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特許7583770蒸発した材料を堆積させるための蒸発源、及び蒸発した材料を堆積させるための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】蒸発した材料を堆積させるための蒸発源、及び蒸発した材料を堆積させるための方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20241107BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20241107BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20241107BHJP
【FI】
C23C14/24 A
H05B33/10
H05B33/14 A
【請求項の数】 21
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022148698
(22)【出願日】2022-09-20
(62)【分割の表示】P 2019216101の分割
【原出願日】2016-05-10
(65)【公開番号】P2023002518
(43)【公開日】2023-01-10
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ディエゲス-カンポ, ホセ マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】バンゲルト, シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ヴルスター, ハーラルト
(72)【発明者】
【氏名】ロップ, アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ハース, ディータ
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-032579(JP,A)
【文献】特開2009-228091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/24
H05B 33/10
H10K 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に蒸発した原料物質を堆積させるための蒸発源(20)であって、
複数のノズル(22)を有する2つ以上の分配管(106)、及び
複数の開孔(32)を備えた遮蔽デバイス(30)であって、前記複数の開孔(32)のうちの少なくとも1つの開孔が、単一の関連付けられたノズルから放出された蒸発した原料物質のプルーム(318)を個別に形作るように構成された、遮蔽デバイス(30)を備え、
前記遮蔽デバイス(30)が、ネジを介して前記分配管(106)のうちの少なくとも1つに着脱可能に固定され
第1の分配管の前記ノズルの第1主放出方向が、第2の分配管の前記ノズルの第2主放出方向に対して傾斜している、蒸発源。
【請求項2】
前記遮蔽デバイス(30)が、前記2つ以上の分配管(106)のうちの1つの分配管に固定された複数の分離した遮蔽ユニット(60)を備え、かつ前記複数の分離した遮蔽ユニット(60)の各分離した遮蔽ユニットは前記複数の開孔(32)のうちの少なくとも1つの開孔を有する、請求項1に記載の蒸発源。
【請求項3】
前記少なくとも1つの開孔が、壁(34)によって少なくとも部分的に取り囲まれた通路として構成され、前記壁(34)が、第1の断面内で、主たる放出方向(X)に対して第1の最大放出角度(θ)よりも大きい放出角度を有するプルーム(318)の前記蒸発した原料物質を遮断するように構成されている、請求項1または2に記載の蒸発源。
【請求項4】
前記壁(34)が、前記第1の断面と垂直な第2の断面内で、前記主たる放出方向(X)に対して第2の最大放出角度(β)よりも大きい放出角度を有するプルーム(318)の前記蒸発した原料物質を遮断するように構成されている、請求項3に記載の蒸発源。
【請求項5】
前記第1の断面が水平面であり、前記第1の最大放出角度(θ)が10度から45度までの角度である、請求項3に記載の蒸発源。
【請求項6】
前記第2の断面が鉛直面であり、前記第2の最大放出角度が15度から60度までの角度である、請求項4に記載の蒸発源。
【請求項7】
各ノズルの出口が、前記遮蔽デバイス(30)の中へ少なくとも部分的に突出する、請求項1から6のいずれか一項に記載の蒸発源。
【請求項8】
前記少なくとも1つの開孔が、壁(34)によって少なくとも部分的に取り囲まれた前記プルーム(318)のための通路として構成され、主たる放出方向(X)における前記壁の長さが、周方向において変動する、請求項1から7のいずれか一項に記載の蒸発源。
【請求項9】
前記壁(34)の長さが、前記第1の断面における第1の長さ(T1)から前記第2の断面における第2の長さ(T2)へ連続的に変動する、請求項に記載の蒸発源。
【請求項10】
前記少なくとも1つの開孔が、丸い通路として、円形状の通路として、又は卵型の通路として構成されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の蒸発源。
【請求項11】
前記遮蔽デバイス(30)が、複数の分離した遮蔽ユニット(60)を備え、かつ前記複数の分離した遮蔽ユニット(60)のうちの少なくとも1つの遮蔽ユニットが、直線的な配置で支持構造体によって連結された、前記複数の開孔(32)のうちの2つ、3つ、4つ、又は5つ以上の開孔を備える、請求項1に記載の蒸発源。
【請求項12】
前記遮蔽デバイス(30)が、複数の分離した遮蔽ユニット(60)を備え、かつ前記複数の分離した遮蔽ユニット(60)がそれぞれ、前記2つ以上の分配管(106)のうちの単一の分配管に連結されて、それぞれが前記単一の分配管の長さ方向において、前記単一の分配管の熱膨張及び収縮に従う、請求項1に記載の蒸発源。
【請求項13】
前記以上の分配管(106)が互いに隣接して配置され、前記遮蔽デバイス(30)の複数の分離した遮蔽ユニット(60)の各遮蔽ユニットが、前記2つ以上の分配管のうちの単一の分配管に機械的に固定され、かつ、前記複数のノズル(22)のうちの1つ以上の隣接するノズルの前記蒸発した原料物質のプルームを個別に形作るために、前記複数の開孔(32)のうちの1つ以上の開孔を備える、請求項1に記載の蒸発源。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の蒸発源において、
前記第1の分配管の前記ノズルの前記第1主放出方向が、前記第2の分配管の前記ノズルの前記第2主放出方向および第3の分配管の前記ノズルの第3主放出方向に対して傾斜している、蒸発源。
【請求項15】
基板上に蒸発した原料物質を堆積させるための蒸発源(20)であって、
複数のノズル(22)を有する2つ以上の分配管(106)、及び
複数の開孔(32)を備えた遮蔽デバイス(30)であって、前記複数の開孔(32)のうちの少なくとも1つの開孔が、単一の関連付けられたノズルから放出された蒸発した原料物質のプルーム(318)を個別に形作るように構成された、遮蔽デバイス(30)を備え、
前記遮蔽デバイス(30)が、ネジを介して少なくとも1つの前記分配管(106)に着脱可能に固定され、
1の分配管は主材料を堆積させるように構成され、第2の分配管はドーパントを堆積させるように構成されている、蒸発源。
【請求項16】
請求項2に記載の蒸発源であって、
前記遮蔽デバイス(30)の前記複数の分離した遮蔽ユニットのうちの1つの遮蔽ユニット(60)の、前記分配管の長さ方向における長さが20cm以下である、蒸発源。
【請求項17】
請求項2に記載の蒸発源であって、
前記複数の分離した遮蔽ユニットの各遮蔽ユニットは、当該遮蔽ユニットを前記分配管にネジを介して固定するための1つ以上の孔を有する支持構造体(612)を備える、蒸発源。
【請求項18】
前記支持構造体は、2つの開孔の間に設けられた1つ以上の孔を含む、請求項17に記載の蒸発源。
【請求項19】
基板(10)上に蒸発した原料物質を堆積させるための、請求項1から18のいずれか一項に記載の蒸発源(20)のための遮蔽デバイス(30)であって、前記遮蔽デバイス(30)が、
複数の分離した遮蔽ユニット(60)を備え、各遮蔽ユニットが、壁(34)によって少なくとも部分的に取り囲まれた通路として構成された1以上の開孔を備え、各開孔が、前記蒸発源の単一の関連付けられたノズルから放出された蒸発した原料物質のプルーム(318)を個別に形作るように構成されており、
前記遮蔽デバイス(30)が、ネジを介して前記蒸発源(20)の分配管(106)に着脱可能に固定された複数の分離した遮蔽ユニット(60)を備える、遮蔽デバイス。
【請求項20】
真空チャンバ内の基板(10)上に蒸発した原料物質を堆積させるための方法であって、
蒸発源(20)の1以上の分配管(106)の複数のノズル(22)であって、各々が前記基板(10)に向けて伝播する蒸発した原料物質のプルームを生成する、複数のノズル(22)を通して蒸発した原料物質を誘導すること、及び
遮蔽デバイス(30)の複数の開孔(32)によって、前記蒸発した原料物質のプルームを個々に形作ることを含み、
前記遮蔽デバイス(30)が、前記1以上の分配管(106)のうちの1つの分配管にネジを介して着脱可能に固定された複数の遮蔽ユニット(60)を備え
前記1以上の分配管(106)は2つ以上の分配管(106)であり、第1の分配管が主材料を堆積させ、第2の分配管がドーパントを堆積させる、方法。
【請求項21】
真空チャンバ内の基板(10)上に蒸発した原料物質を堆積させるための方法であって、
蒸発源(20)の1つ以上の分配管(106)の複数のノズル(22)であって、各々が前記基板(10)に向けて伝播する蒸発した原料物質のプルームを生成する、複数のノズル(22)を通して蒸発した原料物質を誘導すること、及び
遮蔽デバイス(30)の複数の開孔(32)によって、前記蒸発した原料物質のプルームを個々に形作ることを含み、
前記遮蔽デバイス(30)が、前記1つ以上の分配管(106)のうちの第1の分配管にネジを介して着脱可能に固定された複数の遮蔽ユニット(60)を備え、
前記第1の分配管の前記ノズルの第1主放出方向が、第2の分配管の前記ノズルの第2主放出方向に対して傾斜している、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、基板上への材料の堆積、及び基板上に例えば有機材料などの材料を堆積させるための装置に関する。本開示の実施形態は、特に、基板上に例えば有機材料などの蒸発した材料を堆積させるための蒸発源に関する。更なる実施形態は、蒸発源のための遮蔽デバイスに関し、更に、基板上に例えば有機材料などの材料を堆積させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機蒸発器は、有機発光ダイオード(OLED)の製造のためのツールである。OLEDは、特殊な発光ダイオードであり、その中で発光層がある有機化合物の薄膜を含んでいる。有機発光ダイオード(OLED)は、情報を表示するためのテレビ画面、コンピュータモニタ、携帯電話、及び他の携帯型デバイスの製造において使用される。OLEDは、一般的な空間照明にも使用することができる。OLEDピクセルが直接発光し、バックライトを必要としないので、OLEDディスプレイで可能な色、輝度、及び視野角の範囲は、従来のLCDディスプレイの範囲よりも広い。したがって、OLEDディスプレイのエネルギー消費は、従来のLCDディスプレイのエネルギー消費よりもかなり少ない。更に、OLEDをフレキシブル基板上に製造することができるという事実により、更なる用途が得られる。例えば、典型的なOLEDディスプレイは、個別に通電可能なピクセルを有するマトリクスディスプレイパネルを形成するように全て基板上に堆積される、2つの電極の間に配置された有機材料の層を含み得る。OLEDは、一般的に、2つのガラスパネルの間に置かれ、OLEDをその中に封入するためにガラスパネルの端部が密閉される。
【0003】
このようなディスプレイデバイスを製造する際には、多くの課題に遭遇することになる。OLEDディスプレイ又はOLED照明アプリケーションは、例えば、真空の中で蒸発する、幾つかの有機材料のスタックを含む。有機材料は、シャドーマスクを通して、続けて堆積される。OLEDスタックを効率良く製造するためには、混合層/ドープ層が生じるように、2つ以上の材料(例えば、ホスト及びドーパント)を共堆積又は共蒸発することが望ましい。更に、非常に繊細な有機材料の蒸発には、幾つかの工程条件があることを考慮しなければならない。
【0004】
材料を基板上に堆積させるために、材料は、材料が蒸発するまで加熱される。分配管は、蒸発した材料をノズルを通して基板へ誘導する。最近では、堆積工程の精度が上がり、例えば、非常に小さいピクセルサイズを提供することができるようになっている。ある工程では、蒸発した材料がマスク開口部を通過するときに、マスクがピクセルを画定するように使用される。しかし、マスクのシャドーイング効果、蒸発した材料の広がりなどが、蒸発工程の精度と予測可能性を更に高めることを難しくしている。
【0005】
上述のことに照らしてみると、高い品質と精度を有するデバイスを製造するために、蒸発工程の精度と予測可能性を高めることが有益である。
【発明の概要】
【0006】
上述したことに照らしてみると、蒸発源、蒸発源のための遮蔽デバイス、更に、基板上に蒸発した原料物質を堆積させるための方法が提供される。
【0007】
本開示の一態様によれば、基板上に蒸発した原料物質を堆積させるための蒸発源が提供される。蒸発源は、複数のノズルを有する1以上の分配管であって、複数のノズルの各ノズルが蒸発した原料物質のプルーム(plume)を基板へ向けるように構成された、分配管、及び複数の開孔を備えた遮蔽デバイスであって、複数の開孔のうちの少なくとも1つの開孔が、単一の関連付けられたノズルから放出された蒸発した原料物質のプルームを形作るように構成された、遮蔽デバイスを備える。
【0008】
ある実施形態では、複数の開孔の各開孔が、複数のノズルの単一の関連付けられたノズルから放出された蒸発した原料物質のプルームを個別に形作るように構成されている。
【0009】
本開示の更なる一態様によれば、基板上に蒸発した原料物質を堆積させるための蒸発源のための遮蔽デバイスが提供される。遮蔽デバイスは、複数の分離した遮蔽ユニットであって、各遮蔽ユニットが、それぞれ、円周壁によって取り囲まれた通路として構成された1以上の開孔を備え、1以上の開孔の各開孔が、蒸発源の単一の関連付けられたノズルから放出された蒸発した原料物質のプルームを個別に形作るように構成された、遮蔽ユニットを備える。
【0010】
本開示の更なる一態様によれば、真空チャンバ内の基板上に蒸発した原料物質を堆積させるための方法が提供される。該方法は、蒸発した原料物質を蒸発源の複数のノズルであって、各々が基板に向けて伝播する蒸発した原料物質のプルームを生成する、複数のノズルを通して誘導すること、及び遮蔽デバイスの複数の開孔によって蒸発した原料物質のプルームを個別に形作ることを含む。
【0011】
本開示の更なる態様、利点、及び特徴は、明細書及び添付の図面から明らかとなる。
【0012】
本開示の上記の特徴を詳細に理解することができるように、実施形態を参照することによって、上で簡単に概説した本開示のより具体的な説明を得ることができる。添付の図面は、本開示の実施形態に関し、以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本明細書で説明される実施形態による、蒸発源を含む堆積装置の概略的な上面図を示す。
図2A】本明細書で説明される実施形態による、蒸発源の一部分の概略図を示す。
図2B】本明細書で説明される実施形態による、蒸発源の一部分の概略図を示す。
図2C】本明細書で説明される実施形態による、蒸発源の一部分の概略図を示す。
図3】本明細書で説明される実施形態による、蒸発源の概略的な上面図を示す。
図4】本明細書で説明される実施形態による、3つの分配管を有する蒸発源の概略的な上面図を示す。
図5】本明細書で説明される実施形態による、蒸発源の概略的な断面図を示す。
図6】本明細書で説明される実施形態による、遮蔽デバイスの斜視図である。
図7】本明細書で説明される実施形態による、遮蔽デバイスの斜視図である。
図8A】本明細書で説明される実施形態による、蒸発源を有する堆積装置の動作中の2つの連続するフェーズのうちの1つの概略図である。
図8B】本明細書で説明される実施形態による、蒸発源を有する堆積装置の動作中の2つの連続するフェーズのうちの1つの概略図である。
図9】本明細書で説明される実施形態による、基板上に蒸発した原料物質を堆積させるための方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本開示の様々な実施形態が詳細に参照され、それらのうち1以上の実施例が図面で示される。図面についての以下の説明の中で、同じ参照番号は同じ構成要素を指す。概して、個々の実施形態に関しての相違のみが説明される。各実施例は、説明のために提供され、本開示の限定を意味しない。更に、一実施形態の部分として図示され且つ説明される特徴は、他の実施形態で用いてもよく、或いは、他の実施形態と併せて用いられてもよい。それにより、更に別の実施形態が生み出される。本明細書は、このような修正及び改変を含むことが意図されている。
【0015】
本明細書で使用される際に、「原料物質」という用語は、蒸発し基板の表面上に堆積する材料として理解され得る。例えば、本明細書で説明される実施形態では、基板の表面上に堆積される蒸発した有機材料が、原料物質であり得る。有機材料の非限定的な例は、以下のもののうちの1以上を含む。すなわち、ITO、NPD、Alq、キナクリドン、Mg/AG、スターバースト材料などである。
【0016】
本明細書で使用される際に、「蒸発源」という用語は、基板上に堆積されるべき蒸発した原料物質を提供する構成として理解され得る。特に、蒸発源は、堆積装置の真空堆積チャンバなどの、真空チャンバ内の堆積領域の中へ、基板上に堆積されるべき蒸発した原料物質を向けるように構成され得る。蒸発した原料物質は、蒸発源の複数のノズルを介して基板に向けられ得る。ノズルは、それぞれ、ノズル出口を有し、ノズル出口は、堆積領域に向けられ、特に、被覆されるべき基板に向けられ得る。
【0017】
蒸発源は、基板上に堆積されるべき原料物質を蒸発させる蒸発器又は坩堝、及び分配管を含み得る。分配管は、坩堝と流体連通し、堆積領域の中へ蒸発した原料物質を放出するための複数のノズルへ、蒸発した原料物質を搬送するように構成されている。
【0018】
ある実施形態では、蒸発源が、2以上の分配管を含み、各分配管が、単一のノズルを有する。ある実施形態では、蒸発源が、2以上の分配管を含み、各分配管が、複数のノズルを有する。ある実施形態では、分配管が、1以上のノズル、特に、10以上のノズルを含む。ある実施形態では、蒸発源が、互いに隣り合って配置された2以上の分配管を含み、2以上の分配管の各々が、10以上のノズルを含む。
【0019】
本明細書で使用される際に、「坩堝」という用語は、堆積されるべき原料物質を提供する又は含む、デバイス又は容器として理解され得る。通常、坩堝は、基板上に堆積されるべき原料物質を蒸発させるために加熱され得る。本明細書の実施形態によれば、坩堝は、それに対して蒸発した原料物質が運ばれ得るところの分配管と流体連通し得る。
【0020】
本明細書で使用される際に、「分配管」という用語は、蒸発した原料物質を誘導し供給するためのパイプとして理解され得る。特に、分配管は、蒸発した原料物質を坩堝から分配管内の複数のノズルへ誘導し得る。本明細書で使用される際に、「複数のノズル」という用語は、通常、2以上のノズルを含み、各ノズルは、主たる放出方向に沿って、基板に向けて蒸発した原料物質を放出するためのノズル出口を含む。本明細書で説明される実施形態によれば、分配管は、特に、鉛直方向において、第1の殊に長手方向に延在する直線的な分配管であり得る。ある実施形態では、分配管が、円筒形状を有するパイプを含み得る。円筒は、円状の底形状又は任意の他の適切な底形状を有し得る。分配管の実施例は、以下でより詳細に説明される。ある実施形態では、蒸発源が、2つ又は3つの分配管を含み得る。ある実施形態では、異なる材料が基板上に堆積され得るように、各分配管が坩堝と流体連通している。
【0021】
図1は、本明細書で説明される実施形態による、蒸発源20を含む堆積装置100の概略的な上面図を示している。堆積装置100は、蒸発源20が配置される真空チャンバ110を含む。本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る、ある実施形態によれば、蒸発源20は、被覆されるべき基板の表面に沿って並進運動するように構成されている。更に、蒸発源20は、回転軸の周りで回転するように構成され得る。
【0022】
実施形態によれば、蒸発源20は、1以上の蒸発坩堝と1以上の分配管を有し得る。例えば、図1で示される蒸発源20は、2つの蒸発坩堝104と2つの分配管106を含む。図1で示されているように、基板10と更なる基板11が、蒸発した原料物質を受けるために真空チャンバ110内に設けられている。
【0023】
本明細書のある実施形態によれば、基板をマスキングするためのマスクアセンブリが、基板と蒸発源との間に設けられ得る。マスクアセンブリは、マスク、及びマスクを所定の位置に保持するためのマスクフレームを含み得る。本明細書の実施形態では、1以上の更なる軌道が、マスクアセンブリを支持し配置するために設けられていてもよい。例えば、図1で示される実施形態は、蒸発源20と基板10との間に配置された第1のマスクフレーム131によって支持された第1のマスク133と、蒸発源20と更なる基板11との間に配置された第2のマスクフレーム132によって支持された第2のマスク134とを有する。基板10と更なる基板11は、真空チャンバ110内の(図1では示されていない)それぞれの移送軌道上に配置され得る。
【0024】
図1は、遮蔽デバイス30を更に示している。以下でより詳細に説明されるように、遮蔽デバイス30は、蒸発した原料物質を、分配管106から、それぞれ、基板10及び/又は更なる基板11へ誘導するように設けられている。遮蔽デバイス30は、ノズルから下流に、すなわち、分配管と基板との間に設けられ得る。ある実施形態では、遮蔽デバイス30が、例えば、ねじを介して、少なくとも1つの分配管に着脱可能に固定され得る。
【0025】
本明細書の実施形態では、OLED製造システムなどにおいて、基板上に材料を堆積させるためにマスクが使用されるならば、マスクは、約30μm以下又は約20μmの断面の寸法(例えば、断面の最小寸法)を有するピクセル開口部などの、約50μm×50μm以下のサイズを有するピクセル開口部を有するピクセルマスクであり得る。一実施例では、ピクセルマスクが、約40μmの厚さを有し得る。マスクの厚さとピクセル開口部のサイズを考慮すると、シャドーイング効果が現れ得る。シャドーイング効果によって、マスク内のピクセル開口部の壁が、ピクセル開口部を影で覆う。本明細書で説明される遮蔽デバイス30は、マスク上への及び基板上への蒸発した原料物質の衝突の最大角度を限定し、シャドーイング効果を低減させ得る。
【0026】
本明細書で説明される実施形態によれば、遮蔽デバイス30の材料が、約100°Cから約600°Cの温度を有する蒸発した原料物質に対して適合され得る。ある実施形態では、遮蔽デバイスが、21W/(m・K)よりも大きい熱伝導率を有する材料、及び/又は例えば蒸発した有機材料に対して化学的に不活性な材料を含み得る。ある実施形態によれば、遮蔽デバイスが、Cu、Ta、Ti、Nb、DLC、及びグラファイトのうちの少なくとも1つを含み、又は挙げられた材料のうちの少なくとも1つを用いた被覆を含み得る。
【0027】
本明細書で説明される実施形態によれば、基板は、実質的に鉛直位置において原料物質を用いて被覆され得る。通常、分配管106は、本質的に鉛直に延在する線源として構成されている。本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る、本明細書で説明される実施形態では、「鉛直」という用語が、特に、基板の配向に対して言及するときに、鉛直方向から20度以下、例えば、10度以下の偏差を許容すると理解される。例えば、鉛直方向からの幾らかの偏差を有する基板支持体がより安定した基板位置をもたらし得るので、この偏差が提供され得る。しかし、原料物質の堆積中の本質的に鉛直な基板の配向は、水平な基板の配向とは異なると考えられる。基板の表面は、一方の基板寸法に対応する1つの方向に延びる線源、及び他方の基板寸法に対応する他方の方向に沿った並進運動によって被覆される。
【0028】
ある実施形態では、蒸発源20が、軌道、例えば、(図面では示されていない)環状軌道又は直線的なガイド120上において、堆積装置100の真空チャンバ110内に設けられ得る。軌道又は直線的なガイド120は、蒸発源20の並進移動のために構成されている。本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る、種々の実施形態によれば、並進運動のためのドライブが、真空チャンバ110又はそれらの組み合わせの範囲内で、トラック又は直線的なガイド120において、蒸発源20内に設けられ得る。したがって、蒸発源は、堆積中に被覆されるべき基板の表面に沿って、特に、直線的な経路に沿って移動され得る。基板上に堆積される材料の均一性が改良され得る。
【0029】
図1は、バルブ105、例えば、ゲートバルブを更に示している。バルブ105は、(図1では示されていない)隣接する真空チャンバに対する真空密封を可能にする。本明細書で説明される実施形態によれば、バルブ105は、基板又はマスクの真空チャンバ110の中への及び/又は真空チャンバ110からの移送のために開かれ得る。
【0030】
本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る、ある実施形態によれば、保守真空チャンバ111などの更なる真空チャンバが、真空チャンバ110に隣接して設けられている。通常、真空チャンバ110と保守真空チャンバ111は、バルブ109で連結され得る。バルブ109は、真空チャンバ110と保守真空チャンバ111との間の真空密封を開閉するように構成されている。本明細書の実施形態によれば、蒸発源20は、バルブ109が開放状態にある間、保守真空チャンバ111に移送することができる。その後、バルブは、真空チャンバ110と保守真空チャンバ111との間に真空密封を提供するよう閉じることができる。バルブ109が閉鎖されたならば、保守真空チャンバ111は、真空チャンバ110内の真空を破壊せずに、蒸発源20の保守のために通気及び開放することができる。
【0031】
堆積装置は、処理方法を含むOLEDデバイス製造のための用途を含む、様々な用途のために使用され得る。例えば、2以上の有機材料などの2以上の原料物質が、同時に蒸発される。図1で示された実施例では、2つの分配管106と対応する蒸発坩堝とが、互いに隣り合って設けられている。例えば、ある実施形態では、3つの分配管が、互いに隣り合って設けられ得る。各分配管は、それぞれの分配管の内部から真空チャンバの堆積領域の中へ蒸発した原料物質を導入するための、それぞれのノズル出口を有する複数のノズルを含む。ノズルは、それぞれの分配管の直線的な延在方向に沿って、例えば、等しい間隔で設けられ得る。各分配管は、真空チャンバの堆積領域の中へ異なる蒸発した原料物質を導入するように構成され得る。
【0032】
図1で示された実施形態は、移動可能な蒸発源20を有する堆積装置100を提供するが、当業者であれば、上述の実施形態は、処理中に基板が移動する堆積システムにも適用され得ることが理解できるだろう。例えば、被覆されるべき基板は、静止した材料堆積構成に沿って誘導され、駆動され得る。
【0033】
本明細書で説明される実施形態は、特に、例えば、大きい面積の基板上でのOLEDディスプレイ製造のための、有機材料の堆積に関する。ある実施形態によれば、大きい面積の基板又は1以上の基板を支持するキャリアは、少なくとも0.174m2のサイズを有し得る。例えば、堆積システムは、約1.4mの基板(1.1m×1.3m)に対応するGEN5、約4.29mの基板(1.95m×2.2m)に対応するGEN7.5、約5.7mの基板(2.2m×2.5m)に対応するGEN8.5、又は更に約8.7mの基板(2.85m×3.05m)に対応するGEN10の基板などの大きい面積の基板を処理するように適合され得る。GEN11及びGEN12のような更に次の世代、並びにそれに相当する基板面積を同様に実装することができる。
【0034】
本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る、本明細書の実施形態によれば、基板の厚さは、0.1から1.8mmであり、この基板のための保持構成は、そのような基板の厚さに適合され得る。基板の厚さは、0.5mm又は0.3mmなどの、約0.9mm以下であり、保持構成は、そのような基板の厚さに適合され得る。通常、基板は、材料堆積に適した任意の材料から作られ得る。例えば、基板は、堆積プロセスによって被覆できる、ガラス(例えば、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラスなど)、金属、ポリマー、セラミック、複合材料、炭素繊維材料、若しくは任意の他の材料、又は材料の組合せから成る群から選択された材料から作られてもよい。
【0035】
本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る、ある実施形態によれば、堆積装置100は、遮蔽壁として構成され得る材料収集ユニット40を更に含み得る。特に、回転軸の周りでの蒸発源20の回転中に、蒸発源が回転された位置あるときに、材料収集ユニット40は、蒸発源から及び/又は遮蔽デバイス30から放出された蒸発した原料物質を収集するように構成され得る。
【0036】
ある実施形態では、加熱デバイス50が、堆積装置100のサービス位置にある遮蔽デバイスを洗浄するために設けられ得る。サービス位置は、蒸発源のノズルが被覆されるべき基板に向けられるところの堆積装置の堆積位置と比較して、蒸発源が回転された位置にあるところの堆積装置の位置であり得る。
【0037】
図2Aから図2Cは、本明細書で説明される実施形態による、蒸発源20の部分を示している。図2Aで示されているように、蒸発源20は、分配管106と蒸発坩堝104を含み得る。例えば、分配管は、加熱ユニット225を有する細長い立方体とすることができる。蒸発坩堝は、加熱ユニット225を用いて蒸発されるべき有機材料などの、原料物質のための容器であり得る。
【0038】
本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る、実施形態によれば、複数のノズル22が、蒸発源20の長さ方向に沿って配置され得る。特に、複数のノズルは、分配管の長さ方向に沿って配置され得る。
【0039】
本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る、ある実施形態によれば、分配管106は、長さ方向において本質的に鉛直に延在する。例えば、分配管106の長さは、少なくとも堆積装置の中で堆積される基板の高さに対応する。多くの場合では、分配管106の長さが、堆積されるべき基板の高さよりも、少なくとも10%又は更に20%だけ長くなる。それは、基盤の上端及び/又は基板の下端における均一な堆積を可能にする。
【0040】
本明細書で説明される他の実施形態と組み合わせ得る、ある実施形態によれば、分配管の長さは、1.3m以上、例えば、2.5m以上であり得る。図2Aで示されているように、一構成によれば、蒸発坩堝104は、分配管106の下端において設けられている。通常、原料物質は、蒸発坩堝104の中で蒸発する。蒸発した原料物質は、分配管105の底に入り、分配管内の複数の出口を通して本質的に側方に、例えば、本質的に鉛直に方向付けられた基板に向けて誘導される。
【0041】
本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る、ある実施形態によれば、ノズル出口が本質的に水平(+/-20度)である主たる放出方向Xを規定するように、複数のノズルが配置されている。ある特定の実施形態によれば、主たる放出方向Xは、僅かに上方に(例えば、3度から7度上方になど、水平から15度までの範囲内で上方に)方向付けられていてもよい。同様に、粒子の発生を低減させ得るように、蒸発方向に対して実質的に垂直となるように基盤を僅かに傾斜させてもよい。例示目的で、蒸発坩堝104及び分配管106が、熱シールドを含まない状態で図2Aに示されている。加熱ユニット215及び加熱ユニット225は、図2Bで示されている概略的な斜視図において見ることができる。
【0042】
図2Bは、特に、蒸発坩堝104に連結された分配管106の蒸発源の一部分の拡大された概略図を示している。蒸発坩堝104と分配管106との間の連結を提供するように構成された、フランジユニット203が設けられている。例えば、蒸発坩堝及び分配管が、例えば、蒸発源の動作のために、フランジユニットで分離及び連結又は組み立てできる別個のユニットとして提供されている。
【0043】
分配管106は、内部空洞210を有する。加熱ユニット215は、分配管を加熱するために設けられている。蒸発坩堝104によって提供された蒸発した原料物質が、分配管106の壁の内側部分において凝縮しないような温度まで、分配管106を加熱することができる。2つ以上の熱シールド217が、分配管106の管周囲に設けられている。熱シールドは、加熱ユニット215によって提供された熱エネルギーを、空洞210に向けて反射し返すように構成されている。熱シールド217が熱損失を低減させるので、分配管106を加熱するのに必要なエネルギー、すなわち、加熱ユニット215に提供されるエネルギーを、減らすことができる。他の分配管及び/又はマスク若しくは基板への熱伝達を減らすことができる。本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る、ある実施形態によれば、熱シールド217は、2つ以上の熱シールド層、例えば、10の熱シールド層などの、5つ以上の熱シールド層を含むことができる。
【0044】
通常、図2Bで示されるように、熱シールド217は、分配管106内のノズルの位置において開口部を含む。図2Bで示されている蒸発源の拡大図は、(概略的に出口として描かれている)4つのノズルを示している。ノズルは、分配管106の長さ方向に沿って設けられ得る。本明細書で説明されるように、分配管106は、例えば、複数のノズルを有する、直線的な分配管として設けられ得る。例えば、分配管は、分配管の長さ方向に沿って配置された40、50、又は54のノズルなどの、30を上回るノズルを有していてもよい。本明細書の実施形態によれば、ノズルは、互いから間隔を空けられ得る。例えば、ノズルは、1cm以上の距離、例えば、1cmから3cmまでの距離、例えば、2cmの距離によって間隔を空けられ得る。
【0045】
動作中に、分配管106は、フランジユニット203において蒸発坩堝104に連結されている。蒸発坩堝104は、蒸発されるべき原料物質を受け入れ、原料物質を蒸発させるように構成されている。図2Bは、蒸発坩堝104のハウジングを通る断面図を示している。例えば、蒸発坩堝の上側部分において、蒸発坩堝104の筐体を閉じるためのプラグ222、蓋、カバーなどを使用して閉じられ得る、リフィル開口部が設けられている。
【0046】
外側加熱ユニット225が、蒸発坩堝104の筐体内に設けられている。外側加熱ユニット225は、蒸発坩堝104の壁の少なくとも一部分に沿って延在し得る。本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る、ある実施形態によれば、更に又は代替的に、1以上の中央加熱要素が設けられ得る。図2Bは、2つの中央加熱要素226、228を示している。第1の中央加熱要素226と第2の中央加熱要素228は、それぞれ、中央加熱要素226、228に電力を供給するための第1の導体229と第2の導体230を含み得る。
【0047】
蒸発坩堝内の原料物質の加熱効率を高めるために、蒸発坩堝104は、外側加熱ユニット225によって、もし存在するならば、中央加熱要素226、228によって、提供された熱エネルギーを、蒸発坩堝104の筐体の中へ反射し返すように構成された、熱シールド227を更に含み得る。
【0048】
ある実施形態によれば、熱シールド217及び熱シールド227などの熱シールドが、蒸発源に対して設けられ得る。熱シールドは、蒸発源からのエネルギー損失を低減させ得る。それは、原料物質を蒸発させるために蒸発源によって消費される全体のエネルギーも低減させる。更なる一態様として、特に、有機材料の堆積について、蒸発源から発した熱放射、殊に、堆積中のマスクと基板に向けられた熱放射が低減され得る。特に、マスクされた基板上での有機材料の堆積について、更には、ディスプレイ製造について、基板及びマスクの温度は、正確に制御される必要がある。蒸発源から発した熱放射は、例えば、熱シールド217及び熱シールド227などの、熱シールドによって低減され又は避けられ得る。
【0049】
これらのシールドは、蒸発源20の外側への熱放射を低減させるための幾つかのシールド層を含むことができる。更なる選択肢として、熱シールドは、空気、窒素、水又は他の適切な冷却流体などの流体によって能動的に冷却されるシールド層を含み得る。本明細書で説明されるまた更なる実施形態によれば、1以上の熱シールドは、蒸発源のそれぞれの部分を取り囲む、例えば、分配管106及び/又は蒸発坩堝104を取り囲む、金属板を含むことができる。本明細書の実施形態によれば、例えば、金属板は、0.1mmから3mmの厚さを有することができ、鉄合金(SS)及び非鉄金属(Cu、Ti、Al)から成る群から選択された少なくとも1つの材料から選択されることができ、及び/又は、例えば、0.1mm以上の間隙によって、互いに間隔が空けられ得る。
【0050】
本明細書で説明される、ある実施形態によれば、図2A及び図2Bで例示的に示されているように、蒸発坩堝104が、分配管106の下側に設けられている。本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る、また更なる実施形態によれば、分配管106の中央部分において、又は分配管の下端と分配管の上端との間の別の位置において、蒸気導管242が設けられてもよい。
【0051】
図2Cは、分配管106と分配管の中央部分において設けられた蒸気導管242とを有する、蒸発源20の一実施例を示している。蒸発坩堝104内で生成された蒸発した原料物質は、蒸気導管242を通して分配管106の中央部分へ誘導される。蒸発した原料物質は、複数のノズル22を通って分配管106を出て行く。分配管106は、支持体102によって支持され得る。本明細書のまた更なる実施形態によれば、2つ以上の蒸気導管242が、分配管106の長さに沿った種々の位置において設けられ得る。蒸気導管242は、1つの蒸発坩堝に連結されていてもよく、又は幾つかの蒸発坩堝に連結されていてもよい。例えば、各蒸気導管242は、それに対応する蒸発坩堝を有し得る。代替的には、蒸発坩堝104が、分配管106に連結されている2つ以上の蒸気導管242と流体連通し得る。
【0052】
本明細書で説明されるように、分配管は、中空の円筒であり得る。円筒という用語は、円状の底形状、円状の上形状、及び、上側の円と下側の円を連結する湾曲した表面領域又は外郭を有するものとして、一般的に理解され得る。本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る、更なる又は代替的な実施形態によれば、円筒という用語は、数学的意味において、任意の底形状、それと同一の上形状、及び上形状と下形状を連結する湾曲した表面領域又は外郭を有するものとして、更に理解することができる。円筒は、必ずしも円状の断面を有する必要はない。
【0053】
図3は、本明細書で説明される実施形態による、蒸発源20の概略的な断面図を示している。図3で示されている蒸発源20は、分配管106を含む。本明細書で説明される実施形態によれば、分配管106は、図3の図面に垂直であり得る長さ方向、特に、本質的に鉛直方向において延在し得る。複数のノズル22は、分配管106の長さ方向に沿って配置され得る。複数のノズル22のうちの1つのノズル23は、分配管106の出口として図3で概略的に示されている。図3の断面は、ノズル23の出口を通って交差する。図3で示されているように、蒸発した原料物質は、分配管106の内部からノズル23の出口を通って基板10に向かって流れ得る。ノズル23は、蒸発した原料物質のプルーム318を基板10へ向けるように構成されている。更に、(図3では示されていない)複数のノズル22のうちの残りのノズルも、蒸発した原料物質のそれぞれのプルームを基板10に向けるように構成されている。
【0054】
蒸発源20は、複数のノズル22から下流に配置され得る遮蔽デバイス30を更に含む。遮蔽デバイス30は、基板10に向けて蒸発した原料物質を誘導するように、且つ、蒸発した原料物質のプルームを個別に形作るように構成され得る。したがって、遮蔽デバイス30は、本明細書で「シェイパーシールド(shaper shield)」とも称され得る。遮蔽デバイスは、例えば、(図3では示されていない)ねじなどの固定要素を介して、分配管106と着脱可能に固定され得る。
【0055】
遮蔽デバイス30は、複数の開孔32を含む。複数の開孔32のうちの少なくとも1つの開孔は、単一の関連付けられたノズルから放出された蒸発した原料物質のプルームを個別に形作るように構成されている。例えば、図3では、開孔33が、ノズル23から放出されたプルーム318を個別に形作るように構成されている。第2のノズルから放出されたプルームは、開孔33を通って伝播せず、開孔33によって形作られることはない。言い換えると、ノズル23は、開孔33に関連付けられた単一のノズルである。
【0056】
ある実施形態では、遮蔽デバイスの複数の開孔32の各開孔が、単一の関連付けられたノズルから放出された蒸発した原料物質の単一のプルームを個別に形作るように構成され得る。言い換えると、複数のノズルの全てのノズルの前に、個別の開孔が配置され得る。したがって、複数のノズル22から放出された蒸発した原料物質の各プルームは、複数の開孔のうちの関連付けられた開孔によって個別に形作られ得る。
【0057】
蒸発した原料物質のプルームを個別に形作ることは、同時に2つ以上のプルームを形作るように構成された開孔を有する遮蔽デバイスと比較して、有益であり得る。特に、蒸発した原料物質のプルームを個別に形作ることは、高められた堆積精度をもたらし、マスクによって提供されるシャドーイング効果を低減させ得る。例えば、蒸発した原料物質のプルームを個別に形作ることは、より明確に画定されたプルームの側部を有する、より小さいプルームの開口角度をもたらし得る。マスク及び/又は基板に対するプルームの大きな衝突角度を避けることができる。更に、個別のプルームは、適切に導かれ得る。
【0058】
ある実施形態では、蒸発源のノズルの数が、遮蔽デバイスの開孔の数に対応し得る。例えば、10以上の開孔を有する遮蔽デバイスは、10以上のノズルを有する分配管の前に配置され得る。例えば、30以上の開孔を有する遮蔽デバイスは、各分配管が10以上のノズルを含む、3つの分配管の前に配置され得る。以下の説明では、図3で示されているように、開孔33とノズル23、すなわち、開孔33に関連付けられた単一のノズルが言及されるが、ある実施形態では、複数の開孔32のうちの残りの開孔が、それぞれの関連付けられたノズルに対応して形作られ、配置され得る。
【0059】
ある実施形態では、図3で示されているように、開孔が、関連付けられたノズルの前に配置され得る。例えば、ノズル23の主たる放出方向Xは、ノズル23の出口の中心と開孔33の中心との間の接続線に対応し得る。開孔33は、円周壁34によって取り囲まれた、プルーム318のための通路43として構成され得る。円周壁34は、ノズル23から放出された蒸発した原料物質のプルーム318の少なくとも一部分を遮断するように構成され得る。ある実施形態では、円周壁34が、蒸発した原料物質のプルーム318の外側角部を遮断するように構成され得る。
【0060】
本明細書で使用される際に、「開孔」は、特に、プルームの最大開口角度を制限するために、且つ、プルームの外側角部を遮断するために、開孔を通って誘導される蒸発した原料物質の単一のプルームを形作るように構成された、壁によって少なくとも部分的に取り囲まれた開口部又は通路を指し得る。ある実施形態では、関連付けられたノズルの主たる放出方向Xを含む全ての断面内のプルームを形作るように、通路が円周壁によって完全に取り囲まれ得る。
【0061】
図3で概略的に示されているように、開孔33は、円周壁34によって取り囲まれた、プルーム318のための通路として構成され得る。円周壁34は、前記プルームを円周で形作るように、プルーム318の主たる放出方向Xの周りで延在し得る。ある実施形態では、円周壁34が、遮蔽デバイス30のベース壁41から、主たる放出方向Xと平行に延在し得る。ベース壁41は、主たる放出方向Xと本質的に垂直に延在し得る。ベース壁41は、プルーム318がノズル23の出口から開孔33に入るための開口部42を有し得る。
【0062】
本明細書の他の実施形態と組み合わされ得る、ある実施形態では、遮蔽デバイスが、分配管106に対する近い距離で、例えば、主たる放出方向Xにおいて5cm以下又は1cm以下の距離で配置され得る。開孔をノズルから下流へ近い距離で配置することは有益である。何故ならば、たとえ複数のノズルのうちの隣接するノズルが、互いに対して近い距離で配置されているとしても、プルームを個別に形作ることが可能だからである。
【0063】
ある実施形態では、ノズル23が、遮蔽デバイス30の中へ少なくとも部分的に突出し得る。言い換えると、ノズルと遮蔽デバイスの両方に交差する、主たる放出方向Xに垂直な断面が存在し得る。例えば、図3で示されているように、ノズルの出口23は、開孔33の中へ突出する。ノズル出口は、ベース壁41内の開口部42の中へ突出するか、又は円周壁34によって取り囲まれた通路43の中へ突出し得る。これは、隣接するノズルをノズル23の近くに配置することができるように(図4参照)、ノズルから直接的に下流に、ノズル23から放出されたプルーム318を形作ることを可能にする。
【0064】
本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る、ある実施形態では、ノズル23が、遮蔽デバイス30と直接に機械的に接触していない。例えば、図3で示されるように、ノズルは、開孔壁から距離をおいて開孔の中へ突出し得る。ノズルと遮蔽デバイスとの間の直接接触を避けることは、ノズルと遮蔽デバイスとの間の熱分離の効果を有し得る。遮蔽デバイスから基板に向かう熱放射が低減され得るように、通常は高温のノズルと遮蔽デバイスとの間の直接的な熱伝導を避けることができる。
【0065】
ある実施形態では、ノズル23と遮蔽デバイス30との間の最小距離が、3mm未満、若しくは1mm未満、及び/又は0.1mmより上であり得る。蒸発源が大気圧よりも低く構成され得るので、ノズルと遮蔽デバイスとの間の熱流は、実質的に低減され得る。
【0066】
ある実施形態では、遮蔽デバイス30が、能動的に又は受動的に冷却され得る。冷却された遮蔽デバイス30とノズルとの間の熱流は、複数の開孔を複数のノズルから熱的に分離することによって低減され得る。
【0067】
本明細書で説明される他の実施形態と組み合わせることができる、ある実施形態では、円周壁34が、第1の断面内の主たる放出方向Xに対する第1の最大放出角度θよりも大きい放出角度を有する蒸発した原料物質のプルーム318の蒸発した原料物質を遮断するように構成され得る。
【0068】
図3の図面は、第1の断面を示している。第1の断面は、主たる放出方向Xを含み得る。ある実施形態では、第1の断面が、水平面及び/又は分配管106の長さ方向に対して垂直に延在する平面である。図3で描かれているように、放出コーン(emission cone)の開口角度が2θの角度に制限されるように、開孔33の円周壁34が、第1の断面内の蒸発した原料物質のプルーム318の外側角部を遮断するように構成されている。言い換えると、円周壁34は、第1の最大放出角度θよりも大きい放出角度にある、ノズル23によって放出された蒸発した原料物質の一部分を遮断する。
【0069】
ある実施形態では、第1の最大放出角度θが、10度から45度、特に、20度から30度、更に特に、約25度である。したがって、第1の断面内の放出コーンの開口角度2θは、20度以上又は90度以下であり、特に、約50度であり得る。図3で示されているように、マスク340によるシャドーイング効果は、第1の最大放出角度θを低減させることによって低減され得る。
【0070】
本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る、ある実施形態では、円周壁34が、第1の断面に垂直な第2の断面内の主たる放出方向Xに対する第2の最大放出角度よりも大きい放出角度を有する蒸発した原料物質のプルーム318の蒸発した原料物質を遮断するように構成され得る。
【0071】
第2の断面は、図3の図面と垂直な平面であり得る。第2の断面は、主たる放出方向Xを含み得る。ある実施形態では、第2の断面が、垂直面及び/又は分配管106の長さ方向に対して平行に延在する平面である。放出コーンの開口角度が2βの角度に制限されるように、開孔33の円周壁34が、第2の断面内の蒸発した原料物質のプルーム318の外側角部を遮断するように構成され得る。言い換えると、円周壁34は、第2の断面内の第2の最大放出角度よりも大きい放出角度にある、ノズル23によって放出された蒸発した原料物質の一部分を遮断し得る。
【0072】
ある実施形態では、第2の最大放出角度が、10度から60度、特に、30度から40度、更に特に、約45度である。したがって、第2の断面内の放出コーンの開口角度は、20度以上又は120度以下であり、特に、約90度であり得る。図3の図面と垂直な平面内におけるマスクによるシャドーイング効果は、第2の最大放出角度βを低減させることによって低減され得る。
【0073】
ある実施形態では、第2の最大放出角度が、第1の最大放出角度とは異なり、特に、第1の最大放出角度よりも大きい角度である。これは、より大きい最大放出角度が、分配管106の長さ方向において可能だからである。特に、分配管の長さ方向において、隣接するノズルは、通常、同じ蒸発材料を放出し、分配管に沿った隣接するノズルの間隔は、より容易に調整され得る。一方、分配管の長さ方向に垂直な方向において互いに対して隣接するノズルは、隣接するノズルのプルームの重なりを精度よく設定することが有益であり得るように、異なる材料を放出するように構成され得る。
【0074】
第1の断面は、水平面であり得る。第1の最大放出角度は、20度から30度であり得る。第2の断面は、垂直面であり得る。第2の最大放出角度は、40度から50度であり得る。
【0075】
ある実施形態では、分配管106の長さ方向における2つの隣接するノズルの間の距離が、1cmから5cm、特に、2cmから4cmであり得る。したがって、複数の開孔のうちの2つの隣接する開孔の間の距離、すなわち、それぞれの開孔中心の間の距離は、1cmから5cm、特に、2cmから4cmであり得る。例えば、2つの隣接する開孔の間の距離は、それぞれ、2つの隣接する関連付けられたノズルの間の距離に対応し得る。
【0076】
本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る、ある実施形態では、開孔33が、円周壁34によって取り囲まれたプルーム318のための丸い通路43として構成されている。「丸い通路」は、主たる放出方向Xと垂直な断面において、丸められた輪郭、例えば、湾曲した輪郭、円形状の輪郭、又は卵型の輪郭を有する通路として理解され得る。例えば、円周壁34は、主たる放出方向Xと垂直な断面において円形状又は卵型形状を有し得る。
【0077】
円形状の通路は、例えば、主たる放出方向に対して回転対称となるように、プルーム318を形作り得る。卵型通路は、例えば、卵型通路のメジャーな軸に対応する、第1の断面における大きな開口角度を有し、卵型通路のマイナーな軸に対応する、第2の断面内における小さい開口角度を有するように、プルーム318を形作り得る。卵型通路のメジャーな軸は、鉛直方向において配置され得る。そして、卵型通路のマイナーな軸は、水平方向において配置され得る。
【0078】
円周壁34は、主たる放出方向Xと垂直な断面において円を形成し得る。円の直径、すなわち、通路の内径は、3mm以上且つ25mm以下、特に、5mm以上且つ15mm以下であり得る。通路の直径は、プルーム318の最大開口角度を規定する通路の下流端において測定され得る。
【0079】
ある実施形態では、主たる放出方向Xにおける円周壁34の長さが一定であり得る。本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る、他の実施形態では、開孔33が、円周壁34によって取り囲まれたプルーム318のための通路43として構成され得る。主たる放出方向Xにおける円周壁の長さは、周方向において変動する。より具体的には、基板に向けられた円周壁34の前端35が、周方向において変動するノズル出口からの距離を有し得る。周方向における円周壁の変動する長さを提供することによって、プルーム318の開口角度が、様々な断面において異なるように構成され得る。
【0080】
図3で示されるように、円周壁34は、主たる放出方向Xを含む第1の断面における第1の長さT1を有し、円周壁は、主たる放出方向Xを含み且つ第1の断面と垂直に延在する、第2の断面における第1の長さT1よりも小さい第2の長さT2を有し得る。第1の断面は、分配管の長さ方向と垂直であり、例えば、水平面であり得る。第2の断面は、分配管の長さ方向と平行であり、例えば、垂直面であり得る。
【0081】
円周壁の長さは、第1の断面における第1の長さT1から、第2の断面における第2の長さT2へ、連続的に変動し得る。言い換えると、円周壁34の前端35は、周方向において段差や不連続性を含み得ない。したがって、プルーム318の開口角度は、周方向において徐々に変動し得る。堆積精度が、改良され得る。
【0082】
ある実施形態では、第1の長さT1が、8mmと20mmの間の長さ、特に、約12mmであり、及び/又は第2の長さT2が、3mmと15mmの間の長さ、特に、約6.5mmであり得る。円周壁の「長さ」は、主たる放出方向Xを含むそれぞれの断面における、ノズル出口と円周壁の前端とを接続するベクトルの投射の長さに対応し得る。
【0083】
円周壁の前端35が、周方向において波形又は起伏を有する形状を有するときに、鋭い端部を有するピクセルが、基板上に堆積され得る。波高点は、第1の断面、すなわち、図3の図面において配置され、波底点は、第2の断面、すなわち、第1の断面と垂直な平面において配置され得る。円周壁34の前端35は、図3で示されているように、2つの波高点と2つの波底点を含み得る。
【0084】
ある実施形態では、少なくとも1つの開孔が、3mm以上且つ25mm以下、特に、5mm以上且つ15mm以下の直径を有し得る。そのときに、開孔の直径は、基板10に向けて伝播するプルーム318の最大放出角度を規定する、開孔の前端35において測定され得る。
【0085】
分配管の壁は、分配管の壁に取り付けられ又は装着された加熱要素によって加熱され得る。基板に向かう加熱放射を低減させるために、分配管の加熱された内壁を取り囲む外側シールドが冷却され得る。更なる第2の外側シールドが設けられて、それぞれ、堆積領域又は基板に向けられた熱負荷を更に低減させ得る。本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る、ある実施形態によれば、金属シールドに取り付けられた又は金属シールド内に設けられた、水などの冷却流体のための導管を有する金属板として、シールドが設けられ得る。更に、又は代替的に、熱電性冷却デバイス又は他の冷却デバイスが、シールドを冷却するために設けられ得る。したがって、分配管の内部は、高温、例えば、原料物質の蒸発温度よりも高く維持され得る一方で、堆積領域と基板に向かう熱放射は、低減され得る。
【0086】
図4は、本明細書で説明される実施形態による、それぞれ、互いに隣り合って長さ方向において延在する、分配管106、第2の分配管107、及び第3の分配管108を含む、蒸発源20を示している。この長さ方向は、図4の図面に垂直である。蒸発源20は、複数のノズル22を含む。分配管の各々のうちの1つのノズルが、図4のそれぞれの分配管の出口として概略的に描かれている。更に、蒸発源20は、複数の開孔32を含む遮蔽デバイス30を含み、複数の開孔32の各開孔は、単一の関連付けられたノズルの前に配置され、それぞれの単一の関連付けられたノズルから放出された蒸発した原料物質のプルームを形作るように構成されている。
【0087】
ここでは繰り返されない上記の説明を参照することができるように、開孔は、図3において示された開孔33と同様に構成され、配置され得る。
【0088】
特に、ある実施形態では、ノズルが、開孔と接触することなしに、それぞれ、開孔の中へ突出し得る。したがって、遮蔽デバイス30は、複数のノズル22から及び/又は分配管から、熱的に分離され得る。基板に向かう熱放射は、低減され得る。
【0089】
本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る、ある実施形態では、遮蔽デバイスが、互いに隣り合って配置された複数の分離した遮蔽ユニット60を含み得る。複数の分離した遮蔽ユニット60の各遮蔽ユニットは、複数の開孔32のうちの1以上の開孔を備える。
【0090】
本明細書で使用される際に、「分離した」遮蔽ユニットは、互いに直接的には接触せず、直接的に機械連結しない分離した構成要素として設けられている、2以上の遮蔽ユニットを指し得る。図4で示されているように、複数の分離した遮蔽ユニット60のうちの遮蔽ユニットは、互いに直接的に接触していない。例えば、分離した遮蔽ユニットは、1以上のそれぞれの固定要素を用いて、それぞれの分配管に個別に固定され得る。
【0091】
ある実施形態では、複数の分離した遮蔽ユニット60の各遮蔽ユニットが、複数の開孔32のうちの単一の開孔を含み得る。各開孔は、蒸発した原料物質の単一のプルームを形作るように構成された、遮蔽壁によって取り囲まれた通路として構成され得る。
【0092】
他の実施形態では、複数の分離した遮蔽ユニット60のうちの少なくとも1つの遮蔽ユニットが、複数の開孔32のうちの2つ、3つ、4つ、又は5つ以上の開孔を含む。それらは、例えば、直線的な配置において、支持構造体によって互いに連結され得る。少なくとも1つの遮蔽ユニットのうちの2つの隣接する開孔の間の距離は、それぞれ、1cm以上且つ5cm以下であり得る。
【0093】
ある実施形態では、複数の遮蔽ユニットの各遮蔽ユニットが、複数の開孔のうちの2以上の開孔を含み得る。遮蔽デバイス30を分配管に取り付けることは、遮蔽デバイスの遮蔽ユニットの数が低減されたときに、容易にされ得る。したがって、遮蔽ユニット毎の開孔の数を増加させることが有益であり得る。
【0094】
ある実施形態では、遮蔽ユニット毎の開孔の数が、10以下であり、特に、5つ以下である。遮蔽ユニットは、遮蔽ユニットが実質的な長さを超えて延在しないときに、より容易に分配管のうちの1つの局所的な熱膨張及び収縮に従い得る。特に、隣接する遮蔽ユニットは、分配管のうちの1つが膨張又は収縮するときに、互いに対して移動し得る。
【0095】
分配管106に連結された遮蔽ユニットは、残りの遮蔽ユニットから機械的に連結解除され、残りの遮蔽ユニットに対して移動可能である。例えば、堆積中に分配管が互いに対してわずかに移動し得るように、分配管106の温度は、第2の分配管107の温度とは異なって変動し、第3の分配管108の温度とは異なって変動し得る。遮蔽ユニットは、それぞれの分配管の動きに従い得る。何故ならば、遮蔽ユニットは、それぞれ、残りの遮蔽ユニットから機械的に連結解除されているからである。したがって、分配管が互いに対して移動し、分配管のうちの1つが熱的膨張又は収縮するときでさえ、蒸発した原料物質のプルームは、安定したやり方で形作られ得る。遮蔽ユニットの1以上の開孔は、それぞれ、1以上の関連付けられたノズルの動きに従い得る。
【0096】
ある実施形態では、複数の分離した遮蔽ユニット60の各遮蔽ユニットが、残りの遮蔽ユニットの熱的にもたらされた動きに従わないように、複数の分離した遮蔽ユニットのうちの残りの遮蔽ユニットから機械的に連結解除され得る。
【0097】
本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る、ある実施形態では、複数の分離した遮蔽ユニット60のうちの少なくとも1つの遮蔽ユニットが、単一の分配管の長さ方向における単一の分配管の熱膨張及び収縮に従うように、特に、単一の分配管が熱的に収縮又は膨張したときに、単一の分配管に連結された更なる遮蔽ユニットに対して移動するように、単一の分配管に連結され得る。
【0098】
分配管106のノズルの主たる放出方向は、第2の分配管107及び/又は第3の分配管108のノズルの主たる放出方向に対して傾いている。例えば、主たる放出方向は、分配管106から放出された蒸発した原料物質のプルームが、第2の分配管107及び/又は第3の分配管108から放出された蒸発したプルームと重なり得るように、傾いている。ある実施形態では、分配管の主たる放出方向が、基板の表面と本質的に交差し得るように、分配管が配置されている。断面において異なる分配管から放出されたプルームは、基板上の本質的に同じ領域に向けられ得る。
【0099】
ある実施形態では、分配管のうちの1つ、例えば、分配管106が、主たる材料を堆積させるように構成され、少なくとも1つの更なる分配管、例えば、第2の分配管107が、第2の材料、例えば、ドーパントを堆積させるように構成され得る。
【0100】
図5は、本明細書で説明される実施形態による、蒸発源20の断面図を示しており、その断面は、分配管106の長さ方向において延在する。分配管の長さ方向は、鉛直方向であり得る。
【0101】
ある実施形態では、図4で示されたように、第2の分配管107及び/又は第3の分配管108が、分配管106の両側において本質的に平行に分布し得る。
【0102】
分配管106は、分配管の長さ方向において互いに対して隣り合うように配置された、複数のノズル22を含む。複数のノズルのうちの第1のノズル402と第2のノズル404が、図5で示されている。蒸発した原料物質の第1のプルーム403は、第1のノズル402によって放出され、蒸発した原料物質の第2のプルーム405は、第2のノズル404によって放出されている。
【0103】
遮蔽デバイス30は、複数のノズルから下流に配置され、複数のノズルから放出された蒸発した原料物質のプルームを形作る。遮蔽デバイス30は、複数の個別の遮蔽ユニットを含み得る。複数の遮蔽ユニットのうちの1つの遮蔽ユニット61が、図5で描かれている。
【0104】
遮蔽ユニット61は、上述した実施形態の何れかによって構成され得る、第1の開孔406と第2の開孔408を含む。第1の開孔406は、第1のノズル402から放出された第1のプルーム403を個別に形作るように構成され、第2の開孔408は、第2のノズル404から放出された第2のプルーム405を個別に形作るように構成されている。
【0105】
遮蔽ユニット61は、直線的な配置において、複数の開孔のうちの3つ以上の開孔、例えば、3つ、4つ、又は5つの開孔を含み得る。開孔は、支持構造体、例えば、板要素によって連結され得る。遮蔽ユニット61の開孔は、分配管106の長さ方向に沿って互いに隣り合って設けられた、3つ、4つ、又は5つの隣接するノズルの蒸発した原料物質のプルームを個別に形作るように構成され得る。
【0106】
分配管は、直線的な配置において設けられた10以上のノズルを含み得る。したがって、2つ以上の遮蔽ユニット、例えば、2つ、又は3つ以上の遮蔽ユニットが、直線的な配置において分配管に固定され得る。
【0107】
複数の分離した遮蔽ユニットの各遮蔽ユニットは、蒸発源の2つ以上の分配管のうちの単一の分配管と機械的に固定され得る。個別の遮蔽ユニットの間の相対運動が可能であるように、遮蔽ユニットは、互いから機械的に連結解除され及び/又は熱的に分離され得る。したがって、遮蔽ユニットが固定されている分配管が、膨張又は収縮するときに、遮蔽ユニットは、互いに対して移動し得る。
【0108】
遮蔽ユニット61は、分配管106から熱的に分離されるように、分配管106に対して固定され得る。例えば、遮蔽ユニット61は、遮蔽ユニットと分配管との間に配置され得る、1以上のスペーサ要素411によって、分配管106からある距離において保持され得る。スペーサ要素411は、分配管のノズルの間に配置された支持セクションとして構成され得る。スペーサ要素411は、分配管106から遮蔽ユニット61に向かう熱流を低減させるために、小さい接触面積を設け得る。例えば、スペーサ要素411の接触面積は、1mm以下、特に、0.25mm以下であり得る。遮蔽ユニット61は、低い熱伝導率を有する材料から作られ得る、例えば、ねじなどの1以上の固定要素を介して、分配管106に固定され得る。
【0109】
分配管の長さ方向における遮蔽ユニット61の長さは、20cm以下、特に、10cm以下であり得る。遮蔽ユニットの小さい長さによって、遮蔽ユニットは、分配管106の熱によってもたらされた局所的な動き、例えば、膨張又は収縮運動に従い得る。例えば、分配管に固定された第1の遮蔽ユニットは、分配管が膨張するときに、同じ分配管に固定された第2の遮蔽ユニットから離れるように移動し得る。分配管に固定された第1の遮蔽ユニットは、分配管が収縮するときに、同じ分配管に固定された第2の遮蔽ユニットに向かって移動し得る。
【0110】
本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る、ある実施形態では、遮蔽ユニット61が、遮蔽ユニットの長さ方向に沿った単一の固定部分において、例えば、遮蔽ユニットの中心部分において、分配管に堅く固定されている。更なる位置では、遮蔽ユニット61が、遮蔽ユニットと分配管との間の相対的な運動を可能にするように、分配管106に固定され得る。例えば、図5で示されている実施形態では、遮蔽ユニット61の第1の端部分412と遮蔽ユニットの第2の端部分413が、例えば、遮蔽デバイス内に設けられ得るスロット孔を貫通するねじなどの固定要素を介して、分配管と移動可能に固定され得る。ある実施形態では、スロット孔が、0.01mmより上で且つ0.5mm未満、例えば、約0.1mmの、遮蔽ユニットの長さ方向における分配管と遮蔽ユニットとの間の隙間を提供し得る。
【0111】
図6は、本明細書で説明される実施形態による、蒸発源のための遮蔽デバイス500の斜視図を示している。遮蔽デバイスは、単一の構成要素として構成され、複数の分離した遮蔽ユニットを含まない。遮蔽デバイス500は、複数の開孔を含み、複数の開孔の各開孔は、遮蔽壁によって取り囲まれた通路として構成され、複数の開孔の各開孔は、蒸発源の単一の関連付けられたノズルから放出された蒸発した原料物質のプルームを個別に形作るように構成されている。
【0112】
遮蔽デバイス500は、3つの分配管を有する蒸発源に取り付けられるように構成されている。したがって、遮蔽デバイス500は、支持構造体、例えば、板要素内で互いに隣り合って設けられた開孔の3つの鉛直に配置された列を含む。開孔の中央の列の開孔は、外側の列の開孔に対してオフセットされ得る。これは、互いに隣り合う3つの分配管の、よりコンパクトな配置を可能にする。
【0113】
開孔は、それぞれ、卵型の通路として設けられている。したがって、開孔を出て行く蒸発した原料物質のプルームの鉛直方向における第1の最大放出角度は、開孔を出て行く蒸発した原料物質のプルームの水平方向における第2の最大放出角度よりも大きい。
【0114】
図7は、本明細書で説明される実施形態による、蒸発源のための遮蔽デバイス600の斜視図を示している。本明細書で説明される実施形態による遮蔽デバイスは、複数の分離した遮蔽ユニット600、例えば、3つ以上、特に、12以上の遮蔽ユニット600を含み得る。
【0115】
遮蔽ユニット600は、2つ以上の開孔及び/又は10以下の開孔、特に、5つの開孔を含み得る。各開孔は、遮蔽壁、例えば、円周壁によって取り囲まれた通路として構成され得る。丸い通路、特に、円形状の通路は、空間を節約し、製造が容易であり得る。丸い通路は、回転対称によって、蒸発した原料物質が、周方向において同じ衝突角度において遮蔽壁に衝突し得るという、更なる利点を有し得る。蒸発した原料物質は、堆積中に、周方向において遮蔽壁上に均一に積み重なり得る。遮蔽ユニットの洗浄は、より容易になり得る。
【0116】
遮蔽ユニット600の開孔は、隣接する開孔の間の、1cm以上且つ5cm以下、特に、約2cmの距離を保ちながら直線的に配置され得る。遮蔽ユニット600は、ワンピースの構成要素として構成され得る。開孔は、支持構造体612、例えば、細長い板要素によって連結され得る。遮蔽ユニット600は、3cm以下、2cm以下、又は更に1cm以下の幅を有し得る。
【0117】
支持構造体612は、例えば、ボルトのねじを介して、遮蔽ユニットを分配管に固定するための、第1の端613における1つ以上の孔、及び、第1の端613と反対側の第2の端614における1以上の孔を含み得る。ある実施形態では、更なる孔が、それぞれ、開孔の間に設けられ得る。
【0118】
遮蔽ユニット600の各開孔は、蒸発源の単一の関連付けられたノズルから放出された蒸発した原料物質のプルームを個別に形作るように構成され得る。
【0119】
本明細書で説明されるある実施形態では、遮蔽ユニット600の開孔が、それぞれ、3mmと25mmの間、特に、5mmと15mmの間の直径を有し得る。遮蔽ユニットの開孔の小さい直径は、堆積の精度を高め得る。しかし、小さい開孔の直径は、より容易に詰まる傾向があり、それは、堆積の効率と堆積の均一性を悪化させ得る。
【0120】
本明細書で説明される蒸発源を操作する実施形態は、長時間にわたる堆積の高い精度を維持すると同時に、開孔の詰まりを妨げ得るために提供される。
【0121】
蒸発源20を操作する方法が、図8A図8Bを参照しながら説明される。
【0122】
本明細書で説明される方法は、図8Aで示されているように、基板10上に蒸発した原料物質を堆積させることを含む。蒸発した原料物質の堆積は、主たる放出方向Xにおいて、蒸発した原料物質を基板10に向けて誘導することを含む。蒸発した原料物質のプルームを個別に形作るために、蒸発した原料物質の部分が、複数のノズルと基板10との間に配置された遮蔽デバイス30によって遮断される。
【0123】
堆積中に、遮蔽デバイス30は、第1の温度に維持され得る。第1の温度は、低い温度、例えば、150°C未満の温度、特に、100°C以下の温度、又は50°C以下の温度であり得る。例えば、マスクに向かう及び/又は基板に向かう熱の放射を低減させるために、堆積中は、基板に向かい合う遮蔽デバイスの表面が、100°C以下の温度に維持され得る。ある実施形態では、遮蔽デバイス30が、堆積中に、例えば、遮蔽デバイスに取り付けられた冷却チャネルを介して又は熱電冷却デバイスを介して、能動的又は受動的に冷却され得る。
【0124】
遮蔽デバイス30の表面が低い温度に維持され得るので、遮蔽デバイスによって遮断された蒸発した原料物質は、遮蔽デバイス上で凝縮し、遮蔽デバイス上に付着し得る。開孔の直径は、より小さくなり得る。そして、詰まりのリスクが存在し得る。
【0125】
本明細書で説明される方法によれば、図8Aで示されている堆積フェーズの後に、図8Bで示されている洗浄フェーズが行われ得る。洗浄フェーズでは、遮蔽デバイス30上に積み重なった原料物質の少なくとも部分が、第1の温度より上の第2の温度まで遮蔽デバイスを加熱することによって、遮蔽デバイスから除去される。遮蔽デバイスは、特に、原料物質が積み重なった状態の遮蔽デバイスの表面セクションにおいて、少なくとも局所的に加熱され得る。例えば、蒸発した原料物質の一部は、通常、開孔を取り囲む遮蔽壁によって遮断されるので、遮蔽デバイスの複数の開孔32を取り囲む遮蔽壁が加熱され得る。
【0126】
ある実施形態では、遮蔽デバイスが、洗浄中に、原料物質の蒸発温度より上の温度まで、例えば、100°Cより上、又は200°Cより上の温度まで、特に、300°C以上の温度まで、少なくとも局所的に加熱され得る。付着した原料物質は、遮蔽デバイスから解放され、再び蒸発し得る。したがって、遮蔽デバイスは洗浄され得る。
【0127】
ある実施形態では、遮蔽デバイス30が、堆積中に基板10と向かい合う一方で、遮蔽デバイス30が、加熱中に基板10と向かい合わない。したがって、遮蔽デバイスから再蒸発した原料物質の、基板上への堆積を避けることができる。更に、加熱された遮蔽デバイスからの熱放射によるマスク及び/又は基板の熱膨張を避けることができる。
【0128】
本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る、ある実施形態では、洗浄中に、ノズルを通る蒸発した原料物質の放出が停止され得る。例えば、洗浄フェーズIIの間に、ノズルが閉じられ又は蒸発が停止され得る。原料物質の消費が低減され得る。
【0129】
本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る、ある実施形態では、堆積装置が、洗浄のためのサービス位置IIへ設定され得る。特に、堆積の後で、堆積装置は、遮蔽デバイスの開孔が基板10に向けられた堆積位置Iから、遮蔽デバイスの開孔が基板に向けられていないサービス位置IIへ運ばれ得る。
【0130】
本明細書で使用される際に、「堆積位置」は、堆積装置が蒸発した原料物質を基板に向けて誘導する準備ができている堆積装置の状態であり得る。例えば、蒸発源のノズルと遮蔽デバイスの開孔は、基板に向かって、又は堆積装置の堆積領域に向かって対面し得る。
【0131】
本明細書で使用される際に、「サービス位置」は、原料物質を基板に向けて誘導するために適切ではない堆積装置の状態であり得る。例えば、蒸発源のノズルと遮蔽デバイスの開孔は、基板に向かって、又は堆積装置の堆積領域に向かって対面し得ない。堆積位置からサービス位置へ堆積装置を設定することは、蒸発源の移動、例えば、回転移動を含み得る。ある実施形態では、堆積装置をサービス位置へ設定することが、遮蔽デバイスを加熱するために加熱デバイス50が設けられている位置、及び/又は遮蔽デバイスが遮蔽壁などの材料収集ユニット40に向き合っている位置へ、蒸発源を移動させることを含み得る。
【0132】
ある実施形態では、堆積装置をサービス位置IIへ設定することが、蒸発源20と材料収集ユニット40との間の相対的な移動を含み得る。例えば、図8A図8Bで示されている実施形態では、図8Aで示されている堆積位置Iから、図8Bで示されているサービス位置IIへ、蒸発源20が移動される。サービス位置IIでは、遮蔽デバイス30が、材料収集ユニット40に向けられている。
【0133】
蒸発源をサービス位置IIへ移動させることは、ある回転角度だけ、特に、20度以上の回転角度αだけ、更に特に、60度から120度までの回転角度だけ、蒸発源20を回転させることを含み得る。図8Bで示されている実施形態では、蒸発源が、堆積位置Iからサービス位置IIへ、近似的に90度の回転角度だけ回転されている。
【0134】
遮蔽デバイス30は、遮蔽デバイス30が材料収集ユニット40に向かい合ったサービス位置IIにおいて加熱され得る。材料収集ユニット40は、壁要素、例えば、凝縮壁又は遮蔽壁として設けられ得る。図8Bで示されているように、壁要素は湾曲し得る。壁要素と遮蔽デバイスとの間の距離は、蒸発源の回転移動の間に、本質的に一定に維持され得る。更に、壁要素の湾曲した形状により、壁要素は、本質的に蒸発源20の全体的な回転移動の間に、蒸発源20から放出された蒸発した原料物質を遮断するシールドとして作用し得る。例えば、壁要素は、蒸発源の回転軸に対して、45度以上、特に、90度以上の角度にわたり延在し得る。
【0135】
ある実施形態では、洗浄が、1秒以上、特に、10秒以上の期間、遮蔽デバイスを加熱することを含み得る。より長い加熱期間は、より優れた洗浄をもたらし得るが、蒸発工程を遅くし得る。優れた洗浄の結果は、1秒と60秒の間の期間にわたり加熱することによって実現され得る。
【0136】
洗浄後に、基板上の又は更なる基板上での蒸発した原料物質の堆積が継続される。ある実施形態では、堆積を継続する前に、蒸発源が、サービス位置IIから堆積位置Iへ又は更なる堆積位置へ運び戻され得る。例えば、堆積源は、角度(-α)だけ回転されて堆積位置Iに戻され得る。または、代替的に、蒸発源は、例えば、別の角度αだけ、同じ回転方向において蒸発源を更に回転させることによって更なる堆積位置へ運ばれ得る。
【0137】
本明細書で説明される他の実施形態と組み合わされ得る、ある実施形態では、堆積と洗浄が、交互に実行され得る。例えば、遮蔽デバイスは、それぞれ、所定の堆積期間の後で洗浄され、それぞれ、洗浄後に堆積が継続され得る。ある実施形態では、遮蔽デバイスの洗浄が、全ての基板上での蒸発した原料物質の堆積後に、又は所定の数の基板を被覆した後で、例えば、2つの基板、4つの基板、又はそれ以上の基板を被覆した後で、実行され得る。ある実施形態では、遮蔽デバイスの洗浄が、それぞれ、数分、数時間、又は数日の堆積動作の後で、実行され得る。その後で洗浄が実行されるところの期間は、遮蔽デバイスの開孔のサイズ及び形状、蒸発源の出口と遮蔽デバイスとの間の距離、更に、堆積中の遮蔽デバイスの表面の温度に応じ得る。例えば、洗浄は、それぞれ、各基板上での蒸発した材料の堆積の後、又は数時間までの堆積期間の後で、実行され得る。
【0138】
ある実施形態では、遮蔽デバイス上の原料物質の積み重ねが測定され、所定の積み重ねに到達した後で、洗浄が実行され得る。遮蔽デバイスの開孔の詰まりを避けることができ、基板上に衝突する蒸発した原料物質の一定なプルームを得ることができる。
【0139】
加熱された遮蔽デバイスによる基板上の熱負荷を低減させるために、遮蔽デバイスは、洗浄後に冷却されることが許容され得る。例えば、遮蔽デバイスは、洗浄後で且つ堆積を継続する前に、第1の温度、例えば、150°C以下、又は100°C以下の温度まで冷却され得る。ある実施形態において、洗浄中に遮蔽デバイスを加熱するように構成された加熱デバイス50は、堆積を継続する前に所定の期間だけスイッチが切られる。ある実施形態では、洗浄後及び/又は堆積を継続する前に、遮蔽デバイスが、受動的又は能動的に冷却される。更に、遮蔽デバイスは、更に又は代替的に堆積中に受動的に又は能動的に冷却され得る。受動的な冷却は、冷却流体を介した冷却を含み得る。能動的な冷却は、能動的な冷却要素、例えば、熱電冷却要素、ペルチェ素子、又は圧電素子を介した冷却を含み得る。
【0140】
図10は、真空チャンバ内で基板10上に蒸発した原料物質を堆積させるための方法を示すフロー図である。ボックス1010では、蒸発源の1以上の分配管の複数のノズルを通して、蒸発した原料物質が誘導される。複数のノズルの各々は、基板に向けて伝播する蒸発した原料物質のプルームを生成する。ボックス1020では、蒸発した原料物質のプルームが、遮蔽デバイスの複数の開孔によって個別に形作られる。
【0141】
プルームを形作ることは、開孔を使用してプルームの少なくとも一部分を遮断することを含み得る。経時的に、蒸発した原料物質は開孔に付着し得る。それは、開孔の直径の低減をもたらし得る。
【0142】
任意選択的なボックス1030では、遮蔽デバイスが、堆積装置のサービス位置にある遮蔽デバイスを少なくとも局所的に加熱することによって洗浄される。加熱は、遮蔽デバイスからの積み重ねられた原料物質の再蒸発をもたらし得る。洗浄後、堆積が継続され得る。
【0143】
ある実施形態では、洗浄が規則的な間隔で実行される。
【0144】
本明細書では諸例を用いて、ベストモードを含めて本開示を開示し、また当業者が本開示の主題を実施することを、任意のデバイス又はシステムを作製し且つ使用すること、及び組み込まれている任意の方法を実施することを含めて可能にしている。前述において様々な特定の実施形態を開示してきたが、上述した実施形態の相互に非排他的な特徴は、互いに組み合わせることが可能である。特許性のある範囲は特許請求の範囲によって規定され、その他の実施例は、それが特許請求の範囲の文字通りの言葉と相違しない構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲の文字通りの言葉とは実質的な違いがない等価の構造要素を含む場合には、特許請求の範囲内にあるものとする。
また、本願は以下に記載する態様を含む。
(態様1)
基板上に蒸発した原料物質を堆積させるための蒸発源(20)であって、
複数のノズル(22)を有する1以上の分配管(106)であって、前記複数のノズル(22)の各ノズルが、蒸発した原料物質のプルームを前記基板(10)へ向けるように構成された、分配管(106)、及び
複数の開孔(32)を備えた遮蔽デバイス(30)であって、前記複数の開孔(32)のうちの少なくとも1つの開孔が、単一の関連付けられたノズルから放出された前記蒸発した原料物質のプルーム(318)を個別に形作るように構成された、遮蔽デバイス(30)を備える、蒸発源。
(態様2)
前記少なくとも1つの開孔が、円周壁(34)によって取り囲まれた前記プルーム(318)のための通路として構成され、前記円周壁(34)が、第1の断面内で、主たる放出方向(X)に対して第1の最大放出角度(θ)よりも大きい放出角度を有する、前記プルーム(318)の前記蒸発した原料物質を遮断するように構成され、前記円周壁(34)が、前記第1の断面と垂直な第2の断面内で、前記主たる放出方向(X)に対して第2の最大放出角度(β)よりも大きい放出角度を有する、前記プルーム(318)の前記蒸発した原料物質を遮断するように構成されている、態様1に記載の蒸発源。
(態様3)
前記第1の断面が水平面であり、前記第2の断面が垂直面であり、前記第1の最大放出角度(θ)が10度から45度までの角度であり、前記第2の最大放出角度が15度から60度までの角度であり、特に、前記第1の最大放出角度(θ)が前記第2の最大放出角度よりも小さい、態様2に記載の蒸発源。
(態様4)
前記単一の関連付けられたノズルの出口が、特に、前記遮蔽デバイス(30)と接触することなしに、前記遮蔽デバイス(30)の中へ少なくとも部分的に突出する、態様1から3のいずれか一項に記載の蒸発源。
(態様5)
前記少なくとも1つの開孔が、円周壁(34)によって取り囲まれた前記プルーム(318)のための通路として構成され、主たる放出方向(X)における前記円周壁の長さが、周方向において変動し、特に、前記円周壁(34)が、前記主たる放出方向(X)を含む第1の断面において第1の長さ(T1)を有し、前記円周壁(34)が、前記主たる放出方向(X)を含み且つ前記第1の断面と垂直に延在する第2の断面において、前記第1の長さ(T1)よりも小さい第2の長さ(T2)を有する、態様1から4のいずれか一項に記載の蒸発源。
(態様6)
前記円周壁(34)の前記長さが、前記第1の断面における前記第1の長さ(T1)から前記第2の断面における前記第2の長さ(T2)へ連続的に変動し、特に、前記円周壁(34)の前端(35)が、周方向において起伏のある形状を有する、態様5に記載の蒸発源。
(態様7)
前記少なくとも1つの開孔が、丸い通路として、円形状の通路として、又は卵型の通路として構成され、特に、前記少なくとも1つの開孔が、3mm以上且つ25mm以下の直径を有する、態様1から6のいずれか一項に記載の蒸発源。
(態様8)
前記遮蔽デバイス(30)が、複数の分離した遮蔽ユニット(60)を備え、前記複数の分離した遮蔽ユニット(60)の各遮蔽ユニットが、前記複数の開孔(32)のうちの1以上の開孔を備える、態様1から7のいずれか一項に記載の蒸発源。
(態様9)
前記複数の分離した遮蔽ユニット(60)のうちの少なくとも1つの遮蔽ユニットが、特に、それぞれ、隣接する開孔の間に1cm以上且つ5cm以下の距離を有する、直線的な配置で支持構造体によって連結された、前記複数の開孔(32)のうちの2つ、3つ、4つ、又は5つ以上の開孔を備える、態様8に記載の蒸発源。
(態様10)
前記少なくとも1つの遮蔽ユニットが、前記1以上の分配管(106)のうちの単一の分配管の長さ方向において、前記単一の分配管の熱膨張及び収縮に従うように、前記単一の分配管に連結されている、態様9に記載の蒸発源。
(態様11)
互いに隣り合って延在する2以上の分配管(106)を備え、前記複数の分離した遮蔽ユニット(60)の各遮蔽ユニットが、前記1以上の分配管のうちの単一の分配管と機械的に固定され、前記複数のノズル(22)のうちの2つ又は3つ以上の隣接するノズルの前記蒸発した原料物質のプルームを個別に形作るために、前記複数の開孔(32)のうちの2つ又は3つ以上の開孔を備える、態様8から10のいずれか一項に記載の蒸発源。
(態様12)
前記複数の分離した遮蔽ユニット(60)のうちの少なくとも1つの遮蔽ユニットが、前記複数の分離した遮蔽ユニット(60)のうちの残りの遮蔽ユニットに対して移動可能なように、前記残りの遮蔽ユニットから機械的に連結解除されている、態様8から11のいずれか一項に記載の蒸発源。
(態様13)
前記複数の分離した遮蔽ユニット(60)のうちの少なくとも1つの遮蔽ユニットが、前記1以上の分配管から熱的に分離され、特に、前記少なくとも1つの遮蔽ユニットが、1以上のスペーサ要素(411)によって前記1以上の分配管(106)からある距離において保持されている、態様8から12のいずれか一項に記載の蒸発源。
(態様14)
基板(10)上に蒸発した原料物質を堆積させるための蒸発源(20)、特に、態様1から13のいずれか一項に記載の蒸発源(20)、のための遮蔽デバイス(30)であって、
複数の分離した遮蔽ユニット(60)であって、各遮蔽ユニットが、それぞれ、円周壁(34)によって取り囲まれた通路として構成された1以上の開孔を備え、各開孔が、前記蒸発源の単一の関連付けられたノズルから放出された蒸発した原料物質のプルーム(318)を個別に形作るように構成された、遮蔽ユニット(60)を備える、遮蔽デバイス。
(態様15)
真空チャンバ内の基板(10)上に蒸発した原料物質を堆積させるための方法であって、
蒸発源(20)の1以上の分配管(106)の複数のノズル(22)であって、各々が前記基板(10)に向けて伝播する蒸発した原料物質のプルームを生成する、複数のノズル(22)を通して蒸発した原料物質を誘導すること、及び
遮蔽デバイス(30)の複数の開孔(32)によって、前記蒸発した原料物質のプルームを個別に形作ることを含む、方法。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9