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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】密封材組成物
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/844 20230101AFI20241106BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20241106BHJP
   C08G 59/24 20060101ALI20241106BHJP
   C08G 65/18 20060101ALI20241106BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20241106BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20241106BHJP
【FI】
H10K50/844
H05B33/04
C08G59/24
C08G65/18
C09K3/10 L
C09K3/10 B
H10K50/10
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022030015
(22)【出願日】2022-02-28
(62)【分割の表示】P 2019558657の分割
【原出願日】2018-04-30
(65)【公開番号】P2022071055
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】10-2017-0055075
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、クク ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ウー、ユ ジン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ミ リム
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/017524(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/111635(WO,A1)
【文献】特開2005-135735(JP,A)
【文献】特開2010-018797(JP,A)
【文献】特開2007-169337(JP,A)
【文献】国際公開第2016/167347(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/051795(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0037571(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1693265(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/10
H10K 50/844
H10K 50/10
H05B 33/04
C08G 59/24
C08G 65/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の密封材組成物に対して、前記密封材組成物100mgに対するカールフィッシャー電量滴定法による水分含量が1,000ppm以下となるように20~5,000lpm(liter per minute)の不活性気体を注入することを含む水分除去段階を含み、
前記水分除去段階は、定温状態で進められ、
前記密封材組成物は、エポキシ化合物を含み、
前記エポキシ化合物は、分子構造内に環形構造を有する化合物および直鎖または分岐鎖の脂肪族化合物を含み、
前記直鎖または分岐鎖の脂肪族化合物は、前記環形構造を有する化合物100重量部に対して、120重量部以上、173重量部未満の範囲内で含まれ、
前記密封材組成物は、無溶剤タイプのインク組成物である、
密封材組成物の製造方法。
【請求項2】
前記定温状態の設定温度は、20℃~48℃のうちいずれか一つの温度である、
請求項1に記載の密封材組成物の製造方法。
【請求項3】
前記定温状態は、前記設定温度対比-5℃~5℃の誤差範囲を有する、
請求項2に記載の密封材組成物の製造方法。
【請求項4】
前記水分除去段階は、容器内の圧力を600~760mmHgの範囲内に調節することを含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載の密封材組成物の製造方法。
【請求項5】
前記水分除去段階の後に前記密封材組成物をパウチに保管することを含む、
請求項1から4のいずれか1項に記載の密封材組成物の製造方法。
【請求項6】
前記密封材組成物は、前記密封材組成物100mgに対するカールフィッシャー電量滴定法による水分含量が1,000ppm以下である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の密封材組成物の製造方法。
【請求項7】
前記エポキシ化合物100重量部に対して45重量部~145重量部の範囲内の、オキセタン基を有する化合物をさらに含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載の密封材組成物の製造方法。
【請求項8】
前記エポキシ化合物は、エポキシ官能基が2以上存在する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の密封材組成物の製造方法。
【請求項9】
前記分子構造内に前記環形構造を有する化合物は、分子構造内に環構成原子の数が3~10の範囲内である、
請求項1から8のいずれか一項に記載の密封材組成物の製造方法。
【請求項10】
前記密封材組成物は、界面活性剤をさらに含む、
請求項1から9のいずれか1項に記載の密封材組成物の製造方法。
【請求項11】
前記密封材組成物は、光開始剤をさらに含む、
請求項1から10のいずれか1項に記載の密封材組成物の製造方法。
【請求項12】
エポキシ化合物およびフッ素系界面活性剤を含む無溶剤タイプのインク組成物の形態である有機電子素子封止用密封材組成物であり、
前記有機電子素子封止用密封材組成物は、前記有機電子素子封止用密封材組成物100mgに対するカールフィッシャー電量滴定法による水分含量が1,000ppm以下であり、
前記エポキシ化合物は、分子構造内に環形構造を有する化合物および直鎖または分岐鎖の脂肪族化合物を含み、
前記直鎖または分岐鎖の脂肪族化合物は、前記環形構造を有する化合物100重量部に対して、120重量部以上、173重量部未満の範囲内で含まれる、 有機電子素子封止用密封材組成物。
【請求項13】
有機電子素子封止用密封材組成物の製造方法であって、
請求項1から11のいずれか1項に記載の密封材組成物の製造方法により、前記有機電子素子封止用密封材組成物を製造する、
有機電子素子封止用密封材組成物の製造方法。
【請求項14】
基板と;
基板上に形成された有機電子素子と;
前記有機電子素子の前面を密封し、前記有機電子素子封止用密封材組成物を含む有機層と
を含む
有機電子装置の製造方法であって、
請求項13に記載の有機電子素子封止用密封材組成物の製造方法を含む、
有機電子装置の製造方法。
【請求項15】
上部に有機電子素子が形成された基板の上に、請求項12に記載の有機電子素子封止用密封材組成物が前記有機電子素子の前面を密封するように有機層を形成する段階を含む
有機電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2017年4月28日付けの韓国特許出願第10-2017-0055075号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
技術分野
本出願は、密封材組成物、その製造方法、これを含む有機電子装置および前記有機電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
有機電子装置(OED;organic electronic device)は、正孔および電子を用いて電荷の交流を発生する有機材料層を含む装置を意味し、その例としては、光電池装置(photovoltaic device)、整流器(rectifier)、トランスミッター(transmitter)および有機発光ダイオード(OLED;organic light emitting diode)等が挙げられる。
【0004】
前記有機電子装置のうち有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Didoe)は、従来の光源に比べて、電力消費量が少なく、応答速度が速く、表示装置または照明の薄型化に有利である。また、OLEDは、空間活用性に優れていて、各種携帯用機器、モニター、ノートパソコンおよびテレビを含む多様な分野において適用されるものと期待されている。
【0005】
OLEDの商用化および用途拡大において、最も主要な問題点は、耐久性の問題である。OLEDに含まれた有機材料および金属電極などは、水分などの外部的要因により非常に容易に酸化される。したがって、OLEDを含む製品は、環境的要因に大きく敏感である。これにより、OLEDなどのような有機電子装置に対する外部からの酸素または水分などの浸透を効果的に遮断するために多様な方法が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、外部から有機電子装置に流入する水分または酸素を効果的に遮断して、有機電子装置の寿命を確保することができる密封材組成物およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願は、密封材組成物およびその製造方法に関する。前記密封材組成物は、後述する密封材の製造方法で製造され得る。前記密封材組成物は、例えば、OLEDなどのような有機電子装置を封止またはカプセル化することに適用される封止材であってもよい。一例において、本出願の密封材組成物は、有機電子素子の前面を封止またはカプセル化することに適用され得る。したがって、前記密封材組成物がカプセル化に適用された後には、有機電子装置の前面を密封する有機層の形態で存在することができる。また、前記有機層は、後述する無機保護膜および/または無機層と共に有機電子素子上に積層されて、封止構造を形成することができる。
【0008】
本出願の具体例において、本出願は、インクジェット工程に適用可能な有機電子素子封止用密封材組成物およびその製造方法に関し、前記組成物は、非接触式でパターニングが可能なインクジェットプリントを用いて基板に吐出されたとき、適切な物性を有するように設計され得る。
【0009】
本明細書で、用語「有機電子装置」は、互いに対向する一対の電極の間に正孔および電子を用いて電荷の交流を発生する有機材料層を含む構造を有する物品または装置を意味し、その例としては、光電池装置、整流器、トランスミッターおよび有機発光ダイオード(OLED)等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。本出願の一例において、前記有機電子装置は、OLEDであってもよい。
【0010】
例示的な密封材組成物の製造方法は、水分除去段階を含むことができる。前記密封材組成物は、前述した有機電子素子の封止に適用される前に、流通および保管段階を経るが、前記組成物の内部にまたは前記組成物を保管する容器の内部に水分が存在する場合、密封機能が消失することができる。したがって、本出願の密封材組成物は、水分除去段階を経た密封材組成物であってもよい。前記水分除去段階は、容器内の密封材組成物に対して20~5,000lpm(liter per minute)、30~4,300lpm、46~3,200lpm、58~2,800lpm、68~1,900lpm、80~1800lpm、120~1,700lpm、150~1,500lpm、180~1,400lpm、188~1,300lpmまたは192~1,250lpmの不活性気体を注入することを含むことができる。前記不活性気体は、Nであってもよく、これにより、窒素スパージング(sparging)を進めることができるが、これに限定されるものではない。従来、水分を除去する工程は、密封材組成物に対してサーキュレーターを用いて昇温と冷却を繰り返して不活性気体を注入することにより、水分を除去した。しかし、前記工程の場合、昇温と冷却過程中に密封材組成物のうち一部が揮発したり、一部が硬化したりすることがあり、この場合、目的とする組成配合と異なる組成で硬化が進められて、製品の信頼性が低下することとなる。本出願は、前記不活性気体の注入流量を調節することにより、昇温または冷却なしに密封材組成物内に存在する水分を除去することにより、信頼性に優れた密封材組成物を提供することができる。
【0011】
水分除去段階は、前記に限定されるのではなく、密封材組成物に対して水分吸着剤を通過させることをさらに含むことができる。通過させる方法は、特に制限されず、前記密封材組成物が前記水分吸着剤に接触させることを含むことができる。
【0012】
一例において、前記水分除去段階は、定温状態で進行され得る。前記定温状態は、昇温または冷却の段階が排除された状態を意味する。前記定温状態は、実質的に温度変化がない状態を意味し、実質的に温度変化がない状態は、設定温度対比-5℃~5℃または-3℃~3℃の誤差範囲を有することができる。また、前記設定温度は、20℃~48℃のうちいずれか一つの温度であってもよい。例えば、前記設定温度は、21℃~45℃、22℃~43℃、23℃~38℃または24℃~32℃であってもよい。本出願の密封材組成物の製造方法は、水分除去段階を定温状態に維持することにより、一部の硬化または一部の揮発を防止することができ、これに伴い、密封材組成物の目的とする組成配合を維持して、信頼性が高い製品を提供することができる。すなわち、本出願による密封材組成物は、後述する特定の組成配合を有するが、加熱するか、冷却する場合、一部の副反応が進められるか、相分離が発生することとなって、塗布特性(インクジェッティング)に劣り、これに伴い、素子に適用された後、発光時にダークスポットが発生するなど信頼性の低下を引き起こすことができる。
【0013】
本出願の具体例において、水分除去段階は、容器内の圧力を600~760mmHg、610mmHg~720mmHg、630mmHg~710mmHgまたは640mmHg~690mmHgの範囲内に調節することを含むことができる。本出願は、前記水分除去段階においての圧力範囲を調節することにより、目的とする水準まで水分を効果的に除去することができる。
【0014】
一例において、本出願の密封材の製造方法は、水分除去段階後に密封材組成物をパウチに保管することを含むことができる。前記パウチは、アルミニウムパウチであってもよいが、これに限定されるものではない。本出願は、前記密封材組成物をパウチに保管することにより、流通および保管中に大気中の水分が密封材組成物に浸透することを防止することができる。
【0015】
例示的な密封材組成物は、エポキシ化合物を含むことができる。前記密封材組成物は、無溶剤の形態であってもよい。無溶剤の形態は、有機溶剤が含まれていない形態の組成物を意味する。前記密封材組成物は、カールフィッシャー電量滴定法による水分含量が1000ppm以下、500ppm以下または100ppm以下であってもよい。前記測定は、組成物100mgに対して測定したものであってもよいが、これに限定されるものではない。下限は、特に限定されず、0ppmまたは10ppmであってもよい。前記水分測定は、実行温度25℃で進め、密閉容器内で進められ、0.3~2,240μg/minの適正速度の範囲内で当量点50mVに調整され得る。前記で、電量(Coulometric)方式では、発生電極(generating electrode)から電気的にヨード(Iodine)が生成されて、水と反応する。この際、試料中の水分量は、ヨードを生成するのに用いらされる電子のモル(mole)数から計算される。前記測定は、Metrohm社のKarl fischer titrators-831 KF Coulometer-coulometricを用いて測定され得る。本出願は、上記のように密封材組成物の硬化前の水分含量を制御することにより、有機電子素子に直接適用されても、素子に化学的損傷が加えられるのを防止し、有機電子装置のダークスポットの生成および成長を抑制させることができる。
【0016】
一例において、本出願の密封材組成物は、硬化後に測定される揮発性有機化合物の量が100ppm未満であってもよい。下限は、特に限定されず、0ppmまたは10ppmであってもよい。本明細書で前記揮発性有機化合物をアウトガスで表現することができる。前記揮発性有機化合物は、前記密封材組成物を硬化させた後、硬化物サンプルをファジータラップ(Purge & Trap)-気体クロマトグラフィー/質量分析法を用いて110℃で30分間維持した後、測定することができる。前記測定は、Purge&Trap sampler(JAI JTD-505III)-GC/MS(Agilent 7890b/5977a)機器を使用して測定したものであってもよい。出願は、上記のように密封材組成物の揮発性有機化合物の発生量を制御することにより、有機電子素子に直接適用されても、素子に化学的損傷が加えられるのを防止することができる。
【0017】
本出願の具体例において、密封材組成物は、エポキシ化合物100重量部に対して45重量部~145重量部の範囲内であり、オキセタン基を有する化合物を含むことができる。前記エポキシ化合物は、光硬化性または熱硬化性化合物であってもよく、本出願の具体例において光硬化性化合物であってもよい。前記オキセタン基を有する化合物は、前記エポキシ化合物100重量部に対して45重量部~145重量部、48重量部~144重量部、63重量部~143重量部または68重量部~142重量部の範囲内で含まれ得る。本明細書で用語「重量部」は、各成分間の重量比を意味する。本出願は、前記の特定の組成およびその含量範囲を制御することにより、有機電子素子にインクジェット方式で有機層を形成することができ、塗布された密封材組成物は、短時間内に優れた広がり性を有し、硬化した後に優れた硬化強度を有する有機層を提供することができる。一例において、本出願の密封材組成物は、ガラスに対する接触角が30°以下、25°以下、20°以下または12°以下であってもよい。下限は、特に制限されないが、1°または3°以上であってもよい。本出願は、前記接触角を30°以下に調節することにより、インクジェットコートにおける短時間内に広がり性を確保することができ、これに伴い、薄膜の有機層を形成することができる。本出願で前記接触角は、液滴(Sessile Drop)測定方法を使用して、ガラス上に前記密封材組成物を一粒塗布して測定したものであってもよく、5回塗布後に平均値を測定したものであってもよい。
【0018】
一例において、前記エポキシ化合物および/またはオキセタン基を有する化合物は、密封材組成物の全体成分内で70wt%以上、75wt%以上、80wt%以上85wt%以上または89wt%以上含まれ得る。上限は、特に制限されず、99wt%以下、95wt%以下または93wt%以下であってもよい。
【0019】
一例において、前記エポキシ化合物は、少なくとも二官能以上であってもよい。すなわち、エポキシ官能基が前記化合物に1以上または2以上存在することができ、上限は、特に限定されないが、10以下であってもよい。前記エポキシ化合物は、接着剤に適切な架橋度を具現して、高温高湿における優れた耐熱耐久性を具現する。
【0020】
本出願の具体例において、エポキシ化合物は、分子構造内に環形構造を有する化合物および/または直鎖または分岐鎖の脂肪族化合物を含むことができる。すなわち、本出願の密封材組成物は、エポキシ化合物として分子構造内に環形構造を有する化合物および直鎖または分岐鎖の脂肪族化合物のうち少なくとも一つを含むことができ、共に含むこともできる。一例において、前記分子構造内に環形構造を有する化合物は、分子構造内に環構成原子が3~10、4~8または5~7の範囲内であってもよく、前記化合物内に環形構造が1以上または2以上、10以下存在することができる。前記環形構造を有する化合物および直鎖または分岐鎖の脂肪族化合物が共に含まれる場合、前記直鎖または分岐鎖の脂肪族化合物は、環形構造を有する化合物100重量部に対して、20重量部以上、205重量部未満、23重量部~204重量部、30重量部~203重量部、34重量部~202重量部、40重量部~201重量部、60重量部~200重量部または100重量部~173重量部の範囲内で密封材組成物に含まれ得る。本出願は、前記含量範囲を制御することにより、密封材組成物が有機電子素子を前面密封するに際して、適合した物性を有するようにし、硬化後に優れた硬化強度を有するようにし、また、優れた水分遮断性を共に具現できるようにする。
【0021】
一例において、エポキシ化合物は、50~350g/eq、73~332g/eq、94~318g/eqまたは123~298g/eqの範囲のエポキシ当量を有することができる。また、オキセタン基を有する化合物は、重量平均分子量が150~1,000g/mol、173~980g/mol、188~860g/mol、210~823g/molまたは330~780g/molの範囲内にありえる。本出願は、前記エポキシ化合物のエポキシ当量を低く制御するか、前記オキセタン基を有する化合物の重量平均分子量を低く調節することにより、密封材の硬化後に硬化完了度を向上させて、組成物の粘度が過度に高くなってインクジェット工程が不可能になるのを防止することができ、同時に水分遮断性および優れた硬化感度を提供することができる。本明細書で重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)で測定した標準ポリスチレンに対する換算数値を意味する。一例において、250~300mmの長さ、4.5~7.5mmの内径を有する金属管からなるカラムに3~20mmのポリスチレンビーズで充填する。測定しようとする物質をTHF溶媒に溶かした希釈された溶液をカラムに通過させると、流出される時間に応じて重量平均分子量を間接的に測定可能である。カラムからサイズ別に分離して出る量を時間別にプロットして検出することができる。また、本明細書でエポキシ当量は、1グラム当量のエポキシ基を含有する樹脂のグラム数(g/eq)であり、JIS K 7236に規定された方法によって測定され得る。
【0022】
また、オキセタン基を有する化合物は、沸点が90~300℃、98~270℃、110~258℃または138~237℃の範囲内にありえる。本出願は、前記化合物の沸点を前記範囲に制御することにより、インクジェット工程で高温でも優れた印刷性を具現すると共に、外部から水分遮断性に優れ、アウトガスが抑制されて素子に加えられる損傷を防止できる密封材の提供が可能である。本明細書で沸点は、特に別途規定しない限り、1気圧で測定したものであってもよい。
【0023】
一例において、分子構造内に環形構造を有する化合物は、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3',4'-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(EEC)および誘導体、ジシクロペタジエンジオキシドおよび誘導体、ビニルシクロヘキセンジオキシドおよび誘導体、1,4-シクロヘキサンジメタノールビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)および誘導体を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
一例において、前記オキセタン基を含む化合物は、前記官能基を有する限り、その構造は制限されず、例えば、東亞合成社のOXT-221、CHOX、OX-SC、OXT101、OXT121、OXT221またはOXT212、またはETERNACOLL社のEHO、OXBP、OXTPまたはOXMAを例示することができる。また、直鎖または分岐鎖の脂肪族エポキシ化合物は、アルファティックグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテルまたはネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルを含むことができるが、これらに限らない。
【0025】
本出願の具体例において、前記密封材組成物は、界面活性剤をさらに含むことができる。前記密封材組成物は、界面活性剤を含むことにより、広がり性が向上した液相インクとして提供され得る。一例において、前記界面活性剤は、極性官能基を含むことができ、前記極性官能基は、界面活性剤の化合物構造の末端に存在することができる。前記極性官能基は、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシ基、リン酸塩またはスルホン酸塩を含むことができる。また、本出願の具体例において、前記界面活性剤は、非シリコン系界面活性剤またはフッ素系界面活性剤であってもよい。前記非シリコン系界面活性剤またはフッ素系界面活性剤は、前述したエポキシ化合物および/またはオキセタン基を有する化合物と共に適用されて、有機電子素子上に優れたコート性を提供する。なお、極性反応基を含む界面活性剤の場合、密封材組成物の他の成分との親和性が高いので、付着力の側面において優れた効果を具現することができる。本出願の具体例において、基材に対するコート性を向上させるために、親水性(hydrophilic)フッ素系界面活性剤または非シリコン系界面活性剤が使用できる。
【0026】
具体的に、前記界面活性剤は、高分子型またはオリゴマー型フッ素系界面活性剤であってもよい。前記界面活性剤は、市販品が使用でき、例えばTEGO社のGlide 100、Glide110、Glide 130、Glide 460、Glide 440、Glide450またはRAD2500、DIC(大日本インキ化学)社のMegaface F-251、F-281、F-552、F554、F-560、F-561、F-562、F-563、F-565、F-568、F-570およびF-571または旭硝子社のSurflon S-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141およびS-145または住友スリーエム社のFluorad FC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430およびFC-4430またはデュポン社のZonyl FS-300、FSN、FSN-100およびFSOおよびBYK社のBYK-350、BYK-354、BYK-355、BYK-356、BYK-358N、BYK-359、BYK-361N、BYK-381、BYK-388、BYK-392、BYK-394、BYK-399、BYK-3440、BYK-3441、BYKETOL-AQ、BYK-DYNWET 800等よりなる群から選択されるものが使用できる。
【0027】
前記界面活性剤は、エポキシ化合物100重量部に対して0.01~10重量部、0.05~10重量部、0.1重量部~10重量部、0.5重量部~8重量部または1重量部~4重量部で含まれ得る。前記含量範囲内で、本出願は、密封材組成物がインクジェット方式に適用されて、薄膜の有機層を形成できるようにする。
【0028】
本出願の具体例において、前記密封材組成物は、300nm以上の長波長の活性エネルギー線における硬化性を補完するために、光増減剤をさらに含むことができる。前記光増減剤は、200nm~400nmの範囲の波長を吸収する化合物であってもよい。
【0029】
前記光増減剤は、アントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセンなどのアントラセン系化合物;ベンゾフェノン、4,4-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルアミノベンゾフェノン、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、3,3,4,4-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;アセトフェノン;ジメトキシアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、プロパノンなどのケトン系化合物;ペリレン;9-フルオレノン、2-クロロ-9-フルオレノン、2-メチル-9-フルオレノンなどのフルオレノン系化合物;チオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロピルオキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン(ITX)、ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系化合物;キサントン、2-メチルキサントンなどのキサントン系化合物;アントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、t-ブチルアントラキノン、2,6-ジクロロ-9,10-アントラキノンなどのアントラキノン系化合物;9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9-アクリジニル)ヘプタン、1,5-ビス(9-アクリジニルペンタン)、1,3-ビス(9-アクリジニル)プロパンなどのアクリジン系化合物;ベンジル、1,7,7-トリメチル-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン-2,3-ジオン、9,10-フェナントレンキノンなどのジカルボニル化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドなどのホスフィンオキシド系化合物;メチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、エチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-n-ブトキシエチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエートなどのベンゾエート系化合物;2,5-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)-4-メチル-シクロペンタノンなどのアミノシナジスト;3,3-カルボニルビニル-7-(ジエチルアミノ)クマリン、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン、3-ベンゾイル-7-(ジエチルアミノ)クマリン、3-ベンゾイル-7-メトキシ-クマリン、10,10-カルボニルビス[1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H、5H、11H-C1]-ベンゾピラノ[6,7,8-ij]-キノリジン-11-オンなどのクマリン系化合物;4-ジエチルアミノカルコン、4-アジドベンザルアセトフェノンなどのカルコン化合物;2-ベンゾイルメチレン;および3-メチル-b-ナフトチアゾリンよりなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0030】
前記光増減剤は、後述する光開始剤100重量部に対して、28重量部~40重量部、31重量部~38重量部または32重量部~36重量部の範囲内で含まれ得る。本出願は、前記光増減剤の含量を調節することにより、所望の波長においての硬化感度の上昇作用を具現しながらも、光増減剤が溶解せず、接着力を低下させるのを防止することができる。
【0031】
本出願の具体例において、密封材組成物は、光開始剤をさらに含むことができる。前記光開始剤は、イオン性光開始剤であってもよい。また、前記光開始剤は、200nm~400nmの範囲の波長を吸収する化合物であってもよい。
【0032】
一例において、前記光開始剤は、カチオン光重合開始剤であってもよい。カチオン光重合開始剤の場合、当業界における公知の素材が使用でき、例えば、芳香族スルホニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族ジアゾニウムまたは芳香族アンモニウムを含むカチオン部と、AsF 、SbF 、PF 、またはテトラキス(ペンタフルオルフェニル)ボレートを含むアニオン部とを有する化合物を含むことができる。また、カチオン光重合開始剤としては、オニウム塩(onium salt)または有機金属塩(organometallic salt)系のイオン化カチオン開始剤または有機シランまたは潜在性スルホン酸(latent sulfonic acid)系や非イオン化カチオン光重合開始剤が使用できる。オニウム塩系の開始剤としては、ジアリールヨードニウム塩(diaryliodonium salt)、トリアリールスルホニウム塩(triarylsulfonium salt)またはアリールジアゾニウム塩(aryldiazonium salt)等を例示することができ、有機金属塩系の開始剤としては、鉄アレン(iron arene)等を例示することができ、有機シラン系列の開始剤としては、o-ニトリルベンジルトリアリールシリルエーテル(o-nitrobenzyl triaryl silyl ether)、トリアーリルシリルペルオキシド(triaryl silyl peroxide)またはアシルシラン(acyl silane)等を例示することができ、潜在性スルホン酸系の開始剤としては、α-スルホニルオキシケトンまたはα-ヒドロキシメチルベンゾインスルホネートなどを例示することができるが、これらに制限されるものではない。
【0033】
一例において、本出願の密封材組成物は、インクジェット方式で有機電子素子を密封する用途に適合するように、前述した特定の組成に光開始剤としてスルホニウム塩を含む光開始剤を含むことができる。前記組成による密封材組成物は、有機電子素子上に直接密封されるにもかかわらず、アウトガスの発生量が少ないため、素子に化学的損傷が加えられるのを防止することができる。また、スルホニウム塩を含む光開始剤は、溶解度にも優れていて、インクジェット工程に適合するように適用され得る。
【0034】
本出願の具体例において、前記光開始剤は、エポキシ化合物100重量部に対して1~15重量部、3~14重量部、または7~13.5重量部で含まれ得る。
【0035】
本出願の密封材組成物は、カップリング剤をさらに含むことができる。本出願は、密封材組成物の硬化物の被着体との密着性や硬化物の耐透湿性を向上させることができる。前記カップリング剤は、例えば、チタニウム系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、シランカップリング剤を含むことができる。
【0036】
本出願の具体例において、前記シランカップリング剤としては、具体的には、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシランおよび2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ系シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランおよび11-メルカプトウンデシルトリメトキシシランなどのメルカプト系シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランおよびN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルジメトキシメチルシランなどのアミノ系シランカップリング剤;3-ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのウレイド系シランカップリング剤、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルメチルジエトキシシランなどのビニル系シランカップリング剤;p-スチリルトリメトキシシランなどのスチリル系シランカップリング剤;3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよび3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリレート系シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネート系シランカップリング剤、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系シランカップリング剤;フェニルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシランなどが挙げられる。
【0037】
本出願で、カップリング剤は、エポキシ化合物100重量部に対して、0.1重量部~10重量部または0.5重量部~5重量部で含まれ得る。本出願は、前記範囲内で、カップリング剤の添加による密着性の改善効果を具現することができる。
【0038】
本出願の密封材組成物は、必要に応じて、水分吸着剤を含むことができる。用語「水分吸着剤」は、物理的または化学的反応等を通して、外部から流入する水分または湿気を吸着または除去できる成分を総称する意味で使用できる。すなわち、水分反応性吸着剤または物理的吸着剤を意味し、その混合物も使用可能である。
【0039】
本出願で使用できる水分吸着剤の具体的な種類は、特に制限されず、例えば、水分反応性吸着剤の場合、金属酸化物、金属塩または五酸化リン(P)等の一種または二種以上の混合物が挙げられ、物理的吸着剤の場合、ゼオライト、ジルコニアまたはモンモリロナイトなどが挙げられる。
【0040】
本出願の密封材組成物は、水分吸着剤を、エポキシ化合物100重量部に対して、5重量部~100重量部、5~80重量部、5重量部~70重量部または10~30重量部の量で含むことができる。本出願の密封材組成物は、好ましくは水分吸着剤の含量を5重量部以上に制御することにより、密封材組成物またはその硬化物が優れた水分および湿気遮断性を示すようにすることができる。また、本出願は、水分吸着剤の含量を100重量部以下に制御して、薄膜の封止構造を提供することができる。
【0041】
一例において、密封材組成物は、必要に応じて、無機フィラーをさらに含むことができる。本出願で使用できるフィラーの具体的な種類は、特に制限されず、例えば、クレー、タルク、アルミナ、炭酸カルシウムまたはシリカなどの一種または二種以上の混合が使用できる。
【0042】
本出願の密封材組成物は、エポキシ化合物100重量部に対して0重量部~50重量部、1重量部~40重量部、1重量部~20重量部、または1~10重量部の無機フィラーを含むことができる。本出願は、無機フィラーを、好ましくは1重量部以上に制御して、優れた水分または湿気遮断性および機械的物性を有する封止構造を提供することができる。また、本発明は、無機フィラーの含量を50重量部以下に制御することにより、薄膜で形成された場合にも、優れた水分遮断特性を示す硬化物を提供することができる。
【0043】
本出願による密封材組成物には、前述した構成の他にも、前述した発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、多様な添加剤が含まれ得る。例えば、密封材組成物は、消泡剤、粘着付与剤、紫外線安定剤または酸化防止剤などを目的とする物性によって適正範囲の含量で含むことができる。
【0044】
一例において、前記密封材組成物は、常温、例えば、約25℃で液相であってもよい。本出願の具体例において、密封材組成物は、無溶剤の形態の液相であってもよい。前記密封材組成物は、有機電子素子を封止することに適用され得、具体的に、有機電子素子の前面を封止することに適用され得る。本出願は、密封材組成物が常温で液相の形態を有することにより、有機電子素子の側面に組成物を塗布する方式で素子を封止することができる。また、本出願は、無溶剤の形態を有することにより、揮発性有機化合物および/または水分含量を前述した範囲に調節することができる。
【0045】
また、本出願の密封材組成物は、インク組成物であってもよい。本出願の密封材組成物は、インクジェット工程が可能なインク組成物であってもよい。本出願の密封材組成物は、インクジェット可能になり得るように特定の組成および物性を有することができる。
【0046】
また、本出願の具体例において、前記密封材組成物は、硬化後に可視光線領域においての光透過度が90%以上、92%以上または95%以上であってもよい。前記範囲内で本出願は、密封材組成物を前面発光型有機電子装置に適用して、高解像度、低消費電力および長寿名の有機電子装置を提供する。また、本出願の密封材組成物は、硬化後にJIS K7105標準試験によるヘイズが3%以下、2%以下または1%以下であってもよく、下限は、特に限定されないが、0%であってもよい。前記ヘイズ範囲内で密封材組成物は、硬化後に優れた光学特性を有することができる。本明細書で、前述した光透過度またはヘイズは、前記密封材組成物を有機層で硬化した状態で測定したものであってもよく、前記有機層の厚さを2μm~50μmのうちいずれか一つの厚さであるときに測定した光学特性であってもよい。本出願の具体例において、前記光学特性を具現するために、前述した水分吸着剤または無機フィラーは、含まなくてもよい。
【0047】
また、本出願は、密封材組成物に関する。前記密封材組成物は、カールフィッシャー電量滴定法による水分含量が1,000ppm以下、500ppm以下または100ppm以下であってもよい。前記測定は、組成物100mgに対して測定したものであってもよいが、これに限定されるものではない。下限は、特に限定されず、0ppmまたは10ppmであってもよい。前記水分測定は、実行温度25℃で進め、密閉容器内で進められ、0.3~2,240μg/minの適正速度の範囲内で当量点50mVに調整され得る。前記で電量(Coulometric)方式では、発生電極(generating electrode)から電気的にヨードが生成されて、水と反応する。この際、試料中の水分量は、ヨードを生成するのに用いられる電子のモル数から計算される。前記測定は、Metrohm社のKarl fischer titrators-831 KF Coulometer-coulometricを用いて測定され得る。本出願は、上記のように密封材組成物の硬化前の水分含量を制御することにより、有機電子素子に直接適用されても、素子に化学的損傷が加えられるのを防止し、有機電子装置のダークスポットの生成および成長を抑制させることができる。前記密封材組成物は、前述した製造方法で製造された有機電子素子封止用密封材組成物であってもよい。
【0048】
また、本出願は、有機電子装置に関する。例示的な有機電子装置3は、図1に示されたように、基板31と;前記基板31上に形成された有機電子素子32と;前記有機電子素子32の前面を密封し、前述した密封材組成物を含む有機層33とを含むことができる。
【0049】
本出願の具体例において、有機電子素子は、第1電極層と、前記第1電極層上に形成され、少なくとも発光層を含む有機層と、前記有機層上に形成される第2電極層とを含むことができる。前記第1電極層は、透明電極層または反射電極層であってもよく、第2電極層また、透明電極層または反射電極層であってもよい。より具体的に、前記有機電子素子は、基板上に形成された反射電極層と、前記反射電極層上に形成され、少なくとも発光層を含む有機層と、前記有機層上に形成される透明電極層とを含むことができる。
【0050】
本出願で有機電子素子23は、有機発光ダイオードであってもよい。
【0051】
一例において、本出願による有機電子装置は、前面発光(top emission)型であってもよいが、これに限定されるものではなく、背面発光(bottom emission)型に適用され得る。
【0052】
前記有機電子素子は、素子の電極および発光層を保護する保護膜35をさらに含むことができる。前記保護膜35は、無機保護膜であってもよい。前記保護膜は、化学気相蒸着(CVD、chemical vapor deposition)による保護層であってもよく、その素材は、公知の無機物素材が使用でき、例えば、シリコンナイトライド(SiNx)が使用できる。一例において、前記保護膜で使用されるシリコンナイトライド(SiNx)を0.01μm~50μmの厚さで蒸着することができる。
【0053】
本出願の具体例において、有機電子装置3は、前記有機層33上に形成された無機層34をさらに含むことができる。無機層34は、その素材は、制限されず、前述した保護膜と同じでも異なっていてもよい。一例において、無機層は、Al、Zr、Ti、Hf、Ta、In、Sn、ZnおよびSiよりなる群から選択された一つ以上の金属酸化物または窒化物であってもよい。前記無機層の厚さは、0.01μm~50μmまたは0.1μm~20μmまたは1μm~10μmであってもよい。一例において、本出願の無機層は、ドーパントが含まれていない無機物であるか、またはドーパントが含まれた無機物であってもよい。ドープされ得る前記ドーパントは、Ga、Si、Ge、Al、Sn、Ge、B、In、Tl、Sc、V、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiよりなる群から選択された1種以上の元素または前記元素の酸化物であってもよいが、これらに限らない。
【0054】
一例において、前記有機層の厚さは、2μm~20μm、2.5μm~15μm、2.8μm~9μmの範囲内であってもよい。本出願は、有機層の厚さを薄く提供して、薄膜の有機電子装置を提供することができる。
【0055】
本出願の有機電子装置3は、前述した有機層33および無機層34を含む封止構造を含むことができ、前記封止構造は、少なくとも一つ以上の有機層および少なくとも一つ以上の無機層を含み、有機層および無機層が繰り返して積層され得る。例えば、前記有機電子装置は、基板/有機電子素子/保護膜/(有機層/無機層)nの構造を有することができ、前記nは、1~100の範囲内の数であってもよい。図1は、nが1であるときを例示的に示す断面図である。
【0056】
一例において、本出願の有機電子装置3は、前記有機層33上に存在するカバー基板をさらに含むことができる。前記基板および/またはカバー基板の素材は、特に制限されず、当業界における公知の素材が使用できる。例えば、前記基板またはカバー基板は、ガラス、金属基材または高分子フィルムであってもよい。高分子フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリテトラフルオルエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-ビニルアセテートフィルム、エチレン-プロピレン共重合体フィルム、エチレン-アクリル酸エチル共重合体フィルム、エチレン-アクリル酸メチル共重合体フィルムまたはポリイミドフィルムなどが使用できる。
【0057】
また、本出願の有機電子装置3は、図2に示されたように、前記カバー基板38と前記有機電子素子32が形成された基板31との間に存在する封止フィルム37をさらに含むことができる。前記封止フィルム37は、有機電子素子32が形成された基板31と前記カバー基板38を付着する用途に適用され得、例えば、粘着フィルムまたは接着フィルムであってもよいが、これらに限定されるものではない。前記封止フィルム37は、有機電子素子32上に積層された前述した有機層および無機層の封止構造36の前面を密封することができる。
【0058】
また、本出願は、有機電子装置の製造方法に関する。
【0059】
一例において、前記製造方法は、上部に有機電子素子32が形成された基板31上に前述した密封材組成物が前記有機電子素子32の前面を密封するように有機層33を形成する段階を含むことができる。
【0060】
前記で有機電子素子32は、基板31として、例えば、ガラスまたは高分子フィルムのような基板31上に真空蒸着またはスパッタリングなどの方法で反射電極または透明電極を形成し、前記反射電極上に有機材料層を形成して製造され得る。前記有機材料層は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層および/または電子輸送層を含むことができる。次に、前記有機材料層上に第2電極をさらに形成する。第2電極は、透明電極または反射電極であってもよい。
【0061】
本出願の製造方法は、前記基板31上に形成された第1電極、有機材料層および第2電極上に保護膜35を形成する段階をさらに含むことができる。その後、前記基板31上に前記有機電子素子32を前面カバーするように前述した有機層33を適用する。この際、前記有機層33を形成する段階は、特に限定されず、前記基板31の前面に前述した密封材組成物をインクジェット印刷(Inkjet)、グラビアコート(Gravure)、スピンコート、スクリーンプリントまたはリバースオフセットコート(Reverse Offset)等の工程を用いることができる。
【0062】
また、前記製造方法は、前記有機層に光を照射する段階をさらに含むことができる。本発明では、有機電子装置を封止する有機層に対して硬化工程を行うこともできるので、このような硬化工程は、例えば、加熱チャンバーまたはUVチャンバーで進められ、好ましくはUVチャンバーで進められる。
【0063】
一例において、前述した密封材組成物を塗布して、前面有機層を形成した後、前記組成物に光を照射して架橋を誘導することができる。前記光を照射することは、250nm~450nmまたは300nm~450nm領域帯の波長範囲を有する光を0.3~6J/cmの光量または0.5~5J/cmの光量で照射することを含むことができる。
【0064】
また、本出願の製造方法は、前記有機層33上に無機層34を形成する段階をさらに含むことができる。前記無機層を形成する段階は、当業界における公知の方法が使用できて、前述した保護膜形成方法と同じでも異なっていてもよい。
【発明の効果】
【0065】
本出願は、外部から有機電子装置に流入する水分または酸素を効果的に遮断して、有機電子装置の寿命を確保することができる密封材組成物およびこれを含む有機電子装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】本発明の一例による有機電子装置を示す断面図である。
図2】本発明の一例による有機電子装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、本発明による実施例および本発明によらない比較例を通じて本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲が下記提示された実施例により制限されるものではない。
【0068】
実施例1
常温でエポキシ化合物として脂環族エポキシ化合物(ダイセル社、Celloxide 2021P)および脂肪族エポキシ化合物(HAJIN CHEM TECH社、DE203)、オキセタン基含有化合物(東亞合成社のOXT-221)、光開始剤(I290)およびフッ素系界面活性剤(DIC社のF552)をそれぞれ23.8:28.7:37.5:5.0:1.0(Celloxide 2021P:DE203:OXT-221:I290:F552)の重量比で混合容器に投入した。
【0069】
前記混合容器をプラネタリーミキサー(クラボウ、KK-250s)を用いて均一な密封材組成物インクを製造した。
【0070】
前記組成物インクに対して水分除去段階を進める。660mmHgの内部圧力を有する前記混合容器で製造された密封材組成物に対して200lpmの窒素スパージングを始め、設定温度25℃の定温状態を維持しつつ、3時間の間前記スパージングを持続させる。前記水分除去段階を終えた密封材組成物に対してアルミニウムパウチに密封する。
【0071】
実施例2
660mmHgの内部圧力を有する混合容器で製造された密封材組成物に対して1,000lpmの窒素スパージングを始め、設定温度25℃の定温状態を維持しつつ、3時間の間前記スパージングを持続したことを除いて、実施例1と同じ方法で密封材組成物を製造して、アルミニウムパウチに密封した。
【0072】
実施例3
660mmHgの内部圧力を有する混合容器で製造された密封材組成物に対して200lpmの窒素スパージングを始め、設定温度45℃の定温状態を維持しつつ、3時間の間前記スパージングを持続したことを除いて、実施例1と同じ方法で密封材組成物を製造して、アルミニウムパウチに密封した。
【0073】
比較例1
660mmHgの内部圧力を有する混合容器で製造された密封材組成物に対して5lpmの窒素スパージングを始め、設定温度25℃の定温状態を維持しつつ、3時間の間前記スパージングを持続したことを除いて、実施例1と同じ方法で密封材組成物を製造して、アルミニウムパウチに密封した。
【0074】
比較例2
660mmHgの内部圧力を有する混合容器で製造された密封材組成物に対して15lpmの窒素スパージングを始め、設定温度25℃の定温状態を維持しつつ、3時間の間前記スパージングを持続したことを除いて、実施例1と同じ方法で密封材組成物を製造して、アルミニウムパウチに密封した。
【0075】
比較例3
水分除去段階で温度を25℃から50℃に加熱したことを除いて、実施例1と同じ方法で密封材組成物インクを製造および保管した。
【0076】
比較例4
水分除去段階で温度を25℃から10℃に冷却させたことを除いて、実施例1と同じ方法で密封材組成物インクを製造および保管した。
【0077】
実施例および比較例における物性は、下記の方式で評価した。
【0078】
1.水分含量の測定
実施例および比較例で製造した密封材組成物に対してMetrohm社のKarl fischer titrators-831 KF Coulometer-coulometricを用いて水分含量を測定した。前記組成物100mgに対するカールフィッシャー電量滴定を用いて水分含量を測定した。また、実行温度25℃で進め、密閉容器内で進め、0.3~2240μg/minの適正速度の範囲内で当量点50mVに調整した。
【0079】
前記測定とは別に、実施例および比較例で水分除去段階を進める前の状態における密封材組成物に対する水分含量を測定して、下記表1のRefに記載した。
【0080】
2.アウトガスの測定
実施例および比較例で製造した密封材組成物を1000mW/cmの強度で1J/cmのUVを照射して硬化させた後、50mgの硬化物サンプルをファジータラップ(Purge & Trap)-気体クロマトグラフィー/質量分析法を用いて110℃で30分間維持した後、揮発性有機化合物の量を測定した。前記測定は、Purge&Trap sampler(JAI JTD-505III)-GC/MS(Agilent 7890b/5977a)機器を使用して測定した。測定量が100ppm以下の場合、良好、超過の場合、不良に分類することができる。
【0081】
3.粘度変化の測定
実施例および比較例で製造した密封材組成物に対して、パウチで密封した後、10日が経過した後、前記密封材組成物の粘度をブルックフィールド社の粘度計としてDV-3を使用して下記のように測定した。
【0082】
前記密封材組成物に対して、25℃の温度、90%のトルクおよび100rpmのせん断速度の条件で測定した。具体的に、ブルックフィールド粘度計のCone/plate方式を使用して試料を0.5ml注入して粘度を測定した。
【0083】
前記測定は、密封直前の粘度V1および10日経過後の粘度V2を測定してその変化率を測定し、その変化率が±10%以内の場合、良好、10%超過の場合、上昇、-10%超過の場合、下降に分類した。
【0084】
長期間保管時に密封材組成物内で副反応が進行された場合、粘度が上昇するので、変化率が高いほど組成物内の一部の副反応を予測することができる。
【0085】
4.信頼性の判断(ダークスポットの確認)
実施例および比較例で製造した密封材組成物を無機蒸着膜(化学気相蒸着膜)が形成された有機電子素子上に塗布した(インクジェット工程)。その後、1,000mW/cmの強度で1J/cmのUVを照射して硬化を進めた。硬化した有機層に対して85℃の温度および85%R.H.の環境で300時間の間放置した後、発光形態を観察した。暗点が全くない場合、O、1~2個の暗点が観察される場合、△、暗点が3個以上多量発生して発光が不可能な場合、Xに分類した。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【符号の説明】
【0088】
3 有機電子装置
31 基板
32 有機電子素子
33 有機層
34 無機層
35 保護膜
36 封止構造
37 封止フィルム
38 カバー基板
図1
図2