(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】半導体装置の電極部及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/28 20060101AFI20241107BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241107BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20241107BHJP
H01L 21/8238 20060101ALI20241107BHJP
H01L 27/092 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
H01L21/28 301S
H01L29/78 301P
H01L27/092 F
(21)【出願番号】P 2020136671
(22)【出願日】2020-08-13
【審査請求日】2023-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 泰志
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-209078(JP,A)
【文献】特開平06-177067(JP,A)
【文献】特開平05-090206(JP,A)
【文献】特開2006-310842(JP,A)
【文献】特開昭61-206243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/28
H01L 21/336
H01L 21/8238
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物添加領域を備えた半導体基板を用意する工程と、
前記不純物添加領域上に第1金属層を形成する工程と、
前記第1金属層上に第2金属層を形成する工程と、
前記第1金属層及び前記第2金属層を備えた前記半導体基板を加熱する工程と、
を備え、
前記不純物添加領域はシリコンを含み、
前記第1金属層はタンタルを含み、
前記第2金属層はチタンを含み、
前記加熱する工程によって、前記不純物添加領域、前記第1金属層及び前記第2金属層を構成する材料間でシリサイド化反応を生じさせ、
前記不純物添加領域上にチタン、タンタル及びシリコンを含む第1シリサイド層が形成され、前記第1シリサイド層上に接触して位置し、チタン及びシリコンを含む第2シリサイド層が形成さ
れ、
前記不純物添加領域における不純物は、ホウ素である、
半導体装置の電極部の製造方法。
【請求項2】
不純物添加領域と前記不純物添加領域上に形成された酸化膜とを備えた半導体基板を用意する工程と、
前記不純物添加領域上に、前記酸化膜を介して、第1金属層を形成する工程と、
前記第1金属層上に第2金属層を形成する工程と、
前記第1金属層及び前記第2金属層を備えた前記半導体基板を加熱する工程と、
を備え、
前記不純物添加領域はシリコンを含み、
前記酸化膜は二酸化シリコンを含み、
前記第1金属層はタンタル、タングステン及びモリブデンからなる群から選択される少なくとも1種を含む高融点金属を含み、
前記第2金属層はチタンを含み、
前記加熱する工程によって、前記半導体基板上にチタン、前記高融点金属及びシリコンを含む第1シリサイド層が形成され、前記第1シリサイド層上にチタン及びシリコンを含む第2シリサイド層が形成され、前記第2シリサイド層上に酸化チタン層が形成さ
れ、
前記不純物添加領域における不純物は、ホウ素である、
半導体装置の電極部の製造方法。
【請求項3】
不純物添加領域上に位置し、チタン、タンタル及びシリコンを含む第1シリサイド層と、
前記第1シリサイド層上に接触して位置し、チタン及びシリコンを含む第2シリサイド層と、
を備え
、
前記不純物添加領域における不純物は、ホウ素である、
半導体装置の電極部。
【請求項4】
不純物添加領域上に位置し、チタン、高融点金属及びシリコンを含む第1シリサイド層と、
前記第1シリサイド層上に位置し、チタン及びシリコンを含む第2シリサイド層と、
前記第2シリサイド層上に位置する酸化チタン層と、
を備え、
前記高融点金属は、タンタル、タングステン及びモリブデンからなる群から選択される少なくとも1種を含
み、
前記不純物添加領域における不純物は、ホウ素である、
半導体装置の電極部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、半導体装置の電極部及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属とシリコンとが結合したシリサイドが、半導体装置の電極部の材料として用いられている。特許文献1~特許文献9は、このようなシリサイドを開示している。また、特許文献10は、チタンシリサイド層中にホウ素(B)を添加する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-527111号公報
【文献】特開2006-186326号公報
【文献】特開2000-349169号公報
【文献】特開平9-321280号公報
【文献】特開平9-171969号公報
【文献】特開平5-315286号公報
【文献】特開平3-209773号公報
【文献】特開平5-182982号公報
【文献】米国特許第7518921号明細書
【文献】米国特許第5721175号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、半導体装置の電極部におけるコンタクト抵抗の増加を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、半導体装置の電極部の製造方法が提供される。半導体装置の電極部の製造方法は、不純物添加領域を備えた半導体基板を用意する工程を備える。この製造方法は、不純物添加領域上に第1金属層を形成する工程を更に備える。この製造方法は、第1金属層上に第2金属層を形成する工程を更に備える。この製造方法は、第1金属層及び第2金属層を備えた半導体基板を加熱する工程を更に備える。不純物添加領域はシリコンを含む。第1金属層はタンタルを含む。第2金属層はチタンを含む。上記加熱する工程によって、不純物添加領域、第1金属層及び第2金属層を構成する材料間でシリサイド化反応を生じさせ、不純物添加領域上にチタン、タンタル及びシリコンを含む第1シリサイド層が形成され、第1シリサイド層上に接触して位置し、チタン及びシリコンを含む第2シリサイド層が形成される。不純物添加領域における不純物は、ホウ素である。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、半導体装置の電極部におけるコンタクト抵抗の増加を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1(a)、
図1(b)、
図1(c)及び
図1(d)は、第1実施形態に係る半導体装置の電極部の製造方法を説明するための図である。
【
図2】
図2(a)、
図2(b)、
図2(c)及び
図2(d)は、第2実施形態に係る半導体装置の電極部の製造方法を説明するための図である。
【
図3】
図3(a)、
図3(b)及び
図3(c)は、比較例に係る半導体装置の電極部の製造方法を説明するための図である。
【
図4】
図4(a)、
図4(b)、
図4(c)及び
図4(d)は、比較例における基板表面からの深さD(nm)と不純物濃度Ci(cm
-3)の関係を示すグラフである。
【
図5】
図5(a)、
図5(b)、
図5(c)、
図5(d)、
図5(e)、
図5(f)及び
図5(g)は、例示的実施形態に係る電極部を有する半導体装置の第1製造方法を説明するための図である。
【
図6】
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)及び
図6(d)は、例示的実施形態に係る電極部を有する半導体装置の第2製造方法を説明するための図である。
【
図7】
図7(a)及び
図7(b)は、例示的実施形態に係る電極部を有する半導体装置の第3製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、半導体装置の電極部の製造方法が提供される。この製造方法は、不純物添加領域を備えた半導体基板を用意する工程を備える。この製造方法は、不純物添加領域上に第1金属層を形成する工程を更に備える。この製造方法は、第1金属層上に第2金属層を形成する工程を更に備える。この製造方法は、第1金属層及び第2金属層を備えた半導体基板を加熱する工程を更に備える。不純物添加領域はシリコン(Si)を含む。第1金属層はタンタル(Ta)を含む。第2金属層はチタン(Ti)を含む。上記加熱する工程によって、不純物添加領域上にチタン、タンタル及びシリコンを含む第1シリサイド層が形成され、第1シリサイド層上にチタン及びシリコンを含む第2シリサイド層が形成される。
【0010】
チタンと不純物添加領域内の不純物との結合が生じると、不純物添加領域における不純物濃度が低下する。また、チタンと不純物添加領域内の不純物との結合が生じると、比抵抗の高い層が形成されることがある。上記実施形態の半導体装置の電極部の製造方法によれば、第1金属層及び第1シリサイド層に含まれるタンタルが、不純物添加領域に含まれる不純物の拡散、及び、不純物と第2金属層に含まれるチタンとの結合を抑制する。したがって、この製造方法によれば、不純物添加領域と第1シリサイド層との間のコンタクト抵抗を低減することができる。
【0011】
一つの例示的実施形態において、半導体装置の電極部の製造方法が提供される。この製造方法は、不純物添加領域と不純物添加領域上に形成された酸化膜とを備えた半導体基板を用意する工程を備える。この製造方法は、不純物添加領域上に、酸化膜を介して、第1金属層を形成する工程を更に備える。この製造方法は、第1金属層上に第2金属層を形成する工程を更に備える。この製造方法は、第1金属層及び第2金属層を備えた半導体基板を加熱する工程を更に備える。不純物添加領域はシリコン(Si)を含む。酸化膜は二酸化シリコン(SiO2)を含む。第1金属層はタンタル(Ta)、タングステン(W)及びモリブデン(Mo)からなる群から選択される少なくとも1種を含む高融点金属を含む。第2金属層はチタン(Ti)を含む。上記加熱する工程によって、半導体基板上にチタン、上記高融点金属及びシリコンを含む第1シリサイド層が形成され、第1シリサイド層上にチタン及びシリコンを含む第2シリサイド層が形成される。また、上記加熱する工程によって、第2シリサイド層上に酸化チタン層が形成される。
【0012】
上記と同様に、第1金属層及び第1シリサイド層に含まれる高融点金属は、不純物添加領域に含まれる不純物の拡散、及び、不純物と第2金属層に含まれるチタンとの結合を抑制する。したがって、不純物添加領域と第1シリサイド層との間のコンタクト抵抗を低減することができる。
【0013】
また、上記加熱する工程において、酸化膜に含まれる酸素は、第2金属層に含まれるチタンと結合して、酸化チタン層を形成する。その結果、不純物添加領域と第1金属層との間の均一なシリサイド化反応を妨げ得る酸化膜が除去される。故に、不純物添加領域と第1金属層との間のシリサイド化反応の不均一性が低減される。
【0014】
一つの例示的実施形態に係る半導体装置の電極部は、第1シリサイド層と、第2シリサイド層とを備えている。第1シリサイド層は、不純物添加領域上に位置し、チタン、タンタル及びシリコンを含む。第2シリサイド層は、第1シリサイド層上に位置し、チタン及びシリコンを含む。
【0015】
一つの例示的実施形態に係る半導体装置の電極部は、第1シリサイド層と、第2シリサイド層と、酸化チタン層とを備えている。第1シリサイド層は、不純物添加領域上に位置し、チタン、高融点金属及びシリコンを含む。第2シリサイド層は、第1シリサイド層上に位置し、チタン及びシリコンを含む。酸化チタン層は、第2シリサイド層上に位置する。高融点金属は、タンタル、タングステン及びモリブデンからなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0016】
一つの例示的実施形態において、不純物添加領域における不純物は、ホウ素(B)である。
【0017】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附することとし、重複する説明は省略する。
【0018】
[第1実施形態]
以下、
図1(a)、
図1(b)、
図1(c)及び
図1(d)を参照して、第1実施形態に係る半導体装置の電極部の製造方法について説明する。
図1(a)、
図1(b)、
図1(c)及び
図1(d)は、第1実施形態に係る半導体装置の電極部の製造方法を説明するための図である。この電極部の製造方法は、(a)基板準備工程、(b)第1金属層形成工程、(c)第2金属層形成工程及び(d)加熱工程を備えている。(a)基板準備工程、(b)第1金属層形成工程、(c)第2金属層形成工程及び(d)加熱工程は、この順番で実行される。以下、これらの工程について説明する。
【0019】
(a)基板準備工程
基板準備工程では、半導体基板が用意される。
図1(a)に示すように、半導体基板は、不純物添加領域3(拡散層)を備えている。不純物添加領域3は、半導体基板の表面側に位置する。半導体基板及び不純物添加領域3は、シリコンを含む。不純物添加領域3における不純物は、ホウ素である。不純物添加領域3は、半導体基板内に不純物のイオンを注入することにより形成される。このイオン注入後、不純物添加領域3における不純物は、半導体基板を加熱(アニール)することにより、電気的に活性化される。例えば、アニール温度は800℃であり、アニール時間は数十分である。別の例示として、アニール温度は1000℃以上であり、アニール時間は非常に短い時間(例えば1秒未満)である。
【0020】
(b)第1金属層形成工程
第1金属層形成工程では、
図1(b)に示すように、不純物添加領域3上に第1金属層61が形成される。第1金属層61の形成方法は、スパッタ法等である。第1金属層61は、タンタルを含むタンタル層である。第1金属層61の厚みは、例えば、2nm~100nmである。
【0021】
(c)第2金属層形成工程
第2金属層形成工程では、
図1(c)に示すように、第1金属層61上に第2金属層62が形成される。第2金属層62の形成方法は、スパッタ法等である。第2金属層62はチタンを含むチタン層である。第2金属層62の厚みは、例えば、2nm~100nmである。
【0022】
(d)加熱工程
加熱工程(シリサイド化反応用のアニール工程)では、第1金属層61及び第2金属層62を備えた半導体基板が加熱(アニール)される。例えば、第1のアニール条件では、アニール温度は650℃であり、アニール時間は30秒である。別の例示として、第2のアニール条件では、アニール温度は900℃であり、アニール時間は30秒である。半導体基板は、第1のアニール条件でアニールされた後、第2のアニール条件でアニールされてもよい。
【0023】
このアニールにより、不純物添加領域3、第1金属層61及び第2金属層62を構成する材料間でシリサイド化反応が生じる。不純物添加領域3に含まれるシリコンは、シリサイド化反応に伴って消費される。このアニールによるシリサイド化反応の結果、
図1(d)に示すように、シリサイド層9が形成される。シリサイド層9は、第1シリサイド層91及び第2シリサイド層92を含む。第1シリサイド層91は、不純物添加領域3上に形成される。第2シリサイド層92は、第1シリサイド層91上に形成される。このアニールにより、第1シリサイド層91及び第2シリサイド層92を備える半導体装置の電極部が提供される。
【0024】
第1シリサイド層91は、チタン、タンタル及びシリコンを含む化合物(Ti-Ta-Si)から形成される。第2シリサイド層92は、チタン及びシリコンを含む化合物(TiSiX)から形成される。ここで、「TiSiX」における「X」は、例えば2である。
【0025】
本実施形態において、シリサイド化反応後の第1シリサイド層91と不純物添加領域3との間の界面における不純物濃度は、1×1020cm-3以上である。この界面における不純物は、活性化しているものとする。一般に、活性化した不純物濃度が1×1020cm-3以上の場合、良好な電気伝導が得られる。シリサイド形成後に良好な電気伝導を得るため、「(a)基板準備工程」における活性化後の不純物添加領域3の不純物濃度は、1×1020cm-3よりも高く設定される。例えば、このシリサイド化反応前の不純物濃度は、シリサイド化反応後における第1シリサイド層91と不純物添加領域3との間の界面に相当する位置において、5×1020cm-3以上に設定される。なお、上述の「(a)基板準備工程」において、不純物添加領域3における不純物濃度のピーク位置は、例えば、基板表面から100nm以下の位置に設定される。
【0026】
<作用効果1>
上記「(d)加熱工程」において、チタンと不純物添加領域3内の不純物との結合が生じると、不純物添加領域3における不純物濃度が低下する。また、チタンと不純物添加領域3内の不純物との結合が生じると、比抵抗の高いホウ化チタン層(TiB2層)が形成されることがある。第1金属層61及び第1シリサイド層91に含まれるタンタルが、不純物添加領域3に含まれる不純物の拡散、及び、不純物と第2金属層62に含まれるチタンとの結合を抑制する。したがって、この製造方法によれば、不純物添加領域3と第1シリサイド層91との間のコンタクト抵抗を低減することができる。
【0027】
<作用効果2>
半導体装置の製造方法においては、シリサイド層9の形成後、半導体基板が高温で加熱される場合がある。例えば、シリサイド層9の形成後に、半導体基板は、1000℃の温度で数秒間、加熱される。別の例示として、シリサイド層9の形成後に、半導体基板は、850℃程度の温度で1時間程度、加熱される。更に別の例示として、半導体基板に対する800℃以上(850℃程度)の加熱処理が、例えば、三次元NANDのシリコンチャネルを形成する工程で行われる。このような加熱処理は、三次元LSIを製造する際にも行われる。
【0028】
第1シリサイド層91は、タンタルを含んでおり、第1金属層61と同様に、ホウ素とチタンの拡散及び結合を抑制する。したがって、第1シリサイド層91によれば、コンタクト抵抗の増加が抑制される。また、第1シリサイド層91によれば、熱による凝集に強く、高耐熱性のコンタクトが得られる。
【0029】
[第2実施形態]
以下、
図2(a)、
図2(b)、
図2(c)及び
図2(d)を参照して、第2実施形態に係る半導体装置の電極部の製造方法について説明する。
図2(a)、
図2(b)、
図2(c)及び
図2(d)は、第2実施形態に係る半導体装置の電極部の製造方法を説明するための図である。この電極部の製造方法は、(a)基板準備工程、(b)第1金属層形成工程、(c)第2金属層形成工程、及び(d)加熱工程を備えている。(a)基板準備工程、(b)第1金属層形成工程、(c)第2金属層形成工程、及び(d)加熱工程は、この順番で実行される。以下、これらの工程について説明する。
【0030】
(a)基板準備工程
基板準備工程では、半導体基板が用意される。
図2(a)に示すように、半導体基板は、不純物添加領域3と、不純物添加領域3上に形成された酸化膜20とを備えている。不純物添加領域3は、半導体基板の表面側に位置する。半導体基板及び不純物添加領域3は、シリコンを含む。
【0031】
酸化膜20は二酸化シリコンを含む。酸化膜20の厚みは約1~2nmである。酸化膜20は、自然酸化膜である。自然酸化膜は、不純物添加領域3の露出表面を空気又は酸素雰囲気中に晒すことにより、形成することができる。酸化膜20は、洗浄等により形成することもできる。この場合の酸化膜20は、化学酸化物(Chemical Oxide)である。第2実施形態の「(a)基板準備工程」は、不純物添加領域3の表面上に酸化膜20が形成されている点を除いて、第1実施形態の「(a)基板準備工程」と同一の工程であり、その各種条件も第1実施形態の「(a)基板準備工程」の対応の条件と同一である。
【0032】
(b)第1金属層形成工程
第1金属層形成工程では、
図2(b)に示すように、第1金属層61が、不純物添加領域3上に酸化膜20を介して形成される。第1金属層61の形成方法は、スパッタ法等である。第1金属層61は、高融点金属を含む高融点金属層である。高融点金属は、タンタル、タングステン及びモリブデンからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいる。第2実施形態における第1金属層61の厚みは、第1実施形態における第1金属層61の厚みと同一の厚みに設定され得る。
【0033】
(c)第2金属層形成工程
第2金属層形成工程では、
図2(c)に示すように、第2金属層62が、第1金属層61上に形成される。第2実施形態の「(c)第2金属層形成工程」は、第1実施形態の「(c)第2金属層形成工程」と同一の工程であり、その各種条件も第1実施形態の「(c)第2金属層形成工程」の対応の条件と同一である。
【0034】
(d)加熱工程
加熱工程(シリサイド化反応用のアニール工程)では、第1金属層61及び第2金属層62を備えた半導体基板が加熱(アニール)される。第2実施形態の「(d)加熱工程」は、第1実施形態の「(d)加熱工程」と同一の工程であり、その各種条件も第1実施形態の「(d)加熱工程」の対応の条件と同一である。
【0035】
このアニールによるシリサイド化反応の結果、
図2(d)に示すように、シリサイド層9が形成される。シリサイド層9は、第1シリサイド層91及び第2シリサイド層92を含む。このアニールにより、第1シリサイド層91及び第2シリサイド層92を備える半導体装置の電極部が提供される。第1シリサイド層91は、不純物添加領域3上に形成される。第2シリサイド層92は、第1シリサイド層91上に形成される。また、このアニールにより、酸化チタン層21が、第2シリサイド層92上に形成される。
【0036】
第1シリサイド層91は、チタン、高融点金属及びシリコンを含む化合物から形成される。第2シリサイド層92は、チタン及びシリコンを含む化合物(TiSi
X)から形成される。ここで、「TiSi
X」における「X」は、例えば2である。酸化チタン層21は、酸化膜20に含まれていた酸素等が第2金属層62を構成するチタンと反応することにより、形成される。酸化チタン層21は、「TiO
X」で表される組成式を有し得る。「TiO
X」における「X」は、例えば2である。なお、「(d)加熱工程」では、
図2(d)において酸化チタン層21が形成されている領域に、酸化チタン層21と第2シリサイド層92との混合層が形成される場合もある。
【0037】
<作用効果1>
第2実施形態においては、高融点金属が、第1実施形態の作用効果1として上述したタンタルの効果と同じ効果をもたらす。すなわち、第2実施形態によれば、不純物添加領域3と第1シリサイド層91との間のコンタクト抵抗を低減することができる。
【0038】
<作用効果2>
また、第2実施形態においては、高融点金属を含む第1シリサイド層91が、第2実施形態の作用効果2として、上述した第1シリサイド層91の効果と同じ効果をもたらす。すなわち、第2実施形態においても、第1シリサイド層91によれば、コンタクト抵抗の増加が抑制される。また、第1シリサイド層91によれば、熱による凝集に強く、高耐熱性のコンタクトが得られる。
【0039】
<作用効果3>
上記「(d)加熱工程」において、酸化膜20に含まれる酸素は、第2金属層62に含まれるチタンと結合して、酸化チタン層21を形成する。その結果、不純物添加領域3と第1金属層61との間の均一なシリサイド化反応を妨げ得る酸化膜20が除去される。故に、不純物添加領域3と第1金属層61との間のシリサイド化反応の不均一性が低減される。
【0040】
[比較例]
ここで、比較例について説明する。
図3(a)、
図3(b)及び
図3(c)は、比較例に係る半導体装置の電極部の製造方法を説明するための図である。この電極部の製造方法は、(a)基板準備工程、(b)第2金属層形成工程、及び(c)加熱工程を備えている。(a)基板準備工程、(b)第2金属層形成工程、及び(c)加熱工程は、この順番で実行される。以下、これらの工程について説明する。
【0041】
(a)基板準備工程
比較例の「(a)基板準備工程」は、
図3(a)されるように、第2実施形態の「(a)基板準備工程」と同一である。
【0042】
(b)第2金属層形成工程
比較例の製造方法は、第2実施形態における第1金属層形成工程を備えていない。比較例の製造方法では、
図3(b)に示すように、第2金属層62が、不純物添加領域3上に、酸化膜20を介して形成される。第2金属層形成工程では、
図3(b)に示すように、酸化膜20の直上に第2金属層62が形成される。第2金属層62の形成方法は、スパッタ法等である。第2金属層62はチタンを含むチタン層である。
【0043】
(c)加熱工程
比較例の加熱工程(シリサイド化反応用のアニール工程)では、酸化膜20及び第2金属層62を備えた半導体基板が加熱(アニール)される。比較例の「(c)加熱工程」は、第2実施形態の「(d)加熱工程」と同一の工程であり、その各種条件も第2実施形態の「(d)加熱工程」の対応の条件と同一である。このアニールにより、
図3(c)に示すように、第2シリサイド層92が不純物添加領域3上に形成される。このアニールにより、酸化チタン層21(TiO
X)が第2シリサイド層92上に形成される。なお、ホウ化チタン層31(TiB
2)が、第2シリサイド層92と不純物添加領域3との間に形成される場合がある。
【0044】
<考察>
以下、
図4(a)、
図4(b)、
図4(c)及び
図4(d)を参照して、第1実施形態、第2実施形態、及び比較例について考察する。
図4(a)、
図4(b)、
図4(c)及び
図4(d)は、比較例における基板表面からの深さD(nm)と不純物濃度Ci(cm
-3)の関係を示すグラフである。
【0045】
図4(a)は上述の比較例の「(a)基板準備工程」終了後の不純物濃度分布(すなわち、初期状態の不純物濃度分布)を示す。この初期状態の不純物濃度分布は、
図4(b)~
図4(d)においても、点線で示されている。
図4(b)は上述の比較例の「(c)加熱工程」終了後の、推定される不純物濃度分布(実線)を示す。
図4(b)で第1領域Aは第2シリサイド層92(TiSi
2)の領域を示す。
図4(b)で第2領域Bはホウ化チタン層31(TiB
2)の領域を示す。
図4(b)で第3領域Cはシリサイド形成後の不純物添加領域3を示す。
【0046】
図4(b)に示すように、比較例では、ホウ化チタン層31(TiB
2)に含まれるホウ素(不純物)の濃度は高い。また、比較例では、
図4(b)に示すように、第2領域Bと第3領域Cとの境界近傍における不純物濃度Ci(cm
-3)が、初期状態の不純物濃度から低下している。
【0047】
ここで、
図4(b)に示す比較例の不純物濃度分布の推測の妥当性について説明する。不純物濃度の測定は例えばSIMS(secondary ion mass spectroscopy)法を用いて行われる。
図4(c)は、比較例の「(c)加熱工程」後の基板について、SIMS法で測定した不純物濃度分布(実線)を示す。基板表面近傍の不純物濃度が高い領域(高濃度領域)から基板内部の不純物濃度が低い領域(低濃度領域)に向かってSIMS法で分析を行うと、高濃度領域に含まれる不純物原子がノックオン(knock on)により低濃度領域に移動する。したがって、SIMS法では、ホウ化チタン層31(第2領域B)と不純物添加領域3(第3領域C)の境界近傍に生じる低濃度領域における不純物濃度を正確に測定することができない。但し、SIMS法によって測定した基板表面からホウ化チタン層31(第2領域B)までの部分での不純物濃度は、概ね正確である。
【0048】
図4(d)は比較例の「(c)加熱工程」後の基板から第2シリサイド層92(TiSi
2)とホウ化チタン層31(TiB
2)を除去した後に、SIMS法で測定した不純物濃度分布(実線)を示す。TiSi
2層は例えば希釈されたフッ酸(HF)を用いて除去することができる。TiB
2層は例えば希釈されたH
2O
2を用いて除去することができる。
図4(d)の不純物濃度は、高濃度領域を除去した後にSIMS法によって測定されたものであるから、不純物添加領域3(第3領域C)における不純物濃度を正確に反映している。上述した
図4(c)の測定結果と
図4(d)の測定結果を総合して判断すると、
図4(b)の不純物濃度分布の推定は、妥当であるものと判断することができる。
【0049】
図4(b)に示したように、比較例では、ホウ化チタン層31(TiB
2)に含まれるホウ素(不純物)の濃度は高い。しかしながら、ホウ化チタン層31(TiB
2)に含まれるホウ素は電気伝導率の向上とコンタクト抵抗の低減には寄与しない。
【0050】
また、比較例では、
図4(b)に示すように、第2領域Bと第3領域Cとの境界近傍における不純物濃度Ci(cm
-3)が、初期状態の不純物濃度から低下している。これは、ホウ化チタン層31(第2領域B)と不純物添加領域3(第3領域C)の境界近傍における不純物(ホウ素)が、ホウ化チタン層31が形成される際にホウ化チタン層31に吸収されるためであると考えられる。なお、比較例では、この境界近傍における不純物濃度Ci(cm
-3)は1×10
20cm
-3未満である。
【0051】
一方、上述の第1実施形態及び第2実施形態においては、シリサイド層9と不純物添加領域3との界面における不純物添加領域3の不純物濃度は、比較的高く、1×1020cm-3以上である。したがって、第1実施形態及び第2実施形態によれば、コンタクト抵抗を低減することができる。
【0052】
[半導体装置の第1製造方法]
以下、
図5(a)、
図5(b)、
図5(c)、
図5(d)、
図5(e)、
図5(f)及び
図5(g)を参照して、例示的実施形態に係る電極部を有する半導体装置の第1製造方法について説明する。
図5(a)、
図5(b)、
図5(c)、
図5(d)、
図5(e)、
図5(f)及び
図5(g)は、例示的実施形態に係る電極部を有する半導体装置の第1製造方法を説明するための図である。この製造方法(第1製造方法)は、(a)不純物添加領域形成工程、(b)絶縁膜形成工程、(c)コンタクト孔形成工程、(d)金属層形成工程、(e)バリアメタル形成工程、(f)加熱工程、(g)研磨工程を備えている。(a)不純物添加領域形成工程、(b)絶縁膜形成工程、(c)コンタクト孔形成工程、(d)金属層形成工程、(e)バリアメタル形成工程、(f)加熱工程、(g)研磨工程は、この順番で実行される。以下、これらの工程について説明する。
【0053】
(a)不純物添加領域形成工程
不純物添加領域形成工程では、
図5(a)に示すように、素子分離2が、半導体基板1の表面側に形成される。半導体基板1は、シリコンから形成されている。素子分離2は、二酸化シリコンなどから形成される。次に、イオン注入法を用いて、半導体基板1の表面側の領域内に不純物が添加されて、不純物添加領域3が形成される。不純物添加領域3は、半導体基板1の導電型とは逆の導電型を有する。この不純物添加領域3の形成方法は、上述の第1実施形態又は第2実施形態における「(a)基板準備工程」の不純物添加領域3の形成方法と同一である。
【0054】
(b)絶縁膜形成工程
絶縁膜形成工程では、
図5(b)に示すように、絶縁膜4(PMD:pre-metaldielectrics)が、不純物添加領域3上に形成される。絶縁膜4は、二酸化シリコンなどから形成される。絶縁膜4は、化学的気相成長(CVD)法を用いて形成することができる。
【0055】
(c)コンタクト孔形成工程
コンタクト孔形成工程では、
図5(c)に示すように、コンタクト孔5が形成される。コンタクト孔5は、絶縁膜4を貫通する。コンタクト孔5は、フォトリソグラフィーと反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)などを用いて形成することができる。
【0056】
(d)金属層形成工程
金属層形成工程では、
図5(d)に示すように、金属層6が、絶縁膜4の表面、コンタクト孔5の内面、及び不純物添加領域3の露出表面の上に堆積される。なお、金属層6の堆積前において、不純物添加領域3の露出表面上に、厚さ数nmの自然酸化膜が形成される場合がある。自然酸化膜は、絶縁膜4と同じ材料である二酸化シリコンからなる。この自然酸化膜は、金属層6の堆積前に、希フッ酸等を用いてエッチングされてもよい。希フッ酸の濃度は、絶縁膜4の厚さが薄くなりすぎないように、十分に低く設定される。あるいは、希フッ酸を用いたエッチングの時間は、絶縁膜4の厚さが薄くなりすぎないように、短く設定される。この金属層形成工程は、上述の第1実施形態又は第2実施形態における「(b)第1金属層形成工程」及び「(c)第2金属層形成工程」と同一である。
【0057】
(e)バリアメタル形成工程
バリアメタル形成工程では、
図5(e)に示すように、バリアメタル層7が、金属層6上に堆積される。バリアメタル層7上には、金属層8が堆積される。バリアメタル層7は、窒化チタン(TiN)等から形成される。金属層8は、タングステン等の低抵抗な金属から形成される。バリアメタル層7及び金属層8の堆積方法は、CVD法、原子層堆積(ALD)法、又は、物理的気相成長(PVD)法等である。金属層8は、コンタクト孔5を金属層8で完全に埋めるように形成され得る。バリアメタル層7は、金属層8と金属層6の反応、及び、金属層8と半導体基板1の反応を防止する。金属層8がCVD法又はALD法を用いて堆積される場合には、バリアメタル層7は、金属層8中に含まれる不純物が、金属層6又は半導体基板1内に拡散することを防止する。
【0058】
(f)加熱工程
加熱工程(シリサイド化反応用のアニール工程)では、その上に上記の各層が形成された半導体基板1(
図5(e)を参照)が、加熱(アニール)される。このアニールにより、金属層6と不純物添加領域3とが反応する。この反応により、
図5(f)に示すように、シリサイド層9が、基板表面側に形成される。この加熱工程は、窒素(N
2)雰囲気中で実行されてもよい。この加熱工程は、個別の工程であってもよいし、バリアメタル層7及び金属層8等を加熱する工程を兼ねていてもよい。なお、この加熱工程は、上述の第1実施形態又は第2実施形態における「(d)加熱工程」と同一である。
【0059】
(g)研磨工程
研磨工程では、コンタクト孔5の外に設けられた金属層6、バリアメタル層7及び金属層8が、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polish)法等を用いて除去される。CMPは、
図5(g)に示すように、絶縁膜4が露出するまで行われる。これにより、コンタクトプラグ10(電極部)が形成される。コンタクトプラグ10は、プラグ状に加工されており、シリサイド層9、金属層6、バリアメタル層7及び金属層8を備えている。なお、不純物添加領域3とコンタクトプラグ10とは電気的に接続されている。
【0060】
半導体装置の第1製造方法においては、シリサイド層9は、上述の第1実施形態又は第2実施形態の製造方法におけるシリサイド層9の形成と同様に形成される。したがって、半導体装置の第1製造方法によれば、不純物添加領域3の高抵抗化が抑制される。故に、半導体装置の第1製造方法によれば、不純物添加領域3とシリサイド層9との間のコンタクト抵抗を低減することができる。
【0061】
[半導体装置の第2製造方法]
以下、
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)及び
図6(d)を参照して、例示的実施形態に係る電極部を有する半導体装置の第2製造方法について説明する。
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)及び
図6(d)は、例示的実施形態に係る電極部を有する半導体装置の第2製造方法を説明するための図である。本例は、SALICIDE(Self-Aligned Silicide)の手法を適用した実施形態である。この製造方法(第2製造方法)は、(a)不純物添加領域形成工程、(b)金属層形成工程、(c)加熱工程、及び(d)未反応金属除去工程を備えている。(a)不純物添加領域形成工程、(b)金属層形成工程、(c)加熱工程、及び(d)未反応金属除去工程は、この順番で実行される。以下、これらの工程について説明する。
【0062】
(a)不純物添加領域形成工程
不純物添加領域形成工程では、
図6(a)に示すように、素子分離2が、半導体基板1の表面側に形成される。半導体基板1は、シリコンから形成されている。素子分離2は、二酸化シリコンなどから形成される。次に、半導体基板1の表面側の領域内に不純物が添加されて、不純物添加領域3が形成される。不純物添加領域3の形成方法は、上述の第1実施形態又は第2実施形態における「(a)基板準備工程」の不純物添加領域3の形成方法と同一である。
【0063】
(b)金属層形成工程
金属層形成工程では、
図6(b)に示すように、金属層6が、不純物添加領域3上に形成される。この金属層形成工程は、上述の第1実施形態又は第2実施形態における「(b)第1金属層形成工程」及び「(c)第2金属層形成工程」と同一である。
【0064】
(c)加熱工程
加熱工程(シリサイド化反応用のアニール工程)では、その上に金属層6が形成された半導体基板1が加熱(アニール)される。このアニールにより、金属層6と不純物添加領域3とが反応する。この反応により、
図6(c)に示すように、シリサイド層9が、半導体基板1の表面側に形成される。素子分離2上では、金属層6は、未反応の状態で残される。この加熱工程は、上述の第1実施形態又は第2実施形態における「(d)加熱工程」と同一である。
【0065】
(d)未反応金属除去工程
未反応金属除去工程では、
図6(d)に示すように、未反応の金属層6が、薬液による洗浄により、選択的に除去される。かかる第2製造方法により得られるシリサイド層9は、不純物添加領域3に電気的に接続されており、電極部として機能する。
【0066】
第2製造方法では、シリサイド層9は、上述の第1実施形態又は第2実施形態の製造方法により形成される。したがって、第2製造方法によれば、不純物添加領域3の高抵抗化が抑制される。故に、第2製造方法によれば、不純物添加領域3とシリサイド層9との間のコンタクト抵抗を低減することができる。
【0067】
[半導体装置の第3製造方法]
以下、
図7(a)及び
図7(b)を参照して、半導体装置の第3製造方法について説明する。
図7(a)及び
図7(b)は、例示的実施形態に係る電極部を有する半導体装置の第3製造方法を説明するための図である。この製造方法(第3製造方法)は、(a)素子形成工程と、(b)研磨工程とを備えている。(a)素子形成工程及び(b)研磨工程は、この順番で実行される。以下、これらの工程について説明する。
【0068】
(a)素子形成工程
素子形成工程では、
図7(a)に示す素子構造が形成される。すなわち、素子形成工程では、素子分離103、p
-ウエル101、n
-ウエル102、n
+の第1不純物添加領域3a、p
+の第2不純物添加領域3bが、半導体基板1内に形成される。次に、ゲート絶縁膜104、ゲート電極105、ゲート側壁106が、半導体基板1上に形成される。これらの形成方法は、一般的な公知の方法であってもよい。
図7(a)に示す素子構造において、p
-ウエル101内の一対の第1不純物添加領域3a(n型)は、電界効果トランジスタにおけるソース領域及びドレイン領域をそれぞれ構成する。n
-ウエル102内の一対の第2不純物添加領域3b(p型)は、電界効果トランジスタにおけるソース領域及びドレイン領域をそれぞれ構成する。
【0069】
n型の第1不純物添加領域3aにおける不純物は、Asなどの一般的なn型の不純物である。第1不純物添加領域3aは、上述の第1実施形態又は第2実施形態における「(a)基板準備工程」において、n型不純物を用いることで、形成され得る。p型の第2不純物添加領域3bにおける不純物は、ホウ素などである。第2不純物添加領域3bは、上述の第1実施形態又は第2実施形態における「(a)基板準備工程」を用いて、形成される。
【0070】
次に、半導体基板1上に絶縁膜107が堆積される。さらに、絶縁膜107の上面が、CMPなどにより、平坦化される。しかる後、コンタクト孔5が、フォトリソグラフィーとRIE等を用いて、絶縁膜107内に形成される。コンタクト孔5は、絶縁膜107を貫通する。その後、金属層6が、第1不純物添加領域3a及び第2不純物添加領域3bの露出表面上に形成される。この金属層6の形成工程は、上述の第1実施形態又は第2実施形態における「(b)第1金属層形成工程」及び「(c)第2金属層形成工程」と同一である。
【0071】
次に、バリアメタル層7が、金属層6上に堆積される。バリアメタル層7上には、金属層8が堆積される。金属層8は、タングステン等の低抵抗な金属から形成される。
【0072】
しかる後、加熱工程(シリサイド化反応用のアニール工程)が実行される。この加熱工程は、上述の第1実施形態又は第2実施形態における「(d)加熱工程」と同一である。この加熱工程では、上記素子構造が形成された半導体基板1が加熱(アニール)される。このアニールにより、金属層6と第1不純物添加領域3aとが反応して、シリサイド層9aがコンタクト孔5の底部に形成される。シリサイド層9aは、第1実施形態又は第2実施形態において示した二層のシリサイド層を含む。また、このアニールにより、金属層6と第2不純物添加領域3bとが反応し、コンタクト孔5の底部にシリサイド層9bが形成される。シリサイド層9bは、第1実施形態又は第2実施形態において示した二層のシリサイド層(第1シリサイド層91及び第2シリサイド層92)を含む。シリサイド層9aは第1不純物添加領域3aと接触し、シリサイド層9bは第2不純物添加領域3bと接触する。
【0073】
(b)研磨工程
研磨工程では、コンタクト孔5の外に設けられた金属層6、バリアメタル層7及び金属層8が、CMP法等を用いて除去される。CMPは、
図7(b)に示すように、絶縁膜107が露出するまで行われる。これにより、第1不純物添加領域3a側では、シリサイド層9a、金属層6、バリアメタル層7及び金属層8を備えたコンタクトプラグ(電極部)が形成される。また、第2不純物添加領域3b側では、シリサイド層9b、金属層6、バリアメタル層7及び金属層8を備えたコンタクトプラグ(電極部)が形成される。
【0074】
シリサイド層9a及びシリサイド層9bは、上述の第1実施形態又は第2実施形態の製造方法により形成されているので、第1不純物添加領域3a及び第2不純物添加領域3bの高抵抗化が抑制されている。したがって、第1不純物添加領域3aとシリサイド層9aとの間のコンタクト抵抗を低減することができる。また、第2不純物添加領域3bとシリサイド層9bとの間のコンタクト抵抗を低減することができる。
【0075】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。また、以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で、本明細書において説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0076】
1…半導体基板、2…素子分離、3…不純物添加領域、3a…第1不純物添加領域、3b…第2不純物添加領域、4…絶縁膜、5…コンタクト孔、6…金属層、7…バリアメタル層、8…金属層、9…シリサイド層、9a…シリサイド層、9b…シリサイド層、10…コンタクトプラグ、20…酸化膜、21…酸化チタン層、31…ホウ化チタン層、61…第1金属層、62…第2金属層、91…第1シリサイド層、92…第2シリサイド層。