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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】分析装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20241107BHJP
【FI】
G06Q50/06
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020132435
(22)【出願日】2020-08-04
(65)【公開番号】P2022029207
(43)【公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 容平
(72)【発明者】
【氏名】下田 吉之
(72)【発明者】
【氏名】岩井 良真
(72)【発明者】
【氏名】上林 由果
【審査官】酒井 優一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-035016(JP,A)
【文献】特開2000-162253(JP,A)
【文献】特開2017-207887(JP,A)
【文献】特開2011-108173(JP,A)
【文献】特開2011-193602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析装置であって、
分析対象期間における、時間帯毎に計測された需要家の消費電力量を示す電力量データを取得する第1取得部と、
前記分析対象期間における、前記需要家の地域の前記時間帯毎の外気温を示す外気温データを取得する第2取得部と、
前記分析対象期間に含まれる各日の各時間帯における消費電力量を分析する分析部とを備え、
前記分析部は、
前記電力量データと前記外気温データとを用いて、外気温と当該外気温における最小消費電力量との相関を示す第1相関情報を生成し、
前記第1相関情報と前記外気温データとを用いて、前記分析対象期間に含まれる各日の対象時間帯における消費電力量を、常時稼働される電気機器によって消費される電力量に対応する第1成分と、当該消費電力量から前記第1成分を差し引くことにより得られる第2成分とに分解し、
前記外気温データを用いて、前記分析対象期間に含まれる複数の日について、前記対象時間帯の外気温と前記第2成分との相関を示す第2相関情報を生成し、
前記第2相関情報と前記外気温データとを用いて、前記複数の日の各々の前記対象時間帯における前記第2成分を、人の活動時に稼働される非季節依存の電気機器によって消費される電力量に対応する第3成分と、前記第2成分から前記第3成分を差し引くことにより得られる第4成分とに分解する、分析装置。
【請求項2】
前記第2相関情報は、外気温を第1説明変数とし、前記第2成分を第1目的変数とする回帰分析によって得られる第1式を示し、
前記分析部は、
前記第1式の前記第1説明変数に前記複数の日の各々の前記対象時間帯の外気温を代入することにより得られる前記第1目的変数の値から、前記第1式において前記第1説明変数を変化させたときの前記第1目的変数の最小値を差し引くことにより外気温影響分を計算し、
前記複数の日の各々の前記対象時間帯について、前記第2成分と前記外気温影響分との差分を計算し、
前記差分に基づいて、前記第3成分を計算する、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記分析部は、
前記複数の日の各々を、曜日、休日か否か、および祝祭日か否かの少なくとも1つによって定義される複数のグループのいずれかに分類し、
前記複数のグループの各々に属する日の前記差分の代表値を、当該グループに属する日の前記対象時間帯における前記第3成分として決定する、請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記第2相関情報は、外気温を第1説明変数とし、前記第2成分を第1目的変数とする回帰分析によって得られる第1式を示し、
前記分析部は、前記第1式において前記第1説明変数を変化させたときの前記第1目的変数の最小値を前記第3成分として決定する、請求項1に記載の分析装置。
【請求項5】
前記分析部は、前記分析対象期間を第1期間と前記第1期間よりも外気温の低い第2期間とに分割し、
前記複数の日は、前記第1期間および前記第2期間の一方に属する、請求項1から4のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項6】
前記分析部は、
前記外気温データを用いて、前記複数の日について、前記対象時間帯の外気温と前記第4成分との相関を示す第3相関情報を生成し、
前記第3相関情報を用いて、前記複数の日の各々の前記対象時間帯における前記第4成分を、第5成分と、前記第4成分から前記第5成分を差し引くことにより得られる第6成分とに分解し、
前記第3相関情報は、外気温を第2説明変数とし、前記第4成分を第2目的変数とする回帰分析によって得られる第3式を示し、
前記分析部は、前記第3式の前記第2説明変数に前記複数の日の各々の前記対象時間帯の外気温を代入することにより得られる前記第2目的変数の値から、前記第3式において前記第2説明変数を変化させたときの前記第2目的変数の最小値を差し引くことにより、前記第5成分を計算する、請求項1から5のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項7】
前記第6成分に基づいて異常を通知する通知部をさらに備える、請求項6に記載の分析装置。
【請求項8】
前記通知部は、
1または連続する複数の時間帯からなる検知対象期間よりも前の時間帯における前記第6成分の分析結果から前記検知対象期間における前記第6成分の予測値を予測するモデルを用いて、前記予測値を予測し、
前記検知対象期間における前記第6成分の分析結果の代表値と前記予測値との差分が閾値よりも大きいことに応じて、前記異常の発生を検知し、
前記閾値は、前記分析対象期間に含まれる、前記検知対象期間と同じ時間長さの単位時間ごとの前記第6成分の分析結果の代表値と、前記モデルを用いて予測される当該単位時間における前記第6成分の予測値との差分の分布に応じて定められる、請求項7に記載の分析装置。
【請求項9】
前記通知部は、1または連続する複数の時間帯からなる検知対象期間における前記第6成分の分析結果の代表値が閾値よりも大きいことに応じて、前記異常の発生を検知し、
前記閾値は、前記分析対象期間に含まれる、前記検知対象期間と同じ時間長さの単位時間ごとの前記第6成分の分析結果の代表値の分布に応じて定められる、請求項7に記載の分析装置。
【請求項10】
前記通知部は、対象日の全時間帯における前記第6成分の分析結果の最小値が前記第1成分から定められる閾値よりも大きいことに応じて、前記異常の発生を検知する、請求項7に記載の分析装置。
【請求項11】
前記通知部は、対象日の全時間帯における前記第6成分の分析結果の積算値または平均値が前記第3成分から定められる閾値よりも大きいことに応じて、前記異常の発生を検知する、請求項7に記載の分析装置。
【請求項12】
前記通知部は、対象日の前記対象時間帯における前記第6成分の分析結果が前記第3成分から定められる閾値よりも大きいことに応じて、前記異常の発生を検知する、請求項7に記載の分析装置。
【請求項13】
前記通知部は、少なくとも2日以上の長さの期間に属する日の予め定められた1つ以上の時間帯における、外気温の変化に対する前記第6成分の分析結果の変化の度合いが前記第5成分から定められる閾値よりも大きいことに応じて、前記異常の発生を検知する、請求項7に記載の分析装置。
【請求項14】
前記第1相関情報は、外気温を第3説明変数とし、前記最小消費電力量を第3目的変数とする回帰分析によって得られる第5式を示し、
前記分析部は、前記第5式の前記第3説明変数に前記複数の日の各々の前記対象時間帯の外気温を代入することにより得られる前記第3目的変数の値を、前記複数の日の各々の前記対象時間帯における前記第1成分として決定する、請求項1から13のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項15】
前記分析部は、
前記第5式において前記第3説明変数を変化させたときの前記第3目的変数の最小値を第7成分として決定し、
前記分析対象期間に含まれる各日の前記対象時間帯における前記第1成分を、前記第7成分と、前記第1成分から前記第7成分を差し引くことにより得られる第8成分とに分解する、請求項14に記載の分析装置。
【請求項16】
分析方法であって、
分析対象期間における、時間帯毎に計測された需要家の消費電力量を示す電力量データを取得するステップと、
前記分析対象期間における、前記需要家の地域の前記時間帯毎の外気温を示す外気温データを取得するステップと、
前記分析対象期間に含まれる各日の各時間帯における消費電力量を分析するステップとを備え、
前記分析するステップは、
前記電力量データと前記外気温データとを用いて、外気温と当該外気温における最小消費電力量との相関を示す第1相関情報を生成するステップと、
前記第1相関情報と前記外気温データとを用いて、前記分析対象期間に含まれる各日の対象時間帯における消費電力量を、常時稼働される電気機器によって消費される電力量に対応する第1成分と、当該消費電力量から前記第1成分を差し引くことにより得られる第2成分とに分解するステップと、
前記外気温データを用いて、前記分析対象期間に含まれる複数の日について、前記対象時間帯の外気温と前記第2成分との相関を示す第2相関情報を生成するステップと、
前記第2相関情報と前記外気温データとを用いて、前記第2成分を、人の活動時に稼働される非季節依存の電気機器によって消費される電力量に対応する第3成分と、前記第2成分から前記第3成分を差し引くことにより得られる第4成分とに分解するステップとを含む、分析方法。
【請求項17】
分析方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記分析方法は、
分析対象期間における、時間帯毎に計測された需要家の消費電力量を示す電力量データを取得するステップと、
前記分析対象期間における、前記需要家の地域の前記時間帯毎の外気温を示す外気温データを取得するステップと、
前記分析対象期間に含まれる各日の各時間帯における消費電力量を分析するステップとを備え、
前記分析するステップは、
前記電力量データと前記外気温データとを用いて、外気温と当該外気温における最小消費電力量との相関を示す第1相関情報を生成するステップと、
前記第1相関情報と前記外気温データとを用いて、前記分析対象期間に含まれる各日の対象時間帯における消費電力量を、常時稼働される電気機器によって消費される電力量に対応する第1成分と、当該消費電力量から前記第1成分を差し引くことにより得られる第2成分とに分解するステップと、
前記外気温データを用いて、前記分析対象期間に含まれる複数の日について、前記対象時間帯の外気温と前記第2成分との相関を示す第2相関情報を生成するステップと、
前記第2相関情報と前記外気温データとを用いて、前記第2成分を、人の活動時に稼働される非季節依存の電気機器によって消費される電力量に対応する第3成分と、前記第2成分から前記第3成分を差し引くことにより得られる第4成分とに分解するステップとを含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、需要家の消費電力量を分析するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、需要家の消費電力量に基づいて、用途別の消費電力量を分析する技術が開発されている。たとえば、非特許文献1は、事務所ビルの電力需要を、人の活動に依存しないベース成分、空調設備の稼働に伴う空調成分、および空調以外で人の活動に起因する活動成分に分解する手法を開示している。分析結果は、省エネルギー化のために利用される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】大島弘暉 他、「時刻別総電力量を用いた建物エネルギー使用実態評価手法開発」、空気調和・衛生工学会論文集、264号、2019-3、pp.13-21
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に記載の技術は、空調設備を稼働しない日の消費電力量を用いて、需要家の用途別の消費電力量の分析を行なう。すなわち、非特許文献1に記載の技術は、空調設備を稼働しない日が存在する建物を対象としている。そのため、非特許文献1に記載の技術は、宿泊施設および医療施設のような空調設備が常時稼働している建物を使用している需要家の消費電力量の分析には適用できない。
【0005】
本開示は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、様々な需要家の消費電力量を分析することが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある局面に従うと、分析装置は、第1取得部と、第2取得部と、分析部とを備える。第1取得部は、分析対象期間における、時間帯毎に計測された需要家の消費電力量を示す電力量データを取得する。第2取得部は、分析対象期間における、需要家の地域の時間帯毎の外気温を示す外気温データを取得する。分析部は、分析対象期間に含まれる各日の各時間帯における消費電力量を分析する。分析部は、電力量データと外気温データとを用いて、外気温と当該外気温における最小消費電力量との相関を示す第1相関情報を生成する。分析部は、第1相関情報と外気温データとを用いて、分析対象期間に含まれる各日の対象時間帯における消費電力量を、人の活動に依存しない第1成分と、第1成分以外の第2成分とに分解する。分析部は、外気温データを用いて、分析対象期間に含まれる複数の日について、対象時間帯の外気温と第2成分との相関を示す第2相関情報を生成する。分析部は、第2相関情報と外気温データとを用いて、複数の日の各々の対象時間帯における第2成分を、外気温に応じて変動しない第3成分と、第3成分以外の第4成分とに分解する。
【0007】
上記の分析装置において、第2相関情報は、外気温を第1説明変数とし、第2成分を第1目的変数とする回帰分析によって得られる第1式を示す。分析部は、第1式の第1説明変数に複数の日の各々の対象時間帯の外気温を代入することにより得られる第1目的変数の値から、第1式において第1説明変数を変化させたときの第1目的変数の最小値を差し引くことにより外気温影響分を計算する。分析部は、複数の日の各々の対象時間帯について、第2成分と外気温影響分との差分を計算し、差分に基づいて、第3成分を計算する。
【0008】
上記の分析装置において、分析部は、複数の日の各々を、曜日、休日か否か、および祝祭日か否かの少なくとも1つによって定義される複数のグループのいずれかに分類する。分析部は、複数のグループの各々に属する日の差分の代表値を、当該グループに属する日の対象時間帯における第3成分として決定する。
【0009】
上記の分析装置において、第2相関情報は、外気温を第1説明変数とし、第2成分を第1目的変数とする回帰分析によって得られる第1式を示す。分析部は、第1式において第1説明変数を変化させたときの第1目的変数の最小値を第3成分として決定する。
【0010】
上記の分析装置において、分析部は、分析対象期間を第1期間と第1期間よりも外気温の低い第2期間とに分割する。複数の日は、第1期間および第2期間の一方に属する。
【0011】
上記の分析装置において、分析部は、外気温データを用いて、複数の日について、対象時間帯の外気温と第4成分との相関を示す第3相関情報を生成する。分析部は、第3相関情報を用いて、複数の日の各々の対象時間帯における第4成分を第5成分と第5成分以外の第6成分とに分解する。第3相関情報は、外気温を第2説明変数とし、第4成分を第2目的変数とする回帰分析によって得られる第3式を示す。分析部は、第3式の第2説明変数に複数の日の各々の対象時間帯の外気温を代入することにより得られる第2目的変数の値から、第3式において第2説明変数を変化させたときの第2目的変数の最小値を差し引くことにより、第5成分を計算する。
【0012】
上記の分析装置は、第6成分に基づいて異常を通知する通知部をさらに備える。
上記の分析装置において、通知部は、1または連続する複数の時間帯からなる検知対象期間よりも前の時間帯における第6成分の分析結果から検知対象期間における第6成分の予測値を予測するモデルを用いて、当該予測値を予測する。通知部は、検知対象期間における第6成分の分析結果の代表値と予測値との差分が閾値よりも大きいことに応じて、異常の発生を検知する。閾値は、分析対象期間に含まれる、検知対象期間と同じ時間長さの単位時間ごとの第6成分の分析結果の代表値と、モデルを用いて予測される当該単位時間における第6成分の予測値との差分の分布に応じて定められる。
【0013】
上記の分析装置において、通知部は、1または連続する複数の時間帯からなる検知対象期間における第6成分の分析結果の代表値が閾値よりも大きいことに応じて、異常の発生を検知する。閾値は、分析対象期間に含まれる、検知対象期間と同じ時間長さの単位時間ごとの第6成分の分析結果の代表値の分布に応じて定められる。
【0014】
上記の分析装置において、通知部は、対象日の全時間帯における第6成分の分析結果の最小値が第1成分から定められる閾値よりも大きいことに応じて、異常の発生を検知する。
【0015】
上記の分析装置において、通知部は、対象日の全時間帯における第6成分の分析結果の積算値または平均値が第3成分から定められる閾値よりも大きいことに応じて、異常の発生を検知する。
【0016】
上記の分析装置において、通知部は、対象日の対象時間帯における第6成分の分析結果が第3成分から定められる閾値よりも大きいことに応じて、異常の発生を検知する。
【0017】
上記の分析装置において、通知部は、少なくとも2日以上の長さの期間に属する日の予め定められた1つ以上の時間帯における、外気温の変化に対する第6成分の分析結果の変化の度合いが第5成分から定められる閾値よりも大きいことに応じて、異常の発生を検知する。
【0018】
上記の分析装置において、第1相関情報は、外気温を第3説明変数とし、最小消費電力量を第3目的変数とする回帰分析によって得られる第5式を示す。分析部は、第5式の第3説明変数に複数の日の各々の対象時間帯の外気温を代入することにより得られる第3目的変数の値を、複数の日の各々の対象時間帯における第1成分として決定する。
【0019】
上記の分析装置において、分析部は、第5式において第3説明変数を変化させたときの第3目的変数の最小値を第7成分として決定する。分析部は、分析対象期間に含まれる各日の対象時間帯における第1成分を、第7成分と第7成分以外の第8成分とに分解する。
【0020】
他の局面に従うと、分析方法は、分析対象期間における、時間帯毎に計測された需要家の消費電力量を示す電力量データを取得するステップと、分析対象期間における、需要家の地域の時間帯毎の外気温を示す外気温データを取得するステップと、分析対象期間に含まれる各日の各時間帯における消費電力量を分析するステップとを備える。分析するステップは、電力量データと外気温データとを用いて、外気温と当該外気温における最小消費電力量との相関を示す第1相関情報を生成するステップを含む。さらに、分析するステップは、第1相関情報と外気温データとを用いて、分析対象期間に含まれる各日の対象時間帯における消費電力量を、人の活動に依存しない第1成分と、人の活動に依存する第2成分とに分解するステップを含む。さらに、分析するステップは、外気温データを用いて、分析対象期間に含まれる複数の日について、対象時間帯の外気温と第2成分との相関を示す第2相関情報を生成するステップを含む。さらに、分析するステップは、第2相関情報と外気温データとを用いて、第2成分を、外気温に応じて変動しない第3成分と、第3成分以外の第4成分とに分解するステップを含む。
【0021】
他の局面において、プログラムは、上記の分析方法の各ステップをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0022】
本開示の技術によれば、様々な需要家の消費電力量を分析できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施の形態に従う分析装置を含むシステムの概略を示す図である。
図2】分析装置のハードウェア構成を示す図である。
図3】分析装置の機能構成を示す図である。
図4】建物200に設置される複数の電気機器220の分類を示す図である。
図5】消費電力量を構成する複数の成分を示す図である。
図6】分析装置100における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】ベース成分21の算出方法を説明する図である。
図8】ベース固定成分27およびベース季節変動成分28の算出方法を説明する図である。
図9】第2成分22に含まれる外気温影響分の算出方法を示す図である。
図10】第2成分22と外気温影響分との差分の分布を示す図である。
図11】一週間における活動起因固定成分23の変化の一例を示す図である。
図12】外気温に対する、第2成分22から活動起因固定成分23を除いた第4成分24の分布を示す図である。
図13】外気温と第4成分との相関を示す回帰曲線34の一例を示す図である。
図14】分析対象期間の一部の期間における残渣成分26の変動を示す図である。
図15】分析結果の表示の一例を示す図である。
図16】分析結果の表示の他の例を示す図である。
図17】複数の事務所の活動起因固定成分23の変化の一例を示す図である。
図18】複数の総合スーパーの活動起因固定成分23の変化の一例を示す図である。
図19】複数の宿泊施設の活動起因固定成分23の変化の一例を示す図である。
図20】自己回帰モデルを説明する図である。
図21】単位時間ごとの残渣成分26の分析結果の代表値と予測値との差分の確率分布の一例を示す図である。
図22】消費電力量の成分分析結果と残渣成分26の予測値とを示す図である。
図23】単位時間における残渣成分26の代表値の確率分布の一例を示す図である。
図24】単位時間ごとの残渣成分26の分析結果を示す図である。
図25】残渣成分26の増大の原因となる現象と当該現象の有無の判定方法とを示す図である。
図26】残渣成分26の分析結果の積算値を示す図である。
図27】消費電力量の成分分析結果を示す図である。
図28】消費電力量の成分分析結果と閾値Thcとを示す図である。
図29】残渣成分26の気温感応度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明に従う実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は繰り返さない。なお、以下で説明される実施の形態および各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0025】
<A.システム構成>
図1を参照して、本実施の形態に従う分析装置を含むシステムの構成について説明する。図1は、本実施の形態に従う分析装置を含むシステムの概略を示す図である。図1に示されるように、システムSYSは、分析装置100と分析対象となる建物200とサーバ装置300とを含む。
【0026】
建物200は、需要家によって使用され、例えば、店舗、事務所、医療施設、宿泊施設などを含む。なお、建物200は、建築物全体を指してもよいし、建築物の一部(たとえば1フロア)を指してもよい。建物200にはスマートメータ210が設置されている。スマートメータ210は、需要家の時間帯毎の消費電力量を計測して記録する。具体的には、0時から24時までを所定の時間長さ(例えば、30分または1時間)で区切った時間帯毎に、建物200に設置された各種の電気機器220によって消費された総電力量が計測される。
【0027】
スマートメータ210は、サーバ装置300との間で通信を行ない、計測した消費電力量を示す電力量データをサーバ装置300に送信する。サーバ装置300は、スマートメータ210から受信した電力量データを蓄積する。
【0028】
分析装置100は、ネットワークに接続されており、ネットワークを介してサーバ装置300から建物200の電力量データを取得する。分析装置100は、当該電力データに基づいて、建物200における電力の消費状態を分析する。分析装置100は、分析結果を用いて、省エネルギーに関する情報を生成してもよい。生成された情報は、需要家に通知される。需要家は、通知された情報を確認することにより、省エネルギーのために適した行動を実行することができる。
【0029】
<B.分析装置のハードウェア構成>
図2は、分析装置のハードウェア構成を示す図である。図2に示されるように、分析装置100は、主たる構成要素として、プログラム110を実行するプロセッサ101と、データを不揮発的に格納するROM(Read Only Memory)102と、プロセッサ101によるプログラム110の実行により生成されたデータ、又は入力装置を介して入力されたデータを揮発的に格納するRAM(Random Access Memory)103と、データを不揮発的に格納するハードディスク(HDD)104と、通信IF(Interface)105と、操作キー106と、電源回路107と、ディスプレイ108とを含む。各構成要素は、相互にデータバスによって接続されている。なお、通信IF105は、他の機器との間における通信を行なうためのインターフェイスである。
【0030】
分析装置100における処理は、各ハードウェアおよびプロセッサ101により実行されるプログラム110によって実現される。このようなプログラム110は、HDD104に予め記憶されている。ただし、プログラム110は、その他の記憶媒体に格納されて、プログラムプロダクトとして流通していてもよい。あるいは、プログラム110は、いわゆるインターネットに接続されている情報提供事業者によってダウンロード可能なプログラムプロダクトとして提供されてもよい。このようなプログラム110は、読取装置によりその記憶媒体から読み取られて、あるいは、通信IF105等を介してダウンロードされた後、HDD104に格納される。プロセッサ101は、HDD104からプログラム110を読み出し、プログラム110を実行する。
【0031】
<C.分析装置の機能構成>
図3は、分析装置の機能構成を示す図である。図3に示されるように、分析装置100は、記憶部10と、第1取得部11と、第2取得部13と、分析部15と、通知部16とを備える。第1取得部11、第2取得部13、分析部15および通知部16は、プロセッサ101がプログラム110を実行することにより実現される。記憶部10は、ROM102およびRAM103によって実現される。
【0032】
第1取得部11は、ネットワークを介してサーバ装置300から、分析対象となる建物200(図1参照)について、分析対象期間における需要家の電力量データ12を取得する。分析対象期間は、例えば1年である。第1取得部11は、取得した電力量データ12を記憶部10に格納する。
【0033】
第2取得部13は、ネットワークを介して、分析対象期間における、需要家の地域(つまり、建物200(図1参照)を含む地域)における時間帯毎の外気温を示す外気温データ14を取得する。外気温データ14は、所定の機関(例えば気象庁)から配信される。第2取得部13は、取得した外気温データ14を記憶部10に格納する。
【0034】
分析部15は、電力量データ12と外気温データ14とを用いて、分析対象期間に含まれる各日の各時間帯における消費電力量を分析する。具体的には、分析部15は、消費電力量の成分分析を行なう。
【0035】
通知部16は、分析部15による分析結果を通知するとともに、分析結果から得られる省エネルギーに関する情報を生成し、生成した情報を通知する。通知部16は、たとえば、分析結果および省エネルギーに関する情報をディスプレイ108(図2参照)に表示させる。
【0036】
<D.消費電力量の成分分析>
建物200に設置される複数の電気機器220(図1参照)は、外気温に応じて消費電力量が変動する季節依存の機器と、外気温に応じて消費電力量が変動しない非季節依存の機器とに分類される。さらに、複数の電気機器220は、常時稼働される機器と、人の活動時に稼働される機器とに分類される。
【0037】
図4は、建物200に設置される複数の電気機器220の分類を示す図である。図4に示されるように、常時稼働される非季節依存の電気機器として、たとえばサーバ、共用室換気装置が挙げられる。人の活動時に稼働される非季節依存の電気機器として、たとえば照明器具およびコンセントに接続された機器が挙げられる。常時稼働される季節依存の電気機器として、たとえば24時間運転される空調機、冷蔵庫、温水洗浄便座が挙げられる。人の活動時に稼働される季節依存の電気機器として、限定された時間にのみ使用される空調機、電気温水機が挙げられる。
【0038】
分析部15は、図4に示す分類を考慮して、需要家の消費電力量を複数の成分に分解する。
【0039】
図5は、消費電力量を構成する複数の成分を示す図である。分析部15は、分析対象期間の各日の各時間帯の消費電力量20を、人の活動に依存しないベース成分21(「第1成分」とも称する。)と、ベース成分21以外の第2成分22とに分解する。ベース成分21は、常時稼働される電気機器によって消費される電力量に対応する。
【0040】
分析部15は、第2成分22を、外気温に応じて変動しない活動起因固定成分23(「第3成分」とも称する。)と、活動起因固定成分23以外の第4成分24とに分解する。活動起因固定成分23は、人の活動時に稼働される非季節依存の電気機器によって消費される電力量に対応する。
【0041】
分析部15は、第4成分24を、外気温に応じて変動する活動起因季節変動成分25(「第5成分」とも称する。)と、活動起因季節変動成分25以外の残渣成分26(「第6成分」とも称する。)とに分解する。活動起因季節変動成分25は、人の活動時に稼働される季節依存の電気機器によって消費される電力量に対応する。
【0042】
分析部15は、ベース成分21を、外気温に応じて変動しないベース固定成分27(「第7成分」とも称する。)と、ベース固定成分27以外のベース季節変動成分28(「第8成分」とも称する。)とに分解する。ベース固定成分27は、常時稼働される非季節依存の電気機器によって消費される電力量に対応する。ベース季節変動成分28は、常時稼働される季節依存の電気機器によって消費される電力量に対応する。
【0043】
<E.分析装置の処理の流れ>
図6は、分析装置100における処理の流れの一例を示すフローチャートである。図6に示されるように、まず、分析装置100の第1取得部11は、分析対象となる需要家について、分析対象期間における時間帯毎の消費電力量を示す電力量データ12を取得する(ステップS1)。取得された電力量データ12は、記憶部10に格納される。
【0044】
次に、分析装置100の第2取得部13は、分析対象期間における、需要家の地域の時間帯毎の外気温を示す外気温データ14を取得する(ステップS2)。取得された外気温データ14は、記憶部10に格納される。なお、ステップS2は、ステップS1の前に実行されてもよい。
【0045】
次に、分析装置100の分析部15は、分析対象期間に含まれる各日の各時間帯における消費電力量20を、人の活動に依存しないベース成分21(図5参照)と、ベース成分21以外の第2成分22とに分解する(ステップS3)。
【0046】
次に、分析部15は、第2成分22を、活動起因固定成分23と活動起因固定成分23以外の第4成分24とに分解する(ステップS4)。
【0047】
次に、分析部15は、第4成分24を、活動起因季節変動成分25と活動起因季節変動成分25以外の残渣成分26とに分解する(ステップS5)。
【0048】
さらに、ステップS4,S5と並行して、分析部15は、ベース成分21を、ベース固定成分27とベース固定成分27以外のベース季節変動成分28とに分解する(ステップS6)。
【0049】
ステップS5,S6の完了後に、分析装置100の通知部16は、分析結果を通知する(ステップS7)。ステップS7において、通知部16は、分析結果から省エネルギーに関する情報を生成し、生成した情報を通知してもよい。ステップS7の後、分析装置100は処理を終了する。
【0050】
<F.ベース成分の算出方法>
図7を参照して、ステップS3の具体的な処理方法について説明する。図7は、ベース成分21の算出方法を説明する図である。
【0051】
分析部15は、電力量データ12と外気温データ14とを用いて、分析対象期間に含まれる各日の各時間帯における消費電力量と外気温とを対応付けた単位データセットを生成する。例えば、分析対象期間に含まれる日数が365であり、各日が30分毎の48個の時間帯に分割される場合、分析部15は、365×48=17520個の単位データセットを生成する。
【0052】
ベース成分21は、常時稼働される電気機器によって消費される電力量に対応する。そのため、人の活動しない時間帯の消費電力量を用いることにより、ベース成分21の算出精度を高めることができる。そこで、分析部15は、分析対象期間に含まれる各日のうちの予め定められた時間帯に対応する単位データセットを抽出する。予め定められた時間帯は、人の活動しない時間帯(たとえば0時から3時までの深夜時間帯)を含み、たとえば0時から7時までの時間帯である。予め定められた時間帯が0時から7時までの30分毎の時間帯である場合、365日×14個=5110個の単位データセットが抽出される。
【0053】
図7には、横軸を外気温、縦軸を消費電力量とするグラフに、抽出された複数(たとえば5110個)の単位データセット40をプロットした結果が示される。
【0054】
ベース成分21は、常時稼働される電気機器によって消費される電力量に対応するため、各外気温における最小の消費電力量に対応する可能性が高い。そのため、分析部15は、以下の手順(A1)~(A4)に従って、分析対象期間に含まれる各日の各時間帯のベース成分21を計算する。
【0055】
手順(A1):分析部15は、抽出された複数の単位データセット40によって示される外気温のうちの最低外気温Tminから最高外気温Tmaxまでの外気温範囲を複数の外気温度帯に分割する。外気温度帯の個数は、予め定められる。図7に示す例では、分析部15は、最低外気温Tminから最高外気温Tmaxまでの外気温範囲を30区分の外気温度帯に分割している。30区分の外気温度帯の幅Δtは互いに同じである。
【0056】
手順(A2):分析部15は、外気温度帯毎の最小消費電力量を特定する。図7に示されるように、分析部15は、30区分の外気温度帯の各々について、当該外気温度帯に属する単位データセット40の中から最小の消費電力量を示す単位データセット41を抽出する。分析部15は、30区分の外気温度帯の各々について抽出した単位データセット41で示される消費電力量を、当該外気温度帯の最小消費電力量として特定する。
【0057】
手順(A3):分析部15は、外気温を説明変数xとし、手順(A2)で特定した最小消費電力量を目的変数yとする回帰分析を行ない、回帰式50を求める。回帰式50は、最小二乗法を用いて計算される。図7に示すグラフには、回帰式50によって表される回帰曲線30が描かれている。回帰式50は、典型的には2次方程式(y=ax2+bx+c)であり、回帰曲線30として2次曲線を表す。
【0058】
外気温が高くなると、たとえば24時間使用されている空調機の冷房運転によって消費される電力量が多くなる。一方、外気温が低くなると、たとえば24時間使用されている空調機の暖房運転によって消費される電力量が多くなる。そのため、回帰曲線30は、通常、下に凸となる。
【0059】
手順(A4):分析部15は、回帰式50の説明変数xに分析対象期間に含まれる各日の各時間帯における外気温を代入することにより得られる目的変数yの値を、当該日の当該時間帯におけるベース成分21として決定する。
【0060】
<G.ベース固定成分およびベース季節変動成分の算出方法>
図8を参照して、ステップS6の具体的な処理方法について説明する。図8は、ベース固定成分27およびベース季節変動成分28の算出方法を説明する図である。
【0061】
ベース固定成分27(図5参照)は、常時稼働される非季節依存の電気機器によって消費される電力量に対応する。そのため、図8に示されるように、分析部15は、回帰曲線30を表す回帰式50において説明変数x(外気温)を変化させたときの目的変数y(最小消費電力量)の最小値をベース固定成分27として決定する。図8において、破線31は、目的変数yの最小値を示している。
【0062】
分析部15は、分析対象期間における各日の各時間帯におけるベース成分21を、ベース固定成分27とベース固定成分27以外のベース季節変動成分28とに分解する。すなわち、分析部15は、分析対象期間における各日の各時間帯におけるベース成分21からベース固定成分27を差し引くことにより、当該日の当該時間帯におけるベース季節変動成分28を計算する。
【0063】
<H.活動起因固定成分の算出方法>
図9および図10を参照して、活動起因固定成分23の算出方法を説明する。図9は、第2成分22に含まれる外気温影響分の算出方法を示す図である。図10は、第2成分22と外気温影響分との差分の分布を示す図である。
【0064】
分析部15は、分析対象期間に含まれる各日における各時間帯の単位データセット40(図7参照)を、暖房期に対応する第1グループと、冷房期に対応する第2グループとに分類する。具体的には、分析部15は、暖房期に属する日に対応する単位データセット40を第1グループに分類し、冷房期に属する日に対応する単位データセット40を第2グループに分類する。
【0065】
暖房期は、冷房期よりも外気温が低く、主に暖房が使用される期間である。冷房期は、暖房期よりも外気温が高く、主に冷房が使用される期間である。
【0066】
暖房期および冷房期は、予め定められる。たとえば、11月から4月までが暖房期として予め定められ、5月から10月までが冷房期として予め定められる。
【0067】
あるいは、分析部15は、電力量データ12に基づいて、暖房期および冷房期を決定してもよい。暖房期から冷房期に切り替わるとき、および、冷房期から暖房機に切り替わるとき、消費電力量は低くなる。そのため、分析部15は、電力量データ12を用いて、月毎の1日当たりの平均消費電力量が極小となる2つの月を特定する。分析部15は、特定した2つの月を境として、暖房期および冷房期を決定すればよい。なお、特定された2つの月の各々は、暖房期および冷房期のいずれかに分類される。
【0068】
分析部15は、分析対象期間に含まれる各日における各時間帯の単位データセット40によって示される消費電力量から当該日の当該時間帯について算出したベース成分21を差し引くことにより、当該日の当該時間帯における第2成分22を計算する。
【0069】
図9には、横軸を外気温、縦軸を第2成分とするグラフに、分析対象期間に含まれる各日における対象時間帯の単位データセット40に対応する点をプロットした結果が示される。図9において、三角印によって示される点は、暖房期に属する日における対象時間帯の単位データセット40に対応する。丸印によって示される点は、冷房期に属する日における対象時間帯の単位データセット40に対応する。
【0070】
分析部15は、以下の手順(B1)~(B6)に従って、対象日の対象時間帯における活動起因固定成分23を計算する。
【0071】
(手順B1)分析部15は、対象日が暖房期に属する場合、分析対象期間のうち暖房期に属する複数の日を選択する。分析部15は、対象日が冷房期に属する場合、分析対象期間のうち冷房期に属する複数の日を選択する。
【0072】
(手順B2)分析部15は、選択した複数の日における対象時間帯の外気温と第2成分22との相関を示す相関情報を生成する。具体的には、分析部15は、外気温を説明変数x’とし、第2成分22を目的変数y’とする回帰分析を行ない、回帰式52を求める。回帰式52は、最小二乗法を用いて計算される。図9に示すグラフには、冷房期に属する複数の日における対象時間帯の外気温と第2成分22とを回帰分析することにより得られる回帰曲線32aが描かれている。さらに、暖房期に属する複数の日における対象時間帯の外気温と第2成分22とを回帰分析することにより得られる回帰曲線32bが描かれている。回帰式52は、典型的には2次方程式(y’=a’x’2+b’x’+c’)であり、回帰曲線32a,32bとして2次曲線を表す。
【0073】
冷房期では、外気温が高くなるほど空調機の冷房運転によって消費される電力量が多くなる。また、冷房期であっても、外気温が低い日が含まれ、このような日には空調機の暖房運転によって消費される電力量が多くなる。同様に、暖房期では、外気温が低くなるほど空調機の暖房運転によって消費される電力量が多くなる。また、暖房期であっても、外気温が高い日が含まれ、このような日には空調機の冷房運転によって消費される電力量が多くなる。そのため、回帰曲線32a,32bは、通常、下に凸となる。
【0074】
(手順B3):分析部15は、回帰式52において説明変数x’(外気温)を変化させたときの目的変数y’(第2成分22)の最小値を計算する。図9には、冷房期に対応する回帰曲線32aから計算される目的変数y’の最小値を示す破線33aと、暖房期に対応する回帰曲線32bから計算される目的変数y’の最小値を示す破線33bとが示される。
【0075】
(手順B4):分析部15は、回帰式52の説明変数x’に選択した複数の日の各々の対象時間帯の外気温を代入することにより得られる目的変数y’の値から、手順B3において計算した最小値を差し引くことにより外気温影響分を計算する。図9には、冷房期に対応する回帰曲線32aと破線33aとの差が冷房期に対応する外気温影響分として示される。さらに、暖房期に対応する回帰曲線32bと破線33bとの差が暖房期に対応する外気温影響分として示される。
【0076】
(手順B5):分析部15は、選択した複数の日の各々における対象時間帯の第2成分22と手順B4において計算した外気温影響分との差分を計算する。図10には、暖房期における第2成分22と外気温影響分との差分が三角印で示され、冷房期における第2成分22と外気温影響分との差分が丸印で示されている。
【0077】
(手順B6):分析部15は、手順B5において算出された差分に基づいて、活動起因固定成分23を計算する。たとえば、分析部15は、選択した複数の日の対象時間帯における、第2成分22と外気温影響分との差分の代表値(たとえば平均値)を活動起因固定成分23として計算する。
【0078】
人の活動は、曜日、休日か否か、および祝祭日か否かに応じて変化する。そのため、分析部15は、選択した複数の日の各々を、曜日、休日か否か、および祝祭日か否かの少なくとも1つによって定義される複数のグループのいずれかに分類してもよい。分析部15は、複数のグループの各々に属する日の対象時間帯における、第2成分22と外気温影響分との差分の代表値を、当該グループに属する日の対象時間帯における活動起因固定成分23として決定すればよい。
【0079】
複数のグループは、たとえば、「月曜日」と、「火曜日」と、「水曜日」と、「木曜日」と、「金曜日」と、「土曜日」と、「日曜日および祝祭日」との7つのグループを含む。なお、月曜日から土曜日のいずれかであり、かつ祝祭日である日は、グループ「日曜日および祝祭日」に分類される。
【0080】
活動起因固定成分23は、人の活動時に稼働される非季節依存の電気機器によって消費される電力量に対応する。そのため、人が活動していない時間帯における活動起因固定成分23は、好ましくはゼロである。したがって、分析部15は、複数のグループの全時間帯のうち最小の活動起因固定成分23がゼロとなるように調整してもよい。
【0081】
たとえば、分析部15は、選択した複数の日を上記の7つのグループに分類し、上記の手順B5に従って、各グループおよび各時間帯について、第2成分22と外気温影響分との差分の平均値を計算する。分析部15は、7つのグループの全ての時間帯について計算された平均値のうちの最小値をオフセット量として決定する。分析部15は、7つのグループの各々に属する日の対象時間帯における第2成分22と外気温影響分との差分の平均値からオフセット量だけ減算した値を、当該グループに属する日の対象時間帯における活動起因固定成分23として決定する。
【0082】
なお、対象日の対象時間帯における活動起因固定成分23とベース成分21との合計が、対象日の対象時間帯における消費電力量よりも大きい場合、分析部15は、当該合計と当該消費電力との差分だけ小さくなるように活動起因固定成分23を調整する。
【0083】
図11は、一週間における活動起因固定成分23の変化の一例を示す図である。図11には、夜間に閉まる店舗の活動起因固定成分23が示される。夜間に閉まるため、夜間において活動起因固定成分23が減少し、昼間に活動起因固定成分23が増大する。
【0084】
<I.活動起因季節変動成分および残渣成分の算出方法>
図12および図13を参照して、活動起因季節変動成分25の算出方法を説明する。図12は、外気温に対する、第2成分22から活動起因固定成分23を除いた第4成分24の分布を示す図である。図13は、外気温と第4成分との相関を示す回帰曲線34の一例を示す図である。
【0085】
分析部15は、以下の手順(C1)~(C6)に従って、対象日の対象時間帯における活動起因季節変動成分25および残渣成分26を計算する。
【0086】
(手順C1)分析部15は、対象日が暖房期に属する場合、分析対象期間のうち暖房期に属する複数の日を選択する。分析部15は、対象日が冷房期に属する場合、分析対象期間のうち冷房期に属する複数の日を選択する。
【0087】
(手順C2)分析部15は、選択した複数の日における対象時間帯の第4成分を計算する。具体的には、分析部15は、選択した複数の日の各々について、当該日の対象時間帯の第2成分22から活動起因固定成分23を差し引くことにより、当該日の対象時間帯における第4成分24を計算する。図12には、複数の日について、外気温に対する第4成分24の分布が示される。なお、図12には、対象時間帯だけでなく全時間帯について、外気温に対する第4成分24の分布が示される。
【0088】
(手順C3)分析部15は、選択した複数の日における対象時間帯の外気温と第4成分24との相関を示す相関情報を生成する。具体的には、分析部15は、外気温を説明変数x”とし、第4成分24を目的変数y”とする回帰分析を行ない、回帰式54を求める。回帰式54は、最小二乗法を用いて計算される。図13に示すグラフには、対象時間帯の外気温と第4成分24とを回帰分析することにより得られる回帰曲線34が描かれている。回帰式54は、典型的には2次方程式(y”=a”x”2+b”x”+c”)であり、回帰曲線34として2次曲線を表す。
【0089】
(手順C4):分析部15は、回帰式54において説明変数x”(外気温)を変化させたときの目的変数y”(第4成分24)の最小値を計算する。図13には、回帰曲線34から計算される最小値を示す破線35が示される。
【0090】
(手順C5):分析部15は、回帰式54の説明変数x”に対象日の対象時間帯の外気温を代入することにより得られる目的変数y”の値から、手順C4において計算した最小値を差し引くことにより、活動起因季節変動成分25を計算する。図13には、対象時間帯に対応する回帰曲線34と破線35との差が活動起因季節変動成分25として示される。
【0091】
分析部15は、対象日の対象時間帯について、第4成分24から活動起因季節変動成分25を差し引くことにより、残渣成分26を計算する。
【0092】
図14は、分析対象期間の一部の期間における残渣成分26の変動を示す図である。ベース成分21は、分析対象期間における深夜時間帯の消費電力量から算出される。活動起因固定成分23および活動起因季節変動成分25は、対象日と同じグループに属する日の対象時間帯の外気温と消費電力量との相関と、対象日の対象時間帯の外気温とを用いて算出される。そのため、対象日の対象時間帯について算出された、ベース成分21と活動起因固定成分23と活動起因季節変動成分25との和は、対象日の対象時間帯の消費電力量(実測値)よりも大きくなり得る。その結果、図14に示されるように、残渣成分26は、負の値を取り得る。
【0093】
<J.通知処理>
通知部16は、分析部15の分析結果をディスプレイ108に表示させる。
【0094】
図15は、分析結果の表示の一例を示す図である。図15には、需要家の消費電力量から分解されたベース固定成分27、ベース季節変動成分28、活動起因固定成分23および第4成分24(活動起因季節変動成分25と残渣成分26との合成)の各々の時間変化が示される。図15に示す分析結果を確認することにより、電力供給者は、省エネルギー化を図るべき時間帯、低減すべき成分などを検討でき、検討結果を需要家に提示できる。あるいは、分析結果が需要家に提示されてもよい。
【0095】
図16は、分析結果の表示の他の例を示す図である。図16には、分析対象期間における時間帯毎の消費電力量を大きい順に並べたデュレーションカーブが示される。電気料金は、最大需要電力(デマンド値)に応じて定められる。デマンド値は、図16に示すデュレーションカーブの最も左側の消費電力量に対応する。図16に示す例では、主に活動起因季節変動成分25が占める第4成分24の増大に応じてデマンド値が大きくなっている。そのため、図16に示すデュレーションカーブを確認することにより、電力供給者は、たとえば空調機の設定温度の調節によって電気料金が低下し得ることを需要家に提案できる。
【0096】
図15および図16に示されるように、消費電力量のうち活動起因固定成分23の占める割合が大きい。活動起因固定成分23は、人の活動に起因して消費される電力量に対応するため、省エネルギー化に大きく影響し得る。
【0097】
図17は、複数の事務所の活動起因固定成分23の変化の一例を示す図である。図18は、複数の総合スーパーの活動起因固定成分23の変化の一例を示す図である。図19は、複数の宿泊施設の活動起因固定成分23の変化の一例を示す図である。図17図19に示されるように、活動起因固定成分23は、業種によっても大きく変わり得る。さらに、活動起因固定成分23は、同じ業種であっても業務形態によって大きく変わり得る。このことは、業務形態の変化により省エネルギー化できることを意味する。そこで、通知部16は、需要家と同業種である他の需要家の活動起因固定成分23との比較結果を通知してもよい。同じ業種の他の需要家の活動起因固定成分23との比較は、省エネルギー化のための対策の検討の助けとなる。
【0098】
通常よりも省エネルギー行動が効率的に実施されると、残渣成分26が負の大きな値となる。そのため、通知部16は、残渣成分26と負の閾値との比較結果に応じて、需要家による省エネルギー行動を評価し、省エネルギーに関する情報として評価結果を需要家に通知してもよい。これにより、需要家は、実施している省エネルギー行動の効果を認識できる。
【0099】
逆に、通常よりも無駄な電力量が増えると、残渣成分26が正の大きな値となる。そのため、通知部16は、残渣成分26と正の閾値との比較結果に応じて消費電力量の異常を検知し、省エネルギーに関する情報として評価結果を需要家に通知してもよい。これにより、需要家は、省エネルギー行動の実施を検討できる。以下に、残渣成分26に基づく、異常の検知方法および異常の原因の特定方法について説明する。
【0100】
(J-1.異常の検知方法)
上記のように、通常とは異なる電気機器220の使用により、残渣成分26が変動する。そのため、通知部16は、1または連続する複数の時間帯からなる検知対象期間における残渣成分26の分析結果に基づいて、異常を検知する。検知対象期間は、たとえば30分、3時間、1日である。時間帯の長さが30分であり、検知対象期間の長さが30分である場合、検知対象期間は1つの時間帯を含む。時間帯の長さが3時間であり、検知対象期間の長さが3時間である場合、検知対象期間は6個の時間帯を含む。時間帯の長さが30分であり、検知対象期間が1日である場合、検知対象期間は48個の時間帯を含む。通知部16は、互いに時間長さが異なる複数の検知対象期間における残渣成分26の分析結果に基づいて異常を検知してもよいし、1つの検知対象期間における残渣成分26の分析結果に基づいて異常を検知してもよい。
【0101】
通知部16は、以下に記す第1パターンおよび第2パターンの少なくとも一方に従って、検知対象期間における残渣成分26の分析結果に基づいて異常を検知する。
【0102】
(第1パターン)
平常通りに電気機器220が使用されている場合、検知対象期間における残渣成分26は、当該検知対象期間の直前の一定期間の残渣成分26に影響されやすい。そのため、通知部16は、分析対象期間から選択された学習期間に含まれる単位時間ごとの残渣成分26のデータを利用して、自己回帰モデルを作成する。単位時間は、検知対象期間と同じ時間長さを有する。学習期間は、たとえば4週間である。ただし、学習期間の長さは、4週間に限定されず、適宜設定され得る。自己回帰モデルは、公知の手法を用いて作成される。
【0103】
なお、検知対象期間の長さが短いほど、検知対象期間における残渣成分26は、当該検知対象期間の直前の一定期間の残渣成分26に影響されやすい。そのため、通知部16は、検知対象期間の長さが短い場合(たとえば30分)に、第1パターンを用いて、異常を検知することが好ましい。
【0104】
図20は、自己回帰モデルを説明する図である。図20に例示される自己回帰モデルは、検知対象期間である単位時間tよりも過去の単位時間t-1,t-2,・・・,t-rにおける残渣成分26の分析結果のデータを用いて、単位時間tにおける残渣成分26の予測値を推定するモデルである。なお、単位時間kは、単位時間k-1の次の単位時間である。
【0105】
自己回帰モデルは、典型的に、以下の式(1)で表される。
t=a1t-1+a2t-2+・・・+art-r 式(1)
式(1)において、xk(kは、t-1~t-rまでの整数)は、単位時間kに含まれる1または複数の時間帯について算出された残渣成分26の分析結果の代表値を表す。代表値は、たとえば積算値、平均値、中央値などである。単位時間の中に1つの時間帯のみが含まれる場合、代表値は、当該時間帯について算出された残渣成分26の分析結果の値であってもよい。なお、単位時間の長さが時間帯の長さと同じである場合、xkは、単位時間kにおける残渣成分26の分析結果を表す。xtは、単位時間tにおける残渣成分26の予測値を表す。係数a1~arは、学習期間のデータと、ユールウォーカー(Yule-Walker)法、最小2乗法、最尤法、Burg法などの公知の方法とを用いて決定される。
【0106】
rは、2以上の整数である。単位時間の長さが30分である場合、rは、たとえば48、12、6、2のいずれかに設定される。r=48である場合、過去1日分の単位時間t-1~t-48における残渣成分26の分析結果から、単位時間tの残渣成分26の予測値が推定される。なお、rは、自己回帰モデルの評価結果に応じて決定されてもよい。自己回帰モデルの評価には、たとえばAIC(Akaike's Information Criterion),BIC(Bayesian Information Criterion)などの公知の情報量基準が用いられる。
【0107】
上述したように、残渣成分26の分析結果は、負となり得る。そのため、単位時間tにおける残渣成分26の予測値も負となり得る。たとえば、単位時間tよりも前の単位時間t-1において残渣成分26の分析結果が負である場合、当該分析結果の影響を受けて、単位時間tにおける残渣成分26の予測値が負となり得る。
【0108】
ある日の単位時間tにおいて、当該日の属するグループにおける、当該単位時間tの外気温での平均消費電力量から大きく異なる電力量が消費されると、単位時間tにおける残渣成分26の予測値と単位時間tにおける残渣成分26の分析結果の代表値との差が大きくなる。そのため、通知部16は、検知対象期間である単位時間tにおける残渣成分26の分析結果の代表値と単位時間tにおける残渣成分26の予測値との差分を閾値Thと比較し、比較結果に応じて、検知対象期間における消費電力量の異常を検知する。閾値Thは、たとえば、単位時間ごとの残渣成分26の分析結果の代表値と、自己回帰モデルを用いて予測される当該単位時間における残渣成分26の予測値との差分の分布(たとえば確率分布)に応じて定められる。
【0109】
図21は、単位時間ごとの残渣成分26の分析結果の代表値と予測値との差分の確率分布の一例を示す図である。通知部16は、たとえば、単位時間ごとの残渣成分26の分析結果の代表値と予測値との差分から得られる標本分布を用いて、単位時間における残渣成分26の分析結果の代表値と予測値との差分の確率分布を作成すればよい。標本分布は、分析対象期間中の全てのデータから作成されてもよいし、分析対象期間から無作為に選択された複数の単位時間のデータから作成されてもよい。
【0110】
閾値Thとして、上側確率がPu%となる残渣成分26の分析結果の代表値と予測値との差分の値(以下、「閾値Th1」と称する。)と、下側確率がPd%となる残渣成分26の分析結果の代表値と予測値との差分の値(以下、「閾値Th2」と称する。)とが設定される。Pu%およびPd%は、たとえば10%である。ただし、Pu%およびPd%の値は特に限定されない。通知部16は、単位時間tにおける残渣成分26の分析結果の代表値と予測値との差分が閾値Th2以上閾値Th1以下の場合に、単位時間tの消費電力量が正常であると判断する。通知部16は、単位時間tにおける残渣成分26の分析結果の代表値と予測値との差分が閾値Th2未満または閾値Th1より大きい場合に、単位時間tの消費電力量が異常であると判断する。
【0111】
残渣成分26の分析結果の代表値が予測値に比べて小さい場合、省エネルギー化が実施されていることが予想される。そのため、閾値Thとして、上側確率がPu%となる残渣成分26の分析結果の代表値と予測値との差分の値(閾値Th1)のみが設定されてもよい。この場合、通知部16は、単位時間tにおける残渣成分26の分析結果の代表値が予測値より小さい場合、または、単位時間tにおける残渣成分26の分析結果の代表値と予測値との差分が閾値Th1以下の場合に、単位時間tの消費電力量が正常であると判断する。通知部16は、単位時間tにおける残渣成分26の分析結果の代表値が予測値より大きく、かつ、当該代表値と当該予測値との差分が閾値Th1より大きい場合に、単位時間tの消費電力量が異常であると判断する。
【0112】
このように、通知部16は、検知対象期間である単位時間tにおける残渣成分26の分析結果の代表値と予測値との差分と閾値Thとの比較結果に応じて、検知対象期間の消費電力量の異常を検知する。
【0113】
図22は、消費電力量の成分分析結果と残渣成分26の予測値とを示す図である。図22には、8月12日における48個の時間帯の各々の消費電力量の成分分析結果が示される。すなわち、図22には、単位時間に含まれる時間帯の個数が1つである場合(単位時間の長さが30分である場合)の例が示される。ベース固定成分27、ベース季節変動成分28、活動起因固定成分23、活動起因季節変動成分25および残渣成分26は、積み上げ棒グラフによって示される。ただし、残渣成分26の分析結果は、負の値も取り得る。そのため、残渣成分26の分析結果は、他の成分の右横にずらして描かれている。活動起因季節変動成分25の上端の位置から下方に残渣成分26が伸びている場合、残渣成分26の分析結果が負の値であることを示す。活動起因季節変動成分25の上端の位置から上方に残渣成分26の分析結果が伸びている場合、残渣成分26の分析結果が正の値であることを示す。
【0114】
図22の折れ線グラフは、消費電力量のうち残渣成分26を除く値と、残渣成分26の予測値との合計値の変化を示す。折れ線グラフに重ねて描かれているエラーバーの長さは閾値Th1である。そのため、エラーバーは、残渣成分26の正常範囲を示す。
【0115】
図22に示す例では、枠線60によって囲まれた3個の時間帯において、残渣成分26の分析結果と予測値との差分がエラーバーの上限(すなわち、閾値Th1)を超えている。そのため、通知部16は、当該3個の時間帯について消費電力量の異常を検知する。
【0116】
(第2パターン)
第2パターンは、第1パターンと異なり、自己回帰モデルを用いない方法である。検知対象期間の時間長さが長いほど、検知対象期間の残渣成分26は、検知対象期間の直前の一定期間の残渣成分26に影響されにくい。そのため、通知部16は、検知対象期間の時間長さが長い場合(たとえば1日)に、第2パターンを用いて、異常を検知することが好ましい。
【0117】
検知対象期間において、検知対象期間を含む日の属するグループにおける単位時間の平均的な消費電力量から大きく異なる電力量が消費されると、検知対象期間における残渣成分26の分析結果の代表値は、他の単位時間における残渣成分26の分析結果の代表値から大きくずれる。そのため、通知部16は、検知対象期間である単位時間tにおける残渣成分26の分析結果の代表値を閾値Thと比較し、比較結果に応じて、検知対象期間における消費電力量の異常を検知する。閾値Thは、たとえば、分析対象期間に含まれる、単位時間ごとの残渣成分26の分析結果の代表値の分布(たとえば確率分布)に応じて定められる。
【0118】
図23は、単位時間における残渣成分26の代表値の確率分布の一例を示す図である。通知部16は、たとえば、分析対象期間中の単位時間における残渣成分26の分析結果の代表値から得られる標本分布を用いて、単位時間における残渣成分26の代表値の確率分布を作成すればよい。具体的には、ある日の単位時間における残渣成分26の代表値の確率分布は、当該日と同じグループに属する日の単位時間のデータの標本分布から作成される。
【0119】
閾値Thとして、上側確率がPu%となる残渣成分26の値(以下、「閾値Th1’」と称する。)と、下側確率がPd%となる残渣成分26の値(以下、「閾値Th2’」と称する。)とが設定される。Pu%およびPd%は、たとえば10%である。ただし、Pu%およびPd%の値は特に限定されない。通知部16は、単位時間tにおける残渣成分26の分析結果の代表値が閾値Th2’以上閾値Th1’以下の場合に、単位時間tの消費電力量が正常であると判断する。通知部16は、単位時間tにおける残渣成分26の分析結果の代表値が閾値Th2’未満または閾値Th1’より大きい場合に、単位時間tの消費電力量が異常であると判断する。
【0120】
第1パターンと同様に、閾値Thとして、上側確率がPu%となる残渣成分26の値(閾値Th1’)のみが設定されてもよい。この場合、通知部16は、単位時間tにおける残渣成分26の分析結果の代表値が閾値Th1’以下の場合に、単位時間tの消費電力量が正常であると判断する。通知部16は、単位時間tにおける残渣成分26の分析結果の代表値が閾値Th1’より大きい場合に、単位時間tの消費電力量が異常であると判断する。
【0121】
このように、通知部16は、検知対象期間における残渣成分26の分析結果の代表値と閾値Thとの比較結果に応じて、検知対象期間における消費電力量の異常を検知する。
【0122】
図24は、単位時間(1日)ごとの残渣成分26の分析結果の代表値と閾値Th1’とを示す図である。図24には、9月13日から9月21日までの単位時間ごとの残渣成分26の分析結果の代表値が示される。図24に示す例では、代表値は、単位時間ごとの残渣成分26の分析結果の積算値である。図24に描かれているエラーバーは、確率分布のうち下側確率が90%となる残渣成分26の範囲を示している。そのため、エラーバーは、残渣成分26の正常範囲を示す。
【0123】
図24に示す例では、枠線60によって囲まれた箇所において、残渣成分26の分析結果の代表値がエラーバーの上限(すなわち、閾値Th1’)を超えている。そのため、通知部16は、当該箇所に対応する単位時間(2016年9月19日)の消費電力量の異常を検知する。
【0124】
(J-2.異常の原因特定)
通知部16は、上記の(J-1.異常の検知方法)に従って異常を検知すると、異常の原因特定を行ない、特定された原因を通知する。
【0125】
図25は、残渣成分26の増大の原因となる現象と当該現象の有無の判定方法とを示す図である。図25に示されるように、残渣成分26の増大の原因となる現象として、以下の(A)から(D)が想定される。
(A)電気機器の電源の切り忘れ、および、常時稼働される電気機器の新設。
(B)休日に人の活動に応じて電気機器を稼働。
(C)人の活動時に稼働される電気機器の稼働時間の変更。
(D)人の活動時に稼働される季節依存の電気機器の消費電力量が過大。
【0126】
人の活動時に稼働される電気機器の電源を切り忘れた場合、残渣成分26は、一日を通して大きくなる。あるいは、常時稼働される電気機器を新設した直後にも、残渣成分26は、一日を通して大きくなる。そこで、通知部16は、異常が検知された時間帯を含む日(0時から24時)の全時間帯における残渣成分26の最小値と閾値Thaとを比較する。閾値Thaは、たとえばベース固定成分27の分析値のXa%である。Xaの値は、特に限定されず、予め定められる。通知部16は、残渣成分26の最小値が閾値Thaよりも大きいことに応じて、電気機器の電源の切り忘れ、または、常時稼働される電気機器の新設を原因とする異常の発生を検知し、当該原因を通知する。
【0127】
休日に人の活動に応じて電気機器を稼働した場合、残渣成分26は、人の活動時間帯において大きくなる。そのため、一日分の残渣成分26の積算値または平均値が大きくなる。そこで、通知部16は、異常が検知された時間帯を含む日(0時から24時)の全時間帯における残渣成分26の分析結果の積算値または平均値と閾値Thbとを比較する。閾値Thbは、たとえば当該日の全時間帯の残渣成分26の予測値の合計値に、当該全時間帯の活動起因固定成分23の積算値または平均値のXb%を加えた値である。Xbの値は、特に限定されず、予め定められる。通知部16は、残渣成分26の積算値または平均値が閾値Thbよりも大きいことに応じて、休日に人の活動に応じて電気機器を稼働したことを原因とする異常の発生を検知し、当該原因を通知する。
【0128】
図26は、2016年11月10日から2016年12月31日までの各日の残渣成分26の分析結果の積算値を示す図である。図26には、各日の全時間帯の残渣成分26の予測値の合計値が折れ線グラフによって示される。折れ線グラフに重ねて描かれているエラーバーは、全時間帯における活動起因固定成分23の積算値のXb%(=80%)の長さを有する。
【0129】
図26の枠線61に示されるように、12月23日における残渣成分26の積算値がエラーバーで示される範囲を超えている。これは、祝祭日である12月23日において、人の活動に応じて電気機器が稼働されたためである。
【0130】
図27は、2016年12月23日の消費電力量の成分分析結果を示す図である。上述したように、活動起因固定成分23は、7つのグループの各々に属する日の対象時間帯における第2成分22と外気温影響分との差分の平均値に基づいて決定される。12月23日が祝祭日であるため、12月23日の各時間帯の活動起因固定成分23は、グループ「日曜日および祝祭日」に属する日の当該時間帯における第2成分22と外気温影響分との差分の平均値に基づいて決定される。そのため、図27に示されるように、各時間帯の活動起因固定成分23は小さい。しかしながら、祝祭日であるにもかかわらず人の活動に応じて電気機器が稼働されたため、当該電気機器によって消費された電力量が残渣成分26として現われている。その結果、残渣成分26の分析結果が大きくなっている。
【0131】
図26および図27に示されるように、残渣成分26の分析結果の積算値が閾値Thbよりも大きいため、通知部16は、祝祭日である12月23日に人の活動に応じて電気機器を稼働したことを原因とする異常の発生を検知し、当該原因を通知する。
【0132】
図25に戻って、人の活動時に稼働される電気機器の稼働時間を変更した場合、当該電気機器を非稼働から稼働に変更された時間帯の残渣成分26は大きくなる。そこで、通知部16は、異常が検知された時間帯の残渣成分26の分析結果と閾値Thcとを比較する。閾値Thcは、たとえば、異常が検知された時間帯の残渣成分26の予測値と当該時間帯の活動起因固定成分23のXc%との合計値である。Xcの値は、特に限定されず、予め定められる。通知部16は、残渣成分26の分析値が閾値Thcよりも大きいことに応じて、人の活動時に稼働される電気機器の稼働時間の変更を原因とする異常の発生を検知し、当該原因を通知する。
【0133】
図28は、消費電力量の成分分析結果と閾値Thcとを示す図である。図28には、8月12日における48個の時間帯の各々の消費電力量の成分分析結果が示される。
【0134】
図28の折れ線グラフは、消費電力量のうち残渣成分26を除く値と、残渣成分26の予測値との合計値の変化を示す。折れ線グラフに重ねて描かれているエラーバーは、閾値Thcに対応する長さ(図28では活動起因固定成分23の30%)を有し、折れ線グラフから上方に伸びている。
【0135】
図28に示す例では、枠線62によって囲まれた時間帯において、残渣成分26の分析値がエラーバーの上限(すなわち、閾値Thc)より大きくなっている。これは、人の活動時に稼働される電気機器を通常よりも早く起動させたためである。通知部16は、残渣成分26の分析結果が閾値Thcより大きいことに応じて、人の活動時に稼働される電気機器の稼働時間の変更を原因とする異常の発生を検知し、当該原因を通知する。
【0136】
図25に戻って、人の活動時に稼働される季節依存の電気機器の消費電力量が過大である場合、外気温の変化に対する残渣成分26の分析結果の変化の度合い(以下、「気温感応度」と称する。)が大きくなる。そこで、通知部16は、一定期間における特定時間帯の残渣成分26の気温感応度と閾値Thdとを比較する。一定期間は、たとえば1ケ月であり、予め定められる。特定時間帯は、予め定められた1つ以上の時間帯を含む。特定時間帯として、人の活動する時間帯が設定される。たとえば、特定時間帯は、12時から15時までの時間帯である。
【0137】
通知部16は、たとえば、一定期間における特定時間帯の残渣成分26の分析結果と外気温との関係から、外気温がΔT℃上昇したときの残渣成分26の増加分を、残渣成分26の気温感応度として算出する。ΔT℃は、たとえば5℃である。
【0138】
閾値Thdは、たとえば、一定期間における特定時間帯の活動起因季節変動成分25の気温感応度のXd%である。通知部16は、一定期間における特定時間帯の活動起因季節変動成分25と外気温との関係から、外気温がΔT℃上昇したときの活動起因季節変動成分25の増加分を、活動起因季節変動成分25の気温感応度として算出する。ΔT℃は、たとえば5℃である。Xdの値は、特に限定されず、予め定められる。
【0139】
通知部16は、残渣成分26の気温感応度が閾値Thdよりも大きいことに応じて、人の活動時に稼働される季節依存の電気機器の消費電力量の過大を原因とする異常の発生を検知し、当該原因を通知する。
【0140】
図29は、残渣成分26の気温感応度を示す図である。図29には、夏の一定期間における特定時間帯(12時から15時までの時間帯)について、気温帯ごとの残渣成分26の分析結果の平均値が示される。気温帯の幅は5℃である。図29には、残渣成分26の気温感応度が実線で示され、閾値Thdが破線で示される。図29に示すグラフにおいて、横軸は、気温帯を示し、縦軸は、残渣成分26の平均値を示す。そのため、残渣成分26の気温感応度は、グラフの傾きに対応する。
【0141】
図29に示す例では、30~35℃の気温帯から35~40℃の気温帯に変化したときの残渣成分26の平均値の増分が閾値Thdより大きくなっている。これは、人の活動時に稼働される季節依存の電気機器(たとえば空調機)を過剰に運転させたためである。そのため、通知部16は、残渣成分26の気温感応度が閾値Thdより大きいことに応じて、人の活動時に稼働される季節依存の電気機器の消費電力量の過大を原因とする異常の発生を検知し、当該原因を通知する。
【0142】
<K.変形例>
上記の説明では、分析部15は、手順(B1)~(B4)に従って対象時間帯における第2成分22のうちの外気温影響分を計算し、対象時間帯の第2成分22と外気温影響分との差分に基づいて、活動起因固定成分23を計算する。しかしながら、分析部15は、手順B2によって得られる回帰式52において説明変数x’(外気温)を変化させたときの目的変数y’(第2成分22)の最小値を、対象時間帯の活動起因固定成分23として決定してもよい。
【0143】
上記の説明では、(J-1.異常の検知方法)に従った処理の後に、(J-2.異常の原因特定)に従った処理を行なうものとした。しかしながら、(J-1.異常の検知方法)が省略されてもよい。この場合、通知部16は、残渣成分26の最小値が閾値Thaよりも大きいことに応じて、常時稼働される電気機器の切り忘れ、または、常時稼働される電気機器の新設を原因とする異常の発生を検知し、当該異常の発生を通知すればよい。あるいは、通知部16は、残渣成分26の積算値または平均値が閾値Thbよりも大きいことに応じて、休日に人の活動に応じて電気機器を稼働したことを原因とする異常の発生を検知し、当該異常の発生を通知すればよい。あるいは、通知部16は、残渣成分26の分析値が閾値Thcよりも大きいことに応じて、人の活動時に稼働される電気機器の稼働時間の変更を原因とする異常の発生を検知し、当該異常の発生を通知すればよい。あるいは、通知部16は、残渣成分26の気温感応度が閾値Thdより大きいことに応じて、人の活動時に稼働される季節依存の電気機器の消費電力量の過大を原因とする異常の発生を検知し、当該異常の発生を通知すればよい。
【0144】
図1に示す例では、スマートメータ210、サーバ装置300および分析装置100がネットワークを介して互いにデータの遣り取りを行なうものとした。しかしながら、スマートメータ210、サーバ装置300および分析装置100間のデータの遣り取りの方法は、図1に示す例に限定されない。例えば、サーバ装置300は、ネットワークを介さずにスマートメータ210から電力量データを直接取得してもよい。また、分析装置100は、ネットワークを介さずにサーバ装置300に接続され、サーバ装置300から建物200の電力量データを直接取得してもよい。
【0145】
上記の説明において、「以上」は「より大きい」に置き換えられてもよい。「以下」は「未満」に置き換えられてもよい。同様に、「より大きい」は「以上」に置き換えられてもよい。「未満」は「以下」に置き換えられもよい。
【0146】
<L.まとめ>
以上のように、分析装置100は、第1取得部11と、第2取得部13と、分析部15とを備える。第1取得部11は、分析対象期間における、時間帯毎に計測された需要家の消費電力量を示す電力量データ12を取得する。第2取得部13は、分析対象期間における、需要家の地域の時間帯毎の外気温を示す外気温データ14を取得する。分析部15は、分析対象期間に含まれる各日の各時間帯における消費電力量を分析する。分析部15は、電力量データ12と外気温データ14とを用いて、外気温と当該外気温における最小消費電力量との相関を示す第1相関情報を生成する。分析部15は、第1相関情報と外気温データ14とを用いて、分析対象期間に含まれる各日の対象時間帯における消費電力量を、人の活動に依存しないベース成分21と、ベース成分21以外の第2成分22とに分解する。分析部15は、外気温データ14を用いて、分析対象期間に含まれる複数の日について、対象時間帯の外気温と第2成分22との相関を示す第2相関情報を生成する。分析部15は、第2相関情報と外気温データ14とを用いて、複数の日の各々の対象時間帯における第2成分22を、外気温に応じて変動しない活動起因固定成分23と、活動起因固定成分23以外の第4成分24とに分解する。
【0147】
上記の構成によれば、非特許文献1に記載の技術のように、空調設備を稼働しない日が存在することを前提とすることなく、消費電力量をベース成分21、活動起因固定成分23および第4成分24に分解できる。そのため、様々な需要家の消費電力量を分析できる。
【0148】
第1相関情報は、外気温と当該外気温における最小消費電力量との相関を示す。最小消費電力量は、人の活動に関係なく、常時稼働される電気機器によって消費される電力量と予想される。そのため、第1相関情報を用いることにより、ベース成分21として、人の活動に起因しない、常時稼働される電気機器によって消費される電力量を容易に計算できる。
【0149】
第2相関情報は、対象時間帯の外気温と第2成分22との相関を示す。第2成分22は、ベース成分21以外の成分であるため、人の活動に起因して消費される電力量に対応する。外気温データ14を用いることにより、第2成分22を、外気温に応じて変動しない活動起因固定成分23と、活動起因固定成分23以外の第4成分24とに容易に分解できる。活動起因固定成分23は、人の活動時に稼働される非季節依存の電気機器によって消費される電力量に対応する。第4成分24は、残りの成分であり、主に、人の活動時に稼働される季節依存の電気機器によって消費される電力量を含む。
【0150】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0151】
10 記憶部、11 第1取得部、12 電力量データ、13 第2取得部、14 外気温データ、15 分析部、16 通知部、20 消費電力量、21 ベース成分、22 第2成分、23 活動起因固定成分、24 第4成分、25 活動起因季節変動成分、26 残渣成分、27 ベース固定成分、28 ベース季節変動成分、30,32a,32b,34 回帰曲線、31,33a,33b,35 破線、40,41 単位データセット、50,52,54 回帰式、60~62 枠線、100 分析装置、101 プロセッサ、102 ROM、103 RAM、105 通信IF106 操作キー、107 電源回路、108 ディスプレイ、110 プログラム、200 建物、210 スマートメータ、220 電気機器、300 サーバ装置、SYS システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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