(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】光学装置のハウジング、光学装置、レーザ溶接装置、およびレーザ溶接方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/21 20140101AFI20241107BHJP
B23K 26/067 20060101ALI20241107BHJP
B23K 26/26 20140101ALI20241107BHJP
B23K 26/70 20140101ALI20241107BHJP
H01S 5/022 20210101ALI20241107BHJP
【FI】
B23K26/21 F
B23K26/067
B23K26/26
B23K26/70
H01S5/022
B23K26/21 P
(21)【出願番号】P 2020210986
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有賀 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】三代川 純
(72)【発明者】
【氏名】松永 啓伍
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-115376(JP,A)
【文献】特開2012-200768(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159857(WO,A1)
【文献】特開2014-170187(JP,A)
【文献】特開2004-195490(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0095444(US,A1)
【文献】国際公開第2015/072010(WO,A1)
【文献】国際公開第2003/005507(WO,A1)
【文献】特開昭61-222693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/21
B23K 26/067
B23K 26/26
B23K 26/70
H01S 5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部品の収容室を構成する光学装置のハウジングであって、
前記ハウジングの外面となる第一外面と、第一端縁と、を有した板状の第一部材と、
前記ハウジングの外面となる第二外面と、前記第一端縁に沿って延びた第二端縁と、有した板状の第二部材と、
前記第一端縁と前記第二端縁との間の境界部分のうち前記第一外面と前記第二外面との間の部分を溶接した線状の溶接部と、
を備え、
前記溶接部は、前記第一外面と前記第二外面との間から前記第一外面および前記第一端縁に沿う第一方向と交差した第二方向に延びるとともに、
前記境界部分は、前記溶接部と前記収容室との間で前記第一端縁と前記第二端縁とが隙間をあけて面するかあるいは接した対向区間とし
て前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に延びた対向区間を
含むとともに、当該境界部分における前記第一端縁と前記第二端縁との間の隙間の大きさが他の部分よりも大きい中間室を含み、
前記中間室は、前記溶接部から離れるとともに前記収容室からも離れ前記溶接部と前記収容室の間となる位置に設けられた、光学装置のハウジング。
【請求項2】
前記第一方向と交差した断面において、前記隙間の大きさの最大値が0.2[mm]以上である、請求項
1に記載の光学装置のハウジング。
【請求項3】
前記境界部分が、前記対向区間として、前記溶接部と前記収容室との間で直列に配置され互いに異なる方向に延びた複数の対向区間を含んだ、請求項1
または2に記載の光学装置のハウジング。
【請求項4】
前記対向区間の少なくとも一部において、前記第一端縁と前記第二端縁とが互いに接している、請求項1~
3のうちいずれか一つに記載の光学装置のハウジング。
【請求項5】
前記境界部分が、前記対向区間として、前記第一部材および前記第二部材のうち一方の部材の厚さ方向に略沿って当該一方の部材の厚さの半分以上の長さで延びた対向区間を含んだ、請求項1~
4のうちいずれか一つに記載の光学装置のハウジング。
【請求項6】
前記第一外面と前記第二外面との前記第二方向におけるずれが0.1[mm]以下である、請求項1~
5のうちいずれか一つに記載の光学装置のハウジング。
【請求項7】
前記溶接部は、周状に設けられた、請求項1~
6のうちいずれか一つに記載の光学装置のハウジング。
【請求項8】
前記溶接部において、前記収容室が気密封止された、請求項1~
7のうちいずれか一つに記載の光学装置のハウジング。
【請求項9】
前記第一部材は、前記ハウジングの周壁の開口部を塞ぐ当該ハウジングの蓋を構成する部材であり、
前記第二部材は、前記周壁を構成する部材であり、
前記第一端縁は、前記蓋の周縁であり、
前記第二端縁は、前記第一端縁に沿って延びた前記周壁の周状の端縁である、請求項1~
8のうちいずれか一つに記載の光学装置のハウジング。
【請求項10】
請求項1~
9のうちいずれか一つに記載の光学装置のハウジングと、
前記収容室に収容された光学部品と、
を備えた、光学装置。
【請求項11】
光学部品の収容室を構成する光学装置のハウジングであって、
前記ハウジングの外面となる第一外面と、第一端縁と、を有した板状の第一部材と、
前記ハウジングの外面となる第二外面と、前記第一端縁に沿って延びた第二端縁と、有した板状の第二部材と、
前記第一端縁と前記第二端縁との間の境界部分のうち前記第一外面と前記第二外面との間の部分を溶接した線状の溶接部と、
を備え、
前記溶接部は、前記第一外面と前記第二外面との間から前記第一外面および前記第一端縁に沿う第一方向と交差した第二方向に延びるとともに、
前記境界部分は、前記溶接部と前記収容室との間で前記第一端縁と前記第二端縁とが隙間をあけて面するかあるいは接した対向区間として前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に延びた対向区間を含むとともに、当該境界部分における前記第一端縁と前記第二端縁との間の隙間の大きさが他の部分よりも大きい中間室を含み、
前記中間室は、前記溶接部から離れるとともに前記収容室からも離れ前記溶接部と前記収容室の間となる位置に設けられた、前記ハウジングに、レーザ光を照射して前記第一端縁と前記第二端縁とを溶接するレーザ溶接装置であって、
前記レーザ溶接装置は、
レーザ発振器と、
前記レーザ発振器からのレーザ光を出射する光学ヘッドと、
を備え
、
前記レーザ光を
前記光学ヘッドから前記第一外面と前記第二外面との間の部分に向けて照射しながら掃引することにより、前
記溶接部を形成する、レーザ溶接装置。
【請求項12】
前記レーザ光のビームを成形するビームシェイパを備えた、請求項
11に記載のレーザ溶接装置。
【請求項13】
光学部品の収容室を構成する光学装置のハウジングであって、
前記ハウジングの外面となる第一外面と、第一端縁と、を有した板状の第一部材と、
前記ハウジングの外面となる第二外面と、前記第一端縁に沿って延びた第二端縁と、有した板状の第二部材と、
前記第一端縁と前記第二端縁との間の境界部分のうち前記第一外面と前記第二外面との間の部分を溶接した線状の溶接部と、
を備え、
前記溶接部は、前記第一外面と前記第二外面との間から前記第一外面および前記第一端縁に沿う第一方向と交差した第二方向に延びるとともに、
前記境界部分は、前記溶接部と前記収容室との間で前記第一端縁と前記第二端縁とが隙間をあけて面するかあるいは接した対向区間として前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に延びた対向区間を含むとともに、当該境界部分における前記第一端縁と前記第二端縁との間の隙間の大きさが他の部分よりも大きい中間室を含み、
前記中間室は、前記溶接部から離れるとともに前記収容室からも離れ前記溶接部と前記収容室の間となる位置に設けられた、前記ハウジングに、レーザ光を照射して前記第一端縁と前記第二端縁とを溶接するレーザ溶接方法であって
、
前記レーザ光を
前記第一外面と前記第二外面との間の部分に向けて照射しながら掃引することにより、前
記溶接部を形成する、レーザ溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置のハウジング、光学装置、レーザ溶接装置、およびレーザ溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、箱形のハウジング内に光学部品が収容された光学装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、ハウジングは、複数の部材を接合することにより作製されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の光学装置において、複数の部材をレーザ溶接してハウジングを作製する場合にスパッタが生じると、当該スパッタがハウジングの他の部位に飛んで外観が損なわれたり、当該スパッタがハウジング内に進入して光学部品に影響を与えたり、といった問題が生じる虞があった。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、複数の部材のレーザ溶接によって光学装置のハウジングを作製する場合に、当該レーザ溶接による問題がより生じ難くなるような、改善された新規な光学装置のハウジング、光学装置、レーザ溶接装置、およびレーザ溶接方法を得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光学装置のハウジングは、例えば、光学部品の収容室を構成する光学装置のハウジングであって、前記ハウジングの外面となる第一外面と、第一端縁と、を有した板状の第一部材と、前記ハウジングの外面となる第二外面と、前記第一端縁に沿って延びた第二端縁と、有した板状の第二部材と、前記第一端縁と前記第二端縁との間の境界部分のうち前記第一外面と前記第二外面との間の部分を溶接した線状の溶接部と、を備え、前記溶接部は、前記第一外面と前記第二外面との間から前記第一外面および前記第一端縁に沿う第一方向と交差した第二方向に延びるとともに、前記境界部分は、前記溶接部と前記収容室との間で前記第一端縁と前記第二端縁とが隙間をあけて面するかあるいは接した対向区間として、前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に延びた対向区間を含んでいる。
【0007】
前記光学装置のハウジングでは、前記境界部分が、前記第一方向と交差した断面における前記第一端縁と前記第二端縁との間の距離が他の部分よりも大きい中間室を含んでもよい。
【0008】
前記光学装置のハウジングでは、前記第一方向と交差した断面において、前記距離の最大値が0.2[mm]以上であってもよい。
【0009】
前記光学装置のハウジングでは、前記境界部分が、前記対向区間として、前記溶接部と前記収容室との間で直列に配置され互いに異なる方向に延びた複数の対向区間を含んでもよい。
【0010】
前記光学装置のハウジングでは、前記対向区間の少なくとも一部において、前記第一端縁と前記第二端縁とが互いに接していてもよい。
【0011】
前記光学装置のハウジングでは、前記境界部分が、前記対向区間として、前記第一部材および前記第二部材のうち一方の部材の厚さ方向に略沿って当該一方の部材の厚さの半分以上の長さで延びた対向区間を含んでもよい。
【0012】
前記光学装置のハウジングでは、前記第一外面と前記第二外面との前記第二方向におけるずれが0.1[mm]以下であってもよい。
【0013】
前記光学装置のハウジングでは、前記溶接部は、周状に設けられてもよい。
【0014】
前記光学装置のハウジングでは、前記溶接部において、前記収容室が気密封止されてもよい。
【0015】
前記光学装置のハウジングでは、前記第一部材は、前記ハウジングの周壁の開口部を塞ぐ当該ハウジングの蓋を構成する部材であり、前記第二部材は、前記周壁を構成する部材であり、前記第一端縁は、前記蓋の周縁であり、前記第二端縁は、前記第一端縁に沿って延びた前記周壁の周状の端縁であってもよい。
【0016】
また、本発明の光学装置は、例えば、光学装置のハウジングと、前記収容室に収容された光学部品と、を備える。
【0017】
また、本発明のレーザ溶接装置は、例えば、光学部品の収容室を構成する光学装置のハウジングであって、前記ハウジングの外面となる第一外面と、第一端縁と、を有した板状の第一部材と、前記ハウジングの外面となる第二外面と、前記第一端縁に沿って延びた第二端縁と、有した板状の第二部材と、を備え、前記第一端縁と前記第二端縁との間の境界部分が、前記第一外面と前記第二外面との間から前記第一外面および前記第一端縁に沿う第一方向と交差した第二方向に延びた第一対向区間と、当該第一対向区間と前記収容室との間に介在し前記第一端縁と前記第二端縁とが隙間をあけて面するかあるいは接し少なくとも部分的に前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に延びた第二対向区間と、を含むよう構成された、前記ハウジングに、レーザ光を照射して前記第一端縁と前記第二端縁とを溶接するレーザ溶接装置であって、前記レーザ溶接装置は、レーザ発振器と、前記レーザ発振器からのレーザ光を出射する光学ヘッドと、を備え、前記レーザ光は、少なくとも一つの主ビームと、当該主ビームよりもパワー密度が小さい少なくとも一つの副ビームと、を含み、前記レーザ光を前記第一対向区間に向けて照射しながら掃引することにより、前記第一外面および前記第二外面に隣接した線状の溶接部を形成する。
【0018】
前記レーザ溶接装置は、前記レーザ光のビームを成形するビームシェイパを備えてもよい。
【0019】
また、本発明のレーザ溶接方法は、例えば、光学部品の収容室を構成する光学装置のハウジングであって、前記ハウジングの外面となる第一外面と、第一端縁と、を有した板状の第一部材と、前記ハウジングの外面となる第二外面と、前記第一端縁に沿って延びた第二端縁と、有した板状の第二部材と、を備え、前記第一端縁と前記第二端縁との間の境界部分が、前記第一外面と前記第二外面との間から前記第一外面および前記第一端縁に沿う第一方向と交差した第二方向に延びた第一対向区間と、当該第一対向区間と前記収容室との間に介在し前記第一端縁と前記第二端縁とが隙間をあけて面するかあるいは接し少なくとも部分的に前記第一方向および前記第二方向と交差した第三方向に延びた第二対向区間と、を含むよう構成された、前記ハウジングに、レーザ光を照射して前記第一端縁と前記第二端縁とを溶接するレーザ溶接方法であって、前記レーザ光は、少なくとも一つの主ビームと、当該主ビームよりもパワー密度が小さい少なくとも一つの副ビームと、を含み、前記レーザ光を前記第一対向区間に向けて照射しながら掃引することにより、前記第一外面および前記第二外面に隣接した線状の溶接部を形成する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、改善された新規な光学装置のハウジング、光学装置、レーザ溶接装置、およびレーザ溶接方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、第1実施形態の光学装置の内部構成を示す例示的かつ模式的な側面図(一部断面図)である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の第1変形例の光学装置のハウジングに形成された溶接構造の
図2と同等位置での例示的かつ模式的な断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の第2変形例の光学装置のハウジングに形成された溶接構造の
図2と同等位置での例示的かつ模式的な断面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の第3変形例の光学装置のハウジングに形成された溶接構造の
図2と同等位置での例示的かつ模式的な断面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の第4変形例の光学装置のハウジングに形成された溶接構造の
図2と同等位置での例示的かつ模式的な断面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態のレーザ溶接装置の例示的な概略構成図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態のレーザ溶接装置に含まれる回折光学素子の原理の概念を示す説明図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態のレーザ溶接装置の対象物の表面上におけるビーム(スポット)の一例を示す模式図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態のレーザ溶接装置の対象物の表面上におけるビーム(スポット)の別の一例を示す模式図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態のレーザ溶接装置の対象物の表面上におけるビーム(スポット)のさらに別の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の例示的な実施形態および変形例が開示される。以下に示される実施形態および変形例の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態および変形例に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0023】
以下に示される実施形態および変形例は、同様の構成を備えている。各実施形態および変形例の構成によれば、当該同様の構成に基づく同様の作用および効果が得られる。また、以下では、それら同様の構成には同様の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される場合がある。
【0024】
本明細書において、序数は、部品や、部位、方向等を区別するために便宜上付与されており、優先順位や順番を示すものではない。
【0025】
また、各図において、X方向を矢印Xで表し、Y方向を矢印Yで表し、Z方向を矢印Zで表す。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに交差するとともに互いに直交している。
【0026】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の光学装置1の内部構成を示す側面図である。
図1に示されるように、光学装置1は、ハウジング10と、当該ハウジング10内に収容された温調装置20、発光素子41、レンズ42、キャリア43、光アイソレータ51、ビームスプリッタ52、および受光素子53のような部品と、を備えている。受光素子53は、例えば、フォトダイオードである。
【0027】
ハウジング10は、壁として、頂壁11と、底壁12と、二つの側壁13と、二つの側壁14と、を有している。ハウジング10は、例えば、直方体状かつ箱状の形状を有している。ハウジング10内には、これら頂壁11、底壁12、二つの側壁13、および二つの側壁14によって囲まれた収容室Rが形成されている。
【0028】
底壁12は、Z方向と交差して広がっている。本実施形態では、底壁12は、X方向およびY方向に延びるとともに、Z方向と直交している。
【0029】
収容室R内において、底壁12上には、温調装置20を介して光学部品が取り付けられている。光学部品は、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)や窒化アルミニウム(AlN)のようなセラミックなどのベース板を介して、温調装置20上に取り付けられている場合もある。底壁12は、支持部や支持壁とも称されうる。
【0030】
頂壁11は、Z方向と交差して広がっている。本実施形態では、頂壁11は、X方向およびY方向に延びるとともに、Z方向と直交している。
【0031】
側壁13は、それぞれ、X方向と交差して広がっている。本実施形態では、側壁13は、Y方向およびZ方向に延びるとともに、X方向と直交している。側壁13は、ハウジング10のX方向(長手方向)の端部にそれぞれ位置されている。
【0032】
側壁13のうちの一つには、光学窓15が設けられている。
【0033】
また、光学窓15が設けられないもう一つの側壁13には、当該側壁13を厚さ方向(X方向)に貫通するフィードスルー16が設けられている。フィードスルー16も、ハウジング10の一部を構成していると言うことができる。なお、フィードスルー16は、側壁14を貫通する部位を有してもよい。
【0034】
側壁14は、Y方向と交差して広がっている。本実施形態では、側壁14は、X方向およびZ方向に延びるとともに、Y方向と直交している。側壁14は、ハウジング10の幅方向の端部に位置されている。なお、側壁13,14は、周壁とも称されうる。
【0035】
頂壁11は、例えば、コバールや、FeNi、アルミニウムのような金属材料で作られうる。頂壁11の表面には、Niや、NiAu、NiPtAu、NiPdAu等によるめっき層が設けられてもよい。また、頂壁11のうち、側壁13,14との接合面には、銀や、AuSn等によるろう材の層が設けられてもよい。
【0036】
側壁13,14は、例えば、コバールのような金属材料で作られうる。側壁13,14の表面には、Niや、NiAu、NiPtAu、NiPdAu等によるめっき層が設けられてもよい。側壁13,14のうち、頂壁11との接合面には、銀や、AuSn等によるろう材の層が設けられてもよい。また、側壁13,14のうち、頂壁11との接合面を含む部位のみが金属材料で作られ、他の部位は、例えば、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムのようなセラミックで作られてもよい。なお、頂壁11および側壁13,14において、めっき層やろう材の層は必須ではない。
【0037】
底壁12は、例えば、Cuタングステン合金や、CuMo合金のような金属材料で作られうる。
【0038】
また、フィードスルー16は、例えば、酸化アルミニウムや、窒化アルミニウムのようなセラミックで作られうる。
【0039】
温調装置20は、上側基板21Uと、下側基板21Lと、複数の熱電素子22とを有している。上側基板21Uおよび下側基板21Lは、底壁12に沿っている。熱電素子22は、それぞれ、上側基板21Uと下側基板21Lとの間に介在している。
【0040】
上側基板21Uは、Z方向と交差して広がり、上面20aと当該上面20aの裏側の下面21bとを有している。上側基板21Uは、例えばセラミックのような熱伝導性が高い絶縁性の材料により作られうる。発光素子41、レンズ42、光アイソレータ51、ビームスプリッタ52、および受光素子53のような光学部品は、上面20a上に、直接的にあるいはベース板などの他の部品を介して間接的に、取り付けられている。上側基板21Uは、第一基板や実装基板とも称され、上面20aは、実装面とも称されうる。
【0041】
下側基板21Lは、Z方向と交差して広がり、上面21aと当該上面21aの裏側の下面20bとを有している。下側基板21Lは、例えばセラミックのような熱伝導性が高い絶縁性の材料により作られうる。下側基板21Lは、ハウジング10の底壁12と熱的に接続された状態で、当該底壁12に取り付けられている。下側基板21Lは、第二基板や取付基板とも称され、下面20bは、接触面や取付面とも称されうる。
【0042】
熱電素子22は、半導体素子の一例であり、例えば、ビスマステルル系の半導体のような、P型半導体またはN型半導体によって、作られうる。
【0043】
上側基板21Uの下面21bおよび下側基板21Lの上面21aには配線パターン(不図示)が設けられている。熱電素子22は、それぞれ、これら二つの配線パターンの間に介在している。配線パターンは、例えば、銅系金属のような、導電性の高い金属材料によって、作られうる。
【0044】
複数の熱電素子22は、配線パターンを介してPN接合を構成するよう、直列に接続されている。複数の熱電素子22は、配線パターンを介した温調装置20外からの電力の供給により、発熱または吸熱する。熱電素子22における発熱と吸熱とは、複数の熱電素子22に流れる電流の向きにより、切り替わる。配線パターンは、導体あるいは導体層とも称されうる。
【0045】
このように、温調装置20は、光学部品の土台として機能するとともに、光学部品を加熱したり冷却したりすることにより、当該光学部品の温度調整を行う。温調装置20は、ペルチェモジュールや、熱電モジュールとも称されうる。
【0046】
光機能素子である発光素子41は、例えば、半導体レーザ素子であり、このとき光学装置1は波長可変レーザモジュールである。また、光学素子が光変調器素子であって光学装置が光変調器モジュールである場合や、光学素子がフォトダイオードであって光学装置が光受信機モジュールである場合や、半導体レーザ素子とフォトダイオード素子、光変調器素子が集積されているIC-TROSA(integrated coherent-transmitter receiver optical sub-assembly)の場合もある。発光素子41は、キャリア43を介して温調装置20の上面20a上に実装されている。キャリア43は、発光素子41と線膨張係数が近い絶縁性の材料または熱伝導性が高い絶縁性の材料によって作られ、発光素子41が発生する熱を温調装置20に伝達する。キャリア43は、サブマウントとも称されうる。
【0047】
発光素子41は、レーザ光をレンズ42に向けて出力する。レーザ光の波長は、例えば、光通信の波長として好適な900nm以上1650nm以下である。発光素子41は、レーザ光を出力している間は素子温度が上昇し、発熱体として機能する。発光素子41は、例えば、半導体レーザ素子である。
【0048】
レンズ42は、キャリア43に取り付けられている。レンズ42は、発光素子41からのレーザ光に、屈折率による作用を及ぼしてコリメートする。レンズ42から出力されたレーザ光は、光アイソレータ51に入力される。
【0049】
光アイソレータ51は、磁石51aと、磁気光学素子および偏光板を含む光学素子部51bと、を有している。光アイソレータ51は、光学素子部51bからのレーザ光を偏光するとともに、光学素子部51bからのレーザ光に、磁気光学作用を及ぼす。光アイソレータ51から出力されたレーザ光は、ビームスプリッタ52に入力される。光アイソレータ51は、ビームスプリッタ52からの光が発光素子41に向けて通過するのを阻止する。
【0050】
ビームスプリッタ52は、光アイソレータ51からのレーザ光を光学装置1外に出力するとともに、光アイソレータ51からのレーザ光を分光して受光素子53に入力する。
【0051】
ハウジング10は、気密封止されており、これにより、ハウジング10内に収容された発光素子41、レンズ42、光アイソレータ51、ビームスプリッタ52、および受光素子53のような光学部品に、空気や水が作用するのが防止されている。光学装置1は、例えば、製造時にハウジング10内に充填された窒素ガスのような不活性ガスがハウジング10外に漏れないよう、構成されている。
【0052】
また、光学装置1には、フレキシブルプリント配線板30が接続されている。本実施形態では、フレキシブルプリント配線板30は、フィードスルー16に固定されている。フレキシブルプリント配線板30のフィードスルー16またはハウジング10への固定には、ねじのような固定具(不図示)や接着剤が用いられてもよい。
【0053】
フレキシブルプリント配線板30内の導体を介して、上位装置(不図示)から、発光素子41や温調装置20へ、駆動電力や制御信号が供給される。また、フレキシブルプリント配線板30内の導体を介して、収容室R内のセンサ(不図示)から、上位装置へ、検出信号が送られる。
【0054】
図2は、
図1のII部の拡大図である。
図2は、ハウジング10に形成された、頂壁11と側壁13とを溶接する溶接構造60A(60)の断面を、示している。なお、頂壁11と側壁14との間にも、
図2と同様の溶接構造60Aが設けられる。
【0055】
図2に示されるように、本実施形態では、頂壁11の周縁11bと、側壁13の端縁13bとが、溶接部61を介して接合されている。溶接部61は、レーザ光Lの照射によって溶融池が形成され、当該溶融池が冷却されて固化することにより、形成される。すなわち、頂壁11と側壁13とは、レーザ溶接されている。頂壁11は、側壁13,14の開口部を塞ぐハウジング10の蓋を構成する部材であって、第一部材の一例である。側壁13,14は、ハウジング10の周壁を構成する部材であって、第二部材の一例である。周縁11bは、第一端縁の一例である。また、端縁13bは、周縁11bに沿って延びた線状の端縁であって、第二端縁の一例である。
【0056】
なお、端縁13bは、他の側壁13および側壁14の端縁とともに、周縁11bに沿う周状の端縁を構成している。また、溶接構造60は、側壁13と頂壁11との間には限定されず、例えば、
図1に示される側壁13と底壁12との間の角部Aや、側壁14と底壁12との間の角部(不図示)に形成されてもよいし、延び方向に並ぶ二つの部材の突き合わせ部分(不図示)に形成されてもよい。
【0057】
図2に示されるように、溶接部61は、頂壁11の外面11sと、側壁13の外面13sとの間に位置している。外面11s,13sは、いずれもZ方向と交差して広がっており、言い換えると、X方向およびY方向に延びている。一例として、外面11sと外面13sとは、略面一であり、Z方向におけるずれが、0.1[mm]以下に設定されている。外面11sは、第一外面の一例であり、外面13sは、第二外面の一例である。
【0058】
本実施形態では、周縁11bと端縁13bとの間の境界部分Bは、外面11sと外面13sとの間と、収容室Rとの間で、延びている。境界部分Bは、二つの区間B1,B2を有している。区間B1は、外面11s,13sに隣接している。また、区間B1,B2は、直列に並んでおり、区間B2は、区間B1よりも収容室R側に位置している。
図2から明らかとなるように、
図2の断面において、境界部分Bは、L字状に屈曲している。すなわち、区間B1が延びる方向と、区間B2が延びる方向とは、互いに交差している。また、区間B1は、外面11sと外面13sの間から、収容室R側に向かうにつれて、Z方向へ延び、区間B2は、区間B1の収容室R側の端部から、収容室R側へ向かうにつれて、X方向の反対方向へ延びている。
【0059】
溶接部61は、区間B1において、周縁11bと端縁13bとを接合している。なお、
図2には、溶接部61において、当該溶接部61が形成される前の境界部分Bを、二点鎖線で示している。
【0060】
ここで、
図2は、Y方向と交差した断面である。言い換えると、
図2の断面が形成されている部分において、周縁11b、端縁13b、外面11s、外面13s、境界部分B、区間B1,B2、および溶接部61は、
図2の紙面と交差したY方向に延びている。すなわち、Y方向は、外面11s,13sに沿うとともに周縁11bおよび端縁13bに沿う方向である。Y方向は、第一方向の一例である。
【0061】
レーザ光Lは、境界部分Bの区間B1に向けてZ方向に照射される。すなわち、レーザ光Lの照射方向Iは、Z方向である。よって、溶接部61は、
図2の断面が形成されている部分において、外面11sと外面13sとの間から、照射方向Iに延びている。照射方向Iは、第二方向の一例である。照射方向Iは、溶接部61の深さ方向とも称されうる。
【0062】
溶接工程において、レーザ溶接装置100(
図7参照)から照射されたレーザ光Lは、少なくとも
図2の断面が形成されている部位においては、照射状態でY方向に掃引され、これにより、溶接部61は、Y方向に延びることになる。本実施形態では、周縁11bと端縁13bおよび側壁14の端縁とは、それらの全周に亘って、
図2と同様の構成を有している。すなわち、周縁11bと端縁13bおよび側壁14の端縁とは、側壁13の開口部の蓋となる頂壁11の縁の全周に亘って、溶接部61を介してシーム溶接され、当該溶接部61において、収容室Rが気密封止されている。
【0063】
境界部分Bの区間B1では、端面11cと端面13cとがX方向に面している。端面11cは、X方向を向き、X方向と交差して広がっている。言い換えると、端面11cは、Y方向およびZ方向に延びている。他方、端面13cは、X方向の反対方向を向き、X方向と交差して広がっている。言い換えると、端面13cは、Y方向およびZ方向に延びている。端面11cと端面13cとは、接するかあるいは隙間をあけて面している。区間B1は、Y方向に延びるとともに、収容室Rに向けてはZ方向に延びている。当該区間B1は、対向区間および第一対向区間の一例である。また、区間B1において、Z方向は、第二方向の一例である。
【0064】
区間B2では、端面11dと端面13dとがZ方向に面している。端面11dは、Z方向を向き、Z方向と交差して広がっている。言い換えると、端面11dは、X方向およびY方向に延びている。他方、端面13dは、Z方向の反対方向を向き、Z方向と交差して広がっている。言い換えると、端面13dは、X方向およびY方向に延びている。端面11dと端面13dとは、接するかあるいは隙間をあけて面している。区間B2は、Y方向に延びるとともに、収容室Rに向けてはX方向の反対方向に延びている。当該区間B2は、対向区間および第二対向区間の一例である。また、区間B2において、X方向の反対方向は、第三方向の一例である。
【0065】
また、区間B2は、側壁13の厚さ方向であるX方向に略沿って延びており、当該区間B2のX方向における長さT31は、側壁13の厚さT3の半分以上である。
【0066】
以上、説明したように、本実施形態では、頂壁11(第一部材)と側壁13(第二部材)とを溶接する溶接部61は、外面11s(第一外面)と外面13s(第二外面)との間で、Z方向(照射方向I、第二方向)に延びている。また、境界部分Bは、区間B1と区間B2とを含み、区間B1(対向区間、第一対向区間)はZ方向(第二方向)に延び、区間B2(対向区間、第二対向区間)はX方向の反対方向(第三方向)に延びている。
【0067】
このような構成において、レーザ光Lは、区間B1に向けて当該区間B1の延びるZ方向に略沿って照射される。よって、溶接部が頂壁11または側壁13を貫通するように形成されるような場合に比べて、レーザ光Lのエネルギが当該区間B1に沿って伝達されやすくなる分、より少ないエネルギで溶接部61を形成することができる。これに伴い、スパッタの発生を抑制することができる。さらに、溶接部61が形成される区間B1よりも収容室R側に位置する区間B2は、区間B1の延び方向であるZ方向と交差したX方向の反対方向に延びている。すなわち、溶接部61が形成される前の状態で、境界部分Bは、外面11sおよび外面13sの間と収容室Rとの間で屈曲している。したがって、仮に溶接部61の形成工程において、区間B1にスパッタが発生した場合にあっても、境界部分Bが収容室Rに向けて屈曲して延びているため、境界部分が直線状に延びている場合に比べて、当該スパッタは境界部分Bに沿って収容室Rに進入し難くなる。よって、このような構成によれば、スパッタが収容室R内の光学部品に影響を及ぼすのを抑制することができる。なお、境界部分Bにおいて、区間B1と区間B2とが交差している場合、溶接部61の延び方向(Z方向)と、区間B2の延び方向(X方向の反対方向)とが、交差することになる。
【0068】
また、本実施形態のように、区間B1,B2(対向区間)のうち少なくとも一部、例えば区間B2において、端面11dすなわち周縁11b(第一端縁)と、端面13dすなわち端縁13b(第二端縁)とが、互いに接していてもよい。
【0069】
このような構成によれば、例えば、境界部分Bにおいて、周縁11bと端縁13bとが互いに接する部分を構成することができるので、周縁11bと端縁13bとが互いに接する部分が無い構成に比べて、スパッタが境界部分Bに沿って収容室R内に進入し難くなる。よって、このような構成によれば、スパッタが収容室R内の光学部品に影響を及ぼすのをさらに抑制することができる。また、この場合、当該互いに接した部位である端面11d,13dを、頂壁11と側壁13とのZ方向への位置決め部としてもよい。このような構成によれば、当該位置決め部を境界部分Bとは別に設ける場合に比べて、ハウジング10の構成をより簡素化することができる。
【0070】
また、本実施形態のように、区間B2が、側壁13の厚さ方向(X方向)に延びる場合、当該区間B2の厚さ方向における長さT31は、側壁13の厚さT3の半分以上であってもよい。
【0071】
この場合、区間B2の長さが厚さT3の半分未満である場合よりも当該区間B2の長さを長くすることができるので、スパッタは境界部分Bに沿って収容室R内により一層進入し難くなる。よって、スパッタが収容室R内への光学部品に影響を及ぼすのをより一層抑制することができる。
【0072】
[第1変形例]
図3は、第1実施形態の第1変形例の溶接構造60B(60)の、
図2と同等位置での断面図である。本変形例では、境界部分Bが中間室Sを含んでいる点が、上記実施形態と相違している。中間室Sの有無を除き、溶接構造60Bは、実施形態の溶接構造60Aと同様の構成を有している。
【0073】
中間室Sは、境界部分Bのうち、周縁11bと端縁13bとの間の隙間の大きさh(高さ)が、他の部分よりも大きい部分である。中間室Sは、溶接部61または区間B1と収容室Rとの間に設けられており、Y方向に延びている。Y方向と交差した断面において、隙間の大きさhの最大値は、0.2[mm]以上であるのが好適である。なお、中間室Sは、溶接部61と収容室Rとの間に位置すればよく、
図3に示す位置には限定されない。
【0074】
このような構成によれば、例えば、仮に溶接部61の形成工程において、区間B1にスパッタが発生した場合にあっても、中間室Sでスパッタを捕捉したり、中間室Sにスパッタを収容したりすることができる分、スパッタは境界部分Bに沿って収容室R内に進入し難くなる。よって、本変形例によれば、スパッタが収容室R内の光学部品に影響を及ぼすのを、より一層抑制することができる。
【0075】
[第2変形例]
図4は、第1実施形態の第2変形例の溶接構造60C(60)の、
図2と同等位置での断面図である。本変形例では、X方向を向きZ方向に略面一に並んだ外面11sと外面13sとの間から収容室Rにかけて境界部分Bが設けられ、当該境界部分BがZ字状に屈曲している点が、上記実施形態および第1変形例と相違している。
【0076】
本変形例では、境界部分Bは、三つの区間B1,B21,B22を有している。区間B1は、外面11s,13sに隣接している。区間B21は、区間B1よりも収容室R側に位置し、区間B22は、区間B21よりも収容室R側に位置している。
【0077】
境界部分Bの区間B1では、端面11eと端面13eとがZ方向に面している。端面11eは、Z方向を向き、Z方向と交差して広がっている。言い換えると、端面11eは、X方向およびY方向に延びている。他方、端面13eは、Z方向の反対方向を向き、Z方向と交差して広がっている。言い換えると、端面13eは、X方向およびY方向に延びている。端面11eと端面13eとは、接するかあるいは隙間をあけて面している。区間B1は、Y方向に延びるとともに、収容室Rに向けてはX方向の反対方向に延びている。当該区間B1は、対向区間および第一対向区間の一例である。また、区間B1において、X方向の反対方向は、第二方向の一例である。
【0078】
区間B21では、端面11cと端面13cとがX方向に面している。端面11cは、X方向を向き、X方向と交差して広がっている。言い換えると、端面11cは、Y方向およびZ方向に延びている。他方、端面13cは、X方向の反対方向を向き、X方向と交差して広がっている。言い換えると、端面13cは、Y方向およびZ方向に延びている。端面11cと端面13cとは、接するかあるいは隙間をあけて面している。区間B21は、Y方向に延びるとともに、収容室Rに向けてはZ方向に延びている。当該区間B21は、対向区間および第二対向区間の一例である。また、区間B21において、Z方向は、第三方向の一例である。
【0079】
また、本変形例では、区間B21は、頂壁11の厚さ方向であるZ方向に略沿って延びており、当該区間B21のZ方向における長さT11は、頂壁11の厚さT1の半分以上である。
【0080】
境界部分Bの区間B22では、端面11dと端面13dとがZ方向に面している。端面11dは、Z方向を向き、Z方向と交差して広がっている。言い換えると、端面11dは、X方向およびY方向に延びている。他方、端面13dは、Z方向の反対方向を向き、Z方向と交差して広がっている。言い換えると、端面13dは、X方向およびY方向に延びている。端面11dと端面13dとは、接するかあるいは隙間をあけて面している。区間B22は、Y方向に延びるとともに、収容室Rに向けてはX方向の反対方向に延びている。当該区間B22は、対向区間および第二対向区間の一例である。また、区間B22において、X方向の反対方向は、第三方向の一例である。
【0081】
以上の本変形例によれば、境界部分Bは、複数の区間B21,B22(対向区間)を含んでいる。区間B21,B22は、溶接部61と収容室Rとの間で互いに直列に配置されるとともに互いに異なる方向に延びている。このような構成によれば、対向区間が一つだけである場合よりも、スパッタは境界部分Bに沿って収容室Rにさらに進入し難くなる。よって、本変形例によれば、スパッタが収容室R内の光学部品に影響を及ぼすのを、さらに抑制することができる。
【0082】
[第3変形例]
図5は、第1実施形態の第3変形例の溶接構造60D(60)の、
図2と同等位置での断面図である。本変形例の溶接構造60Dには、第1変形例と同様の中間室Sが設けられている。中間室Sは、溶接部61または区間B1と収容室Rとの間に設けられており、Y方向に延びている。なお、中間室Sは、溶接部61と収容室Rとの間に位置すればよく、
図5に示す位置には限定されない。溶接構造60Dは、中間室Sの有無を除き、第2変形例の溶接構造60Cと同様の構成を有している。よって、本変形例によれば、第2変形例と同様の効果が得られるとともに、中間室Sを設けたことによる第1変形例と同様の効果が得られる。
【0083】
[第4変形例]
図6は、第1実施形態の第4変形例の溶接構造60E(60)の、
図2と同等位置での断面図である。本変形例でも、上記第2変形例および第3変形例と同様、X方向を向きZ方向に略面一に並んだ外面11sと外面13sとの間から収容室Rにかけて境界部分Bが設けられ、当該境界部分BがZ字状に屈曲している。ただし、本変形例では、区間B21が、区間B1から収容室Rに向けてZ方向の反対方向に延び、さらに、区間B22が、区間B21のZ方向の反対方向の端部から収容室Rに向けてX方向の反対方向に延びている。本変形例によれば、Z字状に屈曲した境界部分Bを有した上記第2変形例と同様の効果が得られる。
【0084】
また、本変形例では、端面11dは、頂壁11に設けられた凹部11gの底面として設けられている。凹部11gは、Y方向に延びており、凹溝とも称されうる。この場合、凹部11gのX方向の反対側の側面が境界部分Bの区間B22に隙間をあけて面した壁となる。これにより、スパッタの収容室R内への進入をより一層抑制することができ、ひいてはスパッタが収容室R内の光学部品に影響を及ぼすのを、より一層抑制することができる。ただし、溝状の凹部11gは必須ではなく、必要に応じて設けられればよい。
【0085】
[第2実施形態]
[レーザ溶接装置]
図7は、第2実施形態のレーザ溶接装置100の概略構成を示す図である。
図7に示されるように、レーザ溶接装置100は、レーザ装置110と、光学ヘッド120と、光ファイバ130と、を備えている。レーザ溶接装置100により、第1実施形態および各変形例の溶接構造60を得ることができる。
【0086】
レーザ溶接装置100は、レーザ溶接の対象物Wであるハウジング10の表面Waにレーザ光Lを照射する。レーザ光Lのエネルギによって、対象物Wが部分的に溶融し、冷却されて固化することにより、当該対象物Wが溶接され、溶接構造60が形成される。対象物Wは、上述した第1実施形態の頂壁11や側壁13のような複数の部材を有しており、レーザ溶接によって、当該複数の部材が接合される。なお、上記第1実施形態およびその第1~第4変形例では、外面11s,13sが、表面Waの一例である。
【0087】
レーザ装置110は、レーザ発振器を有しており、一例としては、数kWのパワーのシングルモードのレーザ光を出力できるよう構成されている。なお、レーザ装置110は、例えば、内部に複数の半導体レーザ素子を有し、当該複数の半導体レーザ素子の合計の出力として数kWのパワーのマルチモードのレーザ光を出力できるよう構成されてもよい。また、レーザ装置110は、ファイバレーザ、YAGレーザ、ディスクレーザ等、様々なレーザ光源を有してもよい。また、レーザ装置110は、例えば、400[nm]以上かつ1200[nm]以下の波長のレーザ光を出力する。
【0088】
光ファイバ130は、レーザ装置110と光学ヘッド120とを光学的に接続している。言い換えると、光ファイバ130は、レーザ装置110から出力されたレーザ光を光学ヘッド120に導く。レーザ装置110が、シングルモードレーザ光を出力する場合、光ファイバ130は、シングルモードレーザ光を伝播するよう構成される。この場合、シングルモードレーザ光のM2ビーム品質は、1.3以下に設定される。M2ビーム品質は、M2ファクタとも称されうる。
【0089】
光学ヘッド120は、レーザ装置110から入力されたレーザ光を出射する、言い換えると対象物Wに照射する、光学装置である。光学ヘッド120は、コリメートレンズ121と、集光レンズ122と、DOE125(diffractive optical element、回折光学素子)と、を有している。
【0090】
コリメートレンズ121は、それぞれ、光ファイバ130を介して入力されたレーザ光をコリメートする。コリメートされたレーザ光は、平行光になる。
【0091】
コリメートレンズ121と集光レンズ122との間には、DOE125が設けられている。DOE125については、後述する。
【0092】
集光レンズ122は、DOE125から到来した平行光としてのレーザ光を集光し、レーザ光L(出力光)として、対象物Wへ照射する。
【0093】
駆動機構(不図示)は、対象物Wおよび光学ヘッド120のうち少なくとも一方を移動することにより、対象物Wと光学ヘッド120との相対的な位置を変更する。駆動機構は、例えば、モータのような回転機構や、当該回転機構の回転出力を減速する減速機構、当該減速機構によって減速された回転を直動に変換する運動変換機構等を、有する。駆動機構は、対象物Wと光学ヘッド120とを互いに直交する3方向に相対的に並進移動させたり、回転軸Ax回りに相対的に回転させたりすることができる。
【0094】
コントローラ(不図示)は、対象物Wに対する光学ヘッド120の各方向における相対位置が変化するよう、駆動機構を制御することができる。また、駆動機構は、支持機構(不図示)に支持されている複数の対象物Wのうち、レーザ溶接を行う対象物Wを変更する(切り替える)ことができる。また、駆動機構は、対象物Wにおけるレーザ光Lの照射位置を変更することができる。また、駆動機構は、対象物Wに対するレーザ光の照射方向Iを変更するのに伴って照射点を変更するのに利用されうる。さらに、駆動機構は、レーザ光Lが対象物Wの表面上に照射されている状態で、当該照射位置を変更することができる。すなわち、駆動機構は、対象物Wの表面上で、レーザ光Lを掃引することができる。これにより、溶接部61のシーム溶接を実現できる。
【0095】
また、光学ヘッド120は、複数のミラーを有したガルバノスキャナ(不図示)を有してもよい。この場合、コントローラは、レーザ光Lが対象物Wの表面上で掃引されるよう、ガルバノスキャナを制御してもよい。
【0096】
また、上述したように、光学ヘッド120は、DOE125を有している。レーザ光のビームの形状(以下、ビーム形状と称する)を成形する。
図8は、DOE125の原理の概念を示す説明図である。
図8に概念的に例示されるよう、DOE125は、例えば、周期の異なる複数の回折格子125aが重ね合わせられた構成を有している。DOE125は、平行光を、各回折格子125aの影響を受けた方向に曲げたり、重ね合わせたりすることにより、ビーム形状を成形することができる。DOE125は、ビームシェイパとも称されうる。
【0097】
[ビーム(スポット)の形状]
DOE125は、コリメートされたレーザ光を、複数のビームに分割する。
図9~11は、それぞれ、対象物Wの表面Wa上に形成されたレーザ光Lのビームの一例を示す図である。なお、
図9~11では、簡単のため、ビームLb1が実線で示され、ビームLb2が破線で示されている。なお、光学ヘッド120は、DOE125を交換することにより、種々の配置の複数のビームを含むレーザ光を出力することができる。DOE125は、ビームシェイパの一例である。
【0098】
DOE125は、レーザ光を複数のビームに分割する。分割された複数のビームは、少なくとも一つのビームLb1と、少なくとも一つのビームLb2と、を含む。ビームLb2は、ビームLb1よりもパワー密度が小さいビームである。ビームLb1は、主ビームの一例であり、ビームLb2は、副ビームの一例である。また、ビームLb1は、主パワー領域を形成し、ビームLb2は、副パワー領域を形成している。
【0099】
図9の例では、表面Wa上には、一つのビームLb1のスポットと、当該ビームLb1よりも広いビームLb2のスポットと、が形成されている。ビームLb1および当該ビームLb1の外縁Lb1aは、ビームLb2の外縁Lb2aの内側に位置している。なお、ビームLb1とビームLb2とは同心に配置されてもよいし、偏心して配置されてもよい。また、外縁Lb1aは、外縁Lb2aに内接してもよいし、部分的に外縁Lb2aの外に位置してもよい。
【0100】
図10の例では、表面Wa上には、一つのビームLb1のスポットと、当該ビームLb1を取り囲む複数のビームb2のスポットとが、形成されている。ビームb2は、略円環状に並んでいる。ビームb2は、副ビームの一例であり、複数のビームb2によって、副パワー領域が形成されている。
【0101】
図11の例でも、表面Wa上には、一つのビームLb1のスポットと、当該ビームLb1を取り囲む複数のビームb2のスポットとが、形成されている。ただし、ビームb2は、略四角形状に、すなわち仮想的な四角形の辺に沿うように配列されている。ビームb2は、副ビームの一例であり、複数のビームb2によって、副パワー領域が形成されている。
【0102】
図9~11の各レーザ光Lは、いずれもビームLb1(主パワー領域)の周囲にビームb2(副パワー領域)の少なくとも一部が配置されている。また、当該レーザ光Lは、ビームLb2の少なくとも一部が、ビームLb1に対して掃引方向の前方に位置されるよう、成形されている。発明者らの研究により、このようなレーザ光Lを照射しながら掃引した場合にあっては、単一のビームを有したレーザ光を照射しながら掃引した場合に比べてスパッタやブローホールの発生を抑制できることが判明している。これは、溶融池が形成される前にビームLb2の少なくとも一部によって表面Waが予め加熱されることにより、表面Waが単一のビームによって予熱されることなく急激に加熱される場合に比べて、流動状態となる溶融池がより安定化するからであると考えられる。よって、上記第1実施形態やその変形例に開示した溶接構造60(60A~60E)は、上述したような屈曲した境界部分Bを含む構造を有するとともに、ビームLb1,Lb2を含むレーザ光Lの照射しながらの掃引によって形成された線状の溶接部61を有するのが好ましい。
【0103】
以上、本発明の実施形態および変形例が例示されたが、上記実施形態および変形例は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0104】
例えば、光学装置は、光学部品として、半導体レーザ素子や、受光素子の他に、半導体変調器や、半導体光増幅器等を備えてもよい。光学装置は、光学部品として、これら半導体レーザ素子、受光素子、半導体変調器、および半導体光増幅器のうち少なくとも一つを備えればよい。
【符号の説明】
【0105】
1…光学装置
10…ハウジング
11…頂壁(第一部材)
11b…周縁(第一端縁)
11c…端面
11d…端面
11e…端面
11g…凹部
11s…外面(第一外面)
12…底壁
13…側壁(第二部材)
13b…端縁(第二端縁)
13c…端面
13d…端面
13e…端面
13s…外面(第一外面)
14…側壁(第二部材)
15…光学窓
16…フィードスルー
20…温調装置
20a…上面
20b…下面
21U…上側基板
21L…下側基板
21a…上面
21b…下面
22…熱電素子
30…フレキシブルプリント配線板
41…発光素子
42…レンズ
43…キャリア
51…光アイソレータ
51a…磁石
51b…光学素子部
52…ビームスプリッタ
53…受光素子
60,60A~60E…溶接構造
61…溶接部
100…レーザ溶接装置
110…レーザ装置
120…光学ヘッド
121…コリメートレンズ
122…集光レンズ
125…DOE
125a…回折格子
130…光ファイバ
A…角部
Ax…回転軸
B…境界部分
B1…区間(対向区間、第一対向区間)
B2,B21,B22…区間(対向区間、第二対向区間)
b2…ビーム
I…照射方向(第二方向)
L…レーザ光
Lb1…ビーム(主ビーム)
Lb1a…外縁
Lb2…ビーム(副ビーム)
Lb2a…外縁
R…収容室
S…中間室
T1,T3…厚さ
T11,T31…長さ
W…対象物
Wa…表面
X…方向(第三方向の反対方向、第二方向の反対方向)
Y…方向(第一方向)
Z…方向(第二方向、第三方向)