(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】無線通信システム、無線通信方法、送信アダプタ装置、及び受信アダプタ装置
(51)【国際特許分類】
H04J 1/04 20060101AFI20241106BHJP
【FI】
H04J1/04
(21)【出願番号】P 2023537829
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(86)【国際出願番号】 JP2021027959
(87)【国際公開番号】W WO2023007630
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 史洋
【審査官】鉢呂 健
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-126087(JP,A)
【文献】特開2017-005622(JP,A)
【文献】特開2011-155459(JP,A)
【文献】特開2012-191377(JP,A)
【文献】国際公開第2012/147753(WO,A1)
【文献】米国特許第06310910(US,B1)
【文献】阿部 順一 他,帯域分散伝送におけるブラインド型位相補償方式の提案と基本特性評価,電子情報通信学会技術研究報告,Vol.111, No.179,日本,社団法人電子情報通信学会,2011年08月18日,pp.105-110
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信バーストモデム装置に接続される送信アダプタ装置と、
受信バーストモデム装置に接続される受信アダプタ装置と
を備え、
前記送信アダプタ装置は、
前記送信バーストモデム装置から入力されるバースト信号のプリアンブル信号の前段にランダムビットを含む位相同期信号を付加することによって補正バースト信号を生成し、
前記補正バースト信号を周波数軸上で複数のサブスペクトラムに分解することによって、前記複数のサブスペクトラムを有するスペクトラム分解信号を生成し、
前記スペクトラム分解信号を送信する
ように構成され、
前記受信アダプタ装置は、
前記スペクトラム分解信号を受信し、
前記位相同期信号に対応する前記スペクトラム分解信号の前記複数のサブスペクトラムに基づいて、前記複数のサブスペクト
ラム間の位相差を推定し、
前記推定された位相差を補償しながら前記スペクトラム分解信号の前記複数のサブスペクトラムを合成することによってスペクトラム合成信号を生成し、
前記スペクトラム合成信号を前記受信バーストモデム装置に出力する
ように構成される
無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムであって、
前記送信アダプタ装置は、前記送信バーストモデム装置から入力される前記バースト信号を遅延させ、遅延後の前記バースト信号の前記プリアンブル信号の前段に前記位相同期信号を付加することによって前記補正バースト信号を生成する
無線通信システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の無線通信システムであって、
前記送信アダプタ装置は、
前記バースト信号の前記プリアンブル信号の前段に前記位相同期信号を付加することによって前記補正バースト信号を生成する信号補正回路と、
前記補正バースト信号を周波数軸上で前記複数のサブスペクトラムに分解することによって、前記複数のサブスペクトラムを有する前記スペクトラム分解信号を生成するスペクトラム分解回路と
を備え、
前記受信アダプタ装置は、
前記位相同期信号に対応する前記スペクトラム分解信号の前記複数のサブスペクトラムに基づいて、前記複数のサブスペクト
ラム間の前記位相差を推定する位相差推定回路と、
前記推定された位相差を補償しながら前記スペクトラム分解信号の前記複数のサブスペクトラムを合成することによって前記スペクトラム合成信号を生成するスペクトラム合成回路と
を備える
無線通信システム。
【請求項4】
請求項3に記載の無線通信システムであって、
前記位相差推定回路は、前記推定された位相差を保持する保持回路を含み、
前記スペクトラム合成回路は、前記保持回路に保持されている前記位相差に基づいて、前記プリアンブル信号に対応する前記スペクトラム分解信号の前記複数のサブスペクトラムを合成する
無線通信システム。
【請求項5】
請求項4に記載の無線通信システムであって、
前記受信アダプタ装置は、更に、前記プリアンブル信号に対応する前記スペクトラム合成信号に基づいて前記バースト信号の受信タイミングを検出するバースト検出回路を備え、
前記保持回路は、前記バースト信号の受信区間が終了するまで、前記推定された位相差を保持し、
前記スペクトラム合成回路は、前記保持回路に保持されている前記位相差に基づいて、前記バースト信号に対応する前記スペクトラム分解信号の前記複数のサブスペクトラムを合成する
無線通信システム。
【請求項6】
送信バーストモデム装置に接続される送信アダプタ装置と受信バーストモデム装置に接続される受信アダプタ装置との間で無線通信を行う無線通信方法であって、
前記送信バーストモデム装置から前記送信アダプタ装置に入力されるバースト信号のプリアンブル信号の前段にランダムビットを含む位相同期信号を付加することによって補正バースト信号を生成する処理と、
前記補正バースト信号を周波数軸上で複数のサブスペクトラムに分解することによって、前記複数のサブスペクトラムを有するスペクトラム分解信号を生成する処理と、
前記スペクトラム分解信号を前記送信アダプタ装置から前記受信アダプタ装置に送信する処理と、
前記位相同期信号に対応する前記スペクトラム分解信号の前記複数のサブスペクトラムに基づいて、前記複数のサブスペクト
ラム間の位相差を推定する処理と、
前記推定された位相差を補償しながら前記スペクトラム分解信号の前記複数のサブスペクトラムを合成することによってスペクトラム合成信号を生成する処理と、
前記スペクトラム合成信号を前記受信アダプタ装置から前記受信バーストモデム装置に出力する処理と
を含む
無線通信方法。
【請求項7】
送信バーストモデム装置に接続され、受信側システムと通信を行う送信アダプタ装置であって、
前記送信バーストモデム装置から入力されるバースト信号のプリアンブル信号の前段にランダムビットを含む位相同期信号を付加することによって補正バースト信号を生成する信号補正回路と、
前記補正バースト信号を周波数軸上で複数のサブスペクトラムに分解することによって、前記複数のサブスペクトラムを有するスペクトラム分解信号を生成するスペクトラム分解回路と
を備え、
前記受信側システムは、
前記送信アダプタ装置から送信される前記スペクトラム分解信号を受信し、
前記位相同期信号に対応する前記スペクトラム分解信号の前記複数のサブスペクトラムに基づいて、前記複数のサブスペクト
ラム間の位相差を推定し、
前記推定された位相差を補償しながら前記スペクトラム分解信号の前記複数のサブスペクトラムを合成することによってスペクトラム合成信号を生成する
ように構成される
送信アダプタ装置。
【請求項8】
受信バーストモデム装置に接続され、送信側システムと通信を行う受信アダプタ装置であって、
前記送信側システムは、
バースト信号のプリアンブル信号の前段にランダムビットを含む位相同期信号を付加することによって補正バースト信号を生成し、
前記補正バースト信号を周波数軸上で複数のサブスペクトラムに分解することによって、前記複数のサブスペクトラムを有するスペクトラム分解信号を生成し、
前記スペクトラム分解信号を前記受信アダプタ装置に送信する
ように構成され、
前記受信アダプタ装置は、
前記位相同期信号に対応する前記スペクトラム分解信号の前記複数のサブスペクトラムに基づいて、前記複数のサブスペクト
ラム間の位相差を推定する位相差推定回路と、
前記推定された位相差を補償しながら前記スペクトラム分解信号の前記複数のサブスペクトラムを合成することによってスペクトラム合成信号を生成し、前記スペクトラム合成信号を前記受信バーストモデム装置に出力するスペクトラム合成回路と
を備える
受信アダプタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペクトラム分解・合成を利用した無線通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地上ネットワークにおいてIoT(Internet of Things)の利用が爆発的に普及している。地上ネットワークがカバーできないエリアにおいては、広域なサービスエリアを有する衛星を介したIoT、すなわち衛星IoTの利用が有望である。
【0003】
一般に、衛星通信の場合、各ユーザは、必要な周波数帯域を衛星事業者から借りることにより通信を行う。衛星中継器の周波数資源は限られており、その限られた周波数資源を効率的に利用することが望まれる。例えば、既存ユーザに一部の周波数帯域が既に割り当てられている場合、細かい未使用帯域が周波数軸上に散在することになる。細かい未使用帯域が散在する場合、未使用帯域全体の合計は十分大きいにもかかわらず、新たなユーザに要求帯域を割り当てることができない可能性がある。このことは、周波数利用効率の低下を招く。
【0004】
未使用帯域を有効利用して、周波数利用効率を向上させるための技術として、非特許文献1は、「スペクトラム分解・合成伝送技術」を提案している。
【0005】
図1は、スペクトラム分解・合成伝送の概要を説明するための概念図である。各ユーザの端末(A,B,X)からの信号は、地上局から衛星中継器を介して基地局に送られる。衛星中継器における周波数帯域の一部は、既存ユーザによって既に利用されている。未使用帯域を利用して通信を行うために、各端末からの送信信号のスペクトラムは複数のサブスペクトラムに分解され、それら複数のサブスペクトラムが未使用帯域に分散的に配置される。そのような複数のサブスペクトラムを有する送信信号が、衛星中継器を介して基地局に送られる。受信側の基地局は、受信信号の複数のサブスペクトラムを合成することによって、元の送信信号を再現する。このようにして、散在する未使用帯域を有効利用して、周波数利用効率を向上させることができる。
【0006】
図2は、スペクトラム分解・合成を行う無線通信システム1の構成を概略的に示すブロック図である。衛星中継器を介して送信側システムと受信側システムとの間で無線通信が行われる。送信側システムは、変調回路2及びスペクトラム分解回路3を含んでいる。受信側システムは、スペクトラム合成回路4及び復調回路5を含んでいる。
【0007】
ここでは、送信対象のデータとして連続信号を考える。
図3は、一般的な連続信号の場合のフレームフォーマットを示している。
図3に示されるように、連続信号の場合のフレームは、ユニークワードUWとデータ信号DATから構成される。
【0008】
変調回路2は、入力信号を変調し、送信信号TAを出力する。スペクトラム分解回路3は、送信信号TAに対して「スペクトラム分解処理」を行う。より詳細には、スペクトラム分解回路3は、周波数領域変換回路3A、分解処理回路3B、及び時間領域変換回路3Cを含んでいる。周波数領域変換回路3Aは、高速フーリエ変換(FFT: Fast Fourier Transform)によって周波数領域における送信信号TAを取得する。分解処理回路3Bは、送信信号TAを周波数軸上で複数のサブスペクトラムに分解し、複数のサブスペクトラムを所望の周波数位置(未使用帯域)にシフトさせる、つまり、分散的に配置する。スペクトラム分解信号TDは、このようにして生成された複数のサブスペクトラムを有する。時間領域変換回路3Cは、逆高速フーリエ変換(IFFT: Inverse FFT)によって時間領域におけるスペクトラム分解信号TDを生成し、出力する。
【0009】
送信側システムは、スペクトラム分解信号TDを受信側システムに送信する。受信側システムは、スペクトラム分解信号TDをスペクトラム分解信号RDとして受信する。
【0010】
スペクトラム合成回路4は、スペクトラム分解信号RDに対して「スペクトラム合成処理」を行う。より詳細には、スペクトラム合成回路4は、周波数領域変換回路4A、合成処理回路4B、時間領域変換回路4C、及び位相差推定回路4Dを含んでいる。周波数領域変換回路4Aは、FFTによって周波数領域におけるスペクトラム分解信号RDを取得する。合成処理回路4Bは、スペクトラム分解信号RDの複数のサブスペクトラムを抽出し、合成する。このとき、合成処理回路4Bは、複数のサブスペクトラムを元の送信信号TAの周波数位置に戻すことによって、複数のサブスペクトラムを合成する。スペクトラム合成信号RAは、合成後のスペクトラムを有する。時間領域変換回路4Cは、IFFTによって時間領域におけるスペクトラム合成信号RAを生成し、出力する。復調回路5は、スペクトラム合成信号RAを復調し、受信信号を取得する。
【0011】
スペクトラム合成処理においては、以下に説明されるような「位相差補償処理」が行われる。
図4は、位相差補償処理を説明するための概念図である。スペクトラム分解伝送の場合、伝送遅延により、受信側のスペクトラム分解信号RDに位相傾斜が生じる。そのままスペクトラム合成処理を行うと、合成後のスペクトラム合成信号RAの位相特性が不連続になり、伝送特性が劣化する。そこで、スペクトラム合成処理のタイミングで位相差を補償する必要がある。
【0012】
図4に示される例では、スペクトラム分解信号RDは、複数のサブスペクトラムSSP1~SSP3を有している。隣接するサブスペクトラムSSP1、SSP2間の位相差はθ1であり、隣接するサブスペクトラムSSP2、SSP3間の位相差はθ2である。スペクトラム合成回路4の位相差推定回路4Dは、スペクトラム分解信号RDの複数のサブスペクトラムSSP1~SSP3に基づいて位相差θ1、θ2を推定(検出)する。位相差推定回路4Dは、推定した位相差θ1、θ2を合成処理回路4Bに出力する。合成処理回路4Bは、位相差θ1、θ2が0になるように各サブスペクトラムの位相特性を補正して、スペクトラム合成処理を行う。例えば、合成処理回路4Bは、サブスペクトラムSSP2の位相に補正値θ1を加え、サブスペクトラムSSP3の位相に補正値θ1+θ2を加える。これにより、合成後のスペクトラム合成信号RAの位相特性が連続する。
【0013】
次に、既存のモデム装置に上述のスペクトラム分解・合成伝送技術を適用する場合について説明する。
【0014】
図5は、既存のモデム装置を含む無線通信システム10Aの構成を概略的に示すブロック図である。送信側システムは、送信モデム装置20Aと外付けの送信アダプタ装置30を含んでいる。送信アダプタ装置30は、送信モデム装置20Aとアンテナとの間に接続(挿入)される。受信側システムは、受信モデム装置50Aと外付けの受信アダプタ装置40を含んでいる。受信アダプタ装置40は、受信モデム装置50Aとアンテナとの間に接続(挿入)される。
【0015】
送信モデム装置20Aは、入力信号を変調して、アナログの送信信号TAを出力する。送信アダプタ装置30は、送信モデム装置20Aから出力される送信信号TAを受け取る。送信アダプタ装置30は、A/D変換回路31、スペクトラム分解回路33、及びD/A変換回路34を含んでいる。A/D変換回路31は、入力されるアナログの送信信号TAをデジタルの送信信号TAに変換する。スペクトラム分解回路33は、
図2で示されたスペクトラム分解回路3と同様の構成を有し、送信信号TAに対してスペクトラム分解処理を行うことによってスペクトラム分解信号TDを生成する。D/A変換回路34は、スペクトラム分解信号TDをアナログのスペクトラム分解信号TDに変換し、出力する。
【0016】
送信側システムは、スペクトラム分解信号TDを受信側システムに送信する。受信側システムは、スペクトラム分解信号TDをスペクトラム分解信号RDとして受信する。
【0017】
受信アダプタ装置40は、A/D変換回路41、スペクトラム合成回路42、及びD/A変換回路44を含んでいる。A/D変換回路41は、入力されるアナログのスペクトラム分解信号RDをデジタルのスペクトラム分解信号RDに変換する。スペクトラム合成回路42は、
図2で示されたスペクトラム合成回路4と同様の構成を有し、スペクトラム分解信号RDに対してスペクトラム合成処理を行うことによってスペクトラム合成信号RAを生成する。D/A変換回路44は、スペクトラム合成信号RAをアナログのスペクトラム合成信号RAに変換して、受信モデム装置50Aに出力する。受信モデム装置50Aは、スペクトラム合成信号RAを復調し、受信信号を取得する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【文献】山下他,“衛星中継器コグニティブ利用のためのスペクトラム分解伝送アダプタ”,電子情報通信学会 信学技報, vol. 117, no. 261, SAT2017-54, pp. 115-120, 2017年10月.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上述のスペクトラム分解・合成伝送技術がバースト信号の通信に適用される場合を考える。例えば、衛星IoTの場合、IoTユーザは小容量データを瞬間的に送信するため、バースト信号の使用が想定される。
【0020】
図6は、一般的なバースト信号フレームフォーマットを示す概念図である。バースト信号フレームは、プリアンブル信号PRE、ユニークワードUW、及びデータ信号DATを含んでいる。プリアンブル信号PREは、キャリア再生信号CAとタイミング再生信号TMを含んでおり、ユニークワードUWの前段に配置されている。
【0021】
図7は、バースト信号のスペクトラム分解・合成を行う無線通信システム10Bの構成を概略的に示すブロック図である。上述の
図5と重複する説明は適宜省略する。送信側システムは、送信バーストモデム装置20Bと外付けの送信アダプタ装置30を含んでいる。送信アダプタ装置30は、送信バーストモデム装置20Bとアンテナとの間に接続(挿入)される。受信側システムは、受信バーストモデム装置50Bと外付けの受信アダプタ装置40を含んでいる。受信アダプタ装置40は、受信バーストモデム装置50Bとアンテナとの間に接続(挿入)される。
【0022】
送信バーストモデム装置20Bは、
図6で示されたようなフレームフォーマットを有するバースト信号TBを出力する。送信アダプタ装置30は、送信バーストモデム装置20Bから出力されるバースト信号TBを受け取る。送信アダプタ装置30は、入力されるバースト信号TBに対してスペクトラム分解処理を行うことによって、スペクトラム分解信号TDを生成し、出力する。
【0023】
受信アダプタ装置40は、受信したスペクトラム分解信号RDに対してスペクトラム合成処理を行うことによって、スペクトラム合成信号RBを生成する。受信アダプタ装置40は、スペクトラム合成信号RBを受信バーストモデム装置50Bに出力する。
【0024】
受信バーストモデム装置50Bは、バースト検出回路とバースト復調回路を含んでいる。バースト検出回路は、スペクトラム合成信号RBに基づいて、バースト信号の受信タイミングを検出する。バースト検出タイミングは、検出されたバースト信号受信タイミングである。バースト検出タイミングが分かれば、既知であるフレームフォーマット情報に基づいてバースト信号フレーム区間を推定することができる。バースト復調回路は、スペクトラム合成信号RBをバースト復調し、受信信号を取得する。
【0025】
図8は、バースト信号の場合の位相差補償処理を説明するための概念図である。データ信号DATは、ランダムビットからなる変調信号である。そのようなデータ信号DATの受信区間では、スペクトラム分解信号RDは、
図4で示された連続信号の場合と同様のサブスペクトラムSSP1~SSP3を有する。スペクトラム合成処理において、隣接するサブスペクトラムSSP1、SSP2は交点周波数f1において交差し、隣接するサブスペクトラムSSP2、SSP3は交点周波数f2において交差する。位相差推定回路4Dは、交点周波数f1におけるサブスペクトラムSSP1、SSP2のそれぞれの位相に基づいて、位相差θ1(
図4参照)を推定する。同様に、位相差推定回路4Dは、交点周波数f2におけるサブスペクトラムSSP2、SSP3のそれぞれの位相に基づいて、位相差θ2(
図4参照)を推定する。
【0026】
しかしながら、プリアンブル信号PREのキャリア再生信号CAは、連続する同一ビットからなる無変調信号である。そのようなキャリア再生信号CAの受信区間においては、スペクトラム分解信号RDのスペクトラムは、
図8に示されるように線スペクトラムとなる。つまり、バースト信号のキャリア再生信号CAの受信区間においては、上記の交点周波数f1、f2に有意な信号が存在しない。従って、位相差θ1、θ2を正確に推定することができない。
【0027】
有意な信号が存在しなくても位相差推定回路4Dは動作する。その結果、位相差推定回路4Dは、正しい位相差θ1、θ2ではなく、意味のない誤った位相差θ1’、θ2’を合成処理回路4Bに出力する。合成処理回路4Bは、誤った位相差θ1’、θ2’に基づいて各サブスペクトラムの位相特性を補正して、スペクトラム合成処理を行う。従って、合成後のスペクトラム合成信号RBの位相特性は連続せず、位相差が残留する。具体的には、交点周波数f1ではθ1-θ1’の位相差が残留し、交点周波数f2ではθ1+θ2-θ1’-θ2’の位相差が残留する。
【0028】
図9は、位相差推定が正しく実施されない場合の課題を説明するための概念図である。受信バーストモデム装置50Bのバースト検出回路は、バースト信号の受信タイミング(バースト検出タイミング)を検出する。具体的には、バースト検出回路は、スペクトラム合成信号RBのシンボル位相差分の累積値の絶対値を閾値と比較する。そして、バースト検出回路は、シンボル位相差分の累積値の絶対値が閾値を超えるタイミングをバースト検出タイミングとする。バースト検出タイミングが分かるとバースト復調が可能となる。
【0029】
しかしながら、上述の通り、プリアンブル信号PRE(キャリア再生信号CA)の受信区間において、位相差推定は正しく実施されない。その結果、位相差補償処理は不完全となり、スペクトラム合成信号RBの位相特性には位相差(不連続)が残留する。その場合、プリアンブル信号PRE(キャリア再生信号CA)の受信区間において、シンボル位相差分の累積値の絶対値が、閾値に到達しない可能性がある。すなわち、バースト検出タイミングが得られない可能性がある。バースト検出タイミングが得られないと、バースト復調ができなくなる。
【0030】
このように、従来のスペクトラム分解・合成伝送技術が単純にバースト信号の通信に適用される場合、バースト信号の復調が正しく行われないおそれがある。
【0031】
本発明の1つの目的は、スペクトラム分解・合成を利用してバースト信号を適切に伝送することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0032】
第1の観点は、無線通信システムに関連する。
無線通信システムは、
送信バーストモデム装置に接続される送信アダプタ装置と、
受信バーストモデム装置に接続される受信アダプタ装置と
を備える。
送信アダプタ装置は、
送信バーストモデム装置から入力されるバースト信号のプリアンブル信号の前段にランダムビットを含む位相同期信号を付加することによって補正バースト信号を生成し、
補正バースト信号を周波数軸上で複数のサブスペクトラムに分解することによって、複数のサブスペクトラムを有するスペクトラム分解信号を生成し、
スペクトラム分解信号を送信する
ように構成される。
受信アダプタ装置は、
スペクトラム分解信号を受信し、
位相同期信号に対応するスペクトラム分解信号の複数のサブスペクトラムに基づいて、複数のサブスペクトル間の位相差を推定し、
推定された位相差を補償しながらスペクトラム分解信号の複数のサブスペクトラムを合成することによってスペクトラム合成信号を生成し、
スペクトラム合成信号を受信バーストモデム装置に出力する
ように構成される。
【0033】
第2の観点は、送信バーストモデム装置に接続される送信アダプタ装置と受信バーストモデム装置に接続される受信アダプタ装置との間で無線通信を行う無線通信方法に関連する。
無線通信方法は、
送信バーストモデム装置から送信アダプタ装置に入力されるバースト信号のプリアンブル信号の前段にランダムビットを含む位相同期信号を付加することによって補正バースト信号を生成する処理と、
補正バースト信号を周波数軸上で複数のサブスペクトラムに分解することによって、複数のサブスペクトラムを有するスペクトラム分解信号を生成する処理と、
スペクトラム分解信号を送信アダプタ装置から受信アダプタ装置に送信する処理と、
位相同期信号に対応するスペクトラム分解信号の複数のサブスペクトラムに基づいて、複数のサブスペクトル間の位相差を推定する処理と、
推定された位相差を補償しながらスペクトラム分解信号の複数のサブスペクトラムを合成することによってスペクトラム合成信号を生成する処理と、
スペクトラム合成信号を受信アダプタ装置から受信バーストモデム装置に出力する処理と
を含む。
【0034】
第3の観点は、送信バーストモデム装置に接続され、受信側システムと通信を行う送信アダプタ装置に関連する。
送信アダプタ装置は、
送信バーストモデム装置から入力されるバースト信号のプリアンブル信号の前段にランダムビットを含む位相同期信号を付加することによって補正バースト信号を生成する信号補正回路と、
補正バースト信号を周波数軸上で複数のサブスペクトラムに分解することによって、複数のサブスペクトラムを有するスペクトラム分解信号を生成するスペクトラム分解回路と
を備える。
受信側システムは、
送信アダプタ装置から送信されるスペクトラム分解信号を受信し、
位相同期信号に対応するスペクトラム分解信号の複数のサブスペクトラムに基づいて、複数のサブスペクトル間の位相差を推定し、
推定された位相差を補償しながらスペクトラム分解信号の複数のサブスペクトラムを合成することによってスペクトラム合成信号を生成する
ように構成される。
【0035】
第4の観点は、受信バーストモデム装置に接続され、送信側システムと通信を行う受信アダプタ装置に関連する。
送信側システムは、
バースト信号のプリアンブル信号の前段にランダムビットを含む位相同期信号を付加することによって補正バースト信号を生成し、
補正バースト信号を周波数軸上で複数のサブスペクトラムに分解することによって、複数のサブスペクトラムを有するスペクトラム分解信号を生成し、
スペクトラム分解信号を受信アダプタ装置に送信する
ように構成される。
受信アダプタ装置は、
位相同期信号に対応するスペクトラム分解信号の複数のサブスペクトラムに基づいて、複数のサブスペクトル間の位相差を推定する位相差推定回路と、
推定された位相差を補償しながらスペクトラム分解信号の複数のサブスペクトラムを合成することによってスペクトラム合成信号を生成し、スペクトラム合成信号を受信バーストモデム装置に出力するスペクトラム合成回路と
を備える。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、送信側において、バースト信号のプリアンブル信号の前段にランダムビットを含む位相同期信号が付加される。受信側では、その位相同期信号を用いることによって、複数のサブスペクトル間の位相差を精度良く推定することが可能となる。そして、推定された位相差を補償しながらスペクトラム合成処理が行われる。バースト信号のプリアンブル信号に対しても位相差補償処理及びスペクトラム合成処理は精度良く行われるため、バースト信号の受信タイミングを検出し、バースト復調を適切に行うことが可能となる。このように、本発明によれば、スペクトラム分解・合成を利用してバースト信号を適切に伝送することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】スペクトラム分解・合成伝送の概要を説明するための概念図である。
【
図2】従来技術に係るスペクトラム分解・合成を行う無線通信システムの構成例を概略的に示すブロック図である。
【
図3】一般的な連続信号の場合のフレームフォーマットを示す概念図である。
【
図4】スペクトラム合成処理時の位相差補償処理を説明するための概念図である。
【
図5】従来技術に係るスペクトラム分解・合成を行う無線通信システムの他の構成例を概略的に示すブロック図である。
【
図6】一般的なバースト信号フレームフォーマットを示す概念図である。
【
図7】バースト信号のスペクトラム分解・合成を行う無線通信システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【
図8】バースト信号の場合の課題について説明するための概念図である。
【
図9】バースト信号の場合の課題について説明するための概念図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係る無線通信システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る送信アダプタ装置の構成例を示すブロック図である。
【
図12】本発明の実施の形態に係る補正バースト信号を説明するための概念図である。
【
図13】本発明の実施の形態に係る送信アダプタ装置による信号補正処理を説明するための概念図である。
【
図14】本発明の実施の形態に係る受信アダプタ装置の構成例を示すブロック図である。
【
図15】本発明の実施の形態に係る位相差補償処理を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
添付図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0039】
図10は、本実施の形態に係る無線通信システム100の構成を概略的に示すブロック図である。無線通信システム100は、送信側システム100Tと受信側システム100Rを含んでいる。送信側システム100Tと受信側システム100Rとの間で無線通信が行われる。例えば、無線通信システム100は、衛星通信システムである。その場合、衛星中継器を経由して送信側システム100Tと受信側システム100Rとの間で無線通信が行われる。
【0040】
送信側システム100Tは、送信バーストモデム装置200と外付けの送信アダプタ装置300を含んでいる。送信アダプタ装置300は、送信バーストモデム装置200とアンテナとの間に接続(挿入)される。受信側システム100Rは、受信バーストモデム装置500と外付けの受信アダプタ装置400を含んでいる。受信アダプタ装置400は、受信バーストモデム装置500とアンテナとの間に接続(挿入)される。
【0041】
送信バーストモデム装置200は、
図6で示されたようなフレームフォーマットを有するバースト信号TB(アナログ)を出力する。
【0042】
送信アダプタ装置300は、送信バーストモデム装置200から出力されるバースト信号TBを受け取る。送信アダプタ装置300は、入力されるバースト信号TBに対してスペクトラム分解処理を行うことによって、スペクトラム分解信号TDを生成し、出力する。
【0043】
図11は、送信アダプタ装置300の構成例を示すブロック図である。送信アダプタ装置300は、A/D変換回路310、信号補正回路320、スペクトラム分解回路330、及びD/A変換回路340を含んでいる。
【0044】
A/D変換回路310は、送信バーストモデム装置200から入力されるアナログのバースト信号TBをデジタルのバースト信号TBに変換する。A/D変換回路310は、デジタルのバースト信号TBを信号補正回路320に出力する。
【0045】
信号補正回路320は、入力されるバースト信号TBに対して信号補正処理を行うことにより、「補正バースト信号TC」を生成する。
図12は、補正バースト信号TCを説明するための概念図である。補正バースト信号TCは、
図6で示された信号に加えて、「位相同期信号PS」を更に含んでいる。つまり、補正バースト信号TCは、プリアンブル信号PRE(キャリア再生信号CA、タイミング再生信号TM)、ユニークワードUW、及びデータ信号DATに加えて、位相同期信号PSを更に含んでいる。この位相同期信号PSは、ランダムビットを含んでいる。ランダムビットを含む位相同期信号PSは、プリアンブル信号PREの前段に配置され、後述されるスペクトラム合成処理(位相差補償処理)において利用される。信号補正回路320は、バースト信号TBのプリアンブル信号PREの前段にランダムビットを含む位相同期信号PSを付加することによって、補正バースト信号TCを生成する。
【0046】
例えば、
図11に示されるように、信号補正回路320は、遅延回路321、バースト検出回路322、位相同期信号生成回路323、変調回路324、及び加算回路325を含んでいる。遅延回路321は、入力されるバースト信号TBを一定時間遅延させて、加算回路325に出力する。遅延回路321から出力される遅延後のバースト信号TBを、便宜上、バースト信号TBdと呼ぶ(
図13参照)。バースト検出回路322は、入力されるバースト信号TBに基づいて、バースト信号TBの先頭のフレームタイミングを検出する。位相同期信号生成回路323は、ランダムビットを含む位相同期信号PSを生成する。変調回路324は、位相同期信号PSを変調して、加算回路325に出力する。加算回路325は、バースト検出回路322によるバーストフレームの検出をトリガとして、バースト信号TBdと位相同期信号PSを加算することにより補正バースト信号TCを生成する。言い換えれば、加算回路325は、遅延後のバースト信号TBdの前段に位相同期信号PSを挿入することによって補正バースト信号TCを生成する(
図13参照)。信号補正回路320は、このようにして生成した補正バースト信号TCをスペクトラム分解回路330に出力する。
【0047】
スペクトラム分解回路330は、入力される補正バースト信号TCに対して「スペクトラム分解処理」を行うことによってスペクトラム分解信号TDを生成する。より詳細には、スペクトラム分解回路330は、周波数領域変換回路331、分解処理回路332、及び時間領域変換回路333を含んでいる。周波数領域変換回路331は、高速フーリエ変換(FFT: Fast Fourier Transform)によって周波数領域における補正バースト信号TCを取得する。分解処理回路332は、補正バースト信号TCを周波数軸上で複数のサブスペクトラムに分解し、複数のサブスペクトラムを所望の周波数位置(未使用帯域)にシフトさせる、つまり、分散的に配置する。スペクトラム分解信号TDは、このようにして生成された複数のサブスペクトラムを有する。時間領域変換回路333は、逆高速フーリエ変換(IFFT: Inverse FFT)によって時間領域におけるスペクトラム分解信号TDを生成し、出力する。
【0048】
D/A変換回路340は、スペクトラム分解信号TDをアナログのスペクトラム分解信号TDに変換し、出力する。
【0049】
送信側システム100Tの送信アダプタ装置300は、スペクトラム分解信号TDを受信側システム100Rに送信する。受信側システム100Rの受信アダプタ装置400は、スペクトラム分解信号TDをスペクトラム分解信号RDとして受信する。
【0050】
図14は、受信アダプタ装置400の構成例を示すブロック図である。受信アダプタ装置400は、A/D変換回路410、スペクトラム合成回路420、バースト検出回路430、及びD/A変換回路440を含んでいる。
【0051】
A/D変換回路410は、入力されるアナログのスペクトラム分解信号RDをデジタルのスペクトラム分解信号RDに変換する。A/D変換回路410は、スペクトラム分解信号RDをスペクトラム合成回路420に出力する。
【0052】
スペクトラム合成回路420は、入力されるスペクトラム分解信号RDに対して「スペクトラム合成処理」を行うことによってスペクトラム合成信号RBを生成する。より詳細には、スペクトラム合成回路420は、周波数領域変換回路421、合成処理回路422、時間領域変換回路423、及び位相差推定回路424を含んでいる。周波数領域変換回路421は、FFTによって周波数領域におけるスペクトラム分解信号RDを取得する。合成処理回路422は、スペクトラム分解信号RDの複数のサブスペクトラムを抽出し、合成する。このとき、合成処理回路422は、複数のサブスペクトラムを元のバースト信号TBの周波数位置に戻すことによって、複数のサブスペクトラムを合成する。スペクトラム合成信号RBは、合成後のスペクトラムを有する。時間領域変換回路423は、IFFTによって時間領域におけるスペクトラム合成信号RBを生成し、出力する。
【0053】
スペクトラム合成処理においては、「位相差補償処理」が行われる。具体的には、位相差推定回路424は、スペクトラム分解信号RDの複数のサブスペクトラムに基づいて、複数のサブスペクトル間の位相差を推定(検出)する。位相差推定回路424は、推定した位相差を合成処理回路422に出力する。合成処理回路422は、推定された位相差を補償しながらスペクトラム合成処理を行う。つまり、合成処理回路422は、位相差が0になるように各サブスペクトラムの位相特性を補正して、スペクトラム合成処理を行う。これにより、合成後のスペクトラム合成信号RBの位相特性が連続する。
【0054】
図15は、本実施の形態に係るスペクトラム合成処理時の位相差補償処理を説明するための概念図である。
【0055】
まず、位相同期信号PSの受信区間について考える(
図15中の(a))。上述の通り、位相同期信号PSは、ランダムビットを含んでいる。従って、位相同期信号PSに対応するスペクトラム分解信号RDは、データ信号DATの場合と同様の複数のサブスペクトラムを有する。
図15に示される例では、位相同期信号PSに対応するスペクトラム分解信号RDは、複数のサブスペクトラムSSP1~SSP3を有している。
【0056】
スペクトラム合成処理において、隣接するサブスペクトラムSSP1、SSP2は交点周波数f1において交差し、隣接するサブスペクトラムSSP2、SSP3は交点周波数f2において交差する。位相差推定回路424は、交点周波数f1におけるサブスペクトラムSSP1、SSP2のそれぞれの位相に基づいて、隣接するサブスペクトラムSSP1、SSP2間の位相差θ1を推定する。同様に、位相差推定回路424は、交点周波数f2におけるサブスペクトラムSSP2、SSP3のそれぞれの位相に基づいて、隣接するサブスペクトラムSSP2、SSP3間の位相差θ2を推定する。
【0057】
このように、位相差推定回路424は、位相同期信号PSに対応するスペクトラム分解信号RDの複数のサブスペクトラムSSP1~SSP3に基づいて、位相差θ1、θ2を推定することができる。位相差推定回路424は、位相同期信号PSの受信区間において推定された位相差θ1、θ2を保持する。例えば、
図14に示されるように、位相差推定回路424は、位相同期信号PSの受信区間において推定された位相差θ1、θ2を保持する保持回路425を含んでいる。位相差推定回路424は、保持回路425に保持されている位相差θ1、θ2を合成処理回路422に出力する。合成処理回路422は、推定された位相差θ1、θ2を補償しながらスペクトラム合成処理を行う。
【0058】
次に、プリアンブル信号PRE(特にキャリア再生信号CA)の受信区間について考える(
図15中の(b))。合成処理回路422は、保持回路425に保持されている位相差θ1、θ2に基づいて、プリアンブル信号PREに対応するスペクトラム分解信号RDに関するスペクトラム合成処理を行う。正確な位相差θ1、θ2が用いられるため、プリアンブル信号PREに対しても位相差補償処理及びスペクトラム合成処理は精度良く行われる。
【0059】
バースト検出回路430は、時間領域変換回路423から出力されるスペクトラム合成信号RBを受け取る。バースト検出回路430は、プリアンブル信号PREに対応するスペクトラム合成信号RBに基づいて、バースト信号の受信タイミング(バースト検出タイミング)を検出する(
図9参照)。バースト検出回路430は、バースト検出タイミングを位相差推定回路424に通知する。バースト検出タイミングが分かれば、既知であるフレームフォーマット情報に基づいてバーストフレーム受信区間を推定することができる。保持回路425は、少なくともバーストフレーム受信区間が終了するまで、推定された位相差θ1、θ2を保持する。
【0060】
次に、ユニークワードUW及びデータ信号DATの受信区間について考える(
図15中の(c))。合成処理回路422は、保持回路425に保持されている位相差θ1、θ2に基づいて、ユニークワードUW及びデータ信号DATに対応するスペクトラム分解信号RDに関するスペクトラム合成処理を行う。正確な位相差θ1、θ2が用いられるため、ユニークワードUW及びデータ信号DATに対しても位相差補償処理及びスペクトラム合成処理は精度良く行われる。
【0061】
D/A変換回路440は、スペクトラム合成回路420から出力されるスペクトラム合成信号RBをアナログのスペクトラム合成信号RBに変換する。
【0062】
受信アダプタ装置400は、このようにして生成したスペクトラム合成信号RBを受信バーストモデム装置500に出力する。
【0063】
受信バーストモデム装置500は、受信アダプタ装置400から出力されるスペクトラム合成信号RBを受け取る。受信バーストモデム装置500は、バースト検出回路とバースト復調回路を含んでいる。バースト検出回路は、スペクトラム合成信号RBに基づいて、バースト信号の受信タイミングを検出する。より詳細には、バースト検出回路は、スペクトラム合成信号RBのシンボル位相差分の累積値の絶対値を閾値と比較する。そして、バースト検出回路は、シンボル位相差分の累積値の絶対値が閾値を超えるタイミングをバースト検出タイミングとする(
図9参照)。バースト検出タイミングが分かれば、既知であるフレームフォーマット情報に基づいてバースト信号フレーム区間を推定することができる。バースト復調回路は、スペクトラム合成信号RBをバースト復調し、受信信号を取得する。
【0064】
<効果>
以上に説明されたように、本実施の形態によれば、送信アダプタ装置300において、バースト信号のプリアンブル信号PREの前段にランダムビットを含む位相同期信号PSが付加される。受信アダプタ装置400では、その位相同期信号PSを用いることによって、複数のサブスペクトル間の位相差を精度良く推定することが可能となる。そして、推定された位相差を補償しながらスペクトラム合成処理が行われる。バースト信号のプリアンブル信号PREに対しても位相差補償処理及びスペクトラム合成処理は精度良く行われるため、バースト信号の受信タイミングを検出し、バースト復調を適切に行うことが可能となる。すなわち、本実施の形態によれば、スペクトラム分解・合成を利用してバースト信号を適切に伝送することが可能となる。
【0065】
例えば、衛星IoTの場合、IoTユーザは小容量データを瞬間的に送信するため、バースト信号の使用が想定される。本実施の形態に係るスペクトラム分解・合成伝送技術を利用することによって、多数のIoT信号を効率的に収集することが可能となる(
図1参照)。
【0066】
更に、本実施の形態によれば、送信アダプタ装置300と受信アダプタ装置400が提供される。これら送信アダプタ装置300と受信アダプタ装置400を利用することによって、既存の送信バーストモデム装置200と既存の受信バーストモデム装置500との間でバースト信号のスペクトラム分解・合成伝送を実現することが可能となる。
【符号の説明】
【0067】
100 無線通信システム
100T 送信側システム
100R 受信側システム
200 送信バーストモデム装置
300 送信アダプタ装置
320 信号補正回路
330 スペクトラム分解回路
332 分解処理回路
400 受信アダプタ装置
420 スペクトラム合成回路
422 合成処理回路
424 位相差推定回路
425 保持回路
500 受信バーストモデム装置
CA キャリア再生信号
DAT データ信号
PRE プリアンブル信号
PS 位相同期信号
TM タイミング再生信号
UW ユニークワード