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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】光送信器
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/0683 20060101AFI20241107BHJP
   H01S 5/02253 20210101ALI20241107BHJP
   H01S 5/02325 20210101ALI20241107BHJP
   H01S 5/0239 20210101ALI20241107BHJP
   H01S 5/40 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
H01S5/0683
H01S5/02253
H01S5/02325
H01S5/0239
H01S5/40
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022573856
(86)(22)【出願日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 JP2021000324
(87)【国際公開番号】W WO2022149235
(87)【国際公開日】2022-07-14
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】中西 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】進藤 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】陳 明晨
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-050242(JP,A)
【文献】特開2017-098505(JP,A)
【文献】特開2002-185074(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0026116(US,A1)
【文献】米国特許第06535542(US,B1)
【文献】特開2001-284717(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0107746(US,A1)
【文献】特開2014-150224(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0230116(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の波長チャネルを多重化して出力する光送信器であって、
第1の光源と、
前記第1の光源と波長が異なり、各々が異なる波長の1つ以上の第2の光源と、
前記第1の光源および前記第2の光源の各々の出力に結合された複数のコリメータレンズと、
前記第1の光源からの出力光を第1の端面から対向する第2の端面に透過させ、前記第2の端面に形成された反射鏡により反射させ、前記第2の光源からの出力光を前記第1の端面に形成された波長フィルタを透過させ、前記反射鏡により反射させ、各波長チャネルの出力光を前記反射鏡と前記波長フィルタとの間を往復させて順に多重化する光合波器と、
前記複数のコリメータレンズと、前記第1の端面との間にそれぞれ挿入された複数のビームスプリッタであって、前記コリメータレンズによりコリメートされた平行光ビームの最大直径に相当する領域に反射防止膜が形成され、前記最大直径に相当する領域以外の周囲の領域に反射膜が形成されているビームスプリッタと、
前記複数のビームスプリッタの各々から分岐された光パワーをモニタする複数のモニタPDと
を備え、前記反射防止膜を透過した光が前記波長フィルタに向かい、前記反射膜は前記モニタPDに向けて光を反射する、ことを特徴とする光送信器。
【請求項2】
前記コリメータレンズと前記ビームスプリッタとが集積されていることを特徴とする請求項1に記載の光送信器。
【請求項3】
複数の波長チャネルを多重化して出力する光送信器であって、
第1の光源と、
前記第1の光源と波長が異なり、各々が異なる波長の1つ以上の第2の光源と、
前記第1の光源および前記第2の光源の各々の出力に結合された複数のコリメータレンズと、
前記第1の光源からの出力光を第1の端面から対向する第2の端面に透過させ、前記第2の端面に形成された反射鏡により反射させ、前記第2の光源からの出力光を前記第1の端面に形成された波長フィルタを透過させ、前記反射鏡により反射させ、各波長チャネルの出力光を前記反射鏡と前記波長フィルタとの間を往復させて順に多重化する光合波器と、
前記第1の光源からの出力光の一部を前記光合波器からの反射光として光パワーをモニタする第1のモニタPDと、
前記第2の光源の各々の出力に結合された1つ以上のコリメータレンズと、前記第1の端面との間にそれぞれ挿入された1つ以上のビームスプリッタであって、前記コリメータレンズによりコリメートされた平行光ビームの最大直径に相当する領域に反射防止膜が形成されたビームスプリッタと、
前記1つ以上のビームスプリッタの各々から分岐された光パワーをモニタする1つ以上の第2のモニタPDとを備え、
前記光合波器は、前記第1の端面に形成され、前記第1の光源からの出力光のうち、前記コリメータレンズによりコリメートされたビームを透過し、前記第1の光源からの出力光の一部を、前記第1のモニタPDに分岐する円形反射防止膜を含み、
前記円形反射防止膜は、前記コリメータレンズによりコリメートされた平行光ビームの最大直径に相当する領域に形成され、最大直径に相当する領域以外の周囲の領域には反射膜が形成され
前記円形反射防止膜を透過した光が前記波長フィルタに向かい、前記反射膜は前記第2のモニタPDに向けて光を反射する、
ことを特徴とする光送信器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光送信器に関し、より詳細には、波長多重光伝送方式が用いられる多波長チャネル光送信器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信トラヒックの増大に伴って、光通信システムにおける伝送容量を増大するために波長多重光伝送方式が用いられている。波長多重光伝送を行うためには、波長チャネルごとに光源を用意し、複数の光源からの出力光を、光合波器により合波して、光ファイバに出力する。光通信システムにおいては、光送信信号の光強度を一定に保つことが要求され、波長多重光伝送方式では、個々の波長チャネルの光強度を一定に保つことも必要である。そこで、光送信信号の一部を分岐して光強度をモニタし、モニタする光強度が一定になるように光源を制御することが行われている。
【0003】
図1に、従来の多波長チャネル光送信器であって、4波長を多重する多波長チャネル光送信器の一例を示す。波長チャネルごとの光源10a-10dからの出力光は、コリメータレンズ31a-31dを介して光合波器20に入力され、合波される。光合波器20の出力は、集光レンズ32を介して波長多重光として、全ての波長チャネルが多重化され、光ファイバ41に結合される。
【0004】
図2に光源の一例を示す。光源10は、サブキャリア12上に変調光源部16と光増幅部15とを含む光源チップ11が搭載され、光源チップ11の後端に、変調光源部16からの出力光の一部をモニタするモニタPD13が搭載されている。モニタPD13により各波長チャネルの光出力パワーを電流値として検出し、制御回路14は、検出した電流値が一定になるように光源チップ11への電流供給量を調整する。このような光出力コントロール(APC)回路によって、各光源チップ11からの光出力パワーを常に一定にすることが可能となる(例えば、非特許文献2参照)。
【0005】
光合波器20は、ガラスブロック21を含み、光源側の端面に、第1の光源10aからの出力光を透過する反射防止膜22が形成されている。ガラスブロック21の出力側の端面には、反射鏡24が形成され、第1の光源10aからの出力光を光源側に反射する。光源側の端面には、第2の光源10b-10dからの出力光を透過し、反射鏡24で反射された光を反射する波長フィルタ23b-23dが形成されている。各波長チャネルの光信号は、反射鏡24と波長フィルタ23b-dとの間を往復して、順に多重化され、出力側の端面に形成された反射防止膜25を透過して、波長多重光として出力される。
【0006】
このように、光源チップ11の後端にモニタPD13を配置する構成は、光源チップ11からの出力光に比例した光出力パワーをモニタすることができる。しかしながら、波長多重光となって出力されたときの波長チャネルごとの光出力パワーを、正確にモニタすることはできない。
【0007】
図3に、従来の多波長チャネル光送信器の他の例を示す。波長チャネルごとの光源50a-50dからの出力光は、コリメータレンズ31a-31dとビームスプリッタ53a-53dとを介して光合波器20に入力され、合波される。光合波器20の出力は、集光レンズ32を介して波長多重光として、全ての波長チャネルが多重化され、光ファイバ41に結合される(例えば、非特許文献1参照)。
【0008】
光源チップ51からの出力光は、ビームスプリッタ53a-53dにより一部が分岐されてモニタPD54a-54dによりモニタされる。モニタPD54a-dの出力は、光源50の制御回路に入力され、検出した電流値が一定になるように光源チップ51への電流供給量を調整する。
【0009】
このように、光源チップ51の出力側にモニタPD54を配置する構成は、光源50の光増幅部からの光出力を正確にモニタすることができるが、ビームスプリッタ53の通過損失分、分岐損失分だけ光の損失が発生する。また、第1の光源50aからの出力光は、光合波器20を透過する光路長が、他の波長チャネルの光路長と比較して長いため、損失が大きいという課題があった。
【0010】
また、特許文献1に記載された光モジュールのように、反射鏡に代えて波長フィルタを適用することにより、各波長チャネルの光出力パワーをモニタする方法が知られている。しかしながら、波長チャネルごとに個別の波長フィルタを用意することは、光合波器の部品数の増加、製造工程の増加などのコスト増加の課題があった。
【0011】
さらに、従来の光源チップ11は、出力光のビームの広がりが大きく、出射されたビームは、コリメータレンズ31の有効径である球面形状の外側にも到達する場合がある。外側に到達したビームはコリメート光とはならず、損失になるだけでなく、多波長チャネル光送信器の内部で散乱して、予期しない箇所へ光が到達するという課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2017-98505号公報
【非特許文献】
【0013】
【文献】K. Tsuzuki et.al., “Full C-Band Tunable DFB Laser Array Copackaged With InP Mach-Zehnder Modulator for DWDM Optical Communication Systems,” Journal of selected topics in quantum electronics, vol. 15, no. 3, pp. 521-527, 2009
【文献】L. B. Aronson et. al., “Transmitter Optical Subassembly for XFP Applications,” ECTC2005, DOI: 10.1109ECTC.2005.1441402
【発明の概要】
【0014】
本発明の一実施態様は、複数の波長チャネルを多重化して出力する光送信器であって、第1の光源と、前記第1の光源と波長が異なり、各々が異なる波長の1つ以上の第2の光源と、前記第1の光源および前記第2の光源の各々の出力に結合された複数のコリメータレンズと、前記第1の光源からの出力光を第1の端面から対向する第2の端面に透過させ、前記第2の端面に形成された反射鏡により反射させ、前記第2の光源からの出力光を前記第1の端面に形成された波長フィルタを透過させ、前記反射鏡により反射させ、各波長チャネルの出力光を前記反射鏡と前記波長フィルタとの間を往復させて順に多重化する光合波器と、前記複数のコリメータレンズと、前記第1の端面との間にそれぞれ挿入された複数のビームスプリッタであって、前記コリメータレンズによりコリメートされた平行光ビームの最大直径に相当する領域に反射防止膜が形成され、前記最大直径に相当する領域以外の周囲の領域に反射膜が形成されているビームスプリッタと、前記複数のビームスプリッタの各々から分岐された光パワーをモニタする複数のモニタPDとを備え、前記反射防止膜を透過した光が前記波長フィルタに向かい、前記反射膜は前記モニタPDに向けて光を反射する
【0015】
この構成によれば、光源から光合波器への出力においてビームスプリッタによる通過損失、分岐損失がなく、反射防止膜を透過しない光を利用して、光源からの光出力を正確にモニタすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、従来の多波長チャネル光送信器の一例を示す図、
図2図2は、従来の多波長チャネル光送信器の光源の一例を示す図、
図3図3は、従来の多波長チャネル光送信器の他の例を示す図、
図4図4は、本発明の実施例1にかかる多波長チャネル光送信器を示す図、
図5図5は、実施例1の多波長チャネル光送信器のビームスプリッタの構造を示す図、
図6図6は、本発明の実施例2にかかる多波長チャネル光送信器を示す図、
図7図7は、本発明の実施例3にかかる多波長チャネル光送信器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図4に、本発明の実施例1にかかる多波長チャネル光送信器であって、各々が異なる4つ波長を多重する多波長チャネル光送信器の一例を示す。波長チャネルごとの光源110a-110dからの出力光は、コリメータレンズ131a-131dとビームスプリッタ153a-153dとを介して光合波器120に入力され、合波される。光合波器120の出力は、集光レンズ132を介して波長多重光として、全ての波長チャネルが多重化され、光ファイバ141に結合される。
【0019】
光合波器120は、ガラスブロック121を含み、光源側の端面に、第1の光源110aからの出力光を透過する反射防止膜122が形成されている。ガラスブロック121の出力側の端面には、反射鏡124が形成され、第1の光源110aからの出力光を光源側に反射する。光源側の端面には、第2の光源110b-110dからの出力光を透過し、反射鏡124で反射された光を反射する波長フィルタ123b-123dが形成されている。各波長チャネルの光信号は、反射鏡124と波長フィルタ123b-dとの間を往復して、順に多重化され、出力側の端面に形成された反射防止膜125を透過して、波長多重光として出力される。
【0020】
第1の光源110aおよび第2の光源110b-110dからの出力光は、ビームスプリッタ153a-153dにより一部が分岐されてモニタPD154a-154dにより、各々の出力光の光パワーがモニタされる。モニタPD154a-dの出力は、光源150の制御回路に入力され、検出した電流値が一定になるように、すなわち各々の出力光の光パワーが一定になるように、光源チップ151への電流供給量を調整する。
【0021】
図5に、実施例1の多波長チャネル光送信器のビームスプリッタの構造を示す。図5(a)は、光源110からの出力光の光軸に垂直で、キューブ型のビームスプリッタ153の光学薄膜面161に水平な方向から見た図である。光源110から出力された出力光のビームは、コリメータレンズ131によって集光される。このとき、レンズ球面に入るビーム(図5の実線で示す)はコリメート光となるが、レンズ球面の外側のエリアに入射したビーム(図5点線で示す)は、コリメート光にはならず、コリメータレンズ131から出力されても集光されずに広がっていく。外側に入射したビームは、一部はビームスプリッタ153に入射するが、集光されずに透過し、さらに一部は分岐されてモニタPD154に入力される。外側に入射したビームの残りの一部は、多波長チャネル光送信器の内部で散乱してしまう。従って、外側に入射したビームは、光ファイバ141に結合しない光となる。
【0022】
図5(b)は、ビームスプリッタ153の光学薄膜面161を、光源110側から、出力光の光軸方向に見た図である。光学薄膜面161には、ファイバ結合に寄与する、レンズ形状に固有のコリメートされた平行光ビームの最大直径に相当する領域163のみ、反射防止膜がコーティングされている。領域163以外の周囲の領域162は、コーティングなしか、または反射膜がコーティングされている。
【0023】
このような構成により、コリメータレンズ131のレンズ球面でコリメートされたビーム(図5の実線で示す)は、領域163を透過して、光合波器120に達する。従って、図1に示した従来の多波長チャネル光送信器のように、ビームスプリッタによる通過損失、分岐損失がなく、光源110の光増幅部からの光出力を光合波器120に出力することができる。また、レンズ球面の外側のエリアに入射したビーム(図5点線で示す)は、光学薄膜面161の領域163で全て反射され、モニタPD154に入力されるので、光ファイバ141に結合しない光を利用して、光源110からの光出力を正確にモニタすることができる。
【0024】
光合波器120内に集積された反射防止膜122、ビームスプリッタ153の光学薄膜面161の反射防止膜は、透過率99%である。図3に示した従来の光送信器のビームスプリッタ53は、反射率2%、透過率98%である。また、ガラスブロック121は、反射防止膜122および波長フィルタ123と、反射鏡124との間の伝播において1%の光損失がある。光合波器120の出力から光ファイバ141へのレンズ結合効率は63%である。
【0025】
実施例1の多波長チャネル光送信器を、ビームスプリッタ153とモニタPD154とを除いて組み立てた後、各波長チャネルの光源チップ111の出力が+4dBmになるように設定し、光ファイバ141に結合される光出力を測定した。光源110a-dの各波長チャネル1から4までの光出力は、それぞれ、+1.25,+1.43,+1.64,+1.87dBmであった。
【0026】
次に、領域163に反射膜がコーティングされたビームスプリッタ153とモニタPD154とを搭載した。モニタPD154側に分岐された光のパワーは-8dBmであった。これは、コリメータレンズ131のレンズ球面の外側のエリアに入射したビームが、領域163の反射膜によって反射された光のパワーである。このとき、各波長チャネル1から4までの光出力は、それぞれ、+1.21,+1.39,+1.60,+1.82dBmであった。
【0027】
比較として、図3に示した従来の多波長チャネル光送信器において、光源10a-dの各波長チャネル1から4までの光出力は、それぞれ、+1.07,+1.25,+1.47,+1.69dBmであった。このとき、モニタPD54側に分岐された光のパワーは、-11dBmであった。
【0028】
以上の結果から、従来の構造よりも各波長チャネルの出力光の損失が低く、かつモニタPD側に到達する光出力も大きい結果がえられた。このことから、実施例1の構造は、光ファイバへ結合する光出力パワーの改善に有意であることが示された。また、従来の構造より実施例1の構造の方がモニタPD側へ到達する光パワーが多いことから、散乱光となる成分の一部がモニタPDで受光され、散乱光の抑制にも効果があると確認できた。
【実施例2】
【0029】
図6に、本発明の実施例2にかかる多波長チャネル光送信器であって、各々が異なる4つ波長を多重する多波長チャネル光送信器の一例を示す。波長チャネルごとの光源210a-210dからの出力光は、コリメータレンズとビームスプリッタとが集積された光学ブロック231a-231dを介して光合波器220に入力され、合波される。光合波器220の出力は、集光レンズ232を介して波長多重光として、全ての波長チャネルが多重化され、光ファイバ241に結合される。
【0030】
光合波器220は、ガラスブロック221を含み、光源側の端面に、第1の光源210aからの出力光を透過する反射防止膜222が形成されている。ガラスブロック221の出力側の端面には、反射鏡224が形成され、第1の光源210aからの出力光を光源側に反射する。光源側の端面には、第2の光源210b-210dからの出力光を透過し、反射鏡224で反射された光を反射する波長フィルタ223b-223dが形成されている。各波長チャネルの光信号は、反射鏡224と波長フィルタ223b-dとの間を往復して、順に多重化され、出力側の端面に形成された反射防止膜225を透過して、波長多重光として出力される。
【0031】
光学ブロック231は、コリメータレンズ232と光学薄膜面234を有するビームスプリッタ233とが接合されている。光学薄膜面234は、実施例1の図5(b)に示した光学薄膜面161と同じであり、レンズ形状に固有のコリメートされたビームの最大直径と同等の領域に反射防止膜がコーティングされ、それ以外の周囲の領域は、コーティングなしか、または反射膜がコーティングされている。
【0032】
第1の光源210aおよび第2の光源210b-210dからの出力光は、ビームスプリッタ233により一部が分岐されてモニタPD254により、各々の出力光の光パワーがモニタされる。モニタPD254の出力は、光源210の制御回路に入力され、検出した電流値が一定になるように、すなわち各々の出力光の光パワーが一定になるように、光源チップ211への電流供給量を調整する。
【0033】
光合波器220内に集積された反射防止膜222、ビームスプリッタ233の光学薄膜面234の反射防止膜は、透過率99%である。図3に示した従来の光送信器のビームスプリッタ53は、反射率2%、透過率98%である。また、ガラスブロック221は、反射防止膜222および波長フィルタ223b-dと、反射鏡224との間の伝播において1%の光損失がある。光合波器220の出力から光ファイバ241へのレンズ結合効率は63%である。
【0034】
多波長チャネル光送信器として組み立てた後、各波長チャネルの光源チップ211の出力が+5dBmになるように設定し、光ファイバ241に結合される光出力を測定した。実施例2では、光源210a-dの各波長チャネル1から4までの光出力は、それぞれ、+2.21,+2.39,+2.61,+2.82dBmであった。また、モニタPD254側に分岐された光のパワーは-7.5dBmであった。図3に示した従来の光送信器において、モニタPD54側に分岐された光のパワーは、-13dBmであった。
【0035】
以上の結果から、従来の構造よりも各波長チャネルの出力光の損失が低く、かつモニタPD側に到達する光出力も大きい結果がえられた。このことから、実施例2の構造は、光ファイバへ結合する光出力パワーの改善に有意であることが示された。また、従来の構造より実施例2の構造の方がモニタPD側へ到達する光パワーが多いことから、散乱光となる成分の一部がモニタPDで受光され、散乱光の抑制にも効果があると確認できた。
【実施例3】
【0036】
図7は、本発明の実施例3にかかる多波長チャネル光送信器であって、各々が異なる4つ波長を多重する多波長チャネル光送信器の一例を示す。波長チャネルごとの光源310a-310dからの出力光は、コリメータレンズ331a-331dを介して光合波器320に入力され、合波される。光合波器320の出力は、集光レンズ332を介して波長多重光として、全ての波長チャネルが多重化され、光ファイバ341に結合される。
【0037】
光合波器320は、ガラスブロック321を含み、光源側の端面に、第1の光源310aからの出力光を透過し、一部をモニタPD354aに分岐する円形反射防止膜322が形成されている。円形反射防止膜322は、実施例1の図5(b)に示した光学薄膜面161と同様の構成を有し、レンズ形状に固有のコリメートされたビームの最大直径と同等の領域に反射防止膜がコーティングされ、それ以外の周囲の領域は、コーティングなしか、または反射膜がコーティングされている。第1の光源310aからの出力光のうち、コリメータレンズ331のレンズ球面でコリメートされたビームは、反射防止膜を透過して、ガラスブロック321に入射する。周囲の領域に入射したビームは、光合波器320からの反射光としてモニタPD354aに入力し、第1の光源310aの出力光の光パワーをモニタする。ガラスブロック321の出力側の端面には、反射鏡324が形成され、第1の光源310aからの出力光を光源側に反射する。
【0038】
第2の光源310b-310dからの出力光は、ビームスプリッタ353b-353dにより一部が分岐されてモニタPD354b-354dにより、各々の出力光の光パワーがモニタされる。ビームスプリッタ353の光学薄膜面は、実施例1の図5(b)に示した光学薄膜面161と同じであり、レンズ形状に固有のコリメートされたビームの最大直径と同等の領域に反射防止膜がコーティングされ、それ以外の周囲の領域は、コーティングなしか、または反射膜がコーティングされている。光源側の端面には、第2の光源310b-310dからの出力光を透過し、反射鏡324で反射された光を反射する波長フィルタ323b-323dが形成されている。各波長チャネルの光信号は、反射鏡324と波長フィルタ323b-dとの間を往復して、順に多重化され、出力側の端面に形成された反射防止膜325を透過して、波長多重光として出力される。
【0039】
モニタPD354a-dの出力は、光源310の制御回路に入力され、検出した電流値が一定になるように、すなわち各々の出力光の光パワーが一定になるように、光源チップ311への電流供給量を調整する。
【0040】
第1の光源からの出力光は、図3に示した従来の光送信器では、ビームスプリッタ53aと光合波器20の反射防止膜22を透過してガラスブロック21を伝播する。一方、実施例3の光送信器では、光合波器320の円形反射防止膜322のみを透過してガラスブロック321を伝播する。反射防止膜は、一方向性の透過膜であり、ガラスブロック端面での反射を抑制することができるが、反射防止膜の入射面においては、わずかながら反射する成分が発生する。従って、実施例3の光送信器によれば、この反射成分に相当する光損失を抑制することができる。第1の光源310aからの出力光は、光合波器320を透過する光路長が、他の波長チャネルの光路長と比較して最も長いため、損失が大きいが、上記の反射成分に相当する光損失を抑制することができる。
【0041】
光合波器320の円形反射防止膜322、ビームスプリッタ353の光学薄膜面の反射防止膜は、透過率99%である。図3に示した従来の光送信器のビームスプリッタ53は、反射率2%、透過率98%である。また、ガラスブロック321は、反射防止膜322および波長フィルタ323b-dと、反射鏡324との間の伝播において1%の光損失がある。光合波器320の出力から光ファイバ341へのレンズ結合効率は63%である。
【0042】
多波長チャネル光送信器として組み立てた後、各波長チャネルの光源チップ311の出力が+4dBmになるように設定し、光ファイバ341に結合される光出力を測定した。光源310の波長チャネル1の光出力は、+1.19dBmであった。また、モニタPD354a側に分岐された光のパワーを測定したところ、-10.8dBmであった。図3に示した従来の光送信器において、光源チップ50aの出力を+4dBmとしたとき、波長チャネル1の光出力パワーは、+1.07dBmであった。また、モニタPD54側に分岐された光のパワーは、-11dBmであった。
【0043】
以上の結果から、従来の構造よりも各波長チャネルの出力光の損失が低く、かつモニタPD側に到達する光出力も大きい結果がえられた。このことから、実施例2の構造は、光ファイバへ結合する光出力パワーの改善に有意であることが示された。また、従来の構造より実施例2の構造の方がモニタPD側へ到達する光パワーが多いことから、散乱光となる成分の一部がモニタPDで受光され、散乱光の抑制にも効果があると確認できた。
【0044】
実施例3では、4波長を多重する多波長チャネル光送信器であって、光合波器を透過する光路長が最も長い波長チャネルの第1の光源と、他の波長チャネルの3つの第2の光源とを例に説明した。第2の光源の数は1つ以上であれば、実施例3を適用することができる。
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図7