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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】移動局装置および無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04J 3/00 20060101AFI20241107BHJP
   H04B 7/022 20170101ALI20241107BHJP
   H04W 36/08 20090101ALI20241107BHJP
【FI】
H04J3/00 H
H04B7/022
H04J3/00 B
H04W36/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020149351
(22)【出願日】2020-09-04
(65)【公開番号】P2022043858
(43)【公開日】2022-03-16
【審査請求日】2023-08-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、総務省、「次世代映像素材伝送の実現に向けた高効率周波数利用技術に関する研究開発」に係わる委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100163511
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 啓太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 史人
(72)【発明者】
【氏名】鵜澤 史貴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】中川 孝之
【審査官】阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】特表平07-507433(JP,A)
【文献】国際公開第2019/097855(WO,A1)
【文献】特開2014-216791(JP,A)
【文献】特開平08-317446(JP,A)
【文献】特開平08-275244(JP,A)
【文献】特開2012-156976(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0041980(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 3/00
H04B 7/022
H04W 4/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基地局送受信装置を備える基地局装置と、時分割複信方式により通信を行う移動局装置であって、
前記複数の基地局送受信装置の中の一の基地局送受信装置から、固定長のフレームそれぞれにおいて同一タイミングで送信される、前記移動局装置からのアップリンク信号の送信に関する伝送パラメータを含む、ダウンリンク信号を受信する移動局送受信装置と、
前記ダウンリンク信号の先頭に含まれるプリアンブル信号に基づき、前記ダウンリンク信号の先頭を検出する先頭検出処理を行う先頭検出部と、
前記フレームにおける前記ダウンリンク信号の先頭の受信時刻と、前記フレームのフレーム長とに基づき、次のフレームにおける前記ダウンリンク信号の受信時刻を予測する受信時刻予測部と、を備え、
前記先頭検出部は、前記受信時刻予測部により前記ダウンリンク信号の先頭の受信時刻が予測されている場合、前記予測された受信時刻に応じたタイミングで前記先頭検出処理を行い、
前記受信時刻予測部は、前記ダウンリンク信号に、前記ダウンリンク信号を送信する基地局送受信装置の切り替えを通知する切替通知が含まれていた場合、前記受信時刻の予測を停止する、移動局装置。
【請求項2】
請求項に記載の移動局装置において、
前記受信時刻予測部は、前記受信時刻の予測の停止後、前記先頭検出部により、前記ダウンリンク信号の先頭が新たに検出されると、前記予測を再開する、移動局装置。
【請求項3】
複数の基地局送受信装置を備える基地局装置と、時分割複信方式により通信を行う移動局装置であって、
前記複数の基地局送受信装置の中の一の送受信装置から、固定長のフレームそれぞれにおいて同一タイミングで送信される、前記移動局装置からのアップリンク信号の送信に関する伝送パラメータを含む、ダウンリンク信号を受信する移動局送受信装置と、
前記ダウンリンク信号の先頭に含まれるプリアンブル信号に基づき、前記ダウンリンク信号の先頭を検出する先頭検出処理を行う先頭検出部と、
前記フレームにおける前記ダウンリンク信号の先頭の受信時刻と、前記フレームのフレーム長とに基づき、次のフレームにおける前記ダウンリンク信号の受信時刻を予測する受信時刻予測部と、を備え、
前記先頭検出部は、前記受信時刻予測部により前記ダウンリンク信号の先頭の受信時刻が予測されている場合、前記予測された受信時刻に応じたタイミングで前記先頭検出処理を行い、
前記受信時刻予測部は、前記ダウンリンク信号に、前記ダウンリンク信号を送信する基地局送受信装置の切り替えを通知する切替通知と、前記移動局装置から送信されたアップリンク信号を、切替元である第1の基地局送受信装置と切替先である第2の基地局送受信装置とが受信する時間差であるオフセット量とが含まれていた場合、前記フレームにおける前記ダウンリンク信号の先頭の受信時刻と、前記フレームのフレーム長と、前記オフセット量とに基づき、前記第2の基地局送受信装置から送信されるダウンリンク信号の受信時刻を予測する、移動局装置。
【請求項4】
複数の基地局送受信装置を備える基地局装置と、移動局装置とが通信を行う無線通信システムであって、
前記基地局装置は、
前記移動局装置からのアップリンク信号の送信に関する伝送パラメータを決定する伝送パラメータ決定部と、
前記複数の基地局送受信装置の中から、前記伝送パラメータを含むダウンリンク信号を前記移動局装置に送信する一の基地局送受信装置を決定する送信元決定部と、
前記ダウンリンク信号を前記移動局装置に送信する基地局送受信装置の切り替えを前記移動局装置に通知する切替通知を生成する切替通知生成部と、
前記ダウンリンク信号を前記移動局装置に送信する基地局送受信装置が、第1の基地局送受信装置から第2の基地局送受信装置に切り替えられる場合、前記切替通知を前記ダウンリンク信号に含めて、前記第1の基地局送受信装置を介して前記移動局装置に送信した後、所定のタイミングで前記ダウンリンク信号を前記移動局装置に送信する基地局送受信装置を前記第2の基地局送受信装置に切り替える切替部と、を備え、
前記移動局装置は、
前記複数の基地局送受信装置の中の一の基地局送受信装置から、固定長のフレームそれぞれにおいて同一タイミングで送信される、前記伝送パラメータを含むダウンリンク信号を受信する移動局送受信装置と、
前記ダウンリンク信号の先頭に含まれるプリアンブル信号に基づき、前記ダウンリンク信号の先頭を検出する先頭検出処理を行う先頭検出部と、
前記フレームにおける前記ダウンリンク信号の先頭の受信時刻と、前記フレームのフレーム長とに基づき、次のフレームにおける前記ダウンリンク信号の受信時刻を予測する受信時刻予測部と、を備え、
前記先頭検出部は、前記受信時刻予測部により前記ダウンリンク信号の先頭の受信時刻が予測されている場合、前記予測された受信時刻に応じたタイミングで前記先頭検出処理を行い、
前記受信時刻予測部は、前記ダウンリンク信号に前記切替通知が含まれていた場合、前記受信時刻の予測を停止する、無線通信システム。
【請求項5】
複数の基地局送受信装置を備える基地局装置と、移動局装置とが通信を行う無線通信システムであって、
前記基地局装置は、
前記移動局装置からのアップリンク信号の送信に関する伝送パラメータを決定する伝送パラメータ決定部と、
前記複数の基地局送受信装置の中から、前記伝送パラメータを含むダウンリンク信号を前記移動局装置に送信する一の基地局送受信装置を決定する送信元決定部と、
前記ダウンリンク信号を前記移動局装置に送信する基地局送受信装置の切り替えを前記移動局装置に通知する切替通知を生成する切替通知生成部と、
前記移動局装置からのアップリンク信号を第1の基地局送受信装置と第2の基地局送受信装置とが受信する時間差であるオフセット量を計算する時間差計算部と、
前記ダウンリンク信号を前記移動局装置に送信する基地局送受信装置が、前記第1の基地局送受信装置から前記第2の基地局送受信装置に切り替えられる場合、前記切替通知および前記オフセット量を前記ダウンリンク信号に含めて、前記第1の基地局送受信装置を介して前記移動局装置に送信した後、所定のタイミングで前記ダウンリンク信号を前記移動局装置に送信する基地局送受信装置を前記第2の基地局送受信装置に切り替える切替部と、を備え、
前記移動局装置は、
前記複数の基地局送受信装置の中の一の送受信装置から、固定長のフレームそれぞれにおいて同一タイミングで送信される、前記伝送パラメータを含むダウンリンク信号を受信する移動局送受信装置と、
前記ダウンリンク信号の先頭に含まれるプリアンブル信号に基づき、前記ダウンリンク信号の先頭を検出する先頭検出処理を行う先頭検出部と、
前記フレームにおける前記ダウンリンク信号の先頭の受信時刻と、前記フレームのフレーム長とに基づき、次のフレームにおける前記ダウンリンク信号の受信時刻を予測する受信時刻予測部と、を備え、
前記先頭検出部は、前記受信時刻予測部により前記ダウンリンク信号の先頭の受信時刻が予測されている場合、前記予測された受信時刻に応じたタイミングで前記先頭検出処理を行い、
前記受信時刻予測部は、前記ダウンリンク信号に、前記切替通知と、前記オフセット量とが含まれていた場合、前記フレームにおける前記ダウンリンク信号の先頭の受信時刻と、前記フレームのフレーム長と、前記オフセット量とに基づき、前記第2の基地局送受信装置から送信されるダウンリンク信号の受信時刻を予測する、無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局装置、移動局装置および無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
番組素材伝送用の無線伝送装置であるFPU(Field Pickup Unit)は、番組の中継あるいは取材した映像を放送局へ送信する装置として重要なものとなっている。特に、駅伝およびマラソンなどの番組中継では、移動する中継車から映像および音声を伝送するために、FPUは不可欠なものとなっている。
【0003】
近年、FPUにおける伝送方式として、TDD-SVD-MIMO(Time Division Duplex-Singular Value Decomposition-Multiple-Input Multiple-Output)方式の検討が進められている(例えば、特許文献1および非特許文献1参照)。TDD-SVD-MIMO方式は、移動局装置から基地局装置への信号の送信に関する伝送パラメータを、時分割複信(TDD)を用いて、基地局装置から移動局装置へフィードバックする方式である。本方式によれば、移動局装置(FPU)から基地局装置へ、番組素材を大容量かつ安定的に伝送することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6328021号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】“超高精細度テレビジョン放送番組素材伝送用可搬形準マイクロ波帯OFDM方式デジタル無線伝送システム”、ARIB STD-B75 1.0版、一般社団法人 電波産業会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8は、TDD-SVD-MIMO方式を用いた従来の無線通信システム1Aの構成例を示す図である。
【0007】
図8に示す無線通信システム1Aは、移動局映像・音声装置2と、移動局装置10Aと、基地局装置20Aと、基地局映像・音声装置3とを備える。移動局装置10Aと、基地局装置20Aとは、TDD-SVD-MIMO方式により通信を行う。具体的には、固定長の1つのフレーム(TDDフレーム)内において、移動局装置10Aは、番組素材である映像・音声信号を基地局装置20Aに送信し、基地局装置20Aは、移動局装置10Aによる映像・音声信号の送信に関する伝送パラメータを移動局装置10Aに送信する。以下では、移動局装置10Aから基地局装置20Aに映像・音声信号を送信する回線を上り回線(アップリンク(Up-Link(UL))回線)と称する。また、基地局装置20Aから移動局装置10Aに伝送パラメータなどを送信する回線を下り回線(ダウンリンク(Down-Link(DL))回線)と称する。また、UL回線を介して送信される信号をUL信号と称し、DL回線を介して送信される信号をDL信号と称する。
【0008】
移動局映像・音声装置2は、映像・音声信号を取得するカメラ・マイク、並びに、取得した映像・音声信号をエンコードするエンコーダなどを備える。移動局映像・音声装置2は、取得した映像・音声信号をエンコードして、移動局装置10Aに出力する。
【0009】
移動局装置10Aは、図8に示すように、移動局変復調装置11Aと、移動局送受信装置12とを備える。移動局変復調装置11Aは、移動局映像・音声装置2から出力された映像・音声信号を変調し、UL信号として移動局送受信装置12を介して基地局装置20Aに送信する。また、移動局装置11Aは、移動局送受信装置12を介して受信したDL信号を復調する。
【0010】
基地局装置20Aは、図8に示すように、複数の基地局送受信装置21(基地局送受信装置21-1~21-N)と、基地局変復調装置22Aとを備える。複数の基地局送受信装置21それぞれと、基地局変復調装置22Aとは、例えば、光回線を介して接続される。
【0011】
複数の基地局送受信装置21はそれぞれ、異なる場所に設置される。基地局送受信装置21は、所定の通信範囲を有しており、その通信範囲内に移動局装置10Aが存在する場合、移動局装置10Aと通信可能である。
【0012】
基地局変復調装置22Aは、基地局送受信装置21が受信したUL信号を復調して映像・音声信号を取得し、基地局映像・音声装置3に出力する。また、基地局変復調装置22Aは、移動局装置10AによるUL信号の送信に関する伝送パラメータを決定し、決定した伝送パラメータを含むDL信号を変調して、複数の基地局送受信装置21の中の一の基地局送受信装置21を介して、移動局装置10Aに送信する。
【0013】
基地局映像・音声装置3は、基地局変復調装置22Aから出力された映像・音声信号をデコードするデコーダ、並びに、デコードされた映像・音声信号を再生するモニタ・スピーカなどを含む。
【0014】
マラソンおよび駅伝などの広範囲にわたる中継を行う場合、基地局送受信装置21が複数設置され、移動局装置10Aが移動するにつれて、移動局装置10Aと通信を行う基地局送受信装置21が順次切り替えられる。
【0015】
図9は、移動局装置10Aと通信を行う基地局送受信装置21の切り替えについて説明するための図である。図9においては、簡単のため、隣り合う2つの基地局送受信装置21-1,21-2で切り替えを行う場合を例として説明する。
【0016】
上述したように、基地局送受信装置21-1,21-2はそれぞれ、所定の通信範囲を有する。基地局送受信装置21-1の通信範囲と、基地局送受信装置21-2の通信範囲とは一部が重複しており、その重複範囲を「切替区間」と称する。
【0017】
移動局装置10Aが基地局送受信装置21-1の通信範囲から基地局送受信装置21-2の通信範囲に移動する場合、2つの通信範囲が重複する切替区間において、図9に示すように、DL信号を送信する基地局送受信装置21が、基地局送受信装置21-1から基地局送受信装置21-2に切り替えられる。切り替えは、操作者が手動で行ってもよいし、基地局変復調装置22Aが自動的に行ってもよい。
【0018】
切替区間においては、移動局装置10Aから送信されたUL信号は基地局送受信装置21-1および基地局送受信装置21-2の両方で受信可能である。基地局送受信装置21-1,21-2それぞれで受信されたUL信号は基地局変復調装置22Aに集約されて合成などの処理が行われる。
【0019】
図10は、上述した切替区間における基地局送受信装置21-1,21-2および移動局装置10Aの動作を時系列的に示す図である。
【0020】
図10に示すように、TDD方式では、固定長のTDDフレームの中で、基地局送受信装置21からのDL信号の送信と、移動局装置10AからのUL信号の送信とが時間的に交互に行われる。また、DL信号およびUL信号の先頭には、信号の先頭位置を検出するための目印となるプリアンブル信号が含まれる。
【0021】
移動局装置10Aが切替区間に存在する場合、移動局装置10Aから送信されたUL信号は、基地局送受信装置21-1および基地局送受信装置21-2それぞれで受信される。この際、移動局装置10Aから基地局送受信装置21-1,21-2までの距離の差によって、UL信号が基地局送受信装置21-1,21-2それぞれで受信される時間に差が発生する。ただし、基地局変復調装置22Aにおいてこの差を吸収し、合成などの処理を行うことができる。
【0022】
複数の基地局送受信装置21の中の一の基地局送受信装置21(図10では、基地局送受信装置21-1)から送信されたDL信号は移動局装置10Aで受信される。移動局装置10Aは、DL信号に含まれるプリアンブル信号を目印にDL信号の先頭を検出する。ここで、多数の反射波が存在する無線伝搬路では、例えば、到来レベルの高い反射波のプリアンブル信号を先頭位置と誤検出する可能性がある。
【0023】
基地局送受信装置21は、各TDDフレームにおいて同一タイミング(例えば、TDDフレームの先頭)でDL信号を送信する。すなわち、DL信号の送信間隔は一定である。そこで、移動局装置10Aは、最初にDL信号の先頭位置を検出した後は、予め定められた固定のTDDフレームのフレーム長から次のDL信号の受信時刻を予測し、予測した時刻の付近でプリアンブル信号の検出を行う。こうすることで、DL信号の先頭位置の検出精度を高めることができる。
【0024】
図10を参照して説明した、TDDフレームのフレーム長を用いたDL信号の受信時刻の予測を行う際に、DL信号を送信する基地局送受信装置21が切り替えられると、DL信号の先頭位置を正しく検出できない場合があるという問題がある。以下、この問題について、図11を参照して説明する。
【0025】
図11においては、TDDフレーム1およびTDDフレーム2では、基地局送受信装置21-1によりDL信号が送信され、TDDフレーム3において、DL信号を送信する基地局送受信装置21が基地局送受信装置21-1から基地局送受信装置21-2に切り替えられたとする。また、図11においては、基地局送受信装置21-1および基地局送受信装置21-2は、各TDDフレームにおいて同じのタイミング(例えば、TDDフレームの先頭)でDL信号を送信するものとする。
【0026】
図10を参照して説明したように、移動局装置10Aは、フレーム2におけるDL信号の受信時刻と、TDDフレームのフレーム長とに基づき、フレーム3においてDL信号を受信する時刻を予測する。ここで、基地局送受信装置21-2の方が基地局送受信装置21-1よりも移動局装置10Aに近い場合、図11に示すように、TDDフレーム3では、基地局送受信装置21-2から送信されたDL信号が、予測した時刻よりも早く移動局装置10Aに到達する。予測した時刻と実際にDL信号が到達する時刻との差が小さければ、DL信号の先頭を検出することが可能である。一方、予測した時刻と実際にDL信号が到達する時刻との差が大きくなると、移動局装置10Aは、DL信号の先頭位置を正しく検出することができず、その結果、受信エラーが発生する。図11においては、DL信号が予測した時刻よりも早く到達する例を示しているが、DL信号が予測した時刻よりも遅く到達する場合も同様に、DL信号の先頭位置を正しく検出することができない場合がある。
【0027】
上述した問題を避ける方法として、移動局装置10Aと基地局送受信装置21-1,21-2それぞれとの距離が等しい位置で、DL信号を送信する基地局送受信装置21を切り替える方法が考えられる。しかしながら、この方法では、DL信号を送信する基地局送受信装置21を切り替える位置に制約が発生してしまう。また、移動局装置10Aと基地局送受信装置21-1,21-2それぞれとの距離が等しくなる理想の位置で、DL信号を送信する基地局送受信装置21を切り替えることができないことが想定される。例えば、移動局装置10Aと基地局送受信装置21-1,21-2それぞれとの距離が等しくなる位置で、切替先である基地局送受信装置21-2と移動局装置10Aとの間に遮蔽物が存在するなど、信号の送受信に支障がある場合は、切り替えを行うべきではない。
【0028】
本発明の目的は、上述した課題を解決し、DL信号を送信する基地局送受信装置の切り替えに伴う受信エラーの発生を低減することができる、基地局装置、移動局装置および無線通信システム受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0031】
また、本発明に係る移動局装置は、複数の基地局送受信装置を備える基地局装置と、時分割複信方式により通信を行う移動局装置であって、前記複数の基地局送受信装置の中の一の基地局送受信装置から、固定長のフレームそれぞれにおいて同一タイミングで送信される、前記移動局装置からのアップリンク信号の送信に関する伝送パラメータを含む、ダウンリンク信号を受信する移動局送受信装置と、前記ダウンリンク信号の先頭に含まれるプリアンブル信号に基づき、前記ダウンリンク信号の先頭を検出する先頭検出処理を行う先頭検出部と、前記フレームにおける前記ダウンリンク信号の先頭の受信時刻と、前記フレームのフレーム長とに基づき、次のフレームにおける前記ダウンリンク信号の受信時刻を予測する受信時刻予測部と、を備え、前記先頭検出部は、前記受信時刻予測部により前記ダウンリンク信号の先頭の受信時刻が予測されている場合、前記予測された受信時刻に応じたタイミングで前記先頭検出処理を行い、前記受信時刻予測部は、前記ダウンリンク信号に、前記ダウンリンク信号を送信する基地局送受信装置の切り替えを通知する切替通知が含まれていた場合、前記受信時刻の予測を停止する。
【0032】
また、本発明に係る受信装置において、前記受信時刻予測部は、前記受信時刻の予測の停止後、前記先頭検出部により、前記ダウンリンク信号の先頭が新たに検出されると、前記予測を再開することが好ましい。
【0033】
また、本発明に係る移動局装置は、複数の基地局送受信装置を備える基地局装置と、時分割複信方式により通信を行う移動局装置であって、前記複数の基地局送受信装置の中の一の送受信装置から、固定長のフレームそれぞれにおいて同一タイミングで送信される、前記移動局装置からのアップリンク信号の送信に関する伝送パラメータを含む、ダウンリンク信号を受信する移動局送受信装置と、前記ダウンリンク信号の先頭に含まれるプリアンブル信号に基づき、前記ダウンリンク信号の先頭を検出する先頭検出処理を行う先頭検出部と、前記フレームにおける前記ダウンリンク信号の先頭の受信時刻と、前記フレームのフレーム長とに基づき、次のフレームにおける前記ダウンリンク信号の受信時刻を予測する受信時刻予測部と、を備え、前記先頭検出部は、前記受信時刻予測部により前記ダウンリンク信号の先頭の受信時刻が予測されている場合、前記予測された受信時刻に応じたタイミングで前記先頭検出処理を行い、前記受信時刻予測部は、前記ダウンリンク信号に、前記ダウンリンク信号を送信する基地局送受信装置の切り替えを通知する切替通知と、前記移動局装置から送信されたアップリンク信号を、切替元である第1の基地局送受信装置と切替先である第2の基地局送受信装置とが受信する時間差であるオフセット量とが含まれていた場合、前記フレームにおける前記ダウンリンク信号の先頭の受信時刻と、前記フレームのフレーム長と、前記オフセット量とに基づき、前記第2の基地局送受信装置から送信されるダウンリンク信号の受信時刻を予測する。
【0034】
また、本発明に係る無線通信システムは、複数の基地局送受信装置を備える基地局装置と、移動局装置とが通信を行う無線通信システムであって、前記基地局装置は、前記移動局装置からのアップリンク信号の送信に関する伝送パラメータを決定する伝送パラメータ決定部と、前記複数の基地局送受信装置の中から、前記伝送パラメータを含むダウンリンク信号を前記移動局装置に送信する一の基地局送受信装置を決定する送信元決定部と、前記ダウンリンク信号を前記移動局装置に送信する基地局送受信装置の切り替えを前記移動局装置に通知する切替通知を生成する切替通知生成部と、前記ダウンリンク信号を前記移動局装置に送信する基地局送受信装置が、第1の基地局送受信装置から第2の基地局送受信装置に切り替えられる場合、前記切替通知を前記ダウンリンク信号に含めて、前記第1の基地局送受信装置を介して前記移動局装置に送信した後、所定のタイミングで前記ダウンリンク信号を前記移動局装置に送信する基地局送受信装置を前記第2の基地局送受信装置に切り替える切替部と、を備え、前記移動局装置は、前記複数の基地局送受信装置の中の一の基地局送受信装置から、固定長のフレームそれぞれにおいて同一タイミングで送信される、前記伝送パラメータを含むダウンリンク信号を受信する移動局送受信装置と、前記ダウンリンク信号の先頭に含まれるプリアンブル信号に基づき、前記ダウンリンク信号の先頭を検出する先頭検出処理を行う先頭検出部と、前記フレームにおける前記ダウンリンク信号の先頭の受信時刻と、前記フレームのフレーム長とに基づき、次のフレームにおける前記ダウンリンク信号の受信時刻を予測する受信時刻予測部と、を備え、前記先頭検出部は、前記受信時刻予測部により前記ダウンリンク信号の先頭の受信時刻が予測されている場合、前記予測された受信時刻に応じたタイミングで前記先頭検出処理を行い、前記受信時刻予測部は、前記ダウンリンク信号に前記切替通知が含まれていた場合、前記受信時刻の予測を停止する。
【0035】
また、本発明に係る無線通信システムは、複数の基地局送受信装置を備える基地局装置と、移動局装置とが通信を行う無線通信システムであって、前記基地局装置は、前記移動局装置からのアップリンク信号の送信に関する伝送パラメータを決定する伝送パラメータ決定部と、前記複数の基地局送受信装置の中から、前記伝送パラメータを含むダウンリンク信号を前記移動局装置に送信する一の基地局送受信装置を決定する送信元決定部と、前記ダウンリンク信号を前記移動局装置に送信する基地局送受信装置の切り替えを前記移動局装置に通知する切替通知を生成する切替通知生成部と、前記移動局装置からのアップリンク信号を第1の基地局送受信装置と第2の基地局送受信装置とが受信する時間差であるオフセット量を計算する時間差計算部と、前記ダウンリンク信号を前記移動局装置に送信する基地局送受信装置が、前記第1の基地局送受信装置から前記第2の基地局送受信装置に切り替えられる場合、前記切替通知および前記オフセット量を前記ダウンリンク信号に含めて、前記第1の基地局送受信装置を介して前記移動局装置に送信した後、所定のタイミングで前記ダウンリンク信号を前記移動局装置に送信する基地局送受信装置を前記第2の基地局送受信装置に切り替える切替部と、を備え、前記移動局装置は、前記複数の基地局送受信装置の中の一の送受信装置から、固定長のフレームそれぞれにおいて同一タイミングで送信される、前記伝送パラメータを含むダウンリンク信号を受信する移動局送受信装置と、前記ダウンリンク信号の先頭に含まれるプリアンブル信号に基づき、前記ダウンリンク信号の先頭を検出する先頭検出処理を行う先頭検出部と、前記フレームにおける前記ダウンリンク信号の先頭の受信時刻と、前記フレームのフレーム長とに基づき、次のフレームにおける前記ダウンリンク信号の受信時刻を予測する受信時刻予測部と、を備え、前記先頭検出部は、前記受信時刻予測部により前記ダウンリンク信号の先頭の受信時刻が予測されている場合、前記予測された受信時刻に応じたタイミングで前記先頭検出処理を行い、前記受信時刻予測部は、前記ダウンリンク信号に、前記切替通知と、前記オフセット量とが含まれていた場合、前記フレームにおける前記ダウンリンク信号の先頭の受信時刻と、前記フレームのフレーム長と、前記オフセット量とに基づき、前記第2の基地局送受信装置から送信されるダウンリンク信号の受信時刻を予測する。
【発明の効果】
【0036】
本発明に係る基地局装置、移動局装置および無線通信システムによれば、DL信号を送信する基地局送受信装置の切り替えに伴う受信エラーの発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の第1の実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す図である。
図2図1に示す基地局変復調装置の構成例を示す図である。
図3図1に示す移動局変復調装置の構成例を示す図である。
図4図1に示す基地局装置および移動局装置の動作の一例を示す図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る基地局装置の構成例を示す図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る移動局装置の構成例を示す図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る基地局装置および移動局装置の動作の一例を示す図である。
図8】従来の無線通信システムの構成例を示す図である。
図9】DL信号を送信する基地局送受信装置の切り替えについて説明するための図である。
図10】DL信号を送信する基地局送受信装置の切り替えの際の基地局装置および移動局装置の動作の一例を示す図である。
図11】DL信号を送信する基地局送受信装置の切り替えの際の課題について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0039】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る無線通信システム1の構成例を示す図である。図1において、図8と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0040】
図1に示す無線通信システム1は、移動局映像・音声装置2と、移動局装置10と、基地局装置20と、基地局映像・音声装置3とを備える。図1に示す無線通信システム1は、図8に示す無線通信システム1Aと比較して、移動局装置10Aを移動局装置10に変更した点と、基地局装置20Aを基地局装置20に変更した点とが異なる。
【0041】
移動局装置10と基地局装置20とは、TDD方式(時分割複信方式)により通信を行う。より具体的には、移動局装置10と基地局装置20とは、TDD-SVD-MIMO方式により通信を行う。TDD-SVD-MIMO方式では、固定長の1つのTDDフレーム内において、移動局装置10は、番組素材である映像・音声信号などを含むアップリンク信号(UL信号)を基地局装置20に送信する。また、基地局装置20は、移動局装置10によるUL信号の送信に関する伝送パラメータなどを含むダウンリンク信号(DL信号)を移動局装置10に送信する。移動局装置10および基地局装置20は、複数のアンテナを用いたMIMO方式により信号の送受信を行うが、MIMO方式自体はよく知られているため、説明を省略する。
【0042】
基地局装置20は、複数の基地局送受信装置21の中で、DL信号を移動局装置10に送信する一の基地局送受信装置21を切り替える場合、DL信号を送信する基地局送受信装置21の切り替えを移動局装置10に通知する切替通知を生成する。基地局装置20は、生成した切替通知を含むDL信号を、切替元の基地局送受信装置21(第1の基地局送受信装置)を介して、移動局装置10に送信する。基地局装置20は、切替通知を含むDL信号を送信した後、移動局装置10で既知の所定のタイミング(例えば、次のTDDフレーム)で、DL信号を送信する基地局送受信装置21を、切替先の基地局送受信装置21(第2の基地局送受信装置)に切り替える。
【0043】
移動局装置10は、切替通知を含むDL信号を受信すると、DL信号を送信する基地局送受信装置21の切り替えのタイミングに合わせて、図10を参照して説明した、DL信号の受信時刻の予測を停止する。移動局装置10は、DL信号の先頭の検出前と同様に、プリアンブル信号のみを用いて、切替先の基地局送受信装置21から送信されてきたDL信号の先頭を検出する。
【0044】
次に、本実施形態に係る移動局装置10および基地局装置20の構成についてより詳細に説明する。まず、本実施形態に係る基地局装置20の構成について説明する。
【0045】
図1に示すように、基地局装置20は、複数の基地局送受信装置21(基地局送受信装置21-1~21-N)と、基地局変復調装置22とを備える。
【0046】
図8を参照して説明したように、複数の基地局送受信装置21はそれぞれ、異なる場所に設置されている。基地局送受信装置21は、所定の通信範囲を有しており、その通信範囲内に移動局装置10が存在する場合、移動局装置10と通信可能である。
【0047】
基地局変復調装置22は、基地局送受信装置21が受信したUL信号を復調し、UL受信データ(映像・音声信号)を基地局映像・音声装置3に出力する。また、基地局変復調装置22は、移動局装置10に送信するDL送信データが入力され、DL送信データなどを変調してDL信号として、基地局送受信装置21を介して移動局装置10に送信する。
【0048】
図2に示すように、基地局変復調装置22は、複数のUL信号先頭検出部221(UL信号先頭検出部221-1~221-N)と、UL信号受信時刻比較部222と、UL信号復調部223と、DL信号送信元決定部224と、遅延部225と、DL切替通知生成部226と、伝送パラメータ決定部227と、DL信号変調部228と、DL信号送信元選択部229とを備える。
【0049】
UL信号先頭検出部221-1~221-Nはそれぞれ、基地局送受信装置21-1~21-Nに対応して設けられる。UL信号先頭検出部221は、対応する基地局送受信装置21が受信したUL信号の先頭を検出し、検出結果をUL信号とともにUL信号受信時刻比較部222に出力する。
【0050】
UL信号受信時刻比較部222は、移動局装置10から送信されたUL信号が複数の基地局送受信装置21で受信された場合、対応するUL信号先頭検出部221の検出結果に基づき、それぞれの基地局送受信装置21におけるUL信号の受信時刻を比較する。そして、UL信号受信時刻比較部222は、比較結果をUL信号とともにUL信号復調部223に出力する。
【0051】
UL信号復調部223は、UL信号受信時刻比較部222から出力されたUL信号を復調して、移動局装置10から送信されてきた映像・音声信号(UL受信データ)を取得し、基地局映像・音声装置3に出力する。また、UL信号復調部223は、MER(Modulation Error Ratio)などの、移動局装置10とUL信号を受信した基地局送受信装置21との間の伝搬路の状態を示す情報を伝送パラメータ決定部227に出力する。なお、UL信号復調部223は、移動局装置10から送信されたUL信号が複数の基地局送受信装置21で受信された場合、UL信号受信時刻比較部222の比較結果に基づき、複数の基地局送受信装置21で受信されたUL信号を合成するなどして復調する。
【0052】
送信元決定部としてのDL信号送信元決定部224は、複数の基地局送受信装置21の中から、DL信号を移動局装置10に送信する一の基地局送受信装置21を決定する。DL信号送信元決定部224は、例えば、管理者によるDL信号を送信する基地局送受信装置21の切替操作に応じて、DL信号を移動局装置10に送信する一の基地局送受信装置21を決定する。DL信号送信元決定部224は、DL信号を移動局装置10に送信するの基地局送受信装置21を決定すると、決定した基地局送受信装置21を遅延部225およびDL切替通知生成部226に通知する。
【0053】
遅延部225は、各TDDフレームにおいてDL信号を送信する基地局送受信装置21がDL信号送信元決定部224により決定された基地局送受信装置21となるように、必要に応じて、DL信号送信元決定部224からの通知を遅延させてDL信号送信元選択部229に出力する。
【0054】
切替通知生成部としてのDL切替通知生成部226は、DL信号送信元決定部224からの通知に基づき、DL信号を移動局装置10に送信する基地局送受信装置21が切り替えられる場合、切替通知を生成し、DL信号変調部228に出力する。
【0055】
伝送パラメータ決定部227は、UL信号復調部223から出力された情報に基づき、移動局装置10によるUL信号の送信に関する伝送パラメータ(例えば、変調方式、送信電力など)を決定し、DL信号変調部228に出力する。
【0056】
DL信号変調部228は、DL送信データおよび伝送パラメータ決定部227により決定された伝送パラメータが入力される。また、DL信号変調部228は、DL信号を送信する基地局送受信装置21が切り替えられる場合には、切替通知がDL切替通知生成部226から入力される。DL信号変調部228は、プリアンブル信号、伝送パラメータおよびDL送信データを含むDL信号を変調して、DL信号送信元選択部229に出力する。また、DL信号変調部228は、切替通知が入力された場合には、DL信号に切替通知をさらに含めて、DL信号送信元選択部229に出力する。
【0057】
切替部としてのDL信号送信元選択部229は、遅延部225を介してDL信号送信元決定部224からの通知された基地局送受信装置21に、DL信号変調部228から出力されたDL信号を出力する。基地局送受信装置21に出力されたDL信号は、移動局装置10に送信される。
【0058】
より具体的に説明すると、DL信号送信元選択部229は、DL信号を移動局装置10に送信する基地局送受信装置21が、切替元の基地局送受信装置21(第1の基地局送受信装置)から切替先の基地局送受信装置21(第2の基地局送受信装置)に切り替えられる場合、切替通知をDL信号に含めて、切替元の基地局送受信装置21を介して移動局装置10に送信する。また、DL信号送信元選択部229は、切替通知を含むDL信号を切替元の基地局送受信装置21を介して移動局装置10に送信した後、所定のタイミングで、DL信号送信元決定部224の通知に従い、DL信号を出力する基地局送受信装置21を、切替先の基地局送受信装置21に切り替える。つまり、DL信号送信元選択部229は、切替通知を含むDL信号を、切替元の基地局送受信装置21を介して移動局装置10に送信した後、所定のタイミングで、DL信号を送信する基地局送受信装置21を切り替える。なお、切替通知を含むDL信号を送信した後、DL信号を送信する基地局送受信装置21を切り替えるタイミングは、例えば、1TDDフレーム後あるいは2TDDフレーム後といったように設定することができ、移動局装置10および基地局装置20で事前に共有される。
【0059】
次に、移動局装置10の構成について図1を参照して説明する。
【0060】
図1に示すように、移動局装置10は、移動局変復調装置11と、移動局送受信装置12とを備える。移動局変復調装置11は、移動局映像・音声装置2から映像・音声信号が入力される。移動局変復調装置11は、入力された映像・音声信号を復調し、UL信号として移動局送受信装置12を介して基地局装置20に送信する。また、移動局変復調装置11は、移動局送受信装置12が受信したDL信号を復調し、DL信号に含まれる伝送パラメータなどを取得する。
【0061】
移動局変復調装置11は、図3に示すように、DL信号先頭検出部111と、DL信号受信時刻予測部112と、DL信号復調部113と、UL信号変調部114とを備える。
【0062】
先頭検出部としてのDL信号先頭検出部111は、移動局送受信装置12が受信したDL信号の先頭を検出する先頭検出処理を行い、検出結果をDL信号受信時刻予測部112に出力する。また、DL信号先頭検出部111は、DL信号の先頭の検出結果をDL信号とともにDL信号復調部113に出力する。
【0063】
受信時刻予測部としてのDL信号受信時刻予測部112は、DL信号先頭検出部111により、あるTDDフレームで受信されたDL信号の先頭が検出されると、DL信号の先頭の受信時刻と、TDDフレームのフレーム長とに基づき、次のTDDフレームにおけるDL信号の受信時刻を予測する。DL信号受信時刻予測部112は、予測した、次のTDDフレームにおけるDL信号の受信時刻を、DL信号先頭検出部111およびDL信号復調部113に出力する。
【0064】
図10を参照して説明したように、DL信号先頭検出部111は、初めはDL信号に含まれるプリアンブル信号のみを用いてDL信号の先頭を検出する。DL信号先頭検出部111は、DL信号受信時刻予測部112によりDL信号の受信時刻が予測されると、その予測された受信時刻に応じたタイミング(例えば、予測された受信時刻の前後の所定時間内)で先頭検出処理を行う。
【0065】
DL信号復調部113は、DL信号先頭検出部111から出力されたDL信号を復調し、DL信号に含まれるDL受信データを移動局映像・音声装置2に出力する。また、DL信号復調部113は復調したDL信号に含まれる伝送パラメータをUL信号変調部114に出力する。また、DL信号復調部113は、復調したDL信号に切替通知が含まれていた場合、DL信号受信時刻予測部112にDL信号の受信時刻の予測を停止させる。つまり、本実施形態においては、DL信号受信時刻予測部112は、DL信号に切替通知が含まれていた場合、DL信号の受信時刻の予測を停止する。
【0066】
UL信号変調部114は、入力されたUL送信データ(映像・音声信号)などを、DL信号復調部113から入力された伝送パラメータに従い変調し、UL信号として、移動局送受信装置12を介して基地局装置20(基地局送受信装置21)に送信する。
【0067】
次に、本実施形態に係る移動局装置10および基地局装置20の動作について、図4を参照して説明する。図4においては、移動局装置10にDL信号を送信する基地局送受信装置21は、TDDフレーム3までは基地局送受信装置21-1であり、TDDフレーム4において、基地局送受信装置21-2に切り替えられるとする。また、基地局送受信装置21-1,21-2は、固定長のTDDフレームそれぞれにおいて同一のタイミングでDL信号を送信するものとする。
【0068】
TDDフレーム1においては、基地局送受信装置21-1がDL信号を送信する。移動局装置10の移動局送受信装置12は、基地局送受信装置21-1から送信されてきたDL信号を受信する。DL信号先頭検出部111は、DL信号に含まれるプリアンブル信号のみを用いて、DL信号の先頭を検出する。DL信号受信時刻予測部112は、DL信号の先頭の検出時刻と、TDDフレームのフレーム長とに基づき、次のTDDフレーム(TDDフレーム2)におけるDL信号の受信時刻を予測する。
【0069】
TDDフレーム2においては、基地局送受信装置21-1がDL信号を送信する。移動局送受信装置12は、基地局送受信装置21-1から送信されてきたDL信号を受信する。DL信号先頭検出部111は、DL信号受信時刻予測部112により予測された受信時刻に応じたタイミングで先頭検出処理を行う。DL信号受信時刻予測部112は、TDDフレーム1と同様に、次のTDDフレーム(TDDフレーム3)におけるDL信号の受信時刻を予測する。
【0070】
TDDフレーム3においては、基地局送受信装置21-1がDL信号を送信する。ここで、次のTDDフレーム4において、DL信号を移動局装置10に送信する基地局送受信装置21が基地局送受信装置21-1から基地局送受信装置21-2に切り替えられるため、DL切替通知生成部226は、切替通知を生成し、DL信号変調部228に出力する。DL信号変調部228は、切替通知を含むDL信号を変調し、DL信号送信元選択部219に出力する。DL信号送信元選択部219は、DL信号変調部218から出力されたDL信号を切替元である基地局送受信装置21-1を介して移動局装置10に送信する。
【0071】
移動局装置10の移動局送受信装置12は、基地局送受信装置21-1から送信されてきたDL信号を受信する。DL信号先頭検出部111は、DL信号受信時刻予測部112により予測された受信時刻に応じたタイミングで先頭検出処理を行い、DL信号をDL信号復調部113に出力する。DL信号復調部113は、DL信号先頭検出部111から出力されたDL信号を復調する。上述したように、TDDフレーム3においては、DL信号に切替通知が含まれるため、DL信号受信時刻予測部112は、次のフレーム(TDDフレーム4)におけるDL信号の受信時刻の予測を停止する。
【0072】
TDDフレーム4においては、DL信号を移動局装置10に送信する基地局送受信装置21が基地局送受信装置21-1から基地局送受信装置21-2に切り替えられる。したがって、DL信号送信元選択部229は、DL信号を、基地局送受信装置21-2を介して移動局装置10に送信する。
【0073】
移動局送受信装置12は、基地局送受信装置21-1から送信されてきたDL信号を受信する。上述したように、TDDフレーム3においては、DL信号受信時刻予測部112によりDL信号の受信時刻が予測されていない。そのため、DL信号先頭検出部111は、DL信号に含まれるプリアンブル信号のみを用いて、DL信号の先頭を検出する。DL信号受信時刻予測部112は、DL信号の先頭の検出時刻と、TDDフレームのフレーム長とに基づき、次のTDDフレーム(TDDフレーム5)におけるDL信号の受信時刻を予測する。つまり、DL信号受信時刻予測部112は、受信時刻の予測の停止後、DL信号先頭検出部111により、DL信号の先頭が新たに検出されると、受信時刻の予測を再開する。こうすることで、DL信号を送信する基地局送受信装置21の切り替え後における、DL信号の先頭の検出精度を向上させることができる。
【0074】
このように本実施形態においては、基地局装置20は、DL信号を移動局装置10に送信する基地局送受信装置21を切り替える場合、切替通知をDL信号に含める。移動局装置10は、DL信号に切替通知が含まれる場合、TDDフレームのフレーム長を用いた受信時刻の予測を停止する。
【0075】
そのため、DL信号を送信する基地局送受信装置21の切り替えに伴って、DL信号が移動局装置10に到達するタイミングが変動したとしても、先頭検出処理によりDL信号の先頭を検出することができるので、受信エラーの発生を抑制することができる。
【0076】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態に係る基地局装置40の構成例を示す図である。図6は、本発明の第2の実施形態に係る移動局装置30の構成例を示す図である。図5において、図2と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。また、図6において、図3と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。本実施形態に係る移動局装置30および基地局装置40は、第1の実施形態に係る移動局装置10および基地局装置20と同様に、TDD-SVD-MIMO方式により通信を行う。まず、基地局装置40の構成について説明する。
【0077】
図5に示すように、基地局装置40は、複数の基地局送受信装置21と、基地局変復調装置42とを備える。図5に示す基地局装置40は、図2に示す基地局装置20と比較して、基地局変復調装置22を基地局変復調装置42に変更した点が異なる。
【0078】
基地局変復調装置42は、複数のUL信号先頭検出部221と、UL信号受信時刻比較部222と、UL信号復調部223と、DL信号送信元決定部224と、遅延部225と、DL切替通知生成部226と、伝送パラメータ決定部227と、DL送信元選択部229と、時間差計算部421と、DL信号変調部422とを備える。図5に示す基地局変復調装置42は、図2に示す基地局変復調装置22と比較して、時間差計算部421を追加した点と、DL信号変調部228をDL信号変調部428に変更した点とが異なる。
【0079】
時間差計算部421は、DL信号送信元決定部224により、DL信号を送信する基地局送受信装置21の切り替えが決定されると、UL信号受信時刻比較部222による比較結果に基づき、移動局装置10からのUL信号を、切替元の基地局送受信装置21と切替先の基地局送受信装置21とが受信する時間差であるオフセット量を計算する。時間差計算部421は、計算したオフセット量をDL信号変調部422に出力する。
【0080】
DL信号変調部422は、時間差計算部421からオフセット量が出力されると、切替通知およびオフセット量を含むDL信号を変調し、DL送信元選択部229に出力する。DL送信元選択部229は、DL信号送信元選択部229から出力された、切替通知およびオフセット量を含むDL信号を、切替元の基地局送受信装置21を介して移動局装置30に送信する。つまり、切替部としてのDL送信元選択部229は、切替通知およびオフセット量をDL信号に含めて、切替元の基地局送受信装置21(第1の基地局送受信装置)を介して移動局装置30に送信する。
【0081】
次に、移動局装置30の構成について説明する。
【0082】
図6に示すように、移動局装置30は、移動局変復調装置31と、移動局送受信装置12とを備える。図6に示す移動局装置30は、図3に示す移動局装置10と比較して、移動局変復調装置11を移動局変復調装置31に変更した点が異なる。
【0083】
移動局変復調装置31は、DL信号先頭検出部111と、DL信号受信時刻予測部312と、DL信号復調部313と、UL信号変調部114とを備える。図6に示す移動局変復調装置31は、図3に示す移動局変復調装置11と比較して、DL信号受信時刻予測部112およびDL信号復調部113をそれぞれ、DL信号受信時刻予測部312およびDL信号復調部313に変更した点が異なる。
【0084】
DL信号復調部313は、移動局送受信装置12が受信したDL信号を復調し、DL信号に切替通知およびオフセット量が含まれる場合、オフセット量をDL信号受信時刻予測部312に出力する。
【0085】
DL信号受信時刻予測部312は、あるTDDフレームにおいて受信したDL信号の先頭がDL信号先頭検出部311により検出されると、DL信号の先頭の受信時刻と、TDDフレームのフレーム長とに基づき、次のTDDフレームにおけるDL信号の受信時刻を予測する。本実施形態においては、DL信号受信時刻予測部312は、DL信号復調部313からオフセット量が入力されると、あるTDDフレームにおけるDL信号の先頭の受信時刻と、TDDフレームのフレーム長と、オフセット量とに基づき、次のTDDフレームにおけるDL信号の受信時刻を予測する。具体的には、DL信号受信時刻予測部312は、あるTDDフレームにおけるDL信号の先頭の受信時刻に、TDDフレームのフレーム長を加算し、オフセット量だけ増減した時刻を、次のTDDフレームにおけるDL信号の受信時刻と予測する。
【0086】
次に、本実施形態に係る移動局装置30および基地局装置40の動作について、図7を参照して説明する。図7においては、DL信号を移動局装置30に送信する基地局送受信装置21は、TDDフレーム3までは基地局送受信装置21-1であり、TDDフレーム4において基地局送受信装置21-2に切り替えられるとする。TDDフレーム2までは、図4と同様なので、説明を省略する。
【0087】
TDDフレーム3においては、基地局送受信装置21-1がDL信号を送信する。ここで、次のTDDフレーム4において、DL信号を移動局装置30に送信する基地局送受信装置21が基地局送受信装置21-1から基地局送受信装置21-2に切り替えられるため、DL切替通知生成部226は、切替通知を生成し、DL信号変調部228に出力する。また、時間差計算部421は、切替元である基地局送受信装置21-1と、切替先である基地局送受信装置21-2とが移動局装置30からのUL信号を受信する時間差であるオフセット量を計算する。DL信号変調部422は、切替通知およびオフセット量を含むDL信号を変調し、DL信号送信元選択部219に出力する。DL信号送信元選択部219は、DL信号変調部422から出力されたDL信号を切替元である基地局送受信装置21-1を介して移動局装置30に送信する。
【0088】
移動局装置30の移動局送受信装置12は、基地局送受信装置21-1から送信されてきたDL信号を受信する。DL信号先頭検出部111は、DL信号受信時刻予測部112により予測された受信時刻に応じたタイミングで先頭検出処理を行う。DL信号復調部313は、受信したDL信号を復調し、DL信号に含まれるオフセット量をDL信号受信時刻予測部312に出力する。DL信号受信時刻予測部312は、TDDフレーム3におけるDL信号の先頭の受信時刻と、TDDフレームのフレーム長と、オフセット量とに基づき、TDDフレーム4における受信時刻を推定する。
【0089】
TDDフレーム4では、図4と同様に、DL信号受信時刻予測部312により予測された受信時刻に応じたタイミングで、基地局送受信装置21-2により送信されたDL信号の先頭が検出される。
【0090】
このように本実施形態においては、基地局装置40は、DL信号を移動局装置30に送信する基地局送受信装置21を切り替える場合、切替通知およびオフセット量を含むDL信号を、切替元の基地局送受信装置21を介して送信する。移動局装置30は、TDDフレームにおけるDL信号の先頭の受信時刻と、TDDフレームのフレーム長と、オフセット量とに基づき、次のTDDフレームにおけるDL信号の受信時刻を予測する。
【0091】
そのため、DL信号を送信する基地局送受信装置21の切り替えに伴って、DL信号が移動局装置10に到達するタイミングが変動しても、その変動分を加味してDL信号の先頭を検出することができるので、受信エラーの発生を抑制することができる。
【0092】
なお、上述した第1及び第2の実施形態においては、DL信号を移動局装置10,30に送信する基地局送受信装置21を切り替えるTDDフレームの1つ前のTDDフレームで、切替通知を送信する例を用いて説明したが、これに限られるものではない。例えば、DL信号を移動局装置10,30に送信する基地局送受信装置21を切り替えるTDDフレームの前の複数のTDDフレームに亘って、切替通知が送信されてもよい。また、切替通知を送信後、DL信号を移動局装置10,30に送信する基地局送受信装置21を切り替えるのは、数フレーム後であってもよい。
【0093】
なお、実施形態では特に触れていないが、コンピュータを、移動局装置10,30または基地局装置20,40として機能させるプログラムが提供されてもよい。また、プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROMなどの記録媒体であってもよい。
【0094】
あるいは、移動局装置10,30または基地局装置20,40が行う各処理を実行するためのプログラムを記憶するメモリ、および、メモリに記憶されたプログラムを実行するプロセッサによって構成され、移動局装置10,30または基地局装置20,40に搭載されるチップが提供されてもよい。
【0095】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨および範囲内で、多くの変更および置換が可能であることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形および変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0096】
1,1A 無線通信システム
2 移動局映像・音声装置
3 基地局映像・音声装置
10,30 移動局装置
11 移動局変復調装置
12 移動局送受信装置
20,40 基地局装置
21 基地局送受信装置
22,42 基地局変復調装置
111 DL信号先頭検出部(先頭検出部)
112,312 DL信号受信時刻予測部(受信時刻予測部)
113,313 DL信号復調部
114 UL信号変調部
221 UL信号先頭検出部
222 UL信号受信時刻比較部
223 UL信号復調部
224 DL信号送信元決定部(送信元決定部)
225 遅延部
226 DL切替通知生成部(切替通知生成部)
227 伝送パラメータ決定部
228,422 DL信号変調部
229 DL信号送信元選択部(切替部)
421 時間差計算部
図1
図2
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図11