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特許7583612非水系二次電池接着層用組成物、非水系二次電池用電池部材およびその製造方法、並びに非水系二次電池用積層体の製造方法および非水系二次電池の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】非水系二次電池接着層用組成物、非水系二次電池用電池部材およびその製造方法、並びに非水系二次電池用積層体の製造方法および非水系二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/414 20210101AFI20241107BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241107BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20241107BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20241107BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20241107BHJP
【FI】
H01M50/414
H01M4/13
H01M4/139
H01M50/403 D
H01M50/443 B
H01M50/443 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020539397
(86)(22)【出願日】2019-08-22
(86)【国際出願番号】 JP2019032901
(87)【国際公開番号】W WO2020045246
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-07-04
【審判番号】
【審判請求日】2024-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2018160806
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】古賀 大士
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅信
(72)【発明者】
【氏名】安中 浩二
【合議体】
【審判長】高野 洋
【審判官】土居 仁士
【審判官】衣鳩 文彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-88253(JP,A)
【文献】国際公開第2015/005145(WO,A1)
【文献】特開2006-96809(JP,A)
【文献】特開2015-141773(JP,A)
【文献】国際公開第2013/172415(WO,A1)
【文献】特開2001-181590(JP,A)
【文献】国際公開第2018/070448(WO,A1)
【文献】特開2013-203894(JP,A)
【文献】特開2016-81888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/40-50/497
H01M 4/00- 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機粒子、チキソ剤および水を含む非水系二次電池接着層用組成物であって、
前記有機粒子が、コア部と、前記コア部の外表面を少なくとも部分的に覆うシェル部とを備えるコアシェル構造を有しており、
せん断速度100sec-1での粘度ηが10mPa・s未満であり、且つ、せん断速度10000sec-1での粘度ηが0.5mPa・s以上2.4mPa・s以下であり、且つ、前記粘度ηに対する前記粘度ηの比(η0/η)が1.2以上以下である、非水系二次電池接着層用組成物。
【請求項2】
表面張力が30mN/m以上60mN/m以下である、請求項1に記載の非水系二次電池接着層用組成物。
【請求項3】
固形分濃度が30質量%以下である、請求項1または2に記載の非水系二次電池接着層用組成物。
【請求項4】
前記コア部が、電解液膨潤度が5倍以上30倍以下の重合体からなり、前記シェル部が、電解液膨潤度が1倍超4倍以下の重合体からなり、そして、前記コア部を構成する重合体のガラス転移温度が-50℃以上150℃以下であり、前記シェル部を構成する重合体のガラス転移温度が、前記コア部を構成する重合体のガラス転移温度より10℃以上低い、請求項1~3のいずれか1項に記載の非水系二次電池接着層用組成物。
【請求項5】
基材の少なくとも一方面に多孔膜層が形成されてなる多孔膜層付き基材と、
前記多孔膜層上に形成されたドット状の複数の接着層とを備え、
前記基材がセパレータ基材または電極基材であり、
前記接着層が、請求項1~4のいずれか1項に記載の非水系二次電池接着層用組成物の乾燥物である、非水系二次電池用電池部材。
【請求項6】
基材の少なくとも一方面に多孔膜層が形成されてなる多孔膜層付き基材の多孔膜層上に、請求項1~4のいずれか1項に記載の非水系二次電池接着層用組成物をインクジェット法により塗工する塗工工程と、
前記多孔膜層上に塗工された前記非水系二次電池接着層用組成物を乾燥して接着層を形成する乾燥工程とを含み、
前記基材がセパレータ基材または電極基材である、非水系二次電池用電池部材の製造方法。
【請求項7】
基材の少なくとも一方面に多孔膜層が形成されてなる多孔膜層付き基材の多孔膜層上に、請求項1~4のいずれか1項に記載の非水系二次電池接着層用組成物をインクジェット法により塗工する塗工工程と、
前記多孔膜層上に塗工された前記非水系二次電池接着層用組成物を乾燥して接着層を形成する乾燥工程と、
前記接着層を介して前記多孔膜層付き基材と被接着部材とを接着する接着工程とを含み、
前記基材がセパレータ基材または電極基材である、
非水系二次電池用積層体の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の非水系二次電池用積層体の製造方法により得られる非水系二次電池用積層体を用いる、非水系二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系二次電池接着層用組成物、非水系二次電池用電池部材およびその製造方法、並びに非水系二次電池用積層体の製造方法および非水系二次電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池などの非水系二次電池(以下、「二次電池」と略記する場合がある。)は、小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、更に繰り返し充放電が可能という特性があり、幅広い用途に使用されている。そして、二次電池は、一般に、正極、負極、および、正極と負極とを隔離して正極と負極との間の短絡を防ぐセパレータなどの電池部材を備えている。
【0003】
そしてこのような二次電池を製造するに際し、二次電池の電池部材同士、例えば電極とセパレータを貼り合わせて二次電池用積層体とすることが従来から行われている。ここで、電池部材同士の接着は、例えば、表面に接着層を備える電池部材を製造し、当該電池部材を他の電池部材と貼り合わせることで行われる。そして、表面に接着層を備える電池部材は、接着性を有する重合体(結着材)等が溶媒中に分散および/または溶解してなる二次電池接着層用組成物を電池部材表面に塗布しその後乾燥することで、作製することができる。
【0004】
また、近年、二次電池においては、電池部材に耐熱性等の所望の性能を付与する多孔膜層を備えた電池部材が使用されている。具体的には、例えば、セパレータ基材上に多孔膜層を形成してなる多孔膜層付きセパレータや、集電体上に電極合材層を設けてなる電極基材の上に多孔膜層を形成してなる多孔膜層付き電極が、電池部材として使用されている。
【0005】
ここで、上述した二次電池接着層用組成物として、特許文献1では、有機粒子および特定の水溶性高分子を含み、所定の粘度を有する組成物が提案されている。また、特許文献2では、特定構造を有する有機粒子および結着材を含み、所定の粘度を有する組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2017/090242号
【文献】国際公開第2016/103559号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、本発明者らは、電池部材同士を強固に接着しつつ二次電池に優れた電池特性を発揮させるべく、接着層を形成するための二次電池接着層用組成物を、微細な液滴としてノズルから吐出して電池部材表面に供給するインクジェット法に着目した。そして、本発明者らは、上記従来の二次電池接着層用組成物をインクジェット法によって多孔膜層付きセパレータの多孔膜層上に塗工することで、多孔膜層上に接着層が形成された多孔膜層付きセパレータ(多孔膜層付き基材)を製造し、当該接着層を介して多孔膜層付きセパレータと電極(被接着部材)とを接着させて、二次電池を作製することを試みた。
しかしながら、上記従来の二次電池接着層用組成物を用いてインクジェット法により多孔膜層上に形成された接着層は、接着力が低く、また、得られる二次電池は、電池抵抗が上昇し、低温出力特性が損なわれることが明らかとなった。
そのため、インクジェット法を用いて多孔膜層付き基材と被接着部材とを強固に接着し得る非水系二次電池接着層用組成物(以下、「二次電池接着層用組成物」と略記する場合がある。)が求められていた。
【0008】
そこで、本発明は、インクジェット法を用いた場合でも、多孔膜層付き基材の多孔膜層上に効率良く接着層を形成することができ、当該接着層を介して多孔膜層付き基材と被接着部材とを強固に接着させ得る二次電池接着層用組成物の提供を目的とする。
また、本発明は、多孔膜層付き基材の多孔膜層上に形成された接着層を介して被接着部材と強固に接着され得る非水系二次電池用電池部材、および、そのような非水系二次電池用電池部材の製造方法の提供を目的とする。
更に、本発明は、多孔膜層付き基材と被接着部材とが、インクジェット法を用いて多孔膜層付き基材の多孔膜層上に形成された接着層を介して強固に接着してなる非水系二次電池用積層体であって、二次電池に優れた低温出力特性を発揮させ得る非水系二次電池用積層体の製造方法と、当該製造方法によって得られる非水系二次電池用積層体を用いた非水系二次電池の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、コアシェル構造を有する有機粒子、チキソ剤および水を含み、且つ、せん断速度100sec-1での粘度ηおよびせん断速度10000sec-1での粘度ηが所定の範囲であり、且つ、粘度ηに対する粘度ηの比が所定の範囲である二次電池接着層用組成物を用いれば、インクジェット法を用いた場合でも多孔膜層付き基材の多孔膜層上に接着層を効率良く形成することができ、当該接着層を介して多孔膜層付き基材と被接着部材とを強固に接着することができること、更には二次電池に優れた低温出力特性を発揮させ得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池接着層用組成物は、有機粒子、チキソ剤および水を含む非水系二次電池接着層用組成物であって、前記有機粒子が、コア部と、前記コア部の外表面を少なくとも部分的に覆うシェル部とを備えるコアシェル構造を有しており、せん断速度100sec-1での粘度ηが10mPa・s未満であり、且つ、せん断速度10000sec-1での粘度ηが0.5mPa・s以上2.4mPa・s以下であり、且つ、前記粘度ηに対する前記粘度ηの比(η0/η)が1.2以上10以下であることを特徴とする。このように、コアシェル構造を有する有機粒子、チキソ剤および水を含み、且つ、せん断速度100sec-1での粘度η、せん断速度10000sec-1での粘度η、およびηに対する粘度ηの比がそれぞれ所定の範囲内の二次電池接着層用組成物であれば、インクジェット法を用いた場合であっても多孔膜層付き基材の多孔膜層上に接着層を効率良く形成することができ、当該接着層を介して多孔膜層付き基材と被接着部材とを強固に接着することができ、更には、二次電池に優れた低温出力特性を発揮させることができる。
【0011】
ここで、本発明の非水系二次電池接着層用組成物は、表面張力が30mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。二次電池接着層用組成物の表面張力が上記下限値以上であれば、多孔膜層上に形成された接着層を介して多孔膜層付き基材と被接着部材とをより強固に接着することができ、また、二次電池の電池抵抗の上昇を抑制して、低温出力特性を向上させることができる。また、二次電池接着層用組成物の表面張力が上記上限値以下であれば、インクジェット法を用いて当該二次電池接着層用組成物を塗工する際に、インクジェットノズルから吐出される二次電池接着層用組成物の液滴が安定する。そのため、吐出のバラツキを抑制して、良好な吐出性を維持することができる。
【0012】
また、本発明の非水系二次電池接着層用組成物は、固形分濃度が30質量%以下であることが好ましい。二次電池接着層用組成物の固形分濃度が30質量%以下であれば、インクジェット法を用いて当該二次電池接着層用組成物を塗工する際に、二次電池接着層用組成物の吐出性が向上する。
【0013】
そして、本発明の非水系二次電池接着層用組成物において、前記コア部が、電解液膨潤度が5倍以上30倍以下の重合体からなり、前記シェル部が、電解液膨潤度が1倍超4倍以下の重合体からなり、そして、前記コア部を構成する重合体のガラス転移温度が-50℃以上150℃以下であり、前記シェル部を構成する重合体のガラス転移温度が、前記コア部を構成する重合体のガラス転移温度より10℃以上低いことが好ましい。コア部を構成する重合体およびシェル部を構成する重合体が、それぞれ所定の電解液膨潤度およびガラス転移温度を有することで、二次電池により優れた低温出力特性を発揮させることができ、且つ、電解液中での接着層の接着力の低下や、高温サイクル特性の低下を抑制することができる。
【0014】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池用電池部材は、基材の少なくとも一方面に多孔膜層が形成されてなる多孔膜層付き基材と、前記多孔膜層上に形成されたドット状の複数の接着層とを備え、前記基材がセパレータ基材または電極基材であり、前記接着層が、上述したいずれかの非水系二次電池接着層用組成物の乾燥物であることを特徴とする。本発明によれば、非水系二次電池用電池部材は、上述した二次電池接着層用組成物のいずれかを乾燥してなるドット状の複数の接着層を多孔膜層上に備える多孔膜層付き基材を備えているため、当該接着層を介して被接着部材と強固に接着し、また、二次電池に優れた低温出力特性を発揮させることができる。
【0015】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池用電池部材の製造方法は、基材の少なくとも一方面に多孔膜層が形成されてなる多孔膜層付き基材の多孔膜層上に、上述したいずれかの非水系二次電池接着層用組成物をインクジェット法により塗工する塗工工程と、前記多孔膜層上に塗工された前記非水系二次電池接着層用組成物を乾燥して接着層を形成する乾燥工程とを含み、前記基材がセパレータ基材または電極基材であることを特徴とする。本発明の非水系二次電池用電池部材の製造方法によれば、多孔膜層付き基材の多孔膜層上に形成された接着層を介して被接着部材と強固に接着し、また、二次電池に優れた低温出力特性を発揮させることができる二次電池用電池部材を効率的に製造することができる。
【0016】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池用積層体の製造方法は、基材の少なくとも一方面に多孔膜層が形成されてなる多孔膜層付き基材の多孔膜層上に、上述したいずれかの非水系二次電池接着層用組成物をインクジェット法により塗工する塗工工程と、前記多孔膜層上に塗工された前記非水系二次電池接着層用組成物を乾燥して接着層を形成する乾燥工程と、前記接着層を介して前記多孔膜層付き基材と被接着部材とを接着する接着工程とを含み、前記基材がセパレータ基材または電極基材であることを特徴とする。このように、上述した二次電池接着層用組成物を用いて多孔膜層付き基材の多孔膜層上に接着層を形成し、形成された接着層を介して多孔膜層付き基材と被接着部材とを接着すれば、多孔膜層付き基材と被接着部材とが強固に接着されてなる非水系二次電池用積層体を製造することができる。
【0017】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池の製造方法は、上述した非水系二次電池用積層体の製造方法により得られる非水系二次電池用積層体を用いることを特徴とする。このように、上述した本発明の非水系二次電池の製造方法により得られる非水系二次電池用積層体を用いれば、低温出力特性に優れる二次電池を効率的に製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、インクジェット法を用いた場合でも、多孔膜層付き基材の多孔膜層上に接着層を効率良く形成することができ、当該接着層を介して多孔膜層付き基材と被接着部材とを強固に接着させ得る二次電池接着層用組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、多孔膜層付き基材の多孔膜層上に形成された接着層を介して被接着部材と強固に接着され得る非水系二次電池用電池部材およびその製造方法を提供することができる。
更に、本発明によれば、多孔膜層付き基材と被接着部材とが多孔膜層付き基材の多孔膜層上に形成された接着層を介して強固に接着されてなる非水系二次電池用積層体であって、二次電池に優れた低温出力特性を発揮させ得る非水系二次電池用積層体の製造方法を提供することができる。
そして、本発明によれば、低温出力特性に優れる非水系二次電池の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の非水系二次電池接着層用組成物は、例えば、インクジェット法を用いて多孔膜層付き基材の多孔膜層上に接着層を形成し、当該接着層を介して多孔膜層付き基材と、被接着部材とを接着させる際の接着材料として用いることができる。具体的には、本発明の二次電池接着層用組成物は、非水系二次電池用電池部材、非水系二次電池用積層体、および二次電池の製造に用いることができる。
【0020】
(非水系二次電池接着層用組成物)
本発明の二次電池接着層用組成物は、有機粒子、チキソ剤および水を含有し、任意に、その他の成分を含み得るスラリー組成物である。そして、二次電池接着層用組成物は、有機粒子がコアシェル構造を有していること、せん断速度100sec-1での粘度η、せん断速度10000sec-1での粘度η、および粘度ηに対する粘度ηの比がそれぞれ所定の範囲内であることを必要とする。
【0021】
<有機粒子>
ここで、二次電池接着層用組成物に含有される有機粒子は、セパレータや電極などの電池部材同士を接着させる接着層中の結着材として機能する成分である。結着材として、コアシェル構造を有する有機粒子を用いることで、接着層を介して電池部材同士を強固に接着することができる。
【0022】
<<コアシェル構造>>
そして、有機粒子は、コア部と、コア部の外表面を覆うシェル部とを備えるコアシェル構造を有している。シェル部は、コア部の外表面の全体を覆っていてもよいし、コア部の外表面を部分的に覆っていてもよい。なお、外観上、コア部の外表面がシェル部によって完全に覆われているように見える場合であっても、シェル部の内外を連通する孔が形成されていれば、そのシェル部はコア部の外表面を部分的に覆うシェル部である。従って、例えば、シェル部の外表面(即ち、有機粒子の周面)からコア部の外表面まで連通する細孔を有するシェル部を備える有機粒子は、シェル部がコア部の外表面を部分的に覆う有機粒子に該当する。
【0023】
<<コア部>>
[電解液膨潤度]
そして、コア部を構成する重合体の電解液膨潤度は、好ましくは5倍以上であり、より好ましくは7倍以上であり、更に好ましくは9倍以上であり、好ましくは30倍以下であり、より好ましくは25倍以下であり、更に好ましくは20倍以下であり、特に好ましくは10倍以下である。コア部を構成する重合体の電解液膨潤度が上記範囲内であれば、本発明の二次電池接着層用組成物をインクジェット法に用いた場合でも、形成された接着層の接着力が電解液中で低下するのを抑制することができ、また、二次電池の高温サイクル特性の低下を抑制することができる。更に、コア部を構成する重合体の電解液膨潤度が上記下限値以上であれば、二次電池の低温出力特性をより向上させることができる。
なお、本発明において、「電解液膨潤度」は、本明細書の実施例に記載の測定方法を用いて測定することができる。
また、コア部を構成する重合体の電解液膨潤度は、例えば、コア部を構成する重合体の調製に用いる単量体の種類や割合を変更することにより、調整することができる。
【0024】
[ガラス転移温度(Tg)]
ここで、コア部を構成する重合体のガラス転移温度(Tg)は、-50℃以上であることが好ましく、-20℃以上であることがより好ましく、10℃以上であることが更に好ましく、50℃以上であることが特に好ましく、150℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましく、130℃以下であることが更に好ましく、100℃以下であることが特に好ましい。コア部を構成する重合体のガラス転移温度が上記下限値以上であれば、本発明の二次電池接着層用組成物をインクジェット法に用いた場合でも、形成された接着層を介して電池部材同士を一層強固に接着させることができ、また、低温出力特性を向上させることができる。一方、コア部を構成する重合体のガラス転移温度が上記上限値以下であれば、二次電池の高温サイクル特性を向上させることができ、また、電解液中での接着層の接着力の低下を防ぐことができる。
なお、本発明において、「ガラス転移温度」は、本明細書の実施例に記載の測定方法を用いて測定することができる。
また、コア部を構成する重合体のガラス転移温度は、例えば、コア部を構成する重合体の調製に用いる単量体の種類や割合を変更することにより、調整することができる。
【0025】
[組成]
ここで、コア部を構成する重合体を調製するために用いる単量体としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩化ビニル系単量体;酢酸ビニル等の酢酸ビニル系単量体;スチレン、α-メチルスチレン、スチレンスルホン酸、ブトキシスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体;ビニルアミン等のビニルアミン系単量体;N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等のビニルアミド系単量体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート等のブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の(メタ)アクリロニトリル単量体;2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチルアクリレート等のフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体;マレイミド;フェニルマレイミド等のマレイミド誘導体などが挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
なお、本発明において、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味し、(メタ)アクリロニトリルとは、アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリルを意味する。
【0026】
これらの単量体の中でも、コア部を構成する重合体の調製に用いられる単量体としては、多孔膜層付き基材の多孔膜層上に形成された接着層を介して多孔膜層付き基材と被接着部材とをより強固に接着させる観点から、芳香族ビニル単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体の少なくとも一方を用いることが好ましく、芳香族ビニル単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体の双方を用いることがより好ましい。即ち、コア部の重合体は、芳香族ビニル単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の少なくとも一方を含むことが好ましく、芳香族ビニル単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の双方を含むことがより好ましい。
なお、本発明において、「単量体単位を含む」とは、「その単量体を用いて得た重合体中に単量体由来の繰り返し単位が含まれている」ことを意味する。
【0027】
そして、コア部を構成する重合体における芳香族ビニル単量体単位の割合は、多孔膜層付き基材の多孔膜層上に形成された接着層を介して多孔膜層付き基材と被接着部材とを更に強固に接着させる観点から、コア部を構成する重合体に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
また、コア部を構成する重合体における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合は、多孔膜層付き基材の多孔膜層上に形成された接着層を介して多孔膜層付き基材と被接着部材とをより一層強固に接着させる観点から、コア部を構成する重合体に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、4質量%以上であることが更に好ましく、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましい。
なお、本発明において、各「単量体単位の含有割合」は、H-NMRなどの核磁気共鳴(NMR)法を用いて測定することができる。
【0028】
また、コア部を構成する重合体は、酸基含有単量体単位を含みうる。ここで、酸基含有単量体単位を形成しうる酸基含有単量体としては、酸基を有する単量体、例えば、カルボン酸基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、リン酸基を有する単量体が挙げられる。
【0029】
そして、カルボン酸基を有する単量体としては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸などが挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。
また、スルホン酸基を有する単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸-2-スルホン酸エチル、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、3-アリロキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。
更に、リン酸基を有する単量体としては、例えば、リン酸-2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル-2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル-(メタ)アクリロイルオキシエチルなどが挙げられる。
なお、本発明において、(メタ)アリルとは、アリルおよび/またはメタリルを意味し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイルおよび/またはメタクリロイルを意味する。
これらの中でも、酸基含有単量体としては、カルボン酸基を有する単量体が好ましく、中でもモノカルボン酸がより好ましく、(メタ)アクリル酸が更に好ましい。
そして、酸基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0030】
また、コア部を構成する重合体における酸基含有量体単位の割合は、コア部を構成する重合体に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。酸基含有量体単位の割合を上記範囲に収めることにより、有機粒子の調製時に、コア部を構成する重合体の分散性を高め、コア部を構成する重合体の外表面に対し、コア部の外表面を部分的に覆うシェル部を形成し易くすることができる。
【0031】
そして、コア部を構成する重合体は、水酸基含有単量体単位を含んでいてもよい。
水酸基含有単量体単位を形成しうる水酸基含有単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレートなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、コア部を構成する重合体における水酸基含有単量体単位の割合は、コア部を構成する重合体に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。水酸基含有単量体単位の割合を上記範囲に収めることにより、有機粒子の調製時に、コア部を構成する重合体の分散性を高め、コア部を構成する重合体の外表面に対し、コア部の外表面を少なくとも部分的に覆うシェル部を形成し易くすることができる。
【0032】
また、コア部を構成する重合体は、上記単量体単位に加え、架橋性単量体単位を含んでいることが好ましい。ここで、架橋性単量体単位を形成しうる架橋性単量体とは、加熱またはエネルギー線の照射により、重合中または重合後に架橋構造を形成しうる単量体である。コア部を構成する重合体が架橋性単量体単位を含むことにより、有機粒子の電解液膨潤度を、好適な範囲に容易に収めることができる。
【0033】
架橋性単量体としては、例えば、当該架橋性単量体に2個以上の重合反応性基を有する多官能単量体が挙げられる。このような多官能単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、1,3-ブタジエン、イソプレン、アリルメタクリレート等のジビニル単量体;エチレンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート等のジ(メタ)アクリル酸エステル単量体;トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等のトリ(メタ)アクリル酸エステル単量体;アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基を含有するエチレン性不飽和単量体;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらの中でも、有機粒子の電解液膨潤度を容易に制御する観点から、ジ(メタ)アクリル酸エステル単量体がより好ましい。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0034】
また、コア部を構成する重合体における架橋性単量体単位の割合は、コア部を構成する重合体に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましく、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが更に好ましい。架橋性単量体単位の割合を上記範囲に収めることにより、多孔膜層付き基材の多孔膜層上に形成された接着層を介して多孔膜層付き基材と被接着部材とをより一層強固に接着させつつ、有機粒子の電解液膨潤度を制御して二次電池の低温出力特性を更に向上させることができる。
【0035】
<<シェル部>>
[電解液膨潤度]
また、シェル部の電解液膨潤度は、好ましくは1倍を超えることであり、より好ましくは1.1倍以上であり、更に好ましくは1.3倍以上であり、好ましくは4倍以下であり、より好ましくは3.5倍以下であり、更に好ましくは3.0倍以下である。シェル部の電解液膨潤度が上記範囲内であれば、多孔膜層付き基材の多孔膜層上に形成された接着層の接着力が電解液中で低下するのを抑制することができ、また、二次電池の高温サイクル特性の低下を抑制することができる。また、シェル部を構成する重合体の電解液膨潤度が1倍を超えれば、二次電池の低温出力特性を更に一層向上させることができる。
なお、シェル部を構成する重合体の電解液膨潤度は、例えば、シェル部を構成する重合体の調製に用いる単量体の種類や割合を変更することにより、調整することができる。
【0036】
[ガラス転移温度(Tg)]
また、シェル部を構成する重合体のガラス転移温度(Tg)は、多孔膜層付き基材の多孔膜層上に形成された接着層を介して多孔膜層付き基材と被接着部材とをより一層強固に接着させる観点から、上述したコア部を構成する重合体のガラス転移温度よりも、10℃以上低いことが好ましく、30℃以上低いことがより好ましく、50℃以上低いことが更に好ましい。シェル部を構成する重合体のガラス転移温度がコア部を構成する重合体のガラス転移温度よりも10℃以上低ければ、本発明の二次電池接着層用組成物を用いてインクジェット法により多孔膜層上に接着層を形成した際に、形成された接着層の接着力が低下するのを抑制して、二次電池に更に一層優れた低温力特性を発揮させることができる。
【0037】
[組成]
また、シェル部を構成する重合体を調製するために用いる単量体としては、例えば、コア部を構成する重合体を製造するために用いうる単量体として例示した単量体と同様の単量体が挙げられる。また、このような単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0038】
これらの単量体の中でも、シェル部を構成する重合体の調製に用いられる単量体としては、多孔膜層付き基材の多孔膜層上に形成された接着層を介して多孔膜層付き基材と被接着部材とをより一層強固に接着させる観点から、(メタ)アクリル酸エステル単量体と芳香族ビニル単量体の少なくとも一方を用いることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル単量体と芳香族ビニル単量体の双方を用いることがより好ましい。即ち、シェル部を構成する重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と芳香族ビニル単量体単位の少なくとも一方を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と芳香族ビニル単量体単位の双方を含むことがより好ましい。
【0039】
そして、シェル部を構成する重合体における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合は、多孔膜層付き基材の多孔膜層上に形成された接着層を介して多孔膜層付き基材と被接着部材とをより一層強固に接着させる観点から、シェル部を構成する重合体に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることが更に好ましい。
また、シェル部を構成する重合体における芳香族ビニル単量体単位の割合は、多孔膜層付き基材の多孔膜層上に形成された接着層を介して多孔膜層付き基材と被接着部材とをより一層強固に接着させる観点から、シェル部を構成する重合体に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが更に好ましく、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることが更に好ましい。
【0040】
シェル部を構成する重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位および芳香族ビニル単量体単位以外に、酸基含有単量体単位を含みうる。ここで、酸基含有単量体単位を形成しうる酸基含有単量体としては、酸基を有する単量体、例えば、カルボン酸基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、および、リン酸基を有する単量体が挙げられる。具体的には、酸基含有単量体としては、コア部の形成に使用し得る酸基含有単量体と同様の単量体が挙げられる。
これらの中でも、酸基含有単量体としては、カルボン酸基を有する単量体が好ましく、中でもモノカルボン酸がより好ましく、(メタ)アクリル酸が更に好ましい。
また、酸基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0041】
そして、シェル部を構成する重合体における酸基含有単量体単位の割合は、シェル部の重合体に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、0.1質量%以上であることが好ましく、0.4質量%以上であることがより好ましく、0.7質量%以上であることが更に好ましく、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。酸基含有単量体単位の割合を上記範囲に収めることにより、有機粒子の分散性を向上させ、接着層を介して電池部材同士をより一層強固に接着させることができる。
【0042】
ここで、シェル部を構成する重合体は、水酸基含有単量体単位を含んでいてもよい。
シェル部を構成する重合体の水酸基含有単量体単位を形成しうる水酸基含有単量体としては、コア部の形成に使用し得る水酸基含有単量体と同様の単量体が挙げられる。
そして、シェル部を構成する重合体における水酸基含有単量体単位の割合は、シェル部を構成する重合体に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、0.1質量%以上であることが好ましく、0.4質量%以上であることがより好ましく、0.7質量%以上であることが更に好ましく、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。水酸基含有単量体単位の割合を上記範囲に収めることにより、有機粒子の分散性を向上させ、多孔膜層付き基材の多孔膜層上に形成された接着層を介して多孔膜層付き基材と被接着部材とをより一層強固に接着させることができる。
【0043】
また、シェル部を構成する重合体は、架橋性単量体単位を含みうる。ここで、架橋性単量体単位を形成しうる架橋性単量体としては、例えば、コア部を構成する重合体に用いうる架橋性単量体として例示したものと同様の単量体が挙げられる。これらの中でもジ(メタ)アクリル酸エステル単量体、ジビニル単量体が好ましく、例えばアリルメタクリレートが好ましい。また、架橋性単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0044】
そして、シェル部を構成する重合体における架橋性単量体単位の割合は、シェル部の重合体に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.2質量%以上であることが更に好ましく、4質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることが更に好ましい。
【0045】
<有機粒子の体積平均粒子径(D50)>
また、有機粒子の体積平均粒子径(D50)は、100nm以上であることが好ましく、150nm以上であることがより好ましく、180nm以上であることが更に好ましく、1000nm以下であることが好ましく、350nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることが更に好ましい。有機粒子の体積平均粒子径が上記下限値以上であれば、多孔膜層付き基材の多孔膜層上に形成された接着層を介して多孔膜層付き基材と被接着部材とをより一層強固に接着させることができる。一方、有機粒子の体積平均粒子径が上記上限値以下であれば、インクジェット法を用いて本発明の二次電池接着層用組成物を吐出した際に、ノズルの詰まりを更に抑制して、多孔膜層上に一層効率良く接着層を形成することができる。
なお、本発明において「有機粒子の体積平均粒子」は、本明細書の実施例に記載の方法によって測定することができる。
また、有機粒子の体積平均粒子径は、例えば、有機粒子の調製に用いる重合開始剤や乳化剤の種類や量を変更することにより、調整することができる。
【0046】
<有機粒子のコアシェル比率>
更に、有機粒子におけるシェル部は、有機粒子の体積平均粒子径(D50)に対して、所定の範囲に収まる平均厚みを有することが好ましい。具体的には、有機粒子の体積平均粒子径(D50)に対するシェル部の平均厚みである有機粒子のコアシェル比率は、好ましくは1.5%以上、より好ましくは3%以上、更に好ましくは5%以上であり、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下である。有機粒子のコアシェル比率が上記下限値以上であれば、多孔膜層付き基材の多孔膜層上に形成された接着層の接着力が電解液外で低下するのを抑制することができる。また、有機粒子のコアシェル比率が上記上限値以下であれば、多孔膜層付き基材の多孔膜層上に形成された接着層の接着力が、電解液中で低下するのを抑制することができる。
【0047】
なお、本発明において、「シェル部の平均厚み」は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0048】
<有機粒子の被覆率>
また、有機粒子において、コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合を有機粒子の被覆率とすると、有機粒子の被覆率は、20%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、55%以上であることが更に好ましく、99%以下であることが好ましく、97%以下であることがより好ましく、95%以下であることが更に好ましい。有機粒子の被覆率が上記下限値以上であれば、接着層の接着力が電解液外で低下するのを抑制することができる。また、有機粒子の被覆率が上記上限値以下であれば、二次電池の低温出力特性を更に向上させることができる。
なお、本発明において、「有機粒子の被覆率」は、本明細書の実施例に記載の方法によって測定することができる。また、有機粒子の被覆率を求める際に用いる被覆割合Rcは、有機粒子の断面構造からマニュアルで計算することもできるが、市販の画像解析ソフトを用いて計算することもできる。市販の画像解析ソフトとして、例えば「AnalySIS Pro」(オリンパス株式会社製)を用いることができる。
【0049】
<<有機粒子の調製方法>>
そして、上述したコアシェル構造を有する有機粒子は、例えば、コア部を構成する重合体の単量体と、シェル部を構成する重合体の単量体とを用い、経時的にそれらの単量体の比率を変えて段階的に重合することにより、調製することができる。具体的には、有機粒子は、先の段階の重合体を後の段階の重合体が順次に被覆するような連続した多段階乳化重合法および多段階懸濁重合法によって調製することができる。
【0050】
そこで、以下に、多段階乳化重合法により上記コアシェル構造を有する有機粒子を得る場合の一例を示す。
【0051】
重合に際しては、常法に従って、乳化剤として、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソルビタンモノラウレート等のノニオン性界面活性剤、またはオクタデシルアミン酢酸塩等のカチオン性界面活性剤を用いることができる。また、重合開始剤として、例えば、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、過硫酸カリウム、キュメンパーオキサイド等の過酸化物、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ハイドロキシエチル)-プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩酸塩等のアゾ化合物を用いることができる。
【0052】
そして、重合手順としては、まず、コア部を形成する単量体および乳化剤を混合し、一括で乳化重合することによってコア部を構成する粒子状の重合体を得る。更に、このコア部を構成する粒子状の重合体の存在下にシェル部を形成する単量体の重合を行うことによって、上述したコアシェル構造を有する有機粒子を得ることができる。
【0053】
この際、コア部の外表面をシェル部が少なくとも部分的に覆う有機粒子を調製する場合は、シェル部を構成する重合体を形成する単量体は、複数回に分割して、もしくは、連続して重合系に供給することが好ましい。シェル部の重合体を形成する単量体を重合系に分割して、もしくは、連続で供給することにより、シェル部を構成する重合体が粒子状に形成され、この粒子がコア部と結合することで、コア部を少なくとも部分的に覆うシェル部を形成することができる。
【0054】
<チキソ剤>
そして、二次電池接着層用組成物に含有されるチキソ剤は、二次電池接着層用組成物に粘性を付与する成分である。更に、チキソ剤は接着性および耐電解液性を備えているため、二次電池中において、二次電池接着層用組成物中の各成分同士および電池部材同士の接着を補助する役割を果たすことができる。
【0055】
そしてチキソ剤としては、例えば、天然高分子、半合成高分子および合成高分子を挙げることができる。
【0056】
[天然高分子]
天然高分子としては、例えば、植物または動物由来の多糖類および蛋白質、並びにこれらの微生物等による発酵処理物、これらの熱処理物が挙げられる。
そしてこれらの天然高分子は、植物系天然高分子、動物系天然高分子および微生物産出天然高分子等に分類することができる。
植物系天然高分子としては、例えば、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、クインスシード(マルメロ)、アルケコロイド(ガッソウエキス)、澱粉(コメ、トウモロコシ、馬鈴薯、小麦等に由来するもの)、グリチルリチンが挙げられる。動物系天然高分子としては、例えば、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチンが挙げられる。微生物産生天然高分子としては、例えば、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルランが挙げられる。
【0057】
[半合成高分子]
半合成高分子としては、セルロース系半合成高分子が挙げられる。そしてセルロース系半合成高分子は、ノニオン性セルロース系半合成高分子、アニオン性セルロース系半合成高分子およびカチオン性セルロース系半合成高分子に分類することができる。
【0058】
ノニオン性セルロース系半合成高分子としては、例えば、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、エチルセルロース、マイクロクリスタリンセルロース等のアルキルセルロース類;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、アルキルヒドロキシエチルセルロース、ノノキシニルヒドロキシエチルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース類が挙げられる。
【0059】
アニオン性セルロース系半合成高分子としては、上記のノニオン性セルロース系半合成高分子を各種誘導基により置換した置換体およびその塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩など)が挙げられる。具体的には、例えば、セルロース硫酸ナトリウム、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、セルロースナノファイバー(CNF)およびそれらの塩が挙げられる。
【0060】
カチオン性セルロース系半合成高分子としては、例えば、低窒素ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド(ポリクオタニウム-4)、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(ポリクオタニウム-10)、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(ポリクオタニウム-24)が挙げられる。
【0061】
[合成高分子]
合成系高分子としては、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸またはアクリル酸塩とビニルアルコールとの共重合体、(メタ)アクリル酸またはアクリル酸塩とアクリル酸エステルとの共重合体、無水マレイン酸またはマレイン酸もしくはフマル酸と酢酸ビニルとの共重合体の完全または部分ケン化物、変性ポリビニルアルコール、変性ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリカルボン酸、エチレン-ビニルアルコール共重合体、酢酸ビニル重合体、カルボン酸基が導入されたアクリルアミド重合体などが挙げられる。
【0062】
そしてこれらのチキソ剤の中でも、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、(メタ)アクリル酸またはアクリル酸塩とアクリル酸エステルとの共重合体、セルロースナノファイバー(CNF)が好ましく、セルロースナノファイバー(CNF)がより好ましい。
【0063】
ここで、二次電池の良好な電池特性を確保する観点からは、二次電池接着層用組成物中のチキソ剤の含有量は、有機粒子100質量部当たり、好ましくは0.05質量部以上であり、また、好ましくは5質量部以下、より好ましくは1質量部以下、更に好ましくは0.4質量部以下である。
【0064】
<水>
また、二次電池接着層用組成物に含有される水は、二次電池接着層用組成物に含有される各成分を溶解または分散させる溶媒として機能する。二次電池接着層用組成物に含有される水の量は、二次電池接着層用組成物中の各成分を溶解または分散させることができれば特に限定されないが、二次電池接着層用組成物の固形分濃度が好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下となるように調整することが好ましい。二次電池接着層用組成物の固形分濃度が上記下限値以上であれば、インクジェット法を用いて二次電池接着層用組成物を塗工して接着層を効率良く形成することで、二次電池の生産速度を向上させることができる。また、二次電池接着層用組成物の固形分濃度が上記上限値以下であれば、インクジェット法を用いて塗工する際の二次電池接着層用組成物の吐出性が更に向上する。
【0065】
<その他の成分>
そして、二次電池接着層用組成物が含有し得る、上述したコアシェル構造を有する有機粒子、チキソ剤および水以外のその他成分としては、特に限定されない。その他の成分としては、添加剤や、上述したコアシェル構造を有する有機粒子以外のその他の結着材が挙げられる。
【0066】
<<添加剤>>
ここで、添加剤としては、特に制限されることなく、例えば、表面張力調整剤、分散剤、粘度調整剤、補強材、電解液添加剤等が挙げられる。これらは、電池反応に影響を及ぼさないものであれば特に限られず、公知のもの、例えば国際公開第2012/115096号に記載のものを使用することができる。なお、これらの添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0067】
<<その他の結着材>>
また、その他の結着材としては、コアシェル構造を有する有機粒子でなければ特に限定されず、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-HFP)共重合体等のフッ素系重合体;スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(NBR)等の共役ジエン系重合体;共役ジエン系重合体の水素化物;(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含む重合体(アクリル系重合体);が挙げられる。なお、これらのその他の結着材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0068】
ここで、その他の結着材を構成する重合体のガラス転移温度は、-60℃以上であることが好ましく、-40℃以上であることがより好ましく、20℃以下であることが好ましく、15℃以下であることがより好ましく、10℃以下であることが更に好ましい。その他の結着材を構成する重合体のガラス転移温度が上記下限値以上であれば、二次電池の低温出力特性を更に向上させることができる。また、その他の結着材を構成する重合体のガラス転移温度が上記上限値以下であれば、接着層の耐粉落ち性を向上させることができる。
【0069】
また、二次電池接着層用組成物は、上述したコアシェル構造を有する有機粒子100質量部当たり、その他の結着材を1質量部以上含むことが好ましく、5質量部以上含むことがより好ましく、8質量部以上含むことが更に好ましく、50質量部以下含むことが好ましく、35質量部以下含むことがより好ましく、25質量部以下含むことが更に好ましい。その他の結着材の含有量が上記下限値以上であれば、接着層の耐粉落ち性をより向上させることができる。また、その他の結着材の含有量が上記上限値以下であれば、二次電池の低温出力特性を更に向上させることができる。
【0070】
<非水系二次電池接着層用組成物の調製方法>
そして、本発明の二次電池接着層用組成物は、例えば、コアシェル構造を有する有機粒子と、チキソ剤と、水と、任意に用いられるその他の結着材などのその他の成分を混合して調製することができる。混合には、一般的な撹拌容器、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、超音波分散機、らい潰機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、フィルミックスなどを用いることができる。混合条件は特に限定されないが、通常、室温~80℃の範囲で、10分~数時間行うことができる。
【0071】
<非水系二次電池接着層用組成物の性状>
本発明の二次電池接着層用組成物は、接着と抵抗の観点から特定の性状を有することを必要とする。
【0072】
<<粘度>>
そして、本発明の二次電池接着層用組成物は、せん断速度100sec-1での粘度ηが10mPa・s未満であることを必要とし、好ましくは8mPa・s以下であり、より好ましくは7mPa・s以下である。二次電池接着層用組成物のせん断速度100sec-1での粘度ηが10mPa・s未満であれば、インクジェット法を用いてノズルから二次電池接着層用組成物を吐出する際に、ノズル詰まりを抑制して、優れた吐出性を確保することができる。
【0073】
また、本発明の二次電池接着層用組成物は、せん断速度10000sec-1での粘度ηが0.5mPa・s以上2.4mPa・s以下であることを必要とし、好ましくは0.6mPa・s以上であり、より好ましくは0.7mPa・s以上であり、好ましくは2.mPa・s以下であり、より好ましくは1.5mPa・s以下である。
二次電池接着層用組成物のせん断速度10000sec-1での粘度ηが0.5mPa・s以上であれば、本発明の二次電池接着層用組成物を用いてインクジェット法により多孔膜層上に接着層を形成した際に、形成された接着層を介して多孔膜層付き基材と被接着部材とを強固に接着することができ、二次電池の抵抗の上昇を抑制することができる。
また、二次電池接着層用組成物のせん断速度10000sec-1での粘度ηが2.4mPa・s以下であれば、インクジェット法を用いてノズルから二次電池接着層用組成物を吐出する際に、ノズル詰まりをより抑制して、より優れた吐出性を確保することができる。
【0074】
更に、本発明の二次電池接着層用組成物は、粘度ηに対する粘度ηの比(η/η)が1.2以上10以下であることを必要とし、好ましくは1.6以上であり、より好ましくは2以上であり、好ましくは9以下であり、好ましくは8以下である。
粘度ηに対する粘度ηの比(η/η)が上記下限値以上であれば、本発明の二次電池接着層用組成物を用いてインクジェット法により多孔膜層上に接着層を形成した際に、形成された接着層介して多孔膜層付き基材と被接着部材とを強固に接着することができ、二次電池の電池抵抗の上昇を抑制することができる。
また、粘度ηに対する粘度ηの比(η/η)が上記上限値以下であれば、インクジェット法を用いてノズルから二次電池接着層用組成物を吐出する際に、ノズル詰まりを更に抑制して、更に優れた吐出性を確保することができる。
【0075】
なお、せん断速度100sec-1での粘度η、およびせん断速度10000sec-1での粘度ηは、本明細書の実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0076】
また、粘度η、粘度η、および粘度ηに対する粘度ηの比(η/η)は、二次電池接層用組成物中の有機粒子およびチキソ剤の含有量、二次電池接着層用組成物の固形分濃度、並びにチキソ剤の組成等を調節することにより、適宜調整することができる。
【0077】
<<表面張力>>
また、二次電池接着層用組成物の表面張力は、好ましくは30mN/m以上であり、より好ましくは36mN/m以上であり、更に好ましくは42mN/m以上であり、好ましくは60mN/m以下であり、より好ましくは56mN/m以下であり、更に好ましくは53mN/m以下である。二次電池接着層用組成物の表面張力が上記下限値以上であれば、インクジェット法により多孔膜層付き基材の多孔膜層上に接着層を形成した際に、形成された接着層を介して多孔膜層付き基材と被接着部材とをより強固に接着することができ、また、二次電池の電池抵抗の上昇をより抑制することができる。また、二次電池接着層用組成物の表面張力が上記上限値以下であれば、インクジェット法を用いた際に、ノズルから吐出される二次電池接着層用組成物の液滴が安定するため、吐出のバラツキを抑制して、吐出性を更に向上させることができる。
【0078】
(非水系二次電池用電池部材)
本発明の非水系二次電池用電池部材(以下、「二次電池用電池部材」または「電池部材」と略記する場合がある。)は、基材の少なくとも一方面に多孔膜層が形成されてなる多孔膜層付き基材と、当該多孔膜層上に形成されたドット状の複数の接着層とを備える多孔膜層付き電池部材である。そして、上記多孔膜層付き基材はセパレータ基材または電極基材であり、上記接着層は、上述した本発明の二次電池接着層用組成物の乾燥物である。そして、本発明の二次電池用電池部材は、多孔膜層上に形成された接着層を介して被接着部材と強固に接着され得、二次電池に優れた低温出力特性を発揮させ得る。
なお、本発明の二次電池用電池部材は、基材がセパレータ基材である場合には、二次電池用セパレータとして使用し得、基材が電極基材である場合には、二次電池用電極として使用し得る。
【0079】
<多孔膜層付き基材>
本発明の二次電池用電池部材が備える多孔膜層付き基材は、上述したように、基材の少なくとも一方面に多孔膜層が形成されてなるものである。ここで、多孔膜層は、セパレータ基材や電極基材に形成された多孔膜の層であり、耐熱性および強度等を向上させるためのものである。多孔膜層は、通常、非導電性無機粒子と、多孔膜層用結着材と、任意の添加剤とを含有し、例えば後述する方法によって、セパレータ基材または電極基材上に形成することができる。
【0080】
<<多孔膜層の性状>>
[表面粗さRa]
ここで、多孔膜層は、通常、表面粗さRaが0.1μm以上5.0μm以下である。多孔膜層の表面粗さRaは0.15μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましく、1.0μm以下であることが好ましく、0.6μm以下であることがより好ましい。
多孔膜層の表面粗さRaが0.1μm以上であれば、多孔膜層と、当該多孔膜層上に形成される接着層との接触面積が大きくなることにより、当該多孔膜層および接着層間の接着性を高めることができることに加え、多孔膜層上に形成された接着層を介した多孔膜層付き基材と被接着部材との接着性を高めることができる。その結果、製造される二次電池を繰り返し充放電した際にも、電池部材間の良好な接着が維持され、二次電池が膨張することを抑制することができる。
また、多孔膜層の表面粗さRaが5.0μm以下であれば、当該多孔膜層上に形成される接着層に含まれる有機粒子が多孔膜層表面の凹凸内に入り込むことを抑制することができる。その結果、有機粒子の接着性を十分に発揮させ、接着層を介した多孔膜層付き基材と被接着部材との接着性を高めることができる。また、有機粒子が多孔膜層内に入り込んで多孔膜層内の空隙を埋めてしまうことを抑制できるため、製造される二次電池の電池抵抗の上昇を抑制し、二次電池に良好な出力特性を発揮させることができる。
【0081】
<<セパレータ基材および電極基材>>
そして、セパレータ基材としては、特に限定されることはなく、二次電池の分野において使用され得る既知のセパレータ基材を用いることができる。
また、電極基材としては、通常、集電体上に電極合材層が形成された電極基材が用いられる。
なお、集電体としては、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金等の金属材料からなるものを用いることができる。これらの中でも、負極用の集電体としては、銅からなる集電体を用いることが好ましい。また、正極用の集電体としては、アルミニウムからなる集電体を用いることが好ましい。
また、電極合材層としては、電極活物質とバインダー(電極合材層用結着材)とを含む層を用いることができる。具体的には、電極合材層としては、特に限定されることなく、例えば特開2013-145763号公報に記載の電極合材層を用いることができる。
更に、集電体上への電極合材層の形成方法は、既知の方法を用いることができる。
【0082】
<接着層>
また、本発明の二次電池用電池部材が備える接着層は、上述した本発明の二次電池接着層用組成物の乾燥物である。接着層は、電池部材が備える多孔膜層付き基材の多孔膜層上にドット状に複数形成されている。ドット状の接着層は、例えば、インクジェット法を用いて二次電池接着層用組成物をノズルから吐出することによって形成される。
【0083】
ここで、ドット状の接着層は、多孔膜層付き基材の多孔膜層上の接着層が形成される面(以下、「形成面」という。)全面に均一に形成されていてもよいし、平面視形状として、ドット状の複数の接着層が、ストライプ状、ドット状、格子状などの所定のパターンになるように配列させて形成されていてもよい。中でも、本発明の電池部材を用いて二次電池を製造する際の電解液注液性を高める観点からは、ドット状の接着層はストライプ状に配列させて形成されていることが好ましい。
また、接着層の断面形状は、特に限定されることなく、凸形状、凹凸形状、凹形状とすることができ、中でも、二次電池用電池部材を、接着層を介して被接着部材と一層強固に接着させる観点からは、凹凸形状であることが好ましい。なお、接着層の断面形状は、例えば、本発明の二次電池接着層用組成物を用いて接着層を形成する際の乾燥条件を調整することにより変更することができる。
【0084】
そして、接着層の形成量は、0.01g/m以上10g/m以下であることが好ましく、0.03g/m以上5g/m以下であることが更に好ましく、0.05g/m以上0.5g/m以下であることが特に好ましい。接着層の形成量が0.01g/m以上であれば、二次電池用部材と被接着部材とを接着層を介して一層強固に接着させることができる。一方、接着層の形成量が10g/m以下であれば、製造される二次電池の電池抵抗の上昇を抑制し、二次電池に良好な出力特性を発揮させることができる。
なお、本発明において、「接着層の形成量」とは、形成面の単位面積当たりに形成される接着層を形成するのに必要な二次電池接着層用組成物の量を指す。接着層の形成量は、形成面上に形成された接着層に必要とした二次電池接着層用組成物の質量を、当該接着層が形成された形成面の面積で割ることにより算出することができる。
【0085】
ここで、形成面上の好ましくは二箇所以上にドット状の接着層が形成されている場合、形成面に形成された1つのドットの大きさ(以下、「形成面積」という。)は、25μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、100μm以上であることが更に好ましく、250000μm以下であることが好ましく、200000μm以下であることがより好ましく、100000μm以下であることが更に好ましい。1つのドットの大きさが25μm以上であれば、二次電池用電池部材と被接着部材とを接着層を介して一層強固に接着させることができる。また、1つのドットの大きさが250000μm以下であれば、二次電池用電池部材を効率的に製造することができる。
なお、上記の形成面積は、本発明の二次電池接着層用組成物を形成面に供給する量、形状および範囲を変更することで調整することができる。具体的には、形成面積は、例えば、本発明の二次電池接着層用組成物を用いてインクジェット法により接着層を形成する場合には、インクジェットヘッドのノズルからの二次電池接着層用組成物の吐出の諧調(同じポイントに吐出した回数)を変更することで調整することができる。
【0086】
(非水系二次電池用電池部材の製造方法)
そして、本発明の非水系二次電池用電池部材の製造方法(以下、「二次電池用電池部材の製造方法」と略記する場合がある。)は、上述した本発明の二次電池用電池部材を製造する方法である。具体的には、本発明の二次電池用電池部材の製造方法は、基材の少なくとも一方面に多孔膜層が形成されてなる多孔膜層付き基材の多孔膜層上に、本発明の二次電池接着層用組成物をインクジェット法により塗工する塗工工程と、多孔膜層上に塗工された二次電池接着層用組成物を乾燥して接着層を形成する乾燥工程とを含む。また、本発明の二次電池用電池部材の製造方法は、任意に、塗工工程前に、多孔膜層付き基材を作製する多孔膜層付き基材作製工程を含み得る。
【0087】
<多孔膜層付き基材作製工程>
多孔膜層付き基材作製工程では、基材の少なくとも一方面に多孔膜層を形成して多孔膜層付き基材を作製する。多孔膜層付き基材は、例えば、多孔膜層用組成物をセパレータ基材または電極基材等の基材に塗布し、塗布された多孔膜層用組成物を乾燥することによって得ることができる。
【0088】
[多孔膜層用組成物]
ここで、多孔膜層用組成物は、通常、非導電性無機粒子と、多孔膜層用重合体と、有機溶媒および水等の溶媒とを含み、任意に、その他の成分を含み得る。
【0089】
-非導電性無機粒子-
そして、多孔膜層用組成物に含まれる非導電性無機粒子としては、二次電池の使用環境下で安定に存在し、電気化学的に安定である無機材料からなる粒子が好ましく、無機化合物からなる粒子がより好ましい。このような観点から非導電性無機粒子の好ましい例として、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化アルミニウムの水和物(ベーマイト(AlOOH)、ギブサイト(Al(OH))、酸化ケイ素、酸化マグネシウム(マグネシア)、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン(チタニア)、チタン酸バリウム(BaTiO)、ZrO、アルミナ-シリカ複合酸化物等の無機酸化物粒子;窒化アルミニウム、窒化ホウ素等の窒化物粒子;シリコン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶粒子;硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム等の難溶性イオン結晶粒子;タルク、モンモリロナイト等の粘土微粒子;などが挙げられる。これらの中でも、多孔膜層用重合体を良好に吸着させ、多孔膜層を備える電池部材の内部抵抗が上昇するのを抑制する観点からは、非導電性無機粒子としては、無機酸化物粒子が好ましく、アルミナ粒子、ベーマイト粒子、酸化チタン粒子がより好ましい。
なお、これらの粒子は、必要に応じて元素置換、表面処理、固溶体化等が施されていてもよい。また、これらの粒子は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
-密度-
ここで、非導電性無機粒子の密度は、3.0g/cm以上であることが好ましく、3.5g/cm以上であることがより好ましく、6.0g/cm以下であることが好ましく、5.0g/cm以下であることがより好ましい。非導電性無機粒子の密度が上記下限値以上であれば、多孔膜層の密度を十分に高めることができる。また、非導電性無機粒子の密度が上記上限値以下であれば、多孔膜層を有する電池部材を備える二次電池の低温出力特性を更に向上させることができる。
なお、本発明において、「非導電性無機粒子の密度」とは、気相置換法を用いて温度25℃で測定した真密度を指す。
【0091】
-体積平均粒子径-
また、非導電性無機粒子の体積平均粒子径は、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましく、1.0μm以下であることが好ましく、0.8μm以下であることがより好ましい。非導電性無機粒子の体積平均粒子径が上記下限値以上であれば、多孔膜層のガーレー値が上昇する(即ち、イオン伝導性が低下する)のを抑制し、多孔膜層を有する電池部材を備える二次電池の低温出力特性を更に向上させることができる。また、非導電性無機粒子の体積平均粒子径が上記上限値以下であれば、基材として電極基材を用いた際に、非導電性無機粒子に多孔膜層用重合体を良好に吸着させて多孔膜層の形成時に多孔膜層用重合体が電極合材層中に入り込む(滲み込む)のを抑制することができる。
なお、本発明において、「非導電性無機粒子の体積平均粒子径」とは、JIS Z8825に準拠し、レーザー回折法で測定した粒子径分布(体積基準)において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径(D50)を指す。
【0092】
-多孔膜層用重合体-
そして、多孔膜層用組成物に含まれる多孔膜層用重合体は、多孔膜層に含まれる成分が多孔膜層から脱離しないように保持する。ここで、多孔膜層用重合体として、例えば、特開2017-084589号公報に記載の重合体を好適に用いることができる。また、多孔膜層用重合体は、当該公報に記載の重合体の調製方法を参照して調製することができる。
【0093】
[配合量]
そして、多孔膜層用組成物中に含まれている多孔膜層用重合体の量は、非導電性無機粒子100質量部当たり、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることが更に好ましく、5質量部以下であることが好ましく、4質量部以下であることがより好ましく、2.5質量部以下であることが更に好ましい。多孔膜層用重合体の含有量が上記範囲内であれば、多孔膜層用組成物の粘度を適度な大きさとして、多孔膜層用組成物の分散性および塗工性を更に向上させることができる。また、多孔膜層用重合体の含有量が上記下限値以上であれば、多孔膜層の耐粉落ち性を十分に向上させることができる。更に、多孔膜層用重合体の含有量が上記上限値以下であれば、基材として電極基材を用いた際に、電池部材の内部抵抗が上昇するのを抑制し、二次電池の低温出力特性を十分に向上させることができる。
【0094】
-有機溶媒-
そして、多孔膜層用組成物に含まれる有機溶媒としては、特に限定されることなく、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、アミルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン(NMP)などのアミド系極性有機溶媒、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
中でも、有機溶媒としては、アセトンおよびNMPが好ましく、NMPがより好ましい。
【0095】
-その他の成分-
更に、多孔膜層用組成物は、上述した成分以外にも、任意のその他の成分を含んでいてもよい。前記その他の成分は、電池反応に影響を及ぼさないものであれば特に限られず、公知のものを使用することができる。また、これらのその他の成分は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
前記その他の成分としては、例えば、本発明の二次電池接着層用組成物中に含まれ得る上述した添加剤が挙げられる。
【0096】
[多孔膜層用組成物の調製方法]
そして、多孔膜層用組成物の調製方法は、特に限定はされないが、通常は、上述した非導電性無機粒子と、多孔膜層用重合体と、有機溶媒と、必要に応じて用いられるその他の成分とを混合して多孔膜層用組成物を調製する。混合方法は特に制限されないが、各成分を効率よく分散および混合させるため、通常は混合装置として分散機を用いて混合を行う。
なお、乳化重合法などを用いて水中で調製した重合体を使用して多孔膜層用組成物を調製する場合には、多孔膜層用重合体の調製に用いた水は、有機溶媒と混合する前に除去してもよいし、多孔膜層用重合体の水分散液と有機溶媒とを混合した後に水を蒸発させることにより除去してもよい。
【0097】
<<多孔膜層用組成物の塗布>>
また、上述した多孔膜層用組成物をセパレータ基材または電極基材の基材上に塗布する方法としては、特に限定されることなく、例えば、ドクターブレード法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などを用いることができる。
【0098】
<<多孔膜層用組成物の乾燥>>
更に、基材上に塗布された多孔膜層用組成物を乾燥する方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的には、乾燥方法としては、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥法、真空乾燥法、赤外線や電子線などの照射による乾燥法を用いることができる。乾燥条件は特に限定されないが、乾燥温度は好ましくは50~150℃で、乾燥時間は好ましくは5~30分である。
【0099】
[多孔膜層の厚み]
そして、多孔膜層用組成物を乾燥して形成される多孔膜層の厚みは、特に限定されないが、0.3μm以上10μm以下であることが好ましい。多孔膜層の厚みが0.3μm以上であれば、多孔膜層の耐熱性や強度を更に向上させることができる。また、多孔膜層の厚みが10μm以下であれば、二次電池に優れたレート特性を発揮させることができる。
【0100】
<塗工工程>
そして、本発明の二次電池用電池部材の製造方法では、例えば上記のようにして得られた多孔膜層付き基材の多孔膜層上に、本発明の二次電池接着層用組成物をインクジェット法により塗工する。
なお、インクジェット等の条件は、二次電池接着層用組成物を塗工可能であれば特に限定されず、得られる接着層の所望の性状(形成量、形成面積など)に応じて適宜調整すればよいが、二次電池接着層用組成物をドット状に塗工可能であることが好ましい。
【0101】
<乾燥工程>
そして、本発明の二次電池用電池部材の製造方法では、乾燥工程において、多孔膜層上に塗工された二次電池接着層用組成物を乾燥する。これにより、多孔膜層基材上に、例えばドット状の複数の接着層が形成される。
【0102】
なお、二次電池接着層用組成物の乾燥は、特に限定されることなく、ヒーター、ドライヤー、ヒートローラなどの加熱装置を用いて行うことができる。なお、二次電池接着層用組成物が塗工された多孔膜層の乾燥時の温度は、特に限定されることはないが、0℃以上とすることが好ましく、10℃以上とすることがより好ましく、15℃以上とすることが更に好ましく、200℃以下とすることが好ましく、150℃以下とすることがより好ましく、100℃以下とすることが更に好ましい。乾燥時の温度を0℃以上にすれば、乾燥速度を十分に高めて二次電池用電池部材を効率的に製造することができる。また、乾燥時の温度を200℃以下にすれば、乾燥後に得られる接着層の形状を良好なものとし、多孔膜層を備えた電池部材と他の電池部材とを良好に接着させることができる。
【0103】
(非水系二次電池用積層体の製造方法)
本発明の非水系二次電池用積層体の製造方法は、基材の少なくとも一方面に多孔膜層が形成されてなる多孔膜層付き基材の多孔膜層上に、上述した本発明の二次電池接着層用組成物を、インクジェット法により塗工する塗工工程と、多孔膜層上に塗工された二次電池接着層用組成物を乾燥して接着層を形成する乾燥工程と、当該接着層を介して当該多孔膜層付き基材と被接着部材と接着する接着工程とを含み、上記基材がセパレータ基材または電極基材である。
【0104】
<塗工工程>
塗工工程では、基材の少なくとも一方面に多孔膜層が形成されてなる多孔膜層付き基材の多孔膜層上に、上述した本発明の二次電池接着層用組成物を、インクジェット法により塗工する。
なお、多孔膜層付き基材としては、特に限定されることなく、「二次電池用電池部材」の項で挙げた多孔膜層付き基材を用いることができる。また、インクジェット等の条件は、「二次電池用電池部材の製造方法」の項で挙げた条件を採用することができる。更に、基材としてのセパレータ基材または電極基材としては、「二次電池用電池部材」の項で挙げたセパレータ基材又は電極基材を用いることができる。
【0105】
<乾燥工程>
そして、乾燥工程において、多孔膜層上に塗工された二次電池接着層用組成物を乾燥して接着層を形成する。なお、二次電池接着層用組成物の乾燥は、特に限定されることなく、「二次電池用電池部材の製造方法」の項で挙げた乾燥方法および乾燥時間を採用することができる。
【0106】
<接着工程>
更に、接着工程において、多孔膜層付き基材の多孔膜層上に形成された接着層を介して、多孔膜層付き基材と被接着部材とを接着する。ここで、接着方法は、特に限定されることなく、例えば、接着層を介して重ね合わせた多孔膜層付き基材と被接着部材とを加圧することにより行うことができる。その際、多孔膜層付き基材が多孔膜層付きセパレータ基材であれば、被接着部材として電極(正極または負極)を用いることができる。
【0107】
(非水系二次電池の製造方法)
本発明の非水系二次電池の製造方法は、上述した非水系二次電池用積層体の製造方法により製造される非水系二次電池用積層体を用いることを特徴とする。具体的には、本発明の製造方法により得られる非水系二次電池は、例えば、正極と、負極と、セパレータと、電解液とを備え、正極とセパレータ、および/または、負極とセパレータが、インクジェット法により多孔膜層上に形成された接着層を介して接着されたものである。そして、本発明の非水系二次電池は、多孔膜層上の接着層を介して接着された正極およびセパレータ、並びに/或いは、多孔膜層上の接着層を介して接着された負極およびセパレータとして、上述した非水系二次電池用積層体を使用したものである。そして、本発明の非水系二次電池は、本発明の非水系二次電池接着層用組成物を用いることで、セパレータと電極(正極または負極)とが多孔膜層上に形成された接着層を介して強固に接着されているため、低温出力特性に優れている。
【0108】
なお、非水系二次電池において、上述した非水系二次電池用積層体以外に正極、負極およびセパレータなどを使用する場合(例えば、正極基材およびセパレータ基材を多孔膜層を介して接着してなる積層体と、負極とを用いて二次電池を形成する場合など)には、当該正極、負極およびセパレータとしては、非水系二次電池において用いられている既知の正極、負極およびセパレータを使用することができる。また、電解液としては、非水系二次電池において用いられている既知の電解液を使用することができる。
【0109】
また、電解液としては、通常、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。例えば、二次電池がリチウムイオン二次電池である場合、支持電解質としては、リチウム塩を用いることができる。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlCl、LiClO、CFSOLi、CSOLi、CFCOOLi、(CFCO)NLi、(CFSONLi、(CSO)NLiなどが挙げられる。なかでも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すので、LiPF、LiClO、CFSOLiが好ましく、LiPFが特に好ましい。なお、電解質は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。通常は、解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
【0110】
更に、電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、二次電池がリチウムイオン二次電池である場合、有機溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等のカーボネート類;γ-ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類;などが好適に用いられる。またこれらの有機溶媒の混合液を用いてもよい。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広いので、カーボネート類を用いることが好ましい。
【0111】
本発明の非水系二次電池の製造方法は、例えば、上述した本発明の非水系二次電池用積層体の製造により製造された非水系二次電池用積層体、或いは、非水系二次電池用積層体と非水系二次電池用積層体以外の正極、負極およびセパレータなどとを積層したものを、必要に応じて電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することにより製造することができる。
また、本発明の二次電池には、内部の圧力上昇、過充放電等の発生を防止するために、必要に応じて、ヒューズ、PTC素子等の過電流防止素子、エキスパンドメタル、リード板などを設けてもよい。二次電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
【実施例
【0112】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
また、複数種類の単量体を共重合して製造される重合体において、ある単量体を重合して形成される単量体単位の前記重合体における割合は、別に断らない限り、通常は、その重合体の重合に用いる全単量体に占める当該ある単量体の比率(仕込み比)と一致する。
【0113】
そして、実施例および比較例において、有機粒子を構成する重合体(コア部の重合体、シェル部の重合体)の電解液膨潤度、有機粒子を構成する各重合体(コア部の重合体、シェル部の重合体)およびその他の結着材のガラス転移温度(Tg)、有機粒子の体積平均粒子径(D50)、コアシェル比率、被覆率、二次電池接着層用組成物の粘度、表面張力、吐出性(ノズル詰まり抑制)、接着力A(セパレータと電極とのドライ接着力)、接着力B(多孔膜層付きセパレータと電極とのドライ接着力)、および二次電池の低温出力特性は、下記の方法で測定および評価した。
【0114】
<電解液膨潤度>
有機粒子のコア部およびシェル部の形成に用いた単量体および各種添加剤等を使用し、当該コア部およびシェル部の重合条件と同様の重合条件で、コア部の重合体およびシェル部の重合体を含む水分散液をそれぞれ調製した。この水分散液を、ポリテトラフルオロエチレン製のシャーレに入れ、25℃、48時間の条件で乾燥し、乾燥により得られた粉末を200℃で熱プレスすることで厚み0.5mmのフィルムを得た。得られたフィルムを1cm角に裁断して試験片とし、この試験片の重量W2(g)を測定した。次いで、試験片を、電解液に60℃で72時間浸漬した。その後、試験片を電解液から取り出し、表面の電解液を拭き取り、試験片の重量W3(g)を測定した。そして、下記式に従って、電解液膨潤度(倍)を算出した。
電解液膨潤度(倍)=W3/W2
なお、測定用の電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、ビニレンカーボネート(VC)を、体積比:EC/DEC/VC=68.5/30/1.5で混合してなる混合溶媒に、支持電解質であるLiPFを1mol/Lの濃度で溶解して得られる電解液を用いた。
【0115】
<ガラス転移温度(Tg)>
有機粒子のコア部およびシェル部の形成に用いた単量体および各種添加剤等を使用し、当該コア部およびシェル部の重合条件と同様の重合条件で、重合体(コア部の重合体、シェル部の重合体)を含む水分散液をそれぞれ調製し、乾固させて測定試料(1)とした。また、その他の結着材を含む水分散液を調製し、乾固させて測定試料(2)とした。各測定試料10mgをアルミパンに計量し、示差熱分析測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製「EXSTAR DSC6220」)にて、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲-100℃~500℃の間で、昇温速度10℃/分で、JIS Z 8703に規定された条件下で測定を実施し、示差走査熱量分析(DSC)曲線を得た。この昇温過程で、微分信号(DDSC)が0.05mW/分/mg以上となるDSC曲線の吸熱ピークが出る直前のベースラインと、吸熱ピーク後に最初に現れる変曲点でのDSC曲線の接線との交点を、ガラス転移温度(℃)として求めた。
【0116】
<有機粒子の体積平均粒子径(D50)>
固形分濃度0.1質量%に調整した有機粒子の水分散液について、レーザー回折式粒子径分布測定装置(ベックマン・コールター社製、製品名「LS-230」)を用いて、粒子径分布(体積基準)を測定した。そして、測定された粒子径分布において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を体積平均粒子径(D50)とした。
【0117】
<有機粒子のコアシェル比率>
有機粒子のコアシェル比率を、以下の手順で測定した。
調製した有機粒子を、可視光硬化性樹脂(日本電子株式会社製「D-800」)に十分分散させた後、包埋し、有機粒子を含有するブロック片を得た。次に、得られたブロック片を、ダイヤモンド刃を備えたミクロトームで厚さ100nmの薄片状に切り出して、測定用試料を作製した。その後、四酸化ルテニウムを用いて測定用試料に染色処理を施した。
次に、染色処理を施した測定用試料を、透過型電子顕微鏡(日本電子社製「JEM-3100F」)にセットして、加速電圧80kVにて、有機粒子の断面構造を写真撮影した。電子顕微鏡の倍率は、視野に有機粒子1個の断面が入るように設定した。その後、撮影された有機粒子の断面構造を観察し、観察されたシェル部の構成に応じて、以下の手順で有機粒子のシェル部の平均厚みを測定した。
<<シェル部の平均厚みの測定>>
シェル部の平均厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて有機粒子の断面構造を観察することにより求めた。具体的には、TEMを用いて有機粒子の断面構造におけるシェル部の最大厚みを測定し、任意に選択した20個以上の有機粒子のシェル部の最大厚みの平均値を、シェル部の平均厚みとした。ただし、シェル部が重合体の粒子によって構成されており、かつ、有機粒子の径方向で、シェル部を構成する粒子同士が重なり合わず、それらの重合体の粒子が単層でシェル部を構成している場合は、シェル部を構成する粒子の個数平均粒子径をシェル部の平均厚みとした。そして、測定されたシェル部の平均厚みを有機粒子の体積平均粒子径(D50)で割ることにより、有機粒子のコアシェル比率を求めた。
【0118】
<有機粒子の被覆率>
有機粒子の被覆率を、以下の手順で測定した。
上記有機粒子のコアシェル比率の測定方法と同様にして、有機粒子の断面構造を写真撮影し、撮影された有機粒子の断面構造において、コア部の周の長さD1、および、コア部の外表面とシェル部とが当接する部分の長さD2を計測し、その有機粒子のコア部の外表面がシェル部によって覆われる割合[被覆割合Rc(%)]=(D2/D1)×100を算出した。
前記の被覆割合Rcを、任意に選択した20個の有機粒子について測定し、その平均値を、有機粒子のコア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合とし、当該平均割合を有機粒子の被覆率とした。
【0119】
<二次電池接着層用組成物の粘度>
レオメーター(アントンパール社製「MCR502」)を用い、温度25℃にて、せん断速度100sec-1での粘度η、およびせん断速度10000sec-1での粘度ηをそれぞれ測定した。そして得られた粘度ηおよび粘度ηの値を用いて、粘度ηに対する粘度ηの比(η/η)を算出した。
【0120】
<二次電池接着層用組成物の表面張力>
調製した二次電池接着層用組成物をガラスシャーレ上に注いだ。そして、白金プレートを用い、プレート法により表面張力を測定した。測定は、協和界面科学製の全自動表面張力計「CBVP-Z」を使用して2回行い、測定値から表面張力の平均値を求めて、当該平均値を二次電池接着層用組成物の表面張力とした。
【0121】
<吐出性(ノズル詰まり抑制)>
インクジェットヘッド(コニカ社製「KM1024シアモードタイプ」)を備えるインクジェット方式のスラリー供給機を用いて、二次電池接着層用組成物を、飛翔速度が6~10m/秒となる条件で吐出した。吐出停止後、放置し、ノズル詰まりを、再吐出の可否により以下の基準で評価した。放置時間が長いほど、吐出性が良好であることを示す。
A:放置時間が30分以上であっても、再吐出可能であった。
B:放置時間が20分未満では再吐出可能であったが、20分以上30分未満で、ノズルの詰まりにより再吐出ができなった。
C:放置時間が10分未満では再吐出可能であったが、10分以上20分未満で、ノズルの詰まりにより再吐出ができなった。
D:放置時間が10分未満で、ノズルの詰まりにより再吐出ができなった。
【0122】
<接着力A(セパレータと電極とのドライ接着力)の評価>
得られた積層体Aを、電極(負極)の集電体側の面を下にして、電極(負極)の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープとしてはJIS Z1522に規定されるものを用いた。また、セロハンテープは水平な試験台に固定しておいた。そして、セパレータの一端を鉛直上方に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。
この測定を合計6回行い、応力の平均値をピール強度として求めて、接着層を介したセパレータ基材と電極(負極)との接着性を下記の基準で評価した。ピール強度が大きいほど、接着層を介したセパレータと電極(負極)との接着性が高いことを示す。
A:ピール強度が1.5N/m以上
B:ピール強度が1.0N/m以上1.5N/m未満
C:ピール強度が0.5N/m以上1.0N/m未満
D:ピール強度が0.5N/m未満
【0123】
<接着力B(多孔膜層付きセパレータと電極とのドライ接着力)の評価>
得られた積層体Bを、電極(負極)の集電体側の面を下にして、電極(負極)の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープとしてはJIS Z1522に規定されるものを用いた。また、セロハンテープは水平な試験台に固定しておいた。そして、多孔膜層付きセパレータの一端を鉛直上方に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。
この測定を合計6回行い、応力の平均値をピール強度として求めて、多孔膜層上の接着層を介した多孔膜層付きセパレータと電極(負極)との接着性を下記の基準で評価した。ピール強度が大きいほど、多孔膜層上の接着層を介した多孔膜層付きセパレータと電極(負極)との接着性が高いことを示す。
A:ピール強度が1.5N/m以上
B:ピール強度が1.0N/m以上1.5N/m未満
C:ピール強度が0.5N/m以上1.0N/m未満
D:ピール強度が0.5N/m未満
【0124】
<二次電池の低温出力特性>
作製した二次電池を、温度25℃の雰囲気下で、4.3Vまで定電流定電圧(CCCV)充電した。その後、温度-10℃の雰囲気下で、0.2Cの定電流法によって3.0Vまで放電した際の電気容量と、1Cの定電流法によって3.0Vまで放電した際の電気容量とを求めた。
そして、電気容量の比[=(1Cでの電気容量/0.2Cでの電気容量)×100(%)]を求めた。これらの測定を、二次電池5セルについて行い、各セルの電気容量の比の平均値を、放電容量維持率として、以下の基準で評価した。放電容量維持率の値が大きいほど、低温出力特性に優れることを示す。
A:放電容量維持率が80%以上
B:放電容量維持率が70%以上80%未満
C:放電容量維持率が60%以上70%未満
D:放電容量維持率が60%未満
【0125】
(実施例1)
<コアシェル構造を有する有機粒子の調製>
まず、コア部を形成するにあたり、撹拌機付き5MPa耐圧容器に、芳香族ビニル単量体としてのスチレン88部、(メタ)アクリル酸エステル単量体としてn-ブチルアクリレート6部、酸基含有単量体としてのメタクリル酸5部、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート1部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、イオン交換水150部、そして、重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に撹拌した後、60℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で、シェル部を形成するために、(メタ)アクリル酸エステル単量体としてのn-ブチルアクリレート80.7部と酸基含有単量体としてのメタクリル酸1部、芳香族ビニル単量体としてのスチレン18部、架橋性単量体としてのアリルメタクリレート0.3部を連続添加し、70℃に加温して重合を継続した。そして、重合転化率が96%になった時点で、冷却し反応を停止して、コアシェル構造を有する有機粒子を含む水分散液を得た。得られた有機粒子における、コア部およびシェル部の電解液膨潤度、コア部およびシェル部のガラス転移温度、体積平均粒子径、コアシェル比率並びに被覆率を表1に示す。
【0126】
<その他の結着材の調製>
撹拌機を備えた反応器に、イオン交換水70部、乳化剤としてのラウリル硫酸ナトリウム(花王ケミカル社製:エマール2F)0.15部、並びに過流酸アンモニウム0.5部を、それぞれ供給し、気相部を窒素ガスで置換し、60℃に昇温した。
一方、別の容器で、イオン交換水50部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、並びに、重合性単量体としてのn-ブチルアクリレート94部、アクリロニトリル2部、メタクリル酸2部、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド1部、およびアリルグリシジルエーテル1部を混合して、単量体混合物を得た。この単量体混合物を4時間かけて上述の反応器に連続的に添加して重合を行った。添加中は、60℃で反応を行った。添加終了後、更に70℃で3時間撹拌して反応を終了し、その他の結着材としてのアクリル系重合体を含む水分散液を製造した。この水分散液を用いて、その他の結着材(アクリル系重合体)のガラス転移温度を測定した。結果を表1に示す。
【0127】
<二次電池接着層用組成物の調製>
上述のようにして得られたコアシェル構造を有する有機粒子の水分散液100部(固形分相当)と、その他の結着材(アクリル系重合体)の水分散液15部(固形分相当)とを、撹拌容器内で混合した。得られた混合液に、チキソ剤としてのセルロースナノファイバーの水分散液(スギノマシン社製「WFo-1002」)を0.1部(固形分相当)、表面張力調整剤としてのポリオキシアルキレン誘導体の非イオン界面活性剤の水溶液(花王社製「LS-106」)を0.3部(固形分相当)添加して、更にイオン交換水を加えて、固形分濃度が4%の二次電池接着層用組成物を得た。この二次電池接着層用組成物を用いて、せん断速度100sec-1での粘度η、せん断速度10000sec-1での粘度η、および表面張力を測定し、粘度ηに対する粘度ηの比を求めた。そして、吐出性(ノズル詰まり)を評価した。結果を表1に示す。
【0128】
<多孔膜層用組成物の調製>
非導電性粒子としてのアルミナ(住友化学社製「AKP3000」、体積平均粒子径:0.5μm)を100部、分散剤としてのポリカルボン酸アンモニウム(東亜合成社製「アロンA-6114」)を1.0部および水を混合した。水の量は、固形分濃度が50%となるように調整した。メディアレス分散装置を用いて混合物を処理し、アルミナを分散させた。得られた分散液に、チキソ剤としてのカルボキシメチルセルロース(ダイセルケミカル社製「ダイセル1220」)を溶解した水溶液を1.5部(固形分相当)添加し、混合した。添加したチキソ剤(カルボキシメチルセルロース)は、混合物中で溶解した。次いで、多孔膜層用重合体としてのアクリル系共重合体の水分散液3部(固形分相当)と、表面張力調整剤としての脂肪族ポリエーテル型のノニオン性界面活性剤0.2部とを添加し、更に水を固形分濃度が40%になるように添加して、多孔膜層用組成物を得た。
【0129】
<多孔膜層付きセパレータの作製>
調製した多孔膜層用組成物をポリエチレン製容器に封入し、30日間静置した。その後、ポリエチレン製容器に撹拌翼を挿入し、回転数250rpmで撹拌し、容器底部の固着物が目視で確認されなくなってから更に30分間撹拌を続けることにより、多孔膜層用組成物中の非導電性粒子(アルミナ)を再分散させた。
また、湿式法により製造された、単層のポリエチレン製セパレータ基材(幅250mm、長さ1000m、厚さ12μm)を用意した。そして、再分散させた多孔膜層用組成物を、セパレータ基材の一方の表面上に、乾燥後の厚さが2.5μmになるようにグラビアコーター(塗布速度:20m/分)で塗布した。次いで、多孔膜層用組成物を塗布したセパレータ基材を50℃の乾燥炉で乾燥し、巻き取ることにより、セパレータ基材の一方の表面上に多孔膜層を形成してなる多孔膜層付きセパレータを得た。
【0130】
<接着層が形成された多孔膜層付きセパレータの作製>
上述のようにして得られた多孔膜層付きセパレータの多孔膜層上に、インクジェットヘッド(コニカ社製「KM1024(シアモードタイプ)」を備えるインクジェット方式のスラリー供給機を用いて、調製した二次電池接着層用組成物を、飛翔速度が6~10m/秒となる条件で吐出し、吐出された二次電池接着層用組成物を乾燥した。そして、多孔膜層上にドット状の複数の接着層が形成された多孔膜層付きセパレータを得た。
【0131】
<正極の作製>
正極活物質としてのLiCoO[体積平均粒子径(D50):12μm]を100部、導電材としてのアセチレンブラック(電気化学工業社製「HS-100」)を2部、正極合材層用結着材としてのポリフッ化ビニリデン(クレハ社製「#7208」)を固形分相当で2部、およびN-メチルピロリドンを、全固形分濃度が70%となるようにプラネタリーミキサーに投入し、混合して正極用スラリー組成物を得た。
得られた正極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体としての厚さ20μmのアルミ箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させて正極原反を得た。この乾燥は、アルミ箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、正極原反をロールプレスで圧延して、正極合材層の厚みが95μmの正極を得た。
【0132】
<負極の作製>
撹拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3-ブタジエン33.5部、イタコン酸3.5部、スチレン62部、2-ヒドロキシエチルアクリレート1部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部、イオン交換水150部および重合開始剤としてのペルオキソ二硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に撹拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し、反応を停止して、負極合材層用結着材(SBR)を含む混合物を得た。この負極合材層用結着材を含む混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整した後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、負極合材層用結着材を含む水分散液を得た。
また、負極活物質としての人造黒鉛[体積平均粒子径(D50):15.6μm]100部と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(日本製紙社製「MAC350HC」)の2%水溶液を固形分相当で1部との混合物を、イオン交換水で固形分濃度68%に調整した後、25℃で60分間混合した。更にイオン交換水で固形分濃度62%に調整した後、25℃で15分間混合した。上記の負極合材層用結着材(SBR)を固形分相当で1.5部およびイオン交換水を加え、最終固形分濃度が52%となるように調整し、更に10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理して、流動性の良い負極用スラリー組成物を調製した。
得られた負極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体としての厚さ20μmの銅箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させて負極原反を得た。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、負極原反をロールプレスで圧延して、負極合材層の厚みが100μmの負極を得た。
【0133】
<積層体Aの作製>
セパレータ基材上に、インクジェットヘッド(コニカ社製「KM1024(シアモードタイプ)」を備えるインクジェット方式のスラリー供給機を用いて、二次電池接着層用組成物を、飛翔速度が6~10m/秒となる条件で吐出し、乾燥した後、セパレータ基材上に、塗布量、すなわち接着層の形成量が0.15g/mとなるようにドット状の複数の接着層を形成した。ここで、形成された1つのドットの大きさは15000μmであった。そして、当該セパレータ基材上に接着層が形成されてなるセパレータと、電極(負極)とを、接着層を介して重ね、加熱温度80℃、加圧力2.5MPaの条件で10秒間加圧保持することにより貼り合わせることで、積層体Aを得た。この積層体Aを用いて、接着力Aの評価を行った。結果を表1に示す。
【0134】
<積層体Bの作製>
多孔膜層付きセパレータの多孔膜層上に、インクジェットヘッド(コニカ社製「KM1024(シアモードタイプ)」を備えるインクジェット方式のスラリー供給機を用いて、二次電池接着層用組成物を、飛翔速度が6~10m/秒となる条件で吐出し、乾燥した後、多孔膜層付きセパレータ上に、塗布量(形成量)が0.15g/mとなるようにドット状の複数の接着層を形成した。ここで、形成された1つのドットの大きさは15000μmであった。そして、当該多孔膜層付きセパレータ基材の多孔膜層上に接着層が形成されてなる多孔膜層付きセパレータと、電極(負極)とを、接着層を介して重ね、加熱温度80℃、加圧力2.5MPaの条件で10秒間加圧保持することで貼り合わせることで、積層体Bを得た。この積層体Bを用いて、接着力Bの評価を行った。結果を表1に示す。
【0135】
<二次電池の製造>
電池の外装として、アルミニウム包材外装を用意した。また、上述のようにして作製した正極を、4.6cm×4.6cmの正方形に切り出したものを、二次電池用正極とした。また、上述ようにして作製した多孔膜層付きセパレータを、5.2cm×5.2cmの正方形に切り出したものを、二次電池用セパレータとした。更に、上述の負極を5cm×5cmの正方形に切り出したものを、二次電池用負極とした。そして、二次電池用正極を、集電体側の表面がアルミニウム包材外装に接するように、アルミニウム包材外装内に配置した。また、二次電池用正極の正極合材層の表面上に、二次電池用セパレータを、接着層が形成された多孔膜層の表面が当該二次電池用正極に接するように配置した。更に、二次電池用負極を、二次電池用セパレータ上に、負極合材層側の表面がセパレータに向かい合うように配置した。
次に、電解液(溶媒:エチレンカーボネート/メチルエチルカーボネート/ビニレンカーボネート=68.5/30/1.5(体積比)、電解質:濃度1mol/LのLiPF)を空気が残らないように注入した。更に、アルミニウム包材外装の開口を密封するために、150℃のヒートシールをしてアルミニウム包材外装を閉口し、二次電池としてのリチウムイオン二次電池を製造した。
このリチウムイオン二次電池について、低温出力特性を評価した。結果を表1に示す。
【0136】
(実施例2)
二次電池接着層用組成物の調製に際し、有機粒子のコア部およびシェル部の形成に用いる単量体を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、コアシェル構造を有する有機粒子、その他の結着材、二次電池接着層用組成物、多孔膜層用組成物、多孔膜層付きセパレータ、接着層が形成された多孔膜層付きセパレータ、正極、負極、積層体A、積層体B、および二次電池を調製または作製した。そして、実施例1と同様にして各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0137】
(実施例3)
二次電池接着層用組成物の調製に際し、チキソ剤としてのセルロースナノファイバーをカルボキシメチルセルロース0.3部に替えた以外は、実施例1と同様にして、コアシェル構造を有する有機粒子、その他の結着材、二次電池接着層用組成物、多孔膜層用組成物、多孔膜層付きセパレータ、接着層が形成された多孔膜層付きセパレータ、正極、負極、積層体A、積層体B、および二次電池を調製または作製した。そして、実施例1と同様にして各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0138】
(実施例4)
二次電池接着層用組成物の調製に際し、チキソ剤としてのセルロースナノファイバーを(メタ)アクリル酸系共重合体(PMAA:Polymethacrylic acid)0.05部に替えた以外は、実施例1と同様にして、コアシェル構造を有する有機粒子、その他の結着材、二次電池接着層用組成物、多孔膜層用組成物、多孔膜層付きセパレータ、接着層が形成された多孔膜層付きセパレータ、正極、負極、積層体A、積層体B、および二次電池を調製または作製した。そして、実施例1と同様にして各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0139】
(実施例5)
二次電池接着層用組成物の調製に際し、その他の結着材としてのアクリル系重合体の含有量(固形分)を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、コアシェル構造を有する有機粒子、その他の結着材、二次電池接着層用組成物、多孔膜層用組成物、多孔膜層付きセパレータ、接着層が形成された多孔膜層付きセパレータ、正極、負極、積層体A、積層体B、および二次電池を調製または作製した。そして、実施例1と同様にして各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0140】
(実施例6)
二次電池接着層用組成物の調製に際し、表面張力調整剤としてのポリオキシアルキレン誘導体の非イオン界面活性剤の水溶液の含有量(固形分)を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、コアシェル構造を有する有機粒子、その他の結着材、二次電池接着層用組成物、多孔膜層用組成物、多孔膜層付きセパレータ、接着層が形成された多孔膜層付きセパレータ、正極、負極、積層体A、積層体B、および二次電池を調製または作製した。そして、実施例1と同様にして各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0141】
(実施例7)
二次電池接着層用組成物の調製に際し、チキソ剤としてのセルロースナノファイバーの含有量(固形分)、および、表面張力調整剤としてのポリオキシアルキレン誘導体の非イオン界面活性剤の含有量(固形分)を、それぞれ表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、コアシェル構造を有する有機粒子、その他の結着材、二次電池接着層用組成物、多孔膜層用組成物、多孔膜層付きセパレータ、接着層が形成された多孔膜層付きセパレータ、正極、負極、積層体A、積層体B、および二次電池を調製または作製した。そして、実施例1と同様にして各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0142】
(実施例8)
二次電池接着層用組成物の調製に際し、チキソ剤としてのセルロースナノファイバーの含有量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、コアシェル構造を有する有機粒子、その他の結着材、二次電池接着層用組成物、多孔膜層用組成物、多孔膜層付きセパレータ、接着層が形成された多孔膜層付きセパレータ、正極、負極、積層体A、積層体B、および二次電池を調製または作製した。そして、実施例1と同様にして各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0143】
(比較例1)
コアシェル構造を有する有機粒子に替えて、以下のようにして調製した単一相構造(非コアシェル)の有機粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、その他の結着材、二次電池接着層用組成物、多孔膜層用組成物、多孔膜層付きセパレータ、接着層が形成された多孔膜層付きセパレータ、正極、負極、積層体A、積層体B、および二次電池を調製または作製した。そして、実施例1と同様にして各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0144】
<単一相構造(非コアシェル)の有機粒子の調製>
撹拌機を備えた反応器に、イオン交換水70部、乳化剤としてのラウリル硫酸ナトリウム(花王ケミカル社製、製品名「エマール2F」)0.15部、並びに過流酸アンモニウム0.5部を、それぞれ供給し、気相部を窒素ガスで置換し、60℃に昇温した。
一方、別の容器で、イオン交換水50部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、並びに、重合性単量体としてのn-ブチルアクリレート40部、メタクリル酸1部、スチレン58部、エチレングリコールジメタクリレート1部を混合して、単量体混合物を得た。この単量体混合物を2時間かけて上述の反応器に連続的に添加して重合を行った。添加中は、60℃で反応を行った。添加終了後、更に70℃で2時間撹拌して反応を終了し、単一相構造(非コアシェル)の有機粒子を含む水分散液を製造した。
【0145】
(比較例2)
二次電池接着層用組成物の調製に際し、チキソ剤としてのセルロースナノファイバーの含有量(固形分)を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、コアシェル構造を有する有機粒子、その他の結着材、二次電池接着層用組成物、多孔膜層用組成物、多孔膜層付きセパレータ、接着層が形成された多孔膜層付きセパレータ、正極、負極、積層体A、積層体B、および二次電池を調製または作製した。そして、実施例1と同様にして各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0146】
(比較例3)
二次電池接着層用組成物の調製に際し、チキソ剤としてのセルロースナノファイバーの含有量(固形分)、およびその他の結着材の含有量(固形分)をそれぞれ表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、コアシェル構造を有する有機粒子、その他の結着材、二次電池接着層用組成物、多孔膜層用組成物、多孔膜層付きセパレータ、接着層が形成された多孔膜層付きセパレータ、正極、負極、積層体A、積層体B、および二次電池を調製または作製した。そして、実施例1と同様にして各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0147】
(比較例4)
二次電池接着層用組成物の調製に際し、チキソ剤を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、コアシェル構造を有する有機粒子、その他の結着材、二次電池接着層用組成物、多孔膜層用組成物、多孔膜層付きセパレータ、接着層が形成された多孔膜層付きセパレータ、正極、負極、積層体A、積層体B、および二次電池を調製または作製した。そして、実施例1と同様にして各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0148】
なお、以下に示す表1中、
「BA」は、n-ブチルアクリレート単位を示し、
「MAA」は、メタクリル酸単位を示し、
「ST」は、スチレン単位を示し、
「AMA」は、アリルメタクリレート単位を示し、
「EDMA」は、エチレングリコールジメタクリレート単位を示し、
「CNF」は、セルロースナノファイバーを示し、
「PMAA」は、(メタ)アクリル酸系共重合体を示し、
「CMC」はカルボキシメチルセルロースを示し、
「LS-106」は、ポリオキシアルキレン誘導体の非イオン界面活性剤の水溶液を示し、
「ACL」は、アクリル系重合体を示す。
【0149】
【表1】
【0150】
表1より、コアシェル構造を有する有機粒子、チキソ剤および水を含み、且つ、せん断速度100sec-1での粘度η、せん断速度10000sec-1での粘度η、および粘度ηに対する前記粘度ηの比(η0/η)がそれぞれ本発明で規定する所定の範囲内である二次電池接着層用組成物を用いた実施例1~8では、多孔膜層上に形成された接着層を介して多孔膜層付きセパレータと電極とを強固に接着できることがわかる。
一方、表1より、非コアシェル構造である単一構造の有機粒子を用いた比較例1では、多孔膜層上に形成された接着層と介して多孔膜層付きセパレータと電極とを強固に接着させることができず、また、得られる二次電池の低温出力特性が低下していることがわかる。
また、表1より、せん断速度100sec-1での粘度ηが本発明で規定する所定の範囲外である二次電池接着層用組成物を用いた比較例2、および、せん断速度10000sec-1での粘度ηが本発明で規定する所定の範囲外である比較例3では、インクジェット法により二次電池接着層用組成物を良好に吐出することができないことがわかる。
更に、表1より、チキソ剤を含まず、且つ、粘度ηに対する粘度ηの比(η0/η)が本発明で規定する所定の範囲外である二次電池接着層用組成物を用いた比較例4では、多孔膜層上に形成された接着層を介して多孔膜層付きセパレータと電極とを強固に接着させることができず、また、得られる二次電池の低温出力特性が低下していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明によれば、インクジェット法を用いた場合でも、多孔膜層付き基材の多孔膜層上に効率良く接着層を形成することができ、当該接着層を介して多孔膜層付き基材と被接着部材とを強固に接着させ得る二次電池接着層用組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、多孔膜層付き基材の多孔膜層上に形成された接着層を介して被接着部材と強固に接着され得る非水系二次電池用電池部材およびその製造方法を提供することができる。
更に、本発明によれば、多孔膜層付き基材と被接着部材とが多孔膜層付き基材の多孔膜層上に形成された接着層を介して強固に接着されてなる非水系二次電池用積層体であって、二次電池に優れた低温出力特性を発揮させ得る非水系二次電池用積層体を効率的に製造できる非水系二次電池用積層体の製造方法を提供することができる。
そして、本発明によれば、低温出力特性に優れる非水系二次電池を提供することができる。