(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241106BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20241106BHJP
B24B 53/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01L21/78 F
B24B27/06 M
B24B53/00 K
(21)【出願番号】P 2020193284
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝
【審査官】久宗 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-005119(JP,A)
【文献】特開平05-326700(JP,A)
【文献】特開2010-034515(JP,A)
【文献】特開2010-240776(JP,A)
【文献】特開2014-220437(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0314144(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B24B 27/06
B24B 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法であって、
ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを切削する切り刃を外周に備えた切削ブレードを回転可能に装着した切削手段と、該チャックテーブルと該切削手段とを相対的にX軸方向に加工送りするX軸送り手段と、該チャックテーブルと該切削手段とを相対的にX軸方向に直交するY軸方向に割り出し送りするY軸送り手段と、該切削手段をX軸方向及びY軸方向と直交するZ軸方向に切り込み送りするZ軸送り手段と、を含み構成された切削装置を準備する準備工程と、
該チャックテーブルにウエーハを保持する保持工程と、
該外周余剰領域を該切削手段に装着された切削ブレードで切削して切り刃の状態を整えるドレッシング工程と、
該切削手段に装着された切削ブレードで分割予定ラインを切削してウエーハを個々のデバイスチップに分割する分割工程と、
から少なくとも構成され
、
該ドレッシング工程において、該切削手段をZ軸方向に切り込み送りして外周余剰領域を垂直に切込み切削ブレードの切り刃を整えるウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、切削ブレードを備えた切削装置によって個々のデバイスチップに分割され携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
切削装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを切削する切り刃を外周に備えた切削ブレードを回転可能に装着した切削手段と、該チャックテーブルと該切削手段とを相対的にX軸方向に加工送りするX軸送り手段と、該チャックテーブルと該切削手段とを相対的にX軸方向に直交するY軸方向に割り出し送りするY軸送り手段と、該切削手段をX軸方向及びY軸方向と直交するZ軸方向に切り込み送りするZ軸送り手段と、を含み構成されていて、ウエーハを高精度に個々のデバイスチップに分割することができる。
【0004】
また、切削ブレードの切り刃の状態を整えるために、デバイスが形成されていないウエーハ(ダミーウエーハ)をチャックテーブルに保持し、切削ブレードでダミーウエーハを切削して切り刃の状態を整える目立て及び付着物の除去を含むドレッシングを、定期的に、又は任意のタイミングで実施している(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【0006】
上記したドレッシングを実施するためには、デバイスが形成されていないダミーウエーハを別途用意しなければならず、所定回数ドレッシングをしたら新たなダミーウエーハが必要となって不経済であると共に、チャックテーブルに対して、ダミーウエーハを載せ替えてドレッシングをすることから、生産性の悪化を招くという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、切り刃の状態を整えるドレッシング工程が必要な場合でも、ダミーウエーハを別途用意する必要がなく、ウエーハの載せ替えも必要としないウエーハの加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法であって、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを切削する切り刃を外周に備えた切削ブレードを回転可能に装着した切削手段と、該チャックテーブルと該切削手段とを相対的にX軸方向に加工送りするX軸送り手段と、該チャックテーブルと該切削手段とを相対的にX軸方向に直交するY軸方向に割り出し送りするY軸送り手段と、該切削手段をX軸方向及びY軸方向と直交するZ軸方向に切り込み送りするZ軸送り手段と、を含み構成された切削装置を準備する準備工程と、該チャックテーブルにウエーハを保持する保持工程と、該外周余剰領域を該切削手段に装着された切削ブレードで切削して切り刃の状態を整えるドレッシング工程と、該切削手段に装着された切削ブレードで分割予定ラインを切削してウエーハを個々のデバイスチップに分割する分割工程と、から少なくとも構成され、該ドレッシング工程において、該切削手段をZ軸方向に切り込み送りして外周余剰領域を垂直に切込み切削ブレードの切り刃を整えるウエーハの加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明のウエーハの加工方法は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法であって、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを切削する切り刃を外周に備えた切削ブレードを回転可能に装着した切削手段と、該チャックテーブルと該切削手段とを相対的にX軸方向に加工送りするX軸送り手段と、該チャックテーブルと該切削手段とを相対的にX軸方向に直交するY軸方向に割り出し送りするY軸送り手段と、該切削手段をX軸方向及びY軸方向と直交するZ軸方向に切り込み送りするZ軸送り手段と、を含み構成された切削装置を準備する準備工程と、該チャックテーブルにウエーハを保持する保持工程と、該外周余剰領域を該切削手段に装着された切削ブレードで切削して切り刃の状態を整えるドレッシング工程と、該切削手段に装着された切削ブレードで分割予定ラインを切削してウエーハを個々のデバイスチップに分割する分割工程と、から少なくとも構成され、該ドレッシング工程において、該切削手段をZ軸方向に切り込み送りして外周余剰領域を垂直に切込み切削ブレードの切り刃を整えることから、ウエーハの加工方法において、切り刃の状態を整えるドレッシング工程が必要な場合であっても、ダミーウエーハを用意する必要がなく、さらには、ドレッシング工程を実施することに起因してウエーハを載せ替える必要がなくなり、生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の被加工物であるウエーハの斜視図である。
【
図2】本実施形態のウエーハの加工方法に好適な切削装置の全体斜視図である。
【
図3】ドレッシング工程の実施態様における切削装置の一部を拡大して示す斜視図である。
【
図4】(a)
図3に示すドレッシング工程の側面図、(b)(a)に示すドレッシング工程の別の実施態様を示す側面図である。
【
図5】(a)
図3に示すドレッシング工程が施されたウエーハの斜視図、(b)別の実施態様によるドレッシング工程が施されたウエーハの斜視図、(c)さらに別の実施態様によるドレッシング工程が施されたウエーハの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に基づいて構成されるウエーハの加工方法に係る実施形態について添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0013】
図1には、本実施形態のウエーハの加工方法によって加工されるウエーハ10が示されている。ウエーハ10は、複数のデバイス12が分割予定ライン14によって区画されたデバイス領域10Aと、デバイス領域10Aを囲繞する外周余剰領域10Bとが表面10aに形成されている。本実施形態のウエーハ10は、
図1に示すように、環状のフレームFに形成された開口Faの中央に位置付けられ、裏面10bがフレームFに外周が貼着された保護テープTに貼着されて、フレームFに支持されている。
【0014】
図2には、本発明に基づき構成されるウエーハの加工方法を実施するのに好適な切削装置1の斜視図が示されている。本実施形態の切削装置1は、保持手段20を備えている。保持手段20は、静止基台2上にX軸方向に沿って平行に配設された一対のガイドレール2a、2a上において移動可能に支持される矩形状のX軸方向移動基台21と、X軸方向移動基台21上に配設される円柱支持部材22と、円柱支持部材22の上部の周囲を覆う矩形状のカバー板23と、円柱支持部材22上に配設されウエーハ10を保持するチャックテーブル24と、円柱支持部材22とチャックテーブル24との間に配設されチャックテーブル24上にウエーハ10を載置して保持する際に、該フレームFを把持するクランプ機構26と、を備える。X軸方向移動基台21の下面には、ガイドレール2a、2a上に摺動可能に当接する一対の案内溝21a、21aが形成され、ガイドレール2a、2aと案内溝21a、21aとにより摺動部が形成されている。チャックテーブル24は、通気性を有する部材によって構成され、円柱支持部材22の内部を通じて図示を省略する吸引源に接続されている。該吸引源を作動することで、チャックテーブル24の保持面に吸引負圧が供給される。
【0015】
切削装置1は、チャックテーブル24に保持されたウエーハ10を切削する切り刃93aを外周に備えた切削ブレード93を回転可能に装着した切削手段9と、チャックテーブル24と切削手段9とを相対的にX軸方向に加工送りするX軸送り手段30と、チャックテーブル24と切削手段9とを相対的にX軸方向と直交するY軸方向に割り出し送りするY軸送り手段50と、チャックテーブル24と切削手段9とをX軸方向及びY軸方向に直交するZ軸方向に相対的に切込み送りするZ軸送り手段60と、を含み構成されている。なお、図示は省略するが、円柱支持部材22の内部には、チャックテーブル24を回転させる回転駆動手段が配設されており、チャックテーブル24を所望の角度で回転させることができる。
【0016】
X軸送り手段30は、パルスモータ31の回転運動を、パルスモータ31によって回転させられるボールねじ32を介して直線運動に変換し、チャックテーブル24が配設されたX軸方向移動基台21に伝達し、静止基台2上において、一対のガイドレール2a、2aに沿ってX軸方向移動基台21を進退させる。
【0017】
静止基台2上には、Y軸送り手段50によってY軸方向に移動可能に配設されたスピンドル支持機構4が配設されている。スピンドル支持機構4は、Y軸方向移動基台40を備え、Y軸方向移動基台40は、Y軸方向に延びる一対のガイドレール2b、2b上を移動可能に支持された支持部42と、支持部42上に立設された垂直壁部43とを備えている。支持部42の下面にはガイドレール2b、2b上に摺動可能に当接する一対の案内溝42a、42aが形成され、ガイドレール2b、2bと案内溝42a、42aとにより摺動部が形成されている。Y軸送り手段50は、パルスモータ51の回転運動を、パルスモータ51によって回転させられるボールねじ52を介して直線運動に変換して支持部42に伝達し、静止基台2上においてY軸方向にガイドレール2b、2bに沿って支持部42を進退させる。
【0018】
Y軸方向移動基台40の垂直壁部43には、Z軸送り手段60によって矢印Z1で示すZ軸方向に移動可能に配設されたスピンドルユニット8が装着されている。スピンドルユニット8は、Z軸方向移動基台91と、Z軸方向移動基台91に支持されたスピンドルハウジング92と、スピンドルハウジング92に回転可能に支持されY軸方向に沿う回転軸92aの先端部に配設された切削ブレード93を有する切削手段9と、スピンドルハウジング92に配設された撮像手段81と、を備えている。撮像手段81によって撮像される領域の所定の位置(例えば中心位置)のX軸方向に、切削手段9の切削ブレード93が位置付けられる。
【0019】
Z軸方向移動基台91は、Y軸方向移動基台40の垂直壁部43に矢印Z1で示すZ軸方向(切込み送り方向)に配設された一対のガイドレール44、44に沿って移動可能に支持されている。Z軸方向移動基台91には、ガイドレール44、44に摺動可能に当接する一対の案内溝91a(図中では一方のみ示されている)が設けられている。Z軸方向移動基台91は、Z軸送り手段60のパルスモータ61と、パルスモータ61の回転を直線運動に変換してZ軸方向移動基台91に形成された雌ねじ部に伝達するボールねじ(図示は省略する)とによりZ軸方向において移動させられる。このパルスモータ61と該ボールねじとが、保持手段20と切削手段9とをZ軸方向に相対的に切込み送りするZ軸送り手段60として機能する。
【0020】
切削手段9は、
図3に示すように、上記したスピンドルハウジング92の先端部に配設され、スピンドルハウジング92に回転自在に保持され図示を省略する電動モータによって回転駆動される回転軸92aと、回転軸92aの先端部に固定される切削ブレード93と、切削ブレード93を覆うブレードカバー95と、ブレードカバー95を介して切削水を供給する切削水供給口97と、切削ブレード93の環状の切り刃93aによる切削加工位置に切削水を噴射する切削水供給ノズル96と、を備えている。
【0021】
切削装置1には、図示を省略する制御手段が配設されている。該制御手段は、コンピュータにより構成され、制御プログラムに従って演算処理する中央演算処理装置(CPU)と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)と、検出した検出値、演算結果等を一時的に格納するための読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)と、入力インターフェース、及び出力インターフェースとを備えている。該制御手段には、上記したX軸送り手段30のパルスモータ31、Y軸送り手段50のパルスモータ51、Z軸送り手段60のパルスモータ61、図示を省略するチャックテーブル24を回転させる回転駆動手段等が接続され、チャックテーブル24のX軸方向、及び回転方向の位置を検出する位置検出手段、切削手段9の切削ブレード93のY軸方向、Z軸方向の位置を検出する位置検出手段によって検出される位置情報に基づいて、チャックテーブル24、及び切削手段9の切削ブレード93を所望の位置に位置付けることができる。
【0022】
切削装置1は、概ね上記したとおりの構成を備えており、切削装置1を使用して実施される本実施形態のウエーハの加工方法について、以下に説明する。
【0023】
本実施形態のウエーハの加工方法を実施するに際し、上記したような切削装置1を準備する準備工程を実施する。該準備工程において準備される切削装置としては、上記したように、ウエーハ10を保持するチャックテーブル24と、チャックテーブル24に保持されたウエーハ10を切削する切り刃93aを外周に備えた切削ブレード93を回転可能に装着した切削手段9と、チャックテーブル24と切削手段9とを相対的にX軸方向に加工送りするX軸送り手段30と、チャックテーブル24と切削手段9とを相対的にX軸方向に直交するY軸方向に割り出し送りするY軸送り手段50と、切削手段9をX軸方向及びY軸方向と直交するZ軸方向に切り込み送りするZ軸送り手段60と、を含み構成された切削装置であればよく、その他の構成については、上記した切削装置1に限定されるものではない。
【0024】
次いで、
図2に示すように、チャックテーブル24にウエーハ10を保持する保持工程を実施する。該保持工程では、チャックテーブル24に保護テープTを介してウエーハ10を載置し、図示を省略する吸引源を作動して吸引保持すると共に、クランプ機構26によってフレームFを固定する。
【0025】
次いで、ウエーハ10の外周余剰領域10Bを、切削手段9に装着された切削ブレード93で切削して切り刃93aの状態を整えるドレッシング工程を実施する。このドレッシング工程は、上記した制御手段に予め記憶されたウエーハ10の外周余剰領域10Bの位置情報に基づいて実施することができる。しかし、本発明はこれに限定されず、例えば、ドレッシング工程を実施する前に、X軸送り手段30、Y軸送り手段50を作動して、チャックテーブル24を撮像手段81の直下に位置付けて、チャックテーブル24に保持されたウエーハ10を撮像して、ウエーハ10の外周余剰領域10Bの位置情報を検出するようにしてもよい。
【0026】
ドレッシング工程の具体的な実施態様について、
図3~
図5を参照しながら、以下に説明する。なお、
図3~
図5は、ウエーハ10がチャックテーブル24に保持された状態を示すものであるが、説明の都合上、チャックテーブル24、及びその他の構成については省略している。
【0027】
ドレッシング工程を実施するに際し、まず、切削手段9を作動して、切削ブレード93を矢印R1で示す方向に回転させる。次いで、該制御手段に記憶されたウエーハ10の外周余剰領域10Bの位置情報に基づいて、X軸送り手段30及びY軸送り手段50を作動してチャックテーブル24と切削手段9とを相対的に移動して、ウエーハ10の外周余剰領域10Bの外側の保護テープT上に切削手段9を位置付ける。次いで、Z軸送り手段60のパルスモータ61を作動して、
図4(a)に矢印R2で示す方向に、切削ブレード93(実線で示す)を下降させる。この時、下降する切削ブレード93の下端位置は、保護テープTの表面の高さ、又はそれよりも僅かに高い位置に設定される。切削ブレード93を下降させたならば、ウエーハ10を矢印Xで示す方向に移動させて、ウエーハ10の外周端から外周余剰領域10Bに切削ブレード93を切り込ませ(2点鎖線で示す)、
図3に示すような切り込み溝100を形成する。
【0028】
上記した切り込み溝100を形成したならば、Z軸送り手段60を作動して、切削ブレード93を上昇させると共に、X軸送り手段30を作動して、ウエーハ10をX軸方向に移動させて、ウエーハ10の外周余剰領域10Bの外側の保護テープT上に位置付ける。そして、Y軸送り手段50を作動して、ウエーハ10と切削手段9とを相対的にY軸方向に割り出し送りし、先に形成した切り込み溝100に隣接する位置に切削ブレード93を位置付ける。そして、上記したのと同様にして、切削ブレード93を下降させると共に、X軸方向にウエーハ10を移動して、新たな切り込み溝100を形成する。このような切り込み溝100の形成を、切り刃93aが整うまで繰り返し、
図5(a)に示すように、切り込み溝100を複数形成する。このように、デバイス12が形成されていない外周余剰領域10Bにおいて、所定の長さだけ切削ブレード93を切り込ませることで、デバイス領域10Aの表面10aに積層されている膜や、分割予定ライン14に形成されているTEGと称される素子等を切り込むことがないことから、切り刃93aの状態が整えられ、切り刃93aがドレッシングされる。なお、
図5(a)に示すように、複数の切り込み溝100を、所定の分割予定ライン14に沿う方向に形成する場合は、分割予定ライン14の延長線上の領域を避けて形成することが好ましい。それにより、後に実施される分割工程において、分割予定ライン14に沿って切削加工を実施する際に、先に形成された切り込み溝100が切削ブレード93の進行を阻害することが回避される。
【0029】
なお、上記したドレッシング工程では、ウエーハ10の外周余剰領域10Bの外側の保護テープT上に切削ブレード93を位置付け、ウエーハ10をX軸方向に移動させながら、切削ブレード93を水平方向に切り込ませて、ウエーハ10の外周余剰領域10Bに対して切り込み溝100を形成したが
、これは参考例であり、本発明のドレッシング工程では、
図4(b)に示すように、ウエーハ10の外周余剰領域10B上に切削ブレード93を位置付け、切削手段9を作動して切削ブレード93を矢印R1で示す方向に回転させると共に、切削ブレード93を矢印R2で示すZ軸方向に切込み送りして、外周余剰領域10Bに上方から垂直に切り込んで切り込み溝100を形成し、切り刃93aを整え
る。この場合も、Y軸送り手段50を作動させて、ウエーハ10と切削手段9とを相対的にY軸方向に割り出し送りしながら、外周余剰領域10Bにおいて複数の切り込み溝100を形成するようにすることが好ましい。
【0030】
また、本発明のドレッシング工程は、上記した実施形態に限定されず、例えば、
図5(b)に示すように、ウエーハ10の外周余剰領域10Bにおいて、ウエーハ10の外周縁上の2点を結ぶ弦を形成するように切削ブレード93で切削してもよく、好ましくは、これに平行な複数の切り込み溝110aを形成することで、切り刃93aの状態を整えるようにしてもよい。さらに、切り刃93aの状態をより良好に整えるべく、ウエーハ10を、図中矢印R3で示す方向に90度回転させて、隣接する外周余剰領域10B上に切削ブレード93を位置付け、ウエーハ10の外周縁上の2点を結ぶ弦を形成するように切削ブレード93で切削して、複数の切り込み溝110bを形成するようにしてもよい。
【0031】
さらには、
図5(c)に示すように、ウエーハ10の外周余剰領域10Bにおいて、放射状に複数の切り込み溝120を形成することもできる。この切り込み溝120を形成する際には、X軸送り手段30と、Z軸送り手段60を作動させて、切削ブレード93をウエーハ10の外周余剰領域10Bにおいて、X軸方向(水平方向)、又はZ軸方向(垂直方向)に切り込ませて切り込み溝120を形成すると共に、上記したチャックテーブル24の回転駆動手段(図示は省略する)を作動して、ウエーハ10を矢印R3で示す方向に徐々に回転させて、複数の切り込み溝120を放射状に形成することによりドレッシング工程を実施することができる。
【0032】
上記のドレッシング工程を実施したならば、切削手段9を作動させると共に、X軸送り手段30、Y軸送り手段50、Z軸送り手段60を作動して、切削手段9に装着された切削ブレード93でウエーハ10の全ての分割予定ライン14を切削して、ウエーハ10のデバイス12を個々のデバイスチップに分割する分割工程を実施する。
【0033】
本実施形態によれば、ウエーハの加工方法において、切り刃93aの状態を整えるドレッシング工程を実施する場合であっても、ダミーウエーハを用意する必要がなく、さらには、ドレッシング工程を実施することに起因してウエーハを載せ替える必要がなくなり、生産性が向上する。
【符号の説明】
【0034】
1:切削装置
2:静止基台
4:スピンドル支持機構
8:スピンドルユニット
81:撮像手段
9:切削手段
91:Z軸方向移動基台
92:スピンドルハウジング
92a:回転軸
93:切削ブレード
93a:切り刃
95:ブレードカバー
96:切削水供給ノズル
10:ウエーハ
10A:デバイス領域
10a:表面
10B:外周余剰領域
10b:裏面
12:デバイス
14:分割予定ライン
20:保持手段
24:チャックテーブル
30:X軸送り手段
31:パルスモータ
32:ボールねじ
40:Y軸方向移動基台
42:支持部
43:垂直壁部
44:ガイドレール
50:Y軸送り手段
51:パルスモータ
52:ボールねじ
60:Z軸送り手段
61:パルスモータ
100、110a、100b、120:切り込み溝
F:フレーム
T:保護テープ