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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】光学式位置測定機構
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20241106BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
G01D5/347 D
G01B11/00 A
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020196863
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2021131376
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】10 2020 202 080.9
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100220065
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】トマス・カルベラー
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング・ホルツアップフェル
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-160760(JP,A)
【文献】国際公開第2007/142351(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0007664(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/26- 5/38
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の測定方向(x、y、z)に沿って互いに対して移動可能で、異なる平面内にあり、かつ互いに対して交差して配置されている第1および第2のスケール(M1、M2;10、20;110、120;210、220;310、320)の相対位置を測定するための光学式位置測定機構であって、
- 前記第1のスケール(M2;20;120;220;320)が第1の測定目盛(21;121)を備えており、前記第2のスケール(M1;10;110;210;310)が第2の測定目盛(11;111)を備えており、前記第1および第2の測定目盛(11、21;111、121)がそれぞれ異なる光学特性をもつ周期的に配置された格子領域(11a、11b、21a、21b;111a、111b、121a、121b)を有、かつ前記第1のスケール(M2;20;120;220;320)の長手方向が第1および第2の測定方向(x、y)のうちの一方に平行であり、前記第2のスケール(M1;10;110;210;310)の長手方向が前記第1および第2の測定方向(x、y)のうちの他方に平行であり、前記第1および第2の測定方向(x、y)により、水平移動平面が規定されており、前記第1および第2の測定方向(x、y)に垂直に、第3の測定方向(z)が方向づけられており、かつ
- 前記第1のスケール(M2;20;120;220;320)では、光源(31.1)から放出された照明光線束(B)を少なくとも2つの部分光線束へ分割し、かつ
- 前記部分光線束がその後、前記第2のスケール(M1;10;110;210;310)に衝突し、前記第2のスケール(M1;10;110;210;310)がその長手方向を中心として、前記水平移動平面に対して傾斜して配置されており、それにより前記部分光線束が、前記第2のスケール(M1;10;110;210;310)では前記第1のスケール(M2;20;120;220;320)の方向に後方反射され、かつ
- 前記後方反射された部分光線束が改めて前記第1のスケール(M2;20;120;220;320)に衝突し、そこで再統合され、続いてこれにより結果として生じる信号光線束が検出ユニット(32)の方向に伝播し、前記検出ユニット(32)を介し、前記第3の測定方向(z)および前記第1または第2の測定方向(x、y)に沿った前記第1および第2のスケール(M1、M2;10、20;110、120;210、220;310、320)の相対移動に関する複数の移相された走査信号が生成可能である、光学式位置測定機構。
【請求項2】
請求項1に記載の光学式位置測定機構であって、
前記第2のスケール(M1;10;110;210;310)がその長手方向を中心として、前記水平移動平面に対して傾斜して配置されており、そして、前記第1のスケール(M2;20;120;220;320)で分割された前記部分光線束によって規定される平面内で、前記分割された部分光線束の間の角の二等分線が、前記部分光線束の、前記第2のスケール(M1;10;110;210;310)での衝突点間の結合線に垂直に延びているように、傾斜して配置されている、光学式位置測定機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光学式位置測定機構であって、
前記第1および第2のスケール(M1、M2;10、20;110、120;210、220;310、320)上の前記第1および第2の測定目盛(11、21;111、121)がそれぞれ、異なる移相作用をもつ周期的に配置された格子領域(11a、11b、21a、21b;111a、111b、121a、121b)を有する反射型位相格子として形成されている、光学式位置測定機構。
【請求項4】
請求項3に記載の光学式位置測定機構であって、
前記第1および第2のスケール(M1、M2;10、20;110、120;210、220;310、320)がそれぞれ支持体(12、22)を含んでおり、前記支持体(12、22)上に前記第1および第2の測定目盛(11、21;111、121)が配置されており、かつ前記支持体(12、22)が熱膨張係数CTE≒0の材料から形成されている、光学式位置測定機構。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の光学式位置測定機構であって、
前記第1および第2の測定目盛(11、21;111、121)の少なくとも一方が、前記両方の部分光線束を互いに対して直交に偏光させる幾何学的位相格子として形成されている、光学式位置測定機構。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の光学式位置測定機構であって、
前記第2のスケール(M1;10;110;210;310)の前記第2の測定目盛(11;111)がリトロー格子として形成されており、したがって、
- そこに入射してくる前記部分光線束が、入射方向とは反対側に後方反射されるか、
- または前記第2の測定目盛への法線と、前記第1の測定目盛の回折方向とによって規定される平面内に射影された前記部分光線束が、入射方向とは反対側に後方反射される、光学式位置測定機構。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の光学式位置測定機構であって、
前記第1および第2のスケール(M1、M2;10、20;110、120;210、220;310、320)の長手方向が互いに対して直交に方向づけられている、光学式位置測定機構。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の光学式位置測定機構であって、
- 前記第1のスケール(M2;20;320)がその長手方向(y)に沿って、前記第1のスケール(M2;20;320)の、対応する測定方向(y)に沿った変位距離に相応する長さを有しており、かつ
- 前記第2のスケール(M1;10;310)がその長手方向(x)に沿って、前記第1のスケール(M2;20;320)の、対応する測定方向(x)に沿った変位距離に相応する長さを有している、光学式位置測定機構。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の光学式位置測定機構であって、
- 前記第1のスケール(120;220)がその長手方向(x)に沿って、前記第2のスケール(110;210)の、関連する測定方向(x)に沿った変位距離に相応する長さを有しており、かつ
- 前記第2のスケール(110;210)がその長手方向(y)に沿って、前記第2のスケール(110:210)の、対応する測定方向(y)に沿った変位距離に相応する長さを有している、光学式位置測定機構。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の光学式位置測定機構であって、
前記光源(31.1)および前記検出ユニット(32)が、一緒に走査ヘッド(30;130;230;330)内に配置されている、光学式位置測定機構。
【請求項11】
請求項10に記載の光学式位置測定機構であって、
- 前記走査ヘッド(30)が前記第2のスケール(10)と結合されており、かつ
- 前記第1のスケール(20)が、前記第1、第2、および第3の測定方向(x、y、z)に沿って、前記走査ヘッド(30)に対して相対的に移動可能に配置されており、かつ
- 前記第2のスケール(10)がその長手方向を中心として、前記水平移動平面に対して傾斜して配置されている、光学式位置測定機構。
【請求項12】
請求項11に記載の光学式位置測定機構であって、
前記信号光線束(S)が、前記照明光線束(B)に対して逆平行に方向づけられている、光学式位置測定機構。
【請求項13】
請求項10に記載の光学式位置測定機構であって、
- 前記走査ヘッド(130)が、前記第1のスケールとも前記第2のスケール(110、120)とも結合されておらず、かつ前記第1の測定方向(x)に沿って、前記第1のスケール(120)に対して移動可能に配置されており、かつ
- 前記第2のスケール(110)が、前記第2および第3の測定方向(y、z)に沿って、前記第1のスケール(120)に対して相対的に移動可能に配置されている、光学式位置測定機構。
【請求項14】
請求項10に記載の光学式位置測定機構であって、
- 前記走査ヘッド(230)が前記第1のスケール(220)と結合されており、かつ
- 前記第2のスケール(210)が、前記第1、第2、および第3の測定方向(x、y、z)に沿って、前記走査ヘッド(230)に対して相対的に移動可能に配置されている、光学式位置測定機構。
【請求項15】
請求項10に記載の光学式位置測定機構であって、
- 前記走査ヘッド(330)が、前記第1のスケールとも前記第2のスケール(310、320)とも結合されておらず、かつ前記第1の測定方向(x)に沿って、前記第2のスケール(310)に対して移動可能に配置されており、かつ
- 前記第1のスケール(320)が、前記第2および第3の測定方向(y、z)に沿って、前記第2のスケール(310)に対して相対的に移動可能に配置されている、光学式位置測定機構。
【請求項16】
請求項11に記載の位置測定機構を4つ備えた製作機構であって、
- 前記製作機構が工具(T)およびテーブル(W)を含んでおり、前記テーブル(W)が、前記3つの測定方向(x、y、z)に沿って前記工具(T)に対して直線的に変位可能におよび前記3つの測定方向(x、y、z)を中心として回転するように、移動可能に配置されており、かつ
- 前記位置測定機構の前記走査ヘッド(AK1、AK2、AK3、AK4)および前記第2のスケール(M14、M2、M3)がそれぞれ前記工具(T)と結合されており、かつ
- 前記位置測定機構の前記第1のスケール(M1、M23、M3)がそれぞれ前記テーブル(W)と結合されており、
- これにより、前記位置測定機構の走査信号から、前記工具(T)に対する前記テーブル(W)の空間的位置が、6つすべての空間的自由度において決定可能である製作機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの測定方向に沿って互いに対して移動可能な2つの物体の高精度の位置測定に適した光学式位置測定機構に関する。この場合、両方の物体はそれぞれスケールと結合している。
【背景技術】
【0002】
干渉走査原理をベースとする光学式位置測定機構が知られており、この光学式位置測定機構では、照明光線束がスケールの測定目盛で、回折により異なる部分光線束に分割される。適切な部分光線束の統合に従って、このスケールがもう一方のスケールに対して変位すると、両方の部分光線束の干渉により検出ユニット内で周期的な信号が生じる。この検出ユニット内の信号周期を数えることにより、両方のスケールのまたはこれらスケールと結合された物体の変位の大きさが推定され得る。
【0003】
このような光学式位置測定機構は、例えば半導体産業における高精度の位置測定に用いられ、半導体産業では、例えばフォトリソグラフィのための露光マスクが、1メートル/秒超の速度でウエハに対して相対的に移動し、このとき、数ナノメートル以下の範囲の位置決め精度が保たれなければならない。格子ベースの位置測定機構の、干渉計に対する決定的な利点は、干渉する部分光線束が非常に短い距離しか進まなくてよいことにある。これにより、格子ベースの位置測定機構は、気圧変動、温度変動、および湿度変動のような環境の及ぼす影響によって妨害されることがほとんどなく、これら環境の及ぼす影響は、例えば空気の屈折率の変動を通して測定を歪曲し得る。
【0004】
WO2008/138501A1から、交差する2つのスケールを含んでおり、このスケールがそれぞれ、共通の測定方向を横切って周期的に配置された線または格子領域を有する測定目盛を備えている光学式位置測定機構が知られている。このような位置測定機構により、2つの方向に移動可能なテーブルの第1の測定方向xに沿った位置が、もう1つの第2の測定方向yに沿ったテーブルの位置に関係なく測定され得る。互いに対して直交に配置されたこのような2つの位置測定機構を使用する場合、テーブルの位置は、第2の測定方向yに沿っても、今度は第1の測定方向xに沿ったテーブルの位置に関係なく測定され得る。WO2008/138501A1で開示された位置測定機構の欠点は、テーブル平面または水平移動平面に垂直な、さらなる第3の測定方向zに沿ったテーブルの移動が、測定技術的に決定され得ないことである。
【0005】
テーブル平面内でのテーブルの位置を第1および第2の測定方向x、yに沿って測定するために、十字格子の形態での2次元の測定目盛を有するスケールを備えた位置測定機構も知られており、この十字格子が複数の位置で走査され、これにより横方向の変位もテーブル平面内での回転も、測定技術的に測定可能である。EP1019669B1ではこのような位置測定機構に関し、追加的な間隔センサを使用することが提案されており、この間隔センサにより、テーブル平面に垂直な、つまり第3の測定方向zに沿った移動も測定でき、したがってテーブルの6つすべての移動自由度が測定され得る。しかしこの場合に設けられた間隔センサ、例えば接触式または容量式の測定センサは、半導体産業における目下のまたは将来の製作設備の精度要求を満たさない。それに加え、高精度で拡張された十字格子は製造が厄介である。
【0006】
EP1762828A2では、第1の水平な測定方向xに沿った測定と共に、これに加えて測定方向xに垂直ないわゆる走査間隔の測定、つまりスケールと走査ユニットの間の測定方向zに沿った位置測定を、位置測定機構のさらなるコンポーネントによって可能にする光学式位置測定機構が記載されている。これは、鉛直な測定方向zに沿った追加的な移動自由度の測定と同意である。このために光線は、様々な光学構造をもつ透明な走査板を通って、スケールの反射性の測定目盛に当たる。2つの部分光線束に分割された光は、続いて走査板とスケールの間を複数回行ったり来たりする。その際、部分光線束の部分光線は、水平な測定方向xに垂直な平面に対して非対称に走っており、かつ異なる経路長を有する。これらの部分光線束は、走査光線経路の途中で、異なる光学的に有効な構造と、例えば異なる回折次数の光線の分割または統合のための格子と、ならびに光の反射のためのミラーおよび的確な偏向ためのレンズと相互作用する。最終的にこのような部分光線束が相互に統合され、これらの部分光線束が、相互に干渉し、こうしてスケールと走査ユニットの間の相対移動の際に、検出ユニットの複数の光検出器内で周期的な走査信号を生成する。部分光線束の非対称な軌道により、検出ユニット内で周期的な走査信号が得られ、これらの走査信号から、スケールと走査ユニットの水平変位も鉛直変位も推定でき、したがって両方の互いに対して移動可能な物体の両方の測定方向xおよびzに沿った相対変位を推測できる。しかしながらこの位置測定機構は、EP1762828A2に記載された位置測定機構の走査板の構造に基づき、上で説明したような交差するスケールを備えたシステムには使用され得ない。この走査板は、第1のスケールが測定を邪魔することなく測定方向を横切って相対的に移動し得る第2のスケールへは拡張され得ない。
【0007】
そういうわけでEP2450673A2では、第1の格子状の測定目盛を備えた走査棒と、第2の格子状の測定目盛を備えたスケールとを含んでおり、この走査棒が2つの測定方向のうち第1または第2の測定方向x、yに、およびスケールが両方の測定方向のそれぞれもう一方の測定方向y、xに延びている光学式位置測定機構が提案された。これに関しスケールは走査棒に対し、第1および第2の測定方向に垂直な第3の測定方向zに、走査間隔の分だけずれて配置されている。この光学式位置測定機構は、照明光線束を放出する光源をさらに有しており、この照明光線束は、走査棒上の第1の測定目盛を、走査棒とスケールの交点で突き抜け、これによりスケール上の第2の測定目盛に当たり、そこから戻って走査棒におよびさらに検出ユニットに達する。このとき光は、走査棒およびスケールの光学的に有効な構造において、回折により異なる部分光線束に分割され、再び統合され、その際、相互に統合された部分光線束の干渉により、第1の測定方向xに沿った走査棒とスケールの間の変位の際に、検出ユニット内で周期的な信号が結果として生じる。この光学式位置測定機構は、第3の測定方向zに沿った走査棒とスケールの間の走査間隔の変化の際にも、検出ユニット内で周期的な信号が生成可能であるように形成されている。これでこの光学式位置測定機構は、少なくとも2つの測定方向x、zに沿った相対移動の測定を可能にし、しかし光の波長のことによると生じる変動に非依存性ではない。このような変動は、例えば周囲空気中の温度変化および/または湿度変化の結果として生じ、かつ位置に依存する走査信号を決定する際の誤差の原因となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】WO2008/138501A1
【文献】EP1019669B1
【文献】EP1762828A2
【文献】EP2450673A2
【文献】ドイツ特許出願第102019206937.1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の基礎となる課題は、一方のスケールの長手方向に平行な測定方向に沿った少なくとも1つの位置測定と共に、両方のスケールに垂直に方向づけられたもう1つの測定方向に沿った位置測定も可能にする、交差して配置されたスケールを備えた高精度の光学式位置測定機構を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は本発明により、請求項1の特徴を有する光学式位置測定機構によって解決される。
本発明による光学式位置測定機構の有利な実施形態は、従属請求項に記載された措置から明らかである。
【0011】
本発明による光学式位置測定機構は、複数の測定方向に沿って互いに対して移動可能で、異なる平面内にあり、かつ互いに対して交差して配置されている2つのスケールの相対位置の測定に用いられる。この場合、両方のスケールはそれぞれ、異なる光学特性をもつ周期的に配置された格子領域を有する測定目盛を備えている。これらのスケールの長手方向は、第1および第2の測定方向に平行に方向づけられており、この第1および第2の測定方向により、水平移動平面が規定されており、第1および第2の測定方向に垂直に、第3の測定方向が方向づけられている。第1のスケールでは、光源から放出された照明光線束の、少なくとも2つの部分光線束への分割が行われる。部分光線束はその後、第2のスケールに衝突し、この第2のスケールはその長手方向を中心として、水平移動平面に対して傾斜して配置されている。これにより部分光線束は、第2のスケールでは第1のスケールの方向に後方反射される。後方反射された部分光線束は改めて第1のスケールに衝突し、そこで再統合され、続いてこれにより結果として生じる信号光線束が検出ユニットの方向に伝播し、この検出ユニットを介し、第3の測定方向および第1または第2の測定方向に沿ったスケールの相対移動に関する複数の移相された走査信号が生成可能である。
【0012】
第2のスケールはその長手方向を中心として、水平移動平面に対して傾斜して配置され、それも、第1のスケールで分割された部分光線束によって規定される平面内で、分割された部分光線束の間の角の二等分線が、部分光線束の、第2のスケールでの衝突点間の結合線上に垂直に立っているように、傾斜して配置されることが好ましい。
【0013】
可能な一実施形態では、スケール上の両方の測定目盛がそれぞれ、異なる移相作用をもつ周期的に配置された格子領域を有する反射型位相格子として形成される。
この場合、この両方のスケールはそれぞれ支持体を含むことができ、この支持体上に測定目盛が配置されており、この支持体は熱膨張係数CTE≒0の材料から形成される。
【0014】
さらに、両方の測定目盛の少なくとも一方は、両方の部分光線束を互いに対して直交に偏光させる幾何学的位相格子として形成され得る。
さらに、第2のスケールの測定目盛はリトロー格子として形成でき、したがって、
- そこに入射してくる部分光線束が、入射方向とは反対側に後方反射されるか、
- または第2の測定目盛への法線と、第1の測定目盛の回折方向とによって規定される平面内に射影された部分光線束が、入射方向とは反対側に後方反射される。
【0015】
第1および第2のスケールの長手方向が互いに対して直交に方向づけられていることが有利である。
可能な一実施形態では、
- 第1のスケールがその長手方向に沿って、第1のスケールの、対応する測定方向に沿った変位距離に相応する長さを有しており、かつ
- 第2のスケールがその長手方向に沿って、第1のスケールの、対応する測定方向に沿った変位距離に相応する長さを有していることが企図される。
【0016】
その代わりに、
- 第1のスケールがその長手方向に沿って、第2のスケールの、対応する測定方向に沿った変位距離に相応する長さを有しており、かつ
- 第2のスケールがその長手方向に沿って、第2のスケールの、対応する測定方向に沿った変位距離に相応する長さを有し得る。
【0017】
光源および検出ユニットは、一緒に走査ヘッド内に配置されることが企図され得る。
これに関し、
- 走査ヘッドが第2のスケールと結合されており、かつ
- 第1のスケールが、第1、第2、および第3の測定方向に沿って、走査ヘッドに対して相対的に移動可能に配置されており、かつ
- 第2のスケールがその長手方向を中心として、水平移動平面に対して傾斜して配置されていることができる。
【0018】
さらにこれに関しては、信号光線束が、照明光線束に対して逆平行に方向づけられ得る。
さらなる一実施形態では、
- 走査ヘッドが、第1のスケールとも第2のスケールとも結合されておらず、かつ第1の測定方向に沿って、第1のスケールに対して移動可能に配置されており、かつ
- 第2のスケールが、第2および第3の測定方向に沿って、第1のスケールに対して相対的に移動可能に配置されていることが企図され得る。
【0019】
さらに、
- 走査ヘッドが第1のスケールと結合されており、かつ
- 第2のスケールが、第1、第2、および第3の測定方向(x、y、z)に沿って、走査ヘッドに対して相対的に移動可能に配置されていることができる。
【0020】
その代わりにさらに、
- 走査ヘッドが、第1のスケールとも第2のスケールとも結合されておらず、かつ第1の測定方向に沿って、第2のスケールに対して移動可能に配置されており、かつ
- 第1のスケールが、第2および第3の測定方向に沿って、第2のスケールに対して相対的に移動可能に配置されていることが企図され得る。
【0021】
最後に、4つの本発明による位置測定機構を備えた製作機構を形成でき、
- 製作機構は工具およびテーブルを含んでおり、テーブルは、3つの測定方向に沿って、工具に対して移動可能に配置されており、かつ
- 位置測定機構の走査ヘッドおよび第2のスケールがそれぞれ工具と結合されており、かつ
- 位置測定機構の第1のスケールがそれぞれテーブルと結合されており、
- これにより、位置測定機構の走査信号から、工具に対するテーブルの空間的位置が、6つすべての空間的自由度において決定可能である。
【0022】
これで本発明による措置を通して、交差するスケールを備えた光学式位置測定機構において、両方のスケールに垂直に方向づけられたさらなる測定方向に沿った高精度の位置測定も行われ得る。これにより、例えば半導体製造のための製作機構内でのテーブルの移動が、6つすべての移動自由度において、測定技術的に測定され得る。
【0023】
有利な一実施形態ではこれに加え、位置測定が、光波長のことによると生じる変動に依存せず、この変動は、例えば変化する空気温度または空気湿度によって引き起こされ得る。これにより、使用すべき光源への、干渉性およびドリフト挙動に関する要求が下がり、つまり安価な光源の使用が可能である。
【0024】
それだけでなく、移動可能な物体上の、例えば製作機構のテーブル上の位置測定機構の必要なコンポーネントの数および質量が少なく保たれ得る。これにより、相応の機構の複雑さの度合いがより低くなる。
【0025】
本発明のさらなる詳細および利点を、図と関連させて、本発明による装置の例示的実施形態の以下の説明に基づいて解説する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1aは本発明による光学式位置測定機構の第1の例示的実施形態の、走査光線経路を有する概略断面図である。図1bは本発明による光学式位置測定機構の第1の例示的実施形態の、走査光線経路を有する概略断面図である。
図2図2aは本発明による光学式位置測定機構の第1の例示的実施形態におけるスケールの、両方の使用される測定目盛の平面図である。図2bは本発明による光学式位置測定機構の第1の例示的実施形態におけるスケールの、両方の使用される測定目盛の平面図である。
図3】本発明による光学式位置測定機構の第1の例示的実施形態からの走査ヘッドの概略図である。
図4図4aは本発明による光学式位置測定機構の第2の例示的実施形態の、走査光線経路を有する概略断面図である。図4bは本発明による光学式位置測定機構の第2の例示的実施形態の、走査光線経路を有する概略断面図である。
図5図5aは本発明による位置測定機構の第2の例示的実施形態におけるスケールの、両方の使用される測定目盛の平面図である。図5bは本発明による位置測定機構の第2の例示的実施形態におけるスケールの、両方の使用される測定目盛の平面図である。
図6図6aは本発明による光学式位置測定機構の第3の例示的実施形態の、走査光線経路を有する概略断面図である。図6bは本発明による光学式位置測定機構の第3の例示的実施形態の、走査光線経路を有する概略断面図である。
図7図7aは本発明による光学式位置測定機構の第4の例示的実施形態の、走査光線経路を有する概略断面図である。図7bは本発明による光学式位置測定機構の第4の例示的実施形態の、走査光線経路を有する概略断面図である。
図8】複数の本発明による位置測定機構を備えた製作機構の非常に概略化した平面図である。
図9図9aは本発明による光学式位置測定機構のさらなる1つの例示的実施形態の、部分走査光線経路を有する概略断面図である。図9bは本発明による光学式位置測定機構のさらなる1つの例示的実施形態の、部分走査光線経路を有する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、本発明の光学式位置測定機構の具体的な例示的実施形態および複数のこのような位置測定機構を備えた製作機構を説明する前に、最初に図9a、図9bに基づいて本発明と関連する基礎的な理論的考察を解説する。
【0028】
両方の図9a、図9bは、交差して配置された2つのスケール(目盛り)M1、M2を備えた本発明による光学式位置測定機構の走査光線経路の部分の異なる断面図を示している。スケールM1、M2は、異なる平面内で複数の測定方向x、y、zに沿って互いに対して移動可能に配置されている。スケールM1、M2の相対位置は、位置測定機構により、少なくとも2つの異なる測定方向x、y、zに沿って測定される。実際には、両方のスケールM1、M2に、互いに対して移動可能な物体が結合されており、この物体の相対位置、例えば相応の機械コンポーネントに対する相対位置が、複数の空間的自由度においてお互いに決定されることになる。図ではこれらの物体は示していない。本発明による位置測定機構によって生成された走査信号により、後置された機械制御部が、相応の機械コンポーネントを適切に位置決めできる。
【0029】
両方のスケールM1、M2はそれぞれ、測定目盛、つまり異なる光学特性をもつ周期的に配置された格子領域を有する格子を備えており、この測定目盛は見やすくする理由から図9a、図9bでは示していない。スケールM1およびM2の長手方向は、第2および第1の測定方向y、xに平行であり、この第1および第2の測定方向x、yにより、水平移動平面が規定されている。第1および第2の測定方向x、yに垂直または鉛直に、第3の測定方向zが方向づけられている。
【0030】
第1のスケールM2では、不図示の光源から放出された照明光線束Bの、少なくとも2つの部分光線束への分割が行われる。部分光線束はその後、第2のスケールM1にぶつかり、この第2のスケールM1は、ここではy方向に方向づけられたその長手方向を中心として、水平移動平面に対して傾斜して配置されている。これに関し部分光線束は、第2のスケールM1では第1のスケールM2の方向に後方反射される。後方反射された部分光線束は改めて第1のスケールM2に衝突し、そこで再統合され、続いてこれにより結果として生じる信号光線束Sが、同様に不図示の検出ユニットの方向に伝播する。この検出ユニットを介し、第3の測定方向zおよび第1または第2の測定方向x、yに沿ったスケールM1、M2の相対移動に関する複数の移相された(又は、位相ずれした)走査信号が生成可能である。
【0031】
したがってこのような光学式位置測定機構により、その上に測定目盛が配置された両方のスケールM1、M2の間の相対的な位置変化が測定される。水平なxy移動平面内でのできるだけ大きな可動範囲を実現し得るには、第1のスケールM2がこの平面内で拡張されなければならない。収色性の、つまり波長に依存しない位置測定を保証するには、分割と再統合の間の両方の部分光線束の走査光線経路が、同じ光路長を有する必要がある。
【0032】
分割された部分光線束が衝突する第2のスケールM1が、図9a、図9bに示しているように、その長手方向yを中心として傾斜して配置されている場合、水平移動平面内の測定方向を自由に選択でき、同時に、鉛直な測定方向zに沿った相対移動に関する測定感度が保証される。つまり、生成された走査信号は、水平移動平面内の1つの測定方向xまたはyに沿った相対移動についての情報と共に、第3の測定方向zに沿った相対移動に関する情報も内包している。さらにこれに関し、両方の分割された部分光線束の間の角の二等分線が、法線
【0033】
【数1】
【0034】
として、両方の分割された部分光線束が衝突するスケール平面に垂直に方向づけられている場合、両方の部分光線束の同一経路長が保証され、かつ走査は収色性であり、つまりことによると生じる波長変動の影響を受けない。これを以下に示す。
【0035】
光線束が光学回折格子で回折されると、光線束が方向変化
【0036】
【数2】
【0037】
を、格子の位相の勾配
【0038】
【数3】
【0039】
に比例して起こす。
【0040】
【数4】
【0041】
式中、mは格子の回折次数を示している。
第1の直線格子が第2の格子に対してx方向に値
【0042】
【数5】
【0043】
の分だけ相対的に変位すると、第1の格子における部分光線束の位置位相Φが
【0044】
【数6】
【0045】
の分だけ変化する。
これを基に、第2の格子が変位値
【0046】
【数7】
【0047】
の分だけ変位すると、位置測定機構の位置位相Φが
【0048】
【数8】
【0049】
の分だけ変化することが明らかになる。この関係式において、それぞれの最初の添え字は、図9a、図9bによる第1または第2の回折枝(Beugungsast)L1、L2を示しており、添え字lは、それぞれの回折された部分光線束の格子接触を意味する。
【0050】
これによりまた、ΔΦ≠0が当てはまることになり、したがって
【0051】
【数9】
【0052】
および
【0053】
【数10】
【0054】
が満たされている場合には、方向zに沿った位置変化に対する感度が存在している。
したがって格子ベースの位置測定機構が方向zに沿った感度を有するには、信号生成に利用される格子の少なくとも1つが、xy平面に対して傾斜して配置されなければならない。
【0055】
収色性の位置測定とは、基本的に、1次での位置位相Φの形態での測定結果が、光の波長λに依存しない位置測定のことであり、すなわち
【0056】
【数11】
【0057】
したがって本発明による走査が波長に依存しないためには、分割と再統合の間の両方の部分光線束が、光路長差ΔΛを有さないことが不可欠であり、これに関し光路長差は、
ΔΛ=Λ2-Λ1
により明らかになり、式中、Λ1:=第1の部分光線束の光路長、Λ2:=第2の部分光線束の光路長である。
【0058】
以下では、図9a、図9bに示した走査に関してこの条件が満たされていることが、つまりそこでは両方の部分光線束の光路長が分割と再統合の間で同一であることが示される。
【0059】
図9a、図9bにより、分割と再統合の間の両方の部分光線束の経路長差ΔΛは、
ΔΛ=2・(L2-L1)
によって与えられる。式中、L1およびL2は、第1のスケールM2上の分割点P0と第2のスケールM1上の衝突点P11またはP12との間の部分光線束の長さを意味する。
【0060】
図9aではL0で、両方の点P0とPsの結合線を表している。これに関しP0は分割点を、およびPsは両方の部分光線束の角の二等分線と第2のスケールM1の表面との交点を示している。
【0061】
これにより角の二等分線が、両方の衝突点P11とP12の結合線上に垂直に立っている場合、部分光線束の長さL1とL2が同じ長さであり、したがって経路長鎖ΔΛ=0であることが分かる。そういうわけでこの場合にのみ、
L1=L0/cos(α1)=L2=L0/cos(α2) 式中α1=α2
が当てはまり、ここでは、α1で、角の二等分線に対する第1の回折枝L1の角度が、およびα2で、角の二等分線に対する第2の回折枝L2の角度が表されている。
【0062】
以下に、図1a、図1b、図2a、図2b、および図3に基づいて、本発明による光学式位置測定機構の第1の例示的実施形態を解説する。これに関し図1a、図1bは、走査光線経路を有する異なる断面図を、図2a、図2bは、使用されるスケールの測定目盛の平面図を、および図3は、この位置測定機構の走査ヘッドの図を示している。
【0063】
本発明による光学式位置測定機構のこの例示的実施形態により、波長に依存しない走査が実現でき、この場合、両方のスケール10、20または-概略的に示された-それと結合した機械コンポーネント1、2の、測定方向yおよびzに沿った相対移動が、測定技術的に測定可能である。
【0064】
以下に、図ではxで表された方向を第1の測定方向、およびこれに対して直交する方向yを第2の測定方向と呼ぶ。ここでは、測定方向x、yにより、水平移動平面が規定されており、この移動平面内でまたはこれに対して平行に、第1のスケール20が移動可能に配置されている。第1および第2の測定方向x、yに垂直にまたは水平移動平面に直交して、鉛直な方向zが方向づけられており、この方向zを以下に第3の測定方向zと呼ぶ。第1のスケール20はこの方向に沿っても移動可能に配置されている。
【0065】
ここで、本願で使用される名称、水平、鉛直、第1の、第2の、および第3の測定方向ならびに上および下は、言うまでもなく決して制限的に理解されるべきではないことを指摘しておく。
【0066】
第1のスケール20はこの例示的実施形態では、したがって3つの測定方向x、y、zに沿って、固定の走査ヘッド30に対して移動可能に配置されており、走査ヘッド30のほうは第2のスケール10と結合されている。走査ヘッド30は光源および検出ユニットを含んでおり、これに関する詳細は図1a、図1bでは示していない。走査ヘッド30のさらなる細部は、この説明がさらに進んだところで図3に基づいて解説する。
【0067】
第1のスケール20の長手方向は、図示した例では第2の測定方向yに平行に方向づけられており、第2のスケール10の長手方向は、第1の測定方向xに平行に方向づけられている。したがって両方のスケール10、20の長手方向は互いに対して直交に方向づけられている。
【0068】
第1のスケール20はその長手方向yに沿って、第1のスケール20の関連する測定方向yに沿った変位距離に相応する長さを有している。第2のスケール10はその長手方向xに沿って、第1のスケール20の関連する測定方向xに沿った変位距離に相応する長さを有している。
【0069】
さらに図1aおよび図1bから明らかなように、第2のスケール10は、ここではx方向に延びるその長手方向を中心として、第1および第2の測定方向x、yによって規定される水平移動平面に対して傾斜して配置されている。第2のスケール10につけられた傾斜に関しては、この例示的実施形態のさらなる説明を参照されたい。
【0070】
この第1の例示的実施形態ではそれだけでなく、さらなる例示的実施形態の説明からもっと明らかになるように、第1のスケール20もそのy方向での長手方向を中心として、水平移動平面に対して傾斜して配置されている。しかしながらこれは本発明の本質的な構成ではない。
【0071】
図1aおよび図1bでは、スケール10、20上に設けられた測定目盛は示しておらず、これらの測定目盛はそれぞれ、異なる光学特性をもつ周期的に配置された格子領域から成っている。相応の測定目盛21、11を備えた両方のスケール20、10の平面図を図2aおよび図2bに示している。スケール20、10上の測定目盛21、11として、この例示的実施形態では、異なる移相(位相シフト)作用をもつ周期的に配置された格子領域21a、21bまたは11a、11bを有する反射型位相格子が設けられている。
【0072】
スケール20、10はそれぞれ支持体22、12を含んでおり、この支持体22、12上に測定目盛21、11が配置されている。この支持体22、12は熱膨張係数CTE≒0の材料から、例えばゼロデュアのようなガラスセラミックスから形成されることが好ましい。
【0073】
支持体上に配置された測定目盛11、21は多層構造を有している。この多層構造は、例えば支持体12、22上に配置された金属のまたは誘電性のミラー層と、移相層と、構造化された反射層とから成り得る。
【0074】
第1のスケール20の場合には、格子領域21a、21bを有する図2aに示した測定目盛21が、いわゆる十字格子として形成されている。この十字格子は、この例示的実施形態では2つの直線格子の重畳から結果として生じている。この場合、これらの直線格子の第1の直線格子は、y方向での回折作用を有しており、第2の直線格子は、y方向での回折作用を、ただし第1の直線格子より低い強度で有しており、さらに第2の直線格子はx方向での回折成分を有している。図2aの表示は、両方の直線格子の重畳から結果として生じる十字格子の2値化バージョンを示している。
【0075】
第2のスケール10では、測定目盛11の格子領域11a、11bは、図2bでのxy平面への射影図により、長手方向xに垂直に周期的に、したがって第2の測定方向yに沿って周期的に配置されている。第2のスケール10の測定目盛11は、この例示的実施形態ではいわゆるリトロー格子として形成されており、したがってそこに入射してくる光線束は、入射方向とは反対側に後方反射される。これに関してはその代わりに、第1のスケールで分割された部分光線束によって規定される平面内に射影された部分光線束が、入射方向とは反対側に後方反射されてもよい。
【0076】
以下に、本発明による光学式位置測定機構の第1の例示的実施形態の走査光線経路を解説する。
点P0で走査ヘッド30内の光源から第1の測定方向xに平行に放出された照明光線束Bは、点P1で第1のスケール20に衝突し、そこでは第1の測定目盛21を介し、少なくとも2つの部分光線束または回折次数への分割が行われる。相応の分割は、第1の測定目盛21において、例えばy方向だけの回折作用をもつ第1の直線格子の第1の回折次数への回折ならびにyおよびx方向への組み合わされた回折作用をもつ第2の直線格子における第1の回折次数への回折を介して行うことができる。このように分割された部分光線束はその後、法線
【0077】
【数12】
【0078】
に対して同一の角度α1またはα2で伝播し、かつxz射影(図1b)内での光線交差なしで、傾斜して配置された第2のスケール10の表面へと、第2のスケール10の方向に伝播する。言い換えれば、第1のスケール20で分割された部分光線束によって規定される平面内で、分割された部分光線束の間の角の二等分線が、部分光線束の、第2のスケール10での衝突点P21、P22間の結合線に垂直である。よって衝突点P21、P22では、部分光線束が第2のスケール10または第2の測定目盛11にぶつかる。衝突点P21、P22から部分光線束は、第2のスケール10のリトロー格子として形成された測定目盛11を介し、入射方向とは反対側に第1のスケール20へと後方反射され、続いて第1のスケール20上の点P3で再統合される。その後、この再統合または重畳された部分光線束による、結果として生じた信号光線束Sが、照明光線束Bに対して逆平行(照明光線束Bに平行であるが、照明光線束Bとは反対方向)に走査ヘッド30の方向に伝播し、点P4で、そこに配置された検出ユニットに衝突する。検出ユニットを介しおよび信号光線束の捕捉を介し、第2の測定方向yおよび第3の測定方向zに沿ったスケール10、20の相対移動に関する複数の移相された走査信号が生成可能である。
【0079】
検出ユニットを介した走査信号の生成に関しては、図3での走査ヘッド30の概略図を参照されたい。照明光線束Bを生成するための光源31.1および前置されたコリメーション光学系31.2を備えた照明ユニット31に隣接して、走査ヘッド30内には検出ユニット32が配置されており、検出ユニット32は、信号光線束Sから複数の移相された走査信号を生成するために用いられる。このために検出ユニット32は、例えば格子として形成された分割素子32.3を含んでおり、分割素子32.3は、入射してくる信号光線束Sを3つの部分光線束に分割し、これらの部分光線束はその後、それぞれ偏光子32.2a~32.2cの方向に、その後は相応の偏光子32.2a~32.2cに後置された検出素子32.1a~32.1cへと伝播する。検出要素32.1a~32.1cによりこれらの部分光線束が、3つの移相された周期的な走査信号に、例えば3つの互いに対して120°位相がずれた走査信号に変換され、走査信号はその後、後置された機械制御部により、既知のやり方でさらに処理され得る。
【0080】
本発明による光学式位置測定機構の第1の例示的実施形態の解説した走査光線経路は、上で言及したように、第2の測定方向yおよび第3の測定方向zに沿った第2のスケール10の相対変位に対して感度のある走査信号を供給する。これは図1aで、いわゆる感度ベクトル
【0081】
【数13】
【0082】
によって示されており、この感度ベクトルは、格子ベースの光学式位置測定機構が、どの測定方向に沿った位置変化に対して感度があるかを提示している。図から明らかなように、感度ベクトル
【0083】
【数14】
【0084】
は、ここではy方向の成分もz方向の成分も有しており、よってつまりこの相応の位置測定機構は、これらの測定方向での位置変化に対して感度がある。
2つの測定方向yおよびzに沿った位置測定の所望の感度と共に、本発明による光学式位置測定機構の解説した第1の例示的実施形態は、位置測定の波長非依存性も保証している。これは、第1のスケール20で分割された部分光線束によって規定される平面内で、分割された部分光線束の間の角の二等分線が、部分光線束の、第2のスケール10での衝突点P21、P22間の結合線上に垂直に立っているような、第2のスケール10の適切な傾斜によって保証されている。
【0085】
第1の例示的実施形態の一変形形態では、さらにビームスプリッタ素子が、図3により走査ヘッド30に組み込まれて配置され得る。第1のスケール20から走査ヘッド30の方向に伝播する信号光線束Sが、放出された照明光線束Bの点P0から空間的に分離した点P4で検出ユニットに衝突するのを、ビームスプリッタ素子を介して保証することができる。
【0086】
さらに、スケールの一方が、そこに入射してくる光線束への偏光作用をもつ測定目盛を有することができ、したがってこの測定目盛を介して回折された部分光線束では、異なる偏光状態が結果として生じる。このために測定目盛の一方を幾何学的位相格子として形成することができ、この幾何学的位相格子は、それによって回折された部分光線束の、互いに対して直交する偏光を引き起こす。
【0087】
以下に、本発明による光学式位置測定機構の第2の例示的実施形態を、図4a、図4bならびに図5aおよび図5bに基づいて解説する。これらの図は第1の例示的実施形態に倣って、走査光線経路を解説するための概略断面図および使用されるスケールの平面図またはxy平面内への相応の射影図を示している。
【0088】
本発明による光学式位置測定機構のこの例示的実施形態により、両方のスケール110、120または-ここでも概略的に示された-それと結合した機械コンポーネント101、102の、測定方向xおよびzに沿った相対移動が測定技術的に測定可能な、波長に依存しない走査が実現され得る。
【0089】
この例では、図ではxで示された方向を第1の測定方向、およびこれに対して直交する方向を方向yと呼び、この測定方向xおよび方向yにより、水平移動平面が規定されている。この移動平面内でまたはこれに対して平行に、ここでは第2のスケール110が方向yに沿って移動可能に配置されている。第2のスケール110はさらに、ここでも両方の別の方向x、yに垂直に方向づけられた第3の測定方向zに沿っても移動可能に配置されている。
【0090】
第1のスケール120は、固定の機械コンポーネント102と結合されている。前の例示的実施形態とは違い、走査ヘッド130は、ここでは第1の測定方向xに沿って移動可能なさらなる機械コンポーネント103と結合されている。走査ヘッド130の構造および機能に関しては、前の例を参照されたい。
【0091】
第1のスケール120の長手方向は、この例示的実施形態では第1の測定方向xに平行に方向づけられており、第2のスケール110の長手方向は、第2の方向yに平行に方向づけられている。両方のスケール110、120の長手方向はここでも互いに対して直交に方向づけられている。
【0092】
この例示的実施形態では、第1のスケール120はその長手方向xに沿って、第2のスケール110の対応する測定方向xに沿った変位距離に相応する長さを有している。第2のスケール110はその長手方向yに沿って、第2のスケール110の、対応する測定方向yに沿った変位距離に相応する長さを有している。
【0093】
図4aから明らかなように、走査光線経路内の第2のスケール110はこの例示的実施形態でも、第2のスケール110のy方向での長手方向を中心として、第1のスケール120と、第1の測定方向xおよび方向yによって規定される水平移動平面とに対して傾斜して配置されている。第2のスケール110の傾斜に関しては、前の例示的実施形態についての解説を参照されたい。
【0094】
相応の測定目盛121を備えた第1のスケール120の平面図が図5aに示されており、図5bでは前出の例に倣って、その測定目盛111を備えた第2のスケール110の射影がxy平面への射影において図示されている。スケール120、110上の測定目盛121、111として、この例示的実施形態でもそれぞれ、異なる移相作用をもつ周期的に配置された格子領域121a、121bまたは111a、111bを有する反射型位相格子が設けられている。
【0095】
スケール120、110はここでもそれぞれ支持体122、112を含んでおり、この支持体122、112上に、測定目盛121、111が配置されており、この測定目盛121、111は基本的に第1の例示的実施形態でのように形成され得る。支持体122、112は、この例でも熱膨張係数CTE≒0の材料から形成されることが好ましい。
【0096】
第1のスケール120上では、図5aから明らかなように、測定目盛121の格子領域121a、121bが、このスケール120の長手方向xに沿って周期的に配置されている。第2のスケール110では、測定目盛111の格子領域111a、111bが、図5bにより、長手方向yに垂直に周期的に、したがって第1の測定方向xに沿って周期的に配置されている。
【0097】
第2のスケール110の測定目盛111は、この例示的実施形態でもリトロー格子として形成されており、したがってそこに入射してくる光線束は、入射方向とは反対側に後方反射される。
【0098】
第2のスケール110の測定目盛111の目盛周期TPG2の適切な選択を通して、ここでは、そこに入射してくる部分光線束の回折および後方反射の際に、y方向の光線方向成分が変化しないことが保証されている。このために、目盛周期TPG2は下記のように選択される。
【0099】
TPG2=TPG1・(cosβ)/2
式中、TPG1は、第1のスケール120上の測定目盛121の目盛周期を、およびβは、図4aによる、第2のスケール110が水平に対して傾斜して配置されている角度を示している。
【0100】
以下に、本発明による光学式位置測定機構の第2の例示的実施形態の走査光線経路を解説する。
点P0で走査ヘッド130内の光源から放出された照明光線束Bは、点P1で第1のスケール120またはその上に配置された測定目盛121に衝突し、その際、ここでは第1の例示的実施形態とは違い、第1のスケール120が斜めに照明される。第1の測定目盛121を介し、第1の例示的実施形態に倣って照明光線束Bの、少なくとも2つの部分光線束または回折次数への分割が行われる。分割された部分光線束はその後、図4aによるxz射影平面内で法線
【0101】
【数15】
【0102】
に対して同一の角度α1またはα2で伝播し、傾斜して配置された第2のスケール110の表面へと、第2のスケール110の方向に伝播する。その後、部分光線束は衝突点P21、P22で第2のスケール110または第2の測定目盛111にぶつかる。衝突点P21、P22から部分光線束は、第2のスケール110のリトロー格子として形成された測定目盛111を介し、xz射影平面内で入射方向とは反対側に第1のスケール120の方向に後方反射され、続いて第1のスケール120上の点P3で再統合される。その後、この再統合または重畳された部分光線束による、結果として生じた信号光線束Sが、照明光線束Bに対して逆平行に走査ヘッド130の方向に伝播し、点P4で、そこに配置された検出ユニットに衝突する。検出ユニットを介しおよび信号光線束の捕捉を介し、第1の測定方向xおよび第3の測定方向zに沿ったスケール110、120の相対移動に関する複数の移相された走査信号が生成可能である。
【0103】
これは図4aでも、本発明による光学式位置測定機構のこの例示的実施形態の感度ベクトル
【0104】
【数16】
【0105】
によって示されている。図から明らかなように、感度ベクトル
【0106】
【数17】
【0107】
は、ここではx方向の成分もz方向の成分も有している。
両方の測定方向xおよびzに沿った位置測定の所望の感度と共に、本発明による光学式位置測定機構のこの例示的実施形態も、位置測定の波長非依存性を保証している。これは、第1の例示的実施形態に倣ってここでも、走査光線経路内の第2のスケール110の適切な傾斜によって保証されている。
【0108】
これに加え、この例示的実施形態では部分光線束が測定方向xに垂直にずらされることに基づき、ここでは、第1のスケール120から走査ヘッド130の方向に伝播する信号光線束Sが、放出された照明光線束Bの点から空間的に分離した点で検出ユニットに衝突するのを保証するビームスプリッタ素子は必要ない。
【0109】
以下に、本発明による光学式位置測定機構の第3の例示的実施形態を、図6aおよび図6bに基づいて解説する。これらの図は、両方の別の例示的実施形態に倣って、走査光線経路を解説するための概略断面図を示している。
【0110】
本発明による光学式位置測定機構のこの例示的実施形態も、波長に依存しない走査を保証しており、これにより、両方のスケール210、220またはそれと結合した機械コンポーネント201、202の、測定方向xおよびzに沿った相対移動が、測定技術的に測定される。
【0111】
以下に、図ではxで表された方向を第1の測定方向、およびこれに対して直交する方向yを第2の測定方向と呼び、ここでも測定方向x、yにより、水平移動平面が規定されている。この移動平面内でまたはこれに対して平行に、ここでは第2のスケール210が第1および第2の測定方向x、yに沿って移動可能に配置されている。第2のスケール210はさらに、ここでも両方の別の測定方向x、yに垂直に方向づけられた第3の測定方向zに沿っても移動可能に配置されている。
【0112】
第1のスケール220は、第2のスケール210に対し、固定の機械コンポーネント202と結合されている。この例示的実施形態では、固定の第1のスケール220と走査ヘッド230も結合されている。走査ヘッド230の構造および機能に関しては、上で解説した第1の例示的実施形態を参照されたい。
【0113】
第1のスケール220の長手方向は、この例示的実施形態では第1の測定方向xに平行に方向づけられており、第2のスケール210の長手方向は、第2の測定方向yに平行に方向づけられている。これにより、両方のスケール210、220の長手方向はここでも互いに対して直交に方向づけられている。
【0114】
この例では、第1のスケール220はその長手方向xに沿って、第2のスケール210の対応する測定方向xに沿った変位距離に相応する長さを有している。第2のスケール210はその長手方向yに沿って、第2のスケール210の対応する測定方向yに沿った変位距離に相応する長さを有している。
【0115】
図6aにより、第2のスケール210はこの例示的実施形態でも、y方向でのその長手方向を中心として、第1のスケール220と、第1および第2の測定方向x、yによって規定される水平移動平面とに対して傾斜して配置されている。第2のスケール210の傾斜に関しては、第1の例示的実施形態の説明を参照されたい。
【0116】
第3の例示的実施形態で使用されるスケール210、220および測定目盛は、第2の例示的実施形態からの、図5aおよび図5bに示した測定目盛に相応しており、これをもって図5aおよび図5bを参照するよう明示的に指示する。
【0117】
以下に、本発明による光学式位置測定機構の第3の例示的実施形態の走査光線経路を解説する。
点P0で走査ヘッド230内の光源から放出された照明光線束Bは、点P1で第2のスケール210に配置された反射領域215に衝突し、反射領域215では、照明光線束が第1のスケール220の方向に偏向される。その後、点P2で照明光線束Bは第1のスケール220に衝突し、そこでは第1の測定目盛を介し、前の例示的実施形態に倣って少なくとも2つの部分光線束または回折次数への分割が行われる。分割された部分光線束はその後、図6aにより、法線
【0118】
【数18】
【0119】
に対して同一の角度α1またはα2で伝播し、傾斜して配置された第2のスケール210の表面へと、第2のスケール210の方向に伝播する。その後、部分光線束は衝突点P31、P32で第2のスケール210または第2の測定目盛にぶつかる。衝突点P31、P32から部分光線束は、第2のスケール210のリトロー格子として形成された測定目盛を介し、xz射影平面内で入射方向とは反対側に第1のスケール220の方向に後方反射され、続いて第1のスケール220上の点P4で再統合される。その後、この再統合または重畳された部分光線束による、結果として生じた信号光線束Sが、照明光線束Bに対して逆平行に、第2のスケール210での反射領域215を介して伝播し、そこでは点P5に衝突する。点P5では走査ヘッド230の方向への偏向が結果として生じ、走査ヘッド230では信号光線束Sが点P6で、そこに配置された検出ユニットに衝突する。その後、検出ユニットを介しおよび信号光線束Sの捕捉を介し、第1の測定方向xおよび第3の測定方向zに沿ったスケール210、220の相対移動に関する複数の移相された走査信号が生成可能である。
【0120】
図6aでは、感度ベクトル
【0121】
【数19】
【0122】
が示されており、この感度ベクトルから、本発明による光学式位置測定機構のこの例示的実施形態が、どの測定方向に沿った位置変化に対して感度があるかが分かる。図6aによれば、感度ベクトル
【0123】
【数20】
【0124】
は、ここではx方向の成分もz方向の成分も有している。
2つの測定方向xおよびzに沿った位置測定の所望の感度と共に、本発明による光学式位置測定機構のこの例示的実施形態も、位置測定の波長非依存性を保証している。これは、第1の例示的実施形態に倣ってここでも、第2のスケール210の適切な傾斜によって保証されている。
【0125】
続いて、本発明による光学式位置測定機構の第4の例示的実施形態を、走査光線経路を解説するための概略断面図を別の例示的実施形態に倣って示す図7aおよび図7bに基づいて解説する。
【0126】
本発明による光学式位置測定機構のこの例示的実施形態でも、波長に依存しない走査が保証されている。これにより、両方のスケール310、320またはそれと結合した機械コンポーネント301、302の、測定方向yおよびzに沿った相対移動が、測定技術的に測定される。
【0127】
ここでも以下に、図ではxで表された方向を第1の測定方向、およびこれに対して直交する方向yを第2の測定方向と呼び、この測定方向x、yにより、ここでも水平移動平面が規定されている。この移動平面内でまたはこれに対して平行に、この例示的実施形態では機械コンポーネント303と結合された走査ヘッド330が、第1の測定方向xに沿って移動可能に配置されており、この場合、走査ヘッド330は、測定方向xに沿って移動可能な機械コンポーネント303に配置されている。したがってこの例示的実施形態では、走査ヘッド330は、第1のスケール320とも第2のスケール310とも結合されていない。走査ヘッド330の構造および機能に関しては、上で解説した第1の例示的実施形態を参照されたい。
【0128】
第1のスケール320は、第2のスケール310に対して移動可能に、機械コンポーネント302に配置されており、ここでは第1のスケール320が第2の測定方向yに沿って移動可能である。第2のスケール310は、固定の機械コンポーネント301と結合されている。
【0129】
第1のスケール320の長手方向は、この例示的実施形態では第2の測定方向yに平行に方向づけられており、第2のスケール310の長手方向は、第1の測定方向xに平行に方向づけられている。したがって両方のスケール310、320の長手方向はここでも互いに対して直交に方向づけられている。
【0130】
この例示的実施形態では、第1のスケール320はその長手方向yに沿って、第1のスケール320の対応する測定方向yに沿った変位距離に相応する長さを有している。第2のスケール310はその長手方向xに沿って、第1のスケール320の対応する測定方向xに沿った変位距離に相応する長さを有している。
【0131】
図7aにより、第2のスケール310はこの例示的実施形態では、そのx方向での長手方向を中心として、第1のスケール320と、第1および第2の測定方向x、yによって規定される水平移動平面とに対して傾斜して配置されている。第2のスケール310の傾斜に関しては、第1の例示的実施形態の説明を参照されたい。
【0132】
第4の例示的実施形態で使用されるスケール310、320および測定目盛は、第1の解説した例示的実施形態と同一に形成されている。
以下に、本発明による光学式位置測定機構の第4の例示的実施形態の走査光線経路を解説する。
【0133】
点P0で走査ヘッド330内の光源から第1の測定方向xに平行に放出された照明光線束Bは、点P1で第1のスケール320に衝突し、そこでは第1の測定目盛を介し、照明光線束Bの、少なくとも2つの部分光線束または回折次数への分割が行われる。分割された部分光線束はその後、法線
【0134】
【数21】
【0135】
に対して同一の角度α1またはα2で伝播し、傾斜して配置された第2のスケール310の表面へと、第2のスケール310の方向に伝播する。その後、部分光線束は衝突点P21、P22で第2のスケール310またはその上に配置された第2の測定目盛にぶつかる。衝突点P21、P22から部分光線束は、第2のスケール310のリトロー格子として形成された測定目盛を介し、再び入射方向とは反対側に第1のスケール320の方向に後方反射され、続いて第1のスケール320上の点P3で再統合される。その後、この再統合または重畳された部分光線束による、結果として生じた信号光線束Sが、照明光線束Bに対して逆平行に走査ヘッド330の方向に伝播し、点P4で、そこに配置された検出ユニットに衝突する。検出ユニットを介しおよび信号光線束の捕捉を介し、第2の測定方向yおよび第3の測定方向zに沿ったスケール310、320の相対移動に関する複数の移相された走査信号が生成可能である。
【0136】
図7aでも感度ベクトル
【0137】
【数22】
【0138】
が示されており、この感度ベクトルから、本発明による光学式位置測定機構のこの例示的実施形態が、どの測定方向に沿った位置変化に対して感度があるかが分かる。図7aによれば、感度ベクトル
【0139】
【数23】
【0140】
は、ここではy方向の成分もz方向の成分も有している。
2つの測定方向yおよびzに沿った位置測定の所望の感度と共に、本発明による光学式位置測定機構のこの例示的実施形態も、位置測定の波長非依存性を保証している。これは、第1の例示的実施形態に倣ってここでも、第2のスケール310の適切な傾斜によって保証されている。
【0141】
したがって、本発明による光学式位置測定機構の上で解説した例示的実施形態は、それぞれ一方では、第1の測定方向xまたは第2の測定方向yに関する変位情報を供給し、この両方の測定方向x、yはそれぞれ、水平移動平面内で互いに対して直交に方向づけられている。それに加えてそれぞれの位置測定機構の感度は、直交する移動平面に垂直に方向づけられた第3の測定方向zに沿った位置変化のためにそれぞれ実現されている。つまり、もう一方ではさらに第3の測定方向zに関する変位情報が提供される。したがって、解説した位置測定機構の各々により、互いに対して移動可能な2つの物体のそれぞれ2つの直線的で空間的な移動自由度が、測定技術的に測定され得る。それだけでなく、複数の本発明による位置測定機構を適切に組み合わせることで、空間内の互いに対して移動可能な2つの物体の6つすべての可能な移動自由度を測定技術的に測定でき、これは、測定方向x、y、zに沿った並進移動および測定方向x、y、zを中心とした回転移動である。以下に、図8での非常に概略化した表示に基づいて例示的に概要を述べるが、図8では、例えば製作機構の場合に、4つの本発明による位置測定機構を使って、テーブルWに対する工具Tの相対位置が、6つすべての空間的な移動自由度において測定可能である。この製作機構は例えば、テーブルW上に配置された半導体ウエハが、露光光学系として形成された工具Tに対して位置決めされるフォトリソグラフィシステムであり得る。
【0142】
図示した製作機構では、全部で4つの上で解説した第1の例示的実施形態による位置測定機構が設けられており、これらの位置測定機構は、テーブルWに対する工具Tの、6つすべての空間的な移動自由度における空間的位置の測定に使用される。この場合、テーブルWは、3つの測定方向x、y、zに沿って、工具に対して移動可能に配置されており、これに関しては測定方向x、yが主要移動方向であり、測定方向zに沿ってより少ない変位が可能である。さらに、3つの測定方向x、y、zを中心とした、テーブルの少ない回転移動も可能である。
【0143】
この場合、第1の位置測定機構は、走査ヘッドAK1と、y方向に延びている第1のスケールM1と、x方向に延びている第2の傾斜したスケールM14とを含んでいる。第1のスケールM1は、テーブルWの第1の側に配置されており、走査ヘッドAK1および第2のスケールM14は工具Tと結合されている。第1の位置測定機構により、位置または測定量m1、m2が決定され、この場合、相応の第1の位置測定機構の感度は、測定方向yおよびzに沿った工具TとテーブルWの相対移動に対して存在している。
【0144】
第2の位置測定機構は、走査ヘッドAK2と、x方向に延びている第1のスケールM23と、y方向に延びている第2の傾斜したスケールM2とを含んでいる。第1のスケールM23は、テーブルWの第2の側に配置されており、走査ヘッドAK2および第2のスケールM2は工具Tと結合されている。第2の位置測定機構により、位置または測定量m3、m4が決定され、この場合、相応の第2の位置測定機構の感度は、測定方向xおよびzに沿った工具TとテーブルWの相対移動に対して存在している。
【0145】
第3の位置測定機構は、走査ヘッドAK3と、x方向に延びている第1のスケールM23と、y方向に延びている傾斜した第2のスケールM3とを含んでいる。つまり第2および第3の位置測定機構は一緒に、走査光線経路内の第1のスケールとして同じスケールM23を利用しており、スケールM23は、テーブルWの第2の側に配置されている。走査ヘッドAK3および第2のスケールM3は工具Tと結合されている。第3の位置測定機構により、位置または測定量m5、m6が決定され、この場合、相応の第3の位置測定機構の感度は、測定方向xおよびzに沿った工具TとテーブルWの相対移動に対して存在している。
【0146】
第4の位置測定機構は、走査ヘッドAK4と、y方向に延びている第1のスケールM3と、x方向に延びている傾斜した第2のスケールM14とを含んでいる。つまり第1および第4の位置測定機構は一緒に、走査光線経路内の傾斜した第2のスケールとして同じスケールM14を利用している。第1のスケールM3は、テーブルWの第3の側に配置されており、走査ヘッドAK4および第2のスケールM14は工具Tと結合されている。第4の位置測定機構により、位置または測定量m7、m8が決定され、この場合、相応の第4の位置測定機構の感度は、測定方向yおよびzに沿った工具TとテーブルWの相対移動に対して存在している。
【0147】
これにより、得られた位置または測定量m1~m8およびその組合せから、テーブルWに対する工具Tの空間的位置が、6つすべての空間的な移動自由度において決定され得る。
【0148】
この場合、なかでも、テーブルWには3つの側でしか機能面が必要ないことが特に有利であり、機能面にはそれぞれ、様々な位置測定機構の第1のスケールM1、M23、M3が配置されている。それだけでなく、テーブルWには位置測定のためのさらなる素子は必要ない。
【0149】
図8に基づいて解説した、製作機構内での複数の本発明による位置測定機構の配置は、もちろん例示的にのみ理解されるべきである。これだけではなく、複数の空間的自由度において互いに対して移動可能なコンポーネントの相対位置を測定技術的に測定するための、本発明による位置測定機構の相互の多種多様なさらなる配置および組合せの可能性、または相応の製作機構および機械内で用い得るさらなる既知の位置測定機構を含んだ多種多様なさらなる配置および組合せの可能性が存在している。
【0150】
具体的に説明した例示的実施形態だけでなく、本発明の枠内で、もちろん本発明による光学式位置測定機構のためのもっとさらなる形態可能性が存在している。
よって、両方の部分光線束を互いに対して直交に偏光させる偏光格子または幾何学的位相格子として形成された、スケール上の測定目盛を使用することができる。このようにして、移相された信号を生成するために偏光光学的手法を用いることができる。相応の測定目盛に関しては、本出願人のドイツ特許出願第102019206937.1号を参照されたい。
【符号の説明】
【0151】
M1;10;110;210;310、M14、M2、M3 第2のスケール
M2;20;120;220;320、M1、M23、M3 第1のスケール
11、21;111、121 測定目盛
11a、11b、21a、21b;111a、111b、121a、121b 格子領域
12、22 支持体
30;130;230;330、AK1、AK2、AK3、AK4 走査ヘッド
31.1 光源
32 検出ユニット
B 照明光線束
S 信号光線束
T 工具
W テーブル
x 第1の測定方向
y 第2の測定方向
z 第3の測定方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9