(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20241107BHJP
H05H 1/46 20060101ALN20241107BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H05H1/46 L
(21)【出願番号】P 2020209374
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】瀧野 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】星 高行
【審査官】原島 啓一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-141103(JP,A)
【文献】特開2016-213427(JP,A)
【文献】特開平08-250466(JP,A)
【文献】特開2013-021192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/302
H01L 21/461
H05H 1/00-1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板支持器上に、凹部が形成されたエッチング対象膜を有する基板を提供する工程と、
(b)前記凹部の側壁に保護膜を形成する工程と、
(c)前記(b)の後、処理ガスからプラズマを生成して前記凹部の底部をエッチングする工程と、
(d)前記(b)と前記(c)とを含むシーケンスを1回以上実施する工程と、
を含み、
前記(c)が、
前記エッチングで生成される反応副生成物が前記側壁に付着することにより生じる肩部の形成を抑制しつつ、前記凹部の底部をエッチングする第1段階と、
前記第1段階の後、前記基板支持器の温度を-40℃以下に制御して、前記凹部の底部をさらにエッチングする第2段階と、
を含み、
前記第1段階では、前記基板支持器の温度を-40℃よりも高温に設定した状態でエッチングを行う
、基板処理方法。
【請求項2】
(a)基板支持器上に、凹部が形成されたエッチング対象膜を有する基板を提供する工程と、
(b)前記凹部の側壁に保護膜を形成する工程と、
(c)前記(b)の後、処理ガスからプラズマを生成して前記凹部の底部をエッチングする工程と、
(d)前記(b)と前記(c)とを含むシーケンスを1回以上実施する工程と、
を含み、
前記(c)が、
前記エッチングで生成される反応副生成物が前記側壁に付着することにより生じる肩部の形成を抑制しつつ、前記凹部の底部をエッチングする第1段階と、
前記第1段階の後、前記基板支持器の温度を-40℃以下に制御して、前記凹部の底部をさらにエッチングする第2段階と、
を含み、
前記エッチング対象膜はシリコン含有膜であり、
前記処理ガスは、炭素原子及び窒素原子を含まないハロゲン含有ガスと酸素含有ガスとを含み、
前記第1段階では、前記ハロゲン含有ガス及び前記酸素含有ガスの合計流量に対する前記酸素含有ガスの流量の割合が第1割合に設定された状態でエッチングを行い、
前記第2段階では、前記割合が前記第1割合よりも大きい第2割合に設定された状態でエッチングを行う
、基板処理方法。
【請求項3】
前記ハロゲン含有ガスは、SF
6ガス、Cl
2ガス及びHBrガスからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項
2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記酸素含有ガスはO
2ガスを含む、請求項
2又は
3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記シリコン含有膜はシリコン膜又はシリコンゲルマニウム膜を含む、請求項
2~
4の何れか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記第1割合は35%以下である、請求項
2~
5の何れか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記肩部の形成は、前記側壁に前記反応副生成物が付着することの抑制、及び/又は前記側壁に付着した前記反応副生成物の除去により、抑制される、請求項1~6の何れか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記(a)は、前記基板支持器の温度を-40℃以下に制御した状態で、前記エッチング対象膜をエッチングすることにより前記凹部を形成した前記基板を提供する工程であり、
前記(a)におけるエッチングの条件は、前記第2段階におけるエッチングの条件と同一である、請求項1~
7の何れか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記第2段階の期間は、前記第1段階の期間の6倍以下である、請求項1~
8の何れか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記第1段階でエッチングされる前記凹部のエッチング深さは1μm以下である、請求項1~
9の何れか一項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記(c)では、プラズマを生成した状態で、前記第1段階から前記第2段階に切り替える、請求項1~1
0の何れか一項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記(a)~(d)はin-situで実施される、請求項1~1
1の何れか一項に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、基板処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、半導体基板上の誘電体材料にエッチングされた凹部を形成する方法を開示する。この方法では、エッチング反応物を含む第1プラズマを生成し、基板を第1プラズマに晒して誘電体材料中の凹部を部分的にエッチングする。その後、原子層堆積法を用いて凹部の側壁に保護膜を堆積する。凹部が最終的な深さにエッチングされるまでエッチングと堆積とを繰り返す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、エッチングにより形成される凹部の側壁の形状不良を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、基板処理方法が提供される。基板処理方法は、(a)基板支持器上に、凹部が形成されたエッチング対象膜を有する基板を提供する工程と、(b)前記凹部の側壁に保護膜を形成する工程と、(c)前記(b)の後、処理ガスからプラズマを生成して前記凹部の底部をエッチングする工程と、(d)前記(b)と前記(c)とを含むシーケンスを1回以上実施する工程と、を含み、前記(c)が、前記エッチングで生成される反応副生成物が前記側壁に付着することにより生じる肩部の形成を抑制しつつ、前記凹部の底部をエッチングする第1段階と、前記第1段階の後、前記基板支持器の温度を-40℃以下に制御して、前記凹部の底部をさらにエッチングする第2段階と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、エッチングにより形成される凹部の側壁の形状不良を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一つの例示的実施形態に係る基板処理方法の流れ図である。
【
図2】
図2は、一例の基板の部分拡大断面図である。
【
図3】
図3は、一例の基板処理装置を概略的に示す図である。
【
図4】
図4の(a)は、凹部が形成されたエッチング対象膜を有する基板を提供する工程の例を説明するための図であり、
図4の(b)は、当該工程の実行後の状態における一例の基板の部分拡大断面図である。
【
図5】
図5は、凹部の側壁に保護膜を形成する工程における一例の基板の部分拡大断面図である。
【
図6】
図6の(a)は、凹部の底部をエッチングする工程の第1段階の例を説明するための図であり、
図6の(b)は、第1段階の実行後の状態における一例の基板の部分拡大断面図である。
【
図7】
図7の(a)は、凹部の底部をエッチングする工程の第2段階の例を説明するための図であり、
図7の(b)は、第2段階の実行後の状態における一例の基板の部分拡大断面図である。
【
図8】
図8は、エッチングと保護膜の形成とを含むシーケンスを1回以上実施する工程の実行後の状態における一例の基板の部分拡大断面図である。
【
図9】
図9の(a)~(e)は、エッチングにより形成された凹部の側壁の形状の例を模式的に示す図である。
【
図10】
図10の(a)~(c)は、エッチングにより形成された凹部の側壁の形状の例を模式的に示す図である。
【
図11】
図11の(a)~(d)は、エッチングにより形成された凹部の側壁の形状の例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、基板処理方法は、(a)基板支持器上に、凹部が形成されたエッチング対象膜を有する基板を提供する工程と、(b)前記凹部の側壁に保護膜を形成する工程と、(c)前記(b)の後、処理ガスからプラズマを生成して前記凹部の底部をエッチングする工程と、(d)前記(b)と前記(c)とを含むシーケンスを1回以上実施する工程と、を含み、前記(c)が、前記エッチングで生成される反応副生成物が前記側壁に付着することにより生じる肩部の形成を抑制しつつ、前記凹部の底部をエッチングする第1段階と、前記第1段階の後、前記基板支持器の温度を-40℃以下に制御して、前記凹部の底部をさらにエッチングする第2段階と、を含む。
【0010】
上記方法によれば、エッチングにより形成される凹部の側壁の形状不良(ボーイング)を抑制することができる。
【0011】
前記肩部の形成は、前記側壁に前記反応副生成物が付着することの抑制、及び/又は前記側壁に付着した前記反応副生成物の除去により、抑制されてもよい。
【0012】
前記第1段階では、前記基板支持器の温度を-40℃よりも高温に設定した状態でエッチングを行ってもよい。
【0013】
前記エッチング対象膜はシリコン含有膜であり、前記処理ガスは、炭素原子及び窒素原子を含まないハロゲン含有ガスと酸素含有ガスとを含み、前記第1段階では、前記ハロゲン含有ガス及び前記酸素含有ガスの合計流量に対する前記酸素含有ガスの流量の割合が第1割合に設定された状態でエッチングを行い、前記第2段階では、前記割合が前記第1割合よりも大きい第2割合に設定された状態でエッチングを行ってもよい。
【0014】
前記ハロゲン含有ガスは、SF6ガス、Cl2ガス及びHBrガスからなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよい。
【0015】
前記酸素含有ガスはO2ガスを含んでもよい。
【0016】
前記シリコン含有膜はシリコン膜又はシリコンゲルマニウム膜を含んでもよい。
【0017】
前記第1割合は35%以下であってもよい。この場合、エッチングにより形成される凹部の側壁の形状不良を顕著に抑制することができる。
【0018】
前記(a)は、前記基板支持器の温度を-40℃以下に制御した状態で、前記エッチング対象膜をエッチングすることにより前記凹部を形成した前記基板を提供する工程であり、前記(a)におけるエッチングの条件は、前記第2段階におけるエッチングの条件と同一であってもよい。
【0019】
前記第2段階の期間は、前記第1段階の期間の6倍以下であってもよい。
【0020】
前記第1段階でエッチングされる前記凹部のエッチング深さは1μm以下であってもよい。
【0021】
前記(c)では、プラズマを生成した状態で、前記第1段階から前記第2段階に切り替えてもよい。
【0022】
前記(a)~(d)はin-situで実施されてもよい。
【0023】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0024】
図1は、一つの例示的実施形態に係る基板処理方法の流れ図である。
図1に示す基板処理方法(以下、「方法MT」という)は、基板内の領域をエッチングするために実行される。
図2は、一例の基板の部分拡大断面図である。
図2に示す基板Wは、領域RE及びマスクMKを有してもよい。
【0025】
領域REは、方法MTにおけるエッチング対象膜である。
図2に示す基板Wにおいて、マスクMKは、領域RE上に設けられている。マスクMKは、パターニングされている。即ち、マスクMKは、領域REを部分的に露出させる一つ以上の開口OPを提供している。マスクMKが提供する開口OPの幅は、例えば100nm以下であり得る。隣り合う開口OP間の距離も、例えば100nm以下であり得る。
【0026】
領域REは、シリコン及び/又はゲルマニウムを含有し得る。領域REは、シリコン含有膜を含んでもよい。シリコン含有膜は、シリコン膜、シリコンゲルマニウム膜、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜の少なくとも一つを含み得る。シリコン含有膜は、シリコン膜とシリコンゲルマニウム膜とを含む多層膜であってもよい。シリコン含有膜は、単結晶シリコン、ドーパントを含むシリコン及びシリコンゲルマニウムの少なくとも一つを含有してもよい。
【0027】
マスクMKは、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコンカーバイド膜、有機膜及び金属膜の少なくとも一つを含み得る。有機膜は、SOC(Spin On Carbon)膜及びアモルファスカーボン膜の少なくとも一つを含み得る。金属膜は、タングステン又はチタンを含有し得る。
【0028】
一実施形態において、方法MTは、基板処理装置を用いて実行される。
図3は、一例の基板処理装置を概略的に示す図である。
図3に示す基板処理装置は、誘導結合型プラズマ(Inductively-coupled plasma:ICP)装置10である。
【0029】
プラズマ処理装置10は、チャンバ12を備える。チャンバ12は、Al(アルミニウム)又はY(イットリウム)等を含んだ金属で形成される。例えば、チャンバ12は、Al2O3又はY2O3で形成される。チャンバ12は、例えば、略円筒形状である。チャンバ12内には、処理が実行される内部空間12cが設けられている。
【0030】
内部空間12cの下方には、基板支持器14が配置されている。基板支持器14は、上に載置される基板Wを保持するよう構成されている。基板Wは、例えば、半導体ウエハである。
【0031】
基板支持器14は、支持体13により支持可能である。支持体13は、内部空間12c内でチャンバ12の底部から上方に向けて延在する。支持体13は、略円筒形であってよい。支持体13は石英等の絶縁材料で構成できる。
【0032】
基板支持器14は、静電チャック16と下部電極18とを備える。下部電極18は、第1プレート18aと第2プレート18bとを含む。第1プレート18aおよび第2プレート18bは、アルミニウム等の金属で構成される。第1プレート18aおよび第2プレート18bは、例えば、略円筒形である。第2プレート18bは、第1プレート18a上に配置される。第2プレート18bは、第1プレート18aと電気的に接続されている。
【0033】
静電チャック16は、第2プレート18b上に配置される。静電チャック16は、絶縁層と当該絶縁層内に配置される薄膜電極とを備える。静電チャック16の薄膜電極には、スイッチ23を介して直流電源22が電気的に接続されている。静電チャック16は、直流電源22の直流電圧から静電力を生成する。静電チャック16は生成した静電力により基板Wを吸着保持する。
【0034】
プラズマ処理装置10では、基板Wと静電チャック16の外周を囲むように、エッジリングERが第2プレート18bの上かつ第2プレート18bの周囲に配置される。エッジリングERは、プロセスの均一性を高める役割を有する。エッジリングERは、例えば、シリコン製である。
【0035】
第2プレート18b内には、流路24が形成されている。流路24には、チャンバ12外部に配置される温度調節部(例えば、チラーユニット)から温度制御のため冷媒等の熱交換媒体が供給される。温度調節部は、熱交換媒体の温度を調節する。熱交換媒体は、温度調節部からパイプ26aを通って流路24に供給される。温度調節部からパイプ26aを通り流路24に供給された熱交換媒体は、パイプ26bを通って温度調節部に送り返される。熱交換媒体は、温度調節部による温度調節の後、基板支持器14内の流路24に戻される。このようにして、基板支持器14の温度すなわち基板Wの温度を調節することができる。
【0036】
プラズマ処理装置10は、さらに、基板支持器14の中を通って静電チャック16の上表面まで延びるガス供給ライン28を備える。静電チャック16の上表面と基板Wの下表面との間の空間には、熱交換ガス供給機構からガス供給ライン28を通って、ヘリウム(He)ガス等の熱交換ガスが供給される。熱交換ガスにより、基板支持器14と基板Wとの間での熱交換が促進される。
【0037】
また、ヒータHTが基板支持器14内に配置されてもよい。ヒータHTは、加熱装置である。ヒータHTは、例えば、第2プレート18bまたは静電チャック16内に埋め込まれている。ヒータHTは、ヒータ電源HPに接続される。ヒータ電源HPがヒータHTに電力を供給することで、基板支持器14の温度ひいては基板Wの温度が調整される。
【0038】
基板支持器14の下部電極18には、バイアス電源30が接続されている。バイアス電源30は、基板Wにイオンを引き込むために用いられるバイアス電力を発生する。一実施形態においては、バイアス電源30は、バイアス電力として高周波(Radio Frequency:RF)電力を発生する高周波電源であってよい。バイアス電源30として高周波電源を使用する場合、バイアス電力の周波数は、例えば、400kHzから40.68MHzの範囲内である。一例では、バイアス電力の周波数は13.56MHzであってよい。この実施形態において、バイアス電源30は、整合器32を介して下部電極18に接続される。整合器32は、バイアス電源30からの出力インピーダンスと負荷側すなわち下部電極18側のインピーダンスとの間のマッチングを行う回路を含む。
【0039】
プラズマ処理装置10はさらに、チャンバ12の内壁に着脱可能に取り付けられたシールド34を備える。シールド34はまた、支持体13の外周を囲むように配置される。シールド34は、処理によって生成される副生成物のチャンバ12への付着を防止する。シールド34は、Y2O3等のセラミックスでコーティングされたアルミニウム部材であってもよい。
【0040】
基板支持器14とチャンバ12の側壁との間には、排気路が形成されている。排気路は、チャンバ12の底部に形成された排気口12eに接続されている。排気口12eは、パイプ36を介して排気装置38に接続されている。排気装置38は、圧力調整部と、ターボ分子ポンプ(TMP)等の真空ポンプと、を含む。バッフル板40は、排気路内、すなわち、基板支持器14とチャンバ12の側壁との間に配置される。バッフル板40は厚さ方向にバッフル板40を貫通する複数の貫通穴を有する。バッフル板40は、Y2O3等のセラミックスで表面がコーティングされたアルミニウム部材であってもよい。
【0041】
チャンバ12の上側には開口が形成されている。開口は誘電体窓42によって閉鎖される。誘電体窓42は石英等で形成される。誘電体窓42は、例えば、平らな板である。
【0042】
チャンバ12の側壁にはガス供給口12iが形成されている。ガス供給口12iはガス供給管46を介してガス供給部44に接続されている。ガス供給部44は処理に使用される種々のガスを内部空間12cに供給する。ガス供給部44は、複数のガス源44a、複数の流量制御器44b、および複数のバルブ44cを備える。
図1には明示していないが、供給するガスごとに異なるガス供給口を設けて、ガスが混じり合わないようにしてもよい。
【0043】
複数のガス源44aは、後述する種々のガスのガス源を含む。1のガス源が1以上のガスを供給してもよい。複数の流量制御器44bは、マスフローコントローラ(MFC)であってもよい。流量制御器44bは、圧力制御により流量制御を実現する。複数のガス源44aに含まれる各ガス源は、複数の流量制御器44bのうち対応する一つの流量制御器および複数のバルブ44cのうち対応する一つのバルブを介してガス供給口12iに接続されている。ガス供給口12iの位置は、特に限定されない。例えば、ガス供給口12iはチャンバ12の側壁ではなく誘電体窓42内に形成されてもよい。
【0044】
チャンバ12の側壁内には、開口12pが形成されている。開口12pは、基板Wの搬入出経路となる。基板Wは、開口12pを介して、外部からチャンバ12の内部空間12cに搬入され、内部空間12c内からチャンバ12の外へと搬出される。チャンバ12の側壁上には、ゲートバルブ48が設けられ、開口12pを開放および閉塞可能となっている。
【0045】
チャンバ12および誘電体窓42上には、アンテナ50とシールド60が配置されている。アンテナ50およびシールド60は、チャンバ12の外側に配置される。一実施形態においては、アンテナ50は、内側アンテナ素子52Aと外側アンテナ素子52Bとを含む。内側アンテナ素子52Aは、誘電体窓42の中央に配置されるスパイラルコイルである。外側アンテナ素子52Bは、誘電体窓42上かつ内側アンテナ素子52Aの外周側に配置されるスパイラルコイルである。内側アンテナ素子52Aおよび外側アンテナ素子52Bは各々、銅、アルミニウム、ステンレススチール等の導電性材料で構成される。
【0046】
内側アンテナ素子52Aおよび外側アンテナ素子52Bは、複数のクランプ54により把持され、まとめて保持されている。複数のクランプ54は各々棒状である。複数のクランプ54は、内側アンテナ素子52Aの略中央から外側アンテナ素子52Bの外周側へ径方向に延びている。
【0047】
アンテナ50は、シールド60で覆われている。シールド60は、内側シールド壁62Aと外側シールド壁62Bとを備える。内側シールド壁62Aは円筒形状である。内側シールド壁62Aは、内側アンテナ素子52Aと外側アンテナ素子52Bとの間に配置され、内側アンテナ素子52Aを包囲する。外側シールド壁62Bは、円筒形状である。外側シールド壁62Bは外側アンテナ素子52Bの外側に配置され、外側アンテナ素子52Bを包囲する。
【0048】
内側アンテナ素子52A上には、円盤状の内側シールド板64Aが配置されている。内側シールド板64Aは、内側シールド壁62Aの開口を覆っている。外側アンテナ素子52Bの上には、平らなリング形状の外側シールド板64Bが配置されている。外側シールド板64Bは、内側シールド壁62Aと外側シールド壁62Bとの間の開口を覆っている。
【0049】
シールド60に含まれるシールド壁およびシールド板の形状は、上記したものに限定されない。例えば、シールド60のシールド壁は、断面4角形の角柱状であってもよい。
【0050】
内側アンテナ素子52Aおよび外側アンテナ素子52Bは、高周波電源70Aおよび高周波電源70Bにそれぞれ接続されている。内側アンテナ素子52Aおよび外側アンテナ素子52Bは、高周波電源70Aおよび高周波電源70Bからそれぞれ、同一または異なる周波数の電力供給を受ける。高周波電力が高周波電源70Aから内側アンテナ素子52Aに供給されると、誘導磁界が内部空間12c内に発生し、内部空間12c内の気体を励起して基板Wの中心上方にプラズマを発生させる。他方、高周波電力が高周波電源70Bから外側アンテナ素子52Bに供給されると、内部空間12c内に誘導磁界が発生して内部空間12c内の気体を励起して基板Wの外周部上方にリング状にプラズマを発生させる。高周波電源70A及び高周波電源70Bは、一例のプラズマ生成部を構成している。
【0051】
内側アンテナ素子52Aおよび外側アンテナ素子52B各々の電気長は、高周波電源70Aおよび高周波電源70Bから出力される周波数に応じて調整される。このため、内側シールド板64Aおよび外側シールド板64Bのz軸方向の位置は、アクチュエータ68Aおよび68Bにより各々独立して調整される。
【0052】
プラズマ処理装置10は、さらに制御部80を備える。制御部80は、例えば、プロセッサ、メモリ等の記憶部、入力部、ディスプレイ等を備えるコンピュータである。制御部80は、記憶部に記憶された制御プログラムやレシピデータに基づき動作し、プラズマ処理装置10の各部を制御する。例えば、制御部80は、複数の流量制御器44b、複数のバルブ44c、排気装置38、高周波電源70A,70B、バイアス電源30、整合器32、ヒータ電源HP等を制御する。制御部80は、プログラム又はデータを記憶部から読み出してプラズマ処理装置10の各部を制御することで、後述する、実施形態に係るプラズマ処理方法のプラズマ処理を実施する。
【0053】
再び
図1を参照して、方法MTについて詳細に説明する。以下の説明では、プラズマ処理装置10を用いて
図2に示す基板Wが処理される場合を例にとって、
図4~
図8を参照しながら方法MTを説明する。なお、方法MTでは、他の基板処理装置が用いられてもよい。方法MTでは、他の基板が処理されてもよい。
【0054】
方法MTは、工程ST0、工程ST1、工程ST2、工程ST3及び工程ST4を含み得る。工程ST0~工程ST4はこの順に実行され得る。方法MTは、基板Wが基板支持器14上に載置された状態で実行され得る。方法MTは、チャンバ12の内部空間12cの減圧された環境を維持し、且つ、内部空間12cから基板Wを取り出すことなく、実行され得る。すなわち、工程ST1~工程ST4において、基板Wはin-situ(インサイチュ)で処理され得る。一実施形態において、方法MTは、工程ST0で開始されてもよい。
【0055】
工程ST0では、基板支持器14の温度を-40℃以下に制御する。基板支持器14の温度は、流路24に供給される冷媒によって制御され得る。工程ST0は、工程ST3の第1段階を除いて、工程ST1~工程ST4において実施されてもよい。
【0056】
工程ST1では、凹部R1が形成された領域REを有する基板W(
図4の(b)参照)が提供される。凹部R1は、例えばホール又はトレンチであってもよい。一実施形態において、凹部R1は、領域REを部分的にエッチングすることによって形成される。領域REは、プラズマを用いてエッチングされ得る。一実施形態において、工程ST1は、基板支持器14の温度を-40℃以下に制御した状態で、領域REをエッチングすることにより凹部R1を形成した基板Wを提供する工程である。
【0057】
図4の(a)は、凹部R1が形成されたエッチング対象膜を有する基板Wを提供する工程ST1の例を説明するための図である。
図4の(b)は、当該工程ST1の実行後の状態における一例の基板Wの部分拡大断面図である。工程ST1では、
図4の(a)に示されるように、チャンバ12内で処理ガスからプラズマP1が生成される。
【0058】
処理ガスは、ハロゲン含有ガスを含み得る。ハロゲン含有ガスは、炭素原子及び窒素原子を含まなくてもよい。ハロゲン含有ガスは、臭素含有ガス、塩素含有ガス及びフッ素含有ガスの少なくとも1つを含み得る。臭素含有ガスは、HBrガスを含み得る。塩素含有ガスは、Cl2ガスを含み得る。フッ素含有ガスは、SF6ガスを含み得る。処理ガスは、酸素含有ガスを含み得る。酸素含有ガスは、例えばO2ガスを含み得る。
【0059】
工程ST1では、基板Wを支持する基板支持器14の温度が例えば-50℃以下又は-40℃以下の低温に設定された状態でエッチングを行ってもよい。制御部80は、基板支持器14の温度を指定された温度に設定するようにプラズマ処理装置10の温度調整機構を制御する。
【0060】
工程ST1では、
図4の(a)に示すように、プラズマP1からの化学種が基板Wに供給されて、領域REが当該化学種によって部分的にエッチングされる。工程ST1では、領域REは、領域REの上面と領域REの下面との間の位置までエッチングされる。領域REの上面は、マスクMKの開口から露出された領域REの表面である。工程ST1が実行されると、
図4の(b)に示すように、凹部R1が、マスクMKから領域REの中まで延びるように形成される。凹部R1は、側壁R1sと底部R1bとを有する。凹部R1の幅WDは、互いに対向する一対の側壁R1s間の距離である。凹部R1の幅WDは例えば100nm以下であり得る。隣り合う凹部R1間の距離も、例えば100nm以下であり得る。
【0061】
工程ST1において、制御部80は、チャンバ12内のガスの圧力を指定された圧力に設定するように排気装置38を制御する。制御部80は、処理ガスをチャンバ12内に供給するようにガス供給部44を制御する。制御部80は、処理ガスからプラズマP1を生成するためにプラズマ生成部を制御する。一実施形態における工程ST1では、制御部80は、高周波電力及びバイアス電力を供給するよう、高周波電源70A、高周波電源70B及びバイアス電源30を制御する。
【0062】
なお、エッチングとは異なる方法により、基板Wの領域REに凹部R1が予め設けられてもよい。
【0063】
図5は、凹部R1の側壁R1sに保護膜PFを形成する工程ST2における一例の基板Wの部分拡大断面図である。工程ST2では、
図5に示されるように、凹部R1の側壁R1sに保護膜PFが形成される。保護膜PFは、凹部R1の底部R1b及びマスクMKの表面にも形成され得る。保護膜PFは、凹部R1の側壁R1sにおいて第1の厚さを有し、凹部R1の底部R1b及びマスクMKの表面において第1の厚さよりも小さい第2の厚さを有してもよい。保護膜PFは、例えばシリコン酸化膜を含有し得る。
【0064】
保護膜PFは、原子層堆積法(ALD法)、化学気相成長法(CVD法)、又は物理気相成長法(PVD法)によって形成され得る。CVD法は、プラズマ(Plasma Enhanced)CVD法であってもよく、熱又は光等を利用するCVD法であってもよい。CVD法による工程ST2では、チャンバ12内に成膜ガスが供給される。CVD法による工程ST2では、チャンバ12内で成膜ガスからプラズマが生成されてもよい。
【0065】
ALD法による工程ST2では、前駆体層が、基板Wの表面上に形成される。前駆体層の形成のために、第1のガスが用いられる。第1のガスは、前駆体層を構成する物質を含む。前駆体層は、第1のガスからプラズマを生成することなく、形成されてもよい。或いは、前駆体層は、第1のガスから生成されたプラズマからの化学種を用いて形成されてもよい。
【0066】
第1のガスは、モノシラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、塩化ケイ素、クロロシラン、又はフッカケイ素を含む。塩化ケイ素は、例えば四塩化ケイ素(SiCl4)、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6)等である。クロロシランは、例えばトリクロロシラン(HSiCl3)、ジクロロシラン(H2SiCl2)、クロロトリメチルシラン((CH3)3SiCl)等である。フッカケイ素は、例えば四フッカケイ素(SiF4)等である。
【0067】
制御部80は、第1のガスをチャンバ12内に供給するようにガス供給部44を制御する。制御部80は、チャンバ12内のガスの圧力を指定された圧力に設定するように排気装置38を制御する。プラズマが生成される場合には、制御部80は、チャンバ12内において第1のガスからプラズマを生成するようにプラズマ生成部を制御する。一実施形態では、第1のガスからプラズマを生成するために、制御部80は、高周波電力HF及び/又は高周波電力LFを供給するよう、高周波電源61及び/又はバイアス電源62を制御する。
【0068】
前駆体層が形成された後、内部空間12cのパージが実行され得る。制御部80は、内部空間12cの排気を実行するように排気装置38を制御し得る。制御部80は、チャンバ12内に不活性ガスを供給するようにガス供給部44を制御してもよい。パージの実行により、チャンバ12内の第1のガスが不活性ガスに置換され得る。パージの実行により、基板W上に吸着している過剰な物質が除去されてもよい。パージの結果、前駆体層は単分子層として基板W上に形成されてもよい。
【0069】
パージの実行の後、前駆体層から保護膜PFが形成される。保護膜PFの形成のために、第2のガスが用いられてもよい。第2のガスは、前駆体層を構成する物質と反応することにより前駆体層から保護膜PFを形成する反応種を含む。第2のガスは、酸素含有ガス(例えばH2ガス)を含む。保護膜PFは、第2のガスからプラズマを生成することなく、形成されてもよい。或いは、保護膜PFは、第2のガスから生成されたプラズマからの化学種を用いて、形成されてもよい。或いは、熱又は光等により前駆体層が活性化されてもよい。
【0070】
制御部80は、第2のガスをチャンバ12内に供給するようにガス供給部44を制御する。制御部80は、チャンバ12内のガスの圧力を指定された圧力に設定するように排気装置38を制御する。プラズマが生成される場合には、制御部80は、チャンバ12内において第2のガスからプラズマを生成するようにプラズマ生成部を制御する。一実施形態では、第2のガスからプラズマを生成するために、制御部80は、高周波電力を供給するよう、高周波電源70A、高周波電源70B及び/又はバイアス電源30を制御する。或いは、制御部80は、前駆体層の活性化のために基板Wを加熱するようにヒータ電源HPを制御してもよい。或いは、制御部80は、前駆体層の活性化のために基板Wに光を照射するよう光源を制御してもよい。
【0071】
保護膜PFの形成後、内部空間12cのパージが実行され得る。パージの実行により、チャンバ12内の第2のガスが不活性ガスに置換され得る。
【0072】
前駆体層の形成とパージとを繰り返すことによって、保護膜PFの厚さが調整され得る。
【0073】
工程ST3は、第1段階及び第2段階を含む。工程ST3は、第1段階において開始される。第2段階は、第1段階の後に実行される。工程ST3は、第2段階の後に実行される1つ以上の段階を含んでもよい。
【0074】
図6の(a)は、凹部R1の底部R1bをエッチングする工程ST3の第1段階の例を説明するための図である。
図6の(b)は、第1段階の実行後の状態における一例の基板Wの部分拡大断面図である。
図7の(a)は、凹部R1の底部R1bをエッチングする工程ST3の第2段階の例を説明するための図であり、
図7の(b)は、第2段階の実行後の状態における一例の基板Wの部分拡大断面図である。
【0075】
第1段階では、
図6に示されるように、エッチングで生成される反応副生成物が側壁R1sに付着することにより生じる肩部の形成を抑制しつつ、凹部R1の底部R1bをエッチングする。肩部の形成は、側壁R1sに反応副生成物が付着することの抑制、及び/又は側壁R1sに付着した反応副生成物の除去により、抑制される。一実施形態において、チャンバ12内で処理ガスからプラズマP2が生成され、凹部R1の底部R1bがエッチングされる。一実施形態では、凹部R1の底部R1bは、プラズマP2からの化学種により、エッチングされる。第1段階における処理ガスの種類は、工程ST1における処理ガスと同一であってもよい。
【0076】
第2段階では、
図7に示されるように、凹部R1の底部R1bをさらにエッチングする。チャンバ12内で処理ガスからプラズマP3が生成され、凹部R1の底部R1bがエッチングされる。一実施形態では、凹部R1の底部R1bは、プラズマP3からの化学種により、エッチングされる。第2段階における処理ガスの種類は、第1段階における処理ガスと同一であってもよい。
【0077】
工程ST3では、プラズマを生成した状態で、第1段階から第2段階に切り替えてもよい。2段階におけるエッチングの条件は、工程ST1におけるエッチングの条件と同一であってもよい。
【0078】
一実施形態において、第1段階では、基板支持器14の温度を第1温度T1に設定した状態でエッチングを行ってもよい。第1温度T1は、例えば-40℃よりも高くてもよいし、-30℃よりも高くてもよい。第1温度T1は、-20℃以下であってもよい。第2段階では、基板支持器14の温度を第1温度T1よりも低い第2温度T2に設定した状態でエッチングを行ってもよい。第2温度T2は、例えば-50℃未満又は-40℃以下であってもよい。第2温度T2は、-100℃以上であってもよい。本実施形態では、第1段階における処理ガスに含まれるガスの種類及び流量が、第2段階における処理ガスに含まれるガスの種類及び流量と同一であってもよい。第1段階及び第2段階において、炭素原子及び窒素原子を含まないハロゲン含有ガス及び酸素含有ガスの合計流量に対する酸素含有ガスの流量の割合は、35%より大きくてもよいし、30%より大きくてもよいし、25%より大きくてもよい。
【0079】
他の一実施形態において、第1段階では、炭素原子及び窒素原子を含まないハロゲン含有ガス及び酸素含有ガスの合計流量に対する酸素含有ガスの流量の割合が第1割合RT1に設定された状態でエッチングを行ってもよい。第1割合RT1は35%以下であってもよいし、30%以下であってもよいし、25%以下であってもよい。第2段階では、炭素原子及び窒素原子を含まないハロゲン含有ガス及び酸素含有ガスの合計流量に対する酸素含有ガスの流量の割合が第2割合RT2に設定された状態でエッチングを行ってもよい。第2割合RT2は第1割合RT1よりも大きい。第2割合RT2は35%より大きくてもよいし、30%より大きくてもよいし、25%より大きくてもよい。本実施形態では、第1段階における基板支持器14の温度が、第2段階における基板支持器14の温度と同一であってもよい。第1段階及び第2段階における基板支持器14の温度は、例えば-50℃未満又は-40℃以下であってもよい。
【0080】
第1段階の期間は例えば10秒以上30秒以下であってもよい。第2段階の期間は例えば30秒以上60秒以下であってもよい。第2段階の期間は第1段階の期間の1倍以上であってもよいし、6倍以下であってもよい。第1段階の期間に形成される凹部R1のエッチング深さは例えば100nm以上又は200nm以上であってよく、1μm以下又は500nm以下であってよい。
【0081】
工程ST3において、制御部80は、基板支持器14の温度を指定された温度に設定するようにプラズマ処理装置1の温度調整機構を制御する。制御部80は、チャンバ12内のガスの圧力を指定された圧力に設定するように排気装置38を制御する。制御部80は、指定された種類及び流量のガスを含む処理ガスをチャンバ12内に供給するようにガス供給部44を制御する。制御部80は、処理ガスからプラズマP3を生成するためにプラズマ生成部を制御する。一実施形態において、制御部80は、高周波電力及びバイアス電力を供給するよう、高周波電源70A、高周波電源70B及びバイアス電源30を制御する。
【0082】
図8は、エッチングと保護膜PFの形成とを含むシーケンスを1回以上実施する工程ST4の実行後の状態における一例の基板Wの部分拡大断面図である。工程ST4では、保護膜PFを形成する工程ST2と、凹部R1の底部R1bをエッチングする工程ST3とを繰り返す。工程ST4は、繰り返しの回数が閾値に到達まで行われる。工程ST4は、
図8に示されるように、凹部R1の深さDPが所望の深さになるまで行われる。工程ST4の後において、深さDPは例えば3μm以上である。工程ST4の後において、凹部R1のアスペクト比が30以上であってもよい。工程ST4が終了すると、方法MTは終了する。
【0083】
上記方法MTによれば、エッチングにより形成される凹部R1の側壁R1sの形状不良(ボーイング)を抑制することができる。
【0084】
凹部R1の側壁R1sのボーイングが抑制されるメカニズムは以下のように考えられるが、これに限定されない。基板支持器14の温度が一定の温度に設定された状態で凹部の底部をエッチングすると、エッチングにより形成される凹部の側壁にボーイングが発生することがある。あるいは、酸素含有ガスの流量の割合が一定の割合に設定された状態で凹部の底部をエッチングすると、エッチングにより形成される凹部の側壁にボーイングが発生することがある。
【0085】
ボーイングが発生するメカニズムは以下のように考えられるが、これに限定されない。基板支持器14の温度及び酸素含有ガスの流量の割合が一定の状態で凹部の底部をエッチングすると、エッチング初期において、凹部の側壁にエッチングにより生じた反応副生成物が凹部の側壁に付着し、当該側壁から内側に突出する肩部が形成される。肩部の大きさは、基板支持器14の温度が低くなるに連れて大きくなり、酸素含有ガスの流量の割合が高くなるに連れて大きくなる。その後のエッチングでは、肩部が起点となって横方向にエッチングが進むので、ボーイングが発生する。
【0086】
一方、上記方法MTでは、第1段階において肩部の形成を抑制しつつ、凹部R1の底部R1bをエッチングする。より詳細には、エッチング中に、凹部R1の側壁R1sに反応副生成物が付着することを抑制するか、側壁R1sに付着した反応副生成物がエッチングにより除去されるような条件で、凹部R1の底部R1bをエッチングする。このようなエッチングを行うために、例えば、基板支持器14の温度、処理ガスの種類、混合比及び流量、チャンバ内の圧力、高周波電力並びにバイアス電力の大きさなどを制御する。一例では、基板支持器14の温度が比較的高い第1温度T1に設定された状態で凹部R1の底部R1bをエッチングする。あるいは、第1段階において酸素含有ガスの流量の割合が比較的低い第1割合RT1に設定された状態で凹部R1の底部R1bをエッチングする。その結果、第1段階(エッチング初期)において上述のような肩部が形成され難くなり、肩部を起点とする横方向のエッチングが抑制されるので、第2段階終了後(エッチング終了後)においてもボーイングの発生が抑制される。
【0087】
通常、エッチング初期において基板支持器14の温度が-40℃以下であると、エッチングにより形成される凹部の側壁に発生し得る形状不良が悪化する。一方、上記方法MTでは、第1段階において基板支持器14の温度が比較的高い第1温度T1に設定されている。よって、エッチングにより形成される凹部R1の側壁R1sの形状不良を抑制することができる。
【0088】
凹部の幅が小さい場合、エッチングが下方に直線的に進まないことにより、凹部の側壁に形状不良が発生することがある。そのような場合でも、上記方法MTによれば、エッチングにより形成される凹部R1の側壁R1sの形状不良を抑制することができる。
【0089】
凹部のアスペクト比が大きい場合、エッチングが下方に直線的に進まないことにより、凹部の側壁に形状不良が発生することがある。そのような場合でも、上記方法MTによれば、エッチングにより形成される凹部R1の側壁R1sの形状不良を抑制することができる。
【0090】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0091】
例えば、方法MTの実行に用いられる基板処理装置は、任意のタイプのプラズマ処理装置であってもよい。例えば、方法MTの実行に用いられる基板処理装置は、プラズマ処理装置10以外の誘導結合型のプラズマ処理装置であってもよい。方法MTの実行に用いられる基板処理装置は、容量結合型のプラズマ処理装置、ECR(電子サイクロトロン共鳴)プラズマ処理装置、又はマイクロ波といった表面波をプラズマの生成のために用いるプラズマ処理装置であってもよい。
【0092】
方法MTの実行に用いられる基板処理装置は、単一チャンバではなく、保護膜を形成するための第1チャンバと、エッチングを行うための第2チャンバとを備えてもよい。この場合、基板Wは、減圧された環境下で第1チャンバと第2チャンバとの間で搬送されてもよい。あるいは、基板Wは、減圧された環境から取り出され、大気圧下で第1チャンバと第2チャンバとの間で搬送され、再び減圧された環境下に戻されてもよい。
【0093】
以下、方法MTの評価のために行った種々の実験について説明する。以下に説明する実験は、本開示を限定するものではない。
【0094】
(第1の実験)
【0095】
第1の実験では、
図2に示した基板Wと同一の構造を有する5つのサンプル基板を準備した。各サンプル基板は、シリコン含有膜及び当該シリコン含有膜上に設けられたマスクを有していた。シリコン含有膜は、シリコン単結晶膜であった。第1の実験では、
図3のプラズマ処理装置10と同一の構造を有するプラズマ処理装置を用いて処理ガスからプラズマを生成して各サンプル基板のシリコン含有膜をエッチングした。
【0096】
第1のサンプル基板に対して、60秒間1回目のエッチングを行った後、80秒間のインターバルを経て、60秒間2回目のエッチングを行った。1回目及び2回目のエッチングの各々において、基板支持器14の温度は-50℃であった。高周波電源70Aから内側アンテナ素子52Aに、高周波電力が高周波電源70Bに、それぞれ高周波電力が供給された。また、バイアス電源30から下部電極18にバイアス電力が供給された。1回目及び2回目のエッチングの各々において、ハロゲン含有ガス及び酸素含有ガスの合計流量に対する酸素含有ガスの流量の割合は35%であった。なお、ハロゲン含有ガスとしては、HBrガス及びSF6ガスを使用した。
【0097】
第2のサンプル基板のエッチング条件は、基板支持器14の温度が-45℃であること以外は第1のサンプル基板のエッチング条件と同一であった。
【0098】
第3のサンプル基板のエッチング条件は、基板支持器14の温度が-40℃、1回目のエッチングにおけるハロゲン含有ガス及び酸素含有ガスの合計流量に対する酸素含有ガスの流量の割合が37%であること以外は第1のサンプル基板のエッチング条件と同一であった。
【0099】
第4のサンプル基板のエッチング条件は、基板支持器14の温度が-35℃、1回目のエッチングにおけるハロゲン含有ガス及び酸素含有ガスの合計流量に対する酸素含有ガスの流量の割合が38%であること以外は第1のサンプル基板のエッチング条件と同一であった。
【0100】
第5のサンプル基板のエッチング条件は、基板支持器14の温度が-20℃、1回目のエッチングにおけるハロゲン含有ガス及び酸素含有ガスの合計流量に対する酸素含有ガスの流量の割合が40%であること以外は第1のサンプル基板のエッチング条件と同一であった。
【0101】
図9の(a)~(e)は、エッチングにより形成された凹部の側壁の形状の例を模式的に示す図である。
図9の(a)~(e)は、第1~第5のサンプル基板の断面をそれぞれ示す。
図9から、基板支持器14の温度が高くなるに連れて、凹部の側壁におけるボーイングの発生が抑制されることが分かった。基板支持器14の温度が-40℃より高い場合、ボーイングの発生が顕著に抑制される。
【0102】
(第2の実験)
【0103】
第2の実験では、
図2に示した基板Wと同一の構造を有する3つのサンプル基板を準備した。各サンプル基板は、シリコン含有膜及び当該シリコン含有膜上に設けられたマスクを有していた。シリコン含有膜は、シリコン単結晶膜であった。第2の実験では、
図3のプラズマ処理装置10と同一の構造を有するプラズマ処理装置を用いて処理ガスからプラズマを生成して各サンプル基板のシリコン含有膜をエッチングした。
【0104】
第1のサンプル基板に対して、60秒間1回目のエッチングを行った後、80秒間のインターバルを経て、20秒間2回目のエッチングを行った。1回目及び2回目のエッチングの各々において、基板支持器14の温度は-50℃であった。高周波電源70Aから内側アンテナ素子52Aに、高周波電力が高周波電源70Bに、それぞれ高周波電力が供給された。また、バイアス電源30から下部電極18にバイアス電力が供給された。1回目のエッチングにおいて、ハロゲン含有ガス及び酸素含有ガスの合計流量に対する酸素含有ガスの流量の割合は35%であった。2回目のエッチングにおいて、ハロゲン含有ガス及び酸素含有ガスの合計流量に対する酸素含有ガスの流量の割合は40%であった。なお、1回目のエッチング及び2回目のエッチングのいずれにおいても、ハロゲン含有ガスとしては、HBrガス及びSF6ガスを使用した。
【0105】
第2のサンプル基板のエッチング条件は、2回目のエッチングにおけるハロゲン含有ガス及び酸素含有ガスの合計流量に対する酸素含有ガスの流量の割合が35%であること以外は第1のサンプル基板のエッチング条件と同一であった。
【0106】
第3のサンプル基板のエッチング条件は、2回目のエッチングにおけるハロゲン含有ガス及び酸素含有ガスの合計流量に対する酸素含有ガスの流量の割合が25%であること以外は第1のサンプル基板のエッチング条件と同一であった。
【0107】
図10の(a)~(c)は、エッチングにより形成された凹部の側壁の形状の例を模式的に示す図である。
図10の(a)~(c)は、第1~第3のサンプル基板の断面をそれぞれ示す。
図10から、ハロゲン含有ガス及び酸素含有ガスの合計流量に対するO
2ガスの流量の割合が小さくなるに連れて、凹部の側壁に形成される肩部SHの発生が抑制されることが分かった。ハロゲン含有ガス及び酸素含有ガスの合計流量に対する酸素含有ガスの流量の割合が25%以下の場合、肩部SHの発生が顕著に抑制される。
【0108】
(第3の実験)
【0109】
第3の実験では、
図2に示した基板Wと同一の構造を有する4つのサンプル基板を準備した。各サンプル基板は、シリコン含有膜及び当該シリコン含有膜上に設けられたマスクを有していた。シリコン含有膜は、シリコン単結晶膜であった。第3の実験では、
図3のプラズマ処理装置10と同一の構造を有するプラズマ処理装置を用いて処理ガスからプラズマを生成して各サンプル基板のシリコン含有膜をエッチングした。
【0110】
第1のサンプル基板に対して、第2の実験と同様に、60秒間1回目のエッチングを行った後、80秒間のインターバルを経て、20秒間2回目のエッチングを行った。その後、40秒間3回目のエッチングを行った。1回目~3回目のエッチングの各々において、基板支持器14の温度は-50℃であった。高周波電源70Aから内側アンテナ素子52Aに、高周波電力が高周波電源70Bに、それぞれ高周波電力が供給された。また、バイアス電源30から下部電極18にバイアス電力が供給された。1回目のエッチングにおいて、ハロゲン含有ガス及び酸素含有ガスの合計流量に対する酸素含有ガスの流量の割合は35%であった。2回目のエッチングにおいて、ハロゲン含有ガス及び酸素含有ガスの合計流量に対する酸素含有ガスの流量の割合は40%であった。3回目のエッチングにおいて、ハロゲン含有ガス及び酸素含有ガスの合計流量に対する酸素含有ガスの流量の割合は35%であった。なお、1回目のエッチング及び2回目のエッチングのいずれにおいても、ハロゲン含有ガスとしては、HBrガス及びSF6ガスを使用した。
【0111】
第2のサンプル基板のエッチング条件は、2回目のエッチングにおけるハロゲン含有ガス及び酸素含有ガスの合計流量に対する酸素含有ガスの流量の割合が35%であること以外は第1のサンプル基板のエッチング条件と同一であった。
【0112】
第3のサンプル基板のエッチング条件は、2回目のエッチングにおけるハロゲン含有ガス及び酸素含有ガスの合計流量に対する酸素含有ガスの流量の割合が30%であること以外は第1のサンプル基板のエッチング条件と同一であった。
【0113】
第4のサンプル基板のエッチング条件は、2回目のエッチングにおけるハロゲン含有ガス及び酸素含有ガスの合計流量に対する酸素含有ガスの流量の割合が25%であること以外は第1のサンプル基板のエッチング条件と同一であった。
【0114】
図11の(a)~(d)は、エッチングにより形成された凹部の側壁の形状の例を模式的に示す図である。
図11の(a)~(d)は、第1~第4のサンプル基板の断面をそれぞれ示す。
図11から、ハロゲン含有ガス及び酸素含有ガスの合計流量に対する酸素含有ガスの流量の割合が小さくなるに連れて、凹部の側壁におけるボーイングの発生が抑制されることが分かった。ハロゲン含有ガス及び酸素含有ガスの合計流量に対する酸素含有ガスの流量の割合が30%以下の場合、ボーイングの発生が顕著に抑制される。
【0115】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0116】
12…チャンバ、14…基板支持器、P1,P2,P3…プラズマ、PF…保護膜、R1…凹部、R1b…底部、R1s…側壁、W…基板。