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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】通信装置、通信方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 45/64 20220101AFI20241106BHJP
   H04L 61/5084 20220101ALI20241106BHJP
   H04L 61/2592 20220101ALI20241106BHJP
   H04W 8/02 20090101ALI20241106BHJP
   H04W 8/26 20090101ALI20241106BHJP
   H04W 80/04 20090101ALI20241106BHJP
【FI】
H04L45/64
H04L61/5084
H04L61/2592
H04W8/02
H04W8/26 110
H04W80/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023500468
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2021006444
(87)【国際公開番号】W WO2022176168
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】小島 久史
(72)【発明者】
【氏名】濱野 貴文
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真悟
(72)【発明者】
【氏名】鋒 幸洋
【審査官】中川 幸洋
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02775674(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0065531(US,A1)
【文献】Michael Menth, et al.,Improvements to LISP Mobile Node,2010 22nd International Teletraffic Congress (ITC 22),2010年09月07日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 45/64
H04L 61/5084
H04L 61/2592
H04W 8/02
H04W 8/26
H04W 80/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエリア間を移動し、所定の情報処理装置と通信する通信装置であって、
それぞれが前記複数のエリアのうちのいずれか一つのエリアに対応する複数の収容装置のうち、当該通信装置が属するエリアに対応する前記収容装置に対し、当該通信装置の移動によって変更される第1のIPアドレスと、前記移動によって変更されない第2のIPアドレスとを通知することで、前記エリアごとの第3のIPアドレスと、前記エリアに依存しない第4のIPアドレスとを有する前記所定の情報処理装置からの前記第2のIPアドレスを宛先とするパケットを前記第1のIPアドレスによってカプセル化して送信させるための情報を当該収容装置に登録させる登録部と、
当該通信装置からのパケットの宛先に指定された前記第4のIPアドレスと当該通信装置が属するエリアとに対応する前記第3のIPアドレスを、前記第4のIPアドレスと前記エリアとの組み合わせごとに前記第3のIPアドレスを記憶するコントローラから取得する解決部と、
前記第1のIPアドレスによってカプセル化されたパケットを前記第2のIPアドレスを宛先とするパケットにデカプセル化し、前記解決部が取得した前記第3のIPアドレスによってカプセル化するパケット処理部と、
を有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記登録部は、当該通信装置が属するエリアに対応する前記収容装置から当該エリアの識別情報を受信する、
ことを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
複数のエリア間を移動し、所定の情報処理装置と通信する通信装置が、
それぞれが前記複数のエリアのうちのいずれか一つのエリアに対応する複数の収容装置のうち、当該通信装置が属するエリアに対応する前記収容装置に対し、当該通信装置の移動によって変更される第1のIPアドレスと、前記移動によって変更されない第2のIPアドレスとを通知することで、前記エリアごとの第3のIPアドレスと、前記エリアに依存しない第4のIPアドレスとを有する前記所定の情報処理装置からの前記第2のIPアドレスを宛先とするパケットを前記第1のIPアドレスによってカプセル化して送信させるための情報を当該収容装置に登録させる登録手順と、
当該通信装置からのパケットの宛先に指定された前記第4のIPアドレスと当該通信装置が属するエリアとに対応する前記第3のIPアドレスを、前記第4のIPアドレスと前記エリアとの組み合わせごとに前記第3のIPアドレスを記憶するコントローラから取得する解決手順と、
前記第1のIPアドレスによってカプセル化されたパケットを前記第2のIPアドレスを宛先とするパケットにデカプセル化し、前記解決手順が取得した前記第3のIPアドレスによってカプセル化するパケット処理手順と、
を実行することを特徴とする通信方法。
【請求項4】
前記登録手順は、当該通信装置が属するエリアに対応する前記収容装置から当該エリアの識別情報を受信する、
ことを特徴とする請求項記載の通信方法。
【請求項5】
請求項3又は4記載の通信方法を通信装置に実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、通信方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
コネクテッドカー等のように、物理的に移動するデバイスをネットワークに接続して、接続性を提供し続けるためには、IPモビリティの機能が必要である。IPモビリティは、デバイスのIPアドレスが変わったとしても、デバイスのアプリケーションが影響を受けずに通信を継続できる機能のことである。
【0003】
IPモビリティを実現する技術の代表例としては、LISP(Locator/ID Separation Protocol)がある(非特許文献1)。LISPでは、アプリケーションが通信に利用するIPアドレスをEID(End Point ID)とし、デバイスが外部のネットワークと通信する際に利用するIPアドレスをRLOC(Routing Locator)として定義する。RLOCは、デバイスが接続するネットワークが変更されたり、移動に伴ってIPアドレスの再割り当てがあったりすると変更される。一般的には、RLOCは、デバイスがセルラー網やWi-Fi(登録商標)等に接続した際に払い出されるIPアドレスである。一方、EIDは、常に同じ値である。LISPでは、外部のデータベースで、EID-RLOCの対応関係を保持し、その対応関係を常に最新に保つ。デバイスは、通信先のアプリケーションのEIDをキーとして、RLOCを問い合わせ、宛先のRLOCでIPパケットをカプセル化してネットワークに送信することで、IPモビリティを実現する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】"The Locator/ID Separation Protocol (LISP)"、IETF RFC6830、[online]、<URL:https://tools.ietf.org/html/rfc6830>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LISPは、LISPに参加する全端末間でIPモビリティを実現することができるが、コネクテッドカーやセンサ等のデバイスからクラウド側にデータを収集するような一般的なIoT(Internet of Things)のユースケースにおいては、デバイス数が増加すると、スケーラビリティが問題になる。例えば、コネクテッドカーでは、デバイス数が数百万~数千万にもなる。
【0006】
具体的には、デバイスの通信先のクラウド側のデバイスのルーティングテーブル量(経路数)が問題になる。
【0007】
デバイスのルーティングテーブルは、そのデバイスが通信する宛先となるEIDをキーとして、対応するRLOCでカプセル化するための情報が保持されている。或るデバイスが多数のデバイスやアプリケーションと同時に通信する場合、EIDの数に応じてルーティングテーブルの量(経路数)が増えてしまう。例えば、移動するIoTデバイスのセンサ情報を定期的に収集するようなアプリケーションを想定すると、IoTデバイスの通信先はクラウド側のアプリケーションのみであるが、クラウド側のデバイス(デバイス相当の終端装置)は、大量のIoTデバイスと通信する必要がある。センサ情報のような小容量のデータを間欠的に送信するアプリケーションの場合、ネットワーク帯域よりも先に、クラウド側のデバイスのルーティングテーブルの量(経路数)がボトルネックとなる可能性がある。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、IPアドレスが変化する通信装置に関する通信を効率化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで上記課題を解決するため、複数のエリア間を移動し、所定の情報処理装置と通信する通信装置は、それぞれが前記複数のエリアのうちのいずれか一つのエリアに対応する複数の収容装置のうち、当該通信装置が属するエリアに対応する前記収容装置に対し、当該通信装置の移動によって変更される第1のIPアドレスと、前記移動によって変更されない第2のIPアドレスとを通知することで、前記エリアごとの第3のIPアドレスと、前記エリアに依存しない第4のIPアドレスとを有する前記所定の情報処理装置からの前記第2のIPアドレスを宛先とするパケットを前記第1のIPアドレスによってカプセル化して送信させるための情報を当該収容装置に登録させる登録部と、当該通信装置からのパケットの宛先に指定された前記第4のIPアドレスと当該通信装置が属するエリアとに対応する前記第3のIPアドレスを、前記第4のIPアドレスと前記エリアとの組み合わせごとに前記第3のIPアドレスを記憶するコントローラから取得する解決部と、前記第1のIPアドレスによってカプセル化されたパケットを前記第2のIPアドレスを宛先とするパケットにデカプセル化し、前記解決部が取得した前記第3のIPアドレスによってカプセル化するパケット処理部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
IPアドレスが変化する通信装置に関する通信を効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態における通信システムの構成例を示す図である。
図2】本発明の実施の形態におけるデバイス10のハードウェア構成例を示す図である。
図3】CPE50の機能構成例を示す図である。
図4】エリア代表ルータ(AR40)の機能構成例を示す図である。
図5】各CPE50のルーティングテーブル54の構成例を示す図である。
図6】エリア代表ルータ(AR40)のルーティングテーブル43の構成例を示す図である。
図7】コントローラ30の機能構成例を示す図である。
図8】EID-RLOCデータベース33の構成例を示す図である。
図9】通信に先立って実行される、デバイス10側CPE50のAR40への接続や、クラウド側CPE50のコントローラ30への登録を説明するためのシーケンス図である。
図10】CPE50-11の配下のホスト60-11からCPE50-31の配下のホスト60-3に向けてパケットが送信される際の処理手順の一例を説明するためのシーケンス図である。
図11】ホスト60-3からホスト60-11への通信の流れを説明するためのシーケンス図である。
図12】CPE50-11が属するエリアが変化した際に実行される処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
図13】CPE50-11が属するエリアが変化した際に実行される処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
図14】CPE50-11が属するエリアが変化した際の各ルーティングテーブルの変化の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
[本実施の形態の概要]
本実施の形態では、(1)複数のエリア間を移動するデバイス10を収容するエリア代表ルータ(AR40)をエリアごとに設置し、(2)クラウド側の終端装置とエリア代表ルータとを1対1で対応付ける、という構成をとることで課題を解決する。
【0014】
(1)に関して、エリア代表ルータは、物理的なエリア毎(例えば、県単位など)に設置され、移動するデバイス10は、通信に先立って、最寄りのエリア代表ルータに接続する。エリア代表ルータは、自身の配下に接続されているデバイス10のEID-RLOCの対応関係をルーティングテーブルとして保持する。なお、EID(End Point ID)とは、IPモビリティを実現する代表的な技術であるLISP(Locator/ID Separation Protocol)において、アプリケーションが通信に利用するIPアドレスをいい、デバイス10の移動に依存しない(デバイス10の移動にともなって変化しない)。一方、RLOC(Routing Locator)とは、LISPにおいて、デバイス10等の端末が外部のネットワークと通信する際に利用するIPアドレスをいい、デバイス10の移動にともなって変化する。
【0015】
(2)により、クラウド側の終端装置のルーティングテーブルを削減する。クラウド側の終端装置は、仮想化技術によってVM(Virtual Machine)やコンテナといった形態で実装され、コンピューティングリソースの許す範囲内で、複数立ち上げることができる。そのため、1つのエリア代表ルータに対して、1つの終端装置を設置することが可能となり、終端装置から見ると、通信相手は、対応するエリア代表ルータに限定される。すなわち、クラウド側の終端装置のルーティングテーブルには、対応する1つのエリア代表ルータの情報のみが登録されこととなる。したがって、クラウド側の終端装置は、EID-RLOCの対応関係を保持する必要がないため、データベースへの問い合わせをする必要がなく、データベースの問い合わせ処理量の削減も期待できる。
【0016】
[システム構成]
本実施の形態では、通信先の端末やアプリケーションが保持するIPアドレスをEID(Endpoint ID)とし、各デバイス10やクラウドの拠点(データセンタ20)をコアネットワークN1に接続(収容)するCPE(Customer Premises Equipment)間で、IPパケットをカプセル化して送信する手段としてSRv6(Segment Routing for IPv6)を利用することとする。コアネットワークN1は、IPv6に対応していればよい。ただし、CPE間でカプセル化するプロトコルはSRv6に限定されず、IPパケットをカプセル化できる他の手段によって代用されてもよい。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態における通信システムの構成例を示す図である。図1において、複数のデバイス10(デバイス10-11、デバイス10-12、デバイス10-21)やデータセンタ20は、終端装置としてのCPE50やホスト60を有し、CPE50を介してコアネットワークN1に接続される。デバイス10内又はデータセンタ内20において、CPE50とホスト60とはデバイス10内又はデータセンタ内20のLANによって接続される。各デバイス10のCPE50は、いずれかのエリアに所属し、そのエリアを管轄するエリア代表ルータであるAR40に対して、SRv6トンネルを介して接続される。また、CPE50からコアネットワークN1を介してアクセスできる場所にコントローラ30が配置される。
【0018】
図1には、各装置やホスト60のIPアドレスを示す文字列が括弧内に示されている。"IP"で始まる文字列は、CPE50又はAR40のIPアドレス(RLOC)であり、コアネットワークN1を介して到達性の有るアドレスである。コアネットワークN1を介した通信は、このIPアドレスでカプセル化される。一方、"EID"で始まる文字列は、CPE50配下のLAN内に存在するホスト60やアプリケーションに付与されたIPアドレスである。EIDは固定的に付与され、デバイス10が移動したり、接続するネットワークが変更になったりしても、変化しない(すなわち、デバイス10の位置に依存せしない)。アプリケーションは、常に、このEIDで通信をし続けることができる。
【0019】
[デバイス10等のハードウェア構成]
図2は、本発明の実施の形態におけるデバイス10のハードウェア構成例を示す図である。図2のデバイス10は、それぞれバスBで相互に接続されているドライブ装置100、補助記憶装置102、メモリ装置103、CPU104、及びインタフェース装置105等を有する。
【0020】
デバイス10での処理を実現するプログラムは、CD-ROM等の記録媒体101によって提供される。プログラムを記憶した記録媒体101がドライブ装置100にセットされると、プログラムが記録媒体101からドライブ装置100を介して補助記憶装置102にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体101より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置102は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0021】
メモリ装置103は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置102からプログラムを読み出して格納する。CPU104は、メモリ装置103に格納されたプログラムに従ってデバイス10に係る機能を実行する。インタフェース装置105は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられる。
【0022】
なお、データセンタ20、コントローラ30及びAR40等も、図2と同様のハードウェア構成を有してもよい。
【0023】
[各装置の機能構成]
図3は、CPE50の機能構成例を示す図である。なお、デバイス10側(CPE50-11,12,21)、データセンタ20側(CPE50-31,32)のいずれにおいてCPE50は同じ構成を有する。図3において、CPE50は、フォワーディング部51、RLOC解決部52及びCPE登録部53を有する。これら各部は、デバイス10又はデータセンタ20にインストールされた1以上のプログラムが、デバイス10又はデータセンタ20のCPUに実行させる処理により実現される。CPE50は、また、ルーティングテーブル54を利用する。ルーティングテーブル54は、例えば、デバイス10又はデータセンタ20のメモリ装置又は補助記憶装置等を用いて実現可能である。
【0024】
フォワーディング部51は、自CPE50配下のホスト60からデータセンタ20へのパケットをカプセル化してコアネットワークN1へ送出すると共に、データセンタ20等から自CPE50配下のホスト60へのカプセル化されたパケットをコアネットワークN1から受信した際に、当該パケットをデカプセル化して、デカプセル化されたパケットをホスト60へ配送する。本実施の形態では、カプセル化プロトコルとしてSRv6が利用されるため、CPE50のフォワーディング部51はSRv6のカプセル化、デカプセル化を実行することになる。
【0025】
ルーティングテーブル54は、パケットの転送、パケットのカプセル化、パケットのデカプセル化をフォワーディング部51が実行する際に必要な経路表を保持する記憶部である。ルーティングテーブル54の具体例は後述する。
【0026】
RLOC解決部52は、フォワーディング部51がパケットを送出する際に、宛先EIDに対応するRLOCがルーティングテーブル54に登録されていなかった場合に、宛先EIDに対応するRLOCを解決する。具体的には、RLOC解決部52は、コントローラ30に対して、宛先EIDに対応するRLOCを問い合わせ、その応答としてRLOCを取得したら、ルーティングテーブル54に宛先EID-RLOCの対応関係(当該宛先EIDと当該RLOCとの対応情報)を登録する。
【0027】
CPE登録部53は、CPE50が起動された際に、予め指定されたエリア代表ルータ(AR40)に対して、CPE50自身のIPアドレス(RLOC)と配下のEIDを通知する。CPE登録部53は、また、RLOC及びEIDの通知に対する応答として、エリアIDをAR40から受け取るとともに、ルーティングテーブル54に対して、AR40からのカプセル化されたパケットを受け取れるようにする(デカプセル化できるようにする)ための情報を登録する。なお、エリアIDとは、エリアの識別情報である。
【0028】
図4は、エリア代表ルータ(AR40)の機能構成例を示す図である。図4において、AR40は、フォワーディング部41及びCPE接続部42を有する。これら各部は、AR40にインストールされた1以上のプログラムが、AR40のCPUに実行させる処理により実現される。AR40は、また、ルーティングテーブル43を利用する。ルーティングテーブル43は、例えば、AR40のメモリ装置又は補助記憶装置等を用いて実現可能である。
【0029】
フォワーディング部41は、データセンタ20からのパケットをデカプセル化して、元のIPパケットの宛先EID(宛先CPE50配下のEID)をキーとしてルーティングテーブル43を検索し、宛先EIDに対応するCPE50のRLOCを取得する。その後、フォワーディング部41は、当該RLOCで元のパケットを再カプセル化して、再カプセル化されたパケットを宛先CPE50に送信する。なお、AR40は、デバイス10側CPE50→クラウド側CPE50方向の通信には関与しなくてよいが、通常のルータとして、SRv6等でカプセル化されたIPv6パケットを転送する役割を担ってもよい。この場合、フォワーディング部41は、標準的なIPv6の転送機能を有することになる。
【0030】
CPE接続部42は、CPE50からの接続要求を受信した際に、CPE50を接続するための処理を実行する。具体的には、CPE接続部42は、CPE50からの接続要求に含まれるCPE50のIPアドレス(RLOC)とEIDを受け取り、自AR40のルーティングテーブル43に、CPE50のEIDに対して、対応するRLOCでカプセル化して送出するための経路情報を登録する。その後、CPE接続部42は、接続応答として、自AR40が管轄するエリアのエリアIDをCPE50に通知する。これにより、フォワーディング部41が、クラウド側から送信されてきたパケットを、宛先となるCPE50に配送することができるようになる。
【0031】
ルーティングテーブル43は、フォワーディング部41がパケットの転送、パケットのカプセル化、パケットのデカプセル化を実行する際に必要な経路表を保持する記憶部である。ルーティングテーブル43の具体例は後述する。
【0032】
図5は、各CPE50のルーティングテーブル54の構成例を示す図である。図5には、図1のネットワーク構成例の場合の具体的なルーティングテーブル54の例が示されている。
【0033】
CPE50のルーティングテーブル54は、宛先アドレス(宛先プレフィックス)と対応する処理内容から構成される。フォワーディング部51は、受信したIPパケットの宛先アドレスをキーとしてルーティングテーブル54を検索して、そのレコードに記載された処理を実施する。CPE50-11のルーティングテーブル54-11の例に基づいて、具体的に説明する。
【0034】
「宛先=EID#3、処理=Encap(IP#31)」というレコードは、デバイス10側のCPE50-11が、クラウド側のCPE50-31(RLOC:IP#31)へと通信する際に利用するものである。宛先欄にある「EID#3」は、クラウド側のホスト60やアプリケーションが利用するアドレスであり、CPE50-11が受信したパケットの宛先アドレスがこれに該当する場合には、フォワーディング部51は、「Encap(IP#31)」の処理を実行する。「Encap(IP#31)」は、宛先IPアドレスをIP#31として、SRv6でカプセル化して送出するという意味を示す。すなわち、CPE50-11が配下のホスト60から受信したパケットを、フォワーディング部51は、コアネットワークN1内に到達性のあるCPE50-31のRLOCであるIP#31でカプセル化して送出することになる。デバイス10側のCPE50のルーティングテーブル54は、通信する先のクラウド側のホスト60毎に、このようなレコードを保持する。
【0035】
「宛先=IP#11、処理=Decap->Lookup」というレコードは、宛先IPアドレスが「IP#11」の場合、そのパケットをデカプセル化(Decap)して、再度、ルーティングテーブル54-11を検索する(Lookup)という意味を示す。IP#11は、CPE50-11のIPアドレス(RLOC)であるため、このレコードは、「自分宛ての(カプセル化された)パケットに対して、デカプセル化して、ルーティングテーブル54-11を再検索する」という処理を示す。
【0036】
「宛先=EID#11、処理=Direct」というレコードは、IPパケットの宛先アドレスが「EID#11」の場合には、直接配送する、という意味を示す。直接配送とは、同一LAN内に宛先アドレスが存在し、宛先に対して直接IPパケットを送出するという意味である。このレコードは、前述の「宛先=IP#11、処理=Decap->Lookup」の結果、ルーティングテーブル54-11を再検索したときに、宛先が自身の配下のホスト60である場合に、直接配送できるようにするためのものである。
【0037】
CPE50-21のルーティングテーブル54-21は、CPE50-11のルーティングテーブル54-11とほぼ同様であるが、CPE50-21はエリア2に属するため、クラウド側において対応するCPE50がCPE50-32である。そのため、1レコード目の処理が「Encap(IP#32)」となっている。また、CPE50-21のRLOCがIP#21であり、配下のEIDがEID#21であるため、ルーティングテーブル54-21の3~4レコード目の「宛先」がCPE50-11のルーティングテーブル54-11と異なる。
【0038】
CPE50-31及びCPE50-32はクラウド側のCPE50である。これらのルーティングテーブル54も基本的にはデバイス10側のCPE50と同じである。
【0039】
CPE50-31のルーティングテーブル54-31の1レコード目の、「宛先=Default、処理=Encap(IP#A1)」は、他のレコードの宛先に当てはまらないパケットは、カプセル化してIP#A1、すなわち、エリア代表ルータAR40-1に送信するという意味を示す。本実施の形態では、クラウド側にはエリアごとに対応するCPE50が存在し、そのクラウド側CPE50からデバイス10側のCPE50へのパケットは、全て当該クラウド側CPE50が対応するエリアのエリア代表ルータ(この場合はAR40-1)に送信することになっている。このレコードは、その役割を果たすものであり、この1レコードのみで、クラウド側→デバイス10側の全ての通信に対応できる。CPE50-32のルーティングテーブル54-32の1レコード目も同様であるが、CPE50-32はエリア2に対応するエリア代表ルータAR40-2に送信することになるため、処理が「Encap(IP#A2)」となっている。
【0040】
CPE50-31又はCPE50-32のルーティングテーブル54の2~3レコード目は、デバイス10側→クラウド側のパケットを処理するレコードであり、宛先が自分であればデカプセル化し(「宛先=IP#31、処理=Decap->Lookup」のレコード)、直接宛先のホスト60へ配送する(「宛先=EID#3、処理=Direct」)ことを示す。
【0041】
図6は、エリア代表ルータ(AR40)のルーティングテーブル43の構成例を示す図である。AR40-1のルーティングテーブル43-1を例に、具体的に説明する。
【0042】
1レコード目((1)の行)の「宛先=IP#A1、処理=Decap->Lookup」は、クラウド側のCPE50から送信されてきた自分宛て(IP#A1宛て)のパケットを受信したらデカプセル化して、再度ルーティングテーブル43を検索する、という意味を示す。
【0043】
2レコード目の「宛先=EID#11、処理=Encap(IP#11)」は、宛先がEID#11、すなわち、CPE50-11配下のEIDである場合には、CPE50-11のRLOCであるIP#11でカプセル化して送出する、という意味を示す。3レコード目も同様に、CPE50-12配下のEID(IP#12)宛てのパケットを、CPE50-12のRLOCであるIP#12でカプセル化して送出するという意味を示す。これらの処理((2)の行の処理)は、1レコード目((2)の行)の処理の結果、デカプセル化されたパケットに対して実施される。AR40-2のルーティングテーブル43-2も同様である。
【0044】
図7は、コントローラ30の機能構成例を示す図である。図7において、コントローラ30は、CPE問い合わせ部31及びCPE登録・更新部32を有する。これら各部は、コントローラ30にインストールされた1以上のプログラムが、コントローラ30のCPUに実行させる処理により実現される。コントローラ30は、また、EID-RLOCデータベース33を利用する。EID-RLOCデータベース33、例えば、コントローラ30のメモリ装置又は補助記憶装置等を用いて実現可能である。
【0045】
EID-RLOCデータベース33は、CPE50配下に割り当てられているEIDと、そのCPE50に現在割り当てられているRLOCとの対応関係を記憶する記憶部である。本実施の形態では、クラウド側CPE50のEIDとRLOCとの対応関係だけがEID-RLOCデータベース33に登録されている。EID-RLOCデータベース33の構成は後述する。
【0046】
CPE問い合わせ部31は、CPE50からの、EIDに対応するRLOCの問い合わせに対して、EID-RLOCデータベース33を検索して、当該EIDに対応するRLOCを応答する。EID-RLOCデータベース33の各エントリにはエリアIDが登録されており、CPE問い合わせ部31は、問い合わせ元のCPE50が所属するエリアのRLOCを返答する。
【0047】
CPE登録・更新部32は、EID-RLOCデータベース33に登録されているEID-RLOCの対応関係の新規登録や更新を実行する。具体的には、CPE登録・更新部32は、CPE50が新たにネットワーク接続された場合に、新規にEID-RLOCデータベース33にレコードを追加したり、CPE50が移動してRLOCが変更になった場合に、既存のEID-RLOCの対応関係を変更したりする。
【0048】
図8は、EID-RLOCデータベース33の構成例を示す図である。EID-RLOCデータベース33は、各CPE50のEIDとRLOCの対応関係に加えて、各CPE50が所属する(各CPE50に対応する)エリアのエリアIDも保持する。換言すれば、EID-RLOCデータベース33は、各CPE50のEIDとエリアIDとの組み合わせごとにRLOCを記憶する。図8には、図1に対応したEID-RLOCデータベース33の例が示されている。前述の通り、本実施の形態において、EID-RLOCデータベース33には、クラウド側のCPE50の情報だけが保持されるため、図8のEID-RLOCデータベース33は、CPE50-31の情報(1レコード目)、CPE50-32の情報(2レコード目)のみを保持する。なお、デバイス10側のCPE50(図1のCPE50-11、CPE50-12、CPE50-21)のEID-RLOCの対応関係は、エリア代表ルータAR40のルーティングテーブル43(図6)に保持される。
【0049】
[処理手順]
以下、図1の通信システムにおいて実行される処理手順について説明する。図9は、通信に先立って実行される、デバイス10側CPE50のAR40への接続や、クラウド側CPE50のコントローラ30への登録を説明するためのシーケンス図である。
【0050】
まず、デバイス10側CPE50(CPE50-11)がAR40に接続する際の処理手順を説明する。
【0051】
CPE50-11がネットワークに接続されIPアドレス(RLOC)を付与されると、CPE50-11のCPE登録部53は、最寄り(CPE50-11が属するエリア)のAR40(この場合はAR40-1)にCPE接続要求を送信する(S11)。CPE接続要求には、CPE50-11の配下に割り当てられているEID(EID#11)と、ネットワークから付与されたRLOC(IP#11)とが含まれる。なお、CPE50-11のRLOCは、CPE50-11が接続されるネットワークから払い出されるグローバルIPアドレス等である。また、CPE50配下のEIDは、予めCPE50に設定されているものとする。
【0052】
AR40-1のCPE接続部42は、CPE50-11からのCPE接続要求を受信すると、AR40-1のルーティングテーブル43-1に、AR40-1からCPE50-11へのパケット転送に必要な情報を登録する(S12)。この場合、「宛先=EID#11、処理=Encap(IP#11)」という情報が登録される(図6参照)。これは、AR40-1が、宛先IPアドレスがEID#11のパケット、すなわち、CPE50-11配下のホスト60宛てのパケットを受信したら、宛先アドレス=IP#11、すなわち、CPE50-11のRLOCのIPアドレスでカプセル化をして送信する、という意味を示す。
【0053】
続いて、AR40-1のCPE接続部42は、CPE接続応答(接続=OK、エリアID=#1)をCPE50-11へ送信する(S13)。CPE50-11のCPE登録部53が当該CPE接続応答を受信することで、CPE50-11は、自身が所属するエリアIDが#1であることを認識する。
【0054】
次に、クラウド側のCPE50(CPE50-31)の情報をコントローラ30に登録する際の処理手順を説明する。
【0055】
クラウド側のCPE50(CPE50-31)の起動後に、CPE50-31のCPE登録部53は、CPE登録要求をコントローラ30へ送信する(S21)。CPE登録要求には、CPE50-31配下のEID(EID#3)と、CPE50-31のRLOC(IP#31)、CPE50-31が担当するエリアのエリアID(#1)が含まれる。なお、CPE50-31のRLOCも、CPE50-11のRLOCと同様にグローバルIPアドレスが想定される。クラウド環境におけるIPアドレスの払い出しについては様々な方法が想定されるが、本実施の形態では払い出しの方法には依存しない。結果的にCPE50-31に外部から到達可能なグローバルIPアドレスが付与されればよい。
【0056】
コントローラ30のCPE登録・更新部32は、CPE登録要求を受信すると、CPE登録要求に含まれている情報を自身のEID-RLOCデータベース33に登録(記憶)する(S22)。この場合、「EID=EID#3、RLOC=IP#31、エリアID=#1」というレコードがEID-RLOCデータベース33に登録される(図8参照)。続いて、CPE登録・更新部32は、CPE登録応答(登録=OK)をCPE50-31へ送信する(S23)。
【0057】
図10は、CPE50-11の配下のホスト60-11からCPE50-31の配下のホスト60-3に向けてパケットが送信される際の処理手順の一例を説明するためのシーケンス図である。
【0058】
ホスト60-11は、ホスト60-3に向けてパケットを送信する(S31)。ホスト60-11は、自身のEIDであるEID#11を自身のIPアドレスと認識してパケットの送信元アドレス(図10ではSAと表記)に付与し、ホスト60-3のEID#3をホスト60-3のIPアドレスと認識してパケットの宛先アドレス(図10ではDAと表記)に付与する。つまり、ホスト60-11やホスト60-3は、EIDをそのままIPアドレスとして認識して動作する。そのため、通常のIPホストとして動作すればよく、本実施の形態に特有の機能は不要となる。
【0059】
CPE50-11のフォワーディング部51が、ホスト60-11からのパケットを受信すると、ルーティングテーブル54-11に当該パケットの宛先EIDが記載されていないため、RLOC解決部52は、コントローラ30に対してRLOC解決要求を送信する(S32)。RLOC解決要求には、ホスト60-11から受信したパケットの宛先アドレスであるEID#3と、CPE50-11自身が所属するエリアIDである#1が含まれる。
【0060】
コントローラ30のCPE問い合わせ部31は、CPE50-11からのRLOC解決要求を受信すると、当該RLOC解決要求に含まれているEID=EID#3、エリアID=#1をキーとしてEID-RLOCデータベース33を検索する(S33)。検索した結果、EID=EID#3、エリアID=#1に該当するRLOCは、CPE50-31のRLOCであるIP#31であることがわかる。なお、このレコードは、S21~S23においてCPE50-31がコントローラ30に対して登録したものである。
【0061】
続いて、CPE問い合わせ部31は、CPE50-11のRLOC解決部52に対してRLOC解決応答(RLOC=IP#31)を送信する(S34)。
【0062】
CPE50-11のRLOC解決部52は、当該RLOC解決応答を受信すると、CPE50-11のルーティングテーブル54-11に、「宛先=EID#3、処理=Encap(IP#31)」を登録する(S35)(図5のルーティングテーブル54-11参照)。これは、宛先アドレスがEID#3のパケットを受信したら、(EID#3はCPE50-31配下に存在し、CPE50-31のRLOCがIP#31であるため)宛先=IP#31でカプセル化して送信することを示す。
【0063】
続いて、CPE50-11のフォワーディング部51はルーティングテーブル54-11を参照して、ホスト60-11から受信したパケットを、宛先アドレス=IP#31、送信元アドレス=IP#11(CPE50-11自身のRLOC)でカプセル化し、CPE50-31に向けて送信する(S36)。
【0064】
CPE50-31のフォワーディング部51は、CPE50-11からのパケットを受信すると、ルーティングテーブル54-31(図5参照)に基づいて当該パケットを処理する。ここで、当該パケット(カプセル化されたパケット)は、宛先アドレス=IP#31であるため、フォワーディング部51は、該当する処理=Decap->Lookupを実行する。すなわち、フォワーディング部51は、当該パケットをデカプセル化したうえで、ルーティングテーブル54-31を再検索する(S37)。再検索する際のパケット(デカプセル化されたパケット)の宛先アドレスはEID#3であるため、該当する処理=Directとなり、フォワーディング部51は、当該パケットをEID#3のホスト60へ直接配送する(S38)。その結果、ホスト60-3がCPE50-31から当該パケットを受信する。
【0065】
図11は、ホスト60-3からホスト60-11への通信の流れを説明するためのシーケンス図である。
【0066】
ステップS41において、ホスト60-3がホスト60-11に向けてパケット(以下、「対象パケット」という。)を送信する(S41)。この際、対象パケットの宛先アドレスはホスト60-11のEIDであるEID#11にセットされ、対象パケットの送信元アドレスはホスト60-3のEIDであるEID#3にセットされる。
【0067】
なお、ホスト60-3が対象パケットを送信する先(次ホップ)としては、CPE50-31及びCPE50-32が候補として挙げられるが、これらのうちのいずれかを選択する方法はいくつか考えられる。ホスト60-3がホスト60-11からのパケットをCPE50-31から受信したため、その応答(リプライ)となる対象パケットをCPE50-31へ送信するようにしてもよいし、CPE50-31→ホスト60-3にパケットを送信する際にCPE50-31のフォワーディング部51がSNAT(Source NAT)を実施して当該パケットの送信元アドレスをCPE50-31に変更してもよい。後者の場合、ホスト60-3はCPE50-31からパケットを受信したと判断するため、その応答となる対象パケットの宛先アドレスはCPE50-31宛てとなるが、CPE50-31においてSNATにより当該宛先アドレスが元のアドレス(ホスト60-11のアドレスであるEID#11)に変換される。
【0068】
CPE50-31のフォワーディング部51は、ホスト60-3から対象パケットを受信すると、ルーティングテーブル54-31を参照する(S42)。ルーティングテーブル54-31(図5参照)には、宛先=EID#11にマッチする具体的なレコードは存在しないため、宛先=Defaultにマッチすることになる。宛先=Defaultの処理はEncap(IP#A1)であるため、フォワーディング部51は、対象パケットを宛先=IP#A1でカプセル化して、AR40-1(エリア#1のエリア代表ルータ)に送信する(S43)。この宛先=Defaultのレコードにより、CPE50-31がクラウド側のホスト60から受信したパケットの全てをエリア1のエリア代表ルータであるAR40-1にカプセル化して送信することになり、CPE50-31では、デバイス10側のCPE50の個別の経路情報を保持する必要がなくなる。
【0069】
AR40-1のフォワーディング部41は、CPE50-31からカプセル化された対象パケットを受信すると、ルーティングテーブル43-1(図6参照)を参照する(S44)。カプセル化された対象パケットの宛先アドレスはAR40-1自身のRLOCであるIP#A1であるため、ルーティングテーブル43-1の「宛先=IP#A1、処理=Decap->Lookup」のレコードが対象パケットに対応する。そこで、フォワーディング部41は、対象パケットをデカプセル化して、再度、ルーティングテーブル43-1を再検索する。デカプセル化されたパケットの宛先アドレスはEID#11であるため、ルーティングテーブル43-1では、「宛先=EID#11、処理=Encap(IP#11)」に該当する。したがって、フォワーディング部41は、対象パケットの宛先アドレスをIP#11にセットしてカプセル化をしたうえで、対象パケットをCPE50-11(RLOC=IP#11)に向けて送信する(S45)。
【0070】
CPE50-11のフォワーディング部51は、AR40-1からカプセル化された対象パケットを受信すると、ルーティングテーブル54-11を参照する(S46)。具体的には、フォワーディング部51は、対象パケットの宛先アドレス=IP#11(CPE50-11のRLOC、つまり、自分宛て)をキーとしてCPE50-11のルーティングテーブル54-11を検索する。すると、「宛先=IP#11、処理=Decap->Lookup」のレコードが該当するため、フォワーディング部51は、対象パケットをデカプセル化して、ルーティングテーブル54-11を再検索する。デカプセル化された対象パケットの宛先アドレスはEID#11であるため、「宛先=EID#11、処理=Direct」のレコードに該当する。そこで、フォワーディング部51は、EID#11宛て、すなわち、ホスト60-11宛てに対象パケットを直接配送する(S47)。その結果、ホスト60-11は対象パケットを受信する。
【0071】
次に、図12図14を用いて、CPE50-11が、AR40-1配下からAR40-2配下へ移動した際に実行される処理手順について説明する。図12及び図13はシーケンス図を示し、図14はCPE50-11のルーティングテーブルの変化と、AR40-1、AR40-2のルーティングテーブルを示す図である。
【0072】
CPE50-11(CPE50-11を有するデバイス10-11)がAR40-1配下からAR40-2配下へ移動すると、CPE50-11は、アクセス網に再接続する形になるため、ネットワークから払い出されるIPアドレス、すなわち、CPE50-11のRLOCが変更になる(S51)。この例では、CPE50-11のRLOCがIP#11からIP#22に変更になったと仮定する。そのため、CPE50-11のCPE登録部53は、CPE50-11のルーティングテーブル54-11において、「宛先=IP#11、処理=Decap->Lookup」のレコードを、「宛先=IP#22、処理=Decap->Lookup」に変更する(図14参照)。なお、このレコードは、AR40からCPE50-11宛てにパケットが送信されてきた場合、自分宛て(CPE50-11のRLOC宛て)であれば、デカプセル化してルーティングテーブル54-11を再検索する、という処理を行うためのものである。
【0073】
CPE50-11がネットワークに接続されたら、CPE登録部53は、最寄りのAR40(この場合、AR40-2)に対して、CPE接続要求を送信する(S52)。CPE接続要求には、EID=EID#11、RLOC=IP#22が含まれる。EIDは移動前から変更は無いが、RLOCは前述のように、新たに払い出されたIPアドレスであるIP#22となる。
【0074】
AR40-2のCPE接続部42は、CPE50-11からのCPE接続要求を受信すると、CPE50-11へパケットを送信するためのレコードをルーティングテーブル43-2へ登録する(S53)。具体的には、CPE接続部42は、図14のAR40-2のルーティングテーブル43-2に対し、「宛先=EID#11、処理=Encap(IP#22)」というレコードを登録する。これは、宛先アドレスがCPE50-11配下のEID#11宛てのパケットであれば、CPE50-11の新たなRLOCであるIP#22でカプセル化して当該パケットを送信する、という処理を示す。
【0075】
AR40-2のCPE接続部42は、正常にルーティングテーブル43-2への登録ができたら、CPE50-11へCPE登録応答を送信する(S54)。CPE登録応答には、AR40-2が所属するエリアIDとして、エリアID=#2が含まれる。
【0076】
以上で、CPE50-11がAR40-1からAR40-2の配下へ移動した際の接続手続きが完了する。
【0077】
なお、AR40-1のルーティングテーブル43-1に登録されていたCPE50-11移動前の情報(宛先=EID#11、処理=Encap(IP#11))は、今後不要となるためにCPE50-11のCPE接続部42が削除する。削除する方法としては、CPE50-11へのパケットが到着しない状態が一定時間継続したらタイムアウト(一定時間、ルーティングテーブル43-1の特定のエントリが参照されなかったら削除する)してもよいし、CPE50-11又はAR40-2等からAR40-1に対してCPE50-11の移動が完了したことを明示的に通知して、CPE50-11のCPE接続部42が、AR40-1のルーティングテーブル43-1において不要になった情報を削除してもよい。
【0078】
次に、ホスト60-11からホスト60-3へのパケットの流れを説明する。
【0079】
ホスト60-11はホスト60-3に向けてパケットを送信する(S55)。
【0080】
CPE50-11のフォワーディング部51が当該パケットを受信すると、CPE50-11のRLOC解決部52は、当該パケットの宛先アドレスであるEID#3に対応するRLOCを取得するため、コントローラ30にRLOC解決要求を送信する(S56)。RLOC解決要求には、解決したいEIDであるEID=#3と、CPE50-11が所属するエリアのIDであるエリアID=#2が含まれる。
【0081】
コントローラ30のCPE問い合わせ部31は、RLOC解決要求を受信すると、RLOC解決要求に含まれるEID(EID#3)及びエリアID(#2)をキーとして、EID-RLOCデータベース33を検索する(S57)。EID-RLOCデータベース33(図8)には、EID=EID#3、エリアID=#2に該当するRLOCとして、IP#32(CPE50-32のRLOC)が登録されているため、CPE問い合わせ部31は、RLOC=IP#32を含むRLOC解決応答を送信する(S58)。なお、CPE50-11がAR40-1配下に接続されていた時には、エリアID=#1であったため、RLOC=IP#31が返されたが、AR40-2配下の場合にはエリアID=#2であるためRLOC=IP#32が返される。この仕組みにより、クラウド側の各CPE50(CPE50-31やCPE50-32)は、特定のAR40配下(すなわち、特定のエリア)のCPE50からのパケットのみを受信することになる。
【0082】
CPE50-11のRLOC解決部52は、コントローラ30からRLOC解決応答を受信すると、EID=EID#3に対応するRLOCとしてRLOC=IP#32を解決できたため、ルーティングテーブル54-11に「宛先=EID#3、処理=Encap(IP#32)」のレコードを登録する(S59)。当該レコードは、EID#3宛てのパケットに対して、宛先アドレスをIP#32としたカプセル化を実施し、IP#32(すなわちCPE50-32)に向けて当該パケットを送出することを意味する。
【0083】
ルーティングテーブル54-11の登録が完了すると、CPE50-11のフォワーディング部51は、宛先アドレス=IP#32でカプセル化したパケットをCPE50-32に向けて送出する(S60)。
【0084】
CPE50-32のフォワーディング部51は、当該パケットを受信すると、ルーティングテーブル54-32を参照する(S61)。当該パケットについては、図5のルーティングテーブル54-32の、「宛先=IP#32、処理=Decap->Lookup」が該当する。これは、IP#32宛てのパケット(すなわち、CPE50-32自身宛て)を受信したら、デカプセル化して、再度ルーティングテーブル54-32を検索する処理を意味する。
【0085】
そこで、CPE50-32のフォワーディング部51は、当該パケットをデカプセル化して、再度ルーティングテーブル54-32を検索する。すると、図5の「宛先=EID#3、処理=Direct」のレコードが該当するため、フォワーディング部51は、EID#3(すなわち、ホスト60-3)にパケットを直接配送する(S62)。その結果、ホスト60-3は、ホスト60-11からのパケットを受信する。
【0086】
一方、ホスト60-3からホスト60-11へのパケットの流れは、図13に示されるようになる。
【0087】
ステップS64において、ホスト60-3がホスト60-11に向けてパケットを送出する(S64)。
【0088】
CPE50-32のフォワーディング部51は、ホスト60-3からのパケットを受信すると、ルーティングテーブル54-32を参照する(S65)。当該パケットには、図5の「宛先=Default、処理=Encap(IP#A2)」が該当するため、フォワーディング部51は、宛先アドレス=IP#A2(AR40-2のRLOC)でカプセル化して、当該パケットをAR40-2宛てに送信する(S66)。
【0089】
AR40-2のフォワーディング部41は、当該パケットを受信すると、ルーティングテーブル43-2(図14参照)を参照する(S67)。当該パケットには、図14のルーティングテーブル43-2の「宛先=IP#A2、処理=Decap->Lookup」のレコードが該当するため、フォワーディング部41は、当該パケットをデカプセル化して、再度ルーティングテーブルを検索する。デカプセル化されたパケット(元のパケット)の宛先はEID#11であるため、次の検索では、「宛先=EID#11、処理=Encap(IP#22)のレコード」が該当する。そのため、フォワーディング部41は、宛先アドレス=IP#22で当該パケットをカプセル化して、IP#22宛て、すなわち、CPE50-11宛てに当該パケットを送信する(S68)。
【0090】
CPE50-11のフォワーディング部51は、AR40-2からのパケットを受信すると、ルーティングテーブル54-11を参照する(S69)。当該パケットには、図14の移動後のCPE50-11のルーティングテーブル54-11の、「宛先=IP#22、処理=Decap->Lookup」が該当するため、フォワーディング部51は、当該パケットをデカプセル化して、再度ルーティングテーブル54-11を検索する。すると、次は、「宛先=EID#11、処理=Direct」のレコードが該当するため、フォワーディング部51は、当該パケットをEID#11、すなわち、ホスト60-11に直接配送する(S70)。その結果、ホスト60-11は、ホスト60-3からのパケットを受信する。
【0091】
このように、CPE50-11がAR40-1配下からAR40-2配下へ移動した場合、ルーティングテーブルに変更があるのは、AR40-1、AR40-2、CPE50-11のみであり、クラウド側のCPE50-31やCPE50-32には変更は発生しない。このことは、デバイス10数の増減や、デバイス10の移動によって、クラウド側CPE50のルーティングテーブル54に一切変化はなく、クラウド側CPE50が、ルーティングテーブル量や、ルーティングテーブルを変更するための処理量による影響を受けないことを示している。
【0092】
上述したように、本実施の形態によれば、クラウド側のCPE50のルーティングテーブルで保持すべき経路数を削減することができる。したがって、IPアドレスが変化するデバイスに関する通信を効率化することができる。
【0093】
なお、従来技術では、EID-RLOCの対応情報を保持しているデータベースへの問い合わせ(トランザクション)の処理量も問題となる。具体的には、EID-RLOCの対応情報を保持しているデータベースへの問い合わせ処理は、デバイスが新たなEIDを持つアプリケーションへの通信を開始するたびに発生する。一度問い合わせた情報をデバイス側でキャッシュすることはできるが、前述のように、データベースで保持しているEID-RLOCの対応情報は常に更新される。キャッシュを保持する時間を長くすれば、問い合わせを減らすことはできるが、長くしすぎると、キャッシュと最新情報との間に乖離が発生し、デバイスの移動等でEID-RLOCの対応関係が変更された場合に、正常に通信ができなくなる可能性がある。
【0094】
本実施の形態によれば、クラウド側CPE50からコントローラ30への問い合わせ(RLOC解決要求)を削減する(不要とする)ことで、既存技術におけるボトルネックを解消し、本システムに収容可能なデバイス10数(CPE50数)を増加させることができる。
【0095】
なお、本実施の形態において、デバイス10は、通信装置の一例である。データセンタ20は、所定の情報処理装置の一例である。AR40は、収容装置の一例である。RLOCは、第1のIPアドレスの一例である。EIDは、第2のIPアドレスの一例である。CPE登録部53は、登録部の一例である。フォワーディング部51は、パケット処理部の一例である。RLOC解決部52は、解決部の一例である。CPE50-31又はCPE50-32のRLOCは、第3のIPアドレスの一例である。ホスト60-3のEIDは、第4のIPアドレスの一例である。
【0096】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0097】
10 デバイス
20 データセンタ
30 コントローラ
31 CPE問い合わせ部
32 CPE登録・更新部
33 EID-RLOCデータベース
40 AR
41 フォワーディング部
42 CPE接続部
43 ルーティングテーブル
50 CPE
51 フォワーディング部
52 RLOC解決部
53 CPE登録部
54 ルーティングテーブル
100 ドライブ装置
101 記録媒体
102 補助記憶装置
103 メモリ装置
104 CPU
105 インタフェース装置
B バス
N1 コアネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14