IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電信電話株式会社の特許一覧

特許7583332信号処理方法、信号処理装置及び通信システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】信号処理方法、信号処理装置及び通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/61 20130101AFI20241107BHJP
   H04J 14/06 20060101ALI20241107BHJP
   H04J 14/02 20060101ALI20241107BHJP
   H04L 27/01 20060101ALI20241107BHJP
   H04B 3/04 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
H04B10/61
H04J14/06
H04J14/02 198
H04L27/01
H04B3/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023527206
(86)(22)【出願日】2021-06-08
(86)【国際出願番号】 JP2021021747
(87)【国際公開番号】W WO2022259367
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 政則
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝行
(72)【発明者】
【氏名】木坂 由明
(72)【発明者】
【氏名】宮本 裕
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/175014(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/042838(WO,A1)
【文献】米国特許第9426000(US,B2)
【文献】An Li et al.,103-GBd PDM-16QAM coherent detection highly tolerant to transmitter IQ impairments enabled by real-valued 4 x 4 MIMO equalizer,45th European Conference on Optical Communication (ECOC 2019),IEEE,2019年09月22日,pages.1-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/61
H04J 14/06
H04J 14/02
H04L 27/01
H04B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏波多重された受信信号の各偏波の実数成分及び虚数成分のそれぞれに、受信機の周波数特性を補償するインパルス応答及び波長分散補償用の複素インパルス応答を畳み込む第一補償ステップと、
各偏波ごとに、畳み込みが行われた前記虚数成分に虚数単位を乗算する虚数単位乗算処理を行った後、虚数単位が乗算された前記虚数成分を分岐し、畳み込みが行われた前記実数成分に分岐された一方の前記虚数成分を加算する処理と、畳み込みが行われた前記実数成分を分岐し、虚数単位が乗算された前記虚数成分に分岐された一方の前記実数成分を加算する処理と、畳み込みが行われた前記実数成分、及び、虚数単位が乗算された前記虚数成分をそれぞれ分岐し、分岐された一方の前記実数成分に分岐された一方の前記虚数成分を加算し、分岐されたもう一方の前記実数成分から分岐されたもう一方の前記虚数成分を減算する処理とのいずれかである複素信号処理を行う複素信号処理ステップと、
各偏波ごとに、前記複素信号処理後の各偏波の前記実数成分及び前記虚数成分と前記複素信号処理後の各偏波の前記実数成分及び前記虚数成分それぞれの位相共役とを入力信号として生成する入力信号生成ステップと、
各偏波ごとに、前記入力信号に含まれる各偏波の前記実数成分及び前記虚数成分それぞれに複素インパルス応答を乗算したのち加算し、さらに周波数オフセット補償用の位相回転を施した第一加算信号と、前記入力信号に含まれる各偏波の前記実数成分の前記位相共役及び前記虚数成分の前記位相共役それぞれに複素インパルス応答を乗算したのち加算し、さらに周波数オフセット補償用の前記位相回転とは逆の位相回転を施した第二加算信号とを生成する等化ステップと、
各偏波ごとに、前記第一加算信号と前記第二加算信号とを加算した信号に、送信データバイアス補正信号を加算又は減算する第二補償ステップと、
を有する信号処理方法。
【請求項2】
偏波多重された受信信号の各偏波の実数成分及び虚数成分のそれぞれをサブキャリア毎に分離し、各偏波の各サブキャリアごとに、前記虚数成分に虚数単位を乗算する虚数単位乗算処理を行った後、虚数単位が乗算された前記虚数成分を分岐し、前記実数成分に分岐された一方の前記虚数成分を加算する処理と、前記実数成分を分岐し、虚数単位が乗算された前記虚数成分に分岐された一方の前記実数成分を加算する処理と、畳み込みが行われた前記実数成分、及び、虚数単位が乗算された前記虚数成分をそれぞれ分岐し、分岐された一方の前記実数成分に分岐された一方の前記虚数成分を加算し、分岐されたもう一方の前記実数成分から分岐されたもう一方の前記虚数成分を減算する処理とのいずれかである複素信号処理を行うサブキャリア分離ステップと、
各偏波の各サブキャリアごとに、前記サブキャリアの前記複素信号処理後の各偏波の前記実数成分及び前記虚数成分と、前記受信信号の中心周波数を挟んで前記サブキャリアの周波数領域と対称の周波数領域の他の前記サブキャリアである対称サブキャリアの前記複素信号処理後の各偏波の前記実数成分及び前記虚数成分それぞれの位相共役とを入力信号として生成する入力信号生成ステップと、
各偏波の各サブキャリアごとに、前記入力信号に含まれる前記サブキャリアの各偏波の前記実数成分及び前記虚数成分それぞれに複素インパルス応答を乗算したのち加算し、さらに周波数オフセット補償用の位相回転を施した第一加算信号と、前記入力信号に含まれる前記対称サブキャリアの各偏波の前記実数成分の前記位相共役及び前記虚数成分の前記位相共役それぞれに複素インパルス応答を乗算したのち加算し、さらに周波数オフセット補償用の前記位相回転とは逆の位相回転を施した第二加算信号とを生成する等化ステップと、
各偏波の各サブキャリアごとに、前記第一加算信号と前記第二加算信号とを加算した信号に、送信データバイアス補正信号を加算又は減算する補償ステップと、
を有する信号処理方法。
【請求項3】
前記サブキャリア分離ステップにおいて、各偏波の各サブキャリアに受信機の周波数特性の補償及び波長分散補償をさらに行う、
請求項2に記載の信号処理方法。
【請求項4】
前記受信信号は、光信号である、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の信号処理方法。
【請求項5】
偏波多重された受信信号の各偏波の実数成分及び虚数成分のそれぞれに、受信機の周波数特性を補償するインパルス応答及び波長分散補償用の複素インパルス応答を畳み込む第一補償部と、
各偏波ごとに、畳み込みが行われた前記虚数成分に虚数単位を乗算する虚数単位乗算処理を行った後、虚数単位が乗算された前記虚数成分を分岐し、畳み込みが行われた前記実数成分に分岐された一方の前記虚数成分を加算する処理と、畳み込みが行われた前記実数成分を分岐し、虚数単位が乗算された前記虚数成分に分岐された一方の前記実数成分を加算する処理と、畳み込みが行われた前記実数成分、及び、虚数単位が乗算された前記虚数成分をそれぞれ分岐し、分岐された一方の前記実数成分に分岐された一方の前記虚数成分を加算し、分岐されたもう一方の前記実数成分から分岐されたもう一方の前記虚数成分を減算する処理とのいずれかである複素信号処理を行う複素信号処理部と、
各偏波ごとに、前記複素信号処理後の各偏波の前記実数成分及び前記虚数成分と前記複素信号処理後の各偏波の前記実数成分及び前記虚数成分それぞれの位相共役とを入力信号として生成する入力信号生成部と、
各偏波ごとに、前記入力信号に含まれる各偏波の前記実数成分及び前記虚数成分それぞれに複素インパルス応答を乗算したのち加算し、さらに周波数オフセット補償用の位相回転を施した第一加算信号と、前記入力信号に含まれる各偏波の前記実数成分の前記位相共役及び前記虚数成分の前記位相共役それぞれに複素インパルス応答を乗算したのち加算し、さらに周波数オフセット補償用の前記位相回転とは逆の位相回転を施した第二加算信号とを生成する等化部と、
各偏波ごとに、前記第一加算信号と前記第二加算信号とを加算した信号に、送信データバイアス補正信号を加算又は減算する第二補償部と、
を備える信号処理装置。
【請求項6】
偏波多重された受信信号の各偏波の実数成分及び虚数成分のそれぞれをサブキャリア毎に分離し、各偏波の各サブキャリアごとに、前記虚数成分に虚数単位を乗算する虚数単位乗算処理を行った後、虚数単位が乗算された前記虚数成分を分岐し、前記実数成分に分岐された一方の前記虚数成分を加算する処理と、前記実数成分を分岐し、虚数単位が乗算された前記虚数成分に分岐された一方の前記実数成分を加算する処理と、畳み込みが行われた前記実数成分、及び、虚数単位が乗算された前記虚数成分をそれぞれ分岐し、分岐された一方の前記実数成分に分岐された一方の前記虚数成分を加算し、分岐されたもう一方の前記実数成分から分岐されたもう一方の前記虚数成分を減算する処理とのいずれかである複素信号処理を行うサブキャリア分離部と、
各偏波の各サブキャリアごとに、前記サブキャリアの前記複素信号処理後の各偏波の前記実数成分及び前記虚数成分と、前記受信信号の中心周波数を挟んで前記サブキャリアの周波数領域と対称の周波数領域の他の前記サブキャリアである対称サブキャリアの前記複素信号処理後の各偏波の前記実数成分及び前記虚数成分それぞれの位相共役とを入力信号として生成する入力信号生成部と、
各偏波の各サブキャリアごとに、前記入力信号に含まれる前記サブキャリアの各偏波の前記実数成分及び前記虚数成分それぞれに複素インパルス応答を乗算したのち加算し、さらに周波数オフセット補償用の位相回転を施した第一加算信号と、前記入力信号に含まれる前記対称サブキャリアの各偏波の前記実数成分の前記位相共役及び前記虚数成分の前記位相共役それぞれに複素インパルス応答を乗算したのち加算し、さらに周波数オフセット補償用の前記位相回転とは逆の位相回転を施した第二加算信号とを生成する等化部と、
各偏波の各サブキャリアごとに、前記第一加算信号と前記第二加算信号とを加算した信号に、送信データバイアス補正信号を加算又は減算する補償部と、
を備える信号処理装置。
【請求項7】
送信機と、請求項5又は請求項6に記載の信号処理装置を有する受信機とを備える通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理方法、信号処理装置及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルコヒーレント伝送では、光ファイバ伝送路中において生じる波形ひずみを補償するだけでなく、光送受信機におけるデバイス不完全性を適応的に補償することが求められる。そこで、送信機及び受信機におけるデバイス不完全性を一括で補償する技術がある(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照)。一方で、近年、サブキャリア変調の技術が注目を集めている(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-141294号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】Takayuki Kobayashi, et. al., "35-Tb/s C-Band Transmission Over 800 km Employing 1-Tb/s PS-64QAM Signals Enhanced by Complex 8 × 2 MIMO Equalizer," Optical Fiber Communication Conference Postdeadline Papers 2019, Th4B.2
【文献】Pierluigi Poggiolini, et. al., "Analytical and Experimental Results on System Maximum Reach Increase Through Symbol Rate Optimization," Journal of Lightwave Technology, VOL. 34, NO. 8, 1872-1885, 2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び非特許文献1の適応等化回路は、従来の光通信において一般的に用いられている複素数入力及び複素数出力の2x2MIMO(Multiple Input Multiple Output)適応等化回路とは構成が異なる。特許文献1及び非特許文献1の適応等化回路では、生成されるタップ係数等に共通性や互換性がなく、合計のタップ数が増加する。そのため、タップの収束性や回路規模が倍増する可能性がある。また、非特許文献2の技術によりサブキャリア変調されたサブキャリア信号を一括受信し、受信した信号を復調する際に特許文献1及び非特許文献1の技術を用いた場合、送信機及び受信機におけるデバイス不完全性を一括で補償出来ないことがある。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、タップの収束性や回路規模の増加を抑えながら精度よく等化処理を行う信号処理方法、信号処理装置及び通信システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の信号処理方法は、偏波多重された受信信号の各偏波の実数成分及び虚数成分のそれぞれに、受信機の周波数特性を補償するインパルス応答及び波長分散補償用の複素インパルス応答を畳み込む第一補償ステップと、各偏波ごとに、畳み込みが行われた前記虚数成分に虚数単位を乗算する虚数単位乗算処理を行った後、虚数単位が乗算された前記虚数成分を分岐し、畳み込みが行われた前記実数成分に分岐された一方の前記虚数成分を加算する処理と、畳み込みが行われた前記実数成分を分岐し、虚数単位が乗算された前記虚数成分に分岐された一方の前記実数成分を加算する処理と、畳み込みが行われた前記実数成分、及び、虚数単位が乗算された前記虚数成分をそれぞれ分岐し、分岐された一方の前記実数成分に分岐された一方の前記虚数成分を加算し、分岐されたもう一方の前記実数成分から分岐されたもう一方の前記虚数成分を減算する処理とのいずれかである複素信号処理を行う複素信号処理ステップと、各偏波ごとに、前記複素信号処理後の各偏波の前記実数成分及び前記虚数成分と前記複素信号処理後の各偏波の前記実数成分及び前記虚数成分それぞれの位相共役とを入力信号として生成する入力信号生成ステップと、各偏波ごとに、前記入力信号に含まれる各偏波の前記実数成分及び前記虚数成分それぞれに複素インパルス応答を乗算したのち加算し、さらに周波数オフセット補償用の位相回転を施した第一加算信号と、前記入力信号に含まれる各偏波の前記実数成分の前記位相共役及び前記虚数成分の前記位相共役それぞれに複素インパルス応答を乗算したのち加算し、さらに周波数オフセット補償用の前記位相回転とは逆の位相回転を施した第二加算信号とを生成する等化ステップと、各偏波ごとに、前記第一加算信号と前記第二加算信号とを加算した信号に、送信データバイアス補正信号を加算又は減算する第二補償ステップと、を有する。
【0008】
本発明の一態様の信号処理方法は、偏波多重された受信信号の各偏波の実数成分及び虚数成分のそれぞれをサブキャリア毎に分離し、各偏波の各サブキャリアごとに、前記虚数成分に虚数単位を乗算する虚数単位乗算処理を行った後、虚数単位が乗算された前記虚数成分を分岐し、前記実数成分に分岐された一方の前記虚数成分を加算する処理と、前記実数成分を分岐し、虚数単位が乗算された前記虚数成分に分岐された一方の前記実数成分を加算する処理と、畳み込みが行われた前記実数成分、及び、虚数単位が乗算された前記虚数成分をそれぞれ分岐し、分岐された一方の前記実数成分に分岐された一方の前記虚数成分を加算し、分岐されたもう一方の前記実数成分から分岐されたもう一方の前記虚数成分を減算する処理とのいずれかである複素信号処理を行うサブキャリア分離ステップと、各偏波の各サブキャリアごとに、前記サブキャリアの前記複素信号処理後の各偏波の前記実数成分及び前記虚数成分と、前記受信信号の中心周波数を挟んで前記サブキャリアの周波数領域と対称の周波数領域の他の前記サブキャリアである対称サブキャリアの前記複素信号処理後の各偏波の前記実数成分及び前記虚数成分それぞれの位相共役とを入力信号として生成する入力信号生成ステップと、各偏波の各サブキャリアごとに、前記入力信号に含まれる前記サブキャリアの各偏波の前記実数成分及び前記虚数成分それぞれに複素インパルス応答を乗算したのち加算し、さらに周波数オフセット補償用の位相回転を施した第一加算信号と、前記入力信号に含まれる前記対称サブキャリアの各偏波の前記実数成分の前記位相共役及び前記虚数成分の前記位相共役それぞれに複素インパルス応答を乗算したのち加算し、さらに周波数オフセット補償用の前記位相回転とは逆の位相回転を施した第二加算信号とを生成する等化ステップと、各偏波の各サブキャリアごとに、前記第一加算信号と前記第二加算信号とを加算した信号に、送信データバイアス補正信号を加算又は減算する補償ステップと、を有する。
【0009】
本発明の一態様の信号処理装置は、偏波多重された受信信号の各偏波の実数成分及び虚数成分のそれぞれに、受信機の周波数特性を補償するインパルス応答及び波長分散補償用の複素インパルス応答を畳み込む第一補償部と、各偏波ごとに、畳み込みが行われた前記虚数成分に虚数単位を乗算する虚数単位乗算処理を行った後、虚数単位が乗算された前記虚数成分を分岐し、畳み込みが行われた前記実数成分に分岐された一方の前記虚数成分を加算する処理と、畳み込みが行われた前記実数成分を分岐し、虚数単位が乗算された前記虚数成分に分岐された一方の前記実数成分を加算する処理と、畳み込みが行われた前記実数成分、及び、虚数単位が乗算された前記虚数成分をそれぞれ分岐し、分岐された一方の前記実数成分に分岐された一方の前記虚数成分を加算し、分岐されたもう一方の前記実数成分から分岐されたもう一方の前記虚数成分を減算する処理とのいずれかである複素信号処理を行う複素信号処理部と、各偏波ごとに、前記複素信号処理後の各偏波の前記実数成分及び前記虚数成分と前記複素信号処理後の各偏波の前記実数成分及び前記虚数成分それぞれの位相共役とを入力信号として生成する入力信号生成部と、各偏波ごとに、前記入力信号に含まれる各偏波の前記実数成分及び前記虚数成分それぞれに複素インパルス応答を乗算したのち加算し、さらに周波数オフセット補償用の位相回転を施した第一加算信号と、前記入力信号に含まれる各偏波の前記実数成分の前記位相共役及び前記虚数成分の前記位相共役それぞれに複素インパルス応答を乗算したのち加算し、さらに周波数オフセット補償用の前記位相回転とは逆の位相回転を施した第二加算信号とを生成する等化部と、各偏波ごとに、前記第一加算信号と前記第二加算信号とを加算した信号に、送信データバイアス補正信号を加算又は減算する第二補償部と、を備える。
【0010】
本発明の一態様の信号処理装置は、偏波多重された受信信号の各偏波の実数成分及び虚数成分のそれぞれをサブキャリア毎に分離し、各偏波の各サブキャリアごとに、前記虚数成分に虚数単位を乗算する虚数単位乗算処理を行った後、虚数単位が乗算された前記虚数成分を分岐し、前記実数成分に分岐された一方の前記虚数成分を加算する処理と、前記実数成分を分岐し、虚数単位が乗算された前記虚数成分に分岐された一方の前記実数成分を加算する処理と、畳み込みが行われた前記実数成分、及び、虚数単位が乗算された前記虚数成分をそれぞれ分岐し、分岐された一方の前記実数成分に分岐された一方の前記虚数成分を加算し、分岐されたもう一方の前記実数成分から分岐されたもう一方の前記虚数成分を減算する処理とのいずれかである複素信号処理を行うサブキャリア分離部と、各偏波の各サブキャリアごとに、前記サブキャリアの前記複素信号処理後の各偏波の前記実数成分及び前記虚数成分と、前記受信信号の中心周波数を挟んで前記サブキャリアの周波数領域と対称の周波数領域の他の前記サブキャリアである対称サブキャリアの前記複素信号処理後の各偏波の前記実数成分及び前記虚数成分それぞれの位相共役とを入力信号として生成する入力信号生成部と、各偏波の各サブキャリアごとに、前記入力信号に含まれる前記サブキャリアの各偏波の前記実数成分及び前記虚数成分それぞれに複素インパルス応答を乗算したのち加算し、さらに周波数オフセット補償用の位相回転を施した第一加算信号と、前記入力信号に含まれる前記対称サブキャリアの各偏波の前記実数成分の前記位相共役及び前記虚数成分の前記位相共役それぞれに複素インパルス応答を乗算したのち加算し、さらに周波数オフセット補償用の前記位相回転とは逆の位相回転を施した第二加算信号とを生成する等化部と、各偏波の各サブキャリアごとに、前記第一加算信号と前記第二加算信号とを加算した信号に、送信データバイアス補正信号を加算又は減算する補償部と、を備える。
【0011】
本発明の一態様の通信システムは、送信機と、上述のいずれかの信号処理装置を有する受信機とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、タップの収束性や回路規模の増加を抑えながら精度よく等化処理を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態によるデジタルコヒーレント光伝送システムの構成図である。
図2】従来技術を適用した復調デジタル信号処理部の構成を示す図である。
図3】従来技術を適用した復調デジタル信号処理部の構成を示す図である。
図4】従来技術を適用した復調デジタル信号処理部により行われる信号処理の一部を示す図である。
図5】第1の実施形態の復調デジタル信号処理部により行われる信号処理の一部を示す図である。
図6】第1の実施形態の復調デジタル信号処理部により行われる信号処理の一部を示す図である。
図7】第1の実施形態の復調デジタル信号処理部により行われる信号処理の一部を示す図である。
図8】第1の実施形態の復調デジタル信号処理部の構成を示す図である。
図9】第1の実施形態の復調デジタル信号処理部の構成を示す図である。
図10】第1の実施形態の復調デジタル信号処理部の構成を示す図である。
図11A】従来技術の受信機の実験結果を示す図である。
図11B】従来技術の受信機の実験結果を示す図である。
図12A】第1の実施形態の受信機の実験結果を示す図である。
図12B】第1の実施形態の受信機の実験結果を示す図である。
図13】第1の実施形態の適応等化部に入力される信号のスペクトルを示す図である。
図14】第2の実施形態のサブキャリア信号のスペクトルを示す図である。
図15】第2の実施形態の復調デジタル信号処理部が行うサブキャリア分離を説明するための図である。
図16】第2の実施形態の復調デジタル信号処理部の構成を示す図である。
図17】従来技術の受信機の実験結果を示す図である。
図18】第2の実施形態の受信機の実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0015】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態によるデジタルコヒーレント光伝送システム1の構成図である。デジタルコヒーレント光伝送システム1は、送信機10及び受信機50を有する。受信機50は、送信機10から偏波多重光信号を受信する。
【0016】
送信機10は、1以上の送信部100を有する。本実施形態では、送信機10は、WDMのチャネル数分の送信部100を有する。各送信部100はそれぞれ、異なる波長の光信号を出力する。WDM合波器20は、各送信部100が出力した光信号を合波し、合波された光信号を光ファイバ伝送路30に出力する。光ファイバ伝送路30には、任意の台数の光増幅器31が備えられる。各光増幅器31は、送信機10側の光ファイバ伝送路30から光信号を入力して増幅し、増幅された光信号を受信機50側の光ファイバ伝送路30へ出力する。WDM分波器40は、光ファイバ伝送路30を伝送した光信号を波長により分波する。受信機50は、1以上の受信部500を有する。本実施形態では、受信機50は、WDMのチャネル数分の受信部500を有する。各受信部500は、WDM分波器40が分波した光信号を受信する。各受信部500が受信する光信号の波長はそれぞれ異なる。
【0017】
送信部100は、デジタル信号処理部110と、変調器ドライバ120と、光源130と、集積モジュール140とを備える。デジタル信号処理部110は、符号化部111と、マッピング部112と、トレーニング信号挿入部113と、サンプリング周波数変更部114と、波形整形部115と、予等化部116と、デジタル-アナログ変換器(DAC)117-1~117-4とを備える。
【0018】
符号化部111は、送信ビット列にFEC(forward error correction:前方誤り訂正)符号化を行って得られた送信信号を出力する。マッピング部112は、符号化部111から出力された送信信号をシンボルにマッピングする。トレーニング信号挿入部113は、マッピング部112によりシンボルマッピングされた送信信号に既知のトレーニング信号を挿入する。サンプリング周波数変更部114は、トレーニング信号が挿入された送信信号に対するサンプリング周波数を変更することにより、アップサンプリングを行う。波形整形部115は、サンプリングされた送信信号の帯域を制限する。
【0019】
予等化部116は、波形整形部115により帯域制限された送信信号の波形の歪みを補償し、DAC117-1~117-4に出力する。DAC117-1は、予等化部116から入力した送信信号のX偏波のI(同相)成分をデジタル信号からアナログ信号に変換し、変換されたアナログ信号を変調器ドライバ120に出力する。DAC117-2は、予等化部116から入力した送信信号のX偏波のQ(直交)成分をデジタル信号からアナログ信号に変換し、変換されたアナログ信号を変調器ドライバ120に出力する。DAC117-3は、予等化部116から入力した送信信号のY偏波のI成分をデジタル信号からアナログ信号に変換し、変換されたアナログ信号を変調器ドライバ120に出力する。DAC117-4は、予等化部116から入力した送信信号のY偏波のQ成分をデジタル信号からアナログ信号に変換し、変換されたアナログ信号を変調器ドライバ120に出力する。
【0020】
変調器ドライバ120は、アンプ121-1~121-4を有する。アンプ121-i(iは1以上4以下の整数)は、DAC117-iから出力されたアナログ信号を増幅し、増幅されたアナログ信号により集積モジュール140の変調器を駆動する。光源130は、例えばLD(半導体レーザ)である。p番目の送信部100が有する光源130は、波長λp(pは1以上WDMのチャネル数以下の整数)の光を出力する。
【0021】
集積モジュール140は、IQ変調器141-1及び141-2と、偏波合成部142とを備える。IQ変調器141-1は、光源130が出力した光信号を、アンプ121-1から出力されたX偏波のI成分と、アンプ121-2から出力されたX偏波のQ成分とにより変調して生成したX偏波の光信号を出力する。IQ変調器141-2は、光源130が出力した光信号を、アンプ121-3から出力されたY偏波のI成分と、アンプ121-4から出力されたY偏波のQ成分とにより変調して生成したY偏波の光信号を出力する。偏波合成部142は、IQ変調器141-1が出力したX偏波の光信号と、IQ変調器141-2が出力したY偏波の光信号とを偏波合成し、合成された光信号をWDM合波器20に出力する。
【0022】
受信部500は、局部発振光源510と、光フロントエンド520と、デジタル信号処理部530とを備える。局部発振光源510は、例えばLDである。局部発振光源510は、局部発振光(LO:Local Oscillator)を出力する。
【0023】
光フロントエンド520は、偏波多重された位相変調信号の位相及び振幅を保ったまま光信号を電気信号に変換する。光フロントエンド520は、偏波分離部521と、光90度ハイブリッドカプラ522-1、522-2と、BPD(Balanced Photo Diode;バランスフォトダイオード)523-1~523-4と、アンプ524-1~524-4とを備える。
【0024】
偏波分離部521は、入力した光信号をX偏波とY偏波に分離する。偏波分離部521は、X偏波の光信号を光90度ハイブリッドカプラ522-1に出力し、Y偏波の光信号を光90度ハイブリッドカプラ522-2に出力する。光90度ハイブリッドカプラ522-1は、X偏波の光信号と、局部発振光源510から出力された局部発振光とを干渉させ、受信光電界のI成分とQ成分とを抽出する。光90度ハイブリッドカプラ522-1は、抽出したX偏波のI成分をBPD523-1に出力し、抽出したX偏波のQ成分を523-2へ出力する。光90度ハイブリッドカプラ522-2は、Y偏波の光信号と、局部発振光源510から出力された局部発振光とを干渉させ、受信光電界のI成分とQ成分とを抽出する。光90度ハイブリッドカプラ522-2は、抽出したY偏波のI成分をBPD523-3に出力し、抽出したY偏波のQ成分をBPD523-4に出力する。
【0025】
BPD523-1~523-4は、差動入力型の光電変換器である。BPD523-i(iは1以上4以下の整数)は、特性の揃った2つのフォトダイオードにおいてそれぞれ発生する光電流の差分値を、アンプ524-iに出力する。BPD523-1は、X偏波の受信信号のI成分を電気信号に変換し、変換後の電気信号をアンプ524-1に出力する。BPD523-2は、X偏波の受信信号のQ成分を電気信号に変換し、変換後の電気信号をアンプ524-2に出力する。BPD523-3は、Y偏波の受信信号のI成分を電気信号に変換し、変換後の電気信号をアンプ524-3に出力する。BPD523-4は、Y偏波の受信信号のQ成分を電気信号に変換し、変換後の電気信号をアンプ524-4に出力する。アンプ524-i(iは1以上4以下の整数)は、BPD523-iから出力された電気信号を増幅し、増幅された電気信号をデジタル信号処理部530に出力する。
【0026】
デジタル信号処理部530は、アナログ-デジタル変換器(ADC)531-1~531-4と、復調デジタル信号処理部700と、デマッピング部536と、復号部537とを備える。復調デジタル信号処理部700は、フロントエンド補正部532と、波長分散補償部533と、適応等化部534と、周波数及び位相オフセット補償部535とを備える。
【0027】
ADC531-i(iは1以上4以下の整数)は、アンプ524-iから出力された電気信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し、変換されたデジタル信号をフロントエンド補正部532に出力する。
【0028】
フロントエンド補正部532は、ADC531-1からX偏波の受信信号のI成分を入力し、ADC531-2からX偏波の受信信号のQ成分を入力し、ADC531-3からY偏波の受信信号のI成分を入力し、ADC531-4からY偏波の受信信号のQ成分を入力する。フロントエンド補正部532は、入力した各信号を用いて、光フロントエンド520における周波数特性の補償を行った受信信号を生成し、生成した受信信号を波長分散補償部533に出力する。
【0029】
波長分散補償部533は、光ファイバ伝送路30において受けた波長分散を推定し、フロントエンド補正部532から出力された電気信号に対して、推定した波長分散の補償を行い、波長分散補償された電気信号を適応等化部534に出力する。適応等化部534は、波長分散補償部533から出力された受信信号に対し、適応的に等化処理を行う。周波数及び位相オフセット補償部535は、適応等化部534が等化処理を行った受信信号に対して、周波数オフセット及び位相ノイズの補償等の処理を行う。
【0030】
デマッピング部536は、周波数及び位相オフセット補償部535が出力した受信信号のシンボルを判定し、判定したシンボルをバイナリデータに変換する。復号部537は、デマッピング部536によりデマッピングされたバイナリデータにFECなどの誤り訂正復号処理を行うことにより受信ビット列を得る。
【0031】
なお、上記実施形態では1本の光ファイバ伝送路の例を記載しているが、空間的に多重された伝送系(例えば、マルチコアファイバ、マルチモードファイバ、及び自由空間伝送)でも同様である。
【0032】
ここで、従来技術を用いたデジタルコヒーレント光受信機の復調デジタル信号処理部について説明する。図2は、従来技術を適用した復調デジタル信号処理部800の構成を示す図である。復調デジタル信号処理部800は、一般的な2x2MIMO適応等化回路として用いられる。以下では、復調デジタル信号処理部800を有する受信機を、受信機Aと記載する。例えば、受信機Aは、図1に示す受信機50と同様の構成であり、復調デジタル信号処理部700として、図2に示す復調デジタル信号処理部800を有する。
【0033】
復調デジタル信号処理部800は、受信機AのADC531-1~531-4によりデジタル信号に変換されたX偏波の受信複素信号の実数成分XI及び虚数成分XQと、Y偏波の受信複素信号の実数成分YI及び虚数成分YQとを入力する。復調デジタル信号処理部800は、実数成分XIに受信機Aの周波数特性を補償するインパルス応答hRXIを施した信号と、虚数成分XQに受信機Aの周波数特性を補償するインパルス応答hRXQを施し、さらに虚数単位jを乗算した信号とを加算する。復調デジタル信号処理部800は、この加算結果に波長分散補償用の複素インパルス応答hCDを施してX偏波の複素信号Xを得る。また、復調デジタル信号処理部800は、実数成分YIに受信機Aの周波数特性を補償するインパルス応答hRYIを施した信号と、虚数成分YQに受信機Aの周波数特性を補償するインパルス応答hRYQを施し、さらに虚数単位jを乗算した信号とを加算する。復調デジタル信号処理部800は、この加算結果に波長分散補償用の複素インパルス応答hCDを施してY偏波の複素信号Yを得る。
【0034】
復調デジタル信号処理部800の適応等化部805は、インパルス応答hが畳み込まれた複素信号Xに、インパルス応答hが畳み込まれた複素信号Yを加算した後、周波数オフセットexp(jω(n/T))を施す。nは、シンボル間隔、Tはシンボルの周期を表す。適応等化部805は、この周波数オフセットが施された複素信号に、X偏波成分のバイアスずれをキャンセルするための送信データバイアス補正信号Cを加算(又は減算)することにより、歪み補正が行われたX偏波成分の受信信号XRsig(n)を得る。また、適応等化部805は、インパルス応答h11が畳み込まれた複素信号Yに、インパルス応答hが畳み込まれた複素信号Xを加算した後、周波数オフセットexp(jω(n/T))を施す。適応等化部805は、この周波数オフセットが施された複素信号に、Y偏波成分のバイアスずれをキャンセルするための送信データバイアス補正信号Cを加算(又は減算)することにより、歪み補正が行われたY偏波成分の受信信号YRsig(n)を得る。
【0035】
続いて、従来技術を適用した他の復調デジタル信号処理部について説明する。図3は、従来技術を適用した復調デジタル信号処理部900の構成を示す図である。復調デジタル信号処理部900は、特許文献1の技術を用いている。以下では、復調デジタル信号処理部900を有する受信機を、受信機Bと記載する。例えば、受信機Bは、図1に示す受信機50と同様の構成であり、復調デジタル信号処理部700として、図3に示す復調デジタル信号処理部900を有する。復調デジタル信号処理部900は、MIMO等化器として動作する。
【0036】
まず、復調デジタル信号処理部900に適用される等化処理方法の原理を説明する。送信対象の理想的な偏波多重光信号のX偏波成分を複素信号SX0と表し、Y偏波成分を複素信号SY0と表す。送信機10における変調器ドライバ120のばらつきによるIQインバランスや、レーン間のスキュー、周波数特性を考慮した送信機出力であるX偏波成分の複素信号SX1及びY偏波成分の複素信号SY1は、4つの複素インパルス応答hTx、gTx、hTy、gTyとバイアスずれ項C、Cを用いて、以下の式(1)のように記述できる(Widely linear表示)。なお、右肩の「*」は、位相共役を示す。
【0037】
【数1】
【0038】
X偏波成分の複素信号SX1及びY偏波成分の複素信号SY1は、光ファイバ伝送路30を伝送中に、波長分散及び偏波回転・偏波モード分散・偏波依存損失を受ける。波長分散を複素インパルス応答hCD0、偏波回転・偏波モード分散の影響をhxx、hyx、hyy、hxyで表すと、光ファイバ伝送後のX偏波成分の光信号SX2及びY偏波成分の光信号SY2は、以下の式(2)で表せる。
【0039】
【数2】
【0040】
送信機10の光源130が出力するレーザー光と受信機Bの局部発振光源510が出力する局部発振光との間の周波数オフセットω、ωが存在する場合、光/電気変換後のX偏波成分の信号SX3及びY偏波成分の信号SY3は、以下の式(3)で表せる。
【0041】
【数3】
【0042】
更に、BPD523-1~523-4における光/電気変換、ADC531-1~531-4等の受信フロントエンドの周波数特性とIQインバランス、スキュー(Skew)などを考慮したX偏波成分の受信複素信号SX4及びY偏波成分の受信複素信号SY4は、4つの複素インパルス応答hRx、gRx、hRy、gRyを用いて式(4)で表せる。
【0043】
【数4】
【0044】
従って、適当な4×4行列Wと定数項CbiasX、CbiasYを定義すると、X偏波成分の受信複素信号SX4及びY偏波成分の受信複素信号SY4は式(5)で表すことができる。
【0045】
【数5】
【0046】
式(1)~式(5)から、受信機BにおけるX偏波成分の受信複素信号SX4は式(6)のように、受信機BにおけるY偏波成分の受信複素信号SY4は式(7)のようになる。
【0047】
【数6】
【0048】
【数7】
【0049】
実際のコヒーレント受信機のデジタル信号処理部530は、受信複素信号SX4、SY4の実数(Real)成分及び虚数(Imaginary)成分を受信する。そこで、さらに変形すると、式(8)及び式(9)のようになる。
【0050】
【数8】
【0051】
なお、式(8)及び式(9)におけるインパルス応答h~h16は、行列Wの逆行列の要素である。
【0052】
そこで、復調デジタル信号処理部900は、コヒーレント受信機(光フロントエンド520)が出力する4つの実信号であるX偏波成分のI(実数)成分信号(XI)及びQ(虚数)成分信号(XQ)とY偏波成分のI成分信号(YI)及びQ成分信号(YQ)に対して、波長分散の複素インパルス応答hCD0の逆応答hCD0 -1を畳み込んだ信号を生成する。波長分散の複素インパルス応答hCD0の逆応答hCD0 -1は、波長分散補償用の複素インパルス応答hCDである。適応等化部905は、X偏波成分とY偏波成分のそれぞれについて、この畳み込みが行われたX偏波成分のI成分信号(XI)及びQ成分信号(XQ)とY偏波成分のI成分信号(YI)及びQ成分信号(YQ)と、それらそれぞれの位相共役(conj)を取った信号との合計8つの入力を持つ。復調デジタル信号処理部900は、式(8)及び式(9)に基づいて受信信号を復調する。
【0053】
上記の原理に基づく復調デジタル信号処理部900の動作を説明する。復調デジタル信号処理部900は、ADC531-1~531-4によりデジタル信号に変換されたX偏波の受信複素信号SX4の実数成分XI及び虚数成分XQと、Y偏波の受信複素信号SY4の実数成分YI及び虚数成分YQとを入力する。復調デジタル信号処理部900は、実数成分XI、虚数成分XQ、実数成分YI及び虚数成分YQのそれぞれに対して、受信機Bの周波数特性を補償するインパルス応答と波長分散補償用の複素インパルス応答hCDを畳み込み、周波数オフセット補償用位相回転を施す。これにより、X偏波成分、Y偏波成分それぞれについて2つの複素信号が出力される。続いて、復調デジタル信号処理部900は、2つの複素信号それぞれの位相共役を生成する。これにより、復調デジタル信号処理部900は、X偏波成分及びY偏成分波それぞれについて、実数成分XI、虚数成分XQ、実数成分YI及び虚数成分YQと、それらそれぞれの位相共役との8つの信号を適応等化部905の入力とする。これにより、受信機Bの適応等化部905において、光ファイバ伝送路30及び受信機Bで生じたインペアメントに加えて、送信機10で生じたIQインバランスやIQレーン間スキュー、IQ変調器141-1、141-2のバイアスずれ等を動的に補償することが可能になり、受信信号が高品質化される。
【0054】
具体的には、復調デジタル信号処理部900は、X偏波成分の受信複素信号SX4の実数成分XIに受信機Bの周波数特性を補償するインパルス応答hRXI及び波長分散補償用の複素インパルス応答hCDを施した実数成分XIを生成し、X偏波成分の受信複素信号SX4の虚数成分XQに受信機Bの周波数特性を補償するインパルス応答hRXQ及び波長分散補償用の複素インパルス応答hCDを施した虚数成分XQを生成する。同様に、復調デジタル信号処理部900は、Y偏波成分の受信複素信号SY4の実数成分YIに受信機Bの周波数特性を補償するインパルス応答hRYI及び波長分散補償用の複素インパルス応答hCDを施した実数成分YIを生成し、Y偏波成分の受信複素信号SY4の虚数成分YQに受信機Bの周波数特性を補償するインパルス応答hRYQ及び波長分散補償用の複素インパルス応答hCDを施した虚数成分YQを生成する。復調デジタル信号処理部900は、受信機Bの周波数特性を補償するインパルス応答及び波長分散補償用のインパルス応答が畳み込まれた実数成分XI、虚数成分XQ、実数成分YI、虚数成分YQそれぞれを4つに分岐する。復調デジタル信号処理部900は、実数成分XI、虚数成分XQ、実数成分YI、虚数成分YQそれぞれの分岐された4つの信号のうち2つの信号をそのまま適応等化部905に入力し、残りの2つの信号を位相共役信号に変換して適応等化部905に入力する。
【0055】
適応等化部905は、インパルス応答hが畳み込まれた実数成分XIと、インパルス応答hが畳み込まれた虚数成分XQと、インパルス応答hが畳み込まれた実数成分YIと、インパルス応答h13が畳み込まれた虚数成分YQとを加算した後、周波数オフセットexp(jω(n/T))を施す。nは、シンボル間隔、Tはシンボルの周期を表す。さらに、適応等化部905は、インパルス応答hが畳み込まれた実数成分位相共役XIと、インパルス応答hが畳み込まれた虚数成分位相共役XQと、インパルス応答h10が畳み込まれた実数成分位相共役YIと、インパルス応答h14が畳み込まれた虚数成分位相共役YQとを加算した後、周波数オフセットexp(-jω(n/T))を施す。適応等化部905は、周波数オフセットexp(jω(n/T))が施された加算信号と、周波数オフセットexp(-jω(n/T))が施された加算信号とを加算することにより、X偏波成分の受信信号を生成する。適応等化部905は、生成されたX偏波成分の受信信号に、X偏波成分のバイアスずれをキャンセルするための送信データバイアス補正信号Cを加算(又は減算)することにより、歪み補正が行われたX偏波成分の受信信号XRsig(n)を生成する。
【0056】
一方、適応等化部905は、インパルス応答hが畳み込まれた実数成分XIと、インパルス応答hが畳み込まれた虚数成分XQと、インパルス応答h11が畳み込まれた実数成分YIと、インパルス応答h15が畳み込まれた虚数成分YQとを加算した後、周波数オフセットexp(jω(n/T))を施す。さらに、適応等化部905は、インパルス応答hが畳み込まれた実数成分位相共役XIと、インパルス応答hが畳み込まれた虚数成分位相共役XQと、インパルス応答h12が畳み込まれた実数成分位相共役YIと、インパルス応答h16が畳み込まれた虚数成分位相共役YQとを加算した後、周波数オフセットexp(-jω(n/T))を施す。適応等化部905は、周波数オフセットexp(jω(n/T))が施された加算信号と、周波数オフセットexp(-jω(n/T))が施された加算信号とを加算することにより、Y偏波成分の受信信号を生成する。適応等化部905は、生成されたY偏波成分の受信信号に、Y偏波成分のバイアスずれをキャンセルするための送信データバイアス補正信号Cを加算(又は減算)することにより、歪み補正が行われたY偏波成分の受信信号YRsig(n)を生成する。
【0057】
なお、波長分散補償用の複素インパルス応答hCD、インパルス応答h~h16、及び、周波数オフセットexp(jωn/T)、exp(-jωn/T)、exp(jωn/T)、exp(-jωn/T)は適応的かつ動的に変更される。受信機Bは、これらの値を任意の方法により取得する。
【0058】
次に、本実施形態の原理を説明する。
図4は、復調デジタル信号処理部900により行われる信号処理の一部を示す図である。復調デジタル信号処理部900は、X偏波成分の受信複素信号SX4の実数成分XIに受信機Bの周波数特性を補償するインパルス応答hRXI及び波長分散補償用の複素インパルス応答hCDを施した実数成分XIを生成する。また、復調デジタル信号処理部900は、X偏波成分の受信複素信号SX4の虚数成分XQに受信機Bの周波数特性を補償するインパルス応答hRXQ及び波長分散補償用の複素インパルス応答hCDを施した虚数成分XQを生成する。復調デジタル信号処理部900は、インパルス応答hを畳み込んだ実数成分XIと、インパルス応答hを畳み込んだ虚数成分XQとを加算する。すなわち、復調デジタル信号処理部900は、h*XI+h*XQの信号を生成する。
【0059】
図5は、本実施形態の復調デジタル信号処理部700により行われる信号処理の一部を示す図である。復調デジタル信号処理部700は、復調デジタル信号処理部900と同様に、X偏波成分の受信複素信号SX4の実数成分XIに受信機50の周波数特性を補償するインパルス応答hRXI及び波長分散補償用の複素インパルス応答hCDを施した実数成分XIを生成する。また、復調デジタル信号処理部700は、X偏波成分の受信複素信号SX4の虚数成分XQに受信機50の周波数特性を補償するインパルス応答hRXQ及び波長分散補償用の複素インパルス応答hCDを施した虚数成分XQを復調デジタル信号処理部900と同様に生成した後、虚数単位jを乗算して虚数成分jXQを生成する。復調デジタル信号処理部700は、虚数成分jXQを分岐する。復調デジタル信号処理部700は、実数成分XIと分岐した一方の虚数成分jXQとを加算してX偏波の複素信号Xを生成する。復調デジタル信号処理部700は、複素信号Xにインパルス応答hを畳み込んだ信号と、虚数成分jXQにインパルス応答hを畳み込んだ信号とを加算する。すなわち、復調デジタル信号処理部700は、h*(XI+jXQ)+h*jXQ=h*XI+j(h+h)XQの信号を生成する。つまり、復調デジタル信号処理部700のhを、復調デジタル信号処理部900におけるj(h+h)とすることにより、復調デジタル信号処理部900と等価な処理が可能である。なお、復調デジタル信号処理部900において虚数成分jXQに相当する信号を、復調デジタル信号処理部700においては虚数成分XQとする。
【0060】
なお、例えば、インパルス応答h、hなど、インパルス応答h、h以外のインパルス応答についても、入力信号とタップ番号が異なるだけであるため、図4及び図5では、記載を省略している。
【0061】
復調デジタル信号処理部700は、図5に示す信号処理に代えて、図6又は図7に示す信号処理を行ってもよい。図6及び図7は、本実施形態の復調デジタル信号処理部700により行われる信号処理の一部を示す図である。
【0062】
図6において、復調デジタル信号処理部700は、図5に示す信号処理と同様に、実数成分XI及び虚数成分jXQを生成する。復調デジタル信号処理部700は、実数成分XIを分岐する。復調デジタル信号処理部700は、分岐した一方の実数成分XIと虚数成分jXQとを加算してX偏波の複素信号Xを生成する。復調デジタル信号処理部700は、インパルス応答hを畳み込んだ実数成分XIと、インパルス応答hを畳み込んだ複素信号Xとを加算する。すなわち、復調デジタル信号処理部700は、h*XI+h*(XI+jXQ)=(h+h)XI+jhXQの信号を生成する。復調デジタル信号処理部700のhを復調デジタル信号処理部900におけるh+hとし、復調デジタル信号処理部700のhを復調デジタル信号処理部900におけるjhとすることにより、復調デジタル信号処理部900と等価な処理が可能である。
【0063】
図7において、復調デジタル信号処理部700は、図5に示す信号処理と同様に、実数成分XI及び虚数成分jXQを生成する。復調デジタル信号処理部700は、実数成分XI及び虚数成分jXQをそれぞれ分岐する。復調デジタル信号処理部700は、実数成分XIと虚数成分jXQとを加算してX偏波の複素信号Xを生成する。さらに、復調デジタル信号処理部700は、実数成分XIから虚数成分jXQを減算して複素信号Xの複素共役Xを生成する。復調デジタル信号処理部700は、インパルス応答hを畳み込んだ複素信号Xと、インパルス応答hを畳み込んだ複素共役Xとを加算する。すなわち、復調デジタル信号処理部700は、h*(XI+jXQ)+h*(XI-jXQ)=(h+h)XI+j(h-h)XQの信号を生成する。復調デジタル信号処理部700のhを復調デジタル信号処理部900におけるh+hとし、復調デジタル信号処理部700のhを復調デジタル信号処理部900におけるj(h-h)とすることにより、復調デジタル信号処理部900と等価な処理が可能である。
【0064】
図8は、本実施形態の復調デジタル信号処理部710の構成を示す図である。復調デジタル信号処理部710は、図1における復調デジタル信号処理部700として用いられる。復調デジタル信号処理部710は、図5に示す信号処理を行う。図8に示す復調デジタル信号処理部710は、図3に示す復調デジタル信号処理部900に、複素信号処理部711を加えた構成である。復調デジタル信号処理部710の適応等化部715は、復調デジタル信号処理部900の適応等化部905と同じ構成である。
【0065】
復調デジタル信号処理部710は、X偏波成分の受信複素信号SX4の実数成分XIにインパルス応答hRXI及び複素インパルス応答hCDを施した実数成分XIを生成する。また、復調デジタル信号処理部710は、X偏波成分の受信複素信号SX4の虚数成分XQにインパルス応答hRXQ及び複素インパルス応答hCDを施す。複素信号処理部711は、インパルス応答hRXQ及び複素インパルス応答hCDが畳み込まれた虚数成分XQに虚数単位jを乗算して虚数成分XQを生成する。複素信号処理部711は、虚数成分XQを2つに分岐する。複素信号処理部711は、実数成分XIと、分岐された一方の虚数成分XQとを加算してX偏波の複素信号Xを生成する。複素信号処理部711は、複素信号Xと、加算に用いられなかった虚数成分XQを出力する。
【0066】
さらに、復調デジタル信号処理部710は、Y偏波成分の受信複素信号SY4の実数成分YIにインパルス応答hRYI及び複素インパルス応答hCDを施した実数成分YIを生成する。また、複素信号処理部711は、Y偏波成分の受信複素信号SY4の虚数成分YQにインパルス応答hRYQ及び複素インパルス応答hCDを施す。複素信号処理部711は、インパルス応答hRYQ及び複素インパルス応答hCDが畳み込まれた虚数成分YQに虚数単位jを乗算して虚数成分YQを生成する。複素信号処理部711は、虚数成分YQを2つに分岐する。複素信号処理部711は、実数成分YIと分岐された一方の虚数成分YQとを加算してY偏波の複素信号Yを生成する。複素信号処理部711は、複素信号Yと、加算に用いられなかった虚数成分YQを出力する。
【0067】
復調デジタル信号処理部710は、以下の点を除き、復調デジタル信号処理部900と同様の処理を行う。すなわち、復調デジタル信号処理部710は、復調デジタル信号処理部900における実数成分XI、虚数成分XQ、実数成分YI、虚数成分YQそれぞれに代えて、複素信号処理部711が出力した複素信号X、虚数成分XQ、複素信号Y、虚数成分YQを用いる。
【0068】
具体的には、復調デジタル信号処理部710は、複素信号処理部711が出力した複素信号X、虚数成分XQ、複素信号Y、虚数成分YQそれぞれを4つに分岐する。復調デジタル信号処理部710は、複素信号X、虚数成分XQ、複素信号Y、虚数成分YQそれぞれの分岐された4つの信号のうち2つの信号をそのまま適応等化部715に入力し、残りの2つの信号を位相共役信号に変換して適応等化部715に入力する。複素信号X、虚数成分XQ、複素信号Y、虚数成分YQそれぞれの位相共役を、複素信号位相共役X、虚数成分位相共役XQ、複素信号位相共役Y、虚数成分位相共役YQとする。
【0069】
適応等化部715は、インパルス応答hが畳み込まれた複素信号Xと、インパルス応答hが畳み込まれた虚数成分XQと、インパルス応答hが畳み込まれた複素信号Yと、インパルス応答h13が畳み込まれた虚数成分YQとを加算した後、周波数オフセットexp(jω(n/T))を施す。nは、シンボル間隔、Tはシンボルの周期を表す。さらに、適応等化部715は、インパルス応答hが畳み込まれた複素信号位相共役Xと、インパルス応答hが畳み込まれた虚数成分位相共役XQと、インパルス応答h10が畳み込まれた複素信号位相共役Yと、インパルス応答h14が畳み込まれた虚数成分位相共役YQとを加算した後、周波数オフセットexp(-jω(n/T))を施す。適応等化部715は、周波数オフセットexp(jω(n/T))が施された加算信号と、周波数オフセットexp(-jω(n/T))が施された加算信号とを加算することにより、X偏波成分の受信信号を生成する。適応等化部715は、生成されたX偏波成分の受信信号に、X偏波成分のバイアスずれをキャンセルするための送信データバイアス補正信号Cを加算(又は減算)することにより、歪み補正が行われたX偏波成分の受信信号XRsig(n)を得る。デマッピング部536は、受信信号XRsig(n)にシンボル判定を行った結果得られた受信信号X^Rsig(n)を出力する。
【0070】
さらに、適応等化部715は、インパルス応答hが畳み込まれた複素信号Xと、インパルス応答hが畳み込まれた虚数成分XQと、インパルス応答h11が畳み込まれた複素信号Yと、インパルス応答h15が畳み込まれた虚数成分YQとを加算した後、周波数オフセットexp(jω(n/T))を施す。さらに、適応等化部715は、インパルス応答hが畳み込まれた複素信号位相共役Xと、インパルス応答hが畳み込まれた虚数成分位相共役XQと、インパルス応答h16が畳み込まれた複素信号位相共役Yと、インパルス応答h16が畳み込まれた虚数成分位相共役YQとを加算した後、周波数オフセットexp(-jω(n/T))を施す。適応等化部715は、周波数オフセットexp(jω(n/T))が施された加算信号と、周波数オフセットexp(-jω(n/T))が施された加算信号とを加算することにより、Y偏波成分の受信信号を生成する。適応等化部715は、生成されたY偏波成分の受信信号に、Y偏波成分のバイアスずれをキャンセルするための送信データバイアス補正信号Cを加算(又は減算)することにより、歪み補正が行われたY偏波成分の受信信号YRsig(n)を生成する。デマッピング部536は、受信信号YRsig(n)にシンボル判定を行った結果得られた受信信号Y^Rsig(n)を出力する。
【0071】
波長分散補償用の複素インパルス応答hCD、インパルス応答h~h16、及び、周波数オフセットexp(jωn/T)、exp(-jωn/T)、exp(jωn/T)、exp(-jωn/T)は適応的かつ動的に変更される。受信機50は、これらの値を任意の方法により取得する。
【0072】
なお、インパルス応答hRXI、hRXQ、hRYI、hRYQの畳み込みは、図1に示すフロントエンド補正部532の処理に対応し、波長分散補償用の複素インパルス応答hCDの畳み込みの処理及び複素信号処理部711の処理は波長分散補償部533の処理に対応する。適応等化部715の処理は、適応等化部534の処理に対応する。送信データバイアス補正信号C、Cの加算(又は減算)は、周波数及び位相オフセット補償部535の機能に対応する。
【0073】
復調デジタル信号処理部710の構成によって、送受信機デバイスの不完全性がない場合は、インパルス応答h、h、h、h11のタップ係数である主タップは等価となる。すなわち、復調デジタル信号処理部800の拡張として、復調デジタル信号処理部900の補償効果を得ることが可能となる。
【0074】
また、送受信機デバイスに不完全性が無い場合、主タップ以外は原理的にすべて0となる。そこで、インパルス応答h~h16のうち、インパルス応答h、h、h、h11を除いたインパルス応答の初期値を0とする。これにより、誤収束を防ぐことが可能となる。また、復調デジタル信号処理部800において得られた主タップを、復調デジタル信号処理部710のインパルス応答h、h、h、h11の初期値に用いることで、収束速度や追従速度を上げることも可能である。
【0075】
本実施形態では、送受信機デバイスに不完全性が少ない際は、ハードウェア実装時に、主タップ以外のビットの値域(固定小数点実装)を小さくすることができるため、回路規模を低減可能である。また、L0正則化等を用いて、インパルス応答h、h、h、h、h、h10、h12、h13、h14、h15、h16のタップ係数である補助タップの零係数を増加させてもよい。これにより、補償特性を落とさずに回路動作率が低減されるため、低電力化が可能である。
【0076】
受信機50は復調デジタル信号処理部700として、図9に示す復調デジタル信号処理部720又は図10に示す復調デジタル信号処理部730を用いてもよい。
【0077】
図9は、復調デジタル信号処理部720の構成を示す図である。図9において、図8に示す復調デジタル信号処理部710と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。復調デジタル信号処理部720が、図8に示す復調デジタル信号処理部710と異なる点は、複素信号処理部711に代えて複素信号処理部721を備える点である。複素信号処理部721は、図6に示す信号処理を行う。
【0078】
複素信号処理部721は、復調デジタル信号処理部710と同様の処理により生成されたX偏波の実数成分XIを入力する。複素信号処理部721は、実数成分XIを2つに分岐する。さらに、複素信号処理部721は、複素信号処理部711と同様の処理により、X偏波の虚数成分XQを生成する。複素信号処理部721は、分岐された一方の実数成分XIと虚数成分XQとを加算してX偏波の複素信号Xを生成する。複素信号処理部721は、加算に用いられなかった実数成分XIと、複素信号Xとを出力する。
【0079】
また、複素信号処理部721は、復調デジタル信号処理部710と同様の処理により生成されたY偏波の実数成分YIを入力する。複素信号処理部721は、実数成分YIを2つに分岐する。さらに、複素信号処理部721は、複素信号処理部711と同様の処理により、Y偏波の虚数成分YQを生成する。複素信号処理部721は、分岐された一方の実数成分YIと虚数成分YQとを加算してY偏波の複素信号Yを生成する。複素信号処理部721は、加算に用いられなかった実数成分YIと、複素信号Yとを出力する。
【0080】
復調デジタル信号処理部720は、以下の点を除き、復調デジタル信号処理部710と同様の処理を行う。すなわち、復調デジタル信号処理部720は、複素信号処理部711が出力した複素信号X、虚数成分XQ、複素信号Y、虚数成分YQそれぞれに代えて、複素信号処理部721が出力した実数成分XI、複素信号X、実数成分YI、複素信号Yを用いる。
【0081】
図10は、復調デジタル信号処理部730の構成を示す図である。図10において、図8に示す復調デジタル信号処理部710と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。復調デジタル信号処理部730が、図8に示す復調デジタル信号処理部710と異なる点は、複素信号処理部711に代えて複素信号処理部731を備える点である。複素信号処理部731は、図7に示す信号処理を行う。
【0082】
複素信号処理部731は、複素信号処理部711と同様の処理により実数成分XI及び虚数成分XQを生成し、それぞれを2つに分岐する。複素信号処理部731は、分岐された一方の実数成分XIと、分岐された一方の虚数成分XQとを加算してX偏波の複素信号Xを算出する。さらに、複素信号処理部731は、分岐されたもう一方の実数成分XIから、分岐されたもう一方の虚数成分XQを減算することにより、複素信号Xの複素共役Xを生成する。複素信号処理部731は、複素信号X及び複素共役Xを出力する。
【0083】
また、複素信号処理部731は、複素信号処理部711と同様の処理により実数成分YI及び虚数成分YQを生成し、それぞれを2つに分岐する。複素信号処理部731は、分岐された一方の実数成分YIと、分岐された一方の虚数成分YQとを加算してY偏波の複素信号Yを算出する。さらに、複素信号処理部731は、分岐されたもう一方の実数成分YIから、分岐されたもう一方の虚数成分YQを減算することにより、複素信号Yの複素共役Yを生成する。複素信号処理部731は、複素信号Y及び複素共役Yを出力する。
【0084】
復調デジタル信号処理部730は、以下の点を除き、復調デジタル信号処理部710と同様の処理を行う。すなわち、復調デジタル信号処理部730は、複素信号処理部711が出力した複素信号X、虚数成分XQ、複素信号Y、虚数成分YQそれぞれに代えて、複素信号処理部731が出力した複素信号X、複素信号Xの複素共役X、複素信号Y、複素信号Yの複素共役Yを用いる。
【0085】
続いて、適応等化処理の品質に関する実験結果を説明する。従来技術の受信機B及び本実施形態の受信機50のそれぞれにより、変調速度64GBaud、偏波多重64QAM(Quadrature Amplitude Modulation:直交位相振幅変調)の受信信号を復調した。図11A及び図11Bは、受信機Bを用いた実験結果を示す図であり、図12A及び図12Bは、受信機50を用いた実験結果を示す図である。図11A及び図12Bは、X偏波及びY偏波の復調後のコンスタレーションを示している。図11B(a)及び図12B(a)は、復調時のインパルス応答h~hのタップ係数を示し、図11B(b)及び図12B(b)は、復調時のインパルス応答h~h16のタップ係数を示す。なお、図11B及び図12Bにおいて、実線はタップの実部を示し、破線はタップの虚部を示す。これらの図に示すように、本実施形態の受信機50は、従来技術を用いた受信機Bと同等の精度を有しながらも、受信機Bと比較して実効的に必要タップ数が少ないことがわかる。
【0086】
[第2の実施形態]
第1の実施形態ではシングルキャリア復調を行っている。本実施形態の受信機は、サブキャリア復調を行う。
【0087】
図13は、第1の実施形態の復調デジタル信号処理部710の適応等化部715に入力される信号のスペクトルを示す図である。図13には、インパルス応答hにより畳み込まれる複素信号Xのスペクトル、及び、インパルス応答hにより畳み込まれる複素信号Xの位相共役conj(X)のスペクトルが示されている。時間領域信号の複素共役を取ると、複素共役は周波数軸上でDC(中央キャリア)を挟んで複素信号と線対称であり、かつ、複素共役の各周波数成分は複素信号の各周波数成分と複素共役の関係となる。
【0088】
図14は、本実施形態に用いられるサブキャリア信号のスペクトルを示す図である。図14には、直交するN個のサブキャリア信号X1~XNそれぞれのスペクトルと、それらサブキャリア信号X1~XNそれぞれの位相共役conj(X1)~conj(XN)のスペクトルとが示されている。図13に示すシングルキャリアのスペクトルと、図14に示すサブキャリア信号のスペクトルとの関係から、DCを挟んで対象となるサブキャリアを適応等化部に入力することで、第1の本実施形態の受信機をサブキャリア信号の復調に拡張可能であることがわかる。
【0089】
サブキャリア信号により図13と同様の関係を考えると、受信機におけるDCを挟んで対称なサブキャリア信号の複素共役の情報が必要となる。より一般的には、本実施形態の復調デジタル信号処理部は、注目するサブキャリア信号Xk(kは1以上N以下の整数)に対応する周波数領域に対して、DCを挟んで線対称の周波数領域、すなわち、サブキャリア(N-k+1)の周波数領域を、MIMO適応等化回路に入力する。サブキャリア(N-k+1)は、サブキャリアkの対称サブキャリアである。この際、DCを挟んで線対称の周波数領域にサブキャリアがあるかどうかは問わない。
【0090】
本実施形態の復調デジタル信号処理部は、各サブキャリアをフィルタリング処理した後に、周波数変換を行う。この際に、復調デジタル信号処理部は、フロントエンド補償や分散補償を行ってもよい。
【0091】
図15は、本実施形態の復調デジタル信号処理部が行うサブキャリア分離を説明するための図である。図15(a)は、サブキャリア信号X1~XNのスペクトルを示す。後述の図16に示す本実施形態の復調デジタル信号処理部750のサブキャリア分離部751は、X偏波の受信複素信号SX4の実数成分XI及び虚数成分XQと、Y偏波の受信複素信号SY4の実数成分YI及び虚数成分YQとをそれぞれ独立に、図15(b)に示すようにサブキャリアに分離する。サブキャリア分離部751は、サブキャリアに分離したこれらの信号に複素信号処理部711と同様の処理を行うことにより、サブキャリア毎の複素信号X、虚数成分XQ、複素信号Y及び虚数成分YQを出力する。また別の構成として、サブキャリア分離部751は、複素信号処理部711と同様の処理により広帯域信号を複素信号X及び複素信号Yと、それらに対応する虚数成分XQ及び虚数成分YQに変換し、変換された複素信号X、複素信号Y、虚数成分XQ及び虚数成分YQそれぞれをサブキャリアに分離してもよい。
【0092】
また、サブキャリア分離部751は、図15(b)に示すように、周波数領域でサブキャリア信号を分離してもよい。また、サブキャリア分離部751は、時間領域で受信信号にexp(-jwt)を乗算したのちにローパスフィルタを適用し、各サブキャリアをダウンサンプリングしてもよい。ここでwはサブキャリア信号の中心周波数である。また、サブキャリア分離部751は、受信信号に時間領域でバンドバスフィルタを適用した後、exp(-jwt)を乗算し、各サブキャリアをダウンサンプルしてもよい。
【0093】
本実施形態のデジタルコヒーレント光伝送システムは、図1に示す第1の実施形態のデジタルコヒーレント光伝送システム1と同様の構成である。ただし、送信機10の各送信部100は、サブキャリア信号を生成する。
【0094】
図16は、本実施形態の復調デジタル信号処理部750の構成を示す図である。本実施形態の受信機は、図1に示す受信機50の復調デジタル信号処理部700として、図16に示す復調デジタル信号処理部750を備える。図16では、k番目のサブキャリアの信号を出力する構成を抽出して示している。図16では、k=1の場合の例である。k番目のサブキャリアを、サブキャリアkと記載する。復調デジタル信号処理部750は、サブキャリア分離部751と、適応等化部755とを備える。サブキャリア分離部751は、第1分離部752と、第2分離部753とを有する。
【0095】
復調デジタル信号処理部750は、ADC531-1~531-4によりデジタル信号に変換されたX偏波の受信複素信号SX4の実数成分XI及び虚数成分XQと、Y偏波の受信複素信号SY4の実数成分YI及び虚数成分YQとを入力する。第1分離部752は、受信複素信号SX4の実数成分XI及び虚数成分XQを各サブキャリアに分離し、サブキャリア毎に図8に示す複素信号処理部711と同様の処理を行うことにより、複素信号X及び虚数成分XQを出力する。サブキャリアkの複素信号X及び虚数成分XQをそれぞれ、複素信号X及び虚数成分XQと記載する。第2分離部753は、受信複素信号SY4の実数成分YI及び虚数成分YQを各サブキャリアに分離し、サブキャリア毎に図8に示す複素信号処理部711と同様の処理を行うことにより、複素信号Y及び虚数成分YQを出力する。サブキャリアkの複素信号Y及び虚数成分YQをそれぞれ、複素信号Y及び虚数成分YQと記載する。
【0096】
復調デジタル信号処理部750は、第1分離部752が出力した複素信号X、虚数成分XQ、複素信号XN-k+1及び虚数成分XQN-k+1と、第2分離部753が出力した複素信号Y、虚数成分YQ、複素信号YN-k+1及び虚数成分YQN-k+1とのそれぞれを2つに分岐する。復調デジタル信号処理部750は、分岐した2つの複素信号X、虚数成分XQ、複素信号Y、虚数成分YQをそれぞれ適応等化部755に入力する。さらに、復調デジタル信号処理部750は、分岐した2つの複素信号XN-k+1、虚数成分XQN-k+1、複素信号YN-k+1及び虚数成分YQN-k+1それぞれを位相共役信号に変換して適応等化部755に入力する。複素信号XN-k+1、虚数成分XQN-k+1、複素信号YN-k+1及び虚数成分YQN-k+1それぞれの位相共役を、複素信号位相共役X N-k+1、虚数成分位相共役XQ N-k+1、複素信号位相共役Y N-k+1及び虚数成分位相共役YQ N-k+1と記載する。
【0097】
適応等化部755は、インパルス応答hが畳み込まれた複素信号Xと、インパルス応答hが畳み込まれた虚数成分XQと、インパルス応答hが畳み込まれた複素信号Yと、インパルス応答h13が畳み込まれた虚数成分YQとを加算した後、周波数オフセットexp(jωxk(n/T))を施す。さらに、適応等化部755は、インパルス応答hが畳み込まれた複素信号位相共役X N-k+1と、インパルス応答hが畳み込まれた虚数成分位相共役XQ N-k+1と、インパルス応答h10が畳み込まれた複素信号位相共役Y N-k+1と、インパルス応答h14が畳み込まれた虚数成分位相共役YQ N-k+1とを加算した後、周波数オフセットexp(-jωxk(n/T))を施す。適応等化部755は、周波数オフセットexp(jωxk(n/T))が施された加算信号と、周波数オフセットexp(-jωxk(n/T))が施された加算信号とを加算することにより、サブキャリアkのX偏波成分の受信信号を生成する。適応等化部755は、サブキャリアkのX偏波成分の受信信号に、X偏波成分のバイアスずれをキャンセルするための送信データバイアス補正信号CXkを加算(又は減算)することにより、歪み補正が行われたX偏波成分の受信信号XkRsig(n)を生成する。デマッピング部536は、受信信号XkRsig(n)にシンボル判定を行った結果得られたサブキャリアkの受信信号X^kRsig(n)を出力する。
【0098】
適応等化部755は、インパルス応答hが畳み込まれた複素信号Xと、インパルス応答hが畳み込まれた虚数成分XQと、インパルス応答h11が畳み込まれた複素信号Yと、インパルス応答h15が畳み込まれた虚数成分YQとを加算した後、周波数オフセットexp(jωyk(n/T))を施す。さらに、適応等化部755は、インパルス応答hが畳み込まれた複素信号位相共役X N-k+1と、インパルス応答hが畳み込まれた虚数成分位相共役XQ N-k+1と、インパルス応答h12が畳み込まれた複素信号位相共役Y N-k+1と、インパルス応答h16が畳み込まれた虚数成分位相共役YQ N-k+1とを加算した後、周波数オフセットexp(-jωyk(n/T))を施す。適応等化部755は、周波数オフセットexp(jωyk(n/T))が施された加算信号と、周波数オフセットexp(-jωyk(n/T))が施された加算信号とを加算することにより、サブキャリアkのY偏波成分の受信信号を生成する。適応等化部755は、サブキャリアkのY偏波成分の受信信号に、Y偏波成分のバイアスずれをキャンセルするための送信データバイアス補正信号CYkを加算(又は減算)することにより、歪み補正が行われたY偏波成分の受信信号YkRsig(n)を生成する。デマッピング部536は、受信信号YkRsig(n)にシンボル判定を行った結果得られたサブキャリアkの受信信号Y^kRsig(n)を出力する。
【0099】
上記において、サブキャリア分離部751は、各偏波のサブキャリア毎に図8に示す複素信号処理部711と同様の処理を行っているが、サブキャリア分離部751は、各偏波のサブキャリア毎に図9に示す複素信号処理部731と同様の処理を行ってもよい。すなわち、第1分離部752は、受信複素信号SX4の実数成分XI及び虚数成分XQを各サブキャリアに分離し、サブキャリア毎に図9に示す複素信号処理部721と同様の処理を行うことにより、実数成分XI及び複素信号Xを出力する。サブキャリアkの実数成分XI及び複素信号Xをそれぞれ、実数成分XI及び複素信号Xと記載する。また、第2分離部753は、受信複素信号SY4の実数成分YI及び虚数成分YQを各サブキャリアに分離し、サブキャリア毎に図9に示す複素信号処理部721と同様の処理を行うことにより、実数成分YI及び複素信号Yを出力する。サブキャリアkの実数成分YI及び複素信号Yをそれぞれ、実数成分YI及び複素信号Yと記載する。復調デジタル信号処理部750は、図16に示すサブキャリア分離部751から出力される複素信号X、虚数成分XQ、複素信号Y、虚数成分YQそれぞれに代えて、実数成分XI、複素信号X、実数成分YI、複素信号Yを用いて処理を行う。
【0100】
また、サブキャリア分離部751は、各偏波のサブキャリア毎に図10に示す複素信号処理部731と同様の処理を行ってもよい。すなわち、第1分離部752は、受信複素信号SX4の実数成分XI及び虚数成分XQを各サブキャリアに分離し、サブキャリア毎に図10に示す複素信号処理部731と同様の処理を行うことにより、複素信号Xと、複素信号Xの複素共役Xとを出力する。サブキャリアkの複素信号X、及び、複素信号Xの複素共役Xをそれぞれ、複素信号X、及び、複素信号Xの複素共役X と記載する。また、第2分離部753は、受信複素信号SY4の実数成分YI及び虚数成分YQを各サブキャリアに分離し、サブキャリア毎に図10に示す複素信号処理部731と同様の処理を行うことにより、複素信号Yと、複素信号Yの複素共役Yとを出力する。サブキャリアkの複素信号Y、及び、複素信号Yの複素共役Yをそれぞれ、複素信号Y、及び、複素信号Yの複素共役Y と記載する。復調デジタル信号処理部750は、図16に示すサブキャリア分離部751から出力される複素信号X、虚数成分XQ、複素信号Y、虚数成分YQそれぞれに代えて、複素信号X、複素信号Xの複素共役X 、複素信号Y、複素信号Yの複素共役Y を用いて処理を行う。
【0101】
なお、Nが奇数の場合、復調デジタル信号処理部750は、中心サブキャリア(N+1)/2については、第1の実施形態と同様に処理する。また、サブキャリア分離部751は、フロントエンド補償及び波長分散補償の一方又は両方を行ってもよい。フロントエンド補償は、各偏波の各サブキャリアに、受信機50の周波数特性を補償するインパルス応答を施すことにより行われる。波長分散補償は、各偏波の各サブキャリアに、波長分散補償用のインパルス応答を施すことにより行われる。
【0102】
続いて、適応等化処理の品質に関する実験結果を説明する。従来技術の受信機B及び本実施形態の復調デジタル信号処理部750を用いた受信機50のそれぞれにより、8サブキャリア、変調速度64GBaud、偏波多重64QAMの受信信号を復調した。図17は、受信機Bによる各サブキャリアのX偏波及びY偏波の復調後のコンスタレーションを示す図である。図18は、本実施形態の受信機50による各サブキャリアのX偏波及びY偏波の復調後のコンスタレーションを示す図である。各コンスタレーションの上に記載されている数値は、各サブキャリアの各偏波における波形の一致性(SNR dB)を示す。従来の受信機Bの平均SNRは22.71dBであり、本実施形態の受信機50の平均SNRは22.99dBであった。本実施形態のほうが、より鮮明なコンスタレーションであることが確認でき、平均SNRも従来技術から改善していることがわかる。
【0103】
以上説明した実施形態によれば、通信システムは、送信機と、受信機とを備える。例えば、通信システムは実施形態のデジタルコヒーレント光伝送システム1に対応し、送信機は実施形態の送信機10に対応し、受信機は実施形態の受信機50に対応する。受信機が備える信号処理装置は、第一補償部と、複素信号処理部と、入力信号生成部と、等化部と、第二補償部とを備える。例えば、信号処理装置は実施形態の復調デジタル信号処理部700、710、720、730に対応し、第一補償部は実施形態のフロントエンド補正部532及び波長分散補償部533に対応し、複素信号処理部は実施形態の波長分散補償部533及び複素信号処理部711、721、731に対応し、入力信号生成部は実施形態の波長分散補償部533に対応し、等化部は実施形態の適応等化部534、715に対応し、第二補償部は実施形態の周波数及び位相オフセット補償部535に対応する。
【0104】
第一補償部は、偏波多重された受信信号の各偏波の実数成分及び虚数成分のそれぞれに、受信機の周波数特性を補償するインパルス応答及び波長分散補償用の複素インパルス応答を畳み込む。複素信号処理部は、各偏波ごとに、畳み込みが行われた虚数成分に虚数単位を乗算する虚数単位乗算処理を行った後、複素信号処理を行う。複素信号処理は、虚数単位乗算処理が行われた虚数成分を2つに分岐し、畳み込みが行われた実数成分に分岐された一方の虚数成分を加算する処理と、畳み込みが行われた実数成分を2つに分岐し、虚数単位乗算処理が行われた虚数成分に分岐された一方の実数成分を加算する処理と、畳み込みが行われた実数成分、及び、虚数単位乗算処理が行われた虚数成分それぞれを2つに分岐し、分岐された一方の実数成分に分岐された一方の虚数成分を加算し、分岐されたもう一方の実数成分から分岐されたもう一方の虚数成分を減算する処理とのいずれかである。入力信号生成部は、各偏波ごとに、複素信号処理後の各偏波の実数成分及び虚数成分と複素信号処理後の各偏波の実数成分及び虚数成分それぞれの位相共役とを入力信号として生成する。等化部は、各偏波ごとに、入力信号に含まれる各偏波の実数成分及び虚数成分それぞれに複素インパルス応答を乗算したのち加算し、さらに周波数オフセット補償用の位相回転を施した第一加算信号と、入力信号に含まれる各偏波の実数成分の位相共役及び虚数成分の位相共役それぞれに複素インパルス応答を乗算したのち加算し、さらに周波数オフセット補償用の位相回転とは逆の位相回転を施した第二加算信号とを生成する。第二補償部は、各偏波ごとに、第一加算信号と第二加算信号とを加算した信号に、送信データバイアス補正信号を加算又は減算する。
【0105】
また、受信機が備える信号処理装置は、サブキャリア分離部と、入力信号生成部と、等化部と、補償部とを備える。例えば、信号処理装置は実施形態の復調デジタル信号処理部750に対応し、サブキャリア分離部は実施形態のサブキャリア分離部751に対応し、入力信号生成部は実施形態の波長分散補償部533に対応し、等化部は実施形態の適応等化部534、755に対応し、補償部は実施形態の周波数及び位相オフセット補償部535に対応する。
【0106】
サブキャリア分離部は、偏波多重された受信信号の各偏波の実数成分及び虚数成分のそれぞれをサブキャリア毎に分離し、各偏波の各サブキャリアごとに、虚数成分に虚数単位を乗算する虚数単位乗算処理を行った後、複素信号処理を行う。複素信号処理は、虚数単位乗算処理が行われた虚数成分を2つに分岐し、実数成分に分岐された一方の虚数成分を加算する処理と、実数成分を分岐し、虚数単位乗算処理が行われた虚数成分に分岐された一方の実数成分を加算する処理と、畳み込みが行われた実数成分、及び、虚数単位が乗算された虚数成分をそれぞれ分岐し、分岐された一方の実数成分に分岐された一方の虚数成分を加算し、分岐されたもう一方の実数成分から分岐されたもう一方の虚数成分を減算する処理である。入力信号生成部は、各偏波の各サブキャリアごとに、サブキャリアの複素信号処理後の各偏波の実数成分及び虚数成分と、受信信号の中心周波数を挟んでサブキャリアの周波数領域と対象の周波数領域の他のサブキャリアである対称サブキャリアの複素信号処理後の各偏波の実数成分及び虚数成分それぞれの位相共役とを入力信号として生成する。等化部は、各偏波の各サブキャリアごとに、入力信号に含まれるサブキャリアの各偏波の実数成分及び虚数成分それぞれに複素インパルス応答を乗算したのち加算し、さらに周波数オフセット補償用の位相回転を施した第一加算信号と、入力信号に含まれる対称サブキャリアの各偏波の実数成分の位相共役及び虚数成分の位相共役それぞれに複素インパルス応答を乗算したのち加算し、さらに周波数オフセット補償用の位相回転とは逆の位相回転を施した第二加算信号とを生成する。補償部は、各偏波の各サブキャリアごとに、第一加算信号と第二加算信号とを加算した信号に、送信データバイアス補正信号を加算又は減算する。
【0107】
サブキャリア分離部は、各偏波の各サブキャリアに受信機の周波数特性の補償及び波長分散補償をさらに行ってもよい。例えば、サブキャリア分離部は、各偏波の各サブキャリアに受信機の周波数特性を補償するインパルス応答及び波長分散補償用の複素インパルス応答を畳み込む処理をさらに行ってもよい。
【0108】
例えば、受信機は、光信号により偏波多重された受信信号を受信する。
【0109】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0110】
1…デジタルコヒーレント光伝送システム
10…送信機
20…WDM合波器
30…光ファイバ伝送路
31…光増幅器
40…WDM分波器
50…受信機
100…送信部
110…デジタル信号処理部
111…符号化部
112…マッピング部
113…トレーニング信号挿入部
114…サンプリング周波数変更部
115…波形整形部
116…予等化部
117-1~117-4デジタル-アナログ変換器
120…変調器ドライバ
121-1~121-4…アンプ
130…光源
140…集積モジュール
141-1、141-2…IQ変調器
142…偏波合成部
500…受信部
510…局部発振光源
520…光フロントエンド
521…偏波分離部
522-1、522-2…光90度ハイブリッドカプラ
523-1~523-4…BPD
524-1~524-4…アンプ
530…デジタル信号処理部
531-1~531-4…アナログ-デジタル変換器
532…フロントエンド補正部
533…波長分散補償部
534、715、755、805、905…適応等化部
535…周波数及び位相オフセット補償部
536…デマッピング部
537…復号部
700、710、720、730、750、800、900…復調デジタル信号処理部
711、721、731…複素信号処理部
751…サブキャリア分離部
752…第1分離部
753…第2分離部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
図18