクトラム合成処理を行うステップは、保持されている前記位相差に基づいて、前記プリアンブル信号に対応する前記分解受信信号に関する前記スペクトラム合成処理を行うステップを含む
無線通信方法。
【請求項6】
請求項5に記載の無線通信方法であって、
更に、
前記プリアンブル信号に対応する前記合成受信信号に基づいて、前記バースト信号の受信タイミングを検出するステップと、
前記バースト信号の受信区間が終了するまで、前記推定された位相差を保持するステップと
を含み、
前記スペクトラム合成処理を行うステップは、保持されている前記位相差に基づいて、前記バースト信号に対応する前記分解受信信号に関する前記スペクトラム合成処理を行うステップを含む
無線通信方法。
【請求項7】
受信側システムと無線通信を行う送信側システムであって、
バースト信号のプリアンブル信号の前段にランダムビットを含む位相同期信号を付加することによって送信信号を生成する送信信号生成回路と、
前記送信信号を周波数軸上で複数のサブスペクトラムに分解し、前記複数のサブスペクトラムを有する分解送信信号を生成するスペクトラム分解回路と
を備え、
前記受信側システムは、
前記送信側システムから送信される前記分解送信信号を分解受信信号として受信し、
前記位相同期信号に対応する前記分解受信信号の前記複数のサブスペクトラムに基づいて、前記複数のサブスペクトル間の位相差を推定し、
前記推定された位相差を補償しながら前記分解受信信号の前記複数のサブスペクトラムを合成することによって合成受信信号を生成するスペクトラム合成処理を行い、
前記合成受信信号を復調する
送信側システム。
【請求項8】
送信側システムと無線通信を行う受信側システムであって、
前記送信側システムは、
バースト信号のプリアンブル信号の前段にランダムビットを含む位相同期信号を付加することによって送信信号を生成し、
前記送信信号を周波数軸上で複数のサブスペクトラムに分解し、前記複数のサブスペクトラムを有する分解送信信号を生成し、
前記受信側システムは、前記送信側システムから送信される前記分解送信信号を分解受信信号として受信し、
前記受信側システムは、
前記位相同期信号に対応する前記分解受信信号の前記複数のサブスペクトラムに基づいて、前記複数のサブスペクトル間の位相差を推定する位相差推定回路と、
前記推定された位相差を補償しながら前記分解受信信号の前記複数のサブスペクトラムを合成することによって合成受信信号を生成するスペクトラム合成処理を行うスペクトラム合成回路と
前記合成受信信号を復調する復調回路と
を備える
受信側システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペクトラム分解・合成を利用した無線通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地上ネットワークにおいてIoT(Internet of Things)の利用が爆発的に普及している。地上ネットワークがカバーできないエリアにおいては、広域なサービスエリアを有する衛星を介したIoT、すなわち衛星IoTの利用が有望である。
【0003】
一般に、衛星通信の場合、各ユーザは、必要な周波数帯域を衛星事業者から借りることにより通信を行う。衛星中継器の周波数資源は限られており、その限られた周波数資源を効率的に利用することが望まれる。例えば、既存ユーザに一部の周波数帯域が既に割り当てられている場合、細かい未使用帯域が周波数軸上に散在することになる。細かい未使用帯域が散在する場合、未使用帯域全体の合計は十分大きいにもかかわらず、新たなユーザに要求帯域を割り当てることができない可能性がある。このことは、周波数利用効率の低下を招く。
【0004】
未使用帯域を有効利用して、周波数利用効率を向上させるための技術として、非特許文献1は、「スペクトラム分解・合成伝送技術」を提案している。
【0005】
図1は、スペクトラム分解・合成伝送の概要を説明するための概念図である。各ユーザの端末(A,B,X)からの信号は、地上局から衛星中継器を介して基地局に送られる。衛星中継器における周波数帯域の一部は、既存ユーザによって既に利用されている。未使用帯域を利用して通信を行うために、各端末からの送信信号のスペクトラムは複数のサブスペクトラムに分解され、それら複数のサブスペクトラムが未使用帯域に分散的に配置される。そのような複数のサブスペクトラムを有する送信信号が、衛星中継器を介して基地局に送られる。受信側の基地局は、受信信号の複数のサブスペクトラムを合成することによって、元の送信信号を再現する。このようにして、散在する未使用帯域を有効利用して、周波数利用効率を向上させることができる。
【0006】
図2は、スペクトラム分解・合成を行う無線通信システムの構成を概略的に示すブロック図である。衛星中継器を介して送信側システムと受信側システムとの間で無線通信が行われる。送信側システムは、フレーム生成回路10A、変調回路20、及びスペクトラム分解回路30を含んでいる。受信側システムは、スペクトラム合成回路40及び復調回路50Aを含んでいる。
【0007】
フレーム生成回路10Aは、送信対象のデータを伝送するためのフレームを生成する。ここでは、送信対象のデータとして連続信号を考える。図3は、一般的な連続信号の場合のフレームフォーマットを示している。図3に示されるように、連続信号の場合のフレームは、ユニークワードUWとデータ信号DATから構成される。フレーム生成回路10Aは、送信対象のデータ信号DATにユニークワードUWを付加することによって、図3に示されるようなフレームフォーマットを有する送信信号TBを生成する。
【0008】
変調回路20は、フレーム生成回路10Aから出力される送信信号TBを受け取る。変調回路20は、送信信号TBを変調し、変調後の送信信号TCを出力する。
【0009】
スペクトラム分解回路30は、送信信号TCに対して「スペクトラム分解処理」を行う。より詳細には、スペクトラム分解回路30は、高速フーリエ変換(FFT: Fast Fourier Transform)によって周波数領域における送信信号TCを取得し、送信信号TCを周波数軸上で複数のサブスペクトラムに分解する。更に、スペクトラム分解回路30は、複数のサブスペクトラムを所望の周波数位置(未使用帯域)にシフトさせる、つまり、分散的に配置する。分解送信信号TDは、このようにして生成された複数のサブスペクトラムを有する。そして、スペクトラム分解回路30は、逆高速フーリエ変換(IFFT: Inverse FFT)によって時間領域における分解送信信号TDを生成し、出力する。
【0010】
送信側システムは、分解送信信号TDを受信側システムに送信する。受信側システムは、送信側システムから送信される分解送信信号TDを分解受信信号RDとして受信する。
【0011】
スペクトラム合成回路40は、分解受信信号RDに対して「スペクトラム合成処理」を行う。より詳細には、スペクトラム合成回路40は、周波数領域変換回路41、合成処理回路42、時間領域変換回路43、及び位相差推定回路44を含んでいる。周波数領域変換回路41は、FFTによって周波数領域における分解受信信号RDを取得する。合成処理回路42は、分解受信信号RDの複数のサブスペクトラムを抽出し、合成する。このとき、合成処理回路42は、複数のサブスペクトラムを元の送信信号TCの周波数位置に戻すことによって、複数のサブスペクトラムを合成する。合成受信信号RCは、合成後のスペクトラムを有する。時間領域変換回路43は、IFFTによって時間領域における合成受信信号RCを生成し、出力する。
【0012】
スペクトラム合成処理においては、以下に説明されるような「位相差補償処理」が行われる。図4は、位相差補償処理を説明するための概念図である。スペクトラム分解伝送の場合、伝送遅延により、受信側の分解受信信号RDに位相傾斜が生じる。そのままスペクトラム合成処理を行うと、合成後の合成受信信号RCの位相特性が不連続になり、伝送特性が劣化する。そこで、スペクトラム合成処理のタイミングで位相差を補償する必要がある。
【0013】
図4に示される例では、分解受信信号RDは、複数のサブスペクトラムSSP1~SSP3を有している。隣接するサブスペクトラムSSP1、SSP2間の位相差はθ1であり、隣接するサブスペクトラムSSP2、SSP3間の位相差はθ2である。スペクトラム合成回路40の位相差推定回路44は、分解受信信号RDの複数のサブスペクトラムSSP1~SSP3に基づいて位相差θ1、θ2を推定(検出)する。位相差推定回路44は、推定した位相差θ1、θ2を合成処理回路42に出力する。合成処理回路42は、位相差θ1、θ2が0になるように各サブスペクトラムの位相特性を補正して、スペクトラム合成処理を行う。例えば、合成処理回路42は、サブスペクトラムSSP2の位相に補正値θ1を加え、サブスペクトラムSSP2の位相に補正値θ1+θ2を加える。これにより、合成後の合成受信信号RCの位相特性が連続する。
【0014】
復調回路50Aは、スペクトラム合成回路40から出力される合成受信信号RCを受け取る。復調回路50Aは、合成受信信号RCを復調し、送信信号TBに対応する受信信号RBを取得する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【文献】山下他,“衛星中継器コグニティブ利用のためのスペクトラム分解伝送アダプタ”,電子情報通信学会 信学技報, vol. 117, no. 261, SAT2017-54, pp. 115-120, 2017年10月.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述のスペクトラム分解・合成伝送技術がバースト信号の通信に適用される場合を考える。例えば、衛星IoTの場合、IoTユーザは小容量データを瞬間的に送信するため、バースト信号の使用が想定される。
【0017】
図5は、一般的なバースト信号フレームフォーマットを示す概念図である。バースト信号フレームは、プリアンブル信号PRE、ユニークワードUW、及びデータ信号DATを含んでいる。プリアンブル信号PREは、キャリア再生信号CAとタイミング再生信号TMを含んでおり、ユニークワードUWの前段に配置されている。
【0018】
図6は、バースト信号のスペクトラム分解・合成を行う無線通信システムの構成を概略的に示すブロック図である。上述の図2と重複する説明は適宜省略する。
【0019】
送信側システムは、バーストフレーム生成回路10B、変調回路20、及びスペクトラム分解回路30を含んでいる。バーストフレーム生成回路10Bは、図5で示されたようなバースト信号フレームフォーマットを有する送信信号TBを生成する。具体的には、バーストフレーム生成回路10Bは、送信対象のデータ信号DATの前段にユニークワードUWとプリアンブル信号PREを付加することによって、送信信号TBを生成する。
【0020】
受信側システムは、スペクトラム合成回路40及び復調回路50Bを含んでいる。復調回路50Bは、スペクトラム合成回路40から出力される合成受信信号RCを受け取る。復調回路50Bは、バースト復調回路51とバースト検出回路52を含んでいる。バースト検出回路52は、合成受信信号RCに基づいて、バースト信号の受信タイミングを検出する。バースト検出タイミングは、検出されたバースト信号受信タイミングである。バースト検出タイミングが分かれば、既知であるフレームフォーマット情報に基づいてバースト信号フレーム区間を推定することができる。バースト復調回路51は、合成受信信号RCをバースト復調し、送信信号TBに対応する受信信号RBを取得する。
【0021】
図7は、バースト信号の場合の位相差補償処理を説明するための概念図である。データ信号DATは、ランダムビットからなる変調信号である。そのようなデータ信号DATの受信区間では、分解受信信号RDは、図4で示された連続信号の場合と同様のサブスペクトラムSSP1~SSP3を有する。スペクトラム合成処理において、隣接するサブスペクトラムSSP1、SSP2は交点周波数f1において交差し、隣接するサブスペクトラムSSP2、SSP3は交点周波数f2において交差する。位相差推定回路44は、交点周波数f1におけるサブスペクトラムSSP1、SSP2のそれぞれの位相に基づいて、位相差θ1(図4参照)を推定する。同様に、位相差推定回路44は、交点周波数f2におけるサブスペクトラムSSP2、SSP3のそれぞれの位相に基づいて、位相差θ2(図4参照)を推定する。
【0022】
しかしながら、プリアンブル信号PREのキャリア再生信号CAは、連続する同一ビットからなる無変調信号である。そのようなキャリア再生信号CAの受信区間においては、分解受信信号RDのスペクトラムは、図7に示されるように線スペクトラムとなる。つまり、バースト信号のキャリア再生信号CAの受信区間においては、上記の交点周波数f1、f2に有意な信号が存在しない。従って、位相差θ1、θ2を正確に推定することができない。
【0023】
有意な信号が存在しなくても位相差推定回路44は動作する。その結果、位相差推定回路44は、正しい位相差θ1、θ2ではなく、意味のない誤った位相差θ1’、θ2’を合成処理回路42に出力する。合成処理回路42は、誤った位相差θ1’、θ2’に基づいて各サブスペクトラムの位相特性を補正して、スペクトラム合成処理を行う。従って、合成後の合成受信信号RCの位相特性は連続せず、位相差が残留する。具体的には、交点周波数f1ではθ1-θ1’の位相差が残留し、交点周波数f2ではθ1+θ2-θ1’-θ2’の位相差が残留する。
【0024】
図8は、位相差推定が正しく実施されない場合の課題を説明するための概念図である。上記のバースト検出回路52は、バースト信号の受信タイミング(バースト検出タイミング)を検出する。具体的には、バースト検出回路52は、合成受信信号RCのシンボル位相差分の累積値の絶対値を閾値と比較する。そして、バースト検出回路52は、シンボル位相差分の累積値の絶対値が閾値を超えるタイミングをバースト検出タイミングとする。バースト検出タイミングが分かるとバースト復調が可能となる。
【0025】
しかしながら、上述の通り、プリアンブル信号PRE(キャリア再生信号CA)の受信区間において、位相差推定は正しく実施されない。その結果、位相差補償処理は不完全となり、合成受信信号RCの位相特性には位相差(不連続)が残留する。その場合、プリアンブル信号PRE(キャリア再生信号CA)の受信区間において、シンボル位相差分の累積値の絶対値が、閾値に到達しない可能性がある。すなわち、バースト検出タイミングが得られない可能性がある。バースト検出タイミングが得られないと、バースト復調ができなくなる。
【0026】
このように、従来のスペクトラム分解・合成伝送技術が単純にバースト信号の通信に適用される場合、バースト信号の復調が正しく行われないおそれがある。
【0027】
本発明の1つの目的は、スペクトラム分解・合成を利用してバースト信号を適切に伝送することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
第1の観点は、送信側システムと受信側システムとの間で無線通信を行う無線通信システムを提供する。
送信側システムは、
バースト信号のプリアンブル信号の前段にランダムビットを含む位相同期信号を付加することによって送信信号を生成する送信信号生成回路と、
送信信号を周波数軸上で複数のサブスペクトラムに分解し、複数のサブスペクトラムを有する分解送信信号を生成するスペクトラム分解回路と
を備える。
受信側システムは、送信側システムから送信される分解送信信号を分解受信信号として受信する。
受信側システムは、
位相同期信号に対応する分解受信信号の複数のサブスペクトラムに基づいて、複数のサブスペクトル間の位相差を推定する位相差推定回路と、
推定された位相差を補償しながら分解受信信号の複数のサブスペクトラムを合成することによって合成受信信号を生成するスペクトラム合成処理を行うスペクトラム合成回路と
合成受信信号を復調する復調回路と
を備える。
【0029】
第2の観点は、送信側システムと受信側システムとの間で無線通信を行う無線通信方法を提供する。
無線通信方法は、
送信側システムにおいて、バースト信号のプリアンブル信号の前段にランダムビットを含む位相同期信号を付加することによって送信信号を生成するステップと、
送信側システムにおいて、送信信号を周波数軸上で複数のサブスペクトラムに分解し、複数のサブスペクトラムを有する分解送信信号を生成するステップと、
受信側システムにおいて、送信側システムから送信される分解送信信号を分解受信信号として受信するステップと、
受信側システムにおいて、位相同期信号に対応する分解受信信号の複数のサブスペクトラムに基づいて、複数のサブスペクトル間の位相差を推定するステップと、
受信側システムにおいて、推定された位相差を補償しながら分解受信信号の複数のサブスペクトラムを合成することによって合成受信信号を生成するスペクトラム合成処理を行うステップと、
受信側システムにおいて、合成受信信号を復調するステップと
を含む。
【0030】
第3の観点は、受信側システムと無線通信を行う送信側システムを提供する。
送信側システムは、
バースト信号のプリアンブル信号の前段にランダムビットを含む位相同期信号を付加することによって送信信号を生成する送信信号生成回路と、
送信信号を周波数軸上で複数のサブスペクトラムに分解し、複数のサブスペクトラムを有する分解送信信号を生成するスペクトラム分解回路と
を備える。
受信側システムは、
送信側システムから送信される分解送信信号を分解受信信号として受信し、
位相同期信号に対応する分解受信信号の複数のサブスペクトラムに基づいて、複数のサブスペクトル間の位相差を推定し、
推定された位相差を補償しながら分解受信信号の複数のサブスペクトラムを合成することによって合成受信信号を生成するスペクトラム合成処理を行い、
合成受信信号を復調する。
【0031】
第4の観点は、送信側システムと無線通信を行う受信側システムを提供する。
送信側システムは、
バースト信号のプリアンブル信号の前段にランダムビットを含む位相同期信号を付加することによって送信信号を生成し、
送信信号を周波数軸上で複数のサブスペクトラムに分解し、複数のサブスペクトラムを有する分解送信信号を生成する。
受信側システムは、送信側システムから送信される分解送信信号を分解受信信号として受信する。
受信側システムは、
位相同期信号に対応する分解受信信号の複数のサブスペクトラムに基づいて、複数のサブスペクトル間の位相差を推定する位相差推定回路と、
推定された位相差を補償しながら分解受信信号の複数のサブスペクトラムを合成することによって合成受信信号を生成するスペクトラム合成処理を行うスペクトラム合成回路と
合成受信信号を復調する復調回路と
を備える。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、送信側システムにおいて、バースト信号のプリアンブル信号の前段にランダムビットを含む位相同期信号が付加される。受信側システムでは、その位相同期信号を用いることによって、複数のサブスペクトル間の位相差を精度良く推定することが可能となる。そして、推定された位相差を補償しながらスペクトラム合成処理が行われる。バースト信号のプリアンブル信号に対しても位相差補償処理及びスペクトラム合成処理は精度良く行われるため、バースト信号の受信タイミングを検出し、バースト復調を適切に行うことが可能となる。このように、本発明によれば、スペクトラム分解・合成を利用してバースト信号を適切に伝送することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】スペクトラム分解・合成伝送の概要を説明するための概念図である。
図2】従来技術に係るスペクトラム分解・合成を行う無線通信システムの構成を概略的に示すブロック図である。
図3】一般的な連続信号の場合のフレームフォーマットを示す概念図である。
図4】スペクトラム合成処理時の位相差補償処理を説明するための概念図である。
図5】一般的なバースト信号フレームフォーマットを示す概念図である。
図6】バースト信号のスペクトラム分解・合成を行う無線通信システムの構成を概略的に示すブロック図である。
図7】バースト信号の場合の課題について説明するための概念図である。
図8】バースト信号の場合の課題について説明するための概念図である。
図9】本発明の第1の実施の形態に係る無線通信システムの構成を概略的に示すブロック図である。
図10】本発明の第1の実施の形態に係るバースト信号フレームフォーマットを示す概念図である。
図11】本発明の第1の実施の形態に係る位相差補償処理を説明するための概念図である。
図12】本発明の第1の実施の形態に係る位相差推定回路について説明するためのブロック図である。
図13】本発明の第2の実施の形態に係るバースト信号フレームフォーマットを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
添付図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0035】
1.第1の実施の形態
図9は、第1の実施の形態に係る無線通信システム100の構成を概略的に示すブロック図である。無線通信システム100は、送信側システム100Tと受信側システム100Rを含んでいる。送信側システム100Tと受信側システム100Rとの間で無線通信が行われる。例えば、無線通信システム100は、衛星通信システムである。その場合、衛星中継器を経由して送信側システム100Tと受信側システム100Rとの間で無線通信が行われる。尚、送信側システム100Tは、単一の装置であってもよいし、複数の装置の組み合わせであってもよい。受信側システム100Rは、単一の装置であってもよいし、複数の装置の組み合わせであってもよい。
【0036】
本実施の形態では、特に、バースト信号の通信について考える。本実施の形態に係る無線通信システム100は、スペクトラム分解・合成を利用してバースト信号を伝送する。以下、バースト信号のスペクトラム分解・合成に関連する構成について説明する。
【0037】
送信側システム100Tは、送信信号生成回路110、変調回路120、及びスペクトラム分解回路130を含んでいる。
【0038】
送信信号生成回路110は、送信信号TBを生成し、出力する。送信信号生成回路110は、バーストフレーム生成回路111と位相同期信号生成回路112を含んでいる。バーストフレーム生成回路111は、送信対象のデータをバースト伝送するためのバースト信号フレームを生成する。
【0039】
図10は、本実施の形態に係るバースト信号フレームフォーマットを示す概念図である。本実施の形態によれば、バースト信号フレームは、図5で示された信号に加えて、「位相同期信号PS」を更に含んでいる。つまり、バースト信号フレームは、プリアンブル信号PRE(キャリア再生信号CA、タイミング再生信号TM)、ユニークワードUW、及びデータ信号DATに加えて、位相同期信号PSを更に含んでいる。位相同期信号PSは、プリアンブル信号PREの前段に配置される。
【0040】
位相同期信号PSは、ランダムビットを含んでいる。ランダムビットを含む位相同期信号PSは、後述されるスペクトラム合成処理(位相差補償処理)において利用される。
【0041】
位相同期信号生成回路112は、位相同期信号PSを生成し、位相同期信号PSをバーストフレーム生成回路111に出力する。バーストフレーム生成回路111は、図10で示されたようなバースト信号フレームフォーマットを有する送信信号TBを生成する。具体的には、バーストフレーム生成回路111は、送信対象のデータ信号DATの前段に、ユニークワードUWとプリアンブル信号PREを付加する。更に、バーストフレーム生成回路111は、プリアンブル信号PREの前段にランダムビットを含む位相同期信号PSを付加し、送信信号TBを生成する。バーストフレーム生成回路111は、送信信号TBを出力する。
【0042】
変調回路120は、送信信号生成回路110から出力される送信信号TBを受け取る。変調回路120は、送信信号TBを変調し、変調後の送信信号TCを出力する。
【0043】
スペクトラム分解回路130は、送信信号TCに対して「スペクトラム分解処理」を行う。より詳細には、スペクトラム分解回路130は、高速フーリエ変換(FFT)によって周波数領域における送信信号TCを取得し、送信信号TCを周波数軸上で複数のサブスペクトラムに分解する。更に、スペクトラム分解回路130は、複数のサブスペクトラムを所望の周波数位置(未使用帯域)にシフトさせる、つまり、分散的に配置する。分解送信信号TDは、このようにして生成された複数のサブスペクトラムを有する。そして、スペクトラム分解回路130は、逆高速フーリエ変換(IFFT)によって時間領域における分解送信信号TDを生成し、出力する。
【0044】
送信側システム100Tは、分解送信信号TDを受信側システム100Rに送信する。受信側システム100Rは、送信側システム100Tから送信される分解送信信号TDを分解受信信号RDとして受信する。尚、送信信号TCの元のスペクトラム及び分解送信信号TDのサブスペクトラムの周波数位置情報が、別途、送信側システム100Tから受信側システム100Rに送信されてもよい。
【0045】
受信側システム100Rは、スペクトラム合成回路140及び復調回路150を含んでいる。
【0046】
スペクトラム合成回路140は、分解受信信号RDに対して「スペクトラム合成処理」を行う。より詳細には、スペクトラム合成回路140は、周波数領域変換回路141、合成処理回路142、時間領域変換回路143、及び位相差推定回路144を含んでいる。周波数領域変換回路141は、FFTによって周波数領域における分解受信信号RDを取得する。合成処理回路142は、分解受信信号RDの複数のサブスペクトラムを抽出し、合成する。このとき、合成処理回路142は、複数のサブスペクトラムを元の送信信号TCの周波数位置に戻すことによって、複数のサブスペクトラムを合成する。合成受信信号RCは、合成後のスペクトラムを有する。時間領域変換回路143は、IFFTによって時間領域における合成受信信号RCを生成し、出力する。
【0047】
スペクトラム合成処理においては、図4で説明されたような「位相差補償処理」が行われる。具体的には、位相差推定回路144は、分解受信信号RDの複数のサブスペクトラムに基づいて、複数のサブスペクトル間の位相差を推定(検出)する。位相差推定回路144は、推定した位相差を合成処理回路142に出力する。合成処理回路142は、推定された位相差を補償しながらスペクトラム合成処理を行う。つまり、合成処理回路142は、位相差が0になるように各サブスペクトラムの位相特性を補正して、スペクトラム合成処理を行う。これにより、合成後の合成受信信号RCの位相特性が連続する。
【0048】
復調回路150は、スペクトラム合成回路140から出力される合成受信信号RCを受け取る。復調回路150は、バースト復調回路151とバースト検出回路152を含んでいる。
【0049】
バースト検出回路152は、合成受信信号RCに基づいて、バースト信号の受信タイミングを検出する。バースト検出タイミングは、検出されたバースト信号受信タイミングである。より詳細には、バースト検出回路152は、合成受信信号RCのシンボル位相差分の累積値の絶対値を閾値と比較する。そして、バースト検出回路152は、シンボル位相差分の累積値の絶対値が閾値を超えるタイミングをバースト検出タイミングとする(図8参照)。
【0050】
バースト検出タイミングが分かれば、既知であるフレームフォーマット情報に基づいてバーストフレーム受信区間を推定することができる。バースト復調回路151は、合成受信信号RCをバースト復調し、送信信号TBに対応する受信信号RBを取得する。
【0051】
図11は、本実施の形態に係るスペクトラム合成処理時の位相差補償処理を説明するための概念図である。
【0052】
まず、位相同期信号PSの受信区間について考える(図11中の(a))。上述の通り、位相同期信号PSは、ランダムビットを含んでいる。従って、位相同期信号PSに対応する分解受信信号RDは、データ信号DATの場合と同様の複数のサブスペクトラムを有する。図11に示される例では、位相同期信号PSに対応する分解受信信号RDは、複数のサブスペクトラムSSP1~SSP3を有している。
【0053】
スペクトラム合成処理において、隣接するサブスペクトラムSSP1、SSP2は交点周波数f1において交差し、隣接するサブスペクトラムSSP2、SSP3は交点周波数f2において交差する。位相差推定回路144は、交点周波数f1におけるサブスペクトラムSSP1、SSP2のそれぞれの位相に基づいて、隣接するサブスペクトラムSSP1、SSP2間の位相差θ1を推定する。同様に、位相差推定回路44は、交点周波数f2におけるサブスペクトラムSSP2、SSP3のそれぞれの位相に基づいて、隣接するサブスペクトラムSSP2、SSP3間の位相差θ2を推定する。
【0054】
このように、位相差推定回路144は、位相同期信号PSに対応する分解受信信号RDの複数のサブスペクトラムSSP1~SSP3に基づいて、位相差θ1、θ2を推定することができる。位相差推定回路144は、位相同期信号PSの受信区間において推定された位相差θ1、θ2を保持する。例えば、図12に示されるように、位相差推定回路144は、位相同期信号PSの受信区間において推定された位相差θ1、θ2を保持する保持回路145を含んでいる。位相差推定回路144は、保持回路145に保持されている位相差θ1、θ2を合成処理回路142に出力する。合成処理回路142は、推定された位相差θ1、θ2を補償しながらスペクトラム合成処理を行う。
【0055】
次に、プリアンブル信号PRE(特にキャリア再生信号CA)の受信区間について考える(図11中の(b))。合成処理回路142は、保持回路145に保持されている位相差θ1、θ2に基づいて、プリアンブル信号PREに対応する分解受信信号RDに関するスペクトラム合成処理を行う。正確な位相差θ1、θ2が用いられるため、プリアンブル信号PREに対しても位相差補償処理及びスペクトラム合成処理は精度良く行われる。その結果、復調回路150のバースト検出回路152は、プリアンブル信号PREに対応する合成受信信号RCに基づいて、バースト信号の受信タイミング(バースト検出タイミング)を検出することが可能となる(図8参照)。
【0056】
復調回路150のバースト検出回路152は、バースト検出タイミングをスペクトラム合成回路140の位相差推定回路144に通知する。バースト検出タイミングが分かれば、既知であるフレームフォーマット情報に基づいてバーストフレーム受信区間を推定することができる。保持回路145は、少なくともバーストフレーム受信区間が終了するまで、推定された位相差θ1、θ2を保持する。
【0057】
次に、ユニークワードUW及びデータ信号DATの受信区間について考える(図11中の(c))。合成処理回路142は、保持回路145に保持されている位相差θ1、θ2に基づいて、ユニークワードUW及びデータ信号DATに対応する分解受信信号RDに関するスペクトラム合成処理を行う。正確な位相差θ1、θ2が用いられるため、ユニークワードUW及びデータ信号DATに対しても位相差補償処理及びスペクトラム合成処理は精度良く行われる。バースト復調回路151は、合成受信信号RCを適切にバースト復調する。
【0058】
以上に説明されたように、本実施の形態によれば、送信側システム100Tにおいて、バースト信号のプリアンブル信号PREの前段にランダムビットを含む位相同期信号PSが付加される。受信側システム100Rでは、その位相同期信号PSを用いることによって、複数のサブスペクトル間の位相差を精度良く推定することが可能となる。そして、推定された位相差を補償しながらスペクトラム合成処理が行われる。バースト信号のプリアンブル信号PREに対しても位相差補償処理及びスペクトラム合成処理は精度良く行われるため、バースト信号の受信タイミングを検出し、バースト復調を適切に行うことが可能となる。すなわち、本実施の形態によれば、スペクトラム分解・合成を利用してバースト信号を適切に伝送することが可能となる。
【0059】
例えば、衛星IoTの場合、IoTユーザは小容量データを瞬間的に送信するため、バースト信号の使用が想定される。本実施の形態に係るスペクトラム分解・合成伝送技術を利用することによって、多数のIoT信号を効率的に収集することが可能となる(図1参照)。
【0060】
2.第2の実施の形態
図13は、第2の実施の形態に係るバースト信号フレームフォーマットを示す概念図である。第2の実施の形態では、2つのバースト信号が連続的に送信される。前段のバースト信号フレームは、データ信号としてダミー信号DUMを含んでいる。その前段のバースト信号フレームのユニークワードUWとダミー信号DUMが、後段のバースト信号に対する位相同期信号PSとして用いられる。
【0061】
送信信号生成回路110の位相同期信号生成回路112は、ユニークワードUWとダミー信号DUMを含む位相同期信号PSをバーストフレーム生成回路111に出力する。バーストフレーム生成回路111は、図13で示されたようなバースト信号フレームフォーマットを有する送信信号TBを生成する。
【0062】
スペクトラム合成回路140の位相差推定回路144は、前段のバースト信号フレームのユニークワードUWとダミー信号DUMの受信区間において、複数のサブスペクトラム間の位相差を推定する。保持回路145は、推定された位相差を保持する。合成処理回路142は、保持回路145に保持されている位相差に基づいて、後段のバースト信号フレームに対する位相差補償処理及びスペクトラム合成処理を行う。
【0063】
以上に説明された第2の実施の形態によっても、第1の実施の形態の場合と同様の技術的効果が得られる。
【符号の説明】
【0064】
100 無線通信システム
100T 送信側システム
100R 受信側システム
110 送信信号生成回路
120 変調回路
130 スペクトラム分解回路
140 スペクトラム合成回路
142 合成処理回路
144 位相差推定回路
150 復調回路
151 バースト復調回路
152 バースト検出回路
CA キャリア再生信号
DAT データ信号
PRE プリアンブル信号
PS 位相同期信号
TM タイミング再生信号
UW ユニークワード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13