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特許7582590荷電粒子顕微鏡を使用してサンプルを検査する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】荷電粒子顕微鏡を使用してサンプルを検査する方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/22 20060101AFI20241106BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20241106BHJP
   H01J 37/252 20060101ALI20241106BHJP
   H01J 37/244 20060101ALI20241106BHJP
   G01N 23/04 20180101ALN20241106BHJP
【FI】
H01J37/22 502H
H01J37/28
H01J37/252 A
H01J37/28 B
H01J37/244
G01N23/04
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020091005
(22)【出願日】2020-05-26
(65)【公開番号】P2020194774
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】19177314.2
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ヤン クルサーチク
(72)【発明者】
【氏名】トマス トゥマ
(72)【発明者】
【氏名】ジリ ペトレク
【審査官】松平 佳巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-019900(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0028643(US,A1)
【文献】特開2002-323463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/22
H01J 37/28
H01J 37/252
H01J 37/244
G01N 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子顕微鏡を使用してサンプルを検査する方法であって、
荷電粒子ビームとサンプルとを準備することと、
前記サンプル上の複数のサンプル位置で前記荷電粒子ビームを走査することと、
第1の検出器を使用して、複数のサンプル位置上で走査されたビームに応答して、サンプルからの第1の種類の放射を検出することと、
検出された第1の種類の放射のスペクトル情報を使用して、前記複数のサンプル位置における前記サンプルに複数の相互に異なる相を割り当てることと、
制御ユニットによって、少なくとも前記複数のサンプル位置および前記相に関する情報を含む前記サンプルのデータ表現を提供することと、を含み、
前記方法は、
少なくとも1つの以前に割り当てられた相およびそのそれぞれのサンプル位置に関する情報を使用して、複数のサンプル位置のうちの少なくとも1つの他の位置について推定相を確立するステップと、
前記推定相を前記他のサンプル位置に割り当てるステップであって、隣接サンプル点を非確定的サンプル点と比較し、前記比較に基づいて、非確定的サンプル点に相を割り当てる、ステップと、を含み、
前記確立するステップは、機械学習推定量の使用を含み、前記機械学習推定量により、入力における個々の疎スペクトルについて最も可能性の高い密スペクトルを予測し、前記疎スペクトルを用いて、モデルが更新され、スペクトルを評価して、モデル化された相との類似性スコアを得ることを特徴とする、方法。
【請求項2】
測定および/または予想された前記第1の種類の放射に相を関連付けるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記機械学習推定量は、非負行列因数分解(NMF)、特異値分解(SVD)、独立成分分析(ICA)、潜在ディリクレ割り当て(LDA)およびK平均を含む群から選択される1つ以上の推定量を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
測定サンプル位置の数と推定サンプル位置の数との比が、10:1~1:10の範囲であるか、又は前記比は1:2~1:10の範囲である、請求項1~3いずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記それぞれのサンプル位置における前記少なくとも1つの以前に割り当てられた相に関する前記情報は、前記サンプル位置で検出された第1の種類の放射のスペクトル情報を含む、請求項1~4いずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の検出器は、EDS検出器である、請求項1~5いずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
第2の検出器を使用して、複数のサンプル位置上で走査されたビームに応答して、サンプルからの第2の種類の放射を検出するステップを含み、
複数のサンプル位置のうちの前記少なくとも1つの他の位置について前記推定相を確立するために、前記検出された前記第2の種類の放射を使用する、請求項1~6いずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
サンプルの走査領域の少なくとも一部を複数のセグメントに分割するために、検出された第1の種類の放射および/または検出された第2の種類の放射を使用する、請求項1~7いずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
複数のサンプル位置のうちの少なくとも1つの他の位置について前記推定相を確立するために、前記セグメントを使用する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9いずれか1項に記載の方法を使用してサンプルを検査するための荷電粒子顕微鏡であって、
荷電粒子源、最終プローブ形成レンズ、およびスキャナを含む、前記荷電粒子源から放射された荷電粒子のビームを試料上に集束させるための、光学カラムと、
前記最終プローブ形成レンズの下流に位置付けられ、かつ前記試料を保持するように構成された、試料ステージと、
前記荷電粒子源から放射された荷電粒子の入射に応答して、前記試料から生じる第1の種類の放射を検出するための第1の検出器と、
前記第1の検出器に接続された制御ユニットおよび処理デバイスと、を備え、
前記荷電粒子顕微鏡は、請求項1~9いずれか1項に記載の方法を実行するように構成されている、荷電粒子顕微鏡。
【請求項11】
荷電粒子顕微鏡は、複数のサンプル位置上で走査されたビームに応答して、サンプルからの第2の種類の放射を検出するための第2の検出器を備え、前記荷電粒子顕微鏡は、請求項1~9いずれか1項に記載の方法を実行するように構成されている、請求項10に記載の荷電粒子顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明は、荷電粒子顕微鏡を使用してサンプルを検査する方法であって、荷電粒子ビームとサンプルとを準備するステップと、前記サンプル上の複数のサンプル位置で前記荷電粒子ビームを走査させるステップと、第1の検出器を使用して、複数のサンプル位置上で走査されたビームに応答して、サンプルからの第1の種類の放射を検出するステップと、を含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子顕微鏡法は、特に電子顕微鏡の形で顕微鏡物体を画像化するための周知の、かつますます重要な技術である。これまで、基本的な種類の電子顕微鏡は、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、および走査透過型電子顕微鏡(STEM)などの多数の周知の装置類へと、また、「機械加工」集束イオンビーム(FIB)を追加的に使用して、例えばイオンビームミリングまたはイオンビーム誘導蒸着(IBID)などの支援作用を可能にする、いわゆる「デュアルビーム」装置(例えば、FIB-SEM)などの様々な亜種へと、進化してきている。当業者は、異種の荷電粒子顕微鏡に精通しているであろう。
【0003】
走査電子ビームによる試料の照射は、二次電子、後方散乱電子、X線およびカソード発光(赤外線、可視、および/または紫外線光子)の形態で、試料からの「補助」放射線の放出を促進する。この放出放射線の1つ以上の成分が、サンプル分析のために検出および使用され得る。
【0004】
通常、SEMでは、後方散乱電子が、固体検出器によって検出され、各後方散乱電子が、半導体検出器内に多くの電子-正孔対を作成するように増幅される。後方散乱電子検出器信号は、ビームが走査されるときに画像を形成するために使用され、各画像点の明るさは、一次ビームがサンプルを横切って移動するときにサンプル上の対応する点で検出された後方散乱電子の数によって判定される。画像は、検査されるサンプルのトポロジーに関する情報を提供するのみである。
【0005】
(「EDS」または「EDX」とも称される)「エネルギー分散型X線分光分析」と呼ばれるプロセスでは、電子ビームに応答してサンプルから来るX線のエネルギーを測定し、ヒストグラムにプロットして、材料固有スペクトルを形成する。測定されたスペクトルは、どの元素および鉱物が前記サンプル中に存在するかを判定するために、様々な元素の既知のスペクトルと比較され得る。
【0006】
EDSの欠点の1つは、サンプルのX線スペクトルを蓄積するためにかなりの時間を要することである。通常、離散分析点を有するグリッドが使用される。EDS検出器がX線を記録する間、電子ビームは、各分析点に滞留する。一度、十分なX線計数が記録されると、ビームは、次の分析点に移動する。EDS検出器からの信号は、各分析点についてX線スペクトル曲線を構築する信号処理ユニットに供給され、その分析点に最も一致するものを選択するために、既知の鉱物相の広範なライブラリに照会され得る。この既知の方法は、サンプル中に存在する相、すなわち化学組成を決定するのに比較的時間がかかる。
【発明の概要】
【0007】
上記を念頭におき、本発明の目的は、荷電粒子顕微鏡を使用してサンプルを検査する改善された方法であって、検出された放射のスペクトル情報を、前記サンプルを検査するために使用する、方法を提供することである。特に、本発明の目的は、サンプルに関する情報をより迅速におよび/またはより正確に取得するための方法および装置を提供することである。
【0008】
この目的のために、本発明は、請求項1に定義されるように、荷電粒子顕微鏡を使用してサンプルを検査する方法を提供する。方法は、
荷電粒子ビームとサンプルとを準備するステップと、
前記サンプル上の複数のサンプル位置で前記荷電粒子ビームを走査させるステップと、
第1の検出器を使用して、複数のサンプル位置上で走査されたビームに応答して、サンプルからの第1の種類の放射を検出するステップと、
検出された第1の種類の放射のスペクトル情報を使用して、前記複数のサンプル位置における前記サンプルに複数の相互に異なる相を割り当てるステップと、
制御ユニットによって、少なくとも前記複数のサンプル位置および前記相に関する情報を含む前記サンプルのデータ表現を提供するステップと、を含む。
【0009】
本明細書で定義されるように、方法は、
少なくとも1つの以前に割り当てられた相およびそのそれぞれのサンプル位置に関する情報を使用して、複数のサンプル位置のうちの少なくとも1つの他の位置について推定相を確立するステップと、
前記推定相を前記他のサンプル位置に割り当てるステップと、を含む。
【0010】
上述したように、方法は、第1の検出器を使用して、サンプルの領域上で走査されたビームに応答して、サンプルからの第1の種類の放射を検出するステップを含む。方法は、前記第1の種類の前記検出された放射のスペクトル情報を収集することをさらに含む。第1の検出器によって検出された放射は、特定の走査ビーム位置に関連し得、すなわち、サンプル上の特定の位置に関連し得る。これは、スペクトル情報が、同様に、サンプル上の対応する位置についても収集および/または判定され得ることを意味する。異なる位置について得られたスペクトル情報を互いに比較し得、1つ以上の特定の相をこれらの異なる位置に割り当てることができる。すでに割り当てられた相を使用して、例えば、これらすでに割り当てられた相への近接度に基づいて、他の位置について得られた部分的に得られたスペクトルプロファイルに基づいて、または他のパラメーターに基づいて、他の位置について推定相を確立することができる。
【0011】
したがって、本明細書で説明する方法では、少なくとも1つのサンプル位置の測定データを使用して、少なくとも1つのさらなるサンプル位置について推定データを確立することができる。一実施形態では、いくつかのサンプル位置の測定データを使用して、少なくとも1つのさらなるサンプル位置について推定データを確立し得る。いくつかのさらなるサンプル位置について推定データが確立されると考えられる。
【0012】
測定データ(すなわち、検出された第1の種類の放射のスペクトル情報が使用されたところで割り当てられた相)と推定データ(すなわち、少なくとも1つの推定相)とを組み合わせることができる。次いで、前記測定データおよび推定データを組み合わせて、前記サンプルの前記データ表現とし得る。これにより、特に容易に確立された相に基づいて相を推定するプロセスは比較的迅速であるので、サンプルのデータ表現をより迅速に生成することが可能である。したがって、より短い時間でサンプルの相に関する情報をユーザに提供することが可能である。したがって、本明細書で定義されるような目的が達成される。
【0013】
特に、本明細書で定義される方法は、1つ(またはそれ以上)のサンプル位置(複数可)の確立された相、すなわち化学組成を、1つ(またはそれ以上)のさらなるサンプル位置(複数可)の相、すなわち化学組成を割り当てるために使用することを可能にする。これにより、速度の向上が得られる。
【0014】
これは、特にEDSマッピング、すなわち第1の検出器がEDS検出器である場合に当てはまる。本発明者らは、X線マッピング中に、合計N個の個々のピクセルからのEDSスペクトルが完全に独立していないことを発見した。EDSシナリオの大半では、サンプル中に、各々がその特性スペクトルを有するいくつかの(K<<N)異なる化学物質(「相」とも呼ばれる)があると想定できる。したがって、所与の相に由来する各スペクトルは、その相についての、ひいてはその相に属するすべてのピクセルについての追加情報を提供する。この追加情報により、疎スペクトルから密スペクトルを予測でき、したがって、EDS X線マッピングプロセス全体を高速化できる。
【0015】
有利な実施形態を以下に説明する。
【0016】
一実施形態では、検出された第1の種類の放射の前記スペクトル情報は、サンプルの走査領域の少なくとも一部を複数のセグメントに分割するために使用され得る。前記複数のセグメントのうちの少なくとも1つにおける走査に沿った異なる位置での第1の種類の放射を組み合わせて、前記複数のセグメントのうちの前記1つにおけるサンプルの結合スペクトルを生成することができる。複数のセグメントを使用すると、例えば、特定のセグメントの範囲内に入る以前に決定された位置に対する新しい位置の近接度を使用することによって、改善された推定相を確立することが可能となる。結合スペクトルを使用すると、新しい位置の部分データを1つ以上の以前に得られた結合スペクトルと比較することが可能となり、これにより、その新しい位置について推定相を確立することが容易になる。
【0017】
一実施形態では、第2の検出器が、前記サンプルの前記領域上で走査された前記ビームに応答して、サンプルから第2の種類の放射を検出するために使用され、前記第2の種類の前記放射は、複数のサンプル位置のうちの少なくとも1つの他の位置について推定相を確立するために少なくとも部分的に使用される。この実施形態では、追加の検出器が、第2の種類の放射を検出するために使用される。第2の種類のこれらの放射は、第1の種類の放射とは異なる。第2の種類の放射は、複数のサンプル位置のうちの少なくとも1つの他の位置について推定相を確立する際に、直接的または間接的に使用することができる。
【0018】
実施形態では、前記第2の検出器は、荷電粒子、特に後方散乱電子などの電子を検出するために構成される。したがって、第2の検出器は、BSE検出器であり得る。前記第1の検出器が、粒子、特にX線光子などの光子を検出するように構成されていることもさらに考えられる。
【0019】
電子の後方散乱は、表面の元素の原子数、および表面と一次ビームと検出器との間の幾何学的関係に依存する。それゆえに、後方散乱電子画像は、輪郭情報、すなわち、異なる組成の領域間の境界、および断層情報を示す。後方散乱電子画像を得ることは、異なる特性を有する点の間に妥当なコントラストを生成するために各点で十分な数の電子のみを収集することを必要とするため、各点で完全なスペクトルを集めるために十分な数のX線を得ることよりも非常に高速である。また、電子が後方散乱される確率は、特定の周波数の特性X線の放射を生じる電子の確率よりも高い。単一の滞留点で十分な後方散乱電子画像データを得ることは、通常、1マイクロ秒未満を要するが、単一の滞留点で分析可能なスペクトルを得るために十分なX線を取得することは、通常、1ミリ秒超を要する。
【0020】
一実施形態では、第2の種類の放射は、サンプルの複数のセグメントを画定するために使用される。この実施形態では、方法は、
- 第2の検出器を使用して、前記サンプルの前記領域上で走査された前記ビームに応答して、サンプルからの第2の種類の放射を検出するステップと、
- 第2の種類の放射を使用して、サンプルの走査領域を複数のセグメントに分割するステップと、を含む。
【0021】
すでに上述したように、セグメントの使用は有利であり得る。
【0022】
一実施形態では、まず、後方散乱電子検出器を使用して画像を取得し、次いで、画像を処理して、コントラストから同じ元素組成を有するとみられる領域(またはセグメント)を同定する。次いで、サンプル上で、同定された領域のうちの少なくとも1つ以上の領域上で、好ましくは複数回、ビームを走査させ、領域を表すX線スペクトルを収集する。同定された領域および/または後方散乱電子検出器の走査中に発生したX線は、他の点について推定相を確立するために使用され得る情報を早くも得るために有利に使用され得る。
【0023】
一実施形態では、ビームを使用して、サンプルを走査し、同時に複数の分析点についてスペクトル情報を収集し得る。個別の分析点について完全なスペクトル情報を収集してから次の分析点に移るのではなく、サンプルを連続的にスキャンすることができ、必要なすべてのサンプル位置についてデータを得る。ビームの走査は、比較的速く、かつビームは、検査されるサンプルの領域上を連続的または半連続的に走査され得る。1回以上の走査後、得られたスペクトル情報は、疎であり得る、すなわち、いくつかの分析点は実際に完全な情報を提供し得るが、他の分析点は提供しない。このようにして、いくつかの分析点について得られたデータを使用して、他の点についての推定データを確立することができる。
【0024】
方法は、検査されるサンプルの領域の少なくとも一部を追加的に走査するステップと、前記第1の検出器を使用して、前記追加走査に応答して、前記第1の種類の放射を検出するステップと、を含み得る。連続的または半連続的に繰り返し走査することによって、前記第1の種類の放射に関するより多くの情報を得て、取得された情報をさらに改善すること、および推定相を改善することができる。
【0025】
一実施形態では、方法は、測定および/または予想された前記第1の種類の放射に相を関連付けるステップを含む。
【0026】
少なくとも1つのさらなるサンプル位置の測定データを、前記さらなるサンプル位置について相を確立する際に使用することが考えられる。例えば前記さらなるサンプル位置の測定データ、すなわち、その位置について検出された第1の種類の放射のスペクトル情報は、依然として比較的疎である可能性がある。その場合、測定データを以前に得られたデータと比較することができる。例えば、以前に割り当てられた相に基づいて、さらなるサンプル位置が1つ以上の既知の相を含むかどうかを早くも決定することができる。この場合、少なくとも1つの以前に割り当てられた相に関する情報を使用して、さらなるサンプル位置のデータを比較することができ、推定相を前記他のサンプル位置に割り当てることができる。
【0027】
一実施形態では、前記確立するステップは、機械学習推定量の使用を含む。機械学習推定量により、入力における個々の疎スペクトルについて最も可能性の高い密スペクトルを予測することができる。提案される機械学習推定量は、相およびそれらのスペクトルの内部モデルを維持することができる。各入力(疎)スペクトルを用いて、モデルが更新され、スペクトルを評価して、モデル化された相との類似性スコアを取得することができる。最後に、モデル化された相のスペクトルをこれらの類似性スコアに従って結合して、入力とモデルの現在の状態を考慮して、最も可能性の高い密スペクトルの推定値を生成することができる。
【0028】
前記機械学習推定量は、非負行列因数分解(NMF)、特異値分解(SVD)、独立成分分析(ICA)、潜在ディリクレ割り当て(LDA)およびK平均を含むグループから選択される1つ以上の推定量を含むことが考えられる。これらはすべて、コンポーネント/クラスタの識別と特徴付けができる教師なし学習技法である。
【0029】
一実施形態では、1つ以上の推定相が漸増的に提供される。言い換えれば、方法は、少なくとも1つの以前に割り当てられた相およびそのそれぞれのサンプル位置に関する情報を使用して、複数のサンプル位置のうちの少なくとも1つの他の位置について改善された推定相を確立するステップを含み得る。
【0030】
一実施形態では、機械学習推定量は、オンライン学習機能を備える。これは、機械学習推定量が、新しい例から学習し、さらなる推定で改善できることを意味する。これを達成する1つの方法は、フィードバックループの手段によるものであり、フィードバックループは、サンプルのフルスキャンと測定データに基づく相の確立とによって提供することができる。測定データは、以前に推定されたデータでチェックすることがき、これにより、機械学習推定量のオンライン学習が可能である。これにより、特にユーザが概して同様のサンプルを調査する場合に、大幅なスピードアップが可能になる。
【0031】
機械学習推定量は、初期化のための1つ以上の合図を含み得る。一実施形態では、後方散乱電子の分析が使用される。この目的のために、第2の種類の放射を検出するための第2の検出器が準備される。この実施形態では、第1の検出器はEDS検出器とすることができ、前記第2の検出器はBSE検出器である。
【0032】
一実施形態では、積分スペクトルの結果の定量化が、機械学習推定量の初期化のための合図として使用される。他の初期化手段も考えられる。
【0033】
一実施形態では、測定サンプル位置の数と推定サンプル位置の数との比が、10:1~1:10の範囲であり、特に、前記比は、1:2~1:10の範囲である。実験的測定により、提案された方法を使用することにより、非常に疎のスペクトルから高品質の推定値が得られることが確認された。例えば、15カウントのみのスペクトルから計算された推定値は、150カウントの未処理スペクトルに匹敵した。これにより、例えば、EDSのマッピング速度を大幅に高めることができる。これは、データ収集の初期段階で、特に当てはまる。さらに、より長い取得期間にわたって収集されたより大きなデータセットについてさえ、提案された推定量を使用して構築されたEDSマップの品質は大幅に改善される。これは、推定量に固有の正則化により、入力データの確率的ノイズの影響が減少するためである。
【0034】
これに関して、一実施形態では、サンプル位置が、各々が実質的に完全なスペクトルプロファイルを含む第1のグループのサンプル位置と、各々が実質的に不完全なスペクトルプロファイルを含む第2のグループのサンプル位置とを含むことが可能であることに留意されたい。実質的に不完全なスペクトルプロファイルとは、スペクトルデータが存在しないこと、または特定の相について最終的な結論を下せないという意味でスペクトルデータが疎であることを意味する。方法は、第1のグループのサンプル位置からのサンプル位置を使用して、第2のグループのサンプル位置からの少なくとも1つのサンプル位置について相を推定するステップを含み得る。方法は、追加的または代替的に、第2グループのサンプル位置のうちの少なくとも1つのサンプル位置の部分データを使用して、第2グループからの少なくとも1つのサンプル位置について相を推定するステップを含み得る。推定するステップは、第2のグループの部分データを、第1のグループのサンプル位置からのスペクトルデータと比較することを含み得る。比較は、本明細書で説明されるように、機械学習推定量によって行われ得る。上記の比が達成されることを可能にするのは特にこの実施形態であり、特にこれは、迅速かつ正確なデータ取得を可能にする。前記それぞれのサンプル位置における前記少なくとも1つの以前に割り当てられた相に関する前記情報は、前記サンプル位置において検出された第1の種類の放射のスペクトル情報を含み得る。
【0035】
一態様によれば、前述の請求項のうちの1項以上に記載の方法を使用してサンプルを検査するための荷電粒子顕微鏡が提供される。前記荷電粒子顕微鏡は、
荷電粒子源、最終プローブ形成レンズ、およびスキャナを含む、前記荷電粒子源から放射された荷電粒子のビームを試料上に集束させるための、光学カラムと、
前記最終プローブ形成レンズの下流に位置付けられ、かつ前記試料を保持するように構成された、試料ステージと、
前記荷電粒子源から放射された荷電粒子の入射に応答して、前記試料から生じる第1の種類の放射を検出するための第1の検出器と、
前記第1の検出器に接続された制御ユニットおよび処理デバイスと、を備え、
【0036】
本態様によれば、前記荷電粒子顕微鏡は、本明細書で定義される方法を実行するように構成されている。利点はすでに上記で説明されている。
【0037】
本発明は、ここで、例示的な実施形態および添付の概略図面に基づいてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の第1の実施形態による、荷電粒子顕微鏡の縦断面図を示す。
【0039】
図2】本発明の第2の実施形態による、荷電粒子顕微鏡の縦断面図を示す。
【0040】
図3】本発明による方法の一実施形態の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1(正確な縮尺ではない)は、本発明の実施形態による、荷電粒子顕微鏡Mの実施形態の非常に概略的な描写である。より具体的には、透過型顕微鏡Mの実施形態を示しており、この場合、これはTEM/STEMである(ただし、本発明の文脈では、有効にSEM(図2参照)、または例えばイオンベースの顕微鏡とすることができる)。図1において、真空筐体2内では、電子源4は、電子-光軸B’に沿って伝搬し、電子光学照明器6を横断する電子ビームBを生成して、電子を試料Sの選択部分に方向付ける/集束させるように機能する(それは、例えば(局所的に)薄くする/平板状にすることができる)。さらに図示されるのは偏向器8であり、偏向器8は(とりわけ)、ビームBの走査運動をもたらすために使用することができる。
【0042】
試料Sは、ホルダHが(取り外し可能に)固定されているクレードルA’を移動させる、位置決めデバイス/ステージAにより複数の自由度で位置決めすることができる試料ホルダHに保持されており、例えば、試料ホルダHは、(とりわけ)XY平面内で移動することができるフィンガを備えることができる(示されたデカルト座標系を参照されたい。通常は、Zに平行な移動およびX/Yに対する傾きも可能である)。このような移動により、試料Sの異なる部分が、軸線B’に沿って(Z方向に)進む電子ビームBによって、照明/撮像/検査されることを可能にする(および/または走査運動が、ビーム走査の代替として、行われることを可能にする)。所望の場合、任意選択の冷却デバイス(描写せず)を、試料ホルダHと密に熱接触させて、試料ホルダH(および、その上の試料S)を、例えば極低温度に維持することができる。
【0043】
電子ビームBは、(例えば)二次電子、後方散乱電子、X線、および光放射(カソードルミネセンス)を含む様々なタイプの「誘導」放射線を試料Sから放出させるように、試料Sと相互作用する。所望される場合、例えば、シンチレータ/光電子増倍管またはEDS(エネルギー分散型X線分光分析)の結合モジュールであり得る分析デバイス22の助けを借りて、これらの放射線の種類のうちの1種以上を検出することができ、そのような場合には、SEMと基本的に同じ原理を使用して画像を構築することができる。しかしながら、試料Sを横断(通過)し、試料から出射/放出され、軸線B´に沿って(実質的には、とはいえ一般的に、ある程度偏向/散乱しながら)伝搬し続ける電子を代替的に、または補足的に調査することができる。このような透過電子束は、撮像システム(投影レンズ)24に入射し、撮像システム24は一般的に、様々な静電レンズ/磁気レンズ、偏向器、補正器(例えばスティグメータのような)などを備えている。通常の(非走査)TEMモードでは、この撮像システム24は、透過電子束を蛍光スクリーン26に集束させることができ、蛍光スクリーン26は、所望される場合、後退させる/引き込むことにより、蛍光スクリーン26を軸線B’から外れるようにすることができる(矢印26’で模式的に示すように)。試料Sの(一部の)画像(または、フーリエ変換図形)は、撮像システム24によりスクリーン26上に形成され、この画像は、筐体2の壁の好適な部分に位置する視認ポート28を介して視認することができる。スクリーン26の後退機構は、例えば、本質的に機械的および/また電気的であり得るが、図面には描写されていない。
【0044】
スクリーン26上の画像を視認することの代替として、撮像システム24から出ていく電子束の焦点深度が一般的に、極めて深い(例えば、約1メートル)という事実を代わりに利用することができる。この結果、様々な他の種類の分析装置をスクリーン26の下流で使用することができ、例えば、
-TEMカメラ30。カメラ30の位置に、電子束は、静止画像(または、フーリエ変換図形)を形成することができ、静止画像は、コントローラ/またはプロセッサ20により処理することができ、例えばフラットパネルディスプレイのような表示デバイス(図示せず)に表示することができる。必要ではない場合、カメラ30は、後退/回収(矢印30’で概略に示すように)されて、カメラを軸線B’から外れるようにすることができる。
-STEMカメラ32。カメラ32からの出力は、試料S上のビームBの(X、Y)走査位置の関数として記録することができ、カメラ32からの出力の「マップ(map)」である画像は、X、Yの関数として構築することができる。カメラ32は、カメラ30に特徴的に存在する画素行列とは異なり、例えば直径が20mmの1個の画素を含むことができる。さらに、カメラ32は、一般的に、カメラ30(例えば、102画像/秒)よりも非常に高い取得速度(例えば、106ポイント/秒)を有することになる。この場合も同じく、必要でない場合、カメラ32は、(矢印32’で概略に示すように)後退/回収されて、カメラを軸線B’から外れるようにすることができる(このような後退は、例えばドーナツ形の環状暗視野カメラ32の場合には必要とされないが、このようなカメラでは、中心孔により、カメラが使用されていなかった場合に電子束を通過させることができる)。
-カメラ30または32を使用して撮像を行うことの代替として、例えば、EELSモジュールとすることができる分光装置34を呼び出すこともできる。
【0045】
アイテム30、32、および34の順序/位置は厳密ではなく、多くの可能な変形が考えられることに留意されたい。例えば、分光装置34は、画像化システム24と一体化することもできる。
【0046】
示される実施形態では、顕微鏡Mは、符号40で概して示される、後退可能なX線コンピュータ断層撮影(CT)モジュールをさらに備える。コンピュータ断層撮影(断層画像化とも称される)では、源および(対極にある)検出器を使用して、様々な視点から試料片の透過観察を取得するように、異なる視線に沿って試料片を調べる。
【0047】
コントローラ(コンピュータプロセッサ)20は、図示される様々なコンポーネントに、制御線(バス)20’を介して接続されることに留意されたい。このコントローラ20は、操作を同期させる、設定ポイントを提供する、信号を処理する、計算を実行する、およびメッセージ/情報を表示デバイス(描写せず)に表示するといった様々な機能を提供することができる。言うまでもなく、(概略的に描写される)コントローラ20は、筐体2の(部分的に)内側または外側に位置させることができ、所望に応じて、単体構造または複合構造を有することができる。
【0048】
当業者であれば、筐体2の内部が気密な真空状態に保持される必要はないことを理解できるであろう。例えば、いわゆる「環境制御型TEM/STEM」では、所与のガスの背景雰囲気が、筐体2内に意図的に導入/維持される。当業者はまた、実際には、可能であれば、筐体2が軸線B’を本質的に包み込むように筐体2の容積を限定して、使用された電子ビームが通過する(例えば、直径1cmほどの)小径管の形態をとるが、源4、検体ホルダH、スクリーン26、カメラ30、カメラ32、分光装置34などのような構造を収容するように広がることが有利となり得ることを理解するであろう。
【0049】
本発明による、実施形態が図1に示される、荷電粒子顕微鏡Mは、したがって、荷電粒子源4、最終プローブ形成レンズ6、およびスキャナ8を含み、前記荷電粒子源4から放射された荷電粒子のビームBを試料上に集束させるための、光学カラムOを備える。装置は、前記最終プローブ形成レンズ6の下流に位置付けられ、かつ前記試料Sを保持するように構成された、試料ステージA、Hをさらに備える。装置は、前記荷電粒子源4から放射された荷電粒子Bの入射に応答して前記試料から生じる第1の種類の放射を検出するための第1の検出器22をさらに備える。示された実施形態では、第1の検出器22は、上述のように、シンチレータ/光電子増倍管またはEDS(エネルギー分散型X線分光分析)の結合モジュールであり得る分析デバイス22である。好ましい実施形態では、前記第1の検出器は、EDSである。さらに、本発明による装置は、前記第1の検出器22(概略的に図示)に(線20’によって)接続されている制御ユニット(すなわち、コントローラ/プロセッサ)20を備える。本発明によれば、前記荷電粒子顕微鏡Mは、あとでより詳細に説明される本発明による方法を実行するように構成されている。
【0050】
ここでまず、図2を参照すると、本発明による装置の別の実施形態が示されている。図2(正確な縮尺ではない)は、本発明による荷電粒子顕微鏡Mの非常に概略的な描写であり、より具体的には、この場合では、SEMである、非透過型顕微鏡Mの実施形態を示す(ただし、本発明の文脈では、例えば、イオンベース顕微鏡も同様に有効であり得る)。図では、図1の部品に対応する部分は、同一の参照符号を使用して示され、ここでは別個に説明されない。(とりわけ)以下の部分が図1に加えられる。
-2a:真空チャンバ2の内部に/内部から、部品(構成要素、試料)を導入/除去するように開放され得るか、またはその上に、例えば、補助デバイス/モジュールが装着され得る、真空ポート。顕微鏡Mは、必要に応じて、複数のそのようなポート2aを備え得る。
-10a、10b:概略的に図示された照明器6内のレンズ/光学素子。
-12:必要に応じて、試料ホルダHまたは少なくとも試料Sが、接地に対してある電位にバイアス(浮遊)されることを可能にする電圧源。
-14:FPDまたはCRTなどのディスプレイ。
-22a、22b:(ビームBの通過を可能にする)中央開口22bの周りに配設された複数の独立検出セグメント(例えば、四分円)を含む、セグメント化電子検出器22a。そのような検出器は、例えば、試料Sから発せられる出力(二次または後方散乱)電子束(の角度依存性)を調査するために使用され得る。
【0051】
したがって、図2に示される荷電粒子顕微鏡Mは、荷電粒子源4、最終プローブ形成レンズ6、10a、10b、およびスキャナ8を含み、前記荷電粒子源4から放射された荷電粒子のビームBを試料S上に集束させる、光学カラムOを備える。装置は、前記最終プローブ形成レンズ6の下流に位置付けられ、かつ前記試料Sを保持するように構成された試料ステージA、Hをさらに備える。装置は、前記荷電粒子源4から放射された荷電粒子のビームBの入射に応答して、前記試料から生じる第1の種類の放射を検出するための第1の検出器22をさらに備える。図示された実施形態では、第1の検出器22は、上述のように、シンチレータ/光電子増倍管またはEDS(エネルギー分散型X線分光分析)の結合モジュールであり得る前記分析デバイス22である。代替実施形態では、第1の検出器22は、セグメント化された検出器22a、22bとすることができる。好ましい実施形態では、前記第1の検出器は、EDSである。さらに、本発明による装置は、前記第1の検出器22に(線20’によって)接続されている前記制御ユニット20を備える。
【0052】
図1および図2に示される装置は、本発明による方法を使用してサンプルを検査することに使用され得る。本発明による方法の実施形態を図3に示す。概して、これらの方法は、全てが、
荷電粒子ビームBとサンプルSとを準備するステップと、前記サンプル上の複数のサンプル位置で前記荷電粒子ビームBを走査させるステップと、
第1の検出器22を使用して、複数のサンプル位置上で走査されたビームBに応答して、サンプルからの第1の種類の放射を検出するステップと、
検出された第1の種類の放射のスペクトル情報Gを使用して、前記複数のサンプル位置における前記サンプルに複数の相互に異なる相を割り当てるステップと、
制御ユニット20によって、少なくとも前記複数のサンプル位置および前記相に関する情報を含む前記サンプルSのデータ表現を提供するステップと、を含む。
【0053】
本明細書で定義される方法によれば、一般的な方法はさらに、
少なくとも1つの以前に割り当てられた相およびそのそれぞれのサンプル位置に関する情報を使用して、複数のサンプル位置のうちの少なくとも1つの他の位置について推定相を確立するステップと、
前記推定相を前記他のサンプル位置に割り当てるステップと、を含む。
【0054】
ここで図3を参照すると、本発明による方法の第1の実施形態が概略的に示されている。図3は、左側に、取得されたデータ54a、54bによって検査されるサンプルの領域50、右側に、取得されたデータの表現150を概略的に示す。
【0055】
サンプルの領域50は、荷電粒子のビームを用いて走査される。第1の検出器、例えば、図1および図2を参照して説明されたEDS検出器は、サンプルの領域50にわたって走査されたビームに応答して、サンプルから第1の種類の放射を検出するために使用される。これらの放射は、図3でデータ点54a(白色のドット)および54b(黒色のドット)によって概略的に示されている。データ点54aは、データ点54bとは異なる放射を表し、すなわち、検出器が、これらの異なる位置で異なる信号を検出することを意味する。例えば、これは、第1の材料を表す白色点54a、および第2の材料(前記第1の材料とは異なる)を表す黒色点54bの結果であり得る。この例では、サンプルはこれらの2つの材料のみを含む、すなわちサンプルは第1の材料(白)と第2の材料(黒)のみを有すると見なされる。また、例えば疎スペクトル情報を含むので、まだ非確定的であるサンプル点を表す非白色および非黒色点54c、54dも示されている。左上の図に概略的に示されているように、点54cは第1の材料(54a)のスペクトルに似ているようであり、点54dは第2の材料(54b)に似ているようである。当業者であれば、取得データ54a、54bが、原則として多くの値(黒色または白色のみではなく)を有し得、表現値が、所望される用途に応じて任意に選択され得ることを理解するであろう。図示された例は、単一の可能性の例示にすぎず、限定されることを意図しない。
【0056】
左側の上から下へ順に示されるように、データ情報54a、54bは、開始時には比較的疎であり、走査が続くにつれて増加する。いくつかの特定の点は、その点についてのスペクトル情報でいうと比較的疎であり、したがって、未決定の材料に属する、すなわち黒でも白でもない(54c、54d)。一番上のステップでは、サンプル領域50(左側)の取得データを使用して、サンプル150(右側)の推定相154a、154bを確立する。複数のサンプル位置の推定相を確立するために、検出された第1の種類の放射54a、54bのスペクトル情報が使用される。図示された実施形態では、画像表現150は、サンプルの全サンプル領域50をデータ点を用いて表すために、測定点および推定点を使用する。言い換えると、データが存在しないところは、推定データ点が使用される。非確定的データが測定されたところ(点54c、54d)では、画像表現150内でも推定相がとられ、したがって、相は、測定された第1の種類の放射に関連付けられている。データがまったく存在しないところでは、画像表現は、予想される第1の種類の放射に関連付けられた相を有する。取得された点および推定された点は散在パターンで示されているが、より規則的なマトリックス状パターンも考えられることに留意されたい。図示された実施形態では、データ表現150(右側)は画像表現であるが、他の表現、すなわちデータでの表現ももちろん考えられる。
【0057】
図3は、(左側、上から下に)サンプルの走査が継続できること、およびサンプル50のより多くのデータが入ってくることを示す。より多くのデータが入ってくると、これは、画像表現150(右側)を更新できることを意味する。ここでも、すでに存在する測定データに基づいて、疎データ点に特定の相(本例では、黒または白のいずれか)を割り当てることができる。これに関して、隣接サンプル点が非確定的サンプル点と比較され、比較に基づいて、非確定的サンプル点(54c、54d)に相が割り当てられることが考えられる。時間の増加、したがって入力データの増加に伴い、より確定的で信頼性の高い画像表現150を得ることができる。
【0058】
データ取得および/または処理中に、サンプルSの走査領域50を複数のセグメント51に分割することが考えられる。図3に示すように、走査領域50は、4つの規則的な長方形セグメント51に分割されているが、数、形状、および規則性が異なり得ることは当業者には理解されよう。これらのセグメントは、複数のサンプル位置のうちの1つ以上について推定相を確立する際に使用することができる。特に有利な実施形態では、セグメントを確立するために第2の検出器が使用される。第2の検出器は、前述したように、BSE検出器とすることができ、EM画像で識別された輪郭をセグメント化に使用することができる。これにより、特定のセグメント内に同様の相を割り当てる、または推定相が、特定のセグメント内で測定された所与の相に対してより高い確率を有することを保証することが可能である。
【0059】
さらなるセグメントへのさらなる分割も考えられることに留意されたい。特に、より多くの入力データ点に基づく細分割により、サンプルのより正確な画像表現が可能になる。
【0060】
走査される領域50は、所望されるデータ量を得るために複数回、走査されることが考えられる。複数回、走査することは、サンプルの領域50の一部のみを走査することを含み得る。例えば、第1の走査(または第1の走査セット)に基づいて、関心領域および非関心領域が画定され、関心領域のみが第2の走査(または第2の走査セット)で走査されることが考えられる。これは、方法の効率を増加させる。特に、関心領域は、第2の種類の放射から得られたデータを使用して画定され得、すなわち、EMデータは、特にEDSデータを取得するために走査される関心領域を画定するために使用され得る。
【0061】
推定相を確立するために、機械学習推定量を使用することは有利である。機械学習推定量を使用すると、特に、測定サンプル位置対推定サンプル位置の高い比を得ることが可能となる。図3の右上の図で分かるように、測定サンプル位置の数と推定サンプル位置の数との比は約1:10であり、測定サンプル位置ごとに、合計10個の他の位置を推定することが可能である。比は、10:1~1:10の範囲、より具体的には1:2~1:10の範囲とすることができる。機械学習推定量により、入力における個々の疎スペクトルについて最も可能性の高い密スペクトルを予測できる。提案された機械学習推定量は、相およびそれらのスペクトルの内部モデルを維持することができる。各入力(疎)スペクトルを用いて、モデルが更新され、スペクトルを評価して、モデル化された相との類似性スコアを得ることができる。言い換えると、データ取得中(図3の上から下)、新しく取得された各データ点(左側)は、以前に決定された画像表現(右側)の精度についての情報を与える。したがって、荷電粒子装置の使用中に機械学習推定量を更新することが可能であり、これは機械学習推定量を非常に効果的にする。前述したように、機械学習推定量は、非負行列因数分解(NMF)、特異値分解(SVD)、独立成分分析(ICA)、潜在ディリクレ割り当て(LDA)およびK平均を含む群から選択される1つ以上の推定量を含み得る。これらはすべて、コンポーネント/クラスタの識別および特徴付けを行い得る教師なし学習技法である。
【0062】
方法をいくつかの実施形態によって上記で説明した。所望の保護は、添付の特許請求の範囲によって付与される。
図1
図2
図3