(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】無線固定電話ルータ、通信制御方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 36/14 20090101AFI20241107BHJP
【FI】
H04W36/14
(21)【出願番号】P 2023544993
(86)(22)【出願日】2021-09-06
(86)【国際出願番号】 JP2021032720
(87)【国際公開番号】W WO2023032219
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋 正樹
(72)【発明者】
【氏名】鬼沢 武
(72)【発明者】
【氏名】山下 史洋
【審査官】小松崎 里沙
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/057903(WO,A1)
【文献】特開2020-005230(JP,A)
【文献】特開2010-200073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4、6
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも無線固定電話が接続される無線固定電話ルータであって、
第1の移動体通信規格で通信を行う第1通信部と、
前記第1の移動体通信規格と異なる移動体通信規格であって、前記第1の移動体通信規格よりも広い範囲で通信が可能な第2の移動体通信規格で通信を行う第2通信部と、
前記第1通信部による通信を行っている際に通信品質が劣化した場合、前記第2通信部で通信を行うように制御する制御部と、
を備える無線固定電話ルータ。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1の移動体通信規格で通信可能な第1エリアで得られる通信品質の情報と、前記第2の移動体通信規格で通信可能な第2エリアで得られる通信品質の情報とを比較して、前記第1通信部又は前記第2通信部のいずれで通信を行うのか判定する、
請求項1に記載の無線固定電話ルータ。
【請求項3】
前記通信品質には、信号強度又は信号品質の少なくともいずれかと、通話中の音声品質に関する情報とが含まれ、
前記制御部は、接続中の基地局装置が提供する前記第1エリア又は前記第2エリアで測定された前記信号強度又は信号品質に対して、前記音声品質に関する情報を加味した結果を用いて、前記第1通信部又は前記第2通信部のいずれで通信を行うのか判定する、
請求項2に記載の無線固定電話ルータ。
【請求項4】
少なくとも無線固定電話が接続される無線固定電話ルータが行う通信制御方法であって、
第1の移動体通信規格で通信を行い、
前記第1の移動体通信規格と異なる移動体通信規格であって、前記第1の移動体通信規格よりも広い範囲で通信が可能な第2の移動体通信規格で通信を行い、
前記第1の移動体通信規格による通信を行っている際に通信品質が劣化した場合、前記第2の移動体通信規格で通信を行うように制御する通信制御方法。
【請求項5】
請求項1から3に記載の無線固定電話ルータとしてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線固定電話ルータ、通信制御方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、宅内に設置される固定電話のワイヤレス化したワイヤレス固定電話(以下「無線固定電話ルータ」という。)が検討されている(例えば、非特許文献1参照)。さらに、無線固定電話ルータには、LTE(Long Term Evolution、登録商標)通信機能を利用可能なルータもある。従来の無線固定電話ルータでは、電話やファクシミリのみで利用されているため、高速通信向けのLTEカテゴリー2~17(以下「LTE Cat.2~17」という。)は不要である。そのため、従来の無線固定電話ルータでは、比較的に消費電力が低く、低廉化が可能な低速度(下り最大10Mbps/上り最大5Mbps)のLTEカテゴリー1(以下「LTE Cat.1」という。)の通信モジュールを利用しているケースが多い。
【0003】
図18は、従来の無線固定電話ルータ100の構成を表すブロック図である。無線固定電話ルータ100には、例えばFAX200又は加入者電話300が接続されている。無線固定電話ルータ100は、加入者線インターフェイス回路110と、音声符号/復号化部120と、FAX符号/復号化部130と、アプリケーションソフト部140と、制御部150と、記憶部160と、通信制御部170と、加入者情報記録媒体180と、通信部190とを備える。
【0004】
加入者線インターフェイス回路110には、FAX200又は加入者電話300が接続される。加入者線インターフェイス回路110は、接続されたFAX200又は加入者電話300に対して信号の入出力を行う。例えば、加入者線インターフェイス回路110は、FAX200から出力された信号をFAX符号/復号化部130に出力し、加入者電話300から出力された信号を音声符号/復号化部120に出力する。例えば、加入者線インターフェイス回路110は、音声符号/復号化部120から出力された信号を加入者電話300に出力し、FAX符号/復号化部130から出力された信号をFAX200に出力する。
【0005】
音声符号/復号化部120は、入力された音声信号の符号化又は復号化を行う。FAX符号/復号化部130は、入力された信号の符号化又は復号化を行う。アプリケーションソフト部140は、無線固定電話ルータ100における機能を実現するためのアプリケーションプログラムである。制御部150は、無線固定電話ルータ100が備える各機能部の動作を制御する。記憶部160には、各種情報が記憶される。
【0006】
通信制御部170は、LTE方式の通信規格を実現するための通信モジュールである。通信制御部170は、通信制御ソフト部171と、ベースバンド制御部172とを含んで構成される。通信制御ソフト部171は、LTE Cat.1の通信規格の機能を実現するためのソフトウェアである。ベースバンド制御部172は、LTE Cat.1の通信制御を行う。加入者情報記録媒体180は、加入者情報が記録された記録媒体である。例えば、加入者情報記録媒体180は、SIM(Subscriber Identity Module)カード又はeSIM(Embedded SIM)である。加入者情報記録媒体180には、ユーザ情報(例えば、加入者に割り当てられた電話番号)、契約情報、RPLMN(Registered Public Land Mobile Network)、HPLMN(Home PLMN)、OPLMN(Operator PLMN)などの情報が記録されている。
【0007】
RPLMNは、最後に接続していた事業者を表す。HPLMNは、加入者情報記録媒体180を発行した事業者を表す。OPLMNは、HPLMNの基地局装置がない場合に優先する接続先を表す。通信部190は、1以上のアンテナ191を備え、基地局装置との間で通信を行う。
【0008】
ここで、従来における無線固定電話ルータ100の動作について説明する。
図19は、従来の無線固定電話ルータ100の起動時における基地局装置との接続処理の流れを示す図である。無線固定電話ルータ100は、Cat.1セルの報知情報を取得する(ステップS11)。Cat.1セルとは、LTE Cat.1の機能で基地局装置が提供している通信可能エリアを表す。ここで、無線固定電話ルータ100は、取得した報知情報により、Cat.1セルが非通信中であることを把握したとする。その後、無線固定電話ルータ100は、電源をON状態にする(ステップS12)。
【0009】
通信制御ソフト部171は、加入者情報記録媒体180に記録されている各種情報を取得する(ステップS13)。通信制御ソフト部171は、取得した各種情報をベースバンド制御部172に出力する。ベースバンド制御部172は、出力された各種情報に基づいてセルサーチ処理を行う(ステップS14)。セルサーチ処理とは、無線固定電話ルータ100が通信を行うために接続するセルを検出する処理である。ここで、Cat.1セルが検出されたとする。その後、ベースバンド制御部172は、Cat.1セルの基準信号のRSRP(Reference Signal Received Power)及びRSRQ(Reference Signal Received Quality)を測定する(ステップS15)。ベースバンド制御部172は、測定したRSRP及びRSRQを制御部150に出力する。
【0010】
制御部150は、ベースバンド制御部172から出力されたRSRP及びRSRQに基づいてCat.1セルのMRを作成する。制御部150は、作成したMRをベースバンド制御部172に出力する。ベースバンド制御部172は、通信部190を介して、MRを基地局装置に送信する(ステップS16)。ベースバンド制御部172は、基地局装置から送信されたCat.1セルへの無線リンクの設定に関する情報に基づいて、Cat.1セルに接続する(ステップS17)。以下の説明では、無線固定電話ルータ100が接続しているセルをサービングセルとも記載する。
【0011】
次に、従来の無線固定電話ルータ100におけるハンドオーバーの処理の流れについて説明する。
図20は、従来の無線固定電話ルータ100のハンドオーバーの処理の流れを示す図である。ここでは、
図19に示す処理で無線固定電話ルータ100が接続したCat.1セルから別のセルにハンドオーバーする流れについて説明する。ベースバンド制御部172は、サービングセル(例えば、Cat.1セル)のRSRP及びRSRQを測定する(ステップS21)。
【0012】
ベースバンド制御部172は、測定したRSRP及びRSRQに基づいて、MR(Measurement Report)の作成要否を判定する(ステップS22)。測定したRSRP又はRSRQのいずれかが閾値未満である場合、ベースバンド制御部172はMRの作成が必要であると判定する。RSRP又はRSRQのいずれかが閾値未満であるということは、受信強度又は受信品質が劣化していることを意味する。ベースバンド制御部172は、MRの作成が不要であると判定した場合(ステップS22-NO)、ステップS21の処理に戻って処理を行う。
【0013】
一方、ベースバンド制御部172は、MRの作成が必要であると判定した場合(ステップS22-YES)、サービングセルのRSRP及びRSRQと、無線固定電話ルータ100に隣接しているセルのRSRP及びRSRQを測定する。ベースバンド制御部172は、測定したRSRP及びRSRQを制御部150に出力する。制御部150は、ベースバンド制御部172から出力されたRSRP及びRSRQに基づいてMRを作成する(ステップS23)。
図21は、サービングセル及び無線固定電話ルータ100に隣接しているセルで測定されたRSRP及びRSRQに基づいて作成されたMRの一例を示す図である。
【0014】
制御部150は、作成したMRをベースバンド制御部172に出力する。ベースバンド制御部172は、通信部190を介して、サービングセルを提供している基地局装置にMRを送信する(ステップS24)。
【0015】
ベースバンド制御部172は、通信部190を介して、サービングセルを提供している基地局装置からのハンドオーバーの指示を受信する(ステップS25)。ハンドオーバーの指示には、新たな接続先の無線リンクの設定に関する情報が含まれる。ベースバンド制御部172は、受信したハンドオーバーの指示に基づいて、サービングセルの無線リンクを切断する(ステップS26)。ベースバンド制御部172は、ハンドオーバーの指示に含まれる無線リンクの設定に関する情報に基づいて、新たな接続先のセルの無線リンクを設定する(ステップS27)。
【0016】
無線固定電話ルータ100は、無線リンクの設定完了後、新たな接続先のセルの上りユーザパケットのデータ通信経路を確立する(ステップS28)。無線固定電話ルータ100は、無線リンクの設定完了後、新たな接続先のセルの下りユーザパケットのデータ通信経路を確立する(ステップS29)。これにより、無線固定電話ルータ100は、他のセルにハンドオーバーすることができる。
【0017】
上記のように、LTEでは、UE(ここでは、無線固定電話ルータ100)が他のセルにハンドオーバーする場合に、UEでサービングセルと隣接セルにおける基準信号の受信品質(RSRP、RSRQ)を測定し、UEから基地局装置に受信品質の測定結果としてMRを送信する。基地局装置は、受信したMRに基づいてUEの接続先となる基地局装置の情報を含むRRC Connection ReconfigureationをUEに送信する。UEは、受信したRRC Connection Reconfigureationに基づいて、遷移先にハンドオーバーする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【文献】“情報通信審議会情報通信技術分科会 IPネットワーク設備委員会 ワイヤレス固定電話検討作業班報告(案)概要―ワイヤレス固定電話用設備に係る技術的条件―”、[online]、[令和3年9月6日検索]、インターネット<https://www.soumu.go.jp/main_content/000706846.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、ルーラルエリアではエリア面積に対して携帯電話基地局も少ないため、既存の固定電話利用場所が既存の携帯電話基地局のセルカバレッジ外である場合も想定され、無線固定電話が利用できない場合があった。このような場合、無線固定電話が利用できないという問題がある。
【0020】
上記事情に鑑み、本発明は、従来よりも無線固定電話の通信を維持することができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一態様は、少なくとも無線固定電話が接続される無線固定電話ルータであって、第1の移動体通信規格で通信を行う第1通信部と、前記第1の移動体通信規格と異なる移動体通信規格であって、前記第1の移動体通信規格よりも広い範囲で通信が可能な第2の移動体通信規格で通信を行う第2通信部と、前記第1通信部による通信を行っている際に通信品質が劣化した場合、前記第2通信部で通信を行うように制御する制御部と、を備える無線固定電話ルータである。
【0022】
本発明の一態様は、少なくとも無線固定電話が接続される無線固定電話ルータが行う通信制御方法であって、第1の移動体通信規格で通信を行い、前記第1の移動体通信規格と異なる移動体通信規格であって、前記第1の移動体通信規格よりも広い範囲で通信が可能な第2の移動体通信規格で通信を行い、前記第1の移動体通信規格による通信を行っている際に通信品質が劣化した場合、前記第2の移動体通信規格で通信を行うように制御する通信制御方法である。
【0023】
本発明の一態様は、上記の無線固定電話ルータとしてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、従来よりも無線固定電話の通信を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明における無線通信システムのシステム構成を示す図である。
【
図2】本発明における無線固定電話ルータの構成を表すブロック図である。
【
図3】第1動作例における無線固定電話ルータの処理の概要を説明するための図である。
【
図4】第1動作例における無線固定電話ルータの処理の概要を説明するための図である。
【
図5】第1動作例における無線固定電話ルータの処理の概要を説明するための図である。
【
図6】第1動作例における無線固定電話ルータの処理の概要を説明するための図である。
【
図7】第1動作例における無線固定電話ルータの処理の概要を説明するための図である。
【
図8】本発明における無線固定電話ルータの起動時における基地局装置との接続処理の流れを示す図である。
【
図9】本発明における無線固定電話ルータのハンドオーバーの処理(その1)の流れを示す図である。
【
図10】第1セルのMRと第2セルのMRとを用いて作成されたMRの一例を示す図である。
【
図11】本発明における無線固定電話ルータのハンドオーバーの処理(その2)の流れを示す図である。
【
図12】第2動作例における無線固定電話ルータの処理の概要を説明するための図である。
【
図13】音声通信RTCP情報を利用した音声通話品質劣化のモニター方法の一例を説明するための図である。
【
図14】第2動作例におけるRTCP受信者レポートパケットのフォーマットの一例を示す図である。
【
図15】第2動作例における音声通話品質劣化によるハンドオーバー時のMRへの音声通話品質劣化情報の反映方法を説明するための図である。
【
図16】本発明における無線固定電話ルータのハンドオーバーの処理(その3)の流れを示す図である。
【
図17】本発明における無線固定電話ルータのハンドオーバーの処理(その4)の流れを示す図である。
【
図18】従来の無線固定電話ルータの構成を表すブロック図である。
【
図19】従来の無線固定電話ルータの起動時における基地局装置との接続処理の流れを示す図である。
【
図20】従来の無線固定電話ルータのハンドオーバーの処理の流れを示す図である。
【
図21】サービングセル及び無線固定電話ルータに隣接しているセルで測定されたRSRP及びRSRQに基づいて作成されたMRの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明における無線通信システム1のシステム構成を示す図である。無線通信システム1は、無線固定電話ルータ10及び基地局装置30を備える。なお、無線通信システム1は、複数台の無線固定電話ルータ10及び基地局装置30を備えてもよい。
【0027】
無線固定電話ルータ10は、加入者宅に設置される装置である。無線固定電話ルータ10は、無線固定電話のLTE通信機能として、1つの加入者情報記録媒体に対して、LTE Cat.1~17と、LTE Cat.M1の2種類の機能を持つ。LTE Cat.M1には、カバレッジ拡張機能があるため、LTE Cat.1~17に比べて接続できるセルの範囲が広い。さらに、無線固定電話ルータ10は、LTE Cat.2~17の機能も備えるため、高速な通信を行うパーソナルコンピュータのデバイスを接続することもできる。無線固定電話ルータ10には、例えばFAX51、加入者電話52又はPC(Personal computer)53が接続されている。
【0028】
基地局装置30は、LTEによる通信が可能な基地局装置である。基地局装置30は、LTE Cat.1~17規格の通信を可能にする通信可能エリア(以下「第1セル」という。)31、及び、LTE Cat.M1規格の通信を可能にする通信可能エリア(以下「第2セル」という。)32を提供する。
【0029】
図2は、本発明における無線固定電話ルータ10の構成を表すブロック図である。無線固定電話ルータ10は、イーサネットインターフェイス回路11と、加入者線インターフェイス回路12と、イーサネット制御部13と、音声符号/復号化部14と、FAX符号/復号化部15と、アプリケーションソフト部16と、制御部17と、記憶部18と、第1通信制御部19と、第2通信制御部20と、加入者情報記録媒体21と、第1通信部22と、第2通信部23とを備える。
【0030】
イーサネットインターフェイス回路11には、PC53が接続される。イーサネットインターフェイス回路11は、接続されたPC53に対して信号の入出力を行う。例えば、イーサネットインターフェイス回路11は、PC53から出力された信号をイーサネット制御部13に出力する。例えば、イーサネットインターフェイス回路11は、イーサネット制御部13から出力された信号をPC53に出力する。
【0031】
加入者線インターフェイス回路12には、FAX51又は加入者電話52が接続される。加入者線インターフェイス回路12は、接続されたFAX51又は加入者電話52に対して信号の入出力を行う。例えば、加入者線インターフェイス回路11は、FAX51から出力された信号をFAX符号/復号化部15に出力し、加入者電話52から出力された信号を音声符号/復号化部14に出力する。例えば、加入者線インターフェイス回路12は、音声符号/復号化部14から出力された信号を加入者電話52に出力し、FAX符号/復号化部15から出力された信号をFAX51に出力する。
【0032】
イーサネット制御部13は、イーサネットインターフェイス回路11から出力された信号を制御部17に転送する。イーサネット制御部13は、制御部17から出力された信号をイーサネットインターフェイス回路11に転送する。
【0033】
音声符号/復号化部14は、入力された音声信号の符号化又は復号化を行う。
【0034】
FAX符号/復号化部15は、入力された信号の符号化又は復号化を行う。
【0035】
アプリケーションソフト部16は、無線固定電話ルータ10における機能を実現するためのアプリケーションプログラムである。
【0036】
制御部17は、無線固定電話ルータ100が備える各機能部の動作を制御する。具体的には、制御部17は、無線固定電話ルータ10が使用する通信規格(LTE Cat.1~17又はLTE Cat.M1)の切り替えを行う。制御部17は、サービングセルにおける無線品質の劣化を検出した場合に、通信規格(LTE Cat.1~17又はLTE Cat.M1)の切り替えを行う。
【0037】
記憶部18には、各種情報が記憶される。
【0038】
第1通信制御部19は、LTE Cat.1~17の通信規格を実現するための通信モジュールである。第1通信制御部19は、第1通信制御ソフト部26と、第1ベースバンド制御部27とを含んで構成される。第1通信制御ソフト部26は、LTE Cat.1~17の通信規格の機能を実現するためのソフトウェアである。第1ベースバンド制御部27は、LTE Cat.1~17の通信制御を行う。
【0039】
第2通信制御部20は、LTE Cat.M1の通信規格を実現するための通信モジュールである。第2通信制御部20は、第2通信制御ソフト部28と、第2ベースバンド制御部29とを含んで構成される。第2通信制御ソフト部28は、LTE Cat.M1の通信規格の機能を実現するためのソフトウェアである。第2ベースバンド制御部29は、LTE Cat.M1の通信制御を行う。
【0040】
加入者情報記録媒体21は、加入者情報が記録された記録媒体である。例えば、加入者情報記録媒体21は、SIMカード又はeSIMである。加入者情報記録媒体21には、ユーザ情報(例えば、加入者に割り当てられた電話番号)、契約情報、RPLMN、HPLMN、OPLMNなどの情報が記録されている。
【0041】
第1通信部22は、1以上のアンテナ24を備え、基地局装置30との間で通信を行う。例えば、第1通信部22は、基地局装置30が提供する第1セル31内で基地局装置30との間で通信する。
【0042】
第2通信部23は、1以上のアンテナ25を備え、基地局装置との間で通信を行う。第2通信部23は、基地局装置30が提供する第2セル32内で基地局装置30との間で通信する。
【0043】
無線固定電話ルータ10は、FAX51又はPC53から入力された信号を用いたデータ通信と、加入者電話52から入力された音声信号を用いた音声通話とを行うが、データ通信時又は音声通話時の無線固定電話ルータ10の処理について以下で説明する。
【0044】
(第1の動作例)
まず、無線固定電話ルータ10の第1動作例として、FAX51又はPC53から入力された信号を用いたデータ通信時の処理について説明する。
図3~
図7は、第1動作例における無線固定電話ルータ10の処理の概要を説明するための図である。
図3では、無線固定電話ルータ10が、基地局装置30-1が提供する第2セル32-1にハンドオーバーする場合の流れについて説明する。
図3において、無線固定電話ルータ10は、基地局装置30-1が提供する第1セル31-1、第2セル32-1及び基地局装置30-2が提供する第2セル32-2内に位置している。
図3において、無線固定電話ルータ10が測定した各セル内におけるRSRP/RSRQの関係は以下の状態であるとする。
【0045】
(
図3に示す各セル内におけるRSRP/RSRQの関係)
・第1セル31-1で測定されたRSRP/RSRQ>第2セル32-1で測定されたRSRP/RSRQ>第2セル32-2で測定されたRSRP/RSRQ
【0046】
上記の関係の場合、無線固定電話ルータ10は、平常時には最も通信品質が高い第1セル31-1に接続して通信を行う。その後、無線固定電話ルータ10が、第1セル31-1の無線品質劣化を検出(例えば、RSRP又はRSRQが閾値未満)した場合、
図3の下図(品質劣化発生時)に示す通り、無線固定電話ルータ10は接続可能で、かつ、次に通信品質が高い第2セル32-1に接続する。この際、無線固定電話ルータ10では、第1通信制御部19に代えて第2通信制御部20を用いて通信を行う。なお、固定電話の利用は可能である。
【0047】
図4では、無線固定電話ルータ10が、基地局装置30-2が提供する第2セル32-2にハンドオーバーする場合の流れについて説明する。
図4において、無線固定電話ルータ10は、基地局装置30-1が提供する第1セル31-1、第2セル32-1及び基地局装置30-2が提供する第2セル32-2内に位置している。
図4において、無線固定電話ルータ10が測定した各セル内におけるRSRP/RSRQの関係は以下の状態であるとする。
【0048】
(
図4に示す各セル内におけるRSRP/RSRQの関係)
・第1セル31-1で測定されたRSRP/RSRQ>第2セル32-1で測定されたRSRP/RSRQ>第2セル32-2で測定されたRSRP/RSRQ
【0049】
上記の関係の場合、無線固定電話ルータ10は、平常時には最も通信品質が高い第1セル31-1に接続して通信を行う。その後、無線固定電話ルータ10が、第1セル31-1及び第2セル32-1の無線品質劣化を検出(例えば、RSRP又はRSRQが閾値未満)した場合、
図4の下図(品質劣化発生時)に示す通り、無線固定電話ルータ10は接続可能な第2セル32-2に接続する。この際、無線固定電話ルータ10では、第1通信制御部19に代えて第2通信制御部20を用いて通信を行う。なお、固定電話の利用は可能である。
【0050】
図5では、無線固定電話ルータ10が、基地局装置30-1が提供する第2セル32-1にハンドオーバーする場合の流れについて説明する。
図5において、無線固定電話ルータ10は、基地局装置30-1が提供する第1セル31-1、第2セル32-1及び基地局装置30-2が提供する第2セル32-2内に位置している。
図5において、無線固定電話ルータ10が測定した各セル内におけるRSRP/RSRQの関係は以下の状態であるとする。
【0051】
(
図5に示す各セル内におけるRSRP/RSRQの関係)
・第1セル31-1で測定されたRSRP/RSRQ>第2セル32-1で測定されたRSRP/RSRQ>第2セル32-2で測定されたRSRP/RSRQ
【0052】
上記の関係の場合、無線固定電話ルータ10は、平常時には最も通信品質が高い第1セル31-1に接続して通信を行う。その後、無線固定電話ルータ10が、基地局装置30-1の障害により、第1セル31-1において停波したことを検出(例えば、RSRP又はRSRQの測定不可)した場合、
図5の下図(障害発生時)に示す通り、無線固定電話ルータ10は接続可能であり、かつ、次に通信品質が高い第2セル32-1に接続する。この際、無線固定電話ルータ10では、第1通信制御部19に代えて第2通信制御部20を用いて通信を行う。なお、固定電話の利用は可能である。
【0053】
図6では、無線固定電話ルータ10が、基地局装置30-2が提供する第2セル32-2にハンドオーバーする場合の流れについて説明する。
図6において、無線固定電話ルータ10は、基地局装置30-1が提供する第1セル31-1、第2セル32-1及び基地局装置30-2が提供する第2セル32-2内に位置している。
図6において、無線固定電話ルータ10が測定した各セル内におけるRSRP/RSRQの関係は以下の状態であるとする。
【0054】
(
図6に示す各セル内におけるRSRP/RSRQの関係)
・第1セル31-1で測定されたRSRP/RSRQ>第2セル32-1で測定されたRSRP/RSRQ>第2セル32-2で測定されたRSRP/RSRQ
【0055】
上記の関係の場合、無線固定電話ルータ10は、平常時には最も通信品質が高い第1セル31-1に接続して通信を行う。その後、無線固定電話ルータ10が、基地局装置30-1の障害により、第1セル31-1及び第2セル32-1の全セルで停波したことを検出(例えば、RSRP又はRSRQの測定不可)した場合、
図6の下図(障害発生時)に示す通り、無線固定電話ルータ10は接続可能な第2セル32-2に接続する。この際、無線固定電話ルータ10では、第1通信制御部19に代えて第2通信制御部20を用いて通信を行う。なお、固定電話の利用は可能である。
【0056】
図7では、無線固定電話ルータ10が、
図6の障害発生時における状況から基地局装置30-1の障害が解消して、基地局装置30-1が提供する第1セル31-1にハンドオーバーする場合の流れについて説明する。
図7において、無線固定電話ルータ10は、基地局装置30-1が提供する第1セル31-1、第2セル32-1及び基地局装置30-2が提供する第2セル32-2内に位置している。無線固定電話ルータ10は、障害発生時には第2セル32-2に接続して通信を行う。
【0057】
その後、無線固定電話ルータ10は、基地局装置30-1の障害が解消したことを検出(例えば、RSRP又はRSRQの測定可能)した場合、基地局装置30-1が提供する第1セル31-1及び第2セル32-1内におけるRSRP/RSRQを測定する。
図7において、無線固定電話ルータ10が測定した各セル内におけるRSRP/RSRQの関係は以下の状態であるとする。
【0058】
(
図7に示す各セル内におけるRSRP/RSRQの関係)
・第1セル31-1で測定されたRSRP/RSRQ>第2セル32-1で測定されたRSRP/RSRQ>第2セル32-2で測定されたRSRP/RSRQ
【0059】
上記の関係の場合、無線固定電話ルータ10は、
図7の下図(障害復旧時)に示す通り、接続可能であり、かつ、通信品質が最も高い第1セル31-1に接続する。この際、無線固定電話ルータ10では、第2通信制御部20に代えて第1通信制御部19を用いて通信を行う。
【0060】
図8は、本発明における無線固定電話ルータ10の起動時における基地局装置30との接続処理の流れを示す図である。無線固定電話ルータ10は、第1セルの報知情報を取得する(ステップS101)。さらに、無線固定電話ルータ10は、第2セルの報知情報を取得する(ステップS102)。その後、無線固定電話ルータ100は、電源をON状態にする(ステップS103)。
【0061】
第1通信制御ソフト部26は、加入者情報記録媒体21に記録されている各種情報を取得する(ステップS104)。第1通信制御ソフト部26は、取得した各種情報を第1ベースバンド制御部27に出力する。第1ベースバンド制御部27は、出力された各種情報に基づいてセルサーチ処理を行う(ステップS105)。ここで、第1セル31及び第2セル32が検出されたとする。第1ベースバンド制御部27は、第1セル31の基準信号のRSRPを測定する(ステップS106)。第1ベースバンド制御部27は、第1セル31で測定したRSRPを制御部17に出力する。
【0062】
第2ベースバンド制御部29は、第2セル32の基準信号のRSRPを測定する(ステップS106)。第2ベースバンド制御部29は、第2セル32で測定したRSRPを制御部17に出力する。制御部17は、第1セル31で測定されたRSRPと、第2セル32で測定されたRSRPとを比較して接続先のセルを決定する(ステップS108)。制御部17は、第1セル31で測定されたRSRPと、第2セル32で測定されたRSRPそれぞれが閾値未満である場合、接続可能なセルがないと判定する。
【0063】
制御部17は、第1セル31で測定されたRSRPと、第2セル32で測定されたRSRPそれぞれが閾値以上であって、かつ、第1セル31で測定されたRSRPが、第2セル32で測定されたRSRPよりも大きい場合、接続先のセルを第1セル31と判定する。制御部17は、第1セル31で測定されたRSRPと、第2セル32で測定されたRSRPそれぞれが閾値以上であって、かつ、第2セル32で測定されたRSRPが、第1セル31で測定されたRSRPよりも大きい場合、接続先のセルを第2セル32と判定する。
【0064】
制御部17は、接続可能なセルがないと判定した場合(ステップS108-接続可能セルなし)、接続失敗として処理を終了する。制御部17は、接続先のセルを第1セル31と判定した場合(ステップS108-第1セル接続)、第1セル31のRSRPを用いて第1セル31のMRを作成する。制御部17は、作成した第1セル31のMRを第1通信制御部19に出力する。第1通信制御部19の第1ベースバンド制御部27は、第1通信部22を介して、制御部17から出力された第1セル31のMRを基地局装置30に送信する(ステップS109)。第1ベースバンド制御部27は、基地局装置30から送信された第1セル31への無線リンクの設定に関する情報に基づいて、第1セル31に接続する(ステップS110)。
【0065】
ステップS108の処理において、制御部17が、接続先のセルを第2セル32と判定した場合(ステップS108-第2セル接続)、第2セル32のRSRPを用いて第2セル32のMRを作成する。制御部17は、作成した第2セル32のMRを第2通信制御部20に出力する。第2通信制御部20の第2ベースバンド制御部29は、第2通信部23介して、制御部17から出力された第2セル32のMRを基地局装置30に送信する(ステップS111)。第2ベースバンド制御部29は、基地局装置30から送信された第2セル32への無線リンクの設定に関する情報に基づいて、第2セル32に接続する(ステップS112)。
【0066】
図9は、本発明における無線固定電話ルータ10のハンドオーバーの処理(その1)の流れを示す図である。
図9では、
図3に例示した場合における、無線信号の品質劣化をトリガーとしたハンドオーバーの処理の流れについて説明する。なお、
図9の処理開始時には、基地局装置30-1の第1セル31-1がサービングセルであって、基地局装置30-1の第2セル32-1がアイドル状態であるとする。
【0067】
第1ベースバンド制御部27は、サービングセル(例えば、第1セル31-1)のRSRP及びRSRQを測定する(ステップS201)。第1ベースバンド制御部27は、測定したRSRP及びRSRQに基づいて、MRの作成要否を判定する(ステップS202)。MRの作成要否の判定は従来と同じである。第1ベースバンド制御部27は、MRの作成が不要であると判定した場合(ステップS202-NO)、ステップS201の処理に戻って処理を行う。
【0068】
一方、第1ベースバンド制御部27は、MRの作成が必要であると判定した場合(ステップS202-YES)、サービングセルのRSRP及びRSRQと、無線固定電話ルータ10に隣接している第1セル31(以下「隣接第1セル31」という。)のRSRP及びRSRQを測定する。第1ベースバンド制御部27は、測定したRSRP及びRSRQを制御部17に出力する。制御部17は、第1ベースバンド制御部27から出力されたRSRP及びRSRQに基づいて、第1セル31のMRを作成する(ステップS203)。
【0069】
第2ベースバンド制御部29は、無線固定電話ルータ10に隣接している第2セル32(以下「隣接第2セル32」という。)のRSRP及びRSRQを測定する。第2ベースバンド制御部29は、測定したRSRP及びRSRQを制御部17に出力する。制御部17は、第2ベースバンド制御部29から出力されたRSRP及びRSRQに基づいて、第2セル32のMRを作成する(ステップS203)。
【0070】
制御部17は、第1セル31のMRと、第2セル32のMRとを比較してハンドオーバーをするか否かを判定する(ステップS205)。例えば、制御部17は、第1セル31のMRに含まれる1以上のRSRPと、第2セル32のMRに含まれる1以上のRSRPのいずれも閾値未満である場合、又は、サービングセルで測定されたRSRPの値が最も品質が良い場合には、ハンドオーバーしないと判定する。
【0071】
例えば、制御部17は、第1セル31のMRに含まれる隣接第1セル31で測定された1以上のRSRPの値が、第2セル32のMRに含まれる1以上のRSRPの値よりも品質が良い場合には、隣接第1セル31にハンドオーバーすると判定する。この場合、制御部17は、最も品質が良い隣接第1セル31にハンドオーバーすると判定する。
【0072】
例えば、制御部17は、第2セル32のMRに含まれる1以上のRSRPの値が、第1セル31のMRに含まれる隣接第1セル31で測定された1以上のRSRPの値よりも品質が良い場合には、隣接第2セル32にハンドオーバーすると判定する。この場合、制御部17は、最も品質が良い隣接第2セル32にハンドオーバーすると判定する。
【0073】
制御部17は、ハンドオーバーしないと判定した場合(ステップS205-HOをしない)、ステップS201の処理を行う。制御部17は、隣接第1セル31にハンドオーバーすると判定した場合(ステップS205-隣接第1セルへのHO実行を判定)、第1通信制御部19に対してMRの送信を指示する。第1通信制御部19の第1ベースバンド制御部27は、制御部17からの指示に従って、第1セル31のMRを、第1通信部22を介してサービングセルの基地局装置30-1に送信する(ステップS206)。
【0074】
第1ベースバンド制御部27は、第1通信部22を介して、サービングセルを提供している基地局装置30-1からのハンドオーバーの指示を受信する(ステップS207)。第1ベースバンド制御部27は、受信したハンドオーバーの指示に基づいて、サービングセルの無線リンクを切断する(ステップS208)。その後、第1ベースバンド制御部27は、ハンドオーバーの指示に含まれる無線リンクの設定に関する情報に基づいて、新たな接続先の第1セル31の無線リンクを設定する(ステップS209)。
【0075】
無線固定電話ルータ10は、無線リンクの設定完了後、新たな接続先の第1セル31の上りユーザパケットのデータ通信経路を確立する(ステップS210)。無線固定電話ルータ10は、無線リンクの設定完了後、新たな接続先の第1セル31の下りユーザパケットのデータ通信経路を確立する(ステップS211)。この場合、サービングセルは、基地局装置30-2の第1セル31-2になる。
【0076】
ステップS205の処理において、制御部17が、隣接第2セル32にハンドオーバーすると判定した場合(ステップS205-隣接第2セルへのHO実行を判定)、制御部17は第1セル31のMRに、第2セル32のMRに含まれる測定結果を追加して、新たなMRを作成する(ステップS212)。
図10は、第1セル31のMRと第2セル32のMRとを用いて作成されたMRの一例を示す図である。
図10に示すように、第1セル31のMRに、第2セル32のMRに含まれる測定結果が追加されている。
図10に示す例では、RSRPの値「C > A > D > B」又は「C > D > A >B」の場合(値:Cが最良品質の場合)、基地局装置30-1の第2セル32が最大品質であることが示されている。
【0077】
制御部17は、作成したMRを第2通信制御部20に出力する。第2通信制御部20の第2ベースバンド制御部29は、第2通信部23を介して、制御部17から出力されたMRをサービングセルの基地局装置30-1に送信する(ステップS213)。第2ベースバンド制御部29は、第2通信部23を介して、サービングセルを提供している基地局装置30-1からのハンドオーバーの指示を受信する(ステップS214)。第2ベースバンド制御部29は、受信したハンドオーバーの指示に基づいて、サービングセルの無線リンクを切断する(ステップS215)。その後、第2ベースバンド制御部29は、ハンドオーバーの指示に含まれる無線リンクの設定に関する情報に基づいて、新たな接続先の基地局装置30-1の第2セル32の無線リンクを設定する(ステップS216)。
【0078】
無線固定電話ルータ10は、無線リンクの設定完了後、新たな接続先の第2セル32の上りユーザパケットのデータ通信経路を確立する(ステップS217)。無線固定電話ルータ10は、無線リンクの設定完了後、新たな接続先の第2セル32の下りユーザパケットのデータ通信経路を確立する(ステップS218)。この場合、サービングセルは、基地局装置30-1の第2セル32-2になる。
【0079】
図11は、本発明における無線固定電話ルータ10のハンドオーバーの処理(その2)の流れを示す図である。
図11では、
図7に例示した場合における、障害による停波したセルの復旧をトリガーとしたハンドオーバーの処理の流れについて説明する。なお、
図11の処理開始時には、基地局装置30-2の第2セル32-2がサービングセルであって、基地局装置30-2の第1セル31-2がアイドル状態であるとする。
【0080】
基地局装置30-1が提供していた第1セル31-1及び第2セル32-1が復旧したとする(ステップS301)。無線固定電話ルータ10は、基地局装置30-1の第1セル31-1及び第2セル32-1の復旧を、例えば第1セル31-1から送信される基準信号を受信に応じて判断する。制御部17は、基地局装置30-1の第1セル31-1及び第2セル32-1の復旧に応じたMRの作成要否を判定する(ステップS302)。制御部17は、現在のサービングセルの無線品質が閾値未満である場合にMRの作成が必要であると判定してもよいし、元の接続先が異なる基地局装置30(例えば、基地局装置30-1)である場合にMRの作成が必要であると判定してもよい。
【0081】
制御部17は、MRの作成が不要であると判定した場合(ステップS302-NO)、ステップS302の処理に戻って処理を行う。
一方、制御部17は、MRの作成が必要であると判定した場合(ステップS302-YES)、第1通信制御部19及び第2通信制御部20にRSRP及びRSRQの測定を指示する。第2通信制御部20の第2ベースバンド制御部29は、サービングセル(例えば、第2セル32-2)のRSRP及びRSRQと、隣接第2セル32のRSRP及びRSRQを測定する。第2ベースバンド制御部29は、測定した複数のRSRP及びRSRQを制御部17に出力する。制御部17は、第2ベースバンド制御部29から出力された複数のRSRP及びRSRQに基づいて、第2セル32のMRを作成する(ステップS303)。
【0082】
第1ベースバンド制御部27は、隣接第1セル31のRSRP及びRSRQを測定する。第1ベースバンド制御部27は、測定した複数のRSRP及びRSRQを制御部17に出力する。制御部17は、第1ベースバンド制御部27から出力された複数のRSRP及びRSRQに基づいて、第1セル31のMRを作成する(ステップS304)。
【0083】
制御部17は、第1セル31のMRと、第2セル32のMRとを比較してハンドオーバーをするか否かを判定する(ステップS305)。制御部17は、ハンドオーバーしないと判定した場合(ステップS305-HOをしない)、ステップS302の処理を行う。制御部17は、隣接第1セル31にハンドオーバーすると判定した場合(ステップS305-隣接第1セルへのHO実行を判定)、第2セル32のMRに、第1セル31のMRに含まれる測定結果を追加して、新たなMRを作成する(ステップS306)。
【0084】
制御部17は、作成したMRを第1通信制御部19に出力する。第1通信制御部19の第1ベースバンド制御部27は、制御部17から出力されたMRを、第1通信部22を介してサービングセルの基地局装置30-2に送信する(ステップS307)。第1ベースバンド制御部27は、第1通信部22を介して、サービングセルを提供している基地局装置30-2からのハンドオーバーの指示を受信する(ステップS308)。第1ベースバンド制御部27は、受信したハンドオーバーの指示に基づいて、サービングセルの無線リンクを切断する(ステップS309)。その後、第1ベースバンド制御部27は、ハンドオーバーの指示に含まれる無線リンクの設定に関する情報に基づいて、新たな接続先の基地局装置30-1の第1セル31-1の無線リンクを設定する(ステップS310)。
【0085】
無線固定電話ルータ10は、無線リンクの設定完了後、新たな接続先の第1セル31-1の上りユーザパケットのデータ通信経路を確立する(ステップS311)。無線固定電話ルータ10は、無線リンクの設定完了後、新たな接続先の第1セル31-1の下りユーザパケットのデータ通信経路を確立する(ステップS312)。この場合、サービングセルは、基地局装置30-1の第1セル31-1になる。
【0086】
ステップS305の処理において、制御部17が、隣接第2セル32にハンドオーバーすると判定した場合(ステップS305-隣接第2セルへのHO実行を判定)、制御部17は第2通信制御部20に対してMRの送信を指示する。第2通信制御部20の第2ベースバンド制御部29は、制御部17からの指示に従って、第2セル32のMRを、第2通信部23を介してサービングセルの基地局装置30-2に送信する(ステップS313)。
【0087】
第2ベースバンド制御部29は、第2通信部23を介して、サービングセルを提供している基地局装置30-2からのハンドオーバーの指示を受信する(ステップS314)。第2ベースバンド制御部29は、受信したハンドオーバーの指示に基づいて、サービングセルの無線リンクを切断する(ステップS315)。その後、第2ベースバンド制御部29は、ハンドオーバーの指示に含まれる無線リンクの設定に関する情報に基づいて、新たな接続先の第2セル32-1の無線リンクを設定する(ステップS316)。
【0088】
無線固定電話ルータ10は、無線リンクの設定完了後、新たな接続先の第2セル32-1の上りユーザパケットのデータ通信経路を確立する(ステップS317)。無線固定電話ルータ10は、無線リンクの設定完了後、新たな接続先の第2セル32-1の下りユーザパケットのデータ通信経路を確立する(ステップS318)。この場合、サービングセルは、基地局装置30-1の第2セル32-1になる。
【0089】
(第2の動作例)
次に、無線固定電話ルータ10の第2動作例として、加入者電話52から入力された音声信号を用いた音声通話時の処理について説明する。
図12は、第2動作例における無線固定電話ルータ10の処理の概要を説明するための図である。
図12に示すように、ユーザが、基地局装置30-1が提供する第1セル31-1に接続している無線固定電話ルータ10を介して他のユーザと音声通話をしているとする。無線固定電話ルータ10は、音声通話時に、音声通信のパケットロス、パケット遅延及びパケットジッタをモニターして音声通信品質の劣化を監視する。
【0090】
無線固定電話ルータ10の制御部17は、音声通話品質劣化(パケットロス、パケット遅延又はパケットジッタのいずれかが閾値未満)を検知すると、サービングセルの受信基準信号の信号強度(RSRP)、信号品質(RSRQ)に、音声通話品質劣化情報を加味してハンドオーバー実行判定を行い、接続可能な隣接セルにハンドオーバーして音声通話品質の維持・改善を行う。音声通話品質劣化情報とは、パケットロス、パケット遅延又はパケットジッタに基づいて、測定されたRSRP及びRSRQに加味される値である。
【0091】
図13は、音声通信RTCP情報を利用した音声通話品質劣化のモニター方法の一例を説明するための図である。VoLTE通信では、音声データ通信にRTP(Real-time Transport Protocol)、RTCP(RTP Control Protocol)を利用している。RTCPの受信者レポート(RR:Receiver Report)により、受信者での受信品質に関する情報(パケットロス率、パケット間隔ジッタ)、さらに送信者レポート(SR)の受信時刻とRRの受信時刻とに基づいて往復遅延時間(RTT:Round-Trip Time)を求める事ができる。例えば、往復遅延時間(RTT)は、以下の式(1)に基づいて算出される。
【0092】
【0093】
図14は、第2動作例におけるRTCP受信者レポートパケットのフォーマットの一例を示す図である。
図14に示すように、RTCP受信者レポートパケットは、RTCPヘッダと、1以上のRRブロックで構成される。RTCPヘッダには、バージョン番号、パティングヒット、項目数、ペイロードタイプ、パケットの長さ及びレポート作成者のSSRCの情報が含まれる。1以上のRRブロックには、受信品質に関する情報であるパケットロス率及びパケット間隔ジッタや、RTTの算出に用いられる情報が含まれる。
【0094】
図15は、第2動作例における音声通話品質劣化によるハンドオーバー時のMRへの音声通話品質劣化情報の反映方法を説明するための図である。
図15(A)~(C)には、パケットロス率、パケット間隔ジッタ及びRTT毎の閾値と、RSRPへの加算値と、RSRQへの加算値とが対応付けられている。RSRPへの加算値は、サービングセル内で測定されたRSRPに対して加算される値である。RSRQへの加算値は、サービングセル内で測定されたRSRQに対して加算される値である。
【0095】
例えば、
図15(A)に示すテーブルには、パケットロス率閾値と、RSRPへの加算値と、RSRQへの加算値とが対応付けられている。
図15(A)に示すテーブルによれば、パケットロス率が0%より高く5%未満の場合、サービングセル内で測定されたRSRPには-5dBmの値が加算され、サービングセル内で測定されたRSRQには-3dBの値が加算されることが表されている。
【0096】
例えば、
図15(B)に示すテーブルには、パケット間隔ジッタ閾値と、RSRPへの加算値と、RSRQへの加算値とが対応付けられている。
図15(B)に示すテーブルによれば、パケット間隔ジッタが20ms未満の場合、サービングセル内で測定されたRSRPには0dBmの値が加算され、サービングセル内で測定されたRSRQには0dBの値が加算されることが表されている。
【0097】
例えば、
図15(C)に示すテーブルには、RTT閾値と、RSRPへの加算値と、RSRQへの加算値とが対応付けられている。
図15(C)に示すテーブルによれば、RTTが0msより高く350ms未満の場合、サービングセル内で測定されたRSRPには-5dBmの値が加算され、サービングセル内で測定されたRSRQには-3dBの値が加算されることが表されている。
【0098】
次に上記の
図15(A)~(C)に示すテーブルを用いたRSRP及びRSRQの計算例について説明する。第1の例として、パケットロス率が6%、パケット間隔ジッタが15ms、RTTが100msであったとする。この場合、サービングセル内で測定されたRSRPに加算される値は、-5dBm-0dBm-0dBm=-5dBmとなる。サービングセル内で測定されたRSRQに加算される値は、-3dBm-0dBm-0dBm=-3dBmとなる。
【0099】
別例として、パケットロス率が6%、パケット間隔ジッタが20ms、RTTが400msであったとする。この場合、サービングセル内で測定されたRSRPに加算される値は、-5dBm-20dBm-5dBm=-30dBmとなる。サービングセル内で測定されたRSRQに加算される値は、-3dBm-10dBm-3dBm=-16dBmとなる。
以下、
図15(A)~(C)に示すテーブルを閾値テーブルと記載する。
【0100】
図16は、本発明における無線固定電話ルータ10のハンドオーバーの処理(その3)の流れを示す図である。
図16では、
図12に例示した場合における、音声通話利用中の音声通話品質劣化をトリガーとしたハンドオーバーの処理の流れについて説明する。なお、
図16の処理開始時には、基地局装置30-1の第1セル31-1がサービングセルであって、基地局装置30-1の第2セル32-1がアイドル状態であるとする。
【0101】
ユーザが、加入者電話52を用いて音声通話を開始(発信又は着信)したとする(ステップS401)。加入者電話52による音声通話の発信又は着信は、無線固定電話ルータ10を介して行われる。無線固定電話ルータ10の制御部17は、音声通話の品質パラメータをモニターする。例えば、制御部17は、音声通話のRTCPの内容をスヌーピングし、一定時間間隔(例えば60秒間隔)で音声通話RTPのパケットロス率、パケット間隔ジッタ及びRTTの平均値を取得して、記憶部18に記録する(ステップS402)。
【0102】
第1ベースバンド制御部27は、サービングセルのRSRP及びRSRQと、隣接第1セル31のRSRP及びRSRQを測定する。第1ベースバンド制御部27は、測定した複数のRSRP及びRSRQを制御部17に出力する。制御部17は、第1ベースバンド制御部27から出力された複数のRSRP及びRSRQと、記憶部18に記録された音声品質パラメータと、
図15(A)~(C)に示す各閾値テーブルとに基づいて、サービングセルの音声劣化によるRSRP加算値及びRSRQ加算値を反映した第1セル31のMRを作成する(ステップS404)。なお、RSRP加算値及びRSRQ加算値を反映する対象となるのは、サービングセルで測定されたRSRP及びRSRQのみである。すなわち、隣接第1セル31で測定されたRSRP及びRSRQに対しては、RSRP加算値及びRSRQ加算値は反映されない。
【0103】
第2ベースバンド制御部29は、隣接第2セル32のRSRP及びRSRQを測定する。第2ベースバンド制御部29は、測定したRSRP及びRSRQを制御部17に出力する。制御部17は、第2ベースバンド制御部29から出力された複数のRSRP及びRSRQに基づいて、第2セル32のMRを作成する(ステップS405)。
【0104】
制御部17は、第1セル31のMRに含まれるサービングセルのRSRP及びRSRQの値と、隣接第1セル31のRSRP及びRSRQの値と、第2セル32のMRに含まれるRSRP及びRSRQの値とを比較して、音声通信の品質が劣化の有無を判定する(ステップS406)。制御部17は、サービングセルのRSRP及びRSRQの値が閾値未満である場合や、サービングセルのRSRP及びRSRQの値が、隣接第1セル31のRSRP及びRSRQの値、又は、第2セル32のMRに含まれるRSRP及びRSRQの値のいずれかよりも低い場合には音声通信の品質が劣化したと判定する。制御部17は、音声通信の品質が劣化したと判定した場合には、ハンドオーバーを行う必要があると判定する。
【0105】
一方、制御部17は、サービングセルのRSRP及びRSRQの値が、隣接第1セル31のRSRP及びRSRQの値及び第2セル32のMRに含まれるRSRP及びRSRQの値以上である場合には音声通信の品質が劣化していないと判定する。制御部17は、音声通信の品質が劣化していないと判定した場合には、ハンドオーバーを行う必要がないと判定する。
【0106】
制御部17は、音声通信の品質が劣化していないと判定した場合(ステップS406-劣化無し(HOしない))、ステップS402以降の処理を行う。
一方、制御部17は、音声通信の品質が劣化したと判定した場合(ステップS406-劣化有り(HOする))、第1セル31のMRに、第2セル32のMRに含まれる測定結果を追加して、新たなMRを作成する(ステップS407)。制御部17は、作成した新たなMRを、サービングセルの基地局装置30に送信するように第1通信制御部19に対して指示する。
【0107】
第1通信制御部19は、制御部17の指示に従って、制御部17から出力されたMRをサービングセル(第1セル31-1)の基地局装置30に送信する(ステップS408)。これにより、基地局装置30において、無線固定電話ルータ10の新たな接続先が決定される。制御部17は、基地局装置30からハンドオーバーの指示を受信した場合、受信したハンドオーバー指示を判別する(ステップS409)。例えば、制御部17は、受信されたハンドオーバー指示が、隣接第1セル31へのハンドオーバー指示であるか、隣接第2セル32へのハンドオーバー指示であるかを判別する。
【0108】
受信されたハンドオーバー指示が、隣接第1セル31へのハンドオーバー指示である場合(ステップS409-隣接第1セルへのHO実行を判定)、第1ベースバンド制御部27は、受信したハンドオーバーの指示に基づいて、サービングセルの無線リンクを切断する(ステップS410)。その後、第1ベースバンド制御部27は、ハンドオーバーの指示に含まれる無線リンクの設定に関する情報に基づいて、新たな接続先の基地局装置30-2の第1セル31-2の無線リンクを設定する(ステップS411)。
【0109】
無線固定電話ルータ10は、無線リンクの設定完了後、新たな接続先の第1セル31-2の上りユーザパケットのデータ通信経路を確立する(ステップS412)。無線固定電話ルータ10は、無線リンクの設定完了後、新たな接続先の第1セル31-2の下りユーザパケットのデータ通信経路を確立する(ステップS413)。この場合、サービングセルは、基地局装置30-2の第1セル31-2になる。
【0110】
ステップS409の処理において、受信されたハンドオーバー指示が、隣接第2セル32へのハンドオーバー指示である場合(ステップS409-隣接第2セルへのHO実行を判定)、第2ベースバンド制御部29は、受信したハンドオーバーの指示に基づいて、サービングセルの無線リンクを切断する(ステップS414)。その後、第2ベースバンド制御部29は、ハンドオーバーの指示に含まれる無線リンクの設定に関する情報に基づいて、新たな接続先の第2セル32-2の無線リンクを設定する(ステップS415)。
【0111】
無線固定電話ルータ10は、無線リンクの設定完了後、新たな接続先の第2セル32-2の上りユーザパケットのデータ通信経路を確立する(ステップS416)。無線固定電話ルータ10は、無線リンクの設定完了後、新たな接続先の第2セル32-2の下りユーザパケットのデータ通信経路を確立する(ステップS417)。この場合、サービングセルは、基地局装置30-2の第2セル32-2になる。
【0112】
図17は、本発明における無線固定電話ルータ10のハンドオーバーの処理(その4)の流れを示す図である。
図17では、音声通話終了時のハンドオーバーの処理の流れについて説明する。なお、
図17の処理開始時には、基地局装置30-2の第2セル32-2がサービングセルであって、基地局装置30-2の第1セル31-2がアイドル状態であるとする。
【0113】
ユーザの音声通話が終了したとする(ステップS501)。無線固定電話ルータ10は、ユーザの音声通話が終了に応じたMRの作成要否を判定する(ステップS302)。制御部17は、現在のサービングセルの音声品質が閾値未満である場合にMRの作成が必要であると判定してもよいし、元の接続先が異なる基地局装置30(例えば、基地局装置30-1)である場合にMRの作成が必要であると判定してもよい。
【0114】
制御部17は、MRの作成が不要であると判定した場合(ステップS502-NO)、ステップS502の処理に戻って処理を行う。
一方、制御部17は、MRの作成が必要であると判定した場合(ステップS302-YES)、第1通信制御部19及び第2通信制御部20にRSRP及びRSRQの測定を指示する。第2通信制御部20の第2ベースバンド制御部29は、サービングセル(例えば、第2セル32-2)のRSRP及びRSRQを測定する。第2ベースバンド制御部29は、測定したRSRP及びRSRQを制御部17に出力する。制御部17は、第2ベースバンド制御部29から出力されたRSRP及びRSRQに基づいて、第2セル32のMRを作成する(ステップS503)。
【0115】
第1ベースバンド制御部27は、隣接第1セル31のRSRP及びRSRQを測定する。第1ベースバンド制御部27は、測定した複数のRSRP及びRSRQを制御部17に出力する。制御部17は、第1ベースバンド制御部27から出力された複数のRSRP及びRSRQに基づいて、第1セル31のMRを作成する(ステップS504)。
【0116】
制御部17は、音声通話終了時刻から、音声品質測定結果保持時間を経過したか否かを判定する(ステップS505)。音声品質測定結果保持時間は、記憶部18に記録された音声品質パラメータの保持時間である。音声品質測定結果保持時間が経過した場合、制御部17は記憶部18に記録された音声品質パラメータを削除する。制御部17は、音声通話終了時刻から、音声品質測定結果保持時間を経過していないと判定した場合(ステップS505-経過していない)、ステップS502以降の処理を実行する。
【0117】
制御部17は、音声通話終了時刻から、音声品質測定結果保持時間を経過したと判定した場合(ステップS505-経過した)、記憶部18に記録された音声品質パラメータを削除する。その後、制御部17は、サービングセルの情報が含まれるMRと、第1セル31のMRとを比較して隣接第1セル31へハンドオーバーをするか否かを判定する(ステップS506)。例えば、制御部17は、サービングセルのRSRP及びRSRQの値が、第1セル31のMRに含まれるRSRP及びRSRQの値よりも高い場合には隣接第1セル31へハンドオーバーをしないと判定する。一方、制御部17は、サービングセルのRSRP及びRSRQの値よりも、第1セル31のMRに含まれるいずれかのRSRP及びRSRQの値が高い場合には隣接第1セル31へハンドオーバーをすると判定する。
【0118】
制御部17は、ハンドオーバーしないと判定した場合(ステップS506-HOをしない)、ステップS502の処理を行う。
一方、制御部17は、隣接第1セル31にハンドオーバーすると判定した場合(ステップS506-隣接第1セルへのHO実行を判定)、第2セル32のMRに、第1セル31のMRに含まれる測定結果を追加して、新たなMRを作成する(ステップS507)。制御部17は、作成した新たなMRを第1通信制御部19に出力する。
【0119】
第1通信制御部19の第1ベースバンド制御部27は、制御部17から出力された新たなMRを、第1通信部22を介してサービングセルの基地局装置30-2に送信する(ステップS508)。第1ベースバンド制御部27は、第1通信部22を介して、サービングセルを提供している基地局装置30-2からのハンドオーバーの指示を受信する(ステップS509)。第1ベースバンド制御部27は、受信したハンドオーバーの指示に基づいて、サービングセルの無線リンクを切断する(ステップS510)。その後、第1ベースバンド制御部27は、ハンドオーバーの指示に含まれる無線リンクの設定に関する情報に基づいて、新たな接続先の基地局装置30-1の第1セル31-1の無線リンクを設定する(ステップS511)。
【0120】
無線固定電話ルータ10は、無線リンクの設定完了後、新たな接続先の第1セル31-1の上りユーザパケットのデータ通信経路を確立する(ステップS512)。無線固定電話ルータ10は、無線リンクの設定完了後、新たな接続先の第1セル31-1の下りユーザパケットのデータ通信経路を確立する(ステップS513)。この場合、サービングセルは、基地局装置30-1の第1セル31-1になる。
【0121】
以上のように構成された無線固定電話ルータ10によれば、接続している基地局装置30の障害やサービングセルの無線品質の劣化が発生した場合、LTE Cat.M1カバレッジ拡張機能により接続可能な近隣セルにハンドオーバーする。これにより、無線固定電話に必要な最低限の通信を維持することが可能になる。
【0122】
上述した無線固定電話ルータ10の一部の機能をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0123】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0124】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、無線固定電話を用いた技術に適用できる。
【符号の説明】
【0126】
10…無線固定電話ルータ, 11…イーサネットインターフェイス回路, 12…加入者線インターフェイス回路, 13…イーサネット制御部, 14…音声符号/復号化部, 15…FAX符号/復号化部, 16…アプリケーションソフト部, 17…制御部, 18…記憶部, 19…第1通信制御部, 20…第2通信制御部, 21…加入者情報記録媒体, 22…第1通信部, 23…第2通信部, 24…アンテナ, 25…アンテナ, 26…第1通信制御ソフト部, 27…第1ベースバンド制御部, 28…第2通信制御ソフト部, 29…第2ベースバンド制御部, 30…基地局装置, 51…FAX, 52…加入者電話, 53…PC