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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】電池管理装置、電力システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20241107BHJP
   G01R 31/3835 20190101ALI20241107BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241107BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/3835
H01M10/48 P
H02J7/00 Y
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021075636
(22)【出願日】2021-04-28
(65)【公開番号】P2022169917
(43)【公開日】2022-11-10
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(73)【特許権者】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミフタフラティフ エムハ バユ
(72)【発明者】
【氏名】河野 亨
(72)【発明者】
【氏名】藤本 博也
(72)【発明者】
【氏名】植田 穣
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勝俊
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-169943(JP,A)
【文献】特開2018-080982(JP,A)
【文献】特開2014-002009(JP,A)
【文献】特開2015-012653(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0321323(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の状態を管理する電池管理装置であって、
前記電池が出力する電圧の検出値を取得する検知部、
前記電池の状態を推定する演算部、
を備え、
前記演算部は、前記電池が充電または放電を終了した終了時点またはそれよりも後の起算時点から第1時間が経過した第1時点との間の第1期間を特定し、
前記演算部は、前記終了時点よりも後の時刻から開始して前記第1期間の終了時刻よりも後の第2時点において終了する第2期間を特定し、
前記演算部は、前記第2期間の開始から前記第2期間の終了までにおける前記電池の出力電圧の差分を第2期間差分として取得し、
前記演算部は、前記第2期間差分と前記電池の状態との間の関係を取得し、
前記演算部は、前記第2期間差分を用いて前記関係を参照することにより、前記電池の状態を推定し、
前記演算部は、前記第1期間の開始から前記第1期間の終了までにおける前記出力電圧の差分を第1期間差分として取得し、
前記演算部は、前記第2期間差分に対する前記第1期間差分の比率が第1閾値以上である場合は、前記電池が正常ではないと推定する
ことを特徴とする電池管理装置。
【請求項2】
前記電池管理装置はさらに、前記第2期間差分と前記第1閾値との間の関係を前記第1期間の時間長ごとに記述したデータを記憶する記憶部を備え、
前記演算部は、前記第1期間の時間長の実測値を用いて前記データを参照することにより、前記第1期間の時間長の実測値に対応する前記第1閾値を取得し、
前記演算部は、前記取得した第1閾値と前記比率を比較する
ことを特徴とする請求項記載の電池管理装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記第2期間差分を複数回取得し、
前記演算部は、各前記第2期間差分の第1標準偏差を計算し、
前記演算部は、前記第1標準偏差が第2閾値以上である場合は、前記電池が正常ではないと推定する
ことを特徴とする請求項1記載の電池管理装置。
【請求項4】
前記演算部は、劣化していない前記電池について前記第2期間差分を複数回取得するとともにその第2標準偏差を計算し、
前記演算部は、前記第2標準偏差の3倍を前記第2閾値として用いる
ことを特徴とする請求項記載の電池管理装置。
【請求項5】
前記演算部は、前記終了時点よりも後の時刻から開始して前記第2期間の終了時刻よりも後の第3時点において終了する第3期間を特定し、
前記演算部は、前記第3期間の開始から前記第3期間の終了までにおける前記電池の出力電圧の差分を第3期間差分として複数回取得し、
前記演算部は、各前記第3期間差分の第1標準偏差を計算し、
前記演算部は、前記第1標準偏差が第2閾値以上である場合は、前記電池が正常ではないと推定する
ことを特徴とする請求項記載の電池管理装置。
【請求項6】
前記演算部は、前記比率と前記第1閾値とを比較することによって前記電池が正常であるか否かを推定した結果と、前記第1標準偏差と前記第2閾値とを比較することによって前記電池が正常であるか否かを推定した結果との組み合わせにしたがって、前記電池の正常度を推定する
ことを特徴とする請求項記載の電池管理装置。
【請求項7】
前記演算部は、前記関係を記述したデータを前記電池管理装置以外のデバイスから取得することにより、前記関係を取得する
ことを特徴とする請求項1記載の電池管理装置。
【請求項8】
前記演算部は、劣化していない前記電池について前記第2期間差分を実測することにより、前記関係を取得する
ことを特徴とする請求項1記載の電池管理装置。
【請求項9】
前記電池管理装置はさらに、前記演算部による処理結果を提示するユーザインターフェースを備え、
前記ユーザインターフェースは、
前記第2期間における前記出力電圧の経時変化、
前記演算部が前記電池の状態を推定した結果、
のうち少なくともいずれかを提示する
ことを特徴とする請求項1記載の電池管理装置。
【請求項10】
請求項1記載の電池管理装置、
前記電池、
を有することを特徴とする電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の状態を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電池の状態を推定する手法として、インピーダンス測定などが用いられている。下記特許文献1は、『インピーダンスを用いて電池の状態を正確に推定する。』ことを課題として、『電池状態推定装置(100)は、相異なる複数の温度で電池の複素インピーダンスを取得する取得手段(110)と、複素インピーダンスの実数成分及び虚数成分を軸とする複素平面上で、取得された複数の複素インピーダンスの第1所定周波数における値を互いに結んだ直線の傾きを、複素インピーダンスの傾きとして算出する算出手段(120)と、複素インピーダンスの傾きと、電池に係る電池状態との関係を予め記憶する記憶手段(130)と、算出された複素インピーダンスの傾きと、記憶された関係とに基づいて、電池状態を推定する推定手段(140)とを備える。』という技術を記載している(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-091716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インピーダンス測定を実施するためには、対象物に対して交流波を印加しなければならない。したがってそのための設備が必要となるので、蓄電池を単に充放電する過程においてインピーダンス測定を実施するのは困難である。蓄電池の充放電は直流プロセスだからである。蓄電池の充放電過程においてその蓄電池の不具合有無を推定することができれば、インピーダンス測定のための設備を準備する必要がなくなるので、有用である。
【0005】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、電池の状態を推定するための専用設備を用いることなく、電池の充放電動作にともなって電池状態を推定することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電池管理装置は、電池が放電または充電を終了した後の休止期間における第1期間とその後の第2期間を特定し、前記第2期間における出力電圧の差分を用いて、前記電池の状態を推定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電池管理装置によれば、電池の状態を推定するための専用設備を用いることなく、電池の充放電動作にともなって電池状態を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】電池が放電動作を終了したあとの休止期間における、電池の出力電圧の経時変化を示すグラフである。
図2】ΔVbとΔVa_limとの間の関係を記述した関係データの例である。
図3】関係データの変形例を示す図である。
図4】電池に不具合があるか否かを推定する手順を説明するフローチャートである。
図5】放電動作後の休止期間における出力電圧の経時変化のばらつきを正常な電池と不具合のある電池との間で比較するグラフである。
図6】σ_limを用いて不具合の有無を推定する様子を示す模式図である。
図7】実施形態3において電池の不具合の有無を推定する手順を説明するフローチャートである。
図8】実施形態4に係る電池管理装置の用途を例示する模式図である。
図9】実施形態4に係る電池管理装置100の構成例を示す図である。
図10】電池管理装置100の別構成例を示す図である。
図11】検知部130が電池200と接続されている場合における構成例を示す。
図12】電池管理装置100が提示するユーザインターフェースの例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施の形態1>
図1は、電池が放電動作を終了したあとの休止期間における、電池の出力電圧の経時変化を示すグラフである。放電動作が終了すると、出力電圧は急峻に増加し、その後に緩やかに増加する。出力電圧が急峻に増加する期間を第1期間と呼び、その後の出力電圧が緩やかに増加する期間を第2期間と呼ぶことにする。第1期間の時間長はΔtであり、第1期間の開始時点から終了時点までの出力電圧の差分はΔVaである。第2期間の開始時点から終了時点までの出力電圧の差分はΔVbである。
【0010】
本発明者が得た知見によれば、ΔVaが閾値ΔVa_lim以上になると、電池に不具合が生じている(正常状態ではない)可能性が相応に高いことが分かった。さらに、ΔVa_limはΔVbの1次関数(典型的には比例関係)であることが分かった。本発明の実施形態1においては、このことを利用して、ΔVbに対するΔVaの比率に基づき、電池に不具合が発生しているか否か(あるいは不具合が発生しそうになっているか否か)を予知する方法を説明する。
【0011】
図2は、ΔVbとΔVa_limとの間の関係を記述した関係データの例である。ΔVbとΔVa_limは、典型的には比例関係にある。すなわち、ΔVbが大きいほど、ΔVaの正常範囲も大きくなる。ΔVaがこの正常範囲以上である場合(すなわちΔVa≧ΔVa_lim)は、電池に不具合が発生していると推定される。図2に即して説明すると、ΔVaとΔVbの実測値をプロットしたとき、ΔVaが図2の実線よりも大きければΔVaが異常であることになる。
【0012】
ΔVbとΔVa_limとの間の関係は、Δtの長さによっても異なる。そこで図2においては、Δtの値ごとに両者の関係を記述した例を示した。さらに電池セルの種別ごとに同様の関係データを設けてもよい。これらの値の関係は、例えばあらかじめ実験によって得ることができる。
【0013】
図2に示すように、ΔtとΔVbそれぞれの値に応じてΔVa_limを定義することができるので、これらの値をどのタイミングで実測するかについては、ある程度自由に定めることができる。ただし電池の不具合がよく表れている期間においてこれらの値を実測すべきであることに変わりはない。例えば休止期間が開始した直後の出力電圧が急増している期間において、ΔVaとΔVbをともに実測するのは望ましくない。同様に休止期間における出力電圧の経時変化が安定した期間においてこれらをともに実測することも望ましくない。したがって、ΔtとΔVbのタイミングはある程度自由ではあるものの、図1に示すような出力電圧の急増とその後のやや緩やかな増加がみられるタイミングでこれらを取得すべきである。これらは電池の特性に依拠するので、電池種別ごとに適切なタイミングを定義すればよい。
【0014】
第1期間と第2期間は、一部が重なり合ってもよい。すなわち、第1期間の終了時刻よりも後に第2期間が終了するのであれば、第2期間として用いることができる。第1期間の開始時点は、休止期間の終了時点よりも後であってもよい。すなわち、休止期間内において第1期間全体と第2期間全体がいずれも包含されていればよい。ただし第2期間の終了時刻は第1期間の終了時刻よりも後である。
【0015】
図3は、関係データの変形例を示す図である。ΔVbとΔVa_limとの間の関係を表す関数は、電池の温度T、電池の放電電流I、電池の放電終了電圧Vのうち少なくともいずれかに応じて変化する場合がある。その場合は、Tの値毎、Iの値毎、Vの値毎にそれぞれ関数パラメータをあらかじめ定義しておき、これらの実測値に対応する関数パラメータを用いて、ΔVa_limを計算すればよい。したがってこの場合におけるΔVbとΔVa_limとの間の関係を表す関数fは、以下のように定義される。
【0016】
ΔVa_lim=f(
ΔVb,
c_Rn_T_1,c_Rn_T_2,・・・,
c_Rn_I_1,c_Rn_I_2,・・・,
c_Rn_V_1,c_Rn_V_2,・・・
【0017】
ΔVa_limはΔVbの関数であるから、関数fは引数としてΔVbを有する。関数fにはさらに、温度Tに応じて変化するパラメータc_Rn_Tが1以上含まれる。電流Iに応じて変化するパラメータc_Rn_I、電圧Vに応じて変化するパラメータc_Rn_Vについても同様に1以上含まれる。
【0018】
図4は、電池に不具合があるか否かを推定する手順を説明するフローチャートである。以下図4の各ステップについて説明する。
【0019】
図4:ステップS401)
充電後の休止期間または放電後の休止期間であるか否かを判定する。現在が休止期間ではない場合は本フローチャートを終了する。休止期間である場合はS402へ進む。例えば放電後の休止期間であることは、電池が出力する電流が負値(I<0)からゼロへ向かって変化している、(b)負値からゼロ近傍の値へ変化して安定している(|I|<閾値)、などによって判定することができる。
【0020】
図4:ステップS401:補足)
図3で説明した、Tの値毎、Iの値毎、Vの値毎にそれぞれ関数パラメータを定義する場合は、これらの値を本ステップ(または後述するステップ)において取得してもよい。これらの値は例えば、電池セルごとに配置されている管理ユニットから取得することができる。
【0021】
図4:ステップS402)
ΔVaとΔVbの実測値を取得する。ΔVbに対するΔVaの比率を計算する。この比率が、ΔVbの実測値に対応するΔVa_lim以上であれば、電池に不具合が発生していると推定することができる。推定結果を出力する。
【0022】
<実施の形態1:まとめ>
本実施形態1において、第2期間の電圧差分ΔVbに対する第1期間の電圧差分ΔVaの比率を計算し、その比率が閾値ΔVa_lim以上であれば、電池に不具合があると推定する。これにより、例えばインピーダンス測定などにおいて用いる設備を準備しなくとも、電池が正常状態であるか否かを推定することができる。
【0023】
本実施形態1において、ΔVa_limとΔVbとの間の関係は、Δtの値ごとに定義することができる。これにより、比較的自由なタイミングでΔVaやΔVbの実測値を得ることができる。
【0024】
<実施の形態2>
図5は、放電動作後の休止期間における出力電圧の経時変化のばらつきを正常な電池と不具合のある電池との間で比較するグラフである。正常な電池は、出力電圧の経時変化が安定した第3期間(図5の時刻tc0~時刻tc1)において、出力電圧の差分ΔVcを何度測定しても概ね同程度の値となる。これに対して不具合が発生している電池は、ΔVcを測定するごとにその値が大きくばらつくことが、本発明者の研究により分かった。そこで本発明の実施形態2においては、ΔVcのばらつきにしたがって、電池に不具合が発生しているか否かを推定する手順を説明する。
【0025】
第3期間は、不具合が生じている電池の出力電圧が、測定ごとに大きくばらつくタイミングにセットすることが望ましい。例えば休止期間が開始してから1秒以内であって、かつ実施形態1で説明した第2期間に続く期間を、第3期間として用いればよい。第2期間の終了時刻と第3期間の開始時刻は必ずしも同じでなくともよく、例えば第2期間と第3期間が一部重なり合ってもよいし、第2期間の終了時刻と第3期間の開始時刻との間にインターバルを設けてもよい。
【0026】
ΔVcを計算する手順を説明する。同じ電池に対して、同じ第3期間における電圧変化ΔVcの実測値を取得する(すなわち同じ時刻tc0とtc1との間の電圧差分を同じ電池について取得する)。各回のΔVcの標準偏差σを計算する。σが閾値σ_lim以上であれば、その電池に不具合が発生していると推定する。
【0027】
σ_limは、劣化していない電池の計測結果を用いて定めることもできる。例えば新品の電池についてΔVcの標準偏差σ_newを求め、σ_lim=3σ_newとすることもできる。あるいは実験結果などの経験値にしたがってσ_limを定めることもできる。σ_limの値は、実施形態1と同様に関係データ上に記述することができる。
【0028】
図6は、σ_limを用いて不具合の有無を推定する様子を示す模式図である。ΔVcのばらつき(標準偏差σ)が、新品の電池における標準偏差σ_newの3倍以内に収まれば、概ねそのばらつきは正常範囲内ということができる。これに対してσが±3σ_newの範囲以上にばらついていれば、その電池には不具合が発生していると推定することができる。
【0029】
<実施の形態2:まとめ>
本実施形態2において、第3期間の電圧ばらつき(標準偏差σ)が閾値σ_lim以上であれば、電池に不具合があると推定する。これにより実施形態1と同様に、例えばインピーダンス測定などにおいて用いる設備を準備しなくとも、電池が正常状態であるか否かを推定することができる。
【0030】
<実施の形態3>
図7は、本発明の実施形態3において電池の不具合の有無を推定する手順を説明するフローチャートである。実施形態1~2で説明した方法をそれぞれ実施するとともに、それらの結果にしたがって電池の正常度をランク付けすることにより、電池の正常度を推定できる。例えば以下のように電池の正常度を推定できる。これらのランク付けは1例でありその他のランク付けも可能である。
【0031】
(a)実施形態1の方法によって電池が正常であると推定され、実施形態2の方法によって電池が正常であると推定された場合は、グレードA(不具合度が最も低い:正常度が最も高い)と推定する。
【0032】
(b)実施形態1の方法によって電池が正常であると推定され、実施形態2の方法によって電池が不具合を有すると推定された場合は、グレードB(不具合度が下から2番目)と推定する。
【0033】
(c)実施形態1の方法によって電池が不具合を有すると推定され、実施形態2の方法によって電池が正常であると推定された場合は、グレードC(不具合度が上から2番目)と推定する。
【0034】
(d)実施形態1の方法によって電池が不具合を有すると推定され、実施形態2の方法によって電池が不具合を有すると推定された場合は、グレードD(不具合度が最も高い:正常度が最も低い)と推定する。
【0035】
<実施の形態4>
本発明の実施形態4では、実施形態1~3で説明した電池の不具合の有無を推定する方法を実装した電池管理装置の構成例について説明する。
【0036】
図8は、本実施形態4に係る電池管理装置の用途を例示する模式図である。電池管理装置は、実施形態1~3で説明した各フローチャートの手順にしたがって、電池の不具合有無を推定する。充放電する必要がある電池(例えば電池セル、電池モジュール、電池パック、など)は、様々な装置へ接続される。例えばテスタ、BMS(電池管理システム)、充電器、などである。電池はこれら装置へ接続されているとき、充電動作/放電動作/休止状態のいずれかとなる。不具合を推定するアルゴリズムをどこで実施するかに応じて、不具合有無は例えば上記装置上で計算することもできるし、クラウドサーバ上などのネットワークを介して接続されたコンピュータ上で計算することもできる。電池が接続された装置上で計算する利点は、電池状態(電池が出力する電圧、電池が出力する電流、電池の温度、など)を高頻度で取得できることである。
【0037】
クラウドシステム上で計算した不具合有無は、ユーザが所持するコンピュータへ送信することもできる。ユーザコンピュータはこのデータを、例えばインベントリ管理などの特定用途へ供することができる。クラウドシステム上で計算した不具合有無は、クラウドプラットフォーム事業者のデータベースへ格納し、別用途のために用いることができる。例えば電気自動車の交換経路の最適化、エネルギー管理、などである。
【0038】
図9は、本実施形態4に係る電池管理装置100の構成例を示す図である。図9において、電池管理装置100は、電池200と接続され、電池200から電力供給を受ける装置であり、図8におけるテスタなどに相当する。電池管理装置100は、通信部110、演算部120、検知部130、記憶部140を備える。
【0039】
検知部130は、電池200が出力する電圧の検出値V、電池200が出力する電流の検出値Iを取得する。さらにオプションとして、電池200の温度の検出値Tを取得してもよい。これらの検出値は、電池200自身が検出して検知部130へ通知してもよいし検知部130が検出してもよい。検知部130の詳細は後述する。
【0040】
演算部120は、検知部130が取得した検出値を用いて、電池200の不具合有無を推定する。推定手順は実施形態1~3で説明したものである。通信部110は、演算部120が推定した不具合有無を、電池管理装置100の外部へ送信する。例えばクラウドシステムが備えるメモリに対してこれらを送信することができる。記憶部140は、実施形態1~3で説明した関係データを格納する。
【0041】
演算部120は、その機能を実装した回路デバイスなどのハードウェアによって構成することもできるし、その機能を実装したソフトウェアをCPU(Central Processing Unit)などの演算装置が実行することによって構成することもできる。
【0042】
図10は、電池管理装置100の別構成例を示す図である。電池管理装置100は、必ずしも電池200と直接的に接続して電力供給を受ける装置でなくともよく、図9に記載された通信部110および検知部130が含まれていない形態を示すものである。図10において電池管理装置100は、電池200の電圧V、電流I、温度Tを通信部110から取得する。具体的には、電池管理装置100が備える検知部150はこれらの検出値を例えばネットワーク経由で受け取り、演算部120はこれらの検出値を用いて不具合有無を計算する。
【0043】
図11は、検知部130が電池200と接続されている場合における構成例を示す。検知部130は、電池管理装置100の一部として構成してもよいし、電池管理装置100とは別のモジュールとして構成してもよい。検知部130は、電池200の充放電動作時における電圧V、温度T、電流Iを取得するために、電圧センサ131、温度センサ132、電流センサ133を備える。
【0044】
電圧センサ131は、電池200の両端電圧(電池200が出力する電圧)を測定する。温度センサ132は、例えば電池200が備える熱電対と接続され、これを介して電池200の温度を測定する。電流センサ133は、電池200の一端と接続され、電池200が出力する電流を測定する。温度センサ132はオプションであり、必ずしも備えていなくともよい。
【0045】
図12は、電池管理装置100が提示するユーザインターフェースの例である。ユーザインターフェースは例えばディスプレイデバイスなどの表示装置上で提示することができる。ユーザインターフェースは、演算部120による計算結果を提示する。図12においては休止期間における出力電圧の経時変化を提示するとともに、電池が不具合を有するか否かについての推定結果を提示した。
【0046】
<本発明の変形例について>
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0047】
以上の実施形態において、関係データははじめから記憶部140上に格納しておいてもよいし、各実施形態におけるフローチャートを実施する際に電池管理装置100以外のデバイスから取得してもよい。劣化していない電池についての出力電圧の経時変化は、電池管理装置100以外のデバイスから取得してもよいし、電池管理装置100が自ら実測してもよい。
【0048】
以上の実施形態においては、蓄電池の放電動作後の休止期間において不具合有無を推定することを説明したが、充電動作後の休止期間において不具合有無と対応する出力電圧の経時変化が現れるのであれば、以上の実施形態と同様に不具合有無を推定することができる。放電動作後の休止期間、充電動作後の休止期間、またはこれら双方、いずれにおいて不具合有無に対応した電圧変化が現れるのかは、電池の特性に応じて異なる。したがって電池の特性に応じて、これらのいずれかにおいて不具合有無を推定すればよい。
【0049】
以上の実施形態において、電池管理装置100と電池200は、複数の電池200が構成する電力グリッドシステムとして構成することもできる。電池管理装置100は、電池の不具合有無を推定するとともに電池200の動作を制御してもよいし、電池200の制御は別装置が実施してもよい。
【符号の説明】
【0050】
100:電池管理装置
110:通信部
120:演算部
130:検知部
140:記憶部
200:電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12