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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】光源装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/022 20210101AFI20241107BHJP
   H01S 5/02208 20210101ALI20241107BHJP
   H01S 5/02218 20210101ALI20241107BHJP
   H01S 5/02315 20210101ALI20241107BHJP
   H01S 5/0239 20210101ALI20241107BHJP
   H01S 5/02255 20210101ALI20241107BHJP
   H01S 5/02345 20210101ALI20241107BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20241107BHJP
   H01L 23/08 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
H01S5/022
H01S5/02208
H01S5/02218
H01S5/02315
H01S5/0239
H01S5/02255
H01S5/02345
H01L23/02 F
H01L23/02 J
H01L23/08 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023176202
(22)【出願日】2023-10-11
(62)【分割の表示】P 2019179360の分割
【原出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2023178354
(43)【公開日】2023-12-14
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】宮田 忠明
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/149573(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0166611(US,A1)
【文献】特開2007-073711(JP,A)
【文献】特開2015-002414(JP,A)
【文献】特開2017-016870(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108701956(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザダイオードと、
前記レーザダイオードを直接または間接的に支持する主面を有する基板と、
前記基板に固定され、前記レーザダイオードを覆うキャップと、
を備え、
前記キャップは、前記レーザダイオードの周りを囲む、内壁面と外壁面とを持つ壁部分と、前記壁部分の上部に位置する平板部分とを有し、
前記壁部分は、正面壁と、前記正面壁に対向する背面壁と、前記正面壁および前記背面壁を繋ぐ2つの側面壁を含み、
前記正面壁における内壁面は、前記レーザダイオードから出射されるレーザ光の光入射面を有し、
前記正面壁における外壁面は、前記レーザダイオードから出射される前記レーザ光の光出射面を有し、
前記平板部分のうち、前記光出射面に繋がる面は、前記光出射面と同じ平面上に位置し、
前記光入射面および前記光出射面の両方は、前記レーザ光の光軸に対して垂直であり、
前記2つの側面壁の一方における前記内壁面は、第1傾斜面を有し、
前記第1傾斜面は、前記基板の前記主面から離れるにつれて、前記レーザダイオードに向かって傾斜している、光源装置。
【請求項2】
前記2つの側面壁の他方における前記内壁面は、第2傾斜面を有し、
前記第2傾斜面は、前記基板の前記主面から離れるにつれて、前記レーザダイオードに向かって傾斜している、請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記背面壁および前記2つの側面壁における前記外壁面は、前記基板における前記主面に対して垂直である、請求項1または2に記載の光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザダイオードを備える光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザダイオードを備える光源装置は、プロジェクタ、照明器具、およびヘッドマウントディスプレイなどの様々な用途に利用され得る。光源装置内でのレーザダイオードの配置方向、および、光源装置から出射されるレーザ光の出射方向は、用途によって異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/149573号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている光源装置において、壁部分におけるレーザ光の入射面および出射面は、レーザ光の光軸に対して垂直ではない。このため、レーザ光は入射面および出射面で屈折され、光源装置から出射されるレーザ光は、主面に対して平行ではない。
【0005】
本開示の実施形態は、基板における主面に対してほぼ平行にレーザ光を出射する光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の光源装置は、一実施形態において、レーザダイオードと、前記レーザダイオードを直接または間接的に支持する主面を有する基板と、前記基板に固定され、前記レーザダイオードを覆うキャップと、を備え、前記キャップは、前記レーザダイオードの周りを囲む、内壁面と外壁面とを持つ壁部分を有し、前記内壁面は、前記レーザダイオードから出射されるレーザ光の光入射面および第1傾斜面を少なくとも有し、前記外壁面は、前記レーザダイオードから出射されるレーザ光の光出射面を有し、前記光入射面および前記光出射面の少なくとも一方は、前記レーザ光の光軸に対して垂直であり、前記第1傾斜面は、前記レーザダイオードに向かって傾斜している。
【発明の効果】
【0007】
本開示の実施形態によれば、基板における主面に対してほぼ平行にレーザ光を出射する光源装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A図1Aは、本開示の実施形態1における光源装置100の構成例を模式的に示す斜視図である。
図1B図1Bは、図1Aの構成のXZ平面における断面図である。
図1C図1Cは、図1Aの構成のYZ平面における断面図である。
図1D図1Dは、図1Aの構成のXY平面における断面図である。
図2図2は、実施形態1の第1変形例における光源装置110の構成例を模式的に示すYZ平面における断面図である。
図3図3は、実施形態1の第2変形例における光源装置120の構成例を模式的に示すYZ平面における断面図である。
図4図4は、実施形態1の第3変形例における光源装置130の構成例を模式的に示すYZ平面における断面図である。
図5A図5Aは、実施形態1の第4変形例における光源装置140の構成例を模式的に示すYZ平面における断面図である。
図5B図5Bは、実施形態1の第4変形例における光源装置140の構成例を模式的に示すXY平面における断面図である。
図6A図6Aは、本開示の実施形態2における光源装置200の構成例を模式的に示す斜視図である。
図6B図6Bは、図6Aの構成のYZ平面における断面図である。
図7A図7Aは、本開示の実施形態3における光源装置300の構成例を模式的に示す斜視図である。
図7B図7Bは、図7Aの構成のYZ平面における断面図である。
図8A図8Aは、実施形態3の第1変形例における光源装置310の構成例を模式的に示す斜視図である。
図8B図8Bは、図8Aの構成のYZ平面における断面図である。
図9A図9Aは、実施形態3の第2変形例における光源装置320の構成例を模式的に示す斜視図である。
図9B図9Bは、図9Aの構成のYZ平面における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態における光源装置を詳細に説明する。複数の図面に表れる同一符号の部分は同一または同等の部分を示す。
【0010】
さらに以下は、本開示の技術思想を具体化するために例示しているのであって、本開示を以下に限定しない。また、構成要素の寸法、材質、形状、その相対的配置などの記載は、本開示の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図している。各図面が示す部材の大きさや位置関係などは、理解を容易にするなどのために誇張している場合がある。
【0011】
(実施形態1)
まず、図1Aから図1Cを参照して、本開示の実施形態1における光源装置の基本的な構成例を説明する。図1Aは、本開示の実施形態1における光源装置100の構成例を模式的に示す斜視図である。図1Aでは、説明のわかりやすさのために、構成要素が分離した状態で記載されているが、実際には接合されている。参考のために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸が模式的に示されている。図1Bは、図1Aの構成のXZ平面における断面図である。図1Aの一番上の構成要素が、XZ平面に平行に切断されている。他の構成要素は切断されていない。図1Cは、図1Aの構成のYZ平面における断面図である。図1Dは、図1Aの構成のXY平面における断面図である。
【0012】
実施形態1における光源装置100は、レーザダイオード10と、レーザダイオード10を支持する主面20sを有する基板20と、基板20に固定されたキャップ30とを備える。図示される例において、レーザダイオード10は、サブマウント40の上面に固定されている。説明のわかりやすさのために、基板20におけるレーザダイオード10、およびサブマウント40が位置する側を「上」と表現する。このことは、光源装置100の使用時における向きを制限するわけではなく、光源装置100の向きは任意である。実施形態1におけるレーザダイオード10は、例えば、可視領域における短波長、中波長もしくは長波長のレーザ光、または赤外もしくは紫外のレーザ光を出射し得る。図示された例において、矢印付きの太線は、レーザ光の光軸を表す。レーザダイオード10から出射されたレーザ光の光軸は、基板20における主面20sに対して平行である。本明細書では、このレーザ光の出射を、「レーザ光は、基板20における主面20sに対して平行に出射される」と表現する。
【0013】
実施形態1におけるキャップ30は、レーザダイオード10を覆い、必要に応じて外気から内部を気密に封止し得る。気密封止をすることにより、レーザ光による集塵の影響を抑制することができる。図1Bおよび図1Cに示す例において、キャップ30は、レーザダイオード10の周りを囲む壁部分30wと、壁部分30wの上部に位置する平板部分30fpとを有しており、概略的には「箱型」の形状を有している。壁部分30wおよび平板部分30fpは一体になっている。図1Bに示す例において、壁部分30wは、正面壁30fwと、正面壁30fwに対向する背面壁30bwと、正面壁30fwおよび背面壁30bwを繋ぐ2つの側面壁30swとを含む。壁部分30wは、内壁面30ws1および外壁面30ws2を有する。正面壁30fwの内壁面30ws1は、レーザダイオード10から出射されたレ―ザ光の光入射面30siを有する。正面壁30fwにおける外壁面30ws2は、レーザダイオード10から出射されたレ―ザ光の光出射面30sоを有する。
【0014】
図1Cに示す例において、光入射面30siおよび光出射面30sоの両方は、レーザ光の光軸に対して垂直である。したがって、レーザダイオード10から出射されたレーザ光は、正面壁30fwにおける光入射面30siおよび光出射面30sоで屈折されることがない。レーザ光は、光源装置100から、基板20における主面20sに対して平行に出射される。
【0015】
図1Cに示す例において、背面壁30bwにおける内壁面30ws1は、レーザダイオード10に向かって傾斜する第1傾斜面30s1を有する。基板20における主面20sの法線と、第1傾斜面30s1とがなす傾斜角は、例えば5度以上10度以下であり得る。背面壁30bwは基板20における主面20sから離れるほど厚くなり、キャップ30の構造強度が向上する。キャップ30が、後述するように、金型を用いたプレスおよび/またはモールドによって作製される場合、第1傾斜面30s1の存在により、金型の型抜きが容易になる。
【0016】
実施形態1における光源装置100において、正面壁30fwおよび2つの側面壁30swにおける内壁面30ws1は、基板20における主面20sに対して垂直である。正面壁30fw、背面壁30bwおよび2つの側面壁30swにおける外壁面30ws2は、基板20における主面20sに対して垂直である。壁部分30wのうち、レーザ光が通過する光入射面30siおよび光出射面30sо以外の内壁面30ws1および外壁面30ws2は、基板20における主面20sに対して必ずしも垂直である必要はない。
【0017】
以下に、光源装置100の構成要素の詳細を説明する。
【0018】
[レーザダイオード10]
レーザダイオード10は、例えば、n型半導体層、活性層、およびp型半導体層を含む積層構造を備える。レーザダイオード10は、活性層とサブマウント40との距離が相対的に遠いフェイスアップの状態で配置され得る。この場合、図1Aから図1Dに示す例では、サブマウント40上に不図示の電極が設けられており、この電極は、レーザダイオード10のn型半導体層に電気的に接続されている。この電極を「n側の電極」と称する。一方、レーザダイオード10の上面にも、不図示の電極が設けられており、この電極は、レーザダイオード10のp型半導体層に電気的に接続されている。この電極を「p側の電極」と称する。p側の電極は、第1ワイヤ60aによって第1導電性部材50aに電気的に接続され、n側の電極は、第2ワイヤ60bによって第2導電性部材50bに電気的に接続されている。第1ワイヤ60aおよび第2ワイヤ60bの形状、配置および本数は適宜調整され得る。
【0019】
なお、レーザダイオード10が高出力のレーザ光を出射する場合、活性層で発生した熱
をサブマウント40に効率的に伝えるために、レーザダイオード10は、活性層とサブマウント40との距離が相対的に近いフェイスダウンの状態で配置され得る。この場合、前述のp側の電極とn側の電極との関係が逆になる。
【0020】
p側の電極とn側の電極とに電圧を印加して閾値以上の電流を流すことにより、レーザダイオード10は、活性層の出射端面からレーザ光を主面20sに対して平行に出射する。出射されたレーザ光は、伝搬するにつれてYZ平面において速く発散し、XZ平面において遅く発散する。レーザ光のスポットは、コリメートしない場合、ファーフィールドで、Y方向が長軸でありX方向が短軸である楕円形状を有している。
【0021】
レーザダイオード10は、可視領域における青色、緑色もしくは赤色のレーザ光、または赤外もしくは紫外のレーザ光を出射し得る。青色光の発光ピーク波長は、420nm以上494nm以下の範囲内にあることが望ましく、440nm以上475nm以下の範囲内にあることがより望ましい。青色のレーザ光を出射する半導体レーザ素子としては、窒化物半導体を含む半導体レーザ素子が挙げられる。窒化物半導体としては、例えば、GaN、InGaN、およびAlGaNを用いることができる。緑色光の発光ピーク波長は、495nm以上570nm以下の範囲内にあることが望ましく、510nm以上550nm以下の範囲内にあることがより望ましい。緑色のレーザ光を出射する半導体レーザ素子としては、窒化物半導体を含む半導体レーザ素子が挙げられる。窒化物半導体としては、例えば、GaN、InGaN、およびAlGaNを用いることができる。赤色光の発光ピーク波長は、605nm以上750nm以下の範囲内にあることが望ましく、610nm以上700nm以下の範囲内にあることがより望ましい。赤色のレーザ光を出射する半導体レーザ素子としては、例えば、InAlGaP系、GaInP系、GaAs系およびAlGaAs系の半導体を含む半導体レーザ素子が挙げられる。赤色光の半導体レーザ素子として、2以上の導波路領域を備える半導体レーザ素子が用いられ得る。これらの半導体を含む半導体レーザ素子は、窒化物半導体を含む半導体レーザ素子と比べて、熱により出力が低下しやすい。導波路領域を増やすことによって熱を分散させて半導体レーザ素子の出力低下を低減することができる。
【0022】
レーザダイオード10は、その下面がサブマウント40に接するように設けられている。レーザダイオード10とサブマウント40との接触面積が拡大することから、動作時にレーザダイオード10から出射された熱を、サブマウント40に速やかに放出することができる。サブマウント40の材料については後述する。
【0023】
レーザダイオード10のZ方向における長さは例えば50μm以上4mm以下であり、X方向における幅は例えば50μm以上500μm以下であり、Y方向における高さは例えば20μm以上150μm以下である。レーザダイオード10の出射端面と光入射面30siとのZ方向における間隔は、例えば30μm以上200μm以下である。当該間隔が短いほど、レーザ光は大きく発散せず光入射面30siに入射する。
【0024】
[基板20]
基板20は、例えば、AlN、SiC、およびアルミナからなる群から選択される少なくとも1つを含むセラミックから形成され得る。セラミックの熱伝導率は、例えば、10[W/m・K]以上500[W/m・K]以下であり得る。また、光源装置100の製造時に加えられる熱による変形を抑制するために、当該セラミックは低い熱膨張率を有し得る。熱膨張率は、2×10-6[1/K]以上1×10-5[1/K]以下であり得る。
【0025】
基板20は、レーザダイオード10を外部回路に電気的に接続する第1導電性部材50aおよび第2導電性部材50bを内部に有している。図1Aに示す例では、第1導電性部材50aおよび第2導電性部材50bは、それぞれ主面20sに露出する部分を有してい
る。第1導電性部材50aおよび第2導電性部材50bは、それぞれ基板20のうち主面20sとは反対側の裏面に露出する他の部分を有している。第1導電性部材50aおよび第2導電性部材50bの当該他の部分が、外部回路に電気的に接続される。第1導電性部材50aおよび第2導電性部材50bの形状および配置に制限はない。外部回路は、レーザダイオード10から出射されるレーザ光の出射タイミングおよび出射強度を調整することができる。基板20は、例えば、内部配線層を有する多層セラミック基板である。
【0026】
動作時のレーザダイオード10から出射された熱を速やかに放出するために、基板20のうちサブマウント40下の部分に1つ以上の貫通孔を設け、当該貫通孔に熱伝導率の高い材料を埋め込んでもよい。当該材料は、例えば、Cu、Al、Ag、Fe、Ni、Mo、Cu、W、およびCuMoの少なくとも1つを含む金属である。
【0027】
[キャップ30]
レーザダイオード10を気密封止する場合、キャップ30は、例えば、基板20における主面20sに金属接合材によって接合され得る。レーザダイオード10が短波長のレーザ光を出射しなくても、信頼性および耐久性の観点から、キャップ30はレーザダイオード10を気密封止してもよい。
【0028】
キャップ30と主面20sとは、金すずなどの金属接合材で接合される。金すずの接合温度は約280℃である。基板20を形成するセラミックの熱伝導率が低ければ、主面20sとキャップ30との接合時の熱がレーザダイオード10に与える影響を低減することができる。また、セラミックの熱膨張率が低ければ、接合時の熱によるセラミックの変形が小さいことから、サブマウント40が主面20sから剥がれる可能性を低減することができる。
【0029】
キャップ30は、例えば、ガラス、石英、および、サファイアの少なくとも1つから形成され得る。
【0030】
キャップ30のZ方向における長さは、例えば1mm以上5mm以下であり、X方向における幅は例えば1mm以上5mm以下であり、Y方向における高さは例えば500μm以上3mm以下である。キャップ30の壁部分30wの厚さは、例えば100μm以上1mm以下である。キャップ30の平板部分30fpのY方向における厚さは例えば100μm以上1mm以下である。
【0031】
[サブマウント40]
サブマウント40は、主面20sからのレーザダイオード10のY方向における高さを調整する。サブマウント40を必ずしも設ける必要はない。あるいは、基板20が主面20s上に凸部を有していれば、サブマウント40を設けずに、当該凸部上に半導体レーザ素子を直接設けてもよい。サブマウント40が設けられる場合、レーザダイオード10は、基板20における主面20sによって間接的に支持される。サブマウント40が設けられない場合、レーザダイオード10は、基板20における主面20sによって直接支持される。
【0032】
レーザダイオード10から出射された熱を速やかに放出するために、サブマウント40は熱伝導率が高い材料から形成され得る。当該材料は、例えば、Cu、Al、Fe、Ni、Mo、Cu、W、およびCuMoの少なくとも1つを含む金属である。
【0033】
サブマウント40のZ方向における長さは例えば200μm以上4mm以下であり、X方向における幅は例えば300μm以上4mm以下であり、Y方向における高さは、例えば100μm以上500μm以下である。
【0034】
(光源装置100の製造方法)
次に、光源装置100の製造方法を簡単に説明する。最初の工程では、複数の基板20を含む集合基板が準備される。基板20は、第1導電性部材50aおよび第2導電性部材50bを有している。次の工程では、複数のレーザダイオード10が、それぞれ集合基板10Gにおける複数の基板20の主面20sにサブマウント40を介して実装される。レーザダイオード10のうち、p側の電極は第1導電性部材50aに第1ワイヤ60aによって電気的に接続され、n側の電極は第2導電性部材50bに第2ワイヤ60bによって電気的に接続される。次の工程では、複数のキャップ30を含むキャップアレイが集合基板に固定される。複数のキャップ30は、複数のレーザダイオード10をそれぞれ収容する。言い換えると、個々のレーザダイオード10は、各キャップ30によって封止される。
【0035】
キャップアレイは、以下のようにして作製され得る。ガラス軟化点近傍まで昇温されたガラス板が2つの金型によってプレスおよび/またはモールドされ、加圧を維持しながらガラス転移点以下まで冷却される。一方の金型は2次元平面に並ぶ複数の凸部を有し、他方の金型は平坦な面を有する。このようにして、当該ガラス板に複数の凹部が形成されたキャップアレイが得られる。キャップアレイが固定された集合基板を、キャップアレイにおける複数の凹部の間をダイシングすることによって個片化することにより、光源装置100が製造される。ダイシングによってキャップ30における光出射面30sоは粗くなっている可能性があるので、光出射面30sоは研磨などによって滑らかに加工され得る。
【0036】
(実施形態1における変形例)
次に、図2から図5Bを参照して、実施形態1における光源装置100の第1変形例から第4変形例を説明する。キャップ30の形状は、図1Aから図1Dに示す例に限られない。
【0037】
図2は、実施形態1の第1変形例における光源装置110の構成例を模式的に示すYZ平面における断面図である。実施形態1の第1変形例における光源装置110が実施形態1における光源装置100とは異なる点は、背面壁30bwにおける外壁面30ws2が、レーザダイオード10から離れる方向に傾斜する第2傾斜面30s2を有することである。基板20における主面20sの法線と、第2傾斜面30s2とがなす傾斜角は、例えば5度以上10度以下であり得る。背面壁30bwは第1傾斜面30s1および第2傾斜面30s2を有するので、背面壁30bwは基板20における主面20sから離れるほどより厚くなり、キャップ30の構造強度がより向上する。キャップ30が、金型を用いたプレスおよび/またはモールドによって作製される場合、第1傾斜面30s1および第2傾斜面30s2の存在により、金型の型抜きが容易になる。
【0038】
図3は、実施形態1の第2変形例における光源装置120の構成例を模式的に示すYZ平面における断面図である。実施形態1の第2変形例における光源装置120が実施形態1における光源装置100とは異なる点は、正面壁30fwにおける外壁面30ws2が、レーザダイオード10から離れる方向に傾斜する第2傾斜面30s2を有することである。正面壁30fwおよび背面壁30bwは基板20における主面20sから離れるほどより厚くなり、キャップ30の構造強度がより向上する。キャップ30が、金型を用いたプレスおよび/またはモールドによって作製される場合、第1傾斜面30s1および第2傾斜面30s2の存在により、金型の型抜きが容易になる。
【0039】
正面壁30fwにおける外壁面30ws2が第2傾斜面30s2を有するので、レーザダイオード10から出射されたレーザ光は、正面壁30fwにおける外壁面30ws2で
屈折され、基板20における主面20sから離れる方向に出射される。しかし、正面壁30fwにおける内壁面30ws1がレーザ光の光軸に対して垂直であるので、レーザ光の光軸と、基板20における主面20sとがなす傾斜角は、せいぜい10度程度であり、それほど大きくはならない。このように、実施形態1の第2変形例における光源装置120は、レーザ光を、基板20における主面20sに対してほぼ平行に出射することができる。本明細書において、「ほぼ平行」とは、10度以内、好ましくは5度以内を意味する。他の例として、正面壁30fwにおける内壁面30ws1がレーザダイオード10に向かって傾斜する第2傾斜面30s2を有し、正面壁30fwにおける外壁面30ws2がレーザ光の光軸に対して垂直であってもよい。
【0040】
図4は、実施形態1の第3変形例における光源装置130の構成例を模式的に示すYZ平面における断面図である。実施形態1の第3変形例における光源装置130が実施形態1における光源装置100とは異なる点は、正面壁30fwの形状である。正面壁30fwのうち光入射面30siおよび光出射面30sоによって挟まれた部分の上部は、正面壁30fwのうち光入射面および前記光出射面によって挟まれた部分よりも厚い。当該上部における内壁面30ws1は、レーザダイオード10に向かって傾斜する第2傾斜面30s2を有し、外壁面30ws2は、レーザダイオード10から離れる方向に傾斜する第3傾斜面30s3を有する。基板20における主面20sの法線と、第2傾斜面30s2および第3傾斜面30s3の各々とがなす傾斜角は、例えば5度以上10度以下であり得る。光入射面30siおよび光出射面30sоがレーザ光の光軸に対して垂直であるので、レーザ光は、光源装置130から、基板20における主面20sに対して平行に出射される。正面壁30fwの上部および背面壁30bwは基板20における主面20sから離れるほどより厚くなり、キャップ30の構造強度がより向上する。キャップ30が金型を用いたプレスおよび/またはモールドによって作製される場合、第1傾斜面30s1、第2傾斜面30s2、および第3傾斜面30s3の存在により、金型の型抜きがより容易になる。
【0041】
図5Aおよび図5Bは、それぞれ、実施形態1の第4変形例における光源装置140の構成例を模式的に示すYZ平面およびXY平面における断面図である。実施形態1の第4変形例における光源装置140が実施形態1における光源装置100とは異なる点は、背面壁30bwおよび2つの側面壁30swの形状である。背面壁30bwにおける内壁面30ws1は、基板20における主面20sに対して垂直であり、2つの側面壁30swにおける内壁面30ws1は、レーザダイオード10に向かって傾斜する第1傾斜面30s1および第2傾斜面30s2を有する。基板20における主面20sの法線と、第1傾斜面30s1および第2傾斜面30s2の各々とがなす傾斜角は、例えば5度以上10度以下であり得る。第1傾斜面30s1および第2傾斜面30s2の両方がある必要はなく、少なくとも一方があればよい。側面壁30swは基板20における主面20sから離れるほどより厚くなり、キャップ30の構造強度がより向上する。キャップ30が金型を用いたプレスおよび/またはモールドによって作製される場合、第1傾斜面30s1、および第2傾斜面30s2の存在により、金型の型抜きがより容易になる。
【0042】
以上から、本開示の光源装置において、正面壁30fwにおける内壁面30ws1は光入射面30siを有し、正面壁30fw、背面壁30bw、および2つの側面壁30swの少なくとも1つにおける内壁面30ws1は、レーザダイオード10に向かって傾斜する第1傾斜面30s1を有する。言い換えれば、壁部分30wにおける内壁面30ws1は、レーザダイオード10から出射されるレーザ光の光入射面30siおよび第1傾斜面30s1を少なくとも有する。正面壁30fwにおける外壁面30ws2は光出射面30sоを有する。光入射面30siおよび光出射面30sоの少なくとも一方は、レーザ光の光軸に対して垂直である。
【0043】
(実施形態2)
以下に、図6Aおよび図6Bを参照して、実施形態2における光源装置の基本的な構成例を説明する。図6Aは、本開示の実施形態2における光源装置200の構成例を模式的に示す斜視図である。図6Bは、図6Aの構成のYZ平面における断面図である。実施形態2における光源装置200が実施形態1における光源装置100とは異なる点は、キャップ30が、内側における反射防止膜30fi、および外側における反射防止膜30fоを有することである。
【0044】
実施形態1における光源装置100において、レーザダイオード10から出射されたレーザ光の一部は、正面壁30fwにおける光入射面30siおよび/または光出射面30sоによって反射され、キャップ30内で迷光になり得る。実施形態2における光源装置200では、迷光の発生を抑制するために、正面壁30fwは、光入射面30siに反射防止膜30fiを有し、光出射面30sоに反射防止膜30fоを有する。正面壁30fwが、光入射面30siに反射防止膜30fiを有さず、光出射面30sоに反射防止膜30fоを有する場合でも、図6Aおよび図6Bに示す例ほどではないが、迷光の発生を抑制することができる。正面壁30fwが、光入射面30siに反射防止膜30fiを有し、光出射面30sоに反射防止膜30fоを有さない場合も同様である。
【0045】
内側における反射防止膜30fiは、前述したキャップアレイの複数の凹部の表面に設けられ得る。外側における反射防止膜30fоは、キャップアレイが固定された集合基板を個片化した後に設けられ得る。
【0046】
反射防止膜として、複数の誘電体層を含む多層膜を用いてもよいし、以下のナノ構造膜を用いてもよい。多層膜の代わりに単層膜であっても、レーザ光の反射を抑制することができる。ナノ構造膜は、10%以下の反射率を有する。ナノ構造膜は、例えば、ナノ構造膜が設けられる表面に垂直な方向において実効的な屈折率が変化する構造を有する。具体的には、ナノ構造膜は、表面に近づくにつれて実効的な屈折率が徐々に高くなる構造を有する。ナノ構造膜は、例えば、孔の占める割合が表面に近づくにつれて低くなる多孔質膜、または複数のコーンが平面上に並ぶモスアイ構造を有する薄膜である。ナノ構造膜は、屈折率が界面で不連続に変化する多層膜よりも、光の反射を大幅に抑制することができる。ナノ構造膜の厚さは、例えば100nm以上1μm以下であり得る。反射防止膜30fiおよび反射防止膜30fоの両方が、多層膜またはナノ構造膜であってもよいし、反射防止膜30fiおよび反射防止膜30fоのうち、一方が多層膜であり他方がナノ構造膜であってもよい。片方がナノ構造膜であれば、迷光の発生を有効に抑制することができる。
【0047】
反射防止膜が多層膜である場合、例えばスパッタリング法などの薄膜堆積技術により、キャップ30の所定の面に多層膜を設けることができる。反射防止膜がナノ構造膜である場合、例えば、ゾル・ゲル法により、キャップ30の所定の面にナノ構造膜を設けることができる。
【0048】
前述した例の他に、実施形態1の第1変形例から第4変形例における光源装置のキャップ30が、内側における反射防止膜30fiおよび/または外側における反射防止膜30fоを有していてもよい。
【0049】
(実施形態3)
以下に、図7Aおよび図7Bを参照して、実施形態3における光源装置の基本的な構成例を説明する。図7Aは、本開示の実施形態3における光源装置300の構成例を模式的に示す斜視図である。図7Bは、図7Aの構成のYZ平面における断面図である。実施形態3における光源装置300が実施形態2における光源装置200とは異なる点は、キャ
ップ30が、外側における反射防止膜30fоを保護する凸部30pを有することである。凸部30pは、反射防止膜30fоの厚さ方向に反射防止膜30fоよりも突出している。凸部30pを有するキャップ30を含むキャップアレイの製造方法は、例えば特許文献1に開示されている。内側における反射防止膜30fiおよび外側における反射防止膜30fоは、当該キャップアレイの複数の凹部の内側に設けられ得る。この場合、背面壁30bwにおける外壁面30ws2にも反射防止膜30fоが設けられ得る。なお、キャップ30は、内側における反射防止膜30fiを設けなくてもよい。
【0050】
光源装置300のハンドリング時に外部の物体が反射防止膜30fоに接触すると、反射防止膜30fоが破損され得る。このため、反射防止膜30fоを保護する凸部30pが設けられている。ナノ構造膜は多層膜よりも微細な構造を有するので、外部の物体が接触すると破損されやすい。したがって、反射防止膜30fоとして多層膜の代わりにナノ構造膜を用いた場合、凸部30pを設けることが好ましい。
【0051】
実施形態3における凸部30pは、第1凸部分30p1、第2凸部分30p2、および第3凸部分30p3を有する。第1凸部分30p1および第2凸部分30p2は、主面20sに対して垂直な方向に延び、第3凸部分30p3は、主面20sに対して平行である。反射防止膜30fоは、第1凸部分30p1と第2凸部分30p2との間に位置する。基板20の一部は、反射防止膜30fоの厚さ方向において反射防止膜30fоよりも突出している。反射防止膜30fоは、第1凸部分30p1から第3凸部分30p3、および基板20の上記一部によって囲まれ、ハンドリング時における外部の物体との接触から保護されている。
【0052】
(実施形態3における変形例)
次に、図8Aから図9Bを参照して、実施形態3における光源装置300の第1変形例および第2変形例を説明する。凸部30pの形状は、図7Aおよび図7Bに示す例に限られない。
【0053】
図8Aは、実施形態3の第1変形例における光源装置310の構成例を模式的に示す斜視図である。図8Bは、図8Aの構成のYZ平面における断面図である。実施形態3の第1変形例における光源装置310が実施形態3における光源装置300とは異なる点は、キャップ30における凸部30pが主面20sに対して平行である部分を有さないことである。実施形態3の第1変形例において、反射防止膜30fоは、第1凸部分30p1、第2凸部分30p2、および基板20の一部によって囲まれ、ハンドリング時における外部の物体との接触から保護されている。
【0054】
図9Aは、実施形態3の第2変形例における光源装置320の構成例を模式的に示す斜視図である。図9Bは、図9Aの構成のYZ平面における断面図である。実施形態3の第2変形例における光源装置320が実施形態3における光源装置300とは異なる点は、キャップ30における凸部30pが、主面20sに対して垂直に延びる部分を有さないことである。凸部30pは、主面20sに対して平行な方向に延び、突出している。実施形態3の第2変形例において、反射防止膜30fоは、凸部30pと基板20の一部との間に位置し、ハンドリング時における外部の物体との接触から保護されている。
【0055】
前述した例の他に、実施形態1の第1変形例から第4変形例における光源装置のキャップ30が、外側における反射防止膜30fоおよび凸部30pを有していてもよい。このキャップ30は、内側における反射防止膜30fiをさらに有していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本開示の光源装置は、例えばヘッドマウントディスプレイに利用することができる。そ
の他に、本開示の光源装置は、照明器具にも利用され得る。
【符号の説明】
【0057】
10 レーザダイオード
20 基板
20s 主面
30 キャップ
30bw 背面壁
30fi 反射防止膜
30fp 平板部分
30fw 正面壁
30fо 反射防止膜
30p 凸部
30p1 第1凸部分
30p2 第2凸部分
30p3 第3凸部分
30s1 第1傾斜面
30s2 第2傾斜面
30s3 第3傾斜面
30si 光入射面
30sw 側面壁
30sо 光出射面
30w 壁部分
30ws1 内壁面
30ws2 外壁面
40 サブマウント
50a 第1導電性部材
50b 第2導電性部材
60a 第1ワイヤ
60b 第2ワイヤ
100、110、120、130、200、300、310、320 光源装置
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B