(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】磁気抵抗効果素子の製造方法、酸化処理装置、及び基板処理システム
(51)【国際特許分類】
H10N 50/01 20230101AFI20241107BHJP
H10N 50/10 20230101ALI20241107BHJP
【FI】
H10N50/01
H10N50/10
(21)【出願番号】P 2020158389
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】中村 貫人
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-203408(JP,A)
【文献】国際公開第2010/026705(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0110657(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2001/0021537(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0227018(US,A1)
【文献】特開2018-056391(JP,A)
【文献】特開2016-134510(JP,A)
【文献】国際公開第2017/134697(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/117359(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 50/01
H10N 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 酸化処理装置の基板支持部上に基板を載置する工程であり、該基板は、強磁性層と該強磁性層上に設けられたマグネシウム層を有する、該工程と、
(b) 前記マグネシウム層から酸化マグネシウム層を形成するために、前記基板支持部を150ケルビン以下の温度に設定した状態で前記基板に酸素ガスを供給することにより、前記マグネシウム層を酸化させる工程と、
を含む磁気抵抗効果素子の製造方法。
【請求項2】
前記(b)において、前記基板が回転される、請求項1に記載の磁気抵抗効果素子の製造方法。
【請求項3】
(c) 前記(b)の後に、前記基板の温度を上昇させる工程を更に含む、請求項1又は2に記載の磁気抵抗効果素子の製造方法。
【請求項4】
(d) 前記(c)の後に、前記酸化マグネシウム層上に別のマグネシウム層を形成する工程と、
(e) 前記別のマグネシウム層を酸化させるために、前記別のマグネシウム層を有する前記基板に酸素ガスを供給する工程と、
を更に含み、
前記(e)における前記基板の温度は、前記(b)における前記基板の温度よりも高い、
請求項3に記載の磁気抵抗効果素子の製造方法。
【請求項5】
チャンバと、
前記チャンバ内で基板を支持するように構成された基板支持部と、
150ケルビン以下の温度に該基板支持部を冷却するように構成された冷凍機と、
前記チャンバ内に酸素ガスを供給するように構成されたガス供給部と、
を備え、
強磁性層と該強磁性層上に設けられたマグネシウム層を有する前記基板がその上に載置された前記基板支持部を150ケルビン以下の温度に冷却した状態で、前記ガス供給部から前記チャンバ内に酸素ガスを供給するように構成されている、酸化処理装置。
【請求項6】
前記基板支持部を回転させるように構成された駆動機構を更に備える、請求項5に記載の酸化処理装置。
【請求項7】
複数のプロセスモジュールと、
前記複数のプロセスモジュールに接続された真空チャンバ及び該複数のプロセスモジュールのうち任意の二つのプロセスモジュール間で該真空チャンバを介して基板を搬送するように構成された搬送装置を含む搬送モジュールと、
を備え、
前記複数のプロセスモジュールは、
基板の強磁性層上にマグネシウム層を形成するように構成された成膜装置と、
請求項5又は6に記載の酸化処理装置であり、前記マグネシウム層から酸化マグネシウム層を形成するために、前記基板支持部を150ケルビン以下の温度に設定した状態で前記基板に酸素ガスを供給するように構成された、該酸化処理装置と、
を含む、基板処理システム。
【請求項8】
前記複数のプロセスモジュールは、
前記基板を加熱し、前記酸化マグネシウム層上に別のマグネシウム層を形成し、前記別のマグネシウム層を酸化させるように構成された一つ以上のプロセスモジュールを含み、
前記一つ以上のプロセスモジュールは、前記基板の温度を、前記酸化処理装置における前記基板の温度よりも高い温度に設定するように構成されている、
請求項7に記載の基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、磁気抵抗効果素子の製造方法、酸化処理装置、及び基板処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気抵抗効果素子が、ハードディスクドライブ又はMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)といったデバイスにおいて利用されている。酸化マグネシウムから形成されたトンネルバリア層を有するトンネル磁気抵抗素子は、高いMR比(磁気抵抗変化率)を示すことが知られている。トンネル磁気抵抗素子では、二つの強磁性層の間にトンネルバリア層が設けられている。
【0003】
磁気抵抗効果素子の製造においては、マグネシウム層が、二つの強磁性層のうち一方の強磁性層を有する基板上に形成される。そして、マグネシウム層が、酸素ガスを用いて酸化される。下記の特許文献1は、磁気抵抗効果素子の酸化マグネシウム層を形成する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、酸化マグネシウム層の形成において下地の強磁性層の酸化を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの例示的実施形態において、磁気抵抗効果素子の製造方法が提供される。製造方法は、酸化処理装置の基板支持部上に基板を載置する工程(a)を含む。基板は、強磁性層とマグネシウム層を有する。マグネシウム層は、強磁性層上に設けられている。製造方法は、マグネシウム層から酸化マグネシウム層を形成するために、基板支持部を150ケルビン以下の温度に設定した状態で基板に酸素ガスを供給することにより、マグネシウム層を酸化させる工程(b)を更に含む。
【発明の効果】
【0007】
一つの例示的実施形態によれば、酸化マグネシウム層の形成において下地の強磁性層の酸化を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一つの例示的実施形態に係る磁気抵抗効果素子の製造方法の流れ図である。
【
図2】磁気抵抗効果素子を含む一例の基板の部分拡大断面図である。
【
図3】第1のマグネシウム層の形成後の状態の一例の基板の部分拡大断面図である。
【
図4】酸化処理後の状態の一例の基板の部分拡大断面図である。
【
図5】第2のマグネシウム層の形成後の状態の一例の基板の部分拡大断面図である。
【
図6】酸化処理後の状態の一例の基板の部分拡大断面図である。
【
図7】一つの例示的実施形態に係る基板処理システムを示す図である。
【
図8】一つの例示的実施形態に係る酸化処理装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0010】
一つの例示的実施形態において、磁気抵抗効果素子の製造方法が提供される。製造方法は、酸化処理装置の基板支持部上に基板を載置する工程(a)を含む。基板は、強磁性層とマグネシウム層を有する。マグネシウム層は、強磁性層上に設けられている。製造方法は、マグネシウム層から酸化マグネシウム層を形成するために、基板支持部を150ケルビン以下の温度に設定した状態で基板に酸素ガスを供給することにより、マグネシウム層を酸化させる工程(b)を更に含む。
【0011】
上記実施形態の製造方法では、酸素ガスを用いたマグネシウム層の酸化の際に、基板支持部の温度が、150ケルビン以下の低温に設定される。したがって、上記実施形態の製造方法では、深さ方向における基板の酸化速度の制御性が高い。故に、上記実施形態の製造方法によれば、マグネシウム層の下地の強磁性層の酸化を抑制することが可能となる。
【0012】
一つの例示的実施形態では、基板が、工程(b)において回転されてもよい。
【0013】
一つの例示的実施形態において、製造方法は、工程(b)の後に、基板の温度を上昇させる工程(c)を更に含んでいてもよい。
【0014】
一つの例示的実施形態において、製造方法は、工程(c)の後に、酸化マグネシウム層上に別のマグネシウム層を形成する工程(d)を更に含んでいてもよい。製造方法は、別のマグネシウム層を酸化させるために、別のマグネシウム層を有する基板に酸素ガスを供給する工程(e)を更に含んでいてもよい。工程(e)における基板の温度は、工程(b)における基板の温度よりも高い。この実施形態によれば、酸化マグネシウム層の結晶性が高められる。
【0015】
別の例示的実施形態において、酸化処理装置が提供される。酸化処理装置は、チャンバ、基板支持部、及び冷凍機を備える。基板支持部は、チャンバ内で基板を支持するように構成されている。冷凍機は、150ケルビン以下の温度に基板支持部を冷却するように構成されている。ガス供給部は、チャンバ内に酸素ガスを供給するように構成されている。酸化処理装置は、強磁性層と該強磁性層上に設けられたマグネシウム層を有する基板がその上に載置された基板支持部を150ケルビン以下の温度に冷却した状態で、ガス供給部からチャンバ内に酸素ガスを供給するように構成されている。
【0016】
一つの例示的実施形態において、酸化処理装置は、基板支持部を回転させるように構成された駆動機構を更に備えていてもよい。
【0017】
更に別の例示的実施形態において、基板処理システムが提供される。基板処理システムは、複数のプロセスモジュール及び搬送モジュールを備える。搬送モジュールは、真空チャンバ及び搬送モジュールを含む。真空チャンバは、複数のプロセスモジュールに接続されている。搬送装置は、複数のプロセスモジュールのうち任意の二つのプロセスモジュール間で真空チャンバを介して基板を搬送するように構成されている。複数のプロセスモジュールは、成膜装置及び酸化処理装置を含む。成膜装置は、基板の強磁性層上にマグネシウム層を形成するように構成されている。酸化処理装置は、上述した例示的実施形態のうち何れかの酸化処理装置であり、マグネシウム層から酸化マグネシウム層を形成するために、基板支持部を150ケルビン以下の温度に設定した状態で基板に酸素ガスを供給するように構成されている。
【0018】
一つの例示的実施形態において、複数のプロセスモジュールは、基板を加熱し、酸化マグネシウム層上に別のマグネシウム層を形成し、別のマグネシウム層を酸化させるように構成された一つ以上のプロセスモジュールを含んでいてもよい。一つ以上のプロセスモジュールは、基板の温度を、酸化処理装置における基板の温度よりも高い温度に設定するように構成されている。
【0019】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0020】
図1は、一つの例示的実施形態に係る磁気抵抗効果素子の製造方法の流れ図である。
図1に示す製造方法(以下、「方法MT」という)は、磁気抵抗効果素子を製造するために実行される。
【0021】
図2は、磁気抵抗効果素子を含む一例の基板の部分拡大断面図である。方法MTは、
図2に示す基板Wにおける磁気抵抗効果素子の製造に適用され得る。基板Wは、ベース領域BR、下部電極LE、下地層UL、反強磁性層AL、ピン層PL、スペーサ層SL、第1の強磁性層FL1、酸化マグネシウム層MOL、第2の強磁性層FL2、及びキャップ層CLを含む。
【0022】
下部電極LEは、ベース領域BR上に設けられている。下地層ULは、下部電極LE上に設けられている。下地層ULは、第1の下地層UL1及び第2の下地層UL2を含んでいてもよい。第1の下地層UL1は、下部電極LE上に設けられており、例えばTaから形成されている。第2の下地層UL2は、第1の下地層UL1上に設けられており、例えばRuから形成されている。反強磁性層ALは、下地層UL上に設けられている。反強磁性層ALは、IrMn、PtMn等から形成される。ピン層PLは、反強磁性層AL上に設けられている。ピン層PLは、CoFe等の強磁性材料から形成されている。スペーサ層SLは、ピン層PL上に設けられている。スペーサ層SLは、Ru、Rh、Ir等から形成されている。
【0023】
第1の強磁性層FL1は、スペーサ層SL上に設けられている。第1の強磁性層FL1は、参照層であり、CoFeB、CoFe、CoFeBとCoFeの組合せ等の強磁性材料から形成されている。酸化マグネシウム層MOLは、第1の強磁性層FL1上に設けられており、酸化マグネシウムから形成されている。第2の強磁性層FL2は、酸化マグネシウム層MOL上に設けられている。第2の強磁性層FL2は、記憶層であり、CoFeB、CoFe、CoFeBとCoFeの組合せ等の強磁性材料から形成されている。キャップ層CLは、第2の強磁性層FL2上に設けられている。
【0024】
キャップ層CLは、第1のキャップ層CL1及び第2のキャップ層CL2を含んでいてもよい。第1のキャップ層CL1は、第2の強磁性層FL2上に設けられている。第2のキャップ層CL2は、第1のキャップ層CL1上に設けられている。第1のキャップ層CL1及び第2のキャップ層CL2は、基板Wのアニール時に下地の層からボロンを吸収し易い材料から形成され得る。例えば、第1のキャップ層CL1は、Taから形成され、第2のキャップ層CL2は、Ruから形成される。
【0025】
図1を再び参照する。方法MTは、工程ST1で開始する。工程ST1では、下地領域UR上に下部電極LE、下地層UL、反強磁性層AL、ピン層PL、及びスペーサ層SLを含む複数の層が形成される。下部電極LE、下地層UL、反強磁性層AL、ピン層PL、及びスペーサ層SLは、一つ以上の成膜装置を用いて、例えば物理気相成長法(又はスパッタリング法)により形成される。
【0026】
続く工程ST2では、第1の強磁性層FL1が、スペーサ層SL上に形成される。第1の強磁性層FL1は、成膜装置を用いて、例えば物理気相成長法(又はスパッタリング法)により形成される。
【0027】
続く工程ST3では、第1のマグネシウム層ML1(第1のMg層)が、
図3に示すように、第1の強磁性層FL1上に形成される。第1のマグネシウム層ML1は、マグネシウムから形成される。第1のマグネシウム層ML1は、成膜装置を用いて、例えば物理気相成長法(又はスパッタリング法)により形成される。
【0028】
続く工程STaでは、第1のマグネシウム層ML1を有する基板W(
図3参照)が、酸化処理装置の基板支持部上に準備される。基板Wは、基板支持部上に載置されて、基板支持部によって支持される。
【0029】
続く工程STbでは、第1のマグネシウム層ML1の酸化処理が行われる。工程STbでは、基板支持部を150ケルビン(-123.15℃)以下の温度に設定した状態で、酸素ガスが基板Wに供給される。その結果、第1のマグネシウム層ML1が酸化して、
図4に示すように、第1のマグネシウム層ML1から第1の酸化マグネシウム層MOL1が形成される。工程STbにおいては、基板支持部が回転されて、基板Wがその中心軸線周りに回転されてもよい。
【0030】
続く工程STcでは、基板Wの温度が上昇される。工程STcでは、基板Wの温度は、後述する工程STdにおいて用いられる成膜装置を用いて、上昇されてもよい。或いは、工程STcにおいて、基板Wの温度は、工程STdにおいて用いられる成膜装置とは別の加熱処理装置を用いて上昇されてもよい。
【0031】
続く工程STdでは、別のマグネシウム層、即ち第2のマグネシウム層ML2(第2のMg層)が、
図5に示すように、第1の酸化マグネシウム層MOL1上に形成される。第2のマグネシウム層ML2は、マグネシウムから形成される。第2のマグネシウム層ML2は、成膜装置を用いて、例えば物理気相成長法(又はスパッタリング法)により形成される。
【0032】
続く工程STeでは、第2のマグネシウム層ML2の酸化処理が行われる。工程STeでは、酸素ガスが基板Wに供給される。工程STeにおける基板Wの温度は、工程STbにおける基板Wの温度よりも高い温度に設定される。工程STeにおいて、基板Wを支持する基板支持部が回転されて、基板Wがその中心軸線周りに回転されてもよい。工程STeでは、第2のマグネシウム層ML2が酸化して、第2のマグネシウム層ML2から酸化マグネシウム層が形成される。第2のマグネシウム層ML2から形成される酸化マグネシウム層は、第1の酸化マグネシウム層MOL1と共に、
図6に示すように、酸化マグネシウム層MOLを構成する。
【0033】
続く工程ST4では、第2の強磁性層FL2が、酸化マグネシウム層MOL上に形成される。第2の強磁性層FL2は、成膜装置を用いて、例えば物理気相成長法(又はスパッタリング法)により形成される。
【0034】
続く工程ST5では、キャップ層CLが、第2の強磁性層FL2上に形成される。キャップ層CLは、成膜装置を用いて、例えば物理気相成長法(又はスパッタリング法)により形成される。
【0035】
方法MTでは、酸素ガスを用いた第1のマグネシウム層ML1の酸化の際に、基板支持部の温度が、150ケルビン以下の低温に設定される。したがって、方法MTでは、深さ方向における基板Wの酸化速度の制御性が高い。故に、方法MTによれば、第1のマグネシウム層ML1の下地の第1の強磁性層FL1の酸化を抑制することが可能となる。かかる方法MTによれば、低い抵抗面積積(RA)及び高いMR比を有する磁気抵抗効果素子が製造される。
【0036】
また、工程STeにおける基板Wの温度は、工程STbにおける基板Wの温度よりも高い。工程STeによれば、酸化マグネシウム層MOLの結晶性が高められる。
【0037】
以下、方法MTにおいて用いられ得る基板処理システムについて説明する。
図7は、一つの例示的実施形態に係る基板処理システムを示す図である。
図7に示す基板処理システムPSは、方法MTにおいて用いられ得る。
【0038】
基板処理システムPSは、ロードポートLP1~LP3、複数の容器FP、ローダモジュールLM、アライナAN、ロードロックモジュールLL1,LL2、プロセスモジュールPM1~PM6、搬送モジュールTM、及び制御部MCを備えている。なお、基板処理システムPSにおけるロードポートの個数、容器の個数、ロードロックモジュールの個数は一つ以上の任意の個数であり得る。また、基板処理システムPSにおけるプロセスモジュールの個数は、六つに限定されるものではない。
【0039】
ロードポートLP1~LP3は、ローダモジュールLMの一縁に沿って配列されている。複数の容器FPは、ロードポートLP1~LP3に搭載されている。複数の容器FPの各々は、FOUP(Front Opening Unified Pod)と称される容器であり得る。複数の容器FPの各々は、その内部に基板Wを収容するように構成されている。
【0040】
ローダモジュールLMは、チャンバを有する。ローダモジュールLMのチャンバ内の圧力は、大気圧に設定される。ローダモジュールLMは、搬送装置LMRを有する。搬送装置LMRは、例えば多関節ロボットであり、制御部MCによって制御される。搬送装置LMRは、ローダモジュールLMのチャンバを介して基板Wを搬送するように構成されている。搬送装置LMRは、複数の容器FPの各々とアライナANとの間、アライナANとロードロックモジュールLL1,LL2の各々との間、ロードロックモジュールLL1,LL2の各々と複数の容器FPの各々との間で、基板Wを搬送し得る。アライナANは、ローダモジュールLMに接続されている。アライナANは、基板Wの位置の調整(位置の較正)を行うように構成されている。
【0041】
ロードロックモジュールLL1及びロードロックモジュールLL2の各々は、ローダモジュールLMと搬送モジュールTMとの間に設けられている。ロードロックモジュールLL1及びロードロックモジュールLL2の各々は、予備減圧室を提供している。
【0042】
搬送モジュールTMは、ロードロックモジュールLL1及びロードロックモジュールLL2の各々にゲートバルブを介して接続されている。搬送モジュールTMは、真空チャンバTMCを有している。真空チャンバTMCは、その内部空間が減圧可能であるように構成されている。搬送モジュールTMは、搬送装置TMRを有している。搬送装置TMRは、例えば多関節ロボットであり、制御部MCによって制御される。搬送装置TMRは、真空チャンバTMCを介して基板Wを搬送するように構成されている。搬送装置TMRは、ロードロックモジュールLL1,LL2の各々とプロセスモジュールPM1~PM6の各々との間、及び、プロセスモジュールPM1~PM6のうち任意の二つのプロセスモジュールの間において、基板Wを搬送し得る。
【0043】
プロセスモジュールPM1~PM6の各々は、専用の基板処理を行うように構成された装置である。プロセスモジュールPM1~PM6のうち一つのプロセスモジュールは、方法MTの工程STbにおいて用いられる酸化処理装置である。プロセスモジュールPM1~PM6のうち他のプロセスモジュールは、一つ以上の成膜装置を含む。プロセスモジュールPM1~PM6のうち他のプロセスモジュールは、エッチング装置を含んでいてもよい。以下の説明では、基板処理システムPSは、プロセスモジュールPM1がエッチング装置であり、プロセスモジュールPM2、PM3、PM5、及びPM6が成膜装置であり、プロセスモジュールPM4が酸化処理装置である構成を有するものとする。しかしながら、基板処理システムPSは、他の構成を有していてもよい。
【0044】
制御部MCは、基板処理システムPSの各部を制御するように構成されている。制御部MCは、プロセッサ、記憶装置、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり得る。制御部MCは、記憶装置に記憶されている制御プログラムを実行し、当該記憶装置に記憶されているレシピデータに基づいて基板処理システムPSの各部を制御する。方法MTは、制御部MCによる基板処理システムPSの各部の制御により、基板処理システムPSにおいて実行され得る。
【0045】
方法MTの工程ST1では、下地層UL及び反強磁性層ALが、プロセスモジュールPM2において形成される。プロセスモジュールPM2は、物理気相成長法(又はスパッタリング法)により、下地層UL及び反強磁性層ALを形成する。
【0046】
工程ST1では、ピン層PL及びスペーサ層SLが、プロセスモジュールPM3において形成される。プロセスモジュールPM3は、物理気相成長法(又はスパッタリング法)により、ピン層PL及びスペーサ層SLを形成する。なお、反強磁性層ALの形成後、ピン層PLの形成前に、基板Wは、搬送モジュールTMの搬送装置TMRにより、プロセスモジュールPM2からプロセスモジュールPM3に搬送される。
【0047】
工程ST2では、第1の強磁性層FL1が、プロセスモジュールPM3において形成される。工程ST3では、第1のマグネシウム層ML1が、プロセスモジュールPM3において形成される。プロセスモジュールPM3は、物理気相成長法(又はスパッタリング法)により、第1の強磁性層FL1及び第1のマグネシウム層ML1を形成する。
【0048】
工程STaでは、基板Wは、搬送モジュールTMの搬送装置TMRにより、プロセスモジュールPM3からプロセスモジュールPM4に搬送されて、プロセスモジュールPM4(酸化処理装置)の基板支持部上に準備される。
【0049】
工程STbでは、プロセスモジュールPM4は、150ケルビン以下の温度に基板支持部を冷却した状態で基板Wに酸素ガスを供給する。プロセスモジュールPM4により、第1のマグネシウム層ML1が酸化され、第1のマグネシウム層ML1から第1の酸化マグネシウム層MOL1が形成される。
【0050】
工程STcの実行前に、基板Wは、搬送モジュールTMの搬送装置TMRにより、プロセスモジュールPM4からプロセスモジュールPM5に搬送される。工程STcでは、プロセスモジュールPM5は、基板Wの温度を上昇させる。
【0051】
工程STdでは、第2のマグネシウム層ML2が、プロセスモジュールPM5において形成される。プロセスモジュールPM5は、物理気相成長法(又はスパッタリング法)により、第2のマグネシウム層ML2を形成する。
【0052】
工程STeでは、プロセスモジュールPM5が、基板Wに酸素ガスを供給する。プロセスモジュールPM5は、工程STeにおける基板Wの温度を工程STbにおける基板Wの温度よりも高い温度に設定する。プロセスモジュールPM5により、第2のマグネシウム層ML2が酸化され、酸化マグネシウム層MOLが得られる。なお、工程STc~工程STeは、一つのプロセスモジュールではなく、二つ以上のプロセスモジュールを用いて行われてもよい。
【0053】
工程ST4の実行前に、基板Wは、搬送モジュールTMの搬送装置TMRにより、プロセスモジュールPM5からプロセスモジュールPM6に搬送される。工程ST4では、第2の強磁性層FL2が、プロセスモジュールPM6において形成される。工程ST5では、キャップ層CLが、プロセスモジュールPM6において形成される。プロセスモジュールPM6は、物理気相成長法(又はスパッタリング法)により、第2の強磁性層FL2及びキャップ層CLを形成する。
【0054】
以下、方法MTの工程STbにおいて用いられ得る酸化処理装置について説明する。
図8は、一つの例示的実施形態に係る酸化処理装置を示す図である。
図8に示す酸化処理装置1は、方法MTの工程STbにおいて用いられ得る。
【0055】
酸化処理装置1は、チャンバ10、基板支持機構12、及びガス供給部14を備えている。ガス供給部14は、ガスソース16からの酸素ガスをチャンバ10内に導入して、基板Wに供給するように構成されている。チャンバ10には、排気装置18が接続されている。排気装置18は、圧力制御器及びターボ分子ポンプ又はトライポンプのような真空ポンプを含んでいる。チャンバ10内のガスの圧力は、マスフローコントローラーにより調整される。
【0056】
基板支持機構12は、基板支持部20を含んでいる。基板支持部20は、チャンバ10内に設けられており、その上に載置される基板Wを支持するように構成されている。基板支持部20は、例えば銅(Cu)等の熱伝導性の高い材料から形成される。基板支持部20は、静電チャックを含んでいてもよい。静電チャックは、誘電体材料から形成された本体及び当該本体内に設けられた電極20eを含む。電極20eは、配線20Lを介して直流電源に接続されている。直流電源からの電圧が電極20eに印加されると、静電チャックと基板との間で静電引力が発生する。発生した静電引力により、基板Wは、静電チャックに引き付けられて、静電チャックによって保持される。
【0057】
基板支持機構12は、冷凍機22を更に含んでいる。基板支持機構12は、伝熱体24及び外筒26を更に含んでいてもよい。冷凍機22は、伝熱体24を保持しており、伝熱体24を介して基板支持部20を-150ケルビン以下の温度に冷却する。冷凍機22は、GM(Gifford-McMahon)サイクルを利用するタイプの冷凍機であり得る。
【0058】
伝熱体24は、冷凍機22上に配置され、固定されている。伝熱体24の上部は、チャンバ10内に配置されている。伝熱体24は、例えば純銅(Cu)等の熱伝導性の高い材料から形成されている。伝熱体24は、略円柱形状を有する。伝熱体24は、基板支持部20の中心軸線AXにその中心軸線が一致するように配置されている。伝熱体24は、その内部において、ガス供給部24aを提供している。ガス供給部24aは、後述する隙間12gに連通している。ガス供給部24aは、冷却ガス(例えば、Heガス)を隙間12gに供給する。
【0059】
基板支持部20は、伝熱体24の上面と基板支持部20との間に隙間12gが介在するように、配置されている。基板支持部20は、一つ以上の貫通孔20hを提供している。一つ以上の貫通孔20hは、隙間12gに連通している。隙間12gに供給された冷却ガスは、一つ以上の貫通孔20hを介して、基板支持部20の上面と基板Wの下面との間の隙間に供給される。これにより、基板支持部20と基板Wとの間での熱伝達効率が高められ、基板Wが効率的に冷却される。なお、隙間12gは、熱伝導グリースで充填されていてもよい。
【0060】
基板支持部20の下面は、下方に突出する凸部20pを含んでいる。凸部20pは、略筒形状を有し、中心軸線AXの周りで延在していてもよい。凸部20pは、基板支持部20の下面の表面積を増加させる。凸部20pの表面は、ブラスト加工等により、粗面化されていてもよい。凸部20pにより、基板支持部20と伝熱体24との間の熱伝達効率が高められる。なお、基板支持部20の下面は、凸部20pのような複数の凸部を有していてもよい。また、基板支持部20において、静電チャックを含む部分と凸部20pは、一体的に形成されていてもよく、別体として形成されて互いに接合されていてもよい。
【0061】
伝熱体24の上面は、凹部24rを画成している。凹部24rの数は、基板支持部20の凸部20pの数と同数である。基板支持部20の凸部20pは、伝熱体24の上面と凸部20pとの間に隙間12gが介在するように、凹部24rの中に配置される。凹部24rを画成する伝熱体24の上面は、ブラスト加工等により、粗面化されていてもよい。凹部24rにより、基板支持部20と伝熱体24との間の熱伝達効率が高められる。
【0062】
外筒26は、伝熱体24の周囲に設けられている。外筒26は、伝熱体24の上部を覆うように中心軸線AXの周りで延在している。外筒26の上端は、基板支持部20に固定されている。外筒26は、円筒部26a及びフランジ部26bを含んでいる。円筒部26a及びフランジ部26bは、例えばステンレス等の金属から形成されている。円筒部26aは、略円筒形状を有しており、中心軸線AXの周りで延在している。円筒部26aは、伝熱体24の外径よりも僅かに大きい内径を有する。伝熱体24の上部は、円筒部26aの内側に配置されている。フランジ部26bは、円筒部26aの下端から径方向において外側に延びている。フランジ部26bは、断熱部材28上に配置されている。
【0063】
断熱部材28は、略環形状を有している。断熱部材28は、中心軸線AXの周りで延在しており、フランジ部26bに固定されている。断熱部材28は、アルミナのようなセラミックスから形成されている。断熱部材28は、磁性流体シール30上に設けられている。
【0064】
磁性流体シール30は、回転部30a、内側固定部30b、外側固定部30c、及び加熱部30dを有する。回転部30aは、略円筒形状を有しており、中心軸線AXの周りで延在している。回転部30aは、断熱部材28に固定されている。即ち、回転部30aは、断熱部材28を介して外筒26に接続されている。断熱部材28により、磁性流体シール30は、外筒26から熱的に分離される。したがって、磁性流体シール30のシール性能の低下、磁性流体シール30における結露の発生が抑制される。
【0065】
内側固定部30bは、伝熱体24と回転部30aとの間に磁性流体を介して設けられている。内側固定部30bは略円筒形状を有しており、中心軸線AXの周りで延在している。内側固定部30bの内径は伝熱体24の外径よりも大きく、内側固定部30bの外径は回転部30aの内径よりも小さい。外側固定部30cは、回転部30aの外側に磁性流体を介して設けられている。外側固定部30cは略円筒形状を有しており、中心軸線AXの周りで延在している。外側固定部30cの内径は回転部30aの外径よりも大きい。加熱部30dは、内側固定部30bの内部に埋め込まれており、磁性流体シール30の全体を加熱する。加熱部30dにより、磁性流体シール30のシール性能の低下、磁性流体シール30における結露の発生が抑制される。
【0066】
磁性流体シール30では、回転部30aが、気密状態で内側固定部30b及び外側固定部30cに対して回転可能となっている。回転部30aに接続された外筒26は、磁性流体シール30により回転可能に支持されている。
【0067】
磁性流体シール30の外側固定部30cとチャンバ10の底部との間には、ベローズ32が設けられている。ベローズ32は、金属製の蛇腹構造体であり、上下方向に伸縮可能である。ベローズ32は、伝熱体24、外筒26、及び断熱部材28を囲んでおり、チャンバ10内の空間とチャンバ10の外部とを互いから分離している。
【0068】
基板支持機構12は、スリップリング34を更に含んでいてもよい。スリップリング34は、磁性流体シール30の下に設けられている。スリップリング34は、金属リングを含む回転体34a及びブラシを含む固定体34bを有する。回転体34aは、略円筒形状を有しており、中心軸線AXの周りで延在している。回転体34aは、磁性流体シール30の回転部30aに固定されている。固定体34bは、略円筒形状を有しており、中心軸線AXの周りで延在している。固定体34bは、回転体34aの外径よりも僅かに大きい内径を有する。スリップリング34は、直流電源と電気的に接続されており、直流電源から供給される電力を、固定体34bのブラシ及び回転体34aの金属リングを介して、配線20Lに伝達する。スリップリング34により、配線20Lにねじれを生じさせることなく、電極20eに電圧を印加することが可能となる。スリップリング34の回転体34aは、駆動機構36に取り付けられている。
【0069】
駆動機構36は、ダイレクトドライブモータであり、ロータ36a及びステータ36bを有する。ロータ36aは、略円筒形状を有しており、中心軸線AXの周りで延在している。ロータ36aは、スリップリング34の回転体34aに固定されている。ステータ36bは、略円筒形状を有しており、中心軸線AXの周りで延在している。ステータ36bの内径は、ロータ36aの外径よりも大きい。ロータ36aが回転すると、スリップリング34の回転体34a、磁性流体シール30の回転部30a、外筒26、及び基板支持部20は、伝熱体24に対して回転する。
【0070】
基板支持機構12は、断熱体38を更に含んでいてもよい。断熱体38は、冷凍機22及び伝熱体24の周囲に設けられている。断熱体38は、冷凍機22とロータ36aとの間、及び、伝熱体24の下部とロータ36aとの間に配置されている。断熱体38は、冷凍機22及び伝熱体24の各々とロータ36aとの間の熱の伝達を抑制する。
【0071】
冷凍機22及び伝熱体24の周囲には、ガス供給部40が設けられていてもよい。ガス供給部40は、伝熱体24と外筒26の間の空間12Sに冷却ガスを供給する。空間12Sに供給される冷却ガスは、隙間12gに供給されるガスとは異なるガスである。空間12Sに供給される冷却ガスは、隙間12gに供給されるガスの熱伝導率よりも低い熱伝導率を有していてもよい。また、空間12Sに供給される冷却ガスの圧力は、隙間12gに供給されるガスの圧力よりも高くてもよい。空間12Sに供給される冷却ガスは、アルゴン、ネオン等の低沸点ガスであり得る。
【0072】
基板支持機構12は、伝熱体24、隙間12g等の温度を検出するために、一つ以上の温度センサを含んでいてもよい。一つ以上の温度センサは、シリコンダイオード温度センサ、白金抵抗温度センサ等の低温用温度センサであり得る。
【0073】
酸化処理装置1は、昇降機構42を更に備えていてもよい。昇降機構42は、基板支持機構12をチャンバ10に対して昇降させる。昇降機構42により、ガス供給部14と基板支持部20との間の距離を調整することが可能である。
【0074】
酸化処理装置1は、第1のマグネシウム層ML1を有する基板Wがその上に載置された基板支持部20を150ケルビン以下の温度に冷却した状態で、ガス供給部14からチャンバ10内に酸素ガスを供給するように構成されている。したがって、酸化処理装置1によれば、第1のマグネシウム層ML1の下地の第1の強磁性層FL1の酸化を抑制することが可能となる。
【0075】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0076】
以下、方法MTの評価のために行った実験について説明する。実験では、方法MTを行って、
図2に示す構造と同じ構造を有する複数の磁気抵抗効果素子を作成した。実験では、方法MTの工程STbにおける基板支持部の温度として、50K(ケルビン)、150K、及び300Kの三種の温度を用いた。即ち、複数の磁気抵抗効果素子の作成では、工程STbにおける基板支持部の温度を、50K(ケルビン)、150K、及び300Kのうち何れかに設定した。実験では、作成した複数の磁気抵抗効果素子の各々の抵抗面積積(RA)及びMR比(MR Ratio)を求めた。その結果を、
図9に示す。
図9に示すように、工程STbにおける基板支持部の温度が150K以下の温度である場合には、相当に高いMR比を有する磁気抵抗効果素子が得られた。
【0077】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0078】
PS…基板処理システム、PM1~PM6…プロセスモジュール、TM…搬送モジュール、1…酸化処理装置、10…チャンバ、14…ガス供給部、20…基板支持部、22…冷凍機、W…基板、FL1…第1の強磁性層、ML1…第1のマグネシウム層、MOL1…第1の酸化マグネシウム層。