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特許7582936熱可塑性エラストマーをベースとする発泡体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】熱可塑性エラストマーをベースとする発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/228 20060101AFI20241106BHJP
   C08J 9/18 20060101ALI20241106BHJP
   A43B 13/04 20060101ALI20241106BHJP
   A43B 17/00 20060101ALI20241106BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20241106BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
C08J9/228 CFF
C08J9/18 CET
A43B13/04 A
A43B17/00 A
C08L75/04
C08L25/04
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021514417
(86)(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2019074409
(87)【国際公開番号】W WO2020053354
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】18194415.8
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】グートマン,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ペゼルト,エルマー
(72)【発明者】
【氏名】ラップ,フロリアン トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ヨップ,デニス
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108239386(CN,A)
【文献】国際公開第2010/010010(WO,A1)
【文献】特表2021-522368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
C08L
C08K
A43B 1/00-23/30
A43C 1/00-19/00
A43D 1/00-999/00
B29D 35/00-35/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)60~94質量%の、成分Iとしての熱可塑性ポリウレタン、
b)5~30質量%の、成分IIとしてのスチレンポリマー、ここで前記スチレンポリマーがアタクチックポリスチレンである、
c)1~10質量%の、成分IIIとしての衝撃改質剤、ここで前記衝撃改質剤がスチレンブロックコポリマーまたは高衝撃ポリスチレンである、
を含み、成分IIおよび成分IIIは、マレイン酸由来の構造と無水マレイン酸由来の構造のいずれも含まず、成分I、IIおよびIIIの全体が100質量%となる、
組成物(Z)から作られたビーズ発泡体。
【請求項2】
発泡体ビーズの平均直径が0.5~20mmである、請求項1に記載のビーズ発泡体。
【請求項3】
i. 本発明の組成物(Z)を提供する工程、
ii. 加圧下で前記組成物に発泡剤を含浸させる工程、
iii. 圧力低下により前記組成物を膨張させる工程
を含む、請求項1または2に記載のビーズ発泡体の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載のビーズ発泡体から作られた成形体。
【請求項5】
前記成形体の引張強さが600kPaを超える、請求項4に記載の成形体。
【請求項6】
破断伸びが100%を超える、請求項4または5に記載の成形体。
【請求項7】
10%圧縮時の圧縮応力が15kPaを超える、請求項4、5または6に記載の成形体。
【請求項8】
前記成形体の密度が75~375kg/mである、請求項4から7のいずれか一項に記載の成形体。
【請求項9】
前記成形体の反発弾性が55%を超える、請求項4から8のいずれか一項に記載の成形体。
【請求項10】
前記成形体が靴の中間ソール、インサートまたは緩衝要素であり、前記靴が屋外用シューズ、スポーツシューズ、サンダル、ブーツまたは安全靴である、請求項4から9のいずれか一項に記載の成形体。
【請求項11】
(i) 前記発泡体ビーズを適切な型に導入する工程、
(ii) 工程(i)からの発泡体ビーズを融解する工程
を含む、請求項4から9のいずれか一項に記載の成形体の製造方法。
【請求項12】
請求項4から9のいずれか一項に記載の成形体を含む靴。
【請求項13】
靴の中間ソール、靴のインソール、靴のコンビソール、靴の緩衝要素、自転車のサドル、自転車のタイヤ、減衰要素、緩衝材、マットレス、下張り、グリップ、保護フィルムのための、自動車の内装部門または自動車の外装部門の構成要素、ボールおよびスポーツ用品における、または床カバーとしての請求項6から11のいずれか一項に記載の成形体の製造に、請求項1または2に記載のビーズ発泡体を使用する方法。
【請求項14】
前記組成物(Z)が、80~94質量%の、成分Iとしての熱可塑性ポリウレタンを含む、請求項1または2に記載のビーズ発泡体。
【請求項15】
a. 72~94質量%の、成分Iとしての熱可塑性ポリウレタン、
b. 5~20質量%の、成分IIとしてのスチレンポリマー、
c. 1~8質量%の、成分IIIとしての衝撃改質剤
で作られ、成分I、IIおよびIIIの全体が100質量%となる組成物(Z)を含む、請求項1または2に記載のビーズ発泡体。
【請求項16】
a. 72~86質量%の、成分Iとしての熱可塑性ポリウレタン、
b. 10~20質量%の、成分IIとしてのスチレンポリマー、
c. 4~8質量%の、成分IIIとしての衝撃改質剤
で作られ、成分I、IIおよびIIIの全体が100質量%となる組成物(Z)を含む、請求項1または2に記載のビーズ発泡体。
【請求項17】
a. 91質量%の、成分Iとしての熱可塑性ポリウレタン、
b. 5質量%の、成分IIとしてのスチレンポリマー、
c. 4質量%の、成分IIIとしての衝撃改質剤
で作られ、成分I、IIおよびIIIの全体が常に100質量%となる組成物(Z)を含む、請求項1または2に記載のビーズ発泡体。
【請求項18】
成分IIとしての前記スチレンポリマーの引張弾性率が2500MPaより高い(DIN EN ISO527-1/2、2012年6月)、請求項15に記載のビーズ発泡体。
【請求項19】
成分IIIとしての前記衝撃改質剤の引張弾性率が2700MPaより低い(DIN EN ISO527-1/2、2012年6月)、請求項1または2に記載のビーズ発泡体。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
熱可塑性ポリウレタンまたは他のエラストマーをベースとするビーズ発泡体(または発泡体ビーズ)、およびそれから製造された成形体は既知であり(例えばDE4126499、WO94/20568、WO2007/082838A1、WO2017030835、WO2013/153190A1、WO2010010010)、および多くの用途で使用することができる。
【0002】
本発明の目的のために、「ビーズ発泡体」または「発泡体ビーズ」という用語は、発泡体ビーズの平均直径が0.5~30mm、好ましくは1~15mm、および特に3~12mmであるビーズ形態の発泡体を意味する。非球状、例えば細長いまたは円柱状の発泡体ビーズの場合、直径は最も長い寸法を意味する。
【0003】
原則として、できるだけ低い温度で対応する成形体を得るために加工性を向上させ、有利な機械的特性を伴ったビーズ発泡体が必要とされている。これは、ビーズ発泡体の融解のためのエネルギーを蒸気などの補助媒体を介して導入する、現在広く使用されている融解プロセスに特に関連する。なぜなら、ここでより良好な接着結合が達成され、同時に材料または発泡体構造の損傷が低減されるからである。
【0004】
発泡体ビーズの適切な接着結合または融解は、それから製造される成形品の有利な機械的特性を得るために不可欠である。発泡体ビーズの接着結合または融解が不十分な場合、発泡体ビーズの特性を完全に活用することができず、得られる成形品の機械的特性全体に悪影響がもたらされる。成形体に弱くなった点がある場合も同様の考慮が適用される。このような場合、機械的特性は弱くなった部分で不利であり、結果には上記と同じになる。
【0005】
「有利な機械的特性」という表現は、意図する用途に関連して解釈される。本発明の主題にとって最も重要な用途は、減衰および/または緩衝が関連する靴の構成成分、例えば中間ソールおよびインサートのための成形体にビーズ発泡体を使用することができる、靴の分野における用途である。
【0006】
上記の靴の分野またはスポーツシューズの分野における用途について、ビーズ発泡体から製造された成形体の有利な引張特性および曲げ特性を得るだけでなく、特定の用途にとって有利な反発弾性および圧縮特性を有し、かつ密度が最小限の成形体を製造する能力を有することが必要とされている。ここで、密度と圧縮特性との間には関係性がある。なぜなら圧縮特性は、用途の要件を遵守するための成形品における最小の達成可能な密度の尺度だからである。圧縮特性が低いレベルのビーズ発泡体で作られた成形体は、原則として、より高い密度を必要とする。従って、圧縮特性が高いレベルのビーズ発泡体で作られた成形体よりも、同様の最終の特性を生成するために、より多くの材料を必要とする。この関係性は、特定の用途にとってのビーズ発泡体の有用性を決定づける。これに関連して、靴の分野における用途にとって特に有利なビーズ発泡体は、ビーズ発泡体から製造された成形体の圧縮特性が、小さな力に曝されるにはかなり低いレベルであり、一方で靴の使用領域において着用者にとって十分な変形を示すものである。
【0007】
別の問題は、押出しによるビーズ発泡体の大規模な工業的製造において、必要な量を可能な最短時間で製造するために、材料のスループットを最大化することが望ましいということである。しかしながら、ここで材料の迅速な処理は、材料の品質低下につながり、得られるビーズ発泡体の不安定性および/または崩壊にまで及ぶ。従って、製造時間が最小限のビーズ発泡体を提供する必要性が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】DE4126499
【文献】WO94/20568
【文献】WO2007/082838A1
【文献】WO2017030835
【文献】WO2013/153190A1
【文献】WO2010010010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って本発明の目的は、記載の目的に適したビーズ発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、
a)60~94質量%の、成分Iとしての熱可塑性ポリウレタン、
b)5~30質量%の、成分IIとしてのスチレンポリマー、
c)1~10質量%の、成分IIIとしての衝撃改質剤
を含み、成分I、IIおよびIIIの全体が100質量%となる、
組成物(Z)から作られたビーズ発泡体によって達成された。
【発明を実施するための形態】
【0011】
成分Iとして使用する熱可塑性ポリウレタンは、よく知られている。これは、(a)イソシアネートと、(b)イソシアネート反応性化合物、例えば、数平均モル質量が500g/mol~100000g/molのポリオール(b1)、および任意に、モル質量が50g/mol~499g/molの鎖延長剤(b2)とを、任意に(c)触媒および/または(d)従来の助剤および/または追加物質の存在下で、反応させることによって、製造する。
【0012】
本発明の目的のために、(a)イソシアネートと、(b)イソシアネート反応性化合物、例えば、数平均モル質量が500g/mol~100000g/molのポリオール(b1)、およびモル質量が50g/mol~499g/molの鎖延長剤(b2)との、任意に(c)触媒および/または(d)従来の助剤および/または追加物質の存在下における反応によって得ることができる熱可塑性ポリウレタンが好ましい。
【0013】
成分(a)イソシアネート、(b)イソシアネート反応性化合物、例えばポリオール(b1)、および任意に鎖延長剤(b2)も、個々に、または一緒に、構造成分と定義する。構造成分は、触媒および/または慣用の助剤および/または追加物質と一緒に、出発材料とも定義する。
【0014】
構造成分(b)の使用量のモル比は、熱可塑性ポリウレタンの硬度およびメルトインデックスを調整するために変化させることができる。硬度および溶融粘度は、TPUの一定の分子量で成分(b)中の鎖延長剤の含有量が増加するとそれに伴って増加するが、メルトインデックスは減少する。
【0015】
熱可塑性ポリウレタンの製造のために、構造成分(a)および(b)(好ましい実施形態では(b)は鎖延長剤も含む)を、触媒(c)および任意に助剤および/または追加物質の存在下で、ジイソシアネート(a)のNCO基の、成分b)のヒドロキシ基全体に対する当量比が1:0.8~1:1.3の範囲にあるような量で反応させる。
【0016】
この比を表す別の変数が指数である。指数は、反応中に使用されるすべてのイソシアネート基の、イソシアネート反応性基、すなわち、特にポリオール成分および鎖延長剤の反応性基に対する比によって定義される。指数が1000の場合、各イソシアネート基に対して活性水素原子が1個存在する。指数が1000を超えると、イソシアネート反応性基よりも多くのイソシアネート基が存在する。
【0017】
ここで当量比1:0.8は、指数1250(指数1000=1:1)に相当し、および比1:1.3は、指数770に相当する。
【0018】
好ましい実施形態では、上記の成分の反応における指数は、965~1110の範囲、好ましくは970~1110の範囲、特に好ましくは980~1030の範囲にあり、および非常に特に好ましくは985~1010の範囲にある。
【0019】
本発明において、熱可塑性ポリウレタンの質量平均モル質量(M)が少なくとも60000g/mol、好ましくは少なくとも80000g/mol、および特に好ましくは100000g/molより大きい熱可塑性ポリウレタンの製造が特に好ましい。熱可塑性ポリウレタンの質量平均モル質量の上限は、非常に一般的には、加工性によって、および所望の特性プロファイルによって決定される。熱可塑性ポリウレタンの数平均モル質量は、好ましくは80000~300000g/molである。熱可塑性ポリウレタン、および構造成分(a)および(b)についての上記平均モル質量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(例えば、DIN55672-1、2016年3月、または同様の方法に準拠する)によって決定される質量平均である。
【0020】
使用することができる有機イソシアネート(a)は、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族および/または芳香族イソシアネートである。
【0021】
使用する脂肪族ジイソシアネートは、慣用の脂肪族および/または脂環式ジイソシアネート、例えば、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-および/またはオクタメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、2-エチルテトラメチレン1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、ブチレン1,4-ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4-および/または1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、1-メチルシクロヘキサン2,4-および/または2,6-ジイソシアネート、メチレンシクロヘキシル4,4’-、2,4’-および/または2,2’-ジイソシアネート(H12MDI)である。
【0022】
適した芳香族ジイソシアネートは特に、ナフチレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4-および/または2,6-ジイソシアネート(TDI)、3,3’-ジメチル-4,4‘-ジイソシアナトビフェニル(TODI)、pフェニレンジイソシアネート(PDI)、ジフェニルエタン4,4‘-ジイソシアネート(EDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)である。ここで、用語MDIとは、ジフェニルメタン2,2’、2,4’-および/または4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルジイソシアネート、1,2-ジフェニルエタンジイソシアネートおよび/またはフェニレンジイソシアネート、またはH12MDI(メチレンジシクロヘキシル4,4’-ジイソシアネート)を意味する。
【0023】
混合物も原則として使用することができる。混合物の例は、メチレンジフェニル4,4’-ジイソシアネートと並んで少なくともさらにメチレンジフェニルジイソシアネートを含む混合物である。ここで、用語「メチレンジフェニルジイソシアネート」とは、ジフェニルメタン2,2’-、2,4’-および/または4,4’-ジイソシアネート、または2種または3種の異性体の混合物を意味する。従って、さらなるイソシアネートとして、例えばジフェニルメタン2,2’-または2,4’-ジイソシアネート、または2種または3種の異性体の混合物を使用することが可能である。この実施形態では、ポリイソシアネート組成物は、他の上記のポリイソシアネートを含むこともできる。
【0024】
混合物の他の例は、
4,4‘-MDIおよび2,4‘-MDI、または
4,4‘-MDIおよび3,3‘-ジメチル-4,4‘-ジイソシアナトビフェニル(TODI)または
4,4‘-MDIおよびH12MDI(4,4’-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート)または
4,4‘-MDIおよびTDI;または
4,4‘-MDIおよび1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)
を含むポリイソシアネート組成物である。
【0025】
本発明により、特に3種以上のイソシアネートを使用してもよい。ポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネート組成物全体に基づいて、2~50%の量の4,4’-MDI、およびポリイソシアネート組成物全体に基づいて、3~20%の量のさらなるイソシアネートを含むのが通常である。
【0026】
さらに、例えば前記の高官能性ポリイソシアネートまたはポリオールか、または複数のイソシアネート反応性官能基を有する他の高官能性分子などの架橋剤も使用することができる。本発明の範囲内において、ヒドロキシル基に関連して、使用するイソシアネート基の過剰によって生成物を架橋することも可能である。高官能性イソシアネートの例は、トリイソシアネート、例えばトリフェニルメタン4,4’,4”-トリイソシアネート、およびイソシアヌレート、および前記のジイソシアネートのシアヌレート、およびジイソシアネートと水との部分的反応によって得ることができるオリゴマー、例えば前記のジイソシアネートのビウレット、および半ブロック化されたジイソシアネートと、平均で2個を超える、好ましくは3個以上のヒドロキシル基を有するポリオールとの制御された反応によって得ることができるオリゴマーである。
【0027】
ここで、架橋剤、すなわち高官能性イソシアネート(a)および高官能性ポリオール(b)の量は、成分(a)~(d)の混合物全体に基づいて、3質量%、好ましくは1質量%を超えてはならない。
【0028】
ポリイソシアネート組成物は、1種以上の溶媒を含んでもよい。適した溶媒は、当業者に知られている。適した例は、酢酸エチル、メチルエチルケトンおよび炭化水素などの非反応性溶媒である。
【0029】
イソシアネート反応性化合物(b1)は、好ましくは500g/mol~8000g/mol、より好ましくは500g/mol~5000g/mol、特に500g/mol~3000g/molであるモル質量のものである。モル質量は特に500g/mol~8000g/molの範囲である。
【0030】
イソシアネート反応性化合物(b)中のツェレビチノフ活性(Zerewitinoff activity)を示す水素原子の統計的平均数は、少なくとも1.8個、多くても2.2個、好ましくは2個である;この数は、イソシアネート反応性化合物(b)の官能性とも定義され、モル量に基づいて、1分子について理論的に計算された分子中のイソシアネート反応性基の量を表す。
【0031】
イソシアネート反応性化合物は、好ましくは実質的に直鎖状であり、1種のイソシアネート反応性物質または様々な物質の混合物であり、そして混合物は、記載の要件を満たす。
【0032】
成分(b1)および(b2)の比は、PCT/EP2017/079049に開示されている式によって計算することができる、所望の硬質セグメント含有量が得られるように変化させる。
【0033】
ここで適した硬質セグメント含有量は、60%未満、好ましくは40%未満、特に好ましくは25%未満である。
【0034】
イソシアネート反応性化合物(b1)は、好ましくは、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基およびカルボン酸基から選択される反応性基を有する。ここで、ヒドロキシ基が好ましく、およびここで第1級ヒドロキシ基が非常に特に好ましい。イソシアネート反応性化合物(b)が、ポリエステルオール、ポリエーテルオールおよびポリカーボネートジオールの群から選択されることが特に好ましく、これらも「ポリオール」という用語に網羅される。
【0035】
本発明における適したポリマーは、ホモポリマー、例えばポリエーテルオール、ポリエステルオール、ポリカーボネートジオール、ポリカーボネート、ポリシロキサンジオール、ポリブタジエンジオール、およびブロックコポリマー、およびハイブリッドポリオール、例えばポリ(エステル/アミド)である。本発明における好ましいポリエーテルオールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラヒドロフラン(PTHF)、ポリトリメチレングリコールである。好ましいポリエステルポリオールは、ポリアジペート、ポリコハク酸エステルおよびポリカプロラクトンである。
【0036】
別の実施形態では、本発明は、ポリオール組成物が、ポリエーテルオール、ポリエステルオール、ポリカプロラクトンおよびポリカーボネートからなる群から選択されるポリオールを含む、上記の熱可塑性ポリウレタンを提供する。
【0037】
適したブロックコポリマーの例は、エーテルおよびエステルブロックを有するもの、例えばポリエチレンオキシドまたはポリプロピレンオキシド末端ブロックを有するポリカプロラクトン、およびポリカプロラクトン末端ブロックを有するポリエーテルである。本発明における好ましいポリエーテルオールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラヒドロフラン(PTHF)およびポリトリメチレングリコールである。ポリカプロラクトンがさらに好ましい。
【0038】
特に好ましい実施形態では、使用するポリオールのモル質量Mnは、500g/mol~4000g/molの範囲にあり、好ましくは500g/mol~3000g/molの範囲にある。
【0039】
よって本発明の別の実施形態は、ポリオール組成物中に含まれる少なくとも1種のポリオールのモル質量Mnが、500g/mol~4000g/molの範囲にある、上記の熱可塑性ポリウレタンを提供する。
【0040】
本発明においては特に、様々なポリオールの混合物を使用することも可能である。
【0041】
本発明の一実施形態では、熱可塑性ポリウレタンの製造のために、少なくともポリテトラヒドロフランを含む少なくとも1種のポリオール組成物を使用する。本発明のポリオール組成物は、ポリテトラヒドロフランと並んで他のポリオールを含むこともできる。
【0042】
本発明における他のポリオールとして適した材料は、例えば、ポリエーテル、およびポリエステル、ブロックコポリマー、およびハイブリッドポリオール、例えばポリ(エステル/アミド)である。適したブロックコポリマーの例は、エーテルブロックおよびエステルブロックを有するもの、例えば、ポリエチレンオキシドまたはポリプロピレンオキシド末端ブロックを有するポリカプロラクトン、およびポリカプロラクトン末端ブロックを有するポリエーテルである。本発明における好ましいポリエーテルオールは特に、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールである。他のポリオールとして、ポリカプロラクトンがさらに好ましい。
【0043】
適したポリオールの例は、ポリトリメチレンオキシドおよびポリテトラメチレンオキシドなどのポリエーテルオールである。
【0044】
よって本発明の別の実施形態は、ポリオール組成物が、少なくとも1種のポリテトラヒドロフラン(PTHF)と、別のポリテトラメチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリカプロラクトンからなる群から選択される少なくとも1種の他のポリオールとを含む、上記の熱可塑性ポリウレタンを提供する。
【0045】
特に好ましい実施形態では、ポリテトラヒドロフランの数平均モル質量Mnは、500g/mol~5000g/molの範囲、より好ましくは550~2500g/molの範囲、特に好ましくは650~2000g/molの範囲、および非常に好ましくは650~1400g/molの範囲にある。
【0046】
ポリオール組成物の組成は、本発明の目的のために大きく変化させることができる。例えば、第1のポリオール、好ましくはポリテトラヒドロフランの含有量は、15%~85%の範囲、好ましくは20%~80%の範囲、より好ましくは25%~75%の範囲にあることが可能である。
【0047】
本発明のポリオール組成物は、例えば溶媒を含むこともできる。適した溶媒は、それ自体当業者に知られている。
【0048】
ポリテトラヒドロフランが使用される限り、ポリテトラヒドロフランの数平均モル質量Mnは、例えば、500g/mol~5000g/molの範囲、好ましくは500g/mol~3000g/molの範囲にある。ポリテトラヒドロフランの数平均モル質量Mnが500~1400g/molの範囲にあることがさらに好ましい。
【0049】
ここで数平均モル質量Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィーによって上記のように決定することができる。
【0050】
本発明の別の実施形態は、ポリオール組成物が、500g/mol~5000g/molの範囲の数平均モル質量Mnのポリテトラヒドロフランからなる群から選択されるポリオールを含む、上記の熱可塑性ポリウレタンも提供する。
【0051】
本発明において、例えば、様々なポリテトラヒドロフランの混合物、すなわち様々なモル質量のポリテトラヒドロフランの混合物を使用することも可能である。
【0052】
使用する鎖延長剤(b2)は、好ましくは、モル質量が50g/mol~499g/molの、官能基とも定義される2個のイソシアネート反応性基を好ましくは有する、脂肪族、芳香脂肪族、芳香族および/または脂環式化合物である。好ましい鎖延長剤は、ジアミンおよび/またはアルカンジオールであり、より好ましくは、アルキレン部分に2~10個の炭素原子、好ましくは3~8個の炭素原子を有するアルカンジオールであり、これらはより好ましくは、第1級ヒドロキシ基のみを有する。好ましい実施形態では、鎖延長剤(b2)を使用し、これらは好ましくは、モル質量が50g/mol~499g/molの脂肪族、芳香脂肪族、芳香族および/または脂環式化合物であり、好ましくは、官能基とも定義される2個のイソシアネート反応性基を有する。
【0053】
鎖延長剤が、エチレン1,2-グリコール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ブタン-2,3-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ネオペンチルグリコール、およびヒドロキノンビス(ベータ-)エーテル(HQEE)からなる群から選択される少なくとも1種の鎖延長剤であることが好ましい。特に適した鎖延長剤は、1,2-エタンジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオールおよびヘキサン-1,6-ジオール、および上記の鎖延長剤の混合物からなる群から選択されるものである。特定の鎖延長剤および混合物の例は、とりわけ特にPCT/EP2017/079049に開示されている。
【0054】
好ましい実施形態では、触媒(c)を構造成分と共に使用する。これらは特に、イソシアネート(a)のNCO基とイソシアネート反応性化合物(b)のヒドロキシ基、および使用する場合は鎖延長剤との間の反応を促進する触媒である。
【0055】
さらなる適した触媒の例は、スズのオルガニル化合物、チタンのオルガニル化合物、ジルコニウムのオルガニル化合物、ハフニウムのオルガニル化合物、ビスマスのオルガニル化合物、亜鉛のオルガニル化合物、アルミニウムのオルガニル化合物および鉄のオルガニル化合物からなる群から選択される有機金属化合物、例えばスズのオルガニル化合物、好ましくはジアルキルスズ化合物、例えば脂肪族カルボン酸のジメチルスズまたはジエチルスズ、またはスズ-オルガニル化合物、好ましくはスズジアセテート、スズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ビスマス化合物、例えばアルキルビスマス化合物など、または鉄化合物、好ましくは鉄(III)アセチルアセトネート、またはカルボン酸の金属塩、例えば、スズ(II)イソオクタノエート、スズジオクタノエート、チタンエステル(titanic ester)またはビスマス(III)ネオデカノエートである。特に好ましい触媒は、スズジオクタノエート、ビスマスデカノエートおよびチタンエステルである。触媒(c)の好ましく使用される量は、イソシアネート反応性化合物(b)100質量部あたり0.0001~0.1質量部である。触媒(c)と並んで構造成分(a)~(b)に添加することができる他の化合物は、従来の助剤(d)である。例として、界面活性物質、充填剤、難燃剤、核剤、酸化安定剤、潤滑剤および離型体補助剤、染料および顔料、および任意に、好ましくは加水分解、光、熱または変色に関する安定剤、無機および/または有機充填剤、補強剤および/または可塑剤が挙げられる。
【0056】
適した染料および顔料は、以下に後の段階で記載する。
【0057】
本発明の目的のための安定剤は、プラスチックまたはプラスチック混合物を有害な環境影響から保護する添加剤である。例えば、一次および二次酸化防止剤、立体障害フェノール、ヒンダードアミン光安定剤、UV吸収剤、加水分解安定剤、クエンチャーおよび難燃剤である。市販の安定剤の例は、Plastics Additives Handbook,5th edn.,H.Zweifel,ed.,Hanser Publishers,Munich,2001([1])、第98~第136頁に見出される。
【0058】
熱可塑性ポリウレタンは、既知のプロセスによってバッチ式にまたは連続して、例えば反応性押出機または「ワンショット」法によるベルト法を使用して、またはプレポリマープロセスによって、好ましくは「ワンショット」法によって、製造してよい。ワンショット」法では、反応させる成分(a)、(b)、および好ましい実施形態では成分(b)、(c)および/または(d)中の鎖延長剤も、連続的にまたは同時に互いに混合し、重合反応を即時開始させる。次いでTPUを直接ペレット化するか、または押出成形によりレンズ型ペレット(lenticular pellet)に変換することができる。この工程では、他のアジュバントまたは他のポリマーの同時取り込みを達成することが可能である。
【0059】
押出機プロセスにおいて、構造成分(a)、(b)、および好ましい実施形態では(c)および/または(d)も、個々にまたは混合物の形態で押出機内に導入して、好ましくは100℃~280℃の温度で、好ましくは140℃~250℃で反応させる。得られたポリウレタンを、押出し、冷却してペレット化するか、または水中ペレット化機によって直接ペレット化して、レンズ型ペレットの形態にする。
【0060】
好ましいプロセスでは、熱可塑性ポリウレタンは、構造成分イソシアネート(a)、鎖延長剤を含むイソシアネート反応性化合物(b)、および好ましい実施形態では他の原料(c)および/または(d)から第1の工程で製造され、追加物質または助剤が第2の押出工程で組み込まれる。
【0061】
二軸押出機を使用することが好ましい。なぜなら二軸押出機は力搬送モードで運転されるので、押出機内の温度の調整および定量的な出力がより精密にできるからである。TPUの製造および膨張はさらに、反応性押出機中で単一の工程で、またはタンデム押出機を使用して、当業者に知られた方法で達成することができる。
【0062】
成分IIとして述べたスチレンポリマーは標準ポリスチレンである。ここで「標準ポリスチレン」という表現は、好ましくはアタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレンまたはアイソタクチックポリスチレン、特に好ましくはアタクチックポリスチレンを含む。
【0063】
非晶質である本発明のアタクチックポリスチレンのガラス転移温度は、100℃±20℃の範囲である(DIN EN ISO11357-1、2017年2月/DIN EN ISO11357-2、2014年7月、変曲点法により決定)。本発明のシンジオタクチックポリスチレンおよびアイソタクチックポリスチレンは、それぞれ半結晶性であり、その融点はそれぞれ、270℃および240℃の領域にある(DIN EN ISO11357-1;2017年2月/DIN EN ISO11357-3、2013年4月、Wピーク溶融温度)。
【0064】
使用されているポリスチレンの引張弾性率は2500を超える(DIN EN ISO527-1/2、2012年6月)。使用するポリスチレン(成分IIとしてのスチレンポリマー)の弾性率は、好ましくは2500MPa~4000MPaの範囲、より好ましくは2800MPa~3700MPaの範囲、特に好ましくは3000MPa~3500MPaの範囲、および非常に特に好ましくは3317MPaである。
【0065】
本発明のポリスチレンの製造および処理は、文献に広く記載されており、例えば、Becker/Braun(1996年)のKunststoff-Handbuch Band4、「Polystyrol」[プラスチックハンドブック、第4巻、「ポリスチレン」]に記載されている。
【0066】
市販の得ることができる材料、例えば、PS158K(BASF SE社)、PS148H Q(BASF SE社)、STYROLUTION PS156F、STYROLUTION PS158N/L、STYROLUTION PS168N/L、STYROLUTION PS153F、SABIC PS125、SABIC PS155、SABIC PS160を使用することも可能である。
【0067】
成分IIIとして使用することができる衝撃改質剤は、スチレンポリマー相、または熱可塑性ポリウレタン相とスチレンポリマー相との界面に蓄積することを特徴とする。成分IIIとしての衝撃改質剤は、スチレンポリマー相に蓄積することが好ましい。
【0068】
好ましい衝撃改質剤は、スチレンモノマーおよび少なくとも1種の他のモノマーをベースとするスチレンブロックコポリマーである。スチレンブロックコポリマーをベースとする特に好ましい衝撃改質剤は、スチレンベースの熱可塑性エラストマーおよび耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)の群から選択される。HIPSとは特に、耐衝撃性ポリスチレンに使用される用語である。HIPSは特に衝撃に強い。
【0069】
HIPSは好ましくは、SEBS、SBS、SEPS、SEPS-V、およびアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABS)を含む。SEBSは特に、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマーに使用される用語である。SBSは特に、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマーに使用される用語である。SEPSは特に、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマーに使用される用語である。SIBSは特に、スチレン-イソプレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマーに使用される用語である。SEPS-Vは特に、加硫によって熱可塑性から弾性に変換されたスチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマーに使用される用語である。
【0070】
成分IIIの衝撃改質剤として、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)を使用することが特に好ましい。SEBS、SBS、SEPSは、成分IIIとして特に好ましいHIPSである。
【0071】
本発明の目的のために、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)は、ポリマー成分として特にマレイン酸を含まない。成分IIのポリマーも成分IIIのポリマーも、モノマーとして如何なるマレイン酸も含まないことが好ましい。
【0072】
本発明の組成物は、特に、成分IIおよび成分IIIとして2種の異なるスチレンポリマーを含む。成分IIは特に、アタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレンまたはアイソタクチックポリスチレンである。成分IIIは特に、SEBS、SBS、SEPS、SEPS-V、SIBSおよびアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABS)からなる群から選択される衝撃改質剤としての高衝撃ポリスチレン(HIPS、耐衝撃性ポリスチレン)である。成分IIおよび成分IIIは特に、マレイン酸モノマーに由来するポリマーを含まない。
【0073】
使用される耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)の引張弾性率は2700MPa未満である(DIN EN ISO527-1/2、2012年6月)。使用する耐衝撃性ポリスチレン(HIPS、成分IIIとしての衝撃改質剤)の弾性率は、好ましくは1000MPa~2700MPaの範囲、より好ましくは1500MPa~2000MPaの範囲、さらにより好ましくは1600MPa~1700MPaの範囲、および非常に特に好ましくは1650MPaである。
【0074】
スチレンポリマーの製造および処理は、文献に広く記載されており、例えば、Becker/Braun(1996年)のKunststoff-Handbuch Band4、「Polystyrol」[プラスチックハンドブック、第4巻、「ポリスチレン」]に記載されている。
【0075】
ここで市販の材料、例えばStyron A-TECH1175、Styron A-TECH1200、Styron A-TECH1210、Styrolution PS495S、Styrolution PS485N、Styrolution PS486N、Styrolution PS542N、Styrolution PS454N、Styrolution PS416N、Roechling PS HI、SABIC PS325、SABIC PS330を使用することができる。
【0076】
上記のように、組成物Zは特に、
60~94質量%の、成分Iとしての熱可塑性ポリウレタン、
5~30質量%の、成分IIとしてのスチレンポリマー、
1~10質量%の、上記で成分IIIとして定義した衝撃改質剤
を含み、成分I、IIおよびIIIの全体が100質量%となる。
【0077】
組成物Zは、好ましくは、
72~86質量%の、成分Iとしての熱可塑性ポリウレタン、
10~20質量%の、成分IIとしてのスチレンポリマー、
4~8質量%の、上記で成分IIIとして定義した衝撃改質剤
を含み、成分I、IIおよびIIIの全体が100質量%となる。
【0078】
組成物Zは、より好ましくは、
72~94質量%の、成分Iとしての熱可塑性ポリウレタン、
5~20質量%の、成分IIとしてのスチレンポリマー、
1~8質量%の、上記で成分IIIとして定義した衝撃改質剤
を含み、成分I、IIおよびIIIの全体が100質量%となる。
【0079】
組成物Zは、より好ましくは、
80~98質量%の、成分Iとしての熱可塑性ポリウレタン、
1~10質量%の、成分IIとしてのスチレンポリマー、
1~10質量%の、上記で成分IIIとして定義した衝撃改質剤
を含み、成分I、IIおよびIIIの全体が100質量%となる。
【0080】
本発明の目的のために、組成物(Z)は例えば、1~10質量%の成分IIとしてのスチレンポリマー、好ましくは2.5~7.5質量%の成分IIとしてのスチレンポリマー、またはより好ましくは5質量%の成分IIとしてのスチレンポリマーを含むことができる。
【0081】
本発明の目的のために、組成物(Z)は例えば、1~10質量%の成分IIIとしての衝撃改質剤、好ましくは2.5~7.5質量%の成分IIIとしての衝撃改質剤、またはより好ましくは4質量%の成分IIIとしての衝撃改質剤を含むことができる。
【0082】
本発明の目的のために、組成物(Z)は例えば、80~95質量%の成分Iとしての熱可塑性ポリウレタン、2.5~10質量%の成分IIとしてのスチレンポリマー、および2.5~10質量%の成分IIIとしての衝撃改質剤、好ましくは、85~92.5質量%の成分Iとしての熱可塑性ポリウレタン、3.75~7.5質量%の成分IIとしてのスチレンポリマー、および3.75~7.5質量%の成分IIIとしての衝撃改質剤、より好ましくは、87.5~95質量%の成分Iとしての熱可塑性ポリウレタン、2.5~6.25質量%の成分IIとしてのスチレンポリマー、および2.5~6.5質量%の成分IIIとしての衝撃改質剤を含むことができ、成分I、IIおよびIIIの全体は常に100質量%となる。
【0083】
本発明の目的のために、組成物(Z)は、より好ましくは、例えば、91質量%の成分Iとしての熱可塑性ポリウレタン、5質量%の成分IIとしてのスチレンポリマー、および4質量%の成分IIIとしての衝撃改質剤を含み、成分I、IIおよびIIIの全体は常に100質量%となる。
【0084】
ビーズ発泡体は、好ましくは、
a)60~94質量%の、成分Iとしての熱可塑性ポリウレタン、
b)5~30質量%の、成分IIとしてのスチレンポリマー、
c)1~10質量%の、成分IIIとしての衝撃改質剤
から作られた組成物(Z)を含み、
成分I、IIおよびIIIの全体は100質量%となる。
【0085】
ビーズ発泡体は、より好ましくは、
a)72~94質量%の、成分Iとしての熱可塑性ポリウレタン、
b)5~20質量%の、成分IIとしてのスチレンポリマー、
c)1~8質量%の、成分IIIとしての衝撃改質剤
から作られた組成物(Z)を含み、
成分I、IIおよびIIIの全体は100質量%となる。
【0086】
ビーズ発泡体は、より好ましくは、
a)80~98質量%の、成分Iとしての熱可塑性ポリウレタン、
b)1~10質量%の、成分IIとしてのスチレンポリマー、
c)1~10質量%の、成分IIIとしての衝撃改質剤
から作られた組成物(Z)を含み、
成分I、IIおよびIIIの全体は100質量%となる。
【0087】
ビーズ発泡体は、より好ましくは、
a)80~91質量%の、成分Iとしての熱可塑性ポリウレタン、
b)5~10質量%の、成分IIとしてのスチレンポリマー、
c)4~10質量%の、成分IIIとしての衝撃改質剤
から作られた組成物(Z)を含み、
成分I、IIおよびIIIの全体は100質量%となる。
【0088】
ビーズ発泡体の製造に必要な組成物Zの膨張させていないポリマー混合物は、個々の成分、および任意に他の成分、例えば処理助剤、安定剤、相溶化剤または顔料から既知の様式で製造される。適したプロセスの例は、混練機を使用した、連続的またはバッチ式モードの、または押出機、例えば共回転二軸押出機を使用した、従来の混合プロセスである。
【0089】
相容化剤または助剤を使用する場合、例えば安定剤を使用する場合、これらは成分の製造が終了する前に、成分に組み込むこともできる。個々の成分は、通常、混合プロセスの前に組み合わせるか、または混合機器に計り入れる。押出機を使用する場合、成分のすべてを吸気口に計り入れて一緒に押出機内に搬送するか、または個々の成分を補助的な供給システムによって添加する。
【0090】
処理は、成分が可塑化した状態で存在する温度で行う。温度は、成分の軟化範囲または溶融範囲に依存するが、各成分の分解温度未満でなければならない。添加剤、例えば顔料または充填剤、または他の上記の従来の助剤(d)は、溶融した状態ではなく固体状態で組み込む。
【0091】
ここで、広く使用されている方法を用いる他の可能な実施形態があり、出発材料の製造に使用するプロセスを製造手順に直接統合することができる。例えば、ベルトプロセスを使用する場合、スチレンポリマー、衝撃改質剤、および充填剤または染料も、材料が押出機内に供給されるベルトの端に直接導入してレンズ型ペレットを得ることが可能であろう。
【0092】
上記の従来の助剤(d)のいくつかは、この工程で混合物に添加することができる。
【0093】
本発明のビーズ発泡体の嵩密度は、一般に50g/l~200g/l、好ましくは60g/l~180g/l、特に好ましくは80g/l~150g/lである。ビーズ発泡体の嵩密度は、より好ましくは100g/l~180g/lの範囲であり、130g/l~150g/lの範囲が好ましい。嵩密度はDIN ISO697に基づいた方法で測定するが、上記値の決定は、体積が0.5lの容器の代わりに体積が10lの容器を使用する点で規格と異なる。なぜなら、わずか0.5lの体積を使用した測定は、低密度で高質量の発泡体ビーズには特別に不正確すぎるからである。
【0094】
上記のように、発泡体ビーズの直径は0.5~30mm、好ましくは1~15mm、および特に3~12mmである。非球状、例えば細長いまたは円柱状の発泡体ビーズの場合、直径は最も長い寸法を意味する。
【0095】
発泡体ビーズの直径は、特に0.5~30mmの範囲、好ましくは1~15mmの範囲、および特に好ましくは3~12mmの範囲である。非球状、例えば細長いまたは円柱状の発泡体ビーズの場合、直径は最も長い寸法を意味する。
【0096】
ビーズ発泡体は、先行技術で広く使用されている既知のプロセスによって、
i. 本発明の組成物(Z)を提供する工程、
ii. 加圧下で組成物に発泡剤を含浸させる工程、
iii. 圧力低下により組成物を膨張させる工程
を介して製造することができる。
【0097】
発泡剤の量は、組成物(Z)の使用量100質量部に基づいて、好ましくは0.1~40質量部、特に0.5~35質量部、および特に好ましくは1~30質量部である。
【0098】
上記プロセスの一実施形態は、
i. 本発明の組成物(Z)をペレット形態で提供する工程、
ii. 加圧下でペレットに発泡剤を含浸させる工程、
iii. 圧力低下によりペレットを膨張させる工程
を含む。
【0099】
上記プロセスの別の実施形態は、別の工程:
i. 本発明の組成物(Z)をペレット形態で提供する工程、
ii. 加圧下でペレットに発泡剤を含浸させる工程、
iii. 任意に事前に温度を低下させることによって、ペレットを発泡させずに圧力を大気圧まで下げる工程、
iv. 温度上昇によって、ペレットを発泡させる工程
を含む。
【0100】
膨張させていないペレットの平均最小直径が0.2~10mmであることが好ましい(ペレットの3D評価によって、例えば、Microtrac社のPartAn3D光学測定機器を使用した動的画像分析によって決定される)。
【0101】
個々のペレットの平均質量は、一般に0.1~50mgの範囲にあり、好ましくは4~40mgの範囲にあり、および特に好ましくは7~32mgの範囲にある。このペレットの平均質量(粒子質量)は、それぞれ10個のペレットを使用する3回の計量手順を介して算術平均として決定される。
【0102】
上記プロセスの一実施形態は、加圧下でペレットに発泡剤を含浸させる工程に続き、工程(ii)および(iii)でペレットを膨張させる工程を含む:
ii. 高温の加圧下、適した閉じた反応容器(例えばオートクレーブ)内で、発泡剤の存在下でペレットを含侵させる工程、
iii. 冷却せず唐突に減圧する工程。
【0103】
ここで工程(ii)における含浸は、水、および任意に懸濁助剤の存在下で、または発泡剤のみの存在下で、および水の非存在下で、行うことができる。
【0104】
適した懸濁助剤の例は、水不溶性の無機安定剤、例えばトリカルシウムホスフェート、マグネシウムピロホスフェート、金属炭酸塩、およびポリビニルアルコールおよび界面活性剤、例えばナトリウムドデシルアリールスルホネートである。これらの通常の使用量は、本発明の組成物に基づいて0.05~10質量%である。
【0105】
含浸温度は選択された圧力に依存し、100~200℃の範囲にあり、反応容器内の圧力は2~150バール、好ましくは5~100バール、特に好ましくは20~60バールであり、含浸時間は一般に0.5~10時間である。反応容器内の圧力は、特に2~150バール、好ましくは5~100バール、特に好ましくは20~60バールの範囲である。
【0106】
懸濁液中でのプロセスの実施は、当業者に知られており、例えばWO2007/082838に広く記載されている。
【0107】
発泡剤の非存在下でプロセスを行う場合、ポリマーペレットの凝集を避けるように注意を払わなければならない。
【0108】
適した閉じた反応容器内でプロセスを実行するための適した発泡剤は、例えば、処理条件下でガス状態にある有機液体および有機ガス、例えば炭化水素、または無機ガス、または有機液体または有機ガスそれぞれと無機ガスとの混合物(これらは同様に組み合わせることができる)である。
【0109】
適した炭化水素の例は、ハロゲン化または非ハロゲン化、飽和または不飽和脂肪族炭化水素、好ましくは非ハロゲン化、飽和または不飽和脂肪族炭化水素である。
【0110】
好ましい有機発泡剤は、飽和脂肪族炭化水素、特に3~8個のC原子を有するもの、例えばブタンまたはペンタンである。
【0111】
適した無機ガスは、窒素、空気、アンモニアまたは二酸化炭素、好ましくは窒素または二酸化炭素、または上記のガスの混合物である。
【0112】
別の実施形態では、加圧下、発泡剤中でペレットを含浸させる工程は、工程(ii)および(iii)でペレットを膨張させる工程が続くプロセスを含む:
ii. 高温の加圧下、押出機内で、発泡剤の存在下でペレットを含侵させる工程、
iii. 押出機から出る溶融物を、制御されていない発泡を防止する条件下でペレット化する工程。
【0113】
このプロセスのバージョンにおいて適した発泡剤は、沸点が大気圧1013ミリバールで-25~150℃、特に-10~125℃の揮発性有機化合物である。良好な適合性の材料は、炭化水素(好ましくはハロゲンを含まない)、特にC4~10-アルカン、例えばブタンの異性体、ペンタンの異性体、ヘキサンの異性体、ヘプタンの異性体、およびオクタンの異性体、特に好ましくはイソペンタンである。他の可能な発泡剤はさらに、より嵩高い化合物、例えばアルコール、ケトン、エステル、エーテルおよび有機炭酸塩である。
【0114】
ここで工程(ii)において、組成物を押出機内で、溶融しながら、加圧下で、押出機内に導入した発泡剤と混合する。発泡剤を含む混合物を、加圧下で、好ましくは適度なレベルに制御された逆圧を使用して押出してペレット化する(例えば水中でのペレット化である)。ここで溶融ストランドが発泡し、ペレット化によって発泡体ビーズが得られる。
【0115】
押出しを介したプロセスの実施は、当業者に知られており、例えばWO2007/082838、およびWO2013/153190A1に広く記載されている。
【0116】
使用することができる押出機は、任意の従来のスクリューベースの機械であり、特に単軸および二軸押出機(例えば、Werner&Pfleiderer社のZSK)、共混練機、コンビプラスト機(Kombiplast machine)、MPC混練ミキサー、FCMミキサー、KEX混練スクリュー押出機、および例えばSaechtling(ed.),Kunststoff-Taschenbuch[プラスチックハンドブック],27th edn.,Hanser-Verlag,Munich1998、第3.2.1章および第3.2.4章に記載されているタイプの剪断ロール押出機である。押出機は通常、組成物(Z)が溶融物の形態をとる温度、例えば120℃~250℃、特に150~210℃で、および発泡剤添加後の圧力が40~200バール、好ましくは60~150バール、特に好ましくは80~120バールで運転されて、発泡剤と溶融物との均質化を確実にする。
【0117】
ここでのプロセスは、1つの押出機内でまたは1つ以上の押出機の配列内で行うことができる。よって例えば、第1の押出機内で、発泡剤の注入と共に成分を溶融してブレンドすることが可能である。第2の押出機では、含浸させた溶融物を均質化させ、温度および/または圧力を調整する。例えば、3つの押出機が互いに組み合わされている場合は、成分の混合と発泡剤の注入とが2つの異なるプロセス構成要素にわたって分割されていることも、同様に可能である。好ましいように、1つの押出機のみを使用する場合、溶融、混合、発泡剤の注入、均質化、温度および/または圧力の調整のプロセス工程のすべてを、単一の押出機内で行う。
【0118】
あるいは、WO2014150122またはWO2014150124A1に記載の方法において、対応するビーズ発泡体(任意に、実際には既に着色されている)は、対応するペレットを超臨界液体によって飽和させ、超臨界液体から除去するという点でペレットから直接製造することができ、これに、
(i) 加熱した流体中に生成物を浸漬する工程、
(ii) 高エネルギー放射線(例えば、赤外線放射またはマイクロ波放射)で生成物を照射する工程
が続く。
【0119】
適した超臨界液体の例は、WO2014150122に記載されているもの、例えば、二酸化炭素、二酸化窒素、エタン、エチレン、酸素または窒素、好ましくは二酸化炭素または窒素である。
【0120】
ここで超臨界液体は、ヒルデブランド(Hildebrand)溶解度パラメータが9MPa1/2以上の極性液体を含むこともできる。
【0121】
ここで、超臨界液体または加熱した液体が着色剤を含むことも可能であり、それ故着色された発泡生成物が得られる。
【0122】
本発明はさらに、本発明のビーズ発泡体から製造される成形体を提供する。
【0123】
対応する成形体は、当業者に知られた方法によって製造することができる。
【0124】
ここで発泡成形体を製造するための好ましいプロセスは、以下の工程を含む:
(i) 発泡体ビーズを適切な型に導入する工程、
(ii) 工程(i)からの発泡体ビーズを融解する工程。
【0125】
工程(ii)の融解は、好ましくは、融解を蒸気、高温空気(例えば、EP1979401B1に記載の通り)、または高エネルギー放射線(マイクロ波またはラジオ波)を介して達成することができる、閉じた型内で行う。
【0126】
ビーズ発泡体の融解中の温度は、好ましくは、ビーズ発泡体を製造するポリマーの融点未満であるか、またはそれに近い温度である。広く使用されているポリマーについては、ビーズ発泡体の融解のための温度は、対応して、100℃~180℃、好ましくは120~150℃である。ビーズ発泡体の融解のための温度は、特に100℃~180℃の範囲、好ましくは120~150℃の範囲である。
【0127】
ここで温度プロファイル/滞留時間は、例えばUS20150337102またはEP2872309B1に記載のプロセスに基づいて、個々に決定することができる。
【0128】
高エネルギー放射線による融解は一般に、マイクロ波またはラジオ波の周波数範囲で行われ、任意に水または他の極性液体、例えば極性基を有するマイクロ波吸収炭化水素(例はカルボン酸のエステル、ジオールまたはトリオールのエステルであり、他の例はグリコールおよび液体ポリエチレングリコールである)の存在下で行い、EP3053732AまたはWO16146537に記載のプロセスに基づく方法によって達成することができる。
【0129】
高周波電磁放射による融着について、ビーズ発泡体を好ましくは、放射を吸収するのに適した極性液体で、例えば使用するビーズ発泡体に基づいて0.1~10質量%の割合、好ましくは1~6質量%の割合の極性液体で、湿潤させることができる。本発明の目的のために、極性液体を使用せずに、高周波電磁放射の使用によりビーズ発泡体の融着を行うこともできる。発泡体ビーズの熱的結合は、例えば、高周波電磁放射、特にマイクロ波によって型内で行う。高周波として記載する電磁放射は、少なくとも20MHz、例えば少なくとも100MHzの周波数を有する。一般に、20MHz~300GHz、例えば100MHz~300GHzの周波数範囲の電磁放射を使用する。0.5~100GHzの範囲、特に0.8~10GHzの範囲の周波数のマイクロ波、および0.1~15分の照射時間を使用することが好ましい。マイクロ波の周波数範囲を、極性液体の吸収挙動と一致させることが好ましく、または逆の取り組み方として、使用するマイクロ波装置の周波数範囲に対して適切な吸収挙動に基づいた極性液体を選択することが好ましい。適した方法は、例えばWO2016/146537A1に記載されている。
【0130】
上記のように、ビーズ発泡体は着色剤を含むこともできる。ここで着色剤は、様々な手法で添加することができる。
【0131】
一実施形態では、製造されたビーズ発泡体は、製造後に着色することができる。この場合、対応するビーズ発泡体を、着色剤を含むキャリア液と接触させる。キャリア液(CL)の極性は、キャリア液がビーズ発泡体への収着を達成するのに適している。この方法は、出願番号17198591.4のEP出願に記載の方法に基づくことができる。
【0132】
適した着色剤の例は、無機顔料または有機顔料である。適した天然または合成無機顔料の例は、カーボンブラック、グラファイト、チタンオキシド、鉄オキシド、ジルコニウムオキシド、コバルトオキシド化合物、クロムオキシド化合物、銅オキシド化合物である。適した有機顔料の例は、アゾ顔料および多環式顔料である。
【0133】
別の実施形態では、着色剤は、ビーズ発泡体の製造中に添加することができる。例えば、着色剤は、押出成形によるビーズ発泡体の製造中に押出機に添加することができる。あるいは、既に着色されている材料を、押出したかまたは上記のプロセスによって閉じた容器内で膨張させたビーズ発泡体の製造のための出発材料として使用することができる。さらに、WO2014150122に記載のプロセスにおいて、超臨界液体または加熱された液体が着色剤を含むことが可能である。
【0134】
上記のように、本発明の成形品は、靴またはスポーツシューズの分野における上記の用途に対して有利な特性を有する。
【0135】
ビーズ発泡体から製造された成形体の引張特性および圧縮特性は、引張強さが600kPaを超え(DIN EN ISO1798、2008年4月)、破断伸びが100%を超え(DIN EN ISO1798、2008年4月)、および10%圧縮時の圧縮応力が15kPaを超える(DIN EN ISO844、2014年11月に基づく;規格との相違は、サンプルの高さが50mmではなく20mmであること、および結果として試験速度を2mm/分に調整したことからなる)点において特徴づけられる。
【0136】
ビーズ発泡体から製造された成形体の反発弾性は55%を超える(DIN53512、2000年4月に基づく方法による;標準からの逸脱は試料の高さであり、12mmであるべきところ、この試験では、試料を超えるエネルギー伝達および基材の測定を避けるために20mmとしている)。
【0137】
上記のように、得られる成形体の密度と圧縮特性との間には関係性がある。製造される成形体の密度は、有利には75~375kg/m、好ましくは100~300kg/m、特に好ましくは150~200kg/mである(DIN EN ISO845、2009年10月)。製造される成形体の密度は、特に75~375kg/mの範囲、好ましくは100~300kg/mの範囲、特に好ましくは150~200kg/mの範囲である(DIN EN ISO845、2009年10月)。成形体の密度は、より好ましくは100~180kg/mの範囲、なおより好ましくは130~150kg/mの範囲である。
【0138】
ここで、成形品の密度の、本発明のビーズ発泡体の嵩密度に対する比は、一般に1.5~2.5、好ましくは1.8~2.0である。比は特に1.5および2.5の領域である。
【0139】
本発明はさらに、靴の中間ソール、靴のインソール、靴のコンビソール、自転車のサドル、自転車のタイヤ、減衰要素、緩衝材、マットレス、下張り(underlay)、グリップ、保護フィルムのための、自動車の内装部門または自動車の外装部門における構成要素、ボールおよびスポーツ用具における、または床カバーとしての、特にスポーツの表面、ランニングトラック、スポーツホール、子供の遊び場および歩道のための成形体の製造に、本発明のビーズ発泡体を使用する方法を提供する。
【0140】
靴の中間ソール、靴のインソール、靴のコンビソールまたは靴の緩衝要素のための成形体の製造に、本発明のビーズ発泡体を使用することが好ましい。ここで靴とは、好ましくは屋外用シューズ、スポーツシューズ、サンダル、ブーツまたは安全靴であり、特に好ましくはスポーツシューズである。
【0141】
よって本発明はさらに、成形体が靴用の、好ましくは屋外用シューズ、スポーツシューズ、サンダル、ブーツまたは安全靴用の、特に好ましくはスポーツシューズ用のコンビソールである、成形体を提供する。
【0142】
よって本発明はさらに、成形体が靴用の、好ましくは屋外用シューズ、スポーツシューズ、サンダル、ブーツまたは安全靴用の、特に好ましくはスポーツシューズ用の中間ソールである、成形体を提供する。
【0143】
よって本発明はさらに、成形体が靴用の、好ましくは屋外用シューズ、スポーツシューズ、サンダル、ブーツまたは安全靴用の、特に好ましくはスポーツシューズ用のインサートである、成形体を提供する。
【0144】
よって本発明はさらに、成形体が靴用の、好ましくは屋外用シューズ、スポーツシューズ、サンダル、ブーツまたは安全靴用の、特に好ましくはスポーツシューズ用の緩衝要素である、成形体を提供する。
【0145】
ここで緩衝要素は、例えば、踵領域または足前部領域に使用することができる。
【0146】
従って本発明は、本発明の成形体が、ミッドソール、中間ソールまたは緩衝材として、例えば踵領域または足前部領域において使用される靴を提供する。この靴は、好ましくは屋外用シューズ、スポーツシューズ、サンダル、ブーツまたは安全靴、特に好ましくはスポーツシューズである。
【0147】
本発明の例示的な実施形態を以下に列挙するが、本発明を限定するものではない。特に、本発明は、以下に記載の従属性から生じる、従って組み合わせである実施形態も包含する。
【0148】
1. a)60~94質量%の、成分Iとしての熱可塑性ポリウレタン、
b)5~30質量%の、成分IIとしてのスチレンポリマー、
c)1~10質量%の、成分IIIとしての衝撃改質剤
を含み、成分I、IIおよびIIIの全体が100質量%となる、
組成物(Z)から作られたビーズ発泡体。
【0149】
2. a)72~89質量%の、成分Iとしての熱可塑性ポリウレタン、
b)10~20質量%の、成分IIとしてのスチレンポリマー、
c)1~8質量%の、成分IIIとしての衝撃改質剤
を含み、成分I、IIおよびIIIの全体が100質量%となる、
実施形態1に記載のビーズ発泡体。
【0150】
3. スチレンポリマーがアタクチックポリスチレンである、実施形態1および2のいずれか一項に記載のビーズ発泡体。
【0151】
4. 衝撃改質剤がスチレンブロックコポリマーである、実施形態1および2のいずれか一項に記載のビーズ発泡体。
【0152】
5. 衝撃改質剤がスチレンベースの熱可塑性エラストマーである、実施形態1および2のいずれか一項に記載のビーズ発泡体。
【0153】
6. 衝撃改質剤が衝撃耐性ポリスチレンである、実施形態1および2のいずれか一項に記載のビーズ発泡体。
【0154】
7. 発泡体ビーズの平均直径が0.5~20mm、好ましくは0.5~20mmの範囲である、実施形態1から6のいずれか一項に記載のビーズ発泡体。
【0155】
8. 発泡体ビーズの平均直径が0.5~15mm、好ましくは0.5~15mmの範囲である、実施形態1から6のいずれか一項に記載のビーズ発泡体。
【0156】
9. 実施形態1から8のいずれか一項に記載のビーズ発泡体を製造する方法であって、
i. 本発明の組成物(Z)を提供する工程、
ii. 加圧下で組成物に発泡剤を含浸させる工程、
iii. 圧力低下により組成物を膨張させる工程
を含む方法。
【0157】
10. 実施形態1から8のいずれか一項に記載のビーズ発泡体から作られた成形体。
【0158】
11. 成形体の引張強さが600kPaを超える、実施形態10に記載のビーズ発泡体から作られた成形体。成形体の引張強さは、好ましくは少なくとも600kPaである。
【0159】
12. 破断伸びが100%を超える、実施形態10または11に記載の成形体。破断伸びは、好ましくは少なくとも100%である。
【0160】
13. 10%圧縮時の圧縮応力が15kPaを超える、実施形態10から12のいずれか一項に記載の成形体。10%圧縮時の圧縮強度は、好ましくは少なくとも15kPaである。
【0161】
14. 成形体の密度が75~375kg/mである、好ましくは75~375kg/mの範囲である、実施形態10から13のいずれか一項に記載の成形体。
【0162】
15. 成形体の密度が100~300kg/mである、好ましくは100~300kg/mの範囲である、実施形態10から13のいずれか一項に記載の成形体。
【0163】
16. 成形体の密度が150~200kg/mである、好ましくは150~200kg/mの範囲である、実施形態10から13のいずれか一項に記載の成形体。
【0164】
17. 成形体の反発弾性が55%を超える(DIN53512、2000年4月により測定する)、実施形態10から16のいずれか一項に記載の成形体。成形体の反発弾性は、好ましくは少なくとも55%である。
【0165】
18. 成形体の密度の、ビーズ発泡体の嵩密度に対する比が、1.5~2.5、好ましくは1.5および2.5の領域である、実施形態10から17のいずれか一項に記載の成形体。
【0166】
19. 成形体の密度の、ビーズ発泡体の嵩密度に対する比が、1.8~2.0、好ましくは1.8~2.0の範囲である、実施形態10から17のいずれか一項に記載のビーズ発泡体から作られた成形体。
【0167】
20. 成形体が靴の中間ソールである、実施形態10から19のいずれか一項に記載の成形体。
【0168】
21. 成形体が靴のインサートである、実施形態10から19のいずれか一項に記載の成形体。
【0169】
22. 成形体が靴の緩衝要素である、実施形態10から19のいずれか一項に記載の成形体。
【0170】
23. 靴が屋外用シューズ、スポーツシューズ、サンダル、ブーツ、または安全靴である、実施形態21および22のいずれかに記載の成形体。
【0171】
24. 靴がスポーツシューズである、実施形態21および22のいずれかに記載の成形体。
【0172】
25. 実施形態10から24のいずれか一項に記載の成形体を製造するための、
(i) 発泡体ビーズを適切な型に導入する工程、
(ii) 工程(i)からの発泡体ビーズを融解する工程
を含む方法。
【0173】
26. 工程(ii)の融解を閉じた型内で達成する、実施形態25に記載の方法。
【0174】
27. 工程(ii)の融解を、蒸気、高温空気または高エネルギー放射線によって達成する、実施形態25または26に記載の方法。
【0175】
28. 実施形態20および21のいずれかに記載の成形体を含む靴。
【0176】
29. 靴が屋外用シューズ、スポーツシューズ、サンダル、ブーツ、または安全靴である、実施形態28に記載の靴。
【0177】
30. 靴がスポーツシューズである、実施形態28に記載の靴。
【0178】
31. 実施形態1から8のいずれか一項に記載のビーズ発泡体を、靴の中間ソール、靴のインソール、靴のコンビソール、靴の緩衝要素、自転車のサドル、自転車のタイヤ、減衰要素、緩衝材、マットレス、下張り、グリップ、保護フィルムのための、自動車の内装部門または自動車の外装部門における構成要素、ボールおよびスポーツ用品における、または床カバーとしての、実施形態10から19のいずれか一項に記載の成形体の製造に、使用する方法。
【0179】
32. 靴の中間ソール、靴のインソール、靴のコンビソール、または靴の緩衝要素のための実施形態31に記載の使用方法。
【0180】
33. 靴がスポーツシューズである、実施形態31に記載の使用方法。
【0181】
以下の実施例は、本発明を例示するのに役立つが、本発明の主題に関していかなる意味でも制限するものではない。
【実施例
【0182】
熱可塑性ポリウレタンおよびスチレンポリマーで作られた膨張ビーズを、スクリュー直径44mmおよび長さ対直径比42を有し、溶融ポンプが取り付けられ、スクリーンチェンジャーを有するダイバータバルブ、ペレット化ダイおよび水中ペレット化システムを備えた二軸押出機を使用して製造した。処理ガイドラインに従い、熱可塑性ポリウレタンを使用前に80℃で3時間乾燥させ、残留水分量を0.02質量%未満とした。スチレンポリマーおよび衝撃改質剤を介して水分が導入されるのを防止するために、同様にかなりの使用量を、これらも同様に80℃で3時間乾燥させ、残留水分含量を0.05質量%未満とした。平均官能価2.05のジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネートを別の押出プロセスで混合しておいた熱可塑性ポリウレタンを、使用した熱可塑性ポリウレタンに基づいて0.9質量%、上記2成分に加えて各試験片に添加した。
【0183】
使用した熱可塑性ポリウレタンは、BASF社製のエーテルベースのTPU(Elastollan1180A)であり、データシートによるとショア硬度80Aであった。使用したスチレンポリマーはBASF社のPS158K Qであり、データシートによると、引張試験で測定した弾性率は3317MPaであった。使用した衝撃改質剤はIneos社の衝撃改質ポリスチレン(Styrolution PS485N)であり、データシートによると、引張試験で測定した弾性率は1650MPaであった。
【0184】
熱可塑性ポリウレタン、ポリスチレン、衝撃改質ポリスチレン、およびジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネートを混合しておいた熱可塑性ポリウレタンを、質量計量装置によってそれぞれ別々に二軸押出機の吸気口に計り入れた。
【0185】
ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネートを混合しておいた熱可塑性ポリウレタンおよびポリスチレンを含む、熱可塑性ポリウレタンの質量割合を表1に示す。
【0186】
【表1】
【0187】
材料を二軸押出機の吸気口に計り入れ、次いで溶融して互いに混合した。混合後、発泡剤としてCOおよびNの混合物を添加した。押出機の残りの長さを通過する間に、発泡剤とポリマー溶融物を互いに混合して均質な混合物を形成した。平均官能価2.05のジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネートを別の押出プロセスで添加しておいたTPU、ポリスチレン、および発泡剤を含む押出機の総スループットは80kg/hであった。
【0188】
次いで、ギアポンプ(GP)を使用して、溶融混合物を、スクリーンチェンジャー(DV)を有するダイバータバルブを介してペレット化ダイ(PD)に強制的に送り込み、前記混合物を水中ペレット化システム(UP)の切断チャンバで細かく切断してペレットを得、温度制御された加圧水で搬送して膨張させた。膨張したビーズを処理水から確実に分離するために遠心乾燥機を使用した。
【0189】
使用したプラント構成要素温度を表2に列挙する。表3に発泡剤(COおよびN)の使用量を示す。量は各場合とも可能な最低の嵩密度が得られるよう調整した。発泡剤の定量データは、ポリマーの総スループットに基づく。
【0190】
【表2】
【0191】
【表3】
【0192】
表4に各実験から得られた膨張ペレットの嵩密度を列挙する。
【0193】
【表4】