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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】Uボルト、施工方法及び検出装置
(51)【国際特許分類】
   F16B 35/00 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
F16B35/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022577970
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2021003352
(87)【国際公開番号】W WO2022162897
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-05-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100176728
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(72)【発明者】
【氏名】小林 大樹
(72)【発明者】
【氏名】荒武 淳
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05804737(US,A)
【文献】特開2014-112082(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0041011(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に並び、前記第1の方向と直交する第2の方向に延在する一対の軸部と、前記一対の軸部それぞれの一端を連結する橋梁部とを備えるUボルトであって、
前記一対の軸部のうちの少なくとも一方の軸部の少なくとも一部に貼り付けられ、前記軸部のひずみに応じて変色するフォトニック結晶薄膜を備え、
前記フォトニック結晶薄膜は、互いに異なる色特性を有する複数のフォトニック結晶薄膜によって構成され、
前記ひずみが第1の範囲にあるときに前記複数のフォトニック結晶薄膜それぞれの色が混色された第1の色と、前記ひずみが前記第1の範囲とは異なる第2の範囲にあるときに前記複数のフォトニック結晶薄膜それぞれの色が混色された第2の色との差は、前記ひずみが前記第1の範囲にあるときにおける、前記複数のフォトニック結晶薄膜のうちの一のフォトニック結晶薄膜の第3の色と、前記ひずみが前記第2の範囲にあるときにおける、前記一のフォトニック結晶薄膜の第4の色との差より大きい、Uボルト。
【請求項2】
請求項1に記載のUボルトにおいて、
被締結物に設けられた一対の貫通孔に前記一対の軸部が挿入され、前記Uボルトと前記被締結物の一面とで締結物を挟んで固定した状態において、前記フォトニック結晶薄膜が、前記少なくとも一方の軸部における、前記被締結物の一面と、前記軸部と前記橋梁部との境界との間に位置する、Uボルト。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のUボルトにおいて、
前記フォトニック結晶薄膜が貼り付けられている部分とは異なる部分の少なくとも一部に貼り付けられ、前記ひずみに応じて変色しない、前記軸部に目標軸力が作用するときの前記フォトニック結晶薄膜の色を有する参照薄膜をさらに備えるUボルト。
【請求項4】
検出装置を用いて、第1の方向に並び、前記第1の方向と直交する第2の方向に延在する、一対のナットによって締め付けられる一対の軸部と、前記一対の軸部それぞれの一端を連結する橋梁部と、前記一対の軸部のうちの少なくとも一方の軸部の少なくとも一部に貼り付けられて、前記軸部のひずみに応じて変色するフォトニック結晶薄膜とを備えるUボルトを被締結物に締結する施工方法であって、
前記検出装置により、
前記フォトニック結晶薄膜が貼り付けられている、前記一対の軸部のうちの少なくとも一方の軸部の少なくとも一部を撮像した観察画像を生成するステップと、
前記観察画像における、前記フォトニック結晶薄膜の像を含む観察領域の色に基づき、前記軸部のひずみを検出するステップと、
前記ひずみに基づき、前記軸部の前記ナットによる締め付けに関する締め付け情報を出力するステップと、を含む施工方法。
【請求項5】
第1の方向に並び、前記第1の方向と直交する第2の方向に延在する、一対のナットによって締め付けられる一対の軸部と、前記一対の軸部それぞれの一端を連結する橋梁部と、前記一対の軸部のうちの少なくとも一方の軸部の少なくとも一部に貼り付けられた、前記軸部のひずみに応じて変色するフォトニック結晶薄膜とを備えるUボルトの前記軸部の前記ナットによる締め付けの状態を検出する検出装置であって、
前記フォトニック結晶薄膜が貼り付けられている、前記一対の軸部のうちの少なくとも一方の軸部の少なくとも一部を撮像することによって観察画像を生成する撮像部と、
前記観察画像における、前記フォトニック結晶薄膜の像を含む観察領域の色に基づき、前記フォトニック結晶薄膜が貼り付けられた前記軸部のひずみを検出する検出部と、
前記ひずみに基づき、前記締め付けに関する締め付け情報を出力する出力部と、を備える検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、Uボルト、施工方法及び検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配管等の締結物を架台又は壁面等の被締結物に固定するために、Uボルトが用いられている。Uボルトとは、2つの直線状の軸部が橋梁部により連結されたU字形状のボルトである。Uボルトの内側に締結物を挟んだ状態で被締結物に設けられた2つの貫通孔それぞれにUボルトの軸部を挿入し、2つの軸部それぞれの端部からナットで締結することで、Uボルトと被締結物とで締結物を挟んで固定することができる。
【0003】
Uボルトで締結物を被締結物に固定する場合、Uボルトを被締結物に対して垂直に固定する必要がある。しかしながら、Uボルトは、構造上、傾いて取り付けられてしまうことが多い。Uボルトが傾いて取り付けられると、過大応力による破損の原因となり得る。
【0004】
非特許文献1には、ボルトに挿通されるワッシャーに圧電パッチを設け、圧電パッチにより計測された圧力に基づき、ボルトの締結力を計測する技術が記載されている。また、非特許文献2には、ボルトの軸部に圧電センサを埋め込み、圧電センサにより計測されたボルトの軸部のひずみに基づき、ボルトの締結力を計測する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】H. Yin, T. Wang, D. Yang, S. Liu, J. Shao, and Y. Li, “A smart washer for bolt looseness monitoring based on piezoelectric active sensing method,” Appl. Sci., vol.6, no.11, 2016
【文献】N. Shimoi, C. H. Cuadra, H. Madokoro, and M. Saijo, “Simple Smart Piezoelectric Bolt Sensor for Structural Monitoring of Bridges,” Int. J. Instrum. Sci., vol.1, no.5, pp.78-83, 2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した非特許文献1及び非特許文献2に記載の技術は、直線状のボルトの締結力を計測するための技術であり、作業者は、この技術によって、Uボルトの軸部のナットによる締め付けの状態を確認することはできない。
【0007】
上記のような問題点に鑑みてなされた本開示の目的は、作業者が、Uボルトの軸部のナットによる締め付けの状態を確認することができるUボルト、施工方法及び検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
記課題を解決するため、本開示に係るUボルトは、第1の方向に並び、前記第1の方向と直交する第2の方向に延在する一対の軸部と、前記一対の軸部それぞれの一端を連結する橋梁部とを備えるUボルトであって、前記一対の軸部のうちの少なくとも一方の軸部の少なくとも一部に貼り付けられ、前記軸部のひずみに応じて変色するフォトニック結晶薄膜を備え、前記フォトニック結晶薄膜は、互いに異なる色特性を有する複数のフォトニック結晶薄膜によって構成され、前記ひずみが第1の範囲にあるときに前記複数のフォトニック結晶薄膜それぞれの色が混色された第1の色と、前記ひずみが前記第1の範囲とは異なる第2の範囲にあるときに前記複数のフォトニック結晶薄膜それぞれの色が混色された第2の色との差は、前記ひずみが前記第1の範囲にあるときにおける、前記複数のフォトニック結晶薄膜のうちの一のフォトニック結晶薄膜の第3の色と、前記ひずみが前記第2の範囲にあるときにおける、前記一のフォトニック結晶薄膜の第4の色との差より大きい。
【0009】
また、上記課題を解決するため、本開示に係る施工方法は、検出装置を用いて、第1の方向に並び、前記第1の方向と直交する第2の方向に延在する、一対のナットによって締め付けられる一対の軸部と、前記一対の軸部それぞれの一端を連結する橋梁部と、前記一対の軸部のうちの少なくとも一方の軸部の少なくとも一部に貼り付けられて、前記軸部のひずみに応じて変色するフォトニック結晶薄膜とを備えるUボルトを被締結物に締結する施工方法であって、前記検出装置により、前記フォトニック結晶薄膜が貼り付けられている、前記一対の軸部のうちの少なくとも一方の軸部の少なくとも一部を撮像した観察画像を生成するステップと、前記観察画像における、前記フォトニック結晶薄膜の像を含む観察領域の色に基づき、前記軸部のひずみを検出するステップと、前記ひずみに基づき、前記軸部の前記ナットによる締め付けに関する締め付け情報を出力するステップと、を含む。
【0010】
また、上記課題を解決するため、本開示に係る検出装置は、第1の方向に並び、前記第1の方向と直交する第2の方向に延在する、一対のナットによって締め付けられる一対の軸部と、前記一対の軸部それぞれの一端を連結する橋梁部と、前記一対の軸部のうちの少なくとも一方の軸部の少なくとも一部に貼り付けられた、前記軸部のひずみに応じて変色するフォトニック結晶薄膜とを備えるUボルトの前記軸部の前記ナットによる締め付けの状態を検出する検出装置であって、前記フォトニック結晶薄膜が貼り付けられている、前記一対の軸部のうちの少なくとも一方の軸部の少なくとも一部を撮像することによって観察画像を生成する撮像部と、前記観察画像における、前記フォトニック結晶薄膜の像を含む観察領域の色に基づき、前記フォトニック結晶薄膜が貼り付けられた前記軸部のひずみを検出する検出部と、前記ひずみに基づき、前記締め付けに関する締め付け情報を出力する出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係るUボルト、施工方法及び検出装置によれば、作業者は、Uボルトの軸部のナットによる締め付けの状態を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係るUボルトの構成例を示す図である。
図2図1に示す軸部の、該軸部の中心軸を含むXY平面による断面図である。
図3図1に示すUボルトにより締結物を被締結物に固定した状態を示す図である。
図4】第1の実施形態に係るUボルトの他の構成例を示す図である。
図5A】軸力が均一である場合に、Uボルトに作用する引張力及び圧縮力について説明するための図である。
図5B】軸力が不均一である場合に、Uボルトに作用する引張力及び圧縮力について説明するための図である。
図6】第1の実施形態に係る検出装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図7】第1の実施形態に係る検出装置の機能構成の一例を示す図である。
図8】第1の実施形態に係るUボルトを締結するための動作の一例を示すフローチャートである。
図9】本開示の第2の実施形態に係るUボルトの構成の一例を示す図である。
図10図10に示す軸部を該軸部の中心軸を含むXY平面による断面図である。
図11】第2の実施形態に係るUボルトを締結するための動作の一例を示すフローチャートである。
図12A】第3の実施形態に係るUボルトの一例における一部の、該Uボルトの中心軸を含むXY平面による断面図である。
図12B】第3の実施形態に係るUボルトの他の例における一部の、該Uボルトの中心軸を含むXY平面による断面図である。
図13A図12Aに示すPhC薄膜の色を説明するための図である。
図13B図12Aに示すPhC薄膜の色を説明するための図である。
図13C図12Aに示すPhC薄膜の色を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
<第1の実施形態>
(Uボルトの構成)
図1は、本開示の第1の実施形態に係るUボルト10の構成例を示す図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るUボルト10は、一対の軸部11A及び軸部11Bと、橋梁部12と、フォトニック結晶薄膜(以下、「PhC薄膜」という)14とを備える。
【0016】
軸部11A及び軸部11Bは、所定の方向に並び、該所定の方向と直交する方向に延在する。以下では、図1に示すように、軸部11A及び軸部11Bが並んで配置される方向をX軸方向(第1の方向)と称し、軸部11A及び軸部11Bが延在する方向をY軸方向(第2の方向)と称し、X軸方向及びY軸方向と直交する方向をZ軸方向(第3の方向)と称する。また、以下では、軸部11A及び軸部11Bを区別しない場合には、軸部11と称する。また、以下では、軸部11A及び軸部11Bを合わせて一対の軸部11と称する。
【0017】
橋梁部12は、軸部11A及び軸部11Bそれぞれの一端を連結する。橋梁部12は、半円状に湾曲した形状とすることができ、橋梁部12が軸部11A及び軸部11Bそれぞれの一端を連結することで、Uボルト10はU字形状を形成する。軸部11A及び軸部11Bは、それぞれの他端側に、ねじ山構造を有するねじ部13を有している。
【0018】
図3に示すように、U字形状のUボルト10の内側(一対の軸部11及び橋梁部12により囲まれる空間)には、配管等の締結物1が配置される。締結物1が内側に配置された状態で、支持金物等の被締結物2に設けられた一対の貫通孔4A及び貫通孔4Bに、被締結物2の一面側からそれぞれ軸部11A及び軸部11Bが挿入される。貫通孔4A及び貫通孔4Bにそれぞれ軸部11A及び軸部11Bが挿入されることで、軸部11A及び軸部11Bそれぞれのねじ部13が被締結物2の他面側に突出する。被締結物2の他面側から突出した軸部11A及び軸部11Bそれぞれのねじ部13に、ねじ部13のねじ山構造と螺合するねじ山構造を有するナット3A及び3Bがそれぞれ締め付けられることで、軸部11はナット3によって締め付けられる。これにより、Uボルト10は被締結物2に締結されて、締結物1は、Uボルト10と被締結物2とに挟まれて固定される。以下では、ナット3A及びナット3Bを区別しない場合には、ナット3と称する。また、貫通孔4A及び貫通孔4Bを区別しない場合には、貫通孔4と称する。
【0019】
PhC薄膜14は、一対の軸部11のうちの少なくとも一方の軸部11の少なくとも一部に貼り付けられている。図1及び図2に示す例では、PhC薄膜14は、一方の軸部11Aの全部に貼り付けられているが、これに限られない。例えば、PhC薄膜14は、一方の軸部11Aの一部に貼り付けられてもよい。具体的には、PhC薄膜14は、軸部11の軸に直交する断面の外縁の一部に貼り付けられていてもよいし、軸部11の軸が延在する方向において一部に貼り付けられてもよい。
【0020】
図3に示すように、PhC薄膜14は、被締結物2に設けられた一対の貫通孔4A及び4Bに軸部11A及び軸部11Bが挿入され、Uボルト10と被締結物2の一面とに締結物1が挟まれて固定された状態において、被締結物2の一面の位置(位置a)と、軸部11と橋梁部12との境界の位置(位置b)との間に位置してもよい。
【0021】
PhC薄膜14は、フォトニック結晶(PhC)によって構成されている薄膜である。PhC薄膜14は、オパール薄膜のような粒子の集合体、又はポリマー若しくはガラスにより構成された単層薄膜若しくは多層薄膜としてもよい。PhC薄膜14は、半導体プロセス(エッチング)を利用した薄膜、マイクロ3Dプリンタにより作製された薄膜としてもよい。
【0022】
PhC薄膜14は、該PhC薄膜14のひずみに応じて変色する。また、PhC薄膜14には、該PhC薄膜14が貼り付けられた軸部11の少なくとも一部のひずみに応じたひずみが発生する。このため、PhC薄膜14は、該PhC薄膜14が貼り付けられた、軸部11の少なくとも一部のひずみに応じて変色する。PhC薄膜14は、微粒子径と粒子間距離を調整することによって生成され、PhC薄膜14のひずみと、該ひずみが発生しているPhC薄膜14の色との関係を示す色特性は一意に定められている。PhC薄膜14は、Uボルト10を構成する各部材の形状及び材料、並びに目標とする軸力(軸部11を締め付ける力(以下、「目標軸力」という))に応じて、微粒子径及び粒子間距離を調整することによって生成されてもよい。また、PhC薄膜14は、設計思想(弾性領域内での締め付け、塑性領域での締め付け)に応じて、微粒子径及び粒子間距離を調整することによって生成されてもよい。これにより、作業者は、PhC薄膜14の色に基づいて、Uボルト10におけるPhC薄膜14が貼り付けられた部分のひずみを認識することができる。したがって、作業者は、Uボルト10に作用する目標軸力に対応するひずみが発生するように軸部11をナット3によって締め付けることができ、これにより、Uボルト10を適切に締結することができる。
【0023】
PhC薄膜14は、塗布されることによって貼り付けられてもよいし、接着されることによって貼り付けられてもよいし、他の任意の方法によって貼り付けられてもよい。なお、図1におけるPhC薄膜14の縮尺は、実際の縮尺と同じとは限らない。図2図4についても同様である。
【0024】
なお、図1及び図3に示す例においては、軸部11Aにのみ、PhC薄膜14が貼り付けられる構成を説明したが、本開示はこれに限られるものではない。例えば、軸部11Bにのみ、PhC薄膜14が貼り付けられてもよい。また、例えば、図4に示すように、軸部11A及び軸部11Bの両方に、PhC薄膜14が貼り付けられてもよい。図4に示す例では、軸部11A及び軸部11Bの両方の全体にPhC薄膜14が貼り付けられている。また、軸部11A及び軸部11Bの両方のそれぞれ一部にPhC薄膜14が貼り付けられてもよく、このような構成において、軸部11Aに貼り付けられているPhC薄膜14と、軸部11Bに貼り付けられているPhC薄膜14とは同じ高さに(Y軸方向に同じ位置に)位置していることが好ましい。これにより、軸部11A及び軸部11Bそれぞれのひずみ、すなわち軸部11A及び軸部11Bそれぞれに作用する軸力の違いを正確に計測することができる。
【0025】
図5A及び図5Bは、図4に示すUボルト10が被締結物2に締結された状態を示す図である。図5Aは、軸部11A及び軸部11Bに作用する軸力が均一である場合に、Uボルト10に作用する引張力を示す図である。図5Bは、軸部11A及び軸部11Bに作用する軸力が不均一である場合に、Uボルト10に作用する引張力及び圧縮力を示す図である。
【0026】
図5Aに示すように、軸部11A及び軸部11Bが被締結物2に均一に締結されている場合、軸部11A及び軸部11Bのそれぞれ外側及び内側に同程度の大きさの引張力FAO、FAI、FBO、及びFBIが発生している。このため、軸部11A及び軸部11Bそれぞれに作用する軸力は略均一である。一方、図5Bに示すように、軸部11A及び軸部11Bが被締結物2に不均一に締結されている場合、軸部11Aの外側と軸部11Bの内側にそれぞれ圧縮力F’AO及びF’BIが発生し、軸部11Aの内側と軸部11Bの外側にそれぞれ引張力FAI及びFBOが発生している。このため、軸部11A及び軸部11Bに作用する軸力は略均一ではない。締結物1が強固に固定されるには、軸部11A及び軸部11Bに作用する軸力を略均一にする必要がある。このため、上述したように、軸部11A及び軸部11Bの両方にPhC薄膜14が貼り付けられることによって、作業者は、軸部11Aに塗布されたPhC薄膜14の色と、軸部11Bに塗布されたPhC薄膜14の色とに基づいて、被締結物2に対するUボルト10の軸部11A及び軸部11Bに作用する軸力が均一であるか否かを確認することができる。これによって、作業者は、軸部11A及び軸部11Bに作用する軸力が均一であるように軸部11をナット3によって締め付けることによって、適切にUボルト10を被締結物2に締結させることができる。
【0027】
(検出装置のハードウェア構成)
図6は、本開示の一実施形態に係る検出装置20のハードウェア構成の一例を示す図である。図6においては、検出装置20がプログラム命令を実行可能なコンピュータにより構成される場合の、検出装置20のハードウェア構成の一例を示している。ここで、コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、ワークステーション、PC(Personal Computer)、電子ノートパッド、スマートフォン等であってもよい。プログラム命令は、必要なタスクを実行するためのプログラムコード、コードセグメント等であってもよい。検出装置20がスマートフォンである場合、作業者は、Uボルト10の設置又は点検において、Uボルト10を被締結物2に締結する場所に検出装置20を容易に携行することができ、利便性が向上される。
【0028】
図6に示すように、検出装置20は、プロセッサ110、ROM(Read Only Memory)120、RAM(Random Access Memory)130、ストレージ140、入力部150、表示部160及び通信インタフェース(I/F)170を有する。各構成は、バス190を介して相対に通信可能に接続されている。プロセッサ110は、具体的にはCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、SoC(System on a Chip)等であり、同種又は異種の複数のプロセッサにより構成されてもよい。
【0029】
プロセッサ110は、各構成の制御、及び各種の演算処理を実行する。すなわち、プロセッサ110は、ROM120又はストレージ140からプログラムを読み出し、RAM130を作業領域としてプログラムを実行する。プロセッサ110は、ROM120ストレージ140に記憶されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM120又はストレージ140には、本開示に係るプログラムが格納されている。
【0030】
プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記憶媒体に記憶された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0031】
ROM120は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM130は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ140は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム及び各種データを格納する。
【0032】
入力部150は、マウス等のポインティングデバイス、及びキーボードを含み、各種の入力を行うために使用される。
【0033】
表示部160は、例えば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示部160は、タッチパネル方式を採用して、入力部150として機能してもよい。
【0034】
通信インタフェース170は、外部装置(図示しない)等の他の機器と通信するためのインタフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0035】
(検出装置の機能構成)
次に、本開示に係る検出装置20の機能構成について、図7を参照して説明する。
【0036】
図7は、本開示に係る検出装置20の機能構成の一例を示す図である。本開示に係る検出装置20は、Uボルト10の軸部11のナット3による締め付けの状態を検出し、締め付けに関する締め付け情報を出力する。
【0037】
図7に示すように、本開示に係る検出装置20は、撮像部21と、色特性記憶部22と、検出部23と、検出結果記憶部24と、出力部25とを備える。撮像部21は、カメラによって構成される。色特性記憶部22及び検出結果記憶部24は、例えば、RAM130又はストレージ140により構成される。検出部23は、制御部(コントローラ)を構成する。制御部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の専用のハードウェアによって構成されてもよいし、プロセッサによって構成されてもよいし、双方を含んで構成されてもよい。出力部25は、例えば、表示部160を含んでよい。
【0038】
撮像部21は、PhC薄膜14が貼り付けられている、一対の軸部11のうちの少なくとも一方の軸部11の少なくとも一部を撮像することによって観察画像を生成する。以降において、観察画像における、PhC薄膜14が貼り付けられている、一対の軸部11のうちの少なくとも一方の軸部11の少なくとも一部の像が示されている領域を観察領域という。
【0039】
色特性記憶部22は、PhC薄膜14のひずみεと、該ひずみεが発生しているPhC薄膜14の色との関係を示す色特性を記憶している。色特性記憶部22に記憶されている色は、例えば、RGB値で示されている。
【0040】
検出部23は、撮像部21によって生成された観察画像における観察領域に基づき、PhC薄膜14が貼り付けられた、軸部11の少なくとも一部のひずみεを検出する。具体的には、検出部23は、観察画像における観察領域を構成する画素の代表値を検出する。代表値は、例えば、観察領域を構成する画素のRGB値に関する値であり、例えば、R値、G値、及びB値それぞれの平均値、中央値、最大値、又は最小値とすることができる。そして、検出部23は、RGB値で示される代表値に対応して、色特性記憶部22に記憶されているひずみεを検出する。
【0041】
また、検出部23は、ひずみεと、目標ひずみεとの差である目標差Δεを検出することができる。この場合、検出部23は、さらに、目標差Δεの絶対値が所定の閾値未満であるか否かを検出することができる。目標ひずみεは、上述した目標軸力が作用している軸部11において発生するひずみεである。
【0042】
両方の軸部11A及び11BにPhC薄膜14が貼り付けられ、撮像部21によって、両方の軸部11A及び11Bそれぞれの観察画像が生成された場合、検出部23は、両方の軸部11A及び11Bの観察領域それぞれを構成する画素の色に基づく第1の代表値及び第2の代表値を検出する。そして、検出部23は、第1の代表値及び第2の代表値に基づいて、両方の軸部11A及び軸部11Bそれぞれのひずみε及びひずみεを検出することができる。
【0043】
この場合、検出部23は、ひずみε及びひずみεそれぞれと、目標ひずみεとの差である目標差Δε1A及びΔε1Bを目標差Δεとして検出することができる。この場合、検出部23は、さらに、目標差Δε1A及びΔε1Bの絶対値が所定の閾値未満であるか否かを検出することができる。
【0044】
さらに、検出部23は、ひずみεとひずみεとの差である相対差Δεを検出することができる。この場合、検出部23は、さらに、相対差Δεの絶対値が所定の閾値未満であるか否かを検出することができる。
【0045】
締め付け情報は、ひずみε、目標差Δε、目標差指標、相対差Δε、相対差指標、の少なくとも1つ以上を含むことができる。目標差指標は、目標差Δεの絶対値が所定の閾値未満であるか否かを示す情報である。相対差指標は、相対差Δεの絶対値が所定の閾値未満であるか否かを示す情報である。
【0046】
また、検出部23によって、目標差Δεの絶対値が所定の閾値未満であると判定された場合、締め付け情報は、目標差指標に代えてUボルト10の締結が完了したことを示す情報を含んでもよい。また、検出部23によって、目標差Δεの絶対値が所定の閾値以上であると判定された場合、締め付け情報は、目標差指標に代えてUボルト10の締結が完了していないことを示す情報を含んでもよい。
【0047】
また、検出部23によって、相対差Δεの絶対値が所定の閾値未満であると判定された場合、締め付け情報は、相対差指標に代えて軸部11A及び軸部11Bが略均等に締め付けられていることを示す情報を含んでもよい。また、検出部23によって、相対差Δεの絶対値が所定の閾値以上であると判定された場合、締め付け情報は、相対差指標に代えて軸部11A及び軸部11Bが略均等に締め付けられていないことを示す情報を含んでもよい。
【0048】
検出結果記憶部24は、検出部23によって検出された締め付け情報を記憶する。こうすることで、例えば、正常な施工(Uボルト10の締結)が完了したことの証跡を残すことができる。
【0049】
出力部25は、検出部23により検出されたひずみεに基づく、Uボルト10の軸部11のナット3による締め付けに関する締め付け情報を出力する。
【0050】
(Uボルト取り付けの施工方法)
ここで、第1の実施形態に係るUボルト10を締結するための動作について、図8を参照して説明する。図8は、第1の実施形態に係るUボルト10を締結するための動作の一例を示すフローチャートである。図8を参照して説明するUボルト10を締結するための動作は第1の実施形態に係るUボルト10を締結するための施工方法に相当する。
【0051】
ステップS11において、作業者が、Uボルト10の軸部11A及び軸部11Bをそれぞれ貫通孔4A及び貫通孔4Bに貫通させる。
【0052】
ステップS12において、作業者が、軸部11A及び軸部11Bをそれぞれナット3A及びナット3Bによって締め付ける。
【0053】
ステップS13において、検出装置20の撮像部21が、PhC薄膜14が貼り付けられている、一対の軸部11のうちの少なくとも一方の軸部11の少なくとも一部を撮像した観察画像を生成する。
【0054】
ステップS14において、検出部23が、撮像部21によって生成された観察画像における観察領域に基づき、PhC薄膜14が貼り付けられた軸部11A及び軸部11Bの少なくとも一方のひずみεを検出する。具体的には、検出部23は、観察画像における観察領域を構成する画素の色に基づく代表値を検出する。そして、検出部23は、代表値に対応して、色特性記憶部22に記憶されているひずみεを検出する。検出部23は、ひずみεに基づいて目標差Δεを検出してもよい。検出部23は、目標差Δεの絶対値が所定の閾値未満であるか否かを判定してもよい。
【0055】
また、ステップS14において、検出部23が、軸部11A及び軸部11Bの一方のひずみεを検出してもよい。検出部23が、軸部11A及び軸部11Bの両方のひずみεを検出してもよい。検出部23は、軸部11A及び軸部11Bの両方のひずみεを検出する場合、相対差Δεを検出してもよい。検出部23は、相対差Δεの絶対値が所定の閾値未満であるか否かを判定してもよい。
【0056】
ステップS15において、出力部25は、検出部23によって検出された締め付け情報を出力する。
【0057】
ステップS16において、作業者が、締め付け情報に基づいて締結処理が完了したか否かを判定する。
【0058】
このとき、ステップS15で出力された締め付け情報に含まれるひずみεが目標ひずみεから所定の範囲である場合、作業者が、締結処理が完了したと判定してもよい。この場合、ひずみεが目標ひずみεから所定の範囲でない場合、作業者が、締結処理が完了していないと判定する。
【0059】
ステップS15で出力された締め付け情報に含まれる目標差Δεの絶対値が所定の閾値未満である場合、作業者が、締結処理が完了したと判定してもよい。この場合、目標差Δεの絶対値が所定の閾値以上である場合、作業者が、締結処理が完了していないと判定してもよい。
【0060】
ステップS15で出力された締め付け情報に含まれる目標差指標が、目標差Δεの絶対値が所定の閾値未満であることを示している場合、作業者が、締結処理を完了すると判定してもよい。この場合、目標差指標が、目標差Δεの絶対値が所定の閾値以上であることを示している場合、作業者が、締結処理を完了しないと判定してもよい。
【0061】
ステップS16で、締結処理が完了したと判定された場合、本締結処理を終了する。ステップS16で、締結処理が完了していないと判定された場合、ステップS17において、作業者は、締め付け情報に基づいて、軸部11の締め付けを変更する。
【0062】
ステップS17で軸部11の締め付けが変更されると、ステップS13に戻って処理を繰り返す。ステップS13~ステップS17の処理の繰り返しにおいて、作業者は、締め付け情報に基づいて、軸部11A及び軸部11Bの一方の締め付けを変更してもよいし、軸部11A及び軸部11Bの両方の締め付けを変更してもよい。また、作業者は、締め付け情報に含まれる相対差Δεに基づいて、例えば、相対差Δεが小さくなるように軸部11A又は軸部11Bの締め付けを変更してから、相対差Δεが所定の閾値未満となっている状態を維持しつつ目標差Δεが小さくなるように軸部11A及び軸部11の締め付けをさらに変更してもよい。
【0063】
上述したように、第1の実施形態によれば、Uボルト10は、一対の軸部11のうちの少なくとも一方の軸部11の少なくとも一部に貼り付けられ、軸部11のひずみに応じて変色するPhC薄膜14を備える。これにより、軸部11のひずみεが目標ひずみεとなるように、すなわち軸部11に目標軸力が作用するように、軸部11をナット3によって締め付けることができる。したがって、作業者は、Uボルト10を被締結物2に高い精度で締結することでき、これに伴い、強固に締結物1を固定することができる。
【0064】
また、第1の実施形態によれば、被締結物2に設けられた一対の貫通孔4A及び貫通孔4Bに一対の軸部11A及び11Bが挿入され、Uボルト10と被締結物2の一面とで締結物1を挟んで固定した状態において、PhC薄膜14が、少なくとも一方の軸部11における、被締結物2の一面と、軸部11と橋梁部12との境界との間に位置する。これにより、作業者は、Uボルト10の被締結物2への取り付けにおいて、締結物1を強固に固定するために必要となる軸部11に作用する軸力に応じたひずみを認識することができ、強固に締結物1を固定することができる。
【0065】
さらに、軸部11A及び軸部11Bの両方にPhC薄膜14が貼り付けられた構成においては、PhC薄膜14が、両方の軸部11A及び軸部11Bそれぞれにおける、被締結物2の一面と、軸部11と橋梁部12との境界との間に位置する。これにより、作業者は、Uボルト10の被締結物2への取り付けにおいて、軸部11A及び軸部11Bそれぞれに貼り付けられたPhC薄膜14の色の差異が大きくならないように作業を行うことができる。したがって、作業者は、軸部11をナット3によって締め付けることができ、これにより、Uボルト10を被締結物2に適切に締結することができる。
【0066】
また、第1の実施形態によれば、検出装置20は、目標差Δεに基づく締め付け情報を出力する。このため、作業者は、Uボルト10に発生するひずみεが目標ひずみεとなるように、すなわちUボルト10に目標軸力が作用するように、軸部11をナット3によって締め付けることができる。したがって、作業者は、Uボルト10を被締結物2に高い精度で締結することでき、これに伴い、強固に締結物1を固定することができる。
【0067】
また、第1の実施形態によれば、検出装置20は、相対差Δεに基づく締め付け情報を出力する。Uボルト10の被締結物2への締結においては、締結完了時だけでなく、締結完了までの作業途中においても、軸部11Aのひずみεと軸部11Bのひずみεとが同程度となっている状態が維持される必要がある。作業者は、ひずみεとひずみεを目標ひずみεとするだけではなく、作業途中において、ひずみεとひずみεとの差異である相対差Δεが小さくなるようにする必要がある。したがって、上述したように、検出装置20が相対差Δεに基づく締め付け情報を出力することによって、作業者は、締結の作業途中において、相対差Δεを認識することができ、これに基づいて軸部11をナット3によって締め付けることができる。したがって、作業者は、Uボルト10を被締結物2に高い精度で締結することでき、これに伴い、強固に締結物1を固定することができる。
【0068】
<第2の実施形態>
(Uボルトの構成)
図9は、本開示の第2の実施形態に係るUボルト10Aの構成の一例を示す図である。また、図10は、図9に示すUボルト10Aの中心軸を含むXY平面よる断面図である。図9及び図10において、図4と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0069】
本実施形態に係るUボルト10Aは、第1の実施形態に係るUボルト10と比較して、参照薄膜15をさらに備える。なお、図9及び図10におけるPhC薄膜14及び参照薄膜15の縮尺は、実際の縮尺と同じとは限らない。
【0070】
参照薄膜15は、Uボルト10Aにおける、PhC薄膜14が貼り付けられている部分とは異なる部分の少なくとも一部に貼り付けられている、ひずみに応じて変色しない、軸部11に目標軸力が作用するときのPhC薄膜14の色を有する塗膜である。
【0071】
図9及び図10に示す例では、参照薄膜15は、PhC薄膜14が貼り付けられている部分に隣接している、橋梁部12の部分に貼り付けられている。これにより、Uボルト10Aを締結する作業者は視線を動かすことなく、PhC薄膜14及び参照薄膜15の色を容易に視認することができる。参照薄膜15は、PhC薄膜14と同様に、塗布されることによって貼り付けられてもよいし、接着されることによって貼り付けられてもよいし、他の任意の方法によって貼り付けられてもよい。
【0072】
図9及び図10に示す例では、参照薄膜15は、PhC薄膜14に隣接して貼り付けられているが、これに限られず、PhC薄膜14に隣接せずに貼り付けられてもよい。また、図9及び図10に示す例では、参照薄膜15は、Uボルト10Aの軸に直交する断面の外縁の全体にわたって貼り付けられているが、外縁の一部に貼り付けられてもよい。また、図9及び図10に示す例では、PhC薄膜14が軸部11の全体に貼り付けられ、参照薄膜15が橋梁部12の一部に貼り付けられているが、この限りではない。PhC薄膜14が軸部11の一部に貼り付けられ、参照薄膜15が、PhC薄膜14が貼り付けられていない部分の軸部11に貼り付けられてもよい。
【0073】
(Uボルト取り付けの施工方法)
ここで、第2の実施形態に係るUボルト10Aを締結するための動作について、図11を参照して説明する。図11は、第2の実施形態に係るUボルト10Aを締結するための動作の一例を示すフローチャートである。図11を参照して説明するUボルト10Aを締結するための動作は第2の実施形態に係るUボルト10Aを締結するための施工方法に相当する。
【0074】
ステップS21において、作業者が、Uボルト10Aの軸部11A及び軸部11をそれぞれ貫通孔4A及び貫通孔4Bに貫通させる。
【0075】
ステップS22において、作業者が、軸部11A及び軸部11Bをそれぞれナット3A及びナット3Bによって締め付ける。
【0076】
ステップS23において、作業者が、PhC薄膜14の色を視認する。
【0077】
ステップS24において、作業者が、PhC薄膜14の色に基づいて、締結処理が完了したか否かを判定する。具体的には、作業者が、PhC薄膜14の色と参照薄膜15の色とが略同じであるか否かを判定する。そして、作業者が、PhC薄膜14の色と参照薄膜15の色とが略同じであると判定した場合、締結処理を完了すると判定する。作業者が、PhC薄膜14の色と参照薄膜15の色とが略同じでないと判定した場合、締結処理を完了しない。
【0078】
ステップS24で、締結処理を完了すると判定された場合、本締結処理を終了する。ステップS24で、締結処理を完了しないと判定された場合、ステップS25において、作業者は、締め付け情報に基づいて、軸部11の締め付けを変更する。このとき、作業者は、PhC薄膜14の色と参照薄膜15の色とが類似している度合いに基づいて、軸部11A及び軸部11Bの一方の締め付けを変更してもよいし、軸部11A及び軸部11Bの両方の締め付けを変更してもよい。
【0079】
ステップS25で軸部11の締め付けが変更されると、ステップS23に戻って処理を繰り返す。ステップS23~ステップS25の処理の繰り返しにおいて、作業者は、軸部11A及び軸部11Bそれぞれに貼り付けられたPhC薄膜14の色が類似している度合いが高くなるように軸部11A又は軸部11Bの締め付けを変更してから、PhC薄膜14の色と参照薄膜15の色とが類似している度合いが高くなるように軸部11A及び軸部11の締め付けをさらに変更してもよい。
【0080】
上述したように、本実施形態によれば、Uボルト10Aは、PhC薄膜14が貼り付けられている部分とは異なる部分の少なくとも一部に貼り付けられ、ひずみに応じて変色しない参照薄膜15をさらに備える。Uボルト10Aが参照薄膜15を備えない構成においては、作業者は、PhC薄膜14の色を自身が記憶している、目標ひずみεに対応する色と比較することによって作業を行う。そのため、軸部11にひずみεを目標ひずみεとするようにUボルト10Aを被締結物2に締結することが困難であることがある。これに対して、本実施形態によれば、作業者は、PhC薄膜14の色が、目標ひずみεに対応する色と略同じとなるようにUボルト10Aを締結するにあたって、PhC薄膜14の色と、目標ひずみεに対応する色である参照薄膜15の色とを比較することによって、軸部11に目標ひずみεが発生するように、軸部11をナット3によって締め付けることができる。したがって、作業者は、Uボルト10Aを被締結物2に高い精度で締結することでき、これに伴い、強固に締結物1を固定することができる。
【0081】
また、本実施形態によれば、作業者は、目視によりUボルト10Aのひずみを適切に認識することができるため、施工及び点検において、Uボルト10Aが適切に締結されているかを簡易に確認することができる。特に、高所のような、触診によってUボルト10Aのひずみεを確認することが困難である環境において、作業者は、該環境へアプローチする手間を大きく省くことが可能となる。
【0082】
<第3の実施形態>
(Uボルトの構成)
図12A及び図12Bは、本開示の第3の実施形態に係るUボルト10Bの一部の例を示す、断面図である。また、図12A及び図12Bにおいて、図4と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0083】
本実施形態おいて、Uボルト10Bが備えるPhC薄膜14は、第1の実施形態に係るUボルト10が備えるPhC薄膜14とは異なり、図12A及び図12Bに示すように、複数のPhC薄膜14A及びPhC薄膜14Bによって構成される。一例においては、図12Aに示すように、PhC薄膜14A及びPhC薄膜14Bは、Uボルト10Bの軸部11の表面に、軸部11の径方向に積層される。他の例においては、図12Bに示すように、PhC薄膜14A及びPhC薄膜14Bは、Uボルト10Bの軸部11の表面に、軸部11の軸方向に交互に配置される。なお、図12A及び図12BにおけるPhC薄膜14A及びPhC薄膜14Bの縮尺は、実際の縮尺と同じとは限らない。特に、図12BにおけるPhC薄膜14A及びPhC薄膜14Bは、PhC薄膜14A及びPhC薄膜14Bの色が混色されて人間の目に視認される程度の大きさである。
【0084】
PhC薄膜14は、互いに異なる色特性を有する複数のPhC薄膜14A及びPhC薄膜14Bによって構成されている。ひずみεが第1の範囲にあるときに複数のPhC薄膜14A及びPhC薄膜14Bそれぞれの色が混色された第1の色と、ひずみεが第2の範囲にあるときに複数のPhC薄膜14A及びPhC薄膜14Bそれぞれの色が混色された第2の色との差は、ひずみεが第1の範囲にあるときの、PhC薄膜14Aの第3の色と、ひずみεが第2の範囲にあるときの、PhC薄膜14Aの第4の色との差より大きい。ひずみεが第2の範囲にあるときの色と、ひずみεが第3の範囲にあるときの色との差(色差)についても同様とすることができる。
【0085】
例えば、ひずみεが第1の範囲にあるとき、複数のPhC薄膜14A及びPhC薄膜14Bは、互いに異なる可視光を反射することによって発色してもよい。ひずみεが第1の範囲とは異なる第2の範囲にあるとき、PhC薄膜14Aは可視光を反射することによって発色し、PhC薄膜14Bは可視光領域外の波長を有する光を反射することによって発色しなくてもよい。
【0086】
図13A図13Cを参照して、PhC薄膜14A及びPhC薄膜14Bを含むPhC薄膜14の色についてさらに詳細に説明する。
【0087】
図13Aの破線に示すように、PhC薄膜14Aは、軸力が発生していないとき(ひずみεが第1の範囲にあるとき)に640~770nmの波長を有する光を反射する。すなわち、PhC薄膜14Aは、軸力が発生していないときに赤色となる。また、図13Bの破線に示すように、PhC薄膜14Aは、軸力が0より大きく中間軸力未満であるとき(ひずみεが第2の範囲にあるとき)に590~640nmの波長を有する光を反射する。すなわち、PhC薄膜14Aは、軸力が0より大きく中間軸力未満であるときに橙色となる。なお、中間軸力とは、Uボルト10Bの締結が完了した状態において発生している目標軸力より小さい軸力であって、例えば、目標軸力の50%の大きさの軸力とすることができる。また、図13Cの破線に示すように、PhC薄膜14Aは、軸力が中間軸力以上であり目標軸力未満であるとき(ひずみεが第3の範囲にあるとき)に490~550nmの波長を有する光を反射する。すなわち、PhC薄膜14Aは、軸力が中間軸力以上であり目標軸力未満であるときに緑色となる。
【0088】
また、図13Aの実線に示すように、PhC薄膜14Bは、軸力が発生していないときに490~550nmの波長を有する光を反射する。すなわち、PhC薄膜14Bは、軸力が発生していないときに緑色となる。また、図13Bの実線に示すように、PhC薄膜14Aは、軸力が0より大きく中間軸力未満であるときに315~400nmの波長を有する光を反射する。すなわち、PhC薄膜14Bは、軸力が0より大きく中間軸力未満であるときに人間によって認識することのできる色を発生させない。また、図13Cの実線に示すように、PhC薄膜14Bは、軸力が中間軸力以上であり目標軸力未満であるときに280~315nmの波長を有する光を反射する。すなわち、PhC薄膜14Bは、軸力が中間軸力以上であり目標軸力未満であるときに人間によって認識することのできる色を発生させない。
【0089】
したがって、PhC薄膜14A及びPhC薄膜14Bによって構成されるPhC薄膜14は、軸力が発生していないとき(ひずみεが第1の範囲にあるとき)に、人間の目には赤色と緑色との混色である紫色に視認される。また、PhC薄膜14は、軸力が0より大きく中間軸力未満であるとき(ひずみεが第2の範囲にあるとき)に、人間の目には橙色に視認される。PhC薄膜14は、軸力が中間軸力以上であり目標軸力未満であるときに、人間の目には緑色に視認される。
【0090】
例えば、PhC薄膜14が1種類のPhC薄膜14Aのみによって構成されている場合、軸力が高くなるにつれて、PhC薄膜14が反射する光の波長は短くなる。すなわち、PhC薄膜14の色は、赤色、橙色、緑色の順に変化する。この場合、人間の目には赤色と橙色とが区別しにくいことがある。これに対して、本実施形態のように、PhC薄膜14が2つのPhC薄膜14A及びPhC薄膜14Aによって構成される場合、PhC薄膜14の色は、上述したように、紫色、橙色、緑色の順に変化する。人間の目には、紫色と橙色とは、赤色と橙色とに比べて区別しやすいため、作業者は軸力の変化を認識しやすくなる。
【0091】
なお、上述した例では、PhC薄膜14は、2つのPhC薄膜14A及びPhC薄膜14Bによって構成されているが、これに限られず、3つ以上の互いに異なる色特性を有するPhC薄膜14によって構成されてもよい。
【0092】
(検出装置のハードウェア構成)
第3の実施形態に係る検出装置20のハードウェア構成は、第1の実施形態に係る検出装置20のハードウェア構成と同様である。
【0093】
(検出装置の機能構成)
第3の実施形態に係る検出装置20の機能構成は、第1の実施形態に係る検出装置20の機能構成と同様である。
【0094】
(Uボルト取り付けの施工方法)
第3の実施形態に係るUボルト10Bの取り付けの施工方法は、第1の実施形態に係るUボルト10の取り付けの施工方法と同様である。
【0095】
上述したように、第3の実施形態によれば、PhC薄膜14は、互いに異なる色特性を有する複数のPhC薄膜14によって構成される。そして、ひずみεが第1の範囲にあるときに複数のPhC薄膜14それぞれの色が混色された第1の色と、ひずみεが第2の範囲にあるときに複数のPhC薄膜14それぞれの色が混色された第2の色との差は、ひずみεが第1の範囲にあるときの、複数のPhC薄膜14のうちの一のPhC薄膜14の第3の色と、ひずみεが第2の範囲にあるときの、一のPhC薄膜14の第4の色との差より大きい。これにより、作業者は、ひずみεに応じたPhC薄膜14の色を明確に識別することができ、軸部11をナット3に適切に締め付けることができる。したがって、作業者は、Uボルト10Bを被締結物2に高い精度で締結することでき、これに伴い、強固に締結物1を固定することができる。
【0096】
また、第3の実施形態によれば、Uボルト10Bは、上述したようなPhC薄膜14を備えるため、検出装置20は、軸部11のひずみεをより高い精度で計測することができる。これにより、作業者は、検出装置20によって、高い精度で計測されたひずみεに基づいて出力された締め付け情報を用いて、軸部11をナット3によって締め付けることができる。したがって、作業者は、Uボルト10Bを被締結物2に高い精度で締結することでき、これに伴い、強固に締結物1を固定することができる。
【0097】
<プログラム>
上述した検出装置20の各部として機能させるためにコンピュータを好適に用いることが可能である。そのようなコンピュータは、検出装置20の各部の機能を実現する処理内容を記述したプログラムを該コンピュータの記憶部に格納しておき、該コンピュータのプロセッサによってこのプログラムを読み出して実行させることで実現することができる。すなわち、当該プログラムは、コンピュータを、上述した検出装置20として機能させることができる。また、当該プログラムを非一時的記憶媒体に記憶することも可能である。また、当該プログラムを、ネットワークを介して提供することも可能である。
【0098】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本開示の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形又は変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 締結物
2 被締結物
3,3A,3B ナット
4,4A,4B 貫通孔
10,10A,10B Uボルト
11,11A,11B 軸部
12 橋梁部
13 ねじ部
14,14A,14B フォトニック結晶薄膜(PhC薄膜)
20 検出装置
21 撮像部
22 色特性記憶部
23 検出部
24 検出結果記憶部
25 出力部
110 プロセッサ
120 ROM
130 RAM
140 ストレージ
150 入力部
160 表示部
170 通信I/F
190 バス
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C