(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】オブジェクトの表面を処理するための方法、装置、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G03F 1/74 20120101AFI20241106BHJP
【FI】
G03F1/74
(21)【出願番号】P 2023577600
(86)(22)【出願日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2022066031
(87)【国際公開番号】W WO2022263378
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2024-02-15
(31)【優先権主張番号】102021206100.1
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100196612
【氏名又は名称】鎌田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】ロアラック シュテファン フリードリヒ
(72)【発明者】
【氏名】スザフラネク バルトロメーウス
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5482802(US,A)
【文献】国際公開第2009/106288(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オブジェクトの表面(120)を処理するための方法であって、
a.少なくとも第1のガス(150)および第2のガス(160)を含むガス混合物を前記オブジェクトの表面(120)の反応部位(110)に供給することと、
b.複数の露光区間において前記反応部位(110)を高エネルギー粒子のビームに露光することによって、前記反応部位(110)において、少なくとも第1の部分反応および第2の部分反応を含む反応を誘発することであって、
b1.前記第1の部分反応は主に前記第1のガス(150)によって促進され、前記第2の部分反応は主に前記第2のガス(160)によって促進され、
b2.前記それぞれの露光区間の間にガスリフレッシュ区間が存在する、
誘発することと、
c.前記ガスリフレッシュ区間の第1の持続時間を設定することであって、その結果として、前記第1の部分反応のプロセス速度および前記第2の部分反応のプロセス速度が存在する、設定することと、
d.前記第2の部分反応のプロセス速度と比較した前記第1の部分反応のプロセス速度の相対的な増加をもたらす、前記ガスリフレッシュ区間の第2の持続時間を設定することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1のガス(150)は、前記反応部位(110)への第1の添加持続時間を有し、前記第2のガス(160)は、前記第1の添加持続時間よりも長い第2の添加持続時間を有し、前記ガスリフレッシュ区間の前記第2の持続時間は、前記第2の添加持続時間よりも短くなるように設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガスリフレッシュ区間の前記第2の持続時間は、前記ガスリフレッシュ区間中に前記反応部位(110)に拡散し、前記表面(120)に吸着された前記第1のガス(150)の濃度が前記第2のガス(160)の濃度よりも高くなるように設定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記設定された第2の持続時間を起点として、前記ガスリフレッシュ区間の短縮は、前記第2の部分反応のプロセス速度と比較した前記第1の部分反応のプロセス速度のさらなる相対的な増加につながり、前記ガスリフレッシュ区間の延長は、前記第2の部分反応のプロセス速度と比較した前記第1の部分反応のプロセス速度の相対的な減少につながる、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
特に前記第1の部分反応を最適化するように、前記反応部位を前記ビームに露光するために使用される1つまたは複数の露光パラメータを調整することをさらに含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記1つまたは複数の露光パラメータは、前記反応部位に対する前記個々の露光区間の持続時間を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
露光サイクル内の1つまたは複数のそれぞれの露光区間中に前記高エネルギー粒子のビームに露光される複数の反応部位を処理することを含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
特に前記第1の部分反応を最適化するように、前記反応部位を前記ビームに露光するために使用される1つまたは複数の露光パラメータを調整することをさらに含み、前記1つまたは複数の露光パラメータは、前記個々の反応部位に対する前記それぞれの露光区間の持続時間を含む、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
特に前記第1の部分反応を最適化するように、前記反応部位を前記ビームに露光するために使用される1つまたは複数の露光パラメータを調整することをさらに含み、前記1つまたは複数の露光パラメータは、前記個々の反応部位が順々に露光される走査パターンを含む、
請求項7に記載の
方法。
【請求項10】
前記走査パターンは、露光サイクル中に2回以上実行される1つまたは複数のサブループを含み、結果として、前記1つまたは複数のサブループに含まれる前記反応部位が露光サイクル内で複数回露光される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記個々の部分反応のプロセス速度にさらに影響を与えるためにパルスレーザーを使用して前記反応部位(110)を加熱することをさらに含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
前記高エネルギー粒子のビームはレーザービームである、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
前記高エネルギー粒子のビームは電子ビームである、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
前記高エネルギー粒子のビームはイオンビームである、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の部分反応は、不動態化プロセス、エッチングプロセス、堆積プロセス、酸化プロセスのうちの少なくとも1つを含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の部分反応は、不動態化プロセス、活性化プロセス、エッチングプロセス、堆積プロセスのうちの少なくとも1つを含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項17】
前記反応は、前記ガス混合物に含まれる第3のガスによって主に促進される第3の部分反応をさらに含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項18】
前記オブジェクトはリソグラフィマスク(100)を含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項19】
前記マスク(100)の欠陥を修正するために使用される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
オブジェクトの表面(120)、特にリソグラフィマスク(100)の表面(120)を処理するための装置(200)であって、
a.少なくとも第1のガス(150)および第2のガス(160)を含むガス混合物を前記オブジェクトの表面(120)の反応部位(110)に供給するための手段(210)と、
b.複数の露光区間において前記反応部位(110)を高エネルギー粒子のビームに露光することによって、前記反応部位(110)において、少なくとも第1の部分反応および第2の部分反応を含む反応を誘発するための手段(220)であって、
b1.前記第1の部分反応は主に前記第1のガス(150)によって促進され、前記第2の部分反応は主に前記第2のガス(160)によって促進され、
b2.前記それぞれの露光区間の間にガスリフレッシュ区間が存在する、
誘発するための手段(220)と、
c.前記ガスリフレッシュ区間の第1の持続時間を自動的に設定するための手段(240)であって、その結果として、前記第1の部分反応のプロセス速度および前記第2の部分反応のプロセス速度が存在する、自動的に設定するための手段(240)と、
d.前記第2の部分反応のプロセス速度と比較した前記第1の部分反応のプロセス速度の相対的な増加をもたらす、前記ガスリフレッシュ区間の第2の持続時間を自動的に設定するための手段(240)と、
を含む、装置(200)。
【請求項21】
前記第1のガス(150)は前記反応部位(110)への第1の添加持続時間を有し、前記第2のガス(160)は第2の添加持続時間を有し、前記ガスリフレッシュ区間の第2の持続時間を自動的に設定するための手段(240)は、前記第2の部分反応のプロセス速度と比較した前記第1の部分反応のプロセス速度の相対的な増加がもたらされるように、前記第1および第2の添加持続時間に基づいて前記時間区間を設定する、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
実行された場合に、
請求項1または2に記載の方法を請求項20~21のいずれか1項に記載のコンピュータおよび/または装置に実行させる命令を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2021年6月15日にドイツ特許商標庁に出願された「VERFAHREN, VORRICHTUNG UND COMPUTERPROGRAMM ZUR BEARBEITUNG EINER OBERFLACHE EINES OBJEKTS」と題されたドイツ特許出願第2021 206 100.1号の優先権を主張する。ドイツ特許出願第10 2021 206 100.1号の全体は、引用により本特許出願に組み込まれている。
【0002】
本発明は、オブジェクトの表面、特にリソグラフィマスクの表面を処理して、たとえばそのようなマスクの1つまたは複数の欠陥を修復するための方法、装置、およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロエレクトロニクスにおける集積密度の着実な増加の結果として、リソグラフィマスク(以下、単に「マスク」としばしば略す)は、さらにいっそう小さな構造要素をウェハのフォトレジスト層に結像する(image)必要がある。これらの要求を満たすために、露光波長はさらにいっそう短波長にシフトしている。現在、主としてフッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザーが露光目的で使用されており、これらのレーザーは193nmの波長の光を発する。極端紫外(EUV:extreme ultraviolet)波長範囲(10nm~15nm)で放射する光源と、対応するEUVマスクとに関して集中的な研究が行われている。ウェハ露光プロセスの解像能力を向上させるために、従来のバイナリリソグラフィマスクの複数の変形例が同時に開発されてきた。それらの例としては、位相マスクまたは位相シフトマスクおよび多重露光用マスクなどがある。
【0004】
しかしながら、構造要素の寸法はますます減少しているので、ウェハ上に印刷され得る欠陥も可視の欠陥もなく、リソグラフィマスクを常に製造できるとは限らない。マスクの製造にはコストがかかるので、欠陥のあるマスクは可能な限り修復される。
【0005】
リソグラフィマスクの2つの重要な欠陥のグループは、1つ目は黒欠陥(dark defect)であり、2つ目は白欠陥(clear defect)である。
【0006】
黒欠陥とは、吸収体または位相シフト材料が存在するが、この材料が本来存在しないはずの位置である。これらの欠陥は、好ましくは局所エッチングプロセスを利用して余分な材料を除去することによって修復される。
【0007】
対照的に、白欠陥とは、ウェハステッパまたはウェハスキャナでの光学露光時に、欠陥のない同一の参照位置よりも高い透過率を有するマスク上の欠陥である。マスク修復プロセスでは、適切な光学特性を有する材料を堆積させることで、そのような白欠陥を除去することができる。理想的には、修復に使用される材料の光学特性、および特に修復によって生成される材料の光学特性は、マスクの吸収体または位相シフト材料の光学特性に対応する必要がある。
【0008】
マスクを修復する可能な方法は、たとえば、国際公開第2009/106288号の文書に記載されている。
【0009】
しかしながら、最新のマスクの製造と、その後の処理、特にマスクの修復との両方の間に、それぞれ特定の反応ガスによって主に誘発または促進される複数の部分反応が役割を果たすことが多い。知られている装置および方法では、構造およびサイクル時間に関連する制約のため、異なる反応ガスがある割合で含まれるガス混合物がここで使用される。そして、これらの反応ガスは反応部位に拡散し、ここでマスクの表面に吸着される。高エネルギー粒子ビームに露光すること(exposure)により、吸着されたガス分子を「活性化(activated)」させることができ、すると、それによって促進された部分反応が進行する。これはさらに、リソグラフィマスクの処理だけでなく、より一般的には、たとえば構造化ウェハ表面またはマイクロチップなどを変更および/または修復するときなど、マイクロエレクトロニクスの分野におけるオブジェクトの表面処理にも適用することができる。
【0010】
上記のように、従来からガス混合物が使用されているので、その場合の個々の部分反応は実質的に互いに並行して進行する。しかしながら、そのため、部分反応のうちの1つに関するオブジェクト/マスク処理中の露光設定および他のプロセスパラメータを選択的に最適化することは、それによってその他の部分プロセスが悪影響を受けることを受け入れる潜在的な必要性なしには不可能であったか、または大幅に複雑化して初めて可能であった。
【0011】
したがって、本発明は、表面処理中の、特にマスク処理中の部分プロセスを選択的に「選出(single out)」し、これを他の部分プロセスと比較して「強化(amplify)」することによって、その部分プロセスの露光プロセスパラメータを選択的に最適化することを、それぞれの反応ガスを個別に順次導入し、それぞれの次の部分プロセスが実行される前にそれらを再び完全に除去することを必要とせずに、可能にする方法を特定するという目的に基づいている。さらに、そのような方法を実行するための対応する装置および命令を有するコンピュータプログラムを提供することを意図している。
【発明の概要】
【0012】
前述の目的は、以下に説明する本発明の様々な態様によって少なくとも部分的に達成される。
【0013】
一実施形態では、オブジェクトの表面を処理するための方法は、(a.)少なくとも第1のガスおよび第2のガスを含むガス混合物をオブジェクトの表面の反応部位に供給するステップと、(b.)複数の露光区間(exposure intervals)において反応部位を高エネルギー粒子(energetic particles)のビームに露光することによって、反応部位において、少なくとも第1の部分反応および第2の部分反応を含む(化学)反応を誘発する(inducing)ステップであって、第1の部分反応は主に第1のガスによって促進され(promoted)、第2の部分反応は主に第2のガスによって促進され、それぞれの露光区間の間にガスリフレッシュ区間(gas refresh interval)が存在する、誘発するステップと、(c.)第2の部分反応のプロセス速度(process rate)と比べて第1の部分反応のプロセス速度を増加させるために第1の部分反応を選択するステップと、(d.)第2の部分反応のプロセス速度と比較した第1の部分反応のプロセス速度の相対的な増加をもたらす、ガスリフレッシュ区間の持続時間(time duration)を選択するステップと、を含む。
【0014】
導入部分で既に述べたように、表面を処理することが意図されているオブジェクトは、特にリソグラフィマスクを含むことができ、またはリソグラフィマスクの形態のものとすることができる。しかしながら、開示した教示の適用分野はこれに限定されず、開示した教示は、マイクロエレクトロニクスの分野で使用される他のオブジェクトの表面処理、たとえば、構造化ウェハ表面またはマイクロチップ表面などの変更および/または修復にも適用することができる。それにも関わらず、以下の文章では、説明をより明瞭かつ容易に理解できるように保つために、マスク表面の処理に関する適用例について主に言及する。しかしながら、明示的に除外したり、物理的/技術的に不可能であったりしない限り、他の可能な適用例も常に本明細書に包含される。
【0015】
開示した方法は、マスク(またはより一般的にはマイクロエレクトロニクスオブジェクト)をその表面のうちの1つまたはその付近において処理することを対象とする。この目的のために、ガス混合物が反応部位に、すなわち、処理(たとえば、材料の除去または材料の堆積)が行われる部位に供給される。その結果、処理は表面の境界領域で行われるが、反応部位がマスク内に数原子層の深さだけ突き出ることももちろん可能であり、したがって(2次元領域の厳密な数学的意味での)表面「上」に位置するだけではない。ガス混合物に含まれる原子/分子を、たとえばマスク材料に特定の侵入深さだけ侵入させ、そこで反応させることができる。換言すれば、「マスクの表面の反応部位」は、純粋に表面的な処理部位だけでなく、ある程度の深さ(たとえば、上述のように、数原子層の深さ)を有する処理部位も含む。
【0016】
本処理方法は、たとえば、エッチングプロセスおよび不動態化プロセス(passivation process)などの(少なくとも)2つの部分反応または部分プロセスを有する反応を含む(この点に関しては以下でさらに詳細に説明する)。反応または部分反応は、具体的には1つまたは複数の化学反応とすることができる。各部分反応は、ガス混合物に含まれる2つのガスのうちの一方によって主に促進される。「主に」とは、ここでは、対応するガスがなければ部分反応は少なくとも顕著な程度では起こらないが、そのガスが反応部位に特定の最小濃度で存在する場合には部分反応が進行し得ることを意味するものと理解することができる。
【0017】
原則として、さらなるガスおよび/または他の物質も対応する部分反応に関わることができるが、対応する部分反応への主な寄与は第1または第2のガスによってもたらされる。さらに、第1および/または第2のガスがその一部として異なる部分ガスの混合物を含むことも考えられる。しかしながら、簡単かつ明確にするために、以下の文章では常に「第1のガス」および「第2のガス」に言及し、これらがそれぞれ実際には単に個々のガスである場合も明らかに可能である。関与し得るガスおよび部分反応のタイプの具体例については、以下でさらに論じる。
【0018】
部分反応を含む(化学)反応を実行または誘発するために、2つのガスが誘導された反応部位は、特に複数の露光区間において高エネルギー粒子(たとえば、光子、電子またはイオン)のビームに露光される。
【0019】
本開示の文脈における反応部位とは、局所的に限定された方法で露光して反応またはそれぞれの部分反応を誘発することによって処理プロセスを実行することができるピクセルまたはより一般的には空間単位を意味するものと理解することができる。したがって、反応部位の空間範囲は、たとえば、使用される粒子ビームのタイプ、その集束、反応タイプなどに依存し得る。
【0020】
以下にさらに説明するように、開示した方法はさらに、たとえば特定の走査パターン(そのパターン内で個々の反応部位が複数回発生することも可能である)(走査パターンという用語に関するさらなる詳細は以下で説明する)に沿って、1つまたは複数の露光サイクルにおいて、複数の反応部位(すなわち、複数のピクセルまたはそのような空間単位)を処理することをもちろん含むことができる。しかしながら、「反応部位」とは、ここおよび以下で使用する場合、(別段の指定がない限り、または文脈が別段の示唆をしない限り)常に固定の位置を意味するものと理解される。
【0021】
露光区間は、反応部位の単一の連続した露光を含むことができる。しかしながら、露光区間内での高速に連続する一連の露光フラッシュも可能であり、ただし、そのような露光イベントを依然として良い近似の時間単位として考慮および記述することができる場合に限る(たとえば、露光フラッシュの持続時間および/または間隔がガス添加プロセス(ドイツ語:Gasanlagerungsprozess)および部分反応に関する変数よりも何倍も短く、結果として、段階的な露光がガス添加ダイナミクスならびに部分反応および反応部位によって「気付かれない」場合である)。個々の露光区間の間には、ガスリフレッシュ区間がある。この反応を主に促進するガスは、反応部位が露光され、第1および/または第2の部分反応が露光区間で起こった後に、少なくとも部分的に使い果たされるため、十分な量および濃度(concentration)で反応部位に存在できなくなるので、ガスリフレッシュ区間は、次の露光区間に割り当てられた部分反応を再び誘発できるように、対応するガスを反応部位に再供給するために使用される。
【0022】
これは、以下でさらに説明するように、開示した方法が介入し、2つの部分反応のうちの一方を意図的に選択して、そのプロセス速度を他方の部分反応のプロセス速度に比べて増加させる場合である。簡単にするために、以下の文章では、第1の部分反応が選択される場合を考える。しかしながら、これは第2の部分反応とすることもでき、その場合、2つの部分反応の名前を単に入れ替えればよく、以下に続く記述が再び正確になる。
【0023】
選択された部分反応のプロセス速度が相対的に増加するので、この部分反応を選択的に「選出」することが可能であり、このようにして、たとえば、特にこの部分反応に合わせて、露光パラメータ(この点に関しては以下でさらに詳細に説明する)などのさらなるプロセスパラメータを調整することが可能になる。マスク処理の後の時点で、ガスリフレッシュ区間を(再び)変更して、たとえば、第2の部分反応が前面に出て、その部分反応に合わせてプロセスパラメータが調整されるようにすることができる。
【0024】
この時点で留意すべきことは、第2の部分反応のプロセス速度と比べた第1の部分反応のプロセス速度の増加は、必ずしも第1の部分反応のプロセス速度が絶対値で見て第2の部分反応のプロセス速度よりも大きいことを意味するわけではないということであり、この可能性は明らかに存在する。しかしながら、いずれにしても、2つのプロセス速度の比は、第1の部分反応に有利に変化する。
【0025】
プロセス速度をどのように定量化するかは、ここでは、関与するプロセス/部分反応および/または実行される表面処理のタイプによって異なり得る。一般に、プロセス速度は、それぞれの部分反応が進行する「スピード」とみなすことができる。
【0026】
エッチングプロセス/除去プロセス速度または堆積プロセスに関して、プロセス速度は、露光区間あたりに(瞬間的または平均的に)除去または堆積された材料の高さとして定量化することができる。この場合、プロセス速度の大きさの典型的なオーダーは、(たとえば、一定の区間持続時間の仮定の下で)たとえば、1000回の完全な露光区間あたり約1nm~150nmであり得る。
【0027】
表面改質(たとえば、表面を不動態化するための表面の酸化)が発生する不動態化プロセスまたは活性化プロセスに関して、プロセス速度は、たとえば、既に発生した表面被覆率の尺度によって定量化することができる。不動態化プロセスが、たとえば表面の酸化を含む場合、プロセス速度は、プロセス実行/露光区間あたりの処理対象部位の不飽和結合の減少率として定義することができる。
【0028】
したがって、当業者であれば、各ケースにおいて、異なるプロセス/部分反応のプロセス速度について異なる定量的尺度が使用されたとしても、それぞれのプロセス速度の相対的な変化(露光区間あたりの%、またはn回の露光区間あたりの%で表され、たとえば、n=10、100、または1000などである)を相互に比較することができるので、第1の部分反応のプロセス速度が第2の部分反応のプロセス速度に比べて増加したか否かを判定することが可能であるということを理解するであろう。
【0029】
したがって、このプロセス速度の変化は、2つのガスが別々に反応部位に誘導され、その間に再び除去されることなどが理由で完全にもたらされるわけではない。むしろ、プロセス速度の相対的な変化は、ガスリフレッシュ区間、すなわち、反応部位における2つの露光区間の間の持続時間の適切な選択によるものである。既に述べたように、部分反応を促進する2つのガスは、露光区間中に実質的にまたは少なくとも特定の程度まで使い果たされ、すなわち、露光区間後に反応部位で枯渇している。一定の残留量が反応部位に残り得るが、この量は一般に、次の露光区間において対応する部分反応を十分な程度まで再び促進するには不十分である。個別の場合を除いて、第1のガスおよび第2のガスはさらに、異なる物理的特性(たとえば、異なる拡散特性および吸着特性)を有し、開示した方法はこれらを利用して、ガスリフレッシュ区間の持続時間を適切に選択または変更することにより、2つのガスの異なる添加ダイナミクスによって、第1のガスに有利にリフレッシュプロセスをシフトすることが可能になり、その結果、第1の部分反応のプロセス速度が相対的に増加する。
【0030】
第1の部分反応のプロセス速度の相対的な増加は、さらなる対策、たとえば、ガス混合物中の両方のガスの割合を第1のガスに有利に変更することなどによって、さらにサポートすることができる。しかしながら、これは、本発明の特別な利点である、第1の部分反応のプロセス速度の相対的な増加のために厳密には必要ではない。
【0031】
たとえば、第1のガスは、反応部位において第1の添加持続時間(addition duration)(ドイツ語:Anlagerungsdauer)を有することができ、第2のガスは、第1の添加持続時間よりも長い第2の添加持続時間を有することができ、ガスリフレッシュ区間の持続時間は、第2の添加持続時間よりも短くなるように選択することができる。「添加持続時間」という用語は、ここでは、たとえば、特定の点または部位、特に反応部位における露光イベント/露光区間後に、対応するガスがそこに再び補充されて露光前と同程度に利用可能になるまでの(仮説的な)持続時間を意味するものと理解することができる。したがって、ここで検討しているケースでは、第1のガスは「速い」ガスであるのに対し、第2のガスは「より遅い」ガスである。ガスリフレッシュ区間の持続時間を第2の添加持続時間よりも短くなるように選択することによって(ただし、たとえば、第1の添加持続時間以上、または単に第1の添加持続時間より幾分短いだけ、たとえば、第1の添加持続時間の50%または75%以上)、第1のガスが反応部位に既に顕著な程度まで到達しているが、第2のガスがまだ「途中」であるようにすることが可能になる。
【0032】
以下に説明するように、適切なガスの添加持続時間は、ここでは、たとえば実験によって、場合によっては、所与のガスを使用できる様々なタイプのプロセスに応じて、および/または処理対象のオブジェクト表面のタイプおよび性質に応じて決定しておき、本方法の入力パラメータとして使用することができる。
【0033】
理論的には、そのようなプロセスで行われるステップの包括的かつ一般的に有効な説明は困難である。この点に関する詳細は、Ivo Utke, et. al., “Resolution in focused electron- and ion-beam induced processing”, DOI: 10.1116/1.2789441, J. Vac. Sci. Technol. B, Vol. 25, No. 6, Nov/Dec 2007の論文で見つけることができ、これが特に参照される。
【0034】
しかしながら、ある程度の一般性を持って言えることは、少なくとも気相から表面への関連するガスの吸着と、表面の周囲領域から表面に沿ったガス分子の拡散とが添加持続時間に影響を与えるということである。KおよびDがこれらのステップに関する吸着係数および拡散係数をそれぞれ表す場合、添加持続時間は、たとえば、(第一近似で)これらの値の合計に反比例する、すなわち、τ~(K+D)-1と記述することができる。
【0035】
再添加への寄与としての直接吸着が無視できる場合、すなわち、再添加が主に拡散係数に依存する場合、これは十分にあり得るが、(近似的に)τ~D-1となる。
【0036】
さらに、添加持続時間は当然ながら平均値であり、拡散プロセスおよび吸着プロセスは確率的な性質のものであり、すなわち、ガスリフレッシュ区間が終了した後、典型的には、一定量の第2のガスも反応部位に既に存在していることを意味する。しかしながら、相対的に見れば、第1のガスひいては第1の部分反応が優先され、その結果、そのプロセス速度が増加する。
【0037】
ガスリフレッシュ区間の持続時間は、特に、ガスリフレッシュ区間中に反応部位に拡散し、そこでマスク表面に吸着された第1のガスの濃度が、第2のガスの濃度よりも高くなるように選択することができる。
【0038】
既に述べたように、開示した方法は、一般的に言えば、最初は、第2の部分反応と比較した第1の部分反応のプロセス速度の相対的な増加のみを対象としている。しかしながら、使用されるガスに応じて、ガスリフレッシュ区間の完了後、反応部位での第1のガスの濃度が第2のガスの濃度を実際に超えるように、ガスリフレッシュ区間の持続時間を選択することもできる。第1の部分反応のプロセス速度は、第2の部分反応よりも絶対的に大きくすることができる。
【0039】
しかしながら、反応部位の露光時の反応部位における第1のガスの濃度がより高いことは、必ずしも、第1の部分反応のプロセス速度を第2の部分反応よりも絶対的に高くできることの必要条件ではないということにも言及すべきである。部分反応のタイプおよび性質、露光強度などの他の要因もここでは影響し得る。
【0040】
ステップ(d.)で選択された持続時間を起点として、ガスリフレッシュ区間の短縮(shortening)は、特に、第1のガスが上述のように第2のガスと比較して「速い」ガスである場合、第2の部分反応のプロセス速度と比較した第1の部分反応のプロセス速度のさらなる相対的な増加をもたらすことができる。逆に、ガスリフレッシュ区間の延長(lengthening)は、第2の部分反応のプロセス速度と比較した第1の部分反応のプロセス速度の相対的な減少をもたらすことができ、その理由は、その場合に、「より遅い」ガスが再び追いつくので、それが促進する反応の強度が再び増すためである。
【0041】
ガスリフレッシュ区間の持続時間の実際の値は、ここでは当然ながら特定の制限を受ける。関与するガスのうちの「最も速い」ガスですら、再び反応部位に十分な程度まで到達するのに十分な時間がないような持続時間が選択されると、マスク処理プロセスは停止することになる。使用されるガスに加えて、この下限は、ガス混合物中のそれらの分圧、処理が行われる温度、およびさらなるそのような要因にも依存する。
【0042】
下回ることがないであろうガスリフレッシュ区間の最小持続時間の典型的な値は、たとえば、10μsまたは100μsである。
【0043】
一般に、本発明の一部として使用することができるガスリフレッシュ区間の持続時間の典型的な値は、たとえば、10μs~30msの範囲内、または100μs~30msの範囲内である。
【0044】
本明細書に記載のようにガスリフレッシュ区間の持続時間を変更することによってプロセス速度を相対的に変化させることができ、それによって2つの部分反応を「互いに分離する」ことができる典型的な開始値は、たとえば、750μsの持続時間を有するガスリフレッシュ区間であろう。
【0045】
そこで、特定の例をさらに明示的に取り上げるために、第1の部分反応が不動態化プロセスであり、第1のガスがH2Oであり、第2の部分反応がエッチングプロセスであり、第2のガスがXeF2である場合を考える(可能なプロセス/ガスの組み合わせに関する、以下でより詳細に論じる選択肢(i)も参照)。この場合、不動態化プロセスは、50~250μsの範囲の持続時間を有するガスリフレッシュ区間によって「選出」または「強化」することができ、エッチングプロセスは、600~1200μsの範囲の持続時間を有するガスリフレッシュ区間によって「選出」または「強化」することができ、部分反応の所望の「分離」を得るまたはさらに改善するために、これらの範囲内で(たとえば、反復的なテストサイクル/実験で)さらなる調整および最適化を必要に応じて実行することができる。
【0046】
他の特定の例として、第2の部分反応のプロセス速度と比較した第1の部分反応のプロセス速度の相対的な増加のためのガスリフレッシュ区間の持続時間は、たとえば、第1の部分反応のプロセス速度をどの程度区別することを意図しているかに応じて、下記の区間I内に収まるように選択することができ、ここでの仮定は、関与するガスの第1および第2の添加持続時間が既知である、および/または、たとえば上記で示したように実験的に決定されていることである。
I=[第1の添加持続時間;第2の添加持続時間)
【0047】
ここで、第1の添加持続時間は、反応部位への第1のガスの(平均)添加持続時間であり、第2の添加持続時間は、第2のガスのものである。
【0048】
本方法は、特に第1の部分反応を最適化するように、1つまたは複数の露光パラメータを調整することをさらに含むことができる。
【0049】
原則として、本方法は、2つさらにはそれ以上の部分反応の露光パラメータを個別に調整または最適化するために使用することもできる。しかしながら、簡単にするために、以下の文章では、部分反応が2つのみであり、第1の部分反応に関して最適化が行われる方法の場合について論じる。
【0050】
既に述べたように、開示した方法により、追加の構造変化またはガス混合物に関連する変化を伴うことなく、第2の部分反応に比して第1の部分反応を「選出」することが可能になる。これにより、1つまたは複数の露光パラメータを第1の部分プロセスに対して特別に専用の方法で調整すること、すなわち、第1の部分反応向けに最適化することが可能になる。この場合、第2の部分反応はいわばバックグラウンドに後退しているので、第1の部分反応に関する最適化が、この部分反応を事前に「選出」せずに行われる状況と比較して、第2の部分反応の悪化を受け入れる必要がなく、または仮にあったとしても少なくともわずかな悪化しか受け入れる必要がない。
【0051】
たとえば、(主に)第1の部分反応でマスクを十分に処理した後、たとえば、ガスリフレッシュ区間の変更された持続時間(たとえば、その領域における第2の添加持続時間以上のより長い持続時間)を選択することによって、第2の部分反応を再び前面に出すことが可能であり、1つまたは複数の露光パラメータを、今度は第2の部分反応に関して、再び調整することができる。第2の添加持続時間が第1の添加持続時間よりも長い上述の例では、第1のステップで第1の部分反応を実行することができ、第1のステップでは(ガスリフレッシュ区間としてより短い持続時間を選択することによって)第2の部分反応が実質的に抑制される。しかしながら、第2のステップで(ガスリフレッシュ区間としてより長い時間を選択することによって)第2の部分反応を実行すると、第1の部分反応もある程度進行するはずである。しかしながら、第1のステップの前の事前の決定により、第1の部分反応のための第1のステップの持続時間全体が、第1の部分反応が第2のステップ中にも進行することに少なくとも部分的に基づくように、対策がなされ得る。したがって、たとえば、第1のステップの持続時間が(たとえば、所定の方法で)第2のステップの持続時間および/または露光パラメータに少なくとも部分的に依存するように対策を行うことが可能である(当然ながらその逆も同様である)。
【0052】
1つまたは複数の露光パラメータは、たとえば、反応部位に対する個々の露光区間の持続時間(duration)を包含することができる。
【0053】
この場合、たとえば、第1の部分反応が前面にある間、すなわち、そのプロセス速度を第2の部分反応のプロセス速度に比べて増加させている間、個々の露光区間の持続時間は一定にすることができるが、その持続時間は、第2の部分反応が(より)前面に戻された場合と異なることができる。しかしながら、第1の部分反応のプロセス速度を相対的に増加させている間、または異なる区間ブロックの間などで、個々の露光区間の持続時間は区間ごとに変えることもできる。
【0054】
既に述べたように、開示した方法が、露光サイクル内の1つまたは複数のそれぞれの露光区間中に高エネルギー粒子のビームに露光される複数の反応部位(たとえば、複数のピクセル)を処理することを含むこともさらに可能である。
【0055】
そのような露光サイクル内では、反応部位をたとえば順々に通過し、それぞれの露光区間中に高エネルギー粒子のビームに露光して、それぞれの反応部位で処理反応を引き起こして実行することができる。しかしながら、ここでは、特定の反応部位が露光サイクル内で1回だけでなく複数回処理されることも可能であり(たとえば、特に強力な処理が必要な反応部位)、その場合、露光サイクル内で異なる反応部位に対して異なる繰り返し回数が可能である。複数回露光されたそのような反応部位の場合、所与の露光サイクル内の個々の露光区間の持続時間はさらに、一定である必要はなく、実際にはサイクルにわたって変化することができる。
【0056】
本方法は、複数のそのような露光サイクルを含むことができる。これらは順次実行することができる。
【0057】
個々の反応部位/ピクセルに対する露光区間の持続時間は、技術用語では、対応する反応部位/ピクセルに関する「滞留時間(DWT:dwell time)」とも呼ばれる。
【0058】
この場合、特に第1の部分反応を最適化するように調整することができる1つまたは複数の露光パラメータは、個々の反応部位に対するそれぞれの露光区間の持続時間も包含することができる。
【0059】
したがって、個々の反応部位(たとえば、ピクセル)または反応部位のクラスタ(たとえば、ピクセルのクラスタ)の露光を個別に制御および設定することができ、これもサイクルごとに変えられ得る。このようにして、露光を特定の精度で第1の部分反応に設定し、それに合わせて最適化することができ、これにより、たとえば本方法をマスク修復に適用する場合に大きな利点がもたらされ得、その理由は、所望の修正効果を達成するには非常に正確で繊細な作業が必要となるためである。
【0060】
特に第1の部分反応を最適化するように調整することができる1つまたは複数の露光パラメータは、そのような露光サイクル内で反応部位を順々に露光することができる走査パターンをさらに含むことができる。
【0061】
そのような走査パターンにより、処理中に個々の反応部位(または反応部位のクラスタ)を通過する順序を指定することができる。
【0062】
第1の部分反応に特化した走査パターンの調整は、たとえば、第1の部分反応が第2の部分反応と比較してより小さい領域のみに、または、たとえばピクセルで言えば、全てのピクセルのサブセットのみに関係することであり得る。その後、それに応じて走査パターンを選択し、後の時点で(たとえば、第2の部分反応のプロセス速度を再び増加させたときに)より大きな領域に拡大することができる。
【0063】
走査パターンは、露光サイクル中に2回以上実行される1つまたは複数のサブループを含むこともでき、その結果、上記で既に説明したように、サブループに含まれる反応部位が露光サイクル内に複数回露光される。
【0064】
これは、たとえば、第1の部分反応における個々の反応部位または反応部位のクラスタが特に集中的な処理を必要とする場合に特に有利であり得る。少なくとも、対応する反応部位に常に十分な第1のガスが存在すると仮定すると(たとえば、第1のガスが「十分に速い」場合)、これらの反応部位を露光サイクル内で複数回通過して時間を節約することができる。
【0065】
そのような走査パターンおよび/またはそれに含まれるサブループの変更を同様に「間接的に」使用して、特定の反応部位に対するガスリフレッシュ区間の持続時間に影響を与え、ひいてはその部位における第1および第2の部分反応の相対的なプロセス速度に影響を与えることができる。たとえば、特定の反応部位が露光サイクル内で複数回ターゲットにされる場合、各ケースにおいて着目中の反応部位に対する露光区間の間にある他の反応部位の数が、着目中の反応部位に対するガスリフレッシュ区間に影響を及ぼし、これは結局のところ、本開示によれば、その固定部位における2つの露光区間/イベントの間の持続時間を表す。したがって、たとえばサブループを短くすると、着目中の反応部位での2つの露光区間の間に処理される他の反応部位が少なくなり、その結果、着目中の反応部位に対するガスリフレッシュ区間の持続時間を短縮することができ、ひいては、第2の部分反応のプロセス速度と比較して第1の部分反応のプロセス速度を増加させることができる(たとえば、第1のガスが第2のガスに比べて「より速い」ガスである場合)。露光サイクル内でそもそも処理される反応部位の数を減少させることも、この効果を有することができ、その理由は、ここでも、関連する反応部位の2つの露光区間の間に処理する必要がある他の反応部位の数が少なくなるためである。
【0066】
当然ながら、これは全て、着目中の反応部位自体、または、存在し得る、今説明した本方法の一部として同じく処理され得るさらなる反応部位を除いて、露光が全く行われない実際の待ち時間が本方法の一部となるように、ガスリフレッシュ区間の持続時間の選択を行うこともできることを排除するものではない。
【0067】
具体例として、走査パターンは、たとえば、順次実行される複数のサブループを含むことができる。処理対象に選択されたエリアの各ピクセルなどの各反応部位は、ここではただ1つのサブループに割り当てられ、そこで1回だけ露光され得、隣接するピクセルは異なるサブループに割り当てられる。たとえば、n個のサブループが存在し得、各サブグループではn番目ごとのピクセルのみが露光される。全てのサブループが実行されると、全てのピクセルが1回だけ露光され、すなわち処理されたことになる。処理対象エリアおよびサブループの順序、ならびに後者へのピクセルの割り当ては、ここでは、選択されたガスリフレッシュ区間が所与のピクセルの2つの露光の間にちょうど経過するように選択することができる。必要に応じて、個々のピクセルの露光区間の持続時間および/または露光区間の間の待ち時間もこの点に関して調整することができる。このようにして、非常に効果的かつ時間を節約する方法で第1の部分反応を使用および実行することができる。
【0068】
上述の可能性に加えて、またはその代わりに、第2の部分反応に比べて第1の部分反応のプロセス速度を増加させるために、すなわち、第1の部分反応をさらにいっそう良好に「選出」するために、既に上述したように、さらなる対策を取ることもできる。既に述べた可能性の1つは、たとえば、使用されるガス混合物中の2つのガスのそれぞれの割合を変更することであろう。
【0069】
さらなる追加のまたは代替の可能性は、個々の部分反応のプロセス速度にさらに影響を与えるために、パルスレーザーを使用して反応部位(または複数の反応部位)を加熱することからなる。
【0070】
これは、2つの部分反応の特定の温度依存性を前提としている。たとえば、第1の部分反応がより高い温度によって優先される場合、加熱により、第2の部分反応に比して第1の部分反応をさらにいっそう良好に選出することが可能になる。逆の場合は、レーザーによる加熱を使用して、ガスリフレッシュ区間を変更することなく、所望により、再び第2の部分反応をいわば「追加」することができる。
【0071】
換言すれば、この場合、反応部位における2つの部分反応の相対的な強さを設定できるようにするための、反応部位における2つの露光区間の間のガスリフレッシュ区間の持続時間と、パルスレーザーによるその加熱の程度との2つの調整ネジ(setscrew)が存在する。これにより、露光パラメータの非常に正確な調整、およびより一般的には、非常にターゲットが絞られたプロセス制御および処理順序が可能になる。
【0072】
本方法が複数の反応部位を含む場合、異なる反応部位を異なるように加熱することによって、プロセス速度のさらなる局所的な微調整を実現することが可能である。
【0073】
高エネルギー粒子のビームはレーザービームとすることができる。
【0074】
レーザー装置は多くの形態で市場で容易に入手可能であり、非常に安価であり得るので、レーザービームの使用は有利であり得る。
【0075】
高エネルギー粒子のビームは電子ビームとすることができる。
【0076】
電子ビームは、質量を有する粒子のビームであるので、高い空間分解能を提供する(すなわち、たとえば、反応部位の空間範囲を小さくする)ことができる。同時に、電子の使用により、マスク処理中の後方散乱電子および/または二次電子の測定によって、処理の進捗に関する結論を導き出すことができる。
【0077】
高エネルギー粒子のビームはイオンビームとすることもできる。
【0078】
イオンビームは電子ビームよりもさらにいっそう良好な空間分解能を提供し得るが、この場合、ビームの誘導がより複雑であり得、処理中のマスクの意図しない変化または損傷もより大きな影響を与え得る。
【0079】
第1の部分反応は、不動態化プロセス、エッチングプロセス、堆積プロセス、酸化プロセスのうちの少なくとも1つのプロセスを含むことができる。
【0080】
第2の部分反応は、不動態化プロセス、活性化プロセス、エッチングプロセス、堆積プロセスのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0081】
本方法または誘発される(化学)反応は、ガス混合物に含まれる第3のガスによって主に促進される第3の部分反応も含むことができる(第4、第5などのガスによって主に促進される第4、第5などの部分反応も同様に実現可能である)。
【0082】
同様に、本方法は、第1の部分反応が(第2の部分反応と比較して)優先されるように、たとえば、主にエッチングプロセスが起こるように、第1のガスリフレッシュ区間が設定されるシナリオも含むことができる。続いて、第2の部分反応が促進されるように、たとえば、主に不動態化プロセスが起こるように、第2のガスリフレッシュ区間が設定され得る。続いて、第1の部分反応を再び優先するように、第1のガスリフレッシュ区間(または同様の第3のガスリフレッシュ区間)が再び設定され得る。続いて、第2の部分反応を再び優先するように、第2のガスリフレッシュ区間(または同様の第4のガスリフレッシュ区間)が再び設定され得る。したがって、第1および第2の部分反応は交互に、たとえば少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、5回以上、10回以上など、実施され得る。
【0083】
たとえば、第1のガスリフレッシュ区間が設定された場合、第1の部分反応(たとえば、エッチングプロセス)のプロセス速度および第2の部分反応(たとえば、不動態化プロセス)の第2のプロセス速度が提供され得る。そして、第1または第2の部分反応が選択され得、選択された部分反応に基づいて、選択された部分反応のプロセス速度が選択されなかった部分反応のプロセス速度と比較して増加し得るように、第2のガスリフレッシュ区間が設定され得る。たとえば、選択されなかった部分反応のプロセス速度と比較して選択された部分反応のプロセス速度を再び相対的に低下させるために、第1のガスリフレッシュ区間(または同様の第3のガスリフレッシュ区間)が設定され得、以下同様である。したがって、第1および第2の部分反応が交互に実施され得る。
【0084】
本発明に含まれる例示的な組み合わせは以下のとおりである。
【0085】
(i)第1の部分反応は不動態化プロセスであり、第2の部分反応はエッチングプロセスである。
【0086】
使用される第1のガス、すなわち、不動態化ガスの形態のものは、ここではたとえばH2Oとすることができる。使用される第2のガス、すなわち、エッチングガスの形態のものは、たとえばXeF2とすることができる。第2のガスは、場合によっては、少量のMoCOおよび/またはNH3の混和剤(admixture)をさらに含むことができる。
【0087】
この組み合わせは、たとえばHD-PSMマテリアルおよびHD PSMマスクを処理する場合に適している。
【0088】
(ii)第1の部分反応は反応部位におけるマスク表面の酸化であり、第2の部分反応はエッチングプロセスである。
【0089】
ここで、使用される第1のガス、すなわち、酸化ガスの形態のものは、たとえば、窒素性ガス(nitrous gases)(たとえば、N2O、NO、NO2)、酸化水素(たとえば、H2O、H2O2)、分子状酸素もしくは原子状酸素、および/またはオゾンとすることができる。
【0090】
使用される第2のガス、すなわち、エッチングガスの形態のものは、たとえば、ハロゲン含有化合物/ハロゲン化物、たとえば、ハロゲン(たとえば、F2、Cl2)、ハロゲン化水素(たとえば、HF、HCl)、ハロゲン化希ガス(たとえば、XeF2)、ハロゲン化窒素(たとえば、NF3、NOF、NCl3、NOCl)、ハロゲン化炭化水素(たとえば、CF4、CHF3、CCl4)、ハロゲン化リン(たとえば、PF3、PCl3)、および/またはハロゲン化硫黄(たとえば、SF6、SF4、SF2、SCl2、塩化チオニル)とすることができる。
【0091】
(iii)第1の部分反応は反応部位におけるマスク表面の酸化であり、第2の部分反応はエッチングプロセスである。本方法または誘発される反応は、ガス混合物に含まれる第3のガスによって主に促進される第3の部分反応をさらに含み、第3の部分反応は不動態化プロセスである。
【0092】
ここで、使用される第1のガス、すなわち、酸化ガスの形態のものは、たとえば、窒素性ガス(たとえば、N2O、NO、NO2)、酸化水素(たとえば、H2O、H2O2)、分子状酸素もしくは原子状酸素、および/またはオゾンとすることができる。
【0093】
使用される第2のガス、すなわち、エッチングガスの形態のものは、たとえば、ハロゲン含有化合物/ハロゲン化物、たとえば、ハロゲン(たとえば、F2、Cl2)、ハロゲン化水素(たとえば、HF、HCl)、ハロゲン化希ガス(たとえば、XeF2)、ハロゲン化窒素(たとえば、NF3、NOF、NCl3、NOCl)、ハロゲン化炭化水素(たとえば、CF4、CHF3、CCl4)、ハロゲン化リン(たとえば、PF3、PCl3)、および/またはハロゲン化硫黄(たとえば、SF6、SF4、SF2、SCl2、塩化チオニル)とすることができる。
【0094】
使用される第3のガス、すなわち、不動態化ガスとしてのものは、たとえば、金属カルボニル(たとえば、Mo(CO)6、Cr(CO)6、W(CO)6、Fe(CO)5)、H2O、窒素性ガス(たとえば、N2O、NO、NO2)、および/またはケイ素含有化合物(たとえば、ケイ酸塩(たとえば、TEOS=オルトケイ酸テトラエチル)、イソシアン酸ケイ素(たとえば、テトライソシアナトシラン)、シラン(たとえば、シクロペンタシラン)、シロキサンおよび/またはシラザン)とすることができる。
【0095】
(iv)第1の部分反応は堆積プロセスであり、第2の部分反応は、所望の堆積生成物を与えるためのさらなる反応である。
【0096】
ここで、使用される第1のガス、すなわち、堆積ガスとしてのものは、たとえば、シリコン含有化合物(たとえば、ケイ酸塩(たとえば、TEOS=オルトケイ酸テトラエチル)、イソシアン酸ケイ素(たとえば、テトライソシアナトシラン)、シラン(たとえば、シクロペンタシラン)、シロキサンおよび/またはシラン)ならびに/あるいは金属カルボニル(たとえば、Mo(CO)6、Cr(CO)6、W(CO)6、Fe(CO)5)とすることができる。
【0097】
使用される第2のガス、すなわち、反応物としてのものは、たとえば、窒化剤としてのNH3、および/または、たとえば、酸化剤としてのH2OまたはNO2とすることができる。窒素性ガス(たとえば、N2O、NO、NO2)、酸化水素(たとえば、H2O、H2O2)、分子状酸素もしくは原子状酸素、および/またはオゾンも第2のガスとしてふさわしい。
【0098】
(v)第1の部分反応は堆積プロセスであり、第2の部分反応は洗浄プロセスである。
【0099】
ここで、使用される第1のガス、すなわち、堆積ガスの形態のものは、たとえば、有機金属化合物(たとえば、Pt、Pd、Ru、Re、Rh、Ir、および/またはAuを含有する貴金属化合物あるいはCu、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、Mo、W、V、Nb、Ta、Zr、Hf化合物)とすることができる。
【0100】
使用される第2のガス、すなわち、洗浄ガスの形態のものは、たとえば、酸化のためのH2OまたはNO2とすることができる。ここでさらに考えられるのは、窒素性ガス(たとえば、N2O、NO、NO2)、酸化水素(たとえば、H2O、H2O2)、分子状酸素もしくは原子状酸素および/またはオゾンである。代替的にまたは追加的に、使用される第2のガスは、たとえば、ハロゲン化のためのNOClまたはXeF2とすることができる。ここで、同様にふさわしいのは、ハロゲン含有化合物/ハロゲン化物、たとえば、ハロゲン(たとえば、F2、Cl2)、ハロゲン化水素(たとえば、HF、HCl)、ハロゲン化希ガス(たとえば、XeF2)、ハロゲン化窒素(たとえば、NF3、NOF、NCl3、NOCl)、ハロゲン化炭化水素(たとえば、CF4、CHF3、CCl4)、ハロゲン化リン(たとえば、PF3、PCl3)、および/またはハロゲン化硫黄(たとえば、SF6、SF4、SF2、SCl2、塩化チオニル)である。
【0101】
第3の部分反応では、真空耐性のない酸素またはハロゲン化合物が場合によっては分解して純粋な金属化合物が残り得る。
【0102】
この時点で強調しておくことは、選択肢(v)として挙げた部分反応の組み合わせ(すなわち、第1の部分反応が堆積プロセスであり、第2の部分反応が洗浄プロセスであり、言及したガスを使用し、真空耐性のない酸素またはハロゲン化合物が分解して純粋な金属化合物が残る第3の部分反応も場合により使用する)が、本明細書に記載のような相対的なプロセス速度およびガスリフレッシュ区間の選択および操作なしの、同じく特許請求することができる独自の発明を表しているということである。したがって、本開示は、独自の発明として、たとえば、既に説明したステップ(a.)、(b.)、(b1.)および(b2.)を含むが、必ずしもステップ(c.)および/または(d.)も含まず、選択肢(v)として挙げた部分反応が起こる、修正された方法を含む。簡潔にするためにここで明示的に言及しておらず、論じていない場合でも、本明細書に記載した他の全ての任意選択の方法ステップおよび可能な修正は、同様にこの修正された方法と組み合わせることができる。同様の記述は、そのような修正された方法を実行するための装置およびソフトウェアに関しても適用される(この点に関しては、以下の対応する記述を参照)。
【0103】
具体的には、開示した方法は、マスクの欠陥(またはウェハ/チップ表面などの欠陥、導入部分の記述を参照)を修正するために使用することができる。このためには、特に最新のマスクにおいて、増加し続ける集積密度に関連して、個々の処理ステップに関する高い精度が必要になるので、個々の部分反応を選択的に制御および選出するという選択肢は、たとえば使用される露光パラメータに関して、個々の部分反応を最適化するための新たな可能性を提供する。
【0104】
この時点でさらに言及しておくことは、開示した方法の可能な特徴、選択肢、および修正の選択肢について本明細書では特定の順序で説明したが、これは必ずしも、明示した場合を除いて、特徴間の特定の特徴の依存関係を表すわけではないということである。むしろ、様々な特徴および選択肢は、物理的および技術的な観点から可能な範囲で、他の順序および置換で組み合わせることもでき、特徴さらには副特徴のそのような組み合わせも本発明に包含される。個々の特徴または副特徴は、所望の技術的結果を得るために必要でなければ、省略することもできる。
【0105】
一実施形態では、オブジェクト、特にリソグラフィマスクを処理するための装置は、(a.)少なくとも第1のガスおよび第2のガスを含むガス混合物をオブジェクトの表面の反応部位に供給するための手段と、(b.)複数の露光区間において反応部位を高エネルギー粒子のビームに露光することによって、反応部位において、少なくとも第1の部分反応および第2の部分反応を含む(化学)反応を誘発するための手段であって、第1の部分反応は主に第1のガスによって促進され、第2の部分反応は主に第2のガスによって促進され、それぞれの露光区間の間にガスリフレッシュ区間が存在する、誘発するための手段と、(c.)第2の部分反応のプロセス速度に比べて第1の部分反応のプロセス速度を増加させるために第1の部分反応を選択するための手段と、(d.)第2の部分反応のプロセス速度と比較した第1の部分反応のプロセス速度の相対的な増加をもたらす、ガスリフレッシュ区間の持続時間を選択するための手段と、を含む。
【0106】
一般的に言えば、開示した方法の利点は、その実行に使用される装置の根本的に新しい構築を必要とせずに、個々の部分反応にターゲットを絞って影響を与えることが可能になることである。たとえば、本明細書に記載の装置は、たとえばマスク修復に使用することが意図された場合、出願人によって開発および販売されているマスク修復用の装置のうちの1つから進めることができる。
【0107】
しかしながら、出願人の現在の知識によれば、従来の装置では、個々の部分反応の意図的な選択は提供されていなかった。対照的に、本明細書に記載の装置は、開示した方法の議論の一部として上記で詳細に説明したように、ガスリフレッシュ区間の持続時間の適切かつターゲットを絞った選択によって、関与する部分プロセスのうちの1つの意図的な選択を可能にする。
【0108】
具体的には、本装置は、プロセス速度を相対的に増加させるための第1の部分反応の選択に基づいてガスリフレッシュ区間の持続時間を自動的に選択することができる。
【0109】
したがって、たとえば、第1のガスは反応部位に対する第1の添加持続時間を有することができ、第2のガスは第2の添加持続時間を有することができ、ガスリフレッシュ区間の持続時間を選択するための手段は、上述したように、第2の部分反応のプロセス速度と比較した第1の部分反応のプロセス速度の相対的な増加が起こるように、第1および第2の添加持続時間に基づいて時間区間(time interval)を選択する。前述したように、これは自動的に実行することができる。関連する値およびデータ、たとえば、使用される第1および第2のガスの第1および第2の添加持続時間は、ここでは、記憶された値の形態で本装置に利用可能にすることができ、および/またはデータベースから取得することができる。あるいは、本装置は、運転動作中(すなわち、マスク自体の処理中)に、または専用のテストモードで、これらの値を実験的に決定するための適切な手段を含む。
【0110】
最後に、コンピュータプログラムは、実行された場合に、開示した方法の実施形態のうちの1つのステップをコンピュータまたはコンピュータシステムに実行させる命令を含むことができる。
【0111】
以下の詳細な説明では、図面を参照しながら本発明の可能な実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【
図1a】開示した方法の一実施形態を使用した処理中のマスクおよび異なる時点を概略的に示す図である。
【
図1b】開示した方法の一実施形態を使用した処理中のマスクおよび異なる時点を概略的に示す図である。
【
図1c】開示した方法の一実施形態を使用した処理中のマスクおよび異なる時点を概略的に示す図である。
【
図2】開示した方法を実行するために使用することができる装置の一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0113】
以下では、本発明の実施形態を主にリソグラフィマスクの修復に関して説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、他のタイプのマスク処理にも使用することができ、さらにより一般的には、マイクロエレクトロニクスの分野で使用される他のオブジェクトの表面処理、たとえば、構造化ウェハ表面またはマイクロチップ表面などの変更および/または修復にも使用することができる。したがって、以下の文章では、説明をより明瞭かつ容易に理解できるように保つために、マスク表面の処理の場合の適用例について主に言及するとしても、開示した教示の他の適用可能性は当業者には依然として明らかであろう。
【0114】
さらに、本発明の個々の実施形態のみについて以下でより詳細に説明し得ることに言及する。しかしながら、当業者であれば、これらの実施形態に関連して説明する特徴および修正の選択肢は、さらに修正することもでき、および/または他の組み合わせまたはサブコンビネーションで互いに組み合わせることができ、これによって本発明の範囲を逸脱しないことを理解するであろう。さらに、個々の特徴または副特徴は、所望の結果を実現する上で必要不可欠でなければ、省略することもできる。したがって、不必要な繰り返しを避けるために、前のセクションでの注釈および説明を参照するが、それらは以下に続く詳細な説明でも有効である。
【0115】
図1a~
図1cは、本発明の一実施形態の一部として、第2の部分反応と比較して第1の部分反応のプロセス速度を相対的に増加させるために、ガスリフレッシュ区間の持続時間をどのように使用するかを概略的に示している。
【0116】
図示の方法は、リソグラフィマスク100(または他のマイクロエレクトロニクスオブジェクト、たとえばウェハもしくはマイクロチップ)を処理するために使用される。マスク100を処理するために、マスク100の表面120の反応部位110にガス混合物が供給される。既に述べたように、反応部位110は、ここではマスク100の表面120上に実質的に存在するか、または特定の深さ(たとえば、数原子層の深さ)までマスク100内に延びることができる。さらに、表面120ひいては反応部位110は一般に、マスク修復の間のエッチングプロセスまたは堆積プロセスなどの処理中にわずかに変化する。
【0117】
この処理は、反応部位110が複数の露光区間において高エネルギー粒子のビームに露光されるような方法で行われ、そのビームは、
図1a~
図1cにおいて矢印115およびその左右の点線で示している。ビーム115は、たとえば、レーザービーム、電子ビーム、またはイオンビームとすることができる。
【0118】
図1a~
図1cでは、マスク100は、露光を受け、処理対象のマスク表面の反応部位110を含む部分130(「露光エリア(exposed area)」と呼ぶ)と、露光を受けず、ここで論じる実施形態では何の処理も行われない隣接領域140(「非露光エリア(unexposed area)」と呼ぶ)とに概略的に分割されている。領域140は、さらなる処理ステップで同様に処理することができる(たとえば、1つまたは複数のサイクルにわたって走査パターンに沿って複数の反応部位を順次通過することによって行うが、これは簡単のために
図1a~
図1cには示していない)。
【0119】
導入部分で既に説明したように、本開示の一部としての「反応部位(reaction site)」という用語は、ここでは、局所的に限定された方法で露光してそれぞれの部分反応を誘発することによって処理プロセスを実行することができるピクセルまたはより一般的には空間単位を意味するものと理解される。したがって、反応部位の空間範囲は、たとえば、使用される粒子ビーム115のタイプ、その集束、反応タイプなどに依存し得る。ここで、
図1a~
図1cの描写は単なる概略図であり、実際に起こる状況を必ずしも縮尺どおりに反映していないことに留意されたい。
【0120】
ここに示している実施形態では反応部位110に供給されるガス混合物は2つのガスを含み、具体的には、
図1a~
図1cにおいて「ガス1」と表記し、そのガス原子または分子を記号「○」(白丸)で概略的に示す第1のガス150と、
図1a~
図1cにおいて「ガス2」と表記し、そのガス原子または分子を記号「▼」(下向きの実線の灰色の三角形)で概略的に示す第2のガス160と、を含む。ここで、2つのガス150および160のそれぞれは、マスク処理に関与する別個の部分反応を主に促進し、すなわち、マスク処理は、ガス150によって主に促進される第1の部分反応と、ガス160によって主に促進される第2の部分反応との(化学)反応とを含む。既に上記で説明したように、「主に」は、ここでは、対応するガスがなければ部分反応は少なくとも顕著な程度では起こらないが、そのガスが反応部位に特定の最小濃度で存在する場合には部分反応が進行し得ることを意味するために使用することができる。部分反応を含む(化学)反応は、高エネルギー粒子のビーム115への露光によって誘発され、すなわち、引き起こされ、または開始される。
【0121】
この時点で留意すべきことは、他の実施形態において反応部位110に供給されるガス混合物は、たとえば第3の部分反応を主に促進する第3のガスなどのさらなるガスなども含むことができるということである。しかしながら、簡単にするために、2つのガス150および160ならびに対応する2つの部分反応のみを以下に説明する。
【0122】
さらに、ガス150および/またはガス160自体がガス混合物を表すこともできる。
【0123】
図1aは、露光区間後の状態、すなわち、反応部位110が高エネルギー粒子のビーム115に露光された後の状態を概略的に示している。見てわかるように、露光によって第1および第2の部分反応が引き起こされており、2つの部分反応の進行によってガス150(「○」)ならびにガス160(「▼」)の両方が実質的に使い果たされたので、これらのガスは反応部位110で枯渇しているか、または全く存在しなくなる。
【0124】
部分反応を含む処理反応を再び進行できるようにするために(マスク処理は典型的には複数回の処理の実行を含み、その理由は、たとえばエッチングプロセスまたは堆積プロセスは1回の実行では所望の精度で実行できないためである)、ガスを再供給する必要がある。この目的のために、個々の露光区間の間にあるガスリフレッシュ区間が使用される。そのガスリフレッシュ区間中に、使用されるガス混合物に含まれるガス150および160は、反応部位110に拡散し、そこでおよび/またはマスク100の表面120付近で吸着される(ガス原子/分子もマスク100に特定の侵入深さだけ侵入し得る)。
【0125】
本発明によれば、2つの部分反応のうちの一方をここで意図的かつ選択的に選出して、そのプロセス速度を他方の部分反応のプロセス速度に比べて増加させる。明確にするために、プロセス速度を増加させるために選出および選択される部分反応を、ここでは常に第1の部分反応と呼ぶことにする。
【0126】
第2の部分反応と比較した第1の部分反応のプロセス速度の相対的な増加をもたらすために、ガスリフレッシュ区間の持続時間が適切に選択または調整される。
図1bは、このように選択されたガスリフレッシュ区間が経過した後の状態を概略的に示している。
【0127】
ここに示す2つのガス150および160は、それらの物理的特性および化学的特性の点で異なる。第1に、既に述べたように、2つのガス150および160は異なる部分反応を促進する。また一方、第2に、それらは、反応部位110におけるマスク表面120に関して異なる拡散特性および吸着特性も有する。この結果、2つのガス150および160は異なる添加持続時間を有することになり、すなわち、反応部位110において十分な程度まで再び「リフレッシュ」されるために必要な持続時間が異なる(当然ながら、これらは一般的には平均値であり、これはそのような熱力学的プロセスでは典型的である)。
【0128】
この場合、ガス150は「速い」ガスであるが、ガス160は「より遅い」ガスであり、すなわち、ガス150は、反応部位110におけるマスク表面120への添加持続時間がガス160よりも短い。その結果、たとえば、ここでは第2の添加持続時間よりも短くなるように選択されるか、または特に、
I=[第1の添加持続時間;第2の添加持続時間)
の区間内で選択された、選択されたガスリフレッシュ区間中に、第1のガス150は、粒子ビーム115への露光によって第1の部分反応を再び引き起こして実行できる程度まで、マスク表面120の反応部位110に第1のガス150を再び補充するのに十分な時間を既に有している。対照的に、第2のガス160は、反応部位110に十分な量を補充できず、または少なくともほんの少量しか補充できず、その結果、第2の部分反応は、
図1aの状況と比較して、(仮にあったとしても)著しく小さい程度しか進行することができない。
【0129】
図1bに示すケースでは、ガスリフレッシュ区間が経過した後、反応部位110に拡散し、そこで吸着されたガス150の濃度は、ここでは、ガス160の濃度よりも高い。
【0130】
ガスリフレッシュ区間の持続時間をこのように選択することにより、たとえばこの目的で導入されるガス混合物について何も変更する必要なく、第2の部分反応のプロセス速度が第1の部分反応のプロセス速度に対して抑制される(しかしながら、これは、2つの部分反応のうちの一方を他方よりも強化するためにここで説明したアプローチの代替または追加としても考えられる)。逆に見ると、第2の部分反応と比較した第1の部分反応のプロセス速度の所望の相対的な増加は、ガスリフレッシュ区間として選択された持続時間を介して実現される。
【0131】
この時点で留意すべきことは、
図1bに示す場合でも、第2の部分反応の絶対的なプロセス速度が第1の部分反応の絶対的なプロセス速度よりも依然として大きい可能性が原則としてあることである。これは通常、たとえば2つの部分反応の性質、マスクの材料などのさらなる要因に依存する。しかしながら、いずれにしても、第1の部分反応に有利な2つのプロセス速度の相対的なシフトが発生する。これを定量化するために考えられる数値的尺度は、たとえば、第1の部分反応の絶対的なプロセス速度の、第2の部分反応に対する商であり、これは図示のケースでは増加する。しかしながら、第1の部分反応のプロセス速度が第2の部分反応のプロセス速度よりも絶対的に大きくなる可能性も明らかにある。
【0132】
図1bに示す状況(または同様の状況)を起点として、ガスリフレッシュ区間の持続時間の短縮は、第2の部分反応のプロセス速度と比較した第1の部分反応のプロセス速度のさらなる相対的な増加をもたらし得、たとえこれが同時に、第1の部分反応の絶対的なプロセス速度の減少とつながり得るとしてもそうである。この場合、ガスリフレッシュ区間の持続時間は、第1の添加持続時間よりも短くなるように、たとえば第1の添加持続時間の50%以上または第1の添加持続時間の75%以上になるように選択することもできる。しかしながら、ガスリフレッシュ区間の持続時間のさらなる短縮は、特定の下限(たとえば、第1の添加持続時間の50%)を条件とし、その理由は、その持続時間を下回ると、第1のガス150はもはや十分に「速く」なくなり、その場合、両方の部分反応が事実上停止するためである。
【0133】
一方、
図1bに示す状況(または同様の状況)を起点とするガスリフレッシュ区間の持続時間の延長は、バランスを再び第2の部分反応に有利にシフトし得、すなわち、第2の部分反応のプロセス速度と比較した第1の部分反応のプロセス速度の相対的な減少につながり得、すなわち、第1の部分反応のプロセス速度と比較した第2の部分反応のプロセス速度の相対的な増加につながり得る。この場合の一例として、
図1cは、(
図1bの状況をもたらした持続時間と比較して)ガスリフレッシュ区間として長い持続時間が選択された状況を示しており、第1のガス150ならびに第2のガス160の両方は再び反応部位110に顕著な程度まで補充されている。したがって、
図1bの状態と比較して、第2の部分反応のプロセス速度は大幅に増加することになる。第1の部分反応のプロセス速度も
図1bと比較してわずかに増加し得るが、いずれにしても、
図1cのプロセス速度の比は再び第2の部分反応の方向にシフトしている。極端なケースとして、ガスリフレッシュ区間が十分に長い場合、ここで、両方のガス150および160が反応部位110に飽和濃度で吸着される飽和状態が発生する可能性があり、その結果、ガスリフレッシュ区間をさらに長くしても、(相対的な)プロセス速度は顕著に変化しなくなる。
【0134】
ここで説明しているメカニズムの代替または追加として、反応部位110あるいはこの領域内のマスク100および/またはマスク表面120を、たとえばパルスレーザーを使用してターゲットを絞った制御された方法で加熱することによって、絶対的および/または相対的な第1および第2の部分反応のプロセス速度に互いに影響を与えることがさらに可能である。ここでは、たとえば、部分反応自体のプロセス速度が温度に依存することが可能であり、あるいは、加熱によりガス150および160の拡散特性および吸着特性の温度依存性を介して間接的に、または直接的な影響と間接的な影響との組み合わせにより、影響を与えることもできる。
【0135】
たとえば
図1bに示すように第1の部分反応のプロセス速度が第2の部分反応のプロセス速度に比べて増加した後、たとえば、反応部位110を粒子ビーム115に露光するために使用される1つまたは複数の露光パラメータを、特に第1の部分反応が最適化されるように調整および設定することができる。上記で既に詳細に説明したように、これは様々なパラメータ(組み合わせ)およびアプローチを包含することができる。たとえば、複数の露光区間の露光持続時間を調整することができる。
【0136】
さらに、本方法は、露光サイクル内で1つまたは複数のそれぞれの露光区間中に高エネルギー粒子のビーム115に露光される複数の反応部位(
図1a~
図1cには図示せず)を処理することを含むことができる。本方法は、複数のそのような露光サイクルを包含することが好ましい。この場合、粒子ビーム115への露光に使用される1つまたは複数の露光パラメータは、個々の反応部位に対するそれぞれの露光区間の持続時間を含むことができる。1つまたは複数の露光パラメータは、反応部位が順々に露光される走査パターンを含むこともできる。そのような走査パターンは、1つまたは複数のサブループを含むこともできる。後者は、露光サイクル中に1回だけ実行することができる。しかしながら、サブループのうちの1つまたは複数を露光サイクル中に2回以上実行することもでき、その結果、これらのサブループに含まれる反応部位が露光サイクル中に複数回露光されることになる。この点に関する詳細はセクション3で論じており、この点についてセクション3が参照される。
【0137】
第1の部分反応は、たとえば、不動態化プロセス、エッチングプロセス、堆積プロセス、または酸化プロセスを含むことができる。第2の部分反応は、たとえば、不動態化プロセス、活性化プロセス、エッチングプロセス、または堆積プロセスを含むことができる。さらに、マスク100の処理は、第3のガスによって主に促進される第3の部分反応などを含むことができる。
【0138】
特定の可能性および部分反応の組み合わせならびにそれらに適したガスについては、可能な組み合わせ「(i)」、「(ii)」、「(iii)」、「(iv)」および「(v)」として上記で既に説明したので、簡潔にするために上記の実施形態が参照される。
【0139】
加えて、さらに上記で既に説明したように、選択肢(v)の別個の発明内容を繰り返し指摘しておく。
【0140】
結論として、本方法が、特にマスク100の欠陥を修正するために、すなわちマスク修復のために使用できることに再度言及する。
【0141】
図2は、マスク100を処理するための開示した方法を実行するために使用することができる装置の一実施形態200を概略的に示している。簡単にするために、マスク100ならびにガス150および160などに関して、
図1a~
図1cと同じ参照符号を使用する。したがって、この点に関して行った記述は依然として有効である。しかしながら、これは、装置200が、
図1a~
図1cの一部として論じた開示した方法の特定の実施形態を実行するためにしか使用できないことを意味するものではない。
【0142】
さらに、当業者は原則として、マスク処理およびマスク修復のための装置を認識するであろう。たとえば、出願人自身は、マスク修復用の装置を開発および販売している。装置200は、たとえば、これらの装置のうちの1つから開始することができ、このため、以下の文章では、装置200の仕様の全てを詳細に論じることはしない。
【0143】
装置200は、少なくとも第1のガス150(「ガス1」)および第2のガス160(「ガス2」)を含むガス混合物をマスク100の表面120の反応部位110に供給するための手段210と、複数の露光区間において高エネルギー粒子のビームに反応部位110を露光することによって、反応部位110において、少なくとも第1の部分反応および第2の部分反応を含む(化学)反応を誘発するための手段220と、を備える。既に複数回説明したように、第1の部分反応は第1のガス150によって主に促進され、第2の部分反応は第2のガス160によって主に促進される。ガスリフレッシュ区間は、それぞれの露光区間の間にある。
【0144】
粒子ビームは、たとえば、レーザービーム、電子ビーム、またはイオンビームとすることができ、手段220は、それに応じて構成することができる。
【0145】
さらなる構成要素として、本装置は、第1の部分反応を選択して、そのプロセス速度を第2の部分反応のプロセス速度に比べて増加させるための手段230を備える。手段230は、たとえばユーザインターフェース(ハードウェア側またはソフトウェア側)を介して制御可能かつアクセス可能にすることができ、このようにして、ユーザが部分反応を意図的に選択して、この部分反応に対して特別かつターゲットを絞った方法で露光パラメータおよび/または他のプロセスパラメータを調整および最適化できるようにすることが可能になる。
【0146】
装置200はさらに、第2の部分反応のプロセス速度と比較した第1の部分反応のプロセス速度の相対的な増加をもたらすガスリフレッシュ区間の持続時間を選択するための手段240を備える。具体的には、手段240への接続235を有することができる手段230による第1の部分反応の選択後、手段240は、第1の部分反応のプロセス速度の相対的な増加をもたらすために、ガスリフレッシュ区間の適切な持続時間を自動的に選択することができる。これに関しては、いくつかの変形例が考えられる。
【0147】
たとえば、第1のガス150が反応部位110への第1の添加持続時間を有し、第2のガス160が第2の添加持続時間を有する場合、手段240は、第2の部分反応のプロセス速度と比較した第1の部分反応のプロセス速度の相対的な増加がもたらされるように、第1の添加持続時間および第2の添加持続時間に基づいてガスリフレッシュ区間の持続時間を選択することができる。たとえば、この持続時間は、第2の添加持続時間よりも短くなるように、または下記の区間から選択することができる。
I=[第1の添加持続時間;第2の添加持続時間]
【0148】
関連する値およびデータ、たとえば第1および第2のガス150および160(ならびに場合によってはさらなるガス)の第1および第2の添加持続時間は、記憶された値の形態で装置200に利用可能にすることができ、および/またはデータベースから取得することができる。
【0149】
加えて、または代わりに、本装置は、運転動作中に(すなわち、マスク100自体の処理中に)、または専用のテストモードで、持続時間の適切な選択に関連するこれらの値および/または他の値を実験的に決定するための適切な手段242を含むことができる。手段242は、たとえば、テストモードで、経過したガスリフレッシュの持続時間に応じた反応部位110における第1および第2のガス150および160の濃度を記録するセンサを備えることができる。手段242は、手段240に接続するか、または手段240と相互作用し、これにより、手段240によるそのような一連の測定値の評価が可能になり、ひいてはガスリフレッシュ区間の持続時間の適切な選択が可能になる。
【0150】
加えて、または代わりに、手段240を介して、たとえばユーザインターフェース(ハードウェア側またはソフトウェア側)を介して、ガスリフレッシュ区間の持続時間を手動で選択することが可能である。
【0151】
手段240はガスの供給に使用される手段210への接続215を有することができ、これにより、手段240によって選択されたガスリフレッシュ区間に従ってガスの供給を行うことができる。手段240は、露光によって部分反応を含む処理反応を誘発するために使用される手段220への接続225を有することもでき、これにより、ガスリフレッシュ区間中に露光を停止することができる。
【0152】
これらの構成要素の代替または追加として、本装置は、反応部位110あるいはこの領域内のマスク100および/またはマスク表面120のターゲットを絞った加熱のための手段250をさらに有することができる。具体的には、手段250はパルスレーザーを備えることができる。既に上記で説明したように、ターゲットを絞った加熱により、第1および第2の部分反応のプロセス速度に直接的および/または間接的に影響を与えることが可能になる。手段250は、ここでは接続255を介して手段240に接続することができ、その結果、ガスリフレッシュ区間の持続時間を選択するための手段240が、加熱するための手段250と相互作用して、第1および第2の部分反応のプロセス速度への所望の影響をもたらすことができる。
【0153】
加えて、または代わりに、手段250は、手段210および220に直接接続するかまたはこれらと相互作用して(
図2には示していない)、手段240とは独立してプロセス速度に影響を与えることもできる。
【0154】
最後に、たとえばマスク処理用の装置のコンピューティングユニットまたは制御ユニットにおいて、開示した方法の一実施形態をその装置に実行させる命令を有するコンピュータプログラムを実行することが可能である。