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特許7583331劣化判定装置、劣化判定方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】劣化判定装置、劣化判定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/60 20170101AFI20241107BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241107BHJP
【FI】
G06T7/60 150Z
G06T7/00 610
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023525331
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2021021432
(87)【国際公開番号】W WO2022254715
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100176728
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】濱野 勇臣
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 一旭
(72)【発明者】
【氏名】内堀 大輔
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 洋介
(72)【発明者】
【氏名】荒武 淳
【審査官】藤原 敬利
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-032650(JP,A)
【文献】国際公開第2021/024499(WO,A1)
【文献】特開2020-197797(JP,A)
【文献】特許第6737371(JP,B1)
【文献】特開2016-223815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00- 7/90
G06V 10/00-20/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点検対象物の像を含む画像を示す画像データの入力を受け付ける入力部と、
記点検対象物の像を囲む領域のアスペクト比が大きくなるように前記画像を補正した補正画像を生成する補正部と、
前記補正画像から、前記補正画像に含まれる前記点検対象物の像を示す対象領域を抽出する対象領域抽出部と、
前記補正画像から、前記点検対象物の劣化部分の像を示す劣化領域を検出する劣化領域検出部と、
前記対象領域及び前記劣化領域に基づいて、前記点検対象物の劣化度を判定する判定部と、を備える劣化判定装置。
【請求項2】
前記点検対象物は、添架される物体と、他の物体を添架する添架部材とのいずれか一方又は両方を含む、請求項1に記載の劣化判定装置。
【請求項3】
前記補正部は、射影変換を用いて前記画像を補正することにより、前記補正画像を生成する、請求項1又は2に記載の劣化判定装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記対象領域の面積に対する、前記劣化領域の面積の比率を、前記点検対象物の前記劣化度と判定する、請求項1から3のいずれか一項に記載の劣化判定装置。
【請求項5】
前記補正画像と前記劣化度とを含む表示用データを生成する表示用データ生成部をさらに備える、請求項1からのいずれか一項に記載の劣化判定装置。
【請求項6】
点検対象物の像を含む画像を示す画像データの入力を受け付けるステップと、
記点検対象物の像を囲む領域のアスペクト比が大きくなるように前記画像を補正した補正画像を生成するステップと、
前記補正画像から、前記補正画像に含まれる前記点検対象物の像を示す対象領域を抽出するステップと、
前記補正画像から、前記点検対象物の劣化部分の像を示す劣化領域を検出するステップと、
前記対象領域及び前記劣化領域に基づいて、前記点検対象物の劣化度を判定するステップと、を含む劣化判定方法。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1から5のいずれか一項に記載の劣化判定装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、点検対象物の劣化度を判定する劣化判定装置、劣化判定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
Mask-R-CNN(Convolutional Neural Network)等の深層学習を用いた画像処理を用いて、画像から点検対象物の像を示す領域(以降、「対象領域」という)を抽出することが知られている。点検対象物の像が、画像全体を画定する周縁に対して斜めに延在している場合、上記の深層学習を用いた画像処理を用いることによって、画像の全体、又は点検対象物と背景の一部を含む領域が抽出されることがある。すなわち、高い精度で対象領域が抽出されず、これに起因して、点検対象物の劣化度を高い精度で算出することができないという課題があった。
【0003】
画像に含まれる像の方向を変更する技術として、オルソ補正が知られている(非特許文献1)。オルソ補正においては、画像内のいずれの位置に示されている、物体の像も、該物体の正面が撮像素子に正対して撮像されたように補正される。したがって、オルソ補正が施された画像においては、該画像に像が含まれる物体の位置及び大きさが正確に示される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】”ドローン測量で作成する「オルソ画像」とは?|JDRONE”、[online]、[令和3年5月21日検索]、インターネット<URL:https://jdrone.tokyo/ortho-commentary/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、オルソ補正においては、物体を含む撮像範囲内で、オーバーラップされている領域を有する複数の画像を取得する必要がある。したがって、オーバーラップされている領域を有さない画像において、オルソ補正を用いて、対象領域が適切に抽出されるような補正を行うことができないことがある。このため、点検対象物の劣化度を高い精度で判定することができないという課題が残っている。
【0006】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、点検対象物の劣化度を高い精度で判定することができる劣化判定装置、劣化判定方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本開示に係る劣化判定装置は、点検対象物の像を含む画像を示す画像データの入力を受け付ける入力部と、前記画像に含まれる、少なくとも一部の点検対象物の像を囲む領域のアスペクト比が大きくなるように前記画像を補正した補正画像を生成する補正部と、前記補正画像から、前記補正画像に含まれる前記点検対象物の像を示す対象領域を抽出する対象領域抽出部と、前記補正画像から、前記点検対象物の劣化部分の像を示す劣化領域を検出する劣化領域検出部と、前記対象領域及び前記劣化領域に基づいて、前記点検対象物の劣化度を判定する判定部と、を備える。
【0008】
また、上記課題を解決するため、本開示に係る劣化判定方法は、点検対象物の像を含む画像を示す画像データの入力を受け付けるステップと、前記画像に含まれる、少なくとも一部の点検対象物の像を囲む領域のアスペクト比が大きくなるように前記画像を補正した補正画像を生成するステップと、前記補正画像から、前記補正画像に含まれる前記点検対象物の像を示す対象領域を抽出するステップと、前記補正画像から、前記点検対象物の劣化部分の像を示す劣化領域を検出するステップと、前記対象領域及び前記劣化領域に基づいて、前記点検対象物の劣化度を判定するステップと、を含む。
【0009】
また、上記課題を解決するため、本開示に係るプログラムは、コンピュータを上述した劣化判定装置として機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る劣化判定装置、劣化判定方法、及びプログラムによれば、点検対象物の劣化度を高い精度で判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態に係る劣化判定システムの概略図である。
図2A】画像データが示す画像の一例を示す図である。
図2B図2Aに示す画像が補正されて生成された補正画像の一例を示す図である。
図2C図2Bに示す補正画像から抽出された対象領域の一例を示す図である。
図3A】補正画像の他の例を示す図である。
図3B図3Aに示す補正画像から抽出された対象領域の一例を示す図である。
図3C図3Aに示す対象物の像から検出された劣化領域の一例を示す図である。
図4図1に示す判定部による劣化度の判定を説明するための図である。
図5】表示用データの一例を示す図である。
図6】一実施形態に係る劣化判定装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図7】劣化判定装置のハードウェアブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照して本実施形態の全体構成について説明する。図1は、本実施形態に係る劣化判定システム100の概略図である。
【0013】
図1に示されるように、本実施形態に係る劣化判定システム100は、撮像装置1と、劣化判定装置2とを備える。撮像装置1と、劣化判定装置2とは、通信ネットワークを介して互いに通信する。
【0014】
<撮像装置の構成>
撮像装置1は、撮像部11と、出力部12とを備える。撮像部11は、光学素子、撮像素子等を有するカメラによって構成される。カメラは、望遠カメラであってもよいし、UAV(unmanned aerial vehicle)に搭載された撮影機材等のカメラであってもよい。出力部12は、情報を出力するための出力インターフェースによって構成されてもよいし、外部の装置などの他の機器と通信するための通信インターフェースによって構成されてもよい。通信インターフェースには、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI(Fiber Distributed Data Interface)、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられてもよい。
【0015】
撮像部11は、点検対象物を撮像して、該点検対象物の像を含む画像を生成する。点検対象物は、点検の対象となる設備等の物体であって、橋梁、橋梁添架部材、管路(橋梁添架管路)、管路添架部材等とすることができる。画像は、R(Red)、G(Green)、及びB(Blue)の3色によって表現される画像であってよい。
【0016】
出力部12は、撮像部11によって生成された画像を示す画像データを、通信ネットワークを介して劣化判定装置2に送信する。上述したように、撮像部11によって生成された画像が、R、G、及びBの3色によって表現される画像である場合、画像データは、各画素のRGB値を示すデータとすることができる。
【0017】
<劣化判定装置の構成>
劣化判定装置2は、PC(personal computer)、タブレット等の端末機器であってもよいし、上述した撮像装置1と一体として構成されるコンピュータ機器であってもよい。劣化判定装置2は、入力部21と、データ格納部22と、加工部23と、補正データ格納部24と、検査部25と、出力部26とを備える。入力部21は、情報の入力を受け付ける入力インターフェースによって構成されてもよいし、情報を受信する通信インターフェースによって構成されてもよい。データ格納部22及び補正データ格納部24は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等のメモリによって構成される。加工部23及び検査部25は、制御部(コントローラ)を構成する。制御部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の専用のハードウェアによって構成されてもよいし、プロセッサによって構成されてもよいし、双方を含んで構成されてもよい。出力部26は、情報を出力する出力インターフェースによって構成されてもよいし、情報を送信する通信インターフェースによって構成されてもよい。
【0018】
入力部21は、撮像装置1が点検対象物を撮像することによって生成された画像を示す画像データの入力を受け付ける。入力部21は、例えば、図2Aに示すような、複数の点検対象物である、2本の管路の像I及びIを含む画像を示す画像データの入力を受け付けてもよい。
【0019】
データ格納部22は、入力部21によって入力が受け付けられた画像データを格納する。データ格納部22は、例えば、該データ格納部22に設けられた仮想的なデータ格納領域であるディレクトリに画像データを格納することができる。
【0020】
加工部23は、画像データを加工する。加工部23は、読出部231と、補正部232とを含む。加工部23は、画像サイズの変更、ビットサイズの変更、色空間分解等の任意のデータ加工を行う機能部をさらに含んでいてもよい。
【0021】
読出部231は、データ格納部22によって格納されている画像データを読み出す。このとき、読出部231は、読み出された画像データに、該画像データを一意に識別するための識別子を付与することができる。識別子は、例えば、番号とすることができる。また、識別子は、画像データが入力された順に所定値ずつ加算された番号とすることができる。所定値は1とすることができる。特に、入力部21によって入力された画像が、複数の静止画像によって構成される動画像である場合、読出部231は、動画像を構成する静止画像を示す画像データごとに識別子を付与する。これによって、複数の画像データの入力が受け付けられた場合であっても、後述する各機能部による処理の結果を画像データと対応させることができる。なお、以降において、静止画像のことを単に「画像」という。
【0022】
読出部231は、データ格納部22によって格納されている画像データを読み出すと、該画像データの形式、具体的には該画像データの拡張子を判定してもよい。具体的には、以降で説明する各機能部によって所定の形式の画像データ、すなわち所定の拡張子を有する画像データが処理されるように構成されている場合、読出部231は、画像データの形式が所定の形式であるか否かを判定する。そして、読出部231は、画像データの形式が所定の形式でないと判定されると、該画像データの形式を所定の形式に変換する。また、読出部231は、画像データの形式が所定の形式であると判定されると、該画像データの形式を変換しない。具体的には、読出部231は、画像データの拡張子が所定の拡張子であるか否かを判定する。そして、読出部231は、画像データの拡張子が所定の拡張子でないと判定されると、該画像データの拡張子を所定の拡張子に変換する。また、読出部231は、画像データの拡張子が所定の拡張子であると判定されると、該画像データの拡張子を変換しない。
【0023】
補正部232は、画像データが示す画像に含まれる、少なくとも一部の点検対象物の像を囲む領域のアスペクト比が大きくなるように画像を補正した補正画像を生成する。所定の領域は、バウンディングボックスとすることができる。これにより、バウンディングボックス内に、点検対象物以外の、背景等の被写体が含まれることが低減される。このため、追って詳細に説明する対象領域抽出部251による対象領域の抽出の精度が高くなる。
【0024】
具体的には、補正部232は、点検対象物の像を含む画像を幾何学的に変換することによって補正した補正画像を生成する。補正部232による幾何学的な変換は、アフィン変換、射影変換等とすることができる。
【0025】
例えば、まず、補正部232は、図2Aに示すように、点検対象物の像を含む四角形の領域の頂点となる4点を設定する。図2Aでは、4点の座標は、それぞれP1(x1、y1)、P2(x2、y2)、P3(x3、y3)、P4(x4、y4)で表されている。
【0026】
そして、補正部232は、設定された4点を用いた射影変換により、所定の方向に対する、点検対象物が延在する方向の角度を変換する。これによって、補正部232は、点検対象物の像がバウンディングボックスの辺に沿うような画像に補正した補正画像を生成する。本例では、補正部232は、図2Aに示す座標P1(x1、y1)、P2(x2、y2)、P3(x3、y3)、P4(x4、y4)を頂点とする矩形で囲まれている領域を、それぞれP1’(x1’、y1’)、P2’(x2’、y2’)、P3’(x3’、y3’)、P4’(x4’、y4’)を頂点とする矩形で囲まれている領域に変換することによって補正した補正画像を生成する。このようにして、補正部232は、図2Aに示す点検対象物である管路の像I及びIを、図2Bに示す管路の像I’及びI’に補正した補正画像を生成する。本例では、図2Aに示すような点検対象物を含む領域(バウンディングボックスB)は、図2Bに示すような点検対象物を含む領域(バウンディングボックスB’)に変換され、このように、点検対象物を含む領域のアスペクト比は大きくなっている。
【0027】
補正部232は、射影変換を用いることによって画像を補正した補正画像を生成するが、これに限られず、補正部232は、アフィン変換を用いて画像を補正してもよい。ただし、補正部232がアフィン変換を用いて画像を補正する場合、射影変換を用いての写像を行うことはできない。このため、補正部231は、射影変換を用いることによって、アフィン変換を用いる場合に比べて、高い自由度で画像を補正することができる。
【0028】
また、補正部232が、射影変換を用いて補正した補正画像を生成する構成において、補正部232は、点検対象物の像を含む四角形の領域の頂点となる4点を選択することができるか否かを判定してもよい。例えば、点検対象物が、撮像装置1の撮像面に対向する方向に延在している場合、対象領域が四角形を形成しないことがある。このような場合、補正部232は、4点を選択することができず、上述した補正を行わない。これに伴い、後述する各機能部における処理も行われない。
【0029】
また、補正部232は、補正画像を示す補正画像データに識別子を付与してもよい。補正画像データに付与される識別子は、補正前の画像データに付与された識別子と同一の識別子であってもよいし、補正前の画像データに付与された識別子に関連することが認識され得る、異なる識別子であってもよい。
【0030】
補正データ格納部24は、補正部232が画像を補正することによって生成した補正画像を示す補正画像データを格納する。補正データ格納部24は、所定のディレクトリに補正画像データを格納する。なお、補正データ格納部24が補正データを格納するディレクトリは、加工部23によって用いられるディレクトリと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0031】
検査部25は、補正画像データが示す補正画像に基づいて、該補正画像に含まれる像が示す点検対象物の劣化度を判定する。検査部25は、読出部251と、対象領域抽出部252と、劣化領域検出部253と、判定部254と、表示用データ生成部255とを含む。
【0032】
読出部251は、補正データ格納部24に格納されている補正画像データを読み出す。具体的には、読出部251は、補正部232によって補正された補正画像を示す補正画像データを、補正データ格納部24における所定のディレクトリから読み出す。
【0033】
対象領域抽出部252は、補正画像データが示す補正画像から、点検対象物の像を示す対象領域を抽出する。例えば、対象領域抽出部252は、深層学習手法であるインスタンス・セグメンテーション(例えば、Mask-R-CNN)等によるクラス別のセグメンテーションを用いることによって、補正画像から点検対象物の像を検出する。このような構成において、対象領域抽出部252は、補正画像に含まれる、複数の点検対象物の像をそれぞれ区別して検出することができる。図2B及び図2Cに示す例では、対象領域抽出部252は、図2Bに示す補正画像データが示す画像から、2本の管路の像I及びIをそれぞれ含む領域である、図2Cの実線の矩形に示すような対象領域R及びRを抽出している。
【0034】
また、点検対象物が、3本の管路、及び該3本の管路を添架する添架部材である場合、図3Aに示すように、補正画像データが示す補正画像には、3本の管路の像I、I、及びI、並びに添架部材の像Iが含まれる。このような例において、対象領域抽出部252は、図3Bに示すように、像I、I、I、及びIをそれぞれ示す領域である対象領域R1A、R2A、R3A、及びR4Aを抽出する。
【0035】
劣化領域検出部253は、補正画像データが示す補正画像から、点検対象物における劣化部分の像を示す劣化領域を検出する。劣化領域検出部253は、深層学習手法であるバウンディングボックス、クラス分類、セグメンテーション等を用いて、劣化領域を検出することができる。なお、劣化領域検出部253は、セグメンテーションを用いることによって、画素ごとに劣化を検出することができる。例えば、劣化領域検出部253は、図3Bに示すような対象領域R1A、R2A、R3A、及びR4Aから、図3Cに示すような劣化領域R1B、R2B、R3B、及びR4Bを抽出する。
【0036】
判定部254は、補正画像データが示す補正画像における対象領域及び劣化領域に基づいて、点検対象物の劣化度を判定する。
【0037】
まず、判定部254は、対象領域の面積を算出する。また、判定部254は、複数の対象領域が抽出されている場合、それぞれの対象領域の面積を個別に算出してもよい。判定部254は、対象領域の面積の算出にあたって、点検対象物の像を構成する画素の数である画素数を計数することによって面積を算出してもよい。
【0038】
また、判定部254は、劣化領域の面積を算出する。上述したように、劣化領域検出部253がセグメンテーションを用いて画素ごとに、該画素が像を示す物体の部分の劣化を検出する構成において、判定部254は、劣化が検出された画素の数を計数することによって劣化領域の面積を算出してもよい。この場合、判定部254は、劣化領域検出部253によって検出された劣化している画素を用いて、劣化領域の面積を効率的に算出することができる。
【0039】
そして、判定部254は、対象領域の面積に対する、劣化領域の面積の比率を、点検対象物の劣化度と判定する。このとき、判定部254は、対象領域を構成する画素の数に対する、劣化領域を構成する画素の数の比率を劣化度と判定してもよい。
【0040】
一例として、図4に示すように、判定部254は、補正画像データが示す補正画像のうち、対象領域RiA(i=1~N(Nは点検対象物の数))と劣化領域Rとの論理積を算出することによって、劣化領域RiBの画素数Yiを算出する。すなわち、判定部254は、対象領域RiAを構成する画素であって、かつ、劣化領域Rを構成する画素の数Yi、すなわち、劣化領域RiBを構成する画素の数Yiを算出する。そして、対象領域RiAの画素数Xiに対する劣化領域RiBの画素数Yiの比率Yi/Xiを劣化度と判定する。
【0041】
表示用データ生成部255は、判定部254によって判定された劣化度を示す表示用データを生成する。表示用データ生成部255は、補正画像と、該補正画像に含まれる像に対応する点検対象物の劣化度とを含む表示用データを生成してもよい。また、表示用データ生成部255は、図5に示すような、補正画像データが示す補正画像に劣化領域を示す加工が施された加工画像と、該加工画像に像が含まれる点検対象物それぞれの劣化度とを示す表示用データを生成してもよい。表示用データ生成部255は、図5に示す例のように劣化度を示すとともに、あるいは劣化度を示すことに代えて、劣化度に基づいて、補正画像に劣化領域を示す加工を施してもよい。一例として、表示用データ生成部255は、劣化度が10%未満である劣化領域を青色で示し、劣化度が10%以上で30%未満である劣化領域を黄色で示し、劣化度が30%以上である劣化領域を赤色で示してもよい。劣化度に応じて劣化領域に示される色はこれらに限らないが、劣化度が高くなるほど、点検者の注意を喚起しやすい色で劣化領域を示すことが好ましい。これにより、点検者は、劣化度の高い劣化領域を含む点検対象物を即時に認識し、該点検対象物のメンテナンスを迅速に実施することが可能となる。
【0042】
上述したように、補正部232は、補正画像を示す補正画像データに識別子を付与してもよい。このような構成において、表示用データ生成部255は、判定部254によって、複数の補正画像データが示す補正画像それぞれについての複数の劣化度が判定された場合、補正部232は、複数の補正画像データそれぞれに識別子を付与する。これにより、表示用データ生成部255は、識別子を用いて、複数の劣化度それぞれと、補正画像データとを対応付けることができる。したがって、表示用データ生成部255は、複数の補正画像データそれぞれについて、識別子を用いて、補正画像と該補正画像に含まれる像に対応する点検対象物の劣化度とを含む表示用データを生成してもよい。
【0043】
出力部26は、表示用データ生成部255によって生成された表示用データを出力する。具体的には、出力部26は、液晶パネル、有機EL等の表示インターフェースに表示用データを出力してもよい。また、出力部26は、例えば、通信ネットワークを介して、表示用データを他の装置に出力してもよい。
【0044】
<劣化判定装置の動作>
ここで、本実施形態に係る劣化判定装置2の動作について、図6を参照して説明する。図6は、本実施形態に係る劣化判定装置2における動作の一例を示すフローチャートである。図6を参照して説明する劣化判定装置2における動作は本実施形態に係る劣化判定装置2の混雑情報処理方法に相当する。
【0045】
ステップS1において、入力部21が、撮像装置1によって撮像された画像を示す画像データの入力を受け付ける。
【0046】
ステップS2において、データ格納部22が、画像データを格納する。
【0047】
ステップS3において、補正部232が、画像データが示す画像に含まれる、少なくとも一部の点検対象物の像を囲む領域のアスペクト比が大きくなるように画像を補正した補正画像を生成する。このとき、補正部232は、読出部231がデータ格納部22から読み出した画像データによって示される画像を補正した補正画像を生成する。また、読出部231は、画像データの読み出しにあたって、読み出された画像データに、該画像データを一意に識別するための識別子を付与してもよい。また、読出部231は、画像データの形式が所定の形式であるか否かを判定してもよい。そして、読出部231は、画像データの形式が所定の形式でないと判定されると、該画像データの形式を所定の形式に変換する。また、読出部231は、画像データの形式が所定の形式でないと判定されると、該画像データの形式を変換せず、この場合、補正部232は、補正画像を生成しなくてもよい。
【0048】
ステップS4において、補正データ格納部24は、補正部232によって生成された補正画像を示す補正画像データを格納する。
【0049】
ステップS5において、対象領域抽出部252が、補正画像データが示す補正画像から、点検対象物の像を示す対象領域を抽出する。このとき、対象領域抽出部252は、補正データ格納部24に格納され、読出部251によって読み出された補正画像データが示す補正画像から対象領域を抽出することができる。
【0050】
ステップS6において、劣化領域検出部253が、補正画像データが示す補正画像から、点検対象物における劣化部分の像を示す劣化領域を検出する。このとき、対象領域抽出部252は、補正データ格納部24に格納され、読出部251によって読み出された補正画像データが示す補正画像から点検対象物の像を検出することができる。
【0051】
ステップS7において、判定部254が、補正画像データが示す補正画像における対象領域及び劣化領域に基づいて、点検対象物の劣化度を判定する。
【0052】
ステップS8において、表示用データ生成部255が、判定部254によって判定された劣化度を示す表示用データを生成する。このとき、表示用データ生成部255が、識別子を用いて、補正画像と該補正画像に含まれる像に対応する点検対象物の劣化度とを含む表示用データを生成してもよい。
【0053】
ステップS9において、出力部26が、表示用データを出力する。
【0054】
上述したように、本実施形態によれば、劣化判定装置2は、画像に含まれる、少なくとも一部の点検対象物の像を囲む領域のアスペクト比が大きくなるように前記画像を補正した補正画像を生成する。そして、劣化判定装置2は、補正画像から、補正画像に含まれる点検対象物の像を示す対象領域を抽出し、補正画像から、点検対象物の劣化部分の像を示す劣化領域を検出する。そして、劣化判定装置2は、対象領域及び劣化領域に基づいて、点検対象物の劣化度を判定する。これにより、劣化判定装置2は、対象領域を高い精度で検出することができる。したがって、対象領域における劣化領域を高い精度で検出することができ、さらには、対象領域と劣化領域とに基づく劣化度を高い精度で検出することができる。したがって、点検対象物を点検する点検者は、適切に点検対象物の劣化度を認識することができ、該劣化度に基づいて点検対象物を適切にメンテナンスすることができる。
【0055】
また、劣化判定装置2は、対象領域を構成する画素の数に対する、前記劣化領域を構成する画素の数の比率を劣化度と判定してもよい。これにより、劣化判定装置2がセグメンテーションを用いて画素ごとに、該画素が像を示す物体の部分の劣化を検出する構成において、劣化判定装置2は、劣化が検出された画素の数を計数することによって劣化領域の面積を算出することができる。したがって、劣化判定装置2は、劣化領域の面積を効率的に算出することができ、これに伴い、劣化度を効率的に算出することができる。
【0056】
また、劣化判定装置2は、補正画像を示す補正画像データそれぞれに識別子を付与し、識別子を用いて、補正画像と該補正画像に含まれる像に対応する点検対象物の劣化度とを含む表示用データを生成してもよい。これにより、表示用データを参照した点検対象物の点検者は、表示用データに含まれる劣化度が、入力を受け付けた画像データのいずれに対応するのかを認識することができる。したがって、点検者は、画像データが示す画像が像を含む点検対象物を認識することができ、劣化度に応じて、適切にメンテナンスを行うことができる。
【0057】
<プログラム>
上述した劣化判定装置2はコンピュータ101によって実現することができる。また、劣化判定装置2として機能させるためのプログラムが提供されてもよい。また、該プログラムは、記憶媒体に記憶されてもよいし、ネットワークを通して提供されてもよい。図7は、制御装置3及び3-1としてそれぞれ機能するコンピュータ101の概略構成を示すブロック図である。ここで、コンピュータ101は、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、ワークステーション、PC(Personal Computer)、電子ノートパッドなどであってもよい。プログラム命令は、必要なタスクを実行するためのプログラムコード、コードセグメントなどであってもよい。
【0058】
図7に示すように、コンピュータ101は、プロセッサ110と、ROM(Read Only Memory)120と、RAM(Random Access Memory)130と、ストレージ140と、読出部150と、出力部160と、通信インターフェース(I/F)170とを備える。各構成は、バス180を介して相互に通信可能に接続されている。プロセッサ110は、具体的にはCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、SoC(System on a Chip)などであり、同種又は異種の複数のプロセッサにより構成されてもよい。
【0059】
プロセッサ110は、各構成の制御、及び各種の演算処理を実行する。すなわち、プロセッサ110は、ROM120又はストレージ140からプログラムを読み出し、RAM130を作業領域としてプログラムを実行する。プロセッサ110は、ROM120又はストレージ140に記憶されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM120又はストレージ140に、本開示に係るプログラムが格納されている。
【0060】
プログラムは、コンピュータ101が読み取り可能な記憶媒体に記憶されていてもよい。このような記憶媒体を用いれば、プログラムをコンピュータ101にインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記憶された記憶媒体は、非一時的(non-transitory)記憶媒体であってもよい。非一時的記憶媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリなどであってもよい。また、このプログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0061】
ROM120は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM130は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ140は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム及び各種データを格納する。
【0062】
読出部150は、ユーザの入力操作を受け付けて、ユーザの操作に基づく情報を取得する1つ以上の入力インターフェースを含む。例えば、読出部150は、ポインティングデバイス、キーボード、マウスなどであるが、これらに限定されない。
【0063】
出力部160は、情報を出力する1つ以上の出力インターフェースを含む。例えば、出力部160は、情報を映像で出力するディスプレイ、又は情報を音声で出力するスピーカであるが、これらに限定されない。なお、出力部160は、タッチパネル方式のディスプレイである場合には、読出部150としても機能する。
【0064】
通信インターフェース170は、外部の装置と通信するためのインターフェースである。
【0065】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0066】
(付記項1)
点検対象物の像を含む画像を示す画像データの入力を受け付ける入力インターフェースと、
制御部とを備え、
前記制御部は、
前記画像に含まれる、少なくとも一部の点検対象物の像を囲む領域のアスペクト比が大きくなるように前記画像を補正した補正画像を生成し、
前記補正画像から、前記補正画像に含まれる前記点検対象物の像を示す対象領域を抽出し、
前記補正画像から、前記点検対象物の劣化部分の像を示す劣化領域を検出し、
前記対象領域及び前記劣化領域に基づいて、前記点検対象物の劣化度を判定する劣化判定装置。
(付記項2)
前記制御部は、前記対象領域の面積に対する、前記劣化領域の面積の比率を、前記点検対象物の前記劣化度と判定する、付記項1に記載の劣化判定装置。
(付記項3)
前記制御部は、前記対象領域を構成する画素の数に対する、前記劣化領域を構成する画素の数の比率を劣化度と判定する、付記項2に記載の劣化判定装置。
(付記項4)
前記制御部は、前記補正画像と前記劣化度とを含む表示用データを生成する、付記項1から3のいずれか一項に記載の劣化判定装置。
(付記項5)
前記制御部は、
前記補正画像を示す補正画像データそれぞれに識別子を付与し、
前記識別子を用いて、前記補正画像と該補正画像に含まれる像に対応する点検対象物の劣化度とを含む表示用データを生成する、付記項4に記載の劣化判定装置。
(付記項6)
点検対象物の像を含む画像を示す画像データの入力を受け付けるステップと、
前記画像に含まれる、少なくとも一部の点検対象物の像を囲む領域のアスペクト比が大きくなるように前記画像を補正した補正画像を生成するステップと、
前記補正画像から、前記補正画像に含まれる前記点検対象物の像を示す対象領域を抽出するステップと、
前記補正画像から、前記点検対象物の劣化部分の像を示す劣化領域を検出するステップと、
前記対象領域及び前記劣化領域に基づいて、前記点検対象物の劣化度を判定するステップと、を含む劣化判定方法。
(付記項7)
コンピュータによって実行可能なプログラムを記憶した非一時的記憶媒体であって、前記コンピュータを付記項1から5のいずれか一項に記載の劣化判定装置として機能させる、プログラムを記憶した非一時的記憶媒体。
【0067】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記載された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【0068】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本開示の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形又は変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 撮像装置
2 劣化判定装置
11 撮像部
12 出力部
21 入力部
22 データ格納部
23 加工部
24 補正データ格納部
25 検査部
26 出力部
100 劣化判定システム
101 コンピュータ
110 プロセッサ
120 ROM
130 RAM
140 ストレージ
150 読出部
160 出力部
170 通信インターフェース
180 バス
231 読出部
232 補正部
251 読出部
252 対象領域抽出部
253 劣化領域検出部
254 判定部
255 表示用データ生成部
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7