(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】米飯類の品質保持方法および米飯類の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20241106BHJP
【FI】
A23L7/10 E
A23L7/10 B
(21)【出願番号】P 2021554327
(86)(22)【出願日】2020-10-14
(86)【国際出願番号】 JP2020038815
(87)【国際公開番号】W WO2021079805
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2019193418
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000103840
【氏名又は名称】オリエンタル酵母工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 貴康
(72)【発明者】
【氏名】菊田 康介
(72)【発明者】
【氏名】山田 滋
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-290670(JP,A)
【文献】特開2008-079561(JP,A)
【文献】特開2011-062199(JP,A)
【文献】特開2010-252661(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2003-0032767(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸漬時および/または炊飯時に多価陽イオン含有液を米と接触させる工程と、
多価陽イオンを含む炊飯または蒸米後の米にアルギン酸塩含有液を接触させる工程とを含
み、
生米100質量部に対して、多価陽イオンの量が0.057質量部以上であり、アルギン酸塩の量が0.04質量部以上であることを特徴とする米飯類の品質保持方法。
【請求項2】
多価陽イオン含有液を、pHが6.5以下である炊飯または蒸米後の米と接触させる工程と、
多価陽イオンを含む炊飯または蒸米後の米にアルギン酸塩含有液を接触させる工程とを含み、
前記多価陽イオン含有液が、水難溶性の金属塩であって、pH6.5以下で多価陽イオンを形成する金属塩を含むものであり、
生米100質量部に対して、多価陽イオンの量が0.057質量部以上であり、アルギン酸塩の量が0.04質量部以上であることを特徴とする米飯類の品質保持方法。
【請求項3】
前記多価陽イオン含有液と、前記アルギン酸塩含有液とが1つの液である請求項2に記載の米飯類の品質保持方法。
【請求項4】
炊飯または蒸米後の米100質量部に対して、前記アルギン酸塩含有液を1~50質量部の量で接触させる請求項1~3のいずれかに記載の米飯類の品質保持方法。
【請求項5】
前記アルギン酸塩含有液におけるアルギン酸塩の濃度が0.05~5質量%である請求項1~4のいずれかに記載の米飯類の品質保持方法。
【請求項6】
浸漬時および/または炊飯時に多価陽イオン含有液を米と接触させる工程と、
多価陽イオンを含む炊飯または蒸米後の米にアルギン酸塩含有液を接触させる工程とを含み、
生米100質量部に対して、多価陽イオンの量が0.057質量部以上であり、アルギン酸塩の量が0.04質量部以上であることを特徴とする米飯類の製造方法。
【請求項7】
多価陽イオン含有液を、pHが6.5以下である炊飯または蒸米後の米と接触させる工程と、
多価陽イオンを含む炊飯または蒸米後の米にアルギン酸塩含有液を接触させる工程とを含み、
前記多価陽イオン含有液が、水難溶性の金属塩であって、pH6.5以下で多価陽イオンを形成する金属塩を含むものであり、
生米100質量部に対して、多価陽イオンの量が0.057質量部以上であり、アルギン酸塩の量が0.04質量部以上であることを特徴とする米飯類の製造方法。
【請求項8】
前記多価陽イオン含有液と、前記アルギン酸塩含有液とが1つの液である請求項7に記載の米飯類の製造方法。
【請求項9】
炊飯または蒸米後の米100質量部に対して、前記アルギン酸塩含有液を1~50質量部の量で接触させる請求項6~8のいずれかに記載の米飯類の製造方法。
【請求項10】
前記アルギン酸塩含有液におけるアルギン酸塩の濃度が0.05~5質量%である請求項6~9のいずれかに記載の米飯類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米飯類の品質保持方法および米飯類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の消費者のライフスタイルの多様化などにより、例えばコンビニエンスストアやスーパーなどで販売されている炊飯後冷蔵保存した米飯類を用いた製品の需要は増加傾向にある。
【0003】
これまでに、加熱殺菌中または保存中において、米の割れ、米粒表面の崩壊などが生じない保形性の優れた米飯の製造方法として、生米をアルギン酸ナトリウム水溶液と共に炊飯した後、該炊飯を施した米を冷却すると共にほぐし、続いて該米を多価陽イオン水溶液中に浸漬した後水切りし、その後水切りした米と水又は調味液とを加熱殺菌処理する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、冷凍・冷蔵保存用食品等に混合するだけで餅食感と風味を付与できる餅様食材の食感の劣化を克服する技術として、糯米粉、糖類、アルギン酸及び/又はアルギン酸ナトリウム、並びに水への溶解度が低い難溶性カルシウム塩を配合してなる糯米組成物を、加水加熱条件下で所定のα化度となるまで造粒して糯米加工品を調製した後、該糯米加工品を水に浸漬して吸水させ、さらに糖溶液とともに加熱する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、これらの提案の技術は、炊飯後冷蔵保存した米飯の食感や食味を良好なものとするものではない。また、上記した製品は、地域によっては、その流通期間が長くなるものもあり、その点からも、炊飯後冷蔵保存した米飯類の食感や食味をより優れたものとすることが求められている。
【0006】
したがって、炊飯後の米飯類を冷蔵保存した後でも適度な柔らかさ、ふっくら感を保持しながら、食味も良好なものとすることができる米飯類の品質保持方法および米飯類の製造方法の速やかな提供が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭63-248360号公報
【文献】特開2010-252661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような要望に応え、現状を打破し、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、炊飯または蒸米後の米飯を冷蔵保存した後でも適度な柔らかさ、ふっくら感を保持しながら、食味も良好なものとすることができる米飯類の品質保持方法および米飯類の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成するべく鋭意検討を行った結果、多価陽イオンを含有させた炊飯または蒸米後の米にアルギン酸塩含有液を接触させることにより、炊飯または蒸米後の米飯を冷蔵保存した後でも適度な柔らかさ、ふっくら感を保持しながら、食味も良好なものとすることができることを知見した。
【0010】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 炊飯または蒸米の前から後の間のいずれかの時点で、多価陽イオン含有液を米と接触させる工程と、
多価陽イオンを含む炊飯または蒸米後の米にアルギン酸塩含有液を接触させる工程とを含むことを特徴とする米飯類の品質保持方法である。
<2> 浸漬時および/または炊飯時に多価陽イオン含有液を米と接触させる前記<1>に記載の品質保持方法である。
<3> 前記多価陽イオン含有液が、水難溶性の金属塩であって、pH6.5以下で多価陽イオンを形成する金属塩を含むものであり、
前記多価陽イオン含有液を、pHが6.5以下である炊飯または蒸米後の米と接触させる前記<1>に記載の品質保持方法である。
<4> 前記多価陽イオン含有液と、前記アルギン酸塩含有液とが1つの液である前記<3>に記載の品質保持方法である。
<5> 生米100質量部に対して、多価陽イオンの量が0.01質量部以上であり、アルギン酸塩の量が0.01質量部以上である前記<1>~<4>のいずれかに記載の品質保持方法である。
<6> 炊飯または蒸米後の米100質量部に対して、アルギン酸塩含有液を1~50質量部の量で接触させる前記<1>~<5>のいずれかに記載の品質保持方法である。
<7> アルギン酸塩含有液におけるアルギン酸塩の濃度が0.05~5質量%である前記<1>~<6>のいずれかに記載の品質保持方法である。
<8> 炊飯または蒸米の前から後の間のいずれかの時点で、多価陽イオン含有液を米と接触させる工程と、
多価陽イオンを含む炊飯または蒸米後の米にアルギン酸塩含有液を接触させる工程とを含むことを特徴とする米飯類の製造方法である。
<9> 浸漬時および/または炊飯時に多価陽イオン含有液を米と接触させる前記<8>に記載の製造方法である。
<10> 前記多価陽イオン含有液が、水難溶性の金属塩であって、pH6.5以下で多価陽イオンを形成する金属塩を含むものであり、
前記多価陽イオン含有液を、pHが6.5以下である炊飯または蒸米後の米と接触させる前記<8>に記載の製造方法である。
<11> 前記多価陽イオン含有液と、前記アルギン酸塩含有液とが1つの液である前記<10>に記載の製造方法である。
<12> 生米100質量部に対して、多価陽イオンの量が0.01質量部以上であり、アルギン酸塩の量が0.01質量部以上である前記<8>~<11>のいずれかに記載の製造方法である。
<13> 炊飯または蒸米後の米100質量部に対して、アルギン酸塩含有液を1~50質量部の量で接触させる前記<8>~<12>のいずれかに記載の製造方法である。
<14> アルギン酸塩含有液におけるアルギン酸塩の濃度が0.05~5質量%である前記<8>~<13>のいずれかに記載の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、炊飯または蒸米後の米飯を冷蔵保存した後でも適度な柔らかさ、ふっくら感を保持しながら、食味も良好なものとすることができる米飯類の品質保持方法および米飯類の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(米飯類の品質保持方法)
本発明の米飯類の品質保持方法(以下、「品質保持方法」と称することがある。)は、第1の接触工程と、第2の接触工程とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0013】
<第1の接触工程>
前記第1の接触工程は、炊飯または蒸米の前から後の間のいずれかの時点で、多価陽イオン含有液を米と接触させる工程である。
本工程により、米の内部および/または表面に多価陽イオンを含有させることができる。本明細書において、「多価陽イオンを含む米」の態様としては、米の内部に多価陽イオンが存在する態様、米の表面に多価陽イオンが存在する態様、米の内部および表面の両方に多価陽イオンが存在する態様が挙げられる。
【0014】
-多価陽イオン含有液-
前記多価陽イオン含有液は、多価陽イオンを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
前記多価陽イオン含有液は、水難溶性の金属塩であって、pH6.5以下で多価陽イオンを形成する金属塩を含む態様であってもよい。
【0015】
前記多価陽イオンとしては、飲食品用途に使用できるもの(グレード)であれば、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、カルシウムイオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、銅イオンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、後述するアルギン酸塩含有液を接触させた際に形成されるゲルの安定性が優れる点で、カルシウムイオンが好ましい。
【0016】
前記多価陽イオンは、金属塩を水などの溶媒に含有させることで形成することができる。
前記金属塩としては、飲食品用途に使用できるもの(グレード)であれば、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム等のカルシウム塩;塩化第二鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム、クエン酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、グルコン酸第一鉄、乳酸鉄、硫酸第一鉄等の鉄塩;塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、L-グルタミン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、リン酸三マグネシウム、水酸化マグネシウム等のマグネシウム塩;グルコン酸亜鉛、硫酸亜鉛等の亜鉛塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、ドロマイト(炭酸カルシウムマグネシウム:CaMg(CO3)2)を有機酸水溶液に溶解し、水溶化したドロマイト水溶液を用いることもできる。
前記金属塩は、市販品を適宜使用することができる。
【0017】
前記水難溶性の金属塩であって、pH6.5以下で多価陽イオンを形成する金属塩としては、飲食品用途に使用できるもの(グレード)であれば、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、クエン酸カルシウム、またはこれらを含有する素材(例えば焼成カルシウム、ドロマイト)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本明細書において、金属塩が水難溶性であるとは、溶解度が200mg/水100g以下であることをいう。
前記水難溶性の金属塩であって、pH6.5以下で多価陽イオンを形成する金属塩は、市販品を適宜使用することができる。
【0018】
前記多価陽イオンの使用量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、生米100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.06質量部以上がより好ましく、0.09質量部以上が特に好ましい。前記好ましい範囲内であると、冷蔵保存した後の米飯の硬さおよび食味をより良好にすることができる点で、有利である。
【0019】
前記多価陽イオン含有液における多価イオンの濃度としては、特に制限はなく、多価陽イオンの使用量などに応じて適宜選択することができる。
【0020】
前記多価陽イオン含有液におけるその他の成分としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、アミノ酸類、有機酸類、糖類、発酵調味料、食塩、香辛料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分の前記多価陽イオン含有液における含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0021】
前記多価陽イオン含有液の態様としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、浸漬水、炊飯水などの加熱処理前および/または加熱処理時に用いる水に多価陽イオンを含有させた態様、水や調味料などの液体に多価陽イオンを含有させ、炊飯または蒸米後(加熱処理後)の米に対して使用する態様などが挙げられる。
【0022】
前記多価陽イオン含有液の使用量としては、特に制限はなく、その使用態様などに応じて適宜選択することができる。例えば、浸漬水または炊飯水を前記多価陽イオン含有液とする場合は、生米100質量部に対して、100~150質量部程度とすることができる。また、炊飯または蒸米後(加熱処理後)の米に対して使用する場合は、炊飯または蒸米後の米100質量部に対して、1~50質量部程度とすることができる。
【0023】
前記多価陽イオン含有液として、前記水難溶性の金属塩であって、pH6.5以下で多価陽イオンを形成する金属塩を含むものを用いる場合には、前記多価陽イオン含有液は、後述するアルギン酸塩を含まないものとしてもよいし、含むものとしてもよい。
前記多価陽イオン含有液が、前記水難溶性の金属塩であって、pH6.5以下で多価陽イオンを形成する金属塩と、前記アルギン酸塩とを含む場合、即ち、pHが6.5以下で多価陽イオンを形成する金属塩と、アルギン酸塩とを同一の液体中に含む態様(前記多価陽イオン含有液と、前記アルギン酸塩含有液とが1つの液である態様)の場合、pHが6.5以下である炊飯または蒸米後の米と接触するまでは前記水難溶性の金属塩がイオン化しないように、前記液のpHを6.5よりも大きいpHに維持しておく。そして、pHが6.5以下である炊飯または蒸米後の米と接触させることで、前記水難溶性の金属塩がイオン化し、多価陽イオンが形成され(第1の接触工程)、その後、前記液に含まれるアルギン酸塩と反応する(第2の接触工程)ことで、ゲルが形成される。
前記多価陽イオン含有液と、前記アルギン酸塩含有液とが1つの液である態様における前記多価陽イオンの使用量や濃度等は、上記したものと同様とすることができ、前記アルギン酸塩の使用量や濃度等は後述する-アルギン酸塩含有液-の項目に記載のものと同様とすることができる。
前記多価陽イオン含有液と、前記アルギン酸塩含有液とが1つの液である態様では、前記液の使用量は、後述するアルギン酸塩含有液の使用量と同様とすることができる。
【0024】
-米-
前記米の態様としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、炊飯または蒸米前(加熱処理前)の生米、炊飯中(加熱処理中)の米、炊飯または蒸米後(加熱処理後)の米などが挙げられる。
【0025】
前記米としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、うるち米、もち米などが挙げられる。前記米の種類としても、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、ジャポニカ種、インディカ種などが挙げられる。また、前記米の品種としても、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、あきたこまち、コシヒカリ、ササニシキ、ひとめぼれ、カルローズなどが挙げられる。前記米は、無洗米を用いることもできる。
【0026】
前記第1の接触工程では、米以外の食品素材(糖類、甘味料、塩、胡椒、酢、醤油、味噌、だし、コンソメ、グルタミン酸ナトリウム、ケチャップ等の調味料;野菜、きのこ、こんにゃく、油揚げ、肉、魚介、海藻類、豆等の具材;カレ-粉、胡椒、サフラン等の香辛料)を含んでいてもよい。
【0027】
-接触-
前記多価陽イオン含有液を米と接触させる方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、多価陽イオン含有液を米に噴霧、塗布、又は滴下したり、米を多価陽イオン含有液に浸漬したりする方法などが挙げられる。これらは、1種単独で行ってもよいし、2種以上を組み合わせて行ってもよい。また、必要に応じて、混合や撹拌などを行ってもよい。
【0028】
前記多価陽イオン含有液を米と接触させる時期としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、前記多価陽イオン含有液として、米と接触する前に多価陽イオンを形成しているものを用いる場合は、例えば、浸漬時および/または炊飯時、炊飯または蒸米後などが挙げられる。これらの中でも、浸漬時および/または炊飯時に添加すると米に均一に浸透、分布する点で、好ましい。
前記多価陽イオン含有液として、前記水難溶性の金属塩であって、pH6.5以下で多価陽イオンを形成する金属塩を含むものを用いる場合には、pHが6.5以下である炊飯または蒸米後の米と接触させる。前記米のpHを調整する方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、炊飯または蒸米時に醸造酢等を添加する方法、炊飯または蒸米後に醸造酢等を添加する方法などが挙げられる。前記pHとしては、6.5以下であれば、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0029】
前記多価陽イオン含有液を米と接触させるときの温度、時間などの条件としては、特に制限はなく、前記多価陽イオン含有液の態様などに応じて適宜選択することができる。
【0030】
前記第1の接触工程は、1回で行ってもよいし、複数回に分けて行ってもよい。
【0031】
前記炊飯または蒸米の方法および条件としては、特に制限はなく、公知の方法および条件を適宜選択することができる。
なお、本明細書において、炊飯(炊く)とは米を直接水に浸けて加熱することをいい、蒸米(蒸す)とは米を直接水に浸けずに湯気を通して加熱することをいう。
【0032】
<第2の接触工程>
前記第2の接触工程は、多価陽イオンを含む炊飯または蒸米後の米にアルギン酸塩含有液を接触させる工程である。
本工程により、米の内部および/または表面にゲルが形成される。
【0033】
-アルギン酸塩含有液-
前記アルギン酸塩含有液は、アルギン酸塩を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
上記したように、前記多価陽イオン含有液として、前記水難溶性の金属塩であって、pH6.5以下で多価陽イオンを形成する金属塩を含むものを用いる場合には、前記アルギン酸塩含有液と、前記多価陽イオン含有液とが1つの液である態様としてもよい。
【0034】
前記アルギン酸塩としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記アルギン酸塩は、市販品を適宜使用することができる。
【0035】
前記アルギン酸塩の使用量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、生米100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.04質量部以上がより好ましく、0.06質量部以上が更により好ましく、0.09質量部以上が特に好ましい。前記好ましい範囲内であると、冷蔵保存した後の米飯類の硬さおよび食味をより良好にすることができる点で、有利である。なお、前記アルギン酸塩の使用量の上限値は、ハンドリング適性を考慮して、適宜選択することができる。
【0036】
前記アルギン酸塩含有液におけるアルギン酸塩の濃度としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、0.05~5質量%が好ましく、0.1~4質量%がより好ましく、0.2~4質量%が更により好ましく、0.3~3質量%が特に好ましい。前記好ましい範囲内であると、冷蔵保存した後の米飯類の硬さおよび食味をより良好にすることができる点で、有利である。
【0037】
前記アルギン酸塩含有液におけるその他の成分としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、上記した多価陽イオン含有液におけるその他の成分と同様のものが挙げられる。
前記その他の成分の前記アルギン酸塩含有液における含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0038】
前記アルギン酸塩含有液の態様としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、水にアルギン酸塩を溶解させた態様、寿司酢などの液体調味料にアルギン酸塩を溶解させた態様などが挙げられる。
【0039】
前記アルギン酸塩含有液の使用量としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、炊飯または蒸米後の米100質量部に対して、1~50質量部が好ましく、5~30質量部がより好ましく、10~20質量部が特に好ましい。前記好ましい範囲内であると、冷蔵保存した後の米飯類の硬さおよび食味をより良好にすることができる点で、有利である。
【0040】
-接触-
前記アルギン酸塩含有液を、多価陽イオンを含む炊飯または蒸米後の米と接触させる方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、上記した多価陽イオン含有液を米と接触させる方法と同様の方法が挙げられる。
【0041】
前記アルギン酸塩含有液を、多価陽イオンを含む炊飯または蒸米後の米と接触させる時期としては、米に多価陽イオンを含有させ、かつ炊飯または蒸米の後であれば、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0042】
前記アルギン酸塩含有液を、多価陽イオンを含む炊飯または蒸米後の米と接触させるときの温度、時間などの条件としては、特に制限はなく、前記アルギン酸塩含有液の態様などに応じて適宜選択することができる。
【0043】
前記第2の接触工程は、1回で行ってもよいし、複数回に分けて行ってもよい。
【0044】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、公知の米飯類の製造方法における工程を適宜選択することができ、例えば、洗米工程などが挙げられる。
【0045】
<米飯類>
前記米飯類としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、白飯、酢飯、赤飯、炊き込みご飯、白米と大麦とを一緒に炊飯して得た麦飯、精米したもち米を炊飯又は蒸して得たおこわ、茶飯、栗又は豆等の具材入りご飯等の調理加工米飯などが挙げられる。また、前記米飯類は、おはぎなどの米を用いる和菓子の材料とすることもできる。
【0046】
本発明の品質保持方法によれば、炊飯または蒸米後の米飯を冷蔵保存した後でも適度な柔らかさ、ふっくら感を保持しながら、食味も良好なものとすることができる。
【0047】
(米飯類の製造方法)
本発明の米飯類の製造方法(以下、「製造方法」と称することがある。)は、第1の接触工程と、第2の接触工程とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0048】
<第1の接触工程>
前記第1の接触工程は、炊飯または蒸米の前から後の間のいずれかの時点で、多価陽イオン含有液を米と接触させる工程であり、上記した(米飯類の品質保持方法)における<第1の接触工程>と同様にして行うことができる。
【0049】
<第2の接触工程>
前記第2の接触工程は、多価陽イオンを含む炊飯または蒸米後の米にアルギン酸塩含有液を接触させる工程であり、上記した(米飯類の品質保持方法)における<第2の接触工程>と同様にして行うことができる。
【0050】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、上記した(米飯類の品質保持方法)における<その他の工程>の項目に記載したものと同様のものなどが挙げられる。
【0051】
<米飯類>
前記米飯類は、上記した(米飯類の品質保持方法)における<米飯類>と同様である。
【0052】
本発明の製造方法によれば、炊飯または蒸米後の米飯を冷蔵保存した後でも適度な柔らかさ、ふっくら感を保持しながら、食味も良好な米飯類を製造することができる。
【実施例】
【0053】
以下、試験例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0054】
(試験例1)
生米(あきたこまち)100質量部に135質量部の水を添加し、更に乳酸カルシウム(五水和物)(太平化学産業株式会社製)を表1に記載の量で添加・混合し、溶解させた。30分間浸漬した後、炊飯器で炊飯した(パナソニック株式会社製IHジャー炊飯器(品番SR-FD107)の「早炊き」モードを使用)。なお、炊飯は、生米に対する炊飯後の米の量が220質量%となるように行った。
炊きあがった米に、アルギン酸ナトリウム(キミカアルギンI-3、株式会社キミカ製)の濃度が1.0質量%であるアルギン酸塩水溶液を炊飯後の米100質量部に対して15.0質量部の量で添加・混合した。
得られた米飯(白米)は3℃で冷蔵保存した。
なお、乳酸カルシウムおよびアルギン酸塩水溶液を添加しない以外は同様にして製造した場合についても同様にして試験した。
【0055】
<評価>
-官能評価-
3℃で2日間保存した後、米飯20gをそのまま喫食し、下記の評価基準により評価した。なお、評価は10名で行い、「硬さ」は評価結果の平均点を、「水分量」は最も多かった評価結果を表1に示した。
[評価基準]
・ 硬さ
5点 : 適度に柔らかく、ふっくら感がある。
4点 : 柔らかく、ややふっくら感がある。
3点 : やや柔らかく、ふっくら感が弱い。
2点 : やや硬く、ぼそぼそする。
1点 : 硬く、ぼそぼそする。
・ 水分量
○ : 適度な水分量である。
△ : やや水分量が多い、またはやや水分量が少ない。
× : 水分量が多い、または水分量が少ない。
【0056】
-測定-
3℃で2日間保存した後の米飯の硬さを、クリープメーターを用いて下記の測定条件で測定した。結果を表1に示した。
[測定条件]
・ プランジャー : 円形(直径1cm)
・ 測定速度 : 0.5mm/sec
・ 歪率60%時の荷重を硬さ(N)とした。
【0057】
【0058】
(試験例2)
生米100質量部に対する乳酸カルシウム(五水和物)の量を1.1質量部とし、アルギン酸塩水溶液におけるアルギン酸ナトリウムの濃度を表2に記載の濃度に変えた以外は試験例1と同様にして米飯(白米)を製造、保存し、各評価を行った。結果を表2に示した。
【0059】
【0060】
(試験例3)
生米100質量部に対する乳酸カルシウム(五水和物)の量を1.1質量部とし、アルギン酸塩水溶液の添加量を表3に記載の量に変えた以外は試験例1と同様にして米飯(白米)を製造、保存し、各評価を行った。結果を表3に示した。
【0061】
【0062】
(試験例4)
生米100質量部に対する乳酸カルシウム(五水和物)の量を1.1質量部とし、アルギン酸塩水溶液の添加量を表4に記載の量に変えた以外は試験例1と同様にして米飯(白米)を製造、保存した。
【0063】
<評価>
3℃で6日間保存した後、米飯20gをレンジアップ(500W、30秒間)した。レンジアップした米飯(白米)について、試験例1と同様に、官能評価および硬さの測定を行った。結果を表4に示した。
【0064】
【0065】
(試験例5)
生米(あきたこまち)100質量部に135質量部の水を添加し、更に乳酸カルシウム(五水和物)(太平化学産業株式会社製)を表5に記載の量を添加・混合し、溶解させた。30分間浸漬した後、炊飯器で炊飯した(パナソニック株式会社製IHジャー炊飯器(品番SR-FD107)の「早炊き」モードを使用)。なお、炊飯は、生米に対する炊飯後の米の量が220質量%となるように行った。
炊きあがった米100質量部に対し、寿司酢11質量部(醸造酢6.0質量部、砂糖4.0質量部、塩1.0質量部)を添加・混合した。次いで、アルギン酸ナトリウム(キミカアルギンI-3、株式会社キミカ製)の濃度が1.0質量%であるアルギン酸塩水溶液を炊飯後の米100質量部に対して10.0質量部の量で添加・混合した。
得られた米飯(酢飯)は3℃で冷蔵保存した。
なお、乳酸カルシウムおよびアルギン酸塩水溶液を添加しない以外は同様にして製造した場合についても同様にして試験した。
【0066】
<評価>
米飯(酢飯)を3℃で4日間保存した以外は、試験例1と同様にして官能評価および硬さの測定を行った。結果を表5に示した。
【0067】
【0068】
(試験例6)
生米100質量部に対する乳酸カルシウム(五水和物)の量を1.1質量部とし、アルギン酸塩水溶液におけるアルギン酸ナトリウムの濃度を表6に記載の濃度に変えた以外は試験例5と同様にして酢飯を製造、保存し、各評価を行った。結果を表6に示した。
【0069】
【0070】
(試験例7)
生米100質量部に対する乳酸カルシウム(五水和物)の量を1.1質量部とし、アルギン酸塩水溶液の添加量を表7に記載の量に変えた以外は試験例5と同様にして酢飯を製造、保存し、各評価を行った。結果を表7に示した。
【0071】
【0072】
(試験例8)
生米100質量部に対する乳酸カルシウム(五水和物)の量を1.1質量部とした以外は試験例5と同様にして炊飯した。
炊きあがった米100質量部に対し、寿司酢11質量部(醸造酢6.0質量部、砂糖4.0質量部、塩1.0質量部)と、アルギン酸ナトリウム(キミカアルギンI-3、株式会社キミカ製)の濃度が1.0質量%であるアルギン酸塩水溶液10.0質量部とを混合したものを添加・混合した。
製造した酢飯を試験例5と同様にして保存し、各評価を行った。
その結果、官能評価は、硬さが4.0点、水分量が△であり、硬さの測定結果は3.8Nであった。
【0073】
(試験例9)
生米(あきたこまち)100質量部を、生米の吸水量以上の3質量%の濃度の乳酸カルシウム溶液に浸漬した。なお、生米の吸水率は130質量%のため、生米100質量部は浸漬後に130質量部となる。前記乳酸カルシウム溶液に浸漬した生米を液切りした後、生米100質量部に対し、水分が135質量部となるように加水調整した。加水調整した生米を炊飯器で炊飯した(パナソニック株式会社製IHジャー炊飯器(品番SR-FD107)の「早炊き」モードを使用)。なお、炊飯は、生米に対する炊飯後の米の量が220質量%となるように行った。
炊きあがった米に、アルギン酸ナトリウム(キミカアルギンI-3、株式会社キミカ製)の濃度が1.0質量%であるアルギン酸塩水溶液を炊飯後の米100質量部に対して15.0質量部の量で添加・混合した(試験例9-2)。なお、乳酸カルシウムおよびアルギン酸塩水溶液を添加しない以外は同様にして製造した場合を対照とした(試験例9-1)。
得られた米飯(白米)を3℃で2日間保存した後、試験例1と同様にして、各評価を行った。結果を表8に示した。
【0074】
【0075】
試験例9の結果から、浸漬時の水に多価陽イオンを含有する水を用いて生米に多価陽イオンを含有させ、液切り後に炊飯した場合でも、炊飯時の水に多価陽イオンを含有する水を用いた場合と同様の結果となることが確認された。
【0076】
(試験例10)
生米(あきたこまち)100質量部に135質量部の水を添加し、30分間浸漬した後、炊飯器で炊飯した(パナソニック株式会社製IHジャー炊飯器(品番SR-FD107)の「早炊き」モードを使用)。なお、炊飯は、生米に対する炊飯後の米の量が220質量%となるように行った。
炊きあがった米100質量部に対し、寿司酢11質量部(醸造酢6.0質量部、砂糖4.0質量部、塩1.0質量部)を添加・混合した(酢飯のpHは4.5程度)。次いで、炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製)の濃度が0.25質量%であり、アルギン酸ナトリウム(キミカアルギンI-3、株式会社キミカ製)の濃度が1.0質量%である、炭酸カルシウムおよびアルギン酸含有液(炭酸カルシウムおよびアルギン酸含有液のpHは8程度、炭酸カルシウムは溶解していない。)を炊飯後の米100質量部に対して10.0または15.0質量部の量で添加・混合した。
なお、炭酸カルシウムおよびアルギン酸含有液を添加しない以外は同様にして製造した場合を対照とした(試験例10-1)。
得られた米飯(酢飯)は試験例5と同様にして、各評価を行った。結果を表9に示した。
【0077】
【0078】
試験例10の結果から、水難溶性の金属塩であって、pHが6.5以下で多価陽イオンを形成する金属塩を用いた場合でも、上記試験例と同様の結果となることが確認された。これは、水難溶性の金属塩であって、pHが6.5以下で多価陽イオンを形成する金属塩の一例である炭酸カルシウムが、pHが6.5以下である炊飯または蒸米後の米の一例である酢飯と接触することでイオン化し、多価陽イオンを含む炊飯または蒸米後の米が形成され、その後、アルギン酸塩と反応し、ゲルが形成され、効果を発揮したと考えられる。
【0079】
以上の結果から、本発明の方法を用いて製造した米飯類は、適度な柔らかさ、ふっくら感を保持し、また、しっかりした形を保ち、適度な粒感も有していた。更に、本発明の方法により製造した米飯類は、レンジアップした場合だけではなく、レンジアップをしない場合でも、適度な硬さを有し、そのまま喫食できることも示された。また、本発明の方法を用いて製造した米飯類は、食味の点でも、米飯類が本来有する食味と同様の食味を有しており、本発明によれば、食味に悪影響を与えることがなく、食味が良好な米飯類が得られることも確認された。
また、本発明の方法により製造した米飯類は、炊飯後に加水してもべしゃべしゃとはならず、適度な硬さを有しており、冷蔵保存後であっても、おにぎりや寿司などの形状に成形することができるものであった。そのため、本発明の方法で製造した米飯類は、成形した状態で低温流通させることもでき、未成形の状態で低温流通させた後に所望の形状に成形することも可能である。
おにぎりの製造工程では、米飯類にほぐれ性を与えるために油を入れることがあるが、本発明の方法で得られた米飯類は、ほぐれ性を与えるための油が不要な程度のほぐれ性を有しており、味に影響を与えずにおにぎりを製造することも可能である。
【0080】
(試験例11)
生米100質量部に対する乳酸カルシウム(五水和物)の量およびアルギン酸塩水溶液の添加を下記(i)または(ii)に変えた以外は試験例5と同様にして酢飯を製造、保存し、各評価を行った。なお、乳酸カルシウムおよびアルギン酸塩水溶液を添加しない以外は同様にして製造した場合を試験例11-1とした。結果を表10に示した。
(i) 乳酸カルシウム(五水和物)を添加せず、アルギン酸塩水溶液に代えて水を10質量部添加した場合(試験例11-2)。
(ii) 生米100質量部に対する乳酸カルシウム(五水和物)の量を0.88質量部とし、アルギン酸ナトリウムの濃度が0.4質量%のアルギン酸塩水溶液を10質量部添加した場合(試験例11-3)。
【0081】
【0082】
試験例11で示されたように、本発明の方法により製造した米飯類は、炊飯後に加水してもべしゃべしゃとはならず、適度な硬さを有しているのに対し、炊飯後の米飯に単に水のみを加水した場合には、水分量が多くべしゃべしゃとなってしまい、おにぎりや寿司などの形状に成形することができないものであった。
【0083】
(試験例12)
生米(あきたこまち)100質量部に、アルギン酸塩を含有する135質量部の水を添加した(生米100質量部に対するアルギン酸塩の量は0.15質量部)。30分間浸漬した後、炊飯器で炊飯した(パナソニック株式会社製IHジャー炊飯器(品番SR-FD107)の「早炊き」モードを使用)。なお、炊飯は、生米に対する炊飯後の米の量が220質量%となるように行った。
炊きあがった米に、3.0質量%の濃度の乳酸カルシウム水溶液を炊飯後の米飯100質量部に対して15.0質量部(生米100質量部に対するカルシウムイオンの量は0.13質量部)の量で添加・混合した(試験例12-2)。なお、乳酸カルシウムおよびアルギン酸塩水溶液を添加しない以外は同様にして製造した場合を対照とした(試験例12-1)。
得られた米飯(白米)を3℃で2日間保存した後、試験例1と同様にして、各評価を行った。結果を表11に示した。
【0084】
【0085】
試験例12の結果から、アルギン酸塩を先に米と接触させ、その後、多価陽イオンを接触させた場合には、パラパラとした、硬めの米飯となってしまうことがわかった。
【0086】
(試験例13)
生米(あきたこまち)100質量部に135質量部の水を添加した。30分間浸漬した後、炊飯器で炊飯した(パナソニック株式会社製IHジャー炊飯器(品番SR-FD107)の「早炊き」モードを使用)。なお、炊飯は、生米に対する炊飯後の米の量が220質量%となるように行った。
炊きあがった米に、4.0質量%の濃度の乳酸カルシウム水溶液を炊飯後の米100質量部に対して10.0質量部(生米100質量部に対するカルシウムイオンの量は0.11質量部)と、2.0質量%の濃度のアルギン酸ナトリウム(キミカアルギンI-3、株式会社キミカ製)水溶液を炊飯後の米100質量部に対して10.0質量部(生米100質量部に対するアルギン酸塩の量は0.44質量部)とを同時に添加し、混合した(試験例13-2)。なお、乳酸カルシウムおよびアルギン酸塩水溶液を添加しない以外は同様にして製造した場合を対照とした(試験例13-1)。
得られた米飯(白米)を3℃で2日間保存した後、試験例1と同様にして、各評価を行った。結果を表12に示した。
【0087】
【0088】
試験例13の結果から、多価陽イオンが形成されている多価陽イオン含有液とアルギン酸塩含有液を同時に添加した場合でも、パラパラとした、硬めの米飯となってしまうことがわかった。