IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DIC株式会社の特許一覧

特許7582515ポリアスパラギン酸架橋体及びその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ポリアスパラギン酸架橋体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/50 20060101AFI20241106BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20241106BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20241106BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20241106BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C08G59/50
C09K3/00 103G
B01J20/26 D
B01J20/30
A61F13/53 300
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023566986
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 CN2022134044
(87)【国際公開番号】W WO2023155523
(87)【国際公開日】2023-08-24
【審査請求日】2023-10-31
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2022/076421
(32)【優先日】2022-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】ジャン シン
(72)【発明者】
【氏名】土肥 知樹
(72)【発明者】
【氏名】菅原 学
(72)【発明者】
【氏名】ツイ チンジャン
(72)【発明者】
【氏名】グオ ジン
(72)【発明者】
【氏名】ドン チャンジュン
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-145988(JP,A)
【文献】特開2002-145990(JP,A)
【文献】特開2001-181391(JP,A)
【文献】特開2002-179791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00- 59/72
C08G 73/00- 73/26
C08G 69/00- 69/50
C08L 1/00-101/16
C09K 3/00
C08K 3/00- 13/08
B01J 20/20- 20/34
A61F 13/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリコハク酸イミド(PSI)と、
第1官能基(a1)と第2官能基(a2)とを有する化合物(A:a1-A1-a2)と、
多官能エポキシ(B)と、の反応物であるポリアスパラギン酸架橋体であって、
前記ポリアスパラギン酸架橋体が、前記第1官能基(a1)とポリコハク酸イミド(PSI)とを付加反応して形成したPSI-a1(A)結合、前記第2官能基(a2)と多官能エポキシ(B)と反応して形成したB-a2(A)結合、PSI-a1-A1-a2-B-a2-A1-a1-PSIで表す架橋構造(PABAP)と、を含み、
前記架橋構造(PABAP)の一部が加水分解されており
前記第2官能基(a2)が、ポリコハク酸イミド(PSI)と反応しない、又は、前記第1官能基(a1)よりポリコハク酸イミド(PSI)との反応性が低く、
前記第1官能基(a1)がアミノ基(NH-)であり、
前記第2官能基(a2)がアミノ基(NH-)及びホスホノオキシ基((OH)P(=O)-O-)からなる群から選択される1種以上であり、
前記第2官能基(a2)がアミノ基(NH-)である場合、前記第1官能基(a1)より、ポリコハク酸イミド(PSI)と反応性が低い、ことを特徴とするポリアスパラギン酸架橋体。
【請求項2】
前記第2官能基(a2)がアミノ基(NH-)であり、
前記化合物(A)において、前記第2官能基(a2)のアミノ基が、下記式(1)に表す構造中のアミノ基である、請求項1に記載のポリアスパラギン酸架橋体。
【化1】
(式(1)中、Gがカルボン酸基又はその塩を表す。)
【請求項3】
前記化合物が、リシン、オルニチン及びアルギニンからなる群から選択される1種以上である、請求項1又は2に記載のポリアスパラギン酸架橋体。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のポリアスパラギン酸架橋体を含む吸水性組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のポリアスパラギン酸架橋体を含む増粘組成物。
【請求項6】
ポリコハク酸イミド(PSI)と、
第1官能基(a1)と第2官能基(a2)とを有する化合物(A:a1-A1-a2)と、
多官能エポキシ(B)と、水若しくは含水溶媒中において、反応させて架橋体を生成する工程と、を含む、ポリアスパラギン酸架橋体を製造する方法であって、
前記ポリアスパラギン酸架橋体が、前記第1官能基(a1)とポリコハク酸イミド(PSI)とを付加反応して形成したPSI-a1(A)結合と、前記第2官能基(a2)と多官能エポキシ(B)と反応して形成したB-a2(A)結合と、PSI-a1-A1-a2-B-a2-A1-a1-PSIで表す架橋構造(PABAP)と、を含み、
前記架橋構造(PABAP)の一部が加水分解されており、
前記第2官能基(a2)が、ポリコハク酸イミド(PSI)と反応しない、又は、前記第1官能基よりポリコハク酸イミド(PSI)との反応性が低く、
前記第1官能基(a1)がアミノ基(NH-)であり、
前記第2官能基(a2)がアミノ基(NH-)及びホスホノオキシ基((OH)P(=O)-O-)基からなる群から選択される1種以上であり、
前記第2官能基(a2)がアミノ基(NH-)である場合、前記第1官能基(a1)より、ポリコハク酸イミド(PSI)との反応性が低い、ことを特徴とする、ポリアスパラギン酸架橋体の製造方法。
【請求項7】
前記第2官能基(a2)がアミノ基(NH-)であり、
前記化合物(A)において、第1官能基(a1)のアミノ基がNH-CH-のアミノ基であり、前記第2官能基(a2)のアミノ基が、下記式(1)に表す構造中のアミノ基である、請求項6に記載のポリアスパラギン酸架橋体の製造方法。
【化2】
(式(1)中、Gがカルボン酸基又はその塩を表す。)
【請求項8】
前記化合物が、リシン、オルニチン及びアルギニンからなる群から選択される1種以上である、請求項6又は7に記載のポリアスパラギン酸架橋体の製造方法。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のポリアスパラギン酸架橋体を含む吸水性樹脂。
【請求項10】
請求項9に記載の吸水性樹脂を含む吸水性樹脂粒子。
【請求項11】
請求項10に記載の吸水性樹脂粒子と、
繊維状物を含む繊維層と
を含む吸収体。
【請求項12】
液体不透過性シートと、請求項11に記載の吸収体と、液体透過性シートとを備え、
前記液体不透過性シート、前記吸収体及び前記液体透過性シートがこの順に配置されている、吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアスパラギン酸架橋体及びその製造方法に関する。
本願は、2022年2月16日に、中国に出願されたPCT/CN2022/076421に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂は、自重の数十倍から数千倍の水を吸収できる樹脂であり、生理用品、紙おむつ、パップ剤等の医療用品等の幅広い分野に使用されている。代表的なものとしてアクリル酸系吸水性樹脂が挙げられるが、生分解性を有しないため、使用後の廃棄(焼却・廃棄)が問題となりつつある。そこで、生分解性を有する新規な吸水性樹脂が強く要望されている。
【0003】
例えば、架橋剤としてポリエポキシ化合物を用いて、ポリアミノ酸と架橋剤を反応させる架橋ポリアミノ酸の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、架橋剤としてジアミンを用いて、ジアミンによって鎖同士が部分的に架橋されたポリアスパラギン酸骨格を有するポリマーを製造する方法が開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-63511号公報
【文献】特開2019-89898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、架橋部がエステル結合をもち、このエステル結合が経時で加水分解されるため、ゲル形状を保持できないという問題点があった。
【0007】
一方、特許文献2の方法では、非プロトン性極性溶媒を用いるため、有機溶媒を取り扱う設備や、有機溶媒の回収が必要である。
【0008】
本発明は、エステル結合を持たないため、経時での加水分解が起こらずゲル形状を保持でき、吸水性・保水性を保持できるポリアスパラギン酸架橋体及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の態様を含む。
[1] ポリコハク酸イミド(PSI)と、
第1官能基(a1)と第2官能基(a2)とを有する化合物(A:a1-A1-a2)と、
多官能エポキシ(B)と、の反応物であるポリアスパラギン酸架橋体であって、
前記架橋体が、前記第1官能基(a1)とポリコハク酸イミド(PSI)とを付加反応して形成したPSI-a1(A)結合を含み、
前記架橋体が、前記第2官能基(a2)と多官能エポキシ(B)と反応して形成したB-a2(A)結合を含み、
前記架橋体が、PSI-a1-A1-a2-B-a2-A1-a1-PSIで表す架橋構造(PABAP)を含み、
前記架橋構造(PABAP)の一部が加水分解され、
前記化合物(A)の前記第2官能基が、ポリコハク酸イミド(PSI)と反応しない、又は、前記第1官能基よりポリコハク酸イミド(PSI)との反応性が低いことを特徴とするポリアスパラギン酸架橋体。
[2] 第1官能基(a1)がアミノ基(NH-)であり、
第2官能基(a2)がアミノ基(NH-)及びホスホノオキシ基((OH)P(=O)-O-)基からなる群から選択される1種以上であり、
第2官能基(a2)がアミノ基(NH-)である場合、前記第1官能基(a1)よりポリコハク酸イミド(PSI)との反応性が低い、[1]に記載のポリアスパラギン酸架橋体。
[3] 第1官能基(a1)がアミノ基(NH-)であり、
第2官能基(a2)がアミノ基(NH-)であり、
前記化合物(A)において、前記第2官能基(a2)のアミノ基が、下記式(1)に表す構造中のアミノ基である、[1]又は[2]に記載のポリアスパラギン酸架橋体。
【化1】
(式(1)中、Gがカルボン酸基又はその塩を表す。)
[4] 前記化合物Aが、リシン、オルニチン及びアルギニンからなる群から選択される1種以上である、[1]~[3]の何れかに記載のポリアスパラギン酸架橋体。
[5] [1]~[4]の何れかに記載のポリアスパラギン酸架橋体を含む吸水性組成物。
[6] [1]~[4]の何れかに記載のポリアスパラギン酸架橋体を含む増粘組成物。
[7] ポリコハク酸イミド(PSI)と、
第1官能基(a1)と第2官能基(a2)とを有する化合物(A:a1-A1-a2)と、
多官能エポキシ(B)と、水若しくは含水溶媒中において、反応させて架橋体を生成する工程と、を含む、ポリアスパラギン酸架橋体を製造する方法であって、
前記化合物(A)の前記第2官能基が、ポリコハク酸イミド(PSI)と反応しない、又は、前記第1官能基よりポリコハク酸イミド(PSI)との反応性が低いことを特徴とする、ポリアスパラギン酸架橋体の製造方法。
[8] 第1官能基(a1)がアミノ基(NH-)であり、
第2官能基(a2)がアミノ基(NH-)及びホスホノオキシ基((OH)P(=O)-O-)基からなる群から選択される1種以上であり、
第2官能基(a2)がアミノ基(NH-)である場合、前記第1官能基(a1)より、ポリコハク酸イミド(PSI)との反応性が低い、[7]に記載のポリアスパラギン酸架橋体の製造方法。
[9] 第1官能基(a1)がアミノ基(NH-)であり、
第2官能基(a2)がアミノ基(NH-)であり、
前記化合物(A)において、第1官能基(a1)のアミノ基がNH-CH-のアミノ基であり、前記第2官能基(a2)のアミノ基が、下記式(1)に表す構造中のアミノ基である、[7]又は[8]に記載のポリアスパラギン酸架橋体の製造方法。
【化2】
(式(1)中、Gがカルボン酸基又はその塩を表す。)
[10] 前記化合物Aが、リシン、オルニチン及びアルギニンからなる群から選択される1種以上である、[7]~[9]の何れかに記載のポリアスパラギン酸架橋体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、エステル結合を持たないため、経時での加水分解が起こらずゲル形状を保持でき、吸水性・保水性を保持できるポリアスパラギン酸架橋体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(ポリアスパラギン酸架橋体)
【0012】
本発明の一実施形態のポリアスパラギン酸架橋体(本実施形態の架橋体と言うことがある)は、ポリコハク酸イミド(PSI)と、第1官能基(a1)と第2官能基(a2)とを有する化合物(A:a1-A1-a2)と、多官能エポキシ(B)と、の反応物である。前記架橋体が、前記第1官能基(a1)とポリコハク酸イミド(PSI)とを付加反応して形成したPSI-a1(A)結合を含む。前記架橋体が、前記第2官能基(a2)と多官能エポキシ(B)と反応して形成したB-a2(A)結合を含む。前記架橋体が、PSI-a1-A1-a2-B-a2-A1-a1-PSIで表す架橋構造(PABAP)を含む。前記架橋構造(PABAP)の一部(例えば、PSIの未反応の部分)が加水分解される。前記化合物(A)の前記第2官能基が、ポリコハク酸イミド(PSI)と反応しない、あるいは、前記第1官能基よりポリコハク酸イミド(PSI)との反応性が低い。
〔ポリコハク酸イミド(PSI)〕
【0013】
本実施形態に係るポリコハク酸イミド(PSI)は、以下式(2)に表すポリマーである。
【0014】
【化3】
【0015】
(式中、n=10~10000)
【0016】
ポリコハク酸イミド(PSI)の製造方法については特に限定されないが、例えば、アスパラギン酸をリン酸の存在下で真空中170~190℃で加熱、脱水縮合することにより製造される。更に高分子量のポリコハク酸イミドを得る場合には、上記のようにして得られたポリコハク酸イミドをジシクロヘキシルカルボジイミド等の縮合剤で処理すればよい。ポリコハク酸イミドの分子量は、特に限定されない。例えば、重量平均分子量で2万以上であることが好ましく、5万以上であることがより好ましく、7万以上であることがさらに好ましい。ポリコハク酸イミドの分子量は、50万以下であることが好ましく、20万以下であることがより好ましい。この場合の重量平均分子量は、GPC法によるポリスチレンを標準物質とした換算値である。
〔化合物(A)〕
【0017】
本実施形態に係る化合物(A)の第1官能基(a1)がアミノ基(NH-)であることが好ましい。第1官能基(a1)のアミノ基がNH-CH-のアミノ基であることがより好ましい。
【0018】
本実施形態に係る化合物(A)の第2官能基(a2)がアミノ基(NH-)又はホスホノオキシ基((OH)P(=O)-O-)基であることが好ましく、第2官能基(a2)がアミノ基(NH-)であることがより好ましい。第2官能基(a2)がアミノ基(NH-)である場合、前記第2官能基(a2)のアミノ基が、下記式(1)に表す構造中のアミノ基であることが更に好ましい。
【0019】
【化4】
【0020】
(式(1)中、Gがカルボン酸基又はその塩を表す。)
【0021】
Gがカルボン酸基の塩の場合、当該塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アミン塩等の有機塩基塩、リシン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。中でも好ましい塩はアルカリ金属塩であり、より好ましい塩としてはナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。
【0022】
本実施形態に係る化合物(A)の第1官能基(a1)がアミノ基(NH-)であり、本実施形態に係る化合物(A)の第2官能基(a2)もアミノ基(NH-)である場合、前記化合物(A)の前記第2官能基のアミノ基が、前記第1官能基のアミノ基より、ポリコハク酸イミド(PSI)との反応性が低いことが好ましい。すなわち、このような化合物(A)としては、それぞれのアミノ基を含む端末構造が異なるジアミン等が挙げられる。例えば、非対称のジアミン等が挙げられる。
【0023】
本実施形態に係る化合物(A)の第1官能基(a1)がNH-CH-のアミノ基であり、第2官能基(a2)のアミノ基が、上記式(1)に表す構造中のアミノ基である例としては、以下の式(3)に表す化合物が挙げられる。
【0024】
【化5】
【0025】
(式中、n=1~10、好ましく2~8、より好ましく3~5)
【0026】
本実施形態に係る化合物(A)が上記式(3)に表す化合物のカルボン酸基の塩であってもよく、その場合、当該塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アミン塩等の有機塩基塩、リシン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。中でも好ましい塩はアルカリ金属塩であり、より好ましい塩としてはナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。
【0027】
本実施形態に係る化合物(A)の第1官能基(a1)がアミノ基であり、かつ第2官能基(a2)もアミノ基である場合、第1官能基(a1)がNH-CH-のアミノ基であり、第2官能基(a2)のアミノ基が、上記式(1)に表す構造中のアミノ基である化合物(A)の例としては、以下の式(4)に表す化合物が挙げられる。
【0028】
【化6】
【0029】
(式中、Lが2価連結基を表し、-CH-, C=Oなどの2価連結基の1種以上を表すことが好ましく、-CH-を表すことがより好ましい。nが1~10、好ましく2~8、より好ましく3~5の整数を表す。)
【0030】
本実施形態に係る化合物(A)が上記式(4)に表す化合物のカルボン酸基の塩であってもよく、その場合、当該塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アミン塩等の有機塩基塩、リシン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。中でも好ましい塩はアルカリ金属塩であり、より好ましい塩としてはナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。
【0031】
本実施形態に係る化合物(A)の第1官能基(a1)がアミノ基であり、かつ第2官能基(a2)がホスホノオキシ基((OH)P(=O)-O-)基である場合、以下の式(5)に表す化合物が挙げられる。
【0032】
【化7】
【0033】
(式中、Lが2価連結基を表し、-CH-,-(C=O)-などの2価連結基の1種以上を表すことが好ましく、-CH-を表すことがより好ましい。nが1~10、好ましく2~8、より好ましく3~5の整数を表す。)
【0034】
本実施形態に係る化合物(A)が上記式(5)に表す化合物のホスホノオキシ基の塩であってもよく、その場合、当該塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アミン塩等の有機塩基塩、リシン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。中でも好ましい塩はアルカリ金属塩であり、より好ましい塩としてはナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。
【0035】
本実施形態に係る化合物(A)としては、リシン、オルニチン及びアルギニン等が挙げられる。
【0036】
また、本実施形態に係る化合物(A)がアミノ基を含む場合、前記化合物(A)の酸性塩を原料として用いてもよい。前記化合物(A)の酸性塩としては、リシン塩酸塩、オルニチン塩酸塩、アルギニン塩酸塩等の塩酸塩や同様の硫酸塩が挙げられる。
【0037】
また、本実施形態に係る化合物(A)としては、ジペプチドを用いることができる。上記ジペプチドとしては、例えば、グリシン-リシン(イソペプチド結合)、アラニン-リシン(イソペプチド結合)、グリシン-オルニチン(イソペプチド結合)、アラニン-オルニチン(イソペプチド結合)等のC末端に塩基性アミノ酸残基を有するジペプチド;リシン-グリシン、リシン-アラニン、オルニチン-グリシン、オルニチン-アラニン等のN末端に塩基性アミノ酸残基を有するジペプチド等が挙げられる。
【0038】
中では、例えば、グリシン-リシンが、以下の式(6)で表すジペプチドであり、リシン-グリシンが、以下式(7)で表すジペプチドである。
【0039】
【化8】
【0040】
〔多官能エポキシ(B)〕
【0041】
本実施形態に係る多価エポキシ化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテルおよびブタンジオールジグリシジルエーテル等の(C2-C6)アルカンポリオール及びポリ(アルキレングリコール)のポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、エリスリトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールエタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、1,2,3,4-ジエポキシブタン、1,2,4,5-ジエポキシペンタン、1,2,5,6-ジエポキシヘキサン、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、1,4-及び1,3-ジビニルベンゼンエポキシド等の(C4-C8)ジエポキシアルカン及びジエポキシアルアルカン、4,4‘-イソプロピリデンジフェノールジグリシジルエーテル(ビスフェノールAジグリシジルエーテル)及びヒドロキノンジグリシジルエーテル等の(C6-C15)ポリフェノールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
また、ナガセケムテックス製の多官能エポキシ化合物EX-810、EX-861、EX-313、EX-614B、EX-512等が挙げられる。
(ポリアスパラギン酸架橋体の製造方法)
【0042】
本実施形態の、ポリアスパラギン酸架橋体の製造方法(以後、本実施形態の製造方法をいうことがある。)は、ポリコハク酸イミド(PSI)と、第1官能基(a1)と第2官能基(a2)とを有する化合物(A:a1-A1-a2)と、多官能エポキシ(B)と、水若しくは含水溶媒において、反応させて架橋体を生成する工程と、を含む。前記ポリコハク酸イミド(PSI)、第1官能基(a1)と第2官能基(a2)とを有する化合物(A)、多官能エポキシ(B)は、本実施形態のポリアスパラギン酸架橋体において記載したものと同じものであり、これらの好ましい例も同じである。
【0043】
本実施形態の製造方法において、ポリコハク酸イミド(PSI)と化合物(A)と多官能エポキシ(B)との反応順は、特に限定されなく、例えば、以下の3つの製造方法が挙げられる。
(i)ポリコハク酸イミド(PSI)と化合物(A)と反応させてポリコハク酸イミド(PSI)と化合物(A)との反応物(P1)を得る工程と、上記工程で得た反応物(P1)と多官能エポキシ化合物とを反応させる工程とを含む製造方法(以後、方法(i))。
(ii)ポリコハク酸イミド(PSI)と化合物(A)とを先に混合して反応させながら、続いて、多官能エポキシ化合物を一定の速度で添加する製造方法(以後、方法(ii))。
(iii)ポリコハク酸イミド(PSI)と化合物(A)と多官能エポキシ化合物とを混合してから反応させる製造方法(以後、方法(iii))。
【0044】
得られたポリアスパラギン酸架橋体の構造を制御することが容易である観点から、方法(i)又は方法(ii)が好ましく、方法(i)がより好ましい。
【0045】
上記方法(i)を例として、本実施形態の製造方法を詳細に説明する。
【0046】
方法(i)において、反応物(P1)を得る工程では、化合物(A)を先に水に溶解することが好ましい。例えば、1質量部の化合物(A)に対して、5~50質量部の水が好ましく、7~15質量部の水がより好ましい。その水溶液にポリコハク酸イミドを混合する。配合比は、10質量部のポリコハク酸イミドに対して、化合物(A)の質量部が0.5~10質量部であることが好ましく、1~5質量部であることがより好ましく、1.5~3質量部であることが更に好ましい。
【0047】
配合後の混合物において、NaOH、アミンなどの有機・無機塩基化合物を添加して、水溶液のpHを8~13に調整することが好ましく、水溶液のpHを9~12に調整することがより好ましい。得られた生成物において、化合物(A)が付加されたユニットの割合は全ユニットに対して2~30%であることが好ましく、5~15%であることがより好ましく、8~12%であることが更に好ましい。化合物(A)が付加されたユニットの割合は、プロトンNMRにおける、ポリアスパラギン酸主鎖骨格中の-CH-のプロトン由来のピークの積分値Iaと、化合物(A)中の-CH-のプロトン由来のピークの積分値Ibとの比(Ib/Ia)から求められる。もしくは、化合物(A)中の-CH-のプロトン由来ピークの積分値Icの2倍との比(Ic×2/Ia)からも求められる。
【0048】
方法(i)において、反応物(P1)と多官能エポキシ化合物とを反応する工程では、反応物(P1)100質量部に対して、多官能エポキシ化合物の配合量が2~10質量部であることが好ましく、3~8質量部であることがより好ましい。
【0049】
反応物(P1)としては、反応物(P1)の生成工程において得た反応液から、反応物(P1)を単離してなる固体状の反応物(P1)を用いることができる。その場合、多官能エポキシ化合物を配合する前に、反応物(P1)の水溶液を先に調製することが好ましい。
【0050】
反応物(P1)としては、反応物(P1)生成工程において得た反応液から、反応物(P1)を単離せず、そのまま溶液状態で、多官能エポキシ化合物を配合することができる。
【0051】
反応物(P1)と多官能エポキシ化合物との反応温度は、30℃~100℃であることができる。40~80℃であることが好ましく、50~70℃であることがより好ましい。反応時間は、例えば、60℃である場合、40分~600分であることができる。60~300分であることがより好ましい。
【0052】
反応で生成したポリアスパラギン酸架橋体の単離には、公知の通常の単離操作、例えば、再結晶、再沈、濾過、濃縮等の操作を用いることができる。
【0053】
また、本実施態様のポリアスパラギン酸架橋体の大きさ(平均粒径)は特に限定されないが、例えば、増粘組成物の用途では、好ましくは150μm以下であり、より好ましくは100μm以下であり、さらに好ましくは80μm以下である。また、例えば、オムツ・衛生用品などを対象とした「吸水性組成物」の用途では、好ましい範囲は1~5000μmであり、より好ましい範囲は10~1000μmであり、さらに好ましい範囲は100~800μmである。
〔架橋度〕
【0054】
本実施態様に係るポリコハク酸イミド(PSI)に対して、化合物(A)、多官能エポキシ(B)の使用量は、所望の架橋度に応じて適宜選択すればよい。例えば、前述の方法(i)を用いる製造方法の例の場合、ポリコハク酸イミド(PSI)と化合物(A)と配合比を上述の範囲で調整し、さらに、多官能エポキシ(B)を調整することで、架橋度を制御することができる。最終で生成したポリアスパラギン酸架橋体の用途によるが、例えば、高い吸水性と保水性が必要な用途では、ポリコハク酸イミド(PSI)において、化合物(A)が付加されたユニットの割合(付加率)は全ユニットに対して1~20%であることが好ましく、3~15%であることがより好ましく、5~10%であることが更に好ましい。前記付加率は、NMRより測定することができる。
(ポリアスパラギン酸架橋体の用途)
【0055】
本実施形態のポリアスパラギン酸架橋体は、オムツ・衛生用品などの吸収性物品の吸収体を構成する吸水性組成物として使用することができる。本実施形態のポリアスパラギン酸架橋体は、上記吸水性組成物として使用される場合、大きさ(平均粒径)が好ましくは1~5000μmであり、より好ましくは10~1000μmであり、さらに好ましくは100~800μmである。
【0056】
また、本実施形態のポリアスパラギン酸架橋体は、増粘組成物として使用することができる。本実施形態のポリアスパラギン酸架橋体は、上記吸水性組成物として使用される場合、大きさ(平均粒径)が好ましくは150μm以下であり、より好ましくは100μm以下であり、さらに好ましくは80μm以下である。
(吸水性樹脂)
【0057】
本発明の一実施形態(本実施形態)の吸水性樹脂は、上記本実施形態のポリアスパラギン酸架橋体を含む。また、本実施形態の吸水性樹脂は、必要に応じて、本実施形態のポリアスパラギン酸架橋体の以外の他の樹脂、又は他の公知の添加剤などを含んでも良い。
本実施形態のポリアスパラギン酸架橋体が含水ゲル状架橋体である場合、該架橋体は必要に応じて乾燥し、乾燥の前または乾燥の後で通常粉砕されて吸水性樹脂となる。乾燥方法は、特に限定されず、例えば加熱乾燥、凍結乾燥、減圧(真空)乾燥、減圧加熱乾燥など公知の方法から任意に実施することができる。乾燥方法により粒子形状が変わることがあるため、目的に応じて選択される。また、加熱乾燥の場合、乾燥温度は、通常60℃~250℃、好ましくは80℃~220℃、より好ましくは100℃~200℃の温度範囲で行われる。減圧加熱乾燥の場合、乾燥温度は、通常50℃~200℃、好ましくは60℃~150℃、より好ましくは70℃~120℃の温度範囲で行われる。乾燥時間は、含水ゲル状架橋体の表面積、含水率、および乾燥機の種類に依存し、目的とする含水率になるよう選択される。なお、吸水性樹脂の含水率をゼロにすることは困難であるため、少量の水(例えば、0.3~15重量% 、更には0.5~10重量%)を吸水性樹脂に含み粉末として扱える場合、この少量の水を含んだ吸水性樹脂をも本明細書では吸水性樹脂と称する。
本実施形態の吸水性樹脂において、本実施形態のポリアスパラギン酸架橋体の含有量が50質量%~100質量%であることが好ましく、70質量%~100質量%であることがより好ましく、90質量%~100質量%であることが更に好ましい。本実施形態の吸水性樹脂が本実施形態のポリアスパラギン酸架橋体であってもよい。
(吸水性樹脂粒子)
【0058】
本発明の一実施形態(本実施形態)の吸水性樹脂粒子は、上記本実施形態の吸水性樹脂からなる。
【0059】
本実施形態の吸水性樹脂粒子の形状としては、略球状、破砕状、顆粒状等が挙げられる。本実施形態の吸水性樹脂粒子の大きさ(平均粒径)が好ましくは1~5000μmであり、より好ましくは10~1000μmであり、さらに好ましくは100~800μmである。吸水性樹脂粒子は、篩による分級を用いた粒度調整等の操作を行うことにより粒度分布を調整してもよい。
【0060】
本実施形態の吸水性樹脂粒子は、架橋剤を用いて含水ゲル状架橋体の表面部分の架橋(表面架橋)が行われることができる。表面架橋を行うことで、吸水性樹脂粒子の吸水特性を制御しやすい。表面架橋は、含水ゲル状架橋体が特定の含水率であるタイミングで行われることが好ましい。
【0061】
表面架橋を行うための架橋剤(表面架橋剤)としては、例えば、本実施形態のポリアスパラギン酸架橋体を製造する際に用いる架橋剤が挙げられる。また、その他の反応性官能基を2個以上有する化合物を挙げることができる。架橋剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0062】
表面架橋後において、公知の方法で水若しくは含水溶媒を留去することにより、表面架橋された乾燥品である架橋体粒子を得ることができる。
【0063】
本実施形態の吸水性樹脂粒子は、上記架橋体粒子のみから構成されていてもよいが、例えば、ゲル安定剤、金属キレート剤、及び流動性向上剤(滑剤)等から選ばれる各種の追加の成分を更に含むことができる。追加の成分は、架橋体粒子の内部、架橋体粒子の表面上、又はそれらの両方に配置され得る。追加の成分としては、流動性向上剤(滑剤)が好ましく、そのなかでも無機粒子がより好ましい。無機粒子としては、例えば、非晶質シリカ等のシリカ粒子やタルク、マイカ等が挙げられる。
【0064】
吸水性樹脂粒子は、架橋体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子を含んでいてもよい。例えば、架橋体粒子と無機粒子とを混合することにより、架橋体粒子の表面上に無機粒子を配置することができる。この無機粒子は、非晶質シリカ等のシリカ粒子であってもよい。吸水性樹脂粒子が架橋体粒子の表面上に配置された無機粒子を含む場合、架橋体粒子の質量に対する無機粒子の割合は、0.2質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、又は1.5質量%以上であってもよく、5.0質量%以下、又は3.5質量%以下であってもよい。無機粒子の添加量が上述の範囲内であることによって、吸水性樹脂粒子の吸水特性が好適な吸水性樹脂粒子が得られ易い。
(吸収体)
【0065】
本発明の一実施形態(本実施形態)の吸収体は、吸水性樹脂粒子と、繊維状物を含む繊維層と、を有する。吸収体は、例えば、吸水性樹脂粒子及び繊維状物を含む混合物である。吸収体の構成としては、例えば、吸水性樹脂粒子及び繊維状物が均一混合された構成であってよく、シート状又は層状に形成された繊維状物の間に吸水性樹脂粒子が挟まれた構成であってもよく、その他の構成であってもよい。
【0066】
本実施形態の吸収体における吸水性樹脂粒子の質量割合は、吸水性樹脂粒子及び繊維状物の合計に対して、2~100質量%、10~90質量%又は10~80質量%であってよい。
【0067】
本実施形態の吸収体の形状は、特に限定されず、例えばシート状、筒状、フィルム状、繊維状であってよい。吸収体の厚さ(例えば、シート状の吸収体の厚さ)は、例えば0.1~50mm、0.3~30mmであってよい。
【0068】
本実施形態の吸収体は、上記本実施形態の吸水性樹脂粒子を用いる。本実施形態の吸収体は、上記本実施形態の吸水性樹脂粒子の以外に、他の公知の吸水性樹脂粒子を用いてもよい。本実施形態の吸収体は、吸水性樹脂粒子として、上記本実施形態の吸水性樹脂粒子のみを含むことが好ましい。
【0069】
本実施形態の吸収体における吸水性樹脂粒子の含有量は、吸収体が後述の吸収性物品に使用される際に十分な液体吸収性能がより得られやすくなる観点から、吸収体の1平米あたり50~2000g(即ち50~2000g/m)であることが好ましく、より好ましくは100~1000g/mである。吸収性物品としての十分な液体吸収性能を発揮させ、特に液体漏れを抑制する観点から、吸水性樹脂粒子の含有量は50g/m以上であることが好ましく、ゲルブロッキング現象の発生を抑制し、吸収性物品として液体の拡散性能を発揮させ、さらに液体の浸透速度を改善する観点から、吸水性樹脂粒子の含有量は2000g/m以下であることが好ましい。
〔繊維状物〕
【0070】
繊維状物としては、特に限定されないが、微粉砕された木材パルプ;コットン;コットンリンター;レーヨン;綿;羊毛;アセテート;ビニロン;セルロースアセテート等のセルロース系繊維;ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の合成繊維;これらの繊維の混合物などが挙げられる。繊維状物は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。繊維状物としては、親水性繊維を用いることができる。
【0071】
繊維状物の含有量は、吸収体が後述の吸収性物品に使用される際にも十分な液体吸収性能を得る観点から、吸収体の1平米あたり50~800g(即ち50~800g/m)であることが好ましく、より好ましくは100~600g/m、さらに好ましくは150~500g/mである。吸収性物品としての十分な液体吸収性能を発揮させ、特にゲルブロッキング現象の発生を抑制して液体の拡散性能を高め、さらに吸収体の吸液後の強度を高める観点から、繊維状物の含有量は、吸収体の1平米あたり50g以上(即ち50g/m以上)であることが好ましく、特に液体吸収後の逆戻りを抑制する観点から、繊維状物の含有量は、吸収体の1平米あたり800g以下(即ち800g/m以下)であることが好ましい。
【0072】
吸収体の使用前及び使用中における形態保持性を高めるために、繊維状物に接着性バインダーを添加することによって繊維同士を接着させてもよい。接着性バインダーとしては、熱融着性合成繊維、ホットメルト接着剤、接着性エマルジョン等が挙げられる。接着性バインダーは、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0073】
熱融着性合成繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等の全融型バインダー;ポリプロピレンとポリエチレンとのサイドバイサイドや芯鞘構造からなる非全融型バインダーなどが挙げられる。上述の非全融型バインダーにおいては、ポリエチレン部分のみ熱融着することができる。
【0074】
ホットメルト接着剤としては、例えば、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー、アモルファスポリプロピレン等のベースポリマーと、粘着付与剤、可塑剤、酸化防止剤等との混合物が挙げられる。
【0075】
接着性エマルジョンとしては、例えば、メチルメタクリレート、スチレン、アクリロニトリル、2ーエチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、ブタジエン、エチレン、及び、酢酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体の重合物が挙げられる。
〔添加剤〕
【0076】
本実施形態の吸収体は当該技術分野で通常用いられる無機粉末、消臭剤、顔料、染料、香料、抗菌剤、粘着剤等の各種添加剤をさらに含有していてもよい。これらの添加剤により、吸収体に種々の機能を付与することができる。上記無機粉末としては、例えば、二酸化ケイ素、ゼオライト、マイカ、カオリン、クレイ等が挙げられる。吸水性樹脂粒子が無機粒子を含む場合、吸収体は吸水性樹脂粒子中の無機粒子とは別に無機粉末を含んでいてもよい。
(吸収性物品)
【0077】
本発明の一実施形態(本実施形態)の吸収性物品は、吸収体と、吸液対象の液が浸入する側の最外部に配置される液体透過性シートと、吸液対象の液が浸入する側とは反対側の最外部に配置される液体不透過性シートと、を備える。吸収性物品としては、おむつ(例えば紙おむつ)、トイレトレーニングパンツ、失禁パッド、尿吸収シート、尿吸収ライナー、衛生材料(生理用ナプキン、タンポン等)、汗取りパッド、ペットシート、簡易トイレ用部材、動物排泄物処理材などが挙げられる。
【0078】
吸収性物品において、液体不透過性シート、吸収体、及び、液体透過性シートがこの順に積層している。
【0079】
本実施形態の吸収性物品は、上記本実施形態の吸収体を用いる。本実施形態の吸収性物品は、上記本実施形態の吸収体以外に、他の公知の吸収体を用いてもよい。本実施形態の吸収性物品は、吸収体として、上記本実施形態の吸収体のみを用いることが好ましい。
〔液体透過性シート〕
【0080】
液体透過性シートは、吸収対象の液が浸入する側の最外部に配置されている。液体透過性シートは、例えば、吸収体の主面よりも広い主面を有しており、液体透過性シートの外縁部は、吸収体の周囲に延在している。
【0081】
液体透過性シートは、当該技術分野で通常用いられる樹脂又は繊維から形成されたシートであってよい。液体透過性シートは、吸収性物品に用いられる際の液体浸透性、柔軟性及び強度の観点から、例えば、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、並びにレーヨンのような合成樹脂、又はこれら合成樹脂を含む合成繊維を含んでいてもよいし、綿、絹、麻、又はパルプ(セルロース)を含む天然繊維であってもよい。液体透過性シートの強度を高める等の観点から、液体透過性シートが合成繊維を含んでいてもよい。合成繊維が特に、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維又はこれらの組み合わせであってよい。これらの素材は、単独で用いられてもよく、2種以上の素材を組み合わせて用いられてもよい。
【0082】
液体透過性シートは、不織布、多孔質シート、又はこれらの組み合わせであってよい。不織布は、繊維を織らずに絡み合わせたシートである。不織布は、短繊維(すなわちステープル)で構成される不織布(短繊維不織布)であってもよく、長繊維(すなわちフィラメント)で構成される不織布(長繊維不織布)であってもよい。ステープルは、これに限定されないが、一般的には数百mm以下の繊維長を有していてよい。
【0083】
液体透過性シートは、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、レジンボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布、及びポイントボンド不織布からなる群より選ばれる少なくとも1種の不織布であってよく、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、及びスパンボンド/メルトブロー/スパンボンド不織布からなる群より選択される少なくとも1種の不織布であることが好ましい。
【0084】
液体透過性シートは、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、レジンボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布、ポイントボンド不織布、又はこれらから選ばれる2種以上の不織布の積層体であってよい。これら不織布は、例えば、上述の合成繊維又は天然繊維によって形成されたものであることができる。2種以上の不織布の積層体は、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布及びスパンボンド不織布を有し、これらがこの順に積層された複合不織布であるスパンボンド/メルトブロー/スパンボンド不織布であってよい。なかでも、液体漏れ抑制の観点から、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、又はスパンボンド/メルトブロー/スパンボンド不織布が好ましく用いられる。
【0085】
液体透過性シートとして用いられる不織布は、吸収性物品の液体吸収性能の観点から、適度な親水性を有していることが望ましい。
【0086】
上述のような親水性を有する不織布は、例えば、レーヨン繊維のように適度な親水度を示す繊維によって形成されたものでもよいし、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維のような疎水性の化学繊維を親水化処理して得た繊維によって形成されたものであってもよい。親水化処理された疎水性の化学繊維を含む不織布を得る方法としては、例えば、疎水性の化学繊維に親水化剤を混合したものを用いてスパンボンド法にて不織布を得る方法、疎水性化学繊維でスパンボンド不織布を作製する際に親水化剤を同伴させる方法、疎水性の化学繊維を用いて得たスパンボンド不織布に親水化剤を含浸させる方法が挙げられる。親水化剤としては、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤、第4級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤、及びポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、ウレタン系の樹脂からなるステイン・リリース剤等が用いられる。
【0087】
液体透過性シートは、吸収性物品に、良好な液体浸透性、柔軟性、強度及びクッション性を付与できる観点、及び吸収性物品の液体浸透速度を速める観点から、適度に嵩高く、目付量が大きい不織布であることが好ましい。
〔液体不透過性シート〕
【0088】
液体不透過性シートは、吸収性物品において液体透過性シートとは反対側の最外部に配置されている。液体不透過性シートは、例えば、吸収体の主面よりも広い主面を有しており、液体不透過性シートの外縁部は、吸収体の周囲に延在している。液体不透過性シートは、吸収体に吸収された液体が液体不透過性シート側から外部へ漏れ出すのを防止する。
【0089】
液体不透過性シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート等の樹脂からなるシート、耐水性のメルトブローン不織布を高強度のスパンボンド不織布で挟んだスパンボンド/メルトブロー/スパンボンド(SMS)不織布等の不織布からなるシート、これらの樹脂と不織布(例えば、スパンボンド不織布、スパンレース不織布)との複合材料からなるシートなどが挙げられる。液体不透過性シートは、装着時のムレが低減されて、着用者に与える不快感を軽減することができる等の観点から、通気性を有していることが好ましい。液体不透過性シートとして、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂を主体とする合成樹脂からなるシートを用いることができる。
【0090】
吸収体、液体透過性シート、及び、液体不透過性シートの大小関係は、特に限定されず、吸収性物品の用途等に応じて適宜調整される。
【実施例
【0091】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明が実施例に限定されるものではない。
【0092】
以下、本発明の実施例に用いた原料、装置等を説明する。
(原料)
【0093】
アスパラギン酸:YIXING QIANCHENG BIO-ENGINEERING製、99.97%純度
リン酸:関東化学社製、85%純度
L-リシン:東京化成工業製、97%純度
L-オルニチン一塩酸塩:関東化学社製、98%純度
ホスホリルエタノールアミン:東京化成工業社製、98%純度
ヘキサメチレンジアミン:関東化学社製、98%純度
多官能エポキシ化合物:ナガセケムテックス製、EX-810
(評価方法)
【0094】
<ポリコハク酸イミドの重量平均分子量の測定>
【0095】
ポリコハク酸イミドの重量平均分子量は、GPC法(示差屈折計)によるポリスチレン換算値を求めた。測定には、G1000HHRカラム、G4000HHRカラム、及びGMHHR-Hカラム(TSKgel(登録商標)、東ソー株式会社)を使用した。溶離液には、10mM臭化リチウムを含むジメチルホルムアミドを使用した。
【0096】
<吸水性の評価>
吸水性の評価は、生理食塩水を用いて、ティーバッグ法(JIS K-7223)に従って実施した。吸水量の計算は以下の式より算出した。
吸水量[g-water/g]={(吸水後重量)-(吸水後ブランク重量)-(サンプル重量)}/(サンプル重量)
<保水性の評価>
【0097】
保水性の評価は、ティーバッグ法による吸水量の評価の後、遠心脱水機で25℃、150G×2分の条件で脱水し、脱水後のティーバッグの重量を測定した。以下の計算により保水量を算出した。
保水量[g-water/g]={(脱水後重量)-(脱水後ブランク重量)-(サンプル重量)}/(サンプル重量)
<弾性率の評価>
【0098】
回転式レオメーター MCR-102(AntonPaar社)にて、パラレルプレートPP-25、ギャップ2mm、測定温度25℃の条件下、角周波数0.1~100(rad/s)で弾性率を測定し、角周波数=1.0(rad/s)における貯蔵弾性率を採用した。
(合成例1)
【0099】
<ポリコハク酸イミドの合成>
【0100】
アスパラギン酸160部と85%リン酸83部を乳鉢で混合し、トレイに移し替えて、190℃、1.3kPa、6時間反応させた。反応混合物を粉砕した後、蒸留水を用いて、ろ液が中性になるまで洗浄し、80℃にて真空乾燥することにより、重量平均分子量7万のポリコハク酸イミド115部を得た。
(実施例1)
【0101】
「ポリアスパラギン酸架橋体の合成」
【0102】
<PSIと化合物(A)との反応物(P1)の合成>
【0103】
L-リシン2.23部を蒸留水20部に添加・攪拌し溶解したのちに、合成例1で得られたポリコハク酸イミド10部を添加した。pHが10~11となるように調整しながら、室温での攪拌下、36%NaOH水溶液9.75部を滴下した。滴下終了後、さらに15時間室温で攪拌した。得られた反応溶液を59μmのナイロンメッシュにてろ過し、リシン付加ポリアスパラギン酸ナトリウム溶液(固形分割合43%)を得た。NMRより、リシンが付加されたユニットの割合は全ユニットに対して9.2%であった。
<架橋体の合成>
【0104】
上記工程で得られたリシン付加ポリアスパラギン酸ナトリウム溶液4.64部と、多官能エポキシ化合物EX-810(ナガセケムテックス製)0.106部を混合し、60℃での加熱反応を行なった。所定の反応時間ごとに弾性率測定を行った結果、反応時間60分での貯蔵弾性率が1100Pa、反応時間180分での貯蔵弾性率が1180Paであった。反応時間180分後において、ゲルの形状が保持されていた。
【0105】
また、反応時間180分で得られたゲル組成物を凍結乾燥し、乾燥した組成物を乳鉢で粉砕し、ステンレスふるい(JIS Z-8801)を用いて150~710μmとなるようにメッシュ・パスした。その吸水性と保水性を測定したところ、それぞれ45.5g/g、29.1g/gであった。
(実施例2)
【0106】
「ポリアスパラギン酸架橋体の合成」
【0107】
<PSIと化合物(A)との反応物の合成>
【0108】
L-オルニチン一塩酸塩2.61部と48%NaOH水溶液1.29部を蒸留水19.3部に添加・撹拌し溶解したのちに、合成例1で得られたポリコハク酸イミド10部を添加した。pHが11~12となるように調整しながら、室温での攪拌下、36%NaOH水溶液9.72部を滴下した。滴下終了後、さらに15時間室温で攪拌した。得られた反応溶液を59μmのナイロンメッシュにてろ過し、オルニチン付加ポリアスパラギン酸ナトリウム溶液(固形分割合50%)を得た。NMRより、オルニチンが付加されたユニットの割合は全ユニットに対して10.1%であった。
<架橋体の合成>
【0109】
上記工程で得られたオルニチン付加ポリアスパラギン酸ナトリウム溶液5.73部と、多官能エポキシ化合物EX-810(ナガセケムテックス製)0.148部を混合し、60℃での加熱反応を行なった。所定の反応時間ごとに弾性率測定を行った結果、反応時間60分での貯蔵弾性率が680Pa、反応時間180分での貯蔵弾性率が730Paであった。反応時間180分後において、ゲルの形状が保持されていた。
【0110】
また、反応時間180分で得られたゲル組成物を凍結乾燥し、乾燥した組成物を乳鉢で粉砕し、ステンレスふるい(JIS Z-8801)を用いて150~710μmとなるようにメッシュ・パスした。その吸水性と保水性を測定したところ、それぞれ46.0g/g、31.2g/gであった。
(実施例3)
【0111】
<PSIと化合物(A)との反応物の合成>
【0112】
ホスホリルエタノールアミン2.18部と48%NaOH水溶液1.29部を蒸留水19.3部に添加・撹拌し溶解したのちに、合成例1で得られたポリコハク酸イミド10部を添加した。pHが11~12となるように調整しながら、室温での攪拌下、36%NaOH水溶液9.72部を滴下した。滴下終了後、さらに15時間室温で攪拌した。得られた反応溶液を59μmのナイロンメッシュにてろ過し、ホスホリルエタノールアミン付加ポリアスパラギン酸ナトリウム溶液(固形分割合38%)を得た。NMRより、ホスホリルエタノールアミンが付加されたユニットの割合は全ユニットに対して5.5%であった。
<架橋体の合成>
【0113】
上記工程で得られたホスホリルエタノールアミン付加ポリアスパラギン酸ナトリウム溶液5.50部と、多官能エポキシ化合物EX-810(ナガセケムテックス製)0.445部を混合し、60℃での加熱反応を行なった。所定の反応時間ごとに弾性率測定を行った結果、反応時間60分での貯蔵弾性率が1250Pa、反応時間180分での貯蔵弾性率が1310Paであった。反応時間180分後において、ゲルの形状が保持されていた。
また、反応時間180分で得られたゲル組成物を凍結乾燥し、乾燥した組成物を乳鉢で粉砕し、ステンレスふるい(JIS Z-8801)を用いて150~710μmとなるようにメッシュ・パスした。その吸水性と保水性を測定したところ、それぞれ40.8g/g、29.0g/gであった。
【0114】
(比較例1)
【0115】
合成例1で得られたポリコハク酸イミドを水酸化ナトリウム水溶液で加水分解して得られたポリアスパラギン酸ナトリウム水溶液(固形分濃度30%)5.43部に塩酸を加えてpHを5.0に調整したのちに、多官能エポキシ化合物EX-810(ナガセケムテックス製)0.135部を混合し、60℃での加熱反応を行なった。所定の反応時間ごとに弾性率測定を行った結果、反応時間60分での貯蔵弾性率が42.2Pa、反応時間120分での貯蔵弾性率が1510Pa、反応時間180分での貯蔵弾性率が6.71Paであった。反応時間180分後では流動性の高い液体状態となり、ゲル形状を保持できていなかった。架橋部がエステル結合であるため、解架橋したものと推察される。
(比較例2)
【0116】
合成例1で得られたポリコハク酸イミド2部を蒸留水20部に添加した後に攪拌し、ポリコハク酸イミド分散液とした。次いでヘキサメチレンジアミン0.48部と24%NaOH水溶液2.78部及び蒸留水2.91部を室温で攪拌し、ジアミン架橋剤混合液を調整した。ポリコハク酸イミド分散液にジアミン架橋剤混合液を滴下し、滴下終了後も攪拌を継続しゲル組成物を得た。所定の反応時間ごとに弾性率測定を行った結果、反応時間60分での貯蔵弾性率が800Pa、反応時間180分での貯蔵弾性率が820Paであった。反応時間180分後において、ゲルの形状が保持されていた。
【0117】
また、ゲル組成物をメタノールで洗浄し、60℃で真空乾燥したのち、乳鉢で粉砕し、ステンレスふるい(JIS Z-8801)を用いて150~710μmとなるようにメッシュ・パスした。その吸水性と保水性を測定したところ、それぞれ13.9g/g、8.9g/gであった。水中でのジアミン架橋では設計通りの架橋率をもつゲルを得ることが難しく、吸水性、保水性が低い結果となったと推察される。
【0118】
【表1】
(実施例4)
【0119】
<吸水性樹脂粒子>
実施例1で得られたゲル組成物を凍結乾燥し、乾燥した組成物を乳鉢で粉砕し、ステンレスふるい(JIS Z-8801)を用いて150~710μmとなるようにメッシュ・パスした。得られた吸水性樹脂100部に、Aerosil200(親水性アモルファスシリカ、日本アエロジル社製)を0.5部添加して混合することにより、吸水性樹脂粒子を得た。その吸水性と保水性を測定したところ、それぞれ45.0g/g、29.0g/gであった。
(実施例5)
<吸収体・吸収性物品>
【0120】
実施例4で得られた吸水性樹脂粒子70部と、木材粉砕パルプ30部とを、ミキサーを用いて乾式混合し、得られた混合物を400メッシュ(目の大きさ38μm)に形成されたワイヤースクリーン上に空気抄造装置を用いて空気抄造することにより、吸収体を得た。
【0121】
続いて、液体不透過性のポリプロピレンからなる液体不透過性シート、前記吸収体、および、液体透過性のポリプロピレンからなる不織布の液体透過性シートを、両面テープを用いてこの順に互いに貼着することにより、吸収性物品を得た。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、エステル結合を持たないため、経時での加水分解が起こらずゲル形状を保持でき、吸水性・保水性・その他の性能を保持できるポリアスパラギン酸架橋体及びその製造方法を提供することができる。本発明のポリアスパラギン酸架橋体は、オムツ用途の高吸水性樹脂、衛生用品、増粘剤などの化粧品用添加剤、その他生分解性を有する樹脂(農業用、土木用など)に適用できる。