(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】基板処理方法及び基板処理システム
(51)【国際特許分類】
B05D 1/40 20060101AFI20241107BHJP
B05D 1/32 20060101ALI20241107BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20241107BHJP
B05C 11/08 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
B05D1/40 A
B05D1/32 A
B05D7/00 P
B05C11/08
(21)【出願番号】P 2020119224
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】畠山 真一
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-049987(JP,A)
【文献】特開2019-024129(JP,A)
【文献】特開2017-098333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00-7/26
B05C1/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する基板処理方法であって、
前記基板の表面の少なくとも周縁部に塗布液の拡散を阻害する、撥水性
又は疎水性を有する阻害膜を形成する工程と、
前記阻害膜が形成された基板を水平に保持して回転させると共に、ノズルから前記阻害膜を除去する処理液を吐出させながら、当該ノズルを前記基板の周縁部外側から前記周縁部に移動させて前記周縁部の阻害膜の一部を除去する工程と、
その後前記基板を水平に保持して回転させると共に、塗布液ノズルから塗布液を吐出させながら、当該塗布液ノズルを前記基板の周縁部外側から前記周縁部に移動させ、前記阻害膜が除去された領域に塗布膜を形成する工程と、
を有する、基板処理方法。
【請求項2】
前記阻害膜を形成する工程においては、前記基板の表面の全面に阻害膜が形成される、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記阻害膜は疎水性膜である、請求項1または2のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記処理液はアルカリ性処理液である、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記塗布膜を形成する工程において、前記塗布液ノズルから吐出される塗布液が前記基板に着地する位置は、前記一部が除去された阻害膜の境界または当該境界の内側である、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記阻害膜の一部を除去する工程と、塗布膜を形成する工程とは、各々別々の処理容器内で行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記阻害膜の一部を除去する工程と、塗布膜を形成する工程とは、同一の処理容器内で行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
基板を処理する基板処理システムであって、
前記基板の表面の少なくとも周縁部に塗布液の拡散を阻害する、撥水性
又は疎水性を有する阻害膜を形成する装置と、
前記基板の表面の周縁部の阻害膜を除去する装置と、
前記基板の表面の周縁部に塗布液を塗布する装置と、
前記各装置を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記基板の表面の少なくとも周縁部に塗布液の拡散を阻害する阻害膜を形成する工程と、その後前記周縁部の阻害膜の一部を除去する工程と、
その後前記阻害膜が除去された領域に前記塗布液を塗布して塗布膜を形成する工程と、を実施するように構成されている、基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法及び基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体ウェハ(以下、単にウェハということがある)などの基板のエッジ部分に塗布液を塗布して、エッジ部分を保護する処理が行われている。
【0003】
この点に関し、特許文献1には、基板の周縁部に塗布液を塗布する周縁部塗布装置であって、前記基板を水平に保持して回転させる回転保持部と、前記基板の上方に位置して下方に前記塗布液を吐出する塗布液ノズルを有し、前記基板の表面に前記塗布液を供給する塗布液供給部と、前記塗布液ノズルを水平方向に移動させる水平移送部と、前記回転保持部、前記塗布液供給部及び前記水平移送部を制御する塗布制御部と、を備えた周縁部塗布装置が記載されている。
そして前記塗布制御部は、前記回転保持部を制御して前記基板を回転させると共に、前記塗布液供給部を制御して前記塗布液ノズルから前記塗布液を吐出させながら、前記水平移送部を制御して前記塗布液ノズルを前記基板の周縁の外側から前記基板の周縁部上に移動させるスキャンイン制御と、前記回転保持部を制御して前記基板を回転させると共に、前記塗布液供給部を制御して前記塗布液ノズルから前記塗布液を吐出させながら、前記水平移送部を制御して前記塗布液ノズルを前記基板の周縁部上から前記基板の周縁の外側に移動させるスキャンアウト制御とを行い、前記スキャンアウト制御を行うときに、前記塗布液が前記基板の周縁側に移動する速度に比べ低い速度で前記塗布液ノズルを移動させるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示にかかる技術は、基板の周縁部に塗布する塗布液の膜厚の均一性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、基板を処理する基板処理方法であって、前記基板の表面の少なくとも周縁部に塗布液の拡散を阻害する、撥水性又は疎水性を有する阻害膜を形成する工程と、前記阻害膜が形成された基板を水平に保持して回転させると共に、ノズルから前記阻害膜を除去する処理液を吐出させながら、当該ノズルを前記基板の周縁部外側から前記周縁部に移動させて前記周縁部の阻害膜の一部を除去する工程と、その後前記基板を水平に保持して回転させると共に、塗布液ノズルから塗布液を吐出させながら、当該塗布液ノズルを前記基板の周縁部外側から前記周縁部に移動させ、前記阻害膜が除去された領域に塗布膜を形成する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、基板の周縁部に塗布する塗布液の膜厚の均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】従来技術による基板周縁部への塗布液の塗布方法を示す説明図である。
【
図2】実施の形態にかかる基板処理方法を実施するための各種装置を搭載した基板処理システムの構成の概略を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図2の基板処理システムの構成の概略を模式的に示す正面図である。
【
図4】
図2の基板処理システムの構成の概略を模式的に示す背面図である。
【
図5】阻害膜を形成するアドヒージョン装置の構成の概略を模式的に示した説明図である。
【
図6】周縁部除去装置の構成の概略を模式的に示した説明図である。
【
図7】周縁部塗布装置の構成の概略を模式的に示した説明図である。
【
図8】阻害膜の形成、一部除去のプロセスを示す平面視での説明図である。
【
図9】実施の形態にかかる基板処理方法において、基板周縁部への塗布液の塗布方法を示す説明図である。
【
図10】従来技術と実施の形態とにおける基板周縁部に塗布された塗布液の膜厚を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
半導体デバイス等の製造プロセスにでは、ウェハ上にレジスト液を供給しレジスト膜を形成するレジスト塗布処理等を含む一連のフォトリソ工程が行われ、ウェハ上に所定のレジストパターンが形成される。上記一連の処理は、ウェハを処理する各種液処理装置、熱処理装置、ウェハを搬送する搬送装置等を搭載した塗布現像処理システムで行われている。またフォトリソ工程が終わったウェハに対してはその後エッチング処理等が行われ、再びフォトリソ工程の一連の処理が行われることがある。
【0010】
このようなプロセスにおいて、ウェハなどの基板の周縁部に塗布液を塗布して塗布膜を形成し、当該周縁部を保護する処理が実施されることがある。このような周縁部塗布処理は、従来から例えば
図1に示したようなプロセスを通じて行われる。
【0011】
すなわち、まず対象となるウェハWの外側に前記塗布液を塗布するノズルNを配置し(
図1(a))、塗布液(例えばレジスト液)Rを、ノズルNから吐出させながら、回転しているウェハWの中心側(内側)へ移動させる(
図1(b))。そして予め定められた位置(着地点P)にてノズルNの移動を停止させる(
図1(c))。その後予め定められた時間が経過した後、ノズルNをウェハWの外側に退避させる(
図1(d))。
【0012】
しかしながらかかる方法では、
図1(c)に示したように、着地点Pの内側に環状のハンプHが形成されてしまうことがあった。ハンプとは他所と比べて極端に膜厚が厚い塗布膜である。このようなハンプHが形成されると、以降の工程で残渣として残り、歩留まりが低下する。
【0013】
ハンプHが形成される原因として、発明者は以下のように考えている。すなわち、ウェハのエッジ部分の塗布プロセスでは、塗布膜形成中、ノズルNから吐出された塗布液Rは着地点P(吐出された塗布液がウェハWの表面に到達する地点)よりも内側に入り込む。着地点Pよりも内側は塗布液Rが供給されず乾燥が進むが、着地点Pよりも外側は塗布液Rが供給され続けるため乾燥しない。そのためこの乾燥の時間差がハンプH発生の原因の一つになっていると考えられる。なおノズルNから吐出された塗布液が、着地点Pよりも内側に入り込むのは、ノズルNのウェハWに対する吐出角度が、平面視では径方向ではなく、ウェハWの接線方向に対して、例えば30~40度程度の角度を持っているため、内側方向へのベクトルが働くためである。
【0014】
これを改善するため、これまではウェハWの回転数を上げたり、塗布液Rの組成を変更したりして、前記した乾燥時間差の低減を図っていたが、塗布液Rによって形成された塗布膜のロバスト性が不足し、またハンプHの低減にも限界があった。
【0015】
そこで本開示にかかる技術は、基板の周縁部に塗布液を塗布するにあたり、前記したようなハンプの発生を抑えて、基板の周縁部における塗布液の膜厚の均一性を向上させる。
【0016】
以下、本実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
<基板処理システム>
図2は、実施の形態にかかる基板処理方法を実施するための各種措置を搭載した基板処理システム1の内部構成の概略を模式的に示す説明図である。また
図3及び
図4は、各々基板処理システム1の内部構成の概略を模式的に示す、正面図と背面図である。
【0018】
基板処理システム1は、
図2に示すように、複数枚のウェハWを収容したカセットCが搬入出されるカセットステーション10と、ウェハWに所定の処理を施す複数の各種処理装置を備えた処理ステーション11と、を有する。そして、基板処理システム1は、カセットステーション10と、処理ステーション11と、処理ステーション11に隣接する露光装置12との間でウェハWの受け渡しを行うインターフェイスステーション13と、を一体に接続した構成を有している。
【0019】
カセットステーション10には、カセット載置台20が設けられている。カセット載置台20には、基板処理システム1の外部に対してカセットCを搬入出する際に、カセットCを載置するカセット載置板21が複数設けられている。
【0020】
カセットステーション10には、図のX方向に延びる搬送路22上を移動自在なウェハ搬送装置23が設けられている。ウェハ搬送装置23は、上下方向及び鉛直軸周り(θ方向)にも移動自在であり、各カセット載置板21上のカセットCと、後述する処理ステーション11の第3のブロックG3の受け渡し装置との間でウェハWを搬送できる。
【0021】
処理ステーション11には、各種装置を備えた複数例えば4つのブロックG1、G2、G3、G4が設けられている。例えば処理ステーション11の正面側(
図2のX方向負方向側)には、第1のブロックG1が設けられ、処理ステーション11の背面側(
図2のX方向正方向側)には、第2のブロックG2が設けられている。また、処理ステーション11のカセットステーション10側(
図2のY方向負方向側)には、第3のブロックG3が設けられ、処理ステーション11のインターフェイスステーション13側(
図2のY方向正方向側)には、第4のブロックG4が設けられている。
【0022】
第1のブロックG1には、
図4に示すように複数の液処理装置、例えば現像処理装置30、下部反射防止膜形成装置31、レジスト膜形成装置32と、上部反射防止膜形成装置33、周縁部除去装置34、周縁部塗布装置35が設けられている。現像処理装置30は、ウェハWを現像処理する。下部反射防止膜形成装置31は、ウェハWのレジスト膜の下層に反射防止膜(以下「下部反射防止膜」という)を形成する。レジスト膜形成装置32は、ウェハWにレジスト液を供給してレジスト膜を形成する。上部反射防止膜形成装置33は、ウェハWのレジスト膜の上層に反射防止膜(以下「上部反射防止膜」という)を形成する。
【0023】
これら現像処理装置30、下部反射防止膜形成装置31、レジスト膜形成装置32、上部反射防止膜形成装置33、周縁部除去装置34、周縁部塗布装置35の数や配置は、任意に選択できる。
【0024】
これら現像処理装置30、下部反射防止膜形成装置31、レジスト膜形成装置32、上部反射防止膜形成装置33、周縁部除去装置34、周縁部塗布装置35では、例えばウェハW上に所定の処理液、塗布液を用いたスピンコーティングが行われる。スピンコーティングでは、例えばノズルからウェハW上に処理液や塗布液を吐出すると共に、ウェハWを回転させて、処理液や塗布液をウェハWの表面に拡散させる。
【0025】
第2のブロックG2には、
図4に示すように、熱処理装置40、アドヒージョン装置41、周辺露光装置42が上下方向と水平方向に並べて設けられている。熱処理装置40は、ウェハWの加熱や冷却といった熱処理を行う。アドヒージョン装置41は、レジスト液とウェハWとの定着性を高めるため、蒸気状態のHMDSなどをウェハW上に供給してウェハW上に疎水性の膜を均一に形成する。周辺露光装置42は、ウェハWの外周部を露光する。これら熱処理装置40、アドヒージョン装置41、周辺露光装置42の数や配置は、任意に選択できる。
【0026】
例えば第3のブロックG3には、複数の受け渡し装置50、51、52、53、54、55、56が下から順に設けられている。また、第4のブロックG4には、複数の受け渡し装置60、61、62が下から順に設けられている。
【0027】
図4に示すように第1のブロックG1~第4のブロックG4に囲まれた領域には、ウェハ搬送領域Dが形成されている。ウェハ搬送領域Dには、ウェハ搬送装置70が配置されている。
【0028】
ウェハ搬送装置70はそれぞれ、例えばY方向、X方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アーム70aを有している。ウェハ搬送装置70は、上下に複数台配置されており、各ウェハ搬送装置70は、ウェハ搬送領域D内を移動し、例えば各ブロックG1~G4の同程度の高さの所定の装置にウェハWを搬送できる。
【0029】
また、ウェハ搬送領域Dには、第3のブロックG3と第4のブロックG4との間で直線的にウェハWを搬送するシャトル搬送装置80が設けられている。
【0030】
シャトル搬送装置80は、例えば
図4のY方向に直線的に移動自在になっている。シャトル搬送装置80は、ウェハWを支持した状態でY方向に移動し、第3のブロックG3の受け渡し装置52と第4のブロックG4の受け渡し装置62との間でウェハWを搬送できる。
【0031】
図2に示すように第3のブロックG3のX方向正方向側の隣には、ウェハ搬送装置90が設けられている。ウェハ搬送装置90は、例えばX方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アーム90aを有している。ウェハ搬送装置90は、ウェハWを支持した状態で上下に移動して、第3のブロックG3内の各受け渡し装置にウェハWを搬送できる。
【0032】
インターフェイスステーション13には、ウェハ搬送装置100と受け渡し装置101が設けられている。ウェハ搬送装置100は、例えばY方向、θ方向及び上下方向に移動自在な搬送アーム100aを有している。ウェハ搬送装置100は、例えば搬送アーム100aにウェハWを支持して、第4のブロックG4内の各受け渡し装置、受け渡し装置101及び露光装置12との間でウェハWを搬送できる。
【0033】
以上の基板処理システム1には、制御部200が設けられている。制御部200は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータにより構成され、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、基板処理システム1における各種処理を制御するプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、当該記憶媒体から制御部200にインストールされたものであってもよい。
【0034】
以上の構成を有する基板処理システム1に搭載されている、実施の形態にかかる基板処理方法を実施するための各種装置について以下、個別具体的に説明する。
【0035】
<アドヒージョン装置>
アドヒージョン装置41は、既述したように本来はレジスト液とウェハWとの定着性を高めるために、パターン形成用のレジスト液を塗布する前にウェハW全面に対してHMDSを供給するものであるが、HMDSには撥水性があることが知られている。そこでこのアドヒージョン装置41を利用して、実施の形態における阻害膜の形成プロセスに用いる。
【0036】
アドヒージョン装置41は、
図5に示したように、処理容器110を有している。処理容器110内にはウェハWを載置する載置台111が設けられている。載置台111内には加熱用のヒータ112が設けられている。載置台111には、貫通孔113が複数個所に形成されている。これら貫通孔113内を昇降する昇降ピン114aが、昇降ピン支持部114に設けられている。昇降ピン支持部114は昇降機構115によって上下に昇降する。
【0037】
処理容器110の天井部の中央には、給気口116が設けられており、給気口167には供給路117が接続されている。そして供給路117は、HMDSの蒸気の供給源(図示せず)に通じている。一方、処理容器110の底部における載置台111の外側には、排気口118が設けられており、排気口118には排気路119が接続されている。排気路119は、排気装置Mに通じている。
【0038】
以上の構成により、給気口116から供給されたHMDSの蒸気は、載置台111上でヒータ112により予め定められた温度に加熱されたウェハWの上面に、均一に供給されて、ウェハWの表面に全面に、阻害膜としての撥水性のあるHMDSの膜が形成される。
【0039】
<周縁部除去装置>
周縁部除去装置34は、
図6に示した構成を有している。すなわち、この周縁部除去装置34は、処理容器120を有しており、その中央には、ウェハWを水平に吸着保持して回転させる回転保持機構としてのスピンチャック121が設けられている。スピンチャック121は、回転支持部材122によって支持されている。回転支持部材122は、モータなどの回転駆動機構123に接続されている。また回転支持部材122は上下動可能に構成されている。
【0040】
処理容器120の天井部には、フィルタ装置124が設けられ、清浄化された空気のダウンフローが給気部125を介して処理容器120内に形成される。
【0041】
スピンチャック121の周囲には、スピンチャック121に保持されたウェハWを囲むように、カップ126が配置されている。そしてカップ126の底部には、排液管127と排気管128が設けられている。排気管128は排気装置129に通じている。
【0042】
そして処理容器120内には、HMDS膜を除去可能な処理液、例えばアルカリ性の処理液、例えば現像液を吐出するノズル130、131が配置される。すなわち周縁部除去装置34は、スピンチャック121に保持されたウェハWの上面側から当該ウェハWの周縁部に向けて現像液を吐出するノズル130と、当該ウェハWの裏面側から当該ウェハWの周縁部裏面に向けて現像液を吐出するノズル131とを有している。上側に位置するノズル130は支持アーム(図示せず)によって移動可能であり、
図6に示した吐出時の位置と、ウェハWを搬入出する際の、カップ126の外側の退避位置との間で移動する。さらにまた吐出する際にも、保持されたウェハWの周縁部外側から内側方向へと任意の範囲でノズル130は移動可能である。ノズル131は裏面側に回り込んだHMDSの溶融液や処理液を除去するためのものであり、通常、定位置に固定配置されている。
【0043】
<周縁部塗布装置>
周縁部塗布装置35は、
図7に示した構成を有している。この周縁部塗布装置35は、基本的には前記した周縁部除去装置34と同様な構成を有している。すなわち、周縁部塗布装置35は、処理容器140を有しており、その中央には、スピンチャック141が設けられている。スピンチャック141は、上下動可能な回転支持部材142によって支持され、回転支持部材142は、回転駆動機構143に接続されている。
【0044】
処理容器140の天井部には、フィルタ装置144が設けられ、清浄化された空気のダウンフローが給気部145を介して処理容器140内に形成される。またスピンチャック141の周囲には、カップ146が配置されている。カップ146の底部には、排液管147と排気管148が設けられ、排気管148は排気装置149に通じている。
【0045】
そして処理容器140内には、ウェハWの周縁部を保護するための塗布液、例えばレジスト液を周縁部に向けて吐出する塗布液ノズル150と、塗布液を除去する溶剤を吐出する溶剤ノズル151が配置可能である。すなわち周縁部塗布装置35は、スピンチャック141に保持されたウェハWの上面側から当該ウェハWの周縁部に向けて塗布液を吐出する塗布液ノズル150と、当該ウェハWの裏面側から当該ウェハWの周縁部裏面に向けて溶剤ノズル151とを有している。
【0046】
上側に位置する塗布液ノズル150は支持アーム(図示せず)によって移動可能であり、
図7に示した吐出時の位置と、ウェハWを搬入出する際の、カップ146の外側の退避位置との間で移動する。さらにまたさらにまた塗布液を吐出する際にも、保持されたウェハWの周縁部外側から内側方向へと任意の範囲で塗布液ノズル150は移動可能である。溶剤ノズル151は裏面側に回り込んだ塗布液を除去するためのものであり、通常、定位置に固定配置されている。
【0047】
<基板処理方法>
基板処理システム1に搭載されるアドヒージョン装置41、周縁部除去装置34及び周縁部塗布装置35は以上の構成を有しており、次にこれらの各装置を用いた実施の形態にかかる基板処理方法について説明する。
【0048】
まず周縁部に塗布液を塗布して周縁部を保護する対象のウェハWは、ウェハ搬送装置70によってアドヒージョン装置41内に搬入され、載置台111に載置される。そしてヒータ112によって予め定められた温度、例えば90~200℃にまで加熱される。当該処理温度に達すると、
図5に示したように、給気口116から供給されたHMDSの蒸気がウェハWに供給される。これによって
図8(a)に示したHMDS供給前のウェハWは、
図8(b)に示したように、表面全面に阻害膜としてHMDSの膜Sが形成される。
【0049】
このようにして阻害膜としてのHMDSの膜Sが形成された後、ウェハWはウェハ搬送装置70によってアドヒージョン装置41から搬出され、次いで熱処理装置40に搬入されて、予め定められた温度、例えば23℃にまで冷却される。
【0050】
そのようにして冷却されたウェハWは、ウェハ搬送装置70によって搬出され、次に周縁部除去装置34に搬入される。そして
図6に示したように、スピンチャック121に保持されたウェハWに対して、ノズル130、131が吐出位置に配置され、ウェハWを例えば100~2000rpmで回転させながら、ウェハWの周縁部に対して、現像液が吐出される。かかる場合、ノズル130については、現像液を吐出させながら、ウェハWの周縁外側から周縁部の内側に向けて移動させ、膜Sの周縁部を除去することが好ましい。
【0051】
これによってウェハWの表面全面に形成されていた阻害膜としてHMDSの膜Sは、周縁部が除去され、
図8(c)に示したように、ウェハWの外周周縁部に膜Sが除去された環状の領域WEが出現する。領域WEの径方向の長さは、例えば0.5~5.0mmである。
【0052】
このようにしてウェハWの表面の外周周縁部に膜Sが除去された領域WEを有するウェハWは、ウェハ搬送装置70によって搬出され、次に周縁部塗布装置35に搬入される。そして周縁部塗布装置35では、
図7に示したように、当該ウェハWがスピンチャック141に吸着保持され、次いでスピンチャック141によって、例えば100~1500rpmで回転される。その状態で、塗布液ノズル150からウェハWの領域WEに対して塗布液、例えばレジスト液が吐出され、裏面側の溶剤ノズル151から溶剤がウェハWの周縁部の裏面に吐出される。
【0053】
以下、周縁部塗布装置35で行われる周縁部塗布プロセスについて
図9に基づいて説明する。まず
図9(a)に示したように、スピンチャック141で保持されたウェハWの周縁部外側にて、塗布液ノズル150は塗布液Rを吐出する。次いで
図9(b)に示したように塗布液ノズル150をウェハWの中心側、すなわちウェハWの周縁部内側に移動させる。これによって塗布液Rは、領域WEに対して吐出されていく。そして
図9(c)に示したように、阻害膜としてのHMDSの膜Sの界面(境界)Soに着地点Pが到達したら、塗布液ノズル150の移動を停止する。その状態で、例えば0.3秒~5.0秒経過したら、
図9(d)に示したように塗布液ノズル150をウェハWの周縁部外側に移動させる。これによって、ウェハWの周縁部には、塗布液Rの膜が形成される。
【0054】
以上の周縁部塗布プロセスにおいて、
図9に示したように、ウェハWの周縁部には、従来発生していた塗布液Rのハンプの発生は抑えられている。これは、アドヒージョン装置41によって形成されたHMDSの膜Sは、撥水性を有するため、従来、着地点Pよりも内側に回り込んでいた塗布液の回り込みが膜Sによって抑制され、着地点P内外の乾燥時間差が低減しているためである。したがって、膜Sの界面Soより外側の領域WEに塗布された塗布液Rは均一な膜厚を有する塗布膜とすることができる。
【0055】
実際に発明者が実験したところ、
図10に示した結果が得られた。
図10は、横軸がウェハWのエッジ部からの距離を示し、縦軸は塗布液Rの膜厚を示している。これによれば破線で示した従来手法によれば、エッジ部から1.9mm~2.0mmの間に膜厚が1.5mmを超えるハンプが形成されているのに対し、実線で示した実施の形態による撥水性を有する阻害膜を形成した例では、1.9mm~2.0mmの間にわずかに膜厚が厚い部分が発生したが、その厚さは0.75mm程度であった。
【0056】
そしてエッジ部から1.85mm地点の膜厚と、形成された塗布膜の最大膜厚を比較すれば、従来手法では2.47倍に達しているのに対し、実施の形態による撥水性を有する阻害膜を形成した例では、これを1.45倍に抑えることができた。したがって従来よりも41%のハンプの低減が達成できた。またこの種の周縁部に塗布する塗布膜の膜厚の均一性は、1.85mm地点の膜厚に対して1.5倍以下に抑えることが要求されるが、実施の形態にかかる基板処理方法では、当該要求を満たすことが確認できた。
【0057】
以上の実施の形態では、阻害膜としての膜SはHMDSによって形成していたが、もちろんこれに限らず、塗布液Rとの関係で撥水性、疎水性を有するものであれば、他の膜形成材料を用いることができる。また前記した実施の形態では、アドヒージョン装置41によってウェハWの表面全面に阻害膜を形成したが、これに限らず、他の形成方法、例えばスピンコーティング法によって、ウェハWの表面全面に阻害膜を形成するようにしてもよい。
【0058】
さらにまた阻害膜の目的からすれば、必ずしもウェハWの表面全面に阻害膜を形成する必要はなく、周縁部塗布プロセスにおいて、周縁部を保護する塗布液の領域よりも内側に阻害膜が形成されていればよいので、例えばウェハWの周縁部に環状に阻害膜を形成してもよい。
【0059】
ところで、周縁部塗布膜形成プロセスにおいて、塗布液ノズル150から吐出される塗布液の着地点Pの位置は、前記実施の形態では、阻害膜としての膜Sの外側の界面Soと同じ位置に設定していたが、界面Soよりも内側、すなわち膜Sの上であってもよい。膜S自体は撥水性を有するため、膜Sの上に吐出されてもウェハWが回転する際の遠心力により、塗布液Rは外側に追い出されやすくなるので、膜S上に残置してそのまま乾燥してハンプが形成されることは抑えられるからである。
【0060】
また前記実施の形態では、阻害膜としてのHMDSの膜Sの除去工程と、周縁部塗布膜形成工程とは、各々別の処理容器、すなわち、周縁部除去装置34と周縁部塗布装置35の各処理容器120、140で行われていた。これは排液される液が、周縁部除去装置34では現像液などのアルカリ性処理液であるのに対し、周縁部塗布装置35で塗布される塗布液Rがレジスト液及びその溶剤であり、有機性薬液であるため、そのまま同一の排液管から排出することが好ましくないことから採用されたものである。これによって廃液処理が従来既存の装置、設備がそのまま利用できるという利点があった。
【0061】
しかしながら周縁部に塗布される膜厚の均一性を向上させるという観点からは、必ずしもそのように阻害膜の除去工程と、周縁部塗布膜形成工程とを別々の処理容器で行う必要がなく、排液系統を別に分けた装置であれば、1つの処理容器内で行ってもよい。
【0062】
また前記実施の形態では、阻害膜として撥水性のある膜、例えばHMDSの膜Sを用いていたが、
図9に示される通常のアドヒージョン処理によって形成される膜Sの厚さdは、数nm~数十nmであるのに対し、塗布液Rによって形成される塗布膜Rの厚さDは、100nm~200nmである。このように膜厚に相当程度の差があっても、膜Sに撥水性、疎水性があれば、塗布液Rの拡散、回り込みを抑えてハンプの発生を抑制できた。
【0063】
しかしながら、阻害膜として撥水性、疎水性のない膜を用いても塗布液Rの拡散、回り込みを抑えてハンプの発生を抑制することが可能である。すなわち、膜Sの厚さを、塗布液Rの膜厚の1/2以上の膜厚として形成することにより、その界面を塗布液Rが内側に回り込んだり、拡散することを抑える壁として機能させることができる。したがって本開示における阻害膜は、必ずしも疎水性、撥水性を有する膜に限られない。
【0064】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 基板処理システム
34 周縁部除去装置
35 周縁部塗布装置
41 アドヒージョン装置
120、140 処理容器
121、141 スピンチャック
130 ノズル
150 塗布液ノズル
200 制御部
P 着地点
R 塗布液
S 膜
So 界面
W ウェハ
WE 領域