(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】防眩性被膜形成用塗布液、防眩性被膜及びそれを有する積層体
(51)【国際特許分類】
C09D 1/00 20060101AFI20241107BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20241107BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20241107BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20241107BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20241107BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
C09D1/00
C09D5/00 Z
C09D7/20
B05D1/02 Z
B05D7/24 303B
B05D7/24 302Y
B05D5/06 D
(21)【出願番号】P 2021504042
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2020008270
(87)【国際公開番号】W WO2020179657
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2019037371
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】江口 和輝
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-337204(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0041307(US,A1)
【文献】国際公開第2014/203951(WO,A1)
【文献】特開2015-191090(JP,A)
【文献】特開2017-39928(JP,A)
【文献】特開平2-258646(JP,A)
【文献】特開2010-85579(JP,A)
【文献】特開2002-105398(JP,A)
【文献】特開2019-150826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00- 7/26
B32B 1/00- 43/00
C09D 1/00- 10/00
C09D101/00-201/10
G02F 1/1335
G02F 1/13363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分を含有する防眩性被膜形成用塗布液。
成分(A):下記式(I)で示される第1の金属アルコキシド、その加水分解物、もしくはその部分縮合物。
R
1
mM
1(OR
2)
n-m (I)
(式中、M
1は、珪素(Si)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)および亜鉛(Zn)よりなる群から選択された少なくとも1種以上の金属を表す。R
1は、水素原子
、フッ素原子または炭素数1~20の炭化水素基から選択され、且つ、
前記炭化水素基の水素原子は、ハロゲン原子、ビニル基、グリシドキシ基、メルカプト基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、イソシアネート基、アミノ基またはウレイド基で置換されていてもよく、且つ、ヘテロ原子を有していてもよ
い。R
2は、炭素数1~5のアルキル基を表し、nは、M
1の価数2~5を表す。mは、M
1の価数が2の場合0または1、M
1の価数が3の場合0~2のいずれかであり、M
1の価数が4の場合0~3のいずれかであり、M
1の価数が5の場合0~4のいずれかである。)
成分(B):下記式(II)で示される金属塩及び下記式(II)中のM
2の蓚酸塩から選ばれる少なくとも1種を含有する金属塩。
M
2(X)
k (II)
(式中、M
2は、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、ランタン(La)、タンタル(Ta)、イットリウム(Y)およびセリウム(Ce)よりなる群から選択された少なくとも1種の金属を表し、Xは、塩素、硝酸、硫酸、酢酸、スルファミン酸、スルホン酸、アセト酢酸、アセチルアセトナートまたはこれらの塩基性塩を表し、kは、M
2の価数を表す。)
溶媒群(A):グリコールエーテルおよびその誘導体、もしくはケトン類から選ばれる少なくとも1種
であって、沸点160℃未満のもので、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びメチルイソブチルケトンからなる群から選択される少なくとも1種。
溶媒群(B):アルコール類から選ばれる少なくとも1種
で、前記溶媒群(A)に含まれる溶媒は除かれ、且つ沸点が120℃以下のもの。
但し、前記成分(A)が、チタンアルコキシドを含む場合にはさらにシリコンアルコキシドを含む。
【請求項2】
前記成分(A)の金属原子(M
1)と前記成分(B)の金属原子(M
2)の含有比率が、モル比換算で、0.01≦M
2/(M
1+M
2)≦0.7を満たす、請求項1に記載の防眩性被膜形成用塗布液。
【請求項3】
溶媒群(B)が、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノールから選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の防眩性被膜形成用塗布液。
【請求項4】
溶媒群(A)の含有量が、溶媒全体の5~70質量%である、請求項1に記載の防眩性被膜形成用塗布液。
【請求項5】
前記式(I)のM
1が、珪素、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、スズである、請求項1に記載の防眩性被膜形成用塗布液。
【請求項6】
請求項1の成分(A)が、シリコンアルコキシド、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドの部分縮合物である、請求項1に記載の防眩性被膜形成用塗布液。
【請求項7】
前記式(II)のM
2が、アルミニウム、インジウム、セリウムである、請求項1に記載の防眩性被膜形成用塗布液。
【請求項8】
請求項1に記載の防眩性被膜形成用塗布液を、スプレー塗布によって基板に塗布する、防眩性被膜の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の防眩性被膜形成用塗布液から得られる、防眩性被膜。
【請求項10】
屈折率が1.48~1.8である、請求項
9に記載の防眩性被膜。
【請求項11】
請求項
9または請求項
10に記載の防眩性被膜を具備する積層体。
【請求項12】
前記積層体のヘイズの面内の標準偏差が1~40%である、請求項
11に記載の積層体。
【請求項13】
請求項
9または請求項
10に記載の防眩性被膜上に、反射防止膜を積層させた積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩性(アンチグレア機能)に優れるとともに、ガラス基板上に形成可能であり、高屈折率を有する防眩性被膜を形成出来る防眩性被膜形成用塗布液、該塗布液より得られる防眩性被膜及びそれを具備する積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ、パーソナルコンピュータ、スマートフォン等の各種デバイスが具備する画像表示装置(液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等)は、室内照明(蛍光灯等)、太陽光等の外光が表示面に映り込むと、反射像によって画像の視認性が低下することがある。
外光の映り込みを抑制する方法として、画像表示装置の表示面に防眩処理(アンチグレア処理)を施す方法がある。防眩処理は、表面に凹凸を形成する処理であり、形成された凹凸によって外光を拡散反射する効果(防眩効果)が得られる。
防眩処理の方法としては、ガラス等の透明基材の表面をフッ酸等の薬剤によりエッチングする処理(特許文献1参照)、表面に凹凸のある有機系の防眩膜を形成する処理(特許文献2参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5839134号
【文献】国際公開2018/070426
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ガラス基板表面を薬剤でエッチングする処理においては、薬剤の危険性が問題となり、表面に有機系の防眩膜を形成する処理においては、ガラス基板への塗布性や、膜上に更なる機能性膜を形成させる際の塗布性、密着性に問題が生じる。
【0005】
以上の点から、本発明は、防眩性(アンチグレア機能)に優れるとともに、ガラス基板上に形成可能であり、高屈折率を有する防眩性被膜を形成出来る防眩性被膜形成用塗布液、該塗布液より得られる防眩性被膜及びそれを具備する積層体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記の目的を達成するため鋭意研究を進めた結果、以下の要旨を有する本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、以下の構成要件を有する。
1.下記の成分を含有する防眩性被膜形成用塗布液。
成分(A):下記式(I)で示される第1の金属アルコキシド、その加水分解物、もしくはその部分縮合物。
R1
mM1(OR2)n-m (I)
(式中、M1は、珪素(Si)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)および亜鉛(Zn)よりなる群から選択された少なくとも1種以上の金属を表す。R1は、水素原子またはフッ素原子で置換されてもよく、且つ、ハロゲン原子、ビニル基、グリシドキシ基、メルカプト基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、イソシアネート基、アミノ基またはウレイド基で置換されていてもよく、且つ、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基を表す。R2は、炭素数1~5のアルキル基を表し、nは、M1の価数2~5を表す。mは、M1の価数が2の場合0または1、M1の価数が3の場合0~2のいずれかであり、M1の価数が4の場合0~3のいずれかであり、M1の価数が5の場合0~4のいずれかである。)
成分(B):下記式(II)で示される金属塩及び下記式(II)中のM2の蓚酸塩から選ばれる少なくとも1種を含有する金属塩。
M2(X)k (II)
(式中、M2は、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、ランタン(La)、タンタル(Ta)、イットリウム(Y)およびセリウム(Ce)よりなる群から選択された少なくとも1種の金属を表し、Xは、塩素、硝酸、硫酸、酢酸、スルファミン酸、スルホン酸、アセト酢酸、アセチルアセトナートまたはこれらの塩基性塩を表し、kは、M2の価数を表す。)
溶媒群(A):沸点160℃未満のグリコールエーテルおよびその誘導体、もしくはケトン類から選ばれる少なくとも1種。
溶媒群(B):沸点120℃以下のアルコール類から選ばれる少なくとも1種。
【発明の効果】
【0007】
本発明の防眩性被膜形成用塗布液を用いることにより、防眩性(アンチグレア機能)に優れるとともに、ガラス基板上に形成可能であり、高屈折率を有する防眩性被膜を形成出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例2で得られた防眩性被膜付き基板を、3次元白色干渉顕微鏡 Contour GTにて観察した画像である。
【
図2】比較例2で得られた防眩性被膜付き基板を、3次元白色干渉顕微鏡 Contour GTにて観察した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の防眩性被膜形成用塗布液が含有する各成分につき、下記に詳述する。
【0010】
<成分(A)>
本発明の防眩性被膜形成用塗布液が含有する成分(A)は、下記式(I)で示される第1の金属アルコキシド、その加水分解物、もしくはその部分縮合物である。
R1
mM1(OR2)n-m (I)
式中、M1は、珪素(Si)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)および亜鉛(Zn)よりなる群から選択された少なくとも1種以上の金属を表す。その中でも、入手性の容易性および組成物の貯蔵安定性の観点から、珪素、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、スズが好ましい。
R1は、水素原子またはフッ素原子で置換されてもよく、且つ、ハロゲン原子、ビニル基、グリシドキシ基、メルカプト基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、イソシアネート基、アミノ基またはウレイド基で置換されていてもよく、且つ、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基を表す。その中でも、入手性および安定性の観点から、置換基として、ビニル基、メルカプト基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、ウレイド基が好ましく、炭素数は1~10の炭化水素基が好ましい。
R2は、炭素数1~5のアルキル基を表し、その中でも、入手性の容易性および組成物の貯蔵安定性の観点から、炭素数1~4が好ましい。
nは、M1の価数2~5を表す。mは、M1の価数が2の場合0または1、M1の価数が3の場合0~2のいずれかであり、M1の価数が4の場合0~3のいずれかであり、M1の価数が5の場合0~4のいずれかである。
【0011】
本発明の防眩性被膜形成用塗布液が含有する成分(A)は、中でも、シリコンアルコキシド、チタンアルコキシド又はジルコニウムアルコキシドの部分縮合物が好ましい。具体例を挙げると、M1が、珪素(Si)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)のいずれかから選ばれる前記式(I)で示される金属アルコキシドの部分縮合物が挙げられる。
【0012】
<成分(B)>
本発明の防眩性被膜形成用塗布液が含有する成分(B)は、下記式(II)で示される金属塩及び下記式(II)中のM2の蓚酸塩から選ばれる少なくとも1種の金属塩を含有する。
M2(X)k (II)
式中、M2は、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、ランタン(La)、タンタル(Ta)、イットリウム(Y)およびセリウム(Ce)よりなる群から選択された少なくとも1種の金属を表す。Xは、塩素、硝酸、硫酸、酢酸、スルファミン酸、スルホン酸、アセト酢酸、アセチルアセトナートまたはこれらの塩基性塩を表す。その中でも、入手性の容易性および組成物の貯蔵安定性の観点から、アルミニウム、インジウム、セリウムの硝酸塩が好ましい。
kは、M2の価数を表す。
【0013】
<その他の成分>
本発明の防眩性被膜形成用塗布液においては、上記した成分以外のその他の成分、例えば、無機微粒子、メタロキサンオリゴマー、メタロキサンポリマー、レベリング剤、界面活性剤等の成分が含まれていてもよい。
無機微粒子としては、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子、フッ化マグネシウム微粒子等の微粒子が好ましく、これらの無機微粒子のコロイド溶液が特に好ましい。このコロイド溶液は、無機微粒子粉を分散媒に分散したものでもよいし、市販品のコロイド溶液であってもよい。
本発明においては、無機微粒子を含有させることにより、形成される防眩性被膜の表面形状やその他の機能を付与することが可能となる。無機微粒子としては、その平均粒子径が0.001~0.2μmであることが好ましく、更に好ましくは0.001~0.1μmである。
無機微粒子の分散媒としては、水及び有機溶剤を挙げることができる。コロイド溶液としては、防眩性被膜形成用塗布液の安定性が向上する観点から、pH又はpKaが1~10に調整されていることが好ましく、より好ましくは2~7である。
コロイド溶液の分散媒に用いる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン等のエステル類;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエ-テル類を挙げることができる。これらの中で、アルコール類及びケトン類が好ましい。これら有機溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して分散媒として使用することができる。
【0014】
<溶媒群(A)>
本発明の防眩性被膜形成用塗布液が含有する溶媒群(A)は、沸点160℃未満のグリコールエーテルおよびその誘導体、もしくはケトン類から選ばれる少なくとも1種である。具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコ
ールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテルなどのグリコールエーテル類及びその誘導体、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類が挙げられるが、その中でも、塗布安定性の観点から、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルイソブチルケトンが好ましい。
【0015】
<溶媒群(B)>
本発明の防眩性被膜形成用塗布液が含有する溶媒群(B)は、沸点120℃以下のアルコール類から選ばれる少なくとも1種である。具体的には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノールが挙げられるが、その中でも、組成物の貯蔵安定性の観点から、メタノール、エタノール、2-プロパノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノールが好ましい。
【0016】
<その他の溶媒>
本発明の防眩性被膜形成用塗布液には、塗布液の安定性等の観点から、溶媒群(A)及び(B)以外の溶媒(以下、その他の溶媒とも称する)が必要に応じ含まれても良い。
【0017】
その他の溶媒の例としては、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオールなどのグリコール類、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのグリコールエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホトリアミド、m-クレゾール、テトラヒドロフランなどが挙げられる。その中でも、入手性および組成物の貯蔵安定性の観点から、エチレングリコール、ジエチレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランは好ましく用いられる。
【0018】
<防眩性被膜形成用塗布液及び防眩性被膜>
本発明の防眩性被膜形成用塗布液は、上記式(I)で示される第1の金属アルコキシドを、上記式(II)で示される金属塩及び上記式(II)中のM2の蓚酸塩から選ばれる少なくとも1種の金属塩の存在下、有機溶媒中で加水分解・縮合し、その後適宜溶媒を添加することで得られる。溶媒群(A)及び(B)の溶媒は、上記加水分解・縮合時及び又はその後の溶媒添加工程において添加される。またこの際、その他の溶媒も、必要に応じ適宜添加されても良い。
金属アルコキシドの金属原子(M1)と金属塩の金属原子(M2)の含有比率は、モル比換算で、0.01≦M2/(M1+M2)≦0.7の関係を満たすことが好ましい。この値が0.01より小さいと、得られる被膜の機械的強度が充分でないため好ましくない。一方、0.7を越えると、ガラス基板などの基材に対する金属酸化物層の密着性が低下する。さらに、450℃以下の低温で焼成した場合、得られる金属酸化物層の耐薬品性が低下する傾向にもある。なお、コーティング組成物に含まれる金属アルコキシドの金属原子が複数種の場合、上記金属原子(M1)は、複数種の金属原子の合計を意味し、またコーティング組成物に含まれる金属塩の金属原子が複数種の場合、上記金属原子(M2)は、複数種の金属原子の合計を意味する。
【0019】
防眩性被膜形成用塗布液中の固形分濃度については、金属アルコキシドと金属塩を金属酸化物として換算した場合、固形分としては0.5~20質量%の範囲であることが好ましい。固形分が20質量%を越えると、コーティング組成物の貯蔵安定性が悪くなるうえ、防眩性被膜の膜厚制御が困難になる。一方、固形分が0.5質量%以下では、得られる防眩性被膜の厚みが薄くなり、所定の膜厚を得るために多数回の塗布が必要となる。
【0020】
防眩性被膜形成用塗布液は、上記式(I)で示される第1の金属アルコキシド(例えば、シリコンアルコキシド、またはチタンアルコキシド)を上記式(II)で示される金属塩及び上記式(II)中のM2の蓚酸塩から選ばれる少なくとも1種の金属塩(例えば、アルミニウム塩)の存在下に有機溶媒中で加水分解・縮合して得られるものである。シリコンアルコキシド、チタンアルコキシド、または、シリコンアルコキシドおよびチタンアルコキシドの加水分解に用いられる水の量は、シリコンアルコキシド、チタンアルコキシド、または、シリコンアルコキシドおよびチタンアルコキシドの総モル数に対して、モル比換算で0.5~24にすることが好ましい。より好ましくは0.5~20である。モル比(水の量(モル)/(金属アルコキシドの総モル数))が0.5以下の場合には、金属アルコキシドの加水分解が不十分となって、成膜性を低下させたり、得られる防眩性被膜の強度を低下させたりするので好ましくない。また、モル比が24より多い場合は、重縮合が進行し続けるため、貯蔵安定性を低下させるので好ましくない。その他の金属アルコキシドを用いる場合でも同様である。
【0021】
尚、他の金属アルコキシドを用いた場合にも、水の添加量について、同様の条件を選択することが好ましい。
【0022】
防眩性被膜形成用塗布液を調製する際の加水分解過程において、共存する金属塩(例えば、アルミニウム塩)が含水塩の場合には、その含水分が反応に関与するため、加水分解に用いる水の量に対して金属塩(例えば、アルミニウム塩)の含水分を考慮する必要がある。
【0023】
防眩性被膜形成用塗布液は、金属アルコキシドを加水分解・縮合させて製造されるものであり、金属アルコキシドの組成を選択することにより、得られる防眩性被膜の屈折率を所定の範囲内で調整することが可能である。例えば、金属アルコキシドとして、シリコンアルコキシドとチタンアルコキシドを選択した場合、その混合比率を調整することにより、後述する所定の範囲内で、具体的には1.45~2.1の範囲内で、得られる防眩性被膜の屈折率を調整することが可能である。本発明の防眩性被膜を具備する積層体の反射防止の観点から、本発明の防眩性被膜の屈折率は1.48~1.8が好ましい。
【0024】
換言すると、防眩性被膜形成用塗布液を塗布し焼成した後の防眩性被膜に要求される屈折率が決められると、その屈折率にしたがって、シリコンアルコキシドとチタンアルコキシドの組成モル比を決めることが可能である。この組成モル比は任意であるが、例えば、シリコンアルコキシドのみを加水分解することによって得られる防眩性被膜形成用塗布液からの防眩性被膜の屈折率は、1.45程度の値である。そして、チタンアルコキシドのみを加水分解して得られるコーティング組成物からの金属酸化物層の屈折率は、2.1程度の値である。したがって、防眩性被膜の屈折率を1.45~2.1までの間で設定したい場合、その範囲内の屈折率値に合わせてシリコンアルコキシドとチタンアルコキシドを所定の割合で用いてコーティング組成物を製造することが可能である。
【0025】
また、他の金属アルコキシドを用いることによっても、得られる防眩性被膜の屈折率の調整は可能である。
【0026】
さらに、防眩性被膜の屈折率については、組成条件以外に、成膜条件を選択することで調整することも可能である。こうすることで、防眩性被膜の所望の屈折率値を実現することが可能である。
【0027】
すなわち、防眩性被膜形成用塗布液の塗膜を焼成して防眩性被膜を製造する場合、その焼成温度にしたがって、防眩性被膜の屈折率は変動する。この場合、焼成温度が高くするほど、防眩性被膜の屈折率を高くすることができる。したがって、焼成温度を適度な値に選択することで、得られる防眩性被膜の屈折率の調整が可能である。そして、基材などの耐熱性を考慮した場合、焼成温度は100℃~300℃の範囲が好ましく、150℃~250℃の範囲内とすることがより好ましい。
【0028】
また、防眩性被膜形成用塗布液がチタンアルコキシドを含む場合、焼成前に塗膜に紫外線(UV)を照射すると、得られる防眩性被膜の屈折率が変動する。具体的には、紫外線照射量を多くするほど、防眩性被膜の屈折率を高くすることができる。したがって、所望の屈折率を実現するため紫外線照射の有無を選択することが可能である。防眩性被膜において、組成等の条件選択により所望の屈折率が実現できる場合は、紫外線照射は行わなくてもよい。そして、紫外線照射を行う場合は、その照射量を選択することで、防眩性被膜の屈折率を調整することが可能である。防眩性被膜において、所望の屈折率を得るために紫外線照射が必要な場合は、例えば、高圧水銀ランプを使用することができる。そして、高圧水銀ランプを使用した場合、365nm換算で全光照射1000mJ/cm2以上の照射量が好ましく、3000mJ/cm2~10000mJ/cm2の照射量がより好ましい。また、UV光源としては特に指定はなく、別のUV光源を使用することもできる。別の光源を用いる場合は、上記高圧水銀ランプを使用した場合と同量の積算光量が照射されればよい。
【0029】
しかしながら、特に防眩性被膜形成用塗布液にチタンアルコキシド成分を含む場合には、室温保存下で徐々に粘度が上昇するという性質を有する。実用上大きな問題となる懸念は無いものの、防眩性被膜の厚みを精密に制御する場合には、温度などに対する慎重な管理が必要となる。尚、こうした粘度の上昇は、コーティング組成物中のチタンアルコキシドの組成比率が多くなるにしたがって顕著となる。これは、チタンアルコキシドがシリコンアルコキシドなどに対して加水分解速度が大きく、縮合反応が速いためと考えられる。
【0030】
防眩性被膜形成用塗布液がチタンアルコキシド成分を含む場合において、粘度変化を少なくするためには、例えば金属塩とアルコールなどの溶媒下で混合した後、シリコンアルコキシド、チタンアルコキシドを加水分解させる方法が挙げられる。この方法ではその後、グルコールもしくはその誘導体を混合させることで、縮合物の安定性が向上し、粘度変化が少ない防眩性被膜形成用塗布液が得られる。
【0031】
以上説明した防眩性被膜形成用塗布液は、塗布の際、微細な液滴にし、基材に着液させることにより、防眩性を有する金属酸化物被膜を得ることができる。塗布手法としては、スプレー塗布、ミスト塗布、インクジェット塗布などが挙げられ、その中でもスプレー塗布、インクジェット塗布が好ましい。
【0032】
<積層体>
本発明の積層体は、防眩性被膜形成用塗布液をガラス基板を始めとする種々の基板上に塗布・焼成し、防眩性被膜を形成させることで得られる。この防眩性被膜上には、積層体に求められる機能に対応し、反射防止膜等の種々の機能性膜を成膜することが可能である。
ここで、反射防止膜とは反射率低減の効果をもたらし、光の映り込みによる眩しさを低減するほか、画像表示装置に使用した場合には、画像表示装置からの光の透過率を向上でき、画像表示装置の視認性を向上できる膜のことである。
反射防止膜の構成としては光の反射を抑制できる構成であれば特に限定されず、例えば、上記防眩性被膜よりも屈折率が低い膜(以下、低屈折率膜ともいう)が挙げられる。
低屈折率膜を構成する材料としては、含フッ素有機基が結合したケイ素原子を有するポリシロキサンが挙げられる。
反射防止膜を形成する方法としては、上記防眩性被膜上またはその他機能膜上に形成された密着層の表面に、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、スリットコート法、スプレーコート法、静電噴霧堆積法(ESD法)等により塗布した後必要に応じて加熱処理する方法、または密着層の表面に化学的気相蒸着法(CVD法)、スパッタリング法やPLD法のような物理的気相蒸着法(PLD法)等が挙げられる。
更に本発明の積層体は、前記防眩性被膜上又は反射防止膜上に更に防汚膜を積層してもよい。防汚膜とは表面への有機物、無機物の付着を抑制する膜、または、表面に有機物、無機物が付着した場合においても、ふき取り等のクリーニングにより付着物が容易に除去できる効果をもたらす膜のことである。
防汚膜の厚さは、特に限定されないが、防汚膜が含フッ素有機ケイ素化合物被膜からなる場合、膜厚で2~20nmであることが好ましく、2~15nmであることがより好ましく、2~10nmであることがさらに好ましい。膜厚が2nm以上であれば、防汚層によって均一に覆われた状態となり、耐擦り性の観点で実用に耐えるものとなる。また、膜厚が20nm以下であれば、防汚膜が形成された状態での防眩性被膜基板のヘイズ値等の光学特性が良好である。
【0033】
防眩性被膜基板は、ヘイズの面内の標準偏差が1~40%であり、1~30%であることがより好ましい。この範囲であれば、使用者側から防眩性被膜付基板を視認した際に、均質な防眩膜処理がされているように視認でき、美観性に優れる。また、防眩膜の凹凸によるタッチ感も損なわない。
【0034】
<用途>
本発明の防眩性被膜基板の用途としては、特に限定されない。具体例としては、車両用透明部品(ヘッドライトカバー、サイドミラー、フロント透明基板、サイド透明基板、リア透明基板、インスツルメントパネル表面等。)、メータ、建築窓、ショーウインドウ、ディスプレイ(ノート型パソコン、モニタ、LCD、PDP、ELD、CRT、PDA等)、LCDカラーフィルタ、タッチパネル用基板、ピックアップレンズ、光学レンズ、眼鏡レンズ、カメラ部品、ビデオ部品、CCD用カバー基板、光ファイバ端面、プロジェクタ部品、複写機部品、太陽電池用透明基板(カバーガラス等。)、携帯電話窓、バックライトユニット部品(導光板、冷陰極管等。)、バックライトユニット部品液晶輝度向上フィルム(プリズム、半透過フィルム等。)、液晶輝度向上フィルム、有機EL発光素子部品、無機EL発光素子部品、蛍光体発光素子部品、光学フィルタ、光学部品の端面、照明ランプ、照明器具のカバー、増幅レーザ光源、反射防止フィルム、偏光フィルム、農業用フィルム等が挙げられる。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、これらに限定されるものではない。
以下で用いる略語は下記の通りである。
TEOS:テトラエトキシシラン
F13:トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン
UPS:γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン
MPMS:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
TTE:テトラエトキシチタン
TIPT:テトライソプロポキシチタン
AN:硝酸アルミニウム九水和物
MeOH:メタノール
EtOH:エタノール
IPA:イソプロパノール
BCS:ブチルセロソルブ
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PG:プロピレングリコール
HG:2-メチル-2,4-ペンタンジオール
【0036】
<合成例1>
200mL容量のフラスコ中に、AN(2.9g)、水(2.7g)、EtOH(50.3g)を加えて撹拌し、AN溶液を得た。そのAN溶液に、TEOS(23.1g)を加え、室温で30分撹拌した。その後、TTE(8.4g)、EtOH(12.6g)を加え、さらに室温で30分撹拌し、溶液K1を得た。
【0037】
<合成例2>
200mL容量のフラスコ中に、AN(2.9g)、水(2.6g)、EtOH(50.6g)を加えて撹拌し、AN溶液を得た。そのAN溶液に、TEOS(21.2g)を加え、室温で30分撹拌した。その後、TTE(10.0g)、EtOH(12.7g)を加え、さらに室温で30分撹拌し、溶液K2を得た。
【0038】
<合成例3>
200mL容量のフラスコ中に、AN(2.8g)、水(2.6g)、EtOH(51.2g)を加えて撹拌し、AN溶液を得た。そのAN溶液に、TEOS(17.7g)を加え、室温で30分撹拌した。その後、TTE(12.9g)、EtOH(12.8g)を加え、さらに室温で30分撹拌し、溶液K3を得た。
【0039】
<合成例4>
200mL容量のフラスコ中に、AN(2.9g)、水(2.7g)、EtOH(24.3g)、IPA(24.3g)を加えて撹拌し、AN溶液を得た。そのAN溶液に、TEOS23.1gを加え、室温で30分撹拌した。その後、TIPT(10.5g)、EtOH(6.1g)、IPA(6.1g)を加え、さらに室温で30分撹拌し、溶液K4を得た。
【0040】
<合成例5>
還流管を備え付けた200mL四つ口フラスコに、TEOS(34.7g)、MeOH(33.0g)を加え、撹拌し、そこにMeOH(16.4g)、水(15.0g)、60%硝酸水溶液(0.9g)を加え、10℃の氷浴中で30分撹拌した。その後、3時間還流し、室温まで放冷し、溶液K5を得た。
【0041】
<合成例6>
還流管を備え付けた200mL四つ口フラスコに、TEOS(29.0g)、F13(10.5g)、MeOH(27.9g)を加え、撹拌し、そこにMeOH(14.0g)、水(15.0g)、蓚酸(0.8g)を加え、10℃の氷浴中で30分撹拌した。その後、65℃で2時間撹拌し、その後、UPS(1.4g)、MeOH(1.4g)を加え、さらに65℃で2時間反応させた。その後、室温まで放冷し、溶液K6を得た。
【0042】
<合成例7>
200mL容量のフラスコ中に、AN(2.8g)、水(2.5g)、EtOH(51.0g)を加えて撹拌し、AN溶液を得た。そのAN溶液に、TEOS(15.9g)、MPMS(2.1g)を加え、室温で30分撹拌した。その後、TTE(12.9g)、EtOH(12.8g)を加え、さらに室温で30分撹拌し、溶液K7を得た。
【0043】
<合成例8>
200mL容量のフラスコ中に、AN(2.8g)、水(2.5g)、EtOH(38.3g)を加えて撹拌し、AN溶液を得た。そのAN溶液に、TEOS(16.8g)を加え、室温で30分撹拌した。その後、TTE(12.9g)、EtOH(12.8g)を加え、さらに室温で30分撹拌した。その後、UPS(1.1g)、EtOH(12.8g)を加え、室温で30分撹拌した。溶液K8を得た。
【0044】
<調製例1>
K1溶液60gに、PGME(10g)、EtOH(30g)を加え、溶液KL1を得た。
【0045】
<調製例2~7>
K2~K5、およびK7~K8溶液(60g)に、PGME(30g)、EtOH(10g)を加え、それぞれ溶液KL2~KL5、KL7~KL8を得た。
【0046】
<調製例8>
K1溶液(60g)に、EtOH(40g)を加え、溶液KM1を得た。
【0047】
<調製例9>
K1溶液(60g)に、HG(10g)、BCS(10g)、IPA(20g)を加え、溶液KM2を得た。
【0048】
<調製例10>
K5溶液(60g)に、PGMEA(30g)、MeOH(10g)を加え、溶液KM3を得た。
【0049】
<調製例11>
K6溶液(20g)に、PG(5g)、MeOH(75g)を加え、溶液KL6を得た。
【0050】
[スプレー塗布]
スプレー塗布を下記に示す装置、条件で行った。
装置名:アピロス社製スプレーコーターAPI-240-3D
<塗布条件I>
ノズル高さ:100mm、Y軸ピッチ:5mm、Air圧力:560kPa、薬液流量2cc/min、ノズル速度:170mm/sec
<塗布条件II>
ノズル高さ:100mm、Y軸ピッチ:5mm、Air圧力:560kPa、薬液流量2cc/min、ノズル速度:250mm/sec
<塗布条件III>
ノズル高さ:100mm、Y軸ピッチ:7mm、Air圧力:560kPa、薬液流量4.9cc/min、ノズル速度:400mm/sec
【0051】
[焼成条件]
ホットプレート上にて温度70℃で3分乾燥し、熱風循環式オーブンにて200℃で30分焼成した。
【0052】
[吐出安定性]
目詰まりなく吐出できた場合〇、塗布最中に目詰まりが起こった場合×とした。
【0053】
[HAZE、全光線透過率]
基板にソーダライムガラスを用い、スプレー塗布で塗布条件IもしくはIIにて製膜した。得られた被膜付き基板をスガ試験機(株)社製ヘイズメーターHZ-V3にてHAZEおよび全光線透過率を測定した。
【0054】
[表面観察]
基板にソーダライムガラスを用い、スプレー塗布で塗布条件IもしくはIIにて製膜した。得られた被膜付き基板をブルカージャパン(株)社製3次元白色干渉顕微鏡 Contour GTにて観察した。
【0055】
[屈折率]
基板にシリコン基板(100)を用い、スピンコートにて焼成後の膜厚が100nmとなるように溶液KL2~KL5、KL7~KL8およびKM2を製膜し、ホットプレート上にて温度70℃で3分乾燥し、熱風循環式オーブンにて200℃で30分焼成した。得られた被膜付き基板を用いて、エリプソメーター(溝尻光学工業所社製、DVA-FLVW)で波長633nmにおける屈折率を測定した。
【0056】
【0057】
表1に示されるように、実施例1~7、および11~12では、吐出安定性が保たれている。また、HAZE値が上昇しており、干渉顕微鏡画像からも表面に凹凸形状が観察された。以上のことから防眩性被膜が形成できたことが示唆される。
比較例1では溶媒(A)成分が含まれていないため、吐出安定性が乏しく、ノズルに目詰まりが発生し、成膜が困難であった。また、比較例2については、150℃以上の溶媒を含んでいるため、HAZEが上昇せず、かつ干渉顕微鏡画像でも表面は平坦であることが観察され、防眩性は発現しなかった。
【0058】
[LR製膜]
KL2~KL4およびKM3をガラス基板上に、スプレー塗布で塗布条件IIにて製膜し、防眩性被膜付き基板を作製した。
また、KM3を用いて屈折率測定を行ったところ、屈折率は1.43であった。加えて、KM3を用いて製膜した基板のHAZEは10であった。
【0059】
上記防眩性被膜付き基板上に反射防止層としてKL6をスプレー塗布で塗布条件IIIにて製膜した。
【0060】
[反射率]
作製した基板を用いて、(株)島津製作所社製紫外可視近赤外分光光度計UV-3600にて、光の入射角5°での波長380nmから800nmの範囲での反射率を測定し、得られた分校反射率曲線から、JISR 3106に従って、平均視感反射率を求めた。
【0061】
【0062】
実施例8~10については、反射防止層を設けることにより、表面反射が抑制されていた。比較例3については、防眩性は発現できるものの、屈折率が低いことから、反射防止層を設けても反射抑制の効果がほとんど発現しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の防眩性被膜形成用塗布液を用いることにより、防眩性(アンチグレア機能)に優れるとともに、ガラス基板上に形成可能であり、高屈折率を有する防眩性被膜防眩性被膜及びそれを具備する積層体の提供が可能となる。これにより、テレビ、パーソナルコンピュータ、スマートフォン等の各種デバイスが具備する画像表示装置(液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等)の表示品位の向上に貢献することが出来る。