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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-05
(45)【発行日】2024-11-13
(54)【発明の名称】静電チャック
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20241106BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20241106BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20241106BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20241106BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
C23C16/458
H02N13/00 D
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2024540571
(86)(22)【出願日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2024009295
【審査請求日】2024-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2023042066
(32)【優先日】2023-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100140431
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135677
【弁理士】
【氏名又は名称】澤井 光一
(74)【代理人】
【識別番号】100131598
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 和宗
(72)【発明者】
【氏名】富岡 武敏
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-164067(JP,A)
【文献】特開2023-013587(JP,A)
【文献】国際公開第2018/020956(WO,A1)
【文献】特開2019-121748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
C23C 16/458
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する静電チャックであって、
基板が載置される誘電部材と、
前記誘電部材内に配置される静電電極と、を含み、
前記誘電部材は、
ガスが流出するガス流出部を有する第1の上面と、
前記第1の上面の外側に配置され、前記第1の上面より高い高さを有する環状のシールバンドと、を含み、
前記シールバンドは、
外周部と、
前記外周部より低い高さを有する内周部と、を含み、
前記静電電極は、少なくとも前記シールバンドの前記内周部の直下に配置され、
前記誘電部材は、前記第1の上面に配置され、前記第1の上面に対し上方に突出した複数の凸部をさらに有し、
前記シールバンドの前記内周部が有する内側端部は、最も外側に位置する前記凸部が有する外側端部と前記シールバンドの前記外周部が有する内側端部との径方向の中間点より内側に位置している、
静電チャック。
【請求項2】
前記シールバンドの前記外周部は、平坦な第2の上面を有し、
前記シールバンドの前記内周部は、平坦な第3の上面を有する、
請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記シールバンドの前記内周部が有する上面は、傾斜面をさらに有する、
請求項2に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記第3の上面は、前記第2の上面より低く、前記第1の上面より高い、
請求項2に記載の静電チャック。
【請求項5】
前記第3の上面は、前記第2の上面より0.1μm以上低い、
請求項4に記載の静電チャック。
【請求項6】
前記第3の上面は、前記第1の上面より3μm以上高い、
請求項5に記載の静電チャック。
【請求項7】
前記第3の上面から前記静電電極までの距離が、100μmから750μmの範囲内である、
請求項2に記載の静電チャック。
【請求項8】
前記シールバンドの前記内周部が有する上面は、前記第3の上面のみを有する、
請求項2に記載の静電チャック。
【請求項9】
前記凸部は、前記シールバンドの前記外周部と同じかそれより低い高さを有する、
請求項1に記載の静電チャック。
【請求項10】
前記凸部は、5μmから50μmの範囲内の高さを有する、
請求項1に記載の静電チャック。
【請求項11】
前記シールバンドの前記内周部は、前記凸部の高さの半分以上の高さを有する、
請求項1に記載の静電チャック。
【請求項12】
前記シールバンドの前記外周部が有する径方向の幅は、0.3mmから4mmの範囲内である、
請求項1に記載の静電チャック。
【請求項13】
前記シールバンドの前記内周部が有する径方向の幅は、1mmから36mmの範囲内である、
請求項1に記載の静電チャック。
【請求項14】
前記シールバンドの前記内周部が有する径方向の幅は、前記シールバンドの前記外周部が有する径方向の幅より大きい、
請求項1に記載の静電チャック。
【請求項15】
前記シールバンドの前記内周部が有する上面の全体が傾斜面である、
請求項1に記載の静電チャック。
【請求項16】
前記シールバンドの前記内周部は、径方向に互いに接続される傾斜上面と垂直面を有する、
請求項1に記載の静電チャック。
【請求項17】
前記誘電部材が有する上下方向の厚みは、0.5mmから5mmの範囲内である、
請求項1に記載の静電チャック。
【請求項18】
前記静電電極は、前記第1の上面の直下から前記シールバンドの直下にわたり配置され、
前記静電電極が有する外側端部は、前記シールバンドの前記内周部における径方向の中央の位置より外側に位置している、
請求項1~17のいずれか一項に記載の静電チャック。
【請求項19】
前記静電電極が有する外側端部は、前記シールバンドの前記外周部の直下に位置している、
請求項18に記載の静電チャック。
【請求項20】
基板を保持する静電チャックであって、
基板が載置される誘電部材と、
前記誘電部材内に配置される静電電極と、を含み、
前記誘電部材は、
ガスが流出するガス流出部を有する第1の上面と、
前記第1の上面の外側に配置され、前記第1の上面より高い高さを有する環状のシールバンドと、を含み、
前記シールバンドは、
外周部と、
前記外周部より低い高さを有する内周部と、を含み、
前記静電電極は、少なくとも前記シールバンドの前記内周部の直下に配置され、
前記シールバンドの前記内周部が有する径方向の幅は、前記シールバンドの前記外周部が有する径方向の幅より大きい、
静電チャック。
【請求項21】
前記誘電部材は、前記第1の上面に配置され、前記第1の上面に対し上方に突出した複数の凸部をさらに有し、
前記シールバンドの前記内周部は、前記凸部の高さの半分以上の高さを有する、
請求項20に記載の静電チャック。
【請求項22】
前記静電電極は、前記第1の上面の直下から前記シールバンドの直下にわたり配置され、
前記静電電極が有する外側端部は、前記シールバンドの前記内周部における径方向の中央の位置より外側に位置している、
請求項20に記載の静電チャック。
【請求項23】
前記静電電極が有する外側端部は、前記シールバンドの前記外周部の直下に位置している、
請求項22に記載の静電チャック。
【請求項24】
前記シールバンドの前記外周部が有する径方向の幅は、0.3mmから4mmの範囲内である、
請求項20~23のいずれか一項に記載の静電チャック。
【請求項25】
前記シールバンドの前記内周部が有する径方向の幅は、1mmから36mmの範囲内である、
請求項24に記載の静電チャック。
【請求項26】
基板を保持する静電チャックであって、
基板が載置される誘電部材と、
前記誘電部材内に配置される静電電極と、を含み、
前記誘電部材は、
ガスが流出するガス流出部を有する第1の上面と、
前記第1の上面の外側に配置され、前記第1の上面より高い高さを有する環状のシールバンドと、を含み、
前記シールバンドは、
外周部と、
前記外周部より低い高さを有する内周部と、を含み、
前記静電電極は、少なくとも前記シールバンドの前記内周部の直下に配置され、
前記シールバンドの前記外周部は、平坦な第2の上面を有し、
前記シールバンドの前記内周部は、平坦な第3の上面と傾斜面を有する、
静電チャック。
【請求項27】
基板を保持する静電チャックであって、
基板が載置される誘電部材と、
前記誘電部材内に配置される静電電極と、を含み、
前記誘電部材は、
ガスが流出するガス流出部を有する第1の上面と、
前記第1の上面の外側に配置され、前記第1の上面より高い高さを有する環状のシールバンドと、を含み、
前記シールバンドは、
外周部と、
前記外周部より低い高さを有する内周部と、を含み、
前記静電電極は、少なくとも前記シールバンドの前記内周部の直下に配置され、
前記シールバンドの前記内周部は、径方向に互いに接続される傾斜上面と垂直面を有する、
静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
基板の外周部を支持する環状のシールバンドを有する静電チャックを提供する技術として、特許文献1に記載された技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-15820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、静電チャックに保持される基板の温度均一性を向上することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一つの例示的実施形態における静電チャックは、基板が載置される誘電部材と、誘電部材内に配置される静電電極と、を含み、誘電部材は、ガスが流出するガス流出部を有する第1の上面と、第1の上面の外側に配置され、第1の上面より高い高さを有する環状のシールバンドと、を含み、シールバンドは、外周部と、外周部より低い高さを有する内周部と、を含み、静電電極は、少なくともシールバンドの内周部の直下に配置されている。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一つの例示的実施形態によれば、静電チャックに保持される基板の温度均一性を向上することができる技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】プラズマ処理システムの構成例を説明するための図である。
図2】容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
図3】本例示的実施形態における静電チャックの構成例を示す図である。
図4】上から見たセラミックの構成例を示す図である。
図5】シールバンドの周辺部分を拡大したシールバンドの構成例を示す図である。
図6】比較例としてのシールバンドの構成を示す図である。
図7】比較例としてのシールバンドの構成を示す図である。
図8】基板の撓み量と距離Aとの関係を示す表である。
図9】内周部が第3の上面と傾斜面を有するシールバンドの構成例を示す図である。
図10】内周部が第3の上面と傾斜面を有するシールバンドの構成例を示す図である。
図11】内周部の上面全体が傾斜面であるシールバンドの構成例を示す図である。
図12】内周部が傾斜上面と垂直面を有するシールバンドの構成例を示す図である。
図13】内周部が傾斜上面と垂直面を有するシールバンドの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の各実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、基板を保持する静電チャックであって、基板が載置される誘電部材と、誘電部材内に配置される静電電極と、を含み、誘電部材は、ガスが流出するガス流出部を有する第1の上面と、第1の上面の外側に配置され、第1の上面より高い高さを有する環状のシールバンドと、を含み、シールバンドは、外周部と、外周部より低い高さを有する内周部と、を含み、静電電極は、少なくともシールバンドの内周部の直下に配置されている、静電チャックが提供される。
【0010】
一つの例示的実施形態において、シールバンドの外周部は、平坦な第2の上面を有し、シールバンドの内周部は、平坦な第3の上面を有する。
【0011】
一つの例示的実施形態において、シールバンドの内周部が有する上面は、傾斜面をさらに有する。
【0012】
一つの例示的実施形態において、第3の上面は、第2の上面より低く、第1の上面より高い。
【0013】
一つの例示的実施形態において、第3の上面は、第2の上面より0.1μm以上低い。
【0014】
一つの例示的実施形態において、第3の上面は、第1の上面より3μm以上高い。
【0015】
一つの例示的実施形態において、第3の上面から静電電極までの距離が、100μmから750μmの範囲内である。
【0016】
一つの例示的実施形態において、シールバンドの内周部が有する上面は、第3の上面のみを有する。
【0017】
一つの例示的実施形態において、誘電部材は、第1の上面に配置され、第1の上面に対し上方に突出した複数の凸部をさらに有する。
【0018】
一つの例示的実施形態において、凸部は、シールバンドの外周部と同じかそれより低い高さを有する。
【0019】
一つの例示的実施形態において、凸部は、5μmから50μmの範囲内の高さを有する。
【0020】
一つの例示的実施形態において、シールバンドの内周部が有する内側端部は、最も外側に位置する凸部が有する外側端部とシールバンドの外周部が有する内側端部との間に位置している。
【0021】
一つの例示的実施形態において、シールバンドの内周部が有する内側端部は、最も外側に位置する凸部が有する外側端部とシールバンドの外周部が有する内側端部との径方向の中間点より内側に位置している。
【0022】
一つの例示的実施形態において、シールバンドの内周部は、凸部の高さの半分以上の高さを有する。
【0023】
一つの例示的実施形態において、静電電極は、第1の上面の直下からシールバンドの直下にわたり配置され、静電電極が有する外側端部は、シールバンドの内周部における径方向の中央の位置より外側に位置している。
【0024】
一つの例示的実施形態において、静電電極が有する外側端部は、シールバンドの外周部の直下に位置している。
【0025】
一つの例示的実施形態において、シールバンドの外周部が有する径方向の幅は、0.3mmから4mmの範囲内である。
【0026】
一つの例示的実施形態において、シールバンドの内周部が有する径方向の幅は、1mmから36mmの範囲内である。
【0027】
一つの例示的実施形態において、シールバンドの内周部が有する径方向の幅は、シールバンドの外周部が有する径方向の幅より大きい。
【0028】
一つの例示的実施形態において、シールバンドの内周部が有する上面の全体が傾斜面である。
【0029】
一つの例示的実施形態において、シールバンドの内周部は、径方向に互いに接続される傾斜上面と垂直面を有する。
【0030】
一つの例示的実施形態において、誘電部材が有する上下方向の厚みは、0.5mmから5mmの範囲内である。
【0031】
以下、図面を参照して、本開示の各実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一または同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づいて上下左右等の位置関係を説明する。図面の寸法比率は実際の比率を示すものではなく、また、実際の比率は図示の比率に限られるものではない。
【0032】
<プラズマ処理装置の一例>
図1は、プラズマ処理システムの構成例を説明するための図である。一実施形態において、プラズマ処理システムは、プラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理システムは、基板処理システムの一例であり、プラズマ処理装置1は、基板処理装置の一例である。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、基板支持部11及びプラズマ生成部12を含む。プラズマ処理チャンバ10は、プラズマ処理空間を有する。また、プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間に供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。ガス供給口は、後述するガス供給部20に接続され、ガス排出口は、後述する排気システム40に接続される。基板支持部11は、プラズマ処理空間内に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する。
【0033】
プラズマ生成部12は、プラズマ処理空間内に供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマを生成するように構成される。プラズマ処理空間において形成されるプラズマは、容量結合プラズマ(CCP;Capacitively Coupled Plasma)、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)、ECRプラズマ(Electron-Cyclotron-resonance plasma)、ヘリコン波励起プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)、又は、表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)等であってもよい。また、AC(Alternating Current)プラズマ生成部及びDC(Direct Current)プラズマ生成部を含む、種々のタイプのプラズマ生成部が用いられてもよい。一実施形態において、ACプラズマ生成部で用いられるAC信号(AC電力)は、100kHz~10GHzの範囲内の周波数を有する。従って、AC信号は、RF(Radio Frequency)信号及びマイクロ波信号を含む。一実施形態において、RF信号は、 100kHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。
【0034】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0035】
以下に、プラズマ処理装置1の一例としての容量結合型のプラズマ処理装置の構成例について説明する。図2は、容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
【0036】
容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10筐体とは電気的に絶縁される。
【0037】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0038】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材は下部電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aと、セラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、誘電部材の一例である。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、RF又はDC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよく、この場合、RF又はDC電極が下部電極として機能する。後述するバイアスRF信号又はDC信号がRF又はDC電極に接続される場合、RF又はDC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、基台1110の導電性部材とRF又はDC電極との両方が2つの下部電極として機能してもよい。
【0039】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0040】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。基板支持部11内には、流路1110aが形成され、流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れてよい。流路1110aは、静電チャック1111又は基台1110に設けられていてよい。流路1110aには、冷媒供給装置1110bが接続され得る。冷媒供給装置1110bで温度設定された冷媒は、流路1110aを流れて循環し、静電チャック1111及び、静電チャック1111に保持された基板Wが冷却され得る。一実施形態において、流路1110aが基台1110内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0041】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、上部電極を含む。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0042】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する少なくとも1つの流量変調デバイスを含んでもよい。
【0043】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ生成部12の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つの下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0044】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。
【0045】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つの下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0046】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のDC信号は、少なくとも1つの下部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、少なくとも1つの上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、少なくとも1つの上部電極に印加される。
【0047】
種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号がパルス化されてもよい。この場合、DCに基づく電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも1つの下部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。第2のDC生成部32b及び波形生成部が電圧パルス生成部を構成する場合、電圧パルス生成部は、少なくとも1つの上部電極に接続される。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0048】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0049】
<静電チャックの構成例>
図3は、本例示的実施形態における静電チャック1111の構成例を示す図である。一実施形態において、静電チャック1111は、誘電部材としてのセラミック部材1111aと、静電電極1111bを有している。
【0050】
一実施形態において、セラミック部材1111aは、第1の上面200と、第1の上面200の外側に配置される環状の凸部であるシールバンド201を含む。シールバンド201は、第1の上面200より高い高さを有する。シールバンド201は、セラミック部材1111aにおいて、第1の上面200を含む他の部分と一体的に形成されてよいし、別体に形成されてもよい。
【0051】
図4は、上から見たセラミック部材1111aの構成例を示す図である。一実施形態において、第1の上面200は、セラミック部材1111aの中心を円心とする円形状を有する。シールバンド201は、セラミック部材1111aの中心を円心とする円環形状を有する。このような円環形状のシールバンド201を設けることにより、静電吸着された基板Wがシールバンド201の上面に接触し、伝熱ガスが基板Wの裏面と静電チャック1111との間の空間からプラズマ処理空間10sに漏れ出ることを防止している。
【0052】
一実施形態において、図3に示すように、第1の上面200は、伝熱ガスが流出するガス流出部210を有している。一実施形態において、ガス流出部210は、ガス流路211を通じて伝熱ガス供給部212に接続されている。ガス流路211は、基板支持部11の内部を通過してよい。伝熱ガス供給部212は、チャンバ10の外部に設けられてよい。ガス流出部210は、一つ又は複数配置されてよい。伝熱ガスは、ヘリウムガスを含むものであってよい。
【0053】
一実施形態において、第1の上面200には、柱状の凸部220が複数配置されている。一実施形態において、凸部220は、第1の上面200に対し上方に突出している。一実施形態において、凸部220は、円柱形状を有している。一実施形態において、図4に示すように、複数の凸部220は、第1の上面200の中心周りの周方向に沿って等間隔に配置されてよい。複数の凸部220は、第1の上面200の中心に対し同心円状、或いは放射状に配置されていてよい。
【0054】
一実施形態において、図3に示すように、シールバンド201は、環状の外周部240と、外周部240より低い高さを有する環状の内周部241とを含む。外周部240は、内周部241の径方向Xの外側に位置する。図5は、シールバンド201の周辺部分を拡大したシールバンド201の構成例を示す図である。
【0055】
一実施形態において、外周部240は、平坦な第2の上面250を有している。一実施形態において、外周部240は、上面の最外周に面取り部251を有している。
【0056】
一実施形態において、内周部241は、平坦な第3の上面260のみを有している。すなわち、内周部241の上面には、突出部や凹部は設けられていない。ただし、後述するように、内周部241の上面に突出部を設けてもよい。
【0057】
第3の上面260は、第2の上面250より低く、第1の上面200より高くてよい。すなわち、第1の上面200、第3の上面260及び第2の上面250は、径方向Xの外側に向けて、この順に高くなる階段状に形成されてよい。第2の上面250は、基板Wと内周部241との間の空間に伝熱ガスが入り込める隙間を確保するため、基板Wが撓んでも基板Wが第2の上面250に接触しないように構成される。このため、第3の上面260は、第2の上面250より0.1μm以上低くするのが好ましい。
【0058】
第3の上面260は、第1の上面200より高い。これにより、基板Wと第3の上面260との距離が近くなり、内周部241において、基板Wに対する静電引力を大きくすることができる。この結果、シールバンド201における基板Wに対する静電引力を確保することができる。第3の上面260は、第1の上面200より3μm以上高くすることが好ましい。また、第3の上面260と第2の上面250(或いは凸部220の上面)との高さの差ΔHは、7μm以内とするのが好ましい。第3の上面260は、第1の上面200を基準にして、凸部220の高さH1の半分以上の高さH2を有していてよい。なお、第3の上面260から静電電極1111bまでの上下方向の距離L1は、100μmから750μmの範囲内であってよい。
【0059】
第3の上面260に、柱状または環状の突出部を設けてもよい。第3の上面260よりも基板Wとの距離が近い突出部を設けることにより、内周部241において、基板Wに対する静電引力をより大きくすることができる。ただし、第3の上面260に突出部を設けると、突出部上面と基板Wが接触することにより、基板Wと外周部240との接触圧力が弱まり、伝熱ガスが漏洩するおそれがある。したがって、第3の上面260に突出部を設けない、または突出部を設けたとしても突出部の上面を第2の上面250よりも低くするのが好ましい。また、静電引力をより大きくするという観点では、突出部は環状に形成するのが好ましい。ただし、突出部を環状に形成すると、突出部と外周部240との間の空間が基板の撓みにより閉塞し、当該空間に伝熱ガスが入り込めなくなるおそれがある。したがって、突出部を形成する場合は柱状に形成することが好ましい。
【0060】
内周部241は、最も外側に位置する凸部220と外周部240との間に設けられる。すなわち、内周部241が有する内側端部241aは、最も外側に位置する凸部220が有する外側端部220aと外周部240が有する内側端部240aとの間に位置する。なお、十分な静電引力を確保するため、内周部241の領域は大きい方が望ましい。このため、内周部241が有する内側端部241aは、最も外側に位置する凸部220が有する外側端部220aと外周部240が有する内側端部240aとの径方向Xの中間点P1より内側に位置することが好ましい。内周部241は、最も外側に位置する凸部220の外側端部220aまで形成されていてよい。また、内周部241が有する径方向Xの幅D2は、外周部240が有する径方向Xの幅D1より大きいことが好ましい。
【0061】
しかしながら、内周部241の領域が大きすぎると基板Wの撓みにより基板Wが第3の上面260に接触してしまう。図8は、最も外側の凸部220と外周部240の内側端部240aとの距離A(図5に示す)と、基板Wの撓み量との関係を示す表である。内周部241は、最外周の凸部220の位置まで内側に延ばすことができるが、内周部241の径方向Xの幅D2を36mm以内とした場合、基板Wの撓み量がおよそ7μm以内となる。したがって、内周部241が有する径方向Xの幅D2は、1mmから36mmの範囲内とするのが好ましい。
【0062】
凸部220は、外周部240と同じかそれより低い高さH1を有していてよい。凸部220の高さH1は、5μmから50μmの範囲内であってよい。
【0063】
外周部240が有する径方向Xの幅D1は、0.3mmから4mmの範囲内であってよい。
【0064】
図3に示すように、静電電極1111bは、セラミック部材1111a内において、第1の上面200及びシールバンド201の直下に配置され得る。一実施形態において、静電電極1111bは、円形状を有する。一実施形態において、静電電極1111bは、スイッチ300を介して直流(DC)電源301に接続されている。静電電極1111bに直流電源301からの直流電圧が印加されると、セラミック部材1111aと基板Wとの間に静電引力(クーロン力)が発生する。基板Wは、その静電引力によってセラミック部材1111aに引き付けられて、セラミック部材1111aの上面に吸着保持される。
【0065】
一実施形態において、図5に示すように、静電電極1111bは、第1の上面200の直下からシールバンド201の直下にわたり配置されている。静電電極1111bは、少なくとも内周部241の直下に配置され得る。静電電極1111bが有する外側端部1111b-1は、内周部241における径方向Xの中央の位置P2より外側に位置してよい。外側端部1111b-1は、外周部240の直下に位置してよい。
【0066】
図3に示すように、セラミック部材1111aが有する上下方向の厚みL2は、0.5mmから5mmの範囲内であってよい。
【0067】
<プラズマ処理方法の一例>
プラズマ処理方法は、プラズマを用いて基板W上の膜をエッチングするエッチング処理を含む。一実施形態において、プラズマ処理方法は、プラズマ処理装置1において制御部2により実行される。
【0068】
先ず、図2に示すように、基板Wがチャンバ10内に搬入され、基板支持部11に載置される。基板Wは、図3に示すように静電チャック1111に吸着保持される。このとき、基板Wは、セラミック部材1111a上に載置され、シールバンド201の外周部240と接触する。静電電極1111bに直流電圧が印加され、シールバンド201と基板Wとの間に静電引力が生じ、基板Wがシールバンド201に吸着される。
【0069】
図2に示す基板支持部11において、冷媒供給装置1110bから流路1110aに冷媒が供給され、静電チャック1111及び、静電チャック1111に保持された基板Wが所定温度に温調される。
【0070】
伝熱ガス供給部212からガス流出部210に伝熱ガスが供給され、ガス流出部210から、基板Wと第1の上面200との間に形成される空間に伝熱ガスが供給される。伝熱ガスは、基板Wと第3の上面260との間に形成される空間にも供給される。シールバンド201は、第1の上面200と基板Wとの間の空間に充填された伝熱ガスがプラズマ処理空間10sに漏れないように封止する。伝熱ガスは、基板Wをその裏面側から温調する。
【0071】
次に、処理ガスが、図2に示すガス供給部20によりシャワーヘッド13に供給され、シャワーヘッド13からプラズマ処理空間10sに供給される。このとき供給される処理ガスは、基板Wのエッチング処理のために必要な活性種を生成するガスを含む。
【0072】
1又は複数のRF信号がRF電源31から上部電極及び/又は下部電極に供給される。プラズマ処理空間10s内の雰囲気はガス排出口10eから排気され、プラズマ処理空間10sの内部は減圧されてもよい。これにより、プラズマ処理空間10sの基板支持部11上にプラズマが生成され、基板Wがエッチング処理される。プラズマ処理中は、図3に示すガス流出部210から基板Wの裏面に供給される伝熱ガスと、冷媒により温調されたシールバンド201の外周部240により基板Wが冷却される。
【0073】
本例示的実施形態によれば、静電チャック1111のセラミック部材1111aは、第1の上面200と環状のシールバンド201を含み、シールバンド201は、外周部240と、外周部240より低い高さを有する内周部241を含み、静電電極1111bは、少なくとも内周部241の直下に配置されている。これにより、シールバンド201の内周部241と基板Wとの間に隙間ができ、伝熱ガスが内周部241上の隙間まで達し、伝熱ガスによる基板Wの温調が基板Wの外周部まで行われる。また、シールバンド201の内周部241が第1の上面200よりも基板Wに近いため、シールバンド201の内周部241において中心部(第1の上面200を有する部分)よりも基板Wに対する静電引力が大きくなる。このため、基板Wと外周部240との接触圧力(単位面積当たりの吸着力)が大きくなり、基板Wが強い力で外周部240に吸着される。この結果、表面粗さ等に起因する基板Wと外周部240との間にでき得る微小な隙間が減少し、基板Wと外周部240との接触面積が大きくなり、静電チャック1111と基板Wの外周部との間で熱が効率的に伝達される。以上の結果、プラズマ処理において、基板Wの外周部を十分に冷却することができ、静電チャック1111に保持される基板の温度均一性を向上することができる。
【0074】
<実施例>
(1)実施例として、本例示的実施形態のようにシールバンド201が外周部240よりも低い内周部241を有する場合、(2)比較例として、図6に示すように、シールバンド201が、外周部240と同じ高さの内周部500を有する場合、(3)比較例として、図7に示すように、シールバンド201が、第1の上面200と同じ高さの内周部501を有する場合について、シールバンド201における基板に対する接触圧力を比較した。なお、外周部240が有する径方向Xの幅は1.7mmであり、内周部241(500,501)が有する径方向Xの幅は1.8mmである。また、(1)において、第3の上面260と第2の上面250との高さの差ΔHは5μmである。(2)の場合は、(1)の場合に比べて、実質的にシールバンド20の外周部240が有する径方向の幅が大きくなり、基板Wとシールバンド201との接触面積が大きくなる。(3)の場合は、(1)の場合に比べて、基板Wとシールバンド201との接触面積は同じであるが、内周部501と基板Wとの距離が離れる。(1)から(3)の静電電極1111bに同じ電圧を印加した結果、(1)の場合の接触圧力が17.7kPaであり、(2)の場合の接触圧力が14.3kPaであり、(3)の場合の接触圧力が16.0kPaであった。この結果、(1)の場合は、(2)、(3)の場合に比べて、基板Wとシールバンド201との間で熱が伝達することを確認することができた。実際、静電チャック1111に基板Wを保持させ、静電チャック1111より基板Wを冷却した時の基板Wの外周部の温度を測定した結果、(1)の場合は、(2)、(3)の場合に比べて、1.5℃から2.2℃程度の低温効果が得られた。
【0075】
上記実施の形態において、シールバンド201の内周部241が有する上面は、第3の上面260のみを有していたが、傾斜面をさらに有していてよい。一実施形態において、図9に示すように、シールバンド201の内周部241が有する上面は、第3の上面260と傾斜面310を有している。傾斜面310と第3の上面260は互いに接続されていてよい。傾斜面310は、一端が第1の上面200に接続され、他端が第3の上面260に接続されるように構成されてよい。一実施形態において、図10に示すように、傾斜面310は、一端が第2の上面250に接続され、他端が第3の上面260に接続されるように構成されてよい。
【0076】
一実施の形態において、図11に示すように、シールバンド201の内周部241が有する上面の全体が傾斜面310であってよい。
【0077】
一実施の形態において、図12に示すように、シールバンド201の内周部241は、径方向Xに互いに接続される傾斜上面320と垂直面321を有していてよい。傾斜上面320は、一端が第1の上面200に接続され、他端が垂直面321に接続されるように構成されてよい。垂直面321は、一端が傾斜上面320に接続され、他端が第2の上面250に接続されるように構成されていてよい。
【0078】
一実施の形態において、図13に示すように、垂直面321は、一端が第1の上面200に接続され、他端が傾斜上面320に接続されるように構成されてよい。傾斜上面320は、一端が垂直面321に接続され、他端が第2の上面250に接続されるように構成されてよい。
【0079】
このように傾斜面を有することにより、図5に示すような平坦な第3の上面260のみを有する場合と比較して、基板Wに対する静電引力を大きくすることができ、基板Wを強い力で外周部240に吸着させることができる。
【0080】
以上の実施の形態では、静電チャック1111が、容量結合型のプラズマ装置に用いられる例について説明したが、これに限定されるものではなく、他の型のプラズマ装置に用いられてよい。また、静電チャック1111は、プラズマ処理装置に限られず、他の基板処理装置に用いられてよい。
【0081】
本開示の実施形態は、以下の態様をさらに含む。
【0082】
(付記1)
基板を保持する静電チャックであって、
基板が載置される誘電部材と、
前記誘電部材内に配置される静電電極と、を含み、
前記誘電部材は、
ガスが流出するガス流出部を有する第1の上面と、
前記第1の上面の外側に配置され、前記第1の上面より高い高さを有する環状のシールバンドと、を含み、
前記シールバンドは、
外周部と、
前記外周部より低い高さを有する内周部と、を含み、
前記静電電極は、少なくとも前記シールバンドの前記内周部の直下に配置されている、
静電チャック。
【0083】
(付記2)
前記シールバンドの前記外周部は、平坦な第2の上面を有し、
前記シールバンドの前記内周部は、平坦な第3の上面を有する、
付記1に記載の静電チャック。
【0084】
(付記3)
前記シールバンドの前記内周部が有する上面は、傾斜面をさらに有する、
付記2に記載の静電チャック。
【0085】
(付記4)
前記第3の上面は、前記第2の上面より低く、前記第1の上面より高い、
付記2または3に記載の静電チャック。
【0086】
(付記5)
前記第3の上面は、前記第2の上面より0.1μm以上低い、
付記2から4のいずれか一項に記載の静電チャック。
【0087】
(付記6)
前記第3の上面は、前記第1の上面より3μm以上高い、
付記2から5のいずれか一項に記載の静電チャック。
【0088】
(付記7)
前記第3の上面から前記静電電極までの距離が、100μmから750μmの範囲内である、
付記2から6のいずれか一項に記載の静電チャック。
【0089】
(付記8)
前記シールバンドの前記内周部が有する上面は、前記第3の上面のみを有する、
付記2から7のいずれか一項に記載の静電チャック。
【0090】
(付記9)
前記誘電部材は、前記第1の上面に配置され、前記第1の上面に対し上方に突出した複数の凸部をさらに有する、
付記1から8のいずれか一項に記載の静電チャック。
【0091】
(付記10)
前記凸部は、前記シールバンドの前記外周部と同じかそれより低い高さを有する、
付記9に記載の静電チャック。
【0092】
(付記11)
前記凸部は、5μmから50μmの範囲内の高さを有する、
付記9または10に記載の静電チャック。
【0093】
(付記12)
前記シールバンドの前記内周部が有する内側端部は、最も外側に位置する前記凸部が有する外側端部と前記シールバンドの前記外周部が有する内側端部との間に位置している、
付記9から11のいずれか一項に記載の静電チャック。
【0094】
(付記13)
前記シールバンドの前記内周部が有する内側端部は、最も外側に位置する前記凸部が有する外側端部と前記シールバンドの前記外周部が有する内側端部との径方向の中間点より内側に位置している、
付記9から12のいずれか一項に記載の静電チャック。
【0095】
(付記14)
前記シールバンドの前記内周部は、前記凸部の高さの半分以上の高さを有する、
付記9から13のいずれか一項に記載の静電チャック。
【0096】
(付記15)
前記静電電極は、前記第1の上面の直下から前記シールバンドの直下にわたり配置され、
前記静電電極が有する外側端部は、前記シールバンドの前記内周部における径方向の中央の位置より外側に位置している、
付記1から14のいずれか一項に記載の静電チャック。
【0097】
(付記16)
前記静電電極が有する外側端部は、前記シールバンドの前記外周部の直下に位置している、
付記15に記載の静電チャック。
【0098】
(付記17)
前記シールバンドの前記外周部が有する径方向の幅は、0.3mmから4mmの範囲内である、
付記1から16のいずれか一項に記載の静電チャック。
【0099】
(付記18)
前記シールバンドの前記内周部が有する径方向の幅は、1mmから36mmの範囲内である、
付記1から17のいずれか一項に記載の静電チャック。
【0100】
(付記19)
前記シールバンドの前記内周部が有する径方向の幅は、前記シールバンドの前記外周部が有する径方向の幅より大きい、
付記1から18のいずれか一項に記載の静電チャック。
【0101】
(付記20)
前記シールバンドの前記内周部が有する上面の全体が傾斜面である、
付記1から19のいずれか一項に記載の静電チャック。
【0102】
(付記21)
前記シールバンドの前記内周部は、径方向に互いに接続される傾斜上面と垂直面を有する、
付記1から20のいずれか一項に記載の静電チャック。
【0103】
(付記22)
前記誘電部材が有する上下方向の厚みは、0.5mmから5mmの範囲内である、
付記1から21のいずれか一項に記載の静電チャック。
【0104】
以上の各実施形態は、説明の目的で記載されており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。以上の各実施形態は、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく種々の変形をなし得る。例えば、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態に追加することができる。また、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態の対応する構成要素と置換することができる。
【符号の説明】
【0105】
1……プラズマ処理装置、10……チャンバ、11……基板支持部、112……リングアセンブリ、1111……静電チャック、1111a……セラミック部材、1111b……静電電極、200……第1の上面、201……シールバンド、240……外周部、241……内周部、250……第2の上面、260……第3の上面、W…基板
【要約】
静電チャックに保持される基板の温度均一性を向上することができる技術を提供する。静電チャックは、基板が載置される誘電部材と、誘電部材内に配置される静電電極と、を含み、誘電部材は、ガスが流出するガス流出部を有する第1の上面と、第1の上面の外側に配置され、第1の上面より高い高さを有する環状のシールバンドと、を含み、シールバンドは、外周部と、外周部より低い高さを有する内周部と、を含み、静電電極は、少なくともシールバンドの内周部の直下に配置されている。
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