(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】光デバイス
(51)【国際特許分類】
H01S 5/11 20210101AFI20241106BHJP
H01S 5/026 20060101ALI20241106BHJP
H01S 5/024 20060101ALI20241106BHJP
H01S 5/40 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01S5/11
H01S5/026 618
H01S5/024
H01S5/40
(21)【出願番号】P 2023503315
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2021008632
(87)【国際公開番号】W WO2022185518
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【氏名又は名称】本山 泰
(72)【発明者】
【氏名】滝口 雅人
(72)【発明者】
【氏名】納富 雅也
(72)【発明者】
【氏名】武村 尚友
(72)【発明者】
【氏名】新家 昭彦
【審査官】小濱 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-115783(JP,A)
【文献】特開2016-42547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部および前記基部に対象とする光の波長以下の間隔で周期的に設けられて前記基部とは異なる屈折率の柱状の複数の格子要素を備える板状のフォトニック結晶本体と、
前記フォトニック結晶本体に設けられて前記格子要素がない部分から構成された複数の欠陥からなる直線状の線欠陥から構成された光導波路と、
前記光導波路に形成された活性領域と、
前記活性領域に配置され、4準位系の発光材料からなる液状の活性物質と、
前記活性物質を励起する光源と、
前記光導波路に前記活性領域を挟んで形成された前記活性領域に光を閉じ込めるための光閉じ込め構造と
を備える光デバイス。
【請求項2】
請求項1記載の光デバイスにおいて、
前記活性物質は、4準位系の発光材料からなる微粒子と、前記微粒子が分散する分散媒とから構成されていることを特徴とする光デバイス。
【請求項3】
請求項1または2記載の光デバイスにおいて、
前記活性領域に形成された収容部を備え、
前記活性物質は、前記収容部に収容されていることを特徴とする光デバイス。
【請求項4】
請求項3記載の光デバイスにおいて、
前記収容部は、前記活性領域における前記基部の上に形成されていることを特徴とする光デバイス。
【請求項5】
請求項3または4記載の光デバイスにおいて、
前記活性物質を前記収容部に供給する流路を備えることを特徴とする光デバイス。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の光デバイスにおいて、
前記活性物質の温度を制御する温度制御部をさらに備えることを特徴とする光デバイス。
【請求項7】
請求項6記載の光デバイスにおいて、
前記活性領域は複数設けられ、
前記温度制御部は、複数の前記活性領域の温度を各々を別に制御することを特徴とする光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4準位系の発光材料を用いた光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オンチップの超小型センサーや光プロセッサ、量子情報応用を念頭にし、CMOS上の光回路に、化合物半導体ナノレーザを集積する研究が盛んに行われている。これまで、ナノレーザを集積する方法として、異種材料のウェハ接合、シリコン基板上に直接化合物半導体を成長させる技術の研究が進められている。これらの方法は、接合できる材料、基板に成長できる材料が制限されるが、完全な任意材料を直接転写する研究も盛んに行われている。例えば、転写プリント法、インクジェット、マイクロニードル、原子間力顕微鏡など様々な方法で、ナノ材料を光学基板に集積することができる。
【0003】
転写する先の光学素子は、非常に小さく、光学設計自由度が非常に高いため、大きな光閉じ込めを可能にするフォトニック結晶が有望である。適切に設計を行えば、ナノ材料と光電場を強く相互作用させることができる。このような技術を用いれば、高品質な化合物半導体や、所望のナノ材料を選択的にシリコンチップに集積でき、新しい素子開発など、応用が期待できる。例えば、シリコンフォトニック結晶に、化合物半導体ナノワイヤを転写し、上述したナノ制御技術により、非常に小さいナノ材料を、精密に集積できるようになってきた(非特許文献1,非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】M. NOTOMI et al., "Nanowire photonics toward wide wavelength range and subwavelength confinement [Invited]", Optical Materials Express, vol. 10, no. 10, pp. 2560-2596, 2020.
【文献】M. Takiguchi et al., "Continuous-wave operation and 10-Gb/s direct modulation of InAsP/InP subwavelength nanowire laser on silicon photonic crystal", APL Photonics, vol. 2, no. 4,046106, 2017.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ナノマニピュレーション技術などにより、半導体ナノ材料をフォトニック結晶に集積したレーザの研究が行われてきたが、次のような課題がある。一般に,ナノワイヤの形状は、結晶構造に大きく影響し、断面が多角形や円形であり、さらに完全なピラー構造にならず、テーパー形状を持つ。このような不均構造は、フォトニック結晶に集積した際に、ナノワイヤと基板の間にわずかなスペースを生じるため、空気中への電場漏れを引き起こし、効率的に光を活性部となるナノワイヤに閉じ込めることができない。このように、従来の技術では、フォトニック結晶に設けた活性部に、効率的に光を閉じ込めることができないという問題があった。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、フォトニック結晶に設けた活性部に、効率的に光閉じ込めができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光デバイスは、基部および基部に対象とする光の波長以下の間隔で周期的に設けられて基部とは異なる屈折率の柱状の複数の格子要素を備える板状のフォトニック結晶本体と、フォトニック結晶本体に設けられて格子要素がない部分から構成された複数の欠陥からなる直線状の線欠陥から構成された光導波路と、光導波路に形成された活性領域と、活性領域に配置され、4準位系の発光材料からなる液状の活性物質と、活性物質を励起する光源と、光導波路に活性領域を挟んで形成された活性領域に光を閉じ込めるための光閉じ込め構造とを備える。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明によれば、フォトニック結晶の線欠陥による光導波路に設けた活性領域に、4準位系の発光材料からなる液状の活性物質を配置したので、フォトニック結晶に設けた活性部に、効率的に光閉じ込めができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、本発明の実施の形態1に係る光デバイスの構成を示す構成図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明の実施の形態1に係る光デバイスの一部構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態2に係る光デバイスの構成を示す構成図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態3に係る光デバイスの一部構成を示す平面図(a)、断面図(b)、(c)である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態4に係る光デバイスの一部構成を示す平面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態5に係る光デバイスの一部構成を示す平面図(a)、断面図(b)、(c)である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態6に係る光デバイスの一部構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係る光デバイスについて説明する。
【0011】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1に係る光デバイスについて
図1A、
図1Bを参照して説明する。この光デバイスは、フォトニック結晶本体101、光導波路102、活性領域103、活性物質104、および光源105を備える。なお、
図1Aにおいて、フォトニック結晶本体101は、平面を示している。
【0012】
フォトニック結晶本体101は、板状の基部106から構成されている。また、フォトニック結晶本体101は、複数の格子要素107を備えている。格子要素107は、対象とする光の波長以下の間隔で周期的に設けられている。また、格子要素107は、屈折率が基部106とは異なるものとされている。基部106は、例えば、SiN、SiC、TiO2,SiO2などから構成することができる。格子要素107は、例えば、円柱状の貫通孔である。複数の格子要素107は、例えば平面視で三角格子状に配列している。光導波路102は、フォトニック結晶本体101に設けられて格子要素107がない部分から構成された複数の欠陥からなる直線状の線欠陥から構成されている。
【0013】
活性領域103は、光導波路102に形成されている。活性領域103には、4準位系の発光材料からなる液状の活性物質104が配置されている。例えば、活性領域103に形成された収容部108を備え、活性物質104は、収容部108に収容されている。収容部108は、例えば、基部106の表面の活性領域103に形成された凹部である。平面視で、活性領域103の全域に収容部108が形成されている。従って、収容部108が活性領域103であるということもできる。収容部108は、活性領域103における基部106の上に形成することもできる。収容部108は、例えば、平面視矩形とされた、直方体状とされている。収容部108は、例えば、光導波路102の導波方向に垂直な幅および深さが、いわゆるナノワイヤの径と同程度とされている。
【0014】
活性物質104は、例えば、ローダミンなどの色素の水溶液から構成することができる。この種の色素は、4準位系の発光材料であり、大型のレーザで用いられている。また、活性物質104は、4準位系の発光材料からなる微粒子と、微粒子が分散する分散媒とから構成することができる。4準位系の発光材料からなる微粒子は、例えば、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(Yttrium Aluminum Garnet;YAG)から構成することができる。
【0015】
光源105は、活性物質104を励起するために用いられる。光源105は、例えば、フラッシュランプやレーザから構成することができる。光源105は、例えば、活性領域103の上方に配置することができる。活性領域103の上方に配置した光源105より出射した励起光が、活性領域103の上方から収容部108に収容されている活性物質104に照射される。
【0016】
また、実施の形態1に係る光デバイスは、光導波路102に活性領域103を挟んで形成された活性領域103に光を閉じ込めるための光閉じ込め構造を備える。例えば、活性物質104を収容部108に供給する第1流路109と、収容部108に供給された活性物質104を排出する第2流路110とを備える構成すとすることができる。
【0017】
第1流路109、第2流路110を、光導波路102に形成し、第1流路109、第2流路110の流れの方向を、光導波路102の導波方向とし、第1流路109、第2流路110の幅を、収容部108の導波方向に垂直な幅より狭くする。この構成とすることで、光導波路102において、活性領域103に光を閉じ込める光閉じ込め構造とすることができる。この光閉じ込め構造により、フォトニック結晶による共振器が構成できる。
【0018】
実施の形態1によれば、活性物質104を液体としたので、活性領域103(収容部108)に隙間なく活性物質104を充填できる。このように、実施の形態1によれば、収容部108と活性物質104との間に隙間が形成されないので、ナノワイヤを使ったレーザと異なり閉じ込め係数を改善できる。
【0019】
また、従来の 半導体ナノレーザは、透明キャリア密度(N0)が大きく、ナノ共振器の自然放出高結合レートβを高くしても、発振閾値以下で、2次の強度相関関数g2(0)>1となり、コヒーレント光にならない(参考文献1)。なお、レーザ線幅は、レーザスペクトルの半値全幅である。これに対し、実施の形態1によれば、活性物質104を、色素などの4準位系の発光材料から構成しているので、N0が小さく、また、フォトニック結晶による共振器を用いることで、βを高くできる。この結果、発振閾値以下でもg2(0)=1となり、コヒーレント光を取り出すことができる。
【0020】
また、従来の半導体レーザは,レーザ線幅が、αパラメータにより太くなってしまう。αパラメータは、半導体のキャリア密度の増加に対する、光学利得の増加率(微分利得)と屈折率の増加率の比で定義される。半導体のキャリア密度は様々な雑音によって揺らぐため、半導体レーザの発振周波数もランダムに変動し、コヒーレンスの低下、つまり発振線幅の増大をもたらす。このため、半導体レーザの発振線幅は、通常のレーザの発振線幅を表す理論式(シャロー・タウンズの式)から予想されるものより1桁以上大きくなり、定常電流駆動時のレーザ線幅は、理論値に対して(1+α2)倍に増加することが知られている。
【0021】
これに対し、活性物質104に色素を用いれば、波長選択性が高く、半導体材料と異なり、α係数が小さいため、非常に狭線幅なレーザが実現できる。
【0022】
ところで、第1流路109に導入プール構造111を接続し、第2流路110に、排出プール構造112を接続することで、収容部108における活性物質104を、例えば、循環させることができる。例えば、導入プール構造111に、シリコンゴムなどのチューブを取り付けることで、液状の活性物質104を外部から流し込むことができる。液状の活性物質104は、導入プール構造111に流し込めば、いわゆる毛細管現象により、第1流路109に入り込み、収容部108に流れ込む。また、収容部108に流れ込んだ活性物質104は、第2流路110に到達すると、毛細管現象により、第2流路110に入り込み、排出プール構造112に流れていく。
【0023】
上述したように、毛細管現象が発現する程度の流路幅とした第1流路109、第2流路110を用いることで、自動的(自然)に活性物質104を収容部108に導入できる。このため、液体を循環させる構造を導入することなく、マイクロピペット、インクジェット装置などを用いて、活性物質104を導入プール構造111に供給できれば、活性物質104を、共振部分である収容部108に供給することができる。
【0024】
また、実施の形態1において、活性物質104の温度を制御する温度制御部をさらに備えることができる。例えば、導入プール構造111に供給する活性物質104の液温を、温度制御部で制御することができる。このように温度制御することで、活性物質104が触れる共振器の領域(活性領域103)の温度を変化させることができる。
【0025】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2に係る光デバイスについて、
図2を参照して説明する。この光デバイスは、フォトニック結晶本体101、光導波路102、活性領域103、活性物質104、光源105、および共振器となる光閉じ込め構造を備える。これらの構成は、前述した実施の形態1と同様である。
【0026】
実施の形態2では、さらに、入力光導波路113および出力光導波路114を備える。入力光導波路113,出力光導波路114は、フォトニック結晶本体101に設けられて格子要素107がない部分から構成された複数の欠陥からなる直線状の線欠陥から構成されている。また、入力光導波路113および出力光導波路114は、光導波路102に並行に配置されている。また、入力光導波路113と出力光導波路114とに挾まれた領域の光導波路102に、活性領域103(収容部108)が配置されている。
【0027】
この光デバイスでは、光源105から出射した励起光は、入力光導波路113に入力し、入力光導波路113を導波する励起光が、収容部108に収容されている活性物質104に光学的に結合し、活性物質104を励起する。活性物質104を励起することで発振したレーザ光は、出力光導波路114に光学的に結合し、フォトニック結晶本体101より出射する。
図1A,
図1Bを用いて説明した例では、光導波路102において、第1流路109、第2流路110が存在するため、面発光レーザとして機能はするが、レーザ光を、共振器と同軸上で取り出せず、レーザ光をフォトニック結晶本体101の端面から出射させることができない。励起光の導入も同様である。これに対し、上述したように、入力光導波路113および出力光導波路114を設けることで、励起光の導入およびレーザ光の出射を、フォトニック結晶本体101の端面において、実現することができるようになる。
【0028】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3に係る光デバイスについて、
図3を参照して説明する。この光デバイスは、フォトニック結晶本体101、光導波路102、活性領域103a、活性物質104、光源105、および共振器となる光閉じ込め構造を備える。これらの構成は、前述した実施の形態1と同様である。
【0029】
実施の形態3では、活性物質104を収容部108に供給する第1流路109aと、収容部108に供給された活性物質104を排出する第2流路110aとを,光導波路102の導波方向に交差する方向に配置している。この場合、第1流路109aおよび第2流路110aにおける格子要素107aは、液状の活性物質104が漏れ出さないように、基部106を貫通せず、基部106の厚さ方向に途中までの凹部とする。
【0030】
[実施の形態4]
次に、本発明の実施の形態4に係る光デバイスについて、
図4を参照して説明する。この光デバイスは、フォトニック結晶本体101、光導波路102、活性領域103、活性物質104、光源105、および共振器となる光閉じ込め構造を備える。これらの構成は、前述した実施の形態1と同様である。
【0031】
実施の形態4では、光閉じ込め構造を構成する第1流路109b、第2流路110bに、格子要素107と同じ格子配列で、格子要素107bを設けている。格子要素107bは、液状の活性物質104が漏れ出さないように、基部106を貫通せず、基部106の厚さ方向に途中までの凹部としている。このように、格子要素107bを設けることで、光閉じ込め構造による光閉じ込めを、より強くすることができる。
【0032】
[実施の形態5]
次に、本発明の実施の形態5に係る光デバイスについて、
図5を参照して説明する。この光デバイスは、フォトニック結晶本体101、光導波路102、活性領域103a、活性物質104、光源105、および共振器となる光閉じ込め構造を備える。これらの構成は、前述した実施の形態1と同様である。
【0033】
また、実施の形態5では、前述した実施の形態3と同様に、活性物質104を収容部108に供給する第1流路109aと、収容部108に供給された活性物質104を排出する第2流路110aとを,光導波路102の導波方向に交差する方向に配置している。
【0034】
実施の形態5では、さらに、基部106の下面に接してクラッド層115を設けている。クラッド層115は、基部106より低い屈折率の材料から構成されている。このように、基部106の下面に接してクラッド層115を設けることで、第1流路109aおよび第2流路110aにおいても、格子要素107を、基部106を貫通して形成することができる。基部106の裏面がクラッド層115で覆われているため、貫通する格子要素107が第1流路109a、第2流路110aに形成されていても、活性物質104の漏れが発生しない。
【0035】
[実施の形態6]
次に、本発明の実施の形態6に係る光デバイスについて、
図6を参照して説明する。この光デバイスは、2つの光導波路102a、光導波路102bを備える。また、2つの光導波路102a、光導波路102bの各々に、活性領域103、活性物質104、収容部108、第1流路109、第2流路110が形成されている。
【0036】
2つの光導波路102a、光導波路102bの各々における活性物質104(収容部108)を中心とした光閉じ込め領域による各々の共振器が、結合可能な状態に配置され、結合共振器を構成している。各々の収容部108に収容される活性物質104の温度を、各々個別に制御し、各々の温度を変えることで、共振器間の結合を変えることができる。この結合共振器の構造は、システムの挙動が複雑になる半導体レーザでは難しかった2つの共振器の波長制御が、容易に実現でき、結合共振器レーザや、注入同期レーザなどに応用できる。
【0037】
以上に説明したように、本発明によれば、フォトニック結晶の線欠陥による光導波路に設けた活性領域に、4準位系の発光材料からなる液状の活性物質を配置したので、フォトニック結晶に設けた活性部に、効率的に光閉じ込めができるようになる。本発明によれば、将来のオンチップ素子の低消費電力化や、オンチップ原子時計の光源などに応用可能になる。また、活性物質は、半導体材料と異なり、α係数を小さくすることができるため、注入同期レーザなどの制御においても挙動が安定するという点で有効である。
【0038】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【0039】
[参考文献1]N. Takemura et al., "Low- and high-β lasers in class-A limit: photon statistics, linewidth, and the laser-phase transition analogy", Journal of the Optical Society of America B, Vol. 38, Issue 3, pp. 699-710, 2021.
【符号の説明】
【0040】
101…フォトニック結晶本体、102…光導波路、103…活性領域、104…活性物質、105…光源、106…基部、107…格子要素、108…収容部、109…第1流路、110…第2流路、111…導入プール構造、112…排出プール構造。