(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B24B 49/12 20060101AFI20241106BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20241106BHJP
B24B 47/04 20060101ALI20241106BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20241106BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
B24B49/12
B24B41/06 L
B24B47/04
B23Q17/24 Z
G01N21/64 Z
(21)【出願番号】P 2020030334
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 良信
(72)【発明者】
【氏名】右山 芳国
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-180602(JP,A)
【文献】特開2015-217449(JP,A)
【文献】特開2019-192854(JP,A)
【文献】特開2018-144215(JP,A)
【文献】特開2019-191130(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0320237(US,A1)
【文献】特開平11-023923(JP,A)
【文献】特表2018-502280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/12
B24B 41/06
B24B 47/04
B23Q 17/24
G01N 21/64
F16H 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を収容するカセットと、被加工物を該カセットから取り出し保持面において保持して搬送するロボットと、保持面によって被加工物を保持する保持手段と、該保持手段の該保持面に保持された被加工物を加工する加工手段と、該加工手段によって加工された被加工物を保持面において保持し洗浄するスピンナ洗浄手段と、該加工手段に対し該保持手段を移動させる水平移動手段と、該保持手段に対し該加工手段を移動させる垂直移動手段と、該水平移動手段及び該垂直移動手段に給油する油とを少なくとも備える加工装置であって、
該水平移動手段には、第1光ルミネセンス粒子を含む第1油が塗布され、該垂直移動手段には、該第1
光ルミネセンス粒子とは異なる色を発光する第2光ルミネセンス粒子を含む第2油が塗布されており、
少なくとも該ロボット、該保持手段及び該スピンナ洗浄手段において被加工物を保持する該保持面または該保持面に保持された被加工物を撮像するカメラと、該カメラの撮像エリアに光を照射するライトと、を備え、
該ライトの光を照射し該カメラが撮像した該撮像エリアの画像において、該第1光ルミネセンス粒子または該第2光ルミネセンス粒子が発光する色によって、該撮像エリアにおける油が該水平移動手段または該垂直移動手段のいずれから飛散したかが分かる加工装置。
【請求項2】
該第1光ルミネセンス粒子または該第2光ルミネセンス粒子は、蓄光性を有する請求項1記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加工装置には、被加工物を保持する保持手段と、保持手段に保持された被加工物を加工する加工手段と、保持手段に被加工物を搬入する搬入手段と、被加工物を保持手段から搬出する搬出手段と、を備えているタイプのものがある。
搬入手段と搬出手段とのそれぞれには、被加工物を保持する保持部と、保持部を水平移動させる水平移動手段と、保持部を鉛直方向に移動させる鉛直移動手段とを備えている。
また、加工装置は、保持手段を、被加工物の搬入出が行われる搬入出位置と、加工手段による加工が行われる加工位置との間を水平方向に往復移動させる平行移動手段を備えている。
さらに、加工装置は、加工手段を保持面に垂直な方向に移動させる垂直移動手段を備えている。
このような、水平移動手段、鉛直移動手段、平行移動手段、垂直移動手段は、移動方向に延在するガイドレールと、ガイドレールに対して平行に配置されるボールネジと、ボールネジを回転させるモータとを備えている。特許文献1に示すように、ガイドレール及びボールネジには油が塗布される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業者による上記のガイドレールやボールネジへの給油作業の際、または、調整作業の際に、油が作業者の手などに付いてしまい、そのことに気づかない状態で作業者が加工室で作業をすることによって、作業者の手などに付着していた油を加工室内に付着させてしまうことがある。加工室内に油が付着した状態で、加工室内において被加工物の加工を行うと、加工室内に配設されている加工装置の部品等に被加工物が接触して、また、該部品に付着した油が加工液によって被加工物に付着する事によって、被加工物が油汚染されるなどの問題がある。
したがって、加工装置には、被加工物が油汚染されないようにするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、被加工物を収容するカセットと、被加工物を該カセットから取り出し保持面において保持して搬送するロボットと、保持面によって被加工物を保持する保持手段と、該保持手段の該保持面に保持された被加工物を加工する加工手段と、該加工手段によって加工された被加工物を保持面において保持し洗浄するスピンナ洗浄手段と、該加工手段に対し該保持手段を移動させる水平移動手段と、該保持手段に対し該加工手段を移動させる垂直移動手段と、該水平移動手段及び該垂直移動手段に給油する油とを少なくとも備える加工装置であって、該水平移動手段には、第1光ルミネセンス粒子を含む第1油が塗布され、該垂直移動手段には、該第1光ルミネセンス粒子とは異なる色を発光する第2光ルミネセンス粒子を含む第2油が塗布されており、少なくとも該ロボット、該保持手段及び該スピンナ洗浄手段において被加工物を保持する該保持面または、該保持面に保持された被加工物を撮像するカメラと、該カメラの撮像エリアに光を照射するライトと、を備え、該ライトの光を照射し該カメラが撮像した該撮像エリアの画像において、該第1光ルミネセンス粒子または該第2光ルミネセンス粒子が発光する色によって、該撮像エリアにおける油が該水平移動手段または該垂直移動手段のいずれから飛散したかが分かる加工装置である。
該第1光ルミネセンス粒子または該第2光ルミネセンス粒子は、蓄光性を有するものであることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、カメラを用いて保持手段の保持面を撮像し、第1光ルミネセンス粒子または第2光ルミネセンス粒子があるかどうかを判断して、保持面が油汚染されているかどうかを調べることにより、保持面に保持される被加工物の油汚染を防止することが可能となる。
また、第1光ルミネセンス粒子と第2光ルミネセンス粒子とがライトによる光の照射を受けて異なる色に発光するため、撮像された撮像画に何色の発光部分があるのかを判断することにより、保持面に付着した油の飛散元を判断することが可能となる。
さらには、蓄光性を有する第1光ルミネセンス粒子または第2光ルミネセンス粒子若しくはその両方が保持面に照射された光を蓄光するため、ライトによる照射を止めた後においても、一定時間発光をし続けるという現象を利用してその光を基に油が付着していると判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
1 加工装置の構成
図1に示す加工装置1は、加工手段3を用いて保持面200に保持された被加工物17を加工する加工装置である。以下、加工装置1の構成について説明する。
【0009】
加工装置1は、
図1に示すように、Y軸方向に延設されたベース10とベース10の+Y方向側に立設されたコラム11とを備えている。
ベース10の上方には、直方体状の装置カバー15が配設されている。装置カバー15によって仕切られた直方体状の空間は、被加工物17の搬入出や研削加工が行われる空間となっている。
【0010】
ベース10の上には、板状の保持手段2が配設されている。保持手段2は基台22に着脱可能に装着されている。保持手段2は、保持手段20と保持手段20を支持する枠体21とを備えている。保持手段20の上面は被加工物17が保持される保持面200となっている。枠体21の上面210は、保持面200に面一に形成されている。
保持面200には図示しない吸引手段等が接続されている。保持面200に被加工物17が載置されている状態で、図示しない吸引手段等を用いて吸引力を発揮させることにより、生み出された吸引力が保持面200に伝達されて、保持面200に被加工物17が吸引保持されることとなる。
【0011】
基台22の下には、図示しないモータ等を有する回転手段24が連結されている。回転手段24を用いることにより、保持手段2をその中心を通るZ軸方向の軸心を軸にして回転させることができる。
【0012】
ベース10の内部には、内部ベース16が配設されている。内部ベース16の上には、保持手段2を水平方向に移動させる水平移動手段5が配設されている。
水平移動手段5は、Y軸方向の回転軸55を有するボールネジ50と、ボールネジ50に対して平行に配設された一対のガイドレール51と、ボールネジ50に連結され回転軸55を軸にしてボールネジ50を回動させるY軸モータ52と、底部のナットがボールネジ50に螺合しガイドレール51に沿ってY軸方向に移動する可動板53とを備えている。可動板53の上面530には、回転手段24が配設されている。
【0013】
Y軸モータ52にボールネジ50が駆動されてボールネジ50が回転軸55を軸として回転すると、これに伴い、可動板53がガイドレール51に案内されてY軸方向に移動するとともに、可動板53に支持されている回転手段24、回転手段24に連結されている基台22、及び基台22に装着されている保持手段2が可動板53と一体的にY軸方向に移動することとなる。
【0014】
また、保持手段2の周囲にはカバー27及びカバー27に伸縮自在に連結された蛇腹28が配設されている。例えば、水平移動手段5に駆動されて保持手段2がY軸方向に移動すると、カバー27が保持手段2とともにY軸方向に移動して蛇腹28が伸縮することとなる。
【0015】
コラム11の+X方向側の側面には、加工手段3を昇降可能に支持する垂直移動手段4が配設されている。加工手段3は、Z軸方向の回転軸35を有するスピンドル30と、スピンドル30を回転可能に支持するハウジング31と、回転軸35を軸にしてスピンドル30を回転駆動するスピンドルモータ32と、スピンドル30の下端に接続された円板状のマウント33と、マウント33の下面に着脱可能に装着された研削ホイール34とを備えている。
研削ホイール34は、ホイール基台341と、ホイール基台341の下面に環状に配列された略直方体形状の複数の研削砥石340とを備えており、研削砥石340の下面は被加工物17を研削する研削面342となっている。
【0016】
垂直移動手段4は、Z軸方向の回転軸45を有するボールネジ40と、ボールネジ40に対して平行に配設された一対のガイドレール41と、回転軸45を軸にしてボールネジ40を回転させるZ軸モータ42と、内部のナットがボールネジ40に螺合し側部がガイドレール41に摺接する昇降板43と、昇降板43に連結され加工手段3を支持するホルダ44とを備えている。
【0017】
Z軸モータ42によってボールネジ40が駆動されて、ボールネジ40が回転軸45を軸にして回転すると、これに伴って、昇降板43がガイドレール41に案内されてZ軸方向に昇降移動するとともに、ホルダ44に保持されている加工手段3がZ軸方向に移動することとなる。
【0018】
水平移動手段5には、第1光ルミネセンス粒子を含む第1油が塗布されている。
また、垂直移動手段4には、第2光ルミネセンス粒子を含む第2油が塗布されている。
【0019】
第1光ルミネセンス粒子は、例えば、酸窒化物にCe3+が添加されたもの、酸窒化物にEu2+が添加されたもの、またはα-サイアロンにEu2+が添加されたもの、若しくはCaAlSiN3にEu2+が添加されたもの等、外部からの光の照射を受けて発光する蛍光体である。
第2光ルミネセンス粒子は、第1光ルミネセンス粒子と異なる種類の蛍光体である。
【0020】
以下、第1光ルミネセンス粒子は、酸窒化物にCe3+が添加されたものとし、第2光ルミネセンス粒子は、酸窒化物にEu2+が添加されたものとするが、第1光ルミネセンス粒子、及び第2光ルミネセンス粒子はこれに限定されるものではない。
【0021】
ここで、酸窒化物にCe3+が添加されたものに光が照射されると青色に光り、酸窒化物にEu2+が添加されたものに光が照射されると緑色に光り、α-サイアロンにEu2+が添加されたものに光が照射されると黄色に光り、また、CaAlSiN3にEu2+が添加されたものに光が照射されると、赤色に光ることがわかっている。
従って、本実施形態では、第1光ルミネセンス粒子に光を照射すると青色に光り、第2光ルミネセンス粒子に光を照射すると緑色に光る。
【0022】
また、第1光ルミネセンス粒子、及び第2光ルミネセンス粒子は、蓄光性(燐光性)を有しており、所定時間、両粒子に光を照射し続けた後に光の照射を停止しても、両粒子は、一定の時間発光し続けるものとする。
【0023】
ベース10の上には、例えば厚み測定手段100が配設されている。厚み測定手段100は、例えば加工装置1のベース10の上の-X方向側に配設された筐体101を備えている。筐体101の側面には、上面ハイトゲージ102が配設されている。
例えば保持面200に被加工物17が保持されている状態で、上面ハイトゲージ102のプローブを被加工物17の上面170に接触させることにより、被加工物17の上面170の高さを測定することができる。
【0024】
ベース10の-Y方向側には、カセット載置部12が設けられている。
カセット載置部12には、カセット70が載置されている。カセット70には、研削加工前の被加工物17が収容されている。また、カセット70には、研削加工後の被加工物17を収容することができる。
【0025】
カセット70の+Y方向側には、ロボット71が配設されている。ロボット71は、保持手段710と保持手段710を旋回可能に支持する軸部711とを備えている。保持手段710の上面は、被加工物17が保持される保持面712となっている。保持手段710を用いてカセット70に収容されている被加工物17をカセット70から取り出して、軸部711を軸にして保持手段710を旋回させることにより、被加工物17を搬送することができる。
【0026】
保持手段710の可動域における+X方向側には、研削加工前の被加工物17が仮置きされる仮置き領域13が配設されており、保持手段710の可動域における-X方向側には、研削加工後の被加工物17を洗浄する洗浄領域14が設けられている。
【0027】
仮置き領域13には、位置合わせ手段72が配設されている。カセット70から搬出されて仮置き領域13に載置された被加工物17は、位置合わせ手段72によって所定の位置に位置合わせされることとなる。
【0028】
洗浄領域14には、スピンナ洗浄手段73が配設されている。スピンナ洗浄手段73は、被加工物17が保持される保持手段730と、保持手段730に保持された被加工物17に向けて洗浄水を噴出する洗浄水供給ノズル731とを備えている。保持手段730の上面は、被加工物17が保持される保持面732となっている。
例えば、保持手段730の保持面732に研削加工後の被加工物17が載置されている状態で、洗浄水供給ノズル731から洗浄水を供給することにより被加工物17を洗浄することができる。
【0029】
仮置き領域13に隣接する位置には、位置合わせ手段72によって位置合わせされた被加工物17を保持手段2に搬入する搬入手段601が配設されている。
搬入手段601は、円板状のパッド60及びパッド60を上下自在に吊持するアーム61を備えている。アーム61の端部には、Z軸方向の回転軸65を有する筒状の軸部610が連結されている。例えば、軸部610には、回転軸65を軸にして軸部610を回転させる図示しない回転手段等が接続されている。
【0030】
アーム61の軸部610に連結されていない側の端部には、環状部材62が連結されている。環状部材62には、例えば3つの貫通孔620が円周上に等間隔に貫通形成されており、それぞれの貫通孔620にネジ63(
図1においては1つのみが示されている)が貫通して、さらにパッド60に螺嵌している。ネジ63のツバ部630は貫通孔620よりも大径に形成されており、ネジ63はその下降範囲が制限された状態でパッド60とともに環状部材62に吊持されている。
例えば、パッド60を被加工物17の上面170に下降させることにより被加工物17の上面170とパッド60の下面とが接触した際に、パッド60の下面に被加工物17の上面170から+Z方向の押力が加えられると、パッド60及びネジ63は、環状部材62に対して+Z方向に上昇する構成となっている。
【0031】
搬入手段601の-X方向側には、搬出手段602が配設されている。搬出手段602は、搬入手段601と同様の構成を有しているため、同様の符号を付して、その説明を省略する。
【0032】
加工装置1は、保持手段2の保持手段20の保持面200、ロボット71の保持手段710の保持面712、及びスピンナ洗浄手段73の保持手段730の保持面732を撮像する3つのカメラ80を備えている。カメラ80は、保持面200、712、及び732の上方に配設されている。保持面200、712、及び732は、カメラ80の撮像エリアとなっている。
【0033】
加工装置1は、カメラ80の撮像エリアである保持手段2の保持手段20の保持面200、ロボット71の保持手段710の保持面712、及びスピンナ洗浄手段73の保持手段730の保持面732に、光を照射するライト81を備えている。ライト81からは紫外線又は可視光が照射される。ライト81からは、紫外線と可視光とのいずれか一方を選択して照射することができる。
また、カメラ80は、カメラ80により撮像された画像の情報を判断部9に送信することができる。
なお、いずれか一方を選択しないで紫外線と可視光とを混合した光を照射してもよい。
さらに、混合した光に赤外線を混合させてもよい。つまり、光ルミネセンス粒子を励起させる波長を含んだ光を照射させるとよい。
【0034】
加工装置1は、撮像画に光ルミネセンス粒子が含まれているかどうかを判断する判断部9を備えている。判断部9は、カメラ80によって撮像された撮像画を受信することができる。判断部9は、画像認識機構等を有しており、カメラ80によって撮像された撮像画に光ルミネセンス粒子が含まれているかどうかを判断することができる。
また、判断部9は、図示しないメモリ等の記憶装置を備えており、該記憶装置にはカメラ80によって撮像された撮像画を記憶することができる。
【0035】
装置カバー15の-Y方向側の側面には、研削加工の加工条件等の入力機能、研削加工時に生じたエラー等の表示機能等を有するタッチパネル90が配設されている。
例えば、タッチパネル90は、カメラ80を用いて撮像された撮像画を表示することができる。
【0036】
2 加工装置の動作
加工装置1を用いて被加工物17の研削加工を行う際には、まず、ロボット71を用いてカセット70に収容されている被加工物17のうちの一枚を引き出して、仮置き領域13に載置する。被加工物17が仮置き領域13に載置されると、位置合わせ手段72による被加工物17の位置合わせが行われる。
【0037】
位置合わせ手段72によって被加工物17の位置合わせを行った後、搬入手段601を用いて被加工物17を保持手段2の保持面200に載置して、図示しない吸引手段等を作動させる。これにより、生み出された吸引力が保持面200に伝達されて、被加工物17が保持面200に吸引保持される。
【0038】
そして、被加工物17が保持面200に吸引保持されている状態で、水平移動手段5を用いて保持手段2を+Y方向に移動させて、加工手段3の下方に位置付ける。
次いで、回転手段24を用いて回転軸25を軸にして保持手段2を回転させることにより、保持面200に保持されている被加工物17を回転させるとともに、スピンドルモータ32を用いて回転軸35を軸にして研削砥石340を回転させる。
【0039】
被加工物17が回転軸25を軸にして回転しており、かつ、研削砥石340が回転軸35を軸にして回転している状態で、垂直移動手段4を用いて研削砥石340を-Z方向に下降させて、研削砥石340の研削面342を被加工物17の上面170に接触させる。研削面342が被加工物17の上面170に接触している状態で、さらに研削砥石340を-Z方向に下降させることにより被加工物17が研削される。
【0040】
被加工物17の研削加工中には、厚み測定手段100を用いて被加工物17の厚みの測定が行われる。被加工物17が所定の厚みまで研削されたら研削加工を終了する。
研削加工後、搬出手段602を用いて被加工物17を洗浄領域14に位置づけて、スピンナ洗浄手段73を用いて上面170を洗浄する。そして、ロボット71を用いてカセット70に収容する。
【0041】
上記の加工装置1を用いた被加工物17の加工においては、保持面200の上に被加工物17を載置する前に、保持手段2の保持面200等に油汚染があるかどうかを調べる。以下、油汚染の有無を調べる際の加工装置1の動作について説明する。
【0042】
まず遮光手段82を用いて、照射エリアの一つである保持手段2の保持面200に外からの光が当たらないように外からの光を遮光して暗室を形成する。
次に、ライト81を用いて保持面200に紫外線を照射しながら、カメラ80を用いて保持面200を撮像する。撮像された撮像画の情報は、判断部9に送信され、判断部に備える図示しない記憶装置等に記憶される。
そして、判断部9において、撮像された撮像画に第1光ルミネセンス粒子、または第2光ルミネセンス粒子があるかが判断される。
判断部9により、撮像画に第1光ルミネセンス粒子、または第2光ルミネセンス粒子があると判断された場合には、撮像エリアに油が付着していることを知ることができる。
【0043】
このとき、酸窒化物にCe3+を添加したものである第1光ルミネセンス粒子は、ライト81による光の照射をうけて青色に光るため、例えば、撮像画に青色に発光する部分があれば、その発光部分には第1ルミネセンス粒子を含む第1油が付着しているとわかり、その飛散元は、第1油が塗布されている水平移動手段5であることがわかる。
また、酸窒化物にEu2+を添加したものである第2光ルミネセンス粒子はライト81による光の照射をうけて緑色に光るため、例えば、メンテナンス後の撮像画に緑色に発光する部分があれば、その発光部分には第2ルミネセンス粒子を含む第2油が付着しているとわかり、その飛散元は、第2油が塗布されている垂直移動手段4であることがわかる。
【0044】
このように、第1光ルミネセンス粒子と第2光ルミネセンス粒子とがライト81による光の照射をうけて異なる色に発光するという性質を利用することにより、撮像された撮像画に何色の発光部分があるのかを判断することが可能となる。したがって、第1ルミネセンス粒子を含む第1油が塗布された部位と第2ルミネセンス粒子を含む第2油が塗布された部位とをそれぞれ事前に把握しておくことにより、保持面200に付着した油の飛散元を判断することができる。
【0045】
また、油汚染の有無を判断するための加工装置1の動作の構成は、上記のようなライト81を用いて保持面200に紫外線を照射しながらカメラ80を用いて保持面200を撮像するという構成にかえて、ライト81を用いて保持面200に所定時間、紫外線を照射した後、ライト81による紫外線の照射を止めてから、カメラ80を用いて保持面200を撮像するという構成であってもよい。
このとき、保持面200に油が付着している場合には、蓄光性を有する第1光ルミネセンス粒子または第2光ルミネセンス粒子若しくはその両方が、保持面200に照射された紫外線を蓄光する。従って、ライト81による紫外線の照射を止めた後においても、油が付着している部分が一定時間発光をし続けるため、その発光部分に油が付着していると判断することができる。かかる構成においても、発光部分がある場合、該発光部分が何色に発光しているのかを認識することにより、撮像エリアに付着している油の飛散元を知ることが可能である。
なお、紫外線を可視光に変えてもよい。また、紫外線と可視光とを混合した光でもよい。
さらに、混合した光に赤外線を混合させてもよい。つまり、光ルミネセンス粒子を励起させる波長を含んだ光を照射させるとよい。
【0046】
油が付着しているかどうかを判断するための構成としては、例えば撮像された撮像画をタッチパネル90に表示し、作業者が表示された撮像画を見て発光している部分があるかどうかを認識し、撮像エリアに油が付着しているかどうかを判断するというものであってもよい。
【0047】
例えば、カメラ80によって撮像された撮像画に発光部分が発見されたが、それが油汚染に由来するものであるかどうかの判断が困難な場合がある。
この問題を未然に防ぐべく、例えば、加工装置1のメンテナンス前に、水平移動手段5に第1油が塗布されていなく、かつ、垂直移動手段4に第2油が塗布されていない状態で、予め、ライト81を用いて保持面200に紫外線を照射しながら、カメラ80を用いて保持面200を撮像し、撮像された撮像画を判断部に記憶させておく。そして、予め記憶させておいた油が付着していないとされる比較元の撮像画と、その後にカメラによって撮像された該発光部分を有する撮像画とを比較することによって、発光部分に油が付着しているかどうかを容易に判断することができる。
【0048】
上記のように、カメラ80を用いて保持手段2の保持面200を撮像し、第1光ルミネセンス粒子、または第2光ルミネセンス粒子があるかどうかを判断して、保持面200が油汚染されているかどうかを調べることにより、保持面200に保持される被加工物17の油汚染を防止することが可能となる。
また、同様にカメラ80を用いてロボット71の保持面712、及びスピンナ洗浄手段73の保持面732を撮像し、第1光ルミネセンス粒子または第2光ルミネセンス粒子が含まれているかどうか判断して、保持面712及び保持面732が油汚染されているかどうか調べることができる。これにより、被加工物17の油汚染を防止できる。
また、同様にカメラ80を用いてロボット71の保持面712、及びスピンナ洗浄手段73の保持面732を撮像する際、保持面712、732に対し垂直方向より少し傾いた方向から撮像することによって、撮像する部分が黒色であったとしても、その黒色部分の上に付着した油の色を認識することで、第1光ルミネセンス粒子または第2光ルミネセンス粒子が含まれているかどうか判断することができる。
【0049】
さらには、油汚染が発生しているとわかることによって、水平移動手段5のボールネジ50若しくはガイドレール51、または垂直移動手段4のボールネジ40若しくはガイドレール41への給油量が不適切であるとして給油量の改善が促されるとともに、水平移動手段5、及び垂直移動手段4の動作不良の予防を行うことが可能となる。
【0050】
なお、上記実施形態では、遮光手段82を用いて照射エリアを暗室にしてカメラ80に
よる撮像をしたが、遮光手段82は必須ではなく、暗室を形成せずに撮像した画像によって、撮像エリアに油が付着しているかどうかを判断できる場合は、遮光手段82を用いなくてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1:加工装置 10:ベース
100:厚み測定手段 101:筐体 102:上面ハイトゲージ
11:コラム 12:カセット載置部 13:仮置き領域
14:洗浄領域 15:装置カバー 16:内部ベース
2:チャックテーブル 20:保持手段 200:保持面
21:枠体 210:枠体の上面 22:基台 24:回転手段 25:回転軸
27:カバー 28:蛇腹
3:加工手段 30:スピンドル 31:ハウジング 32:スピンドルモータ
33:マウント 34:研削ホイール 340:研削砥石 342:研削面
341:ホイール基台 35:回転軸
4:上下移動手段 40:ボールネジ 41:ガイドレール 42:Z軸モータ
43:昇降板 44:ホルダ 45:回転軸
5:水平移動手段 50:ボールネジ 51:ガイドレール 52:Y軸モータ
53:可動板
601:搬入手段 602:搬出手段
60:パッド 61:アーム 610:軸部 62:環状部材 620:貫通孔
70:カセット 71:ロボット 710:保持手段 712:保持面
711:軸部 72:位置合わせ手段
73:洗浄手段 730:保持手段 732:保持面 731:洗浄水供給ノズル
80:カメラ 81:ライト 82:遮光手段 821:ガイドレール
823:連結支持部 824:角材 825:ドレープ
9:判断部 90:タッチパネル
17:被加工物 170:被加工物の上面