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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】樹脂組成物、塗料組成物及び塗装物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/40 20060101AFI20241106BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20241106BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20241106BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20241106BHJP
   C09D 175/06 20060101ALI20241106BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20241106BHJP
【FI】
C08G18/40
C08G18/44
C08L75/04
C08K5/00
C09D175/06
C09D7/61
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023105257
(22)【出願日】2023-06-27
(62)【分割の表示】P 2019052190の分割
【原出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2023121801
(43)【公開日】2023-08-31
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】宮地 彬
(72)【発明者】
【氏名】神原 リイナ
(72)【発明者】
【氏名】浅井 学文
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 純
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 昌史
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-201847(JP,A)
【文献】国際公開第2012/157627(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端が水酸基である分岐構造を有する化合物A、ポリカーボネートポリオールB、ポリイソシアネートC、及び無機粒子Dを含む樹脂組成物であって、前記化合物Aが末端に水酸基を有するハイパーブランチポリマーであり、前記化合物Aの水酸基価が、20mg・KOH/g以上1000mg・KOH/g以下であり、前記無機粒子Dが、表面に樹脂成分の水酸基又はイソシアネート基と反応可能な官能基を有する樹脂組成物。
【請求項2】
前記化合物Aが、樹状の分岐構造を有するポリマーである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記化合物Aの含有量が、前記化合物A、ポリカーボネートポリオールB、ポリイソシアネートC、及び無機粒子Dの合計質量(100質量%)中の10質量%以上50質量%以下である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記化合物Aの重量平均分子量が、550以上30000以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリカーボネートポリオールBが、分子中に環構造を有する化合物である、請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリイソシアネートCが、3官能以上のイソシアネートである、請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記無機粒子Dの水酸基又はイソシアネート基と反応可能な官能基が、メルカプト基、イソシアネート基又はエポキシ基のいずれかである、請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記無機粒子Dが、水酸基又はイソシアネート基と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤で表面処理されたシリカ粒子である、請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記化合物A、ポリカーボネートポリオールB、ポリイソシアネートC、及び無機粒子Dの合計質量(100質量%)中における前記無機粒子Dの含有量が、1質量%以上40質量%以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系及び安息香酸フェニル系化合物等から誘導された化合物のうちの少なくとも1つである紫外線吸収剤Eを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む塗料組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の塗料組成物の硬化膜を有する塗装物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、塗料組成物及び塗装物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリカーボネート樹脂や、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂からなる成形品は、軽量で成形性に優れているばかりでなく、透明性も良好で、ガラス製品に比べて耐衝撃性に優れている。そのため、ポリカーボネート樹脂や、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂は、ガラス代替の材料として、各種ランプレンズ、窓材、計器類のカバー等に用いられている。特に、ヘッドランプレンズについては、自動車のデザインの多様化等からプラスチック材料の使用が増加している。近年、自動車の軽量化のために窓ガラスやサンルーフに耐衝撃性に優れるポリカーボネート樹脂成形品が用いられている。
【0003】
しかし、ポリカーボネート樹脂成形品はその表面の耐摩耗性や耐擦傷性が不足しているため、他の硬い物との接触、摩擦、引っ掻き等によって表面に損傷を受けやすく、表面に発生した損傷はその商品価値を低下させることになる。
【0004】
自動車用部材として使用される場合には、屋外で使用されるためその耐候性も重要となる。ポリカーボネート樹脂は耐候性が低く、太陽光に含まれる紫外線等の活性エネルギー線によって劣化しやすく、成形品が著しく黄変したり、表面にクラックが生じたりする。
【0005】
このようなポリカーボネート樹脂成形品の欠点を補うために、耐候性が比較的優れているアクリル系、メラミン系、ウレタン系、シリコン系等の硬化原料に、紫外線吸収剤を添加した被覆材組成物を成形品の表面に塗布し、加熱して硬化膜を形成する方法、あるいは紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射して硬化し、耐候性を有する硬化膜を形成する方法がある。中でも熱乾燥炉での熱硬化性塗料の硬化法は、被塗装物の立体形状によらず均一な加熱が容易であることから、得られる硬化膜は部位によらず安定した性能を発現しやすい等の利点がある。
【0006】
樹脂成形品の表面に熱硬化性の硬化膜を形成する方法としては、ウレタン樹脂組成物を含む塗料でコーティングすることが知られている。
【0007】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、特定のポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、及びシリカ粒子を含むウレタン樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-01897号公報
【文献】特開平10-45867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載されているウレタン樹脂組成物は、硬化膜の外観、耐磨耗性や硬度、基材との密着性が不十分であった。
【0010】
本発明は前記課題を解決するものであって、硬化膜の外観、基材との密着性、耐薬品性及び硬度に優れた積層体を得ることができる熱硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明の上記目的は、以下の[1]~[14]の手段により解決できる。
[1]末端が水酸基である分岐構造を有する化合物A、ポリカーボネートポリオールB、ポリイソシアネートC、及び無機粒子Dを含む樹脂組成物であって、前記無機粒子Dが、表面に水酸基又はイソシアネート基と反応可能な官能基を有する樹脂組成物。
[2]前記化合物Aが、樹状の分岐構造を有するポリマーである、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記化合物Aが末端に水酸基を有するハイパーブランチポリマーである、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記化合物Aの含有量が、前記化合物A、ポリカーボネートポリオールB、ポリイソシアネートC、及び無機粒子Dの合計質量(100質量%)中の10質量%以上50質量%以下である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[5]前記化合物Aの重量平均分子量が、550以上30000以下である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[6]前記化合物Aの水酸基価が、20mg・KOH/g以上1000mg・KOH/g以下である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[7]前記ポリカーボネートポリオールBが、分子中に環構造を有する化合物である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[8]前記ポリイソシアネートCが、3官能以上のイソシアネートである、[1]~[7]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[9]前記無機粒子Dの水酸基又はイソシアネート基と反応可能な官能基が、メルカプト基、イソシアネート基又はエポキシ基のいずれかである、[1]~[8]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[10]前記無機粒子Dが、水酸基又はイソシアネート基と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤で表面処理されたシリカ粒子である、[1]~[9]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[11]前記化合物A、ポリカーボネートポリオールB、ポリイソシアネートC、及び無機粒子Dの合計質量(100質量%)中における前記無機粒子Dの含有量が、1質量%以上40質量%以下である、[1]~[10]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[12]トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系及び安息香酸フェニル系化合物等から誘導された化合物のうちの少なくとも1つである紫外線吸収剤Eを含む、[1]~[11]のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
[13][1]~[12]のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む塗料組成物。
[14][13]に記載の塗料組成物の硬化膜を有する塗装物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の樹脂組成物により、硬化膜の外観、基材との密着性、耐薬品性及び硬度に優れた積層体を得ることができる熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、末端が水酸基である分岐構造を有する化合物A、ポリカーボネートポリオールB、ポリイソシアネートC、及び無機粒子Dを含む。
【0014】
<末端が水酸基である分岐構造を有する化合物A>
本発明における化合物Aは分岐構造を有し、分岐構造の末端に2つ以上の水酸基を有する。
分岐構造の末端に複数の水酸基を有することにより、本発明の樹脂組成物により形成される硬化膜の架橋密度が増加し、硬化膜の耐摩耗性及び硬度が向上する。
【0015】
化合物Aとしては、分岐構造を有するアルコール類、末端に水酸基を持った樹状の分岐構造を有するポリマーが挙げられる。
【0016】
無機粒子Dの含有量が少ない場合であっても、硬化膜の耐摩耗性及び硬度が向上する点で化合物Aとしては、末端に水酸基を持った樹状の分岐構造を有するポリマーが好ましい。
【0017】
分岐構造を有するアルコール類としては、メチルプロパンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ポリカプロラクトントリオール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ポリカプロラクトンテトラオール、ジグリセリン等が挙げられる。
【0018】
末端が水酸基である樹状の分岐構造を有するポリマーとしては、デンドリマー、ハイパーブランチポリマーが挙げられ、合成が簡便であり、工業生産が容易である点からハイパーブランチポリマーが好ましい。
【0019】
デンドリマーとしては、Perstorp社製のBoltorn(登録商標。以下同じ。) H20(水酸基価490~520mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)2100(カタログ値))、Boltorn H311(水酸基価230~260mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)5700(カタログ値))、Boltorn H2004(水酸基価105~125mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)3200(カタログ値))、Boltorn P500(水酸基価560~630mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)1800(カタログ値))、Boltorn P1000(水酸基価430~490mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)1500(カタログ値))、Boltorn U3000(水酸基価15mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)6500(カタログ値))、Boltorn W3000(水酸基価15mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)9000(カタログ値))等が挙げられる。
【0020】
ハイパーブランチポリマーとしては、BASF社製のBasonol(登録商標。以下同じ。) HPE 1170B(水酸基価280mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)1800(カタログ値))、Basonol HPE 021(水酸基価190mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)1400(カタログ値))、Basonol HPE-026(水酸基価180mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)2600(カタログ値))、Basonol HPE-046(水酸基価250mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)4800(カタログ値))等が挙げられる。
化合物Aは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記化合物Aの分子量(化合物Aがポリマーの場合には、重量平均分子量を意味する。)は550以上30000以下が好ましく、600以上10000以下がより好ましく、800以上5000以下がさらに好ましい。
前記化合物Aの分子量が前記下限値以上であれば、硬化膜と基材の密着性及び硬化膜の硬度が向上しやすい。前記化合物Aの重量平均分子量が前記上限値以下であれば、硬化膜の外観が良好となりやすい。
【0022】
なお、前記化合物Aがポリマーの場合の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定した標準ポリスチレン換算による重量平均分子量(Mw)である。
【0023】
前記化合物Aは、1分子当たり3つ以上の水酸基を有することが好ましい。
1分子当たり3つ以上の水酸基を有することで、硬化膜の架橋密度が増加し、耐摩耗性及び硬度が向上しやすい。
【0024】
前記化合物Aの水酸基価は、20mg・KOH/g以上1000mg・KOH/g以下が好ましく、50mg・KOH/g以上600mg・KOH/g以下がより好ましく、100mg・KOH/g以上400mg・KOH/g以下がさらに好ましい。
前記化合物Aの水酸基価が前記下限値以上であれば、硬化膜の硬度が向上しやすい。前記化合物Aの水酸基価が前記上限値以下であれば、化合物Aの樹脂組成物の非極性溶剤中への溶解性及びポリカーボネートポリオールB及び化合物D等の多成分との相溶性が良好となりやすい。
【0025】
本発明の樹脂組成物における前記化合物Aの含有量は、化合物A、ポリカーボネートポリオールB、ポリイソシアネートC、及び無機粒子Dの合計質量(100質量%)中、10質量%以上50質量%以下が好ましく、15質量%以上45質量%以下がより好ましく、20質量%以上40質量%以下がさらに好ましい。
前記化合物Aの含有量が前記上限値以下であれば、得られる硬化膜の耐摩耗性及び硬度が向上しやすい。前記化合物Aの含有量が前記下限値以上であれば、得られる硬化膜の外観及び硬化膜を形成した後の乾燥性が向上しやすい。
【0026】
<ポリカーボネートポリオールB>
本発明では、ポリカーボネートポリオールBを含むことにより、基材との密着性が向上する。
【0027】
前記ポリカーボネートポリオールBとしては、分子内にポリカーボネート構造を有し、末端に2個以上の水酸基を有していれば構わないが、末端が1級の水酸基であることが好
ましい。耐候性の点から前記ポリカーボネートポリオールBとしては、脂肪族ポリカーボネートポリオールが好ましい。
【0028】
前記脂肪族ポリカーボネートポリオールとしては、クラレ社製のクラレポリオール(登録商標。以下同じ。)C-1090(水酸基価112mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)1000(カタログ値))、クラレポリオールC-2090(水酸基価56.1mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)2000(カタログ値))、クラレポリオールC-3090(水酸基価37mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)3000(カタログ値))、旭化成社製のデュラノール(登録商標。以下同じ)T-5651(水酸基価112mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)1000(カタログ値))、デュラノールT-5652(水酸基価56mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)2000(カタログ値))、デュラノールT-4691(水酸基価112mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)1000(カタログ値))、デュラノールT-4692(水酸基価56mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)2000(カタログ値))、デュラノールT-4671(水酸基価112mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)1000(カタログ値))、デュラノールG-4672(水酸基価56mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)2000(カタログ値))、デュラノールG-3450J(水酸基価140mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)800(カタログ値))、デュラノールG-3452(水酸基価56mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)2000(カタログ値))、三菱ケミカル社製ベネビオール(登録商標。以下同じ)NL1010DB(水酸基価112mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)1000(カタログ値))、ベネビオールNL2010DB(水酸基価56mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)2000(カタログ値))、ベネビオールNL1000B(水酸基価112mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)1000(カタログ値))、ベネビオールNL2000B(水酸基価56mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)2000(カタログ値))、ベネビ
オールNL1050B(水酸基価112mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)1000(カタログ値))、ベネビオールNL2050B(水酸基価56mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)2000(カタログ値))、ベネビオールHS0840B(水酸基価140mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)800(カタログ値))、ベネビオールHS0850B(水酸基価140mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)800(カタログ値))、宇部興産社製ETERNALCOLL(登録商標。以下同じ)UHC50-100(水酸基価112mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)1000(カタログ値))、ETERNALCOLL UHC50-200(水酸基価56mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)2000(カタログ値))、ETERNALCOLL
UC-100(水酸基価112mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)1000(カタログ値))、ETERNALCOLL UM-90(水酸基価125mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw)900(カタログ値)等が挙げられる。
【0029】
硬化膜の疎水性を増加させ、耐薬品性及び密着性を向上させる点から、前記脂肪族ポリカーボネートポリオールBとしては、環構造を有する脂肪族ポリカーボネートポリオールが好ましい。前記環構造を有する脂肪族ポリカーボネートポリオールとしては、三菱ケミカル社製ベネビオールHS0840B及びベネビオールHS0850B、宇部興産社製ETERNALCOLL UC-100及びETERNALCOLL UM-90等が好ましい。
ポリカーボネートポリオールBは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
ポリカーボネートポリオールBの重量平均分子量(Mw)は、300以上10000以下が好ましく、400以上8000以下がより好ましく、500以上7500以下がさらに好ましい。
ポリカーボネートポリオールBの重量平均分子量(Mw)が前記下限値以上であれば、長期間、高外観を維持しやすい。ポリカーボネートポリオールBの重量平均分子量(Mw)が前記上限値以下であれば、硬化膜の耐擦傷性が向上しやすい。
【0031】
本発明の樹脂組成物におけるポリカーボネートポリオールBの含有量は、化合物A、ポリカーボネートポリオールB、ポリイソシアネートC及び無機粒子Dの合計質量(100質量%)中、5質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上30質量%以下がより好ましく、7質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。
ポリカーボネートポリオールBの含有量が前記上限値以下であれば、得られる硬化膜の耐候性、耐薬品性、基材との密着性が向上しやすい。ポリカーボネートポリオールBの含有量が前記下限値以上であれば、得られる硬化膜の硬度が向上しやすい。
【0032】
<ポリイソシアネートC>
本発明におけるポリイソシアネートCは、化合物A及びポリカーボネートポリオールBの水酸基と反応することでウレタン結合を形成し、硬化膜の架橋密度を増加させ、耐候性、耐薬品性及び硬化膜の硬度を向上させる。
【0033】
前記ポリイソシアネートCとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4-ジシクロヘキシルジイソシアネート等の2官能のイソシアネート、上記の2官能のイソシアネートを出発原料として合成されたビュレット体、トリメチロールプロパンアダクト体、イソシアヌレート体、アロファネート体等の3官能以上のイソシアネート等が挙げられる。
【0034】
3官能以上のイソシアネートとしては、旭化成株式会社製のヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体(商品名:デュラネート(登録商標。以下同じ。)24A-100
)、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体(商品名:デュラネートP-301-75E)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:デュラネートTPA-100)、ブロック型イソシアネート(商品名:デュラネートMF-K60X)、三井化学社製の1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのトリメチロールプロパンアダクト体(商品名:タケネート(登録商標。以下同じ。)D-120N)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌレート体(商品名:タケネートD-127N)、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(商品名:タケネートD-140N)、住化コベストロウレタン社製のヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体(商品名:デスモジュール(登録商標。以下同じ。)XP2679)、EVONIK社製のイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:デスモジュールT-1890/100)等が挙げられる。
【0035】
前記ポリイソシアネートCとしては、硬化膜の架橋密度を増加させ、耐候性、耐汚染性及び硬化膜の硬度を向上させる点から、3官能以上のイソシアネートが好ましい。
前記ポリイソシアネートCは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記ポリイソシアネートCと化合物A及びポリカーボネートポリオールBとの配合比は、硬化膜の性能の点からNCO/OH[ポリイソシアネートCが有するイソシアネート基のモル数/化合物A及びポリカーボネートポリオールBの水酸基のモル数]は0.5以上2.0以下になるように配合することが好ましく、0.7以上1.8以下がより好ましく、1.0以上1.6以下がさらに好ましい。
【0037】
前記ポリイソシアネートCが有するイソシアネート基の当量比が前記下限値以上であれば、前記樹脂組成物の硬化速度をより速くすることができ、かつ前記樹脂組成物の硬化膜の架橋密度が高くなり、硬化膜の硬度や耐水性が向上しやすい。前記ポリイソシアネートCが有するイソシアネート基の当量比が前記上限値以下であれば、前記樹脂組成物の硬化膜を形成した後の乾燥性及び密着性が向上しやすい。
【0038】
<無機粒子D>
本発明における無機粒子Dは、表面に水酸基又はイソシアネート基と反応可能な官能基を有する。
【0039】
前記無機粒子Dが表面に水酸基又はイソシアネート基と反応可能な官能基を有することにより、樹脂成分に無機粒子Dが固定化されるので硬化膜の耐摩耗性が向上する。
【0040】
水酸基と反応可能な官能基としてはイソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。また、イソシアネート基と反応可能な官能基としてはメルカプト基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、イソシアネート基等が挙げられる。
【0041】
水酸基又はイソシアネート基との反応性が高い点から、無機粒子Dの水酸基又はイソシアネート基と反応可能な官能基としては、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基及びエポキシ基が好ましい。
【0042】
前記無機粒子Dは、例えば、表面に水酸基又はイソシアネート基と反応可能な官能基を有さないシリカ粒子を、水酸基又はイソシアネート基と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤で表面処理することで得ることができる。
【0043】
表面に水酸基又はイソシアネート基と反応可能な官能基を有さないシリカ粒子として、例えば、日産化学株式会社製のメタノール分散シリカゾル(MA-ST、MA-ST-M)、イソプロピルアルコール分散シリカゾル(IPA-ST、IPA-ST-L、IPA
-ST-ZL、IPA-ST-UP)、エチレングリコール分散シリカゾル(EG-ST、EG-ST-L)、ジメチルアセトアミド分散シリカゾル(DMAC-ST、DMAC-ST-L)、キシレン/ブタノール分散シリカゾル(XBA-ST)、メチルエチルケトン分散シリカゾル(MEK-ST、MEK-ST-L、MEK-ST-ZL、MEK-ST-UP)、メチルイソブチルケトン分散シリカゾル(MIBK-ST)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート分散シリカゾル(PMA-ST)等の市販品を用いることができる。
【0044】
水酸基又はイソシアネート基と反応可能な官能基を有するシランカップリング剤として、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のグリシジル基を有するシラン化合物、1-メルカプトメチルトリメトキシシラン、1-メルカプトメチルメチルジメトキシシラン、1-メルカプトメチルトリエトキシシラン、1-メルカプトメチルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプト基を有するシラン化合物、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するシラン化合物、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0045】
また、市販されている前記無機粒子Dの分散液として、例えば、日産化学社製のMEK-EC-2130Y、MEK-EC-6150P、MEK-EC-7150P等が挙げられる。
前記無機粒子Dは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
本発明の樹脂組成物における前記無機粒子Dの含有量は、化合物A、ポリイソシアネートB、及び無機粒子Cの合計質量(100質量%)中、1質量%以上40質量%以下が好ましく、1質量%以上30質量%以下がより好ましく、1質量%以上10質量以下%がさらに好ましい。
【0047】
前記無機粒子Dの含有量が前記上限値以下であれば、長期間にわたり高外観を維持しやすく、塗料のコストを下げやすい。前記無機粒子Dの含有量が前記下限値以上であれば、得られる硬化膜の耐摩耗性及び硬度が向上しやすい。
【0048】
前記無機粒子Dの平均粒子径は、2nm以上300nm以下が好ましく、2nm以上100nm以下がより好ましく、4nm以上100nm以下がさらに好ましく、4nm以上50nm以下が特に好ましい。
前記無機粒子Dの平均粒子径が前記下限値以上であれば、耐摩耗性が向上しやすい。前記無機粒子Dの平均粒子径が前記上限値以下であれば、前記樹脂組成物の硬化膜の透明性を維持しやすい。
【0049】
なお、前記無機粒子Dの平均粒子径は、BET吸着法による比表面積測定値(JIS Z8830に準ずる)から換算した値を用いる。
【0050】
<紫外線吸収剤E>
本発明における紫外線吸収剤Eは、前記樹脂組成物の硬化膜に太陽光に含まれる紫外線を吸収する効果を付与でき、硬化膜の耐候性を向上できる。
【0051】
前記紫外線吸収剤Eは紫外線を吸収できるものであれば特に限定されないが、本発明の樹脂組成物に均一に溶解でき、かつ硬化膜の耐候性が良好となるものが好ましい。
【0052】
前記紫外線吸収剤Eとしてはトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸フェニル系紫外線吸収剤、及び安息香酸フェニル系紫外線吸収剤からなる群より選ばれる、少なくとも1つの紫外線吸収剤であることが好ましい。
【0053】
前記樹脂組成物を含む塗料組成物に多量に含有させることが可能である点から、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましい。また、ポリカーボネート等の基材の黄変を防止できる点から、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。さらに、硬化膜からブリードアウトしにくいという点からイソシアネート基と反応可能な水酸基を持つ紫外線吸収剤がより好ましい。
【0054】
本発明において前記紫外線吸収剤Eとしては、最大吸収波長が240~380nmの範囲にある紫外線吸収剤が好ましい。
【0055】
前記紫外線吸収剤Eとしては、例えば、2-ヒドロキシベンゾフェノン、5-クロロ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクチロキシベンゾフェノン、4-ドデシロキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-(2-メタクリロイルオキシエチル)フェニル)-2H-ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシロキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシロキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチロキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン等のヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤;フェニルサリシレート、p-tert-ブチルフェニルサリシレート、p-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニルサリシレート、3-ヒドロキシフェニルベンゾエート、フェニレン-1,3-ジベンゾエート等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0056】
本発明の樹脂組成物における紫外線吸収剤Eの含有量は、化合物A、ポリカーボネートポリオールB、ポリイソシアネートC、及び無機粒子Dの合計質量(100質量%)に対して、5質量%以上40質量%以下が好ましく、10質量%以上30質量以下がより好ましい。
紫外線吸収剤の含有量が前記下限値以上であれば、硬化膜の耐候性が向上しやすい。紫
外線吸収剤の含有量が前記上限値以下であれば、塗料組成物の硬化性、硬化膜の強靭性、耐熱性、及び耐摩耗性が向上しやすい。
【0057】
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物は、化合物A、ポリカーボネートポリオールB、ポリイソシアネートC、無機粒子D、紫外線吸収剤E以外に、本発明の効果を損なわない限り、その他の成分を含んでもよい。
【0058】
本発明の樹脂組成物は、硬化膜の耐候性を向上させるため、紫外線吸収剤Eに加えて光安定剤等の耐候性付与剤を含んでいても良い。
【0059】
光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系光安定剤を使用することができる。ヒンダードアミン系光安定剤は、紫外線吸収剤と併用することで、硬化膜の耐候性をより向上させることができる。
【0060】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ADEKA社製の1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β,β-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5])ウンデカン)ジエタノールとの縮合物(商品名:アデカスタブ(登録商標。以下同じ。)LA-63P)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β,β-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5])ウンデカン)ジエタノールとの縮合物(商品名:アデカスタブLA-68P)、BASF社製の1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの縮合物、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル、1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物(例えば、チヌビン(商品名。以下同じ。)123)、2-ブチル-2-[3,5-ジ(tert-ブチル)-4-ヒドロキシベンジル]マロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)(商品名:チヌビン144)、2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキシロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミン)-1,3,5-トリアジン(商品名:チヌビン152)、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)とセバシン酸メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル)との混合物(商品名:チヌビン292)等が挙げられる。
ヒンダードアミン系光安定剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
本発明の樹脂組成物におけるヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、化合物A、ポリイソシアネートB、及び無機粒子Cの合計質量(100質量%)に対して、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.5質量%以上2質量%以下がより好ましい。
【0062】
ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が前記下限値以上であれば、塗膜の耐候性が向上しやすい。ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が前記上限値以下であれば、塗料組成物の硬化性、硬化膜の強靭性、耐熱性、及び耐摩耗性が向上しやすい。
【0063】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物は、化合物A、ポリカーボネートポリオールB、ポリイソシアネートC、及び無機粒子Dを均一に混合することによって製造できる。必要に応じて、前述したその他の成分を加えてもよい。
混合方法は、各成分を均一に混合できる通常の攪拌機であれば限定されず、公知の攪拌機を採用できる。
【0064】
[塗料組成物]
本発明の塗料組成物は、本発明の樹脂組成物を含む。必要に応じて、硬化促進触媒、有機溶剤、酸化防止剤、黄変防止剤、ブルーイング剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、帯電防止剤、及び防曇剤等が本発明の樹脂組成物に配合される。
【0065】
<硬化促進触媒>
本発明の塗料組成物は、室温又は加熱して硬化させることができるが、必要に応じて硬化促進触媒を含んでいてもよい。
【0066】
硬化促進触媒としては、特に限定されないが、例えば、トリエチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン等のモノアミン、テトラメチルエチレンジアミン等のジアミン、その他トリアミン、環状アミン、ジメチルエタノールアミンのようなアルコールアミン、エーテルアミン等のアミン類、酢酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、酢酸カルシウム、オクチル酸鉛、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫、ビスマスネオデカノエート、ビスマスオキシカーボネート、ビスマス2-エチルヘキサノエート、オクチル酸亜鉛、亜鉛ネオデカノエート、ホスフィン、ホスホリン酸等の一般的に用いられる金属触媒が使用できる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
硬化促進触媒の含有量は、ポリイソシアネートBの質量(100質量%)に対して0.001質量%以上10質量%以下が好ましく、0.01質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上1質量%以下がさらに好ましい。
離型剤や流動調整剤、レベリング剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコン、ワックス、ステアリン酸塩、BYK-300(BYKケミカル社製)のようなポリシロキサン、メガファックF-477(DIC社製)のようなフッ素系界面活性剤等が用いられる。
【0068】
<有機溶剤>
本発明の塗料組成物は、塗装時の作業性を調整するために、塗料組成物の質量(100質量%)に対して、有機溶剤を1重量%以上90重量%以下含有することが好ましい。有機溶剤の含有量は、20重量%以上80重量%以下がより好ましく、40重量%以上70重量%以下がさらに好ましい。
【0069】
用いる有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、ジアセトンアルコール、2-メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、2-エトキシエタノール(エチルセロソルブ)、2-ブトキシエタノール(ブチルセロソルブ)、ターシャリーアミルアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジエチルエーテル、メトキシトルエン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、1,1-ジメトキシメタン、1,1-ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。
【0070】
中でもポリイソシアネートCに対して反応性を持たず、硬化膜の物性を低下させない点で、アルコール系以外の溶剤であることが好ましい。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
[塗装物]
本発明の塗装物は、本発明の塗料組成物の硬化膜を有する。
本発明の塗装物は、本発明の塗料組成物を公知の塗装方法で基材に塗布し、基材に塗布された本発明の塗料組成物を硬化させることにより得られる。
【0072】
基材としては、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板、錫メッキ鋼板等の金属、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ポリアリルジグリコールカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0073】
特に、本発明の塗装物は、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂を基材として用いたときの基材の表面の耐摩耗性向上に有効である。
【0074】
本発明の塗料組成物の基材への塗布は、ハケ塗り、バーコート、スプレーコート、ディップコート、スピンコート、カーテンコート等の公知の方法で行うことができる。
【0075】
基材に塗布された本発明の塗料組成物を硬化させる際の硬化温度は、基材の耐熱性や熱変形性等を考慮して適宜設定すればよいが、20℃以上200℃以下が好ましく、60℃以上150℃以下がより好ましく、80℃以上120℃以下がさらに好ましい。
【0076】
基材に塗布された本発明の塗料組成物を硬化させる際の硬化時間は、数分から数十分が好ましい。
【0077】
本発明の塗装物における、本発明の塗料組成物の硬化膜の厚さは、3μm以上50μm以下が好ましい。
【0078】
本発明の塗装物における硬化膜の厚さが前記下限値以上であれば、硬化膜の耐摩耗性及び硬度が良好となり、かつ長期間、高外観を維持しやすい。本発明の塗装物における硬化膜の厚さが前記上限値以下であれば、クラックを抑制しやすい。
【実施例
【0079】
以下に実施例及び比較例を掲げ、本発明についてさらに詳しく説明する。
実施例において、特に記載がなければ、「部」は「質量部」を表す。
各評価は以下の方法で行った。
【0080】
<重量平均分子量>
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により以下の条件で測定し、標準ポリスチレン換算により計算した。
装置:東ソー社製 高速GPC装置 HLC-8320GPC型
UV検出器:東ソー社製 UV-8320型
流速:0.35mL/min
注入口温度:40℃
オーブン温度:40℃
RI温度:40℃
UV波長:254nm
サンプル注入量:10μL
カラム:(1)~(3)の順に3本連結。
(1)東ソー社製 TSKgel superHZM-M(4.6mmID×15cmL)
(2)東ソー社製 TSKgel superHZM-M(4.6mmID×15cmL)
(3)東ソー社製 TSKgel HZ2000(4.6mmID×15cmL)
ガードカラム:東ソー社製 TSKguardcolumn SuperHZ-L(4.6mmID×3.5cmL)
溶媒:THF(安定剤BHT)
サンプル濃度:樹脂分0.2質量%に調整
【0081】
<評価サンプル>
表1、2に記載の各塗料組成物を、厚さ3mmのポリカーボネート樹脂板(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名:「IUPILON ML-300」)に、硬化後の被膜が10μmになるようにスプレー塗装した。その後、120℃で、30分間加熱処理することによりポリカーボネート樹脂板上に塗膜を形成し評価を行った。
【0082】
<外観>
塗膜の外観は、JIS K7136:2000に準拠してヘイズメーター(HM-65W、株式会社村上色彩技術研究所製)にて拡散透過率(ヘイズ値)を測定することにより評価した。ヘイズが1%未満のものを○(良)、1%以上のものを×(不良)として判断した。
【0083】
<密着性>
塗膜の耐密着性は、以下の手順で評価した。塗膜の表面にカッターで縦、横それぞれ1.5mm間隔で11本の基材に達する傷を入れて100個のます目をつくり、セロハン粘着テープ(巾25mm、ニチバン(株)製)をます目に圧着させて上方に急激にはがす。密着性の評価は、残存ます目数/全ます目数(100)と目視の観察による以下の基準で判定した。
○:100/100(剥離及び欠けなし)。
×:0/100~99/100(剥離発生)。
【0084】
<耐薬品性>
塗膜の耐薬品性は、評価サンプルの上にブレーキフルードオイル(TOYOTA純正 DOT-3)を2mL滴下して23℃の環境下で24時間静置させた後、オイルを拭き取った後の塗膜の外観を目視で確認することで評価した。
○:薬品の跡が全く見えないもの(良)
△:薬品の跡が薄く見えるもの(やや不良)
×:薬品の跡が白化して見えるもの(不良)
【0085】
<耐擦傷性>
塗膜の耐擦傷性は、平面摩耗試験機(KASAI社製スクラッチ試験機)を使用し、スチールウール#000を評価サンプル上に置き、250g/1.1cmの荷重にてラビングテスターで50往復摩耗した後、ヘイズメーター(HM-65W、株式会社村上色彩技術研究所製)にて拡散透過率(ヘイズ値)を測定した。
測定したヘイズ値から、初期へイズ値を引いた値(Δヘイズ値)により耐擦傷性の判定を行った。
◎:増加ヘイズ値=1.0%未満
○:増加ヘイズ値=1.0%以上、2.0%未満
×:増加ヘイズ値=2.0%以上
【0086】
<鉛筆硬度>
塗膜の硬度は、ISO/DIS 15184に準拠し、鉛筆硬度で評価を行った。試験
後、全く傷のつかない硬度のうち、最も高い硬度を塗膜の鉛筆硬度として採用した。
【0087】
(製造例1)無機粒子の分散液D-1の製造方法
フラスコAに東京化成工業社製の3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン1.2g、蒸留水0.6g、テトラヒドロフラン2.1gを加え、30℃で3時間撹拌して、シラノール溶液を得た。
フラスコBに日産化学工業社製のメチルイソブチルケトン分散シリカゾル(商品名:「MIBK-ST」、溶剤:メチルイソブチルケトン、固形分濃度:30質量%、平均粒子径:15nm)100gを加え、70℃に昇温した。
フラスコBにフラスコAのシラノール溶液を滴下し、滴下終了後70℃で1時間攪拌し、メルカプト基を有する無機粒子の分散液D-1(固形分20%)を得た。
【0088】
(製造例2)無機粒子の分散液D-2の製造方法
フラスコAに東京化成工業社製の3-メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン1.2g、蒸留水0.6g、テトラヒドロフラン2.1gを加え、30℃で3時間撹拌して、シラノール溶液を得た。
フラスコBに日産化学工業社製のメチルイソブチルケトン分散シリカゾル(商品名:「MIBK-ST」、溶剤:メチルイソブチルケトン、固形分濃度:30質量%、平均粒子径:15nm)100gを加え、70℃に昇温した。
フラスコBにフラスコAのシラノール溶液を滴下し、滴下終了後70℃で1時間攪拌し、メタクリロイル基を有する無機粒子の分散液D-2(固形分20%)を得た。
【0089】
(実施例1)
水酸基を有する化合物AとしてBASF社製のBasonol(登録商標)HPE1170B(成分については後述する。以下同じ。)を100部、ポリカーボネートポリオールBとして株式会社クラレ製のクラレポリオールC-1090を30部、ポリイソシアネートCとして旭化成株式会社製のデュラネートMHG-80Bを159部、無機粒子Dとして無機粒子の分散液D-1を70部、紫外線吸収剤としてBASF社製のチヌビン40
5を30部、光安定剤としてBASF社製のチヌビン152を0.5部、硬化促進触媒としてジブチル錫ジラウレート(DBTDL)を0.05部、表面調整剤としてBYK社製のBYK-370を1部使用し、これらを均一に混合し、さらにシクロヘキサノンとMIBKを用い、固形分濃度が約32%となるように希釈した。
得られた塗料組成物の評価結果を表1に示す。
【0090】
(実施例2~13及び比較例1~8)
表1~2に示す組成で、実施例1と同様に塗料組成物を調製した。
得られた塗料組成物の評価結果を、表1~2に示す。
なお、表中の数値は質量部を示し、かっこ内の数値は固形分値(質量部)を示す。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
表中の成分は以下の通りである。
・Basonol HPE 1170B:
BASF社製の末端に水酸基を有するハイパーブランチポリマー、固形分70%、水
酸基価:280mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw):1800。
・Basonol HPE 1265B:
BASF社製の末端に水酸基を有するハイパーブランチポリマー、固形分65%、水酸基価:190mg・KOH/g、重量平均分子量(Mw):2600。
・クラレポリオールC-1090:
株式会社クラレ製の両末端に水酸基を有するポリカーボネートジオール、固形分100%、水酸基価:112mg・KOH/g、数平均分子量(Mn):1000。
・デュラノールT-5651:
旭化成株式会社製の両末端に水酸基を有するポリカーボネートジオール、固形分100%、水酸基価:112mg・KOH/g、数平均分子量(Mn):1000。
・ベネビオールHS0840B:
三菱ケミカル株式会社製の両末端に水酸基を有するポリカーボネートジオール、固形分100%、水酸基価:140mg・KOH/g、数平均分子量(Mn):800。
・ETERNACOLL UM-90(3/1):
宇部興産株式会社製の両末端に水酸基を有するポリカーボネートジオール、固形分100%、水酸基価:125mg・KOH/g、数平均分子量(Mn):900。
・クラレポリオールP-1050:
株式会社クラレ製の両末端に水酸基を有するポリエステルジオール、固形分100%、水酸基価:112mg・KOH/g、数平均分子量(Mn):1000。
・NISSO‐PB G-1000:
日本曹達株式会社製の両末端に水酸基を有するポリブタジエンジオール、固形分100%、水酸基価:73mg・KOH/g、数平均分子量(Mn):1400。
・PTMG-1050:
三菱ケミカル株式会社製の両末端に水酸基を有するポリエーテルジオール、固形分100%、水酸基価:112mg・KOH/g、数平均分子量(Mn):1000。
・デュラネートMHG-80B:
旭化成株式会社製のヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、固形分80%、3.60mmol/g。
・Vestanate T-1890/100:
EVONIK社製のイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、固形分100%、4.12mmol/g。
・デュラネート24A-100:
旭化成株式会社製のヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体、固形分100%、5.60mmol/g。
・タケネートD-131N:
三井化学株式会社製のキシレンジイソシアネートのポリイソシアヌレート体、固形分75.6%、3.36mmol/g。
・MEK-ST:
日産化学工業社製のMEK分散シリカゾル(固形分30%、シリカ粒子の平均粒子径:10nm以上15nm以下、非反応性無機粒子)
・チヌビン405:
BASF社製の2-[4-(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、固形分100%。
・チヌビン152:
BASF社製の2,4-ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキシロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミン)-1,3,5-トリアジン、固形分100%
・BYK-370:
ビックケミー・ジャパン株式会社製のシリコン系表面調整剤。
【0094】
表2に示すとおり、比較例1では、末端が水酸基の分岐構造を有する化合物Aを含有しないため耐薬品性、耐擦傷性、鉛筆硬度が不十分となった。
比較例2~5では、ポリカーボネートポリオールBを含有しないため、密着性が不十分となった。
比較例6~8は、表面に水酸基又はイソシアネート基と反応可能な官能基を持たない無機粒子を用いたため、耐擦傷性が不十分となった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の樹脂組成物は、外観、耐摩耗性、及び硬度等に優れているため、自動車用の各種ランプレンズ、グレージング用ハードコート等の用途に好適に用いることができる。