(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】レベリング剤、コーティング組成物、レジスト組成物、カラーフィルター及びレベリング剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 230/08 20060101AFI20241106BHJP
C08F 220/18 20060101ALI20241106BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20241106BHJP
C09D 7/47 20180101ALI20241106BHJP
C09D 143/04 20060101ALI20241106BHJP
C09D 133/06 20060101ALI20241106BHJP
G03F 7/075 20060101ALI20241106BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20241106BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C08F230/08
C08F220/18
C09K3/00 R
C09D7/47
C09D143/04
C09D133/06
G03F7/075 521
G03F7/004 505
G02B5/20 101
(21)【出願番号】P 2024527398
(86)(22)【出願日】2023-07-06
(86)【国際出願番号】 JP2023025056
(87)【国際公開番号】W WO2024024440
(87)【国際公開日】2024-02-01
【審査請求日】2024-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2022121730
(32)【優先日】2022-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】植野 純平
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-209353(JP,A)
【文献】特開2008-174541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C09D
C09K3/00
G02B5/20
G03F7/004
G03F7/075
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(a-1)で表される化合物である重合性単量体(A)及び環状炭化水素骨格を含む基を有する重合性単量体(B)を、少なくとも重合成分として含み、前記重合性単量体(B)が、下記式(b-1-1)~(b-1-6)
からなる群より選択される少なくとも1つの化合物であるシリコーン含有共重合体を含む、レベリング剤。
【化1】
(前記一般式(a-1)中、
R
11は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキル基又は-OSi(R
14)
3で表される基(R
14はそれぞれ独立に炭素原子数1~3のアルキル基)であり、
R
12は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
13は、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
xは繰り返し数を示す数平均値であり、1~5の整数であり、
R
15は水素原子又はメチル基であり、
L
1は2価の有機基である。)
【化2】
(式中、Zは反応性官能基を表し、X及びYは2価の有機基又は単結合を表し、R
b1は水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。)
【化3】
(式中、R
b1は水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。)
【化4】
(式中、R
b1は水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。)
【化5】
(式中、R
b1は水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。)
【化6】
(式中、R
b1は水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記シリコーン含有共重合体の重量平均分子量(Mw)が3,000~80,000である、請求項1に記載のレベリング剤。
【請求項3】
前記シリコーン含有共重合体がフッ素原子を含まない、請求項1に記載のレベリング剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のレベリング剤を含む、コーティング組成物。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載のレベリング剤と着色剤とを含有する、レジスト組成物。
【請求項6】
請求項5に記載のレジスト組成物の塗膜層が基板上に形成されている、カラーフィルター。
【請求項7】
下記一般式(a-1)で表される化合物である重合性単量体(A)及び環状炭化水素骨格を含む基を有する下記式(b-1-1)~(b-1-6)
からなる群より選択される少なくとも1つの化合物である重合性単量体(B)を重合させる、シリコーン含有共重合体を含む、レベリング剤の製造方法。
【化7】
(前記一般式(a-1)中、
R
11は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキル基又は-OSi(R
14)
3で表される基(R
14はそれぞれ独立に炭素原子数1~3のアルキル基)であり、
R
12は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
13は、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
xは繰り返し数を示す数平均値であり、1~5の整数であり、
R
15は水素原子又はメチル基であり、
L
1は2価の有機基である。)
【化8】
(式中、Zは反応性官能基を表し、X及びYは2価の有機基又は単結合を表し、R
b1は水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。)
【化9】
(式中、R
b1は水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。)
【化10】
(式中、R
b1は水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。)
【化11】
(式中、R
b1は水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。)
【化12】
(式中、R
b1は水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。)
【請求項8】
ランダム共重合法又はリビング共重合法で共重合される、請求項7に記載のシリコーン含有共重合体を含む、レベリング剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン含有共重合体、レベリング剤、コーティング組成物、レジスト組成物、カラーフィルター及びシリコーン含有共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶ディスプレイ等に用いられるカラーフィルターは、一般に赤(R)、緑(G)、 青(B)の各画素と、その間に表示コントラスト向上等の目的でブラックマトリックス(BM)が形成された基本構成を有する。
カラーフィルターにおけるこれらのR、G、B各画素及びBMの表面は高い平滑性が要求されており、そのためにはカラーレジスト組成物を塗布する際には均一な膜厚で、かつ塗布ムラ、ハジキを生じず、色ムラとならないように塗布を行なう必要がある。
【0003】
レベリング剤は、塗料組成物、カラーレジスト組成物等のコーティング組成物を塗工して得られる塗膜を平滑化するために添加される。具体的には、レベリング剤をカラーレジスト組成物に添加することで、得られる塗膜の平滑性を向上し、赤(R)、緑(G)、青(B)の画素、及び、これら画素間に形成されたブラックマトリックス(BM)の表面が高い平滑性を示すことができ、色ムラの少ないカラーフィルターとすることができる。
【0004】
また、カラーフィルターは、赤、緑、青の各画素において、所望する色相が求められる。この様な要望がある中で、例えば、明度に優れるC.I.ピグメントレッド 254やC.I.ピグメントイエロー139等の顔料は、これらを含む塗膜の乾燥工程において昇華しやすく、またその分子間相互作用によって結晶化物や凝集体として成長し易いという性質を有する。そのため、塗膜内部から昇華した顔料分子が塗膜表面で結晶化及び/又は凝集し、異物が発生してしまうことがある。塗膜の表面に異物が発生すると光散乱が生じることにより、所望する色相を得ることが困難となってしまうことがある。
【0005】
また、塗膜表面に顔料の昇華に由来する異物が発生することで塗膜表面から内部にかけて顔料の含有比率が変化することによっても、所望する色相を得ることが困難となってしまうことがある。このように、塗膜表面に生じる顔料の昇華に起因する結晶化物や凝集物などの異物の発生は、画素の色ムラの原因となるおそれがある。
画素の色ムラを抑制するレベリング剤として、従来、フッ素原子を含むレベリング剤が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フッ素原子を含むレベリング剤は環境負荷が高く、近年の環境規制の強化や環境意識のさらなる高まりに応じた代替技術が求められている。
本発明が解決しようとする課題は、環境負荷を低減でき、なおかつ塗膜表面における顔料の昇華に起因する異物の発生の抑制効果を与えるシリコーン含有共重合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、シリコーン含有共重合体について、特定の基で表される重合性単量体(A)と、環状炭化水素骨格を含む基を有する重合性単量体(B)を少なくとも重合成分として含むことにより、環境負荷を低減でき、なおかつ塗膜表面における顔料の昇華に起因する異物の発生の抑制効果を与えるシリコーン含有共重合体が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、下記一般式(a)で表される基を有する重合性単量体(A)及び環状炭化水素骨格を含む基を有する重合性単量体(B)を、少なくとも重合成分として含む、シリコーン含有共重合体に関する。
【化1】
(前記一般式(a)中、
R
11は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキル基又は-OSi(R
14)
3で表される基(R
14はそれぞれ独立に炭素原子数1~3のアルキル基)であり、
R
12は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
13は、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
xは繰り返し数を示す数平均値であり、1~5の整数である。)
【0010】
また、本発明は、上記のシリコーン含有共重合体を含む、レベリング剤に関する。
また、本発明は、上記のシリコーン含有共重合体を含む、コーティング組成物に関する。
また、本発明は、上記のシリコーン含有共重合体と着色剤とを含有する、レジスト組成物に関する。
また、本発明は、上記のレジスト組成物の塗膜層が基板上に形成されている、カラーフィルターに関する。
【0011】
また、本発明は、下記一般式(a)で表される基を有する重合性単量体(A)及び環状炭化水素骨格を含む基を有する重合性単量体(B)を重合させる、シリコーン含有共重合体の製造方法に関する。
【化2】
(前記一般式(a)中、
R
11は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキル基又は-OSi(R
14)
3で表される基(R
14はそれぞれ独立に炭素原子数1~3のアルキル基)であり、
R
12は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
13は、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
xは繰り返し数を示す数平均値であり、1~5の整数である。)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、環境負荷を低減でき、なおかつ塗膜表面における顔料の昇華に起因する異物の発生の抑制効果を与えるシリコーン含有共重合体が提供できる。また、該シリコーン含有共重合体を使用した、レベリング剤、コーティング組成物、レジスト組成物、カラーフィルターを提供することができる。
また、本発明により、上記シリコーン含有共重合体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
本願明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの一方又は両方を意味する。
【0014】
[シリコーン含有共重合体]
本発明のシリコーン含有共重合体(以下、単に「本発明の共重合体」という場合がある)は、下記一般式(a)で表される基を有する重合性単量体(A)及び環状炭化水素骨格を含む基を有する重合性単量体(B)を少なくとも重合成分とする共重合体である。
【0015】
【化3】
(前記一般式(a)中、
R
11は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキル基又は-OSi(R
14)
3で表される基(R
14はそれぞれ独立に炭素原子数1~3のアルキル基)であり、
R
12は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
13は、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
xは繰り返し数を示す数平均値であり、1~5の整数である。)
【0016】
本発明の共重合体では、嵩高い環状炭化水素骨格を含む基を有することで、共重合体を剛直にさせている。一般式(a)で表される基が塗膜の表面(界面)に偏析し、かつ、共重合体が剛直な構造であることによって界面にリジッド(緻密)な薄膜を形成させることができる。リジッドな薄膜により、着色剤の昇華を物理的にブロックしているものと推測できる。
【0017】
なお、本発明において「重合性単量体」とは、重合性不飽和基を有する化合物という意味であり、重合性単量体(A)及び重合性単量体(B)が有する重合性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルエーテル基、アリル基、スチリル基、マレイミド基等のC=C含有基が挙げられる。これらの中でも、原料の入手容易性や重合反応性が良好であることから、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましい。
また、重合性単量体が有する重合性不飽和基の数は1つでもよく、2つ以上でもよい。
【0018】
本発明において「重合成分」とは、重合体を構成する成分という意味であり、重合体を構成しない溶媒や重合開始剤等は含まれない。
【0019】
前記一般式(a)において、R11は、好ましくはメチル基又はトリメチルシロキシ基であり、R12及びR13は、好ましくはメチル基である。
【0020】
前記一般式(a)において、xは1~5の整数とすることで、本発明の共重合体は高い表面張力低下能を発現でき、レジスト組成物やコーティング組成物とした際に、組成物の表面(界面)に偏在しやすくなることで、顔料分子の昇華による塗膜内部から表面への異物の発生を抑制することができると推測される。
尚、本発明において「xの数平均値」とは、本発明の重合体を構成する重合性単量体(A)について、重合性単量体1つ当たりのシロキサン結合の繰り返し単位の数の平均を意味する。
本発明の重合体中のxの数平均値は、本発明の重合体の数平均分子量から算出できる。
【0021】
重合性単量体(A)は、好ましくは下記一般式(a-1)で表される化合物である。
【0022】
【化4】
(前記一般式(a-1)中、
R
11、R
12、R
13及びxは、それぞれ前記一般式(a)のR
11、R
12、R
13及びxと同じであり、
R
15は水素原子又はメチル基であり、
L
1は2価の有機基である。)
【0023】
L1の2価の有機基は、好ましくは単結合、炭素原子数1~50のアルキレン基又は炭素原子数1~50のアルキレンオキシ基である。
【0024】
L1の炭素原子数1~50のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-へキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デシレン基、n-ドデシレン基、イソプロピレン基、2-メチルプロピレン基、2-メチルへキシレン基、テトラメチルエチレン基等が挙げられる。
【0025】
L1の炭素原子数1~50のアルキレン基は、好ましくは炭素原子数1~15のアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数1~5のアルキレン基であり、さらに好ましくはメチレン基、エチレン基、n-プロピレン基又はイソプロピレン基である。
【0026】
L1の炭素原子数1~50のアルキレンオキシ基は、例えば前記アルキレン基の中の1つの-CH2-が-O-に置換された基である。
L1の炭素原子数1~50のアルキレンオキシ基は、好ましくは炭素原子数1~15のアルキレンオキシ基であり、より好ましくは炭素原子数1~8のアルキレンオキシ基であり、さらに好ましくはメチレンオキシ基、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、オキシトリメチレン基、ブチレンオキシ基、オキシテトラメチレン基、ペンチレンオキシ基、ヘプチレンオキシ基又はオクチレンオキシ基である。
【0027】
L1の2価の有機基が、炭素原子数1~50のアルキレン基又は炭素原子数1~50のアルキレンオキシ基である場合、これら2価の有機基は、-CH2-の一部がカルボニル基(-C(=O)-)、フェニレン基、アミド結合又はウレタン結合に置き変わっていてもよく、さらに炭素原子に水酸基等が置換していてもよい。
【0028】
前記一般式(a-1)で表される化合物が有するシリコーン鎖の長さは、上記xが3以下であることが好ましく、上記xが1であることがより好ましい。前記一般式(a-1)で表される化合物としては、具体的には、下記一般式(a-1-1)で表される化合物が好ましい。
【0029】
【化5】
(前記一般式(a-1-1)中、
複数のRは、それぞれ独立に、炭素原子数1~3のアルキル基であり、
R
15は水素原子又はメチル基であり、
L
1は前記一般式(a-1)と同じである。)
【0030】
また、重合性単量体(A)は、下記一般式(a-2)で表される化合物であってもよい。
【0031】
【化6】
(前記一般式(a-2)中、
R
11、R
12、R
13及びxは、それぞれ前記一般式(a)のR
11、R
12、R
13及びxと同じであり、L
1は前記一般式(a-1)と同じである。
R
15は水素原子又はメチル基である。)
【0032】
前記一般式(a-2)で表される化合物が有するシリコーン鎖の長さは、上記xが3以下であることが好ましく、上記xが1であることがより好ましい。
【0033】
重合性単量体(A)は、公知の方法により製造することができ、市販品を用いてもよい。
重合性単量体(A)の具体例としては、α-(3-メタクリロイルオキシ)プロピルポリジメチルシロキサン、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン等が挙げられる。
【0034】
本発明のシリコーン含有共重合体の重合成分である、環状炭化水素骨格を含む基を有する重合性単量体(B)は、例えば共重合体を剛直にする機能を有する。また、相溶性を担保する機能を有する。
【0035】
重合性単量体(B)は、環状炭化水素骨格を含む基を有する重合性単量体であればよく、橋かけ構造が存在する環状炭化水素骨格を含む基を有する重合性単量体を含むことが好ましい。
【0036】
重合性単量体(B)は、好ましくは下記一般式(b-1)で表される化合物である。これら化合物は、本発明の共重合体をレベリング剤として使用した場合に相溶性を付与することができる。
【0037】
【化7】
(前記一般式(b-1)中、
R
b1は、水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
b2は、炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~18のアリーレン基、又は、炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~18のアリーレン基及びエーテル結合(-O-)から選択される2種以上の組み合わせからなる2価の連結基であり、
R
b3は、環状炭化水素骨格を含む基である。)
【0038】
Rb2の炭素原子数1~10のアルキレン基は直鎖でもよく、分岐でもよく、環状でもよい。
Rb2の炭素原子数6~18のアリーレン基は、単環でもよく、縮合環でもよい。Rb2の炭素原子数6~18のアリーレン基の具体例としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
Rb2のアルキレン基及びアリーレン基は、さらに置換基を有してもよく、当該置換基としては、炭素原子数1~6のアルキル基、水酸基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0039】
前記一般式(b-1)において、Rb3の環状炭化水素骨格を含む基は、橋掛け構造を有する環状炭化水素骨格を含む基と橋かけ環構造を有しない環状炭化水素骨格を含む基のいずれでもよい。環状炭化水素骨格の具体例として、シクロヘキサン環、アダマンタン環、パーヒドロインデン環、デカリン環、パーヒドロフルオレン環、パーヒドロアントラセン環、パーヒドロフェナントレン環、ジシクロペンタン環、ジシクロペンテン環、パーヒドロアセナフテン環、パーヒドロフェナレン環、ノルボルナン環、イソボルナン環、ノルボルネン環等が挙げられる。中でも、顔料の昇華に起因する塗膜表面の異物の発生を抑制できることから、シクロヘキサン環、アダマンタン環、ジシクロペンタン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環が好ましい。
【0040】
以下、本発明で重合性単量体(b-1)として好ましく用いることができるアダマンタン環と重合性不飽和基を有する重合性単量体について説明する。
【0041】
前記アダマンタン環と(メタ)アクリロイル基を有する重合性単量体としては、例えば、下記式(b-1-1)、(b-1-2)で表される化合物等が挙げられる。
【0042】
【化8】
(式中、Zは反応性官能基を表し、X及びYは2価の有機基又は単結合を表し、R
b1は水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。)
【0043】
前記反応性官能基としては、例えば、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、カルボン酸ハライド基、酸無水物基等が挙げられる。中でも、得られる共重合体を用いてレジスト組成物やコーティング組成物を製造する際に、組成物中の配合成分との相溶性が良好な共重合体が得られることから水酸基が好ましい。
【0044】
上記一般式(b-1-1)中の-X-Zで表される前記反応性官能基を有する有機基及びYの結合位置は、アダマンタン環中のどの炭素原子に結合していてもよく、また、-X-Zについては2つ以上有していてもよい。さらに、上記一般式(b-1-1)中のX及びYは2価の有機基又は単結合であるが、この2価の有機基としては、メチレン基、プロピル基、イソプロピリデン基等の炭素原子数1~8のアルキレン基が挙げられる。
【0045】
また、前記式(b-1-2)で表される化合物において、(メタ)アクリロイル基は、アダマンタン環中のどの炭素原子に結合していてもよい。
【0046】
前記一般式(b-1-1)で表される重合性単量体のより具体的な例としては、例えば、下記で表される化合物等が挙げられる。
【0047】
【0048】
また、一般式(b-1-2)で表される重合性単量体のより具体的な例としては、例えば、下記で表される化合物等が挙げられる。
【0049】
【0050】
アダマンタン環と(メタ)アクリロイル基を有する重合性単量体の中でも、得られる共重合体を用いてレジスト組成物を製造する際に、組成物中の配合成分との相溶性が良好なランダム共重合体が得られることから前記式(b-1-2)で表される化合物が好ましく、前記式(b-1-2-1)で表される化合物がより好ましい。
【0051】
以下、本発明で重合性単量体(B)として好ましく用いることができるジシクロペンタン環と重合性不飽和基を有する重合性単量体について説明する。
【0052】
前記ジシクロペンタン環と(メタ)アクリロイル基を有する重合性単量体としては、例えば、下記式(b-1-3)で表される化合物等が挙げられる。
【0053】
【化11】
(式中、R
b1は水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。)
【0054】
また、前記式(b-1-3)で表される化合物において、(メタ)アクリロイル基は、ジシクロペンタン環中のどの炭素原子に結合していてもよい。
【0055】
前記一般式(b-1-3)で表される重合性単量体のより具体的な例としては、例えば、下記で表される化合物等が挙げられる。
【0056】
【0057】
ジシクロペンタン環と(メタ)アクリロイル基を有する重合性単量体の中でも、顔料の昇華に起因する異物の発生を抑制できるレジスト組成物が得られることから、前記式(b-1-3-2)で表される化合物が好ましい。
【0058】
以下、本発明で重合性単量体(b-1)として好ましく用いることができるジシクロペンテン環と重合性不飽和基を有する重合性単量体について説明する。
【0059】
前記ジシクロペンテン環と(メタ)アクリロイル基を有する重合性単量体としては、例えば、下記式(b-1-4)で表される化合物等が挙げられる。
【0060】
【化13】
(式中、R
b1は水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。)
【0061】
また、前記式(b-1-4)で表される化合物において、(メタ)アクリロイル基は、ジシクロペンテン環中のどの炭素原子に結合していてもよい。
【0062】
前記一般式(b-1-4)で表される重合性単量体のより具体的な例としては、例えば、下記で表される化合物等が挙げられる。
【0063】
【0064】
ジシクロペンテン環と(メタ)アクリロイル基を有する重合性単量体の中でも、顔料の昇華に起因する異物の発生を抑制できるレジスト組成物が得られることから前記式(b-1-4-2)で表される化合物が好ましい。
【0065】
以下、本発明で重合性単量体(b-1)として好ましく用いることができるノルボルナン環と重合性不飽和基を有する重合性単量体について説明する。
【0066】
前記ノルボルナン環と(メタ)アクリロイル基を有する重合性単量体としては、例えば、下記式(b-1-5)で表される化合物等が挙げられる。
【0067】
【化15】
(式中、R
b1は水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。)
【0068】
また、前記式(b-1-5)で表される化合物において、(メタ)アクリロイル基は、ノルボルナン環中のどの炭素原子に結合していてもよい。
【0069】
前記一般式(b-1-5)で表される重合性単量体のより具体的な例としては、例えば、下記で表される化合物等が挙げられる。
【0070】
【0071】
ノルボルナン環と(メタ)アクリロイル基を有する重合性単量体の中でも、顔料の昇華に起因する異物の発生を抑制できるレジスト組成物が得られることから、前記式(b-1-5-2)で表される化合物が好ましい。
【0072】
以下、本発明で重合性単量体(b-1)として好ましく用いることができるノルボルネン環と重合性不飽和基を有する重合性単量体について説明する。
【0073】
前記ノルボルネン環と(メタ)アクリロイル基を有する重合性単量体としては、例えば、下記式(b-1-6)で表される化合物等が挙げられる。
【0074】
【化17】
(式中、R
b1は水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。)
【0075】
また、前記式(b-1-6)で表される化合物において、(メタ)アクリロイル基は、ノルボルネン環中のどの炭素原子に結合していてもよい。
【0076】
前記一般式(b-1-6)で表される重合性単量体のより具体的な例としては、例えば、下記で表される化合物等が挙げられる。
【0077】
【0078】
ノルボルネン環と(メタ)アクリロイル基を有する重合性単量体の中でも、顔料の昇華に起因する異物の発生を抑制できるレジスト組成物が得られることから、前記式(b-1-6-2)で表される化合物が好ましい。
【0079】
重合性単量体(B)は、公知の方法により製造することができる。
また、重合性単量体(B)は、市販品を用いてもよい。
【0080】
本発明のシリコーン含有共重合体を構成する重合性単量体(B)は1種単独でもよく、2種以上でもよい。
【0081】
重合性単量体(A)及び重合性単量体(B)を少なくとも重合成分とする共重合体であるシリコーン含有共重合体の重合形式は特に限定されず、重合性単量体(A)と重合性単量体(B)のランダム共重合体でもよく、重合性単量体(A)と重合性単量体(B)のブロック共重合体であってもよい。
【0082】
シリコーン含有共重合体における重合性単量体(A)と重合性単量体(B)の質量比は、例えば重合性単量体(A):重合性単量体(B)=10:90~90:10であり、好ましくは重合性単量体(A):重合性単量体(B)=10:90~80:20であり、より好ましくは重合性単量体(A):重合性単量体(B)=20:80~80:20であり、さらに好ましくは30:70~80:20であり、特に好ましくは重合性単量体(A):重合性単量体(B)=51:49~80:20である。
【0083】
本発明のシリコーン含有共重合体は、重合性単量体(A)と、重合性単量体(B)との共重合体であればよく、本発明の効果を損なわない範囲で、重合性単量体(A)及び重合性単量体(B)以外の重合性単量体の構成単位を含んでもよい。
本発明の共重合体は、好ましくは重合性単量体(A)と重合性単量体(B)から実質的になる共重合体であり、より好ましくは重合性単量体(A)と重合性単量体(B)のみからなる共重合体である。ここで「実質的になる」とは、本発明の共重合体における重合性単量体(A)と重合性単量体(B)の合計の含有割合が、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、又は99質量%以上である場合をいう。
【0084】
本発明のシリコーン含有共重合体は、フッ素原子を含まないと好ましい。本発明のシリコーン含有共重合体がフッ素原子を含まないことで耐溶剤性を高めることができる。また、本発明のシリコーン含有共重合体がフッ素原子フリーな樹脂であることで、環境に対する蓄積性が低くなり、環境負荷を低減することができる。
【0085】
本発明のシリコーン含有共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは3,000~80,000の範囲であり、より好ましくは4,000~50,000の範囲である。
本発明のシリコーン含有共重合体の重量平均分子量は実施例に記載の方法で測定する。
【0086】
本発明のシリコーン含有共重合体における重合性単量体(A)に由来する構造の割合は、例えば10~80質量%の範囲であり、好ましくは20~80質量%の範囲であり、さらに好ましくは30~80質量%の範囲である。
本発明のシリコーン含有共重合体における重合性単量体(A)に由来する構造の割合は、用いた原料の合計量に対する重合性単量体(A)の質量比率から算出した値である。
【0087】
本発明のシリコーン含有共重合体のおける前記一般式(a)で表されるシリコーン鎖の含有率は、好ましくは10~80質量%の範囲であり、より好ましくは20~80質量%の範囲であり、さらに好ましくは30~80質量%の範囲である。
本発明のシリコーン含有共重合体のシリコーン鎖含有率は、用いた原料の合計量に対するシリコーン鎖の質量比率から算出した値である。
【0088】
[シリコーン含有共重合体の製造方法]
本発明の共重合体の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。
本発明の共重合体は、ラジカル重合法、カチオン重合法、アニオン重合法等の重合機構に基づき、重合成分を溶液重合法、塊状重合法、エマルジョン重合法等により製造できる。例えばラジカル重合法であれば、有機溶媒中に重合成分を仕込み、汎用のラジカル重合開始剤を添加することで、本発明の共重合体を製造できる。
上記で得られる共重合体は、ランダム共重合体である。
【0089】
前記重合開始剤としては、種々のものを使用することができ、例えば、過酸化アセチル、過酸化ジアシル、過酸化クミル、過酸化t-ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化2-クロロベンゾイル、過酸化3-クロロベンゾイル、過酸化4-クロロベンゾイル、過酸化2,4-ジクロロベンゾイル、過酸化4-ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、1-フェニル-2-メチルプロピル-1-ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸t-ブチル、t-ブチルヒドロペルオキシド、過ギ酸t-ブチル、過酢酸t-ブチル、過安息香酸t-ブチル、過2-エチルヘキサン酸t-ブチル、過フェニル酢酸t-ブチル、過4-メトキシ酢酸t-ブチル等の過酸化物;2,2’-ジクロロ-2,2’-アゾビスプロパン、1,1’-アゾ(メチルエチル)ジアセテート、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)硝酸塩、2,2’-アゾビスイソブタン、2,2’-アゾビスイソブチルアミド、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルプロピオン酸メチル、2,2’-ジクロロ-2,2’-アゾビスブタン、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、2-(4-メチルフェニルアゾ)-2-メチルマロノジニトリル、4,4’-アゾビス-4-シアノ吉草酸、3,5-ジヒドロキシメチルフェニルアゾ-2-メチルマロノジニトリル、1,1’-アゾビス-1-シクロヘキサンカルボニトリル、1,1’-アゾビス-1-フェニルエタン、1,1’-アゾビスクメン、4-ニトロフェニルアゾベンジルシアノ酢酸エチル、フエニルアゾジフェニルメタン、フェニルアゾトリフェニルメタン、4-ニトロトリフェニルアゾトリフェニルメタン、1,1’-アゾビス-1,2-ジフェニルエタン等のアゾ化合物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸ジメチル、フェニルアゾトリフェニルメタン等のアゾ化合物、Mn(acac)3等の金属キレート化合物等が挙げられる。
必要に応じて、ラウリルメルカプタン、チオグリセロール、2-メルカプトエタノール、エチルチオグリコール酸、オクチルチオグリコール酸等の連鎖移動剤や、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のカップリング基を有するチオール化合物を連鎖移動剤等の添加剤として用いてもよい。
【0090】
前記有機溶剤としては、ケトン類、エステル類、アミド類、スルホキシド類、エーテル類、炭化水素類、フッ素系溶媒等が好ましく、具体的には、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、iso-ブタノール、tert-ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類、2-オキシプロピオン酸メチル、2-オキシプロピオン酸エチル、2-オキシプロピオン酸プロピル、2-オキシプロピオン酸ブチル、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-メトキシプロピオン酸ブチル等のモノカルボン酸エステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の極性溶剤、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、エチルセロソルブアセテート等のエーテル類、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール類及びそのエステル類、1,1,1-トリクロルエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等のフッ素系溶剤、更にパーフルオロオクタン、パーフルオロトリ-n-ブチルアミン等のフッ素化イナートリキッド類等が挙げられる。
これら有機溶媒の選択は、沸点、原料又は重合体との相溶性、重合性を考慮して適宜選択される。重合性単量体(A)は、特に有機溶媒との相溶性に優れるので、上記した有機溶媒にほぼ溶解できる。
これら溶剤は、1種単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0091】
本発明の共重合体は、好ましくは、反応系に重合性単量体(A)の添加を開始し、重合性単量体(A)の添加開始後に、重合性単量体(B)及び重合開始剤を反応系に添加して重合を開始し、重合性単量体(A)の添加を重合性単量体(B)及び重合開始剤よりも先に終了する。
このように本発明の重合体をこのように重合することで未反応のシリコーン鎖を限りなく少なくすることができ、それにより、塗工時に添加剤要因で懸念される塗膜欠点を抑えることができるためである。
【0092】
重合性単量体(A)には環状シロキサン構造を有する化合物の不純物を含む場合があり、反応系に添加する前に重合性単量体(A)を蒸留する、反応後の重合体を蒸留する等をして環状シロキサン構造を有する化合物を除去するとよい。蒸留は公知の方法で実施できるが、例えば薄膜蒸留により実施できる。
【0093】
本発明の重合体は、重合成分をリビングラジカル重合、リビングアニオン重合等のリビング重合をすることによっても製造できる。
【0094】
前記リビングラジカル重合は、活性重合末端が原子又は原子団により保護されたドーマント種が可逆的にラジカルを発生させてモノマーと反応することにより生長反応が進行し、第一のモノマーが消費されても生長末端が活性を失うことなく、逐次的に追加される第二モノマーと反応してブロックポリマーを得ることができる。このようなリビングラジカル重合の例としては、原子移動ラジカル重合(ATRP)、可逆的付加-開裂型ラジカル重合(RAFT)、ニトロキシドを介するラジカル重合(NMP)、有機テルルを用いるラジカル重合(TERP)等が挙げられる。これらのうち、どの方法を使用するかは特に制約はないが、制御の容易さなどからATRPが好ましい。ATRPは、有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物等を重合開始剤とし、遷移金属化合物と配位子からなる金属錯体を触媒として重合される。
【0095】
ATRPで使用できる重合開始剤の具体例としては、1-フェニルエチルクロライド、1-フェニルエチルブロマイド、クロロホルム、四塩化炭素、2-クロロプロピオニトリル、α,α’-ジクロロキシレン、α,α’-ジブロモキシレン、ヘキサキス(α-ブロモメチル)ベンゼン、炭素原子数1~6の2-ハロゲン化カルボン酸(例えば2-クロロプロピオン酸、2-ブロモプロピオン酸、2-クロロイソ酪酸、2-ブロモイソ酪酸など)の炭素原子数1~6のアルキルエステル等が挙げられる。
炭素原子数1~6の2-ハロゲン化カルボン酸の炭素原子数1~6のアルキルエステルのより具体的な例としては、例えば、2-クロロプロピオン酸メチル、2-クロロプロピオン酸エチル、2-ブロモプロピオン酸メチル、2-ブロモイソ酪酸エチル等が挙げられる。
【0096】
ATRPで使用できる遷移金属化合物は、Mn+Xnで表されるものである。
Mn+Xnで表される遷移金属化合物の遷移金属Mn+としては、Cu+、Cu2+、Fe2+、Fe3+、Ru2+、Ru3+、Cr2+、Cr3+、Mo0、Mo+、Mo2+、Mo3+、W2+、W3+、Rh3+、Rh4+、Co+、Co2+、Re2+、Re3+、Ni0、Ni+、Mn3+、Mn4+、V2+、V3+、Zn+、Zn2+、Au+、Au2+、Ag+及びAg2+からなる群から選択することができる。
Mn+Xnで表される遷移金属化合物のXは、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルコキシル基、(SO4)1/2、(PO4)1/3、(HPO4)1/2、(H2PO4)、トリフラート、ヘキサフルオロホスフェート、メタンスルホネート、アリールスルホネート(好ましくはベンゼンスルホネート又はトルエンスルホネート)、SeR11、CN及びR12COOからなる群から選択することができる。ここで、R11は、アリール基、直鎖状又は分岐状の炭素原子数1~20(好ましくは炭素原子数1~10)のアルキル基を表し、R12は、水素原子、ハロゲンで1~5回(好適にはフッ素もしくは塩素で1~3回)置換されていてもよい直鎖状又は分岐状の炭素原子数1~6のアルキル基(好ましくはメチル基)を表す。
Mn+Xnで表される遷移金属化合物のnは、金属上の形式電荷を表し、0~7の整数である。
【0097】
上記遷移金属化合物の遷移金属に配位結合可能な配位子化合物としては、遷移金属とσ結合を介して配位できる1つ以上の窒素原子、酸素原子、リン原子又は硫黄原子を含む配位子を有する化合物、遷移金属とπ結合を介して配位できる2つ以上の炭素原子を含む配位子を有する化合物、遷移金属とμ結合又はη結合を介して配位できる配位子を有する化合物が挙げられる。
【0098】
上記遷移金属錯体としては特に限定されないが、好ましいものとして、7、8、9、10、11族の遷移金属錯体が、さらに好ましいものとして、0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルの錯体が挙げられる。
【0099】
ATRPで使用できる触媒の具体例としては、中心金属が銅の場合は2,2’-ビピリジル及びその誘導体、1,10-フェナントロリン及びその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリス(2-アミノエチル)アミン等のポリアミン等の配位子との錯体が挙げられる。また2価のルテニウム錯体としては、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリブチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ(シクロオクタジエン)ルテニウム、ジクロロベンゼンルテニウム、ジクロロp-シメンルテニウム、ジクロロ(ノルボルナジエン)ルテニウム、シス-ジクロロビス(2,2’-ビピリジン)ルテニウム、ジクロロトリス(1,10-フェナントロリン)ルテニウム、カルボニルクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム等が挙げられる。さらに2価の鉄錯体としては、ビストリフェニルホスフィン錯体、トリアザシクロノナン錯体等が挙げられる。
【0100】
リビングラジカル重合においては、溶媒を使用することが好ましい。
リビングラジカル重合で使用する溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。
上記溶媒は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0101】
本発明の重合体をリビング重合でシリコーン含有リビング共重合体として製造する場合、例えば、下記に示す方法1~3のいずれかで製造することができる。
方法1:重合開始剤、遷移金属化合物、該遷移金属と配位結合可能な配位子化合物及び溶媒の存在下で、重合性単量体(A)と重合性単量体(B)とをリビングラジカル重合(好ましくは原子移動ラジカル重合)させる方法。
方法2:重合開始剤、遷移金属化合物、該遷移金属と配位結合可能な配位子化合物及び溶媒の存在下で、重合性単量体(A)をリビングラジカル重合(好ましくは原子移動ラジカル重合)させ、重合性単量体(A)の重合体ブロックを得た後、重合性単量体(B)を反応系に加えて重合性単量体(A)の重合体ブロックにさらに重合性単量体(B)をリビングラジカル重合(好ましくは原子移動ラジカル重合)させる方法。
方法3:重合開始剤、遷移金属化合物、該遷移金属と配位結合可能な配位子化合物及び溶媒の存在下で、重合性単量体(B)をリビングラジカル重合(好ましくは原子移動ラジカル重合)させ、重合性単量体(B)の重合体ブロックを得た後、重合性単量体(A)を反応系に加えて重合性単量体(B)の重合体ブロックにさらに重合性単量体(A)をリビングラジカル重合(好ましくは原子移動ラジカル重合)させる方法。
【0102】
前記リビングラジカル重合の際の重合温度は、室温から120℃の範囲が好ましい。
【0103】
本発明の重合体をリビングラジカル重合により製造する場合は、得られる重合体中に、重合で用いた遷移金属化合物に起因する金属が残留する場合がある。得られる重合体中に残留した金属は、重合終了後に活性アルミナ等を用いて除去するとよい。
【0104】
[コーティング組成物]
本発明の重合体は、コーティング組成物のレベリング剤として好適に用いることができ、本発明のコーティング組成物は本発明の重合体を含む。本発明の重合体はフッ素原子を含まないフッ素原子フリーなレベリング剤とすることができるので、環境に対する蓄積性が低い環境負荷の小さいレベリング剤である。
【0105】
本発明のコーティング組成物が含む本発明の共重合体の含有量は、ベース樹脂の種類、塗工方法、目的とする膜厚等によって異なるが、コーティング組成物の固形分(例えばベース樹脂)100質量部に対して0.0001~10質量部が好ましく、0.001~5質量部がより好ましく、0.01~2質量部がさらに好ましい。本発明の共重合体の含有量が当該範囲であれば、十分に表面張力を低下させることができ、目的とするレベリング性が得られ、塗工時の泡立ち等不具合の発生を抑制することができる。
【0106】
本発明のコーティング組成物の用途は特に限定されず、レベリング性が求められる用途であればどのような用途にも使用できる。本発明のコーティング組成物は、例えば、各種塗料組成物や感光性樹脂組成物として使用することができる。
【0107】
本発明のコーティング組成物を塗料用組成物とする場合、当該塗料用組成物としては、例えば、石油樹脂塗料、セラック塗料、ロジン系塗料、セルロース系塗料、ゴム系塗料、漆塗料、カシュー樹脂塗料、油性ビヒクル塗料等の天然樹脂を用いた塗料;フェノール樹脂塗料、アルキッド樹脂塗料、不飽和ポリエステル樹脂塗料、アミノ樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ビニル樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、シリコーン樹脂塗料等の合成樹脂を用いた塗料などが挙げられる。
上記塗料用組成物に本発明の重合体を添加することで、得らえれる塗膜に平滑性を付与することができる。
【0108】
塗料用組成物中には必要に応じて、顔料、染料、カーボン等の着色剤;シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム等の無機粉末;高級脂肪酸、ポリアクリル樹脂、ポリエチレン等の有機微粉末;耐光性向上剤、耐候性向上剤、耐熱性向上剤、酸化防止剤、増粘剤、沈降防止剤等の各種添加剤を適宜添加することが可能である。
【0109】
本発明のコーティング組成物のコーティング方法については、公知公用のコーティング方法であればいずれの方法も使用でき、例えば、スリットコーター、スリット&スピンコーター、スピンコーター、ロールコーター、静電塗装、バーコーター、グラビアコーター、ダイコーター、ナイフコーター、インクジェット、デイッピング塗布、スプレー塗布、シャワーコーティング、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、反転塗工等の方法が挙げられる。
【0110】
感光性樹脂組成物は、可視光、紫外光等の光を照射することにより樹脂の溶解性、粘度、透明度、屈折率、伝導度、イオン透過性等の物性が変化するものである。
感光性樹脂組成物の中でも、レジスト組成物(フォトレジスト組成物、カラーフィルター用のカラーレジスト組成物等)は、高度なレベリング性が要求される。レジスト組成物は、通常、スピンコーティングによって、シリコンウェハー上又は各種金属を蒸着したガラス基板上に厚さが1~2μm程度になるように塗布される。この際、塗布膜厚が振れたり、塗布ムラが発生したりすると、パターンの直線性や再現性が低下し、目的とする精度を有するレジストパターンが得られないという問題が生じる。また、これら問題以外にも滴下跡、全体ムラ、中心部に比較しエッジ部が膜厚化するビード現象等の様々なレベリングに関与する問題もある。
本発明のコーティング組成物は、本発明の重合体が高度なレベリング性を発揮して均一な塗膜(硬化物)を形成することができるため、レジスト組成物として用いた場合に上記のような問題を解決することができる。
【0111】
本発明のコーティング組成物をフォトレジスト組成物とする場合、当該フォトレジスト組成物は本発明の重合体の他にアルカリ可溶性樹脂、放射線感応性物質(感光性物質)、溶媒等を含む。
【0112】
フォトレジスト組成物が含むアルカリ可溶性樹脂とは、レジストのパターン化時に使用する現像液であるアルカリ性溶液に対して可溶な樹脂である。
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、フロログリシノール、ハイドロキノン等の芳香族ヒドロキシ化合物誘導体とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド化合物とを縮合して得られるノボラック樹脂;o-ビニルフェノール、m-ビニルフェノール、p-ビニルフェノール、α-メチルビニルフェノール等のビニルフェノール化合物誘導体の重合体又は共重合体;アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸系重合体又は共重合体;ポリビニルアルコール;これら各種樹脂の水酸基の一部を介してキノンジアジド基、ナフトキノンアジド基、芳香族アジド基、芳香族シンナモイル基等の放射性線感応性基を導入した変性樹脂;分子中にカルボン酸、スルホン酸等の酸性基を含むウレタン樹脂等が挙げられる。
これらアルカリ可溶性樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0113】
フォトレジスト組成物が含む放射線感応性物質とは、紫外線、遠紫外線、エキシマレーザー光、X線、電子線、イオン線、分子線、γ線等のエネルギー線を照射することにより、アルカリ可溶性樹脂の現像液に対する溶解性を変化させる物質である。
放射線感応性物質としては、例えば、キノンジアジド系化合物、ジアゾ系化合物、アジド系化合物、オニウム塩化合物、ハロゲン化有機化合物、ハロゲン化有機化合物と有機金属化合物との混合物、有機酸エステル化合物、有機酸アミド化合物、有機酸イミド化合物、ポリ(オレフィンスルホン)化合物等が挙げられる
【0114】
前記キノンジアジド系化合物としては、例えば、1,2-ベンゾキノンアジド-4-スルホン酸エステル、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステル、2,1-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸エステル、2,1-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステル、その他1,2-ベンゾキノンアジド-4-スルホン酸クロライド、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸クロライド、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロライド、2,1-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸クロライド、2,1-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸クロライド等のキノンジアジド誘導体のスルホン酸クロライド等が挙げられる。
【0115】
前記ジアゾ系化合物としては、例えば、p-ジアゾジフェニルアミンとホルムアルデヒド又はアセトアルデヒドとの縮合物の塩、ヘキサフルオロ燐酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、過塩素酸塩又は過ヨウ素酸塩と上記縮合物との反応性生物であるジアゾ樹脂無機塩、USP3,300,309号明細書に記載されているような、上記縮合物とスルホン酸類との反応生成物であるジアゾ樹脂有機塩等が挙げられる。
【0116】
前記アジド系化合物としては、例えば、アジドカルコン酸、ジアジドベンザルメチルシクロヘキサノン類、アジドシンナミリデンアセトフェノン類、芳香族アジド化合物、芳香族ジアジド化合物等が挙げられる。
【0117】
前記ハロゲン化有機化合物としては、例えば、ハロゲン含有オキサジアゾール系化合物、ハロゲン含有トリアジン系化合物、ハロゲン含有アセトフェノン系化合物、ハロゲン含有ベンゾフェノン系化合物、ハロゲン含有スルホキサイド系化合物、ハロゲン含有スルホン系化合物、ハロゲン含有チアゾール系化合物、ハロゲン含有オキサゾール系化合物、ハロゲン含有トリゾール系化合物、ハロゲン含有2-ピロン系化合物、ハロゲン含有脂肪族炭化水素系化合物、ハロゲン含有芳香族炭化水素系化合物、ハロゲン含有ヘテロ環状化合物、スルフェニルハライド系化合物等が挙げられる。
上記の他、トリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(2,3-ジブロモ-3-クロロプロピル)ホスフェート、クロロテトラブロモメタン、ヘキサクロロベンゼン、ヘキサブロモベンゼン、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモビフェニル、トリブロモフェニルアリルエーテル、テトラクロロビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、ビス(ブロモエチルエーテル)テトラブロモビスフェノールA、ビス(クロロエチルエーテル)テトラクロロビスフェノールA、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン等のハロゲン系難燃剤として使用されている化合物、ジクロロフェニルトリクロロエタン等の有機クロロ系農薬として使用されている化合物等もハロゲン化有機化合物として例示される。
【0118】
前記有機酸エステルとしては、例えば、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。また、前記有機酸アミドとしては、カルボン酸アミド、スルホン酸アミド等が挙げられる。さらに、有機酸イミドとしては、カルボン酸イミド、スルホン酸イミド等が挙げられる。
放射線感応性物質は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0119】
フォトレジスト組成物において、放射線感応性物質の含有量は、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して10~200質量部の範囲が好ましく、50~150質量部の範囲がより好ましい。
【0120】
フォトレジスト組成物用の溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、シクロヘプタノン、2-ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、ブチロラクトン等のケトン類;メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、iso-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、iso-ブチルアルコ-ル、tert-ブチルアルコール、ペンタノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール等のアルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等のアルコールエーテル類;蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類、2-オキシプロピオン酸メチル、2-オキシプロピオン酸エチル、2-オキシプロピオン酸プロピル、2-オキシプロピオン酸ブチル、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-メトキシプロピオン酸ブチル等のモノカルボン酸エステル類;セロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のセロソルブエステル類;プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール類;ジエチレルグリコールモノメチルエーテル、ジエチレルグリコールモノエチルエーテル、ジエチレルグリコールジメチルエーテル、ジエチレルグリコールジエチルエーテル、ジエチレルグリコールメチルエチルエーテル等のジエチレングリコール類;トリクロロエチレン、フロン溶剤、HCFC、HFC等のハロゲン化炭化水素類;パーフロロオクタンの様な完全フッ素化溶剤類、トルエン、キシレン等の芳香族類;ジメチルアセチアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の極性溶剤が挙げられる。
これらの溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0121】
本発明のコーティング組成物をカラーレジスト組成物とする場合、当該カラーレジスト組成物は本発明の重合体の他にアルカリ可溶性樹脂、重合性化合物、着色剤等を含む。
【0122】
カラーレジストが含むアルカリ可溶性樹脂としては、上述のフォトレジスト組成物が含むアルカリ可溶性樹脂と同じものを用いることができる。
【0123】
カラーレジスト組成物が含む重合性化合物とは、例えば紫外線等の活性エネルギー線照射により重合又は架橋反応可能な光重合性官能基を有する化合物である。
上記の重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸、モノヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、不飽和カルボン酸と多価カルボン酸及び前述の脂肪族ポリヒドロキシ化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物等の多価ヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステル、ポリイソシアネート化合物と(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物とを反応させたウレタン骨格を有する重合性化合物、酸基を有する重合性化合物等が挙げられる。
重合性化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0124】
前記脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
また、これらアクリレートの(メタ)アクリル酸の部分を、イタコン酸に代えたイタコン酸エステル、クロトン酸に代えたクロトン酸エステル、或いは、マレイン酸に代えたマレイン酸エステル等も挙げられる。
【0125】
前記芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、例えば、ハイドロキノンジ(メタ)アクリレート、レゾルシンジ(メタ)アクリレート、ピロガロールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
不飽和カルボン酸、多価カルボン酸及び多価ヒドロキシ化合物のエステル化反応により得られるエステルは、単一物であっても、混合物であってもよい。このようなエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、フタル酸及びエチレングリコールから得られるエステル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸及びジエチレングリコールから得られるエステル、(メタ)アクリル酸、テレフタル酸及びペンタエリスリトールから得られるエステル、(メタ)アクリル酸、アジピン酸、ブタンジオール及びグリセリンから得られるエステル等が挙げられる。
【0126】
前記ポリイソシアネート化合物と(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物とを反応させたウレタン骨格を有する重合性化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートと、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ〔1,1,1-トリ(メタ)アクリロイルオキシメチル〕プロパン等の(メタ)アクリロイル基を有するヒドロキシ化合物との反応物が挙げられる。
【0127】
前記酸基を有する重合性化合物としては、例えば、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルであり、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応の水酸基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせた多官能重合性化合物が好ましい。当該多官能重合性化合物の調製に用いる脂肪族ポリヒドロキシ化合物としてはペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールが好ましい。
前記多官能重合性化合物の酸価は、現像性、硬化性等が良好となることから、0.1~40の範囲が好ましく、5~30の範囲がより好ましい。酸基を有する多官能重合性化合物を2種以上併用する場合、及び酸基を有する多官能重合性化合物と酸基を有しない多官能重合性化合物を併用する場合には、重合性化合物の混合物の酸価が上記の範囲内になるようにすることが好ましい。
【0128】
前記酸基を有する重合性化合物の具体例としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートのコハク酸エステルを主成分とする混合物が挙げられ、当該混合物はアロニックスTO-1382(東亞合成株式会社製)として市販されている。
【0129】
上記以外の重合性化合物として、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド;フタル酸ジアリル等のアリルエステル;ジビニルフタレート等のビニル基を有する化合物などが挙げられる。
【0130】
カラーレジスト組成物において、重合性化合物の含有量は、カラーレジスト組成物全固形分中の5~80質量%の範囲であることが好ましく、10~70質量%の範囲であることがより好ましく、20~50質量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0131】
カラーレジスト組成物の着色剤としては、着色が可能なものであれば特に限定されず、例えば顔料でもよく、染料でもよい。
顔料は有機顔料、無機顔料のいずれであっても用いることができる。前記有機顔料としては、赤色顔料、緑色顔料、青色顔料、黄色顔料、紫色顔料、オレンジ顔料、ブラウン顔料等の各色相の顔料を使用することができる。また、有機顔料の化学構造としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンツイミダゾロン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、インダンスレン系、ペリレン系等が挙げられる。また、前記無機顔料としては、例えば、硫酸バリウム、硫酸鉛、酸化チタン、黄色鉛、ベンガラ、酸化クロム等が挙げられる。
尚、下記の「C.I.」は、カラーインデックスを意味する。
【0132】
前記赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、37、38、41、47、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53、53:1、53:2、53:3、57、57:1、57:2、58:4、60、63、63:1、63:2、64、64:1、68、69、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、88、90:1、101、101:1、104、108、108:1、109、112、113、114、122、123、144、146、147、149、151、166、168、169、170、172、173、174、175、176、177、178、179、181、184、185、187、188、190、193、194、200、202、206、207、208、209、210、214、216、220、221、224、230、231、232、233、235、236、237、238、239、242、243、245、247、249、250、251、253、254、255、256、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276等が挙げられる。これらの中でも、C.I.ピグメントレッド48:1、122、168、177、202、206、207、209、224、242又は254が好ましく、C.I.ピグメントレッド177、209、224又は254がより好ましい。
【0133】
前記緑色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン1、2、4、7、8、10、13、14、15、17、18、19、26、36、45、48、50、51、54、55、58等が挙げられる。これらの中でも、C.I.ピグメントグリーン7、36又は58が好ましい。
【0134】
前記青色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、25、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78、79等が挙げられる。これらの中でも、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、又は15:6が好ましく、C.I.ピグメントブルー15:6がより好ましい。
【0135】
前記黄色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75,81、83、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、117、119、120、126、127、127:1、128、129、133、134、136、138、139、142、147、148、150、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207、208等が挙げられる。これらの中でも、C.I.ピグメントイエロー83、117、129、138、139、150、154、155、180又は185が好ましく、C.I.ピグメントイエロー83、138、139、150又は180がより好ましい。
【0136】
前記紫色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、47、49、50等が挙げられる。これらの中でも、C.I.ピグメントバイオレット19又は23が好ましく、C.I.ピグメントバイオレット23がより好ましい。
【0137】
前記オレンジ顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、13、16、17、19、20、21、22、23、24、34、36、38、39、43、46、48、49、61、62、64、65、67、68、69、70、71、72、73、74、75、77、78、79等が挙げられる。これらの中でも、C.I.ピグメントオレンジ38又は71が好ましい。
【0138】
液晶表示装置及び有機EL表示装置に用いるカラーフィルターの3原色の各画素は、赤(R)、緑(G)、青(B)であるため、前記赤色顔料、緑色顔料及び青色顔料を主成分とし、色再現性を向上する目的で、黄色、紫色、オレンジ等の色の有機顔料を色相調整として用いてもよい。
【0139】
前記有機顔料の平均粒径は、カラー液晶表示装置及び有機EL表示装置の輝度を高めるため、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.3μm以下がさらに好ましい。これらの平均粒径となるよう、有機顔料を分散処理して使用することが好ましい。
前記有機顔料の平均一次粒径は、100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、40nm以下がさらに好ましく、10~30nmの範囲が特に好ましい。
尚、有機顔料の平均粒径は、動的光散乱式の粒度分布計で測定したものであり、例えば、日機装株式会社製のナノトラック(Nanotrac)粒度分布測定装置「UPA-EX150」、「UPA-EX250」等で測定することができる。
【0140】
カラーレジスト組成物をブラックマトリックス(BM)の形成に用いる場合の着色剤としては、黒色であれば特に限定されるものではないが、カーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、ボーンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、黒鉛、鉄黒、チタンブラック等が挙げられる。これらの中でも、遮光率、画像特性の観点からカーボンブラック、チタンブラックが好ましい。
また、2種以上の有機顔料を混合し、混色により黒色とした組み合わせでも構わない。
【0141】
前記カーボンブラックの市販品としては、例えば、三菱化学株式会社製のMA7、MA8、MA11、MA100、MA100R、MA220、MA230、MA600、#5、#10、#20、#25、#30、#32、#33、#40、#44、#45、#47、#50、#52、#55、#650、#750、#850、#950、#960、#970、#980、#990、#1000、#2200、#2300、#2350、#2400、#2600、#3050、#3150、#3250、#3600、#3750、#3950、#4000、#4010、OIL7B、OIL9B、OIL11B、OIL30B、OIL31B等が挙げられ、エボニックデグサジャパン株式会社製のPrintex3、Printex3OP、Printex30、Printex30OP、Printex40、Printex45、Printex55、Printex60、Printex75、Printex80、Printex85、Printex90、Printex A、Print ex L、Printex G、Printex P、Printex U、Printex V、PrintexG、SpecialBlack550、SpecialBlack 350、SpecialBlack250、SpecialBlack100、SpecialBlack6、SpecialBlack5、SpecialBlack4、Color Black FW1、Colo r Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW18、Color Black FW200、Color Black S160、Color Black S170等が挙げられ、キャボットジャパン株式会社製のMonarch120、Monarch280、Monarch460、Monarch800、Monarch880、Monarch900、Monarch1000、Monarch1100、Monarch1300、Monarch1400、Monarch4630、REGAL99、REGAL99R、REGAL415、REGAL415R、REGAL250、REGAL250R、REGAL330、REGAL400R、REGAL55R0、REGAL660R、BLACK PEARLS480、PEARLS130、VULCAN XC72R、ELFTEX-8等が挙げられ、コロンビヤンカーボン社製のRAVEN11、RAVEN14、RAVEN15、RAVEN16、RAVEN22RAVEN30、RAVEN35、RAVEN40、RAVEN410、RAVEN420、RAVEN450、RAVEN500、RAVEN780、RAVEN850、RAVEN890H、RAVEN1000、RAVEN1020、RAVEN1040、RAVEN1060U、RAVEN1080U、RAVEN1170、RAVEN1190U、RAVEN1250、RAVEN1500、RAVEN2000、RAVEN2500U、RAVEN3500、RAVEN5000、RAVEN5250、RAVEN5750、RAVEN7000等が挙げられる。
【0142】
上記のカーボンブラックの中でも、カラーフィルターのブラックマトリックスに要求される高い光学濃度及び高い表面抵抗率を有するものとして、樹脂で被覆されたカーボンブラックが好ましい。
【0143】
前記チタンブラックの市販品としては、例えば、三菱マテリアル株式会社製のチタンブラック10S、12S、13R、13M、13M-C等が挙げられる。
【0144】
ブラックマトリックス(BM)の形成に用いる場合の着色剤として、2種以上の有機顔料を混合し、混色により黒色としてもよく、赤色、緑色及び青色の三色の顔料を混合した黒色顔料が挙げられる。
黒色顔料を調製するために混合使用可能な色材としては、ビクトリアピュアブルー(C.I.42595)、オーラミンO(C.I.41000)、カチロンブリリアントフラビン(ベーシック13)、ローダミン6GCP(C.I.45160)、ローダミンB(C.I.45170)、サフラニンOK70:100(C.I.50240)、エリオグラウシンX(C.I.42080)、No.120/リオノールイエロー(C.I.21090)、リオノールイエローGRO(C.I.21090)、シムラーファーストイエロー8GF(C.I.21105)、ベンジジンイエロー4T-564D(C.I.21095)、シムラーファーストレッド4015(C.I.12355)、リオノールレッド7B4401(C.I.15850)、ファーストゲンブルーTGR-L(C.I.74160)、リオノールブルーSM(C.I.26150)、リオノールブルーES(C.I.ピグメントブルー15:6)、リオノーゲンレッドGD(C.I.ピグメントレッド168)、リオノールグリーン2YS(C.I.ピグメントグリーン36)等が挙げられる。
【0145】
黒色顔料を調製するために混合使用可能なその他の色材としては、例えば、C.I.黄色顔料20、24、86、93、109、110、117、125、137、138、147、148、153、154、166、C.I.オレンジ顔料36、43、51、55、59、61、C.I.赤色顔料9、97、122、123、149、168、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、C.I.バイオレット顔料19、23、29、30、37、40、50、C.I.青色顔料15、15:1、15:4、22、60、64、C.I.緑色顔料7、C.I.ブラウン顔料23、25、26等が挙げられる。
【0146】
黒色顔料としてカーボンブラックを使用する場合、カーボンブラックの平均一次粒径は0.01~0.08μmの範囲が好ましく、現像性が良好なことから0.02~0.05μmの範囲がより好ましい。
【0147】
カーボンブラックは、粒子形状が有機顔料等と異なり、1次粒子が互いに融着したストラクチャーと呼ばれる状態で存在し、また後処理により粒子表面に微細な細孔を形成させる場合がある。したがって、カーボンブラックの粒子形状を表すため、一般的には、前記有機顔料と同じ方法で求められる1次粒子の平均粒径の他に、DBP吸収量(JIS K6221)とBET法による比表面積(JIS K6217)を測定しストラクチャーや細孔量の指標とすることが好ましい。
カーボンブラックのジブチルフタル酸(以下、「DBP」と略記する。)吸収量は、40~100cm3/100gの範囲が好ましく、分散性・現像性が良好なことから50~80cm3/100gの範囲がより好ましい。カーボンブラックのBET法による比表面積は50~120m2/gの範囲が好ましく、分散安定性が良好なことから60~95m2/gの範囲がより好ましい。
【0148】
カラーレジスト組成物に着色剤としての染料としては、例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、フタロシアニン系染料、キノンイミン系染料、キノリン系染料、ニトロ系染料、カルボニル系染料、メチン系染料等が挙げられる。
【0149】
前記アゾ系染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー11、C.I.アシッドオレンジ7、C.I.アシッドレッド37、C.I.アシッドレッド180、C.I.アシッドブルー29、C.I.ダイレクトレッド28、C.I.ダイレクトレッド83、C.I.ダイレクトイエロー12、C.I.ダイレクトオレンジ26、C.I.ダイレクトグリーン28、C.I.ダイレクトグリーン59、C.I.リアクティブイエロー2、C.I.リアクティブレッド17、C.I.リアクティブレッド120、C.I.リアクティブブラック5、C.I.ディスパースオレンジ5、C.I.ディスパースレッド58、C.I.ディスパースブルー165、C.I.ベーシックブルー41、C.I.ベーシックレッド18、C.I.モルダントレッド7、C.I.モルダントイエロー5、C.I.モルダントブラック7等が挙げられる。
【0150】
前記アントラキノン系染料としては、例えば、C.I.バットブルー4、C.I.アシッドブルー40、C.I.アシッドグリーン25、C.I.リアクティブブルー19、C.I.リアクティブブルー49、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー56、C.I.ディスパースブルー60等が挙げられる。
【0151】
前記フタロシアニン系染料としては、例えば、C.I.パッドブルー5等が挙げられ、前記キノンイミン系染料としては、例えば、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー9等が挙げられ、前記キノリン系染料としては、例えば、C.I.ソルベントイエロー33、C.I.アシッドイエロー3、C.I.ディスパースイエロー64等が挙げられ、前記ニトロ系染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー1、C.I.アシッドオレンジ3、C.I.ディスパースイエロー42等が挙げられる。
【0152】
カラーレジスト組成物の着色剤は、得られる塗膜の耐光性、耐候性及び堅牢性が優れるという点において、顔料を使用することが好ましいが、色相の調整を行うため、必要に応じて顔料に染料を併用してもよい。
【0153】
カラーレジスト組成物において、着色剤の含有量は、カラーレジスト組成物全固形分中の1質量%以上であることが好ましく、5~80質量%の範囲であることがより好ましく、5~70質量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0154】
カラーレジスト組成物をカラーフィルターの赤(R)、緑(G)、青(B)の各画素の形成に用いる場合、カラーレジスト組成物中の着色剤の含有量は、カラーレジスト組成物全固形分中の5~60質量%の範囲であることが好ましく、10~50質量%の範囲であることがより好ましい。
【0155】
カラーレジスト組成物をカラーフィルターのブラックマトリックスの形成に用いる場合、カラーレジスト組成物中の着色剤の含有量は、カラーレジスト組成物全固形分中の20~80質量%の範囲であることが好ましく、30~70質量%の範囲であることがより好ましい。
【0156】
カラーレジスト組成物において、着色剤が顔料の場合は、分散剤を用いて顔料を有機溶剤中で分散させて調製した顔料分散液として用いると好ましい。
前記分散剤としては、界面活性剤;顔料の中間体もしくは誘導体;染料の中間体もしくは誘導体;ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂型分散剤等が挙げられる。これらの中でも、窒素原子を有するグラフト共重合体、窒素原子を有するアクリル系ブロック共重合体、ウレタン樹脂分散剤等が好ましい。これらの分散剤は、窒素原子を有しているため、窒素原子が顔料表面に対して親和性をもち、窒素原子以外の部分が媒質に対する親和性を高めることにより、分散安定性が向上する。
これら分散剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0157】
前記分散剤の市販品としては、BASF製の「エフカ」シリーズ(「「エフカ46」等);ビックケミー・ジャパン株式会社製の「Disperbyk」シリーズ、「BYK」シリーズ(「BYK-160」、「BYK-161」、「BYK-2001」等);日本ルーブリゾール株式会社製の「ソルスパース」シリーズ;信越化学工業株式会社製の「KP」シリーズ、共栄社化学株式会社製の「ポリフロー」シリーズ;楠本化成株式会社製の「ディスパロン」シリーズ;味の素ファインテクノ株式会社製の「アジスパー」シリーズ(「アジスパーPB-814」等)などが挙げられる。
【0158】
前記顔料分散液の調製の際に用いられる有機溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤;エトキシプロピオネート等のプロピオネート系溶剤;トルエン、キシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤;ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、γ-ブチロラクタム、N-メチル-2-ピロリドン等の窒素化合物系溶剤;γ-ブチロラクトン等のラクトン系溶剤;カルバミン酸エステル等が挙げられる。
これらの溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0159】
前記顔料分散液の調製方法としては、着色剤の混練分散工程及び微分散工程を経る方法、微分散工程のみで行う方法等が挙げられる。前記混練分散工程では、着色剤、アルカリ可溶性樹脂の一部、及び必要に応じて前記分散剤を混合し混練する。混練機を用いて強い剪断力を加えながら分散することにより着色剤を分散することができる。
混練に用いる機械としては、二本ロール、三本ロール、ボールミル、トロンミル、ディスパー、ニーダー、コニーダー、ホモジナイザー、ブレンダー、単軸もしくは二軸の押出機等が挙げられる。
着色剤は、上記の混練を行う前に、ソルトミリング法等によって粒子サイズを微細化しておくことが好ましい。
【0160】
前記微分散工程では、前記混練分散工程で得られた着色剤を含む組成物に溶剤を加えたもの、又は、着色剤、アルカリ可溶性樹脂、溶剤及び必要に応じて前記分散剤を混合したものを、ガラス、ジルコニアやセラミックの微粒の分散用メディアと共に分散機を用いて混合分散することにより、着色剤の粒子を一次粒子に近い微小な状態にまで分散することができる。
【0161】
カラーフィルターの透過率、コントラスト等を向上する観点から、着色剤の一次粒子の平均粒径は、10~100nmであることが好ましく、10~60nmであることがより好ましい。 尚、着色剤の平均粒径は、動的光散乱式の粒度分布計で測定したものであり、例えば、日機装株式会社製のナノトラック(Nanotrac)粒度分布測定装置「UPA-EX150」、「UPA-EX250」等で測定することができる。
【0162】
以上、コーティング組成物として、塗料用組成物、フォトレジスト組成物、カラーレジスト組成物を例示したがこれらに限定されない。
【0163】
本発明のコーティング組成物の用途の具体例としては、液晶ディスプレイ(以下、「LCD」と略記する。)、プラズマディスプレイ(以下、「PDP」と略記する。)、有機ELディスプレイ(以下、「OLED」と略記する。)、量子ドットディスプレイ(以下、「QDD」略記する。)等の各種ディスプレイ画面用コート材であるアンチグレア(AG:防眩)ハードコート材、反射防止(LR)コート材、低屈折率層コート材、高屈折率層コート材、クリアハードコート材、重合性液晶コート材;LCD等のカラーフィルター(以下、「CF」と略記する。)のRGB等の各画素を形成するためのカラーレジスト、インクジェットインク、印刷インク又は塗料;LCD等のCFのブラックマトリックス、ブラックカラムスペーサー、ブラックフォトスペーサーを形成するためのブラックレジスト、インクジェットインク、印刷インク又は塗料;LCD等のCFに使用されるCF表面を保護する透明保護膜用塗料;LCDの液晶材料、カラムスペーサー、フォトスペーサー用樹脂組成物;LCD、PDP、OLED、QDD等の画素隔壁用樹脂組成物、電極形成用ポジ型フォトレジスト、保護膜、絶縁膜、プラスチック筐体、プラスチック筐体用塗料、ベゼル(額縁)インク;LCDのバックライト部材であるプリズムシート、光拡散フィルム;LCDの液晶TFTアレイの有機絶縁膜用塗料;LCDの内部偏光板表面保護コート材;PDPの蛍光体;OLEDの有機EL材料、封止材(保護膜、ガスバリア);QDDの量子ドットインク、封止材、保護膜;マイクロ(ミニ)LEDディスプレイの高屈折率レンズ、低屈折率封止、LED画素;半導体製造に用いられるポジ型フォトレジスト、化学増幅型フォトレジスト、反射防止膜、多層材料(SOC、SOG)、下層膜、バッファーコート、現像液、リンス液、パターン倒れ防止剤、ポリマー残渣除去液、洗浄剤等の薬液、ナノインプリント離型剤;半導体後工程又はプリント配線板用の樹脂組成物(エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、液晶ポリマー、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスアリルナジイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等の樹脂組成物)、銅張積層板、樹脂付き銅箔、ビルドアップフィルム、パッシベーション膜、層間絶縁膜、フレキシブル銅張積層板、ドライフィルムレジスト;イメージセンサー用カラーレジスト;はんだフラックス用撥液剤;積層セラミックコンデンサー用の分散剤、塗料、グリーンシート;リチウムイオン電池用の正極材、負極材、セパレーター、電解液;自動車用の外装用塗料、ゴム、エラストマー、ガラス、蒸着材アンカーコート、ヘッドランプレンズ、固体潤滑塗料、放熱基板、内装用塗料、補修用塗料;住宅設備用の壁紙、床材、キッチン部材、バスルーム・トイレ部材;印刷物用のインクジェットインク、オフセット印刷用インク、グラビア印刷用インク、スクリーン印刷用インク、印刷版製造工程用フォトレジスト、平版印刷版(PS版)用感光材料、パッケージ接着剤、ボールペンインク;プラスチックフィルム易接着用等のプライマー;繊維用撥水剤;グリース用の非拡散剤;各種製品又は部品の表面を洗浄するための洗浄液;CD、DVD、ブルーレイディスク等の光学記録媒体用ハードコート材;スマートフォン又は携帯電話用の筐体又は画面用の塗料又はハードコート材;インサートモールド(IMD、IMF)用転写フィルム用ハードコート材;離型フィルム;家電の筐体等の各種プラスチック成形品用塗料又はコート材;化粧板等の各種建材用印刷インキ又は塗料;住宅の窓ガラス用コート材;家具等の木工用塗料;人工・合成皮革用コート材;コピー機、プリンター等のOA機器用ゴムローラー用コート材;コピー機、スキャナー等のOA機器の読み取り部のガラス用コート材;カメラ、ビデオカメラ、メガネ、コンタクトレンズ等の光学レンズ又はそのコート材;腕時計等の時計の風防、ガラス用コート材;自動車、鉄道車輌等の各種車輌のウインドウ用コート材;太陽電池用カバーガラス又はフィルムの反射防止膜用塗料;FRP浴槽用塗料又はコート材;金属製建材用又は家電製品用PCM;フォトファブリケーション工程等の単層、あるいは多層コーティング組成物等が挙げられる。
【0164】
本発明の共重合体は、優れた表面張力低下能を有することから、単にレベリング性だけでなく、濡れ性、浸透性、洗浄性、撥水性、撥油性、防汚性、潤滑性、ブロッキング防止性、離型性の各機能も期待できる。また、本発明の重合体は、微粒子を含有する塗料又はコーティング剤に配合すると、微粒子の分散性を向上させ、単にレベリング性だけでなく、微粒子の分散剤としての機能も期待できる。また、本発明の重合体は、上記コーティング組成物の他に粘着テープ等に用いる粘着剤組成物に添加することで、単にレベリング性だけでなく、剥離力の低減、剥離力変動の抑制、剥離帯電の抑制の各機能も期待できる。
【実施例】
【0165】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。
尚、本発明は下記実施例に限定されない。
【0166】
下記実施例と比較例で得られたシリコーン含有共重合体のGPCの測定条件は下記の通りである。
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC-8220 GPC」
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HHR-H」(6.0mmI.D.×4cm)
+東ソー株式会社製「TSK-GEL GMHHR-N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー株式会社製「TSK-GEL GMHHR-N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー株式会社製「TSK-GEL GMHHR-N」(7.8mmI.D.×30cm)
+東ソー株式会社製「TSK-GEL GMHHR-N」(7.8mmI.D.×30cm)
検出器:蒸発型光散乱検出器(オルテックジャパン株式会社製「ELSD2000」)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC-8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン(THF)
流速 1.0ml/分
試料:固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(5μl)。
標準試料:前記「GPC-8020モデルIIデータ解析バージョン4.30」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0167】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
東ソー株式会社製「F-288」
東ソー株式会社製「F-550」
【0168】
実施例1:シリコーン含有共重合体(1)の合成
市販品であるポリシロキサン結合を有するモノメタクリレート化合物(3-メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン)67.0g及び市販品である1-アダマンチルメタクリレート33.0gを、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)70.0gに溶解した混合液A1と、重合開始剤としてt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート5.0g及び溶媒としてPGMEA42.5gを混合した混合液B1とをそれぞれ調製した。
【0169】
窒素置換したフラスコに、溶媒としてPGMEA100.0gを仕込み、窒素気流下にて撹拌しながら95℃に昇温した。混合液A1及びB1を95℃で120分かけて滴下した。滴下終了後95℃で5時間撹拌し、次いで110℃で1時間撹拌した。反応終了後、PGMEAを187.5g加え、シリコーン含有共重合体(1)を20質量%含むPGMEA溶液を得た。
【0170】
得られたシリコーン含有共重合体(1)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)は9,300であった。また、原料仕込み比から、シリコーン含有共重合体(1)中の-Si[OSi(CH3)3]3で表される官能基の含有量は50質量%であった。
【0171】
実施例2:シリコーン含有共重合体(2)の合成
市販品であるポリシロキサン結合を有するモノメタクリレート化合物(3-メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン)35.0g及び市販品である1-アダマンチルメタクリレート65.0gを、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)97.5gに溶解した混合液A2と、重合開始剤としてt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート5.0g及び溶媒としてPGMEA15.0gを混合した混合液B2とをそれぞれ調製した。
【0172】
窒素置換したフラスコに、溶媒としてPGMEA100.0gを仕込み、窒素気流下にて撹拌しながら95℃に昇温した。混合液A2及びB2を95℃で120分かけて滴下した。滴下終了後95℃で5時間撹拌し、次いで110℃で1時間撹拌した。反応終了後、PGMEAを20.8g加え、シリコーン含有共重合体(2)を30質量%含むPGMEA溶液を得た。
【0173】
得られたシリコーン含有共重合体(2)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)は11,000であった。また、原料仕込み比から、シリコーン含有共重合体(1)中の-Si[OSi(CH3)3]3で表される官能基の含有量は26質量%であった。
【0174】
実施例3:シリコーン含有共重合体(3)の合成
市販品であるポリシロキサン結合を有するモノメタクリレート化合物(3-メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン)67.0g及び市販品である1-アダマンチルメタクリレート33.0gを、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)97.5gに溶解した混合液A3と、重合開始剤としてt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート10.0g及び溶媒としてPGMEA15.0gを混合した混合液B3とをそれぞれ調製した。
【0175】
窒素置換したフラスコに、溶媒としてPGMEA100.0gを仕込み、窒素気流下にて撹拌しながら105℃に昇温した。混合液A3を120分、B3を180分かけて滴下した。滴下終了後105℃で5時間撹拌し、反応終了後、PGMEAを20.8g加え、シリコーン含有共重合体(3)を30質量%含むPGMEA溶液を得た。
【0176】
得られたシリコーン含有共重合体(3)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)は6,100であった。また、原料仕込み比から、シリコーン含有共重合体(3)中の-Si[OSi(CH3)3]3で表される官能基の含有量は50質量%であった。
【0177】
実施例4:シリコーン含有共重合体(4)の合成
市販品であるポリシロキサン結合を有するモノメタクリレート化合物(3-メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン)20.0g及び市販品である1-アダマンチルメタクリレート80.0gを、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)97.5gに溶解した混合液A4と、重合開始剤としてt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート15.0g及び溶媒としてPGMEA15.0gを混合した混合液B4とをそれぞれ調製した。
【0178】
窒素置換したフラスコに、溶媒としてPGMEA100.0gを仕込み、窒素気流下にて撹拌しながら105℃に昇温した。混合液A4を120分、B4を180分かけて滴下した。滴下終了後105℃で5時間撹拌し、反応終了後、PGMEAを20.8g加え、シリコーン含有共重合体(4)を30質量%含むPGMEA溶液を得た。
【0179】
得られたシリコーン含有共重合体(4)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)は4,000であった。また、原料仕込み比から、シリコーン含有共重合体(4)中の-Si[OSi(CH3)3]3で表される官能基の含有量は質量15%であった。
【0180】
実施例5:シリコーン含有共重合体(5)の合成
市販品であるポリシロキサン結合を有するモノメタクリレート化合物(3-メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン)10.0g及び市販品である1-アダマンチルメタクリレート90.0gを、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)97.5gに溶解した混合液A5と、重合開始剤としてt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート15.0g及び溶媒としてPGMEA15.0gを混合した混合液B5とをそれぞれ調製した。
【0181】
窒素置換したフラスコに、溶媒としてPGMEA100.0gを仕込み、窒素気流下にて撹拌しながら105℃に昇温した。混合液A5を120分、B5を180分かけて滴下した。滴下終了後105℃で5時間撹拌し、反応終了後、PGMEAを20.8g加え、シリコーン含有共重合体(5)を30質量%含むPGMEA溶液を得た。
【0182】
得られたシリコーン含有共重合体(5)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)は3,800であった。また、原料仕込み比から、シリコーン含有共重合体(5)中の-Si[OSi(CH3)3]3で表される官能基の含有量は質量15%であった。
【0183】
比較例1:シリコーン含有共重合体(1’)の合成
実施例1と同じポリシロキサン結合を有するモノメタクリレート化合物(3-メタクリロイルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン)67.0g、市販品のポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール-モノメタクリレート(プロピレングリコールの平均繰り返し数1、ブチレングリコールの平均繰り返し数6)33.0g及び溶媒として酢酸ブチル70.0gを混合した混合液A1’、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート3.0g及び溶媒として酢酸ブチル63.3gを混合した混合液B1’をそれぞれ調製した。
【0184】
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶媒として酢酸ブチル100.0gを仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら90℃に昇温した。
このフラスコに混合液A1’及びB1’を90℃で120分かけて滴下した。滴下終了後、90℃で5時間撹拌し、次いで110℃で1時間攪拌した。反応終了後、溶媒を留去し、シリコーン含有共重合体(1’)を得た。
【0185】
得られたシリコーン含有共重合体(1’)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)は17,000であった。
また、原料仕込み比から、シリコーン含有共重合体(1’)中のシリコーン鎖を有する重合性不飽和単量体の含有割合は50質量%であった。
【0186】
比較例2:シリコーン含有共重合体(2’)の合成
下記式で表される市販品のポリシロキサン結合を有するモノメタクリレート化合物55.0g、市販品のアダマンチルメタクリレート45.0g、及び溶媒として酢酸ブチル70.0gを混合した混合液A2’と、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート3.0g及び溶媒として酢酸ブチル63.3gを混合した混合液B2’とをそれぞれ調製した。
【0187】
【0188】
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶媒として酢酸ブチル100.0gを仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら90℃に昇温した。
このフラスコに90℃の混合液A2’を120分かけて滴下し、90℃の混合液B2’を140分かけて滴下した。滴下終了後、90℃で5時間撹拌しし、次いで110℃で1時間攪拌した。反応終了後、酢酸ブチルを166.7g加え、シリコーン含有共重合体(2’)を20質量%含む酢酸ブチル溶液を得た。
【0189】
得られたシリコーン含有共重合体(2’)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)15,000であった。
また、原料仕込み比から、シリコーン含有共重合体(2’)中のシリコーン鎖を有する重合性不飽和単量体の含有割合は50質量%であった。
【0190】
[塗膜の成膜と評価]
実施例及び比較例で合成したシリコーン含有共重合体(1)~(5)、(1’)および(2’)について、塗膜を形成し、レベリング性及び顔料昇華異物抑制性を評価した。
【0191】
(1)レベリング性
各例で合成したシリコーン含有共重合体を用いて、以下のようにして塗膜を成膜した。
バインダー樹脂(ユニディック RS20-160、DIC株式会社製)3.0g、アロニックスM-402(東亞合成化学株式会社製、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物)1.2gと、各例で合成したシリコーン含有共重合体を固形分換算で0.002g、PGMEA8.1gを混合して、レジスト組成物を調製した。
得られたレジスト組成物3mlを10cm×10cmのクロムメッキガラス基板の中央部分に滴下し、回転数500rpm及び回転時間30秒の条件でスピンコ-ティングした後、ホットプレートを用いて、110℃で2分間加熱乾燥させて塗膜を作製した。
上記で作製した塗膜を目視で観察し、下記基準に従って評価した。結果を表1に示す。
〇:塗膜ムラがほとんど観察されない。
△:塗膜ムラが一部観察される。
×:塗膜ムラが全体に観測される。
【0192】
(2)顔料の昇華に起因する塗膜表面の異物発生の抑制性
各例で製造したシリコーン含有共重合体を用いて、以下のようにして顔料を含む塗膜を成膜した。
赤色顔料であるC.I.PigmentRed254(BASF社製「IRGAPHOR RED BT-CF」)10gをポリビンに入れ、PGMEAを44gと、DISPERBYK LPN21116(ビックケミー株式会社製)12gと、直径0.3~0.4mmのセプルビーズを加え、ペイントコンディショナー(東洋精機株式会社製)で2時間分散し、赤色の顔料分散液を得た。
【0193】
次に、上記の赤色の顔料分散液5.9gに対し、バインダー樹脂(ユニディックRS20-160、DIC株式会社製)1.5g、光重合性モノマーとしてアロニックスM-402(東亞合成化学株式会社製)0.6g、光重合開始剤としてイルガキュア#369(BASFジャパン株式会社製)0.05g、各例のシリコーン含有共重合体を固形分換算で0.0014g、及びPGMEA2.2gを加え混合して、カラーレジスト組成物を調製した。
【0194】
得られたカラーレジスト組成物を7cm×7cm角のガラス板上に回転数1000rpm、回転時間10秒の条件でスピンコーティングした後、80℃で3分間乾燥させた。乾燥後、高圧水銀灯を使用して50mJ/cm2で露光して塗膜を形成した。その後、塗膜を270℃で1時間加熱した後、デジタルマイクロスコープVHX-900(キーエンス社製)にて塗膜を観察し、下記基準に従って評価した。評価結果を表1に示す。
【0195】
○:1cm×1cm四方の塗膜中に確認できる顔料の昇華に起因する異物が1個以下である。
△:1cm×1cm四方の塗膜中に確認できる顔料の昇華に起因する異物が平均2~9個である。
×:1cm×1cm四方の塗膜中に確認できる顔料の昇華に起因する異物が平均10以上である。
【0196】
【0197】
本発明のシリコーン含有共重合体をレベリング剤として含む実施例1の塗膜は塗布性に優れ、塗膜表面における顔料の昇華に起因する異物の発生も無いことが分かる。一方、シリコーン含有共重合体の重量平均分子量が実施例1と比較して大きく、また、環状炭化水素骨格を含む基を重合性単量体に有しない比較例1では、塗膜中に顔料の昇華に起因する異物が塗膜の表面に生じている。同様に、シリコーン含有共重合体の重量平均分子量が実施例1と比較して大きく、また、環状炭化水素骨格を含む基を有する重合性単量体と比較して一般式(a)で表される基を有する重合性単量体の量が多い比較例2でも、塗膜中に顔料の昇華に起因する異物が塗膜の表面に生じている。