(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】内面形状測定機、及び内面形状測定機のアライメント方法
(51)【国際特許分類】
G01B 21/20 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
G01B21/20 D
(21)【出願番号】P 2021003452
(22)【出願日】2021-01-13
【審査請求日】2023-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2020046503
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】森井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】森山 克文
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-084488(JP,A)
【文献】特開2010-117249(JP,A)
【文献】特開2010-107413(JP,A)
【文献】特開平10-339623(JP,A)
【文献】実開昭60-113509(JP,U)
【文献】国際公開第2016/084638(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00 - 7/34
G01B 11/00 - 11/30
G01B 21/00 - 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に平行な回転軸を中心に回転する回転体と、
前記回転体に支持される直動傾斜ステージであって、前記回転体に対する前記第1の方向に直交する平面内の位置及び前記平面に対する傾斜を変更可能な直動傾斜ステージと、
前記第1の方向に平行に延びる接触式又は非接触式のプローブであって、第1の直動機構によって前記第1の方向に移動可能なプローブにより、前記直動傾斜ステージに固定されて前記回転体とともに回転するワークの細穴の内側面の変位を検出する変位検出器と、
前記第1の方向に平行な光軸を有するカメラと、
前記回転体の第1の回転角度における前記ワークの前記細穴の第1の位置及び前記第1の位置とは前記第1の方向の位置が異なる第2の位置と、前記回転体の前記第1の回転角度とは異なる第2の回転角度における前記ワークの前記細穴の前記第1の位置及び前記第2の位置とを前記カメラにより観察する観察制御部と、
前記観察した前記回転体の第1の回転角度における前記細穴の第1の位置及び前記第2の位置と、前記回転体の前記第2の回転角度における前記細穴の前記第1の位置及び前記第2の位置と、のそれぞれの座標から、前記細穴の位置及び傾斜を計算する位置傾斜計算部と、
前記計算した前記細穴の位置及び傾斜を含む細穴情報を出力する出力部と、
を備える内面形状測定機。
【請求項2】
前記細穴情報に基づいて前記直動傾斜ステージを制御し、前記細穴の中心軸と前記回転軸とのずれを目標値以内にするステージ制御部を備える請求項1に記載の内面形状測定機。
【請求項3】
前記カメラは、前記第1の直動機構により前記第1の方向に移動可能であり、
前記観察制御部は、前記第1の直動機構により前記カメラの焦点位置を前記細穴の前記第1の位置及び前記第2の位置に移動させる請求項1又は2に記載の内面形状測定機。
【請求項4】
前記第1の回転角度と前記第2の回転角度とは互いに180°異なる角度である請求項1から3のいずれか1項に記載の内面形状測定機。
【請求項5】
前記カメラの光軸と同軸の光を出射する同軸照明光学系を備える請求項1から4のいずれか1項に記載の内面形状測定機。
【請求項6】
スポンジ状又は粘土状の反射体を備え、
前記反射体は、前記カメラと前記直動傾斜ステージとの間に配置される前記ワークの前記細穴の前記カメラ側の開口から入射した光を前記直動傾斜ステージ側において前記細穴に反射させる請求項5に記載の内面形状測定機。
【請求項7】
柔軟性を有する連続気泡構造体と、
前記連続気泡構造体に光を入射させる光源と、
を備え、
前記連続気泡構造体は、前記カメラと前記直動傾斜ステージとの間に配置される前記ワークの前記細穴の前記直動傾斜ステージ側の開口から前記光源からの光を入射させる請求項1から5のいずれか1項に記載の内面形状測定機。
【請求項8】
第1の方向に平行な回転軸を中心に回転する回転体と、
前記回転体に支持される直動傾斜ステージであって、前記回転体に対する前記第1の方向に直交する平面内の位置及び前記平面に対する傾斜を変更可能な直動傾斜ステージと、
前記第1の方向に平行に延びる接触式又は非接触式のプローブであって、第1の直動機
構によって前記第1の方向に移動可能なプローブにより、前記直動傾斜ステージに固定されて前記回転体とともに回転するワークの細穴の内側面の変位を検出する変位検出器と、
を備える内面形状測定機のアライメント方法であって、
前記回転体の第1の回転角度における前記ワークの前記細穴の第1の位置及び前記第1の位置とは前記第1の方向の位置が異なる第2の位置と、前記回転体の前記第1の回転角度とは異なる第2の回転角度における前記ワークの前記細穴の前記第1の位置及び前記第2の位置とを第1の方向に平行な光軸を有するカメラにより観察する観察制御工程と、
前記観察した前記回転体の第1の回転角度における前記細穴の第1の位置及び前記第2の位置と、前記回転体の前記第2の回転角度における前記細穴の前記第1の位置及び前記第2の位置と、のそれぞれの座標から、前記細穴の位置及び傾斜を計算する位置傾斜計算工程と、
前記計算した前記細穴の位置及び傾斜を含む細穴情報を出力する出力工程と、
を備える内面形状測定機のアライメント方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに形成された細穴の内面形状を測定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
接触式又は非接触式のプローブとワークとを相対移動させることでワークの形状を測定する形状測定装置において、回転軸を中心にワークを回転させてワークの真円度を測定する内面形状測定機が知られている。内面形状測定機で真円度を測定するためには、回転軸とワークの軸心とを一致させる必要がある。
【0003】
特許文献1には、回転テーブル上に載置されたワークの孔の内周部に検出器の接触子を当接させて孔の真円度を測定する技術が開示されている。特許文献1に記載の技術では、事前に検出器の接触子をワークの外周面に当接させ、回転テーブルを回転させながら低倍率でワークの振れを見て、振れが小さくなるようにワークの載置位置を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内面形状測定機を用いて細穴の内面形状を測定する場合、細穴のアライメントが課題となる。即ち、プローブを細穴に挿入してワークを回転させると、プローブと穴壁とが衝突するという課題があった。
【0006】
これに対し、特許文献1に記載の技術のように、穴と同軸形状部分を利用してアライメントする場合は、測定可能な測定対象物の形状に制限があった。
【0007】
また、作業者が観察顕微鏡で確認しながら挿入する場合には、作業者の熟練が必要となる。この場合、自動化が困難であり、操作ミスによってプローブと穴壁とが衝突する可能性があった。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、穴の位置を適切にアライメントする内面形状測定機、及び内面形状測定機のアライメント方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための内面形状測定機の一の態様は、第1の方向に平行な回転軸を中心に回転する回転体と、回転体に支持される直動傾斜ステージであって、回転体に対する第1の方向に直交する平面内の位置及び平面に対する傾斜を変更可能な直動傾斜ステージと、第1の方向に平行に延びる接触式又は非接触式のプローブであって、第1の直動機構によって第1の方向に移動可能なプローブにより、直動傾斜ステージに固定されて回転体とともに回転するワークの細穴の内側面の変位を検出する変位検出器と、第1の方向に平行な光軸を有するカメラと、回転体の第1の回転角度におけるワークの細穴の第1の位置及び第1の位置とは第1の方向の位置が異なる第2の位置と、回転体の第1の回転角度とは異なる第2の回転角度におけるワークの細穴の第1の位置及び第2の位置とをカメラにより観察する観察制御部と、観察した回転体の第1の回転角度における細穴の第1の位置及び第2の位置と、回転体の第2の回転角度における細穴の第1の位置及び第2の位置と、のそれぞれの座標から、細穴の位置及び傾斜を計算する位置傾斜計算部と、計算した
細穴の位置及び傾斜を含む細穴情報を出力する出力部と、を備える内面形状測定機である。
【0010】
本態様によれば、細穴情報に基づいて穴の位置を適切にアライメントすることができる。内径が500μm以下の極小径穴である場合に特に有効である。
【0011】
細穴情報に基づいて直動傾斜ステージを制御し、細穴の中心軸と回転軸とのずれを目標値以内にするステージ制御部を備えることが好ましい。これにより、穴の位置を自動的にアライメントすることができる。
【0012】
カメラは、第1の直動機構により第1の方向に移動可能であり、観察制御部は、第1の直動機構によりカメラの焦点位置を細穴の第1の位置及び第2の位置に移動させることが好ましい。これにより、細穴の第1の位置及び第2の位置にカメラを適切に合焦させることができるので、カメラによって細穴を適切に観察することができる。
【0013】
第1の回転角度と第2の回転角度とは互いに180°異なる角度であることが好ましい。これにより、細穴の位置及び傾斜を精度よく計算することができる。
【0014】
カメラの光軸と同軸の光を出射する同軸照明光学系を備えることが好ましい。これにより、ワークの細穴を適切に照射することができるので、カメラによって細穴を適切に観察することができる。
【0015】
スポンジ状又は粘土状の反射体を備え、反射体は、カメラと直動傾斜ステージとの間に配置されるワークの細穴のカメラ側の開口から入射した光を直動傾斜ステージ側の開口において細穴に反射させることが好ましい。これにより、ワークの細穴のカメラ側の開口から入射した光を、ワークを傷つけずに直動傾斜ステージ側の開口において細穴に反射させることができる。
【0016】
柔軟性を有する連続気泡構造体と、連続気泡構造体に光を入射させる光源と、を備え、
連続気泡構造体は、カメラと直動傾斜ステージとの間に配置されるワークの細穴の直動傾斜ステージ側の開口から光源からの光を入射させることが好ましい。これにより、ワークの細穴の直動傾斜ステージ側の開口から適切に光を入射させることができる。
【0017】
上記目的を達成するための内面形状測定機のアライメント方法は、第1の方向に平行な回転軸を中心に回転する回転体と、回転体に支持される直動傾斜ステージであって、回転体に対する第1の方向に直交する平面内の位置及び平面に対する傾斜を変更可能な直動傾斜ステージと、第1の方向に平行に延びる接触式又は非接触式のプローブであって、第1の直動機構によって第1の方向に移動可能なプローブにより、直動傾斜ステージに固定されて回転体とともに回転するワークの細穴の内側面の変位を検出する変位検出器と、を備える内面形状測定機のアライメント方法であって、回転体の第1の回転角度におけるワークの細穴の第1の位置及び第1の位置とは第1の方向の位置が異なる第2の位置と、回転体の第1の回転角度とは異なる第2の回転角度におけるワークの細穴の第1の位置及び第2の位置とを第1の方向に平行な光軸を有するカメラにより観察する観察制御工程と、観察した回転体の第1の回転角度における細穴の第1の位置及び第2の位置と、回転体の第2の回転角度における細穴の第1の位置及び第2の位置と、のそれぞれの座標から、細穴の位置及び傾斜を計算する位置傾斜計算工程と、計算した細穴の位置及び傾斜を含む細穴情報を出力する出力工程と、を備える内面形状測定機のアライメント方法である。
【0018】
本態様によれば、細穴情報に基づいて穴の位置を適切にアライメントすることができる。内径が500μm以下の極小径穴である場合に特に有効である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、穴の位置を適切にアライメントすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、内面形状測定機の構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、非接触式及び接触式のプローブの一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、内面形状測定機の電気的構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、内面形状測定機のアライメント方法の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、カメラによる細穴の上側開口の観察を示す概略図である。
【
図6】
図6は、回転体の回転軸と、回転体の設定角度θ=0°における上側開口と、カメラの撮影範囲における上側開口の画像との位置関係を示す図である。
【
図7】
図7は、カメラによる細穴の下側開口の観察を示す概略図である。
【
図8】
図8は、回転体の回転軸と、回転体の設定角度θ=0°における下側開口と、カメラの撮影範囲における下側開口の画像との位置関係を示す図である。
【
図9】
図9は、回転体の回転軸と、回転体の設定角度θ=180°における上側開口と、カメラの撮影範囲における上側開口の画像との位置関係を示す図である。
【
図10】
図10は、回転体の回転軸と、回転体の設定角度θ=180°における下側開口と、カメラの撮影範囲における下側開口の画像との位置関係を示す図である。
【
図11】
図11は、上側開口の移動目標座標及び下側開口の移動目標座標を説明するための図である。
【
図12】
図12は、カメラとワーク設置治具によるワークの細穴との関係を示す図である。
【
図13】
図13は、カメラによる細穴の途中位置の観察を示す概略図である。
【
図14】
図14は、ワークの細穴の位置が回転軸から大きくずれている場合の、カメラによる細穴の観察を示す概略図である。
【
図15】
図15は、回転体を回転させた際のカメラの撮影範囲における細穴の上側開口の中心座標の軌跡を示す図である。
【
図16】
図16は、カメラに入射するワークの細穴の下側開口の観察光の光路を示す図である。
【
図17】
図17は、カメラによるワークの細穴の下側開口の観察の様子を示す図である。
【
図18】
図18は、ワークの細穴の下側開口側へのスポンジ状の反射体の挿入を示す図である。
【
図19】
図19は、ワークの細穴の下側開口側への粘土状の反射体の挿入を示す図である。
【
図20】
図20は、ワークの細穴の下側開口側への散乱体の挿入を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。
【0022】
<内面形状測定機の構成>
図1は、本実施形態に係る内面形状測定機10の構成を示す概略図である。内面形状測定機10は、ワークWに形成された細穴Hの内面形状(真円度等)を測定する装置である。本例において、細穴Hは、ワークWの中心軸に沿って形成された細穴である。細穴Hの内径は、極小径(例えば内径が500μm以下)のものである。
図1において、X方向、Y方向、及びZ方向は互いに直交する方向であり、X方向は水平方向、Y方向はX方向に直交する水平方向、Z方向は鉛直方向である。
【0023】
図1に示すように、内面形状測定機10は、本体ベース12、回転体14、直動傾斜ステージ16、ワーク設置治具18、コラム20、キャリッジ22、アーム24、変位検出器28、及びカメラ34を備える。
【0024】
回転体14は、本体ベース12上に固定される。本体ベース12の内部には、回転体14に連結される不図示のモータ、不図示のエンコーダ、及び不図示の高精度回転機構が備えられている。回転体14は、モータの駆動によってZ方向(第1の方向の一例)に平行な回転軸ARを中心に高精度に回転する。また、回転体14は、エンコーダから出力される回転角信号によって回転体14の回転角度が検出される。
【0025】
直動傾斜ステージ16(直動傾斜ステージの一例)は、回転体14に対して相対移動可能に回転体14に支持される。直動傾斜ステージ16は、不図示のモータの駆動によりX方向及びY方向に平行移動し、直動傾斜ステージ16に固定されたワークWのZ方向に直行する平面内(XY平面内)の位置を変更可能である。また、直動傾斜ステージ16は、不図示のモータの駆動によりX方向及びY方向に対して傾斜動作し、直動傾斜ステージ16に固定されたワークWのXY平面に対する傾斜を変更可能である。
【0026】
ワーク設置治具18は、直動傾斜ステージ16に載置される。ワーク設置治具18には、ワークWが設置される。即ち、直動傾斜ステージ16には、ワーク設置治具18を介してワークWが固定される。ワークWは、極小径の細穴Hを有する。細穴Hは、ワークWの内部を上側開口O
U(
図5参照)から下側開口O
D(
図7参照)までを直進して貫通している。
【0027】
内面形状測定機10においてワークWの細穴Hの真円度等の内面形状を測定するには、ワークWの細穴Hの中心軸A
Hが回転体14の回転軸A
Rと同軸上となるようにワークWをアライメントする必要がある。このワークWのアライメントについては後述する。
図1は、ワークWのアライメント前の様子を示している。アライメントされたワークWは、回転体14とともに回転軸A
Rを中心に回転する。
【0028】
また、本体ベース12上には、Z方向に平行に延びるコラム(支柱)20が立設される。コラム20は、下端部が本体ベース12の上面に固定される。
【0029】
キャリッジ22は、Z方向に移動可能にコラム20に支持される。キャリッジ22は、不図示のモータの駆動によりZ方向に移動する。キャリッジ22は、変位検出器28及びカメラ34をZ方向に移動させるための垂直直動機構(第1の直動機構の一例)に相当する。
【0030】
アーム24は、X方向(第1の方向に直行する方向の一例)に移動可能にキャリッジ22に支持される。アーム24は、不図示のモータの駆動によりX方向に移動する。アーム24は、変位検出器28及びカメラ34をX方向に移動させるための水平直動機構に相当する。
【0031】
変位検出器28は、アーム24に支持される。変位検出器28は、非接触式又は接触式のプローブ30を備えている。
【0032】
図2は、プローブ30の一例を示す概略図である。
図2の202Aは、非接触式のプローブ30を示している。非接触式のプローブ30を備える変位検出器28(
図1参照)は、検出光を出射する不図示の発光素子と、発光素子から出射される検出光の反射光を受光する不図示の受光素子とを備える。非接触式のプローブ30は、光ファイバ38及び反射ミラー40を備える。変位検出器28(
図1参照)の不図示の発光素子から出射された光は、光ファイバ38によって反射ミラー40に導かれ、反射ミラー40の反射面で反射してワークWに入射する。ワークWで反射した反射光は、反射ミラー40に入射し、反射ミラー40の反射面で反射して光ファイバ38に導かれる。光ファイバ38に導かれた反射光は、変位検出器28の不図示の受光素子に入力される。変位検出器28は、受光素子において受光される反射光に基づいてワークWの変位を検出する。
【0033】
非接触式の変位検出器28の方式として、レーザー干渉計、白色干渉計、SD-OCT(Spectral Domain-Optical Coherence Tomography)、SS-OCT(Swept Source-Optical Coherence Tomography)等の既知の手法を適用することができる。
【0034】
なお、変位検出器28は、接触式でワークWの変位を検出してもよい。
図2の202Bは、接触式のプローブ30を示している。接触式のプローブ30は、先端にワークWに向けて付勢される接触子42を備える。接触子42がワークWに接触すると、ワークWの形状に応じて接触子42が変位する。接触子42の変位は、プローブ30を介して変位検出器28に伝達される。変位検出器28は、接触子42の変位に基づいてワークWの変位を検出する。
【0035】
接触式の変位検出器28の変位検出機構としては、LVDT(Linear Variable Differential Transformer)、干渉計、光三角測量方式、薄膜歪み測定等の既知の機構を適用することができる。更に、変位検出器28として、共振周波数で接触子42を加振しておき、接触によって共振点が変化することを利用する方式を適用してもよい。
【0036】
図1の説明に戻り、内面形状測定機10においてワークWの細穴Hの真円度を測定する際には、プローブ30はキャリッジ22により変位検出器28とともにZ方向に移動され、ワークWの細穴Hに挿入される。変位検出器28は、プローブ30により細穴Hの穴壁(内側面)の変位を検出する。
【0037】
カメラ34は、光軸A
C(
図12参照)をZ方向に平行かつ下向きにして、アーム24に支持される。
【0038】
カメラ34は、同軸落射照明光学系35(
図3参照、同軸照明光学系の一例)と、被観察物を拡大投影する不図示の拡大光学系(顕微鏡)と、を含む。同軸落射照明光学系35は、不図示の照明光源と、照明光源からの光をカメラ34の光軸A
Cと同軸の照明光として出射する不図示のハーフミラーと、を備える。カメラ34は、カメラの光軸A
Cと同軸で照明光を被観察物に照射し、被観察物の拡大画像を撮影することができる。ここでは同軸落射照明を用いているが、斜光照明を用いてもよい。
【0039】
このように構成された内面形状測定機10において、ワークWをアライメントし、プローブ30をワークWの細穴Hに挿入し、回転体14を回転させてワークWとプローブ30とを相対的に移動させ、変位検出器28において細穴Hの穴壁の変位を検出することで、細穴Hの真円度を測定することができる。
【0040】
<内面形状測定機の電気的構成>
図3は、内面形状測定機10の電気的構成を示すブロック図である。内面形状測定機10は、制御装置50を備える。
【0041】
制御装置50は、例えばパーソナルコンピュータやマイクロコンピュータ等の汎用のコンピュータによって実現されるものである。制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び入出力インターフェース等を備えている。制御装置50では、ROMに記憶されている制御プログラム等の各種プログラムがRAMに展開され、RAMに展開されたプログラムがCPUによって実行されることにより、内面形状測定機10内の各部の機能が実現され、入出力インターフェースを介して各種の演算処理や制御処理が実行される。
【0042】
図3に示すように、制御装置50は、測定制御部52、変位取得部54、真円度計算部56、観察制御部58、位置傾斜計算部60、ステージ制御部62、及び出力部63を含む。
【0043】
測定制御部52は、キャリッジ22、アーム24、及び回転体14にそれぞれ連結される不図示のモータを制御し、変位検出器28のプローブ30とワークWの細穴Hとの相対位置を制御する。
【0044】
変位取得部54は、変位検出器28を制御し、変位検出器28が検出した細穴Hの穴壁の変位を取得する。
【0045】
真円度計算部56は、測定制御部52から取得したプローブ30とワークWとの相対位置、及び変位検出器28が検出した変位から、細穴Hの真円度を計算する。
【0046】
観察制御部58は、カメラ34を制御し、カメラ34が撮影した画像を取得する。位置傾斜計算部60は、観察制御部58が取得した画像からワークWの細穴Hの位置及び傾斜を計算する。ステージ制御部62は、位置傾斜計算部60が計算した細穴Hの位置及び傾斜に基づいて、直動傾斜ステージ16を駆動する不図示のモータを制御し、直動傾斜ステージ16の位置及び傾斜を変更する。出力部63は、位置傾斜計算部60から取得した細穴Hの位置及び傾斜を含む細穴情報を不図示の出力インターフェースに出力する。
【0047】
<アライメント方法>
前述したように、ワークWの細穴Hの真円度等の内面形状を測定するためには、細穴Hの中心軸AHを回転体14の回転軸ARに一致させるアライメントが必要である。アライメントには、XY平面内の位置を調整するセンタリングと、XY平面に対する傾斜を調整するチルチングとがある。内面形状測定機10は、直動傾斜ステージ16によってセンタリングとチルチングとが可能である。
【0048】
図4は、内面形状測定機10のアライメント方法の処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、細穴Hを有するワークWが予めワーク設置治具18に設置されているものとする。ワーク設置治具18は、ワークWの細穴Hの下側開口O
D(
図7参照)に隙間を設けて(下側開口O
Dを塞がずに)ワークWを固定している。
【0049】
ステップS1では、測定制御部52は、回転体14の不図示のエンコーダの検出結果に応じて不図示のモータを駆動し、回転体14を回転角度が設定角度θ=0°(第1の回転角度の一例)の位置へ移動(回転)させる。
【0050】
ステップS2では、測定制御部52は、アーム24の不図示のモータを駆動してカメラ34をワークWのZ方向の上方に移動させる。また、測定制御部52は、キャリッジ22の不図示のモータを駆動してカメラ34をZ方向に移動させ、カメラ34の焦点位置を細穴Hの上側開口OU(第1の位置の一例)に合わせる。
【0051】
続くステップS3(観察制御工程の一例)では、観察制御部58は、カメラ34によって細穴Hの上側開口OUを観察(撮影)する。さらに、位置傾斜計算部60は、設定角度θ=0°における細穴Hの上側開口OUの中心座標(x,y)0Uを計算する。
【0052】
図5は、カメラ34による細穴Hの上側開口O
Uの観察を示す概略図である。
図5では、ワークWを断面で示している。
図5に示す焦点面F
Uは、カメラ34の光軸A
Cに直交し、かつカメラ34の焦点を含む面であり、ここでは細穴Hの上側開口O
Uの位置に合わせられている。また、
図5に示したドットハッチング部分は、カメラ34に入射する上側開口O
Uの観察光の光路であり、
図5に示した画像I
0Uは、カメラ34によって観察される上側開口O
Uのエッジ部分の画像(Z方向視)である。
【0053】
図6は、回転体14の回転軸A
Rと、回転体14の設定角度θ=0°におけるワークWの細穴Hの上側開口O
Uと、カメラ34の撮影範囲Rと、撮影範囲RにおけるステップS3で観察された画像I
0Uとの位置関係を示す図である。
図6では、撮影範囲RはZ方向視で示しており、ワークWは断面をY方向視で示している。
【0054】
位置傾斜計算部60は、画像I0Uから設定角度θ=0°における細穴Hの上側開口OUの中心座標(x,y)0Uを計算する。
【0055】
次に、ステップS4では、測定制御部52は、キャリッジ22の不図示のモータを駆動してカメラ34をZ方向に移動させ、カメラ34の焦点位置を細穴Hの上側開口ODUとはZ方向の位置が異なる下側開口OD(第2の位置の一例)に合わせる。
【0056】
続くステップS5(観察制御工程の一例)では、観察制御部58は、カメラ34によって細穴Hの下側開口ODを観察する。さらに、位置傾斜計算部60は、設定角度θ=0°における細穴Hの下側開口ODの中心座標(x,y)0Dを計算する。
【0057】
図7は、カメラ34による細穴Hの下側開口O
Dの観察を示す概略図である。
図7では、ワークWを断面で示している。
図7に示すように、焦点面F
Dは細穴Hの下側開口O
Dの位置に合わせられている。また、
図7に示したドットハッチング部分は、カメラ34に入射する下側開口O
Dの観察光の光路であり、
図7に示した画像I
0Dは、カメラ34によって観察される下側開口O
Dのエッジ部分の画像(Z方向視)である。
【0058】
図8は、回転体14の回転軸A
Rと、回転体14の設定角度θ=0°におけるワークWの細穴Hの下側開口O
Dと、カメラ34の撮影範囲RにおけるステップS5で観察された画像I
0Dとの位置関係を示す図である。
図8では、撮影範囲RはZ方向視で示しており、ワークWは断面をY方向視で示している。
【0059】
位置傾斜計算部60は、画像I0Dから設定角度θ=0°における細穴Hの下側開口ODの中心座標(x,y)0Dを計算する。
【0060】
次に、ステップS6では、測定制御部52は、回転体14の不図示のエンコーダの検出結果に応じて不図示のモータを駆動し、回転体14を回転角度が設定角度θ=180°(第2の回転角度の一例)の位置へ移動させる。
【0061】
ステップS7では、測定制御部52は、キャリッジ22の不図示のモータを駆動してカメラ34をZ方向に移動させ、カメラ34の焦点位置を上側開口OUに合わせる。
【0062】
続くステップS8(観察制御工程の一例)では、観察制御部58は、カメラ34によって細穴Hの上側開口OUを観察する。さらに、位置傾斜計算部60は、画像I180Uから設定角度θ=180°における細穴Hの上側開口OUの中心座標(x,y)180Uを計算する。
【0063】
図9は、回転体14の回転軸A
Rと、回転体14の設定角度θ=180°におけるワー
クWの細穴Hの上側開口O
Uと、カメラ34の撮影範囲RにおけるステップS8で観察された画像I
0Uとの位置関係を示す図である。
図9では、撮影範囲RはZ方向視で示しており、ワークWは断面をY方向視で示している。
【0064】
位置傾斜計算部60は、画像I180Uから設定角度θ=180°における細穴Hの上側開口OUの中心座標(x,y)180Uを計算する。
【0065】
次に、ステップS9では、測定制御部52は、キャリッジ22の不図示のモータを駆動してカメラ34をZ方向に移動させ、カメラ34の焦点位置を細穴Hの下側開口ODに合わせる。
【0066】
続くステップS10(観察制御工程の一例)では、観察制御部58は、カメラ34によって細穴Hの下側開口ODを観察する。さらに、位置傾斜計算部60は、画像I180Dから設定角度θ=180°における細穴Hの下側開口ODの中心座標(x,y)180Dを計算する。
【0067】
図10は、回転体14の回転軸A
Rと、回転体14の設定角度θ=180°におけるワークWの細穴Hの下側開口O
Dと、カメラ34の撮影範囲RにおけるステップS10で観察された画像I
0Dとの位置関係を示す図である。
図10では、撮影範囲RはZ方向視で示しており、ワークWは断面をY方向視で示している。
【0068】
位置傾斜計算部60は、画像I180Dから設定角度θ=180°における細穴Hの下側開口ODの中心座標(x,y)180Dを計算する。
【0069】
ステップS11(位置傾斜計算工程の一例)では、位置傾斜計算部60は、設定角度θ=0°における細穴Hの上側開口OUの中心座標(x,y)0U及び下側開口ODの中心座標(x,y)0Dと、設定角度θ=180°における細穴Hの上側開口OUの中心座標(x,y)180U及び下側開口ODの中心座標(x,y)180Dとから、回転体14の回転軸ARに対するワークWの細穴Hの中心軸AHの位置及び傾斜を計算する。
【0070】
ステップS12では、位置傾斜計算部60は、ワークWの細穴Hの中心軸AHの位置及び傾斜と回転軸ARとのずれが目標値以内であるか否かを判定する。ずれが目標値より大きい場合は、制御装置50は、ステップS13の処理を行う。ずれが目標値以内である場合は、本フローチャートの処理を終了する。
【0071】
ステップS13では、位置傾斜計算部60は、直動傾斜ステージ16の移動量を計算する。
図11は、上側開口O
Uの移動目標座標C
U(x,y)及び下側開口O
Dの移動目標座標C
D(x,y)を説明するための図である。
図11では、設定角度θ=0°における細穴Hの上側開口O
Uの中心座標(x,y)
0U及び下側開口O
Dの中心座標(x,y)
0Dと、設定角度θ=180°における細穴Hの上側開口O
Uの中心座標(x,y)
180U及び下側開口O
Dの中心座標(x,y)
180Dと、上側開口O
Uの移動目標座標C
U(x,y)と、下側開口O
Dの移動目標座標C
D(x,y)と、の位置関係を示している。
【0072】
図11に示すように、上側開口O
Uの移動目標座標C
U(x,y)は、
C
U(x,y)={(x,y)
0U+(x,y)
180U}/2 …(式1)
と表すことができる。同様に、下側開口O
Dの移動目標座標C
D(x,y)は、
C
D(x,y)={(x,y)
0D+(x,y)
180D}/2 …(式2)
と表すことができる。
【0073】
位置傾斜計算部60は、上側開口OUの移動目標座標CU(x,y)及び下側開口ODの移動目標座標CD(x,y)から、直動傾斜ステージ16の移動量を計算する。出力部63は、位置傾斜計算部60が計算した直動傾斜ステージ16の移動量(細穴情報の一例)を取得し、ステージ制御部62に出力する(出力工程の一例)。
【0074】
ステップS14(ステージ制御工程の一例)は、ステージ制御部62は、ステップS13で計算された移動量に基づいて直動傾斜ステージ16の不図示のモータを駆動し、直動傾斜ステージ16を目標位置へ移動させる。その後、ステップS1へ移行し、制御装置50は同様の処理を行う。この処理を繰り返すことで、内面形状測定機10は、ワークWの細穴Hの中心軸AHと回転体14の回転軸ARとのずれを目標値以内にする。
【0075】
このように、本実施形態に係るアライメント方法によれば、細穴Hの中心軸AHを回転体14の回転軸ARにアライメントすることができる。本実施形態によれば、カメラ34の光軸ACを回転体14の回転軸ARに一致させる必要がないため、簡易な構成でアライメントすることができる。本実施形態に係るアライメント方法は、細穴Hが、内径が500μm以下の極小径穴である場合に有効である。さらに、細穴Hの径が200μm以下であり、プローブ30の径が100μm以下である場合に、特に有効である。なお、径が500μmより大きい細穴Hであってもよい。
【0076】
ここでは、カメラ34で上側開口OUと下側開口ODとを観察する際の回転体14の回転角度の設定角度θを、互いに180°異なる角度であるθ=0°とθ=180°とに設定したため、ワークWの細穴Hの中心軸AHと回転軸ARとのずれを精度よく計算することができる。
【0077】
また、内面形状測定機10は、ワークWの円筒度を高精度に測定するため、コラム20は回転体14の回転軸ARと平行に立設されている。本実施形態では、細穴Hの上側開口OUと下側開口ODとの観察の切り替えの際に、キャリッジ22の垂直直動機構を利用してカメラ34の焦点位置を移動させた。したがって、カメラ34の焦点制御機構が不要となり、高精度アライメントが可能となった。例えば、焦点面内での回転軸位置が移動しないため、高倍率の光学系を採用することが可能である。
【0078】
また、出力部63は、位置傾斜計算部60から取得した直動傾斜ステージ16の移動量(細穴情報の一例)を、不図示の出力インターフェースなどに出力(出力工程の一例)してもよい。また出力部63は、ステップS11において計算した回転体14の回転軸ARに対するワークWの細穴Hの中心軸AHの位置及び傾斜を含む細穴情報を取得し、不図示の出力インターフェースなどに出力(出力工程の一例)してもよい。ユーザは、出力された情報に基づいて直動傾斜ステージ16を手動で動作させることで、ワークWの細穴Hの中心軸AHを回転体14の回転軸ARにアライメントすることができる。本実施形態では、出力部63は、取得した移動量をステージ制御部62に出力する。
【0079】
<ワーク設置治具>
細穴Hの下側開口ODを観察するためには、ワークWをワーク設置治具18に設置した際に細穴Hの角度(傾斜)を一定範囲に収めることが必要となる。
【0080】
図12は、カメラとワーク設置治具によるワークの細穴との関係を示す図である。
図12の212Aは、カメラ34の不図示の対物レンズに入射する観察光の光軸A
Cに対する最大角度を示している。212Aに示すように、カメラ34の対物レンズの開口数をNA、対物レンズに入射する観察光のカメラ34の光軸A
Cに対する最大角度θ
obj、観察光の光路の屈折率をn、とすると、
NA=n×sinθ
obj …(式3)
の関係を有する。したがって、観察光の光路の空気の屈折率nを1.0と仮定し、細穴Hの回転体14の回転軸A
Rに対する傾斜角をθ
workとすると、
θ
work<asin(NA) …(式4)
を満たすようにワークWを位置決め可能なワーク設置治具18が必要となる。
【0081】
図12の212Bは、θ
work<θ
objの関係を有する場合のカメラ34とワークWとの関係を示している。212Bでは、ワークWを断面で示している。212Bに示す光路Pは、カメラ34に入射する観察光の光路のうち、下側開口O
Dの観察に使用可能な光路である。このように、212Bに示す場合では、カメラ34で下側開口O
Dの観察を行うことが可能である。
【0082】
図12の212Cは、θ
work>θ
objの関係を有する場合のカメラ34とワークWとの関係を示している。212Cでは、ワークWを断面で示している。212Cに示す場合では、下側開口O
Dの観察光はカメラ34に到達せず、カメラ34で下側開口O
Dの観察を行うことができない。
【0083】
<細穴の観察する位置>
上記の例では、細穴Hの上側開口ODU及び下側開口ODを観察する例を示したが、細穴Hを観察する位置は開口に限定されず、細穴Hの途中位置であってもよい。
【0084】
図13は、細穴Hの上側開口O
DU及び下側開口O
DとはZ方向の位置が異なる途中位置O
H(第2の位置の一例)のカメラ34による観察を示す概略図である。
図13では、ワークWを断面で示している。
図13に示す細穴Hは、下側開口O
Dのエッジ部にRが付いている(下側開口O
DがR形状を有している)。このため、
図13に示す例では、焦点面F
Hが細穴Hの途中位置O
Hに合わせられている。また、
図13に示したドットハッチング部分は、カメラ34に入射する途中位置O
Hの観察光の光路であり、
図13に示した画像I
0Hは、カメラ34によって観察される途中位置O
Hの画像(Z方向視)である。
【0085】
このように、細穴Hの上側開口ODUや下側開口ODに面取りやRが付いており、細穴Hのエッジ形状を観察するのが困難な場合には、細穴Hの途中位置を観察することが有効である。細穴Hの途中位置を利用する場合、細穴Hの位置を検知するためには、画像内でコントラストの高い(焦点が合っている)領域を選択する手法や、白色干渉方式による計測等を利用することができる。
【0086】
<細穴の位置が回転軸から大きくずれている場合>
上記の例では、回転体14を回転させた際に、細穴HがX方向に固定されたカメラ34の撮影範囲に常に入っていた。すなわち、カメラ34の撮影範囲に入る程度に回転体14の回転軸ARに近い位置に最初から細穴Hが配置されていた。しかしながら、回転体14の回転軸ARから大きくずれて細穴Hが配置されている場合であっても、水平直動機構を動作させることで同様の手法を適用することができる。
【0087】
図14は、回転体14の回転軸A
Rから大きくずれてワークWの細穴Hが配置されている場合の、カメラ34による細穴Hの観察を時系列で示す概略図である。
【0088】
図14の214Aは、ワークWの細穴Hが、カメラ34の撮影範囲に入っていない状態を示している。ここで、測定制御部52は、回転体14を回転角度が設定角度θ=θ
Aの位置へ移動させる。設定角度θ=θ
Aは、Z方向視でワークWの細穴Hとアーム24とが重なる角度である。設定角度θ=θ
Aの位置への移動は、冶具で位置決めをしてもよいし、アーム24の移動によるカメラ34の各位置において回転体14を移動させて、カメラ34で細穴Hを探索してもよい。
【0089】
図14の214Bは、観察制御部58が、細穴Hがカメラ34の視界に入る位置P
Aに水平直動機構であるアーム24を移動させる様子を示している。この位置P
Aにおいて、観察制御部58は、カメラ34によって細穴Hの上側開口O
U及び下側開口O
Dを観察する。また、位置傾斜計算部60は、設定角度θ=θ
Aにおける細穴Hの上側開口O
Uの中心座標(x,y)
AU及び下側開口O
Dの中心座標(x,y)
ADを計算する。さらに、位置傾斜計算部60は、アーム24の位置P
Aを記憶する。
【0090】
図14の214Cは、測定制御部52が、回転体14を回転角度が設定角度θ=θ
A+180°=θ
Bの位置へ移動させる様子を示している。
【0091】
図14の214Dは、観察制御部58が、細穴Hがカメラ34の視界に入る位置P
Bに水平直動機構であるアーム24を移動させる様子を示している。この位置P
Bにおいて、観察制御部58は、カメラ34によって細穴Hの上側開口O
U及び下側開口O
Dを観察する。また、位置傾斜計算部60は、設定角度θ=θ
Bにおける細穴Hの上側開口O
Uの中心座標(x,y)
BU及び下側開口O
Dの中心座標(x,y)
BDを計算する。さらに、位置傾斜計算部60は、アーム24の位置P
Bを記憶する。
【0092】
このように取得した、設定角度θ=θAにおける細穴Hの上側開口OUの中心座標(x,y)AU、下側開口ODの中心座標(x,y)AD、及びアーム24の位置PAと、設定角度θ=θBにおける細穴Hの上側開口OUの中心座標(x,y)BU、下側開口ODの中心座標(x,y)BD、及びアーム24の位置PBとから、位置傾斜計算部60は、回転体14の回転軸ARに対するワークWの細穴Hの位置及び傾斜を計算することができる。
【0093】
<細穴の位置及び傾斜の計算の他の例>
上記の例では、2角度の回転角度で観察する例を示したが、回転体14の回転角度を3角度以上、又は連続的に設定してもよい。例えば、中心座標の軌跡から、細穴Hの位置及び傾斜を計算してもよい。
【0094】
図15は、回転体14を回転させた際のカメラ34の撮影範囲Rにおける細穴Hの上側開口O
Uの中心座標の軌跡T
Uを示す図である。ここでは、回転体14の回転角度を設定角度θ=0°から設定角度θ=90°まで回転させた場合の軌跡を示している。位置傾斜計算部60は、この軌跡T
Uから、設定角度θ=0°、15°、30°、45°、60°、75°、90°の中心座標(x,y)
0U、(x,y)
15U、(x,y)
30U、(x,y)
45U、(x,y)
60U、(x,y)
75U、(x,y)
90Uをそれぞれ計算し、計算した中心座標から移動目標座標、すなわち回転軸A
Rの座標を計算する。
【0095】
このように、回転体14を180°回転させることなく計算が可能であるため、アライメントの高速化が可能となる。また、回転中心を求める際に利用可能な情報が多いため、移動目標座標を高精度で算出することが可能となる。
【0096】
<光量調整>
図16は、カメラに入射するワークの細穴の下側開口の観察光の光路を示す図である。
図16の216Aは、カメラ34に入射するワークWの細穴Hの下側開口O
Dの観察光の光路を示している。216Aでは、ワークWを断面で示している。216Aに示すように、下側開口O
Dの観察に使用できる光路は光量が小さい。すなわち、下側開口O
Dの観察は、上側開口O
Uの観察と比較すると、光量不足で困難な場合がある。したがって、上側開口O
Uの観察時に対して、下側開口O
Dの観察時に光量を増やす仕組みを有してもよい。
【0097】
図16の216Bは、下側開口O
D側に細穴Hを照射する光源70を配置した様子を示している。216Bでは、ワークWを断面で示している。光源70は、下側開口O
D(直動傾斜ステージ側の開口の一例)から細穴Hを照射する。光源70は、スペックルノイズ低減のため、低コヒーレンスなものが好ましい。光源70としては、例えばLED(Light Emitting Diode)、又はASE(Amplified Spontaneous Emission)光源を用いることができる。光源70の中心が回転体14の回転軸A
Rと一致しているとより好ましい。
【0098】
このように、下側開口OD側に光源を配置することで、下側開口ODの形状エッジを強調することができるので、下側開口ODの観察が容易となり、より高精度なアライメントが可能となる。
【0099】
<反射体の挿入>
ワークWの形状によっては、下側開口O
Dの観察が困難となる場合がある。
図17は、カメラ34によるワークWの細穴Hの下側開口O
Dの観察の様子を示す図である。
図17では、ワークWを断面で示している。
図17に示すワークWは、細穴Hの下側開口O
D側にワークWの他の部分が下側開口O
Dの中心に対して非対称に配置されている。このため、
図17の217Aに示すように、ワークWの下側開口O
Dは位置によって反射光量が異なり、下側開口O
Dの観察が困難である。
【0100】
また、
図17に示すワークWは、細穴Hの下側開口O
D側の空間が狭い。このため、
図17の217Bに示すように、光源70を挿入するスペースが不足しており、下側開口O
D側に光源70を配置することができない。
【0101】
また、
図17の217Cに示すように、下側開口O
D側に反射体72を挿入することは可能である。しかしながら、下側開口O
D側の空間が狭いために精密な位置決めが必要となる。また、反射体72とワークWとが衝突し、ワークWを傷つけてしまう可能性がある。
【0102】
このような課題に対し、ワークWの細穴Hの下側開口OD側に柔軟性を有する反射体を挿入することで、下側開口ODの観察時の光量を増やしてもよい。
【0103】
図18は、ワークWの細穴Hの下側開口O
D側へのスポンジ状の反射体80の挿入を示す図である。
図18では、ワークWを断面で示している。
図18の218Aはスポンジ状の反射体80の挿入前を示し、
図18の218Bは挿入後を示している。
【0104】
スポンジ状の反射体80は、弾性及び柔軟性を有する光反射部材である。スポンジ状の反射体80は、細穴Hの上側開口OU(カメラ側の開口の一例)から入射した光を下側開口OD側(直動傾斜ステージ側の一例)において細穴Hに反射させる。スポンジ状の反射体80は、光の反射率の高い、白色等の色を有することが望ましい。スポンジ状の反射体80は柔軟性を有するので、下側開口OD側の狭いスペースに挿入することができる。
【0105】
このようなスポンジ状の反射体80を下側開口OD側へ挿入することで、下側開口ODの観察時の光量を増加させることができるので、下側開口ODの観察が容易となり、より高精度なアライメントが可能となる。また、スポンジ状の反射体80は、下側開口OD側のワークWの形状に沿って変形するため、厳密な形状成形や位置決めが不要であり、低コストであるという効果がある。さらに、スポンジ状の反射体80は、柔軟性を有するためにワークWを傷つける懸念がないという効果がある。
【0106】
また、
図19は、ワークWの細穴Hの下側開口O
D側への粘土状の反射体82の挿入を
示す図である。
図19では、ワークWを断面で示している。
図19の219Aは粘土状の反射体82の挿入前を示し、
図19の219Bは挿入後を示している。
【0107】
粘土状の反射体82は、可塑性及び柔軟性を有する光反射部材である。粘土状の反射体82は、細穴Hの上側開口OU(カメラ側の開口の一例)から入射した光を下側開口OD(直動傾斜ステージ側の開口の一例)において細穴Hに反射させる。粘土状の反射体82は、光の反射率の高い、白色等の色を有することが望ましい。粘土状の反射体82は柔軟性を有するので、下側開口OD側の狭いスペースに挿入することができる。
【0108】
このような粘土状の反射体82を下側開口OD側へ挿入することで、下側開口ODの観察時の光量を増加させることができるので、下側開口ODの観察が容易となり、より高精度なアライメントが可能となる。また、粘土状の反射体82は、下側開口OD側のワークWの形状に沿って変形するため、厳密な形状成形や位置決めが不要であり、低コストであるという効果がある。さらに、粘土状の反射体82は、柔軟性を有するためにワークWを傷つける懸念がないという効果がある。
【0109】
さらに、
図20は、ワークWの細穴Hの下側開口O
D側への散乱体84の挿入を示す図である。
図20では、ワークWを断面で示している。
図20の220Aは散乱体84の挿入前を示し、
図20の220Bは挿入後を示している。
【0110】
散乱体84は、弾性及び柔軟性を有する連続気泡構造体のスポンジである。散乱体84は、細穴Hの下側開口OD側(カメラ側とは反対側の一例)に配置される。散乱体84は柔軟性を有するので、下側開口OD側の狭いスペースに挿入することができる。散乱体84には、光源70が取り付けられる。光源70は、散乱体84に光を入射させる。光源70から散乱体84に入射された光は、散乱体84の内部を多重散乱し、下側開口ODに入射される。
【0111】
このような散乱体84を下側開口OD側に配置することで、散乱体84が多重散乱による面光源を形成することができる。したがって、下側開口ODの観察時の光量を増加させることができ、下側開口ODの観察が容易となり、より高精度なアライメントが可能となる。また、散乱体84は、下側開口OD側のワークWの形状に沿って変形するため、厳密な形状成形や位置決めが不要であり、低コストであるという効果がある。さらに、散乱体84は、柔軟性を有するためにワークWを傷つける懸念がないという効果がある。
【0112】
<その他>
本発明の技術的範囲は、上記の実施形態に記載の範囲には限定されない。各実施形態における構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各実施形態間で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0113】
10…内面形状測定機
12…本体ベース
14…回転体
16…直動傾斜ステージ
18…ワーク設置治具
20…コラム
22…キャリッジ
24…アーム
28…変位検出器
30…プローブ
34…カメラ
35…同軸落射照明光学系
38…光ファイバ
40…反射ミラー
42…接触子
50…制御装置
52…測定制御部
54…変位取得部
56…真円度計算部
58…観察制御部
60…位置傾斜計算部
62…ステージ制御部
63…出力部
70…光源
72…反射体
80…スポンジ状の反射体
82…粘土状の反射体
84…散乱体
AH…中心軸
AR…回転軸
FD…焦点面
FU…焦点面
H…細穴
I0D…画像
I0U…画像
I180D…画像
I180U…画像
OD…下側開口
OU…上側開口
P…光路
R…撮影範囲
S1~S14…内面形状測定機のアライメント方法の処理の各ステップ
TU…上側開口の中心座標の軌跡
W…ワーク