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特許7582859熱伝導材料形成用組成物、熱伝導材料、熱伝導シート、熱伝導層付きデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】熱伝導材料形成用組成物、熱伝導材料、熱伝導シート、熱伝導層付きデバイス
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20241106BHJP
   C08K 5/435 20060101ALI20241106BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20241106BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20241106BHJP
   C08G 59/56 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C08L63/00 Z
C08K5/435
C08K3/013
C08G59/50
C08G59/56
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020211572
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022098178
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】林 大介
(72)【発明者】
【氏名】人見 誠一
(72)【発明者】
【氏名】新居 輝樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慶太
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0326339(US,A1)
【文献】特開2014-122337(JP,A)
【文献】米国特許第03277050(US,A)
【文献】韓国特許第10-2014-0118228(KR,B1)
【文献】米国特許第04618526(US,A)
【文献】特表平10-505121(JP,A)
【文献】特表昭61-500976(JP,A)
【文献】米国特許第03591556(US,A)
【文献】国際公開第2020/153205(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00
C08K 5/435
C08K 3/013
C08G 59/50
C08G 59/56
H02K 9/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物と、式(1)で表される基を有する化合物とを含
前記式(1)で表される基を有する化合物が、式(Z1)で表される化合物である、熱伝導材料形成用組成物。
【化1】

式(1)中、Xは、置換基を有していてもよい芳香環基を表す。R~Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。*は結合位置を表す。
【化2】

式(Z1)中、R z1 ~R z3 は、それぞれ独立に、置換基を表す。z1~z3は、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。
【請求項2】
更に、無機物を含む、請求項1に記載の熱伝導材料形成用組成物。
【請求項3】
前記無機物が、無機窒化物である、請求項に記載の熱伝導材料形成用組成物。
【請求項4】
更に、硬化促進剤を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の熱伝導材料形成用組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の熱伝導材料形成用組成物を硬化して得られる、熱伝導材料。
【請求項6】
請求項に記載の熱伝導材料からなる、熱伝導シート。
【請求項7】
デバイスと、前記デバイス上に配置された請求項に記載の熱伝導材料を含む熱伝導層とを有する、熱伝導層付きデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導材料形成用組成物、熱伝導材料、熱伝導シート、及び、熱伝導層付きデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ、一般家電、及び自動車等の様々な電気機器に用いられているパワー半導体デバイスは、近年、小型化が急速に進んでいる。小型化に伴い高密度化されたパワー半導体デバイスから発生する熱の制御が困難になっている。
このような問題に対応するため、パワー半導体デバイスからの放熱を促進する熱伝導材料が用いられている。
例えば、特許文献1には、イミダゾール化合物系等の硬化剤を含む熱伝導性シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-177562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、特許文献1に記載されるような従来の硬化剤を含む熱伝導材料形成用組成物について検討したところ、得られる熱伝導材料の熱伝導性について改善の余地があることを知見した。
【0005】
そこで、本発明は、熱伝導性に優れる熱伝導材料を形成できる熱伝導材料形成用組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記熱伝導材料形成用組成物に関する熱伝導性材料、熱伝導シート、及び、熱伝導層付きデバイスを提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0007】
〔1〕 エポキシ化合物と、後述する式(1)で表される基を有する化合物とを含む、熱伝導材料形成用組成物。
〔2〕 上記式(1)で表される基を有する化合物が、更にフェノール性水酸基を有する、〔1〕に記載の熱伝導材料形成用組成物。
〔3〕 上記式(1)で表される基を有する化合物が、後述する式(2)で表される化合物である、〔1〕又は〔2〕に記載の熱伝導材料形成用組成物。
〔4〕 上記式(1)で表される基を有する化合物が、後述する式(Z1)で表される化合物である、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の熱伝導材料形成用組成物。
〔5〕 Xが、置換基を有していてもよいベンゼン環基を表す、〔2〕に記載の熱伝導材料形成用組成物。
〔6〕 更に、無機物を含む、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の熱伝導材料形成用組成物。
〔7〕 上記無機物が、無機窒化物である、〔6〕に記載の熱伝導材料形成用組成物。
〔8〕 更に、硬化促進剤を含む、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の熱伝導材料形成用組成物。
〔9〕 〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載の熱伝導材料形成用組成物を硬化して得られる、熱伝導材料。
〔10〕 〔9〕に記載の熱伝導材料からなる、熱伝導シート。
〔11〕 デバイスと、上記デバイス上に配置された〔9〕に記載の熱伝導材料を含む熱伝導層とを有する、熱伝導層付きデバイス。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱伝導性に優れる熱伝導材料を形成できる熱伝導材料形成用組成物を提供できる。
また、本発明によれば、上記熱伝導材料形成用組成物に関する熱伝導材料、熱伝導シート、及び、熱伝導層付きデバイスを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の熱伝導材料形成用組成物、熱伝導材料、熱伝導シート、及び、熱伝導層付きデバイスについて詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされる場合があるが、本発明はそのような実施態様に制限されない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0010】
本明細書において、酸無水物基は、1価の基であってもよく、2価の基であってもよい。なお、酸無水物基が1価の基を表す場合、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、及び、無水トリメリット酸等の酸無水物から任意の水素原子を除いて得られる置換基が挙げられる。また、酸無水物基が2価の基を表す場合、*-CO-O-CO-*で表される基を意図する(*は結合位置を表す)。
【0011】
なお、本明細書において、置換又は無置換を明記していない置換基等については、可能な場合、目的とする効果を損なわない範囲で、その基に更に置換基(例えば、後述する置換基群Yで例示される基)を有していてもよい。例えば、「アルキル基」という表記は、目的とする効果を損なわない範囲で、置換又は無置換のアルキル基(置換基を有してもよいアルキル基)を意味する。
また、本明細書において、「置換基を有していてもよい」という場合の置換基の種類、置換基の位置、及び置換基の数は特に制限されない。置換基の数としては、例えば、1個、又は、2個以上が挙げられる。置換基としては、例えば、水素原子を除く1価の非金属原子団が挙げられ、以下の置換基群Yから選択される基が好ましい。
本明細書において、ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられる。
また、本明細書において、表記される2価の基(例えば、-CO-O-)の結合方向は特に制限されず、例えば、X-L-Yで表される基中のLが-CO-O-である場合、X側に結合している位置を*1、Y側に結合している位置を*2とすると、Lは、*1-CO-O-*2であってもよく、*1-O-CO-*2であってもよい。
【0012】
置換基群Y:
ハロゲン原子(-F、-Br、-Cl、-I等)、水酸基、アミノ基、カルボン酸基及びその共役塩基基、無水カルボン酸基、シアネートエステル基、不飽和重合性基、エポキシ基、オキセタニル基、アジリジニル基、チオール基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、アルデヒド基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、N-アルキルアミノ基、N,N-ジアルキルアミノ基、N-アリールアミノ基、N,N-ジアリールアミノ基、N-アルキル-N-アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N-アルキルカルバモイルオキシ基、N-アリールカルバモイルオキシ基、N,N-ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N-ジアリールカルバモイルオキシ基、N-アルキル-N-アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N-アルキルアシルアミノ基、N-アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’-アルキルウレイド基、N’,N’-ジアルキルウレイド基、N’-アリールウレイド基、N’,N’-ジアリールウレイド基、N’-アルキル-N’-アリールウレイド基、N-アルキルウレイド基、N-アリールウレイド基、N’-アルキル-N-アルキルウレイド基、N’-アルキル-N-アリールウレイド基、N’,N’-ジアルキル-N-アルキルウレイド基、N’,N’-ジアルキル-N-アリールウレイド基、N’-アリール-N-アルキルウレイド基、N’-アリール-N-アリールウレイド基、N’,N’-ジアリール-N-アルキルウレイド基、N’,N’-ジアリール-N-アリールウレイド基、N’-アルキル-N’-アリール-N-アルキルウレイド基、N’-アルキル-N’-アリール-N-アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N-アルキル-N-アルコキシカルボニルアミノ基、N-アルキル-N-アリーロキシカルボニルアミノ基、N-アリール-N-アルコキシカルボニルアミノ基、N-アリール-N-アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N-アルキルカルバモイル基、N,N-ジアルキルカルバモイル基、N-アリールカルバモイル基、N,N-ジアリールカルバモイル基、N-アルキル-N-アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(-SOH)及びその共役塩基基、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N-アルキルスルフィナモイル基、N,N-ジアルキルスルフィナモイル基、N-アリールスルフィナモイル基、N,N-ジアリールスルフィナモイル基、N-アルキル-N-アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N-アルキルスルファモイル基、N,N-ジアルキルスルファモイル基、N-アリールスルファモイル基、N,N-ジアリールスルファモイル基、N-アルキル-N-アリールスルファモイル基、N-アシルスルファモイル基及びその共役塩基基、N-アルキルスルホニルスルファモイル基(-SONHSO(alkyl))及びその共役塩基基、N-アリールスルホニルスルファモイル基(-SONHSO(aryl))及びその共役塩基基、N-アルキルスルホニルカルバモイル基(-CONHSO(alkyl))及びその共役塩基基、N-アリールスルホニルカルバモイル基(-CONHSO(aryl))及びその共役塩基基、アルコキシシリル基(-Si(Oalkyl))、アリーロキシシリル基(-Si(Oaryl))、ヒドロキシシリル基(-Si(OH))及びその共役塩基基、ホスホノ基(-PO)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノ基(-PO(alkyl))、ジアリールホスホノ基(-PO(aryl))、アルキルアリールホスホノ基(-PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(-POH(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノ基(-POH(aryl))及びその共役塩基基、ホスホノオキシ基(-OPO)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノオキシ基(-OPO(alkyl))、ジアリールホスホノオキシ基(-OPO(aryl))、アルキルアリールホスホノオキシ基(-OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(-OPOH(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノオキシ基(-OPOH(aryl))及びその共役塩基基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、及びアルキル基。また、上述の各基は、可能な場合、更に置換基(例えば、上述の各基のうちの1以上の基)を有してもよい。例えば、置換基を有してもよいアリール基も、置換基群Yから選択可能な基として含まれる。
置換基群Yから選択される基が炭素原子を有する場合、上記基が有する炭素数としては、例えば、1~20である。
置換基群Yから選択される基が有する水素原子以外の原子の数としては、例えば、1~30である。
また、これらの置換基は、可能であるならば置換基同士、又は置換している基と結合して環を形成してもよいし、環を形成していなくてもよい。例えば、アルキル基(又は、アルコキシ基のように、アルキル基を部分構造として含む基におけるアルキル基部分)は、全体として環状のアルキル基(シクロアルキル基等)でもよく、部分構造として1以上の環状構造を有するアルキル基であってもよい。
【0013】
[組成物]
本発明の熱伝導材料形成用組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)は、エポキシ化合物、式(1)で表される基を有する化合物(以下、「特定化合物」ともいう。)を含む。
【0014】
本発明の組成物が、上記のような構成で本発明の課題が解決されるメカニズムは必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
本発明の組成物の特徴点としては、特定化合物を含むことが挙げられる。
特定化合物が有する式(1)で表される基は、エポキシ化合物と反応、及び、式(1)で表される基を起点として水素結合を形成し得るため、得られる熱伝導性材料中での化学結合に基づく熱伝導のネットワークが良好に形成できたため、熱伝導性が優れたと推測している。
以下、熱伝導性が優れることを、本発明の効果が優れるともいう。
以下、組成物に含まれる成分について詳述する。
【0015】
〔特定化合物〕
本発明の組成物は、特定化合物(式(1)で表される基を有する化合物)を含む。
特定化合物は、エポキシ基と反応して架橋可能な化合物である。つまり、特定化合物はエポキシ基と反応する硬化剤として機能し得る。
【0016】
【化1】
【0017】
式(1)中、Xは、置換基を有していてもよい芳香環基を表す。R~Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。*は結合位置を表す。
【0018】
Xは、置換基を有していてもよい芳香環基を表す。
Xで表される芳香環基が有する芳香環は、単環、及び、多環のいずれであってもよい。
Xで表される芳香環基としては、例えば、芳香族炭化水素基、及び、芳香族複素環基が挙げられる。
芳香族炭化水素基の炭素数は、6~20が好ましく、6~12がより好ましく、6~8が更に好ましい。
芳香族複素環基の炭素数は、3~20が好ましく、5~12がより好ましく、5~7が更に好ましい。
Xで表される芳香環基としては、例えば、ベンゼン環基、ナフタレン環基、及び、アントラセン環基等の芳香族炭化水素基;並びに、フラン環基、ピロール環基、チオフェン環基、ピリジン環基、チアゾール環基、カルバゾール環基、インドール環基、及び、ベンゾチアゾール環基等の芳香族複素環基が挙げられる。
中でも、ベンゼン環基、又は、チオフェン環基が好ましく、ベンゼン環基がより好ましい。
【0019】
Xで表される芳香環基は、置換基を有していてもよい。
上記置換基としては、例えば、上述した置換基群Yで例示される基が挙げられる。
中でも、置換基としては、ハロゲン原子(-F、-Br、-Cl、-I等)、水酸基、アミノ基、カルボン酸基、炭素数1~6の炭化水素基、アリール基、又は、これらの組み合わせからなる基が好ましく、水酸基、アミノ基、又は、炭素数1~6の炭化水素基がより好ましく、水酸基、又は、メチル基が更に好ましい。
【0020】
~Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
~Rのうち少なくとも一方が水素原子であることが好ましく、R~Rの両方が水素原子であることがより好ましい。
~Rで表される置換基としては、例えば、上述した置換基群Yで例示される基が挙げられる。
中でも、置換基としては、炭素数1~6の炭化水素基、アリール基、又は、これらの組み合わせからなる基が好ましく、炭素数1~6の炭化水素基がより好ましい。
【0021】
特定化合物が有する式(1)で表される基の数は、1以上であり、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましく、1が特に好ましい。
【0022】
特定化合物は、上述した式(1)で表される基以外に、1価の有機基を有していてもよい。
上記1価の有機基としては、活性水素基、酸無水物基、又は、イミダゾール環基が好ましい。
活性水素基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、1級アミン基、2級アミノ基、及び、メルカプト基が挙げられ、フェノール性水酸基又はアルコール性水酸基が好ましく、フェノール性水酸基がより好ましい。
特定化合物が有する活性水素基の数は、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、2~10が更に好ましく、2~6が特に好ましい。
特定化合物が有する酸無水物基、又は、イミダゾール環基の数は、1以上が好ましく、1~10がより好ましく、1~3が更に好ましく、1が特に好ましい。
【0023】
特定化合物としては、式(2)で表される化合物が好ましい。
【0024】
【化2】
【0025】
式(2)中、X及びXは、置換基を有していてもよい芳香環基を表す。Rは、置換基を表す。zは、0~4の整数を表す。Aは、単結合又はn+m価の有機基を表す。m及びnは、1以上の整数を表す。
【0026】
及びXは、置換基を有していてもよい芳香環基を表す。
は、上述した式(1)中のXと同義であり、好適範囲も同じである。
で表される芳香環基が有する芳香環は、単環、及び、多環のいずれであってもよい。
で表される芳香環基としては、例えば、芳香族炭化水素基、及び、芳香族複素環基が挙げられる。
芳香族炭化水素基の炭素数は、6~20が好ましく、6~12がより好ましく、6~10が更に好ましい。
芳香族複素環基の炭素数は、3~20が好ましく、5~12がより好ましく、5~10が更に好ましい。
で表される芳香環基としては、例えば、ベンゼン環基、ナフタレン環基、及び、アントラセン環基等の芳香族炭化水素基;並びに、フラン環基、ピロール環基、チオフェン環基、ピリジン環基、チアゾール環基、カルバゾール環基、インドール環基、及び、ベンゾチアゾール環基等の芳香族複素環基が挙げられる。
中でも、ベンゼン環基、ナフタレン環基、及び、アントラセン環基が好ましく、ベンゼン環基、及び、ナフタレン環基がより好ましい。
で表される芳香環基は、置換基を有していてもよい。
上記置換基としては、上述した式(1)中のXが有していてもよい置換基と同義であり、好適範囲も同じである。
【0027】
は、置換基を表す。
で表される置換基としては、上述した置換基群Yで例示される基が挙げられる。
中でも、ハロゲン原子(-F、-Br、-Cl、及び、-I等)、水酸基、アミノ基、カルボン酸基、炭素数1~6の炭化水素基、アリール基、又は、これらの組み合わせからなる基が好ましく、水酸基、アミノ基、又は、炭素数1~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、水酸基、メチル基、又は、エチル基が更に好ましい。
【0028】
zは、0~4の整数を表す。
中でも、zとしては、0~3が好ましく、0~2がより好ましく、0~1が更に好ましい。なお、Rが複数存在する場合、R同士は、同一でもよいし、異なっていてもよい。また、mが2以上である場合、複数のzは、同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0029】
Aは、単結合又はn+m価の有機基を表す。より具体的には、nおよびmが1である場合、Aは単結合又は2価の有機基を表し、nおよびmの少なくとも一方が2以上であり、他方が1以上である場合、Aはn+m価の有機基(3価以上の有機基)を表す。
Aで表されるn+m価の有機基としては、例えば、ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素からn+m個の水素原子を除いた基が挙げられる。
ここで、n+m個の水素原子を除く前のヘテロ原子を有していてもよい炭化水素としては、例えば、炭素数1~20の脂肪族炭化水素、炭素数3~20の脂肪族環、及び、炭素数3~20の芳香環からなる群から選択される炭化水素、並びに、これらを組み合わせてなる炭化水素が挙げられる。
また、n+m価の有機基としては、上記ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素からn+m個の水素原子を除いた基に対して、更に、-O-、-S-、-CO-、-NH-、-NR-、及び、-SO-からなる群から選択される2価の連結基の1以上を組み合わせてなる基であってもよい。
は、置換基を表す。Rで表される置換基としては、例えば、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
炭素数1~20の脂肪族炭化水素としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、及び、ヘプタンが挙げられる。
炭素数3~20の脂肪族環としては、例えば、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、ノルボルナン環、及び、アダマンタン環が挙げられる。
炭素数3~20の芳香環としては、例えば、炭素数6~20の芳香族炭化水素、及び、炭素数3~20の芳香族複素環が挙げられる。
炭素数6~20の芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、及び、アントラセン環が挙げられる。
炭素数3~20の芳香族複素環としては、例えば、トリアジン環、ピラジン環、ピリジミジン環、及び、ピリジン環等の環員原子として窒素原子を有する芳香族複素環;フラン環、ピロール環、チオフェン環、チアゾール環、カルバゾール環、インドール環、及び、ベンゾチアゾール環が挙げられる。
【0030】
m及nは、1以上の整数を表す。
中でも、mとしては、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1~2が更に好ましい。また、nとしては、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1~2が更に好ましく、1が特に好ましい。
なお、nが2以上である場合、複数存在するX同士は、同一又は異なっていてもよい。
【0031】
特定化合物としては、式(3)で表される化合物がより好ましい。
【0032】
【化3】
【0033】
式(3)中、Xは、置換基を有していてもよい芳香環基を表す。Rは、置換基を表す。zは、0~4の整数を表す。Aは、単結合又はn+m価の有機基を表す。m及びnは、1以上の整数を表す。Yは、ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素からn+m個の水素原子を除いた基を表す。Lは、-O-、-S-、-CO-、-NH-、-NR-、及び、-SO-からなる群から選択される2価の連結基の1以上を組み合わせてなる基を表す。
【0034】
式(3)中、X、R、z、m及びnは、式(2)中のX、R、z、m及びnと同義であり、好適範囲も同じである。
【0035】
Yは、ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素からn+m個の水素原子を除いた基を表す。Yとしては、上述したAで表されるn+m価の有機基として挙げられるヘテロ原子を有していてもよい炭化水素からn+m個の水素原子を除いた基と同義である。
中でも、Yとしては、炭素数3~20の芳香環基が好ましく、炭素数6~20の芳香族炭化水素基、及び、炭素数3~20の芳香族複素環基からなる群から選択される少なくとも1つがより好ましく、炭素数3~20の窒素原子を有する芳香族複素環基が更に好ましく、トリアジン環基が特に好ましい。
【0036】
Lは、-O-、-S-、-CO-、-NH-、-NR-、及び、-SO-からなる群から選択される2価の連結基の1以上を組み合わせてなる基を表す。
中でも、Lとしては、-NH-、及び、-NR-からなる群から選択される2価の連結基の1以上を組み合わせてなる基が好ましく、-NH-がより好ましい。
複数存在するL同士は、同一又は異なっていてもよい。
【0037】
特定化合物としては、式(Z)で表される化合物が好ましく、式(Z1)で表される化合物がより好ましい。
【0038】
【化4】
【0039】
式(Z)中、E~Eは、それぞれ独立に、単結合、-NH-、又は、-NR-を表す。Rは、置換基を表す。Bは、単結合又はa+1価の有機基を表す。Bは、単結合又はb+1価の有機基を表す。Bは、単結合又はc+1価の有機基を表す。X~Xは、それぞれ独立に、式(1)で表される基、又は、フェノール性水酸基を有する芳香環基を表す。ただし、X~Xのうち少なくとも1つは、式(1)で表される基を表す。a~cは、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。ただし、a+b+cは、1以上である。
【0040】
~Eは、それぞれ独立に、単結合、-NH-、又は、-NR-を表す。
~Eとしては、それぞれ独立に、-NH-、又は、-NR-が好ましく、-NH-がより好ましい。Rは、置換基を表す。Rで表される置換基としては、例えば、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0041】
は、単結合又はa+1価の有機基を表す。Bは、単結合又はb+1価の有機基を表す。Bは、単結合又はc+1価の有機基を表す。
~Bとしては、単結合が好ましい。
上記a+1価の有機基、b+1価の有機基、及び、c+1価の有機基におけるa~cの値は、式(Z)中に明示される、a~cの値と一致する。
【0042】
~Bで表される有機基としては、例えば、炭素数1~20のヘテロ原子を有していてもよい炭化水素からj個の水素原子を除いた基が挙げられる。なお、「j個」とは、a+1個、b+1個、又は、c+1個を意味する。
ここで、j個の水素原子を除く前のヘテロ原子を有していてもよい炭化水素としては、例えば、炭素数1~20の脂肪族炭化水素、炭素数3~20の脂肪族環、及び、炭素数3~20の芳香環からなる群から選択される炭化水素、並びに、これらを組み合わせてなる炭化水素が挙げられる。
~Bで表される有機基は、j個の水素原子を除く前のヘテロ原子を有していてもよい炭化水素に対して、更に、-O-、-S-、-CO-、-NH-、-NR-、及び、-SO-からなる群から選択される2価の連結基の1以上を組み合わせてなる基であってもよい。Rは、上述したRと同義である。
炭素数1~20の脂肪族炭化水素としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、及び、ヘプタンが挙げられる。
炭素数3~20の脂肪族環としては、例えば、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、ノルボルナン環、及び、アダマンタン環が挙げられる。
炭素数3~20の芳香環としては、例えば、炭素数6~20の芳香族炭化水素、及び、炭素数3~20の芳香族複素環が挙げられる。
炭素数6~20の芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、及び、アントラセン環が挙げられる。
炭素数3~20の芳香族複素環としては、例えば、トリアジン環、ピラジン環、ピリジミジン環、及び、ピリジン環等の環員原子として窒素原子を有する芳香族複素環;フラン環、ピロール環、チオフェン環、チアゾール環、カルバゾール環、インドール環、及び、ベンゾチアゾール環が挙げられる。
【0043】
a~cは、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
a~cは、それぞれ独立に、1~5が好ましく、1~2がより好ましく、1が更に好ましい。例えば、aが1以上(例えば1~2)であるのが好ましく、bが1以上(例えば1~2)であるのが好ましく、cが1以上(例えば1~2)であるのが好ましい。なお、aが0の場合、BはXを有さない。bが0の場合、BはXを有さない。cが0の場合、BはXを有さない。
また、Bが単結合の場合、aは1である。Bが単結合の場合、bは1である。Bが単結合の場合、cは1である。
ただし、a+b+cは、1以上であり、2~10が好ましく、2~4がより好ましい。
【0044】
~Xは、それぞれ独立に、式(1)で表される基、又は、フェノール性水酸基を有する芳香環基を表す。ただし、X~Xのうち少なくとも1つは、式(1)で表される基を表す。
式(1)で表される基は、上述した特定化合物が有する式(1)で表される基と同義であり、好適範囲も同じである。
【0045】
「フェノール性水酸基を有する芳香環基」とは、芳香環に直接結合する水酸基(フェノール性水酸基)を1個以上(例えば、1~4個)有する芳香環基であればよい。
上記芳香環基は、上記フェノール性水酸基以外の置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。上記芳香環基が有する芳香環は、単環又は多環であってもよく、環員原子としてヘテロ原子を有していてもよい。上記芳香環基の環員原子の数は、5~15が好ましく、6~10がより好ましく、6が更に好ましい。
上記芳香環基としては、ベンゼン環基が好ましい。
上記芳香環基が上記水酸基以外に有し得る置換基としては、炭素数1~6の置換基が好ましく、炭素数1~6の炭化水素基がより好ましく、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が更に好ましく、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
【0046】
a個存在するX、b個存在するX、及び、c個存在するXのうちの少なくとも1個は、式(1)で表される基におけるスルホンアミド基のオルト位、又は、フェノール性水酸基のオルト位、に配置された置換基を有することも好ましく、フェノール性水酸基のオルト位に配置された置換基を有することがより好ましい。
オルト位に配置された置換基としては、上述したRで表される置換基が挙げられる。
式(1)で表される基におけるスルホンアミド基のオルト位、又は、フェノール性水酸基のオルト位、に配置された置換基を有するX~Xは、(a+b+c)個存在するX~Xに対して、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、65%以上が更に好ましい。上限は、100%以下が好ましく、90%以下がより好ましく、80%以下が更に好ましい。
【0047】
上記オルト位に置換基を有するX~Xは、更に置換基を有していてもよい。例えば、例えば、ヒドロキシフェニル基が挙げられる。
【0048】
【化5】
【0049】
式(Z1)中、Rz1~Rz3は、それぞれ独立に、置換基を表す。z1~z3は、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。
z1~Rz3は、上述した式(2)中のRと同義であり、好適範囲も同じである。
z1~z3としては、0~3が好ましく、0~2がより好ましく、0~1が更に好ましい。
z1~Rz3が結合したベンゼン環基において、Rz1~Rz3は、上記ベンゼン環基に結合する水酸基又はスルホンアミド基に対して、オルト位に結合することが好ましい。
【0050】
特定化合物の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0051】
【化6】
【0052】
【化7】
【0053】
特定化合物の分子量は、225~2000が好ましく、225~1000がより好ましい。
【0054】
特定化合物の水酸基含有量は、1.0mmol/g以上が好ましく、2.0mmol/g以上がより好ましい。上限は、25.0mmol/g以下が好ましく、10.0mmol/g以下がより好ましい。
なお、上記水酸基含有量は、特定化合物1gが有する、水酸基(好ましくはフェノール性水酸基)の数を意図する。
また、特定化合物は、水酸基以外にも、エポキシ化合物と重合反応できる活性水素含有基(カルボン酸基等)を有していてもよいし、有していなくてもよい。特定化合物の活性水素の含有量(水酸基及びカルボン酸基等における水素原子の合計含有量)の下限値は、1.0mmol/g以上が好ましく、2.0mmol/g以上がより好ましい。上限値は、25.0mmol/g以下が好ましく、10.0mmol/g以下がより好ましい。
【0055】
特定化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
特定化合物の含有量は、組成物の全固形分に対して、1~40質量%が好ましく、3~30質量%がより好ましく、5~20質量%が更に好ましい。
なお、固形分とは、熱伝導材料(硬化物)を形成する成分を意図し、溶媒は含まれない。ここでいう、熱伝導材料(硬化物)を形成する成分は、熱伝導材料(硬化物)を形成する際に反応(重合)して化学構造が変化する成分であってもよい。また、熱伝導材料を形成する成分であれば、その性状が液体状であっても、固形分とみなす。
【0056】
〔エポキシ化合物〕
本発明の組成物は、エポキシ化合物を含む。
エポキシ化合物は、1分子中に、少なくとも1個のエポキシ基(オキシラニル基)を有する化合物である。エポキシ基は、置換基を有していても有していなくてもよい。
エポキシ化合物が有するエポキシ基の数は、1分子中、2以上が好ましく、2~40がより好ましく、2~10が更に好ましく、2が特に好ましい。
エポキシ化合物の分子量は、150~10000が好ましく、150~2000がより好ましく、200~400が更に好ましい。
【0057】
エポキシ化合物のエポキシ基含有量の下限値は、2.0mmol/g以上が好ましく、4.0mmol/g以上がより好ましく、5.0mmol/g以上が更に好ましい。上限値は、20.0mmol/g以下が好ましく、15.0mmol/g以下がより好ましく、10.0mmol/g以下が更に好ましい。
なお、「エポキシ基含有量」とは、エポキシ化合物1gが有する、エポキシ基の数を意味する。
【0058】
エポキシ化合物は、液晶性を示してもよく示さなくてもよい。
つまり、エポキシ化合物は、液晶化合物であってよい。言い換えれば、エポキシ基を有する液晶化合物もエポキシ化合物として使用できる。
エポキシ化合物(液晶性のエポキシ化合物であってもよい)としては、例えば、少なくとも部分的に棒状構造を含む化合物(棒状化合物)、及び、少なくとも部分的に円盤状構造を含む化合物(円盤状化合物)が挙げられる。
中でも、得られる熱伝導材料の熱伝導性がより優れる点から棒状化合物が好ましい。
以下、棒状化合物及び円盤状化合物について詳述する。
【0059】
(棒状化合物)
棒状化合物であるエポキシ化合物としては、例えば、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、及び、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が挙げられる。以上のような低分子化合物だけではなく、高分子化合物も使用できる。上記高分子化合物は、低分子の反応性基を有する棒状化合物が重合した高分子化合物である。
棒状化合物としては、式(E1)で表される化合物が好ましい。
【0060】
【化8】
【0061】
式(E1)中、LE1は、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
中でも、LE1は、2価の連結基が好ましい。
2価の連結基は、-O-、-S-、-CO-、-NH-、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=N-、-N=N-、置換基を有していてもよいアルキレン基、又は、これらの2以上の組み合わせからなる基が好ましく、-O-アルキレン基-がより好ましい。
なお、上記アルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状、及び、環状のいずれであってもよく、炭素数1~2の直鎖状アルキレン基が好ましい。
複数存在するLE1は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0062】
式(E1)中、LE2は、それぞれ独立に、単結合、-CH=CH-、-CO-O-、-C(-CH)=CH-、-CH=N-、-N=N-、-C≡C-、-N=N(-O)-、-CH=N(-O)-、-CH=CH-CO-、又は、-CH=C(-CN)-を表す。
中でも、LE2は、それぞれ独立に、単結合、又は、-CO-O-が好ましい。
E2が複数存在する場合、複数存在するLE2は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0063】
式(E1)中、LE3は、それぞれ独立に、単結合、又は、置換基を有していてもよい、5員環若しくは6員環の芳香族環基又は5員環若しくは6員環の非芳香族環基、又は、これらの環からなる多環基を表す。
E3で表される芳香族環基及び非芳香族環基としては、例えば、置換基を有していてもよい、1,4-シクロヘキサンジイル基、1,4-シクロヘキセンジイル基、1,4-フェニレン基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基、1,3,4-チアジアゾール-2,5-ジイル基、1,3,4-オキサジアゾール-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,5-ジイル基、チオフェン-2,5-ジイル基、及び、ピリダジン-3,6-ジイル基が挙げられる。1,4-シクロヘキサンジイル基の場合、トランス体及びシス体の構造異性体のどちらの異性体であってもよく、任意の割合の混合物でもよい。中でも、トランス体であるのが好ましい。
中でも、LE3は、単結合、1,4-フェニレン基、又は、1,4-シクロヘキセンジイル基が好ましい。
E3で表される基が有する置換基は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、又は、アセチル基が好ましく、アルキル基(好ましくは炭素数1)がより好ましい。
なお、置換基が複数存在する場合、置換基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
E3が複数存在する場合、複数存在するLE3は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0064】
式(E1)中、peは、0以上の整数を表す。
peが2以上の整数である場合、複数存在する(-LE3-LE2-)は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
中でも、peは、0~2が好ましく、0又は1がより好ましく、0が更に好ましい。
【0065】
式(E1)中、LE4は、それぞれ独立に、置換基を表す。
置換基は、それぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、又は、アセチル基が好ましく、アルキル基(好ましくは炭素数1)がより好ましい。
複数存在するLE4は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、次に説明するleが2以上の整数である場合、同一の(LE4le中に複数存在するLE4も、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0066】
式(E1)中、leは、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。
中でも、leは、それぞれ独立に、0~2が好ましい。
複数存在するleは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0067】
棒状化合物は、ビフェニル骨格を有するのも好ましい。
【0068】
(円盤状化合物)
円盤状化合物であるエポキシ化合物は、少なくとも部分的に円盤状構造を有する。
円盤状構造は、少なくとも、脂環又は芳香族環を有する。特に、円盤状構造が、芳香族環を有する場合、円盤状化合物は、分子間のπ-π相互作用によるスタッキング構造の形成により柱状構造を形成しうる。
円盤状構造としては、例えば、Angew.Chem.Int. Ed. 2012, 51, 7990-7993、及び、特開平7-306317号公報に記載のトリフェニレン構造、並びに、特開2007-002220号公報、及び、特開2010-244038号公報に記載の3置換ベンゼン構造が挙げられる。
【0069】
上記円盤状化合物は、エポキシ基を3個以上有するのが好ましい。3個以上のエポキシ基を有する円盤状化合物を含むエポキシ化合物の硬化物はガラス転移温度が高く、耐熱性が高い傾向がある。円盤状化合物が有するエポキシ基の数は、8以下が好ましく、6以下がより好ましい。
【0070】
円盤状化合物としては、例えば、C. Destrade et al., Mol. Crysr. Liq. Cryst., vol. 71, page 111 (1981) ;日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B. Kohne et al., Angew. Chem. Soc. Chem. Comm., page 1794 (1985);J. Zhang et al., J. Am. Chem. Soc., vol. 116, page 2655 (1994)、及び、特許第4592225号に記載されている化合物等において末端の少なくとも1個(好ましくは3個以上)をエポキシ基とした化合物が挙げられる。
円盤状化合物としては、例えば、Angew.Chem.Int. Ed. 2012, 51, 7990-7993、及び特開平7-306317号公報に記載のトリフェニレン構造、並びに、特開2007-002220号公報、及び、特開2010-244038号公報に記載の3置換ベンゼン構造において末端の少なくとも1個(好ましくは3個以上)をエポキシ基とした化合物等が挙げられる。
【0071】
エポキシ化合物としては、上述のエポキシ化合物以外に、例えば、式(DN)で表されるエポキシ化合物が挙げられる。
【0072】
【化9】
【0073】
式(DN)中、nDNは、0以上の整数を表し、0~5が好ましく、1がより好ましい。
DNは、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、-O-、-O-CO-、-S-、アルキレン基(炭素数は、1~10が好ましい。)、アリーレン基(炭素数は、6~20が好ましい。)、又は、これらの組み合わせからなる基が好ましく、アルキレン基がより好ましく、メチレン基が更に好ましい。
【0074】
また、エポキシ化合物は、上述した式(Z)で表される化合物において、X~Xが、それぞれ独立に、「エポキシ基を有する1価の基である芳香環基」を表す化合物であってもよい。
【0075】
エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、F、S、AD等のグリシジルエーテルであるビスフェノールA型エポキシ化合物(上述の式(E1)において、「pe=0」かつ「LE2を-C(CH-」とした化合物等)、ビスフェノールF型エポキシ化合物(上述の式(E1)において、「pe=0」かつ「LE2を-CH-」とした化合物等)、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ビスフェノールAD型エポキシ化合物等;水素添加したビスフェノールA型エポキシ化合物、水素添加したビスフェノールAD型エポキシ化合物等;フェノールノボラック型のグリシジルエーテル(フェノールノボラック型エポキシ化合物)、クレゾールノボラック型のグリシジルエーテル(クレゾールノボラック型エポキシ化合物)、ビスフェノールAノボラック型のグリシジルエーテル等;ジシクロペンタジエン型のグリシジルエーテル(ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物);ジヒドロキシペンタジエン型のグリシジルエーテル(ジヒドロキシペンタジエン型エポキシ化合物);ポリヒドロキシベンゼン型のグリシジルエーテル(ポリヒドロキシベンゼン型エポキシ化合物);ベンゼンポリカルボン酸型のグリシジルエステル(ベンゼンポリカルボン酸型エポキシ化合物);3,4:8,9-ジエポキシビシクロ[4.3.0]ノナン等の脂環式エポキシ化合物、及び、トリスフェノールメタン型エポキシ化合物が挙げられる。
上述の各化合物におけるグリシジルエーテル基及び/又はグリシジルエステル基の1個又は2個以上が、ジグリシジルアミノ基又はジグリシジルアミノアルキレン基(ジグリシジルアミノメチレン基等)に置き換わった化合物をエポキシ化合物として使用してもよい。
上述の各化合物は、置換基を有していてもよい。例えば、上述の各化合物に含まれる芳香環基、シクロアルカン環基、及び/又は、アルキレン基等が、グリシジルエーテル基、グリシジルエステル基、ジグリシジルアミノ基、及び/又は、ジグリシジルアミノアルキレン基以外の置換基を有していてもよい。
中でも、エポキシ化合物は、ビスフェノールF型エポキシ化合物、又は、ポリヒドロキシベンゼン型のグリシジルエーテル(ジヒドロキシベンゼン型のグリシジルエーテル等)が好ましい。
【0076】
エポキシ化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
エポキシ化合物の含有量は、組成物の全固形分に対して、1.0~25.0質量%が好ましく、3.0~20.0質量%がより好ましく、5.0~20.0質量%が更に好ましく、9.0~18.0質量%が特に好ましい。
【0077】
特定化合物の化学当量は、エポキシ化合物中のエポキシ基1モルに対して、0.01~5当量が好ましく、0.3~2.0当量がより好ましく、0.5~1.5当量が更に好ましく、0.8~1.5当量が特に好ましい。
【0078】
組成物中、エポキシ化合物と特定化合物との合計含有量は、組成物の全固形分に対して、5~90質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましく、15~40質量%が更に好ましい。
【0079】
特定化合物に含まれるフェノール性水酸基の数に対する、エポキシ化合物に含まれるエポキシ基の数との比〔エポキシ基の数/フェノール性水酸基の数〕が、20/80~800/20が好ましく、30/70~70/30がより好ましく、40/60~60/40が更に好ましい。
つまり、組成物中の、特定化合物とエポキシ化合物との含有量の比は、上記「エポキシ基の数/フェノール性水酸基の数」が上記範囲内になるような比であるのが好ましい。
【0080】
〔硬化促進剤〕
本発明の組成物は、更に、硬化促進剤を含んでいてもよい。
硬化促進剤としては、例えば、トリスオルトトリルホスフィン、トリフェニルホスフィン、三フッ化ホウ素アミン錯体、及び、特開2012-067225号公報の段落[0052]に記載の化合物が挙げられる。また、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(TPP-K)、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボラート(TPP-MK)、テトラ-n-ブチルホスホニウムラウレート(TBP-LA)、ビス(テトラ-n-ブチルホスホニウム)ピロメリテート、及び、テトラフェニルホスホニウムのビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート付加物のような四級ホスホニウム系化合物(ホスホニウム塩)等のオニウム塩系硬化促進剤も挙げられる。
その他にも、2-メチルイミダゾール(商品名;2MZ)、2-ウンデシルイミダゾール(商品名;C11-Z)、2-ヘプタデシルイミダゾール(商品名;C17Z)、1,2-ジメチルイミダゾール(商品名;1.2DMZ)、2-エチル-4-メチルイミダゾール(商品名;2E4MZ)、2-フェニルイミダゾール(商品名;2PZ)、2-フェニル-4-メチルイミダゾール(商品名;2P4MZ)、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール(商品名;1B2MZ)、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール(商品名;1B2PZ)、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール(商品名;2MZ-CN)、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール(商品名;C11Z-CN)、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(商品名;2PZCNS-PW)、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン(商品名;2MZ-A)、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン(商品名;C11Z-A)、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン(商品名;2E4MZ-A)、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物(商品名;2MA-OK)、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(商品名;2PHZ-PW)、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール(商品名;2P4MHZ-PW)、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール(商品名;2PZ-CN)、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン(商品名;2MZA-PW)、及び、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物(商品名;2MAOK-PW)等のイミダゾール系硬化促進剤が挙げられる(いずれも四国化成工業(株)製)。更に、トリアリールホスフィン系の硬化促進剤として特開2004-043405号公報の段落[0052]に記載の化合物も挙げられる。トリアリールホスフィンにトリフェニルボランが付加したリン系硬化促進剤として、特開2014-005382号公報の段落[0024]に記載の化合物も挙げられる。
【0081】
中でも、硬化促進剤は、リン原子を含む化合物を含むことが好ましく、ホスホニウム塩を含むことも好ましい。硬化促進剤は、リン原子を含む化合物又はホスホニウム塩そのものであってもよい。硬化促進剤としてホスホニウム塩を使用すると、組成物から形成された半硬化膜の保存安定性が良好になる。
リン原子を含む化合物又はホスホニウム塩の含有量は、硬化促進剤の全質量に対して、10~100質量%が好ましく、50~100質量%がより好ましく、80~100質量%が更に好ましい。
【0082】
硬化促進剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
硬化促進剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.002質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.10質量%以上が更に好ましく、0.20質量%以上が特に好ましい。上限は、組成物の全固形分に対して、5.00質量%以下が好ましく、2.00質量%以下がより好ましく、1.00質量%以下が更に好ましく、0.50質量%以下が特に好ましい。
硬化促進剤の含有量は、全エポキシ化合物に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.02質量%以上がより好ましく、0.03質量%以上が更に好ましい。上限は、全エポキシ化合物に対して、40.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以下が特に好ましく、0.05質量%以下が最も好ましい。
【0083】
〔無機物〕
本発明の組成物は、更に、無機物を含んでいてもよい。
無機物としては、従来から熱伝導材料の無機フィラーに用いられているいずれの無機物を用いてもよい。熱伝導材料の熱伝導性及び絶縁性がより優れる点から、無機物は、無機窒化物又は無機酸化物を含むのが好ましく、少なくとも無機窒化物を含むのがより好ましい。
【0084】
無機物の形状は特に制限されず、粒子状であってもよく、フィルム状であってもよく、又は板状であってもよい。粒子状無機物の形状は、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状、鱗片状、凝集状、及び、不定形状が挙げられる。
【0085】
無機窒化物としては、例えば、窒化ホウ素(BN)、窒化炭素(C)、窒化ケイ素(Si)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化クロム(CrN)、窒化銅(CuN)、窒化鉄(FeN)、窒化鉄(FeN)、窒化ランタン(LaN)、窒化リチウム(LiN)、窒化マグネシウム(Mg)、窒化モリブデン(MoN)、窒化ニオブ(NbN)、窒化タンタル(TaN)、窒化チタン(TiN)、窒化タングステン(WN)、窒化タングステン(WN)、窒化イットリウム(YN)、及び、窒化ジルコニウム(ZrN)が挙げられる。
無機窒化物は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
無機窒化物は、アルミニウム原子、ホウ素原子、又は、珪素原子を含むのが好ましく、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、又は、窒化珪素を含むのがより好ましく、窒化アルミニウム又は窒化ホウ素を含むのが更に好ましく、窒化ホウ素を含むのが特に好ましい。
【0086】
無機酸化物としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ、SiO)、酸化アルミニウム(アルミナ、Al)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化鉄(Fe、FeO、Fe)、酸化銅(CuO、CuO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y)、酸化ニオブ(Nb)、酸化モリブデン(MoO)、酸化インジウム(In、InO)、酸化スズ(SnO)、酸化タンタル(Ta)、酸化タングステン(WO、W)、酸化鉛(PbO、PbO)、酸化ビスマス(Bi)、酸化セリウム(CeO、Ce)、酸化アンチモン(Sb、Sb)、酸化ゲルマニウム(GeO、GeO)、酸化ランタン(La)、及び、酸化ルテニウム(RuO)が挙げられる。
無機酸化物は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
無機酸化物は、非酸化物として用意された金属が、環境下等で酸化して生じている酸化物であってもよい。
【0087】
無機物の大きさは特に制限されないが、無機物の分散性がより優れる点で、無機物の平均粒径は500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、200μm以下が更に好ましく、100μm以下が特に好ましい。下限は特に制限されないが、取り扱い性の点で、10nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましく、10μm以上が更に好ましい。
無機物の平均粒径としては、市販品を用いる場合、カタログ値を採用する。カタログ値が無い場合、上記平均粒径の測定方法としては、電子顕微鏡を用いて、100個の無機物を無作為に選択して、それぞれの無機物の粒径(長径)を測定し、それらを算術平均して求める。
【0088】
中でも、無機物は、窒化ホウ素、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、及び、酸化マグネシウムからなる群から選択される1種以上を含むことが好ましく、窒化ホウ素を含むことがより好ましい。
無機物は、窒化ホウ素、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、及び/又は、酸化マグネシウムを一部分として含んでいてもよく、無機物が、窒化ホウ素、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、及び/又は、酸化マグネシウムそのものであってもよい。
窒化ホウ素、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、及び/又は、酸化マグネシウムの含有量(これらのうちの複数を含む場合はその合計含有量)は、無機物の全質量に対して、10~100質量%が好ましく、40~100質量%がより好ましく、80~100質量%が更に好ましい。
【0089】
無機物は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
無機物は、無機窒化物及び無機酸化物の少なくとも一方を含むのが好ましく、無機窒化物を少なくとも含むのがより好ましい。無機物は、無機窒化物と無機酸化物との両方を含んでいてもよい。
無機物中における無機窒化物(好ましくは窒化ホウ素)の含有量は、無機物の全質量に対して、10~100質量%が好ましく、40~100質量%がより好ましく、80~100質量%が更に好ましい。
【0090】
熱伝導材料の熱伝導性がより優れる点で、組成物は、平均粒径が20μm以上(好ましくは、30μm以上)の無機物(好ましくは、無機窒化物又は無機酸化物、より好ましくは無機窒化物、更に好ましくは窒化ホウ素、特に好ましくは凝集状窒化ホウ素)を少なくとも含むのが好ましい。
【0091】
組成物が含む無機物(好ましくは無機窒化物又は無機酸化物)は、実質的に平均粒径が20μm以上(好ましくは、30μm以上)の無機物Xのみであるのも好ましい。無機物が、実質的に平均粒径が20μm以上の無機物Xのみであるとは、無機物の全質量に対して、平均粒径が20μm以上の無機物Xの含有量が99質量%超であることをいう。
【0092】
また、無機物は、平均粒径が異なる無機物をそれぞれ有するのも好ましく、例えば、平均粒径が20μm以上の無機物である無機物Xと、平均粒径が20μm未満の無機物である無機物Yとの両方を含むのも好ましい。
上記無機物Xの平均粒径は、20~300μmが好ましく、30~200μmがより好ましい。上記無機物Yの平均粒径は、1nm以上20μm未満が好ましく、10nm~10μmがより好ましい。
無機物Xは、無機窒化物又は無機酸化物が好ましく、無機窒化物がより好ましく、窒化ホウ素が更に好ましく、凝集状窒化ホウ素が特に好ましい。
無機物Yは、無機窒化物又は無機酸化物が好ましく、窒化ホウ素又は酸化アルミニウムがより好ましい。
無機物X及び無機物Yは、それぞれ、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
無機物中、無機物Xの含有量と無機物Yの含有量との質量比(無機物Xの含有量/無機物Yの含有量)は、50/50~99/1が好ましく、60/40~95/5がより好ましい。
【0093】
無機物(特に窒化ホウ素)は、表面処理されていてもよい。なお、「表面処理」とは、後述する表面修飾剤を用いた表面修飾とは異なる処理を意図する。
このような処理を行うことで、無機物の表面に官能基が導入され、無機物が特定化合物、エポキシ化合物、及び/又は、後述の表面修飾剤等と相互作用しやすくなり、形成される熱伝導材料の熱伝導性及びピール強度等がより改善すると考えられている。
表面処理としては、例えば、プラズマ処理(真空プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、及び、アクアプラズマ処理等)、紫外線照射処理、コロナ処理、電子線照射処理、オゾン処理、焼成処理、火炎処理、及び、酸化剤処理が挙げられる。上記酸化剤処理としては、酸性条件で行ってもよいし、塩基性条件(例えば、pH12以上等)で行ってもよい。
【0094】
組成物中における無機物(好ましくは窒化ホウ素、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、及び、酸化マグネシウムからなる群から選択される1種以上)の含有量は、組成物の全固形分に対して、10質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましく、60質量%以上が特に好ましい。上限は、100質量%未満が好ましく、95質量%以下がより好ましい。
【0095】
〔表面修飾剤、表面修飾無機物〕
本発明の組成物は、上述の成分とは異なる成分として、更に、表面修飾剤を含んでいてもよい。
表面修飾剤は、上述の無機物を表面修飾する成分である。
本明細書において、「表面修飾」とは無機物の表面の少なくとも一部に有機物が吸着している状態を意味する。吸着の形態は特に限定されず、結合している状態であればよい。すなわち、表面修飾は、有機物の一部が脱離して得られる有機基が無機物表面に結合している状態も含む。結合は、共有結合、配位結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス結合、及び、金属結合等、いずれの結合であってもよい。表面修飾は、表面の少なくとも一部に単分子膜を形成されていてもよい。単分子膜は、有機分子の化学吸着によって形成される単層膜であり、Self-AssembledMonoLayer(SAM)として知られている。なお、本明細書において、表面修飾は、無機物の表面の一部のみであっても、全体であってもよい。
【0096】
本明細書において、「表面修飾無機物」は、表面修飾剤により表面修飾されている無機物である。すなわち、表面修飾無機物は、無機物と上記無機物の表面上に吸着した表面修飾剤とを含む材料である。
つまり、本発明の組成物において、無機物は、無機物の表面上に吸着した表面修飾剤とともに、表面修飾無機物を構成していてもよい。
また、本発明において、組成物が表面修飾無機物を含むことによって、組成物が無機物及び表面修飾剤を含んでいてもよい。
組成物中の無機物は、その一部又は全部が表面修飾剤とともに表面修飾無機物を構成していてよい。例えば、組成物中で、一部の無機物の表面修飾無機物を構成し、同時に、表面修飾無機物の構成に関与しない無機物が存在していてもよい。
組成物中の表面修飾剤は、その一部又は全部が無機物とともに表面修飾無機物を構成していてよい。例えば、組成物中で、一部の表面修飾剤が表面修飾無機物を構成し、同時に、表面修飾無機物の構成に関与しない表面修飾剤が存在していてもよい。
中でも、組成物は、表面修飾無機物を構成する無機物が無機窒化物(好ましくは窒化ホウ素、より好ましくは平均粒径が20μm以上である凝集状窒化ホウ素、更に好ましくは平均粒径が20~100μmである凝集状窒化ホウ素)である、表面修飾無機窒化物(好ましくは表面修飾窒化ホウ素)を含むことが好ましい。組成物中の無機窒化物(好ましくは窒化ホウ素)は、その一部又は全部が、表面修飾剤とともに表面修飾無機窒化物(好ましくは表面修飾窒化ホウ素)を構成していてよい。
また、組成物は表面修飾無機物を構成する無機物が無機酸化物(好ましくは酸化アルミニウム)である、表面修飾無機酸化物(好ましくは表面修飾アルミニウム)を含んでもよい。組成物中の無機酸化物(好ましくは酸化アルミニウム)は、その一部又は全部が、表面修飾剤とともに表面修飾無機酸化物(好ましくは表面修飾酸化アルミニウム)を構成していてよい。
表面修飾無機物は、例えば、無機物と表面修飾剤とを接触させて形成できる。例えば、無機物と、表面修飾剤と、本発明の組成物を構成する他の成分とを混合し、本発明の組成物を製造する過程で組成物中に表面修飾無機物を形成してもよい。
また、例えば、溶媒中で、無機物と表面修飾剤とを混合して、表面修飾無機物を含む混合液を調製し、上記混合液から、ろ別等の手段で、表面修飾無機物を分離し、分離された表面修飾無機物を得てもよい。分離された表面修飾無機物を用いて、本発明の組成物を調製してもよい。
【0097】
表面修飾剤としては、長鎖アルキル脂肪酸等のカルボン酸、有機ホスホン酸、有機リン酸エステル、有機シラン分子(シランカップリング剤)等従来公知の表面修飾剤を使用できる。その他、例えば、特開2009-502529号公報、特開2001-192500号公報、及び、特許4694929号に記載の表面修飾剤を利用してもよい。
【0098】
上記シランカップリング剤は、例えば、Si原子に直接結合した加水分解性基を有する化合物である。
上記加水分解性基としては、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~10)、及び、塩素原子等のハロゲン原子が挙げられる。
シランカップリング剤が有する、Si原子に直接結合した加水分解性基の数は、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上が更により好ましい。上限は、10000以下が好ましい。
シランカップリング剤は、反応性基を有することも好ましい。
上記反応性基の具体例としては、エポキシ基、オキセタニル基、ビニル基、(メタ)クリル基、スチリル基、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基、及び、酸無水物基が挙げられる。
シランカップリング剤が有する、反応性基の数は、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上が更により好ましい。上記数に上限はなく、例えば、10000である。
シランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、及び、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0099】
本発明の組成物が表面修飾剤を含む場合、事前に表面修飾無機物を作製して、これを組成物の原料の一部として使用してもよい。すなわち、事前に作製された表面修飾無機物を組成物のその他の各種成分と混合することで、事前に作製された表面修飾無機物に含まれた形態として、表面修飾剤及び無機物の全部又は一部を組成物中に導入してもよい。
また、表面修飾無機物に含まれた形態で導入される表面修飾剤及び無機物以外の、表面修飾無機物を形成していない状態の表面修飾剤及び/又は無機物を、組成物のその他の成分と混合し、組成物中に表面修飾剤及び/又は無機物の全部又は一部を導入してもよい。この場合、混合の過程で、表面修飾剤が無機物の表面に吸着し、組成物中で、表面修飾無機物を形成することも好ましい。また、この場合、表面修飾剤の一部は、表面修飾無機物の形成に寄与してしない状態で組成物中に存在していてもよい。
【0100】
表面修飾剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
組成物が表面修飾剤を含む場合、表面修飾剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.005~5質量%が好ましく、0.05~3質量%がより好ましい。
組成物が表面修飾剤を含む場合、表面修飾剤の含有量は、全無機物に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.10~5質量%がより好ましい。
表面修飾無機物中における、表面修飾剤と無機物との質量比(無機物表面上に吸着している表面修飾剤の質量/無機物の質量)は、0.00001~0.5が好ましく、0.0001~0.1がより好ましい。
組成物が表面修飾無機物を含む場合、表面修飾無機物の含有量は、組成物の全固形分に対して、20質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、75質量%以上が特に好ましい。上限は、100質量%未満が好ましく、95質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。
組成物が表面修飾窒化物(好ましくは表面修飾窒化ホウ素)を含む場合、表面修飾窒化物(好ましくは表面修飾窒化ホウ素)の含有量は、全表面修飾無機物に対して、10~100質量%が好ましく、40~100質量%がより好ましく、60~100質量%が更に好ましい。
【0101】
〔イオン捕捉剤〕
本発明の組成物は、更に、イオン捕捉剤を含んでいてもよい。
イオン捕捉剤は、組成物中又は組成物を用いて形成される熱伝導材料中においてイオン性の不純物を吸着する。これにより、組成物又は熱伝導材料が吸湿した場合でも、熱伝導材料の絶縁性をより良好に維持できる。
イオン捕捉剤としては、例えば、無機系イオン捕捉剤、及び、有機系イオン捕捉剤が挙げられる。
有機系イオン捕捉剤としては、例えば、トリアジンチオール化合物;トリアジンアミン化合物;ベンゾイミダゾール化合物;ベンゾトリアゾール化合物;アミノトリアゾール化合物;並びに、ビスフェノール系還元剤が挙げられる。
なお、上述の無機物の全部又は一部が、イオン捕捉剤としての機能を兼ねていてもよい。
【0102】
トリアジンチオール化合物としては、例えば、2-ジブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジンが挙げられる。
ベンゾイミダゾール化合物としては、例えば、ベンゾイミダゾールが挙げられる。
ベンゾトリアゾール化合物としては、例えば、1H-ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、及び、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール]が挙げられる。
アミノトリアゾール化合物としては、例えば、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、及び、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾールが挙げられる。
ビスフェノール系還元剤としては、例えば、2,2’-メチレンビス-(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、及び、4,4’-ブチリデンビス-(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)が挙げられる。
【0103】
イオン捕捉剤は市販品を用いてもよく、例えば、DHF-4A、DHT-4A、DHT-4A-2、DHT-4C、キョーワード500、KW-2000、及び、KW-2100(商品名、協和化学社製);IXE-100、IXE-500、IXE-600、IXE-700F、IXE-800、IXE-6107、IXEPLAS-A1、IXEPLAS-A2、及び、IXEPLAS-B1(商品名、東亞合成社製);ジスネットDB(商品名、三協製薬社製);VD-3、及び、VD-5(商品名、四国化成社製);並びに、ヨシノックスBB(商品名、吉富製薬社製)が挙げられる。
【0104】
イオン捕捉剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
組成物がイオン捕捉剤を含む場合、イオン捕捉剤(無機系イオン捕捉剤、及び/又は、有機系イオン捕捉剤)の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.1~20質量%がより好ましく、0.2~10質量%が更に好ましい。
なお、イオン捕捉剤が無機系イオン捕捉剤を含む場合、イオン捕捉剤の一部又は全部が同時に無機物に該当していてもよい。
【0105】
〔溶媒〕
本発明の組成物は、更に、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒の種類は特に制限されず、有機溶媒であるのが好ましい。有機溶媒としては、例えば、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、及び、テトラヒドロフランが挙げられる。
組成物が溶媒を含む場合、溶媒の含有量は、組成物の固形分濃度を、20~90質量%とする量が好ましく、30~80質量%とする量がより好ましく、50~80質量%とする量が更に好ましい。
溶媒の含有量は、組成物の全質量に対して、5~80質量%が好ましく、15~70質量%がより好ましく、20~50質量%が更に好ましい。
【0106】
〔組成物の製造方法〕
組成物の製造方法は特に制限されず、公知の方法を採用でき、例えば、上述した各種成分を混合して製造できる。混合する際には、各種成分を一括で混合しても、順次混合してもよい。
成分を混合する方法に特に制限はなく、公知の方法を使用できる。混合に使用する混合装置は、液中分散機が好ましく、例えば、自転公転ミキサー、高速回転せん断型撹拌機等の撹拌機、コロイドミル、ロールミル、高圧噴射式分散機、超音波分散機、ビーズミル、及び、ホモジナイザーが挙げられる。混合装置は1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。混合の前後に、及び/又は、同時に、脱気処理を行ってもよい。
【0107】
〔組成物の硬化方法〕
本発明の組成物は熱伝導材料形成用組成物である。
本発明の組成物を硬化して硬化物が得られる。上記硬化物は、熱伝導材料として使用できる。
組成物の硬化方法は、特に制限されないが、熱硬化反応が好ましい。
熱硬化反応の際の加熱温度は特に制限されない。例えば、50~250℃の範囲で適宜選択すればよい。また、熱硬化反応を行う際には、温度の異なる加熱処理を複数回にわたって実施してもよい。
硬化処理は、フィルム状又はシート状とした組成物について行うのが好ましい。具体的には、例えば、組成物を塗布成膜し硬化反応を行えばよい。
硬化処理を行う際は、基材上に組成物を塗布して塗膜を形成してから硬化させるのが好ましい。この際、基材上に形成した塗膜に、更に異なる基材を接触させてから硬化処理を行ってもよい。硬化後に得られた熱伝導材料(硬化物)は、基材の一方又は両方と分離してもよいし分離しなくてもよい。
また、硬化処理を行う際に、別々の基材上に組成物を塗布して、それぞれ塗膜を形成し、得られた塗膜同士を接触させた状態で硬化処理を行ってもよい。硬化後に得られた熱伝導材料(硬化物)は、基材の一方又は両方と分離してもよいし分離しなくてもよい。
【0108】
硬化処理は、組成物を半硬化状態にした時点で終了してもよい。また、組成物を半硬化状態にした後、更に硬化処理を実施して、硬化を完全にしてもよい。
組成物を半硬化状態にするための硬化処理(「半硬化処理」ともいう)と、硬化を完全にするための硬化処理(「本硬化処理」ともいう)とを、別々の工程に分けて行ってもよい。
【0109】
例えば、半硬化処理では、基材上に組成物を塗布して塗膜を形成した後、そのまま無加圧で基材上の塗膜を加熱等して半硬化状態の熱伝導材料(「半硬化膜」又は「半硬化シート」ともいう)としてもよいし、プレス加工を併用しながら基材上の塗膜を加熱等して半硬化膜としてもよい。プレス加工をする場合、プレス加工は、上記加熱等の、前後に実施されてもよいし、最中に実施されてもよい。半硬化処理においてプレス加工を実施すると、得られる半硬化膜の膜厚の調整、及び/又は、半硬化膜中のボイド量の低減をしやすい場合がある。
半硬化処理において、別々の基材上に形成した塗膜同士を積層させた状態で半硬化処理を行ってもよいし、塗膜同士を積層させずに半硬化処理を行ってもよい。半硬化処理は、組成物から形成された塗膜と、更に、上記塗膜以外の材料とを接触させた状態で実施してもよい。
【0110】
得られた、半硬化膜を、そのまま熱伝導材料として使用してもよいし、半硬化膜に更に本硬化処理を施してから完全に硬化した熱伝導材料として使用してもよい。
本硬化処理においては、半硬化膜を、そのまま無加圧で加熱等してもよいし、プレス加工を行ってから、又は、行いながら加熱等してもよい。この際、本硬化処理において、別々の半硬化膜同士を積層させた状態で本硬化処理を行ってもよいし、半硬化膜同士を積層させずに本硬化処理を行ってもよい。
また、本硬化処理は、半硬化膜を、使用されるデバイス等に接触するように配置した状態で実施してもよい。本硬化処理によって、デバイスと本発明の熱伝導材料とが接着するのも好ましい。
【0111】
半硬化処理及び/又は本硬化処理等における硬化処理の際に実施してもよいプレス加工に使用するプレスに制限はなく、例えば、平板プレスを使用してもよいしロールプレスを使用してもよい。
ロールプレスを使用する場合は、例えば、基材上に塗膜を形成して得た塗膜付き基材を、2本のロールが対向する1対のロールに挟持し、上記1対のロールを回転させて上記塗膜付き基材を通過させながら、上記塗膜付き基材の膜厚方向に圧力を付加するのが好ましい。上記塗膜付き基材は、塗膜の片面にのみ基材が存在していてもよいし、塗膜の両面に基材が存在していてもよい。上記塗膜付き基材は、ロールプレスに1回だけ通過させてもよいし複数回通過させてもよい。
半硬化処理及び/又は本硬化処理等における硬化処理の際に、平板プレスによる処理とロールプレスによる処理とは一方のみを実施してもよいし両方を実施してもよい。
【0112】
硬化反応を含む熱伝導材料(硬化物)の作製については、「高熱伝導性コンポジット材料」(シーエムシー出版、竹澤由高著)も参照できる。
【0113】
熱伝導材料(硬化物)の形状に特に制限はなく、用途に応じて様々な形状に成形できる。成形された熱伝導材料(硬化物)の典型的な形状としては、例えば、シート状が挙げられる。
つまり、本発明の組成物を用いて得られる熱伝導材料(硬化物)は、熱伝導シートであるのも好ましい。
また、本発明の組成物を用いて得られる熱伝導材料の熱伝導性は異方的ではなく等方的であるのが好ましい。
【0114】
熱伝導材料(硬化物)は、絶縁性(電気絶縁性)であるのが好ましい。言い換えると、本発明の組成物は、熱伝導性絶縁材料形成用組成物であるのが好ましい。
例えば、熱伝導材料の23℃相対湿度65%における体積抵抗率は、1010Ω・cm以上が好ましく、1012Ω・cm以上がより好ましく、1014Ω・cm以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、1018Ω・cm以下が好ましい。
【0115】
〔熱伝導材料の用途〕
本発明の組成物を用いて得られる熱伝導材料(硬化物)は放熱シート等の放熱材として使用でき、各種デバイスの放熱用途に使用できる。より具体的には、デバイス上に本発明の熱伝導材料を含む熱伝導層を配置して熱伝導層付きデバイスを作製して、デバイスからの発熱を効率的に熱伝導層で放熱できる。上記熱伝導層は、後述する熱伝導性多層シート含む熱伝導層であってもよい。
本発明の組成物を用いて得られる熱伝導材料は十分な熱伝導性を有するとともに、高い耐熱性を有しているため、パーソナルコンピュータ、一般家電、及び、自動車等の様々な電気機器に用いられているパワー半導体デバイスの放熱用途に適している。
更に、本発明の組成物を用いて得られる熱伝導材料は、半硬化状態であっても十分な熱伝導性を有するため、各種装置の部材の隙間等の、光硬化のための光を到達させるのが困難な部位に配置する放熱材としても使用できる。また、接着性にも優れるため、熱伝導性を有する接着剤としての使用も可能である。
【0116】
本発明の組成物を用いて得られる熱伝導材料は、本組成物から形成される部材以外の、他の部材と組み合わせて使用されてもよい。
例えば、シート状の熱硬化物(熱伝導シート)は、本組成物から形成された層の他の、シート状の支持体と組み合わせられていてもよい。
シート状の支持体としては、例えば、プラスチックフィルム、金属フィルム、及び、ガラス板が挙げられる。プラスチックフィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリオレフィン、セルロース誘導体、及び、シリコーンが挙げられる。金属フィルムとしては、例えば、銅フィルムが挙げられる。
シート状の硬化物(熱伝導シート)の膜厚は、100~300μmが好ましく、150~250μmがより好ましい。
【0117】
また、熱伝導材料である硬化物(好ましくは熱伝導シート)に対して、接着剤層及び/又は粘着剤層を組み合わせてもよい。
このような接着剤層及び/又は粘着剤層を介して、熱伝導材料(硬化物)をデバイスのような熱を移動させるべき対象物と接合することで、熱伝導材料(硬化物)と対象物との、より強固な接合を実現できる。
例えば、熱伝導性多層シートとして、熱伝導シートと、上記熱伝導シートの片面又は両面に設けられた、接着剤層又は粘着剤層と、を有する、熱伝導性多層シートを作製してもよい。
なお、上記熱伝導シートの片面又は両面には、それぞれ接着剤層及び粘着剤層の一方が設けられていてもよく、両方が設けられていてもよい。上記熱伝導シートの一面に接着剤層が設けられていて、他の面に粘着剤層が設けられていてもよい。また、上記熱伝導シートの片面又は両面には、接着剤層及び/又は粘着剤層が部分的に設けられていてもよく、全面的に設けられていてもよい。
なお、上述の通り、本発明において熱伝導シート等の熱伝導材料は半硬化状態(半硬化膜)であってもよく、熱伝導性多層シートにおける熱伝導シートが半硬化状態であってもよい。熱伝導性多層シートにおける接着剤層は硬化していてもよく半硬化状態であってもよく未硬化状態であってもよい。
【実施例
【0118】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきではない。
【0119】
[組成物の調製及び評価〔各種成分〕]
以下に、実施例及び比較例で使用した各種成分を示す。
【0120】
<特定化合物>
以下に、実施例で使用した特定化合物を示す。
【0121】
【化10】
【0122】
<比較用化合物>
以下に、比較例で使用した比較用化合物を示す。
【0123】
【化11】
【0124】
(特定化合物A-1の合成方法)
塩化シアヌル(15.5g,0.083mol)及び2-ブタノン(75ml)を混合した混合液を氷冷したところに、5-アミノ-o-クレゾール(20.7g,0.168mol)を少量ずつ添加した。その後、上記混合液に、酢酸ナトリウム三水和物(22.8g,0.168mol)を水(32ml)に溶解させた水溶液を添加した。上記混合液を40℃で2時間撹拌した後、スルファニルアミド(15.8g,0.092mol)を添加し、80℃で2時間撹拌した。室温まで冷却し、上記混合液に炭酸ナトリウム(21.3g,0.20mol)を水(134ml)に溶解させた水溶液を滴下して30分間撹拌した。上記混合液を静置して水相を除去した後、有機相をセライトろ過して、34mlのエタノールを添加した。得られた有機相に、撹拌しながら水(435ml)を滴下し、2時間撹拌した後、析出した結晶をろ取し、乾燥することで、特定化合物A-1を得た。
特定化合物A-1の合成方法と同様の方法で、特定化合物A-2~A-4を合成した。特定化合物A-6の合成は、WO2007/139729号に記載の方法で合成した。
【0125】
<エポキシ化合物>
以下に、実施例及び比較例で使用したエポキシ化合物を示す。
【0126】
【化12】
【0127】
<硬化促進剤>
以下に、実施例及び比較例で使用した硬化促進剤を示す。
【0128】
【化13】
【0129】
<無機物>
以下に、実施例及び比較例で使用した無機物を示す。
・HP-40 MF-100:凝集状窒化ホウ素、平均粒径:40μm、水島合金鉄社製
・AA-3:酸化アルミニウム、平均粒径:3μm、住友化学社製
・AA-04:酸化アルミニウム、平均粒径:0.4μm、住友化学社製
・BN-A:下記に示す製造方法Aで製造された表面修飾窒化ホウ素
・BN-B:下記に示す製造方法Bで製造された表面修飾窒化ホウ素
・BN-C:下記に示す製造方法Cで製造された表面修飾窒化ホウ素
・BN-D:下記に示す製造方法Dで製造された表面修飾窒化ホウ素
・BN-E:下記に示す製造方法Eで製造された表面修飾窒化ホウ素
【0130】
(製造方法A)
窒化ホウ素(HP-40 MF100)(15g)に対し、プラズクリーナーPDC210(ヤマト科学社製)を用いて、真空プラズマ処理(ガス種:O、圧力:30Pa、出力:500W)を行った。真空プラズマ処理を5分行うごとに、処理対象の窒化ホウ素を撹拌し、合計処理時間が30分になるまで真空プラズマ処理を行い、変性窒化ホウ素粒子Aを得た。
得られた変性窒化ホウ素粒子Aをアセトニトリル(30ml)中で撹拌し、上記アセトニトリル中に更に、シランカップリング剤(信越化学社製:X12-984S)の加水分解調整液(0.42g)を添加した。上記アセトニトリルを室温で3時間撹拌して、吸着処理を行った。
上記アセトニトリル中の変性窒化ホウ素粒子Aをろ取した後、ろ取された変性窒化ホウ素粒子Aをアセトニトリル(30ml)で洗浄し、40℃のオーブンで乾燥させることで、BN-Aを得た。
なお、シランカップリング剤の加水分解調整液は、シランカップリング剤(1g)と、エタノール(500μl)、2-プロパノール(500μl)、水(720μl)、及び、酢酸(100μl)を混合し、1時間撹拌することで調製した。以降の実施例又は比較例においても、シランカップリング剤の加水分解調整液の配合は、特段の断りがない限り、同様である。
また、「X12-984S」は、エポキシ基及びエトキシシリル基を有する、ポリマータイプのシランカップリング剤である。
【0131】
(製造方法B)
NaOH水溶液(NaOH:40g/水:400ml)に、窒化ホウ素(HP-40 MF-100、50g)を添加して撹拌した。上記NaOH水溶液に、更に、過硫酸ナトリウム水(過硫酸ナトリウム:9.6g/水:100ml)を添加した後、上記NaOH水溶液を50℃に昇温し、更に3時間撹拌した。撹拌には、スリーワンモーター(新東科学社製)を用いて回転数150rpmで行った。上記NaOH水溶液を室温まで冷却した後、上記NaOH水溶液中の窒化ホウ素粒子Bをろ取し、ろ取された窒化ホウ素粒子Bを、水(500ml)、及び、アセトニトリル(250ml)で洗浄することで変性窒化ホウ素粒子Bを得た。
得られた変性窒化ホウ素粒子Bをアセトニトリル(100ml)中で撹拌し、上記アセトニトリル中に更に、シランカップリング剤(信越化学社製:X12-984S)の加水分解調整液(1.25g)を添加した。上記アセトニトリルを室温で3時間撹拌して、吸着処理を行った。上記アセトニトリル中の変性窒化ホウ素粒子Bをろ取した後、ろ取された変性窒化ホウ素粒子をアセトニトリル(100ml)で洗浄し、40℃のオーブンで乾燥させることで、BN-Bを得た。
【0132】
(製造方法C)
水(400ml)に窒化ホウ素(HP-40 MF-100、50g)を添加して撹拌して混合液を得た。上記混合液に更に次亜塩素酸ナトリウム水(次亜塩素酸ナトリウム5水和物:48g/水:100ml)を添加した後、上記混合液を50℃に昇温し、更に3時間撹拌した。撹拌には新東科学株式会社製スリーワンモーターを用い、150rpmで行った。
上記混合液を室温まで冷却した後、上記混合液中の窒化ホウ素粒子をろ取し、ろ取された窒化ホウ素粒子を、水(500ml)、及び、アセトニトリル(250ml)で洗浄し、変性窒化ホウ素粒子Cを得た。
得られた変性窒化ホウ素粒子Cをアセトニトリル(100ml)中で撹拌し、上記アセトニトリル中に更に、シランカップリング剤(X12-984S)の加水分解調整液(1.25g)を添加した。上記アセトニトリルを室温で3時間撹拌して、吸着処理を行った。上記アセトニトリル中の変性窒化ホウ素粒子Cをろ取した後、ろ取された変性窒化ホウ素粒子Cを、アセトニトリル(100ml)で洗浄し、40℃のオーブンで乾燥させることで、BN-Cを得た。
【0133】
(製造方法D)
窒化ホウ素(HP-40 MF-100、50g)を1000℃で1時間加熱して変性窒化ホウ素粒子Dを得た。得られた変性窒化ホウ素Dを水(500ml)でリスラリー洗浄、ろ過した後、アセトニトリル(100ml)中で撹拌し、上記アセトニトリル中に更に、シランカップリング剤(KBM-403)の加水分解調整液(1.25g)を添加した。上記アセトニトリルを室温で3時間撹拌して、吸着処理を行った。上記アセトニトリル中の変性窒化ホウ素粒子Dをろ取した後、ろ取された変性窒化ホウ素粒子Dを、アセトニトリル(100ml)で洗浄し、40℃のオーブンで乾燥させることで、BN-Dを得た。
【0134】
(製造方法E)
窒化ホウ素(HP-40 MF-100、50g)を900℃で4時間加熱して変性窒化ホウ素粒子Eを得た。得られた変性窒化ホウ素Eを水(500ml)でリスラリー洗浄、ろ過した後、アセトニトリル(100ml)中で撹拌し、上記アセトニトリル中に更に、シランカップリング剤(KBM-403)の加水分解調整液(1.25g)を添加した。上記アセトニトリルを室温で3時間撹拌して、吸着処理を行った。上記アセトニトリル中の変性窒化ホウ素粒子Eをろ取した後、ろ取された変性窒化ホウ素粒子Eを、アセトニトリル(100ml)で洗浄し、40℃のオーブンで乾燥させることで、BN-Eを得た。
【0135】
<溶媒>
溶媒として、シクロペンタノンを使用した。
【0136】
〔組成物の調製〕
下記表1に示す組み合わせのエポキシ化合物と特定化合物を、下記表1に記載の添加量の比で配合した混合体を調製した。
得られた混合体の全量、溶媒、及び、硬化促進剤の順で混合した後、無機物を添加した。得られた混合物を自転公転ミキサー(THINKY社製、あわとり練太郎ARE-310)で5分間処理して、各実施例又は各比較例の組成物(熱伝導材料形成用組成物)を得た。
各成分の混合比は、最終的に得られる組成物中における全固形分に対する各成分の含有量の配合比(質量%)が、表1に示す通りになるように調整した。
【0137】
ここで、溶媒の添加量は、組成物の固形分濃度が50~80質量%になる量とした。
なお、組成物の固形分濃度は、組成物の粘度がそれぞれ同程度になるように、上記範囲内で組成物ごとに調整した。
無機物の添加量(窒化ホウ素とその他の無機物との合計添加量)は、下記表1に示す添加量とした。
また、無機物は、各無機物の含有量の比(質量比)が下記表1に示す関係を満たすように混合して使用した。
【0138】
[評価]
〔熱伝導率の評価〕
<半硬化シート(半硬化膜)の作製>
マイクロメーター付きアプリケーターを用いて、離型処理したポリエステルフィルム(NP-100A パナック社製、膜厚100μm)の離型面上に、表1に記載の通り調製した各実施例又は比較例の組成物を均一に塗布し、120℃で5分間乾燥して半硬化シート(半硬化膜)を作製した。
【0139】
<熱伝導シートの作製>
得られた半硬化シートに離型処理したポリエステルフィルムを被せ、空気下で熱プレス(熱板温度180℃、圧力20MPaで5分間処理)した。その後、常圧下で180℃で90分加熱処理して樹脂シートを得た。樹脂シートの両面にあるポリエステルフィルムを剥がし、平均膜厚120μmの熱伝導性シート(熱伝導材料)を得た。
【0140】
<評価方法>
得られた熱伝導シートについて、以下の方法で熱伝導率を測定した。
(1)NETZSCH社製の「LFA467」を用いて、レーザーフラッシュ法で熱伝導性シートの厚み方向の熱拡散率を測定した。
(2)メトラー・トレド社製の天秤「XS204」を用いて、熱伝導性シートの比重をアルキメデス法(「固体比重測定キット」使用)で測定した。
(3)セイコーインスツル社製の「DSC320/6200」を用いて、10℃/分の昇温条件の下、25℃における熱伝導性シートの比熱を求めた。
(4)得られた熱拡散率に比重及び比熱を乗じて、熱伝導性シートの熱伝導率を算出した。
【0141】
測定された熱伝導率を下記基準に照らして区分し、熱伝導性を評価した。
A:比較例1の熱伝導率との差が、+1W/m・K以上
B:比較例1の熱伝導率との差が、+1W/m・K未満
【0142】
〔ハンドリング性(経時保存性)の評価〕
上記熱伝導率の評価において示したのと同様にして半硬化シートを作製し、その後、所定時間、室温(25℃)で静置した。
半硬化シートを、5cm×10cmの短冊状に切り出し、折り曲げ試験用のサンプルを作製した。得られたサンプルについて、円筒形マンドレル試験機(コーテック株式会社製)を用いて、JIS K 5600-5-1に記載の方法に従って、折り曲げ試験を行った。直径が32mmである円筒形マンドレルを使用し、半硬化シートが破断するか否かを評価した。なお、室温にて経時静置した半硬化シートの折り曲げ試験を数時間おきに実施した。
【0143】
破断時の静置時間を下記基準に照らして区分し、ハンドリング性(経時保存性)を評価した。
A:72時間以上静置後においても、破断しない。
B:48時間以上72時間未満静置後に、破断した。
C:48時間未満静置後に、破断した。
【0144】
〔ガラス転移温度Tgの評価〕
上記<熱伝導シートの作製>で得られた熱伝導シートのTgを測定した。
Tg測定には、ユービーエム社製の動的粘弾性測定装置「Rheogel-E4000」を使用し、周波数1Hz時のtanδピークをTgとした。昇温速度は、5℃/minで、25~300℃の範囲で測定を実施した。
【0145】
下記基準に照らして区分し、Tgを評価した。
A:Tgが160℃以上
B:Tgが160℃未満
【0146】
[結果]
以下、表1に各実施例又は比較例で使用した組成物の固形分の配合、及び、試験の結果を示す。
【0147】
【表1】
【0148】
表に示す結果より、本発明の組成物を使用すれば本発明の効果を実現できることが確認された。
実施例1~4及び6と、実施例5との比較から、特定化合物が更にフェノール性水酸基を有するか、及び、特定化合物が式(2)で表される化合物であるかの少なくとも一方を満たす場合、経時保存性がより優れることが確認された。
また、実施例1~4と、実施例6との比較から、特定化合物が更にフェノール性水酸基を有し、かつ、Xが置換基を有していてもよいベンゼン環基を表すか、及び、特定化合物が式(Z1)で表される化合物であるかの少なくとも一方を満たす場合、経時安定性が更に優れることが確認された。