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特許7582419シリコンウェーハの表面の帯電量の監視方法及び監視装置
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  • 特許-シリコンウェーハの表面の帯電量の監視方法及び監視装置 図1
  • 特許-シリコンウェーハの表面の帯電量の監視方法及び監視装置 図2
  • 特許-シリコンウェーハの表面の帯電量の監視方法及び監視装置 図3
  • 特許-シリコンウェーハの表面の帯電量の監視方法及び監視装置 図4
  • 特許-シリコンウェーハの表面の帯電量の監視方法及び監視装置 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】シリコンウェーハの表面の帯電量の監視方法及び監視装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20241106BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01L21/66 Z
H01L21/02 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023166046
(22)【出願日】2023-09-27
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】松尾 淳平
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-026742(JP,A)
【文献】特開2015-191819(JP,A)
【文献】特開2012-199348(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0268408(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
H01L 21/02
H05F 3/06
G01R 31/302
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェーハを容器に移載する際の前記シリコンウェーハの表面の帯電量を測定して、前記シリコンウェーハの表面の帯電量を監視する方法であって、
前記シリコンウェーハを容器に移載する際に前記シリコンウェーハの前記容器から露出している箇所の帯電量を、測定部を用いて測定することにより、前記シリコンウェーハの表面の帯電量を監視し、
常時又は適時、前記測定部を用いて前記シリコンウェーハの表面の帯電量の測定を行い、
前記シリコンウェーハの表面の帯電量が、設定した閾値を超えた場合又は前記閾値に達した場合に、警報器により警報を発報することを特徴とする、シリコンウェーハの表面の帯電量の監視方法。
【請求項2】
シリコンウェーハを容器に移載する際の前記シリコンウェーハの表面の帯電量を測定して、前記シリコンウェーハの表面の帯電量を監視する装置であって、
前記シリコンウェーハを容器に移載する際に前記シリコンウェーハの前記容器から露出している箇所の帯電量を測定可能な、測定部を備え、
前記測定部は、常時又は適時、前記シリコンウェーハの表面の帯電量の測定を行うことが可能であるように構成され、
前記シリコンウェーハの表面の帯電量が、設定した閾値を超えた場合又は前記閾値に達した場合に、警報を発報する警報器をさらに備えることを特徴とする、シリコンウェーハの表面の帯電量の監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハの表面の帯電量の監視方法及び監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、シリコンウェーハを出荷する際には、容器(例えばFOSB:Front Open Shipping Box)にシリコンウェーハを収容する。容器にシリコンウェーハを移載する際、移載機を用いる。
【0003】
このとき、容器が帯電しているとシリコンウェーハの表面の帯電量も増加する。シリコンウェーハの表面が帯電していると、大気を通じてプッシャーとシリコンウェーハ表面との間で電子の移動が生じる場合がある。急激な電子の移動は、スパークと称される。シリコンウェーハとプッシャーとの間でスパークが生じると、プッシャーに含まれる金属原子がシリコンウェーハ表面に飛散し、その結果、シリコンウェーハの表面が金属汚染されるおそれがある。
【0004】
例えば特許文献1では、シリコンウェーハの表面の帯電を除電する手法について提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-146626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の手法は除電方法であるため、シリコンウェーハの表面の帯電量を監視することは困難であった。このため、除電が十分になされていない場合には、スパークが発生したシリコンウェーハが出荷されてしまうおそれがあった。
【0007】
一方で、容器は、多数のシリコンウェーハWを収容するために棚を多数有する多段バスケット構造となっており、帯電量を測定可能な機器等を容器内で移動させて各シリコンウェーハの帯電量を測定することは困難であった。また、容器に移載するのは、最終工程であるため、それ以降での監視も困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、容器に移載する際のシリコンウェーハの表面の帯電量を監視することのできる、シリコンウェーハの表面の帯電量の監視方法及び監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)シリコンウェーハを容器に移載する際の前記シリコンウェーハの表面の帯電量を測定して、前記シリコンウェーハの表面の帯電量を監視する方法であって、
前記シリコンウェーハを容器に移載する際に前記シリコンウェーハの前記容器から露出している箇所の帯電量を、測定部を用いて測定することにより、前記シリコンウェーハの表面の帯電量を監視することを特徴とする、シリコンウェーハの表面の帯電量の監視方法。
【0010】
(2)常時又は適時、前記測定部を用いて前記シリコンウェーハの表面の帯電量の測定を行い、
前記シリコンウェーハの表面の帯電量が、設定した閾値を超えた場合又は前記閾値に達した場合に、警報器により警報を発報する、前記(1)に記載のシリコンウェーハの表面の帯電量の監視方法。
【0011】
(3)シリコンウェーハを容器に移載する際の前記シリコンウェーハの表面の帯電量を測定して、前記シリコンウェーハの表面の帯電量を監視する装置であって、
前記シリコンウェーハを容器に移載する際に前記シリコンウェーハの前記容器から露出している箇所の帯電量を測定可能な、測定部を備えることを特徴とする、シリコンウェーハの表面の帯電量の監視装置。
【0012】
(4)前記測定部は、常時又は適時、前記シリコンウェーハの表面の帯電量の測定を行うことが可能であるように構成され、
前記シリコンウェーハの表面の帯電量が、設定した閾値を超えた場合又は前記閾値に達した場合に、警報を発報する警報器をさらに備える、前記(3)に記載のシリコンウェーハの表面の帯電量の監視装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、容器に移載する際のシリコンウェーハの表面の帯電量を監視することのできる、シリコンウェーハの表面の帯電量の監視方法及び監視装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】シリコンウェーハの表面の帯電量の監視装置の模式的な側面図である。
図2】シリコンウェーハの表面の帯電量の監視装置の断面図である。
図3】シリコンウェーハの表面の帯電量の監視装置の上面図である。
図4】実施例で用いた装置を示す図である。
図5】実施例の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に例示説明する。
【0016】
<シリコンウェーハの表面の帯電量の監視装置>
本発明の一実施形態にかかるシリコンウェーハの表面の帯電量の監視装置について例示説明する。図1は、シリコンウェーハの表面の帯電量の監視装置の模式的な側面図である。図2は、シリコンウェーハの表面の帯電量の監視装置の断面図である。図3は、シリコンウェーハの表面の帯電量の監視装置の上面図である。
【0017】
シリコンウェーハWは、出荷される際に、移載機4により水平方向に移動され、1枚ずつ出荷容器3内に移載されていく。
【0018】
図1図2に示すように、本実施形態の監視装置1は、測定部2を備えている。測定部2は、シリコンウェーハWを出荷容器3に移載する際(シリコンウェーハWの一部が出荷容器3の内側に位置し、残りの一部が出荷容器3の外側に位置している際)にシリコンウェーハWの出荷容器3から露出している箇所(シリコンウェーハWの表面に垂直な方向から見た際に出荷容器3の外側に露出している部分)の帯電量を測定可能である。測定部2は、シリコンウェーハWの表面の帯電量を測定可能なものであれば、既知のものを用いることができる。本例では、測定部2は、電位計である。帯電量が大きくなると電位も大きくなるため、シリコンウェーハWの電位を測定することにより、帯電量を把握することができる。
【0019】
本例では、測定部2は、常時又は適時、シリコンウェーハWの表面の帯電量の測定を行うことが可能であるように構成されている。
【0020】
本実施形態では、監視装置1は、警報器5をさらに備える。警報器5は、シリコンウェーハWの表面の帯電量が、設定した閾値を超えた場合又は閾値に達した場合に、警報を発報するように構成されている。警報は、任意の既知のアラームとすることができ、光、音、振動等様々な手法で発報することができる。閾値は、例えば、過去のデータ等からスパークが発生した際の帯電量(測定された電位)を基準として(その帯電量をそのまま閾値として用いても良く、又は、より安全に管理するために係数を乗じる等の所定の演算を行っても良い)設定することができる。図示例では、警報器5は、測定部2と有線で接続されているが、無線接続されていても良い。
【0021】
出荷容器3は、本例では、FOSBである。FOSBは、例えばその一部が樹脂からなるものを用いることができる。FOSBの樹脂の材料としては、特には限定されないが、ポリカーボネートを例示することができる。出荷容器3に代えて、他にもFOUP(Front Opening Unified Pod)等の容器を用いることもできる。FOUPは、例えばその一部が樹脂からなるものを用いることができる。
【0022】
移載機4は、水平方向に延在するアーム4aを有する。アーム4aの両端には(シリコンウェーハWの端面を支持する)パッド4bがそれぞれ設けられている。また、移載機4は、プッシャー4cを備えている。アーム4aは、出荷容器3内の多段バスケットの各棚に対応する位置に順に移動可能であり、プッシャー4cによりシリコンウェーハWを押し出すことでシリコンウェーハWを1枚ずつ各棚に収容する。シリコンウェーハWを、棚の上段から順に収容する。プッシャー4cには(シリコンウェーハWの他方の(後から出荷容器3に入る側の)端面を支持する)パッド4bが設けられている。アーム4a及びパッド4bは、本例では樹脂製である。また、プッシャー4cは、本例では、アルミニウム製である。シリコンウェーハWは、図示のように、一対のパッド4bに支持されながら、水平方向に出荷容器3内に移載される。シリコンウェーハWの周囲の部材であるアーム4a及びパッド4bの材料が絶縁性を有する樹脂製であることにより、シリコンウェーハWが帯電し、アルミニウム製であるプッシャー4cとの間で上述のスパークが発生し得る。
【0023】
<シリコンウェーハの表面の帯電量の監視方法>
本発明の一実施形態にかかるシリコンウェーハの表面の帯電量の監視方法について例示説明する。特には限定されないが、本実施形態の監視方法は、上記の実施形態の監視装置を用いて実施することができる。
【0024】
本実施形態の方法は、シリコンウェーハWを出荷容器3に移載する際のシリコンウェーハWの表面の帯電量を測定して、シリコンウェーハWの表面の帯電量を監視する方法である。本実施形態の方法では、シリコンウェーハWを出荷容器3に移載する際にシリコンウェーハWの出荷容器3から露出している箇所の帯電量を、測定部2を用いて測定することにより、シリコンウェーハWの表面の帯電量を監視する。
【0025】
本実施形態の方法では、常時又は適時、測定部2を用いてシリコンウェーハWの表面の帯電量の測定を行い、シリコンウェーハWの表面の帯電量が、設定した閾値を超えた場合又は閾値に達した場合に、警報器5により警報を発報することが好ましい。
【0026】
<作用効果>
本発明者が、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、後述の実施例でも示されるように、出荷容器3に移載する際のシリコンウェーハWの表面の帯電量は、面内でほぼ均一となることが判明した。そして、シリコンウェーハWを出荷容器3に移載する際にシリコンウェーハWの出荷容器3から露出している箇所を測定すれば、当該箇所の帯電量(測定された電位)をシリコンウェーハWの面内の任意の箇所での帯電量(電位)とみなすことができるという知見を得た。
【0027】
まず、装置について、本発明の上記の実施形態にかかるシリコンウェーハWの表面の帯電量の監視装置1は、シリコンウェーハWを出荷容器3に移載する際にシリコンウェーハWの出荷容器3から露出している箇所の帯電量を測定可能な、測定部2を備えるため、測定部2により、当該箇所の帯電量を測定して、その帯電量を、プッシャー4cとの間で電子の移動が生じる箇所の帯電量とみなすことで、出荷容器3に移載する際のシリコンウェーハWの表面の帯電量を監視することができる。
上記の装置の実施形態のように、常時又は適時、測定部2を用いてシリコンウェーハWの表面の帯電量の測定を行い、シリコンウェーハWの表面の帯電量が、設定した閾値を超えた場合又は閾値に達した場合に、警報を発報する、警報器5をさらに備えることが好ましい。これによれば、警報が発報された際に対象となったシリコンウェーハWの流動を停止する等して、スパークが発生した可能性のあるシリコンウェーハWが出荷されてしまうのを防止することができる。
【0028】
方法についても同様に、本発明の上記の実施形態にかかるシリコンウェーハWの表面の帯電量の監視方法は、シリコンウェーハWを出荷容器3に移載する際にシリコンウェーハWの出荷容器3から露出している箇所の帯電量を、測定部2を用いて測定することにより、シリコンウェーハWの表面の帯電量を監視するため、測定部2により、当該箇所の帯電量を測定して、その帯電量を、プッシャー4cとの間で電子の移動が生じる箇所の帯電量とみなすことで、出荷容器3に移載する際のシリコンウェーハWの表面の帯電量を監視することができる。
上記の方法の実施形態のように、常時又は適時、測定部2を用いてシリコンウェーハWの表面の帯電量の測定を行い、シリコンウェーハWの表面の帯電量が、設定した閾値を超えた場合又は閾値に達した場合に、警報器5により警報を発報することが好ましい。これによれば、警報が発報された際に対象となったシリコンウェーハWの流動を停止する等して、スパークが発生した可能性のあるシリコンウェーハWが出荷されてしまうのを防止することができる。
【0029】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例
【0030】
シリコンウェーハをFOSBに移載する際のシリコンウェーハの表面の帯電量を測定する試験を行った。図4は、実施例で用いた装置を示す図である。ウェーハ移載機4内のイオナイザーをオフにし、次いで、FOSBをウェーハ移載機4にローディングした。次いで、FOSBを作業者の手(手袋を使用)により帯電させた。FOSBの電位は、液晶ディスプレイ電圧計(Trek model 884、アドバンスドエナジージャパン社製)により測定した。次いで、シリコンウェーハ(p型、径300mm)を除電して0kVとした。FOSBに移載する途中のシリコンウェーハの表面の帯電量を面内5か所(図4の位置A~E)を測定した。測定は、デジタル電圧計(Trek model 347、アドバンスドエナジージャパン社製)の測定部20を測定位置A~Eに移動させて行った。この試験では、一部が樹脂製であるFOSBを用いた。上記の帯電量の測定は、シリコンウェーハのFOSBへの挿入距離0mm、100mm、150mm、200mm、300mmのそれぞれの位置でシリコンウェーハの挿入を一旦停止して行った。
【0031】
図5は、実施例の結果を示す図である。図5に示すように、シリコンウェーハの表面の測定位置の全て(位置A~E)において、シリコンウェーハの表面の帯電量は同等であった。また、FOSBへの挿入距離の増大に伴い、シリコンウェーハ面内の各位置での帯電量は増大したが、いずれの挿入距離においても、シリコンウェーハの表面の測定位置の全て(位置A~E)において、シリコンウェーハの表面の帯電量は同等であった。
【0032】
上記の結果から、シリコンウェーハがFOSBに移載される際のシリコンウェーハの表面の任意の位置での帯電量を測定することにより、その位置での帯電量を他の位置での帯電量とみなすことができることがわかる。そして、このことにより、上記の実施形態でも説明した通り、出荷容器に移載する際のシリコンウェーハ表面の帯電量を監視することができることがわかる。
【符号の説明】
【0033】
1:シリコンウェーハの表面の帯電量の監視装置、
2:測定部、
3:出荷容器、
4:移載機、
5:警報器、
20:測定部
【要約】
【課題】本発明は、容器に移載する際のシリコンウェーハの表面の帯電量を監視することのできる、シリコンウェーハの表面の帯電量の監視方法及び監視装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本方法は、シリコンウェーハを容器に移載する際の前記シリコンウェーハの表面の帯電量を測定して、前記シリコンウェーハの表面の帯電量を監視する方法であって、前記シリコンウェーハを容器に移載する際に前記シリコンウェーハの前記容器から露出している箇所の帯電量を、測定部を用いて測定することにより、前記シリコンウェーハの表面の帯電量を監視する。本装置は、シリコンウェーハを容器に移載する際の前記シリコンウェーハの表面の帯電量を測定して、前記シリコンウェーハの表面の帯電量を監視する装置であって、前記シリコンウェーハを容器に移載する際に前記シリコンウェーハの前記容器から露出している箇所の帯電量を測定可能な、測定部を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5