(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、並びにこれを用いた感光性フィルム、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
G03F 7/027 20060101AFI20241106BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20241106BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20241106BHJP
C08G 59/17 20060101ALI20241106BHJP
C08F 290/14 20060101ALI20241106BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G03F7/027 515
G03F7/004 512
H05K3/28 D
C08G59/17
C08F290/14
G03F7/20 501
(21)【出願番号】P 2023092165
(22)【出願日】2023-06-05
(62)【分割の表示】P 2021188807の分割
【原出願日】2016-09-14
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 正幸
(72)【発明者】
【氏名】古室 伸仁
(72)【発明者】
【氏名】入澤 真治
(72)【発明者】
【氏名】代島 雄汰
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-115187(JP,A)
【文献】特開2016-149388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/027
G03F 7/004
H05K 3/28
C08G 59/17
C08F 290/14
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、(C)光重合開始剤及び(D)無機フィラーを含有してなる感光性樹脂組成物であり、(A)成分の酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂が
、下記一般式(2)又は(3)で表さる構造単位を有するビスフェノール型ノボラック樹脂
であるエポキシ樹脂(a)と、ビニル基含有モノカルボン酸(b)とを反応させて得られる樹脂(A’)に、飽和若しくは不飽和基含有多塩基酸無水物を反応させて得られる樹脂(A’’)(ただし、Mw/Mn(重量平均分子量/数平均分子量)で表される分散度が2.0~5.0のもの。また、o-クレゾールノボラック樹脂とアクリル酸とを反応させた後、テトラヒドロ無水フタル酸を反応させてなる樹脂、及びo-クレゾールノボラック樹脂とアクリル酸とペンタエリスリトールトリアクリレート・無水コハク酸付加物とを反応させた後、無水コハク酸及びテトラヒドロ無水フタル酸と反応させてなる樹脂を除く。)を含み、かつ、(D)無機フィラーがシリカ及び硫酸バリウムを含み、(D)無機フィラーの含有量が全固形分量に対して
40~70質量%である感光性樹脂組成物。
【化1】
【化2】
[一般式(2)中、R
12は水素原子又はメチル基を示し、Y
2はそれぞれ独立に水素原子又はグリシジル基を示す。なお、2つのR
12は同一でも異なっていてもよい。但し、Y
2の少なくとも一方はグリシジル基を示す。一般式(3)中、R
13は水素原子又はメチル基を示し、Y
3はそれぞれ独立に水素原子又はグリシジル基を示す。なお、2つのR
13は同一でも異なっていてもよい。但し、Y
3の少なくとも一方はグリシジル基を示す。]
【請求項2】
(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーが、エチレン性不飽和結合を1分子内に3つ以上有する多官能光重合性モノマーである請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
更に(E)顔料を含む請求項1又は請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
支持体と、請求項1~3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物から形成された感光層とを備える、感光性フィルム。
【請求項5】
絶縁基板と前記絶縁基板上に形成された回路パターンを有する導体層とを備える積層基板の前記絶縁基板上に、前記導体層を覆うように請求項1~3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を用いて感光層を積層し、前記感光層の所定部分に活性光線を照射して露光部を形成し、次いで、前記感光層の前記露光部以外の部分を除去することを特徴とする、レジストパターンの形成方法。
【請求項6】
絶縁基板と、前記絶縁基板上に形成された回路パターンを有する導体層と、前記導体層を覆うように請求項1~3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を用いて形成された永久レジスト層とを備えるプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の保護膜用のアルカリ現像可能な感光性樹脂組成物に関し、より詳しくは、半導体パッケージ用基板のレジスト分野において、永久マスクレジストとして用いられるプリント配線板の保護膜用感光性樹脂組成物、並びにこれを用いた感光性フィルム、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板分野では、従来から、プリント配線板上に永久マスクレジスト(保護膜)を形成することが行われている。感光性レジストのパターン形成方法としては、着色感光性樹脂組成物を基板に塗布し、乾燥した後、選択的に紫外線を照射することで硬化させ、その後未硬化部分のみをアルカリ液などで現像し除去してパターン形成を行うフォトリソグラフィー法が主流である。この永久マスクレジストは、例えば、半導体素子をプリント配線板上にはんだを介してフリップチップ実装する工程において、プリント配線板の導体層の不要な部分にはんだが付着することを防ぐ役割を有している。さらに、永久マスクレジストは、プリント配線板の使用時において、導体層の腐食を防止したり、導体層間の電気信頼性を保持したりする役割も有している。
【0003】
従来、プリント配線板製造における永久マスクレジストは、熱硬化性あるいは感光性樹脂組成物をスクリーン印刷やロールコートする方法等で作製されている。
【0004】
例えば、FC、TAB及びCOFといった実装方式を用いたフレキシブル配線板においては、リジッド配線板、ICチップ、電子部品又はLCDパネルと接続配線パターン部分を除いて、熱硬化性樹脂ペーストをスクリーン印刷し、熱硬化して永久マスクレジストを形成している(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また、近年、配線パターンの高密度化に伴い、永久マスクレジストは高解像性が求められており、写真法でパターン形成する感光性樹脂組成物が盛んに用いられるようになっている。中でも炭酸ナトリウム水溶液等の弱アルカリ水溶液で現像可能なアルカリ現像型のものが、作業環境保全、地球環境保全の点から主流になっている。また、電子機器の小型化・高性能化の流れに伴い、半導体チップの配線の狭ピッチ化による高密度化の傾向が著しく、これに対応した半導体実装方法として、はんだバンプにより半導体チップと基板とを接合させるフリップチップ接続方式が主流となっている。このフリップチップ接続方式は、基板と半導体チップとの間にはんだボールを配置し全体を加熱して溶融接合させるリフロー方式による半導体実装方式である。そのため、はんだリフロー時に基板自体が高温環境に晒され、基板の熱収縮により、基板と半導体を接続するはんだボールに大きな応力が発生し、配線の接続不良、永久マスクレジストやアンダーフィルに割れ(クラック)を起こす場合があった。その為、プリント配線板に用いられる絶縁材料には、低熱膨張率の材料が求められている。
【0006】
プリント配線板における配線パターン及び絶縁パターン(永久マスクレジスト)の高精細化に伴い、配線間の間隔ピッチが微細化しているため、配線間の優れた電気信頼性(特に、吸湿後の電気信頼性(HAST(High Accelerated Stress Test、高度加速寿命試験)耐性))が求められる。
そして、その製造においては、リード線を必要としない無電解めっき法が採用されるようになっている(例えば、特許文献2)。無電解めっき法は、めっき膜厚が均一であり、平滑性が高い等の特長を有している。しかし、めっき液のpHが大きく強アルカリ性を呈していること、めっき析出速度を向上させるために、液温を90℃程度という高温にすることから、永久マスクレジストに対するダメージが大きくなる傾向にある。そのため、永久マスクレジストには無電解めっきに用いられるめっき液によるダメージに強い、耐無電解めっき性の更なる向上も求められる。
【0007】
また、熱膨張率の低下のため、無機フィラーを増量することにより、アルカリ現像後にフィラーが残ってしまう現象が発生する傾向がある。このフィラー残渣が発生することにより、電気的接続が不十分となり電気信頼性が悪化するため、フィラー残渣の改善が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2003-198105号公報
【文献】特開2006-190848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、優れた耐熱性、低熱膨張率を有し、さらに良好な解像性、電気信頼性(HAST耐性)、フィラー現像性を実現する感光性樹脂組成物、並びにこれを用いた感光性フィルム、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、これら高耐熱性と低熱膨張率、良好な電気信頼性(HAST耐性)、良好なフィラー現像性、フィラー残渣解消を満足できるソルダーレジスト特性及び組成について検討を重ねた結果、(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、(C)光重合開始剤及び(D)無機フィラーを含有する感光性樹脂組成物とし、(A)成分の酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂を特定の耐熱性の高い化合物で、かつMw/Mnで表される分散度が2.0~5.0の樹脂の適用と、無機フィラーを30~70質量%含有させることで、線熱膨張率を悪化させることなく耐熱性、電気信頼性、フィラー現像性(フィラー残渣解消)を両立できることを見出した。
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物は、[1](A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、(C)光重合開始剤、及び(D)無機フィラーを含有してなる感光性樹脂組成物であり、(A)成分の酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂が、一般式(1)又は一般式(2)で表さる化合物(ただし、Mw/Mn(重量平均分子量/数平均分子量)で表される分散度が2.0~5.0のもの)を含み、かつ、(D)無機フィラーの含有量が全固形分量に対し30~70質量%であることを特徴とする。
【0012】
【化1】
[一般式(1)中、R
11は水素原子又はメチル基を示し、Y
1は水素原子又はグリシジル基を示し、n1は1以上の整数を示す。なお、複数存在するR
11及びY
1はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。但し、少なくとも一つのY
1はグリシジル基を示す。一般式(2)中、R
12は水素原子又はメチル基を示し、Y
2はそれぞれ独立に水素原子又はグリシジル基を示す。なお、2つのR
12は同一でも異なっていてもよい。但し、Y
2の少なくとも一方はグリシジル基を示す。]
【0013】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、[2](B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーが、エチレン性不飽和結合を1分子内に3つ以上有する多官能光重合性モノマーである上記[1]に記載の感光性樹脂組成物である。
また、本発明の感光性樹脂組成物は、[3]更に(E)顔料を含む上記[1]又は[2]に記載の感光性樹脂組成物である。
【0014】
また、本発明の感光性フィルムは、[4]支持体と、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物から形成された感光層とを備える。
また、本発明のレジストパターンの形成方法は、絶縁基板と前記絶縁基板上に形成された回路パターンを有する導体層とを備える積層基板の前記絶縁基板上に、前記導体層を覆うように上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を用いて感光層を積層し、前記感光層の所定部分に活性光線を照射して露光部を形成し、次いで、前記感光層の前記露光部以外の部分を除去することを特徴とする。
また、本発明のプリント配線板は、絶縁基板と、前記絶縁基板上に形成された回路パターンを有する導体層と、前記導体層を覆うように上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を用いて形成された永久レジスト層とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、線熱膨張率を悪化させることなく高耐熱性、解像性、電気信頼性(HAST耐性)、フィラー現像性を両立できるプリント配線板の保護膜用感光性樹脂組成物、これを用いた感光性フィルム、レジストパターンの形成方法及びプリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はメタクリル酸を示し、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
まず、好適な実施形態に係る感光性樹脂組成物について説明する。
【0017】
[(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂]
本発明で用いる(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(Mw/Mnで表される分散度が2.0~5.0のもの)について説明する。
本発明で用いる(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂としては、Mw/Mnで表される分散度が2.0~5.0のものであり、また、アルカリ現像が可能であり、且つ解像性、接着性に優れる観点から、下記一般式(1)で表されるノボラック型エポキシ樹脂、下記一般式(2)又は(3)で表される構造単位を有するビスフェノール型ノボラック樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂(a)と、ビニル基含有モノカルボン酸(b)とを反応させて得られる樹脂(A’)に、飽和若しくは不飽和基含有多塩基酸無水物を反応させて得られる樹脂(A”)であることが好ましい。
【0018】
【化2】
[一般式(1)中、R
11は水素原子又はメチル基を示し、Y
1は水素原子又はグリシジル基を示し、n1は1以上の整数を示す。なお、複数存在するR
11及びY
1はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。但し、少なくとも一つのY
1はグリシジル基を示す。]
【0019】
【化3】
[一般式(2)中、R
12は水素原子又はメチル基を示し、Y
2はそれぞれ独立に水素原子又はグリシジル基を示す。なお、2つのR
12は同一でも異なっていてもよい。但し、Y
2の少なくとも一方はグリシジル基を示す。]
【0020】
【化4】
[一般式(3)中、R
13は水素原子又はメチル基を示し、Y
3はそれぞれ独立に水素原子又はグリシジル基を示す。なお、2つのR
13は同一でも異なっていてもよい。但し、Y
3の少なくとも一方はグリシジル基を示す。]
【0021】
エポキシ樹脂(a)と、ビニル基含有モノカルボン酸(b)とを反応させて得られる樹脂(A’)は、エポキシ樹脂(a)のエポキシ基とビニル基含有モノカルボン酸(b)のカルボキシル基との付加反応により形成される水酸基を有しているものと推察される。
【0022】
一般式(1)で示されるノボラック型エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。これらのノボラック型エポキシ樹脂は、例えば、公知の方法でフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂とエピクロルヒドリンとを反応させることにより得ることができる。
【0023】
エポキシ樹脂(a)としては、プロセス裕度が優れるとともに、耐溶剤性を向上できる観点からは、一般式(1)で表されるノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0024】
一般式(1)で示されるフェノールノボラック型エポキシ樹脂又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、YDCN-701、YDCN-702、YDCN-703、YDCN-704、YDCN-704L、YDPN-638、YDPN-602(以上、新日鐵住金化学株式会社製、商品名)、DEN-431、DEN-439(以上、ハンツマン・コーポレーション社製、商品名)、EOCN-120、EOCN-102S、EOCN-103S、EOCN-104S、EOCN-1012、EOCN-1025、EOCN-1027、BREN(以上、日本化薬株式会社製、商品名)、EPN-1138、EPN-1235、EPN-1299(以上、ハンツマン・コーポレーション社製、商品名)、N-730、N-770、N-865、N-870、N-665、N-673、VH-4150、VH-4240(以上、DIC株式会社製、商品名)が商業的に入手可能である。
【0025】
また、エポキシ樹脂(a)としては、薄膜基板の反り性をより低減できるとともに、耐熱衝撃性をより向上できる観点から、一般式(2)及び/又は一般式(3)で表される構造単位を有するエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0026】
上記一般式(3)において、R13が水素原子であり、Y3がグリシジル基のものは、EXA-7376シリーズ(DIC株式会社製、商品名)として、また、R13がメチル基であり、Y3がグリシジル基のものは、EPON SU8シリーズ(旧ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。
【0027】
上述のビニル基含有モノカルボン酸(b)としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸の二量体、メタクリル酸、β-フルフリルアクリル酸、β-スチリルアクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、α-シアノ桂皮酸等のアクリル酸誘導体や、水酸基含有アクリレートと二塩基酸無水物との反応生成物である半エステル化合物、ビニル基含有モノグリシジルエーテル若しくはビニル基含有モノグリシジルエステルと二塩基酸無水物との反応生成物である半エステル化合物が挙げられる。
【0028】
半エステル化合物は、水酸基含有アクリレート、ビニル基含有モノグリシジルエーテル若しくはビニル基含有モノグリシジルエステルと二塩基酸無水物とを等モル比で反応させることで得られる。これらのビニル基含有モノカルボン酸(b)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
ビニル基含有モノカルボン酸(b)の一例である上記半エステル化合物の合成に用いられる水酸基含有アクリレート、ビニル基含有モノグリシジルエーテル、ビニル基含有モノグリシジルエステルとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ペンタエリスルトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールペンタメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートが挙げられる。
【0030】
上記半エステル化合物の合成に用いられる二塩基酸無水物としては、飽和基を含有するもの、不飽和基を含有するものを用いることができる。二塩基酸無水物の具体例としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
【0031】
上述のエポキシ樹脂(a)とビニル基含有モノカルボン酸(b)との反応において、エポキシ樹脂(a)のエポキシ基1当量に対して、ビニル基含有モノカルボン酸(b)が0.6~1.05当量となる比率で反応させることが好ましく、0.8~1.0当量となる比率で反応させることがより好ましい。
【0032】
エポキシ樹脂(a)及びビニル基含有モノカルボン酸(b)は、有機溶剤に溶かして反応させることができる。有機溶剤としては、例えば、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル類、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等が挙げられる。
【0033】
さらに、反応を促進させるために触媒を用いることが好ましい。触媒としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルメチルアミン、メチルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルホスフィン等を用いることができる。触媒の使用量は、エポキシ樹脂(a)とビニル基含有モノカルボン酸(b)との合計100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部である。
【0034】
また、反応中の重合を防止する目的で、重合禁止剤を使用することが好ましい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、エポキシ樹脂(a)とビニル基含有モノカルボン酸(b)の合計100質量部に対して、好ましくは0.01~1質量部である。また、反応温度は、好ましくは60~150℃であり、さらに好ましくは80~120℃である。
【0035】
また、必要に応じて、ビニル基含有モノカルボン酸(b)と、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等のフェノール系化合物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の多塩基酸無水物とを併用することができる。
【0036】
また、本発明において、(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂としては、上述の樹脂(A’)に多塩基酸無水物(c)を反応させることにより得られる樹脂(A”)を用いることも好ましい。
【0037】
樹脂(A”)においては、樹脂(A’)における水酸基(エポキシ樹脂(a)中にある元来ある水酸基も含む)と多塩基酸無水物(c)の酸無水物基とが半エステル化されているものと推察される。
【0038】
多塩基酸無水物(c)としては、飽和基を含有するもの、不飽和基を含有するものを用いることができる。多塩基酸無水物(c)の具体例としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸が挙げられる。
【0039】
樹脂(A’)と多塩基酸無水物(c)との反応において、樹脂(A’)中の水酸基1当量に対して、多塩基酸無水物(c)を0.1~1.0当量反応させることで、酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂の酸価を調整することができる。
【0040】
(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂の酸価は、30~150mgKOH/gであることが好ましく、40~120mgKOH/gであることがより好ましく、50~100mgKOH/gであることが更に好ましい。酸価が30mgKOH/g未満では感光性樹脂組成物の希アルカリ溶液への溶解性が低下する傾向があり、150mgKOH/gを超えると硬化膜の電気特性が低下する傾向がある。
【0041】
樹脂(A’)と多塩基酸無水物(c)との反応温度は、60~120℃とすることが好ましい。
【0042】
また、必要に応じて、エポキシ樹脂(a)として、例えば、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂を一部併用することもできる。さらに、(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂として、スチレン-無水マレイン酸共重合体のヒドロキシエチルアクリレート変性物あるいはスチレン-無水マレイン酸共重合体のヒドロキシエチルアクリレート変性物等のスチレン-マレイン酸系樹脂を一部併用することもできる。
【0043】
感光性樹脂組成物において、(A)成分の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、5~60質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましく、15~40質量%であることが更に好ましい。(A)成分の含有量が上記範囲内であると、耐熱性、電気特性及び耐薬品性により優れた塗膜を得ることができる。
【0044】
[(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー]
(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーとしては、分子量が1000以下である化合物が好ましく、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート類、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリス-ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコール又はこれらのエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物の多価(メタ)アクリレート類、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエトキシジ(メタ)アクリレート等のフェノール類のエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート類、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート類、及びメラミン(メタ)アクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。これらの(B)エチレン性不飽和基を有する光重合性モノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。また、光硬化による架橋密度を上げ耐熱性、電気信頼性を向上させるためエチレン性不飽和結合を1分子中に3つ以上有する多官能光重合性モノマーであることがより好ましい。そのようなエチレン性不飽和結合を有する化合物として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO・PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記の「EO」とは「エチレンオキシド」のことをいい、「PO」とは「プロピレンオキシド」のことをいう。また、「EO変性」とはエチレンオキシドユニット(-CH2-CH2-O-)のブロック構造を有することを意味し、「PO変性」とはプロピレンオキシドユニット(-CH2-CH(CH3)-O-)のブロック構造を有することを意味する。
【0045】
[(C)光重合開始剤]
(C)光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4´-ジクロロベンゾフェノン、4,4´-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4-ベンゾイル-4´-メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン類;2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2,4-ジ(p-メトキシフェニル)-5-フェニルイミダゾール二量体、2-(2,4-ジメトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体類、9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9,9´-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類、1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン1-(O-アセチルオキシム)、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-[O-(エトキシカルボニル)オキシム]等のオキシムエステル類が挙げられる。これらの(C)光重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、フォトブリーチングするため底部の硬化性が良いイルガキュア819(BASFジャパン株式会社製、商品名、「イルガキュア」は登録商標。)や、揮発しにくいためアウトガスとして発生しにくいイルガキュア369(BASFジャパン株式会社製、商品名)が好ましい。
【0046】
さらに、N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類のような(C)光重合開始助剤を、単独であるいは2種以上を組合せて用いることもできる。
【0047】
[(D)無機フィラー]
(D)無機フィラーについて説明する。(D)無機フィラーとしては、例えば、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)、酸化タンタル(Ta2O5)、ジルコニア(ZrO2)、窒化ケイ素(Si3N4)、チタン酸バリウム(BaO・TiO2)、炭酸バリウム(BaCO3)、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、チタン酸鉛(PbO・TiO2)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、酸化ガリウム(Ga2O3)、スピネル(MgO・Al2O3)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)、コーディエライト(2MgO・2Al2O3/5SiO2)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、チタン酸アルミニウム(TiO2-Al2O3)、イットリア含有ジルコニア(Y2O3-ZrO2)、ケイ酸バリウム(BaO・8SiO2)、窒化ホウ素(BN)、炭酸カルシウム(CaCO3)、硫酸バリウム(BaSO4)、硫酸カルシウム(CaSO4)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸マグネシウム(MgO・TiO2)、ハイドロタルサイト、雲母、焼成カオリン、カーボン(C)等を使用することができる。これらの(D)無機フィラーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
本発明で用いる(D)無機フィラーは、一次粒径のまま、凝集することなく樹脂中に分散させるために、シランカップリング剤を用いる。シランカップリング剤としては、一般的に入手可能なものを用いることができ、例えば、アルキルシラン、アルコキシシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、アミノシラン、アクリルシラン、メタクリルシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、イソシアネートシラン、サルファーシラン、スチリルシラン、アルキルクロロシラン等が使用可能である。具体的な化合物名としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-ドデシルメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリフェニルシラノール、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、n-オクチルジメチルクロロシラン、テトラエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノシラン、モノメチルトリイソシアネートシラン、テトライソシアネートシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。用いるシランカップリング剤として好ましいものは、感光性樹脂組成物に含まれる(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂のカルボキシキ基と反応する種類のものが良く、例えば、エポキシシラン、アクリルシラン、メタクリルシランが好ましい。これらのシランカップリング剤は、シリカと樹脂の結合を強めるため、永久マスクレジストとした際に膜の強度を強め、温度サイクル試験における耐クラック性等に寄与する。また、メルカプトシラン、イソシアネートシランを用いてもよい。(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーのエチレン性不飽和基と反応し前記シランカップリング剤を用いたときと同様の効果を発揮すると考えられる。
【0049】
感光性樹脂組成物において、(D)成分の含有量は、解像性と低熱膨張率の観点から感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として30~70質量%であるが、40~65質量%であることが好ましく、45~60質量%であることがより好ましい。(D)成分の含有量が上記範囲内である場合には、低熱膨張率、耐熱性、電気信頼性(HAST耐性)、耐熱衝撃性、解像性、膜強度等をより向上させることができる。充填量が70質量%を超えると、樹脂中に分散させることが困難となり、また感光性樹脂組成物の流れ性が低下する傾向にある。充填量が30質量%未満であると、リフロー実装時のクラック耐性が得られ難い傾向にある。
【0050】
(D)無機フィラーの平均粒径は、0.01~1μmが好ましく、実用性、及び解像性の観点から、0.1~1μmであることがより好ましく、0.3~0.7μmであることが最も好ましい。また、(D)無機フィラーは、その最大粒子径が0.1~5μmであると好ましく、0.1~3μmであるとより好ましく、0.1~1μmであると更に好ましい。最大粒子径が5μmを超えると、解像性、電気信頼性が損なわれる傾向にある。
【0051】
(D)無機フィラーの中でも、低膨張率・耐熱性を向上できる観点から、シリカ微粒子を使用することが好ましい。また、はんだ耐熱性、HAST性(電気信頼性)、耐クラック性(耐熱衝撃性)、及び耐PCT試験(プレッシャークッカー試験)後のアンダーフィル材と硬化膜との接着強度を向上できる観点から、硫酸バリウム微粒子を使用することも好ましい。また、上記シリカ微粒子は、凝集防止効果を向上できる観点から、アルミナ及び/又は有機シラン系化合物で表面処理しているものであることが好ましい。
【0052】
上記シリカを用いる場合の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として30~60質量%であることが好ましく、35~55質量%であることがより好ましい。シリカ微粒子の含有量が上記範囲内である場合、低膨張率、はんだ耐熱性、及び耐PCT試験後のアンダーフィル材と硬化膜の接着強度をより向上させることができる。
【0053】
本発明の感光性樹脂組成物は、上述した(A)~(D)成分以外に、(E)顔料、(F)硬化剤、及び/又は、(G)エラストマーをさらに含んでいてもよい。さらに(H)エポキシ樹脂硬化剤を含んでいてもよい。以下、各成分について説明する。
【0054】
[(E)顔料]
感光性樹脂組成物は、(E)成分として顔料を含むことが好ましい。(E)顔料は、製造装置の識別性や外観を向上させるため、また、配線パターンを隠蔽する際等に所望の色に応じて好ましく用いられるものである。(E)顔料は、所望の色に応じて必要に応じて用いられるものであり、所望の色を発色する着色剤を適宜選択して用いればよく、着色剤としては、例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット等の公知の着色剤が好ましく挙げられる。
感光性樹脂組成物中の固形分全量を100質量部とする(E)顔料の含有量は、0.1~5質量部が好ましく、より好ましくは0.1~3質量部である。(E)成分の含有量が上記範囲内であると、配線パターンを隠蔽することができる。
【0055】
[(F)硬化剤]
(F)硬化剤としては、それ自体が熱、紫外線等で硬化する化合物、あるいは(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂のカルボキシル基、水酸基と熱、紫外線等で反応して硬化する化合物が好ましい。(F)硬化剤を用いることで、感光性樹脂組成物から形成される硬化膜の耐熱性、接着性、耐薬品性等を向上させることができる。
【0056】
(F)硬化剤としては、例えば、エポキシ化合物、メラミン化合物、尿素化合物、オキサゾリン化合物、ブロック型イソシアネート等の熱硬化性化合物が挙げられる。エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロ型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂あるいは、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂が挙げられる。
メラミン化合物としては、例えば、トリアミノトリアジン、ヘキサメトキシメラミン、ヘキサブトキシ化メラミンが挙げられる。
尿素化合物としては、例えば、ジメチロール尿素等が挙げられる。
【0057】
ブロック型イソシアネートとしては、ポリイソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤との付加反応生成物が用いられる。このポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物、並びにこれらのアダクト体、ビューレット体及びイソシアヌレート体が挙げられる。
【0058】
イソシアネートブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、クロロフェノール及びエチルフェノール等のフェノール系ブロック剤;ε-カプロラクタム、δ-パレロラクタム、γ-ブチロラクタム及びβ-プロピオラクタム等のラクタム系ブロック剤;アセト酢酸エチル及びアセチルアセトンなどの活性メチレン系ブロック剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルエーテル、グリコール酸メチル、グリコール酸ブチル、ジアセトンアルコール、乳酸メチル及び乳酸エチル等のアルコール系ブロック剤;ホルムアルデヒドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系ブロック剤;ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系ブロック剤;酢酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系ブロック剤;コハク酸イミド及びマレイン酸イミド等のイミド系ブロック剤;キシリジン、アニリン、ブチルアミン、ジブチルアミン等のアミン系ブロック剤;イミダゾール、2-エチルイミダゾール等のイミダゾール系ブロック剤;メチレンイミン及びプロピレンイミン等のイミン系ブロック剤が挙げられる。
【0059】
(F)硬化剤は、硬化膜の耐熱性をより向上させることができる観点から、エポキシ化合物(エポキシ樹脂)、及び/又は、ブロック型イソシアネートを含むことが好ましく、エポキシ化合物とブロック型イソシアネートとを併用することがより好ましい。
【0060】
(F)硬化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。(F)硬化剤を用いる場合、その含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、2~40質量%であることが好ましく、3~30質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることが更に好ましい。(F)硬化剤の含有量を、2~40質量%の範囲内にすることにより、良好な現像性を維持しつつ、形成される硬化膜の耐熱性をより向上することができる。
【0061】
[(G)エラストマー]
(G)エラストマーは、本発明の感光性樹脂組成物を半導体パッケージ基板に用いる場合に好適に使用することができる。本発明の感光性樹脂組成物に(G)エラストマーを添加することにより、紫外線や熱により橋架け反応(硬化反応)が進行することで(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂が硬化収縮して、樹脂の内部に歪み(内部応力)が加わり、可とう性や接着性が低下するという問題を解消することができる。
【0062】
(G)エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー及びシリコーン系エラストマーが挙げられる。これらの(G)エラストマーは、ハードセグメント成分とソフトセグメント成分からなり立っており、一般に前者が耐熱性及び強度に、後者が柔軟性及び強靭性にそれぞれ寄与している。
【0063】
スチレン系エラストマーとしては、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー等が挙げられる。
【0064】
スチレン系エラストマーを構成する成分としては、スチレンのほかに、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン等のスチレン誘導体を用いることができる。より具体的には、タフプレン、ソルプレンT、アサプレンT、タフテック(以上、旭化成株式会社製)、エラストマーAR(アロン化成株式会社製)、クレイトンG、カリフレックス(以上、クレイトンポリマージャパン株式会社製)、JSR-TR、TSR-SIS、ダイナロン(以上、JSR株式会社製)、デンカSTR(デンカ株式会社製)、クインタック(日本ゼオン株式会社製)、TPE-SBシリーズ(住友化学株式会社製)、ラバロン(三菱化学株式会社製)、セプトン、ハイブラー(以上、株式会社クラレ製)、スミフレックス(住友ベークライト株式会社製)、レオストマー、アクティマー(以上、リケンテクノス株式会社製)等を用いることができる。
【0065】
オレフィン系エラストマーは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-ペンテン等の炭素数2~20のα-オレフィンの共重合体である。その具体例としては、エチレン-プロピレン共重合体(EPR)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ブタジエン、イソプレン等の炭素数2~20の非共役ジエンとα-オレフィン共重合体、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体にメタクリル酸を共重合したカルボキシ変性NBRが挙げられる。より具体的には、エチレン・α-オレフィン共重合体ゴム、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム、プロピレン・α-オレフィン共重合体ゴム、ブテン・α-オレフィン共重合体ゴムが挙げられる。さらに、具体的には、ミラストマ(三井化学株式会社製)、EXACT(エクソンモービル社製)、ENGAGE(ダウケミカル社製)、水添スチレン-ブタジエンラバー“DYNABON HSBR”(JSR株式会社製)、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体“NBRシリーズ”(JSR株式会社製)、あるいは両末端カルボキシル基変性ブタジエン-アクリロニトリル共重合体の“XERシリーズ”(JSR株式会社製)、ポリブタジエンを部分的にエポキシ化したエポキシ化ポリブダジエンのBF-1000(日本曹達株式会社製)、PB-3600(株式会社ダイセル製)等を用いることができる。
【0066】
ウレタン系エラストマーは、低分子のグリコールとジイソシアネートとからなるハードセグメントと、高分子(長鎖)ジオールとジイソシアネートとからなるソフトセグメントと、の構造単位からなる。
【0067】
低分子のグリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ビスフェノールA等の短鎖ジオールを用いることができる。短鎖ジオールの数平均分子量は、48~500が好ましい。
【0068】
高分子(長鎖)ジオールとしては、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリ(1,4-ブチレンアジペート)、ポリ(エチレン・1,4-ブチレンアジペート)、ポリカプロラクトン、ポリ(1,6-ヘキシレンカーボネート)、ポリ(1,6-ヘキシレン・ネオペンチレンアジペート)が挙げられる。高分子(長鎖)ジオールの数平均分子量は、500~10,000が好ましい。
【0069】
ウレタン系エラストマーの具体例としては、PANDEX T-2185、T-2983N(DIC株式会社製)、ミラクトランE790(日本ミラクトラン株式会社製)が挙げられる。
【0070】
ポリエステル系エラストマーとしては、ジカルボン酸又はその誘導体及びジオール化合物又はその誘導体を重縮合して得られるものが挙げられる。
ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びこれらの芳香核の水素原子がメチル基、エチル基、フェニル基等で置換された芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の炭素数2~20の脂肪族ジカルボン酸、及びシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸が挙げられる。これらの化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ジオール化合物の具体例としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール等の脂肪族ジオール及び脂環式ジオール、又は、下記一般式(4)で示される二価フェノールが挙げられる。
【0071】
【化5】
[一般式(4)中、Y
11は炭素数1~10のアルキレン基、炭素数4~8のシクロアルキレン基、-O-、-S-、又は、-SO
2-を示し、R
21及びR
22はハロゲン原子又は炭素数1~12のアルキル基を示し、p及びqは0~4の整数を示し、rは0又は1を示す。]
【0072】
一般式(4)で示される二価フェノールの具体例としては、ビスフェノールA、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、レゾルシンが挙げられる。これらの化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
また、芳香族ポリエステル(例えば、ポリブチレンテレフタレート)部分をハードセグメント成分に、脂肪族ポリエステル(例えば、ポリテトラメチレングリコール)部分をソフトセグメント成分にしたマルチブロック共重合体を用いることができる。ハードセグメントとソフトセグメントの種類、比率、分子量の違いによりさまざまなグレードのものがある。具体例として、ハイトレル(東レ・デュポン株式会社製)、ペルプレン(東洋紡株式会社製)、エスペル(日立化成株式会社製)等が挙げられる。
【0074】
ポリアミド系エラストマーは、ハードセグメントにポリアミドを、ソフトセグメントにポリエーテルやポリエステルを用いたポリエーテルブロックアミド型とポリエーテルエステルブロックアミド型の2種類に大別される。
【0075】
ポリアミドとしては、ポリアミド-6、11、12等が用いられる。ポリエーテルとしては、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリテトラメチレングリコール等が用いられる。具体的には、UBEポリアミドエラストマ(宇部興産株式会社製)、ダイアミド(ダイセル・エボニック株式会社製)、PEBAX(東レ株式会社製)、グリロンELY(エムスケミー・ジャパン株式会社製)、ノパミッド(三菱化学株式会社製)、グリラックス(DIC株式会社製)を用いることができる。
【0076】
アクリル系エラストマーは、アクリル酸エステルを主成分とし、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート等が用いられる。また、架橋点モノマーとして、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等が用いられる。さらに、アクリロニトリルやエチレンを共重合することもできる。具体的には、アクリロニトリル-ブチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル-ブチルアクリレート-エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル-ブチルアクリレート-グリシジルメタクリレート共重合体等を用いることができる。
【0077】
シリコーン系エラストマーは、オルガノポリシロキサンを主成分としたもので、ポリジメチルシロキサン系、ポリメチルフェニルシロキサン系、ポリジフェニルシロキサン系に分けられる。一部をビニル基、アルコキシ基等で変性したものもある。具体例としては、KEシリーズ(信越化学工業株式会社製)、SEシリーズ、CYシリーズ、SHシリーズ(以上、東レダウコーニングシリコーン株式会社製)等が挙げられる。
【0078】
また、上述したエラストマー以外に、ゴム変性したエポキシ樹脂を用いることもできる。ゴム変性したエポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂あるいはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の一部又は全部のエポキシ基を両末端カルボン酸変性型ブタジエン-アクリロニトリルゴム、末端アミノ変性シリコーンゴム等で変性することによって得られる。これらのエラストマーの中で、せん断接着性の点で、両末端カルボキシル基変性ブタジエン-アクリロニトリル共重合体、水酸基を有するポリエステル系エラストマーであるエスペル(日立化成株式会社製、エスペル1612、1620)、エポキシ化ポリブダジエン等が好ましい。また、室温(25℃)において液状であるエラストマーが特に好ましい。
【0079】
(G)エラストマーを用いる場合、その含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、1~20質量%であることが好ましく、2~15質量%であることがより好ましく、3~10質量%であることが更に好ましい。(G)エラストマーの含有量を、1~20質量%の範囲内にすることにより、良好な現像性を維持しつつ耐熱衝撃性及びアンダーフィル材と硬化膜との接着強度をより向上させることができる。また、薄膜基板に用いる場合には、薄膜基板の反り性を低減させることができる。
【0080】
[(H)エポキシ樹脂硬化剤]
本発明の感光性樹脂組成物には、形成される硬化膜の耐熱性、接着性、耐薬品性等の諸特性をさらに向上させる目的で、(H)エポキシ樹脂硬化剤を添加することもできる。
【0081】
このような(H)エポキシ樹脂硬化剤の具体例としては、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類;ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、m-キシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジシアンジアミド、尿素、尿素誘導体、メラミン、多塩基ヒドラジド等のポリアミン類;これらの有機酸塩及び/又はエポキシアダクト:三フッ化ホウ素のアミン錯体;エチルジアミノ-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-キシリル-S-トリアジン等のトリアジン誘導体類;トリメチルアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジメチルオクチルアミン、N-ベンジルジメチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン、ヘキサ(N-メチル)メラミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノフェノール)、テトラメチルグアニジン、m-アミノフェノール等の三級アミン類;ポリビニルフェノール、ポリビニルフェノール臭素化物、フェノールノボラック、アルキルフェノールノボラック等のポリフェノール類;トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス-2-シアノエチルホスフィン等の有機ホスフィン類;トリ-n-ブチル(2,5-ジヒドロキシフェニル)ホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスニウムクロライド等のホスホニウム塩類;ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;上述の多塩基酸無水物;ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、2,4,6-トリフェニルチオピリリウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。これらの(H)エポキシ樹脂硬化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0082】
(H)エポキシ樹脂硬化剤を用いる場合、その含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、0.01~20質量%であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましい。
【0083】
[(I)熱可塑性樹脂]
また、本発明の感光性樹脂組成物には、硬化膜の可とう性をより向上させるために、(I)熱可塑性樹脂を加えることができる。
【0084】
(I)熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂が挙げられる。(I)熱可塑性樹脂を含有させる場合の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、1~30質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。
【0085】
更に、本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、メラミン、有機ベントナイト等の有機微粒子、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール等の重合禁止剤、ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、ビニル樹脂系の消泡剤、シランカップリング剤、希釈剤等の公知慣用の各種添加剤を添加することができる。さらに、臭素化エポキシ化合物、酸変性臭素化エポキシ化合物、アンチモン化合物、及びリン系化合物のホスフェート化合物、芳香族縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル等の難燃剤を添加することもできる。
【0086】
希釈剤としては、例えば、有機溶剤が使用できる。有機溶剤としては、例えば、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル類、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤が挙げられる。希釈剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。希釈剤を用いる場合の含有量は、感光性樹脂組成物の塗布性の観点から適宜調整することができる。
【0087】
本発明の感光性樹脂組成物は、上述の各成分をロールミル、ビーズミル等で均一に混練、混合することにより得ることができる。
【0088】
本発明の感光性樹脂組成物は、リジット配線板、フレキシブル配線板などのプリント配線板及びパッケージ基板などに備えられるソルダーレジストや層間絶縁膜、半導体の表面保護膜等に要求される特性や信頼性を満足することができる。そして、本発明の感光性樹脂組成物から得られるソルダーレジストは、耐熱衝撃性に充分優れていることに加えて、それと同様の要因により、耐アルカリ性、はんだ耐熱性、耐電解Ni/Auめっき性、伸び率及び引張強度等の機械的特性、並びに、HAST耐性にも優れている。
【0089】
[感光性フィルム]
以下、本発明の感光性フィルムの好適な実施形態について説明する。感光性フィルムは、支持体層と、上記支持体層上に形成された上記感光性樹脂組成物を含有する感光層と、感光層上に積層された保護フィルム層とを備えるものである。
【0090】
感光層は、上述の感光性樹脂組成物を必要により先に述べたような溶剤(希釈剤)に溶解して固形分30~70質量%程度の溶液とした後に、かかる溶液を支持体層上に塗布して乾燥することにより形成することが好ましい。上記塗布は、例えば、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフコータ、ダイコータ、バーコータ等を用いた公知の方法で行うことができる。上記感光層の厚みは、用途により異なるが、加熱及び/または熱風吹き付けにより希釈剤を除去した乾燥後の厚みで、5~100μmであることが好ましく、10~60μmであることがより好ましい。この厚みが5μm未満では工業的に塗工困難な傾向があり、100μmを超えると感光性樹脂組成物層の感度及び解像度が低下する傾向がある。
【0091】
感光性フィルムが備える支持体層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムなどが挙げられる。
【0092】
支持体層の厚みは、5~100μmであることが好ましく、10~30μmであることがより好ましい。この厚みが5μm未満では現像前に支持体を感光性フィルムから剥離する際に上記支持体が破れやすくなる傾向があり、また、100μmを超えると解像度及び可撓性が低下する傾向がある。本実施形態においては、上述したようなポリエステル樹脂を用いて感光層を形成するので、支持体層の厚みが従来のものと比較してより厚い場合、例えば25μm超、100μm以下の場合であっても、その可撓性及び解像度を維持することができる。
【0093】
保護フィルム層としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、表面処理した紙等が挙げられる。保護フィルム層は、感光層と支持体層との接着力よりも感光層と保護フィルム層との接着力が小さいものであると好ましい。
【0094】
上述したような支持体層と感光層と保護フィルム層との3層からなる感光性フィルムは、例えば、そのまま貯蔵してもよく、または保護フィルム層を介在させた上で巻芯にロール状に巻き取って保管することができる。
【0095】
[レジストパターンの形成方法、プリント配線板]
本発明のレジストパターンの形成方法は、絶縁基板と絶縁基板上に形成された回路パターンを有する導体層とを備える積層基板の絶縁基板上に、導体層を覆うように感光性樹脂組成物を用いて感光層を積層し、感光層の所定部分に活性光線を照射して露光部を形成し、次いで、感光層の露光部以外の部分を除去することを特徴とする。
【0096】
実施形態では、上記感光性樹脂組成物を用いた感光層として、上記感光性フィルムの感光層を用いる。レジストを形成すべき基板上に、上記した感光性樹脂組成物からなる感光層を形成する。上記感光性フィルムの保護フィルムを感光性樹脂組成物層から剥離させ、露出した面をラミネート等により密着させる。密着性、追従性向上の観点から減圧下で積層する方法も好ましい。なお、感光性樹脂組成物は、感光性樹脂組成物のワニスをスクリーン印刷法やロールコータにより塗布する方法等の公知の方法により基板上に塗布することもできる。次いで、マスクパターンを通して、感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射し、照射部の感光性樹脂組成物層を光硬化させる露光工程を行う。
【0097】
上記活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線を有効に放射するものが用いられる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光や紫外光を有効に放射するものも用いられる。
【0098】
さらに、感光層上に支持体が存在している場合にはその支持体を除去した後、ウエット現像またはドライ現像で光硬化されていない部分(未露光部)を除去して現像することにより、レジストパターンを形成することができる。上記ウエット現像の場合、現像液としては、例えば水酸化ナトリウムなどのアルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の安全かつ安定であり操作性が良好なものが用いられる。現像の方式には、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、高圧スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等がある。
【0099】
上記現像工程終了後、はんだ耐熱性及び耐薬品性等を向上させる目的で、高圧水銀ランプによる紫外線照射や加熱を行うことが好ましい。紫外線を照射させる場合は必要に応じてその照射量を調整することができ、例えば0.05~10J/cm2程度の照射量で照射を行うことができる。また、レジストパターンを加熱する場合は、130~200℃程度の範囲で15~90分程行われることが好ましい。
【0100】
紫外線照射及び加熱は、両方を行ってもよい。この場合、両方を同時に行ってもよく、いずれか一方を実施した後に他方を実施してもよい。紫外線照射と加熱とを同時に行う場合は、はんだ耐熱性及び耐薬品性をより良好に付与する観点から、60~150℃に加熱することが好ましい。
【0101】
このようにして形成された永久レジストは、基板にはんだ付けを施した後の配線の保護膜を兼ね、ソルダーレジストの諸特性を有しプリント配線板用、半導体パッケージ基板用、フレキシブル配線板用のソルダーレジストとして用いることが可能である。上記ソルダーレジストは、例えば、基板に対し、めっきやエッチングを施す場合に、めっきレジストやエッチングレジストとして用いられる他、そのまま基板上に残されて、配線等を保護するための保護膜として用いられる。
【0102】
永久レジストを備えた基板は、その後、半導体素子などの実装(例えば、ワイヤーボンディング、はんだ接続)がなされ、そして、パソコン等の電子機器へ装着される。
【0103】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0104】
例えば、本発明の感光性フィルムの別の実施形態において、保護フィルム層を備えずに、感光層及び支持体層のみを備えるものであってもよい。また、本発明のプリント配線板は絶縁基板上または絶縁基板の両側に導電層及び絶縁層を交互に複数層積層した多層プリント配線板であってもよく、その場合、本発明の感光性樹脂組成物の硬化物は、導電層間を確実に絶縁するための層間絶縁膜として機能する。
【0105】
また、プリント配線板の製造方法において、本発明の感光性樹脂組成物を用いてもよい。例えば、絶縁基板と、上記絶縁基板上に形成された回路パターンを有する導体層と、上記導体層を覆うように形成された永久レジスト層と、を備えるプリント配線板の製造方法であって、上記絶縁基板上に、上記導体層を覆うように、本発明の感光性樹脂組成物を用いて感光層を積層し、上記感光層の所定部分に活性光線を照射して露光部を形成し、次いで、上記露光部以外の部分を除去する、プリント配線板の製造方法などが挙げられる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0107】
[合成例:酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A-1、2、3、4)の製造]
一般式(3)で表される構造単位(R13=水素原子、Y3=グリシジル基)を有するビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂(EXA-7376、DIC株式会社製)350質量部、アクリル酸70質量部、メチルハイドロキノン0.5質量部、カルビトールアセテート120質量部、触媒(トリフェニルホスフィン)を仕込み、90℃に加熱して攪拌することにより反応させ、混合物を完全に溶解した。次に、得られた溶液を60℃に冷却し、トリフェニルホスフィン2質量部を加え、100℃に加熱して、溶液の酸価が1mgKOH/gになるまで反応させた。反応後の溶液に、テトラヒドロ無水フタル酸(THPAC)98質量部とカルビトールアセテート85質量部とを加え、80℃に加熱して約6時間反応させた後に冷却し、固形分の濃度が73質量%である(A)成分としてのTHPAC変性ビスフェノールF型ノボラックエポキシアクリレート(以下、「酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A-1、2、3、4)(分散度;A-1=6.0、A-2=4.5、A-3=3.5、A-4=2.5)という)の溶液を得た。ここで、触媒量(0~2質量部)、加熱温度(80~120℃)、時間を変化させ分散度の異なる樹脂を得た。
【0108】
(分散度の測定)
THPAC変性ビスフェノールF型ノボラックエポキシアクリレートの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及びMw/Mn(分散度)は、THPAC変性ビスフェノールF型ノボラックエポキシアクリレートの分子量分布のクロマトグラムをGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定し、25℃における標準ポリスチレンの溶離時間から換算して求めた。なお、測定装置としては、東ソー株式会社製EcoSEC、HLC-8320GPCを使用し、GPCの溶離液としては、テトラヒドロフランを使用し、カラムとしては、ゲルパックGL-A-150、ゲルパックGL-A-10(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名)を直結したものを使用した。
【0109】
(実施例1~3、比較例1~4)
下記表1に示す各材料を、同表に示す配合量(単位:質量部)で配合した後、3本ロールミルで混練し、固形分濃度が70質量%になるようにカルビトールアセテートを加えて、感光性樹脂組成物を得た。なお、下記表1中の各材料の配合量は、固形分の配合量を示す。
【0110】
【0111】
なお、表1中の各材料の詳細は以下の通りである。
[(A)酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂]
*1(酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A-1)):合成例で作製したTHPAC変性ビスフェノールF型ノボラックエポキシアクリレート(分散度Mw/Mn=6.0)
*2(酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A-2)):合成例で作製したTHPAC変性ビスフェノールF型ノボラックエポキシアクリレート(分散度Mw/Mn=4.5)
*3(酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A-3)):合成例で作製したTHPAC変性ビスフェノールF型ノボラックエポキシアクリレート(分散度Mw/Mn=3.5)
*4(酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂(A-4)):合成例で作製したTHPAC変性ビスフェノールF型ノボラックエポキシアクリレート(分散度Mw/Mn=2.5)
[(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー]
*5(アロニックスM402):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成株式会社製)
[(C)光重合開始剤)]
*6(イルガキュア907):(2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、BASFジャパン株式会社製)
[(D)無機フィラー]
*7(SFP-20M):シリカ微粒子(超微粒子球状シリカ、平均粒径0.3μm、デンカ株式会社製)
*8(B-34):硫酸バリウム微粒子(平均粒径0.3μm、堺化学工業株式会社製)
[(F)硬化剤]
*9(YSLV-80XY):エポキシ樹脂(テトラメチルビスフェノールFタイプ、エポキシ当量=192g/eq、融点=72℃、新日鐵住金化学株式会社製)
*10(RE-306):エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製)
[(G)エラストマー]
*11(PB-3600):エポキシ化ポリブタジエン(株式会社ダイセル製)
【0112】
[シリカ残渣]
実施例及び比較例の感光性樹脂組成物を、銅張積層基板(MCL-E-67、ガラス布基材エポキシ樹脂基板、日立化成株式会社製)に、乾燥後の膜厚が15μmになるようにスクリーン印刷法で塗布した後、75℃で30分間熱風循環式乾燥機を用いて乾燥させた。得られた塗膜に、1×1cm四方の面積に直径80μmの光非透過部が点在するネガフィルムを介して積算露光量100mJ/cm2の紫外線を照射し、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、1.8kgf/cm2の圧力でスプレー現像し、未露光部を溶解現像して像形成した。その後、SEM(株式会社ハイテクノロジーズ製、型番:S4200、電界放出形走査電子顕微鏡)を用いて開口部を1万倍で観察し、シリカ残渣の残り具合を以下の基準で評価した。評価結果を表2に示した。
A:1視野でシリカ残渣が1個以下
B:1視野でシリカ残渣が2個以上、10個未満
C:1視野でシリカ残渣が10個以上
【0113】
[耐HAST性評価]
12μm厚の銅箔をガラスエポキシ基材に積層したプリント配線板用基板(MCL-E-679、ガラス布基材高Tgエポキシ樹脂基板、日立化成株式会社製、商品名)の銅表面を、エッチングによりライン/スペースが28μm/32μmのくし型電極を形成した。この基板を評価基板とし、基板上に上述のようにレジストの硬化物を形成し、その後、135℃、85%RH、DC5V条件下に200時間晒した。その後、マイグレーションの発生の程度を、100倍の金属顕微鏡により観察し、次の基準で評価した。
すなわち、永久レジスト膜にマイグレーションが発生せず、抵抗値も低下しなかったものは「3」とし、抵抗値は低下しなかったが、マイグレーションが発生したものは「2」、大きくマイグレーションが発生し、抵抗値も低下したものは「1」として評価した。
評価結果を表2に示した。
【0114】
[熱膨張率・ガラス転移点(Tg)評価]
感光性樹脂組成物溶液を支持層である16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(G2-16、帝人株式会社製、商品名)上に、乾燥後の膜厚が30μmとなるように均一に塗布し、それを、熱風対流式乾燥機を用いて75℃で約30分間乾燥した。続いて、感光性樹脂組成物層の支持体と接している側とは反対側の表面上に、ポリエチレンフィルム(NF-15、タマポリ株式会社製、商品名)を保護フィルムとして貼り合わせ、感光性フィルムを得た。上記感光性フィルム全面を露光し、次いで、常温(25℃)で1時間静置した後、ポリエチレンフィルムを剥離し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で、スプレー現像処理した。スプレー現像後、株式会社オーク製作所製の紫外線照射装置を使用して2J/cm2の紫外線照射を行い、さらに170℃、60分間で加熱処理した。次いで、カッターナイフで、幅3mm、長さ30mmに切り出した後、該積層体上の支持体であるポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、熱膨張係数評価用感光性樹脂硬化物(試験片)を得た。TMA装置(熱機械分析装置)SS6000(セイコーインスツル株式会社製)を用いて、引張りモードでの熱膨張係数(10-6/℃、ppm)の測定を行った。引張り荷重は5g、スパン(チャック間距離)は15mm、昇温速度は10℃/分である。まず、試験片を装置に装着し、室温(25℃)から160℃まで加熱し、15分間放置した。その後、-60℃まで冷却し、-60℃から250℃まで昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、ガラス転移点と熱膨張率を測定した。評価結果を表2に示した。
【0115】
【0116】
表2から明らかなように、実施例1~3はシリカ残渣、電気信頼性(HAST耐性)、低熱膨張率、高Tgなどの一般特性に優れていることが分かる。また、酸変性ビニル基含有エポキシ樹脂の分散度が3.5以下のものは、特にシリカ残渣が少なく熱膨張率や耐熱性に優れていることが分かる。これに対し、表2から明らかなように、比較例1~4はシリカ残渣、電気信頼性が不十分であることが分かる。従って、本発明の感光性樹脂組成物によれば、シリカ残渣が少ない状態を維持しつつ低熱膨張率を達成しHAST耐性に優れ、高Tgな永久マスクレジストが得られる。