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  • 特許-配管加温具および配管加温方法 図1
  • 特許-配管加温具および配管加温方法 図2
  • 特許-配管加温具および配管加温方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】配管加温具および配管加温方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 53/32 20180101AFI20241107BHJP
【FI】
F16L53/32
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021005476
(22)【出願日】2021-01-18
(65)【公開番号】P2022110214
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古本 直輝
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-094652(JP,U)
【文献】特開昭63-186092(JP,A)
【文献】特開2009-030834(JP,A)
【文献】特開2005-037078(JP,A)
【文献】特開2004-124425(JP,A)
【文献】特開2004-036678(JP,A)
【文献】実開昭52-019713(JP,U)
【文献】特開2013-189860(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0068340(US,A1)
【文献】特開2016-070189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 53/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる配管の外面に沿って配置され、熱媒体が流れるチューブと、
前記配管および前記チューブを覆う保温筒と、を備え、
前記保温筒の締め付けにより前記チューブは前記配管に押し付けられて前記熱媒体が流れる内部空間を維持しつつ潰れており、
前記チューブは、ポリウレタンまたはポリアミド製であり、JIS B 8381に基づく方法で測定した最小曲げ半径が15~30mmであり、
前記保温筒は、発泡プラスチック製であり、JIS K 6767に基づく方法で測定した見掛け密度が30~40kg/m、25%圧縮硬さが30~50kPaである
ことを特徴とする配管加温具。
【請求項2】
前記配管はポリ塩化ビニル製であり、
前記熱媒体は30~60℃の温水である
ことを特徴とする請求項記載の配管加温具。
【請求項3】
熱媒体を流すためのチューブを、流体が流れる配管の外面に沿って配置し、
前記配管および前記チューブを保温筒で覆い、
前記チューブが前記配管に押し付けられて前記熱媒体が流れる内部空間を維持しつつ潰れるよう、前記保温筒を締め付け、
前記チューブは、ポリウレタンまたはポリアミド製であり、JIS B 8381に基づく方法で測定した最小曲げ半径が15~30mmであり、
前記保温筒は、発泡プラスチック製であり、JIS K 6767に基づく方法で測定した見掛け密度が30~40kg/m、25%圧縮硬さが30~50kPaである
ことを特徴とする配管加温方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管加温具および配管加温方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、配管内の流体を加温するための配管加温具、およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラント内に敷設される配管のなかには、溶解度程度まで無機塩類濃度を高めた無機塩類水溶液が流れる配管がある。例えば、無機塩類が回収対象物質である場合、無機塩類濃度を高めた方が、同じ無機塩類量に対して取り扱う液量が少なくて済むため、装置を小さくでき、装置コストを抑えることができる。また、流送や撹拌、加温等の操作に必要な、電力等のエネルギーコストを下げることもできる。特に、無機塩類を結晶として回収する場合、一般的に、結晶化には濃縮操作が伴うので、濃縮操作を効率的、経済的に行うためには、無機塩類濃度を高くすることが必須となる。このようなプラントとして、例えば、高濃度の硫酸ニッケル水溶液を取り扱う、硫酸ニッケル結晶の製造プラントが挙げられる。しかしながら、このような配管では、厳冬期等、気温が低い状況下でポンプを停止すると、流体の流れがなくなって流体が冷えるため、配管内で結晶が析出することがある。そうすると、配管が閉塞し、ポンプが再稼働できないという問題が生じることがある。
【0003】
配管内での流体の結晶化を防止するためには配管を加温すればよい。配管を加温する方法として、高温の蒸気などの熱媒体を流すチューブを配管に沿わせる配管トレースが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭64-76680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
配管の外面にチューブを沿わせた状態では、チューブと配管とが線接触になる。チューブと配管との接触面積が狭いため、熱媒体と配管内の流体との熱交換効率が低い。すなわち、効率的な加温ができないという問題がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、加温効率が高い配管加温具、および配管加温方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の配管加温具は、流体が流れる配管の外面に沿って配置され、熱媒体が流れるチューブと、前記配管および前記チューブを覆う保温筒と、を備え、前記保温筒の締め付けにより前記チューブは前記配管に押し付けられて前記熱媒体が流れる内部空間を維持しつつ潰れていることを特徴とする。
第2発明の配管加温具は、第1発明において、前記チューブはポリウレタンまたはポリアミド製であり、前記保温筒は発泡プラスチック製であることを特徴とする。
第3発明の配管加温具は、第1または第2発明において、前記配管はポリ塩化ビニル製であり、前記熱媒体は30~60℃の温水であることを特徴とする。
第4発明の配管加温方法は、熱媒体を流すためのチューブを、流体が流れる配管の外面に沿って配置し、前記配管および前記チューブを保温筒で覆い、前記チューブが前記配管に押し付けられて前記熱媒体が流れる内部空間を維持しつつ潰れるよう、前記保温筒を締め付けることを特徴とする。
第5発明の配管加温方法は、第4発明において、前記チューブはポリウレタンまたはポリアミド製であり、前記保温筒は発泡プラスチック製であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、チューブが配管に押し付けられて潰れているので、チューブと配管との接触面積が広くなり、熱媒体と配管内の流体との熱交換効率が高くなる。そのため、加温効率が高い。
第2発明によれば、チューブも保温筒も適度な柔軟性を有するので、保温筒の締め付けによりチューブを適度に潰すことができる。
第3発明によれば、熱媒体が温水であるから、耐熱性が低いポリ塩化ビニル製の配管でも加温できる。
第4発明によれば、チューブが配管に押し付けられて潰れるので、チューブと配管との接触面積が広くなり、熱媒体と配管内の流体との熱交換効率が高くなる。そのため、加温効率が高い。
第5発明によれば、チューブも保温筒も適度な柔軟性を有するので、保温筒の締め付けによりチューブを適度に潰すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る配管加温具の横断面図である。
図2図1におけるII-II線矢視断面図である。
図3】配管加温具の施工方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(配管加温具)
図1および図2に示すように、本発明の一実施形態に係る配管加温具AAは流体が流れる配管PPに設けられる。配管加温具AAは熱媒体が流れるチューブ10を有する。チューブ10は配管PPの外面に沿って配置される。チューブ10の数は特に限定されず、1本でもよいし、複数本でもよい。図示の例では、配管PPを挟むように2本のチューブ10が配置されている。配管PPおよびチューブ10は断熱性を有する保温筒20で覆われている。保温筒20の外面は表皮30で覆われている。
【0011】
チューブ10は外力がかからない状態では断面が真円の汎用チューブである。後述のごとく、配管加温具AAを施工する際に保温筒20を締め付ける。これにより、チューブ10は配管PPに押し付けられて断面が楕円形になる程度に潰れている。すなわち、図1において一点鎖線で示すように断面が真円のチューブ10が押し潰されて、楕円形になっている。なお、ここでいう「楕円形」とは数学的に正確に楕円である必要はない。三日月形、勾玉形のように非対称の形であってもよい。チューブ10が、熱媒体が流れる内部空間を維持しつつ、押し潰されていればよい。真円が周長を維持しながら潰れると、その断面積は潰れるに従って減少する。チューブ10の外力がかからない状態の断面積に対する潰れた後の断面積の比率(面積比率)は0.6~0.9程度が好ましい。
【0012】
このように、チューブ10が配管PPに押し付けられて潰れているので、チューブ10と配管PPとの接触面積が広くなる。チューブ10内の熱媒体と配管PP内の流体との熱交換効率が高くなるため、加温効率が高い。
【0013】
チューブ10内を流れる熱媒体は、特に限定されないが、配管PPがポリ塩化ビニル製である場合には、30~60℃の温水を用いることが好ましい。ポリ塩化ビニルは耐熱温度が60~80℃程度であるから、熱媒体として、例えば高温の蒸気を用いると配管PPが軟化することがある。熱媒体として温水を用いれば、耐熱性が低いポリ塩化ビニル製の配管PPでも問題なく加温できる。リボン状の電気ヒーターを巻付ける方式も一般的に行われているが、リボンの表面温度が100℃以上になるものがほとんどであるため、適切な電気ヒーターを選定する必要がある。さらに、電気ヒーターには、導入コストが高いという難点がある。したがって、ポリ塩化ビニル製の配管PP内を流れる流体を低温加熱するための熱媒体としては、30~60℃の温水を用いることが好ましい。
【0014】
(施工方法)
つぎに、配管加温具AAの施工方法を説明する。
図3に示すように、まず、配管PPの外面に沿ってチューブ10を配置する。つぎに、配管PPおよびチューブ10を保温筒20で覆う。例えば、縦に切れ込みが入った保温筒20を広げて、その間に配管PPおよびチューブ10を挟み込む。
【0015】
つぎに、保温筒20の接合部に粘着テープを貼り付けるなどして、保温筒20を締め付ける。そうすると、図1に示すように、チューブ10が配管PPに押し付けられて断面が楕円形になる程度に潰れる。
【0016】
チューブ10が適度に潰れるには、チューブ10も保温筒20も適度な柔軟性を有する必要がある。例えば、保温筒20がチューブ10よりも柔らかすぎると、チューブ10が変形しない。一方、保温筒20がチューブ10よりも硬すぎると、チューブ10が完全に潰れて熱媒体が流れなくなる。
【0017】
適度な柔軟性を有するチューブ10としてポリウレタンまたはポリアミド製のチューブが挙げられる。特に限定されないが、外径10mm程度、内径6.5mm程度、重さ54g/m程度のチューブが好ましい。また、JIS B 8381に基づく方法で測定した最小曲げ半径が15~30mm程度、バイス式で測定した最小取付半径が20~45mm程度のチューブが好ましい。
【0018】
適度な柔軟性を有する保温筒20として発泡プラスチック製の保温筒が挙げられる。特に限定されないが、発泡倍率が25~35倍程度、JIS K 6767に基づく方法で測定した見掛け密度が30~40kg/m程度、25%圧縮硬さが30~50kPa程度の保温筒が好ましい。
【0019】
このようなチューブ10と保温筒20を用いれば、両方とも適度な柔軟性を有するので、保温筒20の締め付けによりチューブ10を適度に潰すことができる。また、チューブ10に合わせて保温筒20が変形するので、保温筒20の内面にチューブ10を収容するための溝などを加工しておく必要がない。これに対し、一般的に用いられている珪酸カルシウム製の多孔質保温材を保温筒20とする場合、チューブが楕円形になる程度に潰れるようにするには、保温筒20の内側に適当な断面形状の溝加工を施す必要がある。
【符号の説明】
【0020】
AA 配管加温具
10 チューブ
20 保温筒
30 表皮
図1
図2
図3