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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】上部電極アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20241107BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20241107BHJP
   C01B 32/182 20170101ALI20241107BHJP
   C01B 32/158 20170101ALI20241107BHJP
   C30B 33/12 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/302 101B
H01L21/31 C
C01B32/182
C01B32/158
C30B33/12
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021062928
(22)【出願日】2021-04-01
(65)【公開番号】P2022158194
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2023-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】李 黎夫
(72)【発明者】
【氏名】小舩 貴基
(72)【発明者】
【氏名】辻本 宏
【審査官】原島 啓一
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-529303(JP,A)
【文献】特開2019-009270(JP,A)
【文献】特開2019-192728(JP,A)
【文献】特開2012-216607(JP,A)
【文献】特開2018-129443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/205
H01L 21/302
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/461
H01L 21/469
H01L 21/86
C01B 32/00-32/991
C30B 1/00-35/00
C23C 16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置で使用する上部電極アセンブリであって、
電極プレートと、
金属プレートと、
前記電極プレートと前記金属プレートとの間に配置され、垂直配向部分を有する伝熱シートであり、前記垂直配向部分は、垂直方向に沿って配向される複数の垂直配向グラフェン構造を有する、伝熱シートと、
を備え
前記垂直配向部分は、水平方向に沿って積層される複数の垂直配向グラファイトシートを有し、前記複数の垂直配向グラファイトシートの各々が、前記複数の垂直配向グラフェン構造を有する、上部電極アセンブリ。
【請求項2】
プラズマ処理装置で使用する上部電極アセンブリであって、
電極プレートと、
金属プレートと、
前記電極プレートと前記金属プレートとの間に配置され、垂直配向部分を有する伝熱シートであり、前記垂直配向部分は、垂直方向に沿って配向される複数の垂直配向グラフェン構造を有する、伝熱シートと、
を備え
前記伝熱シートは、水平方向に沿って配向される複数の水平配向グラフェン構造を有する水平配向部分を有し、
前記垂直配向部分と前記水平配向部分とが、水平方向に沿って配置される、上部電極アセンブリ。
【請求項3】
プラズマ処理装置で使用する上部電極アセンブリであって、
電極プレートと、
金属プレートと、
前記電極プレートと前記金属プレートとの間に配置され、垂直配向部分を有する伝熱シートであり、前記垂直配向部分は、垂直方向に沿って配向される複数の垂直配向グラフェン構造を有する、伝熱シートと、
を備え
前記伝熱シートは、水平方向に沿って配向される複数の水平配向グラフェン構造を有する水平配向部分を有し、
前記垂直配向部分と前記水平配向部分とが、垂直方向に沿って積層され、
前記水平配向部分は、水平方向に沿って配向される複数の水平配向カーボンナノチューブを有し、前記複数の水平配向カーボンナノチューブの各々が、前記複数の水平配向グラフェン構造を有する、上部電極アセンブリ。
【請求項4】
プラズマ処理装置で使用する上部電極アセンブリであって、
電極プレートと、
金属プレートと、
前記電極プレートと前記金属プレートとの間に配置され、垂直配向部分を有する伝熱シートであり、前記垂直配向部分は、垂直方向に沿って配向される複数の垂直配向グラフェン構造を有する、伝熱シートと、
を備え
前記金属プレートは、少なくとも1つの冷媒流路と、少なくとも1つのガス拡散空間と、少なくとも1つの加熱モジュールと、を内部に有し、
前記少なくとも1つの加熱モジュールは、前記少なくとも1つの冷媒流路と縦方向に重複しないように配置される、上部電極アセンブリ。
【請求項5】
プラズマ処理装置で使用する上部電極アセンブリであって、
電極プレートと、
金属プレートと、
前記電極プレートと前記金属プレートとの間に配置され、垂直配向部分を有する伝熱シートであり、前記垂直配向部分は、垂直方向に沿って配向される複数の垂直配向グラフェン構造を有する、伝熱シートと、
他の金属プレートと、
前記金属プレートと前記他の金属プレートとの間に配置され、他の垂直配向部分を有する他の伝熱シートであり、前記他の垂直配向部分は、垂直方向に沿って配向される複数の他の垂直配向グラフェン構造を有する、他の伝熱シートと、
を備える、上部電極アセンブリ。
【請求項6】
前記水平配向部分は、水平方向に沿って配向される複数の水平配向カーボンナノチューブを有し、前記複数の水平配向カーボンナノチューブの各々が、前記複数の水平配向グラフェン構造を有する、請求項に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項7】
前記水平配向部分は、垂直方向に沿って積層される複数の水平配向グラファイトシートを有し、前記複数の水平配向グラファイトシートの各々が、前記複数の水平配向グラフェン構造を有する、請求項に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項8】
前記金属プレートは、少なくとも1つの冷媒流路と、少なくとも1つのガス拡散空間と、少なくとも1つの加熱モジュールと、を内部に有する、請求項1~3、6~7のいずれか一項に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項9】
前記少なくとも1つの加熱モジュールは、前記少なくとも1つの冷媒流路と縦方向に重複しないように配置される、請求項8に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項10】
他の金属プレートと、
前記金属プレートと前記他の金属プレートとの間に配置され、他の垂直配向部分を有する他の伝熱シートであり、前記他の垂直配向部分は、垂直方向に沿って配向される複数の他の垂直配向グラフェン構造を有する、他の伝熱シートと、
を更に備える、請求項1~4、6~7のいずれか一項に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項11】
前記金属プレートは、少なくとも1つのガス拡散空間を内部に有し、
前記他の金属プレートは、少なくとも1つの冷媒流路を内部に有し、
前記金属プレート又は前記他の金属プレートの少なくともいずれか一方は、少なくとも1つの加熱モジュールを内部に有する、請求項5又は10に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項12】
前記少なくとも1つの加熱モジュールは、前記少なくとも1つの冷媒流路と縦方向に重複しないように配置される、請求項11に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項13】
前記他の伝熱シートは、水平方向に沿って配向される複数の他の水平配向グラフェン構造を有する他の水平配向部分を有し、
前記他の垂直配向部分と前記他の水平配向部分とが、垂直方向に沿って積層される、請求項5、10~12のいずれか一項に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項14】
前記他の伝熱シートは、水平方向に沿って配向される複数の他の水平配向グラフェン構造を有する他の水平配向部分を有し、
前記他の垂直配向部分と前記他の水平配向部分とが、水平方向に沿って配置される、請求項5、10~12のいずれか一項に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項15】
前記他の水平配向部分は、水平方向に沿って配向される複数の他の水平配向カーボンナノチューブを有し、前記複数の他の水平配向カーボンナノチューブの各々が、前記複数の他の水平配向グラフェン構造を有する、請求項13又は14に記載の上部電極アセンブリ。
【請求項16】
前記他の水平配向部分は、垂直方向に沿って積層される複数の他の水平配向グラファイトシートを有し、前記複数の他の水平配向グラファイトシートの各々が、前記複数の他の水平配向グラフェン構造を有する、請求項13又は14に記載の上部電極アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、上部電極アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プラズマによって基板を処理する処理室を備える基板処理装置に配置された電極ユニットが開示されている。特許文献1に記載の電極ユニットは、処理室側から順に電極層、加熱層及び冷却層を有し、前記加熱層は前記電極層を全面的に覆うとともに、前記冷却層は前記加熱層を介して前記電極層を全面的に覆い、前記加熱層及び前記冷却層の間には伝熱シートが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014―120440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、厚み方向に対する伝熱効率を適切に向上できる上部電極アセンブリを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、プラズマ処理装置で使用する上部電極アセンブリであって、電極プレートと、金属プレートと、前記電極プレートと前記金属プレートとの間に配置され、垂直配向部分を有する伝熱シートであり、前記垂直配向部分は、垂直方向に沿って配向される複数の垂直配向グラフェン構造を有する、伝熱シートと、を備え、前記垂直配向部分は、水平方向に沿って積層される複数の垂直配向グラファイトシートを有し、前記複数の垂直配向グラファイトシートの各々が、前記複数の垂直配向グラフェン構造を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、厚み方向に対する伝熱効率を適切に向上できる上部電極アセンブリを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態にかかるプラズマ処理システムの構成を示す縦断面図である。
図2】一実施形態にかかる上部電極アセンブリの構成を示す縦断面図である。
図3】一実施形態にかかる伝熱シートの構成を示す断面図である。
図4】一実施形態にかかる伝熱シートの構成を示す斜視図である。
図5】伝熱シートの伝熱性能についての説明図である。
図6】伝熱シートの他の構成例を示す説明図である。
図7】伝熱シートの伝熱性能についての説明図である。
図8】電極プレートに生じる面内温度の不均一性についての説明図である。
図9A】伝熱シートの他の構成例を示す説明図である。
図9B】伝熱シートの他の構成例を示す説明図である。
図10A】伝熱シートの他の構成例を示す説明図である。
図10B】伝熱シートの他の構成例を示す説明図である。
図11】伝熱シートの他の構成例を示す説明図である。
図12】第2実施形態にかかる上部電極アセンブリの構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイスの製造工程では、チャンバ中に供給された処理ガスを励起させてプラズマを生成することで、基板支持部に支持された半導体基板(以下、単に「基板」という。)に対して、エッチング処理、成膜処理、拡散処理などの各種プラズマ処理が行われる。これらプラズマ処理は、例えばチャンバ天部の一部を構成する上部電極アセンブリを備える、容量結合型(CCP:Capacitively Coupled Plasma)のプラズマ処理装置を用いて行われる。
【0009】
ここで、近年の半導体デバイスの製造プロセスにおいては、基板表面に形成されるパターンの微細化の要求に伴い、プラズマ処理装置において、RF(Radio Frequency)電源を高出力で高速切替(例えばON/OFF切換)することが求められている。しかしながら、このようにRF電源を高出力で高速切替を行った場合、プラズマ処理空間に隣接して配置された上部電極アセンブリに対するプラズマ入熱に変動が生じ、これにより上部電極アセンブリの温度が変動するおそれがある。
【0010】
このように上部電極アセンブリの温度が変動した場合、基板に対するプラズマ処理結果の分布にばらつきが生じるおそれがある。このため、基板に対するプラズマ処理結果を均一に制御するためには、プラズマ入熱の変動に追従して上部電極アセンブリの温度制御を行う必要がある。
【0011】
上述した特許文献1には、電極ユニットが備える電極層の温度制御を、電極ユニットの内部に配置された加熱層や冷却層により行うことが開示されている。また、特許文献1に記載の電極ユニットによれば、加熱層と冷却層との間に伝熱層(例えば伝熱シート)が配置され、これにより冷却層による電極層の冷却を効果的に行っている。
【0012】
ところで、特許文献1に記載の電極ユニットでは、加熱層と冷却層との間に配置された伝熱層によっては、主に平面方向(水平方向)への伝熱が促進され、これにより電極層の全域が適切に温度制御される。しかしながら、上述したようにRF電源の高出力、高速切替が行われる場合、プラズマからの瞬間入熱を可能な限り早く処理することが重要になる。換言すれば、電極ユニットの垂直方向(厚み方向)の熱抵抗を可能な限り下げることが重要になる。すなわち、かかる観点から従来の電極ユニットには改善の余地があり、特に垂直方向における伝熱性を向上した電極ユニットの開発が求められる。
【0013】
本開示に係る技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、厚み方向に対する伝熱効率を適切に向上できる上部電極アセンブリを提供する。以下、本実施形態にかかる上部電極アセンブリを備えるプラズマ処理システムについて、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
<プラズマ処理装置>
先ず、本実施形態にかかるプラズマ処理システムについて説明する。図1は本実施形態にかかるプラズマ処理システムの構成の概略を示す縦断面図である。
【0015】
プラズマ処理システムは、容量結合型のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、上部電極アセンブリ13を含む。上部電極アセンブリ13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、上部電極アセンブリ13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10の内部には、上部電極アセンブリ13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sが形成される。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間10sからガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。側壁10aは接地される。上部電極アセンブリ13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10とは電気的に絶縁される。
【0016】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111の上面は、基板(ウェハ)Wを支持するための中央領域111a(基板支持面)と、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111b(リング支持面)とを有する。環状領域111bは、平面視で中央領域111aを囲んでいる。リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含み、1又は複数の環状部材のうち少なくとも1つはエッジリングである。
【0017】
一実施形態において本体部111は、基台113及び静電チャック114を含む。基台113は導電性部材を含む。基台113の導電性部材は下部電極として機能する。静電チャック114は、基台113の上面に配置される。静電チャック114の上面は前述の中央領域111a及び環状領域111bを有する。
【0018】
また、図示は省略するが、基板支持部11は、リングアセンブリ112、静電チャック114及び基板Wのうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と静電チャック114の上面との間に伝熱ガス(バックサイドガス)を供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0019】
図2に示すように、一実施形態において上部電極アセンブリ13は、電極プレート120と金属プレート130を含む。電極プレート120と金属プレート130は、伝熱シート140を介して垂直方向に積層されている。換言すれば、上部電極アセンブリ13は、プラズマ処理空間10s側から電極プレート120、伝熱シート140及び金属プレート130がこの順に積層して構成されている。
【0020】
電極プレート120は、例えばアルミニウム等の導電性部材を含む。電極プレート120の導電性部材は上部電極として機能する。電極プレート120には、厚み方向(垂直方向)に貫通して複数のガス導入口13aが形成されている。ガス導入口13aは、後述の金属プレート130の内部に形成されたガス拡散空間13b及びガス供給口13cを介してガス供給部20に接続されており、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに導入するように構成される。
【0021】
金属プレート130は電極プレート120の上に積層して配置され、当該電極プレート120の支持体として機能する。金属プレート130の内部には少なくとも1つのガス拡散空間13bと、少なくとも1つのガス供給口13cが形成されている。ガス拡散空間13b及びガス供給口13cはガス供給部20に接続されており、上述したように、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスを電極プレート120に形成されたガス導入口13aを介してプラズマ処理空間10sに導入するように構成される。
【0022】
また金属プレート130は、プラズマ入熱に起因して温度が変動する電極プレート120をターゲット温度に調節するように構成される少なくとも1つの冷媒流路131と、少なくとも1つの加熱モジュール132と、を内部に有している。冷媒流路131には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。加熱モジュール132は、ヒータ、伝熱媒体、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。また、一実施形態において冷媒流路131と加熱モジュール132は金属プレート130の内部において縦方向に(平面視において)に重複しないように配置され、各々と電極プレート120との間で伝熱が行われる際に互いに干渉しないように構成されている。
【0023】
図3及び図4に示すように、一実施形態において伝熱シート140は、垂直配向部分R1を有する。垂直配向部分R1は、伝熱シート140の全部又は一部を構成する。一実施形態において、垂直配向部分R1は、水平方向において伝熱シート140の全域又は一部の領域に渡って形成される。一実施形態において、垂直配向部分R1は、垂直方向において伝熱シート140の全域又は一部の領域に渡って形成される。ここで、一部の領域は、1つの領域であってもよく、複数の領域であってもよい。垂直配向部分R1は、伝熱異方性を有する複数のグラファイトシート141が平面方向(水平方向)に積層して構成されている。また、グラファイトシート141の各々は、図5に示すように、当該グラファイトシート141の面方向(即ち垂直方向)に沿って配向される複数のグラフェン構造141aを有している。換言すれば、一実施形態において伝熱シート140は、電極プレート120と金属プレート130の積層方向である垂直方向(Z方向)に沿って配向される複数のグラフェン構造(複数の垂直配向グラフェン構造)141aを有している。
【0024】
ここで、グラフェン構造141aの配向方向(X方向及びZ方向)に対する熱伝導率は、グラフェン構造141aの積層方向(Y方向)に対する熱伝導率と比較して大きい。換言すれば、一実施形態において伝熱シート140は、グラフェン構造141aの配向方向である垂直方向(図4のZ方向)及び平面一方向(図4のX方向)に対する熱伝導率が、グラフェン構造141aの積層方向であって、前記平面一方向と直交する平面他方向(図4のY方向)に対する熱伝導率と比較して大きくなるように配置されている。
【0025】
上部電極アセンブリ13においては、高熱伝導率を有するグラファイトシートを積層して形成された伝熱シートを電極プレート120と金属プレート130との間に挿入することのみによっても、プラズマ入熱に起因する電極プレート120の温度変動に追従した温度制御を適切に実行できる。しかしながら本実施形態においては、図3及び図4に示したように、複数のグラフェン構造141aが垂直方向に沿って配向されるように、複数のグラファイトシート141を平面方向(水平方向)に積層して伝熱シート140を構成する。これにより、複数のグラファイトシート141を垂直方向に積層した伝熱シート140´(後述の図7を参照)を構成した場合と比較して、垂直方向に対する伝熱効率を向上でき、すなわち、より適切に電極プレート120の温度制御を行うことができる。
【0026】
なお以下の説明においては、図4に示したように、伝熱シート140において複数のグラフェン構造141aが垂直方向に沿って配向された部分を、「垂直配向部分R1」という場合がある。すなわち、伝熱シート140の垂直配向部分R1においては、垂直方向に対する熱伝導率が平面方向に対する熱伝導率と比較して大きい。
【0027】
なお、一例において、グラファイトシート141におけるグラフェン構造141aの配向方向に沿った熱伝導率は2000W/m・K、グラフェン構造141aの積層方向に沿った熱伝導率は10W/m・Kである。
【0028】
なお、ガス導入部は、上部電極アセンブリ13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる、1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0029】
図1の説明に戻る。
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介して上部電極アセンブリ13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0030】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、基板支持部11の導電性部材(下部電極)及び/又は上部電極アセンブリ13の導電性部材(上部電極)に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0031】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して下部電極及び/又は上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~160MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、下部電極及び/又は上部電極に供給される。第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0032】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、下部電極に印加される。一実施形態において、第1のDC信号が、静電チャック114内の吸着用電極のような他の電極に印加されてもよい。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、上部電極に印加される。種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0033】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10sの内部圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0034】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0035】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0036】
例えば、以上の実施形態では、上部電極アセンブリ13の伝熱シート140において、垂直配向部分R1を複数の垂直配向グラファイトシート141を平面(水平)方向に積層することで、複数の垂直配向グラフェン構造141aが垂直方向に沿って配向するように構成した。しかしながら伝熱シート140の構成はこれに限定されず、図6に示すように、厚み方向(垂直方向)に沿って延伸する複数のカーボンナノチューブ142aを有する垂直配向カーボンナノチューブ(CNT:Carbon Nanotube)シート142により、垂直配向部分R1を構成してもよい。垂直配向カーボンナノチューブ142aは、図6に示したように、当該垂直配向カーボンナノチューブ142aの延伸方向に沿って配向される複数の垂直配向グラフェン構造141aを有している。即ち、複数の垂直配向カーボンナノチューブ142aの各々が、複数の垂直配向グラフェン構造141aを有する。換言すれば、一実施形態において伝熱シート140の垂直配向部分R1においては、垂直配向カーボンナノチューブ142aの延伸方向(垂直配向グラフェン構造141aの配向方向)である垂直方向に対する熱伝導率が、平面(水平)方向に対する熱伝導率と比較して大きくなっている。
【0037】
<プラズマ処理装置による基板の処理方法>
次に、以上のように構成されたプラズマ処理装置1における基板Wの処理方法の一例について説明する。なお、プラズマ処理装置1においては、基板Wに対して、エッチング処理、成膜処理、拡散処理などの各種プラズマ処理が行われる。
【0038】
先ず、プラズマ処理チャンバ10の内部に基板Wが搬入され、基板支持部11の静電チャック114上に基板Wが載置される。次に、静電チャック114の吸着用電極に電圧が印加され、これにより、静電力によって基板Wが静電チャック114に吸着保持される。
【0039】
静電チャック114に基板Wが吸着保持されると、次に、プラズマ処理チャンバ10の内部が所定の真空度まで減圧される。次に、ガス供給部20から上部電極アセンブリ13を介してプラズマ処理空間10sに処理ガスが供給される。また、第1のRF生成部31aからプラズマ生成用のソースRF電力が下部電極に供給され、これにより、処理ガスを励起させて、プラズマを生成する。この際、第2のRF生成部31bからバイアスRF電力が供給されてもよい。そして、プラズマ処理空間10sにおいて、生成されたプラズマの作用によって、基板Wにプラズマ処理が施される。
【0040】
ここで、基板Wのプラズマ処理に際しては、プラズマ処理空間10sに隣接して配置された上部電極アセンブリ13の電極プレート120が、プラズマ入熱により温度変動する。そして、このように電極プレート120に温度変動が生じた場合、基板Wに対するプラズマ処理結果が面内不均一になるおそれがある。
【0041】
そこで本実施形態においては、かかる電極プレート120の温度変動に追従して、冷媒流路131及び加熱モジュール132による電極プレート120の温度制御を行う。具体的には、例えばプラズマ入熱により電極プレート120の温度が上昇した際に冷媒流路131の内部に伝熱流体を通流させることで金属プレート130の温度を低下させ、これにより電極プレート120から金属プレート130への伝熱を促進して電極プレート120の温度を低下させる。
【0042】
ここで本実施形態にかかる上部電極アセンブリ13においては、垂直配向部分R1を有する伝熱シート140が、電極プレート120と金属プレート130との間に挿入されている。上述したように、当該垂直配向部分R1においては複数の垂直配向グラフェン構造141aが垂直方向に沿って配向されているため、平面(水平)方向の熱伝導率と比較して垂直方向に対する熱伝導率が高くなっている。このため本実施形態においては、電極プレート120と金属プレート130の積層方向である垂直方向への伝熱が促進され、すなわち電極プレート120の温度制御を効果的に行うことができる。また、電極プレート120と金属プレート130との間に伝熱シート140を挿入する場合、所望の接圧を得るために伝熱シート140に対して荷重をかけてもよい。接圧が高いほど接触熱抵抗が減少し、より高い伝熱性を得ることができる。
【0043】
プラズマ処理を終了する際には、第1のRF生成部31aからのソースRF電力の供給及びガス供給部20からの処理ガスの供給が停止される。プラズマ処理中にバイアスRF電力を供給していた場合には、当該バイアスRF電力の供給も停止される。
【0044】
次いで、静電チャック114による基板Wの吸着保持が停止され、プラズマ処理後の基板W、及び静電チャック114の除電が行われる。その後、基板Wを静電チャック114から脱着し、プラズマ処理装置1から基板Wを搬出する。こうして一連のプラズマ処理が終了する。
【0045】
<本開示にかかる上部電極アセンブリの作用効果>
以上、本実施形態にかかる上部電極アセンブリによれば、プラズマ処理空間10sに隣接して配置される電極プレート120と、当該電極プレート120の上に積層して配置され、内部に電極プレート120の温度制御用の冷媒流路131及び加熱モジュール132を有する金属プレート130との間に、垂直配向部分R1を有する伝熱シート140を挿入する。これにより、当該垂直配向部分R1においては、垂直配向グラフェン構造141aの配向方向である垂直方向に対する伝熱が促進される。すなわち、プラズマ入熱により温度変動する電極プレート120と、冷媒流路131及び加熱モジュール132との間における伝熱性能を向上させ、適切に電極プレート120を温度制御できる。
【0046】
具体的には、本発明者らが鋭意検討を行ったところ、図7に示すように、電極プレート120と金属プレート130との間に、複数のグラファイトシート141が垂直方向に積層して構成された伝熱シート140´を挿入した場合と比較して、電極プレート120の冷却をより効果的に行うことができることを確認できた。そして、かかる電極プレート120の冷却効果は、特にプラズマ処理に際してRF電力を高出力で印加した場合においては更に高くなることがわかった。
換言すれば、垂直配向部分R1を有する伝熱シート140を電極プレート120と金属プレート130との間に挿入することで、電極プレート120の冷却効率が高まり、この結果、プラズマ処理装置において、RF電源を高出力で高速切替する場合であっても、適切に電極プレート120の冷却を行うことができる。
【0047】
また本実施形態によれば、図2に示したように、冷媒流路131と加熱モジュール132が、金属プレート130の内部において縦方向に重複しないように配置される。これにより、例えば冷媒流路131に伝熱流体を通流させて電極プレート120の冷却を行う際に、加熱モジュール132が電極プレート120と冷媒流路131との間での伝熱に干渉することが抑制される。すなわち、更に適切に電極プレート120を冷却できる。
【0048】
なお、以上の実施形態においては、上部電極アセンブリ13の電極プレート120と金属プレート130との間に挿入される伝熱シート140を、例えば複数の垂直配向グラファイトシート141を平面(水平)方向に積層して構成した。これにより伝熱シート140は、垂直方向(図4のZ方向)及び平面一方向(図4のX方向)に対する熱伝導率が、平面他方向(図4のY方向)に対する熱伝導率と比較して大きくなっている。
【0049】
ここで、プラズマ処理装置1を用いて行われる一般的なプラズマ処理においては、電極プレート120のセンター側(径方向内側)におけるプラズマ入熱が、エッジ側(径方向外側)におけるプラズマ入熱と比較して高いことが知られている。このため、プラズマ入熱に起因する電極プレート120の温度変動は、エッジ側と比較してセンター側で大きくなり、すなわちセンター側の温度がエッジ側の温度と比較して高くなる傾向にある。このため、伝熱シート140を電極プレート120と金属プレート130との間に挿入した場合、図8に示すように、伝熱シート140のセンター側からエッジ側に対する伝熱量が平面一方向(X方向)と平面他方向(Y方向)とで不均一になり、この結果、電極プレート120の冷却を特に周方向において均一に制御できなくなるおそれがある。
【0050】
そこで上部電極アセンブリ13においては、図9Aに示すように、複数の垂直配向グラファイトシート141を同心円状に配置することで垂直配向部分R1を形成した伝熱シート150を、電極プレート120と金属プレート130との間に挿入してもよい。なお、同心円状に配置された複数の垂直配向グラファイトシート141の中心には、少なくとも1つの垂直配向カーボンナノチューブ142aを有する垂直配向カーボンナノチューブシート142が配置されていてもよい。
【0051】
図9Aに示した伝熱シート150によれば、垂直方向(Z方向)及び伝熱シート150の周方向(θ方向)に対する熱伝導率が、伝熱シート150の径方向(X方向及びY方向)に対する熱伝導率と比較して大きくなっている。これにより、伝熱シート150の周方向に対する伝熱量が径方向に対する伝熱量と比較して大きくなり、この結果、電極プレート120の温度を特に周方向で均一に制御できる。
【0052】
また上部電極アセンブリ13においては、図9Bに示すように、複数の垂直配向グラファイトシート141を径方向に沿って配置、すなわち放射状に配置することで垂直配向部分R1を形成した伝熱シート160を、電極プレート120と金属プレート130との間に挿入してもよい。
【0053】
図9Bに示した伝熱シート160によれば、垂直方向(Z方向)及び伝熱シート160の径方向(X方向及びY方向)に対する熱伝導率が、伝熱シート160の周方向(θ方向)に対する熱伝導率と比較して大きくなっている。また伝熱シート160によれば、伝熱シート160のセンター側からエッジ側に対する伝熱量を、平面一方向(X方向)と平面他方向(Y方向)とで均一に制御することが可能になる。この結果、電極プレート120の温度を周方向で均一に制御できるようになるとともに、伝熱シート160のセンター側に対するプラズマ入熱をエッジ側へと処理することができ、すなわちセンター側の温度とエッジ側の温度を均一に制御することが可能になる。すなわち、電極プレート120の温度を面内均一に制御することが可能になる。
【0054】
なお、以上の実施形態においては、垂直配向部分R1のみを有する伝熱シート140を電極プレート120と金属プレート130との間に挿入する場合を例に説明を行ったが、伝熱シートの構成はこれに限定されるものではない。具体的には、冷却対象である電極プレート120の抜熱設計に応じて、垂直配向部分R1に加え、複数のグラフェン構造141aが平面(水平)方向に沿って配向された部分を更に有する伝熱シートを、電極プレート120と金属プレート130との間に挿入してもよい。なお、複数のグラフェン構造141aが平面(水平)方向に沿って配向された部分を「水平配向部分R2」(図10を参照)という場合がある。また、平面(水平)方向に沿って配向されたグラフェン構造141aが、本開示の技術に係る「水平配向グラフェン構造」を構成する。すなわち、水平配向部分R2においては、平面(水平)方向に対する熱伝導率が垂直方向に対する熱伝導率と比較して大きい。
【0055】
図10は、一実施形態にかかる、垂直配向部分R1と水平配向部分R2とをそれぞれ備えた伝熱シート170の構成の概略を示す説明図である。
【0056】
図10Aに示すように、一実施形態において伝熱シート170は、当該伝熱シート170のセンター側に配置され、平面視において略円形状に形成された垂直配向部分R1と、当該伝熱シート170のエッジ側に配置され、平面視において略環状に形成された水平配向部分R2と、を備える。換言すれば、伝熱シート170の垂直配向部分R1と水平配向部分R2は、電極プレート120と金属プレート130との間であって、且つ、互いに垂直方向における同じ高さに並べて(平面(水平)方向に並べて)配置されている。
【0057】
図10Aに示した伝熱シート170によれば、センター側の垂直配向部分R1においては垂直方向(Z方向)及び平面一方向(X方向)に対する熱伝導率が、平面他方向(Y方向)に対する熱伝導率と比較して大きくなっている。一方、エッジ側の水平配向部分R2においては、平面方向(X方向及びY方向)に対する熱伝導率が、垂直方向(Z方向)に対する熱伝導率と比較して大きくなっている。
【0058】
上述したように、プラズマ処理装置1を用いて行われる一般的なプラズマ処理においては、電極プレート120のセンター側の温度がエッジ側の温度と比較して高くなる傾向にある。そこで伝熱シート170においては、図10Aに示したように、電極プレート120の温度が相対的に高くなるセンター側に垂直方向に対する熱伝導率が大きい垂直配向部分R1を配置し、温度が相対的に低くなるエッジ側に平面(水平)方向に対する熱伝導率が大きい水平配向部分R2を配置する。これにより、電極プレート120のセンター側においては垂直方向に対する伝熱を促進させて温度を低下させるともに、電極プレート120のエッジ側においては平面(水平)方向に対する伝熱を促進させて温度の均一性を高めることができる。
【0059】
このように、上部電極アセンブリ13においては、プラズマ入熱に起因する電極プレート120の温度変動量の面内分布に応じて垂直配向部分R1と水平配向部分R2とを適宜配置することにより、適切に電極プレート120の温度制御を行うことができる。具体的には、電極プレート120の温度が相対的に高くなる部分には垂直配向部分R1を対応配置して冷却を促進させ、電極プレート120の温度が相対的に低くなる部分には水平配向部分R2を対応配置して温度の面内均一性を向上させる。かかる場合、例えば電極プレート120の温度変動量に応じて垂直配向部分R1の面積を変動させることで、電極プレート120から垂直方向への熱伝導量、すなわち電極プレート120の温度を制御することができる。
【0060】
なお、図10Aに示した例においては、複数の垂直配向グラファイトシート141を水平方向に積層することで垂直配向部分R1を形成したが、垂直配向部分R1は、図9に示したように複数のグラファイトシート141を同心円状や放射状に配置して形成してもよい。また、例えば図10Bに示すように、垂直方向に延伸する複数の垂直配向カーボンナノチューブ142aを有する垂直配向カーボンナノチューブシート142により垂直配向部分R1を形成してもよい。
【0061】
また、図10A及び図10Bに示した例においては、複数の水平配向グラファイトシート141を垂直方向に積層することで水平配向部分R2を形成したが、水平配向部分R2は、平面(水平)方向に延伸する複数の水平配向カーボンナノチューブ142aを有する水平配向カーボンナノチューブシート142により形成(図示せず)してもよい。
【0062】
なお、電極プレート120の面内温度均一性を向上させる、という観点からは、図11に示す伝熱シート180のように、側面視において垂直配向部分R1と水平配向部分R2とが積層して配置されていてもよい。換言すれば、伝熱シート180は、垂直配向部分R1に加え、電極プレート120と垂直配向部分R1との間、金属プレート130と垂直配向部分R1との間、又は垂直配向部分R1と垂直配向部分R1の間に配置された水平配向部分R2を更に有していてもよい。
【0063】
図11に示した伝熱シート180によれば、垂直方向に積層して配置された垂直配向部分R1においては、垂直方向に対する伝熱を促進することで、すなわち電極プレート120の冷却を促進する。一方、垂直方向に積層して配置された水平配向部分R2においては、平面(水平)方向に対する伝熱を促進することで、すなわち電極プレート120の面内温度均一性を向上させる。換言すれば、このように垂直配向部分R1と水平配向部分R2を多層に組み合わせることで垂直方向と平面(水平)方向のそれぞれに対する熱伝導率を高めることができ、すなわち、電極プレート120の冷却を効果的、且つ、均一に行うことができる。
【0064】
なお、電極プレート120の冷却を効果的、すなわち迅速に行うという観点からは、積層して配置される水平配向部分R2の厚みを、垂直配向部分R1の厚みと比較して可能な限り小さくすることが望ましい。
【0065】
<第2の実施形態にかかる上部電極アセンブリ>
以上の実施形態においては、上部電極アセンブリ13が、垂直方向に積層して配置される電極プレート120、伝熱シート、及び金属プレート130を備える場合を例に説明を行ったが、プラズマ処理装置1に配置される上部電極アセンブリの構成はこれに限定されるものではない。
【0066】
図12は、第2の実施形態にかかる上部電極アセンブリ200の構成の概略を示す縦断面図である。
【0067】
図12に示すように、一実施形態において上部電極アセンブリ200は、電極プレート120、金属プレート210及び他の金属プレート220を含む。電極プレート120と金属プレート210は、伝熱シート140を介して垂直方向に積層されている。また、金属プレート210と他の金属プレート220は、伝熱シート140を介して垂直方向に積層されている。換言すれば、上部電極アセンブリ200は、プラズマ処理空間10s側から電極プレート120、伝熱シート140、金属プレート210、伝熱シート140及び他の金属プレート220がこの順に積層して構成されている。
【0068】
なお、電極プレート120と金属プレート210との間に挿入される伝熱シートは、図3及び図4に示した伝熱シート140には限定されず、図8図11に示した伝熱シート150、160、170又は180から選択される少なくとも1つの伝熱シートを適宜用いることができる。また、金属プレート210と他の金属プレート220との間に挿入される伝熱シートも伝熱シート140には限定されず、伝熱シート150、160、170又は180から選択される少なくとも1つの伝熱シートを適宜用いることができる。
【0069】
また、電極プレート120と金属プレート210との間に挿入される伝熱シートと、金属プレート210と他の金属プレート220との間に挿入される伝熱シートは、それぞれ同一の構造を有していてもよいし、異なる構造を有していてもよい。
【0070】
なお、本実施形態においては、金属プレート210と他の金属プレート220との間に挿入される伝熱シートが、本開示の技術に係る「他の伝熱シート」を構成する。また、当該他の伝熱シートが有する垂直配向部分R1及び水平配向部分R2が、本開示の技術に係る「他の垂直配向部分」及び「他の水平配向部分」を構成する。同様に、これら他の垂直配向部分及び他の水平配向部分が有する各々のグラフェン構造141aが、本開示の技術に係る「他の垂直配向グラフェン構造」及び「他の水平配向グラフェン構造」を構成する。更に同様に、当該他の伝熱シートがグラファイトシート141又はカーボンナノチューブ142を有する場合においては、これらグラファイトシート141又はカーボンナノチューブ142が、本開示の技術に係る「他のグラファイトシート」及び「他のカーボンナノチューブ」を構成する。
【0071】
電極プレート120は、第1の実施形態にかかる上部電極アセンブリ13が備える電極プレート120と同様の構成を有している。すなわち、電極プレート120は上部電極として機能する導電性材料を含み、厚み方向に貫通して複数のガス導入口13aが形成されている。
【0072】
金属プレート210は電極プレート120の上に積層して配置され、当該電極プレート120の支持体として機能する。金属プレート210の内部には、少なくとも1つのガス拡散空間13bが形成されている。
また金属プレート210は、プラズマ入熱に起因して温度が変動する電極プレート120をターゲット温度に調節するように構成される、少なくとも1つの加熱モジュール211を内部に有している。加熱モジュール211は、ヒータ、伝熱媒体、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0073】
他の金属プレート220は金属プレート210の上に積層して配置され、金属プレート210と一体となって電極プレート120の支持体として機能する。他の金属プレート220には、少なくとも1つのガス供給口13cが形成されている。
また他の金属プレート220は、プラズマ入熱に起因して温度が変動する電極プレート120をターゲット温度に調節するように構成される、少なくとも1つの冷媒流路221を内部に有している。冷媒流路221には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。
【0074】
また、一実施形態において他の金属プレート220の内部に形成された冷媒流路221と、金属プレート210の内部に設けられた加熱モジュール211は、縦方向に(平面視において)に重複しないように配置されている。
【0075】
電極プレート120と金属プレート210との間に挿入される伝熱シート、又は、金属プレート210と他の金属プレート220との間に挿入される伝熱シートとしては、上述したように、電極プレート120の温度制御に係る抜熱設計に応じて、任意の構成を選択できる。すなわち、電極プレート120、金属プレート210及び他の金属プレート220の各々の間に挿入される伝熱シートは、垂直配向部分R1のみを有していてもよいし、水平配向部分R2を更に有していてもよい。また、これら垂直配向部分R1と水平配向部分R2の配置は任意に選択することができる。
【0076】
第2の実施形態にかかる上部電極アセンブリ200は以上のように構成されている。このように、上部電極アセンブリに複数の金属プレートを積層して設ける場合であっても、各々の金属プレートの界面に本開示の技術にかかる伝熱シートを配置することで、電極プレート120の温度制御を適切に行うことができる。
【0077】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0078】
例えば、以上の実施形態においては上部電極アセンブリを構成する電極プレートと金属プレートとの間に、積層方向に配向する複数のグラフェン構造を有する伝熱シートを挿入する場合を例に説明を行った。しかしながら、かかる伝熱シートを用いて構成される部材は上部電極アセンブリに限定されるものではなく、効果的な熱処理が求められる任意の部材に、かかる伝熱シートが用いられてもよい。具体的には、例えば基板支持部11において基台113と静電チャック114との間に挿入するために、かかる伝熱シートを用いることができる。
【符号の説明】
【0079】
10s プラズマ処理空間
13 上部電極アセンブリ
120 電極プレート
130 金属プレート
140 伝熱シート
141a グラフェン構造
R1 垂直配向部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12