(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】重水素化芳香族化合物の製造方法および重水素化反応組成物
(51)【国際特許分類】
C07C 5/00 20060101AFI20241106BHJP
C07C 15/24 20060101ALI20241106BHJP
C07C 15/27 20060101ALI20241106BHJP
C07C 15/28 20060101ALI20241106BHJP
C07C 25/22 20060101ALI20241106BHJP
C07D 209/86 20060101ALI20241106BHJP
C07D 209/88 20060101ALI20241106BHJP
C07D 307/91 20060101ALI20241106BHJP
C07D 333/76 20060101ALI20241106BHJP
C07B 59/00 20060101ALN20241106BHJP
【FI】
C07C5/00
C07C15/24
C07C15/27
C07C15/28
C07C25/22
C07D209/86
C07D209/88
C07D307/91
C07D333/76
C07B59/00
(21)【出願番号】P 2023502600
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(86)【国際出願番号】 KR2021011510
(87)【国際公開番号】W WO2022045825
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0108194
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェオン、ドンミン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ダイ スン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、スンヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ベシー
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5846514(US,A)
【文献】Journal of Labelled Compounds and Radiopharmaceuticals,1986年,Vol. XXIV, No. 6,p. 741-743
【文献】J. Am. Chem.,Vol. 109,1987年,p. 5235-5249
【文献】Journal of Chemical Education,1999年,Vol. 76, No. 9,p. 1246-1247
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
C07B
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1
~30個の芳香族環を含む芳香族化合物、重水および前記重水によって加水分解が可能な有機化合物を含む溶液を用いて、前記芳香族化合物の重水素化反応を進行させる段階を含み、
前記重水により加水分解が可能な有機化合物が、下記化学式1~
2の少なくとも1つの化合物を含む
、重水素化芳香族化合物の製造方法:
[化学式1]
R1-C(O)OC(O)-R2
[化学式2]
R3-S(O
2)OS(O
2)-R4
前記化学式1~
2において、
R1は、下記化学式5または化学式6の置換基であり、
R
2~R
4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲン基で置換もしくは非置換のアルキル基であり、
[化学式5]
-(CH
2)
l(CF
2)
m(CF
3)
n(CH
3)
1-n
[化学式6]
-C(H)
a((CH
2)
l(CF
2)
mCF
3)
3-a
前記化学式5および6において、
lおよびmはそれぞれ0~10の整数であり、
n
は0であり、およびa
は0または1である。
【請求項2】
前記重水によって加水分解が可能な有機化合物が、
下記化学式3
の化合物
およびジメチルアセトアミドの少なくとも1つを含み、前記化学式1および化学式2の化合物の少なくとも1つをさらに含む、請求項
1に記載の重水素化芳香族化合物の製造方法
:
[化学式3]
R5-C(O)O-R6
前記化学式3において、
R5~R6は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲン基で置換もしくは非置換のアルキル基である。
【請求項3】
前記重水によって加水分解が可能な有機化合物は、トリフルオロメタンスルホン酸無水物
、酢酸無水物およびメタンスルホン酸無水物のうち少なくとも1つを含む、請求項1
または2に記載の重水素化芳香族化合物の製造方法。
【請求項4】
前記溶液は金属触媒を含まない、請求項1~
3のいずれか一項に記載の重水素化芳香族化合物の製造方法。
【請求項5】
前記芳香族化合物の重水素化反応を進行させる段階は、
1
~30個の芳香族環を含む芳香族化合物、重水および前記重水によって加水分解が可能な有機化合物を含む溶液を準備する段階;および
前記溶液を加熱して前記芳香族化合物の重水素化反応を進行させる段階を含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の重水素化芳香族化合物の製造方法。
【請求項6】
1
~30個の芳香族環を含む芳香族化合物、重水および前記重水によって加水分解が可能な有機化合物を含み、
前記重水によって加水分解が可能な有機化合物は、下記化学式1~
2の少なくとも1つの化合物を含む
、重水素化反応組成物
:
[化学式1]
R1-C(O)OC(O)-R2
[化学式2]
R3-S(O
2)OS(O
2)-R4
前記化学式1~
2において、
R1は、下記化学式5または化学式6の置換基であり、
R
2~R
4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、
ハロゲン基で置換または非置換のアルキル基であ
り、
[化学式5]
-(CH
2)
l(CF
2)
m(CF
3)
n(CH
3)
1-n
[化学式6]
-C(H)
a((CH
2)
l(CF
2)
mCF
3)
3-a
前記化学式5および6において、
lおよびmはそれぞれ0~10の整数であり、
n
は0であり、a
は0または1である。
【請求項7】
前記重水によって加水分解が可能な有機化合物は、トリフルオロメタンスルホン酸無水物
、酢酸無水物およびメタンスルホン酸無水物のうち少なくとも1つを含む、請求項
6に記載の重水素化反応組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年8月27日付にて韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2020-0108194号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に含まれる。
【0002】
本明細書は、重水素化芳香族化合物の製造方法および重水素化反応組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
重水素を含む化合物は様々な目的のために使用されている。例えば、化学反応メカニズムの究明または物質代謝の究明などの標識化合物として使用されるだけでなく、薬、殺虫剤、有機EL材料およびその他の目的のためにも重水素を含む化合物が多く用いられている。
【0004】
有機発光素子(OLED)物質の寿命を向上させるために芳香族化合物を重水素置換する方法が知られている。このような効果の原理は、重水素置換時のC-H bondよりC-D bondのLUMO energyが低くなり、OLED物質の寿命特性が向上する。
【0005】
既存の非均一系触媒反応を用いて1つ以上の芳香族化合物に対して重水素化反応を進行すると、副反応による副産物が引き続き発生する問題が発生した。これは水素気体により生成された水素化反応によるものであり、これを除去するために、反応後精製過程を通じて純度を高める試みもあったが、既存物質と融点や溶解度の面であまり違いは無いため、高純度を有するのは難しかった。これを改善するために水素気体無しで反応するためには、非常に高い温度(約220℃以上)で反応を進める必要があり、これは段階において安定性に問題が生じる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書は、重水素化芳香族化合物の製造方法および重水素化反応組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、少なくとも1つの芳香族環を含む芳香族化合物、重水(D2O)および前記重水によって加水分解が可能な有機化合物を含む溶液を用いて、前記芳香族化合物の重水素化反応を進行させる段階を含む重水素化芳香族化合物の製造方法を提供する。
【0008】
また、本明細書は、少なくとも1つの芳香族環を含む芳香族化合物、重水(D2O)、および前記重水によって加水分解が可能な有機化合物を含む重水素化反応組成物を提供する。
【0009】
なお、本明細書は、前述の方法で製造された重水素化芳香族化合物を提供する。
【0010】
さらに、本明細書は、前記重水素化芳香族化合物を含む電気素子を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本明細書に係る第1実施形態の製造方法は、水素気体による不純物が発生しないという利点がある。
【0012】
本明細書に係る第2実施形態の製造方法は、重水素置換率が高いという利点がある。
【0013】
本明細書に係る第3実施形態の製造方法は、収得された化合物の純度が高いという利点がある。
【0014】
本明細書に係る第4実施形態の製造方法は、より低い圧力で重水素化反応が可能である。
【0015】
本明細書に係る第5実施形態の製造方法は、より低い温度で重水素化反応が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本明細書について詳細に説明する。
【0017】
本明細書は、少なくとも1つの芳香族環を含む芳香族化合物、重水(D2O)および前記重水によって加水分解が可能な有機化合物を含む溶液を用いて、前記芳香族化合物の重水素化反応を進行させる段階を含む重水素化芳香族化合物の製造方法を提供する。
【0018】
本明細書の重水素化芳香族化合物の製造方法は、水素供給段階がないことが特徴である。
【0019】
従来は、重水素化芳香族化合物を製造するために添加された不均一系触媒である金属触媒を活性化するために、水素気体を供給した。水素を供給して重水素化反応を進行させると、水素気体により水素化反応が進行し、副反応による副産物が発生する。
【0020】
発生した副産物を除去するために反応後精製過程を通じて純度を高める過程が必要であり、このような精製段階を行っても副産物がターゲット物質と融点や溶解度の側面で違いが無いため、高純度で製造することが困難であった。
【0021】
本明細書の重水素化芳香族化合物の製造方法は、不均一系触媒である金属触媒の代わりに重水により加水分解が可能な有機化合物を用いて、金属触媒およびこれを活性化させるための水素気体の供給が不要なため、水素気体による不純物が発生しないという利点がある。
【0022】
一方、重水素化反応中に金属触媒を用いる場合、重水素化対象化合物の反応性基、すなわちハロゲン基、水酸基等と反応するため、金属触媒を用いた重水素化反応では、重水素化対象化合物が金属触媒と反応できる反応性基がないか、反応性の低い反応性基を有する化合物に制限されるしかなかった。
【0023】
本明細書の重水素化芳香族化合物の製造方法は、不均一系触媒である金属触媒の代わりに重水により加水分解が可能な有機化合物を用いるため、ハロゲン基、水酸基などのような反応性基を有する化合物も重水素化対象化合物として選択することができる。具体的には、ハロゲン基、水酸基などの反応性基を有する中間体である化合物の重水素化を進行した後、前記反応性基にさらに芳香族置換基を置換する反応を行うことができる。
【0024】
本明細書に係る製造方法は、重水素置換率が高いという利点がある。
【0025】
本明細書に係る製造方法は、収得された化合物の純度が高いという利点がある。
【0026】
本明細書に係る製造方法は、より低い圧力で重水素化反応が可能である。
【0027】
本明細書に係る製造方法は、より低い温度で重水素化反応が可能である。
【0028】
本明細書の重水素化芳香族化合物の製造方法は、少なくとも1つの芳香族環を含む芳香族化合物、重水(D2O)、および前記重水によって加水分解が可能な有機化合物を含む溶液を準備する段階を含む。
【0029】
前記少なくとも1つの芳香族環を含む芳香族化合物、重水(D2O)、および前記重水によって加水分解が可能な有機化合物を含む芳香族化合物を含む溶液を準備する段階は、反応器内に少なくとも1つの芳香族環を含む芳香族化合物、重水(D2O)および前記重水により加水分解が可能な有機化合物を含む溶液を投入するか、または1個以上の芳香族環を含む芳香族化合物、重水(D2O)および前記重水により加水分解が可能な有機化合物を個別に反応器に投入して溶液を準備することができる。
【0030】
前記重水により加水分解が可能な有機化合物は、重水により分解が可能な反応基を有していれば特に限定されず、例えば、下記化学式1~4の少なくとも1つの化合物を含んでもよい。
[化学式1]
R1-C(O)OC(O)-R2
[化学式2]
R3-S(O2)OS(O2)-R4
[化学式3]
R5-C(O)O-R6
[化学式4]
R7-CONH-R8
【0031】
前記化学式1~4において、R1~R8は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲン基で置換または非置換の一価の有機基である。
【0032】
本明細書の一実施形態において、前記R1とR2は互いに同一の置換基であってもよい。
【0033】
本明細書の一実施形態において、前記R3とR4は互いに同一の置換基であってもよい。
【0034】
本明細書の一実施形態において、前記R5とR6は互いに同一の置換基であってもよい。
【0035】
本明細書の一実施形態において、前記R7とR8は互いに同一の置換基であってもよい。
【0036】
本明細書の一実施形態において、前記R1~R8は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲン基で置換または非置換のアルキル基;あるいは、ハロゲン基で置換または非置換のアリール基であってもよい。
【0037】
本明細書の一実施形態において、前記R1~R8は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲン基で置換または非置換の炭素数1~30のアルキル基;あるいは、ハロゲン基で置換または非置換の炭素数6~50のアリール基であってもよい。
【0038】
本明細書の一実施形態において、前記R1~R8は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲン基で置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基;あるいは、ハロゲン基で置換または非置換の炭素数6~20のアリール基であってもよい。
【0039】
本明細書の一実施形態において、前記R1~R8は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲン基で置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基であってもよい。
【0040】
本明細書の一実施形態において、前記R1~R8は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲン基で置換または非置換の炭素数1~5のアルキル基であってもよい。
【0041】
本明細書の一実施形態において、前記R1~R8は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、下記化学式5または化学式6の置換基であってもよい。
[化学式5]
-(CH2)l(CF2)m(CF3)n(CH3)1-n
[化学式6]
-C(H)a((CH2)l(CF2)mCF3)3-a
前記化学式5および6において、lおよびmはそれぞれ0~10の整数であり、nおよびaはそれぞれ0または1である。
【0042】
本明細書の一実施形態において、前記R1~R8は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、化学式5の置換基であってもよい。
【0043】
本明細書の一実施形態において、前記R1~R8は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、-CF3,-CH2CH3または-CH3であってもよい。
【0044】
本明細書の一実施形態において、前記重水によって加水分解が可能な有機化合物は、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(Trifluoromethanesulfonic anhydride)、トリフルオロ酢酸無水物(Trifluoroacetic anhydride)、酢酸無水物(Acetic anhydride)、メタンスルホン酸無水物(Methanesulfonic anhydride)、酢酸メチル、酢酸エチル、およびジメチルアセトアミドの少なくとも1つを含んでもよい。
【0045】
本明細書の一実施形態において、前記重水により加水分解が可能な有機化合物は、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(Trifluorometanesulfonic anhydride)を含んでもよい。
【0046】
本明細書の一実施形態において、前記重水によって加水分解が可能な有機化合物は、トリフルオロ酢酸無水物(Trifluoroacetic anhydride)を含んでもよい。
【0047】
本明細書の一実施形態において、前記重水によって加水分解が可能な有機化合物は、酢酸無水物(Acetic anhydride)を含んでもよい。
【0048】
本明細書の一実施形態において、前記重水によって加水分解が可能な有機化合物は、メタンスルホン酸無水物(Methanesulfonic anhydride)を含んでもよい。
【0049】
本明細書の一実施形態において、前記重水によって加水分解が可能な有機化合物は、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(Trifluorometanesulfonic anhydride)およびトリフルオロ酢酸無水物(Trifluoroacetic anhydride)を含んでもよい。
【0050】
本明細書の一実施形態において、前記重水によって加水分解が可能な有機化合物は、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(Trifluoromethanesulfonic anhydride)および酢酸無水物(Acetic anhydride)を含んでもよい。
【0051】
本明細書の一実施形態において、前記重水によって加水分解が可能な有機化合物は、メタンスルホン酸無水物(Trifluorometanesulfonic anhydride)およびトリフルオロ酢酸無水物(Trifluoroacetic anhydride)を含んでもよい。
【0052】
本明細書の一実施形態において、前記重水によって加水分解が可能な有機化合物は、メタンスルホン酸無水物(Trifluorometanesulfonic anhydride)および酢酸無水物(Acetic anhydride)を含んでもよい。
【0053】
本明細書の一実施形態において、前記重水によって加水分解が可能な有機化合物は、前記化学式1および化学式2の化合物の少なくとも1つを含んでもよい。前記化学式1および化学式2の化合物の少なくとも一方を重水に投入すると、常温でも重水との加水分解が容易に起こる。
【0054】
本明細書の一実施形態において、前記重水によって加水分解が可能な有機化合物が、前記化学式1および化学式2の化合物の少なくとも一方を含み、前記化学式3および化学式4の化合物の少なくとも1つをさらに含んでもよい。前記重水により加水分解が可能な有機化合物が前記化学式1および化学式2の化合物の少なくとも一方を含む場合、相対的に加水分解反応が遅い前記化学式3および化学式4の化合物の少なくとも一つを加えて発熱反応である加水分解反応によって生じる温度を制御することができる。
【0055】
本明細書の一実施形態において、前記重水により加水分解が可能な有機化合物が、前記化学式3および化学式4の化合物の少なくとも一つを含む場合、前記化学式1および化学式2の化合物の少なくとも一つをさらに含んでもよい。相対的に加水分解反応が容易に起こる前記化学式1および化学式2の化合物を追加して加水分解反応を加速させることができる。
【0056】
本明細書の一実施形態において、前記重水により加水分解が可能な有機化合物は、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(Trifluoromethanesulfonic anhydride)、トリフルオロ酢酸無水物(Trifluoroacetic anhydride)、酢酸無水物(Acetic anhydride)およびメタンスルホン酸無水物(Methanesulfonic anhydride)の少なくとも1つを含み、酢酸メチル、酢酸エチルおよびジメチルアセトアミドの少なくとも1つをさらに含んでもよい。
【0057】
前記重水によって加水分解が可能な有機化合物内において、前記化学式3および化学式4の化合物の少なくとも1つと前記化学式1および化学式2の化合物の少なくとも1つの重量比は、100:0~0:100、99:1~0:100、90:10~0:100、80:20~0:100、70:30~0:100、60:40~0:100、50:50~0:100、40:60~0:100、30:70~0:100、20:80~0:100、または10:90~0:100であってもよい。
【0058】
本明細書に係る一実施形態によれば、前記重水によって加水分解が可能な有機化合物の含量は、重水のモルを基準にして1mol%以上100mol%以下であってもよい。具体的には、本明細書に係る一実施形態によれば、前記重水によって加水分解が可能な有機化合物の含量は重水のモル当量以下であり、ターゲット物質に応じて調節される。この場合、互いに混合しない前記芳香族化合物と重水との親和度を高めることができ、重水素置換反応性を増大させる利点がある。
【0059】
本明細書に係る一実施形態によれば、溶液は有機溶媒をさらに含んでもよい。前記有機溶媒は、前記芳香族化合物を溶解することができれば特に限定されず、使用される芳香族化合物に応じて選択することができる。
【0060】
前記有機溶媒は、重水と親和性が高ければ高いほどよく、重水と親和性が高くなくても、前記加水分解が可能な有機化合物に混合できるものであれば特に限定されない。
【0061】
前記溶液が追加の重水素源としてトルエン(Toluene)-d8のように重水素化された芳香族溶媒をさらに含む場合、追加の有機溶媒を添加しなくてもよい。
【0062】
本明細書に係る一実施形態によれば、前記溶液は金属触媒を含まず、その役割を重水により加水分解が可能な有機化合物が代わりに行うことが特徴である。これにより、金属触媒を添加することによって発生する問題点、例えば、水素気体を供給しなければならない点、水素気体による不純物を除去しなければならない点、高い反応温度と高い圧力を維持して耐えられる段階設備を用意しなければならない点などが解決される。
【0063】
本明細書に係る一実施形態によれば、溶液は重水を含む。
【0064】
本明細書に係る一実施形態によれば、前記重水の含量は、前記芳香族化合物重量の0.1倍以上30倍以下であってもよい。この場合、重水から効率的に重水素を置換できるという利点がある。
【0065】
本明細書に係る一実施形態によれば、前記溶液は重水と共に追加の重水素源を含んでもよい。前記重水素源は、重水素化された芳香族溶媒であってもよく、例えば、ベンゼン-d6(Benzene-d6)、トルエン-d8(Toluene-d8)などであってもよい。
【0066】
本明細書に係る一実施形態によれば、前記追加の重水素源の含量は、前記芳香族化合物重量の0.1倍以上30倍以下であってもよい。この場合、反応性を高めることができ、反応中の発熱を減らすことができる利点がある。
【0067】
本明細書の一実施形態において、前記芳香族化合物は、1つ以上の芳香族環を含む芳香族化合物であり、具体的には1つ以上30個以下の芳香族環を含む芳香族化合物である。このとき、芳香族環が1個以上であるという意味は、単環、多環またはこれらの組み合わせの芳香族環が1個以上であるか、基本単位である芳香族環(例えば:ベンゼン環)が1つ以上であってもよい。例えば、アントラセン環は、1つの芳香族環を意味するか、または基本単位であるベンゼン環を基準にして3つのベンゼン環が連結されたことを意味してもよい。
【0068】
本明細書に係る一実施形態によれば、前記溶媒の総重量を基準に、前記芳香族化合物の含量は3wt%以上50wt%以下であってもよい。
【0069】
本明細書の一実施形態において、前記芳香族環は、置換または非置換の単環または多環の炭化水素芳香族環、または置換または非置換の単環または多環のヘテロ芳香族環であってもよい。例えば、前記芳香族環は、置換または非置換のベンゼン環、置換または非置換のナフタレン環、置換または非置換のアントラセン環、置換または非置換のトリフェニレン(triphenylene)環、置換または非置換のフェナントレン(phenanthrene)環、置換または非置換のジベンゾフラン環、置換または非置換のジベンゾチオフェン環、置換または非置換のカルバゾール環などが挙げられる。
【0070】
本明細書の一実施形態において、前記芳香族化合物はカルバゾール系化合物またはアントラセン系化合物であってもよい。
【0071】
本明細書の一実施形態において、芳香族化合物はカルバゾール系化合物であり、具体的には置換または非置換のカルバゾール;あるいは、隣接する基が結合されたさらなる環を有し、置換または非置換のカルバゾールであってもよい。
【0072】
前記隣接する基が結合されたさらなる環を有するカルバゾールは、置換または非置換のベンゾカルバゾール;置換または非置換のジベンゾカルバゾール;置換または非置換のフロカルバゾール;あるいは、置換または非置換のインドロカルバゾールであってもよい。
【0073】
本明細書の一実施形態において、前記芳香族化合物はベンゼン;トルエン;ナフタレン;ナフチルアミン;インドール;カルバゾール;アントラキノン;あるいは、ジヒドロインドロカルバゾールであってもよい。
【0074】
本明細書の一実施形態において、前記芳香族化合物はアントラセン系化合物であってもよく、具体的には置換または非置換のアントラセンであってもよい。
【0075】
本明細書の一実施形態において、前記芳香族化合物は、下記化学式Aで表される化合物を含んでもよい。
[化学式A]
【化1】
前記化学式Aにおいて、
L21~L23は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、直接結合;または置換または非置換のアリーレン基;または置換または非置換のヘテロアリーレン基であり、
R21~R27は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;置換または非置換のアルキル基;置換または非置換のシクロアルキル基;置換または非置換のシリル基;置換または非置換のアリール基;または置換または非置換のヘテロアリール基であり、
Ar21~Ar23は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換または非置換のアリール基;または置換または非置換のヘテロアリール基であり、
aは0または1である。
【0076】
本明細書の一実施形態において、前記重水素化反応に参加する芳香族化合物は、下記化学式7~11のいずれかであってもよい。重水素化反応によって、選択された化合物の少なくとも1つの水素は重水素で置換される。
[化学式7]
【化2】
[化学式8]
【化3】
[化学式9]
【化4】
[化学式10]
【化5】
[化学式11]
【化6】
前記式7~11において、
XはO、SまたはNRであり、
Rは、水素;重水素;脱離基;水酸基;置換または非置換のアミン基;シアノ基;置換または非置換のアルキル基;置換または非置換のシクロアルキル基;置換または非置換のアリール基;または置換または非置換のヘテロ環基であり、
A1~A12は、それぞれ独立して、水素;脱離基;水酸基;置換または非置換のアミン基;シアノ基;置換または非置換のアルキル基;置換または非置換のシクロアルキル基;置換または非置換のアリール基;あるいは、置換または非置換のヘテロ環基であるか、隣接する基と互いに結合して置換または非置換の環を形成してもよく、
B1~B10は、それぞれ独立して、水素;脱離基;水酸基;置換または非置換のアミン基;シアノ基;置換または非置換のアルキル基;置換または非置換のシクロアルキル基;置換または非置換のアリール基;あるいは、置換または非置換のヘテロ環基であるか、隣接する基と互いに結合して置換または非置換の環を形成してもよく、
E1~E8は、それぞれ独立して、水素;脱離基;水酸基;置換または非置換のアミン基;シアノ基;置換または非置換のアルキル基;置換または非置換のシクロアルキル基;置換または非置換のアリール基;あるいは、置換または非置換のヘテロ環基であるか、隣接する基と互いに結合して置換または非置換の環を形成してもよく、
Y1~Y10は、それぞれ独立して、水素;脱離基;水酸基;置換または非置換のアミン基;シアノ基;置換または非置換のアルキル基;置換または非置換のシクロアルキル基;置換または非置換のアリール基;あるいは、置換または非置換のヘテロ環基であるか、隣接する基と互いに結合して置換または非置換の環を形成してもよく、
Z1~Z8は、それぞれ独立して、水素;脱離基;水酸基;置換または非置換のアミン基;シアノ基;置換または非置換のアルキル基;置換または非置換のシクロアルキル基;置換または非置換のアリール基;あるいは、置換または非置換のヘテロ環基であるか、隣接する基と互いに結合して置換または非置換の環を形成してもよい。
【0077】
本明細書における置換基の例は以下に説明するが、これに限定されない。
【0078】
前記「置換」という用語は、化合物の炭素原子に結合された水素原子が他の置換基に変わることを意味し、置換される位置は、水素原子が置換される位置、すなわち、置換基が置換可能な位置であれば限定されず、2以上置換される場合、2つ以上の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0079】
本明細書において「置換または非置換の」という用語は、ハロゲン基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシ基;アミン基;シリル基;ホウ素基;アルコキシ基;アルキル基;シクロアルキル基;アリール基;およびヘテロ環基からなる群から選択された1または2以上の置換基で置換されているか、前記例示の置換基のうち2以上の置換基が連結された置換基で置換されているか、またはいかなる置換基も有していないことを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であってもよい。すなわち、ビフェニル基はアリール基であってもよく、2つのフェニル基が連結された置換基と解釈されてもよい。
【0080】
本明細書において、「隣接する」基は、該当置換基が置換された原子と直接連結された原子に置換された置換基、当該置換基に立体構造的に最も近い位置にある置換基、または当該置換基が置換された原子に置換された他の置換基を意味することができる。例えば、ベンゼン環からオルト(ortho)位置で置換された2つの置換基および脂肪族環で同じ炭素で置換された2つの置換基は、互いに「隣接する」基と解釈されることができる。また、脂肪族環での連続した2つの炭素に連結された置換基(合計4つ)も「隣接する」基と解釈することができる。
【0081】
本明細書において、置換基中の「隣接する基は互いに結合して環を形成する」という意味は、隣接する基と互いに結合して置換または非置換の脂肪族炭化水素環;置換または非置換の芳香族炭化水素環;置換または非置換の脂肪族ヘテロ環;あるいは、置換または非置換の芳香族ヘテロ環を形成することを意味する。
【0082】
本明細書において、「隣接する基が結合して形成された5員または6員の環」とは、環の形成に関与した置換基を含む環が5員または6員であることを意味する。前記環の形成に関与した置換基を含む環に追加の環が縮合されることを含んでもよい。
【0083】
本明細書において、置換基のうち隣接する基が互いに結合して環を形成する場合、形成される環は下記構造のいずれであってもよい。
【化7】
前記構造において、S1~S12は、それぞれ独立して、水素;脱離基;水酸基;置換または非置換のアミン基;シアノ基;置換または非置換のアルキル基;置換または非置換のアリール基;または置換または非置換のヘテロ環基であり、
s1~s4、s6、s7はそれぞれ1~4の整数であり、
s5は1~6の整数であり、
s1が2以上の場合、S1は互いに同一または異なり、
s2が2以上の場合、S2は互いに同一または異なり、
s3が2以上の場合、S3は互いに同一または異なり、
s4が2以上の場合、S4は互いに同一または異なり、
s5が2以上の場合、S5は互いに同一または異なり、
s6が2以上の場合、S6は互いに同一または異なり、
s7が2以上の場合、S7は互いに同一または異なる。
【0084】
本明細書において、S1~S7は水素である。
【0085】
本明細書において、S8~S11は、それぞれ独立して、置換または非置換のアルキル基;または置換または非置換のアリール基である。
【0086】
本明細書において、S12は、置換または非置換のアリール基;または置換または非置換のヘテロ環基である。
【0087】
本明細書において、ハロゲン基の例には、フッ素(-F)、塩素(-Cl)、臭素(-Br)またはヨウ素(-I)がある。
【0088】
本明細書において、シリル基は-SiYaYbYcの化学式で表されることができ、前記Ya、YbおよびYcはそれぞれ水素;置換または非置換のアルキル基;あるいは、置換または非置換のアリール基であってもよい。前記シリル基は、具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、フェニルシリル基などがあるが、これらに限定されない。
【0089】
本明細書において、ホウ素基は-BYdYeの化学式で表されてもよく、前記YdおよびYeはそれぞれ水素;置換または非置換のアルキル基;あるいは、置換または非置換のアリール基であってもよい。前記ホウ素基は、具体的には、ジメチルホウ素基、ジエチルホウ素基、tert-ブチルメチルホウ素基、ジフェニルホウ素基、フェニルホウ素基などがあるが、これらに限定されない。
【0090】
本明細書において、前記アルキル基は直鎖または分岐鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1~60であることが好ましい。一実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~30である。他の実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~20である。また他の実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~10である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、n-ペンチル基、ヘキシル基、n-ヘキシル基、ヘプチル基、n-ヘプチル基、オクチル基、n-オクチル基などがあるが、これらに限定されない。
【0091】
本明細書において、前記アルコキシ基は直鎖、分岐鎖または環状鎖であってもよい。アルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~20であることが好ましい。具体的には、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、i-プロピルオキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ、3,3-ジメチルブチルオキシ、2-エチルブチルオキシ、n-オクチルオキシ、n-ノニルオキシ、n-デシルオキシなどであってもよいが、これらに限定されない。
【0092】
本明細書に記載のアルキル基、アルコキシ基およびその他のアルキル基部分を含む置換基は、直鎖または分岐鎖の形態の両方を含む。
【0093】
本明細書において、シクロアルキル基は特に限定されないが、炭素数3~60であることが好ましく、一実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~30である。他の実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~20である。また他の実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~6である。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などがあるが、これらに限定されない。
【0094】
本明細書において、アリール基は特に限定されないが、炭素数6~60であることが好ましく、単環式アリール基または多環式アリール基であってもよい。一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6~39である。一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6~30である。前記アリール基は、単環式アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クォーターフェニル基などであってもよいが、これに限定されない。前記多環式アリール基としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、ペリレニル基、トリフェニル基、クリセニル基、フルオレニル基、トリフェニレニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
本明細書において、フルオレン基は置換されていてもよく、2つの置換基が互いに結合してスピロ構造を形成してもよい。
【0096】
前記フルオレン基が置換されている場合、
【化8】
などのスピロフルオレン基、
【化9】
(9,9-ジメチルフルオレン基)、および
【化10】
(9,9-ジフェニルフルオレン基)などの置換されたフルオレン基であってもよい。ただし、これに限定されるものではない。
【0097】
本明細書において、ヘテロ環基は、異種原子であり、N、O、P、S、SiおよびSeのうち少なくとも1つを含む環基であって、炭素数は特に限定されないが、炭素数2~60であることが好ましい。一実施形態によれば、前記ヘテロ環基の炭素数は2~36である。ヘテロ環基の例としては、例えば、ピリジン基、ピロール基、ピリミジン基、キノリン基、ピリダジン基、フラン基、チオフェン基、イミダゾール基、ピラゾール基、ジベンゾフラン基、ジベンゾチオフェン基、カルバゾール基、ベンゾカルバゾール基、ベンゾナフトフラン基、ベンゾナフトチオフェン基、インデノカルバゾール基、インドロカルバゾール基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0098】
本明細書において、ヘテロアリール基は芳香族であることを除いては、上述のヘテロ環基に関する説明が適用されてもよい。
【0099】
本明細書において、アミン基は、-NH2;アルキルアミン基;N-アルキルアリールアミン基;アリールアミン基;N-アリールヘテロアリールアミン基;N-アルキルヘテロアリールアミン基およびヘテロアリールアミン基からなる群から選択することができ、炭素数は特に限定されないが、1~30であることが好ましい。アミン基の具体例としては、メチルアミン基、ジメチルアミン基、エチルアミン基、ジエチルアミン基、フェニルアミン基、ナフチルアミン基、ビフェニルアミン基、アントラセニルアミン基、9-メチル-アントラセニルアミン基、ジフェニルアミン基、N-フェニルナフチルアミン基、ジトリルアミン基、N-フェニルトリルアミン基、N-フェニルビフェニルアミン基、N-フェニルナフチルアミン基、N-ビフェニルナフチルアミン基、N-ナフチルフルオレニルアミン基、N-フェニルフェナントレニルアミン基、N-ビフェニルフェナントレニルアミン基、N-フェニルフルオレニルアミン基、N-フェニルターフェニルアミン基、N-フェナントレニルフルオレニルアミン基、N-ビフェニルフルオレニルアミン基などがあるが、これに限定されるものではない。
【0100】
本明細書において、N-アルキルアリールアミン基は、アミン基のNにアルキル基およびアリール基が置換されたアミン基を意味する。
【0101】
本明細書において、N-アリールヘテロアリールアミン基は、アミン基のNにアリール基およびヘテロアリール基が置換されたアミン基を意味する。
【0102】
本明細書において、N-アルキルヘテロアリールアミン基は、アミン基のNにアルキル基およびヘテロアリール基が置換されたアミン基を意味する。
【0103】
本明細書において、アルキルアミン基;N-アルキルアリールアミン基;アリールアミン基;N-アリールヘテロアリールアミン基;N-アルキルヘテロアリールアミン基およびヘテロアリールアミン基の中のアルキル基、アリール基およびヘテロアリール基は、それぞれ前述のアルキル基、アリール基およびヘテロアリール基の例示と同一である。
【0104】
本明細書の一実施形態において、前記芳香族化合物は、下記構造のいずれかであってもよい。
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【0105】
本明細書の重水素化芳香族化合物の製造方法は、前記反応器の内部空気を窒素または不活性気体で置換する段階をさらに含んでもよい。
【0106】
前記芳香族化合物の重水素化を進行させる段階は、常温(room temperature)で熱を加えることなく重水素化を進行させるか、前記溶液を加熱して重水素化を進行させることができる。このとき、常温は加熱または冷却しない自然そのままの気温であり、具体的には20±5℃の範囲であってもよい。
【0107】
本明細書における重水素化芳香族化合物の製造方法は、前記芳香族化合物の重水素化反応を進行させる段階は、
少なくとも1つの芳香族環を含む芳香族化合物、重水(D2O)および重水によって加水分解が可能な有機化合物を含む溶液を準備する段階;および
前記溶液を加熱して前記芳香族化合物の重水素化反応を進行させる段階を含んでもよい。
【0108】
前記反応器を加熱して芳香族化合物の重水素化を進行させる段階は、前記溶液を160℃以下、150℃以下、140℃以下、130℃以下、120℃以下、110℃以下、100℃以下、90℃以下、80℃以上の温度で加熱する段階であり、具体的には80℃以上140℃以下の温度に加熱する段階であってもよい。
【0109】
このとき、前記重水素反応時間は、昇温を完了してから3時間以上反応させる。具体的には、前記重水素反応を、昇温を完了した後、3時間以上24時間以下反応させることができ、好ましくは6時間以上18時間以下反応させる。
【0110】
本明細書の重水素化芳香族化合物の製造方法は、前記重水素化を進行させる段階の後に、前記重水素化された芳香族化合物を収得する段階をさらに含む。収得する方法は、当技術分野で公知の方法で行うことができ、特に限定されない。
【0111】
前記収得された重水素化された芳香族化合物の重水素置換率は高ければ高いほどよく、具体的に前記収得された重水素化された芳香族化合物の重水素置換率は、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上または100%であってもよい。
【0112】
前記収得された重水素化された芳香族化合物の純度は高ければ高いほどよく、具体的に、前記収得された重水素化された芳香族化合物の純度は、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、または100%であってもよい。
【0113】
本明細書は、前述の製造方法で製造された重水素化芳香族化合物を提供する。
【0114】
本明細書の一実施形態において、前記重水素化芳香族化合物は、少なくとも1以上の重水素で置換された芳香族化合物を意味する。
【0115】
本明細書の一実施形態において、前記重水素化芳香族化合物は、脱離基、水酸基、置換または非置換のアミン基およびシアノ基からなる群から選択された置換基を含む。
【0116】
本明細書において、前記脱離基を含む化合物は、有機合成の最終化合物の中間体であってもよく、前記脱離基は、最終化合物を基準に脱離されるか、または他の反応物と結合して化学的に変更される反応基を意味する。そこで、前記脱離基は、有機合成の方法と最終化合物の置換基の位置によって、脱離基の種類と脱離基が結合する位置が決定される。
【0117】
本明細書の一実施形態において、前記脱離基は、ハロゲン基およびボロニック酸基からなる群から選択されてもよい。
【0118】
本明細書の一実施態様において、前記脱離基、水酸基、置換または非置換のアミン基およびシアノ基からなる群から選択される置換基を含む重水素化芳香族化合物は、下記化学式7~11のいずれかであってもよい。
[化学式7]
【化40】
[化学式8]
【化41】
[化学式9]
【化42】
[化学式10]
【化43】
[化学式11]
【化44】
前記式7~11において、
XはO、SまたはNRであり、
Rは、水素;重水素;脱離基;水酸基;置換または非置換のアミン基;シアノ基;置換または非置換のアルキル基;置換または非置換のシクロアルキル基;置換または非置換のアリール基;または置換または非置換のヘテロ環基であり、
A1~A12のうち少なくとも1つは重水素であり、少なくとも1つは脱離基、水酸基、置換または非置換のアミン基およびシアノ基からなる群から選択される置換基であり、残りはそれぞれ独立して、水素;脱離基;水酸基;置換または非置換のアミン基;シアノ基;置換または非置換のアルキル基;置換または非置換のシクロアルキル基;置換または非置換のアリール基;あるいは、置換または非置換のヘテロ環基であるか、隣接する基と互いに結合して置換または非置換の環を形成してもよく、
B1~B10のうち少なくとも1つは重水素であり、少なくとも1つは脱離基、水酸基、置換または非置換のアミン基およびシアノ基からなる群から選択される置換基であり、残りはそれぞれ独立して、水素;脱離基;水酸基;置換または非置換のアミン基;シアノ基;置換または非置換のアルキル基;置換または非置換のシクロアルキル基;置換または非置換のアリール基;あるいは、置換または非置換のヘテロ環基であるか、隣接する基と互いに結合して置換または非置換の環を形成してもよく、
E1~E8のうち少なくとも1つは重水素であり、少なくとも1つは脱離基、水酸基、置換または非置換のアミン基およびシアノ基からなる群から選択される置換基であり、残りはそれぞれ独立して、水素;脱離基;水酸基;置換または非置換のアミン基;シアノ基;置換または非置換のアルキル基;置換または非置換のシクロアルキル基;置換または非置換のアリール基;あるいは、置換または非置換のヘテロ環基であるか、隣接する基と互いに結合して置換または非置換の環を形成してもよく、
Y1~Y10のうち少なくとも1つは重水素であり、少なくとも1つは脱離基、水酸基、置換または非置換のアミン基およびシアノ基からなる群から選択される置換基であり、残りはそれぞれ独立して、水素;脱離基;水酸基;置換または非置換のアミン基;シアノ基;置換または非置換のアルキル基;置換または非置換のシクロアルキル基;置換または非置換のアリール基;あるいは、置換または非置換のヘテロ環基であるか、隣接する基と互いに結合して置換または非置換の環を形成してもよく、
Z1~Z8のうち少なくとも1つは重水素であり、少なくとも1つは脱離基、水酸基、置換または非置換のアミン基およびシアノ基からなる群から選択される置換基であり、残りはそれぞれ独立して、水素;脱離基;水酸基;置換または非置換のアミン基;シアノ基;置換または非置換のアルキル基;置換または非置換のシクロアルキル基;置換または非置換のアリール基;あるいは、置換または非置換のヘテロ環基であるか、隣接する基と互いに結合して置換または非置換の環を形成してもよい。
【0119】
本明細書の一実施形態において、前記化学式7~11の化合物は、それぞれ脱離基、水酸基、置換または非置換のアミン基およびシアノ基からなる群から選択される置換基を有する。
【0120】
本明細書の一実施形態において、前記脱離基、水酸基、置換または非置換のアミン基およびシアノ基からなる群から選択される置換基を含む重水素化芳香族化合物は、下記構造のいずれか1つであり、前記構造はそれぞれ1以上の重水素で置換される。
【化45】
【化46】
【化47】
【化48】
。
【0121】
理論的には、重水素化化合物の全ての水素が重水素で置換される場合、すなわち重水素置換率が100%であれば、最も理想的に寿命特性が向上する。しかし、立体障害で極端な条件が必要か、副反応により重水素化される前に化合物が破壊されるなどの問題点があり、現実的に化合物の全ての水素を100%重水素化置換率で得ることが難しく、重水素化置換率を100%に近づけて得られる場合も、段階の時間、コスト等を考慮すると投資に対比して効率がよくない。
【0122】
本明細書において、重水素化反応により製造され、1以上の重水素を有する重水素化化合物は、置換された重水素の数に応じて分子量が異なる2以上の同位体を有する組成物から製造されるため、前記構造において重水素が置換される位置を省略する。
【0123】
前記構造の化合物において、水素で表示または置換された水素が省略された位置の少なくとも1つは重水素で置換されてもよい。
【0124】
本明細書は、少なくとも1つの芳香族環を含む芳香族化合物、重水(D2O)、および前記重水によって加水分解が可能な有機化合物を含む重水素化反応組成物を提供する。
【0125】
前記重水素化反応組成物は、前記の製造方法内の溶液の説明を引用することができる。
【0126】
本明細書の一実施形態において、前記重水によって加水分解が可能な有機化合物は、下記化学式1~4の少なくとも1つの化合物を含んでもよい。
[化学式1]
R1-C(O)OC(O)-R2
[化学式2]
R3-S(O2)OS(O2)-R4
[化学式3]
R5-C(O)O-R6
[化学式4]
R7-CONH-R8
前記式1~4において、
R1~R8は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、一価の有機基である。
【0127】
本明細書の一実施形態において、前記R1~R8は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲン基で置換または非置換のアルキル基;あるいは、ハロゲン基で置換または非置換のアリール基であってもよい。
【0128】
本明細書の一実施形態において、前記R1~R8は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、下記化学式5または化学式6の置換基であってもよい。
[化学式5]
-(CH2)l(CF2)m(CF3)n(CH3)1-n
[化学式6]
-C(H)a((CH2)l(CF2)mCF3)3-a
前記化学式5および6において、
lおよびmはそれぞれ0~10の整数であり、
nおよびaはそれぞれ0または1である。
【0129】
本明細書の一実施形態において、前記重水により加水分解が可能な有機化合物は、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(Trifluoromethanesulfonic anhydride)、トリフルオロ酢酸無水物(Trifluoroacetic anhydride)、酢酸無水物(Acetic anhydride)およびメタンスルホン酸無水物(Methanesulfonic anhydride)の少なくとも1つを含んでもよい。
【0130】
本明細書は、上述の重水素化芳香族化合物を含む電子素子を提供する。
【0131】
本明細書は、上述した重水素化芳香族化合物を用いて電子素子を製造する段階を含む電子素子の製造方法を提供する。
【0132】
前記電子素子および電子素子の製造方法は、前記組成物の説明を引用することができ、重複した説明は省略する。
【0133】
前記電子素子は、上述した重水素化芳香族化合物を用いることができる素子であれば特に限定されず、例えば、有機発光素子、有機燐光素子、有機太陽電池、有機感光体、有機トランジスタなどであってもよい。
【0134】
前記電子素子は第1の電極と;前記第1の電極と対向して設けられた第2の電極;および前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられた少なくとも1層の有機物層を含み、前記有機物層のうち少なくとも1層は上述の重水素化芳香族化合物を含んでもよい。
【0135】
本明細書は、上述した重水素化芳香族化合物を含む有機発光素子を提供する。
【0136】
本明細書の一実施形態において、前記有機発光素子は、第1の電極;前記第1の電極と対向して設けられた第2の電極;および前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられた有機物層を含み、前記有機物層は前記重水素化芳香族化合物を含む。
【0137】
本明細書の一実施形態において、前記有機物層は、前記重水素化芳香族化合物を含む発光層を含む。
【0138】
本明細書の有機発光素子の有機物層は単層構造からなってもよいが、2層以上の有機物層が積層された多層構造からなってもよい。例えば、本明細書の有機物層は、1~3層から構成されてもよい。また、本明細書の有機発光素子は、有機物層として正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを含む構造を有してもよい。しかしながら、有機発光素子の構造はこれに限定されず、より少ない数の有機層を含んでもよい。
【0139】
前記有機発光素子が複数の有機物層を含む場合、前記有機物層は同じ物質または異なる物質で形成されてもよい。
【0140】
例えば、本明細書の有機発光素子は、基板上に陽極、有機物層および陰極を順次積層することによって製造することができる。このとき、スパッタリング法(sputtering)や電子ビーム蒸発法(e-beam evaporation)などのPVD(Physical Vapor Deposition)法を用いて、基板上に金属または導電性を有する金属酸化物またはそれらの合金を蒸着して陽極を形成し、その上に正孔注入層、正孔輸送層、発光層および電子輸送層を含む有機物層を形成した後、その上に陰極として使用できる物質を蒸着することにより製造されることができる。このような方法の他にも、基板上に陰極物質から有機物層、陽極物質を順次蒸着して有機発光素子を作製してもよい。
【0141】
また、前記化学式1の化合物は、有機発光素子の製造時、真空蒸着法だけでなく、溶液塗布法によって有機物層に形成されてもよい。ここで、溶液塗布法とは、スピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレーディング、インクジェットプリンティング、スクリーンプリンティング、スプレー法、ロールコーティングなどを意味するが、これらだけに限定されるものではない。
【0142】
本明細書の一実施形態において、前記第1の電極は陽極であり、第2の電極は陰極である。
【0143】
他の一実施形態によれば、前記第1の電極は陰極であり、第2の電極は陽極である。
【0144】
また他の実施形態において、有機発光素子は、基板上に陽極、1層以上の有機物層、および陰極が順次積層された構造(normal type)の有機発光素子であってもよい。
【0145】
他の実施形態において、有機発光素子は、基板上に陰極、1層以上の有機物層、陽極が順次積層された逆方向構造(inverted type)の有機発光素子であってもよい。
【0146】
本明細書において、前記陰極、有機物層および陽極の材質は、有機物層の少なくとも一層に重水素化された芳香族化合物を含むこと以外には特に限定されず、当技術分野で知られている物質を用いてもよい。
【0147】
本明細書において、上述した重水素化芳香族化合物を有機燐光素子、有機太陽電池、有機感光体、有機トランジスタなどを始めとする電子素子でも有機発光素子に適用されるものと同様の原理で用いることができる。例えば、有機太陽電池は、陰極、陽極、および前記陰極と陽極との間に設けられた光活性層を含む構造であり、前記光活性層は前記選択された重水素化化合物を含んでもよい。
【0148】
以下では、実施例を通じて本明細書をさらに詳細に説明する。しかしながら、以下の実施例は本明細書を例示のためのものであり、本明細書を限定するためのものではない。
【0149】
[実施例]
[実施例1]
まず、1gのナフタレン、メタンスルホン酸無水物58gおよび11mlの重水をフラスコに投入した。その後攪拌しながら加熱し、80℃の温度で18時間反応を進行した。反応が完了した後、氷水を用いて冷却し、酢酸エチル20mlを加えた。その後、ピリジン50mlを加えて塩を生成した。生成した塩はフィルターを用いて除去し、濾液を10%炭酸カリウム(K2CO3)水溶液20mlを投入して中和を進行した。ここで、有機溶媒層のみを分離して硫酸マグネシウム(MgSO4)を用いて残存水分を除去した後、フィルターをした後に真空回転濃縮器(rotary evaporator)を用いて溶媒を除去して重水素で置換されたナフタレンを得た。
【0150】
[実施例2]
実施例1と同様の方法を用いて、ナフタレンの代わりにアントラセンを添加して重水素置換反応を進行して重水素で置換されたアントラセンを得た。
【0151】
[実施例3]
実施例1と同様の方法を用いて、ナフタレンの代わりに9-フェニルアントラセンを添加して重水素置換反応を進行して重水素で置換された9-フェニルアントラセンを得た。
【0152】
[実施例4]
実施例1と同様の方法を用いて、ナフタレンの代わりに9-ブロモアントラセンを添加して重水素置換反応を進行して重水素で置換された9-ブロモアントラセンを得た。
【0153】
[実施例5]
実施例1と同様の方法を用いて、ナフタレンの代わりに9-アントラセンボロニック酸を添加して重水素置換反応を進行させ、重水素で置換された9-アントラセンボロニック酸を得た。
【0154】
[実施例6]
実施例1と同様の方法を用いて、メタンスルホン酸無水物の代わりにトリフルオロメタンスルホン酸無水物54mlを添加して重水素置換反応を進行して重水素で置換されたナフタレンを得た。
【0155】
[実施例7]
実施例1と同様の方法を用いて、メタンスルホン酸無水物58gの代わりに、メタンスルホン酸無水物20gと酢酸無水物40mlを加えて重水素置換反応を進行して重水素で置換されたナフタレンを得た。
【0156】
[実施例8]
実施例1と同様の方法を用いて、メタンスルホン酸無水物58gの代わりに、メタンスルホン酸無水物20gと酢酸メチル40mlを加えて重水素置換反応を進行して重水素で置換されたナフタレンを得た。
【0157】
[実施例9]
実施例1と同様の方法を用いて、メタンスルホン酸無水物58gの代わりに、トリフルオロメタンスルホン酸無水物20mlと酢酸エチル40mlを加えて重水素置換反応を進行して重水素で置換されたナフタレンを得た。
【0158】
[実施例10]
実施例1と同様の方法を用いて、メタンスルホン酸無水物58gの代わりに、メタンスルホン酸無水物20gとジメチルアセトアミド40mlを加えて重水素置換反応を進行して重水素で置換されたナフタレンを得た。
【0159】
[実施例11]
実施例1と同様の方法を用いて、メタンスルホン酸無水物58gの代わりに、トリフルオロメタンスルホン酸無水物20mlとジメチルアセトアミド40mlを添加して重水素置換反応を進行して重水素で置換されたナフタレンを得た。
【0160】
[実施例12]
実施例4と同様の方法を用いて、メタンスルホン酸無水物58gの代わりに、トリフルオロメタンスルホン酸無水物20mlとジメチルアセトアミド40mlを添加して重水素置換反応を進行して重水素で置換された9-ブロモアントラセンを得た。
【0161】
[実施例13]
実施例1と同様の方法を用いて、ナフタレンの代わりに9H-カルバゾールを添加して重水素置換反応を進行して重水素で置換された9H-カルバゾールを得た。
【0162】
[実施例14]
実施例1と同様の方法を用いて、ナフタレンの代わりに3-ブロモ-9H-カルバゾールを添加して重水素置換反応を進行し、重水素で置換された3-ブロモ-9H-カルバゾールを得た。
【0163】
[実施例15]
実施例1と同様の方法を用いて、ナフタレンの代わりに9-クロロジベンゾ[b,d]フラン-2-オールを添加して重水素置換反応を進行し、重水素で置換された9-クロロジベンゾ[b,d]フラン-2-オールを得た。
【0164】
[実施例16]
実施例1と同様の方法を用いて、ナフタレンの代わりにジベンゾ[b,d]チオフェンを添加して重水素置換反応を進行して重水素で置換されたジベンゾ[b,d]チオフェンを得た。
【0165】
[実施例17]
実施例6と同様の方法を用いて、ナフタレンの代わりに5,11-ジヒドロインドロ[3,2-b]カルバゾールを添加して重水素置換反応を進行し、重水素で置換された5,11-ジヒドロインドロ[3,2-b]カルバゾールを得た。
【0166】
[実施例18]
実施例6と同様の方法を用いて、ナフタレンの代わりに8-ブロモ-1-クロロジベンゾ[b,d]フラン添加して重水素置換反応を進行して重水素で置換された8-ブロモ-1-クロロジベンゾ[b,d]フランを得た。
【0167】
[比較例1]
高圧反応器内に1gのナフタレン、15ml重水(D2O)および0.5gのPt/C(触媒中のPtの含量は10wt%)を入れ、反応器のヘッドを覆って反応器の内部を密閉した。撹拌しながら水素を約5分間反応物に吹き込んだ。次いで水素雰囲気下、温度180℃で18時間反応させた。重水素置換反応終了後、温度を下げ、メチレンクロリド15mlを加えて攪拌し、フィルターを進行させ触媒を除去する。その後、有機溶媒層のみを分離してMgSO4を用いて残存水分を除去した後、フィルターをした後、真空回転濃縮器(rotary evaporator)を用いて溶媒を除去して重水素で置換されたナフタレンを得た。
【0168】
[比較例2]
比較例1と同様の方法を用いて、ナフタレンの代わりにアントラセンに対する重水素置換反応を進行して重水素で置換されたアントラセンを得た。
【0169】
[比較例3]
比較例1と同様の方法を用いて、ナフタレンの代わりに9-ブロモアントラセンを添加して重水素置換反応を進行した。その結果、重水素で置換された9-ブロモアントラセンを得たが、ほとんどが臭素基を失った重水素で置換されたアントラセンを確認することができた。
【0170】
[比較例4]
比較例1と同様の方法を用いて、ナフタレンの代わりに9H-カルバゾールに対する重水素置換反応を進行して重水素で置換された9H-カルバゾールを得た。
【0171】
[比較例5]
比較例1と同様の方法を用いて、ナフタレンの代わりに3-ブロモ-9H-カルバゾールに対する重水素置換反応を行い、重水素で置換された3-ブロモ-9H-カルバゾールを得た。
【0172】
[比較例6]
比較例1と同様の方法を用いて、ナフタレンの代わりに8-ブロモ-1-クロロジベンゾ[b,d]フランに対する重水素置換反応を行い、重水素で置換された8-ブロモ-1-クロロジベンゾ[b、d]フランを得た。
【0173】
[実験例1]
実施例1~18および比較例1~6に対する純度、重水素置換率、水素化化合物の比率を測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0174】
純度と水素化化合物の割合は、反応が終わった試料を高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)用テトラヒドロフラン溶媒に溶かし、HPLCを介して254nmの波長でのスペクトルを積分して求めた。このとき移動相溶媒としてはアセトニトリル、テトラヒドロフランを5:5混合し、1%ギ酸を混合した溶媒と水を用いた。
【0175】
重水素化反応が終わった試料を定量してNMR測定用溶媒に溶かしたサンプル試料、および前記重水素化反応前の化合物とピークが重ならない任意の化合物を前記試料と同量に定量し、同じNMR測定用の溶媒に溶かした内部標準試料を製作した。作製されたサンプル試料と内部標準試料について、それぞれ1H-NMRを用いてNMR測定グラフを得た。
【0176】
1H-NMR peakを割り当てる(assign)際、内部標準ピーク(internal standard peak)を1にして重水素化反応が終わった試料の各位置に対する相対的な積分(integration)値を求めた。
【0177】
もし、重水素化反応が終わった試料から全ての位置に重水素で置換されたら、水素に関連するピークが全く出ず、この場合には重水素置換率が100%であると判断する。一方、全ての位置の水素が重水素で置換されていないと、重水素で置換されていない水素のピークが現れる。
【0178】
これを基に、本実験において、重水素置換率は、重水素が置換されない内部標準試料のNMR測定グラフにおける水素に関連するピークの積分値から、サンプル試料のNMR測定グラフで置換されていない水素によるピークの積分値を引いた値を求める。この値は各位置に対する相対的な積分(integration)値であり、重水素で置換されて該当ピークで現れないもので、重水素で置換された割合を表す。
【0179】
その後、1H-NMR測定サンプルを作製する際に使用した試料の重量と内部標準(internal standard)の重量、相対的な積分値を用いて試料の各位置別の置換率を計算した。
【0180】
【0181】
前記表1の結果から、実施例を比較例と比較してみると、相対的に低い温度および圧力条件下での重水素置換率は同等のレベルでありながらも高純度の重水素化化合物が得られることが確認できる。これは、副反応である水素化化合物の生成が減少し、重水素化反応が完了するまでハロゲン元素がまだ維持されたためである。