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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】マイクロ波プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20241106BHJP
   C23C 16/511 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H05H1/46 B
C23C16/511
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022578418
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2022002724
(87)【国際公開番号】W WO2022163661
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2021011549
(32)【優先日】2021-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「NEDO先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム/高品質、高信頼性を実現する先進パワーモジュール技術/高放熱大面積ダイヤモンド基盤技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100176337
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 英明
(72)【発明者】
【氏名】茶谷原 昭義
(72)【発明者】
【氏名】杢野 由明
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/121132(WO,A1)
【文献】特開平01-184921(JP,A)
【文献】特開平01-222057(JP,A)
【文献】長谷川 雄一 ほか,円筒キャビティと固体アンプを用いたマイクロ波プラズマ生成II Microwave Plasma Generation Using,第63回応用物理学会春季学術講演会講演予稿集,2016年03月03日,21a-W611-10
【文献】金 載浩 ほか,電子励起高密度ラジカル供給によるダイヤモンド成長,第78回応用物理学会秋季学術講演会講演予稿集,公益社団法人応用物理学会 The Japan Society of App,2017年08月25日,7p-A402-20
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/32
H05H 1/46
C23C 16/511
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器を含む共振器と、
前記共振器に基準マイクロ波を出力する単一のマイクロ波発振源と、
前記マイクロ波発振源と前記共振器とを繋ぐ導波管と、
分波された一部の前記基準マイクロ波の位相を制御することによって、前記基準マイクロ波と位相が異なる変更マイクロ波を生成する位相制御機構と、を備え、
前記共振器は、前記基準マイクロ波を前記共振器内に導入する1または複数の第1種導入部、および、前記変更マイクロ波を前記共振器内に導入する1または複数の第2種導入部を含み、
前記共振器内において、前記基準マイクロ波に前記変更マイクロ波が重畳されることによって、前記容器内に発生するプラズマボールの位置、大きさ、および、形状の少なくとも1つが変更されるように構成される
マイクロ波プラズマ処理装置。
【請求項2】
容器を含む共振器と、
前記共振器に基準マイクロ波を出力する単一のマイクロ波発振源と、
前記共振器内に導入された一部の前記基準マイクロ波の位相を制御することによって、前記基準マイクロ波と位相が異なる変更マイクロ波を生成する位相制御機構と、を備え、
前記共振器内において、前記基準マイクロ波に前記変更マイクロ波が重畳されることによって、前記容器内に発生するプラズマボールの位置、大きさ、および、形状の少なくとも1つが変更されるように構成される
マイクロ波プラズマ処理装置。
【請求項3】
前記共振器は、前記容器に接続されるポートを有し、
前記位相制御機構は、前記ポートに配置される反射板、および、前記ポート内における前記反射板の位置を変更する駆動機構を含む
請求項2に記載のマイクロ波プラズマ処理装置。
【請求項4】
前記位相制御機構は、位相器、および、前記位相器を制御する制御装置を含む
請求項1~3のいずれか一項に記載のマイクロ波プラズマ処理装置。
【請求項5】
前記位相制御機構は、前記共振器内において、前記プラズマボールを動的に移動させる
請求項1~4のいずれか一項に記載のマイクロ波プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンドは、最高水準の複数の物性値を有する。このため、近年、ダイヤモンドの高い熱伝導率に注目してダイヤモンドを用いる分野において、成膜範囲が3インチを超えるダイヤモンドを高速で成膜することが求められている。従来のダイヤモンド成膜用のマイクロ波プラズマ処理装置では、マイクロ波発振源から共振器の一部となる容器内へマイクロ波を出力して、容器内に設置された基板の近傍にプラズマボールを発生させる、いわゆるCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、ダイヤモンド基板を製造する。発生させるプラズマボールのサイズ、換言すれば、ダイヤモンドの成膜範囲は、出力するマイクロ波の周波数と相関関係を有する。
【0003】
マイクロ波の周波数が2.45GHzであるマイクロ波プラズマ処理装置では、ダイヤモンドの成膜範囲は、1~2インチ程度が限界であり、発生するプラズマボールの位置も固定される。一方、ダイヤモンドの成膜範囲を増加させるため、例えば、915MHz程度の低周波数のマイクロ波が用いられる場合もあるが、電力効率が著しく低下し、また、装置の規模も極めて大きい。
【0004】
このため、特許文献1に記載されているように、複数の位相制御電源を用いて電界の強い領域を制御することによって、発生するプラズマボールの位置等を制御するマイクロ波プラズマ処理装置が提案されている。特許文献1のマイクロ波プラズマ処理装置によれば、低周波数のマイクロ波を用いることなく、ダイヤモンドの成膜範囲を増加できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-230019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記マイクロ波プラズマ処理装置では、反応容器内に供給されるマイクロ波の導入路毎に位相シフタおよび増幅器が配置されているため、構造が複雑である。なお、このような課題は、ダイヤモンド基板を製造する場合に限られず、他の基板を製造する場合にも同様に生じ得る。
【0007】
本発明は、簡単な構成で大面積基板を製造できるマイクロ波プラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1観点に係るマイクロ波プラズマ処理装置は、容器を含む共振器と、前記共振器に基準マイクロ波を出力する単一のマイクロ波発振源と、前記マイクロ波発振源と前記共振器とを繋ぐ導波管と、分波された一部の前記基準マイクロ波の位相を制御することによって、前記基準マイクロ波と位相が異なる変更マイクロ波を生成する位相制御機構と、を備え、前記共振器は、前記基準マイクロ波を前記共振器内に導入する1または複数の第1種導入部、および、前記変更マイクロ波を前記共振器内に導入する1または複数の第2種導入部を含み、前記共振器内において、前記基準マイクロ波に前記変更マイクロ波が重畳されることによって、前記容器内に発生するプラズマボールの位置、大きさ、および、形状の少なくとも1つが変更されるように構成される。
【0009】
本発明の第2観点に係るマイクロ波プラズマ処理装置は、容器を含む共振器と、前記共振器に基準マイクロ波を出力する単一のマイクロ波発振源と、前記共振器内に導入された一部の前記基準マイクロ波の位相を制御することによって、前記基準マイクロ波と位相が異なる変更マイクロ波を生成する位相制御機構と、を備え、前記共振器内において、前記基準マイクロ波に前記変更マイクロ波が重畳されることによって、前記容器内に発生するプラズマボールの位置、大きさ、および、形状の少なくとも1つが変更されるように構成される。
【0010】
本発明の第3観点に係るマイクロ波プラズマ処理装置は、第2観点に係るマイクロ波プラズマ処理装置であって、前記共振器は、前記容器に接続されるポートを有し、前記位相制御機構は、前記ポートに配置される反射板、および、前記ポート内における前記反射板の位置を変更する駆動機構を含む。
【0011】
本発明の第4観点に係るマイクロ波プラズマ処理装置は、第1観点~第3観点のいずれか1つに係るマイクロ波プラズマ処理装置であって、前記位相制御機構は、位相器、および、前記位相器を制御する制御装置を含む。
【0012】
本発明の第5観点に係るマイクロ波プラズマ処理装置は、第1観点~第4観点のいずれか1つに係るマイクロ波プラズマ処理装置であって、前記位相制御機構は、前記共振器内において、前記プラズマボールを動的に移動させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に関するマイクロ波プラズマ処理装置によれば、簡単な構成で大面積基板を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態のマイクロ波プラズマ処理装置の模式図。
図2】第2実施形態のマイクロ波プラズマ処理装置の模式図。
図3】第3実施形態のマイクロ波プラズマ処理装置の模式図。
図4】第1実施形態の変形例のマイクロ波プラズマ処理装置の模式図。
図5】第1実施形態の別の変形例のマイクロ波プラズマ処理装置の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置について説明する。
【0016】
<1.第1実施形態>
<1-1.マイクロ波プラズマ処理装置の全体構成>
図1は、本実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置10の模式図である。マイクロ波プラズマ処理装置10は、CVD法によって、例えば、少なくとも直径が100mm以上の大型のダイヤモンド基板を製造するために用いられる。マイクロ波プラズマ処理装置10は、単一のマイクロ波発振源20、共振器30、導波管60、および、位相制御機構70を含む。
【0017】
マイクロ波発振源20は、共振器30の容器30A内に供給するマイクロ波を出力する。マイクロ波発振源20は、例えば、マグネトロン電源である。マイクロ波発振源20が出力するマイクロ波の中心周波数は、例えば、2.45GHz、915MHz、または、10GHz以上である。以下では、マイクロ波発振源20が出力するマイクロ波を基準マイクロ波と称する場合がある。
【0018】
共振器30は、容器30A、外周導波部30B、基板支持台40、原料ガス供給路51、排気通路52、および、入射窓80を含む。容器30Aは、真空容器である。容器30A内の圧力は、例えば、50Tоrr~200Tоrrの範囲に含まれる。容器30Aの形状は、任意に選択可能である。本実施形態では、容器30Aは、円筒形である。容器30Aの周壁32には、導波管60と接続される外周導波部30Bが取り付けられる。外周導波部30Bは、容器30Aの周壁32に沿って容器30Aを取り囲む形状である。基板支持台40は、容器30Aの内部空間31に収容される。基板支持台40には、ダイヤモンド基板を製造するための基材100が載せられる。基板支持台40の形状は、任意に選択可能である。本実施形態では、基板支持台40は、円板状である。
【0019】
基材100を構成する材料は、後述する原料ガス中の炭素源が基材100上に製膜されて、ダイヤモンドの結晶構造を有するダイヤモンドを成長させることができるものであれば、任意に選択可能である。基材100を構成する材料は、例えば、単結晶ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、シリコン、3C炭化シリコン、窒化ガリウム、酸化ガリウム、イリジウム、プラチナ、ニッケル、酸化マグネシウム、イットリウム安定化ジルコニア、または、モリブデン等の高融点金属等である。
【0020】
原料ガス供給路51は、ダイヤモンド基板を形成するための原料ガスを容器30Aの内部空間31に供給する。原料ガス供給路51は、例えば、容器30Aの高さ方向において、外周導波部30Bよりも下方または上方で容器30Aの周壁32に接続される。原料ガスは、例えば、炭素、水素、窒素、および、酸素を含む混合ガスである。
【0021】
排気通路52は、容器30A内のガスを排気できるように、例えば、容器30Aの高さ方向において、外周導波部30Bよりも下方または上方で容器30Aの周壁32に接続される。排気通路52のうちの容器30Aと反対側の端部は、真空ポンプ(図示略)と接続される。真空ポンプが作動することによって、容器30A内のガスが排気通路52を通過して容器30Aの外部に排気される。
【0022】
導波管60は、マイクロ波発振源20が出力した基準マイクロ波、および、位相制御機構70によって基準マイクロ波の位相が変更されたマイクロ波(以下では、「変更マイクロ波」と称する場合がある)を容器30A内に導入できるように、マイクロ波発振源20と外周導波部30Bとを繋ぐ。導波管60は、例えば、円形導波管または方形導波管である。導波管60は、第1部分61および第2部分62を含む。第1部分61および第2部分62は、分配器63を介してマイクロ波発振源20と接続される。マイクロ波発振源20から出力された基準マイクロ波は、分配器63によって、第1部分61と第2部分62とに分波される。第1部分61を通過して外周導波部30Bに導入された基準マイクロ波は、外周導波部30Bの周方向の一方および他方に分波される。
【0023】
容器30Aの周壁32には、孔32Aが形成される。容器30Aに形成される孔32Aの数は、任意に選択可能である。本実施形態では、容器30Aに周方向に沿って所定の間隔で8つの孔32Aが形成される。容器30Aに形成される孔32Aの数は、1~7、または、9つ以上であってもよい。孔32Aには、基準マイクロ波と変更マイクロ波とが混合したマイクロ波を透過する入射窓80が取り付けられる。入射窓80を構成する材料は、例えば、石英ガラスまたはアルミナである。
【0024】
共振器30は、第1種導入部91および第2種導入部92を有する。第1種導入部91は、第1部分61と外周導波部30Bとが接続される部分であり、基準マイクロ波の位相および振幅を変更することなく、基準マイクロ波を外周導波部30Bに導入する。第2種導入部92は、第2部分62と外周導波部30Bとが接続される部分であり、変更マイクロ波を外周導波部30Bに導入する。第1種導入部91を介して外周導波部30Bに導入された基準マイクロ波、および、第2種導入部92を介して外周導波部30Bに導入された変更マイクロ波は、外周導波部30Bを進行し、混合され、複数の孔32Aおよび入射窓80を介して容器30A内に導入される。
【0025】
位相制御機構70は、第2部分62を通過する基準マイクロ波の位相を変更することによって、変更マイクロ波を生成する。位相制御機構70は、制御装置71および位相器72を含む。
【0026】
制御装置71は、例えば、PC(Personal Computer)、または、PLC(Programmable Logic Controller)であり、位相器72に対して位相器制御プログラムに基づく位相制御信号を出力することによって位相器72を制御する。位相器72は、第2部分62の中間部分に配置される。
【0027】
制御装置71は、位相器72を通過する基準マイクロ波の位相を変更することによって、変更マイクロ波が生成されるように位相器72を制御する。第1種導入部91を通過した基準マイクロ波、および、第2種導入部92を通過した変更マイクロ波が外周導波部30B内に導入されることによって、基準マイクロ波と変更マイクロ波とが互いに干渉し合う。このため、容器30A内に局所的に電界強度の大きい領域が形成される。局所的に電界強度の大きい領域には、原料ガスの分子が電子と化学活性種とに分離することによって、プラズマボールが生成される。化学活性種は、イオンおよびラジカルを含む。生成されるプラズマボールの直径は、例えば、50mmである。制御装置71は、位相器72を制御、換言すれば、変更マイクロ波の位相を制御することによって、電界強度分布を変化させることができ、その結果として、プラズマボールの位置、大きさ、および、形状の少なくとも1つが制御される。プラズマボールの位置は、通常は、容器30A内の基材100上におけるプラズマボールの位置である。プラズマボールの大きさは、プラズマボールの直径である。プラズマボールの形状は、プラズマボールの外郭形状である。プラズマボールの基本的な外郭形状は、球であり、変更されたプラズマボールの外郭形状は、例えば、球が扁平化された形状である。プラズマボールに含まれる化学活性種が基材100の表面において反応し、ダイヤモンド結晶が形成され、このダイヤモンド結晶が成長することによって、ダイヤモンド基板が製造される。製造されたダイヤモンド基板は、基材100、および、基材100上に形成されたダイヤモンド結晶を含む。
【0028】
基準マイクロ波および変更マイクロ波の位相と、基材100上におけるプラズマボールの位置、プラズマボールの大きさ、および、プラズマボールの形状との関係は、シミュレーションによって予め把握されている。そのシミュレーション結果は、位相器制御プログラムとともに制御装置71に記憶されていてもよい。制御装置71は、基材100上において、プラズマボールを例えば、振動させる。換言すれば、制御装置71は、基材100上において、プラズマボールを動的に移動させる。このため、大面積のダイヤモンド基板を成膜できる。
【0029】
<1-2.マイクロ波プラズマ処理装置の作用および効果>
マイクロ波プラズマ処理装置10によれば、単一のマイクロ波発振源20から出力された基準マイクロ波の一部は、第1部分61および第1種導入部91を介して外周導波部30B内に導入される。一方、基準マイクロ波の別の一部は、第2部分62に導入され、位相器72によって位相が変更されることによって、変更マイクロ波に変換される。変更マイクロ波は、第2部分62および第2種導入部92を介して外周導波部30B内に導入される。位相制御機構70は、第1種導入部91を介して外周導波部30B内に導入される基準マイクロ波に対して、第2種導入部92を介して外周導波部30B内に導入される変更マイクロ波を重畳することによって、容器30A内におけるプラズマボールの位置、大きさ、および、形状の少なくとも1つを変更する。マイクロ波プラズマ処理装置10によれば、第1部分61を通過する基準マイクロ波の位相等を変更しないため、第1部分61に位相器および振幅器等を配置することなくプラズマボールの位置、大きさ、および、形状を変更できる。このため、構成を簡素化できる。また、第1部分61に位相器および振幅器等を配置しないため、製造コストを低減できる。
【0030】
<2.第2実施形態>
図2を参照して、第2実施形態のマイクロ波プラズマ処理装置210について説明する。以下では、第1実施形態の同一の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略し、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0031】
図2は、本実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置210の模式図である。マイクロ波プラズマ処理装置210は、マイクロ波発振源20から出力された基準マイクロ波を外周導波部30B内に導入する。外周導波部30B内に導入された基準マイクロ波の一部は、位相制御機構70によって変更マイクロ波に変換され、基準マイクロ波に重畳される。マイクロ波プラズマ処理装置210は、ポート270を備える。
【0032】
ポート270は、外周導波部30Bに接続される。外周導波部30Bにおいて、ポート270が接続される位置は、任意に選択可能である。本実施形態では、ポート270は、外周導波部30Bのうちの容器30Aを介して第1部分61と対向する位置に接続される。外周導波部30Bに接続されるポート270の数は、任意に選択可能である。本実施形態では、外周導波部30Bに接続されるポート270の数は、1つである。外周導波部30Bに接続されるポート270の数は、2つ以上であってもよい。
【0033】
マイクロ波発振源20から出力された基準マイクロ波は、外周導波部30B内に導入され、外周導波部30Bを進行する。外周導波部30B内に導入された基準マイクロ波のうちの一部は、ポート270に導入される。ポート270に導入された基準マイクロ波は、ポート270のうちの容器30Aと反対側の端部の壁271で反射され、位相器72を通過する。位相器72を通過した基準マイクロ波は、位相が変更され、変更マイクロ波に変換される。変更マイクロ波は、外周導波部30Bに導入される。基準マイクロ波および変更マイクロ波は、外周導波部30Bを進行し、混合され、複数の孔32Aおよび入射窓80を介して容器30A内に導入される。
【0034】
本実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置210によれば、外周導波部30B内に導入された基準マイクロ波の一部は、ポート270に導入され、変更マイクロ波に変換される。変更マイクロ波は、外周導波部30B内において基準マイクロ波と混合される。外周導波部30B内において、基準マイクロ波に対して変更マイクロ波が重畳されるため、第1実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置10に準じた効果が得られる。
【0035】
<3.第3実施形態>
第3実施形態においては、第2実施形態と比較して、位相制御機構70の構成が異なる。他の構成は、基本的に第2実施形態と同様である。以下では、第2実施形態の同一の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略し、第2実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0036】
図3は、本実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置310の模式図である。マイクロ波プラズマ処理装置310は、位相制御機構370を備える。位相制御機構370は、ポート270内に配置される反射板371および駆動機構372を含む。
【0037】
反射板371は、ポート270に導入された基準マイクロ波を外周導波部30Bに向けて反射する。駆動機構372は、ポート270の長手方向における反射板371の位置を変更する。駆動機構372は、任意の構成を用いることができる。本実施形態では、駆動機構372は、例えば、ガイドレール、ガイドレールに沿って反射板371を移動させるねじ軸、および、ねじ軸を回転させるモータ等を含む、ボールねじ機構である。
【0038】
制御装置71は、作業者からの要求に応じて、駆動機構372の動作に関する駆動機構制御プログラムを実行する。ポート270内における反射板371の位置と変更マイクロ波の位相との関係は、シミュレーションによって予め把握されている。そのシミュレーション結果は、駆動機構制御プログラムとともに制御装置71に記憶されている。また、第1実施形態と同様に、基準マイクロ波および変更マイクロ波の位相と、基材100上におけるプラズマボールの位置、プラズマボールの大きさ、および、プラズマボールの形状との関係は、シミュレーションによって予め把握されている。そのシミュレーション結果は、制御装置71に記憶される。本実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置310によれば、第2実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置210と同様の効果が得られる。
【0039】
<4.変形例>
上記各実施形態は本発明に関するマイクロ波プラズマ処理装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に関するマイクロ波プラズマ処理装置は、各実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、各実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、各実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に各実施形態の変形例の幾つかの例を示す。
【0040】
<4-1>
第1実施形態において、導波管60の具体的な構成は、任意に変更可能である。例えば、図4に示されるように、導波管60は、複数の第2部分62を含むように構成されてもよい。この変形例では、複数の第2部分62のそれぞれに位相器72が配置される。この変形例では、共振器30における第1種導入部91の数は、1つであり、第2種導入部92の数は、2つである。
【0041】
<4-2>
第1実施形態において、共振器30の具体的な構成は、任意に変更可能である。図5は、第1実施形態の共振器30の変形例の共振器530を含むマイクロ波プラズマ処理装置10を示す模式図である。図5に示されるように、例えば、共振器30を外周導波部30Bを省略した共振器530に置換し、第1部分61および第2部分62と容器30Aとを接続してもよい。この変形例では、第1部分61と容器30Aとが接続される部分が第1種導入部91を構成し、第2部分62と容器30Aとが接続される部分が第2種導入部92を構成する。第1種導入部91および第2種導入部92には、入射窓80が設置される。また、この変形例では、容器30Aの周壁32のうち、導波管60と接続される部分以外の孔32Aは、閉じられる。なお、この変形例は、図4に示される第1実施形態の変形例にも適用できる。
【0042】
<4-3>
第2実施形態および第3実施形態において、共振器30の具体的な構成は、任意に変更可能である。例えば、第2実施形態および第3実施形態において、共振器30を外周導波部30Bを省略した共振器に置換し、基準マイクロ波が容器30A内に導入されるように、第1部分61と容器30Aとを接続し、ポート270と容器30Aとを接続してもよい。この変形例では、第1部分61と容器30Aとが接続される部分が第1種導入部91を構成し、ポート270と容器30Aとが接続される部分が第2種導入部92を構成する。第1種導入部91および第2種導入部92には、入射窓80が設置される。また、この変形例では、容器30Aのうちの第1部分61と接続される部分、および、ポート270と接続される部分以外の孔32Aは、閉じられる。この変形例では、1または複数のポート270が容器30Aと接続されてもよい。
【0043】
<4-4>
第1実施形態において、容器30Aの周壁32を省略してもよい。この変形例では、第1部分61と外周導波部30Bとが接続される部分が第1種導入部91を構成し、第2部分62と外周導波部30Bとが接続される部分が第2種導入部92を構成する。第1種導入部91および第2種導入部92には、入射窓80が設置される。この変形例では、外周導波部30Bが、容器30Aの周壁32の役割を担う。なお、この変形例は、図4に示される第1実施形態の変形例にも適用できる。
【0044】
<4-5>
第2実施形態および第3実施形態において、容器30Aの周壁32を省略してもよい。この変形例では、第1部分61と外周導波部30Bとが接続される部分が第1種導入部91を構成し、ポート270と外周導波部30Bとが接続される部分が第2種導入部92を構成する。第1種導入部91および第2種導入部92には、入射窓80が設置される。この変形例では、外周導波部30Bが、容器30Aの周壁32の役割を担う。
【0045】
<4-6>
第2実施形態および第3実施形態において、位相制御機構70、370の具体的な構成は、任意に変更可能である。例えば、位相制御機構70、370は、容器30A内に配置され、容器30A内に導入された基準マイクロ波の位相を変更して反射する任意の構造物であってもよい。また、位相制御機構70、370は、容器30Aの周壁32の径方向の形状を変化させる構成であってもよい。要するに、位相制御機構70、370は、共振器30内に導入された一部の基準マイクロ波の位相を制御することによって、基準マイクロ波と位相が異なる変更マイクロ波を生成できる構成であれば、任意の構成を用いることができる。
【0046】
<4-7>
第2実施形態および第3実施形態において、導波管60および外周導波部30Bを省略し、容器30Aの周壁32の形状をマイクロ波発振源20と連結される形状とすることもできる。
【0047】
<4―8>
第2実施形態または第3実施形態において、位相制御機構70および位相制御機構370を組み合わせることが可能である。例えば、ポート270が複数設けられる場合、任意のポート270には、位相器72を配置し、別の任意のポート270には、反射板371および駆動機構372を配置することができる。この変形例では、1つの制御装置71によって、位相器72および駆動機構372を制御してもよく、位相器72を制御する制御装置と、駆動機構372を制御する制御装置とを分けてもよい。
【0048】
<4-9>
第1実施形態~第3実施形態のマイクロ波プラズマ処理装置10、210、310は、ダイヤモンド基板の製造に用いられたが、原料ガス、および、プラズマ移動周期等の条件を変更することによって、他の基板の製造にも適用できる。
【符号の説明】
【0049】
10、210、310:マイクロ波プラズマ処理装置
20:マイクロ波発振源
30:共振器
30A:容器
60:導波管
70、370:位相制御機構
71:制御装置
72:位相器
91:第1種導入部
92:第2種導入部
270:ポート
371:反射板
372:駆動機構
図1
図2
図3
図4
図5