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  • 特許-計算リソース制御装置および制御方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】計算リソース制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/337 20200101AFI20241106BHJP
   G06F 9/50 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G06F30/337
G06F9/50 150Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023516950
(86)(22)【出願日】2021-04-28
(86)【国際出願番号】 JP2021016968
(87)【国際公開番号】W WO2022230106
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 泰
(72)【発明者】
【氏名】有川 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】田仲 顕至
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 猛
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 勉
(72)【発明者】
【氏名】坂本 健
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-224128(JP,A)
【文献】特開2001-056827(JP,A)
【文献】特開2010-026968(JP,A)
【文献】特開2000-035957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/398
G06F 9/46 - 9/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが指定する処理内容が入力される入力部と、
前記処理内容の一部を実行する機能を具備する処理回路である等価回路の候補を収集して、等価回路候補群として出力する等価回路準備部と、
前記等価回路候補群の中から処理実行回路を所定の基準に従い決定し、前記処理実行回路の接続順番を決定し、前記処理内容を実行するファンクションチェーンを出力するファンクションチェーン作成部と
前記入力部に入力される計算リソース制約と性能最適化条件との少なくともいずれか一方に基づいて、ファンクションチェーンを最適化するチェーン最適化部と
を備える計算リソース制御装置。
【請求項2】
ユーザが指定する処理内容が入力される入力部と、
前記処理内容の一部を実行する機能を具備する処理回路である等価回路の候補を収集して、等価回路候補群として出力する等価回路準備部と、
前記等価回路候補群の中から処理実行回路を所定の基準に従い決定し、前記処理実行回路の接続順番を決定し、前記処理内容を実行するファンクションチェーンを出力するファンクションチェーン作成部と、
前記入力部に入力されるシステムモニタ情報に基づき、ファンクションチェーンの再生成について判定する動的チェーン制御部と
を備える計算リソース制御装置。
【請求項3】
請求項に記載の計算リソース制御装置であって、
前記ファンクションチェーンの再生成について、システム全体の計算リソースの使用状況を示す値と、ユーザの処理要求に対する処理の進捗状況を示す値との少なくともいずれか一方によって判定することを特徴とする計算リソース制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の計算リソース制御装置であって、
前記処理実行回路が、ユーザが指定する前記処理内容によって決定されることを特徴とする計算リソース制御装置。
【請求項5】
コンピュータが、
ユーザが指定する処理内容と計算リソース制約と性能最適化条件とが入力されるステップと、
前記処理内容の一部を実行する機能を具備する処理回路の候補を収集して、等価回路候補群として出力するステップと、
前記等価回路候補群の中から処理実行回路を決定するステップと、
前記処理内容を実行するファンクションチェーンを出力するステップと
前記計算リソース制約と前記性能最適化条件との少なくともいずれか一方に基づいて、ファンクションチェーンを最適化するステップと
を実行する、計算リソース制御方法。
【請求項6】
コンピュータが、
システムモニタ情報が入力されるステップと、
前記システムモニタ情報に基づき、ファンクションチェーンの再生成について判定するステップと、
ユーザが指定する処理内容が入力されるステップと、
前記処理内容の一部を実行する機能を具備する処理回路の候補を収集して、等価回路候補群として出力するステップと、
前記等価回路候補群の中から処理実行回路を決定するステップと、
前記処理内容を実行するファンクションチェーンを出力するステップと
を実行する、計算リソース制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータシステム等に用いられる計算リソース制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械学習や人工知能(AI)やIoT(Internet of Things)など多くの分野で技術革新が進み、様々な情報やデータを活用することで、サービスが高度化され、付加価値が提供されている。この情報やデータの処理において大量の計算を実行するには、情報処理基盤が必須である。
【0003】
例えば、既存の情報処理基盤のアップデートでは、急速に増大するデータに対して対応することは困難であり、今後のさらなる進展には、ムーアの法則を越える「ポストムーア技術」の確立が必要である(非特許文献1)。
【0004】
ポストムーア技術として、例えば、非特許文献2に、フローセントリックコンピューティングが開示されている。フローセントリックコンピューティングでは、従来のデータのある場所で処理を行うコンピューティングの概念とは異なり、新たな概念として計算機能が存在する場所にデータを移動して処理を行うことが提案されている。
【0005】
このフローセントリックコンピューティングを実現するためには、データ移動に必要な広帯域な通信ネットワークだけでなく、所望の演算性能を実現するために計算リソースを効率よく制御する技術が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】“NTT Technology Report for Smart World 2020,” 日本電信電話株式会社,2020年,https://www.rd.ntt/_assets/pdf/techreport/NTT_TRFSW_2020_EN_W.pdf
【文献】R. Takano and T. Kudoh,“Flow-centric computing leveraged by photonic circuit switching for the post-moore era,”Tenth IEEE/ACM International Symposium on Networks-on-Chip(NOCS), Nara, 2016, pp.1-3. https://ieeexplore.ieee. org/abstract/document/7579339
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般のフローセントリックコンピューティング(例えば、非特許文献2)では、計算リソースを確保できるか否かを制御・運用・管理する手法は開示されている。
【0008】
しかしながら、当該処理を実行する処理回路を最適化して、計算リソースを効率よく制御、運用、管理する手法は開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述したような課題を解決するために、本発明に係る計算リソース制御装置は、ユーザが指定する処理内容が入力される入力部と、前記処理内容の一部を実行する機能を具備する処理回路である等価回路の候補を収集して、等価回路候補群として出力する等価回路準備部と、前記等価回路候補群の中から処理実行回路を所定の基準に従い決定し、前記処理実行回路の接続順番を決定し、前記処理内容を実行するファンクションチェーンを出力するファンクションチェーン作成部と、前記入力部に入力される計算リソース制約と性能最適化条件との少なくともいずれか一方に基づいて、ファンクションチェーンを最適化するチェーン最適化部とを備える。
また、本発明に係る計算リソース制御装置は、ユーザが指定する処理内容が入力される入力部と、前記処理内容の一部を実行する機能を具備する処理回路である等価回路の候補を収集して、等価回路候補群として出力する等価回路準備部と、前記等価回路候補群の中から処理実行回路を所定の基準に従い決定し、前記処理実行回路の接続順番を決定し、前記処理内容を実行するファンクションチェーンを出力するファンクションチェーン作成部と、前記入力部に入力されるシステムモニタ情報に基づき、ファンクションチェーンの再生成について判定する動的チェーン制御部とを備える。
【0010】
また、本発明に係る計算リソース制御方法は、コンピュータが、ユーザが指定する処理内容と計算リソース制約と性能最適化条件とが入力されるステップと、前記処理内容の一部を実行する機能を具備する処理回路の候補を収集して、等価回路候補群として出力するステップと、前記等価回路候補群の中から処理実行回路を決定するステップと、前記処理内容を実行するファンクションチェーンを出力するステップと、前記計算リソース制約と前記性能最適化条件との少なくともいずれか一方に基づいて、ファンクションチェーンを最適化するステップとを実行する
また、本発明に係る計算リソース制御方法は、コンピュータが、システムモニタ情報が入力されるステップと、前記システムモニタ情報に基づき、ファンクションチェーンの再生成について判定するステップと、ユーザが指定する処理内容が入力されるステップと、前記処理内容の一部を実行する機能を具備する処理回路の候補を収集して、等価回路候補群として出力するステップと、前記等価回路候補群の中から処理実行回路を決定するステップと、前記処理内容を実行するファンクションチェーンを出力するステップとを実行する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、計算リソースを効率よく制御、運用、管理できる計算リソース制御装置および制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A図1Aは、本発明の第1の実施の形態に係る計算リソース制御装置の構成を示すブロック図である。
図1B図1Bは、従来の計算リソース制御装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態に係る計算リソース制御方法を説明するためのフローチャート図である。
図3図3は、本発明の第1の実施の形態に係る計算リソース制御方法の一例を説明するための図である。
図4図4は、本発明の第1の実施の形態に係る計算リソース制御方法の一例を説明するための図である。
図5図5は、本発明の第1の実施の形態に係る計算リソース制御方法の一例を説明するための図である。
図6図6は、本発明の第1の実施の形態に係る計算リソース制御方法の一例を説明するための図である。
図7図7は、本発明の第2の実施の形態に係る計算リソース制御装置の構成を示すブロック図である。
図8図8は、本発明の第2の実施の形態に係る計算リソース制御方法を説明するためのフローチャート図である。
図9図9は、本発明の第3の実施の形態に係る計算リソース制御装置の構成を示すブロック図である。
図10図10は、本発明の第3の実施の形態に係る計算リソース制御方法を説明するためのフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態に係る計算リソース制御装置および制御方法について、図1A図6を参照して説明する。
【0014】
<計算リソース制御装置の構成>
本実施の形態に係る計算リソース制御装置10は、図1Aに示すように、入力部11と、等価回路準備部12と、ファンクションチェーン作成部13とを備える。計算リソース制御装置10は、演算装置などのコンピュータシステムに接続され、又は、コンピュータシステムの一部として機能する。
【0015】
入力部11には、ユーザが指定する処理内容が入力される。
【0016】
等価回路準備部12は、ユーザが指定する処理内容の一部を実行するための機能を具備する処理回路(以下、「等価回路」という。)の候補を収集して、等価回路候補群として出力する。
【0017】
処理回路の候補として、処理性能(レイテンシやスループット)や、回路面積やFPGAリソースなどの計算リソースの消費量、消費電力など回路の特性を定めるパラメータが異なる回路が収集される。
【0018】
特性の異なる回路を収集するとき、等価回路準備部12は、予め利用可能な回路の候補をデータベースとして保持できる。
【0019】
また、回路の基本デザインを保持しておき、基本デザインにおいて回路の特性を決めるパラメータを変更することで、入出力情報が等価であり、かつ特性が異なる回路をその都度作成してもよい。
【0020】
例えば、基本デザインのソースコードにおいて、当該回路の内部処理の並列実行数を指定するパラメータがある場合は、このパラメータを所定の範囲内において所定の数だけ変更した回路を作成する。FPGAを利用する場合、ソースコードを予め備えておき、このソースコードのパラメータを変更して、回路合成と実装、ビットストリーム生成の過程を実行することで、特性の異なる回路を準備する。
【0021】
ファンクションチェーン作成部13は、等価回路準備部12が出力する等価回路候補群の中から、ユーザが指定する処理内容を実行するために必要な回路(以下、「処理実行回路」という。)を所定の基準に従い決定し、当該回路の接続順番を決定して、ユーザが指定する処理内容を実行するファンクションチェーンを出力する。
【0022】
回路を決定するための所定の基準とは、例えば、ユーザが指定する処理内容がある。具体的には、「処理時間(レイテンシ)優先」や、「計算リソース消費量優先」、「入力条件優先」、「スループット優先」などが挙げられる。また、複数の処理内容を優先順位に従ってAND条件として適用してファンクションチェーンを生成してもよい。
【0023】
比較のために、図1Bに、従来の計算リソース制御装置10_2の構成を示す。
【0024】
従来の計算リソース制御装置10_2において、入力部11_2に入力される処理内容に基づき、ファンクションチェーン作成部13_2は、処理の制約(条件)を考慮することなく、ファンクションチェーンを作成する。
【0025】
一方、本実施の形態に係る計算リソース制御装置10は等価回路準備部12を備えるので、ファンクションチェーン作成部13は、等価回路準備部12が出力する等価回路候補群の中から、処理実行回路を所定の基準に従い決定することが可能となる。
【0026】
これにより、回路を決定するための所定の基準について、ユーザが「処理時間(レイテンシ)優先」や、「計算リソース消費量優先」、「入力条件優先」、「スループット優先」などの処理内容を指定することができる。
【0027】
また、「処理時間(レイテンシ)優先」を基準としてファンクションチェーンを作成するとき、とくに計算リソース消費量に制約がない場合、処理時間が最小の回路同士を組み合わせたファンクションチェーンを作成できる効果がある。一方、計算リソース消費量に制約がある場合、制約条件下において処理時間が最小である回路同士を組み合わせたファンクションチェーンを作成できる効果がある。
【0028】
<計算リソース制御方法>
本実施の形態に係る計算リソース制御方法について、図2を参照して説明する。
【0029】
初めに、ユーザにより指定される処理内容が入力される(ステップS1)。
【0030】
次に、入力された処理内容の一部を実行するための機能を具備する処理回路の候補を収集して等価回路候補群を出力する(ステップS2)。
【0031】
次に、等価回路候補群の中から処理実行回路を所定の基準に従い決定する(ステップS3)。
【0032】
最後に、処理実行回路の接続順番を決定することによりユーザが指定する処理内容を実行するファンクションチェーンを作成して出力する(ステップS4)。
【0033】
以下に、本実施の形態に係る制御方法におけるファンクションチェーンの作成について、詳細を説明する。図3図6に、ユーザが指定する処理内容によるファンクションチェーンの構成例を示す。
【0034】
例えば、図3に示すように、「処理時間(レイテンシ)優先」を選択した場合、ファンクションチェーンを構成する各回路の処理時間(レイテンシ)が最小になる回路同士を組み合わせることでファンクションチェーンを作成する。図中、13_1が変更前、13_2が変更後のファンクションチェーンの構成例である。
【0035】
ここでは、回路リソースに余裕がある場合に、最も処理時間の長いパイプライン(Function:A)を処理時間が短い回路に変更する。これにより、レイテンシを削減できる。また、出力の周期を短縮されできるので、単位時間当たりの出力量(スループット)を向上できる。
【0036】
また、処理時間が最小となるファンクションチェーンを構成する各回路のいずれか一つの回路を変更した上で、処理時間が2番目に短い(次点の)回路同士を組み合わせることで、次点のファンクションチェーンを作成する。
【0037】
以下同様に、処理時間の昇順で回路同士を組み合わせることで、ファンクションチェーンを作成する。とくに計算リソース消費量に制約がない場合、処理時間が最小の回路同士を組み合わせたファンクションチェーンを出力する。一方、計算リソース消費量に制約がある場合、制約条件下において処理時間が最小である回路同士を組み合わせたファンクションチェーンを選択して出力する。
【0038】
また、図4に示すように、「計算リソース消費量優先」を選択した場合、ファンクションチェーンを構成する各回路の計算リソース消費量が最小になる回路同士を組み合わせることでファンクションチェーンを作成する。図中、14_1が変更前、14_2が変更後のファンクションチェーンの構成例である。
【0039】
ここでは、スループット性能の低下を抑制できる範囲で処理時間に余裕があるパイプライン(Function:B)における処理時間の増加を許容して、当該回路(Function:B)を、計算リソース消費量が少ない回路に変更する。これにより、スループットを維持して計算リソース消費量を低減できる。
【0040】
また、計算リソース消費量が最小となるファンクションチェーンを構成する各回路のいずれか一つの回路を変更した上で、計算リソース消費量が2番目に少ない(次点の)回路同士を組み合わせることで、次点のファンクションチェーンを作成する。
【0041】
以下同様に、計算リソース消費量の昇順で回路同士を組み合わせることで、ファンクションチェーンを作成する。とくに処理時間に制約がない場合、計算リソース消費量が最小の回路同士を組み合わせたファンクションチェーンを出力する。一方、処理時間に制約がある場合、制約条件下において計算リソース消費量が最小である回路同士を組み合わせたファンクションチェーンを選択して出力する。
【0042】
また、「入力条件優先」を選択した場合、ファンクションチェーンを構成する初段の回路に対する外部からの入力速度の制約を満たすように、回路同士を組み合わせる。外部からの入力パケットが100マイクロ秒周期で入力される場合、後段の回路で処理が滞ることがない処理時間となるように、すなわち100マイクロ秒を超過するパイプラインが含まれないように回路同士を組み合わせてファンクションチェーンを作成する。
【0043】
また、「スループット優先」を選択した場合、ファンクションチェーンの出力スループットが最大になるように回路同士を組み合わせることでファンクションチェーンを作成する。
【0044】
また、出力スループットが最大となるファンクションチェーンを構成する各回路のいずれか一つの回路を変更した上で、出力スループットが2番目に高い(次点の)回路同士を組み合わせることで、次点のファンクションチェーンを作成する。
【0045】
以下同様に、出力スループットの降順で回路同士を組み合わせることでファンクションチェーンを作成する。とくに計算リソース消費量に制約がない場合、ファンクションチェーンの出力スループットが最大となる回路同士を組み合わせたファンクションチェーンを出力する。一方、計算リソース消費量に制約がある場合、制約条件下においてファンクションチェーンの出力スループットが最大である回路同士を組み合わせたファンクションチェーンを選択して出力する。
【0046】
また、スループットが変化せず、処理時間の増加が許容範囲である場合、計算リソース消費量が最小である回路同士を組み合わせることでファンクションチェーンを作成する。
【0047】
ファンクションチェーンにおいてパイプライン処理を行う場合、ファンクションチェーンを構成する一部の回路のみ処理時間が短かったとしても、それ以外の回路の処理時間が長いと処理時間は許容範囲内で増加するが、出力スループットの変化は誤差の範囲であるとみなすことができる。そこで、計算リソース消費量が最小である回路同士を組み合わせることでファンクションチェーンを作成する。この場合、ファンクションチェーンを構成する各回路がアイドル状態になる時間を最小にすることができる。
【0048】
また、処理回路間の同期が必要な分岐処理が含まれる場合のファンクションチェーンの作成を、図5図6を参照して説明する。図中、15_1、16_1が処理回路の変更前、15_2、16_2が処理回路の変更後のファンクションチェーンの構成例である。また、15_3、16_3は処理回路間の分岐処理の態様を示す。
【0049】
この場合、分岐処理を並列処理するようにファンクションチェーンを作成することで、全体の処理時間を図る。
【0050】
例えば、回路リソースに余裕がある場合、図5に示すように、最も処理時間の長いパイプライン(Function:C)の処理時間が短い回路に変更する。これにより、レイテンシを削減でき、スループットを向上できる。
【0051】
また、例えば、図6に示すように、スループット性能の低下を抑制できる範囲で処理時間に余裕があるパイプライン(Function:B)の処理時間の増加を許容して、当該回路(Function:B)の計算リソース消費量が少ない回路に変更する。これにより、スループットを維持して計算リソース消費量を低減できる。
【0052】
なお、ファンクションチェーンを構成する処理回路の候補を外部からの入力情報としてもよい。この場合、等価回路準備部12は、外部から入力された処理回路の候補を含むように等価回路の候補を準備し、後段のファンクションチェーン作成部13へ入力する。
【0053】
<効果>
本実施の形態に係る計算リソース制御装置および制御方法によれば、ファンクションチェーンを作成するとき、処理時間を短縮させたり、計算リソースの消費を抑制させたり、柔軟性の高い計算リソース制御が可能となる。
【0054】
また、複数の処理回路の候補を組み合わせてファンクションチェーンを作成する過程において、ユーザが指定するファンクションチェーンの処理内容に基づいてファンクションチェーンを作成できる。
【0055】
また、分岐処理が含まれるファンクションチェーンにおいて、処理性能を変えることなく計算リソースの消費を抑制できる。
【0056】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態に係る計算リソース制御装置および制御方法を、図7、8を参照して説明する。
【0057】
<計算リソース制御装置の構成>
本実施の形態に係る計算リソース制御装置20は、図7に示すように、入力部11と、等価回路準備部12と、ファンクションチェーン作成部13と、チェーン最適化部21とを備える。計算リソース制御装置20において、等価回路準備部12と、ファンクションチェーン作成部13は、第1の実施の形態と同様であり、チェーン最適化部21を備える点で第1の実施の形態と異なる。
【0058】
入力部11には、ユーザが指定する処理内容とともに、計算リソース制約や性能最適化条件が入力される。計算リソース制約や性能最適化条件は、ユーザにより入力されてもよいし、コンピュータシステムから自動入力されてもよい。
【0059】
ここで、計算リソース制約は、例えば、コンピュータシステム全体の状態(使用状況、使用予測など)である。
【0060】
また、性能最適化条件は、例えば、指定される優先度である。ここで、「優先度」は、コンピュータシステムにおけるチェーンを作成する対象の処理の優先順位を示す。
【0061】
また、性能最適化条件は、例えば、当該処理部以外の処理部に対して計算リソースの提供を要求し、この要求に対する提供の可否の応答である。
【0062】
チェーン最適化部21は、ユーザが指定する処置内容に加えて、計算リソース制約や性能最適化条件に基づいて、ファンクションチェーンを最適化する。
【0063】
<計算リソース制御方法>
本実施の形態に係る計算リソース制御方法について、図8を参照して説明する。
【0064】
本実施の形態に係る計算リソース制御方法では、第1の実施の形態に係る計算リソース制御方法と同様のステップ(ステップS1~S4)を実行した後に、ファンクションチェーンを最適化する(ステップS5)。ここで、チェーン最適化部21が、上述の通り、ファンクションチェーンを最適化する。
【0065】
以下に、本実施の形態に係る制御方法におけるファンクションチェーンの最適化について、詳細を説明する。
【0066】
例えば、ファンクションチェーンの最適化に、任意の時点の計算リソースの使用状況を用いる場合において、計算リソースの使用状況が所定の基準よりも高いとき、チェーン最適化部21は当該処理における計算リソースの消費を削減できるように、処理性能を所定の性能まで抑制する。
【0067】
一方、任意の時点の計算リソースの使用状況が所定の基準よりも低いとき、チェーン最適化部21は当該処理が消費する計算リソースに制限を設けずに、処理性能を所望の性能を満たすように最適化する。
【0068】
また、ファンクションチェーンの最適化に、将来予測に基づいた計算リソースの使用予測を用いる場合において、計算リソースの使用予測が所定の基準よりも高いとき、チェーン最適化部21は当該処理における計算リソースの消費を削減できるように、処理性能を所定の性能まで抑制する。
【0069】
一方、計算リソースの使用予測が所定の基準よりも低いとき、チェーン最適化部21は当該処理が消費する計算リソースに制限を設けずに、処理性能を所望の性能を満たすように最適化する。
【0070】
このように、チェーン最適化部21において、計算リソース制約に基づいて、ファンクションチェーンを最適化できる。
【0071】
また、ファンクションチェーンの最適化を優先度の指定に基づき行う場合において、所望の性能を満たすように処理するための計算リソースが十分に提供されるとき、チェーン最適化部21は当該処理が消費する計算リソースに制限を設けずに、処理性能を所望の性能を満たすように最適化する。
【0072】
一方、所望の性能を満たすように処理するための計算リソースが十分に提供されないとき、優先度が低い処理から計算リソースが提供されるように、優先度が低い処理に対して要求する。
【0073】
このとき、計算リソースの提供が可能であり、所望の性能を満たすように処理するための計算リソースが十分に提供されるとき、当該処理が消費する計算リソースに制限を設けずに、処理性能を所望の性能を満たすように最適化する。
【0074】
また、計算リソースの提供が可能であるが、所望の性能を満たすように処理するための計算リソースが十分に提供されないとき、提供された計算リソースを加えた上で当該処理が利用可能な計算リソースを上限として、処理性能が所望の性能に近づくように最適化する。
【0075】
また、計算リソースを提供できず、所望の性能を満たすように処理するための計算リソースが十分に提供されないとき、当該処理が利用可能な計算リソースを上限として、処理性能が所望の性能に近づくように最適化する。
【0076】
このように、チェーン最適化部21において、性能最適化条件に基づいて、ファンクションチェーンを最適化できる。
【0077】
<効果>
本実施の形態に係る計算リソース制御装置および制御方法によれば、計算リソース制約又は性能最適化条件に基づいてチェーンを最適化できるので、処理時間の短縮、計算リソースの消費の抑制など、より効率的で柔軟性の高い計算リソース制御が可能となる。
【0078】
本実施の形態では、計算リソース制約又は性能最適化条件のいずれか一方に基づいてチェーンを最適化する例を示したが、当然に計算リソース制約と性能最適化条件両方に基づいてチェーンを最適化してもよい。
【0079】
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態に係る計算リソース制御装置および制御方法を、図9、10を参照して説明する。
【0080】
<計算リソース制御装置の構成>
本実施の形態に係る計算リソース制御装置30は、入力部11と、等価回路準備部12と、ファンクションチェーン作成部13と、チェーン最適化部21と、動的チェーン制御部31とを備える。計算リソース制御装置30において、等価回路準備部12と、ファンクションチェーン作成部13と、チェーン最適化部21は、第2の実施の形態と同様であり、動的チェーン制御部31を備える点で第2の実施の形態と異なる。
【0081】
入力部11には、システム全体の計算リソースの使用状況や、ユーザの処理要求に対する処理の進捗状況が入力される。以下、システム全体の計算リソースの使用状況やユーザの処理要求に対する処理の進捗状況などを、「システムモニタ情報」という。また、第2の実施の形態と同様に、ユーザが指定する処理内容とともに、計算リソース制約や性能最適化条件が入力される。
【0082】
ここで、システムモニタ情報は、ユーザにより入力されてもよいし、コンピュータシステムから自動入力されてもよい。また、計算リソース制約や性能最適化条件は、ユーザにより入力されてもよいし、コンピュータシステムから自動入力されてもよい。
【0083】
動的チェーン制御部31は、システムモニタ情報に基づき、所定の基準値でファンクションチェーンの再生成について判定する。例えば、所定の基準値を上回ることを契機としてファンクションチェーンの再生成を開始する。ここで、所定の基準値は、システム全体の計算リソースの使用状況を示す値や、ユーザの処理要求に対する処理の進捗状況を示す値である。
【0084】
<計算リソース制御方法>
本実施の形態に係る計算リソース制御方法について、図10を参照して説明する。
【0085】
初めに、システムモニタ情報が入力される(ステップS6)。
【0086】
次に、システムモニタ情報について所定の基準値で判定する(ステップS7)。システムモニタ情報が所定の基準値を上回る場合には、以降、第1または第2の実施の形態と同様に、ファンクションチェーンを作成する(ステップS1~S5)。
【0087】
また、システムモニタ情報が所定の基準値を下回る場合および同等の場合には、再度、システムモニタ情報が入力される(ステップS6)。ここで、システムモニタ情報は継続的に入力されてもよいし、任意の時点で入力されてもよい。
【0088】
以下に、本実施の形態に係る制御方法におけるファンクションチェーン再生成の開始について、詳細を説明する。
【0089】
例えば、入力されたシステムモニタ情報が所定の基準値を上回った場合、優先度の低い処理の計算リソースを低減するように処理回路を変更するためのファンクションチェーンの再生成を開始する。
【0090】
また、システムに対して計算リソースの追加を要求してもよい。
【0091】
また、FPGAを計算リソースとして処理回路を実装する場合、使用可能なFPGAの枚数を増やすことで計算リソースを追加できる。
【0092】
本実施の形態では、基準を上回る場合にファンクションチェーンを作成する処理を開始する例を示したが、基準を下回る場合にファンクションチェーンを作成する処理を開始してもよい。
【0093】
例えば、使用状況が所定の基準値を下回った場合、他のファンクションチェーン作成処理で使用状況が逼迫している処理に対して計算リソースを提供するように、処理回路を変更するファンクションチェーン再生成を開始する。
【0094】
また、使用可能なFPGAの枚数を減らしてもよい。
【0095】
<効果>
本実施の形態に係る計算リソース制御装置および制御方法によれば、使用状況に基づいて計算リソースを配分でき、負荷が高い状態において計算リソースを確保でき、負荷が低い状態において処理性能を改善できる。
【0096】
本実施の形態では、第2の実施の形態に適用する例を示したが。第1の実施の形態に適用してもよい。この場合、計算リソース制御装置は、入力部11と、等価回路準備部12と、ファンクションチェーン作成部13と、動的チェーン制御部31とを備え、同様の効果を奏する。
【0097】
本発明の実施の形態では、ユーザが指定する処理内容(親処理)が複数の処理回路(子処理)を組み合わせて実行する場合、例えば、全体のファンクションチェーンが上位のファンクションチェーン(親処理)と下位のファンクションチェーン(子処理)で構成される場合、ユーザが子処理に対して処理内容を指定してもよい。
【0098】
または、ユーザが親処理に対してのみ処理内容を指定してもよい。この場合、コンピュータシステムが親処理に対して指定された処理内容から自動的に選択して、子処理に対して処理内容を指定することもできる。
【0099】
<実施の形態の拡張>
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施の形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、計算リソース制御装置および制御方法として、コンピュータシステム等に適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
10 計算リソース制御装置
11 入力部
12 等価回路準備部
13 ファンクションチェーン作成部
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10