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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】シンボル判定器及び再送信装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/00 20060101AFI20241106BHJP
   H04L 27/26 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H04L27/00 B
H04L27/26 100
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020146107
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2021072614
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2019195792
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100121119
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】竹内 知明
(72)【発明者】
【氏名】川島 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】井地口 朋也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明彦
(72)【発明者】
【氏名】岡野 正寛
(72)【発明者】
【氏名】土田 健一
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/039236(WO,A1)
【文献】特開2017-188803(JP,A)
【文献】特開2018-129773(JP,A)
【文献】国際公開第2018/116411(WO,A1)
【文献】特開2006-067123(JP,A)
【文献】高田 直幸 他,2ホップ回線における硬/軟値混在パケット中継に関する一検討 ,電子情報通信学会技術研究報告,日本,社団法人電子情報通信学会 ,Vol.111, No.260,pp.219-224
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/00
H04L 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号に重畳された雑音の電力を雑音電力として算出する雑音電力算出部と、
前記受信信号、及び前記雑音電力算出部により算出された前記雑音電力から、ビット毎の対数尤度比を算出する対数尤度比算出部と、
前記対数尤度比算出部により算出された前記対数尤度比を、予め設定された対数尤度比操作関数を用いて操作し、新たな対数尤度比を算出する対数尤度比操作部と、
前記対数尤度比操作部により算出された前記新たな対数尤度比から、ビット毎のビット確率を算出するビット確率算出部と、
前記ビット確率算出部により算出された前記ビット確率から、シンボル毎のシンボル確率を算出するシンボル確率算出部と、
前記シンボル確率算出部により算出された前記シンボル確率から、軟レプリカを生成する軟レプリカ生成部と、を備えたことを特徴とするシンボル判定器。
【請求項2】
受信信号に重畳された雑音の電力を雑音電力として算出する雑音電力算出部と、
前記受信信号、及び前記雑音電力算出部により算出された前記雑音電力から、ビット毎の対数尤度比を算出する対数尤度比算出部と、
前記対数尤度比算出部により算出された前記対数尤度比から、ビット毎のビット確率を算出するビット確率算出部と、
前記ビット確率算出部により算出された前記ビット確率を、予め設定された確率操作関数を用いて操作し、新たなビット確率を算出するビット確率操作部と、
前記ビット確率操作部により算出された前記新たなビット確率から、シンボル毎のシンボル確率を算出するシンボル確率算出部と、
前記シンボル確率算出部により算出された前記シンボル確率から、軟レプリカを生成する軟レプリカ生成部と、を備えたことを特徴とするシンボル判定器。
【請求項3】
請求項に記載のシンボル判定器において、
前記対数尤度比操作部は、
予め設定された複数の関数が格納されたメモリと、
前記雑音電力算出部により算出された前記雑音電力に対応する1つの前記関数を前記メモリから読み出し、当該関数を前記対数尤度比操作関数として選択する関数選択部と、
前記関数選択部により選択された前記対数尤度比操作関数を用いて、前記対数尤度比を操作して前記新たな対数尤度比を算出する操作部と、を備え、
入力した前記対数尤度比をそのまま前記新たな対数尤度比として出力する前記関数を軟判定関数とし、
入力した前記対数尤度比の符号を判定し、予め設定された上限値に前記符号を乗算して前記新たな対数尤度比を出力する前記関数を硬判定関数として、
前記関数選択部は、
予め設定されたしきい値を用いて前記雑音電力が大きいと判定した場合、前記軟判定関数を前記対数尤度比操作関数として選択するか、または、前記硬判定関数よりも前記軟判定関数に近い特性を有する前記関数を前記対数尤度比操作関数として選択し、
前記雑音電力が小さいと判定した場合、前記硬判定関数を前記対数尤度比操作関数として選択するか、または、前記軟判定関数よりも前記硬判定関数に近い特性を有する前記関数を前記対数尤度比操作関数として選択する、ことを特徴とするシンボル判定器。
【請求項4】
請求項に記載のシンボル判定器において、
前記ビット確率操作部は、
予め設定された複数の関数が格納されたメモリと、
前記雑音電力算出部により算出された前記雑音電力に対応する1つの前記関数を前記メモリから読み出し、当該関数を前記確率操作関数として選択する関数選択部と、
前記関数選択部により選択された前記確率操作関数を用いて、前記ビット確率を操作して前記新たなビット確率を算出する操作部と、を備え、
入力した前記ビット確率をそのまま前記新たなビット確率として出力する前記関数を軟判定関数とし、
入力した前記ビット確率を予め設定されたしきい値を用いてしきい値処理し、所定の最小または最大の前記ビット確率を前記新たなビット確率として出力する前記関数を硬判定関数として、
前記関数選択部は、
予め設定されたしきい値を用いて前記雑音電力が大きいと判定した場合、前記軟判定関数を前記確率操作関数として選択するか、または、前記硬判定関数よりも前記軟判定関数に近い特性を有する前記関数を前記確率操作関数として選択し、
前記雑音電力が小さいと判定した場合、前記硬判定関数を前記確率操作関数として選択するか、または、前記軟判定関数よりも前記硬判定関数に近い特性を有する前記関数を前記確率操作関数として選択する、ことを特徴とするシンボル判定器。
【請求項5】
請求項に記載のシンボル判定器において、
前記対数尤度比操作部は、
予め設定された複数の関数が格納されたメモリと、
前記シンボルを構成する複数ビットのそれぞれに対応する1つの前記関数を前記メモリから読み出し、当該関数を前記対数尤度比操作関数として選択する関数選択部と、
前記関数選択部により選択された前記対数尤度比操作関数を用いて、前記対数尤度比を操作して前記新たな対数尤度比を算出する操作部と、を備え、
入力した前記対数尤度比をそのまま前記新たな対数尤度比として出力する前記関数を軟判定関数とし、
入力した前記対数尤度比の符号を判定し、予め設定された上限値に前記符号を乗算して前記新たな対数尤度比を出力する前記関数を硬判定関数として、
前記関数選択部は、
前記シンボルを構成する複数ビットのうちのLSB(最下位ビット)を含む所定数の下位ビットについて、前記軟判定関数を前記対数尤度比操作関数として選択するか、または、前記硬判定関数よりも前記軟判定関数に近い特性を有する前記関数を前記対数尤度比操作関数として選択し、
前記シンボルを構成する複数ビットのうちのMSB(最上位ビット)を含む所定数の上位ビットについて、前記硬判定関数を前記対数尤度比操作関数として選択するか、または、前記軟判定関数よりも前記硬判定関数に近い特性を有する前記関数を前記対数尤度比操作関数として選択する、ことを特徴とするシンボル判定器。
【請求項6】
請求項に記載のシンボル判定器において、
前記ビット確率操作部は、
予め設定された複数の関数が格納されたメモリと、
前記シンボルを構成する複数ビットのそれぞれに対応する1つの前記関数を前記メモリから読み出し、当該関数を前記確率操作関数として選択する関数選択部と、
前記関数選択部により選択された前記確率操作関数を用いて、前記ビット確率を操作して前記新たなビット確率を算出する操作部と、を備え、
入力した前記ビット確率をそのまま前記新たなビット確率として出力する前記関数を軟判定関数とし、
入力した前記ビット確率を予め設定されたしきい値を用いてしきい値処理し、所定の最小または最大の前記ビット確率を前記新たなビット確率として出力する前記関数を硬判定関数として、
前記関数選択部は、
前記シンボルを構成する複数ビットのうちのLSB(最下位ビット)を含む所定数の下位ビットについて、前記軟判定関数を前記確率操作関数として選択するか、または、前記硬判定関数よりも前記軟判定関数に近い特性を有する前記関数を前記確率操作関数として選択し、
前記シンボルを構成する複数ビットのうちのMSB(最上位ビット)を含む所定数の上位ビットについて、前記硬判定関数を前記確率操作関数として選択するか、または、前記軟判定関数よりも前記硬判定関数に近い特性を有する前記関数を前記確率操作関数として選択する、ことを特徴とするシンボル判定器。
【請求項7】
請求項1からまでのいずれか一項に記載のシンボル判定器を備えることを特徴とする再送信装置。
【請求項8】
請求項に記載の再送信装置において、
伝送路推定が用途であるパイロット信号を伝送路推定用パイロット信号として生成するパイロット信号生成器と、
前記シンボル判定器により生成された前記軟レプリカからデータキャリアを抽出すると共に、前記伝送路推定が用途でないパイロット信号を非伝送路推定用パイロット信号として抽出し、前記パイロット信号生成器により生成された前記伝送路推定用パイロット信号、前記データキャリア及び前記非伝送路推定用パイロット信号を再送信信号として出力するスイッチ部と、を備えたことを特徴とする再送信装置。
【請求項9】
請求項に記載の再送信装置において、
伝送路推定が用途であるパイロット信号を伝送路推定用パイロット信号として生成するパイロット信号生成器と、
白色雑音を発生する雑音発生器と、
前記シンボル判定器により生成された前記軟レプリカに、前記雑音発生器により発生した前記白色雑音を加算し、加算結果の信号を出力する加算部と、
前記シンボル判定器により生成された前記軟レプリカからデータキャリアを抽出すると共に、前記加算部により出力された前記加算結果の信号から、前記伝送路推定が用途でないパイロット信号を非伝送路推定用パイロット信号として抽出し、前記パイロット信号生成器により生成された前記伝送路推定用パイロット信号、前記データキャリア及び前記非伝送路推定用パイロット信号を再送信信号として出力するスイッチ部と、を備えたことを特徴とする再送信装置。
【請求項10】
請求項に記載の再送信装置において、
伝送路推定が用途であるパイロット信号を伝送路推定用パイロット信号として生成するパイロット信号生成器と、
任意の整数値を生成する整数生成部と、
前記整数生成部により生成された前記整数値を位相偏移変調し、位相偏移変調信号を生成する位相偏移変調器と、
前記位相偏移変調器により生成された前記位相偏移変調信号に予め設定された係数を乗算し、乗算結果の位相偏移変調信号を出力する乗算部と、
前記シンボル判定器により生成された前記軟レプリカに、前記乗算部により出力された前記乗算結果の位相偏移変調信号を加算し、加算結果の信号を出力する加算部と、
前記シンボル判定器により生成された前記軟レプリカからデータキャリアを抽出すると共に、前記加算部により出力された前記加算結果の信号から、前記伝送路推定が用途でないパイロット信号を非伝送路推定用パイロット信号として抽出し、前記パイロット信号生成器により生成された前記伝送路推定用パイロット信号、前記データキャリア及び前記非伝送路推定用パイロット信号を再送信信号として出力するスイッチ部と、を備えたことを特徴とする再送信装置。
【請求項11】
請求項10に記載の再送信装置において、
さらに、前記シンボル判定器により生成された前記軟レプリカの位相を算出する位相算出部と、
前記乗算部により出力された前記乗算結果の位相偏移変調信号を、前記位相算出部により算出された前記位相だけ回転させ、位相回転後の位相偏移変調信号を出力する位相回転部と、を備え、
前記整数生成部は、
OFDM信号のシンボルを構成するサブキャリアに対応して、前記サブキャリア毎に、全ての前記シンボルにおける同一のキャリア番号の前記サブキャリアについて同じ値となるように前記整数値を生成し、
前記加算部は、
前記シンボル判定器により生成された前記軟レプリカに、前記位相回転部により出力された前記位相回転後の位相偏移変調信号を加算し、前記加算結果の信号を出力する、ことを特徴とする再送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上放送並びに固定通信及び移動通信の技術分野に関するものであり、特に、シンボル判定処理により信号を再生し、再送信信号を生成するシンボル判定器及び再送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタル伝送方式では、各サービスで利用可能な周波数帯域幅において、より多くの情報を伝送することができるように、多値変調方式が用いられている。周波数利用効率を高めるためには、変調信号の1シンボルに割り当てるビット数(変調次数)を多くすることが有効であるが、周波数1Hzあたりに伝送可能な情報速度の上限値と信号対雑音比の関係はシャノン限界で制限される。
【0003】
現在利用されている地上デジタル放送では、誤り訂正符号を用いた受信装置において情報訂正が行われている。パリティビットと呼ばれる冗長信号を、送るべき情報に付加することにより、信号の冗長度(符号化率)を制御し、雑音に対する耐性を上げることが可能である。
【0004】
誤り訂正符号と変調方式は密接に関わっており、信号対雑音比に対する周波数利用効率の理論的な上限値はシャノン限界と呼ばれる。シャノン限界に迫る性能を有する強力な誤り訂正符号の一つとして、LDPC(Low Density Parity Check)符号がギャラガーによって提案されている(例えば、非特許文献1を参照)。
【0005】
一方、デジタル信号の伝送においては、伝送経路に中継装置を設置することがある。例えば地上デジタル放送においては、基幹局の他に多くの中継局によって放送ネットワークを構築している。中継局への信号伝送の手法としては、専用線を用いた配信の他に、基幹局または上位局からの電波を受信する放送波中継があり、コスト面で有利である。
【0006】
放送波中継においては、上位局からの電波を受信してから再送信するまでの間に、伝送路における信号品質の劣化を改善するための補償器を用いることがある。補償器の一つとして、受信信号の周波数特性を等化機能により改善した後、信号に重畳されたランダム雑音成分を判定機能により除去する等化判定器がある(例えば、非特許文献2,3を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】R.G Gallager,“Low Density Parity Check Codes”,Research Monograph series Cambridge,MIT Press,1963
【文献】中原他、“地上デジタル放送の放送波中継におけるスペースダイバーシティ受信の適用~周波数軸等化および等化判定を行う放送波中継の検討~”、映情学誌、25(50):13-18、Jul 2001
【文献】安藤他、“地上デジタル放送用等化判定中継装置の室内実験”、映情学年大、2003.19-8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の非特許文献2,3に記載された等化判定器の判定処理により、信号に重畳されたランダム雑音成分を完全に除去することができる。このため、等化判定器の判定処理は、中継信号の品質の改善という観点で極めて有効な機能である。ただし、判定処理においては少なからず判定誤りが発生するため、等化判定器を用いる中継局からの再送信信号には、誤りが含まれることがある。
【0009】
特に、LDPC符号化されたデジタル信号が送信局から中継局へ送信され、中継局において、等化判定器がシンボル判定処理を行った後に再送信信号を生成して中継を行う場合、再送信信号の品質が劣化することがあるという問題があった。
【0010】
LDPC符号は強力な誤り訂正能力を有するため、変調信号1シンボルあたりに多くのビットを割り当てることができる。中継局で用いる従来の等化判定器では、いわゆる硬判定処理が行われるため、受信状態が悪い場合には、シンボル判定処理において多くの誤りが発生する可能性があり、結果として、再送信信号の品質が劣化することがあり得る。
【0011】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、シンボル誤り率が大きい受信条件においても、シンボル判定処理により伝送路の劣化を改善し、品質の良い再送信信号を生成可能なシンボル判定器及び再送信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、請求項1のシンボル判定器は、受信信号に重畳された雑音の電力を雑音電力として算出する雑音電力算出部と、前記受信信号、及び前記雑音電力算出部により算出された前記雑音電力から、ビット毎の対数尤度比を算出する対数尤度比算出部と、前記対数尤度比算出部により算出された前記対数尤度比を、予め設定された対数尤度比操作関数を用いて操作し、新たな対数尤度比を算出する対数尤度比操作部と、前記対数尤度比操作部により算出された前記新たな対数尤度比から、ビット毎のビット確率を算出するビット確率算出部と、前記ビット確率算出部により算出された前記ビット確率から、シンボル毎のシンボル確率を算出するシンボル確率算出部と、前記シンボル確率算出部により算出された前記シンボル確率から、軟レプリカを生成する軟レプリカ生成部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項2のシンボル判定器は、受信信号に重畳された雑音の電力を雑音電力として算出する雑音電力算出部と、前記受信信号、及び前記雑音電力算出部により算出された前記雑音電力から、ビット毎の対数尤度比を算出する対数尤度比算出部と、前記対数尤度比算出部により算出された前記対数尤度比から、ビット毎のビット確率を算出するビット確率算出部と、前記ビット確率算出部により算出された前記ビット確率を、予め設定された確率操作関数を用いて操作し、新たなビット確率を算出するビット確率操作部と、前記ビット確率操作部により算出された前記新たなビット確率から、シンボル毎のシンボル確率を算出するシンボル確率算出部と、前記シンボル確率算出部により算出された前記シンボル確率から、軟レプリカを生成する軟レプリカ生成部と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項のシンボル判定器は、請求項に記載のシンボル判定器において、前記対数尤度比操作部が、予め設定された複数の関数が格納されたメモリと、前記雑音電力算出部により算出された前記雑音電力に対応する1つの前記関数を前記メモリから読み出し、当該関数を前記対数尤度比操作関数として選択する関数選択部と、前記関数選択部により選択された前記対数尤度比操作関数を用いて、前記対数尤度比を操作して前記新たな対数尤度比を算出する操作部と、を備え、入力した前記対数尤度比をそのまま前記新たな対数尤度比として出力する前記関数を軟判定関数とし、入力した前記対数尤度比の符号を判定し、予め設定された上限値に前記符号を乗算して前記新たな対数尤度比を出力する前記関数を硬判定関数として、前記関数選択部が、予め設定されたしきい値を用いて前記雑音電力が大きいと判定した場合、前記軟判定関数を前記対数尤度比操作関数として選択するか、または、前記硬判定関数よりも前記軟判定関数に近い特性を有する前記関数を前記対数尤度比操作関数として選択し、前記雑音電力が小さいと判定した場合、前記硬判定関数を前記対数尤度比操作関数として選択するか、または、前記軟判定関数よりも前記硬判定関数に近い特性を有する前記関数を前記対数尤度比操作関数として選択する、ことを特徴とする。
【0016】
また、請求項のシンボル判定器は、請求項に記載のシンボル判定器において、前記ビット確率操作部が、予め設定された複数の関数が格納されたメモリと、前記雑音電力算出部により算出された前記雑音電力に対応する1つの前記関数を前記メモリから読み出し、当該関数を前記確率操作関数として選択する関数選択部と、前記関数選択部により選択された前記確率操作関数を用いて、前記ビット確率を操作して前記新たなビット確率を算出する操作部と、を備え、入力した前記ビット確率をそのまま前記新たなビット確率として出力する前記関数を軟判定関数とし、入力した前記ビット確率を予め設定されたしきい値を用いてしきい値処理し、所定の最小または最大の前記ビット確率を前記新たなビット確率として出力する前記関数を硬判定関数として、前記関数選択部が、予め設定されたしきい値を用いて前記雑音電力が大きいと判定した場合、前記軟判定関数を前記確率操作関数として選択するか、または、前記硬判定関数よりも前記軟判定関数に近い特性を有する前記関数を前記確率操作関数として選択し、前記雑音電力が小さいと判定した場合、前記硬判定関数を前記確率操作関数として選択するか、または、前記軟判定関数よりも前記硬判定関数に近い特性を有する前記関数を前記確率操作関数として選択する、ことを特徴とする。
【0017】
また、請求項のシンボル判定器は、請求項に記載のシンボル判定器において、前記対数尤度比操作部が、予め設定された複数の関数が格納されたメモリと、前記シンボルを構成する複数ビットのそれぞれに対応する1つの前記関数を前記メモリから読み出し、当該関数を前記対数尤度比操作関数として選択する関数選択部と、前記関数選択部により選択された前記対数尤度比操作関数を用いて、前記対数尤度比を操作して前記新たな対数尤度比を算出する操作部と、を備え、入力した前記対数尤度比をそのまま前記新たな対数尤度比として出力する前記関数を軟判定関数とし、入力した前記対数尤度比の符号を判定し、予め設定された上限値に前記符号を乗算して前記新たな対数尤度比を出力する前記関数を硬判定関数として、前記関数選択部が、前記シンボルを構成する複数ビットのうちのLSB(最下位ビット)を含む所定数の下位ビットについて、前記軟判定関数を前記対数尤度比操作関数として選択するか、または、前記硬判定関数よりも前記軟判定関数に近い特性を有する前記関数を前記対数尤度比操作関数として選択し、前記シンボルを構成する複数ビットのうちのMSB(最上位ビット)を含む所定数の上位ビットについて、前記硬判定関数を前記対数尤度比操作関数として選択するか、または、前記軟判定関数よりも前記硬判定関数に近い特性を有する前記関数を前記対数尤度比操作関数として選択する、ことを特徴とする。
【0018】
また、請求項のシンボル判定器は、請求項に記載のシンボル判定器において、前記ビット確率操作部が、予め設定された複数の関数が格納されたメモリと、前記シンボルを構成する複数ビットのそれぞれに対応する1つの前記関数を前記メモリから読み出し、当該関数を前記確率操作関数として選択する関数選択部と、前記関数選択部により選択された前記確率操作関数を用いて、前記ビット確率を操作して前記新たなビット確率を算出する操作部と、を備え、入力した前記ビット確率をそのまま前記新たなビット確率として出力する前記関数を軟判定関数とし、入力した前記ビット確率を予め設定されたしきい値を用いてしきい値処理し、所定の最小または最大の前記ビット確率を前記新たなビット確率として出力する前記関数を硬判定関数として、前記関数選択部が、前記シンボルを構成する複数ビットのうちのLSB(最下位ビット)を含む所定数の下位ビットについて、前記軟判定関数を前記確率操作関数として選択するか、または、前記硬判定関数よりも前記軟判定関数に近い特性を有する前記関数を前記確率操作関数として選択し、前記シンボルを構成する複数ビットのうちのMSB(最上位ビット)を含む所定数の上位ビットについて、前記硬判定関数を前記確率操作関数として選択するか、または、前記軟判定関数よりも前記硬判定関数に近い特性を有する前記関数を前記確率操作関数として選択する、ことを特徴とする。
【0019】
さらに、請求項の再送信装置は、請求項1からまでのいずれか一項に記載のシンボル判定器を備えることを特徴とする。
【0020】
また、請求項の再送信装置は、請求項に記載の再送信装置において、伝送路推定が用途であるパイロット信号を伝送路推定用パイロット信号として生成するパイロット信号生成器と、前記シンボル判定器により生成された前記軟レプリカからデータキャリアを抽出すると共に、前記伝送路推定が用途でないパイロット信号を非伝送路推定用パイロット信号として抽出し、前記パイロット信号生成器により生成された前記伝送路推定用パイロット信号、前記データキャリア及び前記非伝送路推定用パイロット信号を再送信信号として出力するスイッチ部と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
また、請求項の再送信装置は、請求項に記載の再送信装置において、伝送路推定が用途であるパイロット信号を伝送路推定用パイロット信号として生成するパイロット信号生成器と、白色雑音を発生する雑音発生器と、前記シンボル判定器により生成された前記軟レプリカに、前記雑音発生器により発生した前記白色雑音を加算し、加算結果の信号を出力する加算部と、前記シンボル判定器により生成された前記軟レプリカからデータキャリアを抽出すると共に、前記加算部により出力された前記加算結果の信号から、前記伝送路推定が用途でないパイロット信号を非伝送路推定用パイロット信号として抽出し、前記パイロット信号生成器により生成された前記伝送路推定用パイロット信号、前記データキャリア及び前記非伝送路推定用パイロット信号を再送信信号として出力するスイッチ部と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
また、請求項10の再送信装置は、請求項に記載の再送信装置において、伝送路推定が用途であるパイロット信号を伝送路推定用パイロット信号として生成するパイロット信号生成器と、任意の整数値を生成する整数生成部と、前記整数生成部により生成された前記整数値を位相偏移変調し、位相偏移変調信号を生成する位相偏移変調器と、前記位相偏移変調器により生成された前記位相偏移変調信号に予め設定された係数を乗算し、乗算結果の位相偏移変調信号を出力する乗算部と、前記シンボル判定器により生成された前記軟レプリカに、前記乗算部により出力された前記乗算結果の位相偏移変調信号を加算し、加算結果の信号を出力する加算部と、前記シンボル判定器により生成された前記軟レプリカからデータキャリアを抽出すると共に、前記加算部により出力された前記加算結果の信号から、前記伝送路推定が用途でないパイロット信号を非伝送路推定用パイロット信号として抽出し、前記パイロット信号生成器により生成された前記伝送路推定用パイロット信号、前記データキャリア及び前記非伝送路推定用パイロット信号を再送信信号として出力するスイッチ部と、を備えたことを特徴とする。
【0023】
また、請求項11の再送信装置は、請求項10に記載の再送信装置において、さらに、前記シンボル判定器により生成された前記軟レプリカの位相を算出する位相算出部と、前記乗算部により出力された前記乗算結果の位相偏移変調信号を、前記位相算出部により算出された前記位相だけ回転させ、位相回転後の位相偏移変調信号を出力する位相回転部と、を備え、前記整数生成部が、OFDM信号のシンボルを構成するサブキャリアに対応して、前記サブキャリア毎に、全ての前記シンボルにおける同一のキャリア番号の前記サブキャリアについて同じ値となるように前記整数値を生成し、前記加算部が、前記シンボル判定器により生成された前記軟レプリカに、前記位相回転部により出力された前記位相回転後の位相偏移変調信号を加算し、前記加算結果の信号を出力する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、シンボル誤り率が大きい受信条件においても、シンボル判定処理により伝送路の劣化を改善し、品質の良い再送信信号を生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態による第1のシンボル判定器の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態による第2のシンボル判定器の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態による第3のシンボル判定器の構成を示すブロック図である。
図4】雑音電力算出部の構成を示すブロック図である。
図5】制御部の構成を示すブロック図である。
図6】LLR操作部の構成を示すブロック図である。
図7】LLR操作部の処理例を示すフローチャートである。
図8】対数尤度比操作関数g(x)の例を説明する図である。
図9】ビット確率操作部の構成を示すブロック図である。
図10】ビット確率操作部の処理例を示すフローチャートである。
図11】確率操作関数f(x)の例を説明する図である。
図12】再送信信号の例を説明する図である。
図13】本発明の実施形態による第1の再送信装置の構成を示すブロック図である。
図14】本発明の実施形態による第2の再送信装置の構成を示すブロック図である。
図15】計算機シミュレーション系統を示す図である。
図16】計算機シミュレーション結果を示す図である。
図17】本発明の実施形態による第3の再送信装置の構成を示すブロック図である。
図18】本発明の実施形態による第4の再送信装置の構成を示すブロック図である。
図19】8相位相偏移変調の信号点配置を示す図である。
図20】第4の再送信装置において、位相回転した位相偏移変調信号が加算されたパイロット信号(伝送路推定用を除く)の信号点配置例を示す図である。
図21】位相回転していない位相偏移変調信号が加算されたパイロット信号(伝送路推定用を除く)の信号点配置例を示す図である。
図22】計算機シミュレーション結果を示す図である。
図23】計算機シミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明の実施形態による第1のシンボル判定器は、雑音電力が反映された対数尤度比を算出し、対数尤度比からビット確率を算出し、ビット確率からシンボル確率を算出し、シンボル確率から軟レプリカを生成し、再送信信号として出力することを特徴とする。
【0027】
本発明の実施形態による第2のシンボル判定器は、第1のシンボル判定器において、対数尤度比を受信状態の良否に応じて操作することを特徴とする。具体的には、第2のシンボル判定器は、受信状態が悪い場合、軟判定処理またはこれに近い処理となるように対数尤度比を操作し、受信状態が良い場合、硬判定処理またはこれに近い処理となるように対数尤度比を操作する。
【0028】
本発明の実施形態による第3のシンボル判定器は、第1のシンボル判定器において、ビット確率を受信状態の良否に応じて操作することを特徴とする。具体的には、第3のシンボル判定器は、受信状態が悪い場合、軟判定処理またはこれに近い処理となるようにビット確率を操作し、受信状態が良い場合、硬判定処理またはこれに近い処理となるようにビット確率を操作する。
【0029】
ここで、硬判定処理は、1つのデータに対し1つのしきい値を用いて、上限値または下限値を出力値として判定する処理をいい、軟判定処理は、1つのデータに対し複数のしきい値を用いて、複数の値のいずれかを出力値として判定する処理をいう。
【0030】
本発明の実施形態による第1の再送信装置は、パイロット信号生成器から入力される伝送路推定用パイロット信号、並びに第1~3のシンボル判定器から入力される軟レプリカから抽出したデータキャリア及び伝送路推定が用途でないパイロット信号を再送信信号として出力する。
【0031】
本発明の実施形態による第2の再送信装置は、パイロット信号生成器から入力される伝送路推定用パイロット信号、第1~3のシンボル判定器から入力される軟レプリカから抽出したデータキャリア、及び、第1~3のシンボル判定器から入力される軟レプリカに白色雑音が加算された受信信号から抽出した伝送路推定が用途でないパイロット信号を再送信信号として出力する。
【0032】
本発明の実施形態による第3の再送信装置は、パイロット信号生成器から入力される伝送路推定用パイロット信号、第1~3のシンボル判定器から入力される軟レプリカから抽出したデータキャリア、及び、第1~3のシンボル判定器から入力される軟レプリカに位相偏移変調信号が加算された受信信号から抽出した伝送路推定が用途でないパイロット信号を再送信信号として出力する。
【0033】
本発明の実施形態による第4の再送信装置は、パイロット信号生成器から入力される伝送路推定用パイロット信号、第1~3のシンボル判定器から入力される軟レプリカから抽出したデータキャリア、及び、第1~3のシンボル判定器から入力される軟レプリカに位相回転後の位相偏移変調信号が加算された受信信号から抽出した伝送路推定が用途でないパイロット信号を再送信信号として出力する。
【0034】
第1~3のシンボル判定器では、従来のような硬判定処理が行われない。雑音耐性の強いビットについては、硬判定処理またはこれに近い処理の結果を反映した信号が再送信信号として生成され、出力される。また、雑音耐性の弱いビットについては、軟判定処理またはこれに近い処理の結果を反映した信号が再送信信号として生成され、出力される。受信機は、このような再送信信号を受信して元の信号に復元する。
【0035】
したがって、シンボル誤り率が大きい受信条件においても、シンボル判定処理により伝送路の劣化を改善し、品質の良い再送信信号を生成することが可能となる。
【0036】
〔シンボル判定器/第1の構成〕
まず、本発明の実施形態による第1のシンボル判定器について説明する。図1は、本発明の実施形態による第1のシンボル判定器の構成を示すブロック図である。
【0037】
このシンボル判定器1-1は、雑音電力算出部10、LLR(対数尤度比:Log-Likelihood Ratio)算出部11、ビット確率算出部12、シンボル確率算出部13及び軟レプリカ生成部14を備えている。外部から入力される受信信号は2分配され、一方が雑音電力算出部10へ、他方がLLR算出部11へ入力される。
【0038】
雑音電力算出部10は、外部から入力される受信信号に重畳されている雑音の電力を算出し、雑音電力として出力する。雑音電力算出部10の出力する雑音電力はLLR算出部11へ入力される。雑音電力算出部10の詳細については後述する。
【0039】
LLR算出部11は、外部から入力される受信信号及び雑音電力算出部10から入力される雑音電力を用いて、ビット毎の対数尤度比を算出して出力する。LLR算出部11の出力するビット毎の対数尤度比はビット確率算出部12に入力される。
【0040】
ビット確率算出部12は、LLR算出部11から入力されるビット毎の対数尤度比を用いて、ビット毎に確率を算出し、ビット毎のビット確率として出力する。ビット確率算出部12の出力するビット毎のビット確率はシンボル確率算出部13に入力される。
【0041】
シンボル確率算出部13は、ビット確率算出部12から入力されるビット毎のビット確率をシリアル/パラレル変換することで、シンボルを構成するビット数分のベクトルを求め、予め設定された信号点配置毎の確率を算出し、シンボル毎のシンボル確率として出力する。シンボル確率算出部13の出力する信号点配置毎の確率であるシンボル毎のシンボル確率は軟レプリカ生成部14に入力される。
【0042】
軟レプリカ生成部14は、シンボル確率算出部13から入力されるシンボル毎のシンボル確率から軟レプリカを生成し、再送信信号として外部へ出力する。
【0043】
以上のように、本発明の実施形態による第1のシンボル判定器1-1によれば、雑音電力算出部10は、受信信号に重畳されている雑音の電力を算出し、LLR算出部11は、受信信号及び雑音電力を用いてビット毎の対数尤度比を算出する。
【0044】
ビット確率算出部12は、ビット毎の対数尤度比を用いてビット毎のビット確率を算出し、シンボル確率算出部13は、ビット毎のビット確率を用いてシンボル毎のシンボル確率を算出する。軟レプリカ生成部14は、シンボル毎のシンボル確率から軟レプリカを生成し、再送信信号として外部へ出力する。
【0045】
このシンボル判定器1-1では、従来のような硬判定処理が行われない。これにより、受信状態が悪いため雑音電力が大きい場合には、対数尤度比の絶対値が小さくなり、受信状態が良いため雑音電力が小さい場合には、対数尤度比の絶対値が大きくなる。このような対数尤度比が反映されたビット確率が算出され、シンボル確率が算出され、そして、軟レプリカが生成される。
【0046】
つまり、受信信号のうち雑音耐性の強いビットについては、そもそも0または1の判定精度の高い信号であるため、硬判定処理またはこれに近い処理の結果を反映した信号が再送信信号として出力される。また、雑音耐性の弱いビットについては、そもそも0または1の判定精度の低い信号であるため、軟判定処理またはこれに近い処理の結果を反映した再送信信号、すなわち雑音が除去されることなくそのまま重畳された再送信信号またはこれに近い再送信信号が出力される。
【0047】
再送信信号を受信する受信機は、雑音耐性の強いビットを、雑音が除去された状態またはこれに近い状態で受信し、雑音耐性の弱いビットを、雑音が除去されることなくそのまま重畳された状態またはこれに近い状態で受信することができる。
【0048】
したがって、シンボル判定器1-1では、シンボル誤り率が大きい受信条件においても、シンボル判定処理により伝送路の劣化を改善し、品質の良い再送信信号を生成することが可能となる。
【0049】
〔シンボル判定器/第2の構成〕
次に、本発明の実施形態による第2のシンボル判定器について説明する。図2は、本発明の実施形態による第2のシンボル判定器の構成を示すブロック図である。
【0050】
このシンボル判定器1-2は、雑音電力算出部10、LLR算出部11、ビット確率算出部12、シンボル確率算出部13、軟レプリカ生成部14、制御部15及びLLR操作部16を備えている。
【0051】
図1に示したシンボル判定器1-1とこのシンボル判定器1-2とを比較すると、両シンボル判定器1-1,1-2は、雑音電力算出部10、LLR算出部11、ビット確率算出部12、シンボル確率算出部13及び軟レプリカ生成部14を備えている点で共通する。一方、シンボル判定器1-2は、シンボル判定器1-1の構成に加え、制御部15及びLLR操作部16を備えている点で、シンボル判定器1-1と相違する。図2において、図1と共通する部分には図1と同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。
【0052】
雑音電力算出部10の出力する雑音電力は、LLR算出部11及び制御部15へ入力される。また、LLR算出部11の出力するビット毎の対数尤度比はLLR操作部16へ入力される。
【0053】
制御部15は、雑音電力算出部10から入力される雑音電力に基づいて、LLR操作部16にて用いる対数尤度比操作関数g(x)を制御(選択)するために用いる信号であって、受信状態の良否の程度を示す制御信号を生成して出力する。制御部15の出力する制御信号はLLR操作部16へ入力される。制御部15の詳細については後述する。
【0054】
LLR操作部16は、制御部15から入力される制御信号に基づいて、予め設定された複数の対数尤度比操作関数g(x)の中から1つの対数尤度比操作関数g(x)を選択する。そして、LLR操作部16は、選択した対数尤度比操作関数g(x)を用いて、LLR算出部11から入力されるビット毎の対数尤度比を操作し、操作後の新たなビット毎の対数尤度比を出力する。LLR操作部16の出力するビット毎の対数尤度比はビット確率算出部12へ入力される。LLR操作部16の詳細については後述する。
【0055】
以上のように、本発明の実施形態による第2のシンボル判定器1-2によれば、制御部15は、雑音電力に基づいて、受信状態の良否の程度を示す制御信号を生成する。LLR操作部16は、予め設定された複数の対数尤度比操作関数g(x)の中から、制御信号の示す受信状態の良否の程度に応じた1つの対数尤度比操作関数g(x)を選択し、選択した対数尤度比操作関数g(x)を用いてビット毎の対数尤度比を操作する。
【0056】
具体的には、後述する図6図8に示すように、LLR操作部16は、受信状態が悪い場合、軟判定処理またはこれに近い処理の操作を行う対数尤度比操作関数g(x)を選択する。一方、LLR操作部16は、受信状態が良い場合、硬判定処理またはこれに近い処理の操作を行う対数尤度比操作関数g(x)を選択する。そして、LLR操作部16は、選択した対数尤度比操作関数g(x)を用いて、ビット毎の対数尤度比を操作する。
【0057】
これにより、受信状態が悪い場合には、雑音が除去されることなくそのまま重畳された信号またはこれに近い信号として、新たな対数尤度比が算出される。また、受信状態が良い場合には、雑音が除去された信号またはこれに近い信号として、新たな対数尤度比が算出される。
【0058】
つまり、受信状態が悪い場合には、受信信号は0または1の判定精度の低い信号であるため、軟判定処理またはこれに近い処理の結果を反映した再送信信号、すなわち雑音が除去されることなくそのまま重畳された再送信信号またはこれに近い再送信信号が出力される。また、受信状態が良い場合には、受信信号は0または1の判定精度の高い信号であるため、硬判定処理またはこれに近い処理の結果を反映した再送信信号が出力される。受信機は、このような再送信信号を受信して元の信号に復元する。
【0059】
したがって、シンボル判定器1-2では、シンボル誤り率が大きい受信条件においても、シンボル判定処理により伝送路の劣化を改善し、品質の良い再送信信号を生成することが可能となる。
【0060】
〔シンボル判定器/第3の構成〕
次に、本発明の実施形態による第3のシンボル判定器について説明する。図3は、本発明の実施形態による第3のシンボル判定器の構成を示すブロック図である。
【0061】
このシンボル判定器1-3は、雑音電力算出部10、LLR算出部11、ビット確率算出部12、シンボル確率算出部13、軟レプリカ生成部14、制御部15及びビット確率操作部17を備えている。
【0062】
図2に示したシンボル判定器1-2とこのシンボル判定器1-3とを比較すると、両シンボル判定器1-2,1-3は、雑音電力算出部10、LLR算出部11、ビット確率算出部12、シンボル確率算出部13、軟レプリカ生成部14及び制御部15を備えている点で共通する。一方、シンボル判定器1-3は、シンボル判定器1-2の構成において、LLR操作部16の代わりにビット確率操作部17を備えている点で、シンボル判定器1-2と相違する。
【0063】
図2に示したシンボル判定器1-2は、対数尤度比を操作した後に、操作後の対数尤度比に基づいてビット確率を算出するのに対し、このシンボル判定器1-3は、対数尤度比に基づいてビット確率を算出した後に、ビット確率を操作する。
【0064】
しかしながら、対数尤度比及びビット確率は表現が異なるものの、本質的には同じ情報である。つまり、シンボル判定器1-2及びシンボル判定器1-3では、ビット毎の値を操作する領域が対数尤度比であるか、またはビット確率であるかという違いがあるものの、処理の本質は同じである。図3において、図2と共通する部分には図2と同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。
【0065】
LLR算出部11の出力するビット毎の対数尤度比はビット確率算出部12へ入力される。ビット確率算出部12の出力するビット毎のビット確率はビット確率操作部17へ入力され、制御部15の出力する制御信号はビット確率操作部17へ入力される。
【0066】
ビット確率操作部17は、制御部15から入力される制御信号に基づいて、予め設定された複数の確率操作関数f(x)の中から1つの確率操作関数f(x)を選択する。そして、ビット確率操作部17は、選択した確率操作関数f(x)を用いて、ビット確率算出部12から入力されるビット毎のビット確率を操作し、操作後の新たなビット毎のビット確率を出力する。ビット確率操作部17の出力するビット毎のビット確率はシンボル確率算出部13へ入力される。ビット確率操作部17の詳細については後述する。
【0067】
以上のように、本発明の実施形態による第3のシンボル判定器1-3によれば、制御部15は、雑音電力に基づいて、受信状態の良否の程度を示す制御信号を生成する。ビット確率操作部17は、予め設定された複数の確率操作関数f(x)の中から、制御信号の示す受信状態の良否の程度に応じた1つの確率操作関数f(x)を選択し、選択した確率操作関数f(x)を用いてビット毎のビット確率を操作する。
【0068】
具体的には、後述する図9図11に示すように、ビット確率操作部17は、受信状態が悪い場合、軟判定処理またはこれに近い処理の操作を行う確率操作関数f(x)を選択する。一方、ビット確率操作部17は、受信状態が良い場合、硬判定処理またはこれに近い処理の操作を行う確率操作関数f(x)を選択する。そして、ビット確率操作部17は、選択した確率操作関数f(x)を用いて、ビット毎のビット確率を操作する。
【0069】
これにより、受信状態が悪い場合には、雑音が除去されることなくそのまま重畳された信号またはこれに近い信号として、新たなビット確率が算出される。また、受信状態が良い場合には、雑音が除去された信号またはこれに近い信号として、新たなビット確率が算出される。
【0070】
つまり、受信状態が悪い場合には、受信信号は0または1の判定精度の低い信号であるため、軟判定処理またはこれに近い処理の結果を反映した再送信信号、すなわち雑音が除去されることなくそのまま重畳された再送信信号またはこれに近い再送信信号が出力される。また、受信状態が良い場合には、受信信号は0または1の判定精度の高い信号であるため、硬判定処理またはこれに近い処理の結果を反映した再送信信号が出力される。受信機は、このような再送信信号を受信して元の信号に復元する。
【0071】
したがって、シンボル判定器1-3では、シンボル誤り率が大きい受信条件においても、シンボル判定処理により伝送路の劣化を改善し、品質の良い再送信信号を生成することが可能となる。
【0072】
〔雑音電力算出部10〕
次に、図1図3に示した雑音電力算出部10について詳細に説明する。図4は、雑音電力算出部10の構成を示すブロック図である。前述のとおり、雑音電力算出部10は、外部から入力される受信信号に重畳されている雑音の電力を算出し、雑音電力として出力する。この雑音電力算出部10は、シンボル硬判定部20、減算部21、電力算出部22及び平均化部23を備えている。
【0073】
外部から入力される受信信号は2分配され、一方がシンボル硬判定部20へ、他方が減算部21へ入力される。シンボル硬判定部20は、予め設定された信号点配置の中から、外部から入力される受信信号に最も近いシンボルを選択し、硬判定値として出力する。シンボル硬判定部20の出力する硬判定値は減算部21へ入力される。
【0074】
減算部21は、シンボル硬判定部20から入力される硬判定値から、外部から入力される受信信号を減算し、誤差を求めて出力する。減算部21の出力する誤差は電力算出部22へ入力される。
【0075】
電力算出部22は、減算部21から入力される誤差の電力を算出し、誤差電力として出力する。電力算出部22の出力する誤差電力は平均化部23へ入力される。
【0076】
平均化部23は、電力算出部22から入力される誤差電力を平均化し、雑音電力として出力する。平均化部23の出力する雑音電力は、図1ではLLR算出部11へ入力され、図2及び図3ではLLR算出部11及び制御部15へ入力される。
【0077】
このように、図4に示した雑音電力算出部10は、受信信号と当該受信信号の硬判定値との間の誤差について、その誤差電力を算出し、これを平均化して雑音電力を算出するようにした。これにより、受信信号に重畳されている雑音の電力を求めることができる。
【0078】
〔LLR算出部11〕
次に、図1図3に示したLLR算出部11について詳細に説明する。前述のとおり、LLR算出部11は、外部から入力される受信信号及び雑音電力算出部10から入力される雑音電力を用いて、ビット毎の対数尤度比を算出して出力する。
【0079】
対数尤度比λ(b)は、次式により定義される。
【数1】
ここで、bはビット情報、Prは確率、rは受信信号、(x,y)はそれぞれ受信信号の実部及び虚部を示す。
【0080】
キャリア変調の信号点配置をSとすると、対数尤度比λ(b)は、次式により求めることができる。
【数2】
ここで、σ2は雑音電力、S0はビットbが0である信号点配置の集合、S1はビットbが 1である信号点配置の集合を示す。
【0081】
前記式(2)を用いることで、対数尤度比の定義に基づく厳密な値を求めることができるが、計算量が多いため、近似的に次式により求めるようにしてもよい。
【数3】
【0082】
このように、LLR算出部11は、受信信号、予め設定された信号点配置及び雑音電力算出部10により算出された雑音電力を用いて、ビット毎の対数尤度比を求めることができる。
【0083】
〔制御部15〕
次に、図2及び図3に示した制御部15について詳細に説明する。図5は、制御部15の構成を示すブロック図である。前述のとおり、制御部15は、雑音電力算出部10により算出された雑音電力に基づいて、対数尤度比操作関数g(x)または確率操作関数f(x)を制御するために用いる信号であって、受信状態の良否の程度を示す制御信号を生成する。この制御部15は、C/N(CN比:Carrier to Noise ratio)算出部30及びしきい値処理部31を備えている。
【0084】
C/N算出部30は、雑音電力算出部10から入力される雑音電力に基づいて、CN比を算出して出力する。C/N算出部30の出力するCN比はしきい値処理部31へ入力される。
【0085】
しきい値処理部31は、C/N算出部30から入力されるCN比に基づいて、予め設定されたしきい値を用いたしきい値処理を行い、制御信号を生成して出力する。しきい値処理部31の出力する制御信号は、図2ではLLR操作部16へ入力され、図3ではビット確率操作部17へ入力される。
【0086】
例えば、しきい値処理部31は、CN比と予め設定されたしきい値D1,D2,D3(D1<D2<D3)とを比較する。D1,D2,D3は実数である。
【0087】
しきい値処理部31は、CN比がしきい値D1以下であると判定した場合(CN比≦D1)、受信状態が悪いことを示す制御信号を生成する。また、しきい値処理部31は、CN比がしきい値D1よりも大きく、かつしきい値D2よりも小さいと判定した場合(D1<CN比<D2)、受信状態がやや悪いことを示す制御信号を生成する。
【0088】
また、しきい値処理部31は、CN比がしきい値D2以上であり、かつしきい値D3よりも小さいと判定した場合(D2≦CN比<D3)、受信状態がやや良いことを示す制御信号を生成する。また、しきい値処理部31は、CN比がしきい値D3以上であると判定した場合(D3≦CN比)、受信状態が良いことを示す制御信号を生成する。
【0089】
このように、図5に示した制御部15は、雑音電力に基づいてCN比を算出し、CN比をしきい値処理することで、受信状態の良否の程度を示す制御信号を生成するようにした。これにより、制御信号は、LLR操作部16またはビット確率操作部17にて、受信状態の良否の程度に応じた対数尤度比操作関数g(x)または確率操作関数f(x)を選択するために用いられる。
【0090】
尚、図5の例では、制御部15は、受信状態の良否の程度を示す制御信号を生成するために、雑音電力からCN比を算出するようにしたが、CN比は一例である。制御部15は、雑音電力または他のデータから、受信状態の良否の程度が反映されたデータを算出するようにしてもよい。
【0091】
〔LLR操作部16〕
次に、図2に示したLLR操作部16について詳細に説明する。図6は、LLR操作部16の構成を示すブロック図であり、図7は、LLR操作部16の処理例を示すフローチャートである。
【0092】
前述のとおり、LLR操作部16は、制御部15により生成された制御信号に基づいて、予め設定された複数の対数尤度比操作関数g(x)の中から1つの関数を選択し、選択した関数を用いて、LLR算出部11により算出されたビット毎の対数尤度比を操作する。このLLR操作部16は、関数選択部40、メモリ41及び操作部42を備えている。
【0093】
LLR操作部16は、LLR算出部11からビット毎の対数尤度比を、制御部15から制御信号をそれぞれ入力する(ステップS701)。関数選択部40は、メモリ41に格納された複数の対数尤度比操作関数g1(x)~g4(x)の中から、制御部15から入力される制御信号の示す受信状態の良否の程度に応じた1つの関数を選択する(ステップS702~S706)。
【0094】
関数選択部40は、選択した1つの関数を対数尤度比操作関数g(x)として出力する。関数選択部40の出力する対数尤度比操作関数g(x)は操作部42へ入力される。
【0095】
図8は、対数尤度比操作関数g(x)の例を説明する図である。図8(a)の対数尤度比操作関数g1(x)は、対数尤度比の絶対値を飽和させる関数である。この関数は、入力した対数尤度比をそのまま出力する軟判定処理の操作に相当する軟判定関数であり、受信状態が悪い場合に用いられる。
【0096】
図8(b)の対数尤度比操作関数g2(x)は、入力した対数尤度比の符号を判定し、予め設定された上限値に判定した符号を乗算して出力する関数である。この関数は、ビット毎の硬判定処理の操作に相当する硬判定関数であり、受信状態が良い場合に用いられる。
【0097】
図8(c)の対数尤度比操作関数g3(x)は、図8(a)の対数尤度比操作関数g1(x)による軟判定処理の操作よりも、図8(b)の対数尤度比操作関数g2(x)による硬判定処理の操作に近い関数である。すなわち、この対数尤度比操作関数g3(x)は、対数尤度比操作関数g1(x)である軟判定関数よりも対数尤度比操作関数g2(x)である硬判定関数に近い特性を有する。
【0098】
また、図8(d)の対数尤度比操作関数g4(x)は、図8(b)の対数尤度比操作関数g2(x)による硬判定処理の操作よりも、図8(a)の対数尤度比操作関数g1(x)による軟判定処理の操作に近い関数である。すなわち、この対数尤度比操作関数g4(x)は、対数尤度比操作関数g2(x)である硬判定関数よりも対数尤度比操作関数g1(x)である軟判定関数に近い特性を有する。
【0099】
図6及び図7に戻って、具体的には、関数選択部40は、制御信号に基づいて、受信状態の良否の程度を判定する(ステップS702)。関数選択部40は、ステップS702において、受信状態が悪いことを判定した場合(ステップS702:受信状態が悪い)、メモリ41から対数尤度比操作関数g1(x)を読み出す(ステップS703)。
【0100】
また、関数選択部40は、ステップS702において、受信状態がやや悪いことを判定した場合(ステップS702:受信状態がやや悪い)、メモリ41から対数尤度比操作関数g4(x)を読み出す(ステップS704)。
【0101】
また、関数選択部40は、ステップS702において、受信状態がやや良いことを判定した場合(ステップS702:受信状態がやや良い)、メモリ41から対数尤度比操作関数g3(x)を読み出す(ステップS705)。
【0102】
また、関数選択部40は、ステップS702において、受信状態が良いことを判定した場合(ステップS702:受信状態が良い)、メモリ41から対数尤度比操作関数g2(x)を読み出す(ステップS706)。
【0103】
関数選択部40は、ステップS703~S706にて読み出した対数尤度比操作関数g1(x)~g4(x)のいずれかを対数尤度比操作関数g(x)として選択する。
【0104】
これにより、メモリ41に格納された複数の対数尤度比操作関数g1(x)~g4(x)の中から、制御信号の示す受信状態の良否の程度に応じた1つの関数が対数尤度比操作関数g(x)として選択される。
【0105】
操作部42は、関数選択部40により選択された対数尤度比操作関数g(x)を用いて、LLR算出部11から入力されるビット毎の対数尤度比を操作し(ステップS707)、操作後の新たなビット毎の対数尤度比を出力する(ステップS708)。
【0106】
このように、図6に示したLLR操作部16は、予め設定された複数の対数尤度比操作関数g1(x)~g4(x)の中から、制御信号の示す受信状態の良否の程度に応じた対数尤度比操作関数g(x)を選択する。そして、LLR操作部16は、選択した対数尤度比操作関数g(x)を用いて、新たな対数尤度比を算出する。
【0107】
これにより、受信状態が悪い場合、入力した対数尤度比をそのまま出力する軟判定処理の操作に相当する対数尤度比操作関数g1(x)を用いて、新たな対数尤度比が求められる。また、受信状態がやや悪い場合、硬判定処理の操作よりも軟判定処理の操作に近い対数尤度比操作関数g4(x)を用いて、新たな対数尤度比が求められる。
【0108】
また、受信状態がやや良い場合、軟判定処理の操作よりも硬判定処理の操作に近い対数尤度比操作関数g3(x)を用いて、新たな対数尤度比が求められる。また、受信状態が良い場合、入力した対数尤度比の符号を判定し、予め設定された上限値に判定した符号を乗算して出力する硬判定処理の操作に相当する対数尤度比操作関数g2(x)を用いて、新たな対数尤度比が求められる。
【0109】
尚、LLR操作部16は、キャリア変調されたデータであるシンボルを構成する複数ビットのうち、雑音耐性の強いMSB(Most Significant Bit:最上位ビット)または当該MSBを含む所定数の上位ビットについて、硬判定処理の操作に相当する対数尤度比操作関数g2(x)またはこれに近い操作を行う対数尤度比操作関数g3(x)を選択し、新たな対数尤度比を求めるようにしてもよい。この場合、LLR操作部16は、雑音耐性の弱いLSB(Least Significant Bit:最下位ビット)または当該LSBを含む所定数の下位ビットについて、軟判定処理の操作に相当する対数尤度比操作関数g1(x)またはこれに近い操作を行う対数尤度比操作関数g4(x)を選択し、新たな対数尤度比を求める。
【0110】
また、LLR操作部16は、シンボルを構成する複数ビットのうち雑音耐性の強いMSBについて対数尤度比操作関数g2(x)を選択し、MSB以外の所定数の上位ビットについて対数尤度比操作関数g3(x)を選択し、新たな対数尤度比を求めるようにしてもよい。この場合、LLR操作部16は、雑音耐性の弱いLSBについて対数尤度比操作関数g1(x)を選択し、LSBを含む所定数の下位ビットについて対数尤度比操作関数g4(x)を選択し、新たな対数尤度比を求める。
【0111】
LLR操作部16がシンボルを構成するビット位置に応じて対数尤度比操作関数g1(x)~g4(x)のいずれかの関数を用いる場合、シンボル判定器1-2は、制御部15を備える必要がない。
【0112】
〔ビット確率操作部17〕
次に、図3に示したビット確率操作部17について詳細に説明する。図9は、ビット確率操作部17の構成を示すブロック図であり、図10は、ビット確率操作部17の処理例を示すフローチャートである。
【0113】
前述のとおり、ビット確率操作部17は、制御部15により生成された制御信号に基づいて、予め設定された複数の確率操作関数f(x)の中から1つの関数を選択する。そして、ビット確率操作部17は、選択した関数を用いて、ビット確率算出部12により算出されたビット毎のビット確率を操作する。このビット確率操作部17は、関数選択部43、メモリ44及び操作部45を備えている。
【0114】
ビット確率操作部17は、ビット確率算出部12からビット毎のビット確率を、制御部15から制御信号をそれぞれ入力する(ステップS1001)。関数選択部43は、メモリ44に格納された複数の確率操作関数f1(x)~f4(x)の中から、制御部15から入力される制御信号の示す受信状態の良否の程度に応じた1つの関数を選択する(ステップS1002~S1006)。
【0115】
関数選択部43は、選択した1つの関数を確率操作関数f(x)として出力する。関数選択部43の出力する確率操作関数f(x)は操作部45へ入力される。
【0116】
図11は、確率操作関数f(x)の例を説明する図である。図11(a)の確率操作関数f1(x)は、入力したビット確率をそのまま出力する軟判定処理の操作に相当する軟判定関数であり、受信状態が悪い場合に用いられる。
【0117】
図11(b)の確率操作関数f2(x)は、入力したビット確率をしきい値0.5にてしきい値処理し、ビット確率0(最小のビット確率)または1(最大のビット確率)を出力する関数である。この関数は、ビット毎の硬判定処理の操作に相当する硬判定関数であり、受信状態が良い場合に用いられる。
【0118】
図11(c)の確率操作関数f3(x)は、図11(a)の確率操作関数f1(x)による軟判定処理の操作よりも、図11(b)の確率操作関数f2(x)による硬判定処理の操作に近い関数である。すなわち、確率操作関数f3(x)は、確率操作関数f1(x)である軟判定関数よりも確率操作関数f2(x)である硬判定関数に近い特性を有する。
【0119】
また、図11(d)の確率操作関数f4(x)は、図11(b)の確率操作関数f2(x)による硬判定処理の操作よりも、図11(a)の確率操作関数f1(x)による軟判定処理の操作に近い関数である。すなわち、確率操作関数f4(x)は、確率操作関数f2(x)である硬判定関数よりも確率操作関数f1(x)である軟判定関数に近い特性を有する。
【0120】
図9及び図10に戻って、具体的には、関数選択部43は、制御信号に基づいて、受信状態の良否の程度を判定する(ステップS1002)。関数選択部43は、ステップS1002において、受信状態が悪いことを判定した場合(ステップS1002:受信状態が悪い)、メモリ44から確率操作関数f1(x)を読み出す(ステップS1003)。
【0121】
また、関数選択部43は、ステップS1002において、受信状態がやや悪いことを判定した場合(ステップS1002:受信状態がやや悪い)、メモリ44から確率操作関数f4(x)を読み出す(ステップS1004)。
【0122】
また、関数選択部43は、ステップS1002において、受信状態がやや良いことを判定した場合(ステップS1002:受信状態がやや良い)、メモリ44から確率操作関数f3(x)を読み出す(ステップS1005)。
【0123】
また、関数選択部43は、ステップS1002において、受信状態が良いことを判定した場合(ステップS1002:受信状態が良い)、メモリ44から確率操作関数f2(x)を読み出す(ステップS1006)。
【0124】
関数選択部43は、ステップS1003~S1006にて読み出した確率操作関数f1(x)~f4(x)のいずれかを確率操作関数f(x)として選択する。
【0125】
これにより、メモリ44に格納された複数の確率操作関数f1(x)~f4(x)の中から、制御信号の示す受信状態の良否の程度に応じた1つの関数が確率操作関数f(x)として選択される。
【0126】
操作部45は、関数選択部43により選択された確率操作関数f(x)を用いて、ビット確率算出部12から入力されるビット毎のビット確率を操作し(ステップS1007)、操作後の新たなビット毎のビット確率を出力する(ステップS1008)。
【0127】
このように、図9に示したビット確率操作部17は、予め設定された複数の確率操作関数f1(x)~f4(x)の中から、制御信号の示す受信状態の良否の程度に応じた確率操作関数f(x)を選択する。そして、ビット確率操作部17は、選択した確率操作関数f(x)を用いて、新たなビット確率を算出する。
【0128】
これにより、受信状態が悪い場合、入力したビット確率をそのまま出力する軟判定処理の操作に相当する確率操作関数f1(x)を用いて、新たなビット確率が求められる。また、受信状態がやや悪い場合、硬判定処理の操作よりも軟判定処理の操作に近い確率操作関数f4(x)を用いて、新たなビット確率が求められる。
【0129】
また、受信状態がやや良い場合、軟判定処理の操作よりも硬判定処理の操作に近い確率操作関数f3(x)を用いて、新たなビット確率が求められる。また、受信状態が良い場合、入力したビット確率をしきい値0.5にてしきい値処理し、ビット確率0または1を出力する硬判定処理の操作に相当する確率操作関数f2(x)を用いて、新たなビット確率が求められる。
【0130】
尚、ビット確率操作部17は、キャリア変調されたデータであるシンボルを構成する複数ビットのうち、雑音耐性の強いMSBまたは当該MSBを含む所定数の上位ビットについて、硬判定処理の操作に相当する確率操作関数f2(x)またはこれに近い操作を行う確率操作関数f3(x)を選択し、新たなビット確率を求めるようにしてもよい。この場合、ビット確率操作部17は、雑音耐性の弱いLSBまたは当該LSBを含む所定数の下位ビットについて、軟判定処理の操作に相当する確率操作関数f1(x)またはこれに近い操作を行う確率操作関数f4(x)を選択し、新たなビット確率を求めるようにしてもよい。
【0131】
また、ビット確率操作部17は、シンボルを構成する複数ビットのうち雑音耐性の強いMSBについて確率操作関数f2(x)を選択し、MSB以外の所定数の上位ビットについて確率操作関数f3(x)を選択し、新たなビット確率を求めるようにしてもよい。この場合、ビット確率操作部17は、雑音耐性の弱いLSBについて確率操作関数f1(x)を選択し、LSBを含む所定数の下位ビットについて確率操作関数f4(x)を選択し、新たなビット確率を求める。
【0132】
ビット確率操作部17がシンボルを構成するビット位置に応じて確率操作関数f1(x)~f4(x)のいずれかの関数を用いる場合、シンボル判定器1-3は、制御部15を備える必要がない。
【0133】
〔ビット確率算出部12〕
次に、図1図3に示したビット確率算出部12について詳細に説明する。前述のとおり、ビット確率算出部12は、LLR算出部11により算出されたビット毎の対数尤度比またはLLR操作部16により操作されたビット毎の対数尤度比を用いて、ビット毎のビット確率を算出する。
【0134】
ビット確率算出部12が入力する対数尤度比λ(b)は、次式によりビット確率Pr(b)に変換される。
【数4】
【数5】
【0135】
ここで、Pr(b=0)はビットbが0である確率、Pr(b=1)はビットbが1である確率を示す。
【0136】
〔シンボル確率算出部13〕
次に、図1図3に示したシンボル確率算出部13について詳細に説明する。前述のとおり、シンボル確率算出部13は、ビット確率算出部12により算出されたビット毎のビット確率またはビット確率操作部17により操作されたビット毎のビット確率をシリアル/パラレル変換することで、シンボルを構成するビット数分のベクトルを求め、予め設定された信号点配置毎の確率をシンボル毎のシンボル確率として算出する。
【0137】
シンボル確率算出部13が入力するビット毎のビット確率Pr(b)は、次式によりシンボル確率q(s)に変換される。
【数6】
ここで、Vはシンボルを表すビット数(多値数)を示し、sはシンボルを示す整数(0≦s<2V)である。
【0138】
〔軟レプリカ生成部14〕
次に、図1図3に示した軟レプリカ生成部14について詳細に説明する。前述のとおり、軟レプリカ生成部14は、シンボル確率算出部13により算出されたシンボル毎のシンボル確率から軟レプリカを生成し、再送信信号として外部へ出力する。
【0139】
軟レプリカ生成部14が入力するシンボル毎のシンボル確率q(s)から、次式により軟レプリカが生成される。
【数7】
S^は軟レプリカ、Siは信号点の座標を示す。
【0140】
図12は、再送信信号の例を説明する図であり、軟レプリカ生成部14により生成される軟レプリカの例でもある。図12(a)は、従来技術のシンボル判定器から出力される再送信信号である硬判定シンボルのコンスタレーションを示す。図12(b)は、図2に示した本発明の実施形態による第2のシンボル判定器1-2の軟レプリカ生成部14から出力される再送信信号であるシンボル判定値のコンスタレーションを示す。
【0141】
図12(a)(b)は、信号点数(M=2V)が256であり、不均一配置のキャリア変調の場合を示している。横軸はI(In-Phase)軸であり、縦軸はQ(Quadrature)軸である。
【0142】
図12(a)(b)を比較すると、図12(a)の再送信信号は、硬判定された信号点配置の信号となっている。これに対し、図12(b)の再送信信号において、コンスタレーションにおける外側に近い信号は、硬判定処理またはこれに近い処理の結果の信号、すなわち雑音を除去した信号となっている。また、コンスタレーションにおける内側の信号は、軟判定処理またはこれに近い処理の結果の信号、すなわち雑音を含む信号となっている。
【0143】
これは、MSBによって区別されるコンスタレーションの外側に近い信号点は、信号点間隔が広いため雑音耐性が強く、LSBによって区別されるコンスタレーションの内側の信号点は、信号点間隔が狭いため雑音耐性が弱いからである。つまり、雑音耐性の強い外側に近い信号については、そもそも0または1の判定精度の高い信号であるため、硬判定処理またはこれに近い処理の結果を反映した信号、すなわち雑音が除去された信号となる。また、雑音耐性の弱い内側の信号については、そもそも0または1の判定精度の低い信号であるため、軟判定処理またはこれに近い処理の結果を反映した信号、すなわち雑音が除去されることなくそのまま重畳された信号となる。
【0144】
本発明の実施形態による第2のシンボル判定器1-2における再送信信号は、伝送路の雑音が小さい場合、図12(a)に近いコンスタレーションとなり、硬判定処理またはこれに近い処理の結果の信号として出力される。一方、伝送路の雑音が大きい場合、図12(b)のようなコンスタレーションとなる。
【0145】
〔再送信装置/第1の構成〕
次に、本発明の実施形態による第1の再送信装置について説明する。図13は、本発明の実施形態による第1の再送信装置の構成を示すブロック図である。この再送信装置2-1は、シンボル判定器1、スイッチ部50及びパイロット信号生成器51を備えている。外部から入力される受信信号はシンボル判定器1へ入力される。
【0146】
パイロット信号生成器51は、予め設定された既知の伝送路推定が用途である伝送路推定用パイロット信号を生成して出力する。パイロット信号生成器51の出力する伝送路推定用パイロット信号はスイッチ部50の第1の入力端子へ入力される。
【0147】
シンボル判定器1は、図1に示したシンボル判定器1-1、図2に示したシンボル判定器1-2または図3に示したシンボル判定器1-3であり、シンボル判定を行い、軟レプリカを生成して出力する。シンボル判定器1の出力する軟レプリカはスイッチ部50の第2の入力端子へ入力される。
【0148】
スイッチ部50は、パイロット信号生成器51から第1の入力端子を介して入力される伝送路推定用パイロット信号を、所定のタイミングにて選択する。また、スイッチ部50は、シンボル判定器1から第2の入力端子を介して入力される軟レプリカから、所定のタイミングにて、データキャリアを抽出すると共に、伝送路推定が用途でないパイロット信号を非伝送路推定用パイロット信号として抽出する。そして、スイッチ部50は、選択した伝送路推定用パイロット信号、並びに抽出したデータキャリア及び非伝送路推定用パイロット信号を再送信信号として外部へ出力する。
【0149】
例えばISDB(Integrated Services Digital Broadcasting)の方式では、伝送路推定用パイロット信号としてSP(Scattered Pilot)信号が抽出される。また、非伝送路推定用パイロット信号としてAC(Auxiliary Channel)信号及びTMCC(Transmission and Multiplexing Configuration Control)信号が抽出される。
【0150】
以上のように、本発明の実施形態による第1の再送信装置2-1によれば、スイッチ部50は、シンボル判定器1から入力される軟レプリカから抽出したデータキャリア、パイロット信号生成器51から入力される伝送路推定用パイロット信号、及び、シンボル判定器1から入力される軟レプリカから抽出した非伝送路推定用パイロット信号を再送信信号として出力するようにした。
【0151】
これにより、再送信信号を受信する受信機は、非伝送路推定用パイロット信号を用いて雑音電力を推定することにより、再送信装置2-1に入力される受信信号の品質を推定することができる。
【0152】
〔再送信装置/第2の構成〕
次に、本発明の実施形態による第2の再送信装置について説明する。図14は、本発明の実施形態による第2の再送信装置の構成を示すブロック図である。この再送信装置2-2は、シンボル判定器1、スイッチ部50、パイロット信号生成器51、雑音発生器52及び加算部53を備えている。外部から入力される受信信号はシンボル判定器1へ入力される。
【0153】
パイロット信号生成器51は、図13に示したパイロット信号生成器51と同様の処理を行う。パイロット信号生成器51の出力する伝送路推定用パイロット信号はスイッチ部50の第1の入力端子へ入力される。
【0154】
シンボル判定器1は、図1に示したシンボル判定器1-1、図2に示したシンボル判定器1-2または図3に示したシンボル判定器1-3であり、シンボル判定を行い、軟レプリカを生成して出力する。シンボル判定器1の出力する軟レプリカは2分配され、一方がスイッチ部50の第2の入力端子へ、他方が加算部53へ入力される。
【0155】
雑音発生器52は、白色雑音を発生して出力する。雑音発生器52の出力する白色雑音は加算部53に入力される。加算部53は、シンボル判定器1から入力される軟レプリカに、雑音発生器52から入力される白色雑音を加算し、加算結果を出力する。加算部53の出力する加算結果である白色雑音が加算された軟レプリカはスイッチ部50の第3の入力端子へ入力される。
【0156】
スイッチ部50は、パイロット信号生成器51から第1の入力端子を介して入力される伝送路推定用パイロット信号を、所定のタイミングにて選択する。また、スイッチ部50は、シンボル判定器1から第2の入力端子を介して入力される軟レプリカから、所定のタイミングにて、データキャリアを抽出する。また、スイッチ部50は、加算部53から第3の入力端子を介して入力される白色雑音が加算された軟レプリカから、所定のタイミングにて、伝送路推定が用途でないパイロット信号(白色雑音が加算されたパイロット信号)を非伝送路推定用パイロット信号として抽出する。そして、スイッチ部50は、選択した伝送路推定用パイロット信号、並びに抽出したデータキャリア及び非伝送路推定用パイロット信号を再送信信号として外部へ出力する。
【0157】
以上のように、本発明の実施形態による第2の再送信装置2-2によれば、スイッチ部50は、シンボル判定器1から入力される軟レプリカから抽出したデータキャリア、パイロット信号生成器51から入力される伝送路推定用パイロット信号、及び、白色雑音が加算された軟レプリカから抽出した非伝送路推定用パイロット信号を再送信信号として出力するようにした。
【0158】
これにより、再送信信号を受信する受信機は、非伝送路推定用パイロット信号を用いて雑音電力を推定することにより、再送信装置2-2に入力される受信信号の品質を推定することができる。
【0159】
ここで、再送信信号を受信する受信機の特性としては、CN比が高くなるとBER(Bit Error Rate:ビット誤り率)が増加する領域(CN比が所定値以上の領域)がある。これは、シンボル判定器1における判定誤りを含む再送信信号をCN比が高い条件で受信すると、LDPC復号器に入力されるLLRの絶対値が大きくなり、尤度伝搬が有効に機能せず、シンボル判定器1における判定誤りを訂正できないためである。これに対し、再送信装置2-2の再送信信号を受信する受信機は、白色雑音が加算された非伝送路推定用パイロット信号を受信することで、受信機で算出する雑音電力が大きくなり、これによりLDPC復号器に入力されるLLRの絶対値が小さくなるため、尤度伝搬が有効に機能し、シンボル判定器1における判定誤りが訂正される。したがって、再送信装置2-2の方が再送信装置2-1よりも、良好なデータ伝送を実現することができる。
【0160】
〔再送信装置/第3の構成〕
次に、本発明の実施形態による第3の再送信装置について説明する。図17は、本発明の実施形態による第3の再送信装置の構成を示すブロック図である。この再送信装置2-3は、シンボル判定器1、スイッチ部50、パイロット信号生成器51、加算部53、整数生成部54、位相偏移(PSK:Phase Shift Keying)変調器55及び乗算部56を備えている。
【0161】
図14に示した第2の再送信装置2-2とこの第3の再送信装置2-3とを比較すると、両再送信装置2-2,2-3は、シンボル判定器1、スイッチ部50、パイロット信号生成器51及び加算部53を備えている点で共通する。一方、第2の再送信装置2-2は雑音発生器52を備えているのに対し、第3の再送信装置2-3は、雑音発生器52の代わりに、整数生成部54、位相偏移変調器55及び乗算部56を備えている点で、第2の再送信装置2-2と相違する。
【0162】
シンボル判定器1、スイッチ部50、パイロット信号生成器51及び加算部53は、図14に示した第2の再送信装置2-2と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0163】
整数生成部54は、任意の整数値を生成して出力する。整数生成部54の出力する任意の整数値は位相偏移変調器55へ入力される。
【0164】
任意の整数値は、0以上M未満であればよい。Mについては後述する。任意の整数値は、例えば公知技術によって発生させた乱数でもよいし、M進カウンタを用いて得られる数値でもよい。また、任意の整数値は、線形帰還シフトレジスタ(LFSR:Linear Feedback Shift Register)により生成されるビット列をシリアルパラレル変換したときに得られる数値でもよい。
【0165】
位相偏移変調器55は、整数生成部54から入力される任意の整数値を位相偏移変調し、位相偏移変調信号を生成する。位相偏移変調器55の出力する位相偏移変調信号は乗算部56へ入力される。ここで、位相偏移変調の信号点数をMとする。Mは、例えば2のべき乗とする。この例では、整数生成部54の出力する任意の整数値は、0以上M未満であることが必要である。
【0166】
図19は、8相位相偏移変調の信号点配置を示す図であり、M=8としたときの例を示している。図19に示すように、M=8のときの位相偏移変調信号の信号点配置は、IQ軸の原点を中心とする円周上の8つの点となる。
【0167】
この例では、位相偏移変調信号の信号点配置は、隣り合う2つの信号点で表現されるビット列が1ビットだけ異なるグレイ配置としているが、必ずしもグレイ配置である必要はない。
【0168】
尚、Mは、必ずしも2のべき乗である必要はない。また、再送信装置2-3は、位相偏移変調器55に代わる変調器を備えるようにしてもよい。この場合、当該変調器は、整数生成部54から入力される任意の整数値を、IQ軸の原点を中心とする円周上の所定の信号点に配置する変調を行い、変調信号を出力する。
【0169】
図17に戻って、乗算部56は、位相偏移変調器55から入力される位相偏移変調信号に、予め設定された係数を乗算し、乗算結果の位相偏移変調信号を出力する。これにより、係数に応じた信号電力の位相偏移変調信号を設定することができる。乗算部56の出力する信号電力が設定された位相偏移変調信号は加算部53へ入力される。
【0170】
以上のように、本発明の実施形態による第3の再送信装置2-3によれば、スイッチ部50は、パイロット信号生成器51から入力される伝送路推定用パイロット信号、シンボル判定器1から入力される軟レプリカから抽出したデータキャリア、及び、加算部53から入力される位相偏移変調信号が加算された軟レプリカから抽出した非伝送路推定用パイロット信号を再送信信号として出力するようにした。
【0171】
これにより、第2の再送信装置2-2の場合と同様に、再送信信号を受信する受信機は、非伝送路推定用パイロット信号を用いて雑音電力を推定することにより、再送信装置2-3に入力される受信信号の品質を推定することができる。
【0172】
また、再送信装置2-3の再送信信号を受信する受信機は、位相偏移変調信号が加算された非伝送路推定用パイロット信号を受信することで、受信機で算出する雑音電力が大きくなり、これによりLDPC復号器に入力されるLLRの絶対値が小さくなるため、尤度伝搬が有効に機能し、シンボル判定器1における判定誤りが訂正される。したがって、第2の再送信装置2-2の場合と同様に、再送信装置2-3の方が再送信装置2-1よりも、良好なデータ伝送を実現することができる。
【0173】
また、前述のとおり、図14に示した第2の再送信装置2-2と図17に示した第3の再送信装置2-3との違いは、再送信装置2-2が雑音発生器52を備えるのに対し、再送信装置2-3が整数生成部54、位相偏移変調器55及び乗算部56を備える点にある。
【0174】
第2の再送信装置2-2の雑音発生器52は、Box-Muller(ボックスミュラー)アルゴリズム等の公知技術を用いて、白色雑音を発生する。これに対し、図17に示した第3の再送信装置2-3の整数生成部54及び位相偏移変調器55では、例えばカウンタ及びルックアップテーブル等を用いて、白色雑音に代わる位相偏移変調信号を生成することができる。このため、第3の再送信装置2-3の方が第2の再送信装置2-2よりも、回路規模を大幅に縮減することができるという利点がある。
【0175】
〔再送信装置/第4の構成〕
次に、本発明の実施形態による第4の再送信装置について説明する。図18は、本発明の実施形態による第4の再送信装置の構成を示すブロック図である。この再送信装置2-4は、シンボル判定器1、スイッチ部50、パイロット信号生成器51、加算部53、整数生成部57、位相偏移変調器58、乗算部59、位相算出部60及び位相回転部61を備えている。
【0176】
図17に示した第3の再送信装置2-3とこの第4の再送信装置2-4とを比較すると、両再送信装置2-3,2-4は、シンボル判定器1、スイッチ部50、パイロット信号生成器51、加算部53、整数生成部54,57、位相偏移変調器55,58及び乗算部56,59を備えている点で共通する。一方、第4の再送信装置2-4は、さらに位相算出部60及び位相回転部61を備えている点で、第3の再送信装置2-3と相違する。
【0177】
シンボル判定器1、スイッチ部50、パイロット信号生成器51及び加算部53は、図14に示した第2の再送信装置2-2、及び図17に示した第3の再送信装置2-3と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0178】
第4の再送信装置2-4においては、整数生成部57が生成する整数値として、OFDM信号のキャリア番号を用いる。整数生成部57は、OFDM信号のキャリア番号(0からキャリア番号の最大値まで)を順次生成し、これを順番に出力する。整数生成部57の出力するキャリア番号は、位相偏移変調器58へ入力される。この場合、整数生成部57が出力するキャリア番号は、OFDM信号の全てのシンボルにおいて、同一のキャリア番号のサブキャリアについては、当然ながら同一の番号となる。
【0179】
そして、位相偏移変調器58、乗算部59及び位相回転部61の処理の後、このキャリア番号に対応する位相回転後の位相偏移変調信号は、位相回転部61から加算部53へ入力される。ここで、シンボル判定器1の出力する軟レプリカと、位相回転部61の出力する位相偏移変調信号とが加算部53において加算される際に、両者のキャリア番号が同一となるように、整数生成部57は、キャリア番号を順次出力する。
【0180】
尚、整数生成部57は、任意のタイミングでキャリア番号を順次出力するようにしてもよい。この場合、加算部53は、両者のキャリア番号が同一となるように、加算処理を行うタイミングを調整する。
【0181】
また、整数生成部57は、OFDM信号のシンボルを構成するサブキャリアに対応して、サブキャリア毎に、OFDM信号の全てのシンボルにおける同一のキャリア番号のサブキャリアについて同じ値となるように整数値を順次生成し、当該整数値を順番に出力するようにしてもよい。
【0182】
位相偏移変調器58は、整数生成部57から入力されるキャリア番号を位相偏移変調し、位相偏移変調信号を出力する。位相偏移変調器58の出力する位相偏移変調信号は乗算部59へ入力される。乗算部59は、位相偏移変調器58から入力される位相偏移変調信号に、予め設定された係数を乗算し、乗算結果の位相偏移変調信号を出力する。乗算部59の出力する信号電力が設定された位相偏移変調信号は位相回転部61へ入力される。
【0183】
ここで、OFDM信号の全てのシンボルにおいて、同一のキャリア番号のサブキャリアに関する位相偏移変調信号は同一となる。これは、整数生成部57の出力するキャリア番号が、全てのシンボルにおける同一のサブキャリアについて同じ番号だからである。
【0184】
一方、シンボル判定器1により生成される軟レプリカは、送信側の変調器で変調された信号が反映されているため、全てのシンボルにおいて同一のシンボルとはならない。
【0185】
そこで、位相算出部60及び位相回転部61において、軟レプリカの位相を算出し、算出されたものと同一の位相分の回転を位相偏移変調信号に加えるようにする。すなわち、位相算出部60は、シンボル判定器1の出力する軟レプリカの位相を算出する。位相算出部60の出力する位相は位相回転部61へ入力される。
【0186】
位相回転部61は、乗算部59から入力される位相偏移変調信号の位相を、位相算出部60から入力される位相だけ回転させ、位相回転後の位相偏移変調信号を出力する。位相回転部61の出力する位相偏移変調信号は加算部53へ入力される。
【0187】
これにより、位相回転部61において、送信側の変調器の変調処理が反映された軟レプリカの信号点配置に合うように、位相偏移変調信号の位相を回転させることができる。
【0188】
図20は、第4の再送信装置2-4において、位相回転した位相偏移変調信号が加算されたパイロット信号(伝送路推定用を除く)の信号点配置例を示す図である。また、図21は、位相回転していない位相偏移変調信号が加算されたパイロット信号(伝送路推定用を除く)の信号点配置例を示す図である。
【0189】
図20及び図21に示す黒丸のパイロット信号P1は、シンボル判定器1の出力する軟レプリカのうち伝送路推定用を除くパイロット信号を示す(図18のP1を参照)。図20に示す白丸のパイロット信号P2は、位相回転した位相偏移変調信号が加算されたパイロット信号を示す(図18のP2を参照)。図21に示す白丸のパイロット信号P2’は、位相回転していない位相偏移変調信号が加算されたパイロット信号を示す。
【0190】
伝送路推定用を除くパイロット信号P1は、地デジまたは高度化方式において、DBPSK(Differential Binary Phase Shift Keying:差動二位相偏移変調)によりシンボル方向に差動変調されており、図20及び図21に示す配置となる。
【0191】
パイロット信号P1に、整数生成部57、位相偏移変調器58及び乗算部59により生成された位相偏移変調信号が加算されると、図21に示すように、例えば矢印の向きに、信号点がそれぞれ移動する。つまり、パイロット信号P1の信号点配置は、位相回転していない位相偏移変調信号が加算されることで、パイロット信号P2’の信号点配置に移動する。
【0192】
一方、パイロット信号P1に、整数生成部57、位相偏移変調器58、乗算部59及び位相回転部61により生成された位相偏移変調信号が加算されると、図20に示すように、例えば矢印の向きに、信号点がそれぞれ移動する。具体的には、図20の右側のパイロット信号P1については、位相が回転していないため、右斜め上方向の向きに信号点が移動し、左側のパイロット信号P1については、πだけ位相が回転しているため、左斜め下方向の向きに信号点が移動する。つまり、パイロット信号P1の信号点配置は、位相回転した位相偏移変調信号が加算されることで、パイロット信号P2の信号点配置に移動する。
【0193】
図20に示すように、再送信装置2-4からの再送信信号を受信する受信機において重畳される雑音成分を無視すると、位相回転した位相偏移変調信号が加算されたパイロット信号P2は、IQ軸において原点を対称とした配置となる。
【0194】
このため、シンボル方向に差動変調がなされているパイロット信号P2は、伝送している情報を厳密に保持していることになり、これに雑音が加わった後に復調する際に、位相偏移変調信号が加わることの影響を軽減することができるという利点がある。すなわち、パイロット信号P2に対し、前シンボルによって現シンボルを割算する遅延検波(差動復調)が行われるため、白色雑音成分を除いて考えると、位相偏移変調信号が加算されているか否かに関わらず「1」または「-1」が得られることとなる。
【0195】
以上のように、本発明の実施形態による第4の再送信装置2-4によれば、スイッチ部50は、パイロット信号生成器51から入力される伝送路推定用パイロット信号、シンボル判定器1から入力される軟レプリカから抽出したデータキャリア、及び、加算部53から入力される位相回転後の位相偏移変調信号が加算された軟レプリカから抽出した非伝送路推定用パイロット信号を再送信信号として出力するようにした。
【0196】
これにより、再送信信号を受信する受信機は、非伝送路推定用パイロット信号を用いて雑音電力を推定することにより、再送信装置2-4に入力される受信信号の品質を一層精度高く推定することができる。
【0197】
〔計算機シミュレーション結果〕
次に、計算機を用いたシミュレーション結果について説明する。図15は、計算機シミュレーション系統を示す図である。計算機シミュレーション系統は、PN(Pseudo Noise:擬似雑音)系列発生、LDPC(Low Density Parity Check:低密度パリティ検査)符号化、シリアル/パラレル変換、キャリア変調、ガウス雑音付加、シンボル判定、ガウス雑音付加、キャリア復調、LDPC復号及びビット誤り率(BER)計測の各ブロックからなる。
【0198】
図16は、図15の計算機シミュレーション系統による計算機シミュレーション結果を示す図であり、図2に示したシンボル判定器1-2を含む図14に示した再送信装置2-2を用いてデジタル信号を中継した場合を想定し、計算機シミュレーションにより求めた伝送特性の評価結果である。
【0199】
図16において、横軸はCN比(C/N)(dB)、縦軸はビット誤り率(BER)を示す。実線は、硬判定によるシンボル判定器を含む再送信装置を用いた従来技術の特性を示し、点線は、シンボル判定器1-2を含む再送信装置2-2を用いた本発明の実施形態の特性を示す。CN比は、図15に示したシンボル判定の処理後のガウス雑音付加の処理において算出されるデータであり、ビット誤り率は、ビット誤り率計測の処理において算出されるデータである。伝送パラメータは、1024QAM NUC、符号化率10/16とする。
【0200】
図16に示すように、本発明の実施形態は、従来技術に対し、ビット誤り率の特性の改善が得られることがわかる。
【0201】
図22は、図15の計算機シミュレーション系統による計算機シミュレーション結果を示す図であり、図2に示したシンボル判定器1-2をそれぞれ含む図14に示した第2の再送信装置2-2及び図17に示した第3の再送信装置2-3を用いてデジタル信号を中継した場合を想定し、計算機シミュレーションにより求めた伝送特性の評価結果を示している。尚、再送信装置2-2,2-3の受信信号には、CN比26dBのガウス雑音を加えている。また、伝送パラメータは、256QAM NUC及び符号化率12/16とする。
【0202】
図22において、図16と同様に、横軸はCN比(C/N)(dB)、縦軸はビット誤り率(BER)を示す。丸印を付した実線は、第2の再送信装置2-2を用いた場合の特性を示す。アスタリスクを付した実線は、第3の再送信装置2-3を用いた場合の特性を示す。
【0203】
図22に示すように、両者の特性は区別が付かないほど一致しており、第3の再送信装置2-3は、第2の再送信装置2-2に比べ、回路規模を大幅に縮減しつつ、同等の伝送特性を実現できることがわかる。
【0204】
図23は、図15の計算機シミュレーション系統による計算機シミュレーション結果を示す図であり、図14に示した第2の再送信装置2-2及び図18に示した第4の再送信装置2-4を用いてデジタル信号を中継した場合を想定し、計算機シミュレーションにより求めた非伝送路推定用パイロット信号の差動復調後のコンスタレーションを示す図である。
【0205】
尚、再送信装置2-2,2-4の受信信号には、CN比25dBのガウス雑音を加えている。また、再送信装置2-2においてCN比20dBのガウス雑音を付加しており、再送信装置2-4において位相偏移変調信号を付加している。
【0206】
図23において、図14に示した第2の再送信装置2-2の出力する再送信信号を受信機が受信する場合、差動復調後の非伝送路推定用パイロット信号の変調誤差比は15.5dBである。これに対し、図18に示した第4の再送信装置2-4の出力する再送信信号を受信機が受信する場合、差動復調後の非伝送路推定用パイロット信号の変調誤差比は21.7dBである。これにより、第4の再送信装置2-4は、第2の再送信装置2-2に比べ、非伝送路推定用パイロット信号による情報伝送において、受信特性の劣化を小さくできることがかわる。
【0207】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【符号の説明】
【0208】
1 シンボル判定器
2 再送信装置
10 雑音電力算出部
11 LLR(対数尤度比:Log-Likelihood Ratio)算出部
12 ビット確率算出部
13 シンボル確率算出部
14 軟レプリカ生成部
15 制御部
16 LLR操作部
17 ビット確率操作部
20 シンボル硬判定部
21 減算部
22 電力算出部
23 平均化部
30 C/N(CN比:Carrier to Noise ratio)算出部
31 しきい値処理部
40,43 関数選択部
41,44 メモリ
42,45 操作部
50 スイッチ部
51 パイロット信号生成器
52 雑音発生器
53 加算部
54,57 整数生成部
55,58 位相偏移(PSK:Phase Shift Keying)変調器
56,59 乗算部
60 位相算出部
61 位相回転部
g(x) 対数尤度比操作関数
f(x) 確率操作関数
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23