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特許7582565積層体、積層体の製造方法、及びバッテリーケース
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】積層体、積層体の製造方法、及びバッテリーケース
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/28 20060101AFI20241106BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20241106BHJP
   B32B 15/085 20060101ALI20241106BHJP
   H01M 50/231 20210101ALI20241106BHJP
   H01M 50/227 20210101ALI20241106BHJP
   H01M 50/224 20210101ALI20241106BHJP
   H01M 50/126 20210101ALI20241106BHJP
【FI】
B32B5/28 101
B32B15/08 105Z
B32B15/085 Z
H01M50/231
H01M50/227
H01M50/224
H01M50/126
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024538960
(86)(22)【出願日】2023-07-13
(86)【国際出願番号】 JP2023025830
(87)【国際公開番号】W WO2024075361
(87)【国際公開日】2024-04-11
【審査請求日】2024-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2022160129
(32)【優先日】2022-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】新地 智昭
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-240302(JP,A)
【文献】国際公開第2016/088438(WO,A1)
【文献】特開2016-2723(JP,A)
【文献】特開平5-339416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H01M 50/231
H01M 50/227
H01M 50/224
H01M 50/126
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体からなるコア層(A)、繊維強化プラスチックからなる外層(B)、及び金属層(C)を有し、前記金属層(C)が前記コア層(A)と前記外層(B)との間に位置し、
前記発泡体が、表面に難燃コート剤が塗布されたポリエチレン樹脂のビーズ発泡体であり、
前記コア層(A)が前記発泡体を厚み方向に圧縮したものであり、前記コア層(A)の圧縮率が厚み換算で40%以上であり、前記コア層(A)の発泡体セルの下記式で表されるアスペクト比が2以上である積層体。
アスペクト比=1/[1-圧縮率(%)/100]
【請求項2】
前記外層(B)が、強化繊維(f)とマトリックス樹脂(r)とを含むプリプレグを加熱成形して得られるものであり、前記マトリックス樹脂が、ポリイソシアネート化合物(r1)とポリヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(r2)とを含有する樹脂組成物(1)、又は、ポリイソシアネート化合物(r1)、モノヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(r3)、及びポリヒドロキシ化合物(r4)を含有する樹脂組成物(2)である請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記金属層(C)がアルミニウムである請求項1記載の積層体。
【請求項4】
発泡体からなるコア層(A)、強化繊維(f)とマトリックス樹脂(r)とを含むプリプレグからなる外層(b)、及び金属層(C)を積層した前駆体を加熱成形する請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記コア層(A)、前記繊維強化プラスチックからなる外層(B)、及び前記金属層(C)を、接着剤を用いて接着する請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の積層体を用いたバッテリーケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量かつ薄肉でありながら耐燃性や強度にも優れる特徴を有し、様々な成形品用途に好適に用いることができる積層体及びこれを用いたバッテリーケースに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの電気自動車に使用されているリチウムイオン電池は発火の恐れがあることから、そのバッテリーケースには強度の他、高い耐燃性や耐火性が求められている。それと同時に、より燃費が高く環境負荷の低い自動車の実現のために、前述の性能を十1 分に維持しつつも、更なる軽量化やバッテリーケース自体の省スペース化が可能な成形材料が求められている。
【0003】
軽量かつ高強度な成形材料としては、樹脂発泡体を芯材とし、それを繊維強化プラスチックで挟み込んだ、所謂FRPサンドイッチ成形体が知られている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、当該サンドイッチ成形体が芯材とする樹脂発泡体は一般に燃え易い上、ある程度の耐燃性を付与するためには十分な厚みのある樹脂発泡体を用いる必要があり、高い耐燃性や耐火性と、軽量性、省スペース性との兼備が求められるバッテリーケースのような用途には利用し得るものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2022-80629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明が解決しようとする課題は、軽量かつ薄肉でありながら耐燃性や強度に優れる特徴を有し、バッテリーケース等の成形品用途に好適に用いることができる成形材料、及びこれを用いたバッテリーケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討した結果、発泡体からなるコア層(A)、繊維強化プラスチックからなる外層(B)、及び金属層(C)を有し、前記金属層(C)が前記コア層(A)と前記外層(B)との間に位置するものである積層体は、軽量かつ薄肉でありながら耐燃性や強度に優れる特徴を有し、バッテリーケースをはじめ様々な成形品用途に利用可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、(I)発泡体からなるコア層(A)、繊維強化プラスチックからなる外層(B)、及び金属層(C)を有し、前記金属層(C)が前記コア層(A)と前記外層(B)との間に位置するものである積層体に関する。
【0008】
本発明は更に、(II)前記コア層(A)が発泡体を厚み方向に圧縮したものである前記(I)記載の積層体に関する。
【0009】
本発明は更に、(III)前記コア層(A)の圧縮率が厚み換算で40%以上である前記(II)記載の積層体に関する。
【0010】
本発明は更に、(IV)前記コア層(A)の発泡体セルのアスペクト比が2以上である前記(II)又は(III)記載の積層体に関する。
【0011】
本発明は更に、(V)前記外層(B)が、強化繊維(f)とマトリックス樹脂(r)とを含むプリプレグを加熱成形して得られるものであり、前記マトリックス樹脂が、ポリイソシアネート化合物(r1)とポリヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(r2)とを含有する樹脂組成物(1)、又は、ポリイソシアネート化合物(r1)、モノヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(r3)、及びポリヒドロキシ化合物(r4)を含有する樹脂組成物(2)である前記(I)~(IV)の何れかに記載の積層体に関する。
【0012】
本発明は更に、(VI)前記金属層(C)がアルミニウムである前記(I)~(V)の何れかに記載の積層体に関する。
【0013】
本発明は更に、(VII)発泡体からなるコア層(A)、強化繊維(f)とマトリックス樹脂(r)とを含むプリプレグからなる外層(b)、及び金属層(C)を積層した前駆体を加熱成形する前記(I)~(VI)の何れかに記載の積層体の製造方法に関する。
【0014】
本発明は更に、(VIII)前記コア層(A)、前記繊維強化プラスチックからなる外層(B)、及び前記金属層(C)を、接着剤を用いて接着する前記(I)~(VI)の何れかに記載の積層体の製造方法に関する。
【0015】
本発明は更に、(IX)前記(I)~(VI)の何れかに記載の積層体を用いたバッテリーケースに関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、軽量かつ薄肉でありながら耐燃性や強度に優れる特徴を有し、バッテリーケース等の成形品用途に好適に用いることができる積層体、及びこれを用いたバッテリーケースを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明の積層体は、発泡体からなるコア層(A)、繊維強化プラスチックからなる外層(B)、及び金属層(C)を有し、前記金属層(C)が前記コア層(A)と前記外層(B)との間に位置するものであること特徴とする。
【0019】
前記コア層(A)となる発泡体としては、各種の樹脂材料からなる発泡体を特に制限なく用いることができる。前記樹脂材料は、例えば、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ABS樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂等が挙げられる。これら樹脂材料の発泡方法や用いる発泡剤は特に限定されず、公知慣用の発泡剤及び発泡方法にて発泡させたものを用いることができる。中でも、得られる積層体がより耐燃性に優れるものとなることから、ビーズ発泡体であることが好ましく、ポリスチレン樹脂のビーズ発泡体であることがより好ましい。
【0020】
前記ビーズ発泡体は、例えば、前記各種の樹脂材料からなる粒子に発泡ガスを圧入し、これを加熱することにより予備発泡させて発泡性ビーズを得、得られた発泡性ビーズを加熱加圧条件下で発泡成形する方法等にて製造することができる。前記発泡性ビーズの平均粒子径は、得られる積層体がより耐燃性と強度に優れるものとなることから、0.5~5mmの範囲であることが好ましい。前記発泡ガスとしては、プロパン、ブタン、ペンタン等が挙げられ、ガスの圧入量は発泡ビーズの5~7質量%であることが好ましい。発泡倍率は、得られる積層体がより耐燃性と強度に優れるものとなることから、40~70倍であることが好ましい。発泡体の密度は、軽量性、耐燃性及び強度のバランスに優れる積層体となることから、0.01~0.07g/cmの範囲であることが好ましい。
【0021】
前記ビーズ発泡体においては、原料である発泡性ビーズの表面に機能性コート剤を塗布することにより、得られる発泡体に所望の性能を付与することができる。機能性コート剤としては、例えば、難燃コート剤、耐熱性コート剤等が挙げられる。中でも、得られる積層体がより難燃性に優れるものとなることから、表面に難燃コート剤が塗布された樹脂ビーズの発泡体が好ましい。前記難燃コート剤は、例えば、難燃剤としてリン原子含有化合物、ハロゲン原子含有化合物、窒素原子含有化合物、水和金属化合物、ホウ酸塩、金属酸化物、シリコーン化合物等を含むものが挙げられる。
【0022】
本発明のコア層(A)は、発泡体をそのまま用いてもよいし、発泡体を厚み方向に圧縮したものであってもよい。中でも、得られる積層体が薄肉でありながら十分な耐燃性を有するものとなることから、前記コア層(A)が発泡体を厚み方向に圧縮したものであることが好ましい。前記コア層(A)が発泡体を厚み方向に圧縮したものである場合、発泡体の圧縮率は、得られる積層体が薄肉でありながら十分な耐燃性を有するものとなることから、厚み換算で40%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、85%以上であることが特に好ましい。また、97%以下であることが好ましく、95%以下であることより好ましい。また、発泡体セルのアスペクト比は、得られる積層体が薄肉でありながら十分な耐燃性を有するものとなることから、1.7以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましく、6.7以上であることが特に好ましい。また、30以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましい。なお、発泡体セルのアスペクト比は、発泡体の断面を顕微鏡観察して測定する実測値、或いは、圧縮率から算出される計算値の何れでもよい。
アスペクト比=1/[1-圧縮率(%)/100]
【0023】
前記コア層(A)の厚みは、得られる積層体の耐燃性、強度、及び軽量性のバランスに優れることから、0.5~5mmの範囲であることが好ましく、1~3mmの範囲であることがより好ましい。また、前記コア層(A)は、一層のみで形成されていてもよいし、多層になっていてもよい。コア層(A)が多層の場合、それぞれの層は同一種類の発泡体から形成されていてもよいし、それぞれ異なる種類の発泡体にて形成されていてもよい。また、一部の層が未圧縮の発泡体であり、一部の層が圧縮された発泡体であってもよい。前記コア層(A)が多層である場合においても、コア層(A)全体の厚みは0.5~5mmの範囲であることが好ましく、1~3mmの範囲であることがより好ましい。
【0024】
前記繊維強化プラスチックからなる外層(B)は、具体的には、強化繊維(f)とマトリックス樹脂(r)とを含むプリプレグを加熱成形して得られるものである。
【0025】
前記強化繊維(f)は、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、金属繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、テトロン繊維等の有機繊維などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。中でも、より高強度の積層体が得られることから、炭素繊維又はガラス繊維が好ましい。
【0026】
前記炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系、レーヨン系などの各種のものが使用できるが、これらの中でも、より高強度の炭素繊維が得られることから、ポリアクリロニトリル系のものが好ましい。
【0027】
前記強化繊維(f)の形状としては特に制限はなく、強化繊維フィラメントを収束させた強化繊維トウ、強化繊維トウを一方向に引き揃えた一方向材、製織した織物、短く裁断した強化繊維、短く裁断した強化繊維からなる不織布や紙等が挙げられる。前記強化繊維(f)が織物の場合は、平織、綾織、朱子織、若しくはノン・クリンプト・ファブリックに代表される、繊維束を一方向に引き揃えたシートや角度を変えて積層したようなシートをほぐれないようにステッチしたステッチングシート、等が挙げられる。強化繊維(f)として短く裁断した強化繊維を用いる場合は、成形時の金型内流動性、成形品の外観がより向上することから、2.5~50mmにカットしたものを用いることが好ましい。中でも、より高強度の外層(B)となることから、強化繊維として一方向材や製織した織物を用いることが好ましい。強化繊維として一方向材を用いたプリプレグを用いる場合には、複数枚を疑似等方となるように、例えば、繊維方向が0°と90°との互い違いになるように順に重ねることにより、より高強度の外層(B)を得ることができる。
【0028】
強化繊維(f)の目付(繊維1m当たりの重さ)は、特に制限なく多種多様なものを用いることができる。また、強化繊維(f)によっても最適値が異なる。一般的には、強化繊維(f)の繊維幅の均質性とマトリックス樹脂(r)の含浸性とのバランスに優れることから、30~650g/mの範囲であることが好ましい。前記強化繊維(f)がガラス繊維である場合には、50g/m以上であることが好ましく、100g/m以上であることがより好ましい。また、600g/m以下であることが好ましく、350g/m以下であることがより好ましい。前記強化繊維(f)が炭素繊維である場合には、50g/m以上であることが好ましく、80g/m以上であることがより好ましい。また、300g/m以下であることが好ましく、200g/m以下であることがより好ましい。
【0029】
また、前記プリプレグの強化繊維(f)の含有率は、より高強度の外層(B)となることから、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。また、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。
【0030】
前記マトリックス樹脂(r)は、前記強化繊維(f)へ含浸させることができ、かつ、得られるプリプレグが加熱等により成形可能であれば、特に制限なく多種多様なものを用いることができる。中でも、扱いの容易性等から熱硬化性樹脂組成物であることが好ましい。更に、得られる外層(B)が高強度であると共に、取り扱いが容易でかつ様々な形状への成形性にも優れるプリプレグとなることから、イソシアネート基と水酸基とによるウレタン化反応成分を含有し、且つ、樹脂組成物中に重合性不飽和基が存在することが好ましい。このような樹脂組成物としては、例えば、ポリイソシアネート化合物(r1)とポリヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(r2)とを含有する樹脂組成物(1)や、ポリイソシアネート化合物(r1)、モノヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(r3)、及びポリヒドロキシ化合物(r4)を含有する樹脂組成物(2)等が挙げられる。
【0031】
なお、本発明において(メタ)アクリレート化合物とは、アクリロイル基とメタアクリロイル基との一方又は両方を有する化合物のことであり、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基とメタアクリロイル基との一方又は両方のことであり、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸とメタクリル酸との一方又は両方のことである。
【0032】
前記ポリイソシアネート化合物(r1)は、例えば、ブタンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、とリジンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;これらのイソシアネート化合物の変性体であるイソシアヌレート変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体、カルボジイミド変性体、ウレタンイミン変性体、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリオールで変性したポリオール変性体等が挙げられる。これらは一種類を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。中でも、耐熱性に優れる外層(B)となることから芳香族ジイソシアネート化合物及びそれらの各種変性体が好ましい。ポリイソシアネート化合物(r1)として複数種を併用する場合には、ポリイソシアネート化合物(r)の全質量に対する芳香族ジイソシアネート化合物及びそれらの各種変性体の割合が50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0033】
前記ポリヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(r2)化合物は、例えば、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応原料とする(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0034】
前記エポキシ樹脂は、例えば、ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルオキシナフタレン、脂肪族エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノール又はナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン又はナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、オキゾドリドン変性エポキシ樹脂、これらを臭素化したエポキシ樹脂などが挙げられる。エポキシ樹脂は、上述した具体例を伸長剤にて伸長したエポキシ樹脂でもよい。
【0035】
前記脂肪族エポキシ樹脂は、例えば、各種の脂肪族ポリオール化合物や、これらのアルキレンオキサイド付加物の一種乃至複数種をエピハロヒドリンでポリグリシジルエーテル化したものが挙げられる。脂肪族ポリオール化合物は、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチルプロパンジオール、1,2,2-トリメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-3-イソプロピル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘサン、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール等の脂肪族ジオール化合物;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等の脂環族ジオール化合物;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等の3官能以上の脂肪族ポリオール化合物等が挙げられる。
【0036】
前記ビフェノール型エポキシ樹脂は、例えば、ビフェノール、テトラメチルビフェノール等のビフェノール化合物、これらのアルキレンオキサイド付加物の一種乃至複数種をエピハロヒドリンでポリグリシジルエーテル化したものが挙げられる。
【0037】
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、ビスクレゾールフルオレン等のビスフェノール化合物、これらのアルキレンオキサイド付加物の一種乃至複数種をエピハロヒドリンでポリグリシジルエーテル化したものが挙げられる。
【0038】
前記ノボラック型エポキシ樹脂は、例えば、フェノール、ジヒドロキシベンゼン、クレゾール、キシレノール、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、ビスフェノール、ビフェノール等、各種フェノール化合物の一種乃至複数種からなるノボラック樹脂をエピハロヒドリンでポリグリシジルエーテル化したものが挙げられる。
【0039】
脂環式エポキシ樹脂は、例えば、前記ビフェノール化合物やビスフェノール化合物に水素添加したものや、そのアルキレンオキサイド付加物の一種乃至複数種をエピハロヒドリンでポリグリシジルエーテル化したものの他、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、1-エポシエチル-3,4-エポキシシクロヘキサン等が挙げられる。
【0040】
前記グリシジルアミン型エポキシ樹脂は、例えば、N,N-ジグリシジルアニリン、トリグリシジルアミノフェノール、テトラグリシジルキシレンジアミン、4,4’-メチレンビス[N,N-ジグリシジルアニリン]等が挙げられる。
【0041】
前記複素環型エポキシ樹脂は、例えば、1,3-ジグリシジル-5,5-ジメチルヒダントイン、トリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0042】
前記グリシジルエステル型エポキシ樹脂は、例えば、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル-p-オキシ安息香酸、ダイマー酸グリシジルエステル等が挙げられる。
【0043】
エポキシ樹脂の伸長剤としては、例えば、前記各種のビフェノール化合物やその水素添加物、前記各種のビスフェノール化合物やその水素添加物、二塩基酸化合物、酸基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0044】
これらの中でも、前記強化繊維(f)への含浸性や、得られる外層(B)の強度等に優れることから、前記ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。この場合、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、150~600g/当量の範囲であることが好ましく、200~450g/当量の範囲であることがより好ましい。
【0045】
エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応は、任意のエステル化触媒の存在下、60~140℃程度の温度条件下で加熱することにより行うことができる。必要に応じて反応溶媒を用いたり、重合禁止剤を添加したりしてもよい。また、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応比率は、両者の官能基のモル比[カルボキシ基/エポキシ基]が0.6~1.1の範囲であることが好ましい。
【0046】
エポキシ樹脂として前記ビスフェノール型エポキシ樹脂を用いる場合、得られる(メタ)アクリレート化合物の水酸基価は、50~200mg/KOHであることが好ましい。また、その(メタ)アクリロイル基当量は300~600g/当量の範囲であることが好ましい。
【0047】
前記ポリヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(r2)化合物は一種類を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。ポリヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(r2)として複数種を併用する場合には、ポリヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(r2)化合物の全質量に対する前記ビスフェノール型エポキシ樹脂(メタ)アクリレート化合物の割合が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。
【0048】
前記モノヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(r3)は、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、これらの分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン(メタ)アクリレート化合物、これらの分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。これらは一種類を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0049】
中でも、強化繊維(f)への含浸性と得られる外層(B)の強度とのバランスに優れることからモノヒドロキシモノ(メタ)アクリレート化合物が好ましく、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。前記モノヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(r3)として複数種を併用する場合には、モノヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(r3)化合物の全質量に対するヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの割合が50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0050】
前記ポリヒドロキシ化合物(r4)は、例えば、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン、前述した各種脂肪族ポリオール、ビフェノール化合物、ビスフェノール化合物、これらのアルキレンオキサイド付加物、ラクトン変性化合物等が挙げられる。これらは一種類を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。中でも、強化繊維(f)への含浸性と得られる外層(B)の強度とのバランスに優れることからビスフェノール化合物のアルキレンオキサイド付加物が好ましい。また、アルキレンオキサイドの平均付加モル数は、2~10モルの範囲であることが好ましい。
【0051】
前記ポリヒドロキシ化合物(r4)として複数種を併用する場合には、ポリヒドロキシ化合物(r4)化合物の全質量に対するビスフェノール化合物のアルキレンオキサイド付加物の割合が50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0052】
前記樹脂組成物(1)において、前記ポリイソシアネート化合物(r1)が含有するイソシアネート基と前記ポリヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(r2)が含有する水酸基とのモル比(NCO/OH)は、プリプレグの扱い易さや成形性等に優れることから、0.3~1.2の範囲であることが好ましく、0.4~1.1の範囲であることがより好ましく、0.5~1.0の範囲であることが特に好ましい。
【0053】
前記樹脂組成物(2)において、前記ポリイソシアネート化合物(r1)が含有するイソシアネート基と、前記モノヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(r3)が含有する水酸基と前記ポリヒドロキシ化合物(r4)が含有する水酸基の合計とのモル比(NCO/OH)は、プリプレグの扱い易さや成形性等に優れることから、0.7~1.3の範囲であることが好ましく、0.8~1.1の範囲であることがより好ましく、0.8~1.0の範囲であることが特に好ましい。また、前記モノヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(r3)と前記ポリヒドロキシ化合物(r4)とのモル比(r3/r4)は、耐熱性、硬化性がより向上することから、40/60~80/20の範囲であることが好ましく、50/50~70/30の範囲であることがより好ましい。
【0054】
前記樹脂組成物(1)、(2)は、前記ポリヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(r2)や前記モノヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(r3)以外の、その他の重合性不飽和基含有化合物を含有していてもよい。その具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレートアルキルエーテル、プロピレングリコール(メタ)アクリレートアルキルエーテル等の脂肪族モノ(メタ)アクリレート化合物;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチルモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート等の脂環式モノ(メタ)アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等の複素環含有モノ(メタ)アクリレート化合物;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ベンジルベンジル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有モノ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のモノ(メタ)アクリレートモノマーの分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等のポリオキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性モノ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のモノ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性モノ(メタ)アクリレート化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族ジ(メタ)アクリレート化合物;1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の脂環式ジ(メタ)アクリレート化合物;ビフェノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート等の芳香環含有ジ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のジ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入したポリオキシアルキレン変性ジ(メタ)アクリレート化合物;前記各種のジ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性ジ(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等の脂肪族トリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族トリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した(ポリ)オキシアルキレン変性トリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族トリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入したラクトン変性トリ(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の脂肪族ポリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族ポリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)オキシエチレン鎖、(ポリ)オキシプロピレン鎖、(ポリ)オキシテトラメチレン鎖等の(ポリ)オキシアルキレン鎖を導入した4官能以上の(ポリ)オキシアルキレン変性ポリ(メタ)アクリレート化合物;前記脂肪族ポリ(メタ)アクリレート化合物の分子構造中に(ポリ)ラクトン構造を導入した4官能以上のラクトン変性ポリ(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。これらは一種類を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0055】
中でも、強化繊維(f)への含浸性と得られる外層(B)の強度とのバランスに優れることから、分子量が150~600の範囲である2官能以上の(メタ)アクリレート化合物が好ましい。前記その他の重合性不飽和基含有化合物として複数種を併用する場合には、その他の重合性不飽和基含有化合物の全質量に対する分子量が150~600の範囲である2官能以上の(メタ)アクリレート化合物の割合が50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0056】
前記樹脂組成物(1)において、その他の重合性不飽和基含有化合物を用いる場合、その配合量は、強化繊維(f)への含浸性と得られる外層(B)の強度とのバランスに優れることから、ポリイソシアネート化合物(r1)とポリヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(r2)との合計質量に対し、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることが好ましい。また、前記樹脂組成物(2)においてその他の重合性不飽和基含有化合物を用いる場合、その配合量は、ポリイソシアネート化合物(r1)、モノヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物(r3)、ポリヒドロキシ化合物(r4)の合計質量に対し40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好まし
【0057】
前記樹脂組成物(1)、(2)は重合開始剤を含有していてもよい。当該重合開始剤は一般的なものを特に制限なく用いることができるが、特に有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物としては、例えば、ジアシルパーオキサイド化合物、パーオキシエステル化合物、ハイドロパーオキサイド化合物、ケトンパーオキサイド化合物、アルキルパーエステル化合物、パーカーボネート化合物、パーオキシケタール等が挙げられる。これらは一種類を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。中でも、成形時間が短縮されることから、10時間半減期を得るための温度が60℃以上であるものが好ましい。また、後述する製造方法1、3により積層体を製造する場合であって、特にコア層(a)或いはコア層(A)がポリスチレン発泡体である場合には、当該ポリスチレン発泡体の膨れによる成形不良を回避するために、10時間半減期温度が90℃以下であるものが好ましく、80℃以下であるものがより好ましく、70℃以下であるものが特に好ましい。このような重合開始剤としては、例えば、1,6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルパーオキシジエチルアセテート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジーtert-ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、t-アミルパーオキシトリメチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシイソノナエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、n-ブチル4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパ-オキシ2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ―2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシビバレート等が挙げられる。重合開始剤の添加量は、樹脂組成物中の重合性不飽和基含有化合物の総質量に対して、0.5~3質量%の範囲であることが好ましい。
【0058】
前記樹脂組成物(1)、(2)は、前述した各種化合物の他、その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、熱可塑性樹脂、重合禁止剤、硬化促進剤、充填剤、低収縮剤、離型剤、増粘剤、減粘剤、顔料、酸化防止剤、可塑剤、難燃剤、抗菌剤、紫外線安定剤、補強材、光硬化剤等が挙げられる。
【0059】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイソプレン樹脂およびこれらを共重合等により変性させたものが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0060】
前記重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、p-t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、トルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、ナフトキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、ナフテン酸銅、塩化銅等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0061】
前記硬化促進剤としては、例えば、ナフテン酸コバルト、オクテン酸コバルト、オクテン酸バナジル、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム等の金属石鹸類、バナジルアセチルアセテート、コバルトアセチルアセテート、鉄アセチルアセトネート等の金属キレート化合物が挙げられる。またアミン類として、N,N-ジメチルアミノ-p-ベンズアルデヒド、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N-エチル-m-トルイジン、トリエタノールアミン、m-トルイジン、ジエチレントリアミン、ピリジン、フェニルモルホリン、ピペリジン、ジエタノールアニリン等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0062】
前記充填剤としては、大きく分けて無機化合物、有機化合物がある。充填剤は、主に、成形物の強度、弾性率、衝撃強度、疲労耐久性等の物性を調整する目的で添加する成分である。
【0063】
前記無機化合物は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、マイカ、タルク、カオリン、クレー、セライト、アスベスト、バーライト、バライタ、シリカ、ケイ砂、ドロマイト石灰石、石こう、アルミニウム微粉、中空バルーン、アルミナ、ガラス粉、水酸化アルミニウム、寒水石、酸化ジルコニウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、二酸化モリブデン、鉄粉などが挙げられる。有機化合物は、セルロース、キチン等の天然多糖類粉末、合成樹脂粉末などが挙げられる。合成樹脂粉末としては、硬質樹脂、軟質ゴム、エラストマーまたは重合体(共重合体)などから構成される有機物の粉体、コアシェル型などの多層構造を有する粒子が挙げられる。合成樹脂粉末の具体例としては、ブタジエンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム等からなる粒子、ポリイミド樹脂粉末、フッ素樹脂粉末、フェノール樹脂粉末などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0064】
前記離型剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、カルナバワックスなどが挙げられる。好ましくは、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、カルナバワックス等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0065】
前記増粘剤としては、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム等の金属酸化物や金属水酸化物など、アクリル樹脂系微粒子などが挙げられる。これらの増粘剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0066】
前記難燃剤としては、例えば、リン原子含有化合物、ハロゲン原子含有化合物、窒素原子含有化合物、水和金属化合物、ホウ酸塩、金属酸化物、シリコーン化合物等が挙げられる。これらの難燃剤は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0067】
前記プリプレグの製法は特に限定されないが、例えば、スタティックミキサー、パワーミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダーなどの公知の混合機を用いてマトリックス樹脂(r)の各成分を混合した後、これを前記強化繊維(f)に含浸させ、これを離型フィルムで挟み込み、圧延機によって圧延する方法等が挙げられる。マトリックス樹脂(r)を強化繊維(f)に含浸させる際は、適宜加温するなどしてもよい。
【0068】
マトリックス樹脂(r)として前記樹脂組成物(1)、(2)を用いる場合、圧延後のシートを常温~50℃で静置して樹脂組成物中のイソシアネート基と水酸基とをウレタン化反応させることにより、保存性や取り扱い性に優れるプリプレグとすることができる。また、マトリックス樹脂(r)として前記樹脂組成物(1)、(2)を用いる場合、樹脂組成物の調製過程で一部ウレタン化反応を進行させたものを用いてもよい。
【0069】
前記プリプレグの厚みは取り扱いが容易で成形性にも優れることから、0.02mm以上であることが好ましく、0.05mm以上であることがより好ましい。また、1.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましい。
【0070】
前記外層(B)は前記プリプレグを加熱成形して得ることができる。加熱成形方法の一例としては、例えば、プリプレグを複数積層したものを、予め110℃~160℃に加熱した金型に投入し、圧縮成形機にて型締めして賦型して、0.1~10MPaの成形圧力を保持したまま硬化させる方法が挙げられる。更に、シェアエッジを有する金型を用い、金型温度130℃~160℃にて1~8MPaの成形圧力を保持し、成形品の厚さ1mm当たり1~3分間、加熱圧縮成形する製造方法が好ましい。プリプレグの積層枚数は、成形性と得られる外層(B)の強度とのバランスで任意に設定できるが、軽量性に優れることから、1~20枚の範囲であることが好ましい。また、プリプレグを積層する際のプリプレグの向きは、所望する強度を勘案して任意に設定できるが、疑似等方となるように積層することが好ましい。例えば、繊維方向が0°と90°との互い違いになるように順に重ねることが好ましい。外層(B)の厚みは得られる積層体の強度と軽量性とのバランスから0.1mm以上であることが好ましく、0.4mm以上であることがより好ましく、0.6mm以上であることが特に好ましい。また、2.0mm以下であることが好ましく、1.5mm以下であることがより好ましい。
【0071】
前記金属層(C)は、各種の金属箔や金属薄膜を特に制限なく用いることができる。具体的な金属種としては、例えば、アルミニウム、クロミウム、金、銀、銅、チタニウム、鉄、ステンレス等が挙げられる。これらの金属は、金属箔や金属箔付きテープ等として用いてもよいし、蒸着、メッキ、スパッタリング等の方法にて成膜したものであってもよい。前記金属層(C)の厚みは、得られる積層体の耐燃性と軽量性とのバランスに優れることから、0.006以上であることが好ましく、0.01mm以上であることがより好ましい。また、0.2mm以下であることが好ましく、0.1mm以下であることがより好ましい。
【0072】
本発明の積層体においては、前記金属層(C)は前記コア層(A)と前記外層(B)との間に位置する。前記金属層(C)は前記コア層(A)の片面側にのみ存在していてもよいし、両面側に存在していてもよい。また、積層体中に3層以上の金属層(C)が存在していてもよい。前記金属層(C)は前記コア層(A)又は前記外層(B)、或いはその両方に隣接していてもよいし、前記金属層(C)と前記コア層(A)との間、前記金属層(C)と前記外層(B)との間、或いはその両方にその他の層を有していてもよい。前記その他の層としては、例えば、樹脂層、接着剤層等が挙げられる。本発明の積層体において、前記コア層(A)、外層(B)、金属層(C)はそれぞれ多層になっていてもよい。いずれの場合においても、積層体の全厚みに対する前記コア層(A)、前記外層(B)、前記金属層(C)の合計の厚みが占める割合が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。
【0073】
本発明の積層体の製造方法は特に限定されず、積層体の用途や所望の形状等に応じ、多種多様な方法にて製造することができる。具体例の一部として、以下3つの製造方法が挙げられる。以下、これらの製造方法について説明する。
(製造方法1)発泡体からなるコア層(A)、強化繊維(f)とマトリックス樹脂(r)とを含むプリプレグからなる外層(b)、及び金属層(C)を積層した前駆体を加熱成形する積層体の製造方法
(製造方法2)前記コア層(A)、前記繊維強化プラスチックからなる外層(B)、及び前記金属層(C)を、接着剤を用いて接着する積層体の製造方法
【0074】
前記製造方法1は、発泡体からなるコア層(A)、強化繊維(f)とマトリックス樹脂(r)とを含むプリプレグからなる外層(b)、及び前記金属層(C)を積層した前駆体を加熱成形する方法である。前述の通り、前記コア層(A)は圧縮された発泡体であってもよく、この場合、コア層(A)として予め圧縮したものを用いてもよいし、未圧縮のものを用いて加熱成形時に圧縮する条件としてもよい。また、前述の通り、前記外層(b)は複数枚のプリプレグを重ねたものであることが好ましく、具体的には1~20枚のプリプレグを重ねたものであることが好ましい。プリプレグを重ねる際の積層方向は、所望する強度を勘案して任意に設定できるが、疑似等方となるように積層することが好ましく、例えば、繊維方向が0°と90°との互い違いになるように順に重ねることが好ましい。前記コア層(A)、前記外層(b)、及び前記金属層(C)は直接積層してもよいし、間に接着層等のその他の層を設けてもよい。また、製造方法1で積層体を製造する場合には、加熱形成工程でコア層(a)を成す発泡体が更に発泡することを防ぐため、前記外層(b)を成すプリプレグの成形可能温度は140℃以下であることが好ましく、110℃以下であることが好ましい。
【0075】
前記製造方法1において、成形の条件は特に限定されないが、例えば、80~140℃の温度条件下、0.1~6MPaの圧力条件で、数分~数十分間成形する方法等が挙げられる。金型には必要に応じて離型剤を塗布してもよく、前駆体は金型中央に充填することが好ましい。また、積層体の厚みが所定の厚みとなるようにスペーサー等を用いて厚みを調整してもよい。
【0076】
前記製造方法2は、前記コア層(A)前記外層(B)、及び前記金属層(C)を、接着剤を用いて接着する方法である。製造方法2で用いるコア層(A)、外層(B)、及び金属層(C)は先に説明した通りのものである。製造方法2で用いる接着剤は特に限定されず、積層体の用途や所望の形状等に応じて選択されるが、例えば、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、ゴム系、ポリエステル樹脂系、エポキシ樹脂系、シアノアクリレート樹脂系、シリコーン樹脂系、変性シリコーン樹脂系等が挙げられる。また、接着剤は一液型液状、二液型液状、シート状、両面テープ状等、いずれの形状のものであってもよい。
【0077】
前記製造方法3において、成形の条件は特に限定されないが、例えば、80~140℃の温度条件下、0.1~6MPaの圧力条件で、数分~数十分間成形する方法等が挙げられる。金型には必要に応じて離型剤を塗布してもよく、前駆体は金型中央に充填することが好ましい。また、積層体の厚みが所定の厚みとなるようにスペーサー等を用いて厚みを調整してもよい。
【0078】
本発明の積層体は、軽量でありながら耐燃性や強度に優れる特徴を有することから、バッテリーケースの他、航空宇宙機部材、鉄道車両部材、住宅設備部材、電子機器部材、医療機器部材、家電部材、自動車部材等の様々な用途に好適に用いることができる。
【実施例
【0079】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。
【0080】
製造例1 プリプレグ(1)の製造
温度計、窒素及び空気導入管、冷却コンデンサ、撹拌機を設けた1Lのフラスコに、エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン152」、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量365g/当量、臭素含有量48.1質量%)365質量部、メタクリル酸84質量部、重合禁止剤としてt-ブチルハイドロキノン0.18質量部を仕込み、窒素と空気とを1対1で混合したガス流通下で、95℃まで昇温した。ここに触媒としてトリフェニルホスフィン0.9質量部を入れ、105℃に昇温して12時間反応させると、酸価が1以下になったので、反応を終了した。80℃付近まで冷却した後、反応容器より取り出し、エポキシメタアクリレート(1)を得た。この樹脂の水酸基価は135mgKOH/gであった。また、この樹脂の(メタ)アクリロイル基当量は450g/当量であった。
【0081】
ジフェニルメタンジイソシアネート(BASFINOACポリウレタン株式会社製「ルプラネート MI」)13質量部、先で得たエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(1)80質量部、エチレン性不飽和単量体(ブタンジオールジメタクリレート)20質量部、及び重合開始剤(化薬アクゾ株式会社製「トリゴノックス122-C80」、有機過酸化物、10時間半減期温度87℃)11.3質量部を混合し、マトリックス樹脂(1)を得た。プリプレグ製造装置を用いて、硝子繊維(日本電気硝子株式会社製「ER1620F」、硝子繊維の目付け量162g/m)にマトリックス樹脂(1)を樹脂質量含有率が35%となるように含浸させ、厚さ0.13mmのプリプレグ(1)を得た。
【0082】
製造例2 プリプレグ(2)の製造
ジフェニルメタンジイソシアネート(BASFINOACポリウレタン株式会社製「ルプラネート MI」)13質量部、製造例1で得たエポキシ(メタ)アクリレート樹脂(1)80質量部、エチレン性不飽和単量体(ブタンジオールジメタクリレート)20質量部、及び重合開始剤(化薬アクゾ株式会社製「トリゴノックス421-70」、有機過酸化物、10時間半減期温度65℃)18.1質量部を混合し、マトリックス樹脂(2)を得た。プリプレグ製造装置を用いて、硝子繊維(日本電気硝子株式会社製「ER1620F」、硝子繊維の目付け量162g/m)にマトリックス樹脂(2)を樹脂質量含有率が35%となるように含浸させ、厚さ0.13mmのプリプレグ(2)を得た。
【0083】
製造例3 プリプレグ(3)の製造
ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートとジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物(東ソー株式会社製「ミリオネート MR-200」、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの含有量55~65質量)100質量部、ヒドロキシエチルメタアクリレート59質量部、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物(三洋化成株式会社製「ニューポールBPE-20」、水酸基当量164g/当量)24質量部、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物(三洋化成株式会社製「ニューポールBPE-40」、水酸基当量204g/当量)31質量部、重合開始剤(化薬アクゾ株式会社製「トリゴノックス122-C80」、有機過酸化物)2.1質量部を混合し、マトリックス樹脂(2)を得た。プリプレグ製造装置を用いて、硝子繊維(日本電気硝子株式会社製「ER1620F」、硝子繊維の目付け量162g/m)にマトリックス樹脂(3)を樹脂質量含有率が35%となるように含浸させ、厚さは0.13mmのプリプレグ(3)を得た。
【0084】
製造例4 プリプレグ(4)の製造
ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートとジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物(東ソー株式会社製「ミリオネート MR-200」、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの含有量55~65質量%)100質量部、ヒドロキシエチルメタアクリレート59質量部、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物(三洋化成株式会社製「ニューポールBPE-20」、水酸基当量164g/当量)24質量部、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物(三洋化成株式会社製「ニューポールBPE-40」、水酸基当量204g/当量)31質量部、重合開始剤(化薬アクゾ株式会社製「トリゴノックス122-C80」、有機過酸化物)2.1質量部を混合し、マトリックス樹脂(3)を得た。プリプレグ製造装置を用いて、炭素繊維(東レ株式会社製「T700SC」、炭素繊維の目付け量100g/m)にマトリックス樹脂(4)を樹脂質量含有率が34%となるように含浸させ、厚さ0.1mmのプリプレグ(4)を得た。
【0085】
製造例5 プリプレグ(5)の製造
ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートとジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物(東ソー株式会社製「ミリオネート MR-200」、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの含有量55~65質量%)100質量部、ヒドロキシエチルメタアクリレート59質量部、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物(三洋化成株式会社製「ニューポールBPE-20」、水酸基当量164g/当量)24質量部、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物(三洋化成株式会社製「ニューポールBPE-40」、水酸基当量204g/当量)31質量部、重合開始剤(化薬アクゾ株式会社製「トリゴノックス122-C80」、有機過酸化物)2.1質量部を混合し、マトリックス樹脂(3)を得た。SMC製造装置を用いて、1/2インチにカットしてランダムに散布した炭素繊維(東レ株式会社製「T700SC」、炭素繊維の目付け量1150g/m)にマトリックス樹脂(4)を樹脂質量含有率43%となるように含浸させ、厚さ1.6mmのプリプレグ(5)を得た。
【0086】
実施例1~7及び比較例1
下記の要領で積層体(1)~(7)及び積層体(1’)を製造し、各種評価試験を行った。各積層体の評価結果を表1に示す。
【0087】
実施例1 積層体(1)の製造
製造例1で得たプリプレグ(1)を298mm×218mm及び298mm×218mmの大きさに切断し、プリプレグの繊維方向が0°方向と90°方向との互い違いになるように順に4枚積層した。これを、離型剤を塗布した平面板金型の中央に充填し、圧力4MPa、上型温度140℃、下型温度135℃、成形時間3分の条件で圧縮成形して、300mm×220mm×0.5mmの外層(B1)を得た。JIS K 7017に準拠して測定した外層(B1)の曲げ弾性率は24.6GPaであった。
厚さ10mmの発泡スチロール板(ウシオマテックス株式会社製「バリシールド」、表面に難燃剤をコーティングしたスチレンビーズの発泡体、密度0.04g/cm、発泡倍率60倍)を298mm×218mmの大きさに切断した後、平面板金型の中央に充填し、上型温度30℃、下型温度30℃、成形時間5分の条件で圧縮成形し、300mm×220mm×2mmのコア層(A1)を得た。コア層(A1)の厚み方向の圧縮率は80%、比重は0.20g/m、圧縮率から算出される発泡体セルのアスペクト比は5であった。
前記コア層(A1)の片面にアルミ箔テープ(株式会社木村MonotaRO製「アルミテープ ストロング」、テープ全体の厚み0.2mm、アルミ箔部の厚み0.025mm)を張り付けた。更にその両面に、難燃性両面テープ(日東電工製「No.5011N」)を用いて前記外層(B1)を1枚ずつ張り合わせ、積層体(1)を得た。
【0088】
実施例2 積層体(2)の製造
実施例1と同様にして前記コア層(A1)と前記外層(B1)とを得た。
前記コア層(A1)の両面にアルミ箔テープ(株式会社木村MonotaRO製「アルミテープ ストロング」、テープ全体の厚0.2mm、アルミ箔部の厚み0.025mm)を張り付けた。更にその両面に、難燃性両面テープ(日東電工製「No.5011N」)を用いて前記外層(B1)を1枚ずつ張り合わせ、積層体(2)を得た。
【0089】
実施例3 積層体(3)の製造
製造例1で得たプリプレグ(1)を298mm×218mm及び298mm×218mmの大きさに切断し、プリプレグの繊維方向が0°方向と90°方向との互い違いになるように順に3枚積層した。これを、離型剤を塗布した平面板金型の中央に充填し、圧縮成形機で圧力4MPa、上型140℃、下型135℃、成形時間3分の条件で圧縮成形し、幅300mm×220mm×0.35mmの外層(B2)を得た。JIS K 7017に準拠して測定した外層(B2)の曲げ弾性率は24.6GPaであった。
厚さ20mmの発泡スチロール板(ウシオマテックス株式会社製「バリシールド」、表面に難燃剤をコーティングしたスチレンビーズの発泡体、密度0.04g/cm、発泡倍率60倍)を298mm×218mmの大きさに切断した後、平面板金型の中央に充填し、上型温度30℃、下型温度30℃、成形時間5分の条件で圧縮成形し、300mm×220mm×1.5mmのコア層(A2)を得た。コア層(A2)の厚み方向の圧縮率は92.5%、比重は0.53g/m、圧縮率から算出される発泡体セルのアスペクト比は13.3であった。
前記コア層(A2)の両面にアルミ箔テープ(株式会社木村MonotaRO製「アルミテープ ストロング」、テープ全体の厚み0.2mm、アルミ箔部の厚み0.025mm)を張り付けた。更にその両面に、難燃性両面テープ(日東電工製「No.5011N」)を用いて前記外層(B2)を1枚ずつ張り合わせ、積層体(3)を得た。
【0090】
実施例4 積層体(4)の製造
製造例3で得たプリプレグ(3)を298mm×218mm及び298mm×218mmの大きさに切断し、プリプレグの繊維方向が0°方向と90°方向との互い違いになるように順に8枚積層した。これを、離型剤を塗布した平面板金型の中央に充填し、圧縮成形機で圧力4MPa、上型140℃、下型135℃、成形時間3分の条件で圧縮成形し、幅300mm×220mm×1mmの外層(B3)を得た。JIS K 7017に準拠して測定した外層(B3)の曲げ弾性率は23.2GPaであった。
厚さ20mmの発泡スチロール板(ウシオマテックス株式会社製「バリシールド」、表面に難燃剤をコーティングしたスチレンビーズの発泡体、密度0.04g/cm、発泡倍率60倍)を298mm×218mmの大きさに切断した後、平面板金型の中央に充填し、上型温度30℃、下型温度30℃、成形時間5分の条件で圧縮成形し、300mm×220mm×2mmのコア層(A3)を得た。コア層(A3)の厚み方向の圧縮率は90%、比重は0.40g/m、圧縮率から算出される発泡体セルのアスペクト比は10であった。
前記コア層(A3)の両面にアルミ箔テープ(株式会社木村MonotaRO製「アルミテープ ストロング」、テープ全体の厚み0.2mm、アルミ箔部の厚み0.025mm)を張り付けた。更にその両面に、難燃性両面テープ(日東電工製「No.5011N」)を用いて前記外層(B3)を1枚ずつ張り合わせ、積層体(4)を得た。
【0091】
実施例5 積層体(5)の製造
製造例4で得たプリプレグ(4)を298mm×218mm及び298mm×218mmの大きさに切断し、プリプレグの繊維方向が0°方向と90°方向との互い違いになるように順に10枚積層した。離型剤を塗布した平面板金型の中央に充填し、圧縮成形機で圧力4MPa、上型140℃、下型135℃、成形時間3分の条件で圧縮成形し、幅300mm×220mm×1mmの外層(B4)を得た。JIS K 7017に準拠して測定した外層(B4)の曲げ弾性率は61.5GPaであった。
実施例4と同様の方法にて前記コア層(A3)を得た。
前記コア層(A3)の両面にアルミ箔テープ(株式会社木村MonotaRO製「アルミテープ ストロング」、テープ全体の厚み0.2mm、アルミ箔部の厚み0.025mm)を張り付けた。更にその両面に、難燃性両面テープ(日東電工製「No.5011N」)を用いて前記外層(B3)を1枚ずつ張り合わせ、積層体(5)を得た。
【0092】
実施例6 積層体(6)の製造
両面にアルミ箔を備えた発泡スチロール板(ウシオマテックス株式会社製「両面アルミ箔付きバリシールド」、表面に難燃剤をコーティングしたスチレンビーズ発泡体、厚み20mm、密度0.04g/cm、発泡倍率60倍、アルミ箔部の厚み0.03mm)を298mm×218mmの大きさに切断し、その両面にプライマー(アサヒペン製「メタルプライマー」)を塗布した。その両面に、製造例2で得たプリプレグ(2)を298mm×218mm及び298mm×218mmの大きさに切断し、プリプレグの繊維方向が0°方向と90°方向との互い違いになるように順に4枚積層し、離型剤を塗布した平面板金型の中央に充填し、3mmのスペーサーを設置して、圧力4MPa、上型温度105℃、下型温度100℃、成形時間5分の条件で圧縮成形して、300mm×220mm×3mmの積層体(6)を得た。積層体(6)は、コア層(A4)の厚さが2mm、外層(B4)の厚さが0.47mm、金属層の厚さが0.03mmであった。
得られた積層体(6)の外層(B4)と同一の成形体を作製し、この成形体についてJIS K 7017に準拠して測定した外層の曲げ弾性率は24.6GPaであった。前記成形体は、製造例2で得たプリプレグ(2)を上記と同様の大きさに切断し、同様に4枚積層したものを前記平面板金型の中央に充填し、充填量及び圧力等を適宜調整することによって作製した。
【0093】
実施例7 積層体(7)の製造
製造例5で得たプリプレグ(5)を290mm×212mmの大きさに切断した。切断した1枚のプリプレグを、離型剤を塗布した平面板金型の中央に充填し、圧力10MPa、上型温度145℃、下型温度145℃、成形時間3分の条件で圧縮成形して、300mm×220mm×1.5mmの外層(B4)を得た。JIS K 7017に準拠して測定した外層(B4)の曲げ弾性率は29GPaであった。
前記外層(B1)に代えて得られた外層(B4)を用いた点を除いて、実施例2と全く同様にして、積層体(7)を得た。
【0094】
比較例1 積層体(1’)の製造
実施例1と同様にして外層(B1)を得た。
厚さ2mmの発泡スチロール板(ウシオマテックス株式会社製「バリシールド」、表面に難燃剤をコーティングしたスチレンビーズの発泡体、密度0.04g/cm、発泡倍率60倍)を300mm×220mmの大きさに切断し、コア層(A5)とした。
難燃性両面テープ(日東電工製「No.5011N」)を用い、コア層(A5)の両面に外層(B1)を1枚ずつ張り合わせ、積層体(1’)を得た。
【0095】
積層体の厚みの評価
コア層(A)、外層(B)、金属層(C)の合計の厚みを積層体の厚みとして評価した。なお、本評価においては、積層体の製造工程にて使用した両面テープや、アルミ箔テープの接着層の厚みは積層体の厚みに含まないことにした。
【0096】
積層体の比重の測定
コア層(A)及び外層(B)の合計の重量を積層体の体積で割った数値を比重として評価した。なお、本評価においては、積層体の製造工程にて使用した両面テープやアルミ箔テープの重量と体積は積層体の重量と体積に含まないことにした。
【0097】
耐燃性の評価
ガスバーナーを用いて、積層体の片面の中心部に炎を当て、積層体に接触する直火の温度が1000℃になるように炎の位置を調整して6分間加熱した。積層体の直火加熱していない面の中心部の表面温度を測定し、加熱時の最高温度で評価した。最高温度が低いほど耐燃性に優れることを意味する。
【0098】
積層体の強度の評価
積層体の強度を示す指標として曲げ剛性(D)を算出し、評価した。
曲げ剛性(D)は以下の式から算出した。
D=((E1×t1)×(E2×t2)×(T+tc))/4λ(E1×t1+E2×t2)
ここで、Eは外層(B)の曲げ弾性率[kN/mm](上層E1、下層E2)、tは外層(B)の厚み[mm](上層t1、下層t2)、tcはコア層(A)の厚み[mm]、Tは積層体の厚み[mm]である。λは1-(ポアソン比)2として算出されるが異方性材料の係数として0.99を用いた。
鋼板の平均値である4.5kN・mmを超えるものをA、それ以下をBとして評価した。
【0099】
【表1】
【0100】
表1に示すように、発泡体からなるコア層(A)と、繊維強化プラスチックからなる外層(B)と、金属層(C)とを有する実施例1~7の積層体は、いずれも、軽量かつ薄肉でありながら、耐燃性及び強度に優れている。特に、耐燃性の評価において加熱時の最高温度が240℃であったことから、実施例1~7の積層体を用いた成形体、特にバッテリーケースにおいては、バッテリーが異常に発熱したときでも、バッテリーケースの温度が過度に高くなることを防ぐことができ、安全性を確保できる。
【0101】
一方、発泡体からなるコア層(A)と、繊維強化プラスチックからなる外層(B)とを有するが、金属層(C)を有さない比較例1の積層体は、実施例1~7の積層体と比較して、耐燃性が劣っている。特に、耐燃性の評価において加熱時の最高温度が320℃であったことから、比較例1の積層体を用いたバッテリーケースにおいては、バッテリーが過度に発熱したときに、バッテリーケースの温度が過度に高くなることを防ぐことができない。