IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】カルボジイミド化学に基づく接着剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/02 20060101AFI20241106BHJP
   C08G 63/12 20060101ALI20241106BHJP
   C08G 63/91 20060101ALI20241106BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20241106BHJP
   C09J 167/02 20060101ALI20241106BHJP
   C09J 167/00 20060101ALI20241106BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241106BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20241106BHJP
【FI】
C08G18/02 050
C08G63/12
C08G63/91
C09J11/08
C09J167/02
C09J167/00
C09J11/06
C09J7/35
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021553137
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2020055823
(87)【国際公開番号】W WO2020178380
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】19161285.2
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】エリンク,ベレント
(72)【発明者】
【氏名】アウッファルト,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】リンネンブリンク,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】アルベルネ,フリオ
(72)【発明者】
【氏名】ムー,リンユイ
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-507213(JP,A)
【文献】特開2008-260831(JP,A)
【文献】特開平08-060109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
C08G 18/00 - 18/87
C08G 71/00 - 71/04
C08G 63/00 - 64/42
B32B 1/00 - 43/00
B05D 1/00 - 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも:
i)1分子あたりのカルボジイミド基の数が1~10の範囲である、ポリカルボジイミド、
ii)結晶性ポリオールと非結晶性ポリオールとの混合物
の反応から得られる又は得ることができる、熱硬化性樹脂組成物であって、
(i)による前記ポリカルボジイミド中のカルボジイミド基と(ii)による前記混合物中のヒドロキシル基とのモル比が1:2~2:1の範囲であり、100質量%である前記混合物の全質量に基づいて、少なくとも25質量%の(ii)による前記混合物が少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールからなる、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
(i)による前記ポリカルボジイミドは、カルボジイミド化触媒(i.3)の存在下で、少なくとも:
i.1)少なくとも1種のジイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物;
i.2)モノイソシアネート、イソシアネート反応性単官能化合物、及びモノイソシアネートと、イソシアネート反応性単官能化合物との混合物からなる群から選択される単官能化合物であって、前記イソシアネート反応性単官能化合物が、モノアルコール、モノチオール、モノアミン、及びこれらのイソシアネート反応性単官能化合物の2種以上の混合物からなる群から選択される、単官能化合物の反応から得られる又は得ることができる、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(i)による前記ポリカルボジイミドは、
a)温度Tで、(i.1)によるポリイソシアネート組成物を(i.2)による単官能化合物の少なくとも一部と混合して、第1混合物を得ること、
b)Tを超える温度Tで、(a)で得られた前記第1混合物に触媒(i.3)を添加して、前駆体化合物を得ること、
b)温度Tで、(b)で得られた前記前駆体化合物を調整すること、
c)温度Tで、(i.2)による前記単官能化合物の残りの部分を添加して、(i)による前記ポリカルボジイミドを得ること
によって得られ又は得ることができ、
が、70℃未満の温度であり、
が、70℃以上の温度であり、
が、100℃未満の温度である、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
(ii)による前記混合物の前記少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールは、30℃超の融点を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
(ii)による前記混合物の前記少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールは500~5000g/molの範囲の分子量を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
100質量%である前記混合物の全質量に基づいて、少なくとも50質量%の結晶性ポリオールと非結晶性ポリオールとの前記混合物が少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールからなる、請求項1から5のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
(ii)による前記混合物の前記少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールは、少なくとも:
(ii.1)エステル形成に対して反応性のある少なくとも2個のヒドロキシル基を有する化合物;
(ii.2)エステル形成に対して反応性のある少なくとも2個のカルボキシル基を有する化合物
をベースとする飽和ポリエステルオールであり、
エステル形成に対して反応性のある少なくとも2個のヒドロキシル基を有する前記化合物(ii.1)が、飽和ジオールであり、及び
エステル形成に対して反応性のある少なくとも2個のカルボキシル基を有する前記化合物(ii.2)が、飽和ジカルボン酸、飽和ジカルボン酸の無水物、飽和ジカルボン酸のエステル、及びこれらの成分の2種以上の混合物からなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
(ii)による前記混合物の前記少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールは、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、12-ドデカン二酸及びこれらのジカルボン酸の2種以上の混合物からなる群から選択されるC2~C10ジカルボン酸、及びヘキサン-1,6-ジオール、ネオペンチルグリコール又はヘキサン-1,6-ジオールとネオペンチルグリコールとの混合物であるジオールをベースとするポリエステルオールであり、又は(ii)による前記混合物の前記少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールは、少なくともα-ω-ヒドロキシ-カルボン酸、α-ω-ヒドロキシ-カルボン酸の環状オリゴマー、又はそれらの2種以上の混合物をベースとする飽和ポリエステルオールである、請求項1から7のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
任意に触媒(iii)の存在下で、少なくとも:
i)1分子あたりのカルボジイミド基の数が1~10の範囲である、ポリカルボジイミド、
ii)結晶性ポリオールと非結晶性ポリオールとの混合物
の反応から得られ又は得ることができ、
(i)による前記ポリカルボジイミド中のカルボジイミド基と(ii)による前記混合物中のヒドロキシル基とのモル比が1:2~2:1の範囲であり、100質量%である前記混合物の全質量に基づいて、少なくとも25質量%の(ii)による前記混合物が少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールからなり、
- (i)による前記ポリカルボジイミドは、カルボジイミド化触媒(i.3)の存在下で、少なくとも:
i.1)少なくともTDIを含むポリイソシアネート組成物;
i.2)2-エチルヘキサン-1-オールである単官能化合物
の反応から得られる又は得ることができる、トルエンジイソシアネートをベースとするポリカルボジイミドであり、
- (ii)による前記混合物の前記少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールは、ヘキサン-1,6-ジカルボン酸及びヘキサン-1,6-ジオールをベースとする結晶性飽和コポリエステルである、請求項1から8のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の、接着剤としての、使用方法。
【請求項11】
接着剤の製造方法であって、
a)少なくとも:
i)1分子あたりのカルボジイミド基の数が1~10の範囲である、ポリカルボジイミド、
ii)結晶性ポリオールと非結晶性ポリオールとの混合物
iii)触媒
を混合して、混合物を得る工程であって、(i)による前記ポリカルボジイミド中のカルボジイミド基と(ii)によるポリエステルオール中のヒドロキシル基とのモル比が1:2~2:1の範囲であり、100質量%である前記混合物の全質量に基づいて、少なくとも25質量%の(ii)による前記混合物が少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールからなり、(a)による前記混合が、(ii)による前記混合物の前記少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールの融点Tmを超える温度で行われる、工程と、
b)工程(a)から得られた前記混合物を少なくとも1つの基材に適用する工程であって、前記基材が0℃を超える温度を有し、適用工程が、(ii)による前記混合物の前記少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールの融点Tmを超える前記混合物の温度で行われる、工程と、
c)任意に、(ii)による前記混合物の前記少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールの融点Tmを超える温度で、前記少なくとも1つの基材上で前記混合物を硬化させて、少なくとも1つの基材上に接着層を含む構成要素を得る工程と
を含む、方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの基材は第1基材及び第2基材を含み、工程(b)が:
b.1)工程(a)から得られた前記混合物を前記第1基材の少なくとも1つの表面に少なくとも部分的に適用して、工程(a)から得られた前記混合物で少なくとも部分的にコーティングされた表面を有する第1基材を得ることであって、前記基材が0℃を超える温度を有し、適用が、(ii)による前記混合物の前記少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールの融点Tmを超える前記混合物の温度で行われる、ことと、
b.2)前記第2基材を、前記第1基材のコーティングされた表面上に少なくとも部分的に配置して、前記第1基材、前記第2基材、及びそれらの間に工程(a)から得られた前記混合物を含む構成要素を得ることと
を含み、
工程(c)が、(ii)による前記混合物の前記少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールの融点Tmを超える温度で、第1基材及び第2基材の間の前記混合物を硬化させて、第1基材、第2基材、及びそれらの間の接着層を含む構成要素を得ることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
接着剤の製造方法であって、
a)少なくとも:
i)1分子あたりのカルボジイミド基の数が1~10の範囲である、ポリカルボジイミド、
ii)結晶性ポリオールと非結晶性ポリオールとの混合物
iii)触媒
を混合して、混合物を得る工程であって、(i)による前記ポリカルボジイミド中のカルボジイミド基と(ii)による前記混合物中のヒドロキシル基とのモル比が1:2~2:1の範囲であり、100質量%である前記混合物の全質量に基づいて、少なくとも25質量%の(ii)による前記混合物が少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールからなり、(a)による前記混合が、(ii)による前記混合物の結晶性ポリエステルオールの融点Tmを超える温度で行われる、工程と、
b’)工程(a)に従って得られた前記混合物を、0~150℃の範囲の温度を有する少なくとも1つの基材の表面上にキャスティングして、前記表面上に接着フィルムを得る工程と、
c’)任意に、工程(b’)に従って得られた前記接着フィルムを前記表面から取り除く工程と
を含み、工程(b’)による前記キャスティングが、0℃から(ii)による前記混合物の前記少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールの融点Tm以下までの範囲の温度で行われる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に接着剤としての使用のための熱硬化性樹脂組成物に関し、この熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも:1分子あたりのカルボジイミド基の数が1~10の範囲であるポリカルボジイミド(i);結晶性ポリオールと非結晶性ポリオールとの混合物(ii)、の反応から得られ又は得ることができ、ここで、(i)によるポリカルボジイミド中のカルボジイミド基と(ii)によるポリエステルオール中のヒドロキシル基とのモル比が1:2~2:1の範囲であり、100質量%である混合物の全質量に基づいて、少なくとも25質量%の(ii)による混合物が少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールからなる。本発明はさらに、前記熱硬化性樹脂組成物の接着剤としての使用方法、接着剤の製造方法、少なくとも1つの基材上に接着剤層を含む構成要素の製造方法、及びこれらの方法の1つから得られる又は得ることができる接着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン及びイソシアネートをベースとする接着剤が既知であるが、場合によっては環境、健康又は安全性の問題に関連している。ポリウレタンは、一定の組成を有する単一の材料ではなく、同様の化学的性質を共有する一連の化学物質を含む場合でも、ウレタン(-NH-C(=O)-O-)又はカーバメート(-NR-C(=O)-O-)結合によって結合された有機鎖の単位から構成されるポリマーである。つまり、ポリウレタンポリマーは、イソシアネート(単数又は複数)とポリオール(単数又は複数)との反応によって形成される。使用されるイソシアネート及びポリオールは、通常、1分子あたり2個以上の官能基を含有する。
【0003】
イソシアネートを含有しないポリマーが知られている。例えば、US 5,079,326 Aには、ポリカルボジイミドと、その分子内に2個以上の活性水素基を有する少なくとも1種の架橋剤、例えば、2,4,6-トリアミノ-1,3,5-トリアジン又は2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジンとの反応生成物を含む熱硬化性樹脂が開示されている。この熱硬化性樹脂は、高い耐熱性、高強度、難燃性、良好な加工性を有することが記載されている。カルボジイミド(CDI)とアルコールを反応させると、イソ-ウレア結合(-NH-C(=N-R)-O-)を有するポリマーが形成される。CDI含有分子を調製するための化学的性質は、「Chemistry and technology of carbodiimides」,Henri Ulrich,Wiley,Hoboken,USA,2007年に詳細に記載されている。CDI含有分子は、イソシアネートからも調製することができる。オリゴマーCDI構造は、2官能イソシアネートを単官能のアルコールと部分的に反応させた後、ホスホレンをベースとする触媒を添加する場合に得ることができる(WO2015/123416 A1)。得られたポリカルボジイミド(pCDI)ポリマーは、例えば、電気及び電子包装用途又は合成繊維用途、コーティング組成物及び/又はインクに利用することができる。オリゴマーCDI構造は、ホスホレンをベースとする触媒を用いて、単官能イソシアネートと組み合わせた2官能イソシアネートから出発して得ることもでき、これによりキャップされたポリカルボジイミドが得られる(WO2015/127041 A1)。WO2015/127041 A1は、これらのキャップされたポリカルボジイミド及びポリオールを含む組成物も開示している。WO2015/127038 A1には、キャップされたポリカルボジイミドの製造方法、及びキャップされたポリカルボジイミドとモノマー酸との反応生成物を含むポリマーが開示されている。
【0004】
すべての文献に共通しているのは、第一に、使用される成分について広範なリストが開示されていること、及びまた、最終的な樹脂を調製するために、(キャップされた)pCDIと反応性化合物の好適な混合比の広い範囲が記載されていることである。第二に、すべての文献は、樹脂を接着剤として使用することに関しては言及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】US 5,079,326 A
【文献】WO2015/123416 A1
【文献】WO2015/127041 A1
【文献】WO2015/127038 A1
【非特許文献】
【0006】
【文献】「Chemistry and technology of carbodiimides」,Henri Ulrich,Wiley,Hoboken,USA,2007年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の根底にある問題は、接着剤として使用可能であり、かつ向上した接着特性を有する、さらなるイソシアネートを含まないポリマーを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この目的は、少なくとも、
i)1分子あたりのカルボジイミド基の数が1~10の範囲である、ポリカルボジイミド(pCDI)、
ii)ポリエステルオール
の反応から得られる又は得ることができる、特に接着剤としての使用のための熱硬化性樹脂組成物によって達成され、ここで、(i)によるポリカルボジイミド中のカルボジイミド基と(ii)によるポリエステルオール中のヒドロキシル基とのモル比が1:2~2:1の範囲である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
好ましい実施態様によれば、(ii)によるポリエステルオールが結晶性である。好ましくは、結晶性ポリエステルオール(ii)は、結晶性ポリオールと非結晶性ポリオールとの混合物の形態で使用され、ここで、100質量%である混合物の全質量に基づいて、少なくとも25質量%の(ii)による混合物が少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールからなる。したがって、好ましい実施態様によれば、熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも、
i)1分子あたりのカルボジイミド基の数が1~10の範囲である、ポリカルボジイミド、
ii)結晶性ポリオールと非結晶性ポリオールとの混合物
の反応から得られる又は得ることができ、ここで、(i)によるポリカルボジイミド中のカルボジイミド基と(ii)による混合物中のヒドロキシル基とのモル比が1:2~2:1の範囲であり、100質量%である混合物の全質量に基づいて、少なくとも25質量%の(ii)による混合物が少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールからなる。
【0010】
驚いたことには、pCDIと、特に結晶性ポリエステルオールとの特定の組み合わせを使用すると、優れた特性が得られたことが示されており、例えば、得られた接着剤が80℃超のせん断接着破壊温度(SAFT)を有する。SAFTは、接着剤の結合が破壊される温度を表しており、すなわち、室温での接着力だけでなく、高温での接着剤の結合の安定性も示す指標である。さらに、pCDI中のカルボジイミド基と結晶性ポリエステルオール中のヒドロキシル基とのモル比を1:2~2:1の範囲にすることで、熱硬化性樹脂の機械的特性が明らかに向上し、これは、例えば、せん断力の経時変化からも明らかであった。
【0011】
熱硬化性樹脂組成物の一実施態様において、(i)によるポリカルボジイミドは、カルボジイミド化触媒(i.3)の存在下で、少なくとも:
i.1)少なくとも1種のジイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物;
i.2)モノイソシアネート、イソシアネート反応性単官能化合物(ここで、イソシアネート反応性単官能化合物は、モノアルコール、モノチオール、モノアミン、及びこれらのイソシアネート反応性単官能化合物の2種以上の混合物からなる群から選択される)、及びモノイソシアネートと、イソシアネート反応性単官能化合物、好ましくは少なくともモノアルコールとの混合物からなる群から選択される単官能化合物、
の反応から得られる又は得ることができる。
【0012】
熱硬化性樹脂組成物の一実施態様において、(i)によるポリカルボジイミドは、
a)温度Tで、(i.1)によるポリイソシアネート組成物を(i.2)による単官能化合物の少なくとも一部と混合して、第1混合物を得ること、
b)Tを超える温度Tで、(a)で得られた第1混合物に触媒(i.3)を添加して、前駆体化合物を得ること、
c)温度Tで、(b)で得られた前駆体化合物を調整すること、
d)温度Tで、(i.2)による単官能化合物の残りの部分を添加して、(i)によるポリカルボジイミドを得ること
によって得られ又は得ることができ、
ここで、Tが、70℃未満の温度、好ましくは5~70℃未満の範囲、より好ましくは5~69℃の範囲の温度であり、
が、70℃以上の温度、好ましくは70℃以上~150℃の範囲、より好ましくは70~150℃の範囲の温度であり、
が、100℃未満の温度、好ましくは5~100℃の範囲、より好ましくは5~99℃の範囲の温度である。
【0013】
熱硬化性樹脂組成物の一実施態様において、(ii)によるポリエステルオールは、30℃超、好ましくは30℃超~80℃の範囲、より好ましくは31℃~80℃の範囲の融点を有する。好ましい実施態様において、(ii)による混合物の少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールは、30℃超、好ましくは30℃超~80℃の範囲、より好ましくは31℃~80℃の範囲の融点を有する。
【0014】
熱硬化性樹脂組成物の一実施態様において、(ii)によるポリエステルオールは、500~5000g/molの範囲の分子量を有する。好ましくは、(ii)による混合物の少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールは、500~5000g/molの範囲の分子量を有する。
【0015】
本発明の結晶性ポリエステルオールは、当業者には結晶性ポリエステルオールとして知られているが、その結晶化度を決定することは困難である。第一に、ポリエステルオールの好ましい分子量が500~5000g/molの範囲、好ましくは750~3000g/molの範囲であり、ヒドロキシル鎖の末端がポリオールの結晶化を制限するからである。第二に、測定を行う前にサンプルが経験した温度履歴が、結晶化の延長に影響を与えるからである。第三に、結晶化度の決定を行う際の速度が測定結果に影響を与える可能性がある。当業者は、室温(20℃~25℃の範囲の温度)での以下の特性に基づいて、ポリエステルオールの目視検査及びそのレオロジー的挙動によって結晶性ポリエステルオールを認識する:
A)結晶性ポリエステルオールは、ポリエステルオール中の結晶が可視光の波長よりも大きな寸法を有し、したがって散乱体として機能するから、白色~濁った外観を有すること、
B)ポリエステルオールは自重では流動しないこと、
C)ポリエステルオールは、ワックス状の粘性を有すること。
【0016】
(ii)によるポリエステルオールは、(A)、(B)、(C)の少なくとも1つ、好ましくは(A)、(B)、(C)の2つ、より好ましくは(A)、(B)、(C)の3つの特性すべてを満たす限り、結晶性であると考えられる。
【0017】
一実施態様によれば、1種以上の結晶性ポリエステルオール(単数又は複数)(ii)のみが使用される。時には、ポリオールの混合物を使用することによって、ポリオール相の結晶化度を低下させることが有利であり、ここで、第1ポリオールが少なくとも1種の結晶性ポリエステルオール(ii)であり、1種以上の第2ポリオールが非結晶性である。したがって、本発明の実施態様では、結晶性ポリオールと非結晶性ポリオールとの混合物(ブレンド)も使用することができ、ここで、100質量%である混合物の全質量に基づいて、少なくとも25質量%、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも75質量%の混合物が1種以上の結晶性ポリエステルオールからなる。100質量%までの残りの部分は、1種以上の非結晶性ポリオール(単数又は複数)である。好ましくは、100質量%である混合物の全質量に基づいて、少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも75質量%の、結晶性ポリオールと非結晶性ポリオールとの混合物は少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールからなり、ここで、より好ましくは、(ii)が1種以上の結晶性ポリエステルオールからなる。「非結晶性ポリオール」という用語は、非結晶性ポリエステルオール(ポリエステルポリオール)及びポリエーテルオール(ポリエーテルポリオール)を含む。このようなポリオールはWO 2016/026807 A1に記載されており、ここで、好適なポリエーテルオール及びその合成は、7頁23行目~8頁14行目に開示されており、好適なポリエステルオール及びその合成は、8頁16行目~9頁13行目に開示されている。単一のジオール及び単一の二酸から調製されるポリエステルオールは、結晶性であり得、これにより、前記ポリエステルオールの融点は、ヘトロ原子基の間の炭素原子の数によって決定される。炭素原子の数が多いほど、融点は高くなる。分岐状ジオール及び/又は分岐状二酸から、及び2種以上のジオールの混合物及び/又は2種以上の二酸の混合物から調製されたポリエステルオールは、非晶質である可能性が高い。ポリエステルオールが少なくとも部分的に結晶性である場合、その融点は、前述のジオール及び二酸の構造に応じて、25~100℃の範囲、好ましくは30超~80℃の範囲、より好ましくは31~80℃の範囲である。
【0018】
熱硬化性樹脂組成物の一実施態様において、(ii)によるポリエステルオールは、少なくとも:
(ii.1)エステル形成に対して反応性のある少なくとも2個のヒドロキシル基を有する化合物;
(ii.2)エステル形成に対して反応性のある少なくとも2個のカルボキシル基を有する化合物
をベースとする飽和ポリエステルオールであり、
ここで、エステル形成に対して反応性のある少なくとも2個のヒドロキシル基を有する化合物(ii.1)が、好ましくは飽和ジオール、より好ましくは飽和C2~C18アルキルジオール、より好ましくは1,2-エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、及びこれらのジオールの2種以上の混合物からなる群から選択される飽和C2~C10アルキルジオールであり、及び
エステル形成に対して反応性のある少なくとも2個のカルボキシル基を有する化合物(ii.2)が、好ましくは、飽和ジカルボン酸、飽和ジカルボン酸の無水物、飽和ジカルボン酸のエステル、及びこれらの成分の2種以上の混合物からなる群から選択され、より好ましくは、飽和C2~C10ジカルボン酸及びこれらの2種以上の混合物、より好ましくはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12-ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、3,6,9-トリオキサウンデカン二酸、及びこれらのジカルボン酸の2種以上の混合物からなる群から選択される飽和C2~C10ジカルボン酸からなる群から選択される。好ましくは、(ii)による混合物の少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールは、少なくとも:
(ii.1)エステル形成に対して反応性のある少なくとも2個のヒドロキシル基を有する化合物;
(ii.2)エステル形成に対して反応性のある少なくとも2個のカルボキシル基を有する化合物
をベースとする飽和ポリエステルオールであり、
ここで、エステル形成に対して反応性のある少なくとも2個のヒドロキシル基を有する化合物(ii.1)が、好ましくは飽和ジオール、より好ましくは飽和C2~C18アルキルジオール、より好ましくは1,2-エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、及びこれらのジオールの2種以上の混合物からなる群から選択される飽和C2~C10アルキルジオールであり、及び
エステル形成に対して反応性のある少なくとも2個のカルボキシル基を有する化合物(ii.2)が、好ましくは、飽和ジカルボン酸、飽和ジカルボン酸の無水物、飽和ジカルボン酸のエステル、及びこれらの成分の2種以上の混合物からなる群から選択され、より好ましくは、飽和C2~C10ジカルボン酸及びこれらの2種以上の混合物、より好ましくはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12-ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、3,6,9-トリオキサウンデカン二酸、及びこれらのジカルボン酸の2種以上の混合物からなる群から選択される飽和C2~C10ジカルボン酸からなる群から選択される。
【0019】
熱硬化性樹脂組成物の好ましい実施態様によれば、(ii)によるポリエステルオールは、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、12-ドデカン二酸及びこれらのジカルボン酸の2種以上の混合物からなる群から選択されるC2~C10ジカルボン酸、及びヘキサン-1,6-ジオール、ネオペンチルグリコール又はヘキサン-1,6-ジオールとネオペンチルグリコールとの混合物であるジオールをベースとするポリエステルオールである。
【0020】
熱硬化性樹脂組成物の別の実施態様において、(ii)によるポリエステルオールは、少なくともα-ω-ヒドロキシ-カルボン酸、α-ω-ヒドロキシ-カルボン酸の環状オリゴマー、又はそれらの2種以上の混合物をベースとする飽和ポリエステルオールであり、ここで、(ii)によるポリエステルオールは、好ましくは、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、1,6-ジオキサシクロドデカン-7,12-ジオン、オキサシクロドデカン-2-オン、及びこれらの化合物の2種以上の混合物からなる群から選択される。
【0021】
好ましくは、(ii)による混合物の少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールは、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、12-ドデカン二酸、及びこれらのジカルボン酸の2種以上の混合物からなる群から選択されるC2~C10ジカルボン酸、及びヘキサン-1,6-ジオール、ネオペンチルグリコール、又はヘキサン-1,6-ジオールとネオペンチルグリコールとの混合物であるジオールをベースとするポリエステルオールである;又は
(ii)による混合物の少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールは、少なくともα-ω-ヒドロキシ-カルボン酸、α-ω-ヒドロキシ-カルボン酸の環状オリゴマー、又はそれらの2種以上の混合物をベースとする飽和ポリエステルオールであり、ここで、(ii)による混合物の少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールが、好ましくは、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、1,6-ジオキサシクロドデカン-7,12-ジオン、オキサシクロドデカン-2-オン、及びこれらの化合物の2種以上の混合物からなる群から選択される。
【0022】
カルボジイミド化触媒(i.3)は、ポリカルボジイミドを製造するために当業者に知られている任意のタイプのカルボジイミド化触媒であってもよい。熱硬化性樹脂組成物の一実施態様において、カルボジイミド化触媒(i.3)は、3級アミド、塩基性金属化合物、カルボン酸金属塩、非塩基性有機金属化合物及びリン化合物からなる群から選択される。参照により本明細書に組み込まれる特定のカルボジイミド化触媒は、WO 2015/123416 A1の[0047]~[0056]に開示されている。好ましい一実施態様において、カルボジイミド化触媒(i.3)は、少なくとも1種のホスホレンオキシドを含み、ここで、少なくとも1種のホスホレンオキシドは、一般式(I)を有する
【化1】
(式中、Rは、置換又は非置換のC1~C15炭化水素基であり、
又はRは、水素原子、ハロゲン原子、好ましくは塩素原子(Cl)、及びC1~C12アルキル基からなる群から選択され、R、Rの他方は、Rと二重結合を形成し、
、R、R、R、Rは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、好ましくは塩素原子(Cl)、及びC1~C12アルキル基からなる群から選択される)。
【0023】
好ましくは、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、シクロヘキシル、n-ドデシル、フェニル、o-、m-又はp-トリル、キシリル、ナフチル、4-ジフェニル、2-フェニルエチル、2-クロロエチル、2-メトキシ-エチル、o-、m-又はp-クロロフェニル、p-メトキシフェニル、及びp-N,N-ジメチルアミノフェニルからなる群から選択される。より好ましくは、Rは、C2~C4アルキル基、フェニル基又はベンジル基からなる群から選択される。Rと二重結合を形成しないR又はRからの基は、好ましくはHである。好ましくは、R~Rは、独立して、水素原子、塩素原子、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル及びブチルからなる群から選択され、ここで、メチルが好ましい。より好ましくは、R~Rのそれぞれは、H又はメチルである。
【0024】
好ましい一実施態様において、ホスホレンオキシド触媒は、1-メチル-1-オキソ-ホスホレン、1-フェニル-3-メチル-1-オキソ-ホスホレン、1-ベンジル-3-メチル-1-オキソ-ホスホレン、1-エチル-3-メチル-1-オキソ-ホスホレン、及びこれらのホスホレンオキシド触媒の2種以上の混合物からなる群から選択される。好ましい触媒は、1-メチル-1-オキソ-ホスホレン、1-フェニル-3-メチル-1-オキソ-ホスホレン(3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン1-オキシド、MPPO)、及び1-メチル-1-オキソ-ホスホレンとMPPOとの混合物であり、MPPOが特に好ましい触媒である。
【0025】
熱硬化性樹脂組成物の一実施態様において、前記樹脂組成物は触媒(iii)をさらに含み、触媒(iii)は、イソウレア結合形成触媒として使用可能であり、好ましくは金属含有触媒の群から、より好ましくは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、好ましくはNa、K及び/又はLi、又はTi、Zr、Hf、V、Cu、Hg、Zn、Sn、Hg、Bi及びPbの群からの金属のアルコラート、カルボキシレート、アセトアセテート及び/又は2-4ペンタジオンからなる群から選択される。より好ましくは、触媒(iii)は、ジメチルスズカルボキシレート、ジメチルスズジネオデカネート、テトライソプロピルオルソチタネート、チタンイソプロポキシド及びビスマストリネオデカネートからなる群から選択される。
【0026】
ジイソシアネート化合物は、2個のイソシアネート基を含み、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、及びこれらのジイソシアネートの2種以上の混合物からなる群から選択される。脂肪族ジイソシアネート化合物の具体例には、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、及びこれらの組み合わせ、及びこれらの脂肪族ジイソシアネート化合物の任意の異性体が含まれる。しかしながら、典型的には、ジイソシアネート化合物は、芳香族ジイソシアネート化合物を含む。熱硬化性樹脂組成物の一実施態様において、(i)によるポリイソシアネート組成物に含まれるジイソシアネートは、芳香族ジイソシアネートであり、好ましくは2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’-MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)、2,4-トルエンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トルエンジイソシアネート(2,6-TDI)、及びこれらのジイソシアネートの2種以上の混合物からなる群から選択され、より好ましくは2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、及び2,4-トルエンジイソシアネートと2,6-トルエンジイソシアネートとの混合物からなる群から選択される。
【0027】
ポリカルボジイミド(i)の合成では、モノイソシアネート、イソシアネート反応性単官能化合物、及びモノイソシアネートとイソシアネート反応性単官能化合物との混合物からなる群から選択された単官能化合物である単官能化合物(i.2)が使用される。モノイソシアネートは、1個のイソシアネート基を有する有機分子に関するものであり、イソシアネート反応性単官能化合物は、1個のイソシアネート反応性基を有する有機分子である。単官能化合物の量は、ポリカルボジイミドの分子量を調節するために必要であり、ポリカルボジイミドの調製に使用される単官能化合物の量が多いほど、その分子量は低くなる。モノイソシアネートは、芳香族又は脂肪族のもの、好ましくは芳香族のものであり得る。モノイソシアネートは、フェニルイソシアネート、トルイルイソシアネート、ナフタレンイソシアネート、及びこれらのモノイソシアネートの2種以上の混合物からなる群から選択されてもよい。イソシアネート反応性基を有する化合物は、モノアルコール、モノチオール、モノアミン、及びこれらのイソシアネート反応性単官能化合物の2種以上の混合物からなる群から選択され、すなわち、イソシアネート反応性基を有する化合物は、アルコール、アミン及びチオールから選択される1個の基を有する有機分子である。有機置換基は、芳香族又は脂肪族のもの、好ましくは直鎖、分岐鎖及び環状脂肪を含む脂肪族のものであってもよい。脂肪族置換基は、好ましくは、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子、好ましくは酸素原子からなる群から選択される1個以上のヘテロ元素原子を含有してもよい。イソシアネート反応性基は、好ましくはアルコールであり、すなわち、イソシアネート反応性単官能化合物は、好ましくはモノアルコールであり、より好ましくは、単官能化合物(i.2)は、少なくともモノアルコールである。有機置換基の炭素原子数及びヘテロ元素原子数は、合計で、1~50、好ましくは2~20の範囲で変化してもよい。好ましい実施態様において、モノアルコールは、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、2-メチル-プロパン-1-オール、プロパン-2-オール、2-エチル-ヘキサン-1-オール、シクロヘキサノール、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、及びこれらのモノアルコールの2種以上の混合物からなる群から、好ましくはブタノール、ヘキサノール、2エチルヘキサン-1-オール、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から選択され、モノアルコールは、より好ましくは少なくとも2エチルヘキサン-1-オールを含み、より好ましくは少なくとも2エチルヘキサン-1-オールである。
【0028】
一実施態様によれば、熱硬化性樹脂組成物は、任意に好ましくはジメチルスズカルボキシレートである触媒(iii)の存在下で、少なくとも:
i)1分子あたりのカルボジイミド基の数が1~10の範囲である、ポリカルボジイミド、
ii)ポリエステルオール
の反応から得られ又は得ることができ、
ここで、(i)によるポリカルボジイミド中のカルボジイミド基と(ii)によるポリエステルオール中のヒドロキシル基とのモル比が1:2~2:1の範囲であり、
- (i)によるポリカルボジイミドは、好ましくは3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン1-オキシド(MPPO)であるカルボジイミド化触媒(i.3)の存在下で、少なくとも:
i.1)少なくともTDIを含むポリイソシアネート組成物;
i.2)2-エチルヘキサン-1-オールである単官能化合物
の反応から得られる又は得ることができる、トルエンジイソシアネートをベースとするポリカルボジイミドであり、
- (ii)によるポリエステルオールは、ヘキサン-1,6-ジカルボン酸及びヘキサン-1,6-ジオールをベースとする結晶性飽和コポリエステルである。
【0029】
好ましくは、請求項1から8のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物は、任意に好ましくはジメチルスズカルボキシレートである触媒(iii)の存在下で、少なくとも:
i)1分子あたりのカルボジイミド基の数が1~10の範囲である、ポリカルボジイミド、
ii)結晶性ポリオールと非結晶性ポリオールとの混合物
の反応から得られ又は得ることができ、
ここで、(i)によるポリカルボジイミド中のカルボジイミド基と(ii)による混合物中のヒドロキシル基とのモル比が1:2~2:1の範囲であり、100質量%である混合物の全質量に基づいて、少なくとも25質量%の(ii)による混合物が少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールからなり、
- (i)によるポリカルボジイミドは、好ましくは3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン1-オキシド(MPPO)であるカルボジイミド化触媒(i.3)の存在下で、少なくとも:
i.1)少なくともTDIを含むポリイソシアネート組成物;
i.2)2-エチルヘキサン-1-オールである単官能化合物
の反応から得られる又は得ることができる、トルエンジイソシアネートをベースとするポリカルボジイミドであり、
- (ii)による混合物の少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールは、ヘキサン-1,6-ジカルボン酸及びヘキサン-1,6-ジオールをベースとする結晶性飽和コポリエステルである。
【0030】
熱硬化性樹脂組成物の使用方法
本発明はさらに、上記の熱硬化性樹脂組成物の接着剤としての使用方法に関する。
【0031】
熱硬化性樹脂組成物は、2成分接着剤(2K)又は1成分接着剤(1K)として、好ましくは1K接着剤として、より好ましくは接着フィルムの形態の1K接着剤として使用される。
【0032】
接着剤として使用される場合、それは、pCDIと結晶性ポリエステルオールとの特定の組み合わせの使用により、優れた特性、例えば80℃超、好ましくは100℃超、より好ましくは120℃超のSAFTが得られることを示している。第二に、pCDI中のカルボジイミド基と結晶性ポリエステルオール中のヒドロキシル基との特定のモル比を1:2~2:1の範囲にすることで、熱硬化性樹脂の機械的特性が明らかに向上し、これは、例えば、せん断力の経時変化からも明らかであった。
【0033】
本発明の接着剤は、多種多様な基材を接着するために普遍的に使用することができ、特に、ホイルとホイル、又はホイルと基材を接着する際に使用することができる。さらなる実施態様は、1K接着フィルムが、接着剤がよく接着するホイル上にキャストされた用途である。このように調製したホイルは、長期間保存し、熱活性化し、必要に応じて適用することができる。冷却すると結合が形成され、安定した複合体が得られる。さらなる実施態様は、ホイルが装飾ホイルであることである。
【0034】
接着剤の製造方法
本発明はさらに、接着剤、好ましくは2K接着剤の第1製造方法に関し、該方法は、
a)少なくとも:
i)1分子あたりのカルボジイミド基の数が1~10の範囲である、ポリカルボジイミド、
ii)ポリエステルオール
iii)触媒、好ましくはイソウレア形成触媒
を混合して、混合物を得る工程であって、(i)によるポリカルボジイミド中のカルボジイミド基と(ii)によるポリエステルオール中のヒドロキシル基とのモル比が1:2~2:1の範囲であり、(a)による混合が、ポリエステルオール(ii)の融点Tmを超える温度で、好ましくはTm+10℃以上の温度で、より好ましくはTm+10℃~Tm+50℃の範囲の温度で、より好ましくはTm+20℃~Tm+40℃の範囲の温度で行われる、工程と、
b)工程(a)から得られた混合物を少なくとも1つの基材に適用する工程であって、この基材が0℃を超える温度を有し、適用工程が、ポリエステルオール(ii)の融点Tmを超える混合物の温度で、好ましくはTm+10℃以上の温度で、より好ましくはTm+10℃~Tm+50℃の範囲の温度で、より好ましくはTm+20℃~Tm+40℃の範囲の温度で行われる、工程と、
c)任意に、ポリエステルオール(ii)の融点Tmを超える温度で、好ましくはTm超~200℃の範囲、好ましくはTm+1℃~200℃の範囲、より好ましくは50℃~150℃の範囲の温度で、少なくとも1つの基材上で混合物を硬化させて、少なくとも1つの基材上に接着層を含む構成要素を得る工程と
を含む。
【0035】
好ましくは、接着剤、好ましくは2K接着剤の第1製造方法は、
a)少なくとも:
i)1分子あたりのカルボジイミド基の数が1~10の範囲である、ポリカルボジイミド、
ii)結晶性ポリオールと非結晶性ポリオールとの混合物
iii)触媒、好ましくはイソウレア形成触媒
を混合して、混合物を得る工程であって、(i)によるポリカルボジイミド中のカルボジイミド基と(ii)による混合物中のヒドロキシル基とのモル比が1:2~2:1の範囲であり、100質量%である混合物の全質量に基づいて、少なくとも25質量%の(ii)による混合物が少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールからなり、(a)による混合が、ポリエステルオール(ii)の融点Tmを超える温度で、好ましくはTm+10℃以上の温度で、より好ましくはTm+10℃~Tm+50℃の範囲の温度で、より好ましくはTm+20℃~Tm+40℃の範囲の温度で行われる、工程と、
b)工程(a)から得られた混合物を少なくとも1つの基材に適用する工程であって、この基材が0℃を超える温度を有し、適用工程が、(ii)による混合物の少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールの融点Tmを超える混合物の温度で、好ましくはTm+10℃以上の温度で、より好ましくはTm+10℃~Tm+50℃の範囲の温度で、より好ましくはTm+20℃~Tm+40℃の範囲の温度で行われる、工程と、
c)任意に、(ii)による混合物の少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールの融点Tmを超える温度で、好ましくはTm超~200℃の範囲、好ましくはTm+1℃~200℃の範囲、より好ましくは50℃~150℃の範囲の温度で、少なくとも1つの基材上で混合物を硬化させて、少なくとも1つの基材上に接着層を含む構成要素を得る工程と
を含み、
ここで、(c)による硬化は、好ましくは1分を超える時間、より好ましくは10分を超える時間、より好ましくは20分を超える時間で行われる。
【0036】
この接着剤の第1製造方法の一実施態様において、(c)による硬化は、1分を超える時間、好ましくは10分を超える時間、より好ましくは20分を超える時間で行われる。
【0037】
この接着剤の第1製造方法の一実施態様において、少なくとも1つの基材は第1基材及び第2基材を含み、ここで、工程(b)が:
b.1)工程(a)から得られた混合物を第1基材の少なくとも1つの表面に少なくとも部分的に適用して、工程(a)から得られた混合物で少なくとも部分的にコーティングされた表面を有する第1基材を得ることであって、この基材が0℃を超える温度を有し、適用が、ポリエステルオール(ii)の融点Tmを超える混合物の温度で、好ましくはTm+10℃以上の温度で、より好ましくはTm+10℃~Tm+50℃の範囲の温度で、より好ましくはTm+20℃~Tm+40℃の範囲の温度で行われる、ことと、
b.2)第2基材を、第1基材のコーティングされた表面上に少なくとも部分的に配置して、第1基材、第2基材、及びそれらの間に工程(a)から得られた混合物を含む構成要素を得ることと
を含み、
工程(c)が、ポリエステルオール(ii)の融点Tmを超える温度で、好ましくはTm超~200℃の範囲、好ましくはTm+1℃~200℃の範囲、より好ましくは50℃~150℃の範囲の温度で、第1基材及び第2基材の間の混合物を硬化させて、第1基材、第2基材、及びそれらの間の接着層を含む構成要素を得ることを含む。
【0038】
好ましくは、少なくとも1つの基材は第1基材及び第2基材を含み、ここで、工程(b)が:
b.1)工程(a)から得られた混合物を第1基材の少なくとも1つの表面に少なくとも部分的に適用して、工程(a)から得られた混合物で少なくとも部分的にコーティングされた表面を有する第1基材を得ることであって、この基材が0℃を超える温度を有し、適用が、(ii)による混合物の少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールの融点Tmを超える混合物の温度で、好ましくはTm+10℃以上の温度で、より好ましくはTm+10℃~Tm+50℃の範囲の温度で、より好ましくはTm+20℃~Tm+40℃の範囲の温度で行われる、ことと、
b.2)第2基材を、第1基材のコーティングされた表面上に少なくとも部分的に配置して、第1基材、第2基材、及びそれらの間に工程(a)から得られた混合物を含む構成要素を得ることと
を含み、
工程(c)が、(ii)による混合物の少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールの融点Tmを超える温度で、好ましくはTm超~200℃の範囲、好ましくはTm+1℃~200℃の範囲、より好ましくは50℃~150℃の範囲の温度で、第1基材及び第2基材の間の混合物を硬化させて、第1基材、第2基材、及びそれらの間の接着層を含む構成要素を得ることを含む。
【0039】
本発明の別の実施態様は、接着剤、好ましくは1K接着剤の第2製造方法であり、この方法は:
a)少なくとも:
i)1分子あたりのカルボジイミド基の数が1~10の範囲である、ポリカルボジイミド、
ii)ポリエステルオール
iii)触媒、好ましくはイソウレア形成触媒
を混合して、混合物を得る工程であって、(i)によるポリカルボジイミド中のカルボジイミド基と(ii)によるポリエステルオール中のヒドロキシル基とのモル比が1:2~2:1の範囲であり、(a)による混合が、ポリエステルオール(ii)の融点Tmを超える温度で、好ましくはTm+10℃以上の温度で、より好ましくはTm+10℃~Tm+50℃の範囲の温度で、より好ましくはTm+20℃~Tm+40℃の範囲の温度で行われる、工程と、
b’)工程(a)に従って得られた混合物を、0~150℃の範囲の温度を有する少なくとも1つの基材の表面上にキャスティングして、表面上に接着フィルムを得る工程と、
c’)任意に、工程(b’)に従って得られた接着フィルムを表面から取り外す工程と
を含む。
【0040】
好ましくは、接着剤、好ましくは1K接着剤の第2製造方法は、
a)少なくとも:
i)1分子あたりのカルボジイミド基の数が1~10の範囲である、ポリカルボジイミド、
ii)結晶性ポリオールと非結晶性ポリオールとの混合物
iii)触媒、好ましくはイソウレア形成触媒
を混合して、混合物を得る工程であって、(i)によるポリカルボジイミド中のカルボジイミド基と(ii)による混合物中のヒドロキシル基とのモル比が1:2~2:1の範囲であり、(a)による混合が、(ii)による混合物の結晶性ポリエステルオールの融点Tmを超える温度で、好ましくはTm+10℃以上の温度で、より好ましくはTm+10℃~Tm+50℃の範囲の温度で、より好ましくはTm+20℃~Tm+40℃の範囲の温度で行われる、工程と、
b’)工程(a)に従って得られた混合物を、0~150℃の範囲の温度を有する少なくとも1つの基材の表面上にキャスティングして、表面上に接着フィルムを得る工程と、
c’)任意に、工程(b’)に従って得られた接着フィルムを表面から取り外す工程と
を含み、
ここで、工程(b’)によるキャスティングが、好ましくは0℃から(ii)による混合物の少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールの融点Tm以下までの範囲の温度、より好ましくは5℃~Tm-10℃の範囲の温度で、より好ましくは10~30℃の範囲の温度で行われる。
【0041】
この接着剤の第2製造方法の一実施態様において、工程(b’)によるキャスティングが、0℃からポリエステルオール(ii)の融点Tm以下までの範囲の温度で、好ましくは5℃~Tm-10℃の範囲の温度で、より好ましくは10~30℃の範囲の温度で行われる。
【0042】
この接着剤の第2製造方法の一実施態様において、少なくとも1つの基材は少なくとも第1基材及び第2基材を含み、この方法はさらに、
d)工程(b’)又は(c’)に従って得られたフィルムを、第1基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的に適用して、工程(b’)又は(c’)に従って得られたフィルムで少なくとも部分的に覆われた表面を有する第1基材を得る工程と、
e)第2基材を、第1基材の覆われた表面上に少なくとも部分的に配置して、第1基材、第2基材、及びそれらの間に工程(b’)又は(c’)に従って得られたフィルムを含む構成要素を得る工程と、
f)ポリエステルオール(ii)の融点Tmを超える温度で、好ましくはTm超~200℃の範囲、好ましくはTm+1℃~200℃の範囲、より好ましくは50℃~150℃の範囲の温度で、第1基材及び第2基材の間のフィルムを硬化させて、第1基材、第2基材、及びそれらの間の接着層を含む構成要素を得る工程と
を含む。
【0043】
本発明はさらに、上記の第1方法から又は上記の第2方法から得られる又は得ることができる、少なくとも1つの基材上に接着層を含む構成要素、好ましくは第1基材、第2基材、及びそれらの間の接着層を含む構成要素に関する。
【0044】
本発明はさらに、上記の第2方法から得られる又は得ることができる接着フィルムに関する。
【0045】
本発明は、それぞれの従属関係及び後方参照によって示されるように、以下の実施態様及び実施態様による組み合わせによってさらに説明される。特に、実施態様による範囲が言及される各例において、例えば、「実施態様1から4のいずれか一項に記載の・・・」などの用語の文脈では、この範囲内のすべての実施態様が当業者に明示的に開示されることを意味し、すなわち、この用語の文言は、「実施態様1、2、3、4のいずれかに記載の・・・」と同義であると当業者に理解されることに留意されたい。さらに、以下の実施態様のセットは、保護の範囲を決定する特許請求の範囲のセットではなく、本発明の一般的かつ好ましい態様に向けられた説明の適切に構成された部分を表していることに明示的に留意されたい。
【0046】
1.少なくとも:
i)1分子あたりのカルボジイミド基の数が1~10の範囲である、ポリカルボジイミド、
ii)結晶性ポリオールと非結晶性ポリオールとの混合物
の反応から得られる又は得ることができる、特に接着剤としての使用のための熱硬化性樹脂組成物であって、
(i)による前記ポリカルボジイミド中のカルボジイミド基と(ii)による前記混合物中のヒドロキシル基とのモル比が1:2~2:1の範囲であり、100質量%である前記混合物の全質量に基づいて、少なくとも25質量%の(ii)による前記混合物が少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールからなる、熱硬化性樹脂組成物。
【0047】
2.(i)による前記ポリカルボジイミドは、カルボジイミド化触媒(i.3)の存在下で、少なくとも:
i.1)少なくとも1種のジイソシアネートを含むポリイソシアネート組成物;
i.2)モノイソシアネート、イソシアネート反応性単官能化合物、及びモノイソシアネートと、イソシアネート反応性単官能化合物、好ましくは少なくともモノアルコールとの混合物からなる群から選択される単官能化合物であって、前記イソシアネート反応性単官能化合物が、モノアルコール、モノチオール、モノアミン、及びこれらのイソシアネート反応性単官能化合物の2種以上の混合物からなる群から選択される、単官能化合物
の反応から得られる又は得ることができる、実施態様1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0048】
3.(i)による前記ポリカルボジイミドは、
a)温度Tで、(i.1)による前記ポリイソシアネート組成物を(i.2)による前記単官能化合物の少なくとも一部と混合して、第1混合物を得ること、
b)Tを超える温度Tで、(a)で得られた前記第1混合物に前記触媒(i.3)を添加して、前駆体化合物を得ること、
b)温度Tで、(b)で得られた前記前駆体化合物を調整すること、
c)温度Tで、(i.2)による前記単官能化合物の残りの部分を添加して、(i)による前記ポリカルボジイミドを得ること
によって得られ又は得ることができ、
が、70℃未満の温度、好ましくは5~70℃未満の範囲、より好ましくは5~69℃の範囲の温度であり、
が、70℃以上の温度、好ましくは70℃以上~150℃の範囲の温度であり、
が、100℃未満の温度、好ましくは5~100℃の範囲、より好ましくは5~99℃の範囲の温度である、実施態様2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0049】
4.(ii)による前記混合物の前記少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールは、30℃超、好ましくは30℃超~80℃の範囲、より好ましくは31℃~80℃の範囲の融点を有する、実施態様1から3のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0050】
5.(ii)による前記混合物の前記少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールは500~5000g/molの範囲の分子量を有する、実施態様1から4のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0051】
6.100質量%である前記混合物の全質量に基づいて、少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも75質量%の結晶性ポリオールと非結晶性ポリオールとの前記混合物が少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールからなり、より好ましくは、(ii)が1種以上の結晶性ポリエステルオールからなる、実施態様1から5のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0052】
7.(ii)による前記混合物の前記少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールは、少なくとも:
(ii.1)エステル形成に対して反応性のある少なくとも2個のヒドロキシル基を有する化合物;
(ii.2)エステル形成に対して反応性のある少なくとも2個のカルボキシル基を有する化合物
をベースとする飽和ポリエステルオールであり、
エステル形成に対して反応性のある少なくとも2個のヒドロキシル基を有する前記化合物(ii.1)が、好ましくは飽和ジオール、より好ましくは飽和C2~C18アルキルジオール、より好ましくは1,2-エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、及びこれらのジオールの2種以上の混合物からなる群から選択される飽和C2~C10アルキルジオールであり、及び
エステル形成に対して反応性のある少なくとも2個のカルボキシル基を有する前記化合物(ii.2)が、好ましくは、飽和ジカルボン酸、飽和ジカルボン酸の無水物、飽和ジカルボン酸のエステル、及びこれらの成分の2種以上の混合物からなる群から選択され、より好ましくは、飽和C2~C10ジカルボン酸及びこれらの2種以上の混合物、より好ましくはコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12-ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、3,6,9-トリオキサウンデカン二酸、及びこれらのジカルボン酸の2種以上の混合物からなる群から選択される飽和C2~C10ジカルボン酸からなる群から選択される、実施態様1から6のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0053】
8.(ii)による前記混合物の前記少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールは、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、12-ドデカン二酸及びこれらのジカルボン酸の2種以上の混合物からなる群から選択されるC2~C10ジカルボン酸、及びヘキサン-1,6-ジオール、ネオペンチルグリコール又はヘキサン-1,6-ジオールとネオペンチルグリコールとの混合物であるジオールをベースとするポリエステルオールである、実施態様1から7のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0054】
9.(ii)による前記混合物の前記少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールは、少なくともα-ω-ヒドロキシ-カルボン酸、α-ω-ヒドロキシ-カルボン酸の環状オリゴマー、又はそれらの2種以上の混合物をベースとする飽和ポリエステルオールであり、(ii)による前記混合物の前記少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールは、好ましくは、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、1,6-ジオキサシクロドデカン-7,12-ジオン、オキサシクロドデカン-2-オン、及びこれらの化合物の2種以上の混合物からなる群から選択される、実施態様1から6のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0055】
10.前記カルボジイミド化触媒(i.3)は、3級アミド、塩基性金属化合物、カルボン酸金属塩、非塩基性有機金属化合物及びリン化合物からなる群から選択され、好ましくは、前記カルボジイミド化触媒(i.3)は少なくとも1種のホスホレンオキシドを含み、前記少なくとも1種のホスホレンオキシドは、一般式(I)を有する
【化2】
(式中、Rは、置換又は非置換のC1~C15炭化水素基であり、
又はRは、水素原子、ハロゲン原子、好ましくはCl、及びC1~C12アルキル基からなる群から選択され、R、Rの他方は、Rと二重結合を形成し、
、R、R、R、Rは、水素原子、ハロゲン原子、好ましくは塩素原子、及びC1~C12アルキル基からなる群から選択される)、実施態様2から9のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0056】
11.触媒(iii)をさらに含み、前記触媒(iii)は、イソウレア結合形成触媒として使用可能であり、好ましくは金属含有触媒の群から、より好ましくは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、好ましくはNa、K及び/又はLi、又はTi、Zr、Hf、V、Cu、Hg、Zn、Sn、Hg、Bi及びPbの群からの金属のアルコラート、カルボキシレート、アセトアセテート及び/又は2-4ペンタジオンからなる群から選択され、より好ましくは、前記触媒(iii)は、ジメチルスズカルボキシレート、ジメチルスズジネオデカネート、テトライソプロピルオルソチタネート、チタンイソプロポキシド及びビスマストリネオデカネートからなる群から選択される、実施態様1から10のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0057】
12.(i)による前記ポリイソシアネート組成物に含まれる前記ジイソシアネートは、芳香族ジイソシアネートであり、好ましくは2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2’-MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)、2,4-トルエンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トルエンジイソシアネート(2,6-TDI)、及びこれらのジイソシアネートの2種以上の混合物からなる群から選択され、より好ましくは2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、及び2,4-トルエンジイソシアネートと2,6-トルエンジイソシアネートとの混合物からなる群から選択される、実施態様1から11のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0058】
13.任意に好ましくはジメチルスズカルボキシレートである触媒(iii)の存在下で、少なくとも:
i)1分子あたりのカルボジイミド基の数が1~10の範囲である、ポリカルボジイミド、
ii)結晶性ポリオールと非結晶性ポリオールとの混合物
の反応から得られ又は得ることができ、
(i)による前記ポリカルボジイミド中のカルボジイミド基と(ii)による前記混合物中のヒドロキシル基とのモル比が1:2~2:1の範囲であり、100質量%である前記混合物の全質量に基づいて、少なくとも25質量%の(ii)による前記混合物が少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールからなり、
- (i)による前記ポリカルボジイミドは、好ましくは3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン1-オキシド(MPPO)であるカルボジイミド化触媒(i.3)の存在下で、少なくとも:
i.1)少なくともTDIを含むポリイソシアネート組成物;
i.2)2-エチルヘキサン-1-オールである単官能化合物
の反応から得られる又は得ることができる、トルエンジイソシアネートをベースとするポリカルボジイミドであり、
- (ii)による前記混合物の前記少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールは、ヘキサン-1,6-ジカルボン酸及びヘキサン-1,6-ジオールをベースとする結晶性飽和コポリエステルである、実施態様1から12のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【0059】
14.実施態様1から13のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の接着剤としての使用方法。
【0060】
15.2成分接着剤(2K)又は1成分接着剤(1K)として、好ましくは1K接着剤として、より好ましくは接着フィルムの形態の1K接着剤としての、実施態様14に記載の使用方法。
【0061】
16.接着剤、好ましくは2K接着剤の製造方法であって、
a)少なくとも:
i)1分子あたりのカルボジイミド基の数が1~10の範囲である、ポリカルボジイミド、
ii)結晶性ポリオールと非結晶性ポリオールとの混合物
iii)触媒、好ましくはイソウレア形成触媒
を混合して、混合物を得る工程であって、(i)による前記ポリカルボジイミド中のカルボジイミド基と(ii)による前記混合物中のヒドロキシル基とのモル比が1:2~2:1の範囲であり、100質量%である前記混合物の全質量に基づいて、少なくとも25質量%の(ii)による前記混合物が少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールからなり、
(a)による前記混合が、(ii)による前記混合物の前記少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールの融点Tmを超える温度で、好ましくはTm+10℃以上の温度で、より好ましくはTm+10℃~Tm+50℃の範囲の温度で、より好ましくはTm+20℃~Tm+40℃の範囲の温度で行われる、工程と、
b)工程(a)から得られた前記混合物を少なくとも1つの基材に適用する工程であって、前記基材が0℃を超える温度を有し、適用工程が、(ii)による前記混合物の前記少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールの融点Tmを超える前記混合物の温度で、好ましくはTm+10℃以上の温度で、より好ましくはTm+10℃~Tm+50℃の範囲の温度で、より好ましくはTm+20℃~Tm+40℃の範囲の温度で行われる、工程と、
c)任意に、(ii)による前記混合物の前記少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールの融点Tmを超える温度で、好ましくはTm超~200℃の範囲、好ましくはTm+1℃~200℃の範囲、より好ましくは50℃~150℃の範囲の温度で、前記少なくとも1つの基材上で前記混合物を硬化させて、少なくとも1つの基材上に接着層を含む構成要素を得る工程と
を含む、方法。
【0062】
17.(c)による前記硬化は、1分を超える時間、好ましくは10分を超える時間、より好ましくは20分を超える時間で行われる、実施態様16に記載の方法。
【0063】
18.前記少なくとも1つの基材は第1基材及び第2基材を含み、工程(b)が:
b.1)工程(a)から得られた前記混合物を前記第1基材の少なくとも1つの表面に少なくとも部分的に適用して、工程(a)から得られた前記混合物で少なくとも部分的にコーティングされた表面を有する第1基材を得ることであって、前記基材が0℃を超える温度を有し、適用が、(ii)による前記混合物の前記少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールの融点Tmを超える前記混合物の温度で、好ましくはTm+10℃以上の温度で、より好ましくはTm+10℃~Tm+50℃の範囲の温度で、より好ましくはTm+20℃~Tm+40℃の範囲の温度で行われる、ことと、
b.2)前記第2基材を、前記第1基材のコーティングされた表面上に少なくとも部分的に配置して、前記第1基材、前記第2基材、及びそれらの間に工程(a)から得られた前記混合物を含む構成要素を得ることと
を含み、
工程(c)が、(ii)による前記混合物の前記少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールの融点Tmを超える温度で、好ましくはTm超~200℃の範囲、好ましくはTm+1℃~200℃の範囲、より好ましくは50℃~150℃の範囲の温度で、第1基材及び第2基材の間の前記混合物を硬化させて、第1基材、第2基材、及びそれらの間の接着層を含む構成要素を得ることを含む、実施態様16又は17に記載の方法。
【0064】
19.接着剤、好ましくは1K接着剤の製造方法であって、
a)少なくとも:
i)1分子あたりのカルボジイミド基の数が1~10の範囲である、ポリカルボジイミド、
ii)結晶性ポリオールと非結晶性ポリオールとの混合物
iii)触媒、好ましくはイソウレア形成触媒
を混合して、混合物を得る工程であって、(i)による前記ポリカルボジイミド中のカルボジイミド基と(ii)による前記混合物中のヒドロキシル基とのモル比が1:2~2:1の範囲であり、100質量%である前記混合物の全質量に基づいて、少なくとも25質量%の(ii)による前記混合物が少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールからなり、
(a)による前記混合が、(ii)による前記混合物の前記少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールの融点Tmを超える温度で、好ましくはTm+10℃以上の温度で、より好ましくはTm+10℃~Tm+50℃の範囲の温度で、より好ましくはTm+20℃~Tm+40℃の範囲の温度で行われる、工程と、
b’)工程(a)に従って得られた前記混合物を、0~150℃の範囲の温度を有する少なくとも1つの基材の表面上にキャスティングして、前記表面上に接着フィルムを得る工程と、
c’)任意に、工程(b’)に従って得られた前記接着フィルムを前記表面から取り外す工程と
を含む、方法。
【0065】
20.工程(b’)による前記キャスティングが、0℃から(ii)による前記混合物の前記少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールの融点Tm以下までの範囲の温度で、好ましくは5℃~Tm-10℃の範囲の温度で、より好ましくは10~30℃の範囲の温度で行われる、実施態様19に記載の方法。
【0066】
21.前記少なくとも1つの基材は少なくとも第1基材及び第2基材を含み、
d)工程(b’)又は(c’)に従って得られた前記フィルムを、前記第1基材の少なくとも1つの表面上に少なくとも部分的に適用して、工程(b’)又は(c’)に従って得られた前記フィルムで少なくとも部分的に覆われた表面を有する第1基材を得る工程と、
e)前記第2基材を、前記第1基材の覆われた表面上に少なくとも部分的に配置して、前記第1基材、前記第2基材、及びそれらの間に工程(b’)又は(c’)に従って得られた前記フィルムを含む構成要素を得る工程と、
f)(ii)による前記混合物の前記少なくとも1種の結晶性ポリエステルオールの融点Tmを超える温度で、好ましくはTm超~200℃の範囲、好ましくはTm+1℃~200℃の範囲、より好ましくは50℃~150℃の範囲の温度で、第1基材及び第2基材の間の前記フィルムを硬化させて、第1基材、第2基材、及びそれらの間の接着層を含む構成要素を得る工程と
を含む、実施態様19又は20に記載の方法。
【0067】
22.実施態様16から18のいずれか一項に記載の方法から又は実施態様19から21のいずれか一項に記載の方法から得られる又は得ることができる、少なくとも1つの基材上に接着層を含む構成要素、好ましくは第1基材、第2基材、及びそれらの間の接着層を含む構成要素。
【0068】
23.実施態様19又は20に記載の方法から得られる又は得ることができる、接着フィルム。
【0069】
以下の参考例、比較例及び実施例により、本発明をさらに説明する。
【実施例
【0070】
1.化学物質
【0071】
【表1】
【0072】
2.測定方法
ヒドロキシル価(HV):DIN 53240
酸価(AV):DIN EN ISO 14898
NCO含有量:DIN EN ISO 14896
N=C=N含有量:W.Adam及びF.Yany,676 Analytical Chemistry,第49巻,No.4,1977年4月に発表したシュウ酸法
残留TDIモノマー:DIN EN ISO 10283
ラップせん断強度:サンプル調製はISO 4587 / DIN EN 1465、測定はISO 4587 / DIN EN 6060
引張力:ISO 4587 / DIN EN 6060
せん断接着破壊温度(SAFT):空気循環オーブンを使用したASTMD4498と同様。
【0073】
3.参考例、実施例及び比較例
参考例1-トルエンジイソシアネートをベースとするポリカルボジイミド(pCDI)の調製
トルエンジイソシアネート(TDI)の2,4-異性体と2,6-異性体との80:20の混合物(500.0g)をフラスコに入れ、水/氷浴で冷却した。撹拌しながら、2-エチルヘキサン-1-オール(157.2g)を滴下し、温度を25℃未満に維持した。反応終了後、フラスコの内容物を100℃に加熱した。75℃に達したとき、触媒1(3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン1-オキシド、MPPO)溶液(酢酸ブチル中5質量%)30.0gを添加し、100℃に達した後、混合物を100℃の定温で75分間撹拌した。生成物を50℃未満に冷却し、NCO含有量(DIN EN ISO 14896:プラスチック-ポリウレタン原料-イソシアネート含有量の決定に従って決定した)を決定し、9.49質量%であった。NCO含有量に基づいて、70℃未満の温度を維持しながらさらに178.6gの2-エチルヘキサン-1-オールを滴下して、0.0質量%の理論上のNCO含有量に達した。添加完了後、混合物を60℃で反応が終了するまで撹拌した。この材料を室温で一晩放置した。別の容器に移すために、70℃に加熱した。N=C=N含有量(W.Adam及びF.Yany,676 Analytical Chemistry,第49巻,No.4,1977年4月に発表したシュウ酸法に従って決定した)を決定し、6.90質量%であり、NCO含有量は0.17質量%であり、残留TDIモノマー(DIN EN ISO 10283:塗料及びワニス用バインダー-ポリイソシアネート樹脂中のモノマージイソシアネートの決定に従って決定した)は0.01質量%未満であった。回転蒸発器を用いて、10ミリバール及び100℃の油浴で、酢酸ブチルを除去した。
【0074】
実施例2~7-2K接着剤
2K実験手順の説明:
ISO 4587 / DIN EN 1465に厳密に従って、ラップせん断強度(ラップせん断強度0.3mm)を決定するためのサンプルを調製した;その組成を表2に示している。ポリエステルオール1及び参考例1のpCDIの両方とも90℃で調整することで、表2による接着剤組成物を調製した。ポリエステルオール1に触媒2を添加し、へら(spatula)を用いて予備混合した。pCDIを添加し、Speedmixer(商標)(Hauschild Engineering、ドイツ)を用いて1600rpmで30秒間、ブレンドを均質化した。続いて、結合の25mm×12.5mm×0.3mmの接合部をわずかに過充填するのに十分な量の反応混合物を木製のテストバー(ブナ材、100mm×25mm×5mm、Rochell GmbH、ドイツ)の上に置き、2本目の木製テストバーを低い力で接着剤に押し付けた。テストバーを12.5mm重ねて配置することにより、接合部を組み立てた。金属スペーサーを用いて、接着剤層の厚さを0.3mmに設定した。434gの重りを接合部に配置することにより、試験試料を鋳型に固定し、130℃のオーブンで30分間硬化させた。室温まで冷却した後、重りを取り除き、試験の前にサンプルを室温で少なくとも1週間放置した。ラップせん断強度を、5mm/分のクロスヘッド速度で決定し、測定した引張力をオーバーラップ面積で除することによって計算した。各シリーズについて、ラップせん断強度の平均値を記録し、実験誤差は一般に10%程度であった。鋼板(100mm×25mm×1mm,Rochell GmbH,ドイツ)を用いて、サンプルシステム4、5及び6もテストした。空気循環オーブンを用いて、ASTM D4498と同様に、SAFT(せん断接着破壊温度)の決定を行った。決定の前にオーブンを80℃に予熱した。ラップせん断試験試料の一端を固定して垂直位置に保持し、他端(下端)に100gの重りを取り付けた。接着剤の接合部を80℃で30分間保持する場合、温度を10℃間隔で段階的に上昇させ、各温度でサンプルを30分間保持し、接着が破壊するまで続けた。結合が30分間安定している最高温度をSAFTとして記録した。機械的特性及びSAFT特性の結果を表3に示している。略語のn.d.は未決定の略である。
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
pCDI中のカルボジイミド基とポリエステルオール中のヒドロキシル基とのモル比が1:2から2:1の範囲にある実施例3~6では、pCDI中のカルボジイミド基とポリエステルオール中のヒドロキシル基とのモル比が1:2~2:1の範囲外にある実施例2及び7と比較して、機械的特性(特にSAFT)が優れていることが明らかである。
【0078】
サンプル3、4、5及び6については、木製のテストバーを用いて、時間の関数としての結合の接合部の強度変化を決定した。ラップせん断試験試料のサンプル調製手順は、サンプルを130℃で30分間硬化させないことを除いて、上述の手順と同じであった。その代わり、新鮮な試験試料の時間の関数としての強度の変化を測定した。その結果を表4に示している。
【0079】
【表4】
【0080】
実施例3~6は、接着結合の強度ビルドアップが適度なタイムスパンで発生し、約4分後に強度がその最終強度の約30~40%に上昇したことを示している。
【0081】
比較例1~5-2K接着剤
比較例では、木製のテストバーを使用した。接着剤の配合を表5に示している。比較例1~3で使用したポリオールは非結晶性であった。比較例4では、直鎖ポリエステルオール1を使用して結合の接合部を調製し、比較例5では直鎖pCDIを使用した。比較例4及び5の調製において、ポリエステルオール1及びpCDIを事前に調整し、90℃で適用した。比較例1~4の強度ビルドアップを表6に示している。比較例4及び5のラップせん断強度及びSAFTを表7に示している。
【0082】
【表5】
【0083】
【表6】
【0084】
【表7】
【0085】
実施例3~6と比較例1~5との比較から、pCDIと結晶性ポリエステルポリオール(ここではポリエステルポリオール1)との特定の組み合わせは、優れた特性、特にpCDI中のカルボジイミド基と結晶性ポリエステルポリオール中のヒドロキシル基とのモル比が1:2~2:1の範囲にある場合には、明らかに高いせん断力が得られたことが明らかである。結晶性ポリエステルオールとは異なるポリエステルオールでは、pCDI中のカルボジイミド基とポリエステルオール中のヒドロキシル基とのモル比が1:2~2:1の範囲であっても、せん断力の発展が劣っていた。
【0086】
実施例8~11-1K接着剤/接着フィルム
1K実験手順の説明:
ポリエステルオール1及び参考例1のpCDIの両方とも90℃で調整した。ポリエステルオール1に触媒2を添加し、へらを用いて予備混合した。pCDIを添加し、Speedmixer(商標)を用いて1600rpmで30秒間、ブレンドを均質化した。ドクターブレードを用いて、このようにして得られた混合物を、130℃の温度を有するホットプレートに固定した予熱済みのTeflon(登録商標)シート上に、500μmの厚さを有するフィルムに延伸した。この温度(130℃)でフィルムを30分間硬化させた。その後、Teflonシートをホットプレートから取り出し、室温まで冷却した。フィルムはTeflonシートから簡単に取り外すことができた。乾燥した、粘着性のない可撓性のフィルムを得た。フィルムから25mm×12.5mmの寸法を有するサンプルを切り出し、2本の木製テストバーの間に、バーの重なりが12.5mmになるように配置した。万能ダブルクリップを用いてアセンブリを固定し、温度130℃の空気循環式オーブンに30分間入れた。冷却後、クランプを外した。試験の前に、試験試料を少なくとも2週間、実験室で保管した。フィルムの組成及び対応する接着特性をそれぞれ表8及び9に示している。
【0087】
【表8】
【0088】
【表9】
【0089】
pCDI中のカルボジイミド基とポリエステルオール中のヒドロキシル基とのモル比が1:2~2:1の範囲にある実施例9及び10では、pCDI中のカルボジイミド基とポリエステルオール中のヒドロキシル基とのモル比が1:2~2:1の範囲外にある実施例8及び11と比較して、機械的特性(特にSAFT)が優れていることが明らかである。
【0090】
実施例12~14
延伸の温度が室温(20~25℃の範囲の温度)であった点を除いて、実施例8~11について上述したように、実施例12~14の接着フィルムを調製した。乾燥した、粘着性のない可撓性のフィルムを得た。実施例8~11について上述したように、接着接合部を調製した。フィルムの組成、及び対応する接着性及びSAFT特性を、それぞれ表10及び11に示している。
【0091】
【表10】
【0092】
【表11】
【0093】
まずはpCDI中のカルボジイミド基とポリエステルオール中のヒドロキシル基とのモル比が1:2~2:1の範囲にあり、次にフィルムを調製する温度がポリエステルオールの融点未満である(130℃の代わりに室温で延伸する)実施例12~14では、ポリエステルオールの融点を超える温度でフィルムを調製した実験9~11と比較して、さらに向上した特性が得られたことが明らかである。
【0094】
比較例6~8-比較用1K接着剤
比較例6~8の接着フィルムの組成を表12に示している。使用したポリオールは非結晶性であった。実施例8~11について上述した手順に従って、比較例6~8の接着フィルムを調製した。
【0095】
【表12】
【0096】
得られた比較例6~8のフィルムは、柔軟で粘性であり、接着用途には適していなかった。室温で延伸した場合、比較例6~8のフィルムは液状のままで、Teflonシートから取り外すことができなかった。
【0097】
その結果、pCDI中のカルボジイミド基とポリオール中のヒドロキシル基とのモル比が1:2~2:1の範囲にあっても、ポリエステルオールとは異なるポリオールを使用すると、機械的特性(特にSAFT)が劣っていたことが明らかである。
【0098】
全体として、実施例及び比較例から、pCDIと結晶性ポリエステルオールの特定の組み合わせを使用すると、優れた特性、例えば80℃を超え、好ましくは100℃を超え、より好ましくは120℃を超えるSAFTが得られたことが明らかである。次に、pCDI中のカルボジイミド基と結晶性ポリエステルオール中のヒドロキシル基との特定のモル比を1:2~2:1の範囲にすると、熱硬化性樹脂の機械的特性が明らかに向上し、このことは、例えば、せん断力の経時変化からも明らかである。
【0099】
引用文献
US 5,079,326 A
Chemistry and technology of carbodiimides,Henri Ulrich,Wiley,Hoboken,USA,2007年
WO 2015/127041 A1
WO 2015/123416 A1
EP 0 381 324 A1
W.Adam及びF.Yany, Analytical Chemistry,第49巻,No.4,1977年4月,676
WO2016/026807 A1
WO 2015/127038 A1