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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】受信装置及び受信方法
(51)【国際特許分類】
   H04J 14/06 20060101AFI20241107BHJP
   H04B 10/60 20130101ALI20241107BHJP
【FI】
H04J14/06
H04B10/60
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023523867
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2021020237
(87)【国際公開番号】W WO2022249401
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴大
(72)【発明者】
【氏名】キム サンヨプ
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-14008(JP,A)
【文献】特開平9-321708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 14/06
H04B 10/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X偏波とY偏波とが偏波多重された信号を受信し、受信した信号を、X偏波とY偏波の各々に対応する受信信号に変換して出力する受信部と、
前記受信部が出力するX偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号を偏波分離する偏波分離部と、
与えられる前記受信信号から一系列の送信信号を復号する第1の信号復号部と、
与えられる前記受信信号から二系列の送信信号を復号する第2の信号復号部と、
前記偏波分離部が偏波分離したX偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号の変化のパターンが類似しているか否かを判定し、X偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号の変化のパターンが類似していると判定した場合、前記偏波分離部が偏波分離した前記受信信号を前記第1の信号復号部に出力し、X偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号の変化のパターンが類似していないと判定した場合、前記偏波分離部が偏波分離した前記受信信号を前記第2の信号復号部に出力する受信信号比較部と、
を備える受信装置。
【請求項2】
前記受信信号比較部は、
予め定められる一定期間におけるX偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号の変化のパターンに基づいて、前記偏波分離部が偏波分離したX偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号の変化のパターンが類似しているか否かを判定する、
請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記受信信号比較部は、
予め定められる一定期間におけるX偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号の変化のパターンに基づいて、X偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号の変化のパターンが類似しているか否かを判定した判定結果を、複数の前記一定期間ごとに収集し、収集した複数の前記判定結果に基づいて、X偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号の変化のパターンが類似しているか否かを判定する、
請求項1に記載の受信装置。
【請求項4】
前記受信信号比較部は、
前記一定期間におけるX偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号の差の絶対値の合計に基づいて、X偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号の変化のパターンが類似しているか否かを判定する、
請求項2又は3に記載の受信装置。
【請求項5】
前記受信信号比較部は、
X偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号の変化のパターンが類似していると判定した場合、前記偏波分離部が偏波分離したX偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号のいずれか一方を前記第1の信号復号部に出力し、
前記第1の信号復号部は、
前記受信信号比較部が出力するX偏波とY偏波のいずれか一方に対応する前記受信信号から一系列の送信信号を復号する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項6】
前記受信信号比較部は、
X偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号の変化のパターンが類似していると判定した場合、前記偏波分離部が偏波分離したX偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号の両方を前記第1の信号復号部に出力し、
前記第1の信号復号部は、
前記受信信号比較部が出力するX偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号を加算し、加算した前記受信信号から一系列の送信信号を復号する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項7】
前記受信部が受信するX偏波とY偏波が偏波多重された信号は、X偏波とY偏波とが、それぞれ異なる送信信号により変調された信号であるか、または、X偏波とY偏波とが、同一の送信信号により変調された信号であるか、または、X偏波とY偏波のいずれか一方が、送信信号により変調された信号である、
請求項1から6のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項8】
受信部が、X偏波とY偏波とが偏波多重された信号を受信し、受信した信号を、X偏波とY偏波の各々に対応する受信信号に変換して出力し、
偏波分離部が、前記受信部が出力するX偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号を偏波分離し、
受信信号比較部が、前記偏波分離部が偏波分離したX偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号の変化のパターンが類似しているか否かを判定し、X偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号の変化のパターンが類似していると判定した場合、前記偏波分離部が偏波分離した前記受信信号を第1の信号復号部に出力し、X偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号の変化のパターンが類似していないと判定した場合、前記偏波分離部が偏波分離した前記受信信号を第2の信号復号部に出力し、
前記第1の信号復号部は、前記受信信号比較部が出力する前記受信信号から一系列の送信信号を復号し、
前記第2の信号復号部は、前記受信信号比較部が出力する前記受信信号から二系列の送信信号を復号する、
受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置及び受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高速光伝送を実現するために、偏波多重による通信容量を増加する手法が利用されている。偏波多重と、デジタルコヒーレント技術とを組み合わせることにより、更に、通信容量を増加させることが可能になる。偏波多重とデジタルコヒーレント技術を組み合わせる場合、受信側では、例えば、偏波ダイバーシティ受信機を用いて、偏波多重された光信号を受信することにより、X方向とY方向の各々の偏波方向の光複素数振幅の情報を得ることができる。得られたX方向とY方向の各々の偏波方向の光複素数振幅の情報に対して、偏波分離処理のデジタル信号処理を行うことにより、送信側において変調の際にX方向用の光変調器とY方向用の光変調器の各々に対して変調信号として与えた送信信号を復調することができる(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
上記のような主信号の全体に対する処理が必要であり、かつ演算量が大きい伝送処理機能は、従来、ASIC(Application specific integrated circuit)に実装されるなど、専用の回路として実現されてきた。これに対して、近年、伝送処理機能をソフトウェア化することにより、ユーザ要求やアプリケーション要求に応じて通信装置の柔軟性を高めることや、汎用のハードウェアを用いることで通信装置におけるCAPEX(Capital expenditure)、OPEX(Operating Expense)を削減することを目的とする研究が行われている(例えば、非特許文献2参照)。例えば、上記のように伝送処理機能をソフトウェア化することにより、機能の変更が可能となるが、多様な伝送サービスを単一の通信装置で収容するには、低遅延を維持しつつ適応的に伝送処理機能を変更することが重要になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】菊池和朗、“デジタル信号処理を駆使した新しいコヒーレント光通信技術”、レーザー研究、37巻3号,pp.164-170(2009年3月)
【文献】T. Suzuki, S. Kim, J. Kani, et al., “Demonstration of Fully Softwarized 10G-EPON PHY Processing on a General-Purpose Server for Flexible Access Systems,” Journal of Lightwave Technology, vol.38, no.4, pp.777-783, Feb 2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図12は、偏波多重とデジタルコヒーレント技術を採用する一般的な光信号を伝送する伝送システム600の構成を示すブロック図である。送信装置300において、偏光ビームスプリッタ302は、信号光光源301が出力する光をX方向の偏波光(以下「X偏波光」という)と、Y方向の偏波光(以下「Y偏波光」という)とに分離する。偏光ビームスプリッタ302は、分離したX偏波光をIQ(In-phase Quadrature)変調部303-1に出力し、Y偏波光を、IQ変調部303-2に出力する。
【0006】
IQ変調部303-1は、送信信号生成部304-1から与えられる送信信号に基づいてX偏波光を変調する。IQ変調部303-2は、送信信号生成部304-2から与えられる送信信号に基づいてY偏波光を変調する。偏波ビームコンバイナ305は、IQ変調部303-1,303-2が変調したX方向とY方向の被変調光信号を偏波多重して光ファイバ伝送路500に送出する。
【0007】
受信装置400において、コヒーレント受信部402は、光ファイバ伝送路500が伝送する光信号を受信する。受信装置400は、受信した光信号を、局部発振光源401が出力する局部発振光(以下「局発光」という)を用いてコヒーレント検波してX方向とY方向の各々の光複素振幅成分を検出する。コヒーレント受信部402は、検出したX方向とY方向の各々の光複素振幅成分をX方向とY方向の各々のデジタルの受信信号E,Eに変換して出力する。
【0008】
コヒーレント受信部402が出力する受信信号E,Eに対して、クロック同期部403によるクロック同期が行われることによりクロック信号にしたがったサンプリング間隔ごとの受信信号E(n),E(n)が得られる。ここで、nは、サンプル番号である。クロック同期部403によってクロック同期が行われた受信信号E(n),E(n)は、信号検知部404によって信号検知が行われ、更に、偏波分離部405によって偏波分離が行われる。
【0009】
偏波分離後のX方向の受信信号E(n)と、Y方向の受信信号E(n)は、それぞれキャリアリカバリ部406-1,406-2によってキャリアリカバリされた後、復号化部407-1,407-2によってシンボル判定などの復号化処理が行われる。その後、X方向の偏波光の変調に用いられた送信信号、すなわち送信信号生成部304-1が生成した送信信号と、Y方向の偏波光の変調に用いられた送信信号、すなわち送信信号生成部304-2が生成した送信信号とが復元される。
【0010】
上記した偏波多重とデジタルコヒーレント技術を採用する一般的な光信号を伝送する伝送システム600において、受信装置400は、X偏波光とY偏波光とがそれぞれ異なる送信信号で変調されている光信号を受信することを前提とした構成になっている。これに対して、ユーザやアプリケーションが要求する通信容量が少ない場合には、例えば、X偏波光とY偏波光のいずれか一方を送信信号によって変調すればよい場合も想定される。このような場合に、受信装置400が、常に、X偏波光とY偏波光の両方に対して復号する処理を行うことは、演算リソースを無駄に使用することになり、リソース利用効率の低下や消費電力の増加といった問題が生じることになる。
【0011】
上記のような問題を解決するために、例えば、受信装置400に対して、受信する光信号に適用されている変調方式を予め通知する手法が考えられるが、受信装置400において変調方式の通知を受けるための構成が必要になり、装置の規模が大きくなってしまうという問題がある。
【0012】
上記事情に鑑み、本発明は、送信装置において適用された偏波を利用する変調方式が不明であっても、受信装置で使用する演算リソースを抑えつつ、簡易な構成で送信装置が送信する信号を復調することができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、X偏波とY偏波とが偏波多重された信号を受信し、受信した信号を、X偏波とY偏波の各々に対応する受信信号に変換して出力する受信部と、前記受信部が出力するX偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号を偏波分離する偏波分離部と、与えられる前記受信信号から一系列の送信信号を復号する第1の信号復号部と、与えられる前記受信信号から二系列の送信信号を復号する第2の信号復号部と、前記偏波分離部が偏波分離したX偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号の変化のパターンが類似しているか否かを判定し、X偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号の変化のパターンが類似していると判定した場合、前記偏波分離部が偏波分離した前記受信信号を前記第1の信号復号部に出力し、X偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号の変化のパターンが類似していないと判定した場合、前記偏波分離部が偏波分離した前記受信信号を前記第2の信号復号部に出力する受信信号比較部と、を備える受信装置である。
【0014】
本発明の一態様は、受信部が、X偏波とY偏波とが偏波多重された信号を受信し、受信した信号を、X偏波とY偏波の各々に対応する受信信号に変換して出力し、偏波分離部が、前記受信部が出力するX偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号を偏波分離し、受信信号比較部が、前記偏波分離部が偏波分離したX偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号の変化のパターンが類似しているか否かを判定し、X偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号の変化のパターンが類似していると判定した場合、前記偏波分離部が偏波分離した前記受信信号を第1の信号復号部に出力し、X偏波とY偏波の各々に対応する前記受信信号の変化のパターンが類似していないと判定した場合、前記偏波分離部が偏波分離した前記受信信号を第2の信号復号部に出力し、前記第1の信号復号部は、前記受信信号比較部が出力する前記受信信号から一系列の送信信号を復号し、前記第2の信号復号部は、前記受信信号比較部が出力する前記受信信号から二系列の送信信号を復号する、受信方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、送信装置において適用された偏波を利用する変調方式が不明であっても、受信装置で使用する演算リソースを抑えつつ、簡易な構成で送信装置が送信する信号を復調することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態の伝送システムの構成を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態の送信装置の構成を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態の受信装置の構成を示すブロック図である。
図4】第1の実施形態の偏波分離部の構成を示すブロック図である。
図5】第1の実施形態の送信装置による処理の流れを示す図である。
図6】第1の実施形態の受信装置による処理の流れを示す図である。
図7】第2の実施形態の受信装置の構成を示すブロック図である。
図8】第2の実施形態の受信装置による処理の流れを示すブロック図である。
図9】第3の実施形態の送信装置の構成を示すブロック図である。
図10】第3の実施形態の受信装置の構成を示すブロック図である。
図11】第1の実施形態の受信装置の他の構成例を示すブロック図である。
図12】偏波多重とデジタルコヒーレント技術を採用する一般的な伝送システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、第1の実施形態による伝送システム100の構成を示すブロック図である。伝送システム100は、送信装置1と、受信装置2と、光ファイバ伝送路3とを備える。光ファイバ伝送路3は、送信装置1と受信装置2を接続する。
【0018】
(第1の実施形態の送信装置の構成)
図2は、送信装置1の構成を示すブロック図である。送信装置1は、偏波生成部10、変調部13、送信信号生成部14-1,14-2、偏波多重部15、変調信号切替部16及び操作部17を備える。偏波生成部10は、信号光光源11と、偏光ビームスプリッタ12とを備える。変調部13は、IQ変調部13-1,13-2を備える。
【0019】
信号光光源11は、搬送波となる連続光を生成して出力する。偏光ビームスプリッタ12は、信号光光源11が出力する連続光を、X方向の偏波光(以下「X偏波光」という)と、Y方向の偏波光(以下「Y偏波光」という)とに分離する。偏光ビームスプリッタ12により分離されたX偏波光はIQ変調部13-1に入力され、Y偏波光はIQ変調部13-2に入力される。
【0020】
送信信号生成部14-1,14-2の各々は、デジタルの電気信号である送信信号の系列を生成し、生成した送信信号を変調信号切替部16に出力する。なお、送信信号生成部14-1,14-2は、それぞれ異なる送信信号の系列を生成するものとする。
【0021】
操作部17は、伝送システム100の利用者の操作を受けて、予め定められる3通りの変調方式の中から利用者によって選択されるいずれか1つの変調方式を示す情報を取り込む。操作部17は、取り込んだ変調方式を示す情報を出力する。以下、3通りの変調方式の各々を、偏波多重変調方式、第1の単一偏波変調方式及び第2の単一偏波変調方式という。
【0022】
変調信号切替部16は、操作部17が出力する変調方式を示す情報に基づいて、送信信号生成部14-1,14-2の各々が生成する2つの送信信号の両方、または、いずれか一方を選択的に出力する。より詳細には、変調信号切替部16は、操作部17が変調方式を示す情報として、偏波多重変調方式を示す情報を出力した場合、送信信号生成部14-1の接続端をIQ変調部13-1の接続端に接続し、送信信号生成部14-2の接続端をIQ変調部13-2の接続端に接続する。変調信号切替部16は、操作部17が変調方式を示す情報として、第1の単一偏波変調方式を示す情報を出力した場合、送信信号生成部14-1の接続端を、IQ変調部13-1の接続端とIQ変調部13-2の接続端とに接続する。変調信号切替部16は、操作部17が変調方式を示す情報として、第2の単一偏波変調方式を示す情報を出力した場合、送信信号生成部14-1の接続端を、IQ変調部13-1の接続端に接続する。
【0023】
IQ変調部13-1は、偏光ビームスプリッタ12から与えられるX偏波光を、変調信号切替部16が出力する送信信号に基づいて位相変調する。IQ変調部13-2は、偏光ビームスプリッタ12から与えられるY偏波光を、変調信号切替部16が出力する送信信号に基づいて位相変調する。ここで、IQ変調部13-1,13-2の各々は、例えば、2つのMZ(Mach-Zehnder)変調器を備えており、一方のMZ(Mach-Zehnder)変調器の出力に90度位相をシフトする位相シフタが備えているとする。この場合、IQ変調部13-1,13-2の各々は、各々に与えられる送信信号からI成分とQ成分の被変調信号を生成する。IQ変調部13-1,13-2の各々の内部において、I成分とQ成分の被変調信号を結合することにより、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)の光信号が生成されることになる。
【0024】
偏波多重部15は、例えば、偏波ビームコンバイナであり、IQ変調部13-1が出力するX偏波の被変調光信号と、IQ変調部13-2が出力するY偏波の被変調光信号とを偏波多重する。X偏波の被変調光信号と、Y偏波の被変調光信号とがQSPKの光信号である場合、偏波多重部15により偏波多重された被変調光信号は、偏波多重QPSKの光信号になる。偏波多重部15は、偏波多重して生成した光信号を光ファイバ伝送路3に送出する。
【0025】
上記の送信装置1において、例えば、操作部17が、利用者の操作を受けて偏波多重変調方式を示す情報を変調信号切替部16に出力した場合、IQ変調部13-1,13-2は、それぞれ異なる送信信号に基づいて、各々に与えられるX偏波光と、Y偏波光とを変調することになる。そのため、偏波多重部15が偏波多重して生成する光信号の状態は、X偏波光とY偏波光の各々に、それぞれ異なる送信信号が変調により重畳された状態になる。
【0026】
送信装置1において、操作部17が、利用者の操作を受けて第1の単一偏波変調方式を示す情報を変調信号切替部16に出力した場合、IQ変調部13-1,13-2の各々は、同一の送信信号、すなわち送信信号生成部14-1が生成する送信信号に基づいて、各々に与えられるX偏波光と、Y偏波光とを変調することになる。そのため、偏波多重部15が偏波多重して生成する光信号の状態は、X偏波光とY偏波光に、同一の送信信号が変調により重畳された状態になる。この場合、X偏波光とY偏波光のいずれか一方を復調すれば送信信号が得られることなり、実質的には、単一の偏波に送信信号が重畳されている状態ということができる。
【0027】
送信装置1において、操作部17が、利用者の操作を受けて第2の単一偏波変調方式を示す情報を変調信号切替部16に出力した場合、IQ変調部13-1は、送信信号生成部14-1が生成する送信信号に基づいて、X偏波光を変調することになる。そのため、偏波多重部15が偏波多重して生成する光信号の状態は、X偏波光には送信信号が重畳され、Y偏波光には送信信号が重畳されていない状態、すなわち、単一の偏波に送信信号が重畳されている状態になる。
【0028】
(第1の実施形態の受信装置の構成)
図3は、受信装置2の構成を示すブロック図である。受信装置2は、受信部21、偏波分離部22、受信信号比較部23及び信号復号部24-1,24-2を備える。受信部21は、局部発振光源31、コヒーレント受信部32、クロック同期部33及び信号検知部34を備える。局部発振光源31は、局発光を生成してコヒーレント受信部32に出力する。
【0029】
コヒーレント受信部32は、光ファイバ伝送路3が伝送する光信号を受信する。コヒーレント受信部32は、局部発振光源31が出力する局発光を用いて、受信した光信号をコヒーレント検波して、受信した光信号からX方向のデジタルの電気信号である受信信号Eと、Y方向のデジタルの電気信号である受信信号Eとを生成する。より詳細には、コヒーレント受信部32は、局部発振光源31が出力する局発光をX偏波光と、Y偏波光とに分離する。コヒーレント受信部32は、受信した光信号と、分離した局発光のX偏波光とに基づいて、受信した光信号からX偏波光に対応する光複素振幅成分をアナログの電気信号として検出する。コヒーレント受信部32は、受信した光信号と、分離した局発光のY偏波光とに基づいて、受信した光信号からY偏波光に対応する光複素振幅成分をアナログの電気信号として検出する。コヒーレント受信部32は、X偏波光に対応する光複素振幅成分をアナログ・デジタル変換することにより、X偏波光に対応する光複素振幅成分をX方向のデジタルの電気信号である受信信号Eに変換する。コヒーレント受信部32は、Y偏波光に対応する光複素振幅成分をアナログ・デジタル変換することにより、Y偏波光に対応する光複素振幅成分をY方向のデジタルの電気信号である受信信号Eに変換する。
【0030】
クロック同期部33は、コヒーレント受信部32が変換により生成した受信信号E,Eの各々に対して、クロック同期の処理を行い、送信装置1と受信装置2の各々が備える基準クロックの誤差を補正する。クロック同期部33によるクロック同期の処理によりクロック信号にしたがったサンプリング間隔ごとのX方向の受信信号E(n)と、Y方向の受信信号E(n)とが得られることになる。ここで、nは、サンプル番号である。
【0031】
信号検知部34は、クロック同期部33がクロック同期した受信信号E(n),E(n)の中から予め定められる強度値を超える強度値を有する信号を検知する。信号検知部34は、検知した信号を出力すると共に、予め定められる強度値を超える強度値を有する信号を検知したことを示す信号検知情報を出力する。ここで、予め定められる強度値として、例えば、送信装置1が光信号を送信していない状態における最大の強度値が定められる。
【0032】
送信装置1が送信する光信号がX偏波光とY偏波光とが偏波多重された光信号である場合、光信号が光ファイバ伝送路3によって伝送される途中で、光ファイバの複屈折の影響により偏波分散が生じ、偏波多重された2つの信号が混合することになる。偏波分離部22は、受信信号E(n),E(n)に含まれている混合成分をフィルタリングすることにより偏波分離を行う。
【0033】
図4は、偏波分離部22の構成を示すブロック図である。偏波分離部22は、いわゆるバタフライ型のFIR(Finite impulse response)フィルタであり、pxxフィルタ部71、pxyフィルタ部72、pyxフィルタ部73、pyyフィルタ部74、複素加算部75-1,75-2及び係数算出部76-1,76-2を備える。
【0034】
xxフィルタ部71、pxyフィルタ部72、pyxフィルタ部73及びpyyフィルタ部74は、例えば、FIRフィルタである。pxxフィルタ部71は、信号検知部34が出力するX方向の受信信号E(n)を取り込む。pxxフィルタ部71は、取り込んだ受信信号E(n)に対してフィルタ係数pxx(n)を乗算するフィルタリング処理を行う。
【0035】
xyフィルタ部72は、信号検知部34が出力するY方向の受信信号E(n)を取り込む。pxyフィルタ部72は、取り込んだ受信信号E(n)に対してフィルタ係数pxy(n)を乗算するフィルタリング処理を行う。
【0036】
複素加算部75-1は、pxxフィルタ部71が出力するフィルタリング処理後の受信信号E(n)と、pxyフィルタ部72が出力するフィルタリング処理後の受信信号E(n)とを加算する。複素加算部75-1による加算によりpxxフィルタ部71のフィルタ係数pxx(n)と、pxyフィルタ部72のフィルタ係数pxy(n)とが最適な状態になっている場合、フィルタリング処理後の受信信号E(n)に混合しているY方向の成分が、フィルタリング処理後の受信信号E(n)によって相殺され、X方向の成分のみが含まれるX方向の受信信号E(n)が得られることになる。
【0037】
yxフィルタ部73は、信号検知部34が出力するX方向の受信信号E(n)を取り込む。pyxフィルタ部73は、取り込んだ受信信号E(n)に対してフィルタ係数pyx(n)を乗算するフィルタリング処理を行う。
【0038】
yyフィルタ部74は、信号検知部34が出力するY方向の受信信号E(n)を取り込む。pyyフィルタ部74は、取り込んだ受信信号E(n)に対してフィルタ係数pyy(n)を乗算するフィルタリング処理を行う。
【0039】
複素加算部75-2は、pyxフィルタ部73が出力するフィルタリング処理後の受信信号E(n)と、pyyフィルタ部74が出力するフィルタリング処理後の受信信号E(n)とを加算する。複素加算部75-2による加算により、pyxフィルタ部73のフィルタ係数pyx(n)と、pyyフィルタ部74のフィルタ係数pyy(n)とが最適な状態になっている場合、フィルタリング処理後の受信信号E(n)に混合しているX方向の成分が、フィルタリング処理後の受信信号E(n)によって相殺され、Y方向の成分のみが含まれるY方向の受信信号E(n)が得られることになる。
【0040】
光ファイバ伝送路3によって伝送される途中で光信号の偏波状態は、時間的に変化するため、適応的な制御によって偏波分離を行う必要がある。係数算出部76-1,76-2は、偏波状態の時間的な変化に追随するために、pxxフィルタ部71、pxyフィルタ部72、pyxフィルタ部73、pyyフィルタ部74に適用されるフィルタ係数pxx(n),pxy(n),pyx(n),pyy(n)を、受信信号E(n),E(n)のサンプリング間隔ごとに更新するための係数を算出する。
【0041】
係数算出部76-1は、複素加算部75-1が出力するX方向の受信信号E(n)を取り込む。係数算出部76-1は、取り込んだ受信信号E(n)に基づいて次式(1)に示す係数値を算出する。係数算出部76-1は、算出した係数値をpxxフィルタ部71と、pxyフィルタ部72とに出力する。
【0042】
【数1】
【0043】
係数算出部76-2は、複素加算部75-2が出力するY方向の受信信号E(n)を取り込む。係数算出部76-2は、取り込んだ受信信号E(n)に基づいて次式(2)に示す係数値を算出する。係数算出部76-2は、算出した係数値をpyxフィルタ部73と、pyyフィルタ部74とに出力する。なお、式(1)及び式(2)におけるμは、ステップサイズバラメータである。
【0044】
【数2】
【0045】
xxフィルタ部71は、係数算出部76-1が出力する係数値を取り込む。pxxフィルタ部71は、取り込んだ係数値と、サンプル番号nのフィルタ係数pxx(n)と、サンプル番号nのX方向の受信信号E(n)の複素共役とに基づいて、次式(3)により、サンプル番号n+1に対応するフィルタ係数pxx(n+1)を算出する。
【0046】
【数3】
【0047】
xyフィルタ部72は、係数算出部76-1が出力する係数値を取り込む。pxyフィルタ部72は、取り込んだ係数値と、サンプル番号nのフィルタ係数pxy(n)と、サンプル番号nのY方向の受信信号E(n)の複素共役とに基づいて、次式(4)により、サンプル番号n+1に対応するフィルタ係数pxy(n+1)を算出する。
【0048】
【数4】
【0049】
yxフィルタ部73は、係数算出部76-2が出力する係数値を取り込む。pyxフィルタ部73は、取り込んだ係数値と、サンプル番号nのフィルタ係数pyx(n)と、サンプル番号nのX方向の受信信号E(n)の複素共役とに基づいて、次式(5)により、サンプル番号n+1に対応するフィルタ係数pyx(n+1)を算出する。
【0050】
【数5】
【0051】
yyフィルタ部74は、係数算出部76-2が出力する係数値を取り込む。pyyフィルタ部74は、取り込んだ係数値と、サンプル番号nのフィルタ係数pyy(n)と、サンプル番号nのY方向の受信信号E(n)の複素共役とに基づいて、次式(6)により、サンプル番号n+1に対応するフィルタ係数pyy(n+1)を算出する。
【0052】
【数6】
【0053】
これにより、偏波分離部22によって、信号検知部34が検知した受信信号E(n),E(n)に対して、偏波状態の時間的な変化に対して適応的な偏波分離が行われることになる。
【0054】
なお、送信装置1が、第2の単一偏波変調方式で送信した場合、送信装置1が送信する光信号において、X偏波光には、送信信号が重畳されており、Y偏波光には送信信号が重畳されていない状態になる。受信装置2が、第2の単一偏波変調方式で送信された光信号を受信した場合、偏波分離部22によって偏波分離が行われることにより、偏波分離部22のフィルタの特性のために、X方向の受信信号E(n)と、Y方向の受信信号E(n)とは、ほぼ同一の振幅値を有することになる。
【0055】
受信信号比較部23は、偏波分離部22が偏波分離した受信信号E(n),E(n)の変化のパターンが類似しているか否かを判定する。受信信号比較部23は、差分合計算出部41と、閾値判定部42とを備える。
【0056】
差分合計算出部41は、信号検知部34から信号検知情報を受けると、偏波分離部22が偏波分離した受信信号E(n),E(n)の中から予め定められる一定期間、すなわち予め定められるサンプル数であって時系列において連続したサンプル数の受信信号E(n),E(n)を選択する。差分合計算出部41は、同一のサンプル番号の受信信号E(n)と受信信号E(n)の組み合わせの各々において、差の絶対値を算出する。差分合計算出部41は、算出した複数の差の絶対値の合計を算出する。
【0057】
閾値判定部42は、差分合計算出部41が算出した差の絶対値の合計と、予め定められる閾値とに基づいて、予め定められる一定期間における受信信号E(n)の変化のパターンと、受信信号E(n)の変化のパターンとが類似しているか否かを判定する。
【0058】
閾値判定部42は、変化のパターンが類似していると判定した場合、受信信号E(n),E(n)のいずれか一方を信号復号部24-1に出力する。なお、図3では、閾値判定部42が、受信信号E(n)を出力する例を示している。閾値判定部42は、変化のパターンが類似していないと判定した場合、受信信号E(n),E(n)の両方を信号復号部24-2に出力する。
【0059】
信号復号部24-1は、キャリアリカバリ部51と、復号化部52とを備えており、閾値判定部42が出力する受信信号E(n),E(n)のいずれか一方から一系列の送信信号を復号する。信号復号部24-2は、キャリアリカバリ部61-1,61-2と、復号化部62-1,62-2とを備えており、受信信号E(n),E(n)の各々から二系列の送信信号を復号する。キャリアリカバリ部51,61-1,61-2の各々は、受信信号比較部23から与えられる受信信号に対して、周波数オフセット補償処理と、位相補償処理とを含むキャリアリカバリ処理を行う。
【0060】
ここで、周波数オフセット補償処理とは、送信装置1が備える信号光光源11が生成する信号光の中心周波数と、受信装置2が備える局部発振光源31が生成する局発光の中心周波数とにズレが生じている場合、中心周波数のズレを補償する処理である。位相補償処理とは、送信装置1が備える信号光光源11が生成する信号光と、受信装置2が備える局部発振光源31が生成する局発光との位相差を補償する処理である。
【0061】
復号化部52,62-1,62-2の各々は、各々に接続するキャリアリカバリ部51,61-1,61-2がキャリアリカバリ処理した後の受信信号に対してシンボル判定などの復号化処理を行って送信信号を復元する。
【0062】
すなわち、信号復号部24-1は、受信信号比較部23から与えられる受信信号E(n),E(n)のいずれか一方の一系列の受信信号に対してキャリアリカバリ処理を行い、更に、復号化処理を行って一系列の送信信号を復元する。信号復号部24-2は、受信信号比較部23から与えられる受信信号E(n),E(n)の二系列の受信信号の各々に対してキャリアリカバリ処理を行い、更に、復号化処理を行って二系列の受信信号の各々に対応する二系列の送信信号を復元する。
【0063】
(第1の実施形態の送信装置による処理)
図5は、送信装置1による処理の流れを示すフローチャートである。送信装置1の利用者は、操作部17を操作して、偏波多重変調方式、第1の単一偏波変調方式及び第2の単一偏波変調方式のいずれか1つの変調方式を選択する(ステップSta1)。操作部17は、偏波多重変調方式が選択された場合、変調方式を示す情報として偏波多重変調方式を示す情報を変調信号切替部16に出力する。操作部17は、第1の単一偏波変調方式が選択された場合、変調方式を示す情報として第1の単一偏波変調方式を示す情報を変調信号切替部16に出力する。操作部17は、第2の単一偏波変調方式が選択された場合、変調方式を示す情報として第2の単一偏波変調方式を示す情報を変調信号切替部16に出力する。
【0064】
変調信号切替部16は、操作部17が出力する変調方式を示す情報を取り込む。変調信号切替部16は、取り込んだ変調方式を示す情報の種類を判定する(ステップSta2)。変調信号切替部16は、取り込んだ変調方式を示す情報が、偏波多重変調方式を示す情報であると判定した場合(ステップSta2、偏波多重変調方式)、送信信号生成部14-1の接続端をIQ変調部13-1の接続端に接続し、送信信号生成部14-2の接続端をIQ変調部13-2の接続端に接続する(ステップSta3-1)。IQ変調部13-1は、偏光ビームスプリッタ12から出力されたX偏波光を、変調信号切替部16を経由して与えられる送信信号生成部14-1が生成した送信信号によって変調し、変調した被変調光を偏波多重部15に出力する。IQ変調部13-2は、偏光ビームスプリッタ12から出力されたY偏波光を、変調信号切替部16を経由して与えられる送信信号生成部14-2が生成した送信信号によって変調し、変調した被変調光を偏波多重部15に出力する(ステップSta4-1)。
【0065】
変調信号切替部16は、取り込んだ変調方式を示す情報が、第1の単一偏波変調方式を示す情報であると判定した場合(ステップSta2、第1の単一偏波変調方式)、送信信号生成部14-1の接続端をIQ変調部13-1の接続端と、IQ変調部13-2の接続端とに接続する(ステップSta3-2)。IQ変調部13-1は、偏光ビームスプリッタ12から出力されたX偏波光を、変調信号切替部16を経由して与えられる送信信号生成部14-1が生成した送信信号によって変調し、変調した被変調光を偏波多重部15に出力する。IQ変調部13-2は、偏光ビームスプリッタ12から出力されたY偏波光を、変調信号切替部16を経由して与えられる送信信号生成部14-1が生成した送信信号によって変調し、変調した被変調光を偏波多重部15に出力する(ステップSta4-2)。
【0066】
変調信号切替部16は、取り込んだ変調方式を示す情報が、第2の単一偏波変調方式を示す情報であると判定した場合(ステップSta2、第2の単一偏波変調方式)、送信信号生成部14-1の接続端をIQ変調部13-1の接続端に接続する(ステップSta3-3)。IQ変調部13-1は、偏光ビームスプリッタ12から出力されたX偏波光を、変調信号切替部16を経由して与えられる送信信号生成部14-1が生成した送信信号によって変調し、変調した被変調光を偏波多重部15に出力する。IQ変調部13-2は、変調信号切替部16より送信信号が与えられないため変調を行わず、偏光ビームスプリッタ12から出力されたY偏波光を、そのまま偏波多重部15に出力する(ステップSta4-3)。
【0067】
偏波多重部15は、IQ変調部13-1,13-2の各々が出力する光を偏波多重して光信号を生成し、生成した光信号を光ファイバ伝送路3に送出する(ステップSta5)。
【0068】
これにより、伝送システム100の利用者が、偏波多重変調方式を選択した場合、送信装置1は、X偏波光が、送信信号生成部14-1が生成する送信信号によって変調され、Y偏波光が、送信信号生成部14-2が生成する送信信号によって変調されている状態で、X偏波光とY偏波光とが偏波多重された光信号を送信することになる。伝送システム100の利用者が、第1の単一偏波変調方式を選択した場合、送信装置1は、X偏波光とY偏波光の各々が、送信信号生成部14-1が生成する送信信号によって変調されている状態で、X偏波光とY偏波光とが偏波多重された光信号を送信することになる。伝送システム100の利用者が、第2の単一偏波変調方式を選択した場合、送信装置1は、X偏波光が、送信信号生成部14-1が生成する送信信号によって変調され、Y偏波光が変調されていない状態で、X偏波光とY偏波光とが偏波多重された光信号を送信することになる。
【0069】
なお、上記の第1の実施形態の送信装置1による処理では、送信信号生成部14-1,14-2は、それぞれ異なる送信信号を継続して生成していることを前提としている。これに対して、操作部17は、偏波多重変調方式を示す情報を変調信号切替部16に出力する場合、送信信号生成部14-1,14-2の各々に送信信号の生成の開始を指示する送信信号生成指示信号を出力し、送信信号生成部14-1,14-2の各々は、送信信号生成指示信号を受けて、それぞれ異なる送信信号の生成を開始するようにしてもよい。操作部17は、第1または第2の単一偏波変調方式を示す情報を変調信号切替部16に出力する場合、送信信号生成部14-2が生成する送信信号は送信対象にはならないため、送信信号生成部14-1のみに送信信号生成指示信号を出力し、送信信号生成部14-1は、送信信号生成指示信号を受けて送信信号の生成を開始するようにしてもよい。
【0070】
上記の第1の実施形態の送信装置1では、変調信号切替部16は、取り込んだ変調方式を示す情報が、第2の単一偏波変調方式を示す情報である場合、ステップSta3-3において、送信信号生成部14-1の接続端をIQ変調部13-1の接続端に接続している。これに対して、変調信号切替部16は、ステップSta3-3において、送信信号生成部14-1の接続端をIQ変調部13-2の接続端に接続するようにしてもよい。このようにした場合、偏波多重部15は、Y偏波光が、送信信号生成部14-1が生成する送信信号によって変調され、X偏波光が変調されていない状態で、X偏波光とY偏波光とが偏波多重された光信号を生成して送信することになる。
【0071】
(第1の実施形態の受信装置による処理)
図6は、受信装置2の受信信号比較部23と、信号復号部24-1,24-2とによる処理の流れを示すフローチャートである。図5の処理が開始される前に、以下の処理が行われる。
【0072】
受信装置2の受信部21のコヒーレント受信部32は、送信装置1が送信した光信号を、光ファイバ伝送路3を通じて受信する。コヒーレント受信部32は、局部発振光源31が出力する局発光を用いて、受信した光信号をコヒーレント検波して、受信した光信号からX方向の受信信号Eと、Y方向の受信信号Eとを生成する。コヒーレント受信部32は、生成した受信信号E,Eをクロック同期部33に出力する。
【0073】
クロック同期部33は、コヒーレント受信部32が出力した受信信号E,Eを取り込む。クロック同期部33は、取り込んだ受信信号E,Eに対してクロック同期を行い、クロック信号にしたがったサンプリング間隔ごとの受信信号E(n),E(n)を生成する。クロック同期部33は、生成した受信信号E(n),E(n)を信号検知部34に出力する。
【0074】
信号検知部34は、クロック同期部33が出力した受信信号E(n),E(n)を取り込む。信号検知部34は、取り込んだ受信信号E(n),E(n)の中から予め定められる強度値を超える強度値を有する信号を検知する。信号検知部34は、検知した信号を偏波分離部22に出力すると共に、信号検知情報を受信信号比較部23の差分合計算出部41に出力する。なお、信号検知部34は、予め定められる強度値を超える強度値を有する受信信号E(n),E(n)を連続して検知した場合、先頭の受信信号E(n),E(n)に対する信号検知情報を出力し、その後に続く受信信号E(n),E(n)に対しては信号検知情報を出力しないものとする。
【0075】
偏波分離部22は、信号検知部34が出力した受信信号E(n),E(n)を取り込み、取り込んだ受信信号E(n),E(n)に対して偏波分離を行い、偏波分離した受信信号E(n),E(n)を生成する。偏波分離部22は、偏波分離した受信信号E(n),E(n)を受信信号比較部23の差分合計算出部41に出力する。
【0076】
送信装置1による光信号の送信が継続する間、受信装置2の受信部21と、偏波分離部22は、上記の処理を継続して行う。
【0077】
受信信号比較部23の差分合計算出部41が信号検知部34から信号検知情報を受けると、図5に示すフローチャートの処理が開始される。差分合計算出部41は、偏波分離部22が出力した受信信号E(n),E(n)を取り込む。差分合計算出部41は、信号検知情報を受けた時点で取り込んでいる受信信号E(n),E(n)を先頭として予め定められるサンプル数であって時系列において連続したサンプル数の受信信号E(n),E(n)を選択する。差分合計算出部41は、同一のサンプル番号の受信信号E(n)と受信信号E(n)の組み合わせの各々において、差の絶対値を算出する。差分合計算出部41は、算出した複数の差の絶対値の合計を算出する。
【0078】
すなわち、差分合計算出部41が、信号検知情報を受けた時点で取り込んだ受信信号E(i),E(i)のサンプル番号iが「n」である場合、次式(7)に基づいて、差の絶対値の合計を算出する(ステップSra1)。
【0079】
【数7】
【0080】
なお、上記の式(7)において、Nが予め定められるサンプル数である。Nは、2以上の整数であり、望ましくは、受信信号E(n),E(n)の変化のパターンの類似度合いが特定できる程度の大きさの値が予め定められる。差分合計算出部41は、取り込んだ受信信号E(n),E(n)と、差の絶対値の合計の値とを閾値判定部42に出力する。閾値判定部42は、差分合計算出部41が出力した受信信号E(n),E(n)と、差の絶対値の合計の値とを取り込む。閾値判定部42は、差分合計算出部41が出力した差の絶対値の合計の値が、予め定められる閾値未満であるか否かに基づいて、受信信号E(n),E(n)の各々の変化のパターンが類似しているか否かを判定する(ステップSra2)。
【0081】
閾値判定部42は、差の絶対値の合計の値が、予め定められる閾値未満である場合、受信信号E(n),E(n)の各々の変化のパターンが類似していると判定する(ステップSra2、Yes)。受信信号E(n),E(n)の各々の変化のパターンが類似しているということは、言い換えると、送信装置1が送信した光信号が第1の単一偏波変調方式、または、第2の単一偏波変調方式によって生成された光信号とみなすことができるということになる。したがって、閾値判定部42は、取り込んだ受信信号E(n),E(n)のうちいずれか一方を信号復号部24-1に出力する。ここでは、閾値判定部42は、受信信号E(n)を信号復号部24-1に出力するものとする。
【0082】
信号復号部24-1のキャリアリカバリ部51は、閾値判定部42が出力する受信信号E(n)を取り込み、取り込んだ受信信号E(n)に対してキャリアリカバリ処理を行う。キャリアリカバリ部51は、キャリアリカバリ処理後の受信信号E(n)を復号化部52に出力する(ステップSra3)。
【0083】
復号化部52は、キャリアリカバリ部51が出力するキャリアリカバリ処理後の受信信号E(n)を取り込み、取り込んだ受信信号E(n)に対して復号化処理を行って、送信信号生成部14-1が生成した送信信号を復元する。復号化部52は、復元した送信信号を外部に出力する(ステップSra4)。
【0084】
一方、閾値判定部42は、差の絶対値の合計の値が、予め定められる閾値未満でない場合、受信信号E(n),E(n)の各々の変化のパターンが類似してないと判定する(ステップSra2、No)。受信信号E(n),E(n)の各々の変化のパターンが類似していないということは、言い換えると、送信装置1が送信した光信号が偏波多重変調方式によって生成された光信号とみなすことができるということになる。したがって、閾値判定部42は、取り込んだ受信信号E(n)を信号復号部24-2のキャリアリカバリ部61-1に出力し、受信信号E(n)を信号復号部24-2のキャリアリカバリ部61-2に出力する。
【0085】
キャリアリカバリ部61-1は、閾値判定部42が出力する受信信号E(n)を取り込み、取り込んだ受信信号E(n)に対してキャリアリカバリ処理を行う。キャリアリカバリ部61-1は、キャリアリカバリ処理後の受信信号E(n)を復号化部62-1に出力する。キャリアリカバリ部61-2は、閾値判定部42が出力する受信信号E(n)を取り込み、取り込んだ受信信号E(n)に対してキャリアリカバリ処理を行う。キャリアリカバリ部61-2は、キャリアリカバリ処理後の受信信号E(n)を復号化部62-2に出力する。(ステップSra5)。
【0086】
復号化部62-1は、キャリアリカバリ部61-1が出力するキャリアリカバリ処理後の受信信号E(n)を取り込み、取り込んだ受信信号E(n)に対して復号化処理を行って、送信信号生成部14-1が生成した送信信号を復元する。復号化部62-2は、キャリアリカバリ部61-2が出力するキャリアリカバリ処理後の受信信号E(n)を取り込み、取り込んだ受信信号E(n)に対して復号化処理を行って、送信信号生成部14-2が生成した送信信号を復元する。復号化部62-1,62-2は、復元した送信信号を外部に出力する(ステップSra6)。
【0087】
上記の第1の実施形態の受信装置2において、第1の信号復号部である信号復号部24-1は、受信信号E(n),E(n)のいずれか一方から一系列の送信信号を復号する。第2の信号復号部である信号復号部24-2は、受信信号E(n),E(n)から二系列の送信信号を復号する。受信信号比較部23は、偏波分離部22が偏波分離した受信信号E(n),E(n)の変化のパターンが類似しているか否かを判定し、受信信号E(n),E(n)の変化のパターンが類似していると判定した場合、偏波分離部22が偏波分離した受信信号E(n),E(n)のいずれか一方を信号復号部24-1に出力し、受信信号E(n),E(n)の変化のパターンが類似していないと判定した場合、偏波分離部22が偏波分離した受信信号E(n),E(n)を信号復号部24-2に出力する。これにより、受信装置2は、受信信号比較部23が受信した光信号が偏波多重変調方式によって変調された光信号であると判定した場合、2つのキャリアリカバリ部61-1,61-2と、2つの復号化部62-1,62-2を備える信号復号部24-2を用いて復号の処理を行うことになる。これに対して、受信装置2は、受信信号比較部23が受信した光信号が第1の単一偏波変調方式と第2の単一偏波変調方式のいずれか一方の変調方式で変調された光信号であると判定した場合、1つのキャリアリカバリ部51と、1つの復号化部52を備える信号復号部24-1を用いて復号の処理を行うことになる。したがって、受信装置2は、受信信号比較部23の判定結果にしたがって、適切な信号復号部24-1,24-2を切り替えて使用するので、演算リソースを適切に利用することができ、リソース利用効率の向上や消費電力の低減を図ることが可能になる。言い換えると、送信装置1において適用された偏波を利用する変調方式が不明であっても、受信装置2が受信した信号に基づいて変調方式を特定し、特定した変調方式に応じて使用する演算リソース選択することにより、使用する演算リソースを抑えつつ、簡易な構成で送信装置1が送信する信号を復調することが可能になる。
【0088】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態による受信装置2aの構成を示すブロック図である。第2の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、以下、第1の実施形態と異なる構成について説明する。なお、第2の実施形態の伝送システムは、送信装置1と、受信装置2aと、光ファイバ伝送路3とを備える構成であり、以下、第2の実施形態の伝送システムを示す場合、符号「100a」を付して、伝送システム100aという。
【0089】
受信装置2aは、受信部21、偏波分離部22、受信信号比較部23a及び信号復号部24-1,24-2を備える。受信信号比較部23aは、差分合計算出部41、閾値判定部42a及び複数期間判定部43を備える。
【0090】
閾値判定部42aは、差分合計算出部41が算出した差の絶対値の合計と、予め定められる閾値とに基づいて、予め定められる一定期間の受信信号E(n)と、受信信号E(n)とにおける変化のパターンが類似しているか否かを判定する。閾値判定部42aは、受信信号E(n),E(n)と、判定結果とを複数期間判定部43に出力する。
【0091】
複数期間判定部43は、閾値判定部42aが出力する判定結果を、複数の一定期間ごとに収集し、収集した複数の判定結果に基づいて、受信信号E(n),E(n)の各々の変化のパターンが類似しているか否かを判定する。複数期間判定部43は、変化のパターンが類似していると判定した場合、受信信号E(n),E(n)のいずれか一方を信号復号部24-1に出力する。複数期間判定部43は、変化のパターンが類似していないと判定した場合、閾値判定部42aが出力する受信信号E(n),E(n)の両方を信号復号部24-2に出力する。
【0092】
(第2の実施形態の受信装置による処理)
図8は、受信装置2aの受信信号比較部23aと、信号復号部24-1,24-2とによる処理の流れを示すフローチャートである。第1の実施形態と同様に、送信装置1による光信号の送信が継続する間、受信装置2aの受信部21と、偏波分離部22とは、各々が行う処理を継続して行う。
【0093】
受信信号比較部23aの差分合計算出部41が信号検知部34から信号検知情報を受けると、図8に示すフローチャートの処理が開始される。差分合計算出部41は、図6のステップSra1の処理と同一の処理を行う(ステップSrb1)。
【0094】
閾値判定部42aは、差分合計算出部41が出力した受信信号E(n),E(n)を取り込み、取り込んだ受信信号E(n),E(n)を複数期間判定部43に出力する。閾値判定部42aは、差分合計算出部41が出力した差の絶対値の合計の値が、予め定められる閾値未満である場合、受信信号E(n),E(n)の各々の変化のパターンが類似していると判定する。一方、閾値判定部42aは、差分合計算出部41が出力した差の絶対値の合計の値が、予め定められる閾値未満でない場合、受信信号E(n),E(n)の各々の変化のパターンが類似していないと判定する。閾値判定部42aは、判定した判定結果を複数期間判定部43に出力する(ステップSrb2)。
【0095】
複数期間判定部43は、閾値判定部42aが出力する受信信号E(n),E(n)を取り込み、取り込んだ受信信号E(n),E(n)を内部の記憶領域に設けたバッファ領域に書き込んで記憶させる。複数期間判定部43は、閾値判定部42aが出力する判定結果を取り込み、取り込んだ判定結果を内部の記憶領域に書き込んで記憶させる。複数期間判定部43は、内部の記憶領域が記憶する判定結果の数をカウントし、カウントした判定結果の数が、予め定められる数に一致するか否かを判定する。ここで、予め定められる数は、2以上の整数である(ステップSrb4)。
【0096】
複数期間判定部43は、内部の記憶領域が記憶する判定結果の数が、予め定められる数に一致しないと判定した場合(ステップSrb4、No)、差分合計算出部41と、閾値判定部42aとが行うステップSrb1,Srb2の処理を経て、閾値判定部42aが、次の判定結果を出力するのを待機する。複数期間判定部43は、閾値判定部42aが、次の判定結果を出力すると、再びステップSrb3,Srb4の処理を行う。
【0097】
複数期間判定部43は、内部の記憶領域が記憶する判定結果の数が、予め定められる数に一致すると判定した場合(ステップSrb4、Yes)、内部の記憶領域が記憶する判定結果のうち閾値未満であると判定した判定結果及び閾値未満でないと判定した判定結果の各々の数をカウントする(ステップSrb5)。複数期間判定部43は、閾値未満であると判定した判定結果の数が、閾値未満でないと判定した判定結果の数よりも多いか否かを判定することにより、受信信号E(n),E(n)の各々の変化のパターンが類似しているか否かを判定する(ステップSrb6)。
【0098】
複数期間判定部43は、閾値未満であると判定した判定結果の数が、閾値未満でないと判定した判定結果の数よりも多い場合、受信信号E(n),E(n)の各々の変化のパターンが類似していると判定する(ステップSrb6、Yes)。受信信号E(n),E(n)の各々の変化のパターンが類似しているということは、言い換えると、送信装置1が送信した光信号が第1の単一偏波変調方式、または、第2の単一偏波変調方式によって生成された光信号とみなすことができるということになる。したがって、複数期間判定部43は、内部の記憶領域に設けられたバッファ領域が記憶する受信信号E(n),E(n)のうちいずれか一方を信号復号部24-1に出力して、バッファ領域が記憶する受信信号E(n),E(n)を消去する。ここでは、複数期間判定部43は、受信信号E(n)を信号復号部24-1に出力するものとする。その後、ステップSra3の処理と同一の処理が、キャリアリカバリ部51によって行われ(ステップSrb7)、ステップSra4の処理と同一の処理が復号化部52によって行われる(ステップSrb8)。
【0099】
一方、複数期間判定部43は、閾値未満であると判定した判定結果の数が、閾値未満でないと判定した判定結果の数よりも多くない場合、受信信号E(n),E(n)の各々の変化のパターンが類似していないと判定する(ステップSrb6、No)。受信信号E(n),E(n)の各々の変化のパターンが類似していないということは、言い換えると、送信装置1が送信した光信号が偏波多重変調方式によって生成された光信号とみなすことができるということになる。したがって、複数期間判定部43は、内部の記憶領域に設けられたバッファ領域が記憶する受信信号E(n)を信号復号部24-2のキャリアリカバリ部61-1に出力し、受信信号E(n)を信号復号部24-2のキャリアリカバリ部61-2に出力して、バッファ領域が記憶する受信信号E(n),E(n)を消去する。その後、ステップSra5の処理と同一の処理が、キャリアリカバリ部61-1,61-2によって行われ(ステップSrb9)、ステップSra6の処理と同一の処理が復号化部62-1,62-2によって行われる(ステップSrb10)。
【0100】
上記の第2の実施形態の受信装置2aにおいて、受信信号比較部23aは、予め定められる一定期間の受信信号E(n),E(n)の変化のパターンに基づいて、受信信号E(n),E(n)の変化のパターンが類似しているか否かを判定した判定結果を、複数の一定期間ごとに収集し、収集した複数の判定結果に基づいて、受信信号E(n),E(n)の変化のパターンが類似しているか否かを判定する。光信号を受信した際の偏波状態によっては、短いサンプリング期間では、偏波分離部22によって偏波分離が精度よく行われない場合がある。このような場合に、第2の実施形態の受信装置2aを用いることで、複数期間判定部43を備える受信信号比較部23aが、第1の実施形態よりも長い期間に含まれるより多くの受信信号E(n),E(n)を対象として、受信信号E(n),E(n)の各々の変化のパターンが類似しているか否かを判定することが可能になる。そのため、第2の実施形態の受信装置2aは、第1の実施形態の受信装置2が奏する効果に加えて、第1の実施形態の受信装置2よりも、より正確に受信した光信号の変調方式を判定することが可能になる。
【0101】
(第3の実施形態)
図9は、第3の実施形態による送信装置1aの構成を示すブロック図である。図10は、第3の実施形態による受信装置2bの構成を示すブロック図である。第3の実施形態の伝送システムは、送信装置1aと、受信装置2bと、光ファイバ伝送路3を備えることになり、以下、第3の実施形態の伝送システムを示す場合、符号「100b」を付して伝送システム100bという。第3の実施形態において、第1及び第2の実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、以下、第1及び第2の実施形態と異なる構成について説明する。
【0102】
(第3の実施形態の送信装置について)
図9に示すように、送信装置1aは、偏波生成部10、変調部13a、送信信号生成部14-1,14-2、偏波多重部15、変調信号切替部16及び操作部17を備える。変調部13aは、光強度変調部13a-1,13a-2を備える。すなわち、送信装置1aは、第1の実施形態の送信装置1において、IQ変調部13-1,13-2の各々に替えて、光強度変調を行う光強度変調部13a-1,13a-2を備える。光強度変調部13a-1,13a-2の各々は、各々に与えられるX偏波光とY偏波光に対して、各々に与えられる送信信号に基づいて、OOK(On Off Keying)の変調を行う。したがって、送信装置1aは、光強度変調部13a-1に送信信号生成部14-1が生成する送信信号が与えられ、光強度変調部13a-2に送信信号生成部14-2が生成する送信信号が与えられる場合、信号光光源11が出力する光に対して偏波多重OOKの変調を行うことになる。
【0103】
第3の実施形態の送信装置1aにおける処理は、図5に示した第1の実施形態の送信装置1による処理において、ステップSta4-1,Sta4-2,Sta4-3の処理において、位相変調ではなく、光強度変調部13a-1,13a-2によって強度変調が行われる点以外については、図5に示した第1の実施形態の送信装置1と同一の処理が行われる。
【0104】
(第3の実施形態の受信装置について)
図10に示すように、受信装置2bは、受信部21a、偏波分離部22、受信信号比較部23及び信号復号部24a-1,24a-2を備える。受信部21aは、偏光ビームスプリッタ35、光検出部36-1,36-2、クロック同期部33及び信号検知部34を備える。偏光ビームスプリッタ35は、光ファイバ伝送路3が伝送する光信号を受信し、受信した光信号をX偏波光と、Y偏波光とに分離する。
【0105】
光検出部36-1は、偏光ビームスプリッタ35が分離して出力するX偏波光を取り込み、取り込んだX偏波光を光強度検波して光強度振幅成分をアナログの電気信号として検出する。光検出部36-1は、検出した光強度振幅成分をアナログ・デジタル変換することにより、X偏波光に対応する光強度振幅成分をデジタルの電気信号である受信信号Eに変換する。光検出部36-2は、偏光ビームスプリッタ35が分離して出力するY偏波光を取り込み、取り込んだY偏波光を光強度検波して光強度振幅成分をアナログの電気信号として検出する。光検出部36-2は、検出した光強度振幅成分をアナログ・デジタル変換することにより、Y偏波光に対応する光強度振幅成分をデジタルの電気信号である受信信号Eに変換する。
【0106】
信号復号部24a-1は、復号化部52を備える。信号復号部24a-2は、復号化部62-1,62-2を備える。信号復号部24a-1,24a-2において、第1及び第2の実施形態と異なり、キャリアリカバリ部51,61-1,61-2を備えないのは、第3の実施形態において、受信装置2aが受信する光信号は、位相変調ではなく、強度変調されているため、周波数オフセット補償と、位相補償が必要でないからである。
【0107】
第3の実施形態の受信装置2bにおける処理は、第1の実施形態において受信部21のコヒーレント受信部32が行う処理に替えて、偏光ビームスプリッタ35と、光検出部36-1,36-2による処理が行われる点と、第1の実施形態において、キャリアリカバリ部51,61-1,61-2が行っていた処理が除外される点以外については、第1の実施形態の受信装置2による処理と同様の処理が行われることになる。
【0108】
これにより、第3の実施形態において、送信装置1aが、偏波多重変調方式、第1の単一偏波変調方式、または、第2の単一偏波変調方式のいずれの変調方式で強度変調した光信号を送信している場合であっても、受信装置2bは、受信信号比較部23が判定する変調方式にしたがって、適切な信号復号部24a-1,24a-2を切り替えて使用するので、演算リソースを適切に利用することができ、リソース利用効率の向上や消費電力の低減を図ることが可能になる。言い換えると、送信装置1aにおいて適用された偏波を利用する変調方式が不明であっても、受信装置2bが受信した信号に基づいて変調方式を特定し、特定した変調方式に応じて使用する演算リソース選択することにより、使用する演算リソースを抑えつつ、簡易な構成で送信装置1aが送信する信号を復調することが可能になる。
【0109】
(各実施形態の他の構成例について)
上記の第3の実施形態において、受信装置2bの受信信号比較部23を、第2の実施形態の受信装置2aが備える受信信号比較部23aに置き換えた構成としてもよい。受信信号比較部23を受信信号比較部23aに置き換えた受信装置2bは、第3の実施形態の受信装置2bが奏する効果に加えて、第3の実施形態の受信装置2bよりも、より正確に受信した光信号の変調方式を判定することが可能になる。
【0110】
第1の実施形態の他の構成例として、第1の実施形態の受信装置2が備える閾値判定部42に替えて、図11に示す閾値判定部42bを適用し、信号復号部24-1に替えて、図11に示す信号復号部24b-1を適用するようにしてもよい。信号復号部24b-1は、加算部50、キャリアリカバリ部51及び復号化部52を備えており、第1の実施形態の信号復号部24-1とは、加算部50を備えている点で異なっている。閾値判定部42bは、図6のステップSra2において、受信信号E(n),E(n)の各々の変化のパターンが類似していると判定した場合、受信信号E(n),E(n)の両方を信号復号部24-1に出力する点以外については、第1の実施形態の閾値判定部42と同一の構成を備える。上記したように第1または第2の単一偏波変調方式の場合、受信信号E(n)と、受信信号E(n)とは、ほぼ同一の信号になる。そのため、加算部50により、受信信号E(n)と、受信信号E(n)とを加算した受信信号E(n)+E(n)に対して、キャリアリカバリ部51がキャリアリカバリ処理し、キャリアリカバリ後の受信信号E(n)+E(n)を復号化部52が復号することにより送信信号生成部14-1が生成した送信信号を復号することができる。すなわち、第1の実施形態の信号復号部24-1が、二系列の受信信号E(n),E(n)の中のいずれか一方の一系列の受信信号から一系列の送信信号を復号しているのに対して、信号復号部24b-1は、二系列の受信信号E(n),E(n)から一系列の受信信号E(n)+E(n)を生成して一系列の送信信号を復号していることになる。
【0111】
図11に示した構成と同様に、第2の実施形態の受信装置2aが備える信号復号部24-1を、信号復号部24b-1に置き換え、受信信号比較部23aが備える複数期間判定部43が、図8のステップSrb6において、受信信号E(n),E(n)の各々の変化のパターンが類似していると判定した場合、受信信号E(n),E(n)の両方を信号復号部24b-1に出力するようにしてもよい。第3の実施形態の受信装置2bにおいて、閾値判定部42に替えて閾値判定部42bを備え、信号復号部24a-1が加算部50を備え、加算部50を閾値判定部42bと、復号化部52とに接続する構成としてもよい。
【0112】
上記の第1及び第2の実施形態では、一例として、送信装置1のIQ変調部13-1,13-2が、QSPKの変調方式で変調する例を示した。これに対して、IQ変調部13-1,13-2が、例えば、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)などのQPSKよりも高多値変調方式の変調を行うようにしてもよい。この場合、受信装置2,2aは、偏波分離部22に替えて、高多値変調方式において偏波分離を行う下記の参考文献に示されるような偏波分離部を備える必要がある。受信装置2,2aが備えるコヒーレント受信部32は、高多値変調方式で変調された光信号をコヒーレント検波する構成を備える必要がある。
【0113】
[参考文献:Irshaad Fatadin, et al., “Blind Equalization and Carrier Phase Recovery in a 16-QAM Optical Coherent System”, JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY, VOL. 27, NO. 15, AUGUST 1, 2009]
【0114】
上記の第1から第3の実施形態及び各実施形態の他の構成例において、共通する機能部、例えば、受信装置2におけるキャリアリカバリ部51,61-1,61-2の各々及び復号化部52,62-1,62-2の各々について、ハードウェアで構成する場合には、回路を共有したり、ソフトウェアで構成する場合には、関数を共有したりするようにしてもよい。
【0115】
上記の第1及び第3の実施形態及び各実施形態の他の構成例において、受信装置2,2bにおいて、閾値判定部42は、図6のステップSra2において、受信信号E(n),E(n)の各々の変化のパターンが類似していると判定した場合、受信信号E(n)を信号復号部24-1,24a-1に出力するようにしている。これに対して、閾値判定部42は、ステップSra2において、受信信号E(n),E(n)の各々の変化のパターンが類似していると判定した場合、受信信号E(n)を信号復号部24-1,24a-1に出力するようにしてもよい。複数期間判定部43は、図8のステップSrb6において、受信信号E(n),E(n)の各々の変化のパターンが類似していると判定した場合、受信信号E(n)を信号復号部24-1に出力するようにしている。これに対して、複数期間判定部43は、ステップSrb6において、受信信号E(n),E(n)の各々の変化のパターンが類似していると判定した場合、受信信号E(n)を信号復号部24-1に出力するようにしてもよい。
【0116】
上記の第1から第3の実施形態及び各実施形態の他の構成例において、差分合計算出部41は、信号検知部34から信号検知情報を受けると、信号検知情報を受けた時点で取り込んでいる受信信号E(n),E(n)を先頭として時系列において連続したN個の受信信号E(n),E(n)を選択するようにしている。これに対して、差分合計算出部41は、信号検知部34から信号検知情報を受けると、信号検知情報を受けた時点で取り込んでいる受信信号E(n),E(n)を先頭とするのではなく、受信信号E(n),E(n)を含み、かつ受信信号E(n),E(n)の前後において時系列において連続したN個の受信信号E(n),E(n)を選択するようにしてもよい。
【0117】
上記の第1から第3の実施形態及び各実施形態の他の構成例において、閾値判定部42,42aは、図6のステップSra2、図8のステップSrb2の処理において、差の絶対値の合計の値が、予め定められる閾値未満であるか否かを判定するようにしている。これに対して、閾値判定部42,42aは、閾値の定め方によっては、差の絶対値の合計の値が、閾値以下であるか否かを判定するようにしてもよい。複数期間判定部43は、図8のステップSrb6の処理において、判定結果のうち閾値未満と判定した判定結果の方が多いか否かを判定するようにしている。これに対して、複数期間判定部43は、図8のステップSrb6の処理において、判定結果のうち閾値未満と判定した判定結果の数が、閾値未満と判定しなかった判定結果の数以上であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0118】
上記の第1から第3の実施形態及び各実施形態の他の構成例において、操作部17は、利用者の操作を受けて、偏波変調方式、第1の単一偏波変調方式及び第2の単一偏波変調方式のいずれか1つの変調方式を示す情報を出力するようにしている。これに対して、操作部17に、外部の装置を接続し、外部の装置を経由して利用者が操作部17を操作するようにしてもよいし、操作部17が、外部の装置において実行されているアプリケーションの要求を受けて、変調方式を示す情報を出力するようにしてもよい。
【0119】
上記の第1から第3の実施形態及び各実施形態の他の構成例において、送信装置1,1aは、光信号ではなく、無線信号を生成して空中に放射し、受信装置2,2a,2bが、無線信号を受信する構成としてもよい。
【0120】
上述した実施形態において、操作部17、送信信号生成部14-1,14-2、変調信号切替部16、偏波分離部22、受信信号比較部23,23a、信号復号部24-1,24-2,24a-1,24a-2,24b-1をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0121】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
偏波多重変調方式、または、単一偏波変調方式で変調された信号を受信する受信装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0123】
1…送信装置、2…受信装置、3…光ファイバ伝送路、10…偏波生成部、11…信号光光源、12…偏光ビームスプリッタ、13…変調部、13-1,13-2…IQ変調部、14-1,14-2…送信信号生成部、15…偏波多重部、16…変調信号切替部、17…操作部、21…受信部、22…偏波分離部、23…受信信号比較部、24-1,24-2…信号復号部、31…局部発振光源、32…コヒーレント受信部、33…クロック同期部、34…信号検知部、41…差分合計算出部、42…閾値判定部、51,61-1,61-2…キャリアリカバリ部、52,62-1,62-2…復号化部、100…伝送システム
図1
図2
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図5
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図11
図12